説明

制御装置、車両用灯具システム、車両用灯具

【課題】車両用灯具システムにおいて、前走車の誤検出に起因して前走車にグレアを与える照射制御方式を選択してしまうことを防止する。
【解決手段】画像検出部52は、車両の前方を撮像した画像データを元に画像内の輝度および光点数を検出する。照射方式決定部54は、マップ格納部56に格納されている輝度および光点数をそれぞれ軸とする二次元マップ上に画成された領域毎に対応する照射制御方式が定められた制御マップを参照して、車両用灯具70による照射制御方式を決定する。信号出力部58は、決定された照射制御が実施されるように車両用灯具70に制御信号を出力する。制御マップは、所定値よりも輝度が高くかつ光点数が多い領域に、前走車に対してグレアを与える可能性が少ない照射制御方式が定められ、所定値よりも輝度が低くかつ光点数が少ない領域に、前走車の位置に応じて配光を切り替える照射制御方式が定められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前方の撮像画像に基づき灯具の照射状態を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、灯具ユニットの配光方向を左右に旋回させるスイブル機構を備えた車両用前照灯装置が知られている。このような車両用前照灯装置では、灯具ユニットのスイブル軸がブラケットに軸支されるとともに、当該ブラケットがランプボディに固定されることで、ランプボディに対して灯具ユニットが左右方向にスイブル可能に取り付けられる。このスイブル機構を利用して、カメラにより撮影された画像を処理することで前走車を検出し、前走車を避けるようにハイビームの照射方向を変えてグレアを防止するADB(Adaptive Driving Beam)システムも提案されている(例えば、特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−179113号公報
【特許文献2】特開2009−227088号公報
【特許文献3】特開2010−000957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
夜間における前走車認識では、レーザやミリ波を使用するレーダ方式と比較して、カメラによる撮像画像内の光点から前走車を認識する方が、より遠方の車両をとらえることができて有利である。そこで、上記のような車両用前照灯装置においては、カメラにより撮影された車両前方画像から前走車の位置を検出することによって、適切な配光パターンや照射方向を選択するように構成されていることが多い。しかしながら、撮像画像中の街路灯やデリニエータ等の外乱光や、走行路の環境照度などの影響によって、前走車を正確に検出できないことがある。前走車を正確に検出できない状態で、上述のADBのような照射制御方式を使用すると、前走車のドライバーにグレアを与えてしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、カメラによる撮像画像をもとに照射制御方式を変える車両用灯具システムにおいて、前走車の誤検出に起因して前走車にグレアを与える照射制御方式を選択してしまうことを防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御装置は、車両の前方を撮像した画像データを受けて、該画像データを元に画像内の輝度および光点数を検出する画像検出部と、輝度および光点数の両方を基に、車両用灯具による照射制御方式を決定する照射決定部と、決定された照射制御が実施されるように車両用灯具に制御信号を出力する出力部と、を備える。
【0007】
この態様によると、輝度または光点数のいずれかにのみ基づいて照射制御方式を決定する場合と比較して、撮像画像内の輝度および光点数の両方を参照して車両用灯具における照射制御方式を決定するので、例えば前走車にグレアを与えてしまうような不適切な照射制御方式が選択される可能性が低減される。選択すべき照射制御方式としては、配光パターン、照射方向、レベリング、補助灯具の点灯などがある。
【0008】
照射決定部は、輝度および光点数をそれぞれ軸とする二次元マップ上に画成された領域毎に対応する照射制御方式が定められた制御マップを参照してもよい。これによると、輝度または光点数のいずれかにのみ基づいて照射制御方式を決定する場合と比較して、輝度および光点数のそれぞれの軸についてしきい値を定めて、より詳細な制御マップを構成することが可能になる。
【0009】
照射決定部は、所定値よりも輝度が高くかつ光点数が多い領域に、前走車に対してグレアを与える可能性が少ない照射制御方式が定められた制御マップを有してもよい。また、照射決定部は、所定値よりも輝度が低くかつ光点数が少ない領域に、前走車の位置に応じて配光を切り替える照射制御方式が定められた制御マップを有してもよい。一般的に、画像の輝度が高く光点数が多い場合には、撮像画像に基づき前走車を正確に検出することが困難である。したがって、このようなときには前走車に対してグレアを与える可能性の少ない照射制御方式を選択する。反対に、画像の輝度が低く光点数が少ない場合には、撮像画像から前走車を検出することが容易である。したがって、このようなときには前走車の位置に応じて配光を積極的に切り替える照射制御方式を選択する。
【0010】
本発明の別の態様は、車両用灯具システムである。この車両用灯具システムは、車両前方を撮像する撮像装置と、複数の照射制御方式にしたがって車両前方を照射可能な車両用灯具と、車両用灯具を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、車両の前方を撮像した画像データを受けて、該画像データを元に画像内の輝度および光点数を検出する画像検出部と、輝度および光点数の両方を基に、車両用灯具による照射制御方式を決定する照射決定部と、決定された照射制御が実施されるように車両用灯具に制御信号を出力する出力部と、を備える。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、車両用灯具である。この車両用灯具は、車両前方を撮像した画像データから検出された輝度および光点数に応じて予め定められている照射制御方式にしたがって車両前方を照射可能に構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カメラによる撮像画像をもとに照射制御方式を変える車両用灯具システムにおいて、前走車の誤検出に起因して前走車にグレアを与える照射制御方式を選択してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用灯具システムで使用される前照灯ユニットの内部構造を説明する概略断面図である。
【図2】回転シェードの概略斜視図である。
【図3】車両用灯具システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図4】(a)、(b)は従来技術における照射制御方式の制御マップを説明する図である。
【図5】(a)〜(d)は本発明の実施形態に係る照射制御方式の制御マップを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用灯具システム100で使用される前照灯ユニット210の内部構造を説明する概略断面図である。図1は、灯具の光軸Xを含む鉛直平面によって切断された前照灯ユニット210を灯具左側から見た断面を示している。前照灯ユニット210は車両の車幅方向の左右に1灯ずつ配置される配光可変式前照灯であり、その構造は実質的に左右同等なので、以下では特に区別することなく説明する。
【0015】
前照灯ユニット210は、車両前方方向に開口部を有するランプボディ212とこのランプボディ212の開口部を覆う透明カバー214で形成される灯室216を有する。灯室216には、光を車両前方方向に照射する灯具ユニット10が収納されている。灯具ユニット10の一部には、当該灯具ユニット10の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成されている。ランプブラケット218はランプボディ212の内壁面に立設されたボディブラケット220とネジ等の締結部材によって接続されている。したがって、灯具ユニット10は灯室216内の所定位置に固定されると共に、ピボット機構218aを中心として、例えば前傾姿勢または後傾姿勢等に姿勢変化可能となる。
【0016】
また、灯具ユニット10の下面には、曲線道路走行時等に進行方向を照らす曲線道路用配光可変前照灯(Adaptive Front-lighing System:AFS)を構成するためのスイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定されている。スイブルアクチュエータ222は車両側から提供される操舵量のデータやナビゲーションシステムから提供される走行道路の形状データ、前方車と自車の相対位置の関係等に基づいて灯具ユニット10をピボット機構218aを中心に進行方向に旋回(スイブル:swivel)させる。その結果、灯具ユニット10の照射領域が車両の正面ではなく曲線道路のカーブの先に向き、運転者の前方視界を向上させる。スイブルアクチュエータ222は、例えばステッピングモータで構成することができる。なお、スイブル角度が固定値の場合には、ソレノイドなども利用可能である。
【0017】
スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定されている。ユニットブラケット224には、ランプボディ212の外部に配置されたレベリングアクチュエータ226が接続されている。レベリングアクチュエータ226は例えばロッド226aを矢印M、N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。ロッド226aが矢印M方向に伸長した場合、灯具ユニット10はピボット機構218aを中心として後傾姿勢になるように揺動する。逆にロッド226aが矢印N方向に短縮した場合、灯具ユニット10はピボット機構218aを中心として前傾姿勢になるように揺動する。灯具ユニット10が後傾姿勢になると、光軸を上方に向けるレベリング調整ができる。また、灯具ユニット10が前傾姿勢になると、光軸を下方に向けるレベリング調整ができる。このような、レベリング調整をすることで車両姿勢に応じた光軸調整ができる。その結果、前照灯ユニット210による前方照射の到達距離を最適な距離に調整することができる。
【0018】
灯室216の内壁面、例えば、灯具ユニット10の下方位置には、灯具ユニット10の点消灯制御や配光パターンの形成制御を実行する灯具制御部40が配置されている。この灯具制御部40は、スイブルアクチュエータ222、レベリングアクチュエータ226等の制御も実行する。
【0019】
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18、光源としてのバルブ14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、投影レンズ20で構成される。バルブ14は、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。本実施形態では、バルブ14をハロゲンランプで構成する例を示す。リフレクタ16はバルブ14から放射される光を反射する。そして、バルブ14からの光およびリフレクタ16で反射した光は、その一部がシェード機構18を構成する回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。
【0020】
図2は、回転シェード12の概略斜視図である。回転シェード12は、回転軸12aを中心にシェード回転モータにより回転される円筒形状の部材である。また、回転シェード12は軸方向に一部が切り欠かれた切欠部22を有し、当該切欠部22以外の外周面12b上に板状のシェードプレート24を複数保持している。回転シェード12は、その回転角度に応じて投影レンズ20の後方焦点を含む後方焦点面の位置に切欠部22または、シェードプレート24のいずれか1つを移動させることができる。そして、回転シェード12の回転角度に対応して光軸X上に位置するシェードプレート24の稜線部の形状に従う配光パターンが形成される。例えば、回転シェード12のシェードプレート24のいずれか1つを光軸X上に移動させてバルブ14から照射された光の一部を遮光することで、ロービーム用配光パターンまたは一部にロービーム用配光パターンの特徴を含む配光パターンを形成する。また、光軸X上に切欠部22を移動させてバルブ14から照射された光を非遮光とすることでハイビーム用配光パターンを形成する。
【0021】
回転シェード12は、例えばモータ駆動により回転可能であり、モータの回転量を制御することで回転所望の配光パターンを形成するためのシェードプレート24または切欠部22を光軸X上に移動させる。なお、回転シェード12の外周面12bの切欠部22を省略して、回転シェード12に、遮光機能だけを持たせてもよい。そして、ハイビーム用配光パターンを形成する場合は、例えばソレノイド等を駆動して回転シェード12を光軸Xの位置から退避させるようにする。このような構成にすることで、例えば、回転シェード12を回転させるモータがフェールしてもロービーム用配光パターンまたはそれに類似する配光パターンで固定される。つまり、回転シェード12がハイビーム用配光パターンの形成姿勢で固定されてしまうことを確実に回避してフェールセーフ機能を実現できる。
【0022】
投影レンズ20は、車両前後方向に延びる光軸X上に配置され、バルブ14は投影レンズ20の後方焦点面よりも後方側に配置される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具ユニット10前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。
【0023】
図3は、上述のように構成された前照灯ユニット210を含む車両用灯具70と、車両の前方を撮像するように車両に配置されたカメラ30と、車両用灯具70における照射制御方式を制御する制御装置50とを含む、車両用灯具システム100の構成図である。
【0024】
図2において、制御装置50および灯具制御部40について示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子で実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0025】
カメラ30は、前走車や対向車、歩行者などの対象物を検出するために対象物の認識手段として車両の前方に設置される。カメラ30は、制御装置50の制御専用のものでもよいし、他のシステムと共用するカメラでもよい。
【0026】
制御装置50は、カメラ30の撮像画像に基づき、車両用灯具70に対して適切な照射制御方式を指示する。制御装置50は、画像検出部52、照射方式決定部54、マップ格納部56、信号出力部58を含む。
【0027】
画像検出部52は、カメラ30から車両の前方を撮像した画像データを受けて、画像データを元に画像内の平均輝度および光点数を求める。平均輝度については、画像を構成する各画素の輝度値を平均することによって求められる。なお、撮像画像全体の平均輝度を求める代わりに、画像の一部領域の平均輝度を求めてもよい。例えば、撮像画像のうち所定長さの周縁部を取り除いた中心領域の平均輝度を計算してもよい。光点数については、画像を構成する各画素のうち、所定値以上の輝度を有する部分の数をカウントすることによって求められる。なお、撮像画像から平均輝度または光点数を求める方法については、任意の方法を用いることができる。
【0028】
マップ格納部56は、輝度および光点数をそれぞれ軸とする二次元マップ上に画成された領域毎に、対応する照射制御方式が定められた制御マップを格納する。この制御マップは、所定値よりも輝度が高くかつ光点数が多い領域に、前走車に対してグレアを与える可能性が少ない照射制御方式が定められているとともに、所定値よりも輝度が低くかつ光点数が少ない領域に、前走車の位置に応じて配光を切り替える照射制御方式が定められている。
【0029】
なお、制御マップの具体例については、図5を参照して後述する。
【0030】
照射方式決定部54は、画像検出部52で求められた平均輝度および光点数の両方を、マップ格納部56内の制御マップに当てはめることによって、車両用灯具70による照射制御方式を決定する。
【0031】
信号出力部58は、照射方式決定部54で決定された照射制御が実施されるように、車両用灯具の灯具制御部40に対して対応する制御信号を出力する。
【0032】
車両用灯具70の灯具制御部40は、制御装置50からの信号を受けて、決定された照射制御方式が実現されるように車両用灯具70の各部を制御する。灯具制御部40は、車両位置検出部76、パターン制御部82、レベリング制御部86を含む。また、車両用灯具のシェード回転モータ28、スイブルアクチュエータ222、レベリングアクチュエータ226、バルブ14、フォグランプ62およびコーナーランプ64は、電力回路60を介して灯具制御部40により制御可能に構成されている。
【0033】
車両位置検出部76は、カメラ30により撮影された画像データを制御装置50から受け取り、車両を示す特徴点を画像データ内で探索することで、前走車の位置を検出する。
【0034】
パターン制御部82は、車両位置検出部76で検出された前走車の有無およびその位置の変化に応じた最適な配光パターンで車両前方を照射すべく、左右の前照灯ユニット210における配光パターンを決定する。そして、決定された配光パターンを作り出すように。電力回路60を通じてシェード回転モータ28、スイブルアクチュエータ222を制御する。
【0035】
例えは、自車の前方に先行車や対向車が検出された場合には、パターン制御部82は、ロービーム用合成配光パターンを形成してグレアを防止するべきであると判定する。そして、パターン制御部82は、左右の前照灯ユニット210におけるシェード回転モータ28を所定量駆動して、回転シェード12によりバルブ14からの光を所定量遮光するロービーム用合成配光パターンを形成する。
【0036】
また、パターン制御部82は自車の前方に先行車や対向車が検出されない場合には、照射範囲を広げたハイビーム用合成配光パターンを形成して運転者の視界を向上させるべきであると判定する。そして、パターン制御部82は、左右の前照灯ユニット210におけるシェード回転モータ28を所定量駆動して、回転シェード12により遮光を行わないハイビーム用合成配光パターンを形成する。
【0037】
また、パターン制御部82は交通法規が左側通行の地域の場合で前走車が存在せず対向車または歩行者が存在する場合には自車線側のみハイビームとする特殊ハイビーム用配光パターンの1つである左片ハイ合成配光パターンを形成すべきと判定する。また、前走車のみ存在し対向車または歩行者が存在しない場合には、対向車線側のみをハイビームにする特殊ハイビーム用配光パターンの1つである右片ハイ合成配光パターンを形成すべきと判定する。そして、パターン制御部82は、左右の前照灯ユニット210におけるシェード回転モータ28を所定量駆動して、それぞれの片ハイ合成配光パターンを形成する。
【0038】
このような前走車に応じたADB(Adaptive Driving Beam)システム自体は周知であるから、本明細書ではこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0039】
さらに、パターン制御部82は、上記のADBを実行する代わりに、前走車の有無に応じてハイビームとロービームを単に使い分けるように配光パターンを形成してもよい。このような前走車の有無に応じたAHB(Auto High Beam)システム自体は周知であるから、本明細書ではこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0040】
レベリング制御部86は、車両位置検出部76で検出された前走車の有無およびその位置の変化に応じた最適な光軸方向で車両前方を照射すべく、左右の前照灯ユニット210におけるレベリングを決定する。そして、決定された光軸方向となるように、電力回路60を通じてレベリングアクチュエータ226を制御する。
【0041】
灯具制御部40は、制御装置50からフォグランプまたはコーナーランプなどの補助灯具の点灯を指示する信号を受け取った場合には、電力回路60を通じてフォグランプ62またはコーナーランプ64を点灯させる。
【0042】
図4(a)、(b)は、従来技術による制御マップの例を示す。図4(a)は、照射制御方式の判定を光点数にのみ基づいて決定する制御マップである。図示するように、光点数が少ない場合には、前走車を正しく検出できている可能性が高いので、ADBのように配光パターンや照射方向を積極的に制御する照射制御方式を採用する。光点数が多い場合には、前走車の位置を誤検出している可能性が高いので、例えばロービームのように前走車のドライバーにグレアを与える可能性の少ない照射制御方式を採用する。
【0043】
しかしながら、このように光点数のみに基づくと、不適切な照射制御方式が選択されてしまう場合がある。例えば、薄暮時のように撮像画像の平均輝度が高い場合(例えば、図4(a)中の点Aのとき)は、画像内の光点数を正確に検出することが困難であるため、複数の光点のうち前走車でないものを車両と認識して、グレアを与えるような照射制御方式に決定してしまう可能性がある。
【0044】
また、図4(b)は、照射制御方式の判定を撮像画像の平均輝度にのみ基づいて決定する制御マップである。図示するように、平均輝度が小さく画面が全体的に暗い場合には、前走車を正しく検出できる可能性が高いので、ADBのように配光パターンや照射方向を積極的に制御する照射制御方式を採用する。平均輝度が大きく画面が全体的に明るい場合には、前走車の位置を誤検出する可能性が高いので、例えばロービームのように前走車のドライバーにグレアを与える可能性の少ない照射制御方式を採用する。
【0045】
しかしながら、このように撮像画像の平均輝度のみに基づくと、不適切な照射制御方式が選択されてしまう場合がある。例えば、画像内に多数の光点が存在するものの、一つ一つの光点の輝度は小さい場合(例えば、図4(b)中の点Bのとき)、平均輝度も小さくなる。このようなとき、平均輝度のみで判断すると、多数の光点のうち前走車でないものを車両と認識して、グレアを与えるような照射制御方式に決定してしまう可能性がある。
【0046】
そこで、本実施形態では、撮像画像中の光点数と平均輝度の両方を考慮した制御マップを使用して、車両用灯具の照射制御方式を決定するようにしている。
【0047】
図5(a)〜(d)は、本実施形態における照射制御方式のマップの例を示す。
【0048】
図5(a)は、選択すべき照射制御方式が二種類の場合の制御マップの例である。図示するように、横軸は光点数を表し、縦軸は平均輝度を表す。この例では、光点数および平均輝度が両方とも小さく撮像画像から前走車を比較的正確に検出できる場合には、配光パターンや照射方向を積極的に制御するADBが選択される。光点数および平均輝度が両方とも大きく、撮像画像から前走車を正確に検出することが困難な場合には、前走車にグレアを与える可能性がADBよりも小さいAHBが選択される。
【0049】
図5(b)は、選択すべき照射制御方式が三種類の場合の制御マップの例である。図5(a)と同様に、横軸は光点数を表し、縦軸は平均輝度を表す。光点数および平均輝度が両方とも比較的小さく撮像画像から前走車を比較的正確に検出できる場合には、配光パターンや照射方向を積極的に制御するADBが選択される。光点数および平均輝度が中程度である場合には、前走車にグレアを与える可能性がADBよりも小さいAHBが選択される。光点数および平均輝度がさらに高い場合には、前走車にグレアを与える可能性のないロービームが選択される。
【0050】
図5(c)は、選択すべき照射制御方式が三種類の場合の制御マップの別の例である。この例では、図5(b)と比較して、ロービームを選択する代わりに、フォグランプやコーナーランプなどの補助灯具の点灯が選択される。
【0051】
図5(d)は、選択すべき照射制御方式が三種類の場合の制御マップのさらに別の例である。この例では、図5(b)と比較して、AHBを選択する代わりに、ロービームのみを用いたレベリングが選択される。
【0052】
図5(a)〜(d)で示した制御マップでは、各照射制御方式の区画の境界線が横軸または縦軸と平行である。しかしながら、これらの境界線は横軸または縦軸に対して傾斜していてもよい。また、区画の境界線は直線でなく曲線であってもよい。例えば、原点を中心とする四分円で境界線が形成されていてもよい。
【0053】
また、制御マップ上で設定すべき照射制御方式の種類は、四つ以上であってもよい。制御マップにおいて、光点数および平均輝度が小さい方から大きい方に向けて、グレアを与える可能性の高い照射制御方式からグレアを与える可能性の少ない照射制御方式の順序で並んでいる限り、照射制御方式の数および種類に制限はない。
【0054】
なお、いずれの制御マップの例においても、光点数軸上および平均輝度軸上における各制御方式を切り替えるしきい値は、任意の基準を用いて決定することができる。例えば、撮像画像中で前走車を正確に認識できる認識率をしきい値にしてもよい。図5(b)を例として説明すると、ADBとAHBの間のしきい値は、光点数軸上および平均輝度軸上で認識率80%とし、AHBとロービームの間のしきい値は、光点数軸上および平均輝度軸上で認識率60%としてもよい。これらのパーセント値は、実車両による実験またはシミュレーションを通じて決定することができる。光点数軸上のしきい値と、平均輝度軸上でのしきい値とが異なっていてもよい。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両前方の撮像画像から検出される前走車位置に基づき前照灯の配光パターンや配光方向を可変する機能を有する車両用灯具システムにおいて、複数の照射制御方式の中からいずれの方式を選択するかを決定するための制御マップを、撮像画像中の光点数および撮像画像の平均輝度の二軸を有する二次元マップとして構成した。これによって、撮像画像における前走車の誤検出に起因して不適切な照射制御方式を選択してしまうことを防止し、したがって前走車にグレアを与えてしまう可能性を低減することができる。
【0056】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくは変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述の各実施形態同士、および上述の各実施形態と以下の変形例との組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わせされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0057】
照射方式決定部は、撮像画像中の光点数が所定値以上であったり、または撮像画像の平均輝度が所定値以上であった場合には、前照灯ユニットを全体的にまたは部分的に減光する省エネモードで照射するよう決定し、信号出力部がそのような制御信号を灯具制御部に対して出力するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 灯具ユニット、 30 カメラ、 40 灯具制御部、 50 制御装置、 52 画像検出部、 54 照射方式決定部、 56 マップ格納部、 58 信号出力部、 60 電力回路、 62 フォグランプ、 64 コーナーランプ、 70 車両用灯具、 100 車両用灯具システム、 210 前照灯ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方を撮像した画像データを受けて、該画像データを元に画像内の輝度および光点数を検出する画像検出部と、
前記輝度および前記光点数の両方を基に、車両用灯具による照射制御方式を決定する照射決定部と、
決定された照射制御が実施されるように前記車両用灯具に制御信号を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記照射決定部は、輝度および光点数をそれぞれ軸とする二次元マップ上に画成された領域毎に対応する照射制御方式が定められた制御マップを参照することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記照射決定部は、所定値よりも輝度が高くかつ光点数が多い領域に、前走車に対してグレアを与える可能性が少ない照射制御方式が定められた制御マップを有することを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記照射決定部は、所定値よりも輝度が低くかつ光点数が少ない領域に、前走車の位置に応じて配光を切り替える照射制御方式が定められた制御マップを有することを特徴とする請求項2または3に記載の制御装置。
【請求項5】
車両前方を撮像する撮像装置と、
複数の照射制御方式にしたがって車両前方を照射可能な車両用灯具と、
前記車両用灯具を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
車両の前方を撮像した画像データを受けて、該画像データを元に画像内の輝度および光点数を検出する画像検出部と、
前記輝度および前記光点数の両方を基に、車両用灯具による照射制御方式を決定する照射決定部と、
決定された照射制御が実施されるように前記車両用灯具に制御信号を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項6】
車両前方を撮像した画像データから検出された輝度および光点数に応じて予め定められている照射制御方式にしたがって車両前方を照射可能に構成されたことを特徴とする車両用灯具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate