説明

制御装置

【課題】 マルチプレクサの異常とセンサの異常とを判別できる制御装置を提供する。
【解決手段】 切り替えスイッチ16によって放電用端子12に接続しサンプリングホールド回路内の電圧をGNDレベルまで放電した後、切り替えスイッチ14または15によってセンサ信号入力端子10または11に接続しA/D変換部19によりセンサ信号をA/D変換し、その後、切り替えスイッチ13によって充電用端子9に接続しサンプリングホールド回路内の電圧を基準電圧VDDレベルまで充電した後、切り替えスイッチ14または15によってセンサ信号入力端子10または11に接続しA/D変換部19によりセンサ信号をA/D変換し、1回目のA/D変換と2回目のA/D変換の変換結果に基づいて、センサの異常とマルチプレクサ8の異常を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたブレーキ制御装置では、マルチプレクサの複数のセンサ信号入力端子の他に、センサ出力電圧の正常範囲外の電圧(例えば、GNDレベルの電圧)が印加された異常検出端子を1つ設け、センサ値のA/D変換前にサンプリングホールド回路の電圧をセンサ出力電圧の正常範囲外になるように放電または充電し、その後、センサ値をサンプリングしたときにA/D変換結果が正常範囲外のままである場合、マルチプレクサ信号の入力端子にオープン異常が発生していると判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-284388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術にあっては、仮にセンサが故障して正常範囲外の信号を出力した場合も同様に異常と判定されるため、マルチプレクサとセンサのどちらに異常が発生しているのかを判別できないという問題があった。
本発明の目的は、マルチプレクサの異常とセンサの異常とを判別できる制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の制御装置は、切り替えスイッチによって放電用端子に接続しサンプリングホールド回路内の電圧を第1の所定電圧以下まで放電した後、切り替えスイッチによってセンサ信号入力端子に接続しA/D変換部によりセンサ信号をA/D変換し、その後、切り替えスイッチによって充電用端子に接続しサンプリングホールド回路内の電圧を第2の所定電圧以上まで充電した後、切り替えスイッチによってセンサ信号入力端子に接続しA/D変換部によりセンサ信号をA/D変換し、1回目のA/D変換と2回目のA/D変換の変換結果に基づいて、センサの異常とマルチプレクサの異常を判別する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、マルチプレクサの異常とセンサの異常とを判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】車両のブレーキ装置におけるブレーキ制御装置の構成図である。
【図2】異常判定部21による異常検出および異常検出後の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図2のステップS5で実行されるA/D変換部入力信号診断処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】異常発生時におけるAD値の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0009】
〔実施例1〕
まず、構成について説明する。
図1は、車両のブレーキ装置におけるブレーキ制御装置の構成図である。
ブレーキペダル(ブレーキ操作装置)1のストローク量は、ストロークセンサ2により検出される。ドライバの踏力は、負圧ブースタ3により倍力されてマスタシリンダ5にブレーキ圧を発生させる。負圧ブースタ3の圧力は、負圧センサ(圧力センサ)4により検出される。ストロークセンサ2および負圧センサ4から出力された信号は、ブレーキ制御用ECU6に入力される。
ブレーキ制御装置としてのブレーキ制御用ECU6は、CPU20を備える。
CPU20は、ストロークセンサ2により検出されたブレーキペダル1のストローク量、負圧センサ4により検出された負圧ブースタ3の圧力に加え、車両に設けられた各センサ(例えば、車輪速センサ、操舵角センサ、横加速度センサ等)から得られた各種情報に基づいて、各輪のホイルシリンダ圧を制御する。
【0010】
ブレーキ制御用ECU6は、各センサが出力するアナログ信号をデジタル信号に変換してCPU20に出力するA/D変換器7を備える。なお、便宜上、図1では、A/D変換器7に入力されるアナログ信号をストロークセンサ2と負圧センサ4からの信号に限定している。よって、以下の説明では、ブレーキ制御用ECU6に入力されるアナログ信号をストロークセンサ2と負圧センサ4からの信号に限定して説明する。
A/D変換器7は、マルチプレクサ8、サンプリングスイッチ17、コンデンサ18およびA/D変換部19を備える。
マルチプレクサ8は、複数の入力信号を任意のタイミングで切り替えてサンプリングスイッチ17に出力する。
サンプリングスイッチ17は、マルチプレクサ8からの出力電圧をある時間取り出す(サンプリングする)。
コンデンサ18は、サンプリングされた電圧値を保存(ホールド)する。サンプリングスイッチ17とコンデンサ18とからサンプリングホールド回路が構成される。
A/D変換部19は、コンデンサ18に保存された電圧をデジタル信号に変換する。
【0011】
マルチプレクサ8は、充電用端子9、2つのセンサ信号入力端子10,11および放電用端子12を有する。
充電用端子9は、基準電圧VDDと接続され、基準電圧VDDレベルまでコンデンサ18を充電するための端子である。ここで、基準電圧VDDは、ストロークセンサ2および負圧センサ4のセンサ信号が正常時に取り得る最大値(第2の所定電圧であって、以下、上限閾値と称す。)よりも高い電圧とする。
センサ信号入力端子10は、ストロークセンサ2からのアナログ信号を入力する端子である。
センサ信号入力端子11は、負圧センサ4からのアナログ信号を入力する端子である。
放電用端子12は、GND(グランド)に接続され、コンデンサ18に充電された電圧をGNDレベルになるまで放電するための端子である。ここで、GNDの電圧は0Vであって、ストロークセンサ2および負圧センサ4のセンサ信号が正常時にとり得る最小値(第1の所定電圧であって、以下、下限閾値と称す。)よりも低い電圧である。
各端子9,10,11,12と出力部24との間には、切り替えスイッチ13,14,15,16が設けられている。切り替えスイッチ13,14,15,16は、各端子9,10,11,12と出力部24との接続を切り替える。出力部24は、サンプリングスイッチ17と接続されている。
ブレーキ制御用ECU6において、ストロークセンサ2,負圧センサ4からセンサ信号入力端子10,11までの経路上には、回路を安定させるためのプルダウン抵抗22,23が設けられている。
【0012】
実施例1のブレーキ制御用ECUでは、各センサ2,4の異常とマルチプレクサ8の異常とを判別する異常判定部(異常判別手段)21を備える。以下、異常判定部21による異常検出処理および異常検出後の処理を説明する。
[異常検出および異常検出後の処理]
図2は、異常判定部21による異常検出および異常検出後の処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。この処理は、所定の演算周期(例えば、10ms周期)で繰り返し実行される。なお、以下の説明では、ストロークセンサ2についてのみ記載しているが、負圧センサ4についても同様の処理を行う。
ステップS1では、CPU20の異常を判定する。
ステップS2では、ステップS1でCPU20に異常なしと判定されたか否かを判定し、YESの場合にはステップS3へ進み、NOの場合にはステップS9へ進む。
ステップS3では、A/D変換部19の異常を判定する。
ステップS4では、ステップS3でA/D変換部19に異常なしと判定されたか否かを判定し、YESの場合にはステップS5へ進み、NOの場合にはステップS9へ進む。
【0013】
ステップS5では、A/D変換部入力信号診断処理を実施する。この処理の詳細については後述する。
ステップS6では、ステップS5でマルチプレクサ8に異常なしと判定されたか否かを判定し、YESの場合にはステップS7へ進み、NOの場合にはステップS9へ進む。
ステップS7では、ステップS5でストロークセンサ2に異常なしと判定されたか否かを判定し、YESの場合にはリターンへ進み、NOの場合にはステップS8へ進む。
ステップS8では、ストロークセンサ2を使用する機能のみを禁止する。
ステップS9では、全ての機能を禁止、すなわち、ブレーキ装置のシステムを遮断する。
ステップS10では、インストルメントパネルに設置した図外のワーニングランプを点灯させる。
ステップS11では、インストルメントパネルに設置した図外のワーニングランプを点灯させる。
【0014】
[A/D変換部入力信号診断処理]
図3は、図2のステップS5で実行されるA/D変換部入力信号診断処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS31では、放電用端子12の切り替えスイッチ16とサンプリングスイッチ17をONし、コンデンサ18の電圧がGNDレベルになるまで放電する(放電手段)。
ステップS32では、切り替えスイッチ16をOFFしてから切り替えスイッチ15をONし、コンデンサ18がセンサ信号入力端子11に印加されている電圧になるまで充電する。
ステップS33では、切り替えスイッチ15とサンプリングスイッチ17をOFFした状態でA/D変換部19によりA/D変換を実施し、1回目のAD値を取得する。ステップS32とステップS33により第1センサ信号A/D変換手段が構成される。
ステップS34では、充電用端子9の切り替えスイッチ13とサンプリングスイッチ17をONし、コンデンサ18の電圧が基準電圧VDDレベルになるまで充電する(充電手段)。
ステップS35では、切り替えスイッチ13をOFFしてから切り替えスイッチ15をONし、コンデンサ18がセンサ信号入力端子11に印加されている電圧になるまで充電する。
ステップS36では、切り替えスイッチ15とサンプリングスイッチ17をOFFした状態でA/D変換部19によりA/D変換を実施し、2回目のAD値を取得する。ステップS35とステップS36とにより第2センサ信号A/D変換手段が構成される。
【0015】
ステップS37では、1回目のAD値が下限閾値未満、かつ、2回目のAD値が上限閾値を超えるか否かを判定し、YESの場合にはステップS40へ進み、NOの場合にはステップS38へ進む。
ステップS38では、1回目のAD値と2回目のADが共に下限閾値未満であるか否かを判定し、YESの場合にはステップS41へ進み、NOの場合にはステップS39へ進む。
ステップS39では、1回目のAD値と2回目のAD値が共に上限閾値を超えるか否かを判定し、YESの場合にはステップS42へ進み、NOの場合にはステップS43へ進む。
ステップS40では、マルチプレクサ8にオープン異常が発生していると判定し、本制御を終了する。(マルチプレクサ異常判別手段)
ステップS41では、センサ異常(下限閾値よりも低い電圧に固着)またはセンサ信号経路に地絡(断線)が発生していると判定し、本制御を終了する(センサ異常判別手段)。
ステップS42では、センサ異常(上限閾値よりも高い電圧に固着)またはセンサ信号経路に天絡が発生していると判定し、本制御を終了する(センサ異常判別手段)。
ステップS43では、マルチプレクサ8およびセンサ(センサ信号経路を含む)に異常なしと判定し、本制御を終了する。
【0016】
次に、作用を説明する。
[A/D変換部入力信号診断作用]
(正常時)
マルチプレクサ8およびセンサ(センサ信号経路を含む)が正常である場合、A/D変換部入力信号診断処理のステップS32で切り替えスイッチ15をONしたとき、コンデンサ18はセンサ信号入力端子11に印加されている電圧になるまで充電されるため、ステップS33のA/D変換により得られるAD値(1回目のAD値)は、センサ信号入力端子11センサ信号入力端子11に印加されている電圧となる。また、ステップS35で切り替えスイッチ15をオンしたとき、コンデンサ18はセンサ信号入力端子11に印加されている電圧になるまで放電されるため、ステップS36のA/D変換による得られるAD値(2回目のAD値)は、センサ信号入力端子11に印加されている電圧となる。
よって、1回目と2回目のAD値が共に下限閾値と上限閾値との間の範囲内(正常範囲内)にある場合、マルチプレクサ8およびセンサが正常であると判別できる。
(マルチプレクサのオープン異常)
マルチプレクサ8内のストロークセンサ信号回路にオープン異常が発生している場合、ステップS32で切り替えスイッチ15をONしたとき、コンデンサ18は充電されず、下限閾値よりも低いGNDレベルに放電されたままである。このため、1回目のAD値はGNDレベルとなる。また、ステップS35で切り替えスイッチ15をONしてもコンデンサ18は放電されないため、コンデンサ18は上限閾値よりも高い基準電圧VDDレベルに充電されたままである。このため、2回目のAD値は基準電圧VDDレベルとなる。
よって、図4(a)に示すように、1回目のAD値が下限閾値よりも低く、2回目のAD値が上限閾値よりも高い場合には、マルチプレクサ8のオープン異常であると判別できる。
【0017】
(下限閾値よりも低い電圧に固着または地絡によるセンサ異常)
ストロークセンサ2が故障して下限閾値よりも低い電圧に固着、またはセンサ信号経路が地絡(断線)している場合、ステップS32で切り替えスイッチ15をONしてもコンデンサ18は充電されず、下限閾値よりも低いGNDレベルのままである。このため、1回目のAD値はGNDレベルの値となる。また、ステップS35で切り替えスイッチ15をONすると、コンデンサ18は下限閾値よりも低い値まで放電される。このため、2回目のAD値は下限閾値よりも低い値となる。
よって、図4(b)に示すように、1回目と2回目のAD値が共に下限閾値よりも低い場合には、ストロークセンサ2が下限閾値よりも低い電圧に固着、またはセンサ信号経路が地絡(断線)していると判別できる。
(上限閾値よりも高い電圧に固着または天絡によるセンサ異常)
ストロークセンサ2が故障して上限閾値よりも高い電圧に固着、またはセンサ信号経路が天絡している場合、ステップS32で切り替えスイッチ15をONするとコンデンサ18は基準電圧VDDレベルまで充電される。このため、1回目のAD値は基準電圧VDDレベルとなる。また、ステップS35で切り替えスイッチ15をONしても、コンデンサ18は放電されないため、コンデンサ18は基準電圧VDDレベルに充電されたままである。このため、2回目のAD値は基準電圧VDDレベルとなる。
よって、図4(c)に示すように、1回目と2回目のAD値が共に上限閾値よりも高い場合には、ストロークセンサ2が上限閾値よりも高い電圧に固着、またはセンサ信号経路が天絡していると判別できる。
【0018】
[異常検出作用]
ABSや横滑り防止装置に代表されるブレーキ制御装置は、各種センサによって車両状態やドライバの動作状態をセンシングし、その情報に基づいて各輪のブレーキ液を制御している。ブレーキ制御装置には、センサが出力するアナログ信号をCPUが認識可能なデジタル信号に変換するためのA/D変換部が設けられている。
また、今日のブレーキ制御装置に採用されている一般的なマイコンには、マイコンに入力される複数のセンサ信号からA/D変換する信号を切り替える機能を持ったマルチプレクサが、A/D変換部とセンサとの間に配置されている。
ここで、マルチプレクサに異常が発生した場合、CPUはセンサ情報を誤って認識することになり、ブレーキ制御装置の誤作動を引き起こす可能性がある。したがって、ブレーキ制御装置には、マルチプレクサの異常を検出する装置が設けられている。
【0019】
従来のブレーキ制御装置では、マルチプレクサの複数のセンサ信号入力端子の他に、センサ出力電圧の正常範囲外の電圧(例えば、GNDレベルの電圧)が印加された異常検出端子を1つ設け、センサ値のA/D変換前にサンプリングホールド回路の電圧をセンサ出力電圧の正常範囲外になるように放電または充電し、その後、センサ値をサンプリングしたときにA/D変換結果が正常範囲外のままである場合、マルチプレクサ信号の入力端子にオープン異常が発生していると判定している。
ところが、上記方法では、仮にセンサが故障して正常範囲外の信号を出力した場合も同様に異常と判定されるため、マルチプレクサとセンサのどちらに異常が発生しているのか、すなわち、異常個所を特定できないという問題があった。詳述すると、異常検出端子を用いてA/D変換前にサンプリングホールド回路の電圧を下限閾値よりも低い値(GNDレベル)まで放電する構成とした場合、マルチプレクサのオープン異常とセンサ異常(下限閾値よりも低い電圧に固着または地絡)とが判別不能である。一方、A/D変換前にサンプリングホールド回路の電圧を上限閾値よりも高い値(基準電圧VDDレベル)まで充電する構成とした場合、マルチプレクサのオープン異常とセンサ異常(上限閾値よりも高い電圧に固着または天絡)とが判別不能である。
【0020】
このため、上記従来装置では、ディーラー等の作業員が1つ1つ手作業で部品を点検し、異常個所を特定する必要があった。また、作業員による異常個所の特定が不可能である場合、疑われる部分を全て交換することとなり、不要な部品交換を強いられるという問題があった。ブレーキ制御装置の場合、実際はセンサが故障している場合であっても、故障部品を特定できないときには、センサとブレーキ制御用ECUの両方を交換しなければならない。
これに対し、実施例1のブレーキ制御装置では、マルチプレクサ8に、基準電圧VDDと接続された充電用端子9とGNDに接続された放電用端子12との2つの異常検出端子を備える。異常検出処理では、サンプリングホールド回路のコンデンサ18の電圧をGNDレベルまで放電した後のセンサ値のAD値(1回目のAD値)と、コンデンサ18の電圧を基準電圧VDDレベルまで充電した後のセンサ値のAD値(2回目のAD値)とに基づいてマルチプレクサ8のオープン異常とセンサの異常とを判別する。
よって、1回目のAD値と2回目のAD値との組み合わせにより、マルチプレクサ8の異常とセンサの異常とを判別できるため、異常個所を特定でき、作業員の点検工数削減、不要な部品交換防止によるコスト低減を実現できる。
【0021】
[異常個所特定後のブレーキ装置の機能制限作用]
実施例1では、マルチプレクサ8の異常と判定された場合、ブレーキ装置のシステムを遮断する一方、センサの異常と判定された場合、ブレーキ装置の機能のうち当該センサを使用する機能を禁止する。
マルチプレクサ8に異常が発生した場合、車両に設けられた各センサから正確な車両情報が得られなくなるため、全てにブレーキ制御に支障を来す。よって、この場合はブレーキ装置のシステムを遮断することで、ABSや横滑り防止制御の誤作動を防止する。一方、特定のセンサに異常が発生している場合、他のセンサから正確な車両情報を得ることができるため、当該異常が発生したセンサに依存するブレーキ制御のみを禁止し、他のブレーキ制御は生かしておくことで、禁止するブレーキ制御を最小限に抑えることができる。
すなわち、実施例1では、マルチプレクサ8の異常とセンサの異常とを判別できるため、異常と判定されたセンサに依存しないブレーキ制御の継続が可能となった。
[異常個所特定後の警報作用]
実施例1では、マルチプレクサ8の異常と判定された場合、またはセンサの異常と判定された場合、ワーニングランプを点灯させてドライバに異常発生を知らせる。これにより、ブレーキ制御装置に異常が発生したことをドライバに認識させ、ディーラーや修理工場への移動、または車両停止を促すことができる。
【0022】
次に、効果を説明する。
実施例1のブレーキ制御装置にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
(1) センサ(ストロークセンサ2および負圧センサ4)からの信号を入力するセンサ信号入力端子10,11と、基準電圧VDDを入力する充電用端子9と、充電用端子9から充電された電圧を放電する放電用端子12と、各端子9,10,11,12と出力部24への接続を切り替えるための複数の切り替えスイッチ13,14,15,16とを有するマルチプレクサ8と、出力部24からの出力をA/D変換するA/D変換部19と、出力部24とA/D変換部19との間に接続されたサンプリングスイッチ17と、サンプリングスイッチ17とA/D変換部19との間とGNDとの間に接続されたコンデンサ18と、を備えたサンプリングホールド回路と、切り替えスイッチ16によって放電用端子12に接続しサンプリングホールド回路内の電圧を下限閾値よりも低いGNDレベルまで放電する放電手段(ステップS31)と、放電手段の後に切り替えスイッチ14または15によってセンサ信号入力端子10または11に接続しA/D変換部19によりセンサ信号をA/D変換する第1センサ信号A/D変換手段(ステップS32,S33)と、第1センサ信号A/D変換手段の後に切り替えスイッチ13によって充電用端子9に接続しサンプリングホールド回路内の電圧を上限電圧よりも高い基準電圧VDDレベルまで充電する充電手段(ステップS34)と、充電手段の後に切り替えスイッチ14または15によってセンサ信号入力端子10または11に接続しA/D変換部19によりセンサ信号をA/D変換する第2センサ信号A/D変換手段(ステップS35,S36)と、第1センサ信号A/D変換手段と第2センサ信号A/D変換手段とのA/D変換結果である1回目のAD値と2回目のAD値とに基づいて、センサの異常とマルチプレクサ8の異常を判別する異常判定部21を備えた。
これにより、マルチプレクサ8の異常とセンサの異常とを判別できるため、異常個所を特定でき、作業員の点検工数削減、不要な部品交換防止によるコスト低減を実現できる。
【0023】
(2) 異常判定部21は、1回目のAD値が下限閾値未満で、かつ、2回目のAD値が上限閾値を超える場合にマルチプレクサ8の異常と判定するマルチプレクサ異常判別手段(ステップS40)と、1回目のAD値が下限閾値未満で、かつ、2回目のAD値が下限閾値未満の場合、および、1回目のAD値が上限閾値を超え、かつ、2回目のAD値が上限閾値を超える場合にストロークセンサ2または負圧センサ4の異常と判別するセンサ異常判別手段(ステップS41,S42)と、を備えた。
これにより、マルチプレクサ8のオープン異常と、ストロークセンサ2の下限閾値を下回る低電圧での固着または地絡(断線)による異常と、ストロークセンサ2の下限閾値を上回る高電圧での固着または天絡による異常と、を判別できる。
【0024】
(3) センサは車両に搭載されたブレーキ操作装置の操作量を検出するストロークセンサ2と、車両に搭載されブレーキ操作装置の操作力を倍力する負圧ブースタ3の圧力を検出する負圧センサ4であって、異常判定部21は、各センサ2,4に対して異常判別を実施する。
これにより、ストロークセンサ2または負圧ブースタ3の異常を判別できるため、当該異常が発生したセンサに依存するブレーキ制御を禁止することで、センサ異常に伴うブレーキ制御装置の誤作動を防止できる。
【0025】
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例1では、ブレーキ制御用ECU6に入力されるアナログ信号をストロークセンサ2と負圧センサ4からの信号に限定して説明したが、本発明は、ブレーキ制御に用いられる他のセンサ(例えば、車輪速センサ、操舵角センサ、横加速度センサ等)の故障判定にも適用でき、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
また、本発明は、ブレーキ制御装置に限らず、複数のセンサ信号入力端子を備えた制御装置に適用でき、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
2 ストロークセンサ
4 負圧センサ(圧力センサ)
8 マルチプレクサ
9 充電用端子
10 センサ信号入力端子
11 センサ信号入力端子
12 放電用端子
13 切り替えスイッチ
14 切り替えスイッチ
15 切り替えスイッチ
16 切り替えスイッチ
17 サンプリングスイッチ(サンプリングホールド回路)
18 コンデンサ(サンプリングホールド回路)
19 A/D変換部
21 異常判定部(異常判別手段)
24 出力部
S31 放電手段
S32,S33 第1センサ信号A/D変換手段
S34 充電手段
S35,S36 第2センサ信号A/D変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態量を検出するセンサからの信号を入力するセンサ信号入力端子と、基準電圧を入力する充電用端子と、前記充電用端子から充電された電圧を放電する放電用端子と、前記各端子と出力部への接続を切り替えるための複数の切り替えスイッチとを有するマルチプレクサと、
前記出力部からの出力をA/D変換するA/D変換部と、
前記出力部と前記A/D変換部との間に接続されたサンプリングスイッチと、前記サンプリングスイッチと前記A/D変換部との間とグランドとの間に接続されたコンデンサと、を備えたサンプリングホールド回路と、
前記切り替えスイッチによって前記放電用端子に接続し前記サンプリングホールド回路内の電圧を第1の所定電圧以下まで放電する放電手段と、
前記放電手段の後に前記切り替えスイッチによって前記センサ信号入力端子に接続し前記A/D変換部によりセンサ信号をA/D変換する第1センサ信号A/D変換手段と、
前記第1センサ信号A/D変換手段の後に前記切り替えスイッチによって前記充電用端子に接続し前記サンプリングホールド回路内の電圧を第2の所定電圧以上まで充電する充電手段と、
前記充電手段の後に前記切り替えスイッチによって前記センサ信号入力端子に接続し前記A/D変換部によりセンサ信号をA/D変換する第2センサ信号A/D変換手段と、
前記第1センサ信号A/D変換手段と前記第2センサ信号A/D変換手段とのA/D変換結果に基づいて、前記センサの異常と前記マルチプレクサの異常を判別する異常判別手段を備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記異常判別手段は、
前記第1センサ信号A/D変換手段によるAD値が前記第1の所定電圧未満で、かつ、前記第2センサ信号A/D変換手段によるAD値が前記第2の所定電圧を超える場合に前記マルチプレクサの異常と判定するマルチプレクサ異常判別手段と、
前記第1センサ信号A/D変換手段によるAD値が前記第1の所定電圧未満で、かつ、前記第2センサ信号A/D変換手段によるAD値が前記第1の所定電圧未満の場合、および、前記第1センサ信号A/D変換手段によるAD値が前記第2の所定電圧を超え、かつ、前記第2センサ信号A/D変換手段によるAD値が前記第2の所定電圧を超える場合に前記センサの異常と判別するセンサ異常判別手段と、
を備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の制御装置において、
前記センサは車両に搭載されたブレーキ操作装置の操作量を検出するストロークセンサと、車両に搭載され前記ブレーキ操作装置の操作力を倍力する負圧ブースタの圧力を検出する圧力センサであって、
前記各センサに対して前記異常判別手段を実施することを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−245943(P2012−245943A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121187(P2011−121187)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】