説明

刺激応答性無機材料粒子及びその製造方法

【課題】500℃以上といった高温での焼成を必要としない温和な条件で、有機物を多量に添加することなく、良好な成形性と成形後の保形性を確保できることに加え、欠陥が少なく機械的強度が高い良好な品質の成形体を得ることができる激応答性無機材料粒子とその製造方法を提供する。
【解決手段】無機材料粒子に、有機原子団を含み、外部刺激に応答して他の官能基との結合反応が惹起される官能基(刺激応答性官能基)を有する修飾原子団、が化学修飾された刺激応答性無機材料粒子及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスや金属等の無機材料によって構成される無機材料成形体の製造に好適な刺激応答性無機材料粒子及びその製造方法に関するものである。具体的には、500℃以上といった高温での焼成を必要としない温和な条件で、機械的強度の高い成形体を得ることができる無機材料成形体の製造に好適に用いられる刺激応答性無機材料粒子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミックや金属等の無機材料は、プラスティック等の有機材料と比較して機械的強度や耐久性に優れることから、構造材料や電気・電子材料等、様々な用途で用いられている。そして、これらの無機材料は各々の用途に適合する形状に成形された成形体(無機材料成形体)として用いられることが一般的である。
【0003】
このような無機材料成形体の製造方法としては、例えば、骨材粒子(セラミックス粉末等)、分散媒(水等)、有機バインダー等を混合・混練して坏土を得、その坏土を押出成形等の方法により成形し、乾燥し、焼成することによりセラミックス焼結体を得る無機材料成形体の製造方法が開示されている(高温焼結法:例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、骨材粒子(セラミックス粉末等)、分散媒(水等)、有機バインダー等を混合してスラリー(スリップ)を得、そのスラリーを多孔体からなる吸水性の成形型に注型し、スラリーを乾燥・固化させた後、脱脂することにより無機材料成形体を得る製造方法が開示されている(鋳込み成形法(スリップキャスティング法):例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
更には、骨材粒子(セラミックス粉末等)、分散媒(水等)、ゲル化剤(モノマーやプレポリマー等)等を混合してスラリーを得、そのスラリーを成形型に注型し、加熱や重合開始剤の添加等によりゲル化剤をゲル化させてスラリーを固化させた後、脱脂することにより無機材料成形体を得る製造方法が開示されている(ゲルキャスト法:例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3227039号公報
【特許文献2】特開2002−179468号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】社団法人日本セラミックス協会編、セラミックス工学ハンドブック、第2版、技報堂出版、2002年、p.176〜178
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高温焼結法は、焼成によって物質の拡散を惹起し、骨材粒子間に結合を形成させるため、高強度の無機材料成形体を得ることができるという利点がある。しかしながら、500〜2000℃の高温での焼成が必要であるため、製造に際して多大なエネルギーを必要とすることに加えて、特殊な高温設備が必要となるという設備上の制約がある。また、良好な成形性と成形後の保形性を確保するためには、骨材粒子100質量部に対して10〜15質量部といった多量の有機バインダーを添加する必要がある。この多量の有機バインダーに起因して、焼成時において、i)有機バインダーの占有空間がボイド(欠陥)となり、焼結体の機械的強度が低下する、ii)有機バインダーが燃焼する際に熱応力が作用し、焼結体にクラック(欠陥)が発生する、iii)有機バインダーが燃焼する分、焼成時間が延びる、iv)有機バインダーの燃焼によって二酸化炭素や有害ガスが発生するため、地球温暖化や大気汚染の原因となる、といった様々な課題が残されており、未だ十分に満足できるものではなかった。
【0009】
鋳込み成形法やゲルキャスト法は、必ずしも高温での焼成を行う必要がないため、高温焼結法と比較して製造時の消費エネルギーを削減することができ、設備上の制約も少ないという利点がある。しかしながら、これらの方法も、良好な成形性と成形後の保形性を確保するためには、多量の有機バインダーないしはゲル化剤を添加する必要があった。即ち、これらの方法も、成形体中に多量の有機物が含まれる点については高温焼結法と何ら変わっておらず、その有機物に起因して高温焼結法と同様の課題が残されており、なお改善の余地を残すものであった。
【0010】
以上説明したように、現在のところ、500℃以上といった高温での焼成を必要としない温和な条件で、有機物を多量に添加することなく、良好な成形性と成形後の保形性を確保できることに加え、欠陥が少なく機械的強度が高い良好な品質の成形体を得られる無機材料成形体の製造に有用な刺激応答性無機材料粒子及びその製造方法は未だ開示されておらず、そのような無機材料粒子及び製造方法を創出することが産業界から切望されている。
【0011】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、500℃以上といった高温での焼成を必要としない温和な条件で、有機物を多量に添加することなく、良好な成形性と成形後の保形性を確保できることに加え、欠陥が少なく機械的強度が高い良好な品質の成形体を得られる無機材料成形体用の刺激応答性無機材料粒子及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、無機材料成形体及びその製造方法を開発するに際し、従来の方法において、500℃以上といった高温で焼成しなければ骨材粒子間に強固な結合を形成することができず、有機物を多量に添加しなければ、良好な成形性と成形後の保形性を確保することができない原因について検討した。
【0013】
その結果、従来の方法では、i)500℃に至らない温度域では物質の拡散を惹起して骨材粒子間に結合を形成させることが困難である、ii)有機バインダーやゲル化剤等は骨材粒子の表面に吸着され、或いは緩やかに結合しているに過ぎず、骨材粒子同士を結びつける結合力が十分でない、iii)骨材粒子となる無機材料粒子と、有機バインダーやゲル化剤等の有機物との親和性が低く、これらが相分離して部分的に凝集してしまうため、有機バインダーやゲル化剤が有効に機能していない、等の原因により、500℃以上といった高温で焼成しなければ無機材料粒子間に強固な結合を形成することができず、有機物を多量に添加しなければ、良好な成形性と成形後の保形性を確保できないことが判明した。
【0014】
そこで、本発明者らが鋭意検討を行った結果、骨材粒子となる無機材料粒子同士を、有機原子団を含む架橋原子団を介して共有結合という強固な結合によって相互に結合させることにより、500℃以上といった高温での焼成を必要としない温和な条件で、有機物を多量に添加することなく、良好な成形性と成形後の保形性を確保できることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明は、無機材料成形体及びその製造方法に好適に用いられる刺激応答性無機材料粒子及びその製造方法を提供するものである。
【0015】
[1] (A):無機材料からなる無機材料粒子と、(B):有機原子団を含み、外部刺激に応答して他の官能基との結合反応が惹起される官能基(刺激応答性官能基)としてフェニルアジド基(−C−N)を有する修飾原子団と、を構成要素として備え、前記(B):修飾原子団が、前記(A):無機材料粒子に対して共有結合によって結合された構造を有する刺激応答性無機材料粒子。
【0016】
[2] 刺激応答性無機材料粒子が、フェニルアジド基(−C−N)とアミド基(−NHCO−)を同時に有する、上記[1]に記載の刺激応答性無機材料粒子。
【0017】
[3] 刺激応答性無機材料粒子の有機物量が約0.8質量%である、上記[1]または[2]に記載の刺激応答性無機材料粒子。
【0018】
[4] 無機材料からなる無機材料粒子と、有機原子団を含み、外部刺激に応答して他の官能基との結合反応が惹起される官能基(刺激応答性官能基)としてフェニルアジド基(−C−N)を有する修飾原子団と、を構成要素として備え、前記修飾原子団が、前記無機材料粒子に対して共有結合によって結合された構造を有する刺激応答性無機材料粒子の製造方法であって、前記無機材料粒子として、酸化物系セラミックス、非酸化物系セラミックス、及び金属の群から選択される少なくとも一種の無機材料からなるものを用い、その無機材料粒子に対して、前記刺激応答性官能基を有する修飾原子団を化学修飾する、刺激応答性無機材料粒子の製造方法。
【0019】
[5] 第1工程:前記無機材料粒子に対して、シラン系カップリング剤を作用させ、前記無機材料粒子とシラン系カップリング剤との間で縮合反応を起こさせることによって、シラノール残基が前記無機材料粒子に対して共有結合によって結合された構造を有するシラノール結合無機材料粒子を得、第2工程:前記シラノール結合無機材料粒子に対して、前記刺激応答性感応基を有する有機化合物を作用させ、前記シラノール結合無機材料粒子と前記有機化合物との間で結合形成反応を起こさせることによって、前記修飾原子団を形成し、前記刺激応答性無機材料粒子を得る、上記[4]に記載の刺激応答性無機材料粒子の製造方法。
【0020】
[6] 無機材料からなる無機材料粒子が、表面水酸基を有するものである、上記[4]または[5]に記載の刺激応答性無機材料粒子の製造方法。
【0021】
[7] 刺激応答性感応基を有する有機化合物が、アジド安息香酸である、上記[4]〜[6]のいずれかに記載の刺激応答性無機材料粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の刺激応答性無機材料粒子は、これを用いて無機材料成形体を製造するに際し、500℃以上といった高温での焼成を必要としない温和な条件で、有機物を多量に添加することなく、良好な成形性と成形後の保形性を確保できることに加え、欠陥が少なく機械的強度が高い良好な品質の成形体を得ることができるという、従来の無機材料粒子及び製造方法と比較して有利な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】シリカ粒子、シラノール結合シリカ粒子、刺激応答性シリカ粒子、及びシリカ成形体を赤外分光により分析した結果を示すIRチャートである。
【図2】シリカ粒子、及び刺激応答性シリカ粒子を熱分析した結果を示す熱分析チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の刺激応答性無機材料粒子及びその製造方法を実施するための最良の形態について具体的に説明する。但し、本発明は、骨材粒子となる無機材料粒子の各々を有機原子団を含む架橋原子団によって相互に結合するという思想に基づく無機材料成形体及びその製造方法を広く包含するものであり、以下に説明する実施形態に限定して解釈されるべきではない。
【0025】
本発明の刺激応答性無機材料粒子を使用して無機材料成形体を製造する方法は、骨材粒子となる無機材料粒子と、有機原子団を含む架橋原子団とを構成要素として備え、架橋原子団が無機材料粒子に対して共有結合によって結合され、無機材料粒子の各々が架橋原子団によって相互に結合された構造を有する無機材料成形体を得る方法である。
【0026】
[1]第1工程
本発明の刺激応答性無機材料粒子を原料として用い、無機材料成形体を製造する方法の第1工程は、刺激応答性無機材料粒子を含む混合物を所望形状に成形して成形体前駆体を得る、成形体前駆体製造工程である。
【0027】
骨材粒子は、成形体の主たる構成成分となる粒子であり、無機材料成形体を製造する場合には、無機材料からなる無機材料粒子が用いられる。そして本発明の製造方法においては、刺激応答性無機材料粒子を原料として用いる必要がある。
【0028】
本明細書にいう「刺激応答性無機材料粒子」とは、有機原子団を含み、刺激応答性官能基を有する修飾原子団、が化学修飾された無機材料粒子である。
【0029】
「修飾原子団」は、有機原子団を含むことと、外部刺激に応答して他の官能基との結合反応が惹起される官能基(刺激応答性官能基)を有することが必要である。「有機原子団」とは、炭素原子を構成原子として含む原子団を意味し、他の構造については特に限定はない。有機原子団を含む修飾原子団は、その構造を適宜選択することにより、500〜2000℃といった高温条件下でなくとも容易かつ高い効率で、無機材料粒子間に強固な結合を形成させることが可能となる点において好ましい。
【0030】
「刺激応答性官能基」とは、外部刺激に応答して他の官能基との結合反応が惹起される官能基を意味する。この刺激応答性官能基と他の官能基との間の結合反応を利用することにより、無機材料粒子の各々を相互に結合する架橋原子団を形成させることが可能となる。
【0031】
「外部刺激」とは、外部環境から供給される物理的ないし化学的刺激等を意味し、例えば、熱刺激(加熱)、光刺激(光照射)、電気刺激(電圧印加)、磁気刺激等の物理的刺激や、pH変化(酸・アルカリの添加)や水分の変化等の化学的刺激が挙げられる。本発明の製造方法は、500℃以上といった高温での焼成を必要としない温和な条件で、機械的強度の高い成形体を得ることを念頭にしているため、そのような条件に合致する外部刺激により他の官能基との結合反応が惹起されることが望ましい。そのような外部刺激としては、例えば、光照射、マイクロ波照射、超音波照射、低温での加熱、常温プラズマ等が挙げられる。
【0032】
刺激応答性官能基としては、光照射によってアミノ基(−NH)との間の結合反応が惹起され、ヒドラゾ結合(−NHNH−)を形成するフェニルアジド基(−C−N)等が挙げられる。また、刺激応答性官能基には、フェニルアジド基のように一つの官能基の作用によって結合反応が惹起されるものの他、2つの官能基の相互作用によって、結合反応が惹起されるものも含まれる。例えば、刺激応答性官能基として、アミノ基(−NH)とカルボキシル基(−COOH)の組み合わせを用いると、マイクロ波照射によって両官能基の間で結合反応が惹起され、イミド結合(−N(CO−))を形成させることができ、300℃以下の加熱によって、アミド結合(−NHCO−)を形成させることもできる。
【0033】
ここで、刺激応答性無機材料粒子の製造方法について説明する。刺激応答性無機材料粒子の製造は、無機材料粒子に対して、刺激応答性官能基を有する修飾原子団を化学修飾することにより行われる。従って、「無機材料粒子」は、修飾原子団と共有結合を形成することが可能な結合サイト(水酸基等)を有する無機材料からなるものを用いることが好ましく、例えば、表面水酸基を有する酸化物セラミックスからなる粒子を好適に用いることができる。また、非酸化物系セラミックスや金属からなる粒子も、空気酸化によってその表面に不可避的に酸化物セラミックスが形成されるため(表面酸化膜)、「無機材料粒子」として用いることができる。即ち、本発明の製造方法においては、酸化物系セラミックス、非酸化物系セラミックス、及び金属の群から選択される少なくとも一種の無機材料からなる無機材料粒子を用いることが好ましい。
【0034】
酸化物セラミックスとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の汎用セラミックスの他、バリア、セリア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン等の金属酸化物等が挙げられる。これらの酸化物セラミックスは結合サイトとなる表面水酸基を有しており、修飾原子団の化学修飾が容易である点において好ましい。また、非酸化物セラミックスとしては、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が、金属としては、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、バリウム、セリウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン等が挙げられる。
【0035】
「無機材料粒子」の平均粒子径としては、1nm〜50μmの範囲内であることが好ましく、10〜500nmの範囲内であることがより好ましい。上記範囲未満であると無機材料粒子の比表面積が過剰となり、無機材料粒子の単位質量当たりに占める修飾原子団の割合が大きくなり過ぎるおそれがある。このような場合、本発明が目的とする有機物含有量が少ない無機材料成形体を得られなくなるおそれがあり好ましくない。一方、上記範囲を超えると、無機材料粒子表面の活性が低下して修飾原子団との結合を形成し難くなる場合があり、また、スラリーとした際に無機材料粒子が沈降し易くなり、その取り扱いが困難となる場合がある。なお、本明細書において「平均粒子径」というときは、ストークスの液相沈降法を測定原理とし、X線透過法により検出を行う、X線透過式粒度分布測定装置(例えば、商品名:セディグラフ5000−02型、島津製作所製等)により測定した50%粒子径の値を意味するものとする。
【0036】
修飾原子団を化学修飾する方法は特に限定されず、従来公知の化学修飾法を利用することができる。例えば、カップリング剤により有機分子を固定する方法、オートクレーブ法により有機分子を固定する方法、コロナ放電による表面改質を利用する方法、オゾンによる表面改質を利用する方法等が挙げられる。中でも、簡便に強固な結合を形成することが可能であるという理由から、カップリング剤により有機分子を固定する方法を用いることが好ましい。
【0037】
カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、クロム系カップリング剤等が知られているが、安定な水/メタノール溶液を容易に得られる点においてシラン系カップリング剤を用いることが好ましい。
【0038】
シラン系カップリング剤を利用した化学修飾の方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
【0039】
まず、無機材料粒子に対して、シラン系カップリング剤を作用させ、無機材料粒子とシラン系カップリング剤との間で縮合反応を起こさせることによって、シラノール残基が前記無機材料粒子に対して共有結合によって結合された構造を有するシラノール結合無機材料粒子を得る(第1工程)。
【0040】
例えば、下記一般式(1)に示すように、無機材料粒子(I)に対して、シラン系カップリング剤(II)を作用させ、無機材料粒子(I)の表面水酸基(OH)とシラン系カップリング剤(II)の加水分解性官能基(Hy,Hy,Hy)との間で縮合反応を起こさせることによって、シラノール残基が前記無機材料粒子に対して共有結合によって結合された構造を有するシラノール結合無機材料粒子(III)を得る。
【化1】

(但し、Hy,Hy,Hy:加水分解性官能基、A:有機原子団、Re:反応性官能基、Pi:無機材料粒子)
【0041】
加水分解性官能基(Hy,Hy,Hy)としては、例えば、アルコキシ基(RO−:Rはアルキル基)等が挙げられる。各々の官能基は同じ官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。アルコキシ基の場合、水の存在により加水分解されてシラノール基(Si−OH)を生成し、そのシラノール基が水素結合によって無機材料粒子の表面水酸基に吸着される。このものを高温で加熱することにより、シラノール基と表面水酸基とが脱水縮合し、シラノール残基が無機材料粒子に対して共有結合によって結合される。
【0042】
次いで、シラノール結合無機材料粒子に対して、刺激応答性感応基を有する有機化合物を作用させ、シラノール結合無機材料粒子とその有機化合物との間で結合形成反応を起こさせることによって、修飾原子団を形成し、刺激応答性無機材料粒子を得る(第2工程)。
【0043】
例えば、下記一般式(2)に示すように、シラノール結合無機材料粒子(III)に対して、刺激応答性感応基Stを有する有機化合物(IV)を作用させ、シラノール結合無機材料粒子(III)の反応性官能基Reと前記有機化合物(IV)の反応性官能基Reとの間で結合形成反応を起こさせることによって、修飾原子団を形成し、刺激応答性無機材料粒子(V)を得る。
【化2】

(但し、A,E:有機原子団、Re,Re:反応性官能基、Pi:無機材料粒子、St:刺激応答性感応基、G:結合又は原子団)
【0044】
反応性官能基Re、及び反応性官能基Reとしては、例えば、アミノ基とカルボキシル基の組み合わせ等が挙げられる。このような官能基の組み合わせを用いた場合、300℃以下の加熱によって、アミド結合を形成させることができ、修飾原子団を形成することができる。
【0045】
上記の方法の他、無機材料粒子に対して、刺激応答性感応基Stを有するシラン系カップリング剤を作用させ、無機材料粒子の表面水酸基とシラン系カップリング剤の加水分解性官能基との間で縮合反応を起こさせることによって、修飾原子団を形成し、刺激応答性無機材料粒子を得る方法を採ってもよい。
【0046】
例えば、下記一般式(3)に示すように、無機材料粒子(I)に対して、刺激応答性感応基Stを有するシラン系カップリング剤(VI)を作用させ、無機材料粒子(I)の表面水酸基(OH)とシラン系カップリング剤(VI)の加水分解性官能基(Hy,Hy,Hy)との間で縮合反応を起こさせることによって、修飾原子団を形成し、刺激応答性無機材料粒子(VII)を得る。
【化3】

(但し、Hy,Hy,Hy:加水分解性官能基、A:有機原子団、Pi:無機材料粒子、St:刺激応答性感応基)
【0047】
上記製造方法においては、上記混合物に骨材粒子以外の物質を混合せしめてもよい。例えば、上記製造方法の効果を阻害しない範囲で、比較的少量の有機バインダーやゲル化剤を添加することも、製造方法に包含される。この際の有機バインダーやゲル化剤の添加量は特に制限はないが、骨材粒子100質量部に対して、1〜10質量部の範囲内で添加することができる。上記範囲未満であると有機バインダーないしゲル化剤がその効果を有効に発揮することができない場合がある。一方、上記範囲を超えると、スラリーとした際に粘性が過剰となり、その取り扱いが困難となる他、多量の有機バインダー等に起因する不具合を生ずる場合がある。このようなことを考慮すると、有機バインダーやゲル化剤の添加量は、1〜3質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0048】
有機バインダーとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、又はポリビニルアルコール等を好適に用いることができる。ゲル化剤としては、例えば、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のプレポリマーを好適に用いることができる。
【0049】
上記製造方法では、刺激応答性無機材料粒子を含む混合物を所望形状に成形して成形体前駆体を得る。骨材粒子となる無機材料粒子には刺激応答性無機材料粒子を含むことが必要であるが、必ずしも無機材料粒子の全てが刺激応答性無機材料粒子である必要はない。また、混合物の形態は乾燥した粉末状であってもよいし、分散媒を加えた坏土やスラリー(スリップ)であってもよい。分散媒としては、水、或いは水とアルコール等の有機溶媒との混合溶媒等が挙げられ、特に、水が好適に用いられる。
【0050】
成形の方法について特に制限はなく、混合物の形態に合わせて従来公知の成形法の中から適宜選択すればよい。例えば、一軸プレス、等方プレス、鋳込み成形、遠心成形、押出成形、電気泳動法、濾過法、磁場プレス等、骨材粒子が密な状態で充填される方法を好適に用いることができる。このようにして刺激応答性無機材料粒子を含む混合物の成形体が得られるが、本明細書においてはこの成形体を「成形体前駆体」と称することにする。上記の成形体は未だ架橋原子団が形成されておらず、本発明の無機材料成形体の前駆体とみなすことができることによる。
【0051】
[2]第2工程
本発明の刺激応答性無機材料粒子を原料として用い、無機材料成形体を製造する方法の第2工程は、成形体前駆体に対して外部刺激を与え、刺激応答性官能基と他の官能基との間の結合反応を利用して、無機材料粒子間を相互に結合する架橋原子団を形成させることによって、無機材料成形体を得る、成形体製造工程である。
【0052】
具体的には、上記のように製造された成形体前駆体に対して、刺激応答性官能基の種類に適合する外部刺激を与える。例えば、刺激応答性官能基がフェニルアジド基であり、アミノ基との間で結合反応を進行させる場合には、波長250〜400nmの紫外光を5〜120分間照射する。これにより、両官能基の間で結合反応が進行し、フェニルヒドラゾ結合が形成される。即ち、無機材料粒子の各々が、フェニルヒドラゾ基を含む架橋原子団によって相互に結合された構造を有する無機材料成形体が得られる。
【0053】
また、刺激応答性官能基として、アミノ基とカルボキシル基の組み合わせを用いる場合には、周波数2450MHzのマイクロ波を1秒〜30分間照射する。これにより、両官能基の間で結合反応が進行し、イミド結合が形成される。即ち、無機材料粒子の各々が、イミド基を含む架橋原子団によって相互に結合された構造を有する無機材料成形体が得られる。なお、マイクロ波について、各国政府が産業上使用可能な周波数を定めている場合には、これに従って使用する周波数を選択する必要がある。現在、我が国では、433.92MHz、2450MHz、5800MHz、24.125GHzの周波数を使用可能であり、これらの中から適当な周波数を適宜選択すればよい。諸外国では、これらの周波数以外の周波数(例えば、915MHz(米国)、896MHz(英国)、2375MHz(東欧・ロシア)等)を使用することができる場合もある。
【0054】
更に、刺激応答性官能基として、アミノ基とカルボキシル基の組み合わせを用いる場合には、150〜300℃の比較的低温で1〜8時間加熱してもよい。これにより、両官能基の間で結合反応が進行し、アミド結合が形成される。即ち、無機材料粒子の各々が、アミド基を含む架橋原子団によって相互に結合された構造を有する無機材料成形体が得られる。なお、200℃以下で加熱する場合には、減圧条件下で加熱することが好ましい。アミノ基とカルボキシル基との脱水反応で生成する水を系外に除去することにより、反応が促進されるため、200℃以下という温和な温度条件下でも結合反応が進行することによる。
【0055】
結合形成のパターンとしては、例えば、原料として、骨材粒子の少なくとも一部に、i)上記の刺激応答性無機材料粒子と、ii)有機原子団を含み、刺激応答性官能基との間で結合を形成し得る反応性官能基(結合性官能基)を有する修飾原子団、が化学修飾された結合性無機材料粒子、という二種の修飾無機材料粒子を用い、刺激応答性官能基と結合性官能基との間の結合反応を利用して無機材料粒子の修飾原子団同士を直接的に結合させ、無機材料粒子間を相互に結合する架橋原子団を形成させるパターンが挙げられる。
【0056】
また、原料として、刺激応答性無機材料粒子の他、結合性官能基を2以上有する多官能性有機化合物を用い、刺激応答性官能基と結合性官能基との間の結合反応を利用して無機材料粒子の修飾原子団同士を多官能性有機化合物を介して間接的に結合させ、無機材料粒子間を相互に結合する架橋原子団を形成させるパターンであってもよい。多官能性有機化合物としては、例えば、フェニルアジド基との間で結合を形成し得るアミノ基を2つ有する、尿素((NHCO)やヘキサメチレンジアミン(NH(CH)NH)等が挙げられる。但し、2以上の結合性官能基が刺激応答性官能基との結合能を有するものである限り、官能基の種類が全て同じものである必要はなく、官能基の種類が異なっていてもよい。
【0057】
上記のようにして得られた無機材料成形体はそのまま用いてもよいし、適当な条件で乾燥した後に用いてもよい。乾燥の方法は特に限定されるものではなく、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥法等を用いることができる。
【0058】
なお、本発明の刺激応答性無機材料粒子を原料として用い、無機材料成形体を製造する方法により無機材料成形体を得、その無機材料成形体を焼成して無機材料焼結体を得ることも、好ましい形態の一つである(バインダーレスの無機材料焼結体の製造方法)。上記のようにして得られた無機材料成形体は、無機材料からなる骨材粒子同士を、有機原子団を含む架橋原子団を介して共有結合という強固な結合によって相互に結合させたものであり、成形後の保形性が高いことに加えて、有機物の含有量が非常に少ない(乾燥後の成形体全質量の1%以下程度)。従って、この無機材料成形体を焼成すると、機械的強度が高く、有機物に起因する欠陥(ボイドやクラック)が少ない高品質の無機材料焼結体を得られる。また、焼成時間を短縮することができ、二酸化炭素や有害ガスの発生が少なく、地球温暖化や大気汚染の原因となることもない、という利点もある。
【0059】
この場合、焼成の前、或いは焼成の昇温過程において、無機材料成形体中の有機物を燃焼させて除去する操作(脱脂・仮焼)を行うと、有機物の除去をより促進させることができる点において好ましい。有機物の燃焼温度は200〜300℃程度なので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間は特に限定されないが、通常は、10〜100時間程度である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明する。但し、以下の実施例は本発明の一部の実施形態を示すものに過ぎないため、本発明をこれらの実施例に限定して解釈するべきではない。
【0061】
(実施例1)
無機材料粒子としてシリカ粒子を用い、そのシリカ粒子に対して、刺激応答性官能基としてフェニルアジド基(−C−N)を有する修飾原子団を化学修飾することによって、その修飾原子団がシリカ粒子に対して共有結合によって結合された構造を有する刺激応答性シリカ粒子を得ることを試みた。
【0062】
まず、下記式(4)に示すように、シリカ粒子(I−a)に対して、シラン系カップリング剤である3−アミノプロピルトリエトキシシラン(II−a:NHSi(OC)を作用させ、シラノール結合シリカ粒子(III−a)を得た。
【化4】

【0063】
具体的には、3−アミノプロピルトリエトキシシラン1.0gを純水100mlに溶解させてシラン系カップリング剤の水溶液を調製し、その水溶液中に、ゾルゲル法によって得られた、平均粒径270nmのシリカ粒子5.0gを分散させ1時間撹拌することにより、シリカ粒子の表面に3−アミノプロピルトリエトキシシランを吸着させ、遠心洗浄により遊離の3−アミノプロピルトリエトキシシランを除去した後、105℃で加熱乾燥し、シリカ粒子と3−アミノプロピルトリエトキシシランとの間で縮合反応を起こさせることによって、シラノール残基がシリカ粒子に対して共有結合によって結合された構造を有するシラノール結合シリカ粒子を得た。
【0064】
得られたシラノール結合シリカ粒子を赤外分光(IR)により分析したところ、図1のIRチャートに示すように、反応前のシリカ粒子には存在する表面水酸基(Si−OH)を示すピーク(3750/cm−1)が消失し、反応前のシリカ粒子には存在しなかったシラノール残基中のメチレン基(CH)を示すピーク(2940/cm−1、2860/cm−1)が出現した。このシラノール結合シリカ粒子は、後述する刺激応答性シリカ粒子の原料とした他、刺激応答性シリカ粒子と結合させる結合性シリカ粒子としても用いた。
【0065】
次いで、下記式(5)に示すように、シラノール結合無機材料粒子(III−a)に対して、刺激応答性感応基としてアジド基を有する有機化合物である4−アジド安息香酸(IV−a:NCOOH)を作用させ、刺激応答性シリカ粒子(V−a)を得た。
【化5】

【0066】
具体的には、シラノール結合シリカ粒子(III−a)4.5gをエタノール300mlに分散させ、遮光した状態で4−アジド安息香酸(IV−a)1.5gを添加し、1時間撹拌することにより、シラノール結合シリカ粒子の表面に4−アジド安息香酸を吸着させ、遠心洗浄により遊離の4−アジド安息香酸を除去した後、真空条件下、180℃で6時間加熱し、シラノール結合シリカ粒子と4−アジド安息香酸との間で(より詳しくは、シラノール結合シリカ粒子のシラノール残基末端のアミノ基と4−アジド安息香酸のカルボキシル基との間で)アミド化反応を起こさせることによって、フェニルアジド基を有する修飾原子団を形成し、フェニルアジド基を有する修飾原子団がシリカ粒子に対して共有結合によって結合された構造を有する刺激応答性シリカ粒子(V−a)を得た。得られた刺激応答性シリカ粒子を赤外分光により分析したところ、図1のIRチャートに示すように、反応前のシラノール結合シリカ粒子には存在しなかったフェニルアジド基を示すピーク(2120/cm−1)が出現した。
【0067】
遮光した状態で上記のシラノール結合シリカ粒子(ここでは結合性シリカ粒子として用いる)1.0gと刺激応答性シリカ粒子1.0gとをエタノール20mlに均一に分散させて混合物とし、この混合物を鋳込み成形により、外径10.0mmφ、厚さ3.0mmの円柱状に成形して成形体前駆体とした。
【0068】
下記式(6)に示すように、この成形体前駆体に対して波長366nmの紫外光を照射し、刺激応答性シリカ粒子(V−a)のフェニルアジド基とシラノール結合シリカ粒子(III−a)のアミノ基との間の結合反応を進行させ、フェニルヒドラゾ結合を形成させることによって、シリカ成形体(VIII−a)を得た。
【化6】

【0069】
得られた成形体を赤外分光(IR)により分析した結果、フェニルアジド基を示すピーク(2120/cm−1)が消失していることが確認された。即ち、このシリカ成形体は、シリカからなる無機材料粒子と、上記式(6)に示す構造を有する架橋原子団と、を構成要素として備え、その架橋原子団が、無機材料粒子に対して共有結合によって結合され、無機材料粒子の各々が、架橋原子団によって相互に結合された構造を有するものであった。
【0070】
(参考比較例1)
化学修飾をしていない通常のシリカ粒子を骨材粒子として用いたことを除いては、実施例1と同様にしてシリカ成形体を得た。
【0071】
(評価)
実施例1のシリカ成形体と比較例1のシリカ成形体を水中に浸漬した。その結果、比較例1のシリカ成形体は、水中でその構造が容易に崩壊し、水が白濁した。一方、実施例1のシリカ成形体は、水の白濁は認められず、水中でその構造を維持し得ることが確認された。
【0072】
また、実施例1のシリカ成形体と参考比較例1のシリカ成形体に対し、マイクロビッカース硬度計(商品名:MVK−EL型(ダイヤモンド圧子)、明石製作所製)を用い、圧縮強度測定を行った。その結果、参考比較例1のシリカ成形体は、約100gの荷重にまでしか耐えられなかった。一方、実施例1のシリカ成形体は、200gの荷重に耐えることが確認された。
【0073】
更に、実施例1で作製した刺激応答性シリカ粒子と化学修飾をしていない通常のシリカ粒子とを熱分析し、有機物の量を測定した。その結果、図2の熱分析チャートに示すように、通常のシリカ粒子は、約200℃までの加熱で吸着水の脱離が生じるのみであった。これに対し、刺激応答性シリカ粒子は、1000℃までの加熱で、化学修飾された修飾原子団の脱離が生じたものと認められた。この分析結果から算出した有機物の量は約0.8質量%であり、極めて少ないことが確認された。
【0074】
(実施例2)
遮光した状態で実施例1において作製した刺激応答性シリカ粒子1.0gをエタノール10mlに均一に分散させた分散液に対して、2つのアミノ基を有する多官能性有機化合物である尿素0.154mmolを添加し再度、均一に分散させた。この分散液に対して、更に実施例1において作製した刺激応答性シリカ粒子1.0gをエタノール10mlに均一に分散させたものを添加して混合物とし、この混合物を鋳込み成形により、外径10.0mmφ、厚さ3.0mmの円柱状に成形して成形体前駆体とした。
【0075】
この成形体前駆体に対して波長366nmの紫外光を照射し、刺激応答性シリカ粒子のフェニルアジド基と尿素の2つのアミノ基との間の結合反応を進行させ、フェニルヒドラゾ結合を形成させることによって、下記式に示す構造の架橋原子団を構成要素とするシリカ成形体(VIII−b)を得た。得られた成形体を赤外分光により分析した結果、実施例1と同様に、フェニルアジド基を示すピーク(2120/cm−1)が消失していることが確認された。
【化7】

【0076】
(実施例3)
尿素0.154mmolに代えてヘキサメチレンジアミン0.154mmolを用いたことを除いては、実施例2と同様にして、刺激応答性シリカ粒子のフェニルアジド基とヘキサメチレンジアミンの2つのアミノ基との間の結合反応を進行させ、フェニルヒドラゾ結合を形成させることによって、下記式に示す構造の架橋原子団を構成要素とするシリカ成形体(VIII−c)を得た。得られた成形体を赤外分光により分析した結果、実施例1と同様に、フェニルアジド基を示すピーク(2120/cm−1)が消失していることが確認された。
【化8】

【0077】
(評価)
実施例2のシリカ成形体と実施例3のシリカ成形体を水中に浸漬した。その結果、実施例2及び実施例3のシリカ成形体は、水中でその構造を維持し得ることが確認された。また、実施例2のシリカ成形体と実施例3のシリカ成形体に対し、マイクロビッカース硬度計(商品名:MVK−EL型(ダイヤモンド圧子)、明石製作所製)を用い、圧縮強度測定を行った。その結果、実施例2のシリカ成形体は200g、実施例3のシリカ成形体は500gの荷重に耐えた。即ち、いずれも200g以上の荷重に耐えることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の刺激応答性無機材料粒子は、無機材料成形体の原料として使用することができ、構造材料や電気・電子材料等、様々な用途で用いられている、セラミックスや金属の各種成形体の製造に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A):無機材料からなる無機材料粒子と、(B):有機原子団を含み、外部刺激に応答して他の官能基との結合反応が惹起される官能基(刺激応答性官能基)としてフェニルアジド基(−C−N)を有する修飾原子団と、を構成要素として備え、
前記(B):修飾原子団が、前記(A):無機材料粒子に対して共有結合によって結合された構造を有する刺激応答性無機材料粒子。
【請求項2】
刺激応答性無機材料粒子が、フェニルアジド基(−C−N)とアミド基(−NHCO−)を同時に有する、請求項1に記載の刺激応答性無機材料粒子。
【請求項3】
刺激応答性無機材料粒子の有機物量が約0.8質量%である、請求項1または2に記載の刺激応答性無機材料粒子。
【請求項4】
無機材料からなる無機材料粒子と、有機原子団を含み、外部刺激に応答して他の官能基との結合反応が惹起される官能基(刺激応答性官能基)としてフェニルアジド基(−C−N)を有する修飾原子団と、を構成要素として備え、前記修飾原子団が、前記無機材料粒子に対して共有結合によって結合された構造を有する刺激応答性無機材料粒子の製造方法であって、
前記無機材料粒子として、酸化物系セラミックス、非酸化物系セラミックス、及び金属の群から選択される少なくとも一種の無機材料からなるものを用い、
その無機材料粒子に対して、前記刺激応答性官能基を有する修飾原子団を化学修飾する、刺激応答性無機材料粒子の製造方法。
【請求項5】
第1工程:前記無機材料粒子に対して、シラン系カップリング剤を作用させ、前記無機材料粒子とシラン系カップリング剤との間で縮合反応を起こさせることによって、シラノール残基が前記無機材料粒子に対して共有結合によって結合された構造を有するシラノール結合無機材料粒子を得、
第2工程:前記シラノール結合無機材料粒子に対して、前記刺激応答性感応基を有する有機化合物を作用させ、前記シラノール結合無機材料粒子と前記有機化合物との間で結合形成反応を起こさせることによって、前記修飾原子団を形成し、前記刺激応答性無機材料粒子を得る、請求項4に記載の刺激応答性無機材料粒子の製造方法。
【請求項6】
無機材料からなる無機材料粒子が、表面水酸基を有するものである、請求項4または5に記載の刺激応答性無機材料粒子の製造方法。
【請求項7】
刺激応答性感応基を有する有機化合物が、アジド安息香酸である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の刺激応答性無機材料粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−189265(P2010−189265A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68517(P2010−68517)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【分割の表示】特願2004−341245(P2004−341245)の分割
【原出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】