説明

削孔工法

【課題】 安定した品質の良好な削孔穴Hを使用水量を削減して確実に削孔できる削孔方法を提供する。
【解決手段】 起泡剤aを希釈液bで希釈し、その中に圧縮空気c1を送って希釈起泡剤dを作る工程と、希釈起泡剤dを圧縮空気c2とともに発泡筒24に圧送して、発泡筒24内で所望倍率の気泡eを生成させる工程と、発泡筒24内の気泡eを削孔マシン1から削孔個所に噴出して削孔する工程と、削孔後に削孔穴Hから排出されるスライムfに消泡剤gを噴霧して、スライムfの気泡を消泡させる工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事などにおいて火薬の装填孔や切羽などへのロックボルトの装着孔を削孔するための削孔工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流体を使用して各種用途に用いられる孔を削孔することが行われている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−23704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、トンネル工事を行う場合には、天端補強用や、切羽補強用に削孔する必要があるが、これらの孔を削孔するときに上記従来の技術により削孔すると、孔壁が不安定になったり、孔壁一部の剥落が起って孔荒れが生じ、削孔のための大量の水を要していた。
【0004】
そこで、本発明は、安定した品質の良好な孔を確実に削孔でき水の使用量を削減できる削孔方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、トンネル工事を行う際に、天端補強もしくは切羽補強用に削孔する削孔工法であって、起泡剤を希釈液で希釈し、その中に圧縮空気を送って希釈起泡剤を作る工程と、希釈起泡剤を圧縮空気とともに発泡筒に圧送して、発泡筒内で所望倍率の気泡を生成させる工程と、発泡筒内の気泡を削孔マシンから削孔個所に噴出して削孔する工程と、削孔後に削孔穴から排出されるスライムに消泡剤を噴霧して、スライムの気泡を消泡させる工程を有する。
【0006】
トンネル工事などにおいて天端補強用や、切羽補強用に削孔するときに、先ず、起泡剤を希釈液で希釈し、その中に圧縮空気を送って希釈起泡剤を作り、この希釈起泡剤を圧縮空気とともに発泡筒に圧送して、その内部で所望倍率の気泡(プレフォーム)を生成させる。次に、発泡筒内の気泡を削孔マシンから削孔個所に噴出して削孔する。所定の孔を削孔した後には、削孔穴から排出されるスライムに消泡剤を噴霧し、スライムの気泡を消泡させて、削孔作業を終了する。このように、気泡(プレフォーム)を用いて削孔することにより、安定した品質の良好な孔を確実に得られる。
【0007】
本発明の実施形態では、前記気泡剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムとヒドロキシプロピルメチルセルローズの混合物が好適に用いられる。この混合物を起泡剤として用いることにより、安定した品質の良好な孔が確実に得られる。
【0008】
また、本発明の実施形態では、前記消泡剤として、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとジエチレングリコールモノメチルエーテルとの混合物が好適に用いられる。この混合物を消泡剤として削孔後に削孔穴から排出されるスライムに噴霧することにより、スライムの気泡が良好に消泡されて、削孔ずり(残土)のみが残る。
【発明の効果】
【0009】
以上の本発明にかかる削孔方法によれば、安定した品質の良好な孔を確実に削孔することができ水の使用量を大幅に削減できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明にかかる削孔方法を図面に基づいて説明する。図1は本発明に適用する機器類の一実施形態を示しており、1は削孔マシンであって、図の実施形態では移動台車10の前方に2つの削孔ロッド11を備えている。図中12は作業台である。2は削孔マシン1に供給する削孔用気泡を生成するための気泡生成ユニットであって、図の実施形態では、移動台車20に搭載される撹拌羽根2aを内蔵した2つの第1及び第2タンク21,22と、移動車20の近くに別置きされ、前記各タンク21,22に第1パイプP1を介して連結されるコンプレッサー23と、施工面に噴出して削孔する所望倍率の気泡(プレフォーム)を生成させる発泡筒24(図2)を備えており、この発泡筒24は、前記各タンク21,22に第2パイプP2を介して連結され、また、前記コンプレッサー23に第3パイプP3を介して連結されている。
【0011】
図2〜図7は、トンネル工事などにおいて天端補強用や切羽補強用の削孔注入工法を行う際に削孔するときの手順を示している。削孔時には、先ず、図2のように、気泡生成ユニット2の第1タンク21内にその装填口E1から起泡剤aを装填し、また、図3のように、装填口E1から第1タンク21内に希釈液として水bを装填する。この起泡剤aとしては、好適には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムとヒドロキシプロピルメチルセルローズの混合物が用いられる。この混合物を起泡剤として用いることにより、安定した品質の良好な孔を確実に得られる。これら起泡剤aと水bは、施工条件によって配合比率を選択されるが、好ましくは削孔作業にa:b=1:30の配合比率が採用される。
【0012】
次に、図4のように、第1パイプP1から第1タンク21内の起泡剤aと水bの中にコンプレッサー23からの圧縮空気c1(一般的には0.7MP程度の空気)を送り込んで撹拌羽根2aで撹拌混合することにより、第1タンク21内で希釈起泡剤dを作製する。また、上記A〜Cの工程を繰り返して、第2タンク22内に同様の希釈起泡剤dを作製する(図5)。第1タンク21内に希釈起泡剤dを作製するときには、第1パイプP1の第2タンク22側に配置した第2切換弁V2は閉じたままの状態で、第1タンク21側に配置した第1切換弁V1を開いて第1パイプP1から第1タンク21内に圧縮空気c1を送り込み、また、第2タンク22内に希釈起泡剤dを作製するときには、第1パイプP1の第1タンク21側に配置した第1切換弁V1は閉じた状態で、第2タンク22側に配置した第2切換弁V2を開いて第1送入パイプP1から第2タンク22内にコンプレッサー23からの圧縮空気c1を送り込む。
【0013】
前記各タンク21,22内の希釈起泡剤dは、各タンク21,22の内部から第2パイプP2を介して発泡筒24内に送られ、これと同時にコンプレッサー23から第3パイプP3を介して発泡筒24内に圧縮空気c2が送り込まれ、これら圧縮空気c2と希釈起泡剤dが発泡筒24内で撹拌混合されて、施工面に噴出される所望倍率の削孔用の気泡(プレフォーム)eが生成される。このとき、発泡筒24内への圧縮空気c2の送り込み量は、施工条件によって任意の量を選択可能であるが、一般的には希釈起泡剤dに対し圧縮空気c2の送り込み量は、d:c2=1:14とされて、発泡倍率15倍程度の気泡eが生成され、これが施工面の削孔に用いられる。前記発泡筒24内には、先ず、第1タンク21から希釈起泡剤dが送られ、第1タンク21内の希釈起泡剤dが消費された後に第2タンク22内の希釈起泡剤dが送られる。
【0014】
第1タンク21内から希釈起泡剤dを発泡筒24に送り込むときには、第2パイプP2の第2タンク22側に配置した第4切換弁V4は閉じたままの状態で、第1タンク21側に配置した第3切換弁V3を開いて第2パイプP2から第1タンク21内の希釈起泡剤dを発泡筒24内に送り込む(図5)。そして、第1タンク21内の希釈起泡剤dが消費されたときに、第2パイプP2の第1タンク21側に配置した第3切換弁V3を閉じ、第2タンク22側に配置した第4切換弁V4を開いて第2排出パイプP2から第2タンク22内の希釈起泡剤dを発泡筒24内に送り込む。
【0015】
以上のような準備を行った後には、図6のように、削孔マシン1の削孔ロッド11を施工面Sの削孔ポイントに対向させて、削孔ロッド11の先端から発泡筒24内の気泡eを施工面Sに向かって噴出し、所望深さの削孔穴Hを削孔する。施工面Sに対する気泡eの噴出量は、通常の場合、80L/分程度が採用される。そして、図7のように、所望深さの削孔穴Hを削孔した後には、この削孔穴Hから施工面Sを伝って流れ落ちる土と気泡eが混じった発泡スライムfに噴霧器3から消泡剤gを噴霧し、この消泡剤gにより発泡スライムfの気泡を消泡させて、削孔作業を終了する。このとき、消泡剤gとしては、好適にはポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとジエチレングリコールモノメチルエーテルとの混合物が用いられる。この混合物を消泡剤として用いることにより、スライムの気泡が良好に消泡されて、後処理が容易な削孔ずり(残土)のみが残る。
本発明の実施により、水の使用量が従来の1/16〜1/25に大幅に削減され、しかも地山の膨張収縮現象、スレーキング、内空変位、地表面変位を抑制し、天端崩落、切羽剥落の防止に効果があった。また、削孔水の低減により、補強工法の必要部位が少なくなり品質向上、安全確保、環境保全において、効果を発揮し、コストダウンにも寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に適用する機器類の一実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明により孔を削孔するときの第1手順を示す図面である。
【図3】本発明により孔を削孔するときの第2手順を示す図面である。
【図4】本発明により孔を削孔するときの第3手順を示す図面である。
【図5】本発明により孔を削孔するときの第4手順を示す図面である。
【図6】本発明により孔を削孔するときの削孔状態を示す図面である。
【図7】本発明により孔を削孔するときの消泡状態を示す図面である。
【符号の説明】
【0017】
1 削孔マシン
24 発泡筒
H 削孔穴
a 起泡剤
b 希釈剤
c1 圧縮空気
c2 圧縮空気
d 希釈起泡剤
e 気泡
f スライム
g 消泡剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル工事を行う際に、天端補強用もしくは切羽補強用に削孔する削孔工法であって、
起泡剤を希釈液で希釈し、その中に圧縮空気を送って希釈起泡剤を作る工程と、
希釈起泡剤を圧縮空気とともに発泡筒に圧送して、発泡筒内で所望倍率の気泡を生成させる工程と、
発泡筒内の気泡を削孔マシンから削孔個所に噴出して削孔する工程と、
削孔後に削孔穴から排出されるスライムに消泡剤を噴霧して、スライムの気泡を消泡させる工程を有する削孔工法。
【請求項2】
請求項1において、前記気泡剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムとヒドロキシプロピルメチルセルローズの混合物である削孔工法。
【請求項3】
請求項1において、前記消泡剤は、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとジエチレングリコールモノメチルエーテルとの混合物である削孔工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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