説明

剥落防止タイルおよびそれを用いた剥落防止構造

【課題】外壁面からの剥落を防止する剥落防止タイル及びそれを用いた剥落防止構造を提供することを目的とする。
【解決手段】モルタル又は接着材を介して建物の外壁面に配置する剥落防止タイルであって、タイルパネルと、前記タイルパネルの背面に固着し、両端を前記タイルパネルの両側から延出する固定材と、からなることを特徴とする、剥落防止タイル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外装仕上げに用いる剥落防止タイルおよびそれを用いた剥落防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、外壁をタイル張りで仕上げた建物が人気となっている。
タイル張りは、外壁面aにモルタルbを塗布し、モルタルb面にタイルパネルcを張り付ける方法(図8)や、外壁面に外装材を設け、接着材により外装材にタイルを張り付ける方法が一般的である。
モルタルbにより張り付ける方法の場合には、タイルパネルcに裏足dを設け、タイルパネルを叩きつけることにより裏足d間にモルタルbを食い込ませて、モルタルbとタイルパネルcを一体とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のタイルによる外装仕上げには、以下のような問題があった。
(1)モルタルを用いる場合、モルタルの経年劣化によって、タイルパネルが剥落してしまう恐れがある。
(2)モルタルを用いる場合、タイル張り付け時にタイルパネルを叩きつける際の振動やタイルパネルの重さによってモルタルがダレてタイルパネルが下にずれることがあり、剥落するおそれがある。
(3)いずれの方法においても、大地震が発生した時には地震時の揺れや、建物躯体のクラック等によりタイルパネルが剥落する可能性がある。
【0004】
本発明は、外壁面からの剥落を防止する剥落防止タイル及びそれを用いた剥落防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、モルタル又は接着材を介して建物の外壁面に配置する剥落防止タイルであって、タイルパネルと、前記タイルパネルの背面に固着し、両端を前記タイルパネルの両側から延出する固定材と、からなることを特徴とする、剥落防止タイルを提供する。
本願の第2発明は、第1発明に記載の剥落防止タイルにおいて、前記タイルパネルの背面に、水平方向に連続する直線上の溝部を設け、前記固定材を前記溝部内に固着することを特徴とする、剥落防止タイルを提供する。
本願の第3発明は、第1発明又は第2発明に記載の剥落防止タイルを用いた剥落防止構造であって、外壁面に配列した複数の前記タイルパネルのうち、一つのタイルパネルの一側面から延出する前記固定材と、前記一つのタイルパネルに隣接する他のタイルパネルの一側面から延出する前記固定材どうしを結束して結束部を形成し、前記結束部を前記タイルパネル間の目地に配置することを特徴とする、剥落防止構造を提供する。
本願の第4発明は、第3発明の剥落防止構造において、複数組の前記タイルパネルを外壁面に配置して複数の前記結束部を形成し、前記タイルパネル間の目地に配置する直線状の拘束材によって、複数の前記結束部を前記外壁面に固定することを特徴とする、剥落防止構造を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)タイルパネルの背面に固定材を設け、タイルパネルの背面のみでなく、固定材もモルタルや接着材によって外壁面に取り付けることにより、タイルパネルが剥がれた時に落下することを防ぐことができる。
(2)隣り合うタイルパネルの固定材を結束することにより、一方のタイルパネルが剥がれた時に、剥がれていない他方のタイルパネルが固定材を介して一方のタイルパネルの落下を防ぐことができる。
(3)固定材は線材であるため、容易に結束することができる。
(4)拘束材によって、複数組のタイルパネルの剥落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の剥落防止タイルの説明図
【図2】本発明の剥落防止タイルを用いた剥落防止構造の説明図
【図3】本発明の剥落防止構造における剥落防止タイルの配置図
【図4】本発明の剥落防止構造の横断面図
【図5】本発明の剥落防止構造の施工方法の説明図
【図6】その他実施例にかかる剥落防止構造の説明図(1)
【図7】その他実施例にかかる剥落防止構造の説明図(2)
【図8】従来のタイルパネルの説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図に示す実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
[1]剥落防止タイルの概要
本発明の剥落防止タイル1は、タイルパネル11と、タイルパネル11の背面に取り付ける固定材12と、からなる。(図1)
【0010】
(1)タイルパネル
タイルパネル11は、矩形やひし形等の板体である。
タイルパネル11をモルタルにより張り付ける場合には、裏面に裏足111を設ける。
また、タイルパネル11の裏面には、タイルパネル11の縦方向または横方向の全長に亘って、溝部112を設けてもよい。
タイルパネル11は押し出し成形により成形するが、溝部112は全長に亘って設けるため、押し出し成形時に容易に設けることができる。また、プレス成形の場合でも型を加工することにより容易に設けることができる。
【0011】
(2)固定材
固定材12は、錆びにくい材質のステンレス製の線材であり、折曲可能とする。
固定材12は、接着材等によりタイルパネル11の裏面に固定する。タイルパネル11の裏面に溝部112を設ける場合には、溝部112内に固定材12を配置して固定する。
固定材12の両端は、タイルパネル11の両側面から延出する。
【0012】
[2]剥落防止タイルを用いた剥落防止構造
次に、剥落防止タイル1を用いた剥落防止構造について説明する。
本発明の剥落防止構造は、複数枚の剥落防止タイル1を外壁面2に張り付けて構成する。そして、隣接する崩落防止タイル1a、1bから延出する固定材12a、12bを結束するものである。
剥落防止タイル1はモルタル3や接着剤を介して外壁面2に張り付ける。
剥落防止タイル1は並列して配置しても良い(図3a)し、千鳥状に配置しても良い(図3b)。
剥落防止タイル1a、1bは、間に目地部4を設けて張り付ける。
【0013】
(1)固定材の結束
剥落防止タイル1a、1bから各々延出する固定材12a、12bは撚合して結束部121を構成する。
撚合して構成した結束部121は、剥落防止タイル1a、1b間の目地部4に配置する。
目地部4には合成樹脂やモルタルからなる目地材41を充填する。
【0014】
[3]剥落防止構造の構築方法
次に、剥落防止タイル1を用いた剥落防止工法について説明する。
(1)タイルパネルの張り付け
剥落防止タイル1には、工場で予め固定材12を取り付けておく。
そして、建物の外壁面2にモルタル3を塗布し、モルタル3に剥落防止タイル1の裏面を張り付ける。
モルタル3を用いる場合には、裏面に設けた裏足111間にモルタル3が入り込み、接着力が増す。
モルタル3ではなく、接着材によって剥落防止タイル1を張り付ける際には、裏面に裏足111を設ける必要がない。
剥落防止タイル1は所定の間隔を設けて目地部4を形成し、複数枚張り付ける。(図5a)
【0015】
(2)固定材の結束
張り付けた剥落防止タイル1の、隣接する剥落防止タイル1a、1bから延出する固定材12a、12bを撚合し、結束部121を形成する。(図5b)
固定材12はステンレス製の線材であるため、容易に撚合することができる。
結束部121は、剥落防止タイル1a、1b間の目地部4に配置する。モルタル3が硬化する前であれば、結束部121はモルタル3に埋めこんでもよい。
【0016】
(3)目地詰め
そして、モルタル3硬化後、目地部4に目地詰めを行う。
目地材41は、モルタルや合成樹脂からなり、目地部4に塗り込み、硬化させる。(図4)
結束部121は、目地部4に配置し、目地材41によって覆い隠されるため、美感を損ねることがない。
【0017】
(4)剥落防止タイルの効果
剥落防止タイル1は、隣接するタイルと結束部121を形成する。このため、裏面のモルタルや接着材が剥がれても、結束部121を介してモルタル3及び外壁面2とつながっており、剥落することがない。
また、さらに結束部121が剥がれたとしても、一方の剥落防止タイル1bが剥がれていなければ、その剥落防止タイル1bおよび結束部121を介してモルタル3及び外壁面2とつながっており、剥落することがない。
【0018】
[その他実施例]
固定材12は、お互いに撚合することにより結束部121を形成したが、目地部4にアンカーピン5を設け、アンカーピン5に固定材12を巻き付けて、結束部121を形成してもよい。(図6)
アンカーピン5はモルタル3が硬化した後に外壁面2に直接打設する。
外壁面2に打設したアンカーピン5に固定材12を巻き付けて結束部121を形成することにより、モルタル3が剥がれたとしても、固定材12およびアンカーピン5を介して剥落防止タイル1が外壁面2とつながっており、剥落することがない。
アンカーピン5及び結束部121は、目地材31によって覆い隠されるため、美感を損ねることがない。
【0019】
また、棒状または線状の拘束材6によって、結束部121を固定してもよい(図7)。
拘束材6は目地部4に配置し、並列する複数枚の剥落防止タイル1によって形成する複数組の結束部121を固定することにより、複数枚の剥落防止タイル1の剥落を防止する。
拘束材6は外壁面2に打設する固定具61を介して、外壁面2に固定する。
外壁面2に固定した拘束材6によって結束部121を固定することにより、モルタル3が剥がれたとしても、固定材12および拘束材6を介して剥落防止タイル1がモルタル3及び外壁面2とつながっており、剥落することがない。
一本の拘束材6で複数の結束部121をまとめて固定するため、施工が容易である。
また、拘束材6に固定材12を巻き付けて結束部121を形成し、一本の拘束材6で複数の剥落防止タイル1を固定してもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 剥落防止タイル
11 タイルパネル
111 裏足
112 溝部
12 固定材
121 結束部
2 外壁面
3 モルタル
4 目地部
41 目地材
5 アンカーピン
6 拘束材
61 固定具61

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルタル又は接着材を介して建物の外壁面に配置する剥落防止タイルであって、
タイルパネルと、
前記タイルパネルの背面に固着し、両端を前記タイルパネルの両側から延出する固定材と、からなることを特徴とする、剥落防止タイル。
【請求項2】
請求項1に記載の剥落防止タイルにおいて、
前記タイルパネルの背面に、水平方向に連続する直線上の溝部を設け、
前記固定材を前記溝部内に固着することを特徴とする、剥落防止タイル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の剥落防止タイルを用いた剥落防止構造であって、
外壁面に配列した複数の前記タイルパネルのうち、一つのタイルパネルの一側面から延出する前記固定材と、前記一つのタイルパネルに隣接する他のタイルパネルの一側面から延出する前記固定材どうしを結束して結束部を形成し、
前記結束部を前記タイルパネル間の目地に配置することを特徴とする、剥落防止構造。
【請求項4】
請求項3に記載の剥落防止構造において、複数組の前記タイルパネルを外壁面に配置して複数の前記結束部を形成し、前記タイルパネル間の目地に配置する直線状の拘束材によって、複数の前記結束部を前記外壁面に固定することを特徴とする、剥落防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−32667(P2013−32667A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170026(P2011−170026)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(591051209)株式会社日本陶業 (1)
【Fターム(参考)】