説明

剛性の遠位部分を有する間欠カテーテルおよびその製造方法

以下に、ヒトの体腔から排泄するためのカテーテルを開示する。本カテーテルは、少なくとも1つの入り口が設けられた近位端と少なくとも1つの出口が設けられた遠位端の間に長手方向に延びる第1の管状のカテーテル部品と、1つの開口部が設けられた近位端と第2の開口部が設けられた遠位端の間に長手方向に延びる第2の管状のカテーテル部品とを備える。本カテーテルは、更に、第1の管状のカテーテル部品が第2の管状のカテーテル部品より長く;第2の管状のカテーテル部品が第1の管状のカテーテル部品の遠位端上に配置されており;第1の管状のカテーテル部品と第2の管状のカテーテル部品が互いに対して永久的に変位固定されている。これによって、従来の間欠カテーテルより安定であり、従って挿入が容易で、カテーテル挿入時にカテーテルが曲がるまたはよじれるリスクが低い遠位端を有するカテーテルが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入および製造が容易なカテーテルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自力で排尿できない人が排尿するために、カテーテルを用いて間欠的に導尿を行うことが多い。現在、多くの種類のカテーテルが利用可能であり、異なる尿路サイズや尿道の長さに適した多くのものがある。特に、男性の尿道は女性のものより長く、従って、男性の場合、うまく排尿するためには比較的長いカテーテルが必要である。
【0003】
同時に、例えば、前立腺を通過するとき、カテーテルが尿道の湾曲に追従するには、カテーテルがある一定量の可撓性を有していることが必要である。
【0004】
しかし、長くて可撓性のあるカテーテルは、挿入時に意図せずに曲がるまたはよじれる傾向があるため、操作が困難であり、それによってカテーテル挿入プロセスが煩雑になる。特に、多くの間欠カテーテルの使用者は既に、可動性および/又は運動技能を低下させる障害を持っている場合があるため、このような意図しない曲げまたはよじれは非常にもどかしいことがある。カテーテルを安定させるために、使用者はカテーテル本体をつかむことがあり、それによって尿道に挿入される部分が汚染され、従って尿路感染症を起こす可能性が高くなる。
【0005】
この問題に対処するために、多くのカテーテルセットは、カテーテル本体に沿って摺動し得るガイドを組み込み、汚染することなく、挿入が容易になるようにしている。
【0006】
これらは非常によく機能するが、その余分なガイド部品を含んでおり、挿入しながらそれを同時に操作しなければならず、誤って落としてしまい、可動性が低下した人には手が届かないことがある。
【0007】
従って、挿入が容易で、意図せずに曲がるまたはよじれるリスクが低く、ガイド手段を使用しない間欠カテーテルが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
少なくとも1つの入り口が設けられた近位端と少なくとも1つの出口が設けられた遠位端の間に長手方向に延びる第1の管状のカテーテル部品と、1つの開口部が設けられた近位端と第2の開口部が設けられた遠位端の間に長手方向に延びる第2の管状のカテーテル部品とを備える、ヒトの体腔から排泄するためのカテーテルを以下に開示する。本カテーテルは、更に、第1の管状のカテーテル部品が第2の管状のカテーテル部品より長く;第2の管状のカテーテル部品が第1の管状のカテーテルの遠位端上に配置されており;第1の管状のカテーテル部品と第2の管状のカテーテル部品が互いに対して永久的に変位固定されている。
【0009】
これによって、従来の間欠カテーテルより安定であり、従って挿入が容易で、カテーテル挿入時にカテーテルが曲がるまたはよじれるリスクが低い遠位端を有するカテーテルが提供される。
【0010】
一実施形態では、第2の管状のカテーテル部品は、第1の管状のカテーテル部品より剛性が高い。これによって、カテーテルの遠位部分が更により安定になり、従ってカテーテルの挿入が更により容易になる。
【0011】
一実施形態では、第1のカテーテル部品の外半径は、第2のカテーテル部品の内半径より長い。
【0012】
典型的には、ホースを介してカテーテルを尿容器に接続できるように、カテーテルにコネクタが取り付けられている。従って、一実施形態では、コネクタは、第1の管状のカテーテル部品の遠位端に取り付けられている。
【0013】
別の実施形態では、第2の管状のカテーテル部品の遠位端が、更にまたは代わりに、コネクタに取り付けられていてもよい。
【0014】
一実施形態では、コネクタは、第2の管状のカテーテル部品と、例えば、射出成形により一体形成されてもよい。
【0015】
別の実施形態では、2つのカテーテル部品は互いに重なり合う、即ち、第1の管状のカテーテル部品の遠位端は、第2の管状のカテーテル部品の遠位端と近位端の間で第2の管状のカテーテル部品に取り付けられている。
【0016】
2つのカテーテル部品は、多くの異なる方法で互いに取り付けられていてもよい。例えば、第1の管状のカテーテル部品と第2の管状のカテーテル部品は、接着剤によりまたは溶着により互いに対して変位固定されていてもよい。
【0017】
本明細書には、前述のカテーテルの製造方法も開示する。カテーテルは、膀胱に挿入される近位端に配置された少なくとも1つの入り口を有する近位部分と、膀胱から出る尿が排出されることを可能にする遠位端に設けられた少なくとも1つの出口を有する遠位部分とを備える。カテーテルは、更に、少なくとも1つの入り口が設けられた近位端と少なくとも1つの出口が設けられた遠位端の間に長手方向に延びる第1の管状のカテーテル部品と、1つの開口部が設けられた近位端と第2の開口部が設けられた遠位端の間に長手方向に延びる第2の管状のカテーテル部品とを備え、第1の管状のカテーテル部品は第2の管状のカテーテル部品より長い。カテーテルの製造方法は、第1の管状のカテーテル部品を第2の管状のカテーテル部品の開口部の1つに導入することによって、第2の管状のカテーテル部品を第1の管状のカテーテル部品上に同軸方向に案内すること;第2の管状のカテーテル部品を第1の管状のカテーテル部品の遠位端に配置すること;および第1の管状のカテーテル部品と第2の管状のカテーテル部品を互いに対して永久的に変位固定することを含む。
【0018】
これによって、簡単な工程を使用して本明細書に記載のカテーテルを提供する方法が提供される。製造が簡単な中間製品、即ち、第1および第2のカテーテル部品を使用することにより、本方法は迅速且つ安価であると共に、カテーテルの挿入および案内が容易になる安定な遠位端を有する信頼性の高いカテーテルを提供する。
【0019】
一実施形態では、カテーテル部品を互いに対して固定するために、第2の管状のカテーテル部品を接着剤により第1の管状のカテーテル部品に取り付ける。代わりにまたは更に、それを溶着により取り付けてもよい。
【0020】
2つのカテーテル部品を互いに永久的に固定する他の多くの手段を使用することができる。例えば、熱溶融または熱収縮スリーブを使用し、部品を重ね合わせて結合することができる、例えば、第1の管状のカテーテル部品にコネクタが取り付けられる場合、第2の管状のカテーテル部品とコネクタを重ね合わせることができる。
【0021】
2つの部品を固定する他の手段は、2つの部品に対応するねじ山を設け、それらを螺合できるようにすることであってもよい。
【0022】
代わりにまたは更に、その部品を互いにリベット締めしてもよい。これは、例えば、超音波穿孔を使用することによって行うことができ、第2の管状のカテーテル部品の材料の一部を穿孔し第1の管状のカテーテルに部分的に入るようにして、2本を一緒に固定する。
【0023】
高い安定性を得るために、第1の管状のカテーテル部品の遠位端が第2の管状のカテーテル部品の遠位端と軸方向に、または少なくともできるだけ近くに並ぶようにしなければならない。これによってカテーテルの遠位端が曲がるまたはよじれるリスクが低減する。
【0024】
一実施形態では、第1の管状のカテーテル部品の遠位端は、第2の管状のカテーテル部品の遠位端と近位端の間に配置される。これによって、同じ管状のカテーテル部品を使用し、2つのカテーテル部品を軸方向で様々にずらして固定することにより、長さの異なるカテーテルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本明細書に開示されるカテーテルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書に開示するヒトの体腔(図示せず)から排泄するためのカテーテル1の一実施形態を図1に示す。カテーテルの長軸A−Aに沿ったカテーテルの断面を示す。
【0027】
カテーテル1は、第1の管状のカテーテル部品2、第2の管状のカテーテル部品8、およびコネクタ9を備える。
【0028】
第1の管状のカテーテル部品2は、近位端3と遠位端4の間に軸A−Aに沿って長手方向に延びている。近位端には2つのいわゆるアイレット5、6が設けられており、これらは入り口として機能し;遠位端には1つの出口7が設けられている。コネクタ9は、遠位に、出口と連通するように取り付けられている。これによって、蓄尿袋または他の種類の容器に尿を案内し得るホースに第1のカテーテル部品を取り付けることができる。
【0029】
例えば、第1の管状のカテーテル部品として、Coloplast A/Bによって販売されているSpedicath間欠カテーテルを使用することができる。
【0030】
第2の管状のカテーテル部品8は、近位端10と遠位端11の間に軸A−Aに沿って長手方向に延びている。近位端には1つの開口部12が設けられており、遠位端には第2の開口部13が設けられている。
【0031】
第2の管状のカテーテル部品8は、第2の管状のカテーテル部品の第1の開口部12と第2の開口部13を通して第1の管状のカテーテル部品を挿入することによって、第2の管状のカテーテル部品8を第1の管状のカテーテル部品2上に配置できるような管の内半径を有する。第2の管状のカテーテル部品8は、第1の管状のカテーテル部品より短い。この実施形態では、第1の管状のカテーテル部品は、第2の管状のカテーテル部品より約4倍長い。
【0032】
第1の管状のカテーテル部品は、第2の管状のカテーテル部品より半径が僅かに大きいが、第1の管状のカテーテルは圧縮性を有するため、それを第1および/又は第2の開口部を通して案内することができる。典型的には、これは、第1のカテーテル部品の壁が薄いことと、材料(例えば、ポリウレタンであってもよい)によるものである。更に、これは、摩擦嵌合を提供し、粘液が入り込む可能性のある隙間が2つのカテーテル部品の間に生じるリスクを低減する。
【0033】
本明細書に示していない他の実施形態では、第1の管状のカテーテル部品は、半径が僅かに小さくてもよい。これは、製造公差により必要な場合がある。しかし、第2の管状のカテーテル部品の内面と第1の管状のカテーテル部品の外面の間の隙間を約0.3mmとすると、粘膜を引き剥がすリスクなく使用できることが分かった。
【0034】
挿入を容易にするために、且つ粘膜を引き剥がすリスクを低減するために、第2の管状のカテーテル部品の近位端の形状を、第1の管状のカテーテル部品の表面の方に内側に向かって細くなっていくようにすることができる。
【0035】
第1の管状のカテーテル部品が前述のSpeedicath間欠カテーテルである一実施形態では、第1の管状のカテーテル部品の近位端は、第2の開口部13を通して挿入される。それは、コネクタ9によってそれ以上の移動が防止されるまでずっと中を案内される。望ましくないずれを防止するために、第2の管状のカテーテル部品をコネクタに取り付ける。代わりにまたは更に、2つのカテーテル部品を互いに取り付けてもよい。
【0036】
従って、前述のカテーテルは、遠位端の方が剛性が高く、このためそれを容易に尿道に挿入し、案内することができる。特に、尿道が比較的長い男性の場合、比較的長いカテーテルは操作がより困難であり、挿入時に、意図せずに、より曲がり易い/よじれ易い傾向があるため、これは問題となるおそれがある。
【0037】
このようなカテーテルは、複雑な製造工程を必要としないため、製造も容易である。例えば、前述のように、Speedicath間欠カテーテルの形態である第1の管状のカテーテル部品は、既知の十分に確立した製造方法で既に提供されており、第2の管状のカテーテルもまた射出成形などの周知の製造方法で製造することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 カテーテル
2 第1の管状のカテーテル部品
3 第1の管状の部品の近位端
4 第1の管状の部品の遠位端
5 第1のアイレット
6 第2のアイレット
7 出口
8 第2の管状のカテーテル部品
9 コネクタ
10 第2の管状の部品の近位端
11 第2の管状のカテーテルの遠位端
12 1つの開口部
13 第2の開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膀胱に挿入される近位端に配置された少なくとも1つの入り口を有する近位部分と、膀胱から出る尿が排出されることを可能にする遠位端に設けられた少なくとも1つの出口を有する遠位部分とを有するカテーテルの製造方法であって、
−少なくとも1つの入り口が設けられた近位端と、少なくとも1つの出口が設けられた遠位端の間に長手方向に延びる第1の管状のカテーテル部品と、
−1つの開口部が設けられた近位端と、第2の開口部が設けられた遠位端の間に長手方向に延びる第2の管状のカテーテル部品と、
が設けられており、
−前記第1の管状のカテーテル部品が前記第2の管状のカテーテル部品より長く、
カテーテルの製造方法が、
−前記第1の管状のカテーテル部品を前記第2の管状のカテーテル部品の開口部の1つに導入することによって、前記第2の管状のカテーテル部品を前記第1の管状のカテーテル部品上に同軸方向に案内すること、
−前記第2の管状のカテーテル部品を前記第1の管状のカテーテル部品の遠位端に配置すること、および
−前記第1の管状のカテーテル部品と前記第2の管状のカテーテル部品を互いに対して永久的に変位固定すること、
を含む、カテーテルの製造方法。
【請求項2】
前記第2の管状のカテーテル部品が、接着剤により前記第1の管状のカテーテル部品に取り付けられる、請求項1に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項3】
前記第2の管状のカテーテル部品が、溶着により前記第1の管状のカテーテル部品に取り付けられる、請求項1または2に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項4】
前記第1の管状のカテーテル部品の遠位端が、第2の管状のカテーテル部品の遠位端と軸方向に並べられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の管状のカテーテル部品の遠位端が、第2の管状のカテーテル部品の遠位端と近位端の間に配置される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
−少なくとも1つの入り口が設けられた近位端と、少なくとも1つの出口が設けられた遠位端の間に長手方向に延びる第1の管状のカテーテル部品と、
−1つの開口部が設けられた近位端と、第2の開口部が設けられた遠位端の間に長手方向に延びる第2の管状のカテーテル部品と、
を備え、
−前記第1の管状のカテーテル部品が前記第2の管状のカテーテル部品より長く、
−前記第2の管状のカテーテル部品が前記第1の管状のカテーテルの遠位端上に配置されており、
−前記第1の管状のカテーテル部品と前記第2の管状のカテーテル部品が互いに対して永久的に変位固定されている、
ヒトの体腔から排泄するためのカテーテル。
【請求項7】
前記第2の管状のカテーテル部品は前記第1の管状のカテーテル部品より剛性(スチフネス)が高い、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記第1のカテーテル部品の外半径が、前記第2のカテーテル部品の内半径より大きい、請求項6または7に記載のカテーテル。
【請求項9】
コネクタが、前記第1の管状のカテーテル部品の遠位端に取り付けられている、請求項6〜8のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記第2の管状のカテーテル部品の遠位端が、前記コネクタに取り付けられている、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
コネクタが、前記第2の管状のカテーテル部品の遠位端に取り付けられている、請求項6〜8のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記第1の管状のカテーテル部品の遠位端が、前記第2の管状のカテーテル部品の遠位端と近位端の間で前記第2の管状のカテーテル部品に取り付けられている、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記コネクタが、前記第2の管状のカテーテル部品と一体形成されている、請求項11または12に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記第1の管状のカテーテル部品と前記第2の管状のカテーテル部品が、接着剤により互いに対して変位固定されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記第1の管状のカテーテル部品と前記第2の管状のカテーテル部品が、溶接により互いに対して変位固定されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載のカテーテル。

【図1】
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【公表番号】特表2012−508603(P2012−508603A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535879(P2011−535879)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050302
【国際公開番号】WO2010/054666
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】