説明

制御放出分配デバイス

「超圧縮」されて制御放出分配デバイスを形成するミクロ粒子またはナノ粒子の形で治療薬と組み合わされたポリマーを含む分配デバイス、および前記ミクロ粒子を使用して治療薬を局所投与する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御放出移植可能薬物送達デバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
治療に関わる大きな問題の1つは、様々な状態の治療を複雑にする薬剤の毒性および/または副作用を含む。全身投与投薬は、治療薬の治療目的を考慮すると望ましくない影響をもたらす傾向がある。病変が身体内の特定の部分または器官のみに影響を与える場合は、治療薬をその特定の部分または器官にのみ投与することが望ましい。先行技術において、放射性薬剤を治療すべき器官に、放射線がその器官に実質的に閉じ込められるように移植することによって局所的放射線治療を提供することが知られている。
【0003】
商業的使用のために開発された眼科用挿入物の形の2つの持続送達システムは、Ocusertシステム(Akom)およびLacrisert(登録商標)(Aton)である。Ocusertデバイスは、患者による高頻度の投与の排除を可能にし、夜間の投薬を保証し、患者のコンプライアンスのより良好な手段を提供する所定の速度および予測可能な速度の薬剤の放出を提供するように設計されている。挿入物は、寸法が13.4×4.7mmで厚さが0.3mmの楕円形である。挿入物は軟質であり、薬物が一定の速度で拡散するコポリマー膜の層によって各面が包囲された薬物含有コアからなる多層構造体である。薬物拡散速度は、ポリマー組成、膜厚および薬物の溶解度によって制御される。デバイスは、無菌であり、防腐剤を含まない。ピロカルピンを含むOcusert挿入物は、緑内障治療に使用されてきた。結膜円蓋内に配置後、挿入物は、7日間にわたって薬剤を所望の速度で放出し、その後それらは除去されて新たな挿入物と交換されるように設計されている。
【0004】
Lacrisert(登録商標)挿入物は、無菌で半透明の棒状の水溶性の形態のヒドロキシプロピルセルロースである。その製品は、眼乾燥状態の患者の眼の下部盲嚢に挿入される。挿入物は、前角膜涙膜を安定化および造粘させ、その破断を遅らせるように作用する。挿入物は、一般には、1日1回または2回の頻度で目に入れられる。投与後に、挿入物は軟化し、徐々に溶解する。
【0005】
以下の米国特許には、医薬治療のための様々な眼挿入物が開示されている。Merk&Company,Inc.に所属するJ.V.Bondiらの米国特許第4,730,013号には、75%から100%の15%ポリビニルアルコール、10%グリセリン、75%ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートのマトリックスおよび0〜25%の薬理学的活性薬を含む、医薬的活性薬を有する、または有さない眼挿入物が開示されている。米国特許第5,637,085号には、固形癌腫の治療のための移植可能ウェハの製造が記載されている。
【0006】
Andreas Fuchsら(Merck GmbH)らの米国特許第4,522,829号には、1−(p−2−イソ−プロポキシエトキシメチル−フェニル)−3−イソプロピルアミノ−プロパン−2−オールまたはその生理学的に許容される塩および眼科的に許容される担体の眼内圧低減膜挿入物が開示されている。
【0007】
Robert M.Gale(Alza Corp.)の米国特許第4,432,964号には、2つの局所的に許容される異なる化学治療薬形態のベータメタソンまたは誘導体および生体浸食性ポリマーポリオルトエステル担体からなる一対の微粉化ステロイドで構成される、炎症を治療するための眼挿入物が開示されている。
【0008】
Edward E.Schmitt(Alza Corp.)の米国特許第4,346,709号には、ポリ(オルトエステル)またはポリ(オルトカーボネート)を含む、薬物を使用環境に送達するための浸食性デバイスが開示されている。
【0009】
Robert M.Galeらの米国特許第4,303,637号には、薬物が、ポリ(オレフィン)、ポリ(ビニルオレフィン)、ポリ(ハロオレフィン)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニル)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(オキシド)、ポリ(エステル)、ポリ(アミド)およびポリ(カーボネート)からなる群から選択されるポリマーによって包囲されたポリマー中ベータ遮断薬で構成される眼挿入物が開示されている。
【0010】
米国特許第4,190,642号(Alza Corp.)には、環境からの液体が、壁を介してデポー剤に吸収されて、連続的に溶質を溶解させ、製剤を放出する、ピロカルピン溶質およびエピネフリン溶質の分離デポー剤で構成される眼挿入物、挿入物を形成するエチレン−ビニルエステルコポリマーの膜が開示されている。
【0011】
Nam S.Choi(Alza Corp.)の米国特許第4,093,709号には、オルトエステルおよびオルトカーボネートポリマーで構成される眼挿入物が開示されている。
【0012】
1976年11月23日に発行されたTakeru Higuchiらの米国特許第3,993,071号には、薬剤をマイクロカプセル化し、マイクロカプセルを薬物放出速度制御材料に分散させることもできる、8時間から30日間にわたる眼への薬物の制御投与のための生体浸食性眼挿入物が開示されている。
【0013】
Takeru Higuchiら(Alza Corp.)の米国特許第3,981,303号には、薬物が薬物放出速度制御材料を通過する速度より高速で薬物の通路に浸透可能な生体浸食性マトリックス全体に分布した、薬物放出速度制御材料内に閉じ込められた薬剤を含む複数のマイクロカプセルレザバーで構成される眼に対する薬物の連続制御投与のための眼挿入物であって、該デバイスが、眼の嚢への挿入および保持に適応する初期形状およびサイズを有する眼挿入物が開示されている。疎水性材料をコレステロール、蝋、C10からC20脂肪酸およびポリエステルから選択することができ、薬物をエピネフリン、ピロカルピン、ヒドロコルチソン、イドクスリジン、テトラシクリン、ポリミキシン、ゲンタマイシン、ネオマイシンおよびデキサメタソンから選択することができる。
【0014】
Takeru Higuchiら(Alza Corp.)の米国特許第3,960,150号には、薬物を含む疎水性の生体浸食性薬物放出速度制御材料の本体で構成される眼に対する薬物の連続制御投与のための眼挿入物であって、本体が眼の嚢への挿入に適応する初期形状を有し、薬物放出速度制御材料がポリエステルであってもよく、薬物をエピネフリン、ピロカルピン、ヒドロコルチソン、イドクスリジン、テトラシクリン、ポリミキシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、デキサメタソンおよび誘導体から選択することができる眼挿入物が開示されている。
【0015】
1974年5月21日に発行された、Alza Corp.に属するRichard W.Bakerらの米国特許第3,811,444号には、経時的に浸食して所望量の薬物を分配する選択された疎水性ポリカルボン酸の本体を通じて分散された薬剤を含む眼に対する薬物の連続制御投与のための眼挿入物が開示されている。ポリカルボン酸は、マレイン酸、アクリル酸、約4個から約6個の炭素原子の低級アルキルアクリル酸の群からの酸と、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレンおよびスチレンからなる群から選択される共重合性オレフィン不飽和材料ならびに低級アルキルビニルエーテルとのコポリマーであり得る。1971年12月28日に発行されたAlza Corporationに属するTakeru Higuchiの米国特許第3,630,200号には、眼球の強膜と眼瞼との間の結膜の盲嚢に挿入される薬物分配眼挿入物であって、内部コアが薬物を含み、軟質の親水性外層によって包囲され、外層がアルキル酸またはメタクリル酸のエステルのヒドロゲル、変性コラーゲン、架橋親水性ポリエーテルゲル、架橋ポリビニルアルコール、ならびに架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニルおよびセルロースゲルからなる群から選択されるポリマーで構成され得る薬物分配眼挿入物が開示されている。内部コアは、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、非可塑化軟質ナイロン、シリコーンゴム、ポリエチレン、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルの親水性ヒドロゲル、変性コラーゲン、架橋親水性ポリエーテルゲル、架橋ポリビニルアルコール、架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニル、セルロースゲル、イオン交換樹脂および可塑化ポリエチレンテレフタレートからなる群から選択されるポリマーであってもよい。
【0016】
Richard A.Mess(Alza Corporation)の米国特許第3,618,604号には、眼の盲嚢への挿入に適応した薬物分配眼挿入物であって、軟質ポリマー材料内の薬剤のレザバーを含む錠剤であり、ポリマー材料が、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、非可塑化軟質ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、シリコンゴム、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルの親水性ヒドロゲル、変性コラーゲン、架橋親水性ポリエーテルゲル、架橋ポリビニルアルコールおよび架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニルで構成される薬物分配眼挿入物が開示されている。
【0017】
Higuchiらの米国特許第3,993,071号;米国特許第3,986,510号;米国特許第3,981,303号、米国特許第3,960,150号および米国特許第3,995,635号には、アルギン酸亜鉛、ポリ(乳酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水物)およびポリ(グリコール酸)から製造された生分解性眼挿入物が開示されている。
【0018】
眼挿入物のためのマトリックス材料としての薬物充填ポリ無水物(無水物がポリマーの主鎖である)の使用が多くの特許に開示されている。概して、米国特許第5,270,419号;米国特許第5,240,963号;および米国特許第5,137,728号を参照されたい。物質の制御送達のためのポリ無水物の使用が記載されている他の米国特許としては、芳香族末端および脂肪族末端を有するジカルボン酸を重合することによって製造された、脂肪族残基および芳香族残基が鎖に均一に分布するポリ無水物について記載しているDombおよびLangerの米国特許第4,857,311号、名称「Polyanhydrides with Improved Hydrolytic Degradation Properties」;制御送達デバイスに使用される、生物活性化合物と組み合わせた高分子量ポリ無水物の製造について記載しているLanger、Domb、LaurencinおよびMathiowitzの米国特許第4,888,176号、名称「Controlled Drug Delivery High Molecular Weight Polyanhydride」;および芳香族および脂肪族二酸の非常に高純度の無水物コポリマーの製造について記載しているDombおよびLangerの米国特許第4,789,724号、名称「Preparation of Anhydride Copolymers」が挙げられる。
【0019】
米国特許第5,075,104号には、眼乾燥症候群の治療のための眼科用カルボキシビニルポリマーゲルが開示されている。
【0020】
米国特許第4,407,792号には、ゲル形成量のエチレン−無水マレイン酸ポリマーを含む水性ゲルが開示されている。
【0021】
米国特許第4,248,855号には、なかでも眼挿入物として使用される、ピロカルピンと酸基を含有するポリマーとの塩が開示されている。
【0022】
米国特許第4,180,064号および米国特許第4,014,987号には、薬物送達デバイスとしてのポリ(カルボン酸)またはそれらの部分エステル化誘導体の使用が開示されている。国際出願第PCT/US90/07652号には、カルボン酸基を含む生物活性化合物を、分子の特性を改良する担体分子の無水物の形で送達できることが開示されている。米国特許第5,322,691号には、12トンまでの圧力でポリマーから眼挿入物を含む薬物を形成するための圧力の使用が開示されている。挿入物は、薬物粉末とポリマーとを混合してから、混合物を圧縮することによって製造される。ミクロ球体およびポリマーに圧力を加えて分配デバイスを形成することに触れられていない。
【0023】
これらの特許には多くの種類の眼挿入物が開示されているが、治療薬の局所送達のための改良された送達のための特性を有する新規の剤形を提供する必要性が依然として存在する。特に、眼および身体の他の部位に対する、長時間作用する治療薬の局所送達を提供する分配デバイスを提供する必要性が存在する。
【0024】
それらの製剤は、ポリマー担体および活性薬のマトリックスを含み、マトリックスは、治療薬のミクロまたはナノ粒子をポリマーと組み合わせて圧縮することによって作製される。マトリックスは、それが病的状態を治療または予防するための治療薬を利用可能にする部位またはその付近に配置される。好ましいポリマーマトリックスは、安定性、強度、柔軟性、低沸点、分散性および好適な分解プロファイルの特性を兼ね備える。マトリックスは、構造的完全性を低下させることなく、眼、膵臓、肝臓、副腎、結腸などの水性環境で処理および配置できるように、好適な時間にわたってその完全性を保持しなければならない。それは、また、構造的完全性を低下させることなく貯蔵および出荷するのに十分な安定性を有するべきである。マトリックスは、治療薬を放出する位置に配置された直後に崩壊してその構成粒子になるように設計される。ポリフェプロサン頭蓋内インプラントウェハ中カルムスチンで構成されたグリアデルインプラントウェハ(N.AmerのEisai Corp.)は、癌の化学治療薬のカルムスチン(BCNU)を含む生体適合性ポリマーで構成された白色の10セント硬貨の大きさのウェハである。神経外科医がハイグレードの悪性膠腫を除去した後に、腫瘍が存在していた空洞に8つまでのウェハを移植することができる。移植されると、グリアデルは徐々に溶解し、高濃度のBCNUを腫瘍部位に放出する。グリアデルの特異性は、身体の他の部分への薬物の曝露を最小限に抑えることである。薬物充填生分解性ミクロ球体に基づく他の最近の製品が製薬市場に登場した。リュープロンデポット(Abbott Laboratories)、トレルスターデポット(Watson Pharmaceuticals)およびリスペルダルコンスタ(Ortho−McNeil−Janssen Pharmaceuticals)などの薬物は、デポー剤での注射可能非経口薬物送達(IMまたはSC)を提供する。標的局所療法は、フルオシノロンアセトニドを眼の後方部に連続的に送達する無菌の非生分解性インプラントであるBausch&LombのRetisert(登録商標)を含む。
【0025】
米国特許第5,019,400号には、ポリマー−生物活性薬混合物を凍結させて、生物活性および材料の保持率が非常に高いポリマーミクロ球体にするために極低温を使用してミクロ球体を製造するための方法が開示されている。
【0026】
米国特許第6,183,781号には、(1)機械的粉砕によって製造された、低温で予め分散されたタンパク質結晶を含むポリマーマトリックス断片、または(2)ポリマー溶液に低温でタンパク質結晶を懸濁させ、それらにポリマーの層をコーティングすることによって製造されたマイクロカプセルの圧縮によって製造される移植可能ウェハを作製するための方法が開示されている。低温で鋳造されたポリマー−タンパク質結晶板を機械的に粉砕することによって[ポリマー/タンパク質結晶]断片を製造した実質的な結果は、ポリマー断片と、破砕タンパク質結晶と、ポリマー断片に(全面的または部分的に)取り込まれたタンパク質結晶との極めて不均質な混合物の形成である。記載されているマイクロカプセル形成方法は、タンパク質結晶にポリマーの層をコーティングすることに類似する、個々のタンパク質結晶またはタンパク質結晶群のカプセル化の後に圧縮する方法である。いずれの場合も、薬物がナノ球体またはミクロ球体マトリックス内部に均一に分散/分布されたミクロ球体またはナノ球体を調製するために薬物をポリマー溶液に同時溶解していなかった。
【0027】
米国特許第7,462,366号には、主として大きな孔を有するレザバー領域および計量領域を含む薬物送達粒子を製造するための方法が開示されている。粒子は、高度に球形であり得る。
【0028】
長時間作用する治療薬の製剤の局所送達を提供する分配デバイスの満たされていない重要な必要性が残っている。出願人は、ポリマー担体および活性薬のマトリックスを含む製剤であって、マトリックスが、改良型高圧縮装置および/またはダイにより、治療薬のミクロまたはナノ粒子をポリマーと組み合わせて超圧縮することによって作製される製剤を考案した。マトリックスは、それが実質的に局所的な効果をもたらすための吸収に利用可能になる身体の部位に配置される。好ましいポリマーマトリックスは、安定性、強度、柔軟性、低沸点、分散性および好適な分解プロファイルの特性を兼ね備える。マトリックスは、構造的完全性を低下させることなく、水性環境で処理および配置できるように、好適な時間にわたってその完全性を保持しなければならない。それは、また、構造的完全性を低下させることなく貯蔵および出荷するのに十分な安定性を有するべきである。マトリックスは、治療薬を、それが治療目的に利用可能になる部分に放出する位置に配置された直後に崩壊してその構成粒子になるように設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】米国特許第4,730,013号
【特許文献2】米国特許第5,637,085号
【特許文献3】米国特許第4,522,829号
【特許文献4】米国特許第4,432,964号
【特許文献5】米国特許第4,346,709号
【特許文献6】米国特許第4,303,637号
【特許文献7】米国特許第4,190,642号
【特許文献8】米国特許第4,093,709号
【特許文献9】米国特許第3,993,071号
【特許文献10】米国特許第3,981,303号
【特許文献11】米国特許第3,960,150号
【特許文献12】米国特許第3,811,444号
【特許文献13】米国特許第3,630,200号
【特許文献14】米国特許第3,618,604号
【特許文献15】米国特許第3,986,510号
【特許文献16】米国特許第3,995,635号
【特許文献17】米国特許第5,270,419号
【特許文献18】米国特許第5,240,963号
【特許文献19】米国特許第5,137,728号
【特許文献20】米国特許第4,857,311号
【特許文献21】米国特許第4,888,176号
【特許文献22】米国特許第4,789,724号
【特許文献23】米国特許第5,075,104号
【特許文献24】米国特許第4,407,792号
【特許文献25】米国特許第4,248,855号
【特許文献26】米国特許第4,180,064号
【特許文献27】米国特許第4,014,987号
【特許文献28】国際出願第PCT/US90/07652号
【特許文献29】米国特許第5,322,691号
【特許文献30】米国特許第5,019,400号
【特許文献31】米国特許第6,183,781号
【特許文献32】米国特許第7,462,366号
【特許文献33】米国特許第5,236,355号
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】Murakami H.ら、J.of Controlled Release、第67巻、#1、2000年6月15日、29〜36頁
【非特許文献2】Gaumetら、Localization and quantification of biodegradable particles in an intestinal cell model:the influence of particle size.Gaumet M、Gurny R、Delie F.Eur J Pharm Sci.、2009年3月2日;36(4−5):465−73.Epub、2008年12月11日
【非特許文献3】Gratton SEA、DeSimone JMら、Proc of the Nat Acad of Sci 2008
【非特許文献4】Mitragoti Sら、Proc Nat Acad of Sci 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
薬理剤の持続送達のための小粒径粒子、すなわちミクロ粒子またはナノ粒子を調製する上で最も重要な目的は、指定の時間にわたって(活性)薬理物質を連続的に放出するための制御された方法である。ミクロ粒子またはナノ粒子の粒径に応じて、PLGA(ポリD,L−乳酸−co−グリコール酸)などの生体適合性の生分解性ポリマーマトリックス材料を選択することによりゼロ次放出プロファイルを得ることができることが知られている。ポリマーブロック比および分子量を変化させて、薬物の拡散速度およびポリマーの分解速度を変化させることによって、PLGAの特性を必要な送達時間に合わせて調整することができる。「典型的な」圧縮力(例えば37,000psi)の下に配置された充填PLGA粒子は、粒子に対する形状または表面形態の変化を示さなかったことも確認された。また、ナノ粒子含有量に対してミクロ粒子の濃度が高いほど、ミクロ粒子を有する薬物の放出速度が小さかったことが確認された。また、ナノ粒子の含有量を大きくして製造されたマトリックス錠剤からの薬物放出は、即時放出、次いで無放出、次いでさらなる薬物放出という二相パターンを示したことが確認された(Murakami H.ら、J.of Controlled Release、第67巻、#1、2000年6月15日、29〜36頁)。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、小粒径のミクロおよびナノ粒子(1nmから50ミクロン)に対する「超圧縮」力を利用して、非超圧縮粒子によって示されない薬物放出プロファイルを変化させる。これは、ミクロ粒子が100%でさえある担体を利用し、粒子そのものの形態を変化させて、薬物放出の時間を増大させることを含む。超圧縮ならびにポリマーの選択は、放出動態に影響を与える。また、本発明は、小粒子の超圧縮を利用して粒径を最小限にし、単位容積当たりの薬物濃度を増加させる。粒子形状の変化を含むこれらの特性変化のすべてが、二相パターンを有さない長時間にわたって制御され、一貫した薬物放出をもたらす。
【0033】
ユニットは、剤形を形成する十分な力を提供するデバイスを使用して高圧によって圧縮される。超圧縮力を受容するように改造された工具を備えた高能力カーバープレスおよび/またはMTS661シリーズ高能力フォーストランスデューサなどの当該装置の例は、ゼロ張力/圧縮の周期的動作および単調な試験用途に向けて特別に設計され、最大で55000から1100000lb(250から5000kN)のレベルで張力および圧縮力を測定するのに利用可能である。661.2シリーズフォーストランスデューサは、それを適正なロードセルに連結することにより超圧縮送達システムを製造するように構成され、圧縮を実施する際に配備された。MTS試験装置の動作は、コンピュータによって制御され、圧縮のために500kNまでの圧力を加えて、皮膚の下、例えば皮下もしくは筋肉内、または特定の体器官もしくは構造体の組織内に移植または注射し、吸入し、経口摂取し、またはそれが局所的な吸収のために薬物を連続的に送達する皮膚の上に配置するための所望の形に成形された圧縮ユニットを得ることが可能であった。
【0034】
本発明は、また、治療薬を投与する方法であって、(a)ポリマーを薬剤と組み合わせて含む剤形をミクロ粒子またはナノ粒子の形で形成する工程と、(b)ミクロ粒子またはナノ粒子を超圧縮して、制御放出分配ユニットを形成する工程と、(c)その後治療薬による病的状態の局所治療を必要とする身体の部位に前記分配ユニットを移植または注射する工程とを含む方法を含む。
【0035】
本発明は、また、抗生物質、タンパク質および他の大分子を含む治療薬を吸入により投与する方法を含む。本発明を、固体として投与され得る任意の医薬と同様に使用することができるが、それは、合成的に誘導された有機化合物などの小分子の投与に特に有用である。肺経路を介する全身薬物投与に本発明を使用する利点は、広く使用されているネブライザ、計量投与吸入器(MDI)および乾燥粉末吸入器(DPI)を送達の手段として利用することによる。また、吸入および後の肺への吸収は、経口送達法と比較してより迅速な作用の発生を可能にし、胃腸管における初回通過代謝の可能性を回避する。また、肺は、大きな表面積および迅速な吸収を与えるため、糖尿病などの慢性病、および禁煙のための治療薬としてのニコチンの吸入を含めて長期間にわたる高頻度の薬物投与を必要とする難治性の状態を治療するための全身薬物療法の肺送達のために本発明を使用する上で優れた入口になる。他の分野は、癌痛、骨粗鬆症、偏頭痛、性的機能不全、免疫抑制、早発射精、成長ホルモン欠乏症、神経機能障害および癌に対する吸入モルホリンまたはフェンタニルなどの疼痛管理のための薬剤を含む。
【0036】
さらなる利点は、呼吸器疾患の局所治療に本発明を使用することである。これは、嚢胞性線維症および気管支拡張症を含む重度の気管支疾患に伴う感染症の持続送達治療に本発明を利用することを含む。これは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の局所治療のためのシプロフロキサシンなどの抗菌薬の使用を含む。他の治療薬は、抗喘息薬または抗肺動脈高血圧症薬を含む。本発明は、より低頻度の投与、より低い薬物濃度、微生物抵抗性を回避するためのより低い全身血液レベル、全身副作用の軽減または除去、およびより高いコンプライアンスを可能にする。
【0037】
本発明の別の利点は、選り抜きの吸入経路になる可能性がますます大きくなるDPIとのその使用である。すなわちa)推進剤の環境的および他の問題を回避することによって、b)DPIは、使用が簡単であり、c)他のデバイスより投与量の範囲が広く、d)脆弱な分子を調合する場合に利点を提供する。
【0038】
本発明の別の利点は、単位粒径当たりの密度が有意に高く、それは、特に理想的な吸入可能粒径が5ミクロン未満である場合に、非常に微細な低密度粉末に影響を与える接着および凝集力に対するより大きな抵抗によってその流動特性および分散性を向上させる。比較すると、本発明の粒子の5ミクロンの粒子の密度は、接着力が有意に弱い、粒径が7ミクロンを超える非超圧縮粒子と同等である。
【0039】
本発明のさらなる利点は、凝集力の強い微粒子に伴う固有の問題、すなわちカプセル充填および計量時の不十分な粉末流動性、枯渇、粉末安定性の強化、および脱凝集化に伴う問題に起因する不十分なエアロゾル化挙動を改善するためにDPI製剤に添加されるラクトンなどの大粒径賦形剤担体または増量剤の必要性が小さいことである。この用途に対して承認された賦形剤の選択は限定され、ラクトースが最も広く使用される。これは、いくつかの大きな問題の原因となる。1)効果は、呼吸息が、肺への吸入のために活性薬を担体から分離するための十分なエネルギーを有することに依存する。これは臨界的均衡であり、COPDに罹っている患者にとって問題であり得る。2)特に比較的高投与量の用途、または担体と活性成分との化学的相互作用が存在する用途、あるいは担体不耐性、特にラクトースに問題がある患者については担体のない製剤の開発が重要である。
【0040】
この小さな粒径では、毛管力、ファンデルワールス力および静電力がいずれも重要であり、最も「一般的な」乾燥条件下ではファンデルワールス力が支配的である。したがって、DPIシステム内では、薬物粒子間の凝集力、デバイスと薬物との間および担体/賦形剤と薬物との間の接着力を注視することが重要である。その結果、DPI製剤の流動特性を向上させるために比較的大きな粒径の担体がしばしば使用される。
【0041】
本発明は、また、経皮および表皮内送達を通じて治療薬を投与する方法であって、(a)ポリマーを薬剤と組み合わせて含む剤形をナノ粒子またはミクロ粒子の形で形成する工程と、(b)ミクロ粒子またはナノ粒子を超圧縮して制御放出分配ユニットを形成する工程と、(c)その後病的状態の局所皮膚治療または全身治療を必要とする身体における活性成分の長時間放出の経皮貼付剤に分配ユニットまたは改造分配ユニットを導入する工程とを含む方法を含む。経皮または表皮内吸収は、真皮を通り、望まれる場合は毛管網に入る活性薬の濃度勾配に起因する経時的な活性薬の拡散を通じて生じる。
【0042】
本発明は、また、活性薬を皮膚へ、または皮膚を介して全身循環へ送達するための非侵襲的または最小侵襲的な容易に使用される方法を提供する経皮送達方法を含む。それは、コンプライアンスの問題を回避するのに役立ち、肝臓による部分的な初回通過不活性化、ならびに多くの経口薬に共通の胃腸管に対する刺激を排除する。
【0043】
現在著名な経皮製品の例としては、喫煙の抑制のために16時間にわたってニコチンを放出するニコチン貼付剤、3日間まで運動病を防ぐスコポラミン貼付剤、72時間まで痛みを軽減させるフェンタニル貼付剤、および1週間に1回のエストロゲン/プロゲスチン避妊貼付剤が挙げられる。
【0044】
本発明を使用するさらなる利点は、表面皮膚保護層、すなわち角質層を通じての吸収を高めるその能力である。角質層は、身体のほとんどの部分にわたって約10ミクロンの深さの角質化表面からなる。一般に、経皮貼付剤は、薬物投与において、全身分布のために角質を貫通して下位組織および血管に接触することが可能な分子に限定されてきた。当該分子としては、ホルモン、および低投与量で有効であるニコチンまたはフェンタニルなどの他の低分子量親油性分子が挙げられる。添付剤形における最大の日投与量は、ニコチンの日投与量である(21ミリグラム)。
【0045】
貼付剤塗布システム上に統合されると、皮膚内に送り込まれてAPIを全身循環に送達することができるポリカーボネートの鋭い微小構造に活性薬剤をコーティングする技術(3M)も存在する。1つの利点は、突発的な針の突き刺しが制限されることである。
【0046】
本発明の利点は、微小構造それ自体が、その粒径および形状がAPIの皮膚への拡散の増強を可能にする超圧縮ナノ粒子で形成されることである。したがって、超圧縮マイクロカプセル製剤におけるニコチンなどの活性薬の投与製剤は、最初に100mgのニコチンを900mgのポリ(dl−ラクチド)ポリマー(PLA、(1.0gポリマー溶液の流動時間を評価することによってUbbelholde粘度計で測定された)固有粘度0.66〜0.80dl/g)とともに25℃で50mlのクロロホルムに同時溶解させることによって調製される。ニコチン/PLA溶液は、200mlの4%ポリビニルアルコール(30Kから70K MW)溶液中に分散される。ニコチン/PLA/クロロホルム溶液は、4℃に維持されながら、(プローブ超音波処理器を用いて)音波処理によってPVA溶液に分散される。ナノエマルジョンは、15分間の音波処理後に製造される。このナノエマルジョンは、クロロホルムを蒸発させるために終夜700RPMで回転するインペラによって撹拌される。形成されたナノ球体は、粒径が500ナノメートル未満であり、高速遠心によって回収され、3回洗浄され、凍結乾燥される。これらのナノ球体は、易流動性粉末状バルク材料をも形成し、超圧縮されてペレットを形成し得る。局所および全身送達では、250mgのミクロ球体を、例えば、上方および下方を向く平坦部を有する7.87mm径のステンレス鋼鋳型内に配置し、200000psiの超圧縮力を使用して、25mgまでのニコチンを含む分配デバイスを形成する。制御放出分配デバイスユニットは、必要に応じて、かつ圧縮鋳型の改造により任意のサイズまたは形状を有することができる。
【0047】
本発明を使用するさらなる利点は、必要性があれば、角質層を介して全身吸収を向上させるその能力である。本発明は、分配デバイスの本体から伸びる鋭い「薬物送達微孔」を一面に形成する下方の鋳型に形成される経皮分配デバイスを含む。上方および下方ステンレス鋼鋳型は、本発明の超圧縮粒子を製造するために記載される鋳型(以下の実施例1参照)に類似し、ダイまたはドリルによって形成され、底部鋳型の下面または上面を通じてランダムまたは系統的なパターンで中空溝または「穴」が設けられている。溝または穴は、形がピラミッド状または円錐状であり、その下端または上端の内径が0.1〜0.5mmの範囲であり、尖端点に向かって狭くなり、解剖学的要件に応じて0.05mmから1.0mmの長さの27〜33ゲージ針に類似した寸法を有する。溝は寸法および必要に応じて0.25〜5mm離れ得るため、10mm×10mmの制御放出分配ユニットは、必要な濃度に応じて100個以上の当該チャネルをその中に配置することができる。ポリマーおよび活性薬が超圧縮条件下で圧縮されると、上方の平面鋳型が、下方の「溝付き」鋳型に粒子を送り込むか、または押し込むことで、薬物が装填されたピラミッド状または円錐状の「薬物送達微孔」成形尖頭延長部で構成される制御放出分配ユニットが得られる。「微孔」という用語は、角質層を貫通または「穿孔」することが可能な、一点で終端する超圧縮円錐状剤形を記述するために使用される。「微孔」の目的は、活性薬が角質層を介して皮間組織に到達し、全身循環のために血管により確実に到達するのを支援することである。「微孔」は、「破壊」するように設計することも可能であり、皮膚の下に残留して、数週間または数カ月間にわたって活性薬を真皮内に持続的に送達する。施用後数分以内に貼付剤を除去することができる。
【0048】
微孔改造型制御放出分配ユニット
本発明のさらなる利点は、制御放出分配ユニットを、「孔」の側が皮膚側を向くように貼付剤の接着層に直接配置することである。典型的なパッチの構造は、皮膚の方に向かって以下のようになる。
指圧が加えられるフィルム裏打ち軟質皮膚調パケットカバー;
薬物/接着層は、接着層上に「微孔」分配ユニットを含む。
保護ライナー−患者によって除去される
皮膚
【0049】
貼付剤は、ポリエチレンフィルム、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVA)またはポリウレタンフィルムで構成される表層不透過性裏材、貼付剤を皮膚上の所定位置に保持し、送達システムを含む接着剤、一般にはポリイソブチレンまたは他の当該化学物質とのアクリルポリマー、および尖端を被覆し、それを保護するのに十分な厚さである、貼付剤を貼付する前に剥がされる保護カバーからなる。ポリエステル布で構成される保護ライナーは、バンドエードと同様に貼付する前に除去され、全身吸収が望まれる場合は、親指が下部の皮膚の抵抗を受けるまで親指の圧力を加えて、接着層上の活性「微孔」が皮膚の外面を貫通することを可能にする。貼付剤を除去する前に、活性薬を分単位、または時間もしくは日数または週の単位の時間にわたって分配することができる。間質組織内に入ると、薬物は、レザバーを形成し、全身送達ではそこから血管内に、皮膚癌または他の病的状態の場合は患部細胞内に徐々に放出される。
【0050】
上皮保護層を横断する粒子に影響を与える物理化学的パラメータは、既に記載されているように粒子の粒径および形状に影響される。薬物送達における上皮保護層を横断するナノ粒子の使用は、有意に活用されなかった。Gaumetら、Localization and quantification of biodegradable particles in an intestinal cell model:the influence of particle size.Gaumet M、Gurny R、Delie F.Eur J Pharm Sci.、2009年3月2日;36(4−5):465−73.Epub、2008年12月11日には、Caco−2細胞による細胞取込みに対する十分に特徴づけられた生分解性ポリマー粒子の粒径の影響が示されている。蛍光染料の3,3’−ジオクタデシルオキサカルボ−シアニン過塩素酸塩(DiO)が充填されたポリ(d,l−ラクチド−co−グリコリド酸)(PLGA)粒子がエマルジョン蒸発法によって製造された。狭い粒径分布(100、300、600、1000および2000nm)を有する5つのバッチの粒子が、選択的遠心を用いて製造された。表面特性(ゼータ電位、疎水性および界面活性剤残率)は、すべてのバッチの間で類似していた。相互作用は、明らかに粒径および濃度に依存していた。100nmの範囲の粒子は、大きな粒子と比較するとより高度な相互作用を示した。共焦点顕微鏡法による粒子の細胞位置確認によって、ポリ(d,l−ラクチド−co−グリコリド酸)粒子と細胞の結合が示された。小さな粒子は、細胞内で観察されたのに対して、300nmより大きな粒子は、頂端膜と結合していた。100nmのPLGA粒子のいくつかは細胞の核に配置されていた。
【0051】
本発明は、また、経口送達を介して治療薬を投与するための制御持続放出固体投与錠剤形を調製する方法を含む。経口制御放出剤形は、制御放出を有さない剤形と比較して、投与頻度の低減、循環薬物量の変動の軽減、患者コンプライアンスの向上およびより均一な薬理的応答を含む治療上の利点を示した。経口制御放出をいくつかの方法で達成することができ、その1つが、胃または腸の上部に保持することができる胃腸剤形の形をとる。当該薬物としては、メトホルミン、シルポフロキサシン、レボドパ等が挙げられる。胃腸管薬物吸収の程度は、小腸粘膜との接触時間に関連することが広く認識されている。本発明は、(a)ポリマーを薬剤と組み合わせて含む剤形をミクロ粒子またはナノ粒子の形で形成する工程と、(b)ミクロ粒子またはナノ粒子を超圧縮して制御放出分配ユニットを形成する工程と、(c)その後分配ユニットを上記の超圧縮錠剤に入れる工程とを含む。被覆剤を塗布して、錠剤の構成要素の味を隠し、錠剤をより滑らかにして飲み込みやすくし、環境に対する抵抗性を強めてその保存寿命を延ばすことができる。錠剤を、正確な投与量を特定の部位に送達するように調製することができる。それを通常は経口摂取するが、舌下投与、直腸投与または膣内投与することができる。それは、超圧縮された固体の形の活性医薬成分(A.P.I.)と生物不活性賦形剤とからなる。
【0052】
したがって、本発明の目的は、一定時間にわたる治療薬による病的状態の局所治療のための移植可能または注射可能制御放出デバイスとして使用される分配デバイスを提供することである。
【0053】
また、本発明の目的は、投与の回数を最小限にし、特定の投与による治療効果の局所効果を最大限にすることによって、医師が指示する治療薬の投与に対する患者のコンプライアンスを向上させることである。
【0054】
したがって、本発明の目的は、治療適合性ポリマーおよび治療薬を含むミクロ粒子またはナノ粒子のユニットを超圧縮することによって製造されたマトリックスを使用する病的状態の局所的治療のための方法を提供することである。
【0055】
また、本発明の目的は、滑らかな単相の一貫した放出パターンで長時間にわたって治療薬を放出する圧縮ポリマーとともに治療薬を含むミクロ粒子またはナノ粒子を超圧縮することによって製造された分配デバイスを提供することである。
【0056】
また、本発明の目的は、抗菌薬、抗生物質、抗炎症薬、免疫抑制薬、抗緑内障薬等を含む眼病または他の種類の病状に対する親水性、または好ましくは疎水性の薬物を提供することである。
【0057】
また、本発明の目的は、患者側の活動を一切行わずに、医師が分配デバイスを、それが長時間にわたって治療薬を局所的に送達する位置に配置することによって、治療薬の投与への能動的な患者の関与を回避することである。
【0058】
また、本発明の目的は、治療薬が分配デバイスから使い尽くされた後に身体から除去する必要がない無毒性の生分解性ポリマー系からの治療薬の局所的制御放出を提供する分配デバイスを提供することである。
【0059】
また、本発明の目的は、マイクロカプセルを超圧縮投与ユニットに形成することによってそれらを処理する便利な方法を提供することである。
【0060】
また、本発明の目的は、薬剤を局所投与する方法であって、ポリマーを治療薬と組み合わせて含む分配デバイスを、制御放出分配ユニットを形成するために超圧縮されるミクロ粒子またはナノ粒子の形で形成した後、前記制御放出分配ユニットを注射可能液体と接触させてミクロ粒子を分散させ、ミクロ粒子の懸濁液を形成してから、薬物の放出を提供する患者の位置に前記懸濁液を配置することを含む方法を提供することである。
【0061】
また、本発明の目的は、超圧縮ミクロ粒子を吸入投与のための乾燥粉末に形成することである。
【0062】
本発明のこれらおよび他の目的は、本明細書を熟読することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】非圧縮ミクロ粒子の顕微鏡写真である。
【図2】5Kpsiで作製された圧縮ミクロ粒子の顕微鏡写真である。
【図3】70Kpsiの圧縮が用いられた場合の硝子体液および眼房水に検出されたデキサメタソンのレベルを報告する表である。
【図4】5Kpsiおよび50Kpsiで作製されたミクロ球体からのデキサメタソンのインビトロ放出の速度を示すグラフである。
【図5】本発明の分配デバイスから分散されたミクロ粒子を移植するために提供されるシリンジの部分破断図である。
【図6A】圧縮ミクロ粒子に対する圧力上昇の影響を示す一連の顕微鏡写真である。
【図6B】圧縮ミクロ粒子に対する圧力上昇の影響を示す一連の顕微鏡写真である。
【図7】実施例4に従って製造されたミクロ球体からのデキサメタソンのインビトロ放出の速度を示すグラフである。
【図8】5Kpsi、50Kpsi、100Kpsi、200Kおよび300Kpsiで作製されたミクロ球体からのデキサメタソンのインビトロ放出の速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明の分配デバイスは、治療薬と組み合わされ、超圧縮されて制御放出分配ユニットを形成するポリマーを含む。ポリマーと混合することができる治療薬は、例えば、抗真菌薬、抗菌薬、抗生物質、抗炎症薬、免疫抑制薬、組織成長因子、歯減感剤、抗酸化剤、栄養剤、ビタミン、臭気隠蔽剤である親水性または好ましくは疎水性の薬物を含む。具体例としては、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、抗生物質、散瞳薬、ベータアドレナリン作動性アンタゴニスト、麻酔薬、アルファ−2−ベータアドレナリン作動性アゴニスト、肥満細胞安定剤、プロスタグランジン類似体、交感神経様作動薬、副交感神経様作動薬、抗増殖薬、血管形成および新血管新生を低減するための薬剤、血管収縮薬、およびそれらの組合せ、ならびに抗新生物薬、ポリヌクレオチドまたは組換えタンパク質類似体、エンドスタチンもしくはサリドマイドなどの血管形成阻害薬;5−フルオロウラシル、パクリタキソール、ミノシクリン、チモロール半水和物、rhHGH、ブレオマイシン、ガンシクロビル、フペリジン、タモキシフェン、ピロキシカム、レボノルゲステレルおよびシクロスポリン等の疾患を治療するように設計されたあらゆる他の薬剤が挙げられる。他の薬剤としては、特定のステロイドに限定されず、プレドニソン、メチルプレドニソロン、デキサムタソンなどのステロイド;ネオマイシン、トブラマイシン、アミノグリコシド、フルオロキノロン、ポリミキシン、スルファセタミド、ピロカルピン、イソピロカルピン、フィソスチグミン、デメカリウム、エコチフェートおよびアセチルコリンならびにそれらの塩などの薬剤を含む抗生物質;アトロピン、フェニルエフリン、ヒドロキシアムフェタミン、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミドおよびそれらの塩などの薬剤を含む散瞳薬および毛様体筋麻痺薬;リドカイン、プロパラカイン、テトラカインおよびフェナカイン等を含む麻酔薬;チモロール、カルテオロール、ベータキソロール、ナドロール、レボブノロールなどのベータ遮断薬、ドルゾラミド、アセトゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害薬、ラタノプロスト、ウノプロストン、ビマトプロストまたはトラボプロストなどのプロスタグランジン類似体が挙げられる。
【0065】
治療薬と併用されるポリマーは、ヒト組織に対して無毒性かつ無刺激性である薬学的に許容されるポリマーである。これらのポリマーは、モノマー材料およびコポリマー材料を含む。好適なポリマーは、超圧縮の前に、粒径範囲が一般には約2ミクロンから約50ミクロン、好ましくは約2から約25ミクロン、より好ましくは直径約5から約20ミクロンであるミクロ球体またはマイクロカプセルとして既知のミクロ粒子に成形できる生体適合性および生分解性ポリマーを含む。ミクロ球体という用語は、完成品がミクロ球体に成形されたポリマーマトリックスに均一に分散された薬物を含むように、活性薬と好適な溶媒およびポリマーとを混合することによって得られる実質的に均質な構造体を記述するために使用される。ミクロ粒子の選択された粒径範囲に応じて、ナノ粒子という用語は、1から1000ナノメートルの大きさの構造体を記述するために使用される。ナノメートル(nm)は、1メートルの100万分の1、またはほぼ10個の水素原子の大きさである。現在、ナノ粒子薬物担体は、主として、粒径が50〜500nmの範囲の固体の生分解性粒子からなる。一般に、粒径は、粒子を容易に測定し、超圧縮力を加えて圧縮剤形を形成するための好適なプレスに粒子を配置する目的で必要に応じて移送できるように選択されるべきである。圧縮粒子は、水中に、または真皮、肺もしくは腸などの水性体液と接触して配置されると、圧縮粒子を脱凝集させ、圧縮されてマトリックスを形成した個別の粒子になるマトリックスと呼ばれる。
【0066】
本発明のさらなる態様は、これらのミクロ球体およびナノ球体が超圧縮されると、超圧縮力が加えられたことに起因する伸度、真円度およびふくらみ率または表面粗さの程度が広範囲な改変または変形粒子形状になる。そのような変形した形状は、粒子活性を変化させると思われる(Gratton SEA、DeSimone JMら、Proc of the Nat Acad of Sci 2008;Mitragoti Sら、Proc Nat Acad of Sci 2008)。超圧縮がミクロ球体およびナノ球体の活性を変化させる理由は未知であるが、作用の理論によって束縛されることなく、1)超圧縮は、非圧縮ミクロ球体またはナノ球体と比較して薬物が重量容積ベースでより高濃度であるために効果を有し、2)粒子の形状の変化は、超圧縮剤形からの薬物の放出速度を低下させ、3)薬物または活性薬の細胞レベルの取込みを増強することによって薬物の所定の投与量にも影響を与えると発明者は考える。
【0067】
超圧縮粒子を注射のための好適な水性媒体に再分散させることができる。通常の無菌食塩水または他の等張性溶液をこの目的に使用することができる。個々の超圧縮ミクロ粒子の粒径が減じられているため、同じ容積のミクロ粒子を使用して実質的により多くの薬物を送達することができる。例えば、超音波処理器(50〜55W出力のMisonix XL−2020)を使用して、ポリビニルアルコールの2%w/w溶液を含むクロロホルム中ポリラクチドポリマーの溶液を眼治療薬などの治療薬の存在下で10分間にわたって超音波処理することによってナノ粒子を形成することができる。その後、エマルジョンを4℃で終夜撹拌してクロロホルムを蒸発させ、ポリマーおよび治療薬のナノ粒子を得る。薬用ナノ粒子は、生細胞の内部に容易に到達し、局所薬物治療を強化する特異な機会を提供することができる。
【0068】
マイクロカプセルを使用して、本発明の圧縮剤形を形成することもできる。マイクロカプセルという用語は、好ましくは非球体であり、以上に記載されているサイズ範囲である、活性薬および任意の添加賦形剤を含むコアの周囲に配置されたポリマーシェルを有する剤形を記述するために使用される。一般に、マイクロカプセルを、以下の技術の1つを使用して作製することができる。
(1)水相および有機相分離法、溶融分散および噴霧乾燥を含む相分離法;
(2)界面重合、現場重合および化学蒸着を含む界面反応;
(3)流動床スプレー塗装、静電塗装および物理蒸着を含む物理的方法;ならびに
(4)溶媒蒸発法または逆溶剤を含むエマルジョンの使用。
【0069】
概して、ミクロ粒子は、約0.00001から約50重量部の治療薬を含み、治療薬とポリマーの合計重量100重量部当たり約50から約99.99999重量部のポリマーをさらに含む。好適な範囲は、治療薬が1から50、5から40および20から30重量部であり、ポリマーが残りを構成する。望まれる場合は、圧縮工程の前に、ポリビニルピロリドンなどの1から5重量%の結合剤をミクロ粒子と均一に混合することができる。
【0070】
移植される薬物の量は、異なってもよいが、一般には0.5〜20%の薬物の通常の経口または静脈内投与量を採用することができるが、溶解度、移植の部分、治療すべき患者および状態に応じて実質的に異なり得る。ミクロ球体を、本明細書に記載されている典型的なエマルジョン中溶媒蒸発技術によって形成することができる。
【0071】
治療薬を病状の治療のために放出することができる位置に配置するのに好適である制御放出剤形のための生分解性ポリマーマトリックスを提供するために、ポリマーをポリ(アルファヒドロキシ酪酸)、ポリ(p−ジオキサノン)ポリ(l−ラクチド)、ポリ(dl−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(グリコリド−co−ラクチド)、ポリ(グリコリド−co−dl−ラクチド)、ポリグリコリド、炭酸トリメチレンおよびポリエチレンオキシドのブロックポリマー、または前記物質のいずれかの混合物から選択するのが好ましい。合成ポリマーは、任意の(重量平均)またはMW多分散度、乳酸(LA)とグリコール酸(GA)のあらゆる比、およびあらゆる結晶化度のポリラクチドまたはポリ(ラクチド−co−グリコリド)であってもよい。一般に、MWは、約500から約10000000Da、好ましくは約2000から約1000000Da、より好ましくは約500から約5000Daの範囲である。LA:GAの比が約75:25から約85:15(モル:モル)であり、MWが約5000から約500000のp(LGA)を使用することができる。ラクチド/グリコリドポリマーは、(表面浸食性ポリマーでなく)バルク浸食性ポリマーであり、ポリマーは、ミクロ粒子マトリックスに成形されると、水がマトリックスに浸入し、ポリマーが分子量を減じるため加水分解することになる。L−ポリマーを使用してポリマー分子量を増加させ、ミクロ粒子の粒径または剤形のサイズを大きくすることによって表面積を小さくすることによって吸収曲線をより長い時間にシフトすることが可能である。ラクチド/グリコリドコポリマーは、高くて6.5dl/gであり、低くて0.15dl/gである固有粘度で利用可能である。本発明では、より小さい分子量のコポリマーが好適である。グリコリドとラクチドのモル比が50:50であると、分解および対応する薬物放出が最も速くなることが見いだされた。ポリマー主鎖におけるラクチドの比率を約50モル%から100%に増加させることによって、放出速度を低下させて、単一投与ユニットから長時間の治療効果を提供することができる。
【0072】
好適なカプセル化ポリマーは、分配デバイスのための好適な制御放出送達システムとして作用し、構造が吸収性ポリグリコール酸およびポリグリコール/ポリ乳酸縫合材料に類似したポリ(グリコリド−co−dl−ラクチド)である。ポリマー担体は、治療薬の持続放出送達システムとして作用する。ポリマーは、プロセスを経て生分解することによって、エステル結合が加水分解して、通常の代謝化合物、乳酸およびグリコール酸を形成し、治療薬の放出を可能にする。
【0073】
様々な比率の乳酸とグリコール酸からなるコポリマーを分解速度の差について調べた。生分解速度は、コポリマーにおける乳酸とグリコール酸との比に左右され、50:50のコポリマーが最も速く分解することが知られる。生分解性ポリマー系を選択すると、外傷を伴う眼からの使い尽くされた非生分解性構造体の除去の必要性が回避される。
【0074】
ミクロ球体を製造した後に、それらを非常に大きな力で圧縮して、本発明の分配デバイスを形成する。超圧縮を、210000から600000psi(以降1000の代わりにKを使用する)、より好ましくは220Kpsiから550Kpsi、特に220Kpsiから400Kpsi、特に200Kpsiから300Kpsiの圧力をミクロ粒子またはナノ粒子に加えることが可能である装置で実施することができる。psi(ポンド毎平方インチ)という用語は、変換を行って剤形に加えられる力をpsiの単位で表すことができるように、特定の剤形に加えられる力をポンド単位で把握し、剤形の頂部の面積を測定または計算することによって決定づけられる。超圧縮分配デバイスは、完全な回転楕円体であってもよいが、好ましくは、指関節、足指、膝、臀部および肩を含む骨およびそれらの関節;腺、例えば下垂体、甲状腺、前立腺、卵巣もしくは膵臓、または器官、例えば肝臓、脳、心臓および腎臓などの皮膚の下の部位に配置するのに十分に小さい丸い縁または滑らかな縁を有する平板、ロッド、ペレットなどの変形回転楕円体である。特に、ヒトまたは動物または魚類または他の生物種の体を構成する任意の部分などの病状の部位またはその付近に、あるいは病状に影響を与えるようにデバイスを移植することによって病状を治療するために本発明の分配デバイスを利用することができる。
【0075】
当該部分は、細胞の内容物、頭部、頚部、背部、胸部、腹部、会陰、上肢または下肢の任意の部分を含むことができる。脊柱、頭蓋、胸骨または肋骨を含む胸郭、顔骨、鎖骨、肩甲骨または上腕骨などの上肢の骨;手首骨などの手の骨;腸骨または大腿骨などの下肢の骨を含むが、それらに限定されない骨系;足根などの足;関節または靱帯;筋肉または筋膜;心臓、動脈、静脈もしくは毛細血管または血液などの心臓血管系;胸管、胸腺または脾臓などのリンパ系;中枢または末梢神経系、眼、耳、鼻などの感覚器官;皮膚;肺、喉頭、気管および気管支などの呼吸器系;食道、胃または肝臓などの消化器系;膀胱、前立腺または卵巣などの尿生殖器系;甲状腺、副甲状腺または副腎などの内分泌腺の任意の部分。
【0076】
本発明によるインプラントまたは注射可能懸濁液などの形の分配デバイスの挿入は、デバイスを適正に配置するために挿入方法が熟練した専門家に周知の手順を必要とし得ると考えられるため、医師、歯科医師、獣医師、看護師または他の熟練した専門家によって実施されると考えられる。本発明の分配デバイスを押し出すプランジャ要素を備えた円筒を有する改造シリンジの使用によって(注射可能)分配デバイスを移植することができる。当該デバイスは、米国特許第5,236,355号に示されており、その特許の図1は参照により本出願に組み込まれている。
【0077】
代替的な方法は、円筒2、およびガイド7によって円筒2に配置されている放出器4が装着された本出願の図5によるシリンジを使用する。放出器4の下端4Aは、注射可能液6の無菌の破壊可能バイアルに隣接する。円筒2内の放出器4の下端にシール5を設けて、放出器を押し下げて、放出器要素4の作用によって破壊されると、注射用水、通常の生理食塩水、リンゲル液等の注射可能液が分配デバイス12に接触し、さらなる圧力が主円筒2内の主放出器4に加えられると、分散したミクロ球体が円筒2上に取りつけられた太針10から押し出されるように分配デバイスをミクロ粒子に分散させることを可能にする破壊可能無菌容器6に接触させたときの液体の逆流を防止する。
【0078】
一般に、移植のための分配デバイスの厚さは、ディスク、ロッドまたはペレットの形に関係なく約0.25から2.5mmであるはずである。例えばディスクの形の分配デバイスは、約3から10mmの径を有する円に等しい面積を有するはずであるが、本発明によればより小さな、または大きなデバイスを作製することができる。ロッドまたは円筒形の剤形を、径が約1mmで長さが3mmの大きさにすることができる。分配デバイスの密度は、圧縮力の量が大きくなるに従って高くなる。密度は、非圧縮サンプルと比較して、50〜600Kpsiの圧力を使用して圧縮された圧縮サンプルの放出速度を低下させるのに十分に高くなければならない。超圧縮工程は、また、限定的な容積により多くの粒子を充填することによって薬物装填量を増大させ、圧縮剤形の密度の向上により薬物放出速度に影響を与えることになる。
【0079】
図6Aおよび6Bは、実施例1の一般手順に従って製造された20重量%のデキサメタソンを含むポリ乳酸ミクロ球体の一連の6つの顕微鏡写真である。圧力の上昇は、26666psiが加えられた後にミクロ球体がわずかな歪みおよび変形を示し始めることを示す。観察されるように、加えられる圧力が大きいほど、粒径が小さく、粒子変形が大きく、粒子間の間隔が最小限になる。粒径の減少は、密度の増加およびより大きな単位容積当たりの薬物装填量を伴う。
【0080】
本発明は、また、複合治療を目的とする薬物の制御放出を提供するために、ポリマーとともにミクロ粒子またはナノ粒子に成形された2つ以上の薬物を含む分配デバイスを含む。
【0081】
本発明の超圧縮ミクロ粒子またはナノ粒子を含む貼付剤は、商業的に入手可能である経皮貼付剤の典型的な寸法を有する。
【0082】
新生物を完全に外科手術的除去することが不可能である場合、またはさらなる医薬が処方される場合には、超圧縮送達デバイスを治療の部位に移植または配置して、5−フルオロウラシルまたはタキソールなどの薬物を連続的に放出させることができる。移植を、外科手術的介入を用いて、または用いずに行うことができ、あるいは本明細書に記載の適切な注射器を使用して、すべての患部組織を完全に除去することが不可能である場合に外科手術的処置の過程で移植または配置することができる。本発明の超圧縮粒子の移植は、健康な皮膚、ならびに口腔、咽頭、食道および胃腸管を覆う粘膜の損傷を含む深刻な副作用を引き起こし得る化学療法の過酷な全身副作用を軽減または回避する。例えば、経口摂取された場合の薬物の直接的接触、または静脈内投与に起因する口腔および胃粘膜の過酷で、投与量を制限し、悲痛に弱体化させる副作用が軽減または排除される。薬物の投与量は、新生物のサイズおよび位置に左右されるが、一般に移植投与量は、全身投与量の0.5〜5%またはより好ましくは1〜2%であり、特定の新生物に対する応答、患者の年齢および状態、病状の性質ならびに先の療法に依存することになる。膠腫の治療のための局所移植に単独で、または他の抗癌薬と組み合わせて使用されるカルムスチンの場合は、2〜4週間毎に1回の移植によって5から10mgの投与量を使用することができ、1〜2mgの5−フルオロウラシルを有する分配デバイスを患部に2から4週間毎に移植することによって5−フルオロウラシルを膵臓癌に使用することができる。移植により2から4週間毎に膠腫を治療するために2〜4mgの量でプロカルベジンを本発明の分配デバイスに使用することができる。
【0083】
本発明によるインプラントを使用して、インドメタシン、またはアスピリン、ナプロキセンおよびイブプロフェン等の他のNSAIDなどの鎮痛/抗炎症薬を関節の周りの組織に直接送達することができる。経口NSAIDおよびCOX−2阻害薬の有害事象プロファイルに対して、これは、経口治療薬より高い効力の潜在性を提供しながら、これらの薬物の循環量に関連する副作用を潜在的に軽減する。トリアムシノロンなどの抗炎症薬で関節を治療するときは、投与量は、超圧縮マイクロカプセルにて2〜4mgのデキサメタソンを含めて、または含めずに20から40mgであってもよい。
【実施例1】
【0084】
301568psiで圧縮され、長さ5mm×直径3mmの円筒状ペレットのウサギの眼組織におけるより長期間の移植の効果を評価するための試験を実施した。(7.87mm径の鋳型の指示機構と適合/相互交換するように調製および構成された)新たな3mm径の鋳型を利用して、ウサギの眼に必要なより小さいペレットを調製した。寸法上の問題、およびペレットを調製するために加える圧力と鋳型の機械的耐性とを両立させる必要性により、漸増的加圧手法を利用し、1000lbの初期圧力を加えた。その後、約500lbの追加的圧力を約5分毎に約301568psiの範囲に達するまで加えた。製造されたペレット(シリンダ)の高さは約5mmであった。記録された圧力は301568psiであった。ペレットを右眼の結膜の下の上側頭象限にペレットを移植した。規定の時点で、ウサギを安楽死させて眼組織を採取した。よって、インプラント部位を切り出し、組織の残りを強膜/結膜、角膜および水晶体にさらに分割した。図7は、術後9週間目のインプラント部位の組織構造(凍結切片化、H&E染色)を示す。インプラント部位におけるDex−ミクロ−ベクターの持続的存在は、SNS Conversion(商標)ペレットの持続的存在を示している。インプラント部位における最小量のマクロファージの存在は、軽度の炎症反応を示唆し、デキサメタソンT−ベクターの持続放出による炎症反応の抑制を示している。
【0085】
ウサギの眼組織におけるデキサメタソン量を13週間後に測定し、組織1mg当たりのデキサメタソンのナノグラム単位で表1に報告する。強膜/結膜、角膜および水晶体を回収し、処理し、抽出する。デキサメタソン量をHPLCアッセイによって測定する。表1は、この試験シリーズで最も長い持続期間である13週間の移植後にウサギの眼組織から回収されたデキサメタソンを報告する。デキサメタソンの長期間の存在が実証されている。
【0086】
【表1】

【実施例2】
【0087】
合成コルチコステロイド(例えば、デキサメタソン、プレドニソロン、ブデソニド)を封入したポリマーミクロ球体/ナノ球体を、従来のエマルジョン中溶媒蒸発法を使用して調製することが可能である。超圧縮マイクロカプセル製剤としてのブデソニドの投与製剤を、10mgのブデソニドを990mgのポリ(dl−ラクチド)ポリマー(PLA、ポリマー溶液の流動時間を評価することによってUbbeholde粘度計で測定した固有粘度が0.66〜0.80dl/gである)に分散させることによって調製する。PLAを125mlのクロロホルムおよび3.5mlのエタノールに溶解させる。懸濁液を、好適な装置にて4℃に維持された700mlの2%ポリビニルアルコール(30Kから70KのMW)とともに1500から2000RPMで撹拌する。6時間撹拌させた後、撹拌速度を700RPMまで減じ、クロロホルムを終夜蒸発させる。形成されたミクロ球体を1500RPMの遠心によって回収し、水で3回洗浄し、凍結乾燥する。ミクロ球体は、6.5重量%のブデソニドを有する易流動性粉末を形成し、ミクロ球体は、全般的な径が5から25ミクロンの範囲である。その後、250mgのミクロ粒子を、圧縮のために改造されたMTSメカニカルテスター内で7.87mm径のステンレス鋼ダイに入れる。211685psiの圧縮力を用いて、2.5mgのブテソニドを含む分配デバイスを形成する。形成されたペレットの厚さ(高さ)は約4.2mmであり、密度が約1.55である。調製された分配デバイスを水中に入れ、崩壊および分散させる。これらのペレットを分散媒体から回収し、高速凍結および凍結乾燥してそれらの水分を除去する。回収された粒子/微粒子は、最初に、かつ圧縮前に調製されたミクロ球体/ナノ球体と比較して高度に圧縮されている。したがって、一定容積当たりの薬物含有量は、予め圧縮されていないものよりはるかに高い。さらに、これらの超圧縮後ミクロ球体/ナノ球体の密度がより高いことにより、それらは凝集しにくくなり、吸入器で機械的に推進されると呼吸器系により深く浸透するためのより大きな運動量を保持することが可能になる。次いで、従来の方法で、200mcgのブテソニドを含むある量の粉末(20mg)を、乾燥粉末吸入器(DPI)の計量前の充填前肺投与物に充填する。
【0088】
凝集性の強い微粒子に伴う固有の問題、すなわちカプセル充填および計量時の不十分な流動性、枯渇、粉末安定性の強化、および脱凝集化に伴う問題に起因する不十分なエアロゾル化挙動を改善するために、ラクトースなどの大粒径の賦形剤担体をDPI製剤に添加しない(または添加する必要性がはるかに小さい)。
【実施例3】
【0089】
インスリンを封入したポリマーミクロ球体/ナノ球体を含む固体のミクロおよびナノ粒子投与錠剤を注射可能インスリンの代用治療薬として発展させる。当該代用治療薬は、注射の繰り返しに対して免疫系反応を有する個人、および毎日の注射を一時的に停止することを必要とする個人にとって特に有用であり得る。固体投与物の送達は、迅速な吸収、および無痛であるという利点をも提供する。
【0090】
ミクロおよびナノ粒子錠剤を、最初に従来のエマルジョン中溶媒蒸発法を使用して調製する。超圧縮マイクロカプセル製剤としてのインスリンの投与製剤を、最初に10mgのインスリンを10mlの水に溶解させることによって調製する。このインスリン水溶液を(50mgのPLAを100mlのクロロホルムに溶解させた)100mlのPLA溶液に分散させ、30秒間にわたって(プローブ超音波処理器による)超音波処理下で4℃に維持して、一次油中水ナノエマルジョンを形成する。(ハンドヘルドホモジナイザによる)激しい撹拌下で、一次ナノエマルジョンを600mlの2%PVA溶液(30Kから70KのMW)に徐々に分散させ、4℃に維持して、水中油中水の二次エマルジョンを形成する。ホモジナイザ撹拌を5分後に終了させた後、このナノエマルジョンの撹拌を、1000RPMで回転するインペラによって終夜継続して、クロロホルムを蒸発させる。形成されたナノ球体を高速遠心によって回収し、3回洗浄して凍結乾燥させる。これらのナノ球体は、易流動性粉末状バルク材料を形成し、次いでそれを、実施例2に記載されている技術を使用して卵形錠剤(穿孔サイズ17.5mm×10.2mm)を形成するための220000psiの超圧縮条件下に置く。錠剤は、嚥下される。錠剤を、消化管にて持続的な形で分解するように調製して、腸組織におけるデポー剤の形成、薬物の連続的分散、迅速なインスリン吸収および反応性グルコースの減少効果を可能にする。
【実施例4】
【0091】
5グラムのポリラクチド(PLA、Lactel、50/50DL、固有粘度0.55〜0.75、B6005−2、ロット番号100D065、DURECT)および325mgのデキサメタソン(Dx、DE121、Spectrum)をクロロホルム(125ml)(9180−01、JT Baker)およびエタノール(3.5ml)(USPグレード)で構成される補助溶剤混合物に溶解させた。次いで、このPLA/Dx溶液をミキサー(LR400 Lab Stirrer、Yamato、日本国東京)により2000RPMで撹拌しながら700mlの(4℃に予備冷却された)2%ポリビニルアルコール(P8136、Sigma−Aldrich)溶液に分散させて、均質なエマルジョンを形成した。次いで、それをクロロホルム蒸発のために終夜撹拌させ、形成されたPLA/Dxミクロ球体を10分間にわたる2000RPMの遠心(Allegra X−15R、Beckman−Coulter)によって回収した。次いで、PLA/Dxミクロ球体を希釈水で3回洗浄し、遠心によって再び回収し、凍結および凍結乾燥した(Freezemobile 6ES、Virtis)。ミクロ球体の理論的薬物装填量は6.5%であった。
【0092】
約240mgのPLA/Dxミクロ球体を7.87mm径のステンレス鋼鋳型に移し、カーバープレスによって圧縮した。利用した圧力は、それぞれ100000、200000および300000psiであり、圧力上昇を直ちに達成し、30秒間保持した。pH7.4のPBSが充填された個々の容器内に各ディスクを配置することによってディスクからのデキサメタソンの累積的なインビトロ放出量を測定する。容器を、100RPMで回転する回転式シェーカ上に(周囲温度で)配置した。所定の時点で、サンプルを抜き取り、容器に新鮮なPBSのアリコットを補充し、放出されたデキサメタソンの量を測定した。図7に示される結果は、ディスクの各々の放出プロファイルを示す。図8は、異なる装置で異なる時間に作製されたディスクの特性を反映する、5Kpsi、50Kpsi、100Kpsi、200Kpsiおよび300Kpsiで作製されたディスクの放出プロファイルの関係を示すため、これらのデータは、異なる圧縮圧力の使用の並列的な比較を示さない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超圧縮されて制御放出分配ユニットを形成するミクロまたはナノ粒子の形で治療薬と組み合わされたポリマーを含む分配デバイス。
【請求項2】
前記治療薬が、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、抗生物質、散瞳薬、ベータアドレナリン作動性アンタゴニスト、麻酔薬、アルファ−2−ベータアドレナリン作動性アゴニスト、肥満細胞安定剤、プロスタグランジン類似体、交感神経様作動薬、副交感神経様作動薬、抗増殖薬、眼血管形成および新血管新生を低減するための薬剤、血管収縮薬、抗新生物薬、ポリヌクレオチド、または組換えタンパク質類似体、血管形成阻害薬およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の分配デバイス。
【請求項3】
前記ポリマーが、ポリ(アルファヒドロキシ酪酸)、ポリ(p−ジオキサノン)ポリ(1−ラクチド)、ポリ(dl−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(グリコリド−co−ラクチド)、ポリ(グリコリド−co−dl−ラクチド)、ポリグリコリド、炭酸トリメチレンおよびポリエチレンオキシドのブロックポリマー、または前記物質のいずれかの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の分配デバイス。
【請求項4】
前記ポリマーが生分解性である、請求項2に記載の分配デバイス。
【請求項5】
前記マイクロカプセルが、210Kpsiから600Kpsiを加えることによって圧縮された、請求項4に記載の分配デバイス。
【請求項6】
前記マイクロカプセルが、220Kpsiから550Kpsiを加えることによって圧縮された、請求項4に記載の分配デバイス。
【請求項7】
前記マイクロカプセルが、220Kpsiから500Kpsiを加えることによって圧縮された、請求項4に記載の分配デバイス。
【請求項8】
前記治療薬がステロイドである、請求項7に記載の分配デバイス。
【請求項9】
薬物を局所投与する方法であって、ポリマーを治療薬と組み合わせて含む分配デバイスを、圧縮されて制御放出分配ユニットを形成するミクロ粒子またはナノ粒子の形で形成する工程と、その後薬物の局所的または全身放出を提供する患者の部位に前記分配ユニットに配置する工程とを含む方法。
【請求項10】
前記治療薬が、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、抗生物質、散瞳薬、ベータアドレナリン作動性アンタゴニスト、麻酔薬、アルファ−2−ベータアドレナリン作動性アゴニスト、肥満細胞安定剤、プロスタグランジン類似体、交感神経様作動薬、副交感神経様作動薬、抗増殖薬、眼血管形成および新血管新生を低減するための薬剤、血管収縮薬およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、ポリ(アルファヒドロキシ酪酸)、ポリ(p−ジオキサノン)ポリ(1−ラクチド)、ポリ(dl−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(グリコリド−co−ラクチド)、ポリ(グリコリド−co−dl−ラクチド)、ポリグリコリド、炭酸トリメチレンおよびポリエチレンオキシドのブロックポリマー、または前記物質のいずれかの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーおよび前記治療薬が、伸度、真円度およびふくらみ率または表面粗さの程度が広範囲なロッドの形または他の形状である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ミクロ粒子が、210Kpsiから600Kpsiを加えることによって圧縮された、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ミクロ粒子が、220Kpsiから550Kpsiを加えることによって圧縮された、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記治療薬がステロイドである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ミクロ粒子が、210Kpsiを加えることによって圧縮された、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
薬物を局所投与する方法であって、ポリマーを治療薬と組み合わせて含む分配デバイスを、圧縮されて制御放出分配ユニットを形成するミクロ粒子の形で形成する工程と、その後前記分配ユニットを注射可能液と接触させてミクロ粒子を分散させ、ミクロ粒子の懸濁液を形成してから、薬物の放出を提供する患者の部位に前記懸濁液を配置する工程とを含む方法。
【請求項18】
前記ミクロ粒子の懸濁液を乾燥させ、乾燥分散体として吸入により投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の薬物およびポリマーの超圧縮ミクロ粒子またはナノ粒子を含む経皮貼付剤。
【請求項20】
請求項1に記載の超圧縮ミクロ粒子またはナノ粒子を含む経口剤形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−524779(P2012−524779A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507215(P2012−507215)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/001191
【国際公開番号】WO2010/123563
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511255591)サステインド ナノ システムズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】