説明

剪断方法およびその装置

【課題】 棒鋼粗材に曲がりが生じにくいうえ端面の品質低下が抑えられ、剪断端面の直角度が得られる剪断方法およびその装置を目的とする。
【解決手段】 固定刃21と可動刃22よりなる剪断装置1により棒鋼粗材を剪断する際、棒鋼粗材受止機構3の揺動自在な棒鋼粗材保持部32に形成される垂直部により棒鋼粗材の先端面を突き当てて剪断長を規制するとともに、棒鋼粗材保持部に形成される水平部に下面が保持される棒鋼粗材を剪断タイミングに合わせて下降させる方法および固定刃21と可動刃22により棒鋼粗材を剪断する剪断装置1において、棒鋼粗材の送出方向側に剪断機構2に続けて棒鋼粗材受止機構3を配置させるとともに該棒鋼粗材受止機構3に、送出される棒鋼粗材の先端面を突き当てて剪断長を規制する垂直部を形成するとともに棒鋼粗材の下面を保持する水平部を形成した揺動制御可能な棒鋼粗材保持部32を設けた装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固定刃と可動刃より棒鋼粗材等を定寸に剪断する剪断方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺の棒鋼粗材を定寸に切断する装置は種々知られている。そして、定寸に切断する際に発生する大きな圧力をストッパを回動自在とすることにより逃がしてストッパ位置のずれを防止し、ストッパの位置ずれにより生じる寸法誤差を解消するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、切断時に生じる圧力による影響はストッパ位置のずれのみではなく、定寸に切断される棒鋼粗材に曲がりを生じさせたり、ストッパに突き当てられた状態で切り落とされていく棒鋼粗材の先端面がストッパとの摩擦抵抗により荒れたり、傷付いたりして端面品質を低下させたり、切断端面の直角度が著しく低下するという問題があった。このような端面品質の低下や直角度の低下は製品不良を発生させる恐れがあることから、端面を切り落としたり研削したりして修正する必要があった。このような修正を可能とするために棒鋼粗材の切断寸法を予め若干長目に設定しなければならず、材料の使用量が増しコストアップをもたらす要因となった。
【特許文献1】実用新案登録第3017523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、剪断により棒鋼粗材の曲がりが生じにくいうえに、突合せ端面の品質低下が抑えられ、しかも剪断端面の直角度が充分得られるので、修正加工が不要となる剪断方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、固定刃と可動刃よりなる剪断装置により棒鋼粗材を剪断する剪断方法において、棒鋼粗材受止機構の揺動自在な棒鋼粗材保持部に形成される垂直部により棒鋼粗材の先端面を突き当てて剪断長を規制するとともに、棒鋼粗材保持部に形成される水平部に下面が保持される棒鋼粗材を剪断タイミングに合わせて下降させる剪断方法を請求項1の発明とし、請求項1の発明において、剪断開始時、棒鋼粗材保持部の水平部に保持される棒鋼粗材に上向き荷重を与える剪断方法を請求項2の発明とし、固定刃と可動刃により棒鋼粗材を剪断する剪断装置において、棒鋼粗材の送出方向側に剪断機構に続けて棒鋼粗材受止機構を配置させるとともに該棒鋼粗材受止機構に、送出される棒鋼粗材の先端面を突き当てて剪断長を規制する垂直部を形成するとともに棒鋼粗材の下面を保持する水平部を形成した揺動制御可能な棒鋼粗材保持部を設けた剪断装置を請求項3の発明とし、請求項3の発明において、棒鋼粗材受止機構に加えられる棒鋼粗材の突き当て荷重を受け止めるストッパ機構を設けた剪断装置を請求項4の発明とし、請求項4の発明において、ストッパ機構にストッパ位置調整機構を設けた剪断装置を請求項5の発明とし、請求項3から5の発明において、棒鋼粗材保持部に剪断開始時の衝撃を吸収する緩衝手段を設けた剪断装置を請求項6の発明とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、固定刃と可動刃よりなる剪断装置により棒鋼粗材を剪断する剪断方法において、棒鋼粗材受止機構の揺動自在な棒鋼粗材保持部に形成される垂直部により棒鋼粗材の先端面を突き当てて剪断長を規制するとともに、棒鋼粗材保持部に形成される水平部に下面が保持される棒鋼粗材を剪断タイミングに合わせて下降させるものとしたから、棒鋼粗材が剪断されて切り落とされていく動作に追従して棒鋼粗材保持部は下降し、従来のように棒鋼粗材の先端面を受け止める当板間で摩擦によって棒鋼粗材の先端面が荒れたり傷付いたり変形したりすることがなく棒鋼粗材の端面品質は高いものとなる。さらに、剪断端面も精度の高い直角度が得られるので、剪断された棒鋼粗材の端面を剪断後修正加工する必要がない。このため修正加工による端面の切り落とし代を予め持たせる必要がなく鋼材の使用量を削減でき、コストダウンを図ることができる。
【0007】
請求項2のように、剪断開始時、棒鋼粗材保持部の水平部に保持される棒鋼粗材に上向き荷重を与えるものとすることにより、剪断開始時に、棒鋼粗材に加わる下向きの剪断荷重を上向き荷重で相殺することができるので棒鋼粗材の曲がりを防止できる。
【0008】
請求項3のように、固定刃と可動刃により棒鋼粗材を剪断する剪断装置において、棒鋼粗材の送出方向側に剪断機構に続けて棒鋼粗材受止機構を配置させるとともに該棒鋼粗材受止機構に、送出される棒鋼粗材の先端面を突き当てて剪断長を規制する垂直部を形成するとともに棒鋼粗材の下面を保持する水平部を形成した揺動制御可能な棒鋼粗材保持部を設けたものとすることにより、剪断開始時にかかる下向きの剪断荷重を棒鋼粗材保持部を若干上方に枢動させることにより相殺して棒鋼粗材が曲がることを防止したり、剪断タイミングに合わせて棒鋼粗材保持部を下方に枢動させることにより、棒鋼粗材の突き当て端面が擦れ合うことがないので棒鋼粗材の先端面が荒れたり傷付いたり変形したりすることはなく端面品質は高いものとなるうえに、剪断端面の直角度も高いものとなるので剪断後端面を修正加工する必要がない。
【0009】
請求項4のように、棒鋼粗材受止機構に加えられる棒鋼粗材の突き当て荷重を受け止めるストッパ機構を設けたものとすることにより、揺動制御されるために生じる構造的な強度不足により発生する棒鋼粗材保持部の歪みを抑えられるので剪断長が規定値よりずれることを防止できる。
【0010】
請求項5のように、ストッパ機構にストッパ位置調整機構を設けたものとすることにより、繰り返し突き当て荷重が加えられて生じる位置ずれを修正して常に精度の高い剪断長が得られるものとなる。
【0011】
請求項6のように、棒鋼粗材保持部に剪断開始時の衝撃を吸収する緩衝手段を設けたものとすることにより、剪断時に生じる衝撃を吸収して棒鋼粗材保持部上で棒鋼粗材が暴れることを抑えられるので、剪断端面が荒れることを防止できるうえに、剪断時の騒音や振動を低減できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図1〜5に基づいて詳細に説明する。
図1中、1は棒鋼粗材の剪断装置であり、該剪断装置1は剪断機構2と、棒鋼粗材の送出方向側に剪断機構2に続けて配置される棒鋼粗材受止機構3と、棒鋼粗材受止機構3を動き止めするストッパ機構4と、剪断機構2を駆動する油圧機構5とからなる。
【0013】
また、前記剪断機構2は図1、3に示されるように、構造体10に取り付けられた固定刃21と構造体10にスライド自在に取り付けられる可動刃22とからなるものであり、可動刃22はアクチュエータ20により昇降動されるものである。
【0014】
23は剪断機構2の可動刃22を装着する昇降動自在なスライダであり、該スライダ23は図1、3、4に示されるように、構造体10の前面に形成される凹段部25aにスライド自在に係合されて両側面をガイドされるとともに、その前面を構造体10の凹段部25aを塞ぐ押さえ板24にガイドさせたものである。また、スライダ23の中央には棒鋼粗材を挿通させるための逆アーチ状の透孔23aが形成されている。
【0015】
また、押さえ板24の中央にも前記スライダ23の透孔23aと横幅を略同じとし、縦長をひとまわり大きくした逆アーチ状の透孔24aが形成されている。
【0016】
また、構造体10の中央には棒鋼粗材を供給するための挿通孔11を形成したガイド部材35が取り付けられている。該ガイド部材35の前面には固定刃21が取り付けられている。21aは固定刃21に形成される棒鋼粗材挿通用の透孔である。22aは可動刃22に形成される半円形の切欠であり、該切欠22aは棒鋼粗材の外径と略等しい内径をもっている。26は可動刃22を装着したスライダ23がアクチュエータ20により剪断動作を行った後、復帰上昇させるための復帰ばねである。
【0017】
前記棒鋼粗材受止機構3には棒鋼粗材の先端面を突き当てる垂直面を形成するとともに棒鋼粗材の下面を保持する水平部を形成した棒鋼粗材保持部32が揺動制御自在に設けられている。棒鋼粗材保持部32の垂直部は棒鋼粗材の先端面を突き当てて剪断長を規制するものであり、棒鋼粗材保持部32の水平部は棒鋼粗材の剪断開始時、棒鋼粗材に上向きの荷重を加えて剪断開始時に加えられる下向きの荷重による棒鋼粗材への曲げ応力の発生を防止するとともに、剪断タイミングに合わせて棒鋼粗材保持部32を下降させ最終的には剪断された棒鋼粗材を排出するものとしている。このようにすることにより棒鋼粗材の先端面が突き当てられた垂直部との間で擦り合いが発生せず、先端面を荒れさせたり、傷付けたり、変形させたりすることがない。また、棒鋼粗材保持部32の下降は棒鋼粗材の剪断を円滑にして剪断端面を滑らかにする効果を有する。
【0018】
棒鋼粗材受止機構3は図2に示されるように、構造体10に基端を枢着させた油圧式のアクチュエータ30と、一端をアクチュエータ30に枢着するとともに略中間を構造体10に枢着して他端を揺動自在としたスイングアーム31とからなるものであり、スイングアーム31の揺動側には棒鋼粗材を突き当てる垂直部と棒鋼粗材を保持する水平部とを備えたL形の棒鋼粗材保持部32が形成されている。なお、スイングアーム31を用いず直動するものとして剪断された棒鋼粗材を蹴り出すものとしてもよいことはいうまでもなく、蹴り出すようにすれば排出速度を向上させることができる。
【0019】
また、棒鋼粗材保持部32は図示されないが棒鋼粗材の先端を突き当てる垂直部位置を調整自在としたり、垂直部の幅を異ならせた各種棒鋼粗材保持部32に交換したりして剪断長さを変更自在としている。さらに、棒鋼粗材保持部32の下面には図2、3に示されるように、ゲル状素材やウレタン樹脂等の衝撃を吸収する緩衝手段33が設けられて、剪断時、棒鋼粗材受止機構3に加えられる衝撃を吸収して、剪断された棒鋼粗材が水平部上で暴れて突合せ端面や剪断端面を荒れさせたり傷付けたり変形させることを防止するとともに、剪断時に発生する振動や騒音等を低減する。
【0020】
35はアクチュエータ30の油圧機構であり、該油圧機構35は図2に示されるように、切換弁36と逆止弁37と圧力調整弁38と切換弁36とからなるものであり、該油圧機構35は剪断開始前や剪断タイミングに合わせてアクチュエータ30を駆動するもので、剪断開始直前にはアクチュエータ30はシリンダを伸長させて棒鋼粗材保持部32を若干上昇させて棒鋼粗材に上向きの荷重を加えるとともに、剪断により棒鋼粗材が切り落とされていく際には、切り落としに倣って棒鋼粗材保持部32を下降させるようにしている。また、油圧機構35は普通の油圧回路よりなるものとしているが、後記する油圧機構5のようにロジック弁を組み込んで高速動作するものとしてもよいことはいうまでもない。
【0021】
前記ストッパ機構4は棒鋼粗材の軸線と軸線を一致させて構造体10に螺挿される半球状の頭部を有する雄ねじ41と該雄ねじを構造体10に固定する雌ねじ42とからなり、半球状の頭部を棒鋼粗材保持部32の垂直部に当接させて棒鋼粗材が突き当てられた際の衝撃を受け止めて棒鋼粗材保持部32の位置ずれが生じないようにしている。これは棒鋼粗材保持部32が揺動制御されるために生じる構造的な強度不足により発生する棒鋼粗材保持部の歪みを抑えて剪断長が規定値よりずれることを防止し、棒鋼粗材の剪断長の精度低下を防いでいる。
【0022】
45はストッパ位置調節機構であり、該ストッパ位置調節機構45は図3に示されるように、構造体10に螺挿される雄ねじ41と、該雄ねじ41を固定する雌ねじ42とからなり、構造体10に螺挿されている雄ねじ41を正逆いずれかに回転させることにより頭部を出没させストッパ位置を調整するものである。このようにストッパ位置を調整自在とすることにより、繰り返し突き当て荷重が加えられて生じる棒鋼粗材保持部32の位置ずれを修正して常に精度の高い剪断長が得られるようにしている。
【0023】
43はストッパ機構4とスイングアーム31の揺動側との間に設けられる摩擦抵抗低減手段であり、該摩擦抵抗低減手段43はストッパ機構4とスイングアーム31の垂直部間に塗布される潤滑剤、またはスイングアーム31の垂直部に当接する接触抵抗の少ない半球状の頭部、あるいはこれらの組合せよりなるものである。このような摩擦抵抗低減手段43を設けることにより、棒鋼粗材保持部32を揺動させるアクチュエータ30に対する負荷を低減できるので、小さな作動圧で動作させることができるものとなる。
【0024】
また、前記油圧機構5は高速動作を行う実施例を示すで、図5に示されるように、油圧シリンダとしてのアクチュエータ51と、アキュムレータ52と、アクチュエータ動作回路の制御手段53とからなる油圧ユニット50を一体的に組み付けたものとしている。このように高速用の油圧機構5を組み込むことにより剪断装置1の動作は高速化され、高速で剪断が行われることにより、棒鋼粗材の剪断端面はより滑らかになるうえ直角度の精度も高いものとなる。また、油圧ユニット50が一体的されることにより各油圧機器類を接続する管路やホースの配管距離を短くして駆動速度の遅れを防止するとともに使用油量の削減を図ることができる。59は油圧ユニット50の油圧源となるポンプである。
【0025】
また、油圧機構5の制御手段53は図5に示されるように、アキュムレータ52の圧油をアクチュエータ51に供給するための急速開放を行うメインロジック弁54と、メインロジック弁54のパイロットライン圧油を排出させるサブロジック弁55と、アクチュエータ高速動作用の電磁切換弁56と、アクチュエータの低速前進およびアクチュエータの戻し動作を行う電磁切換弁57とからなるものである。メインロジック弁54とサブロジック弁55とはアクチュエータ51の駆動速度を加速する回路を構成する。また、メインロジック弁54とサブロジック弁55は隣接されているので、サブロジック弁55によりメインロジック弁54の動作応答性は向上することとなる。
【0026】
前記油圧シリンダとしてのアクチュエータ51はピストン51aにより仕切られる作動室と復帰室とからなるものである。復帰室にはピストン51aの高速動作を下死点に近づくに従って減速させるばね62が設けられている。該ばね62のばね圧により減速されることによりピストン51aが下死点に達した際の衝撃や騒音は低減されることとなる。これはアクチュエータ51に必要される駆動速度は駆動初期のみで、アクチュエータ51の駆動終期には減速したほうが好ましく、ばね62の圧縮量が増すに従い弾発力は増すが圧縮初期は弾発力は小さいという特性はアクチュエータ51の作動に適合するものであり悪影響をおよぼすことはほとんどない。また、ばね62は用途によっては用いなくてもよいことはいうまでもない。
【0027】
また、前記アキュムレータ52からアクチュエータ51に供給される油量は、アクチュエータ51のフルストローク容量未満としている。アクチュエータ51のストローク容量分を供給しないことによりアクチュエータ51の駆動終期には加速が行われないのでピストン51aが下死点に達した際の衝撃や騒音を低減できることとなる。
【0028】
64はサブロジック弁55の排油ポート55aに接続される中間タンクであり、63は中間タンク64と排油ポート55aとを接続する排油管であり、該排油管63には管路に段差を形成したトラップ63aが形成されている。また、中間タンク64はサブロジック弁55の直近に設けるものとして排油管63長が長くならないようにしている。該排油管63を短くすることによりメインロジック弁54のパイロットライン内の圧油排出速度を速め、メインロジック弁54のポペット動作を高速化できるのでアキュムレータ52とアクチュエータ51間の回路の開放速度を速めることができる。
【0029】
また、70は絞り弁、71は逆止弁、72は圧力調整弁であり、73はオイルタンクである。
【0030】
80は油圧機構2に付帯される空圧回路であり、該空圧回路80は空圧源81と、逆止弁82と、リリーフ機能をもつ圧力調整弁83とからなるものであり、空圧回路80は油圧シリンダとしてのアクチュエータ51の復帰室に接続されてアクチュエータ51の作動時、一定の空気圧を加え、アキュムレータ52からの高圧油の補充によるピストン51aの高速動作を減速させる空気圧ブレーキの機能と動作後のピストン51aを空気圧で後退させて旧状に戻す機能を有するものとしているが、アクチュエータの戻し動作を電磁切換弁57を介して油圧で行ってもよく、この場合アクチュエータ51の復帰室から圧油を電磁切換弁57に戻す管路85が必要となることはいうまでもない。また、図5では逆止弁82を圧力調整弁83とアクチュエータ51間に設けたものとしているが、空圧源81と圧力調整弁83間に逆止弁82を設けてアクチュエータ51の復帰室に加わる圧力をピストン51aの負荷やストロークに応じて適宜制御するようにしてもよいことは勿論である。
【0031】
また、空圧回路80は復帰室を加圧してピストン51aを復帰させる方向に加圧するため、ばね62と同様にピストン51aの高速動作時にもブレーキを掛けることとなるが、空気のためクッション性があり、ピストン51aの初期動作時には減速をほとんど生じさせることがないが、ピストン51aが下死点に近づいて圧縮率が高くなると大きな抵抗となり、ピストン51aを確実に減速させる。また、アキュムレータ52からの圧油が停止されるとピストン51aは復帰室に供給されている空圧回路80からの空気圧により後退することとなる。また、空圧回路80を設けた場合、ばね62はなくてもよいことは勿論である。
【0032】
90、91はアキュムレータ52やメインロジック弁54、サブロジック弁55を作動させる圧力スイッチまたはリミットスイッチであり、該圧力スイッチ90またはリミットスイッチ91は電磁切換弁57の作動によってアクチュエータを高速駆動する回路に油圧源としてのポンプ59の圧が加えられるとアキュムレータ52やメインロジック弁54、サブロジック弁55を作動させるものである。このようにすることによりアクチュエータ51を高速駆動する回路が所定圧に達するまでの時間がアクチュエータ51の作動時間として加算されないようにしている。
【0033】
このように構成されたものは、図1に示されるように、剪断機構2のガイド部材35を介して長尺の棒鋼粗材を送出し、該棒鋼粗材の先端を棒鋼粗材受止機構3のスイングアーム31に設けられる棒鋼粗材保持部32の垂直部に当接させて位置決めし剪断長さを規制する。このようにして棒鋼粗材の剪断長が決められると、棒鋼粗材受止機構3の油圧回路35が起動されて、棒鋼粗材受止機構3のアクチュエータ30が作動し、スイングアーム31の棒鋼粗材保持部32を若干上昇させる。この上昇により棒鋼粗材の先方部には上向きの荷重が加えられた状態となる。
【0034】
続いて、油圧機構5の電磁切換弁56が作動されてアクチュエータ51の動作回路にポンプ59のポンプ圧が加えられ加圧される。このポンプ圧は圧力スイッチ90またはリミットスイッチ91により検出され、電磁切換弁57が作動し、アキュムレータ52、メインロジック弁54およびサブロジック弁55が作動される。
【0035】
メインロジック弁54とサブロジック弁55が作動して各ポペットが各圧油ポートと各排油ポートとを開放する。サブロジック弁55の作動によりメインロジック弁54のパイロットライン圧油は隣接するサブロジック弁55の圧油ポートから排油ポートを通じて中間タンク64に排出される。中間タンク64はサブロジック弁55の直近に設けられ、メインロジック弁54とサブロジック弁55とは隣接されているので、パイロットライン圧油は素早く排出され、メインロジック弁54のポペットを高速で作動させてメインロジック弁54を急速開放する。メインロジック弁54の急速開放によりアキュムレータ52とアクチュエータ51間の回路は開かれアキュムレータ52から高圧油がアクチュエータ51に補充され、アクチュエータ51の駆動速度は1m/sec〜3.5m/secまで加速されることとなる。
【0036】
このようにしてアクチュエータ51が加速され高速動作すると、剪断機構2の可動刃22を装着したスライダ23はアクチュエータ51により高速で下降されることとなる。この下降により固定刃21の棒鋼粗材挿通用の透孔21aより張出されている棒鋼粗材は可動刃22により高速で剪断が行われるため、剪断端面は滑らかで直角度の高いものとなる。棒鋼粗材の剪断初期に最大の駆動速度を必要とするため、アキュムレータ52からの供給される高圧油の補充はアクチュエータ51のフルストローク容量未満として、駆動初期にのみアキュムレータ52から高圧油の補充が行われる。
【0037】
可動刃22により剪断が開始されるとき、棒鋼粗材の先方部は若干持ち上げられ、上向きの荷重が加えられた状態になっているので、棒鋼粗材に加えられる下向きに剪断荷重によって棒鋼粗材は曲げられることなく可動刃22の切込みが開始される。可動刃22による切り込みが開始されると、油圧機構35の切換弁36は切り換えられてアクチュエータ30は後退して棒鋼粗材受止機構3のスイングアーム31に設けられた棒鋼粗材保持部32を下向きに枢動させる。
【0038】
棒鋼粗材の剪断が開始されるとアクチュエータ51の慣性力によって剪断は一気に進行するので、アクチュエータ51の復帰室に設けられたばね62および空圧回路80によりピストン51aを減速させ、ピストン51aが下死点に達した際に発生する衝撃と騒音を減少させる。このようにして棒鋼粗材の剪断が行われるとき、スイングアーム31の棒鋼粗材保持部32は剪断の速度に倣うか、剪断速度より速めに下降するので、剪断される棒鋼粗材の切り落とし動作を邪魔されないので、剪断は円滑に行われると同時に、棒鋼粗材保持部32に突き当てられている棒鋼粗材の先端面は棒鋼粗材保持部32と連動して下降することとなり、棒鋼粗材の先端面と棒鋼粗材保持部32間には擦れ合うことがないので傷付いたり、変形されたりすることがない。
【0039】
このようにして剪断された棒鋼粗材は透孔23aを通じて排出されることとなる。次いで、電磁切換弁57が作動されて復帰室に圧油が供給されてアクチュエータ51は後退し旧状に戻されると、スライダ23は復帰ばね26により旧状に復帰されるという動作が繰り返されて棒鋼粗材の剪断が連続的に行われることとなる。
【0040】
このように高速で剪断が行われので、棒鋼粗材の剪断端面は円滑、且つ直角精度の高いものとなるうえに、剪断前に、棒鋼粗材には上向きの荷重が加えられるので高速で剪断されることにより大きな剪断荷重が棒鋼粗材に加えられるにもかかわらず棒鋼粗材は曲がることなく剪断される。また、剪断タイミングに合わせて棒鋼粗材受止機構3の棒鋼粗材保持部32は下降するので棒鋼粗材の突き当て先端面は擦れ合って、表面が荒れたり、傷が付いたり、変形したりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す一部切欠側面図である。
【図2】本発明の好ましい実施の形態に用いる棒鋼粗材受止機構と剪断機構とを示す正面図である。
【図3】本発明の好ましい実施の形態に用いる剪断機構とストッパ機構とを示す側面図である。
【図4】本発明の好ましい実施の形態に用いる剪断機構を示す正面図である。
【図5】本発明の好ましい実施の形態に用いる油圧機構の回路図である。
【符号の説明】
【0042】
1 剪断装置
2 剪断機構
3 棒鋼粗材受止機構
4 ストッパ機構
21 固定刃
22 可動刃
32 棒鋼粗材保持部
33 緩衝手段
45 ストッパ位置調節機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定刃と可動刃よりなる剪断装置により棒鋼粗材を剪断する剪断方法において、棒鋼粗材受止機構の揺動自在な棒鋼粗材保持部に形成される垂直部により棒鋼粗材の先端面を突き当てて剪断長を規制するとともに、棒鋼粗材保持部に形成される水平部に下面が保持される棒鋼粗材を剪断タイミングに合わせて下降させることを特徴とする剪断方法。
【請求項2】
剪断開始時、棒鋼粗材保持部の水平部に保持される棒鋼粗材に上向き荷重を与えることを特徴とする請求項1に記載に剪断方法。
【請求項3】
固定刃と可動刃により棒鋼粗材を剪断する剪断装置において、棒鋼粗材の送出方向側に剪断機構に続けて棒鋼粗材受止機構を配置させるとともに該棒鋼粗材受止機構に、送出される棒鋼粗材の先端面を突き当てて剪断長を規制する垂直部を形成するとともに棒鋼粗材の下面を保持する水平部を形成した揺動制御可能な棒鋼粗材保持部を設けたことを特徴とする剪断装置。
【請求項4】
棒鋼粗材受止機構に加えられる棒鋼粗材の突き当て荷重を受け止めるストッパ機構を設けたことを特徴とする請求項3に記載の剪断装置。
【請求項5】
ストッパ機構にストッパ位置調整機構を設けたことを特徴とする請求項4に記載の剪断装置。
【請求項6】
棒鋼粗材保持部に剪断開始時の衝撃を吸収する緩衝手段を設けたことを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の剪断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−54919(P2007−54919A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244588(P2005−244588)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】