説明

制御システム及び時刻同期方法

【課題】プラント設備等を制御する複数の演算装置が伝送路を介して接続された制御システムの各演算装置間でシステム時刻を同期化させる。
【解決手段】複数の演算装置の1つが時刻マスタに指定され、他の演算装置が時刻スレーブに指定され、時刻マスタである演算装置のプロセッサは、一定の周期で前記システム時刻タイマの時刻を取得して前記ネットワーク時刻タイマに格納して計時を続けさせ、
フレーム生成手段は、前記ネットワーク時刻タイマの時刻情報を取得しその時刻情報を含むフレームを生成して一定の周期で時刻スレーブである演算装置にブロードキャストし、時刻スレーブである演算装置のフレーム受信手段は、送信されてきたフレーの時刻情報を自演算装置内の前記ネットワーク時刻タイマに格納して計時を続けさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システム及び時刻同期方法に係り、特に、プラント設備等を制御する複数の演算装置が伝送路を介して接続された制御システム及び各演算装置の時刻同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は従来技術による制御システム及び演算装置の構成を示すブロック図、図2は制御システムを構成する複数の演算装置の時刻を同期させる処理動作を説明するフローチャートであり、図1、図2を参照して従来技術による制御システムの構成及び演算装置の時刻同期方法について説明する。
【0003】
従来技術による制御システムは、図1に示しているように、それぞれにプラント設備等における複数の部位の制御対象A5〜C7が接続されている複数の演算装置A2〜C4と、これらの演算装置A2〜C4の監視制御のためにユーザが使用し、マスタ時刻としてのシステムの時刻情報を有する制御監視装置であるPOC1とが、通信路100〜103(図1に示す例では光通信路とする)を介して、通信可能に接続されて構成されている。そして、ユーザは、POC1を用いて、通信路100〜103を介して演算装置A2〜C4の監視、制御を行うことができる。なお、図1に示す例では、通信路全体ループ状に接続されてネットワークを構成しているように示しているが、本発明の実施形態も含めて、ネットワークがループ状に構成される必要はない。
【0004】
演算装置A2〜C4のそれぞれは、演算装置A2を代表として示すように、ミドルウェア2011を備えたプロセッサ201と、LSI202と、光信号送受信部203とを備えて構成されている。LSI202の内部には、システム時刻タイマ2021と呼ぶ時刻タイマを有している。このシステム時刻タイマ2021は、プロセッサ201内のミドルウェア2011がそれぞれの制御対象の制御等を行うためのタスク処理を行う際に参照する時刻を経時しており、定期的にPOC1から送信されてきたシステム時刻が、ミドルウェア2011により格納されて、その後、自身で計時している。各演算装置は、制御対象に対するタスクが存在している時間帯にシステム時刻タイマ2021の値が変わってしまうと、処理されないタスクが生じてしまうことがあるため、POC1から送信されてきた時刻を用いて演算装置A2〜C4間で時刻同期を行う際には、タスクが存在していない時間帯を指定しなければならない。タスクが存在していない時間帯は、管理者であるユーザが、POC1から各演算装置を監視することにより知ることができるので、その時間帯で1日に1回程度の頻度で指定される。ミドルウェア201は、光信号送受信部203を介してPOC1からのシステム時刻情報205を受け取ると、その時刻をLSI202内のシステム時刻タイ2021に格納する。
【0005】
次に、図2を参照して演算装置の時刻を同期させるためシステム時刻タイマ2021へのシステム時刻設定の処理動作を説明する。
【0006】
(1)まず、ユーザは、POC1を使用して、POC1が持つ時刻情報を前述したように1日1回程度、通信路100を介して演算装置A2に送信する。演算装置A2は、光信号送受信部203がPOC1からの時刻情報を受信して、演算装置A2のプロセッサ201内のミドルウェア2011にシステム時刻情報205として提供する(ステップF1)。
【0007】
(2)システム時刻情報205を得たミドルウェア2011は、光信号送受信部203から得たシステム時刻情報205をLSI202内のシステム時刻タイマ2021へ、システム時刻情報204として格納する(ステップF2)。
【0008】
(3)前述したステップF1、F2の処理と同様な手順により、演算装置B3、C4のシステム時刻タイマへシステム時刻情報を格納する(ステップF3)。
【0009】
前述で説明したような処理により各演算装置のシステム時刻タイマ2021へのシステム時刻の設定が行われる。しかし、この時刻同期の処理は、ミドルウェアであるソフトウェアによる時刻設定の処理が行われているため、時刻同期精度が各演算装置の処理負荷に依存してしまい、各演算装置間の時刻誤差を規定(通信路での遅延、時刻設定の処理での遅延は、誤差として規定することができる)することができない。このため、各演算装置間の時刻を同期させることができないこととなる。
【0010】
一般に、顧客のプラント設備等で問題が発生した場合、設備を納入した企業としては、問題要因を解析し、原因を説明する責任がある。このため、複数の演算装置と制御対象からなる設備における問題発生の解析のため、問題発生の要因を時系列順に並べて把握することが重要であり、各制御装置は、各種同期化手段によってシステム時刻を同期化・補正している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
各演算装置のシステム時刻を同期化・補正する場合、システム時刻を同期化・補正することにより、演算装置でシステム時刻を参照して動作しているプログラムが動作タイミングを失い、障害となる場合があり、これを解決するために、IEEE1588のようなソフトウェアによる高精度な時刻同期化の手段を用いると、ソフトウェア負荷が増加し、演算装置の本来のプラント等に対する制御処理を害することがあるという問題点を生じさせる。また、GPSによる時刻同期化の方法を用いることも可能であるが、この方法は、配線敷設による設備コストの面で、高価になるという問題点を有している。
【0012】
前述で説明した従来技術による時刻同期の処理では、各演算装置間の時刻誤差を規定することができないため、制御対象A2〜C4に障害が起きた際、障害の解析等のために、障害情報を時系に並べることができなくなるという問題を生じさせていた。また、前述のように、ソフトウェアの作りこみにより時刻同期の精度を上げることは可能であるが、その場合、演算装置のソフトウェア負荷が大きくなってしまい、本来の主目的であるプラント制御に悪影響を及ぼしてしまうという問題点を生じさせることになる。
【0013】
本発明の目的は、前述で説明したような点に鑑み、各演算装置の本来の制御処理の性能を低下させることなく、複数の演算装置間でシステム時刻を同期化することができるようにしたプラント設備等を制御する複数の演算装置が通信路を介して接続された制御システム及び各演算装置の時刻同期方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば前記目的は、複数の演算装置が通信路により相互に接続され、前記複数の演算装置のそれぞれに制御対象が接続されて構成されている制御システムにおいて、前記複数の演算装置のそれぞれは、プロセッサと、システム時刻タイマと、独立した時刻同期専用のネットワーク時刻タイマと、フレーム生成手段と、フレーム受信手段とが備えられており、前記複数の演算装置の1つが時刻マスタに指定され、他の演算装置が時刻スレーブに指定され、前記時刻マスタである演算装置のプロセッサは、一定の周期で前記システム時刻タイマの時刻を取得して前記ネットワーク時刻タイマに格納して計時を続けさせ、前記フレーム生成手段は、前記ネットワーク時刻タイマの時刻情報を取得し、取得したネットワーク時刻タイマの時刻情報を含むフレームを生成し、生成したフレームを一定の周期で前記時刻スレーブである演算装置にブロードキャスト送信し、前記時刻スレーブである演算装置の前記フレーム受信手段は、前記ブロードキャスト送信されてきたフレームを受信し、フレーム内の時刻情報を自演算装置内の前記ネットワーク時刻タイマに格納して計時を続けさせることにより達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各演算装置は、本来の制御処理の性能を低下させることなく、複数の演算装置間でネットワーク時刻を同期化させることが可能となり、それによって、制御対象の設備に問題が発生した際、問題要因を時系列に並べ把握することができ、原因究明に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来技術による制御システム及び演算装置の構成を示すブロック図である。
【図2】従来技術による制御システムを構成する複数の演算装置の時刻を同期させる処理動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態による制御システム及び各演算装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態による制御システムを構成する複数の演算装置の時刻を同期させる処理動作を説明するフローチャートである。
【図5】図3に示す本発明の実施形態による制御システムで、演算装置の制御対象に障害が起きた際の時刻情報の収集方法を説明する図である。
【図6】本発明の他の実施形態による制御システム及び各演算装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の他の実施形態による制御システムを構成する複数の演算装置の時刻を同期させる処理動作を説明するフローチャートである。
【図8】図6に示す本発明の他の実施形態による制御システムで、演算装置の制御対象に障害が起きた際の時刻情報の収集方法を説明する図である。
【図9】演算装置内のフレーム生成部の構成を示すブロック図である。
【図10】フレーム生成部を含む演算装置でのフレーム生成の処理動作を説明するフローチャートである。
【図11】演算装置内のフレーム受信部の構成を示すブロック図である。
【図12】フレーム受信部を含む演算装置でのフレーム受信の処理動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による制御システム及び各演算装置の時刻同期方法の実施形態を図面により詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一名を持つ構成要素であっても、図毎にそれらの要素に付与した符号が異なっているが、同一名であれば同一の構成要素である。
【0018】
図3は本発明の一実施形態による制御システム及び各演算装置の構成を示すブロック図、図4は制御システムを構成する複数の演算装置の時刻を同期させる処理動作を説明するフローチャートである。図3に示す制御システム及び各演算装置の構成は、前述で説明した図1と大きくは変わらないため、以下では、図1と異なる点について説明する。
【0019】
図3に示す本発明の実施形態による制御システムの構成は、図1により説明した従来技術の場合と同一であり、各演算装置の構成が異なっている。すなわち、演算装置A9〜C11のそれぞれは、演算装置A9、B10を代表として示すように、演算装置A9のLSI901内に、システム時刻タイマ9011、10011に加え、時刻同期専用として設けたネットワーク時刻タイマ9012、10012という時刻タイマを加えた点と、フレーム受信部9013、10013及びフレーム生成部9014、10014とを加えた点で、従来技術の場合と異なっている。本発明の実施形態では、時刻同期専用であるネットワーク時刻タイマ9012、10012を加えたことにより、システム時刻タイマ9011、1011)の値を変更することなく、時刻同期を可能としている。
【0020】
前述で説明したような構成を有する本発明の実施形態による制御システムは、従来技術による制御システムからの変更点、新規追加部分が少ないため、低コストで実現することができる。
【0021】
次に、図4を参照して演算装置A9の時刻を同期させるためネットワーク時刻タイマ9012への時刻設定の処理動作を説明する。
【0022】
(1)まず、ユーザは、POC8を使用して、POC8が持つ時刻情報を通信路107を介して演算装置A9に送信する。演算装置A9は、光信号送受信部903がPOC8からの時刻情報を受信して、演算装置A9のプロセッサ902内のミドルウェア9021にシステム時刻情報907として提供する(ステップF4)。
【0023】
(2)システム時刻情報907を得たミドルウェア9021は、光信号送受信部903から得たシステム時刻情報907をLSI901内のシステム時刻タイマ9011へ、システム時刻情報904として格納する(ステップF5)。
【0024】
(3)前述したステップF4、F5の処理と同様な手順により、演算装置B10、C11のシステム時刻タイマへシステム時刻情報を格納する(ステップF6)。
【0025】
ここまでの処理は、従来技術での処理として説明した図2のF1〜F3までの処理と同様である。
【0026】
(4)次に、ユーザは、POC8から各演算装置のうち1つを時刻マスタとして指定する。ここでは、演算装置A9を時刻マスタとして指定したものとして説明を続けるが、ユーザは、任意の演算装置を時刻マスタとして指定することができる。時刻マスタとして指定されなかった演算装置B10、C11は、時刻スレーブとなる(ステップF7)。
【0027】
(5)時刻マスタに指定された演算装置A9のミドルウェア9021は、定周期(4秒に1回程度)でシステム時刻タイマ9011からシステム時刻をリードしてシステム時刻情報905を収集し、その時刻情報をネットワーク時刻タイマ9012に格納する。その後、ネットワーク時刻タイマ9012は、自身で計時を続ける。この処理により、ネットワーク時刻タイマ9012は、システム時刻タイマ9011と近い値をとることができる(ステップF8)。
【0028】
(6)その後、演算装置A9のLSI901のフレーム生成部9014は、ネットワーク時刻タイマ9012の時刻をネットワーク時刻情報908として取得し、ネットワーク時刻情報908を送信フレームに添付し、時刻情報フレーム909を生成し、そのフレームを時刻スレーブである演算装置B10、C11に光信号送受信部903からブロードキャストする(ステップF9)。
【0029】
(7)時刻スレーブである演算装置B10は、光信号送受信部1003が時刻情報フレーム909を受信し、受信した時刻情報フレーム909のネットワーク時刻情報をLSI1001内のフレーム受信部10013を介してネットワーク時刻タイマ10012に格納し、その後、ネットワーク時刻タイマ10012に時刻の計時を続けさせる。演算装置C11も同様にネットワーク時刻情報をネットワーク時刻タイマに格納する。なお、ここで用いている送信フレームは、従来技術で時刻同期以外の目的で用いられているフレームであり、本発明の実施形態で新たに追加したものではない。また、時刻情報フレーム909とは、従来の送信フレームにネットワーク時刻情報908を添付したものである。本発明の実施形態では、従来から用いられている送信フレームを用いているため、図1に示して説明した従来技術による制御システムと本発明の実施形態による制御システムを併用することが可能である。フレーム受信部9013とフレーム生成部9014との詳細な構成については後述する(ステップF10)。
【0030】
図5は図3に示す本発明の実施形態による制御システムで、演算装置の制御対象に障害が起きた際の時刻情報の収集方法を説明する図である。図5には、図3に示す制御システムと同一の制御システムを示しているが、時刻情報の収集の説明のために必要な主メモリ情報を追記し、不必要なフレーム生成部、受信部を割愛して示している。時刻情報の収集方法は演算装置A16〜C18において同一であるため、ここでは演算装置A16についてのみ説明する。
【0031】
演算装置A16のプロセッサ1602内のミドルウェア16021は、制御対象A19から制御対象A19の障害情報1609を受信すると、LSI1603内のシステム時刻タイマ16031からシステム時刻をリードしリードした時刻情報1607と、ネットワーク時刻タイマ16032からネットワーク時刻をリードしリードした時刻情報1608とを収集し、障害情報と共に、主メモリ1601内の、ネットワーク時刻格納エリア16011、システム時刻格納エリア16012、障害情報格納エリア16013に格納する。このとき格納された情報は、主メモリ1601内で表として保存しており、障害情報と、ネットワーク時刻及びシステム時刻とを関連付けることができる。演算装置B17、18でも、制御対象に障害が発生した場合、前述と同様な処理を行う。このよう方法で時刻を収集することにより、制御対象A19、B20、C21に障害が起きた際にも、同期されているネットワーク時刻に従って、それらの障害情報を時系列に並べることができる。なお、この場合、システム時刻は、タスクが働く、あるいは、タスクが働いている時間を規定するためにだけ利用されている。
【0032】
次に、図3の参照に戻って、本発明の実施形態における時刻同期の精度について説明する。
【0033】
演算装置9〜11の相互間を接続する通信路107〜110は、リアルタイム性を保障する通信路であり、フレームの中継遅延を規定することができる。また、時刻情報フレーム909、1006として用いているフレームは、フレーム生成部9014から定周期で送出されるフレームであるため、時刻スレーブである演算装置B10、C11は、定周期で時刻を同期することができる。定周期で時刻を同期することにより、各演算装置B10、C11の独立したネットワーク時刻タイマが持つクロック発振器であるOSCのバラつきの影響を小さくすることができる。前述の定周期とは、一定の範囲内でユーザーが任意に決めることができる値である。これらより、ネットワーク時刻タイマの時刻同期精度を、非常に高くすることができ、かつ、その精度を規定することができる。また、時刻情報フレームの送信がハードウェアによるブロードキャストで行われるため、各演算装置A9〜C11のソフトウェア負荷を最小限に抑えることができる。なお、タイマの時刻精度は、それぞれの持つOSCの精度と、ブロードキャストでの時間精度で決まるものである。
【0034】
図6は本発明の他の実施形態による制御システム及び各演算装置の構成を示すブロック図である。図6に示す制御システム及び演算装置の構成において、システムの構成及び各演算装置内部のLSI、プロセッサ、光送受信部の構成は、前述で説明した図3の場合と同一であり、図3からの変更点は、時刻スレーブである演算装置B24の光送受信部2403からミドルウェア24021へ送信される信号が、図6に示す例ではネットワーク時刻リードトリガとなっている点である。なお、演算装置B24と演算装置C25は、同様の構成を持つため、演算装置C25の構成については図示していない。
【0035】
図7は本発明の他の実施形態による制御システムを構成する複数の演算装置の時刻を同期させる処理動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0036】
(1)まず、ユーザは、POC22を使用して、POC22が持つ時刻情報を通信路120を介して演算装置A23に送信する。演算装置A23は、光信号送受信部2303がPOC22からの時刻情報を受信して、演算装置A23のプロセッサ2302内のミドルウェア23021にシステム時刻情報2308として提供する(ステップF11)。
【0037】
(2)システム時刻情報2308を得たミドルウェア23021は、光信号送受信部2303から得たシステム時刻情報2308をLSI2301内のシステム時刻タイマ23011へ、システム時刻情報2304として格納する。また、前述までの処理と同様な手順により、演算装置B10、C11のシステム時刻タイマへシステム時刻情報を格納する(ステップF12)。
【0038】
ここまでの処理は、従来技術での処理として説明した図2のF1〜F3での処理と同様である。
【0039】
(3)次に、ユーザは、POC22から各演算装置のうち1つを時刻マスタとして指定する。ここでは、演算装置A23を時刻マスタとして指定したものとして説明を続けるが、ユーザは、任意の演算装置を時刻マスタとして指定することができる。時刻マスタとして指定されなかった演算装置B10、C11は、時刻スレーブとなる(ステップF13)。
【0040】
(4)時刻マスタに指定された演算装置A23のミドルウェア23021は、定周期(4秒に1回程度)でシステム時刻タイマ23011からシステム時刻をリードしてシステム時刻情報2305を収集し、その時刻情報2306をネットワーク時刻タイマ9012に格納する。この処理により、ネットワーク時刻タイマ9012は、システム時刻タイマ9011と近い値をとることになる(ステップF14)。
【0041】
(5)次に、演算装置A23のLSI2301のフレーム生成部23014は、ネットワーク時刻タイマ23012の時刻をネットワーク時刻情報2307として取得し、ネットワーク時刻情報2307を送信フレームに添付し、時刻情報フレーム2309を生成し、そのフレームを時刻スレーブである演算装置B24、C25に光信号送受信部2303からブロードキャストする(ステップF15)。
【0042】
(6)時刻スレーブである演算装置B24は、光信号送受信部2403が時刻情報フレーム2309を受信し、受信した時刻情報フレーム2309のネットワーク時刻情報をLSI2401内のフレーム受信部24013を介してネットワーク時刻タイマ24012にネットワーク時刻情報2406として格納し、ネットワーク時刻タイマ24012に時刻の計時を続けさせる。演算装置C25も同様にネットワーク時刻情報をネットワーク時刻タイマに格納する(ステップF16)。
【0043】
(7)ユーザは、POC22を使用して、時刻スレーブとなっている演算送信のシステム時刻を更新する際にタスク処理が抜けてしまうようなタスク処理に影響を及ぼすことのない周期である推奨周期、例えば、4秒程度で時刻スレーブとなっている演算装置B24、C25にネットワーク時刻情報リードトリガ2407を発行させる。前述の推奨周期の値は、システム構成により異なるが、前述で説明したように本発明の実施形態では時刻同期精度を規定することができるため、ユーザーは、推奨周期を算出することができる(ステップF17)。
【0044】
(8)ネットワーク時刻情報リードトリガは、時刻スレーブである演算装置B24の光信号送受信部2403により受信され、受信されたネットワーク時刻情報リードトリガは、光信号送受信部2403からプロセッサ2402内のミドルウェア24021にネットワーク時刻情報リードトリガ2407として渡される。ミドルウェア24021は、ネットワーク時刻情報リードトリガ2407を受け取ると、LSI2401内のネットワーク時刻タイマ24012からネットワーク時刻をその時刻のリード情報2405として取得し、システム時刻タイマ24011へ格納する。演算装置C25においても、演算装置B24と同様の処理が行われる(ステップF18)。
【0045】
図6により説明した本発明の第2の受信による制御システムは、演算装置A23〜C25のシステム時刻タイマが同期されることになるため、各制御対象A26〜C28に障害が発生したときに、その時点の時刻情報を収集する際、ネットワーク時刻リード情報を収集することなく、各演算装置のシステム時刻タイマからシステム時刻のみを収集することにより、発生した障害を時系列に並べることができる。時刻同期に用いている時刻情報フレーム2309は図3に示して説明した制御システムで用いているフレームと同様であり、中継遅延も同様である。このため、時刻同期精度については、図3に示して説明した制御システムの場合と変わらない。
【0046】
図8は図6に示す本発明の他の実施形態による制御システムで、演算装置の制御対象に障害が起きた際の時刻情報の収集方法を説明する図である。図8には、図6に示す制御システムと同一の制御システムを示しているが、時刻情報の収集の説明のために必要な主メモリ情報を追記し、不必要なフレーム生成部、受信部を割愛して示している。時刻情報の収集方法は演算装置A30〜C32において同一であるため、ここでは演算装置A30についてのみ説明する。
【0047】
演算装置A30のプロセッサ3002内のミドルウェア30021は、制御対象A33から制御対象A33の障害情報131を受信すると、LSI3003内のシステム時刻タイマ30032からシステム時刻をリードし、リードした時刻情報3006を障害情報131と共に、主メモリ3001内のシステム時刻格納エリア30011、障害情報格納エリア30012に、システム時刻情報3004、障害情報3005として格納する。
【0048】
このとき格納された情報は、主メモリ内で表として保存しており、障害情報とシステム時刻とを関連付けることができ、収集したシステム時刻を用いることにより、制御対象A〜Cに障害が起きた際にも、それらの障害情報を時系列に並べることができる。
【0049】
図9は演算装置内のフレーム生成部の構成を示すブロック図、図10はフレーム生成部を含む演算装置でのフレーム生成の処理動作を説明するフローチャートであり、次に、フレーム生成部の構成及びその処理動作について説明する。
【0050】
演算装置36は、すでに説明したように、内部にプロセッサ3601と、LSI3602と、光信号送受信部3608とを備えて構成されている。そして、プロセッサ3601内には、ミドルウェア36011が設けられ、LSI3602内には、システム時刻タイマ36021、ネットワーク時刻タイマ36022、ネットワーク時刻制御レジスタ36023、フレーム生成部36024が設けられている。ネットワーク時刻制御レジスタ36023には、自演算装置が、時刻マスタとなっているか、時刻スレーブとなっているかを示す情報が格納されている。フレーム生成部36024は、時刻情報生成部360241、CRC計算部360242を有して構成されている。
【0051】
次に、図10に示すフローを参照して、フレーム生成部を含む演算装置でのフレーム生成の処理動作を説明する。
【0052】
(1)時刻マスタとなっている演算装置36内のミドルウェア36011は、LSI3602内のシステム時刻タイマ36021からシステム時刻をリードして時刻情報3603を取得し、取得した時刻情報をネットワーク時刻タイマ36022へ格納する(ステップF19)。
【0053】
(2)次に、ネットワーク時刻タイマ36022の時刻情報とネットワーク時刻制御レジスタ36023内の情報とが、それぞれ、フレーム生成部36024内の時刻情報生成部360241にネットワーク時刻情報3604、時刻マスタビット情報(ここでは、時刻マスタを示している)3605として送信される。前述の時刻マスタビット情報とは、演算装置が時刻マスタであるか、時刻スレーブであるかを示す情報であり、時刻マスタビット情報(マスタ)とは、演算装置が時刻マスタであることを示し、時刻マスタビット情報(スレーブ)とは演算装置が時刻スレーブであることを示す(ステップF20)。
【0054】
(3)時刻情報生成部360241は、ネットワーク時刻情報制御レジスタ36023からの情報が時刻マスタビット情報(マスタ)3605であることを条件に、ネットワーク時刻情報3604送信フレームへ添付して時刻情報添付フレーム3606を生成し、生成したフレームをCRC計算部360242へ送信する(ステップF21)。
【0055】
(4)CRC計算部360242は、受け取った時刻情報添付フレーム3606からCRC値を計算し、時刻情報送信フレーム3607を生成する(ステップF22)。
【0056】
(5)生成された時刻情報フレーム3607はLSI3602から定周期で光信号送受信部3608及び通信路134を介して送出される(ステップF23)。
【0057】
図11は演算装置内のフレーム受信部の構成を示すブロック図、図12はフレーム受信部を含む演算装置でのフレーム受信の処理動作を説明するフローチャートであり、次に、フレーム受信部の構成及びその処理動作について説明する。なお、フレーム生成部は、全ての演算装置のそれぞれに備えられているが、フレーム受信部がフレーム受信を行うのは、時刻スレーブとなっている演算装置内のフレーム受信部のみである。
【0058】
演算装置37は、すでに説明したように、内部にプロセッサ3701と、LSI3702と、光信号送受信部3708とを備えて構成されている。そして、プロセッサ3701)内には、ミドルウェア37011が設けられ、LSI3702内には、システム時刻タイマ37021、ネットワーク時刻制御レジスタ37022、フレーム受信部37023が設けられている。ネットワーク時刻制御レジスタ37022には、自演算装置が、時刻マスタとなっているか、時刻スレーブとなっているかを示す情報が格納されている。フレーム受信部37023は、フレーム解析部370234、時刻情報受信部370231、CRC解析部370233、時刻情報格納解析部370232を有して構成されている。
【0059】
次に、図12に示すフローを参照して、フレーム受信部を含む演算装置でのフレーム受信の処理動作を説明する。
【0060】
(1)フレーム解析部370234は、光信号受信部3703で受信した時刻情報フレーム3710が送られてくると、フレーム内の時刻情報3706を時刻情報受信部370231に送信し、フレーム内のCRC情報3708をCRC解析部370233に送信し、さらに、フレーム内の時刻マスタビット情報(マスタ)3709を時刻情報格納解析部370232に送信する(ステップF23)。
【0061】
(2)ネットワーク制御レジスタ37022は、時刻マスタビット情報(スレーブ)3707を時刻格納解析部370232へ送信する。そして、時刻情報格納解析部370232はCRC情報3708が正常、かつ、時刻情報フレーム3710内の時刻マスタビット情報がマスタを示し、かつ、ネットワーク制御レジスタ37022からの時刻マスタビット情報がスレーブを示したときのみストローブ信号3705をネットワーク時刻タイマ37021に送信する(ステップF24、F25)。
【0062】
(3)時刻情報受信部370231は、ネットワーク時刻情報3704をネットワーク時刻タイマ37021へ送信するが、ネットワーク時刻タイマ37021は、ストローブ信号3705を受信したときにのみ、時刻情報受信部370231から送信されてきたネットワーク時刻情報3704を自タイマに格納する(ステップF26)。
【0063】
前述した本発明の実施形態での各処理は、プログラムにより構成し、本発明が備えるCPUに実行させることができ、また、それらのプログラムは、FD、CDROM、DVD等の記録媒体に格納して提供することができ、また、ネットワークを介してディジタル情報により提供することができる。
【符号の説明】
【0064】
8 POC
9〜10 演算装置A〜C
107〜110 通信路
12〜14 制御対象A〜C
901、1001 LSI
902、1002 プロセッサ
903、1003 光信号送受信部
9011、1011 システム時刻タイマ
9012、10012 ネットワーク時刻タイマ
9013、10013 フレーム受信部
9014、10014 フレーム生成部
9021、10021 ミドルウェア
3001 主メモリ
36023 ネットワーク時刻制御レジスタ
370231 時刻情報受信部
370232 時刻情報格納解析部
370233 CRC解析部
370234 フレーム解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の演算装置が通信路により相互に接続され、前記複数の演算装置のそれぞれに制御対象が接続されて構成されている制御システムにおいて、
前記複数の演算装置のそれぞれは、プロセッサと、システム時刻タイマと、独立した時刻同期専用のネットワーク時刻タイマと、フレーム生成手段と、フレーム受信手段とが備えられており、前記複数の演算装置の1つが時刻マスタに指定され、他の演算装置が時刻スレーブに指定され、
前記時刻マスタである演算装置のプロセッサは、一定の周期で前記システム時刻タイマの時刻を取得して前記ネットワーク時刻タイマに格納して計時を続けさせ、
前記フレーム生成手段は、前記ネットワーク時刻タイマの時刻情報を取得し、取得したネットワーク時刻タイマの時刻情報を含むフレームを生成し、生成したフレームを一定の周期で前記時刻スレーブである演算装置にブロードキャスト送信し、
前記時刻スレーブである演算装置の前記フレーム受信手段は、前記ブロードキャスト送信されてきたフレームを受信し、フレーム内の時刻情報を自演算装置内の前記ネットワーク時刻タイマに格納して計時を続けさせることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記複数の演算装置に接続されている制御対象に障害が生じた際、各演算装置のプロセッサは、主メモリ内に制御対象の障害情報を格納すると共に、前記システム時刻タイマの時刻情報と、前記時刻同期専用のネットワーク時刻タイマの時刻情報とを格納し、前記ネットワーク時刻タイマの時刻情報に基づいて、各制御対象に生じた障害を時系列に並べることを特徴とする請求項1記載の制御システム。
【請求項3】
前記時刻スレーブである演算装置の前記フレーム受信手段は、前記ブロードキャスト送信されてきたフレームを受信し、フレーム内の時刻情報を前記ネットワーク時刻タイマに格納して計時を続けさせ、
前記時刻スレーブである演算装置のプロセッサは、任意の周期で前記ネットワークタイマの時刻情報をシステム時刻タイマに格納して計時を続けさせること特徴とする請求項1記載の制御システム。
【請求項4】
前記複数の演算装置に接続されている制御対象に障害が生じた際、各演算装置のプロセッサは、主メモリ内に制御対象の障害情報を格納すると共に、前記システム時刻タイマの時刻情報を格納し、前記システム時刻タイマの時刻情報に基づいて、各制御対象に生じた障害を時系列に並べることを特徴とする請求項3記載の制御システム。
【請求項5】
複数の演算装置が通信路により相互に接続され、前記複数の演算装置のそれぞれに制御対象が接続されて構成されている制御システムにおける前記複数の演算装置の時刻同期方法において、
前記複数の演算装置のそれぞれは、プロセッサと、システム時刻タイマと、独立した時刻同期専用のネットワーク時刻タイマと、フレーム生成手段と、フレーム受信手段とが備えられており、前記複数の演算装置の1つが時刻マスタに指定され、他の演算装置が時刻スレーブに指定され、
前記時刻マスタである演算装置のプロセッサは、一定の周期で前記システム時刻タイマの時刻を取得して前記ネットワーク時刻タイマに格納して計時を続けさせ、
前記フレーム生成手段は、前記ネットワーク時刻タイマの時刻情報を取得し、取得したネットワーク時刻タイマの時刻情報を含むフレームを生成し、生成したフレームを一定の周期で前記時刻スレーブである演算装置にブロードキャスト送信し、
前記時刻スレーブである演算装置の前記フレーム受信手段は、前記ブロードキャスト送信されてきたフレームを受信し、フレーム内の時刻情報を自演算装置内の前記ネットワーク時刻タイマに格納して計時を続けさせることを特徴とする演算装置の時刻同期方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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