説明

剥離型半導性シールドおよびこのための組成物

本発明は、全般的には、半導性電力ケーブルシールド、このようなシールド付きのケー
ブル、およびこのようなシールドを製造するための組成物に関する。半導性シールドは電
力ケーブル絶縁物から剥離可能であり、熱老化に抵抗性であり、ケーブル押し出し時改善
された加工性を有し、ブチルニトリルゴム(NBR)を殆ど、あるいは全く含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導性シールドを有する電力ケーブルに関する。本発明は、全般的には、半導
性電力ケーブルシールド、このようなシールド付きのケーブル、このようなシールドを製
造するための組成物、およびこのようなシールドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な電力ケーブルは、一般的に、第1あるいは内側の半導性シールド層(導体また
はより線シールド)、絶縁層、第2あるいは外側の半導性シールド層(絶縁シールド)、
金属テープまたはワイヤシールド、および保護ジャケットを含むポリマー材料のいくつか
の層により取り囲まれているケーブルコア中に1つ以上の電導体を含んでなる。この外側
の半導性シールドは、この絶縁物に結合可能であるか、あるいは剥離可能であり、大部分
の用途は剥離型シールドを使用する。内側の半導性シールドは一般的に絶縁層に結合され
ている。水分不浸透性の材料などのこの構成体内の追加の層がしばしば組み込まれる。
【0003】
多層化された電力ケーブル構成体においてはポリマー半導性シールドが何十年の間使用
されてきた。一般に、これらは、1キロボルト(kV)超の電圧の定格の固体誘電性電力
ケーブルを組み立てるのに使用される。これらのシールドは、高電位導体と一次絶縁物の
間、および一次絶縁物と接地または中立電位の間で中間の電導性層を提供するのに使用さ
れる。ICEA S−66−524、6.12節、またはIEC 60502−2(19
97)、附属書Cに記述されている方法を用いて、完成した電力ケーブル構成体で測定し
た場合、これらの半導性材料の体積抵抗率は、通常、10-1〜108ohm−cmの範囲
にある。
【0004】
典型的な剥離型シールド組成物は、高ビニルアセテート含量のエチレン/ビニルアセテ
ートコポリマーなどのポリオレフィン、電導性カーボンブラック、有機過酸化物架橋剤、
ならびに他の慣用の添加物、例えばニトリルゴム(剥離力低下剤として機能する)、加工
助剤、および酸化防止剤を含有する。これらの組成物は通常ペレット形で製造される。こ
れらのポリオレフィン配合物は、米国特許第4,286,023号、欧州特許出願番号4
20271、および米国特許出願公開2002032258Alに開示されている。
【0005】
絶縁シールドが絶縁層に接着するということは重要であるが、絶縁シールドが短時間で
比較的容易に剥離可能であるということも重要である。典型的な絶縁シールドは絶縁層に
対して最適な剥離性を有しないということが見出されている。剥離性は、それが単に時間
を節約させるだけでなく、スプライシングまたはターミナル接続の質を増進させるという
点で非常に重要である。
【0006】
中間電圧電力ケーブル用の半導性剥離型絶縁シールド(IS)組成物に使用される現行
の原材料は、通常、エチレン−ビニルアセテートコポリマー(EVA)とニトリルブタジ
エンゴム(NBR)または高ビニルアセテート(33パーセント超のビニルアセテート)
のEVAコポリマーを含有して、剥離性を呈する高極性のポリマーブレンドをベースとす
る。剥離型絶縁シールド製品は約5〜約20重量パーセントの量のNBRを含む。
【0007】
しかしながら、NBRは、このケーブルを応力緩和として知られる熱老化工程にかける
と、半導性剥離型絶縁シールドと絶縁層の間の著しい接着性の低下を引き起こすことが示
されてきた。この絶縁材料が、このケーブルを絶縁層の融点以上、例えば100℃と11
0℃の間の温度に暴露すると、冷却時に容易に結晶化しない低分子量種を含有すると、こ
の接着性の低下は特に厳しい。接着性の低下によって、電力ケーブルはカスタマー規格に
不合格となり、商品的な問題を生じる。絶縁シールド中のNBRの濃度を最少とすること
により、接着性の低下を最少とすることができる。しかしながら、NBRを最少とするこ
とは別の問題を生じる。
【0008】
NBR無しの接着性または剥離張力は、剥離性に対するカスタマーの要求に合致するに
は高過ぎると考えられてきた。一般に、NBR無しの組成物においては、先行技術は剥離
性をもたらすためには多量のビニルアセテートを使用したが、多量のビニルアセテートは
残留酢酸を生成し、これは、加工の問題、装置の腐食、焼結および高コストを生じ、WO
−0229829に全般的に論じられている。ある絶縁シールド組成物は、米国特許出願
公開番号US2002/0032258 Alおよび米国特許第6,525,119号に
述べられているものなどのNBR無しであるが、これらの組成物はフリーラジカルにより
架橋可能でなく、高度に短鎖化された分岐ポリマーについて述べておらず、高レベルのこ
のようなポリマーを使用している。
【0009】
要約すれば、許容し得る剥離性と熱安定性を得るために、一般に、
i)劣る熱安定性を生じる、少なくとも33重量パーセントのビニルアセテートを有す
るエチレン/ビニルアセテートコポリマーとアクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR
)コポリマーの絶縁シールドを準備し;ii)劣る熱安定性を生じる、約40重量パーセ
ント以上のビニルアセテートを有し、NBRを有しないエチレン/ビニルアセテートコポ
リマーを準備し;iii)良好な安定性を生じるが、劣った剥離性を生じるエチレン/エ
チルアクリレートコポリマー絶縁シールドを準備する3つのアプローチが先行技術におい
て使用されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それゆえ、本発明の目的は、NBR無しで、適切に剥離型であり、満足なレベルの熱安
定性を維持し、ケーブル押し出し時に改善された加工性をもたらす絶縁シールドにより取
り囲まれた絶縁層を有する電力ケーブルを提供することである。他の目的および利点は次
の明細書を参照することにより明白になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のフリーラジカル架橋型の半導性電力ケーブルシールド組成物は、フリーラジカ
ル架橋により架橋可能なブレンドである。このブレンドは、(a)少なくとも1つの高度
に短鎖化された分岐ポリマー、(b)エチレンと少なくとも1つの不飽和エステルのポリ
マーであり、この不飽和エステルがビニルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸
エステル、およびこれらの混合物からなる群から選択され、このエステルモノマーがこの
不飽和エステルインターポリマーの重量基準で約15〜約50重量パーセントの量で存在
する少なくとも1つの不飽和エステルインターポリマー、および(c)電導性カーボンブ
ラックを含んでなる。この高度に短鎖化された分岐ポリマー、不飽和エステルインターポ
リマー、および電導性カーボンブラックは、キュアした場合、絶縁シールドに100℃で
2週間貯蔵した後、23℃で1/2インチ(1.3cm)当たり3ポンド(1.4kg)
超の剥離力と、23℃で1/2インチ(1.3cm)当たり24ポンド(10.9kg)
以下の初期剥離力を付与する量で存在しなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
理論により拘束されるように意図しているのではないが、比較的少量の高度に短鎖化さ
れた分岐ポリマーは、おおむねポリエチレンを含んでなる絶縁シールドから絶縁物の中へ
のポリマーの濡れと拡散を低減させることが見出されている。この短鎖の分岐したポリマ
ーは、絶縁シールドと絶縁物の間の界面における分子の絡み合いを最少にする。記述され
る系に対するフローリー・ハギンス理論に基づく溶解性パラメーター差がほぼ0.3(J
/cm31/2(MW=100,000g/モル)超である場合には、この効果は、ポリマ
ー鎖の間の非混和性の結果である。
【0013】
熱的手段による絶縁シールド組成物の、例えば過酸化物から形成されるフリーラジカル
によるフリーラジカル架橋時には、フリーラジカルは短鎖の分岐したポリマー上の三級水
素原子と優先的に反応する。これは、絶縁物と絶縁シールド層の間の界面において結合を
生じ得るフリーラジカルを消費する短鎖分岐ポリマー上でのβ−切断反応を生じると考え
られる。
【0014】
この高度に短鎖化された分岐ポリマーは、1つ以上のオレフィンのホモポリマーであり
得るか、あるいはエチレンと1つ以上のオレフィンのインターポリマーである(すなわち
、この高度に短鎖化された分岐ポリマーは、100モルパーセントまでのオレフィンを含
有し得るか、あるいはオレフィンホモポリマーであり得る)。好ましくは、このオレフィ
ンはα−オレフィンである。本発明において有用なこの高度に短鎖化された分岐ポリマー
は、(1)オレフィンとエチレンのポリマーまたは(2)ランダムコポリマーも含む。
【0015】
エチレンと重合されるか、あるいは別のオレフィンと共重合されるオレフィンモノマー
は、3〜12個の炭素原子を有することができ、好ましくは3〜8個の炭素原子を有し、
このコポリマーの約50〜約100モルパーセントの範囲である。好ましくは、このエチ
レン/オレフィンコポリマーは、1−ブテンとエチレンのエチレン/α−オレフィンコポ
リマー、プロピレンとエチレンのコポリマー、または1−オクテンとエチレンのコポリマ
ーである。
【0016】
また、好ましくは、この高度に短鎖化された分岐ポリマーは、
式(CH2−CHR)x−(CH2−CH2y
(式中、X=約50〜約100パーセントを含んでなるオレフィンのモルパーセント;Y
=約0〜約50パーセントのモルパーセント;X+Y=100(合計のモルパーセント)
;Rは1〜12個の炭素原子を含有するアルキル基(例えば、プロピレン、1−ブテン、
1−ヘキセン、1−オクテンからのメチル、エチル、ブチル、ヘキシル基)から選択され
る短鎖分岐である)
により記述され、このポリマー中の短鎖分岐数がポリマー骨格炭素1000個当たり約2
50〜約500の範囲であるものである。
【0017】
好ましくは、この高度の短鎖の分岐エチレン/オレフィンインターポリマーは、約50
〜約100モルパーセントのオレフィンを含有する。
【0018】
オレフィン/エチレンコポリマー中のエチレンコモノマーの挿入は、このポリマーの結
晶性を乱し、ポリマーを柔軟で、更に可撓性とせしめる。例えば、ポリブテンの融点は約
125℃である。エチレン含量(Y)が若干増加するに従って、融解温度は低下する。ポ
リプロピレンの融点は、約165℃であり、同じ傾向に従う。
【0019】


【0020】


【0021】
ポリマー、コポリマーまたは3つ以上のモノマーを有するインターポリマーを製造する
のに、1つ以上のタイプのオレフィンモノマーが使用され得る。好ましいオレフィンは、
プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテ
ンを含むα−オレフィンである。このメルトインデックスは、190℃/2.16kgに
おいて10分当たり1〜100グラムの範囲にあることができ、好ましくは10分当たり
20〜50グラムの範囲にある。
【0022】
この高度に短鎖化された分岐ポリマーは、一般的に、この高度に短鎖化された分岐ポリ
マー、不飽和エステルインターポリマー、および電導性カーボンブラックの重量基準で約
1〜約75重量パーセントの量でこの絶縁シールド組成物中に存在する。好ましくは、こ
の高度に短鎖化された分岐ポリマーは、約1〜約40重量パーセントの量で、更に好まし
くは約1〜約20重量パーセントの量で存在する。この高度に短鎖化された分岐ポリマー
がプロピレンコポリマーである場合には、この高度に短鎖化された分岐ポリマーは、約1
〜約75重量パーセントの間、更に好ましくは約20重量パーセントと約40重量パーセ
ントの間の量で存在するのが特に好適である。
【0023】
この高度に短鎖化された分岐ポリマーの化学的ミクロ構造は、Bovey, F.A., "High Res
olution NMR of Macromolecule," Academic Press, New York, 1972およびRandall, J.C.
, 「Polymer Sequence Determination,」 Academic Press, New York, 1977に記述されて
いるNMR法により定量可能である。
【0024】
通常、短鎖分岐の程度はこのポリマーの融解温度により示される。エチレンのパーセン
トが増加し、分岐が減少するに従ってこの融点は低下すると考え得る。例えば、約5〜約
15重量パーセントのエチレンのレベルで、融解温度は40℃を超えて低下し得る。一般
に、この高度に短鎖化された分岐ポリマーの融点は、DSC(示差走査熱分析)において
10〜20℃/分の加熱速度で測定して、約20℃〜約115℃の範囲になければならな
い。上述のように、この高度に短鎖化された分岐ポリマーは、通常、炭素1000個当た
り約250〜約500短鎖分岐を持つアルキル基により置換された骨格も有する。
【0025】
本発明において有用なこの高度の分岐した短鎖ポリマーは、好ましくは気相で製造され
る。これらは高圧あるいは低圧法により製造可能である。上記のように、低圧法は、通常
、1000psi未満の圧力で行われ、高圧法は、通常、15,000psi超の圧力で
行われる。これらは溶液法でも製造可能である。プロピレン−エチレンコポリマーは、好
ましくは溶液法を用いて製造される。
【0026】
この不飽和エステルポリマーはインターポリマーである。この明細書で使用されるよう
に、「インターポリマー」は、コポリマー、ターポリマー、またはより高次のポリマーを
意味する。すなわち、少なくとも1つの他のコモノマーはエチレンと重合されて、インタ
ーポリマーを生成する。
【0027】
一般的に、この不飽和エステルインターポリマーは、10分当たり約1〜約100グラ
ムのメルトインデックスを有し、好ましくは10分当たり20〜50グラムの範囲のメル
トインデックスを有する。メルトインデックスは、ASTM D−1238、条件E下、
190℃/2.16キログラムで求められる。
【0028】
この不飽和エステルインターポリマーは、一般に、この高度に短鎖化された分岐ポリマ
ー、不飽和エステルインターポリマー、および電導性カーボンブラックの重量基準で約4
0〜約75重量パーセントの量でこの絶縁シールド組成物中に存在する。
【0029】
半導性シールドで最も普通に使用される不飽和エステルインターポリマーは、非晶性か
ら低〜中結晶性の種々の結晶化度のエラストマー、好ましくはエチレンと不飽和エステル
のコポリマーである。本発明の絶縁シールドに関する限り、この不飽和エステルは、ビニ
ルエステル、アクリル酸エステル、またはメタクリル酸エステルである。好ましくは、こ
の不飽和エステルインターポリマーは、このインターポリマーの重量基準で約15〜約5
0重量パーセントのエステル含量を有し、このインターポリマーは、不飽和エステルイン
ターポリマー、高度に短鎖化された分岐ポリマー、およびカーボンブラックブレンドの約
40〜約75重量パーセントを形成する。
【0030】
このエステルモノマーは4〜20個の炭素原子を有することができ、好ましくは4〜7
個の炭素原子を有する。ビニルエステルの例は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネー
ト、ビニルブチレート、ビニルピバレート、ビニルネオノナノエート、ビニルネオデカノ
エート、およびビニル2−エチルヘキサノエートである。ビニルアセテートが好ましい。
【0031】
アクリル酸およびメタクリル酸エステルの例は、ラウリルメタクリレート;ミリスチル
メタクリレート;パルミチルメタクリレート;ステアリルメタクリレート;3−メタクロ
イルオキシ−プロピルトリメトキシシラン;3−メタクロイルオキシプロピルトリエトキ
シシラン;シクロヘキシルメタクリレート;n−ヘキシルメタクリレート;イソデシルメ
タクリレート;2−メトキシエチルメタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレ
ート;オクチルメタクリレート;2−フェノキシエチルメタクリレート;イソボルニルメ
タクリレート;イソオクチルメタクリレート;オクチルメタクリレート;イソオクチルメ
タクリレート;オレイルメタクリレート;エチルアクリレート;メチルアクリレート;t
−ブチルアクリレート;n−ブチルアクリレート;および2−エチルヘキシルアクリレー
トである。メチルアクリレート、エチルアクリレート、およびn−あるいはt−ブチルア
クリレートが好ましい。
【0032】
アルキルアクリレートおよびメタクリレートの場合には、このアルキル基は1〜8個の
炭素原子を有することができ、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。このアルキル基
は、例えばオキシアルキルトリアルコキシシラン、または他の種々の基により置換可能で
ある。
【0033】
この不飽和エステルインターポリマーは、通常、従来の高圧法により製造される。これ
らの高圧法は、通常、15,000psi(1平方インチ当たりのポンド)超の圧力で行
われる。このインターポリマーは、1立方センチメートル当たり0.900〜0.990
グラムの範囲の密度を有することができ、好ましくは1立方センチメートル当たり0.9
20〜0.970グラムの範囲の密度を有する。
【0034】
いかなる理論によっても拘束されるように意図するのではないが、この高度に短鎖のポ
リマーと不飽和エステルインターポリマーのブレンドは、ポリオレフィンの熱力学的な相
溶性を用いて定義され得る。ポリオレフィンの溶解性パラメーターは融液相溶性を予測す
ると評価され得る。
【0035】
フローリー・ハギンス理論(Hildebrand, J.H. and Scott, R.L., The Solubility of N
onelectrolytes, 3rd Ed., Dover Publications, Incl, New York, 431, 1950, and Van
Krevelen, D.W., Properties of Polymers, Elsevier/North-Holland Inc., 2nd Ed., 16
8, 1980)に基づけば、ポリマー対間の溶解性パラメーター差がほぼ0.3(J/cm31
/2(Mw=100,000g/モルで)超である場合には、ポリマー対は非混和性である
。この非混和性対はポリオレフィンの溶解性パラメーターマップから予測され得る。
【0036】
低密度ポリエチレン(LDPE−約0.92g/cm3未満の密度)絶縁物による約0
.5(J/m31/2超の溶解性パラメーター差を有するポリマー組成物は、おそらく融解
状態における非混和性領域である。約50〜約100重量パーセントの含量の範囲のα−
オレフィンモノマーによるポリ(α−オレフィン)は、LDPEと混和性でないと予測さ
れる。エチレン/不飽和エステルコポリマーと高度の分岐した短鎖ポリマーのブレンドは
、フローリー・ハギンスの計算モデルによれば、この絶縁シールド組成物と非混和性であ
り、ポリエチレン絶縁物とも非混和性であり得る。この2つのポリマーが低相溶性となる
に従って、界面におけるポリマー鎖は似ていないポリマー鎖と混合する可能性は低い。混
合する能力が欠如していることにより、この鎖は融液中で相互にできるだけ遠く離れるよ
うに動き、界面厚さを減少させ、界面の絡み合いを低減させる。
【0037】
半導性シールドを提供するためには、電導性粒子をこの組成物の中に組み込むことも必
要である。これらの電導性粒子は、一般に、上記に引用された粒子状カーボンブラックに
より提供される。
【0038】
有用なカーボンブラックは1グラム当たり20〜1000平方メートルの表面積を有す
ることができる。この表面積はASTM D 4820−93a(多点B.E.T.窒素
吸収)の下で求められる。
【0039】
このカーボンブラックは、半導性シールド組成物中で不飽和エステルインターポリマー
、高度の短鎖の分岐したポリマー、および電導性カーボンブラックの重量基準で約25〜
約45重量パーセントの量で使用可能であり、好ましくは約30〜約40重量パーセント
の量で使用される。
【0040】
更に好ましくは、この装填量範囲は、約34〜約38重量パーセントの間の電導性カー
ボンブラックである(通常、105立方センチメートル/100グラムのカーボンブラッ
クのジブチルフタレート(DBP)吸着値(ASTM D 2414下)を有する。標準
の電導性および高電導性カーボンブラックの両方が使用可能であり、標準の電導性ブラッ
クが好ましい。電導性カーボンブラックの例は、ASTM N550、N472、N35
1、N110、アセチレンブラック、およびケッチェンブラックにより記述されるグレー
ドである。
【0041】
この絶縁シールドの製造に使用される絶縁シールド組成物中のポリマーは架橋されてい
る。これは、有機過酸化物または光照射により開始されるフリーラジカル架橋反応による
従来の方法で行われ、前者が好ましい。使用される有機過酸化物の量は、過酸化物、不飽
和エステルインターポリマー、高度に短鎖化された分岐ポリマー、およびカーボンブラッ
クの重量基準で有機過酸化物の0.2〜5重量パーセントの範囲にあることができ、好ま
しくは0.4〜2重量部の範囲にある。有機過酸化物の架橋温度は、過酸化物分解に対す
る1分間の半減期により定義されるが、150〜250℃の範囲にあることができ、好ま
しくは170〜210℃の範囲にある。
【0042】
架橋で有用な有機過酸化物の例は、ジクミルペルオキシド;ラウリルペルオキシド;ベ
ンゾイルペルオキシド;tert−ブチルペルベンゾエート;ジ(tert−ブチル)過
酸化物;クメンヒドロペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチル−ペル
オキシ)ヘキシン−3;2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(t−ブチル−ペルオキシ)ヘ
キサン;tert−ブチルヒドロペルオキシド;イソプロピルペルカーボネート;および
アルファ,アルファ’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼンで
ある。
【0043】
この絶縁シールド中に存在し得るけれども、望ましくない別の成分は、アクリロニトリ
ルとブタジエンのコポリマー(NBR)である。本発明の利点を享受するためには、NB
Rは、5重量パーセント未満、好ましくは1重量パーセント未満の量でこのコポリマー中
に存在し得、重要な態様においては、痕跡量以上のNBRが存在してはならない。ニトリ
ルゴムまたはアクリロニトリル/ブタジエンコポリマーゴムであるNBRは、例えば1立
方センチメートル当たり0.98グラムの密度を有することができ、100℃で測定され
るムーニー粘度は(ML1+4)50であり得る。この明細書で使用されるように、アク
リロニトリル/ブタジエンゴムはニトリルゴムとアクリロニトリル/ブタジエンゴムの両
方を含む。
【0044】
この組成物の中に導入可能である慣用の添加物は、酸化防止剤、カップリング剤、紫外
線吸収剤または安定剤、静電防止剤、顔料、染料、核形成剤、補強充填剤またはポリマー
添加物、滑剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、粘度制御剤、粘着剤、ブロッキング防止剤、
界面活性剤、エキステンダー油、金属不活性化剤、電圧安定剤、難燃剤充填剤および添加
物、架橋剤、促進剤、および触媒、および煙抑制剤により例示される。添加物と充填剤は
、それを含む層の重量基準で0.1未満〜10重量パーセント超の範囲の量で添加可能で
ある。
【0045】
酸化防止剤の例は、ヒンダードフェノール、例えばテトラキス[メチレン(3,5−ジ
−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナメート)]メタン、ビス[(ベータ
−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メチルカルボキシエチル
]]スルフィド、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)
、4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2’−チ
オビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、およびチオジエチレンビス(
3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート;ホスファイトお
よびホスホナイト、例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイ
トおよびジ−tert−ブチルフェニル−ホスホナイト、チオ化合物、例えばジラウリル
チオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、およびジステアリルチオジ
プロピオネート;種々のシロキサン;ならびに種々のアミン、例えば重合された2,2,
4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、4,4’−ビス(アルファ,アルファ−ジ
メチルベンジル)ジフェニルアミン、およびアルキル化ジフェニルアミンである。酸化防
止剤は、これを含む層の重量基準で0.1〜重量パーセントの量で使用可能である。
【0046】
本発明のケーブルは、絶縁層に取り囲まれた電導体または電導体のコアを含んでなり、
この絶縁層はフリーラジカル架橋されている絶縁シールド組成物を含んでなる絶縁シール
ド層により取り囲まれ、これと隣接する。この絶縁層は、電力ケーブル絶縁に適切である
いかなる樹脂も含むことができるが、普通の絶縁層は、ポリエチレン、エチレン/プロピ
レンコポリマーゴム、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマーゴム、およびこれらの
混合物を含んでなる。
【0047】
本発明の電力ケーブル用に絶縁物で使用されるポリエチレンは、エチレンのホモポリマ
ーまたはエチレンとオレフィンのコポリマーであり得る。このポリエチレンは高密度、中
密度、あるいは低密度を有することができる。このように、この密度は1立方センチメー
トル当たり0.860〜0.960グラムの範囲であり得る。このオレフィンは3〜12
個の炭素原子を有することができ、好ましくは3〜8個の炭素原子を有する。好ましいオ
レフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、およ
び1−オクテンにより例示可能であるα−オレフィンである。メルトインデックスは、1
0分当たり1〜20グラムの範囲にあることができ、好ましくは10分当たり2〜8グラ
ムの範囲にある。
【0048】
本発明で有用なエチレンポリマーは、好ましくは気相で製造される。これらは、従来の
方法により溶液またはスラリーの液相中でも製造可能である。これらは高圧あるいは低圧
法により製造可能である。低圧法は、通常、1000psi未満の圧力で行われ、上記の
ように、高圧法は、通常、15,000psi超の圧力で行われる。一般に、このエチレ
ンホモポリマーは高圧法により製造され、このコポリマーは低圧法により製造される。
【0049】
これらのポリマーの製造に使用可能である典型的な触媒系は、米国特許第4,302,
565号に述べられている触媒系により例示可能であるマグネシウム/チタンベースの触
媒系;米国特許第4,508,842号および第5,332,793号;第5,342,
907号;ならびに第5,410,003号に述べられているものなどのバナジウムベー
スの触媒系;米国特許第4,101,445号に述べられているものなどのクロムベース
の触媒系;米国特許第4,937,299号および第5,317,036号に述べられて
いるものなどのメタロセン触媒系;または他の遷移金属触媒系である。これらの触媒系の
多くは、しばしばチーグラー・ナッタあるいはフィリップス触媒系と呼ばれる。シリカ−
アルミナ担体上のクロムあるいはモリブデンの酸化物を使用する触媒系も有用である。こ
のポリマーの典型的な製造方法も前述の特許に述べられている。典型的な系内ポリマーブ
レンドとこれを提供するための方法および触媒系が米国特許第5,371,145号およ
び第5,405,901号に述べられている。従来の高圧法がIntroduction to Polymer
Chemistry, Stille, Wiley and Sons, New York, 1962, pages 149-151に述べられている
。高圧法用の典型的な触媒は有機過酸化物である。この方法は、管状反応器または撹拌さ
れたオートクレーブ中で実施可能である。
【0050】
ポリエチレンの例は、エチレンのホモポリマー(HP−LDPE)、直鎖低密度ポリエ
チレン(LLDPE)、および極低密度ポリエチレン(VLDPE)である。中密度およ
び高密度ポリエチレンも使用可能である。エチレンのホモポリマーは、一般に、従来の高
圧法により製造される。これは、好ましくは1立方センチメートル当たり0.910〜0
.930グラムの範囲の密度を有する。このホモポリマーは、また、10分当たり1〜5
グラムの範囲のメルトインデックスを有することができ、好ましくは10分当たり0.7
5〜3グラムの範囲のメルトインデックスを有する。このLLDPEは1立方センチメー
トル当たり0.916〜0.925グラムの範囲の密度を有し得る。このメルトインデッ
クスは、10分当たり1〜20グラムの範囲にあることができ、好ましくは10分当たり
3〜8グラムの範囲にある。直鎖でもあるVLDPEの密度は、1立方センチメートル当
たり0.860〜0.915グラムの範囲にあり得る。このVLDPEのメルトインデッ
クスは、10分当たり0.1〜20グラムの範囲にあることができ、好ましくは10分当
たり0.3〜5グラムの範囲にある。エチレン以外のコモノマーに帰属されるLLDPE
とVLDPEの部分は、このコポリマーの重量基準で1〜49重量パーセントの範囲にあ
ることができ、好ましくは15〜40重量パーセントの範囲にある。第3のコモノマー、
例えば別のα−オレフィンまたはジエン、例えばエチリデンノルボルネン、ブタジエン、
1,4−ヘキサジエン、もしくはジシクロペンタジエンが包含可能である。この第3のコ
モノマーは、このコポリマーの重量基準で1〜15重量パーセントの量で存在することが
でき、好ましくは1〜10重量パーセントの量で存在する。このコポリマーはエチレンを
含んで2つあるいは3つのコモノマーを含有することが好ましい。
【0051】
上述のポリエチレンに加えて、この絶縁物で使用され得る別の樹脂は、エチレン/プロ
ピレンコポリマー(EPM)とエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)
の両方を含むEPR(エチレン/プロピレンゴム)である。これらのゴムは、1立方セン
チメートル当たり1.25〜1.45グラムの範囲の密度と、10〜40の範囲の125
℃におけるムーニー粘度(ML1+4)を有する。プロピレンは10〜50重量パーセン
トの量でコポリマーまたはターポリマー中に存在し、ジエンは0〜12重量パーセントの
量で存在する。このターポリマーで使用されるジエンの例は、ヘキサジエン、ジシクロペ
ンタジエン、およびエチリデンノルボルネンである。ポリエチレンとEPRの混合物が考
えられる。
【0052】
本発明は、また、この絶縁シールドの製造、このための組成物、およびケーブル押し出
し加工性も改善する。NBRは粘着性のゴムである。製造操作における材料輸送ライン中
で搬送することは困難である。NBRは高粘度を有し、配合物粘度はNBRの添加により
大幅に増大する。対照的に、高度に短鎖化された分岐ポリマーは、絶縁シールドとこのた
めの組成物を大量生産するための輸送が容易である。高度の短鎖のポリマーによる絶縁シ
ールド組成物は、NBRの粘度と比較してこの粘度が低いことにより、NBRを含む配合
物と比較して加工性を劇的に改善する。このことは、高速のケーブル押し出しおよび製造
の容易さにつながる。
【0053】
好ましくは、この半導性絶縁シールド組成物はこの成分の反応性混練により製造される

【実施例】
【0054】
次の実施例は、本発明を実施するための方法を例示し、例示的なものであるが、添付の
特許請求の範囲に規定される本発明の範囲を限定するものでないと理解されるべきである

【0055】
試料作製
種々のタイプの融解ミキサー、例えばブラベンダー(商標)ミキサー、バンバリーミキ
サー(商標)、ロールミル、Buss(商標)コニーダー、二軸スクリュー混練押し出し
機、および一軸あるいは二軸の押し出し機で加硫型半導性シールド組成物を製造すること
ができる。
【0056】
ブラベンダーベンチミキサーでこの加硫型半導性組成物を40rpmで150℃の処方
温度で15分間製造し、プラーク接着性試験に使用した。
【0057】
Buss(商標)コニーダーでこの加硫型半導性組成物をケーブル押し出し用に製造し
た。15kVケーブルを#1/0−19Wより線のアルミニウム導体ワイヤ上に三層で押
し出した。このケーブルの標的寸法は、導体シールド/絶縁物/絶縁シールドに対して0
.015インチ/0.175インチ/0.040インチ(0.4mm/4.4mm/l.
0mm)であった。
【0058】
導体を850°F(454℃)で予熱した。導体シールドと共に押し出す前に、導体温
度は約92〜94°F(33℃〜34℃)であり、続いて、絶縁物と絶縁シールドを押し
出した。
【0059】
導体シールドの表面をケーブル押し出し時に目視検査した。ケーブルが押し出し機から
出たら直ちに、このケーブルを熱窒素条件下で145psiの圧力により架橋した。連続
加硫(CV)管のライン長は約120フィート(36.6メートル)であった。CV管中
のケーブル滞留時間は約4分であった。全ライン速度は30フィート/分(9メートル/
分)であった。
【0060】
HFDE−4201絶縁物は133パーセントおよび102パーセントの熱クリープパ
ーセントを生じた。熱クリープ用のAEIC CS8−87規格は、架橋ポリエチレン絶
縁物に対しては175パーセント未満である。
【0061】
プラーク接着性の試験方法
絶縁シールド配合物ペレットと絶縁層配合物ペレットから単一のプラークを圧縮成形に
より作製する。
【0062】
圧縮成形の前に、このペレットを2本のロールミル上で溶融させる。架橋を所望するな
らば、有機過酸化物を添加する。シールドペレットの圧縮成形の温度は100℃である。
ほぼ65グラムのシールド配合物を使用して、30ミルのプラークを作製する。
【0063】
絶縁ペレットの圧縮成形の温度は130℃である。ほぼ135グラムの絶縁配合物を使
用して、125ミルのプラークを作製する。秤量した材料を2つのマイラー(商標)プラ
スチックシートの間にサンドウイッチし、アルミニウム箔のシートによりプレスプラテン
から隔離する。
【0064】
圧縮成形には次の典型的な圧力と時間サイクルを使用した:a)2000psi(1平
方インチ当たりのポンド)で5分間;b)50,000psiで3分間;次にc)50,
000ポンドの圧力で10分間クエンチ冷却。
【0065】
次に、2つの単一のプラーク(1つのシールドプラークと1つの絶縁プラーク)を圧力
下でキュアすることにより、接着プラークサンドウイッチを作製する。マイラー(商標)
シートを単一のプラークから取り除き、いかなる余分もトリミングする。この125ミル
のトリミングした絶縁プラークを75ミルの型に入れる。この絶縁プラークの頂部縁の少
なくとも2インチ(5cm)をマイラー(商標)シートの細片により被覆して、「プルタ
ブ」の形成領域中でのシールドプラークへの接着を防止する。次に、この30ミルのシー
ルドプラークを絶縁プラークの上部に置く。このサンドウイッチをマイラー(商標)シー
トによりプレスプラテンから隔離し、プレスに入れる。次に、このプレスを閉じ、100
0psiの圧力を130℃で4分間維持する。次に、スチームを190℃(約180ps
ig)でプレスの中に導入する。次に、25分間(130℃から190℃まで加熱する時
間を含め)で20,000psiのキュアサイクルを行い、次に15分間で20,000
psiのクエンチ冷却サイクルを行う。
【0066】
このサンドウイッチをプレスから取り除き、マイラー(商標)シートを取り除き、余分
な部分をトリミングし、このサンドウイッチを5つの試料(各々1.5インチ(3.8c
m)幅×約6インチ(15.2cm)長)に切断する。更なる試験の前にこれらの試料を
環境制御室に23℃および50パーセント相対湿度で一夜入れる。
【0067】
1/2インチ(1.3cm)の細片を各試料の中心でマークする。かみそりを使用して
、このブラック材料が絶縁プラークまで通して切断されるようにそれぞれの線に沿って切
断する。回転ホイールとインストロン(商標)または類似の引っ張り試験機を用いて、剥
離試験を行う。各試料をこのホイールに載せ、このホイールが回転して、引っ張り力の方
向に対してこのプラークの表面の垂直な配置を維持しながら、引っ張り試験機がサンドウ
イッチプラークから中心細片を引っ張るように、引っ張り試験機のジョーに中心細片を載
せる。この引っ張り試験機のジョーは、この試験時1分当たり20インチ(50.8cm
)の直線速度で移動するものとし、約1/2インチ(1.3cm)の非剥離材料が残る場
合には、これを停止しなければならない。剥離された最初と最後の1インチ(2.54c
m)を無視して、この試験の最大荷重と最小荷重を示さなければならない。プラーク剥離
力は1/2インチ当たりのポンドで示した最大荷重に等しい。
【0068】
ケーブル剥離張力の試験方法
このケーブルから、ケーブル軸に平行な細片として絶縁シールドを取り除くように設計
された折り目付け用のツールにより2つの平行な切れ目を0.5インチ(1.3cm)間
隔で絶縁物に向かって入れた。折り目付け用のツールを絶縁シールドの規定された最小点
厚さの1ミル未満を超えない深さに付けた。必要とされる試験温度を得るために、コンパ
ートメント中必要とされる温度でこの試料をコンディショニングした。1/2インチ当た
りのポンドで示される剥離張力をインストロン(商標)によりプラーク接着性試験と同一
の方法で測定した。
【0069】
実施例1〜2、4〜6と比較例3および7
表1および2に実施例1,2,4〜6と比較例3および7に対する原材料の濃度を重量パ
ーセントで掲げる。
【0070】
エチレン/ビニルアセテートコポリマーは、30グラム/10分のメルトインデックス
、1立方センチメートル当たり0.95グラムの密度を有し、33重量パーセントのビニ
ルアセテートを含有し、Du Pont社から市販されている。ブテンコポリマーは、4
5グラム/10分のメルトインデックス、1立方センチメートル当たり0.89グラムの
密度を有し、Basell Corporationから市販されている。
【0071】
プロピレンコポリマーは25グラム/10分の溶融流量、1立方センチメートル当たり
0.87グラムの密度を有し、The Dow Chemical Companyから
市販されている。ニトリルブタジエンゴム(NBR)は、1立方センチメートル当たり0
.98グラムの密度を有し、そしてZeon Chemicals社から市販されている

【0072】
ポリ(l−ブテン)コポリマーは94重量パーセントの1−ブテンと6重量パーセント
のエチレンコモノマーを含有するものであった。ポリプロピレンコポリマーは92重量パ
ーセントのプロピレンと8重量パーセントのエチレンコモノマーを含有するものであった

【0073】
この絶縁基材は、HFDE−4201架橋型ポリエチレン絶縁物とHFDB−4202
耐水トリー性架橋型ポリエチレン絶縁物を含む。両方の絶縁物は1立方センチメートル当
たり0.92グラムの密度を有し、The Dow Chemical Company
から市販されている。
【0074】
実施例1および2と比較例3
実施例1および2と比較例3はケーブルに関する本発明を例示する。
【0075】
ケーブル中でEVA/ブテンコポリマー入りの新しい絶縁シールドをHFDE−420
1絶縁物から取り除くのに必要な剥離力を23℃、−10℃、および−25℃で測定した
。ケーブル中でEVA/ポリブテンコポリマー入りの新しい絶縁シールドをHFDB−4
202絶縁物から取り除くのに必要な剥離力を23℃で測定した。
【0076】
評価された材料を熱サイクル老化条件に100℃で2週間(8時間加熱/16時間冷却
)暴露した。
【0077】
ケーブルからのすべての剥離型シールドはAEIC剥離力の要求に合致するものであっ
た。しかしながら、EVA/ブテンコポリマー入りの絶縁シールドは、100℃で2週間
での熱サイクル加熱(8時間加熱/16時間冷却)後、初期の剥離力から小さい剥離力低
下を示し、安定な剥離性能を示した。
【0078】
実施例1および2に観察されるように、100℃で2週間老化した後、74〜87パー
セントの間の元の剥離力が保持され、比較例3(10パーセントのNBRを含有)では剥
離力の50パーセントしか保持されなかった。
【0079】
絶縁シールド配合物はケーブル押し出し時に改善された加工性をもたらした。エチレン
/1−ブテンとEVAのコポリマーによるケーブル押し出し時にヘッド圧力と融解温度の
低下が認められた。
【0080】
ポリブテンコポリマーを含有する実施例の押し出し時のヘッド圧力は、同一の実験パラ
メーター下で比較例と比較して20〜30パーセントのヘッド圧力の低下を生じた。
比較例3(NBRを含有)は、高い溶融粘度を示し、高い配合物粘度を生じた。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例4〜6と比較例7
実施例4〜6と比較例7は実験室プラークについての本発明を更に例示する。
【0083】
【表2】

【0084】
実施例8〜13と比較例14および15
この組の例示された組成物においては、混練温度は、混練機中の滞留時間にこの過酸化
物を熱分解させるのに充分に高い。この酸化防止剤は、バッチサイクルにおいては後期に
、あるいは連続混練機中では下流で添加される。更なる過酸化物をペレット化されたコン
パウンドに加えた。
【0085】
2つのプロピレンコポリマーを例示した配合物、実施例8〜13で評価した。プロピレ
ンコポリマー1は、10分当たり2グラムの溶融流量を有する9パーセントのエチレン/
プロピレンランダムコポリマーであった。プロピレンコポリマー2は、10分当たり25
グラムの溶融流量を有する12パーセントのエチレン/プロピレンランダムコポリマーで
あった。両方のプロピレンコポリマーとも約80℃のピーク融点を有するものであった。
【0086】
使用される絶縁基材は、The Dow Chemical Companyから市販
されているHFDB−4202耐水トリー性架橋型ポリエチレン絶縁物であった。3つの
有機過酸化物を使用した。有機過酸化物1は、Akzo Nobel社から市販されてい
る2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシル)ヘキサンのTrigan
ox 101(商標)であった。有機過酸化物2は、GEO Specialty Ch
emicals社から市販されているビス(t−ブチルペルオキシル)ジイソプロピルベ
ンゼンとt−ブチルクミルペルオキシドの80:20ブレンドであった。有機過酸化物3
は、Elf Atochem社から市販されている2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t
−ブチルペルオキシル)ヘキシンのLupersol 130(商標)であった。
【0087】
例示した配合物をHFDB−4202絶縁物にかぶせて共押し出しし、引き続いて乾燥
窒素連続加硫法でキュアした。12インチ(30.5cm)長のケーブルコアからの絶縁
シールド材料を軸方向に折り目を付けて、細片を1/2インチ幅で規定した。
【0088】
90度剥離試験をインストロン(商標)引っ張り試験機により行う。試験時には引っ張
り試験機のジョーを1分当たり20インチ(50.8cm)の直線速度で移動させた。最
大引っ張り力を求め、ケーブル剥離張力として示した。
【0089】
絶縁シールド材料もこの絶縁物から取り除いて、「熱クリープ」試験(AEICおよび
ICEA/NEMA規格に記載)用の引っ張り試料を得た。150℃の循環空気オーブン
中で15分間、0.2MPaの引っ張り応力をこの引っ張り試料に印加した。荷重を印加
する前に、この試料を1インチ(2.54cm)離れた線により標識付けし、試験後のこ
の標識の間隔のパーセント変化を熱クリープ伸びとして示した。回復不能な変形を高温セ
ットとして示した。
【0090】
例示した材料を110℃で4時間老化した後、1/2インチ当たりのポンドで示される
緩和されたケーブル剥離張力を測定した。この測定値は長期の緩和測定値、すなわち10
0℃で2週間暴露後に求めた測定値と相関する。
【0091】
【表3】

【0092】
例示した本発明の配合物はすべて、比較例14と比較してケーブル剥離張力のレベルの
低下を示した。接着性は、比較例15により表されるように、非キュアでゴム含有の絶縁
物シールド配合物の使用により達成可能のものよりも低かった。
【0093】
本発明の実施例に対する変形の量および回復不能な変形の量は、剥離型絶縁シールド用
途の業界規格に合致するのに充分のものである。
【0094】
反応性混練−実施例16〜19
実施例16〜19は、反応性混練法と物理的ブレンド法により製造される本発明による
組成物を比較する。The Dow Chemical Companyから市販されて
いるHFDB−4202耐水トリー性架橋型ポリエチレン絶縁物を絶縁基材として、すべ
ての試料を評価した。
【0095】
「プラーク接着性の試験方法」と題する項目に示されている記述に従って、プラークを
作製し、プラーク接着力値を測定した。
【0096】
例示した配合の実施例16〜19において2つのプロピレンコポリマーを評価した。プ
ロピレンコポリマー3は、10分当たり2グラムの溶融流量を有する12パーセントのエ
チレン/プロピレンランダムコポリマーであり、実施例16および17で使用した。プロ
ピレンコポリマー4は、10分当たり25グラムの溶融流量を有する12パーセントのエ
チレン/プロピレンランダムコポリマーであり、実施例18および19で使用した。両方
のプロピレンコポリマーとも約80℃のピーク融点を有していた。各配合物は、2:1の
比のEVA/プロピレンコポリマーと36.5重量パーセントの電導性カーボンブラック
を含有していた。
【0097】
反応性混練物は、Akzo Nobel社から市販されている0.2重量パーセントの
2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシル)ヘキサンのTrigano
x 101(商標)を含有していた。このTriganox 101(商標)を混練工程
時に反応させた。
【0098】
各配合物(反応性混練された配合物と物理的にブレンドされた配合物)に対して、0.
40重量パーセント量の有機過酸化物(すなわち、有機過酸化物2または有機過酸化物3
)を配合された組成物に加えた。すなわち、反応性混練された配合物に対しては、混練段
階時にこのTriganox 101を最初に反応させ、次に更なる有機過酸化物をこの
混練された配合物の中に浸した。
【0099】
有機過酸化物2は、GEO Specialty Chemicals社から市販され
ているビス(t−ブチルペルオキシル)ジイソプロピルベンゼンとt−ブチルクミルペル
オキシドの80:20ブレンドであった。有機過酸化物3は、Elf Atochem社
から市販されている2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシル)ヘキシ
ンのLupersol 130(商標)であった。
【0100】
【表4】

【0101】
当業者ならば、前出の本発明の詳細な説明を考慮すれば本発明の実施において多数の改
変および変形が思いうかぶと予期される。結果として、このような改変および変形は、添
付の特許請求の範囲の範囲内に包含されるように意図されている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーラジカル重合反応による架橋に有効である絶縁シールド組成物であって、
(a)少なくとも1つの高度に短鎖化された分岐ポリマー;
(b)エチレンと少なくとも1つの不飽和エステルのポリマーであり、この不飽和エス
テルがビニルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびこれらの混
合物からなる群から選択され、エステルモノマーがこの不飽和エステルインターポリマー
の重量基準で15〜50重量パーセントの量で存在する少なくとも1つの不飽和エステル
インターポリマー;および
(c)電導性カーボンブラック
を含んでなり、この高度に短鎖化された分岐ポリマー、不飽和エステルインターポリマー
、および電導性カーボンブラックが、この絶縁シールド組成物から作製される絶縁シール
ドに、キュアした場合100℃で2週間貯蔵した後、23℃で1/2インチ(1.3cm
)当たり3ポンド(1.4kg)超の剥離力と、23℃で1/2インチ(1.3cm)当
たり24ポンド(10.9kg)以下の初期剥離力を付与する量で存在する組成物。
【請求項2】
この少なくとも1つの高度に短鎖化された分岐ポリマーが、式
−(CH2−CHR)x−(CH2−CH2−)y
(式中、Rは1〜12個の炭素原子を含有する短鎖分岐アルキル基であり、xとyはモル
パーセントであって、x=50〜100、y=0〜50、およびx+y=100である)
を有する請求項1に記載の絶縁シールド組成物。
【請求項3】
この少なくとも1つの高度に短鎖化された分岐ポリマーが1000個炭素当たり250
〜500の短鎖分岐により置換された骨格を有する請求項2に記載の絶縁シールド組成物

【請求項4】
この高度の短鎖のポリマーが示差走査熱分析により測定して20℃〜120℃の融点を
有する請求項1あるいは2に記載の絶縁シールド組成物。
【請求項5】
この絶縁シールド組成物が
(a)1〜75重量パーセントの高度に短鎖化された分岐ポリマー;
(b)40〜75重量パーセントの不飽和エステルインターポリマー;および
(c)25〜45重量パーセントのカーボンブラック
を含んでなる請求項1、2あるいは4に記載の絶縁シールド組成物。
【請求項6】
この高度に短鎖化された分岐ポリマーが1〜40重量パーセントの量で存在する請求項
5に記載の絶縁シールド組成物。
【請求項7】
この高度に短鎖化された分岐ポリマーが1〜20重量パーセントの量で存在する請求項
5に記載の絶縁シールド組成物。
【請求項8】
この高度に短鎖化された分岐ポリマーがポリ(α−オレフィン)コポリマーである請求
項5に記載の絶縁シールド組成物。
【請求項9】
この高度に短鎖化された分岐ポリマーがプロピレン/エチレンコポリマーである請求項
8に記載の絶縁シールド組成物。
【請求項10】
この不飽和エステルインターポリマーがエチレンとビニルエステルのポリマーである請
求項1、2、5あるいは8に記載の絶縁シールド組成物。
【請求項11】
この少なくとも1つの高度に短鎖化された分岐ポリマーが20重量パーセント以下の量
で存在する請求項1に記載の絶縁シールド組成物。
【請求項12】
この絶縁シールド組成物が1重量パーセント以下のアクリロニトリル/ブタジエンゴム
を含んでなる請求項11に記載の絶縁シールド組成物。
【請求項13】
この電導性カーボンブラックがこの高度に短鎖化された分岐ポリマー、不飽和エステル
インターポリマー、および電導性カーボンブラックの重量基準で少なくとも25重量パー
セントの量で存在する請求項1に記載の絶縁シールド組成物。
【請求項14】
導体、絶縁層、および絶縁シールド組成物から製造される絶縁シールドを含んでなる電
力ケーブルであって、
(a)少なくとも1つの高度に短鎖化された分岐ポリマー;
(b)エチレンと少なくとも1つの不飽和エステルのポリマーであり、この不飽和エス
テルがビニルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびこれらの混
合物からなる群から選択され、エステルモノマーがこの不飽和エステルインターポリマー
の重量基準で15〜50重量パーセントの量で存在する少なくとも1つの不飽和エステル
インターポリマー;および
(c)この高度に短鎖化された分岐ポリマー、不飽和エステルインターポリマー、およ
び電導性カーボンブラックの重量基準で少なくとも25重量パーセントの電導性カーボン
ブラック
を含んでなり、この高度に短鎖化された分岐ポリマー、不飽和エステルインターポリマー
、および電導性カーボンブラックが、この絶縁シールド組成物から作製される絶縁シール
ドに、キュアした場合100℃で2週間貯蔵した後、23℃で1/2インチ(1.3cm
)当たり3ポンド(1.4kg)超の剥離力と、23℃で1/2インチ(1.3cm)当
たり24ポンド(10.9kg)以下の初期剥離力を付与する量で存在する電力ケーブル

【請求項15】
絶縁シールド組成物をフリーラジカル架橋することを含んでなる絶縁シールドを製造す
るための方法であって、この組成物が
(a)少なくとも1つの高度に短鎖化された分岐ポリマー;
(b)エチレンと少なくとも1つの不飽和エステルのポリマーであり、この不飽和エス
テルがビニルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびこれらの混
合物からなる群から選択され、エステルモノマーがこの不飽和エステルインターポリマー
の重量基準で15〜50重量パーセントの量で存在する少なくとも1つの不飽和エステル
インターポリマー;および
(c)この高度に短鎖化された分岐ポリマー、不飽和エステルインターポリマー、およ
び電導性カーボンブラックの重量基準で少なくとも25重量パーセントの電導性カーボン
ブラック
を含んでなり、この高度に短鎖化された分岐ポリマー、不飽和エステルインターポリマー
、および電導性カーボンブラックが、この絶縁シールド組成物から作製される絶縁シール
ドに、キュアした場合100℃で2週間貯蔵した後、23℃で1/2インチ(1.3cm
)当たり3ポンド(1.4kg)超の剥離力と、23℃で1/2インチ(1.3cm)当
たり24ポンド(10.9kg)以下の初期剥離力を付与する量で存在する方法。
【請求項16】
この絶縁シールド組成物が反応的に混練される請求項15に記載の絶縁シールドを製造
する方法。


【公表番号】特表2007−506847(P2007−506847A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528196(P2006−528196)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/031340
【国際公開番号】WO2005/031761
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】