説明

制御システムおよび水力発電所

【課題】 取水する水の濁度が高い場合であっても、逆洗の効果を十分に得られる制御システムおよび水力発電所を提供する。
【解決手段】 流れ込み式の水力発電所に設置され、導水路内で発電機よりも上流に取水位置を有する逆洗可能なストレーナの逆洗を制御する制御システムであって、ストレーナの取水位置の上流に設置される、水の濁度を検知する検知器と、検知器により検知される水の濁度に応じて、ストレーナの逆洗頻度を設定する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システムおよび水力発電所に関し、より詳しくは、流れ込み式の水力発電所に設置され、導水路内で発電機よりも上流に取水位置を有する逆洗可能なストレーナの逆洗を制御する制御システムおよび水力発電所に関する。
【背景技術】
【0002】
流れ込み式の水力発電所は、河川の水を利用することで発電をしている。河川の水は、水力発電所の上流に設けられる取水ダム堤堰に貯水される。貯水される水の一部は、導水路を通じて発電機に導かれる。導水路に導かれた水は、発電機の水車を回転させて、発電機に発電させる。
【0003】
ストレーナは、発電機に提供される冷却水を精製するべく、導水路内で発電機の設置された位置の上流から取水される水を濾過するために設けられる。濾過された水は、冷却水として給水管を通して発電機に提供される。たとえば、発電機が水中軸受の潤滑システムを採用している場合、ストレーナで濾過された水は、発電機の水中軸受を冷却している。
【0004】
ストレーナによる水の濾過は、取水した水をフィルタに通すことで実現されている。水の濾過に応じてフィルタに付着するゴミや土砂などの異物は、フィルタを逆洗することで除去される。フィルタの逆洗は、間歇タイマ等を利用して、予め設定されたタイミングで実行される(たとえば、特許文献1)。
【0005】
河川上流域への豪雨などにより、貯水の濁度が高くなる場合、すなわち、貯水への土砂の混入が多い場合には、ストレーナへの土砂の混入を防止する処置がとられている。たとえば、流れ込み式水力発電所の取水口への土砂の流入頻度および流入土砂の粒子重量を検出して、取水ダム堤堰、沈砂池、および水槽部の排砂ゲートを開放している(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−230298号公報
【特許文献2】特開平10−68118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、貯水の濁度がより高い場合に、特許文献1に記載のストレーナでは、逆洗によるフィルタからの異物の除去が間に合わない場合がある。フィルタからの異物の除去が間に合わない場合、フィルタについた異物を除去する逆洗の効果が低下してしまう。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑み、取水する水の濁度が高い場合であっても、逆洗の効果を十分に得られる制御システムおよび水力発電所を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る制御システムは、流れ込み式の水力発電所に設置され、導水路内で発電機よりも上流に取水位置を有する逆洗可能なストレーナの逆洗を制御する制御システムであって、ストレーナの取水位置の上流に設置される、水の濁度を検知する検知器と、検知器により検知される水の濁度に応じて、ストレーナの逆洗頻度を設定する制御部とを備える。
【0010】
斯かる構成によれば、制御部は、検知された水の濁度に応じて、ストレーナの逆洗頻度を設定できるので、水の濁度が高い場合に、逆洗の効果を十分に得られる。
【0011】
また、請求項2に係る制御システムは、制御部は、検知器よりも上流の降水量を降水量情報として受信する降水量情報受信部を有し、降水量情報および検知器により検知された水の濁度に応じて、ストレーナの逆洗頻度を設定する。
【0012】
斯かる構成によれば、制御部は、降水量情報および検知器により検知された水の濁度に応じてストレーナの逆洗頻度を設定するので、降雨により予測される水の濁度を検知器で確認しつつ、ストレーナの逆洗頻度を適切に変更できる。
【0013】
また、請求項3に係る制御システムは、検知器はストレーナの取水位置の上流に一定間隔を置いて複数設けられ、複数の検知器のそれぞれにおいて検知された水の濁度に応じて、ストレーナの逆洗頻度を制御する。
【0014】
斯かる構成によれば、制御部は、複数の検知のそれぞれにおいて検知された水の濁度に応じてストレーナの逆洗頻度を制御するので、水の濁度の程度をそれぞれの検知器において適切に把握でき、ストレーナへの濁水の到着をより適切に予想できる。
【0015】
また、上記制御システムは、発電機およびストレーナを備える水力発電所に備えられる。
【発明の効果】
【0016】
以上の如く、本発明に係る制御システムおよび水力発電所によれば、取水する水の濁度が高い場合であっても、逆洗の効果を十分に得られるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水力発電所の全体図を示す。
【図2】ストレーナの上方断面図を示し、図2(a)は、ストレーナの通常運転時の上方断面図、図2(b)から図2(d)は、ストレーナの逆洗運転時の上方断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る制御部のブロック図を示す。
【図4】同実施形態に係る同実施形態に係る検知データ蓄積部に蓄積される濁度情報のデータ構造を示す。
【図5】同実施形態に係る蓄積データ判定部の判定結果と間歇タイマの時限切替との関係を示す。
【図6】本発明の第2実施形態に係る取水ダム堤堰上流における降水の影響範囲のイメージ図を示す。
【図7】同実施形態に係る制御部のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る制御システムおよび水力発電所における第1の実施形態について、図1から図5を参酌して説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る水力発電所100の全体図を示す。図2は、ストレーナ140の上方断面図を示し、図2(a)は、ストレーナ140の通常運転時の上方断面図、図2(b)から図2(d)は、ストレーナ140の逆洗運転時の上方断面図を示す。本実施形態の水力発電所100として、流れ込み式の水力発電所を示す。水力発電所100は、発電機110と、発電機110に水を供給する水経路120と、発電機110に冷却水を送るべく水経路120から取水する水を濾過するストレーナ140と、ストレーナ140を制御する制御システム150とを備える。
【0020】
水経路120は、河川上流122および河川下流124の間に設けられる取水ダム堤堰126と、導水路128と、水槽130と、放水路132とを有する。取水ダム堤堰126は、河川の流れを堰き止めて、発電機110に供給する水を貯水する。導水路128は、貯水された水を発電機110まで導くべく、取水ダム堤堰126から水を取り込む。導水路128の途中、発電機110の上流には水槽130が設けられる。水槽130は、大きな落差(数10m程度)を利用して、発電用の水を発電機110に供給する。発電に利用された水は、放水路132を利用して、河川下流124に戻される。
【0021】
ストレーナ140は、取水された水を濾過して、発電機110の冷却水を提供する。ストレーナ140は、逆洗運転の間でも、発電機110に冷却水を供給できる構造を有している。ストレーナ140は、逆洗運転をすることで、取水された水の濾過で蓄積されるストレーナ140内部の異物を除去する。
【0022】
具体的な構成として、図2に示すように、ストレーナ140は、取水位置である取水口142と、発電機110に冷却水を提供する給水口144と、ストレーナ本体200と、排水出口205と、円筒形状を有するこし筒210と、回転軸215と、通水部220と、遮蔽部255と、図示しないモータとを有する。
【0023】
取水口142は、導水路128内で発電機110よりも上流に設けられ、導水路128内に流れる水を取水する。給水口144は、発電機110に精製された冷却水を随時供給する。ストレーナ本体200は、取水口142および給水口144に接続される。
【0024】
排水出口205は、排水の出水を制御する電磁弁260を含む。排水出口205は、ストレーナ本体200の底部であり、こし筒210の円筒形状内側に位置する部分に接続されている。電磁弁260は、制御部156に接続されており、制御部156の逆洗の制御に応じて開閉する。
【0025】
こし筒210は、円筒形状を有するストレーナ本体200内部に収納するように設けられる。こし筒210は、ストレーナ本体200の内壁と隙間を空けて設けられる。また、こし筒210は、排水出口205のストレーナ本体200への開口部分を覆う位置に設けられる。こし筒210の円筒部分は、円筒内部に供給される水を濾過して、円筒外部に供給するフィルタ状になっている。
【0026】
こし筒210は、第1濾過部225、第2濾過部230、第3濾過部235、第4濾過部240、第5濾過部245、および第6濾過部250を含む。第1濾過部225から第6濾過部250は、こし筒210の円筒形状の内部を垂直方向に仕切ることで設けられる。たとえば、第1濾過部225から第6濾過部250は、こし筒210の円筒形状の内部を垂直に6等分するようにして設けられる。第1濾過部225から第6濾過部250のそれぞれは、排水出口205のストレーナ本体200への開口部分よりも広い上方断面を有する。
【0027】
こし筒210は、取水口142のストレーナ本体200への接続位置の鉛直下方側に設けられる。取水口142から供給される水は、こし筒210の鉛直上方から、こし筒210の内側に供給される。給水口144は、こし筒210の設置される位置の側方であり、ストレーナ本体200の任意の位置に接続される。
【0028】
回転軸215は、モータおよびこし筒210に接続されている。回転軸215は、こし筒210の上方中心に接続され、回転軸215を中心としてこし筒210を回動可能に支持している。モータは、回転軸215の鉛直上方側に接続されており、回転軸215を介して、その回転力をこし筒210に伝達する。また、モータは、制御部156に接続されており、制御部156からの逆洗の制御に応じて回転する。
【0029】
通水部220は、こし筒210とストレーナ本体200の内壁との隙間に設けられる。通水部220は、こし筒210で濾過される水を給水口144へ導く。なお、通水部220と取水口142との間には、取水口142からの水が通水部220へと浸入しないように防浸部(図示しない)が設けられる。
【0030】
遮蔽部255は、第1濾過部225から第6濾過部250のうちの一つの上方を覆うことが可能なように設けられる。遮蔽部255は、第1濾過部225から第6濾過部250のうち、その上方を完全に覆っている一つに、取水口142からの水が供給されないように構成される。たとえば、遮蔽部255に第6濾過部250の上方が完全に覆われる場合、遮蔽部255は、取水口142から供給される水の第6濾過部250への流入を遮蔽する。
【0031】
ストレーナ140の構成は以上の通りであり、次にストレーナ140の逆洗方法を示す。ストレーナ140は、逆洗をせずに発電機110に冷却水を提供する通常運転状態と、逆洗をしながら発電機110に冷却水を提供する逆洗運転状態との2つの運転状態を有する。ストレーナ140の通常運転状態において、モータは回転駆動されず、こし筒210も回転しない。また、排水出口205の電磁弁260が閉じているので、取水口142から供給される水は、全て冷却水として発電機110に供給される。
【0032】
図2(a)は、通常運転状態にあるストレーナ140を示す。図2(a)に示すように、取水口142から取り入れられる水は、こし筒210の第1濾過部225から第5濾過部245に供給される。なお、第6濾過部250の鉛直上方には遮蔽部255が存在するので、取水口142から取り入れられる水は、第6濾過部250の鉛直上方から第6濾過部250へ供給されない。こし筒210は、取水口142から供給された水を通水部220へフィルタを通すことで濾過する。通水部220に通された水は、こし筒210の側方に設けられる給水口144を通じて発電機110に供給される。
【0033】
図2(b)は、逆洗運転状態になった直後のストレーナ140を示す。制御部156からストレーナ140を逆洗運転する制御があると、図2(b)のように、モータは回転を開始して、回転軸215およびこし筒210を回転させる。たとえば、モータは、回転軸215およびこし筒210を時計方向に回転させる。また、電磁弁260が開状態になり、排水出口205は、ストレーナ本体200内の水を排出する。
【0034】
第1濾過部225から第5濾過部245に供給され、通水部220に通されている水は、通水部220から給水口144に供給されると共に、第6濾過部250にも供給される。第1濾過部225から第5濾過部245で濾過される水が通水部220側から第6濾過部250側へと供給されるので、第6濾過部250の通水部220側の内壁に付着している異物は、通水部220からの水流で流されて、排水出口205を通って排出される。
【0035】
図2(c)は、逆洗運転状態であり、逆洗運転過程にあるストレーナ140を示す。また、図2(d)は、逆洗運転状態であり、こし筒210の回転が終了した直後のストレーナ140を示す。図2(c)および図2(d)のように、こし筒210の回動が進み、第6濾過部250に隣接する第1濾過部225の範囲に排水出口205の開口が覆われると、取水口142から供給される水は、第1濾過部225へと供給されなくなる。したがって、第1濾過部225へ供給される水は、通水部220側から第1濾過部225側に流入する水だけとなる。第1濾過部225へ供給される水は、第1濾過部225の通水部220側内壁に付着している異物を押し流して、排水出口205へと排出する。第2濾過部230から第6濾過部250が濾過する水は、給水口144および第1濾過部225に供給されるので、給水口144への給水を止めずに、第1濾過部225の逆洗ができる。第1濾過部225の逆洗が終了すると、電磁弁260が閉じて、ストレーナ140は再度通常運転状態になる。そして、次に制御部156から逆洗運転の制御があると、ストレーナ140は、再度電磁弁260を開くと共にこし筒210を回転させて、第2濾過部230の逆洗をする。
【0036】
制御システム150は、水経路120における水の濁度を検知して、ストレーナ140の逆洗頻度を制御するべく設けられる。制御システム150は、導水路128内の任意の場所に設けられる第1検知器152および第2検知器154と、制御部156と、制御所158とを有する。第1検知器152および第2検知器154は、共に導水路128内でストレーナ140よりも上流に設置されている。本実施形態において、第1検知器152は、導水路128内で、取水ダム堤堰126と水槽130との間に設けられ、第2検知器154は、水槽130内に設けられる。
【0037】
制御部156は、有線または無線で第1検知器152、第2検知器154、およびストレーナ140と通信可能な位置に設けられるコンピュータ端末であってよい。制御所158は、制御部156に通信可能な位置に設けられ、作業者からの入力を受け付ける入力部(図示しない)を有する。
【0038】
第1検知器152および第2検知器154は、それぞれの設置されている位置の水の濁度を検知して、濁度情報として制御部156に送信するべく設けられる。また、制御所158は、作業者から入力部に直接入力される濁度情報を、制御部156に送信するべく設けられる。制御部156は、第1検知器152、第2検知器154、または制御所158から送信された濁度情報に応じて、ストレーナ140の逆洗を制御するべく設けられる。
【0039】
図3は、同実施形態に係る制御部156のブロック図を示す。制御部156は、検知データ蓄積部310と、時刻補正部320と、蓄積データ判定部330と、ストレーナ運転制御部340と、間歇タイマ350とを含む。
【0040】
検知データ蓄積部310は、第1検知器152および第2検知器154のそれぞれから送信される水の濁度情報を蓄積するべく設けられる。図4は、同実施形態に係る検知データ蓄積部310に蓄積される濁度情報のデータ構造を示す。検知データ蓄積部310は、第1検知器152および第2検知器154のそれぞれから受信した時刻ごとに、濁度情報を蓄積している。ここで、第1検知器152および第2検知器154のそれぞれが設置されている位置Aおよび位置Bのそれぞれは、第1検知器152および第2検知器154を識別する識別情報として蓄積されている。また、第1検知器152および第2検知器154のそれぞれは、予め設定された時間として、5分ごとに設置されている位置の濁度を検知して制御部156に送信している。
【0041】
なお、濁度は10段階で示されており、数値が高いほど濁度が高いことを示している。たとえば、濁度7から10を濁度高、3から6を濁度中、0から2を濁度低であることを示している。
【0042】
時刻補正部320は、蓄積された濁度情報に含まれる、第1検知部152および第2検知部154で濁度の検知された時刻を補正するべく設けられる。たとえば、時刻補正部320は、第1検知部152および第2検知部154の設置されている設置位置に応じて、濁度情報に含まれる時刻を取水口142に濁水が到達する時刻に補正するべく設けられる。
【0043】
蓄積データ判定部330は、時刻の補正された濁度情報から、ストレーナ140の逆洗運転の頻度を判定するべく設けられる。また、蓄積データ判定部330は、制御所158から送信される濁度情報に基づいて、取水口142における水の濁度を判定するべく設けられる。
【0044】
ストレーナ運転制御部340は、判定された水の濁度に基づいて、ストレーナ140を逆洗運転させるタイミングを決定するためのものである。また、ストレーナ運転制御部340は、決定したタイミングに基づいて、間歇タイマ350の設定を変更する。
【0045】
間歇タイマ350は、変更された設定でストレーナ140を逆洗運転させるべく、ストレーナ140のモータおよび電磁弁260に接続されている。
【0046】
図5は、同実施形態に係る蓄積データ判定部330の判定結果とストレーナ運転制御部340による時限切替の決定との関係を示す。なお、判定結果における濁度の高さを、D1>D2>D3で示す。たとえば、濁度が10段階で表される場合に、濁度の高さが7から10の場合をD1で示し、濁度の高さが3から6の場合をD2で示し、濁度の高さが0から2の場合をD3で示す。蓄積データ判定部330が水の濁度をD1と判断する場合、ストレーナ運転制御部340は、間歇タイマ350を整定値から連続時限運転へと切替える。蓄積データ判定部330が水の濁度をD2と判断する場合、ストレーナ運転制御部340は、間歇タイマ350を整定値から短縮時限運転へ切替える。蓄積データ判定部330が水の濁度をD3と判断する場合、ストレーナ運転制御部340は、間歇タイマ350を整定値の時限運転へ切替える。間歇タイマ350は、切替えられて設定される値に応じた間隔で、ストレーナ140に逆洗運転させる。
【0047】
ここで、整定値とは、取水口142における水の濁度が低いと判断される場合に、間歇タイマ350に通常設定されている値を示す。たとえば、整定値とは、間歇タイマ350が一日一回起動する値であって良い。また、連続時限運転とは、取水口142における水の濁度が高いと判断される場合に、間歇タイマ350に設定される値を示す。たとえば、連続時限運転とは、間歇タイマ350が30分おきに起動する値であって良い。そして、短縮時限運転とは、取水口142における水の濁度が中程度と判断される場合に、間歇タイマ350に設定される値を示す。たとえば、短縮時限運転とは、間歇タイマ350が半日ごとに起動する値であって良い。
【0048】
なお、蓄積データ判定部330が水の濁度をD1と判断する場合であって、間歇タイマ350に設定されている値が短縮時限運転である場合には、ストレーナ運転制御部340は、短縮時限運転から連続時限運転へ切替える動作をしても良い。また、蓄積データ判定部330が水の濁度をD2と判断する場合であって、間歇タイマ350に設定されている値が連続時限運転である場合には、ストレーナ運転制御部340は、連続時限運転から短縮時限運転へ切替える動作をしても良い。
【0049】
本実施形態に係る制御システムおよび水力発電所の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る制御システムおよび水力発電所の動作について説明する。
【0050】
第1検知器152および第2検知器154のそれぞれは、予め設定されている時間ごとに、設置されている位置における水の濁度を検知する。より詳しくは、第1検知器152および第2検知器154のそれぞれは、水の濁度の変化を検知するのに適当な時間ごとに水の濁度を検知する。
【0051】
第1検知器152および第2検知器154は、取得した濁度情報を、制御部156に対して送信する。第1検知器152および第2検知器154のそれぞれは、濁度情報として、第1検知器152および第2検知器154のそれぞれを識別する識別情報、水の濁度を検知した検知時間、および検知された水の濁度を濁度情報として制御部156に送信する。制御部156の検知データ蓄積部310は、第1検知器152および第2検知器154のそれぞれから送信される濁度情報を、受信した時間ごとに蓄積する。なお、簡便のため、導水路128内で、取水ダム堤堰126と水槽130との間に設けられる第1検知部152の位置をAとして説明する。また、水槽130内に設けられる第2検知部154の位置をBとして説明する。
【0052】
時刻補正部320は、第1検知器152および第2検知器154から送信された濁度情報について、第1検知器152および第2検知器154のそれぞれから取水口142への距離に基づいて、蓄積された濁度情報の時刻を補正する。より詳しくは、時刻補正部320は、第1検知器152および第2検知器154のそれぞれから取水口142への距離および導水路128を流れる水の速度とから、蓄積された濁度情報の時刻を、取水口142から濁水が取水されるであろう、取水口142への濁水の到達時刻に補正する。
【0053】
なお、本実施形態において、第1検知器152および第2検知器154の二つの検知器を有する例を示すが、検知器は、一つまたは取水口142の取水位置の上流に一定間隔を置いて複数設けられていても良い。検知器が取水口142の取水位置の上流に一定間隔を置いて複数設けられている場合、時刻補正部320は、複数の検知器のそれぞれの濁度情報から、取水口142への濁水の到達時刻を設定してもよい。たとえば、制御システム150がさらに位置Aおよび位置Bの中間で、位置Aおよび位置Bからの距離の等しい位置Cに検知器をさらに有する場合、時刻補正部320は、濁水が位置A、位置C、および位置Bに設置されている検知器それぞれを通過した時刻と、位置A、位置C、および位置Bのそれぞれの距離とから、濁水の流速を計算して、取水口142への濁水の到達時刻を設定しても良い。
【0054】
蓄積データ判定部330は、時刻の補正された濁度情報から、取水口142から取水される水の濁度を判定する。たとえば、蓄積データ判定部330は、所定の時間ごと(たとえば、30分ごと)に蓄積された濁度情報に含まれる濁度の平均値を算出して、取水口142から取水される水の濁度を判定しても良い。また、蓄積データ判定部330は、制御所158から濁度情報を受信することで水の濁度を判定する。具体的には、作業員から濁度情報が制御所158の入力部(図示しない)に入力され、制御所158から濁度情報が送信されると、蓄積データ判定部330は、送信された濁度情報から水の濁度を判定する。たとえば、蓄積データ判定部330は、制御所158から水の濁度が高いことを示す濁度情報を受信して、取水口142から取水される水の濁度を高であると判定する。
【0055】
ストレーナ運転制御部340は、蓄積データ判定部330の判定結果に応じて、ストレーナ140の逆洗頻度を決定する。すなわち、ストレーナ運転制御部340は、蓄積データ判定部330の判定結果に応じて、補正された時間において間歇タイマ350の時限切替をすることを決定する。たとえば、蓄積データ判定部330の判定結果が濁度高である場合、ストレーナ運転制御部340は、補正された時刻になると間歇タイマ350の連続時限運転への切替えをすることを決定して、間歇タイマ350を連続時限運転に切替える。間歇タイマ350は、切替えられた連続時限運転で設定されている時刻ごとに、ストレーナ140に逆洗をさせるべく、ストレーナ140のモータ(図示しない)および電磁弁260に指令を送る。
【0056】
以上より、本実施形態に係る制御システム150および水力発電所100は、第1検知器152および第2検知器154において検知される水の濁度から、取水口142における水の濁度を想定できるので、ストレーナ140がトリップすることを防止することができる。ストレーナ140がトリップすることを防止できるので、発電機110は、効率的に発電することができる。また、取水口142における水の濁度を予想してストレーナ140の逆洗頻度を変更することができるので、制御システム150および水力発電所100は、適切な時限でストレーナ140の逆洗運転を制御でき、十分な逆洗効果を得ることができる。ストレーナ140の逆洗運転が適切な時限で制御されるので、ストレーナ140は、発電機110に適切な量の冷却水を提供でき、発電機110は効率的な発電をすることができる。
【0057】
さらには、検知器が、取水口142の取水位置の上流に一定間隔を置いて複数設けられることで、より多くの濁度情報を適切な時間に得ることができるので、取水口142への濁水の到着をより適切に予想することができる。したがって、ストレーナ140の逆洗頻度を適切に変更できるので、発電機110に適切な量の冷却水を提供でき、発電機110は効率的な発電をすることができる。
【0058】
次に、本発明に係る制御システムおよび水力発電所における第2の実施形態について、図1から図7を参酌して説明する。なお、図6および図7において、図1から図5の符号と同一の符号を付した部分は、第1の実施形態と同一の構成または要素を表す。なお、本実施形態においては、水力発電所100の構成は第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。また、ストレーナ140の構成も第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0059】
図6は、本実施形態に係る取水ダム堤堰126における降水の影響範囲のイメージ図を示す。取水ダム堤堰126の河川上流122流域は、東西南北で1kmごとにメッシュ化され、それぞれのメッシュは1km2を示す。それぞれのメッシュのうち、降雨が河川上流122に到達する位置にあるメッシュを重要監視域610として太線で囲っている。また、それぞれのメッシュのうち、降雨がより遅く河川上流122に到達する位置にあるメッシュを準重要監視域620として囲っている。
【0060】
図7は、同実施形態に係る制御部156のブロック図を示す。制御部156は、第1実施形態における制御部156の構成に加えて、降水量情報受信部720、降雨時刻補正部730、および降水量情報予測部740を有する。
【0061】
降水量情報受信部720は、河川上流122への降水量を降水量情報として制御部156の外部から受信するべく設けられる。降雨時刻補正部730は、降雨情報受信部720の降水量情報を受信した時刻から、降雨に影響される濁水の取水口142への到達時刻を予測して、降水量情報を受信した時刻を到達時刻に補正するべく設けられる。降水量情報予測部740は、降水量情報から、導水路128を流れる水の濁度を予測するべく設けられる。
【0062】
本実施形態に係る制御システム150および水力発電所100の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る制御システム150および水力発電所100の作用について説明する。
【0063】
降水量情報受信部720は、外部に設置されている気象サーバ710から、定期的に準重要監視域620における降水量情報を受信する。降水量情報は、降水量情報受信部720の降水量情報を受信した時刻における、準重要監視域620に含まれるメッシュごとの降水量の情報を有する。所定の時刻とは、準重要監視域620に降雨が予想される場合や、準重要監視域620に実際に降雨がある場合に、より短い間隔で設定される時刻であってよい。
【0064】
降雨時刻補正部730は、受信した降水量情報の時刻を、降雨が取水口142に到達する時刻に補正する。たとえば、取水ダム堤堰126付近に降雨があることを想定して、降雨時刻補正部730は、受信した降水量情報の時刻を取水ダム堤堰126から取水口142に濁水が到達する時刻に変更する。
【0065】
降水量情報予測部740は、時刻の補正された降水量情報から、水の濁度を予測する。すなわち、降水量情報予測部740は、重要監視域610への降水量および準重要監視域620への降水量から、水の濁度を予測する。たとえば、降水量情報予測部740は、重要監視域610に含まれるメッシュごとの降水量と、重要監視域610の全体に含まれるメッシュの個数とから、水の濁度を予測する。また、降水量情報予測部740は、準重要監視域620に含まれるメッシュごとの降水量と、準重要監視域620に含まれるメッシュの個数とから、水の濁度を予測する。
【0066】
より具体的には、降水量情報予測部740は、重要監視域610に含まれるメッシュにおいて、4から11mmの降水量を有するメッシュ数が半分を超える場合、12から23mmの降水量を有するメッシュ数が1/3を超える場合、および24mm以上の降水量を有するメッシュが1つ以上ある場合に、水の濁度を高と予測する。また、降水量情報予測部740は、準重要監視域620に含まれるメッシュにおいて、12から23mmの降水量を有するメッシュが1/4を超える場合に、水の濁度を高と予測する。
【0067】
ストレーナ運転制御部340は、降水量情報と、第1検知器152および第2検知器154により検知された水の濁度に応じて、ストレーナ140の逆洗頻度を設定する。すなわち、ストレーナ運転制御部340は、蓄積データ判定部330で判定された水の濁度に加え、降水量情報予測部740に予測された水の濁度に基づいて、ストレーナ140を逆洗運転させるタイミングを決定する。具体的には、ストレーナ運転制御部340は、蓄積データ判定部330によって判定された水の濁度および降水量情報予測部740に予測された水の濁度のいずれか一方の濁度のうち、より高い濁度に基づいて、ストレーナ140を逆洗運転させるタイミングを決定する。
【0068】
以上より、本実施形態に係る制御システム150および水力発電所100は、河川上流122の降雨状況から、取水口142における水の濁度を想定できるので、ストレーナ140がトリップすることを防止することができる。ストレーナ140がトリップすることを防止できるので、発電機110は、効率的に発電することができる。また、取水口142における水の濁度を予想してストレーナ140の逆洗の頻度を変更することができるので、制御システム150および水力発電所100は、適切な時限でストレーナ140の逆洗運転を制御でき、ストレーナ140の十分な逆洗効果を得ることができる。ストレーナ140の逆洗運転が適切な時限で制御されるので、ストレーナ140は、発電機110に適切な量の冷却水を提供でき、発電機110は効率的な発電をすることができる。
【0069】
さらには、第1検知器152および第2検知器154と降水量情報とを連携させてストレーナ140の逆洗頻度を切替えることができるので、よりストレーナ140の逆洗運転を適切な時限で制御でき、発電機110は効率的な発電をすることができる。
【0070】
なお、本発明に係る制御システム150および水力発電所100は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用しても良いことは勿論である。
【0071】
例えば、本発明に係る制御システム150および水力発電所100においては、第1検知器152および第2検知器154のうち、いずれか一方で高い濁度が検知された場合に、ストレーナ運転制御部340は、高い濁度を検知した第1検知器152または第2検知器154の濁度に基づいて間歇タイマ350の時限切替を設定しても良い。これにより、取水口142で取水される水の濁度が少しでも高くなる可能性がある場合に、ストレーナ140の逆洗頻度を変更することができる。したがって、ストレーナ140のトリップを確実に防止でき、発電機110は効率的に発電できる。
【0072】
また、上記実施形態に係る制御システム150および水力発電所100においては、第1検知器152および第2検知器154の両方で検知される水の濁度が低い場合に、ストレーナ運転制御部340は、間歇タイマ350の時限切替を整定値に設定しても良い。これにより、取水口142から濁水が取水される恐れが無い場合には、発電機110に効率的に発電させることができる。
【0073】
また、上記実施形態に係る制御システム150および水力発電所100においては、降水量情報受信部720が気象サーバ710から降水量無しの降水量情報を受信した場合に、ストレーナ運転制御部340は、一定時間後に、間歇タイマ350の時限運転を整定値に切替えても良い。たとえば、ストレーナ運転制御部340は、3時間経過後に間歇タイマ350の時限運転を整定値に切替えても良い。これにより、第1検知器152および第2検知器154が濁水を検知していたとしても、今後濁水が解消されると判断される状況において、ストレーナ140の逆洗頻度を整定値にすることができ、ストレーナ140は、発電機110に供給する水の量を増やすことができる。したがって、水力発電所100は効率的な発電をすることができる。
【符号の説明】
【0074】
100 水力発電所
110 発電機
120 水経路
122 河川上流
124 河川下流
126 取水ダム堤堰
128 導水路
130 水槽
132 放水路
140 ストレーナ
142 取水口
144 給水口
150 制御システム
152 第1検知器
154 第2検知器
156 制御部
158 制御所
200 ストレーナ本体
205 排水出口
210 こし筒
215 回転軸
220 通水部
225 第1濾過部
230 第2濾過部
235 第3濾過部
240 第4濾過部
245 第5濾過部
250 第6濾過部
255 遮蔽部
260 電磁弁
310 検知データ蓄積部
320 時刻補正部
330 蓄積データ判定部
340 ストレーナ運転制御部
350 間歇タイマ
610 重要監視域
620 準重要監視域
710 気象サーバ
720 降水量情報受信部
730 降雨時刻補正部
740 降水量情報予測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ込み式の水力発電所に設置され、導水路内で発電機よりも上流に取水位置を有する逆洗可能なストレーナの逆洗を制御する制御システムであって、
前記ストレーナの取水位置の上流に設置される、水の濁度を検知する検知器と、
前記検知器により検知される水の濁度に応じて、前記ストレーナの逆洗頻度を設定する制御部と
を備えることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記検知器よりも上流の降水量を降水量情報として受信する降水量情報受信部を有し、前記降水量情報および前記検知器により検知された水の濁度に応じて、前記ストレーナの逆洗頻度を設定することを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記検知器は、前記ストレーナの取水位置の上流に一定間隔を置いて複数設けられ、複数の検知器のそれぞれにおいて検知された水の濁度に応じて、前記ストレーナの逆洗頻度を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の制御システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の制御システムと、前記発電機と、前記ストレーナとを備えることを特徴とする水力発電所。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−57325(P2012−57325A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199789(P2010−199789)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】