説明

制御弁式鉛蓄電池の製造方法

【課題】寿命性能を低下させずに、放電容量の高い制御弁式鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】本発明は、正極板と負極板とセパレータとを備える極板群が、電槽内に配された制御弁式鉛蓄電池の製造方法に関するものである。本発明の鉛蓄電池の製造方法は、正極活物質原料として、鉛粉と鉛丹化率が20質量%〜80質量%の鉛丹とを用いて正極板を作製する工程と、極板群に、9.8〜34.3kPaの圧迫力が加わるよう電槽内に配する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御弁式鉛蓄電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メンテナンス性向上のために、電槽内圧を弁により調整する制御弁式鉛蓄電池が広く用いられている。制御弁式鉛蓄電池では、電解液を保持したセパレータを挟んで正極板及び負極板が複数積層された極板群が電槽に配されている。極板群は製造時には、電解液を保持しない状態で圧迫されて電槽に納められ、極群溶接、セル間接続、蓋接着、端子溶接などの組立工程後、注液・化成工程を経て作製される。
【0003】
このような制御弁式鉛蓄電池を含め、一般的な鉛蓄電池の正極活物質に鉛丹を添加すると、正極活物質の利用率を向上させることができ、これにより、同一容量に必要な活物質の使用量を削減でき、かつ、同一の活物質量のまま放電容量の高い電池を得ることができるということが知られている。
【0004】
しかし、正極活物質に一般的な鉛丹(鉛丹化率が98質量%の高鉛丹化率鉛丹)を添加すると、活物質粒子間の結合が弱くなって、充放電の繰り返しにより活物質の軟化脱落が起こりやすくなり、早期に寿命に至るという問題があった。
この問題を解決するものとして、例えば特許文献1に記載の鉛蓄電池が提案されている。
【特許文献1】特許第2721514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明によれば、鉛蓄電池の極板群に加えられる圧迫力(以下、極群圧迫力ともいう)を高くする(例えば49.0kPa以上とする)ことで、活物質の軟化を抑制し、正極活物質原料として鉛丹が添加されている電池の寿命性能の低下を抑制することができる。
【0006】
しかしながら、極群圧迫力を高くすると、正極板と負極板との間に存在する電解液が押し出されて、セパレータに含まれる電解液が減少し、電池の放電容量が低下するので、極群圧迫力を高くしすぎると、放電容量向上効果が得られなくなるという問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、寿命性能を低下させずに、放電容量の高い制御弁式鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、本発明は、正極板と負極板とセパレータとを備える極板群が、電槽内に配された制御弁式鉛蓄電池の製造方法であって、正極活物質原料として、鉛粉と鉛丹化率が20質量%〜80質量%の鉛丹とを用いて正極板を作製する工程と、前記極板群に、9.8〜34.3kPaの圧迫力が加わるよう前記電槽内に配する工程と、を備えたことを特徴とする制御弁式鉛蓄電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の制御弁式鉛蓄電池の製造方法においては、正極活物質として鉛粉と鉛丹化率が20質量%〜80質量%の低鉛丹化率の鉛丹を用いるとともに、極群圧迫力が、9.8〜34.3kPaとされる。
したがって、本発明によれば、極群圧迫力が、特許文献1に記載の鉛蓄電池よりも低く設定されるので、セパレータに含まれる電解液の量が増え、極群圧迫力が高いものよりも放電容量が高くなる。
【0009】
ところで、極群圧迫力が低くなると、活物質の軟化脱落を抑制する効果が低下することが懸念されるが、本発明によれば、鉛丹として鉛丹化率が20〜80質量%の低鉛丹化率鉛丹を使用するから、鉛丹化率が98質量%の高鉛丹化率鉛丹を用いた鉛蓄電池と比較して、活物質粒子間の結合が強化される。そして、その結果、極群圧迫力を低く設定したことに起因する活物質の軟化脱落を抑制することができる。
以上より、本発明によれば、制御弁式鉛蓄電池の寿命性能を低下させずに、放電容量を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の製造方法により得られる制御弁式鉛蓄電池(以下、「電池」ともいう)は、正極板と負極板とセパレータとからなる極板群が加圧された状態で電槽内に配されている電池である。
本発明において、電池の正極板は、正極活物質原料として鉛粉と鉛丹とを用いて作製される。
本発明において用いられる鉛粉としては、特に限定はないが、例えば、ボールミル法で製造したものなどを用いる。
【0011】
鉛丹は通常、350〜450℃で焼成することで作製され、この焼成時の温度、時間などの条件を調整することで鉛丹化率を調整することができる。
本発明において用いられる鉛丹としては、例えば、前記のボールミル法で製造した鉛粉を420℃で所定の鉛丹化率に達するまで焼成したものを用いることができる。
本発明において用いられる鉛丹としては、寿命性能を向上させるという観点から、鉛丹化率の低い鉛丹を使用することが好ましいのであるが、放電容量とのバランスも考慮すると、鉛丹の鉛丹化率は、20質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。
【0012】
なお、本明細書において、鉛丹化率とは、鉛粉を焼成して鉛丹化した時の焼成物中のPbの割合(質量%)のことをいい、具体的には焼成物中のPbの質量を焼成物の質量で除した値に100を乗じた値で表される。
鉛丹化率すなわち、焼成物中のPbの含有量(質量%)は以下の滴定操作にて定量することができる。
まず、測定試料に酢酸−酢酸アンモニウム溶液と0.1Nのチオ硫酸ナトリウム溶液とを加えて撹拌し、完全に溶解させる。
次いで、この試料溶液に、デンプン溶液を加えて、0.1Nのヨウ素溶液を滴下して、ヨウ素デンプン反応による紫色の呈色を示した時点を終点として、溶液中に残っているチオ硫酸ナトリウムイオンを滴定する。空実験も同様に行い、滴定に使用したヨウ素溶液の量から次式を用いて、Pb含有量(質量%)を算出する。
Pb含有量(質量%)=[0.3428×(b’−b)×f]/S×100
b’:空実験で滴定時に消費したヨウ素溶液の使用量(ml)
b:試料の滴定に消費したヨウ素溶液の使用量(ml)
f:ヨウ素溶液のファクター
S:試料の量(g)
本発明において、鉛丹の添加量は、鉛粉と鉛丹の混合物からなる正極活物質原料の全質量に対して、10質量%〜30質量%のものが好ましい。鉛丹の添加量が10質量%未満であると、放電容量の向上効果が発揮されにくく、30質量%を超えると寿命性能が低下するからである。
本発明において、負極板、セパレータ、電槽としては、公知のものを使用することができる。
【0013】
次に、本発明の鉛蓄電池の製造方法を具体的に説明する。
まず、正極活物質原料として、鉛粉と鉛丹化率が20質量%〜80質量%の鉛丹とを用いて正極板を作製する。具体的には、鉛粉と鉛丹とを混合して、これを水及び硫酸で練り合わせ、正極活物質ペーストを作製し、この正極活物質ペーストを鉛合金格子に充填した後、熟成乾燥して未化成の正極板を作製する。
【0014】
次に、前記正極板と常法により作製した負極板とをセパレータを介して交互に組み合わせて極板群を作製する。次いで、極板群に、9.8〜34.3kPaの圧迫力が加わるようにして電槽内に挿入する。
極板群を加圧状態として電槽に挿入した後、極板群を溶接、セル間を接続、蓋接着し、端子溶接して組立てを完了してから、希硫酸を注液し、電槽化成することで、制御弁式鉛蓄電池が得られる。
【0015】
本発明において、極群圧迫力を、9.8〜34.3kPaに設定するのは、極群圧迫力が9.8kPa未満であると圧迫力不足により活物質の軟化脱落が抑制できず、34.3kPaを超えると、正負極板間の電解液が押し出されてセパレータに含まれる電解液が減少し、充分な放電容量が得られなくなるからである。
【0016】
<実施例>
以下、本発明を具体的に適用した実施例について説明する。
(1)鉛蓄電池用正極板の作製
鉛粉と、ボールミル法で製造した鉛粉を420℃で所定の鉛丹化率に達するまで焼成した鉛丹とを混合して正極活物質原料を調製した。
この正極活物質原料を水及び希硫酸で練合して正極活物質ペーストを作製し、これを鉛合金格子に充填した後、熟成乾燥して未化成の正極板を作製した。比較のために、鉛粉のみを使用した正極板も作製した(試験番号1、7、13、19、25の電池の正極板として使用)。
なお、正極板作製の際に使用した鉛丹の鉛丹化率、正極活物質原料(鉛粉と鉛丹との混合物)に対する鉛丹の添加量の詳細は、各実施例群中において示す。
【0017】
(2)電池の作製
(1)で作製した未化成の正極板と、常法により作製した負極板とをセパレータを介して交互に組み合わせて極板群を作製し、この極板群に所定の極群圧迫力がかかるように電槽に挿入した後、電池の組み立てを完了させ、比重1.20(20℃)の希硫酸を注液し正極活物質理論容量の250%まで充電することで化成を行い12V50Ahの制御弁式鉛蓄電池を作製した。極群圧迫力を調整する際には、必要に応じて、スペーサーを用いた。作製した電池の極群圧迫力の詳細は各実施例群中において示す。
なお、実施例群において作製した電池の極群圧迫力の算出方法は以下の通りである。
まず、乾燥状態の正極板と負極板とをセパレータを介して積層し極板群を得る。次いで前記極板群の最外部極板の両平面を極板よりも表面積が大きく平滑な板を用いて平行に挟み、その外側からプレス機を用いて極板群を挟んだ板に対して垂直に圧をかけ、極板群の厚さを挿入する電槽内寸と同じ幅となるように圧迫し、そのときの荷重を極板群の表面積で除して極群圧迫力を算出した。実施例においては、極板群を挟む板として、ABS製の樹脂板を用いたが、プレスした際にプレス圧により変形しない程度に丈夫であれば材質はこれに限定されない。極群圧迫力はkgf/dmで算出し、SI単位に換算してkPaで記載した。
【0018】
<電池性能評価試験>
上記の方法により作製した電池について、以下の手順で電池性能試験を行った。
(1)10時間率放電容量試験(容量試験)
JIS C 8704−2−1に準拠して、25℃の室温において、放電電流5.0A、放電終始電圧1.8V/セルとして、10時間率放電容量を測定した。
各電池における10時間率放電容量を、試験番号25の従来例の電池の10時間率放電容量を100とした場合の放電容量比として示した。この放電容量比が大きいほど放電容量が高いということを示す。
【0019】
(2)サイクル寿命試験(寿命試験)
電池を、25℃の室温において、放電電流0.2CAで2.5時間放電し、充電電圧2.4V/セル(最大電流値0.2CA)で8時間充電して、これを1サイクルとした。
試験の終了は10サイクルごとに放電時の端子電圧を確認し、端子電圧が1.8V/セル以下になったときとし、そのときのサイクル数を寿命サイクル数とした。この寿命サイクル数が大きいほど寿命性能が高いということを示す。
【0020】
寿命サイクル数が、試験番号55の電池の寿命サイクル数(450)よりも大きければ、寿命性能が高いと判断した。試験番号55の電池を、寿命性能の判断基準としたのは以下の理由による。
【0021】
試験番号55の電池は、電池正極活物質原料として鉛丹化率98質量%の鉛丹を20質量%混合したものを用いることで、放電容量の向上を図り、かつ、極群圧迫力を49.0kPaに設定することで、寿命性能の向上を図った特許文献1に提案されている電池である。
鉛丹無添加の試験番号25の電池(鉛丹無添加、極群圧迫力49.0kPa)よりも放電容量が高く、かつ、試験番号55の電池(98質量%の鉛丹を20質量%添加、極群圧迫力49.0kPa)よりも寿命性能が高ければ、本発明の目的を達成すると考えられる。そこで、寿命性能の評価基準を試験番号55の電池とした。
【0022】
<実施例群1>
鉛丹の鉛丹化率および極群圧迫力が放電容量および寿命性能に与える影響を調べるために、種々の鉛丹化率の鉛丹を種々の添加量で鉛粉に混合して作製した正極板を用い、極板群に種々の圧迫力をかけて電槽内に配して試験番号1〜80の12V50Ahの電池を作製し、容量試験と寿命試験とを行った。
表1〜3には、試験結果とともに、使用した鉛丹の鉛丹化率および添加量、極群圧迫力を示した。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
(1)放電容量について
(a)鉛丹の影響
極群圧迫力が同じで、正極活物質原料として鉛丹を添加したか否かの相違点のある電池間(例えば試験番号2〜6と試験番号1、試験番号8〜12と試験番号7、試験番号14〜18と試験番号13)で、放電容量比を比較した。
表1〜表3に示すように、極群圧迫力が49.0kPaの電池を除き、鉛丹化率が20質量%以上の鉛丹を添加した電池においては、鉛丹無添加の電池よりも放電容量比が高かった。
【0027】
これは、正極活物質原料として鉛丹が添加されている電池では、正極活物質の利用率を向上させることができ、これにより、活物質の使用量を削減でき、かつ、放電容量の高い電池を得られると考えられる。
【0028】
また、添加する鉛丹の鉛丹化率が高くなるに従い放電容量比は高くなったが、鉛丹化率が5質量%の鉛丹を用いた電池では、鉛丹無添加の電池と放電容量比が同じという結果が得られ、鉛丹添加による放電容量向上効果が得られなかった。
以上より、正極活物質原料として鉛丹化率が20質量%以上の鉛丹を使用すると、放電容量の高い電池を得ることができるので、好適であると考えられる。
【0029】
(b)極群圧迫力の影響
鉛丹化率と鉛丹添加量が同じで極群圧迫力が相違する電池間(例えば、試験番号3と9と15と21と27)で放電容量比を比較すると、極群圧迫力が高くなるほど放電容量比が低くなった。
【0030】
特に、極群圧迫力が49.0kPaの電池の放電容量比は、鉛丹化率98質量%の鉛丹を用いたものを除き、従来電池(試験番号25)と同じであり、放電容量向上効果が得られなかった。
【0031】
これは、鉛蓄電池の極群圧迫力が高くなると、正極板と負極板との間に存在する電解液が押し出されて、両極板間に配されているセパレータに含まれる電解液が減少するので、極群圧迫力が高くなりすぎると充分な放電容量が得られなくなるからだと考えられる。
以上より、極群圧迫力が34.3kPa以下であると、放電容量の高い電池を得ることができるので、好適であると考えられる。
【0032】
(c)まとめ
以上より、正極活物質原料として鉛丹化率20質量%以上の鉛丹が添加され、かつ、極群圧迫力が34.3kPa以下であれば放電容量の高い電池が得られるということがわかった。
【0033】
(2)寿命性能について
正極活物質原料として鉛丹化率が20質量%〜80質量%の鉛丹が添加され、かつ、極群圧迫力が9.8kPa以上の電池(試験番号9〜11、15〜17、21〜23、27〜29、37〜39、42〜44、47〜49、62〜64、67〜69、72〜74)では、寿命サイクル数が試験番号55の電池の寿命サイクル数(450)よりも大きかった。
【0034】
これは、鉛丹化率が20〜80質量%の鉛丹の使用により、98重量%の鉛丹の鉛蓄電池よりも活物質粒子間の結合が強化されたので、極群圧迫力を小さくすることに起因する活物質の軟化脱落を抑制できたからではないかと考えられる。
なお、極群圧迫力が9.8kPa未満の電池(試験番号1〜6、31〜35、56〜60)では、極群圧迫力が低すぎて、活物質の軟化脱落を抑制できなかったと考えられる。
【0035】
(3)(1)および(2)より、鉛丹化率が20〜80質量%の鉛丹を正極活物質原料として添加し、極群圧迫力が9.8〜34.3kPaの本発明の電池(試験番号9〜11、15〜17、21〜23、37〜39、42〜44、47〜49、62〜64、67〜69、72〜74)によれば、制御弁式鉛蓄電池の寿命性能を低下させずに、放電容量を向上させることができる。
【0036】
<実施例群2>
鉛粉に混合する鉛丹の添加量について検討するために、種々の鉛丹化率の鉛丹を種々の添加量で添加して作製した正極板を備える電池を作製してその性能を比較した。本実施例群では、表4〜6に示す試験番号81〜98の電池を新たに作製した。
これらの電池(試験番号81〜98)について容量試験と寿命試験とを行った。
【0037】
表4〜6には、試験結果とともに、使用した鉛丹の鉛丹化率および添加量、極群圧迫力を示した。また、表4〜6には、実施例群1で行った試験番号7、9〜11、13、15〜17、19、21〜23、37〜39、42〜44、47〜49、62〜64、67〜69、72〜74の電池の試験結果も併せて示した。
【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
(1)放電容量について
表4〜6に示すように、どの鉛丹化率の鉛丹を用いた場合でも、鉛丹の添加量が増えるに従い放電容量比が高くなった。
特に、極群圧迫力が同じ電池間で、鉛丹添加量が10質量%以上の電池と鉛丹無添加の電池とを比較すると(例えば、試験番号9、37、62または82の電池と試験番号7の電池)、試験番号15と試験番号42の電池を除いて、放電容量比の差は2以上であり、鉛丹添加による顕著な放電容量向上効果が確認された。
【0042】
一方、極群圧迫力が同じ電池間で、鉛丹添加量5質量%の電池と、鉛丹無添加の電池とを比較すると(例えば試験番号81の電池と試験番号7の電池)、放電容量比の差が0か1であった。このことから、鉛丹の添加量が5質量%では、鉛丹添加による放電容量向上効果が充分に発揮できないと考えられる。
以上より、本発明においては、鉛丹の添加量は10質量%以上であることが好ましいと考えられる。
【0043】
(2)寿命性能について
表4〜6に示すように、本発明の電池(試験番号9〜11、15〜17、21〜23、37〜39、42〜44、47〜49、62〜64、67〜69、72〜74、81〜98)の寿命サイクル数は、試験番号55の電池(寿命サイクル数450)よりも大きかった。
【0044】
これらのうち、鉛丹を10質量%〜30質量%添加した電池(試験番号9〜11、15〜17、21〜23、37〜39、42〜44、47〜49、62〜64、67〜69、72〜74)では、寿命サイクル数が500以上であり、特に良好な結果が得られた。
以上より、本発明においては、鉛丹の添加量は10質量%以上30質量%以下であることが好ましいと考えられる。
【0045】
(3)まとめ
以上より、本発明において、正極活物質原料中の鉛丹の添加量は、10質量%以上、30質量%以下であると、放電容量が高く、かつ、寿命性能に優れた電池が得られて、好ましい。
【0046】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例群においては、混合する鉛丹として鉛丹化率が5、20、50、80、98質量%のものを用い、鉛丹添加量が5、10、20、30、40質量%となるように鉛粉に添加したが、鉛丹の鉛丹化率は40質量%、60質量%、70質量%のものであってもよいし鉛丹添加量は15質量%、25質量%などであってもよい。
【0047】
(2)上記実施例群においては極群圧迫力を、4.9kPa、9.8kPa、24.5kPa、34.3kPa、49.0kPaに設定した電池を示したが、極群圧迫力を19.6kPa、29.4kPaに設定したものなどであってもよい。
【0048】
(3)上記実施形態において、鉛丹としては、ボールミル法で製造した鉛粉を420℃で所定の鉛丹化率に達するまで焼成したものを用いたが、バートン法など他の方法で製造した鉛粉を焼成したものであってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とセパレータとを備える極板群が、電槽内に配された制御弁式鉛蓄電池の製造方法であって、
正極活物質原料として、鉛粉と鉛丹化率が20質量%〜80質量%の鉛丹とを用いて正極板を作製する工程と、
前記極板群に、9.8〜34.3kPaの圧迫力が加わるよう前記電槽内に配する工程と、
を備えたことを特徴とする制御弁式鉛蓄電池の製造方法。
【請求項2】
前記鉛丹の添加量が、前記正極活物質原料全体に対して10質量%〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載の制御弁式鉛蓄電池の製造方法。

【公開番号】特開2009−123433(P2009−123433A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294514(P2007−294514)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】