説明

副生物の形成を減少させた芳香族アルキル化方法

異なるポリアルキル化芳香族化合物を、先ずこれら個々のポリアルキル化芳香族化合物を高含量にて含む別個のストリームに分け、これら別個のストリームを異なるトランスアルキル化反応ゾーン(同じ反応器中に存在していても、そうでなくてもよい)に送ると、芳香族アルキル化プロセスにおける副生物の形成が少なくなる。こうした異なるトランスアルキル化反応ゾーンにより、個々のポリアルキル化芳香族化合物[例えば、クメン製造プロセスにおけるプロピレンによるベンゼンのアルキル化に伴って生成するジイソプロピルベンゼン(DIPB)やトリイソプロピルベンゼン(TIPB)]のトランスアルキル化に対するより良好な制御が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素供給ストリーム[特に、芳香族アルキル化方法において、モノアルキル化芳香族化合物(例えば、クメンやエチルベンゼン)の製造から得られる、2種以上のポリアルキル化芳香族化合物を含有するストリーム]をトランスアルキル化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノアルキル芳香族化合物を得るための、オレフィンによる芳香族基質のアルキル化は、工業に大規模に実施されている十分に開発された技術である。1つの工業的応用は、クメン(イソプロピルベンゼン)を得るための、プロピレンによるベンゼンのアルキル化である[クメンは、クメンの空気酸化と後続するヒドロペルオキシドの酸触媒分解を介してのフェノールとアセトンの製造において使用される]。もう一つの工業的応用は、エチルベンゼン(スチレンモノマーを製造すべく、引き続き脱水素化されることが多い)を得るための、エチレンによるベンゼンのアルキル化である。吸熱性の脱水素化反応では、必要な顕熱を得るために通常はスチームが使用される。芳香族アルキル化方法の一般的な設計と操作は公知である。
【0003】
これらの芳香族アルキル化方法においては、現在入手可能な触媒は一般に、芳香族基質(例えばベンゼン)対オレフィンアルキル化剤(例えばプロピレン)のモル比が増大するにつれて、所望するモノアルキル化芳香族化合物(例えばクメン)に対する改良された選択性を示す。しかしながら、芳香族基質対オレフィンのモル比が高い場合でも、ジアルキル化芳香族化合物(例えばジイソプロピルベンゼン(DIPB))やトリアルキル化芳香族化合物(例えばトリイソプロピルベンゼン(TIPB))が、所望するモノアルキル化芳香族化合物の製造に付随する。こうしたポリアルキル化芳香族化合物の生成は、アルキル化反応ゾーンにおける芳香族基質とオレフィンの効率的利用の低下を示しているけれども、これらのポリアルキル化芳香族化合物は通常、別個のトランスアルキル化反応ゾーンにおいて、適切なトランスアルキル化触媒の存在下にて、アルキル化ゾーンにおいて使用したのと同じ芳香族基質を使用して容易にトランスアルキル化反応を受ける。上記のように、芳香族アルキル化のポリアルキル化芳香族生成物をトランスアルキル化剤として使用するトランスアルキル化により、さらなる量の所望のモノアルキル化芳香族化合物が効率的に得られる。したがって、アルキル化とトランスアルキル化とを含むいわゆる組み合わせプロセスは、モノアルキル化芳香族化合物の製造を大幅に改良することができる。
【0004】
このようなアルキル化ゾーン/トランスアルキル化ゾーン組み合わせプロセスにおいては、芳香族基質(例えばベンゼン)は通常、両方の反応ゾーンにおいて化学量論過剰にて使用される。それぞれの反応ゾーン流出物中の未反応ベンゼンや他の芳香族基質を取り出して再循環することにかかるかなりのコストを減らすための一般的な方法は、それらを共通の生成物分離セクションに通すこと(必要に応じて、一方もしくは両方の流出物から分留によってプロパン等の軽質成分を除去した後に)を含む。したがって、同じ蒸留塔と他の装置を使用して、アルキル化流出物ストリームとトランスアルキル化流出物ストリームとの合流ストリームから未反応の芳香族基質を回収し、回収した芳香族基質の一部をこれら反応ゾーンの両方に再循環することができる。芳香族基質の回収に加えて、生成物分離セクションにおける蒸留塔のもう一つの重要な機能は、トランスアルキル化反応ゾーンにおけるトランスアルキル化剤として使用するために、上記のようなポリアルキル化芳香族化合物(特に、ジアルキル化芳香族化合物とトリアルキル化芳香族化合物)を回収することである。どちらかの反応ゾーンの、より重質のポリアルキル化芳香族生成物と他の高沸点副生物(例えばジフェニルアルカン)は通常、蒸留塔(例えば、ポリイソプロピルベンゼン塔やポリエチルベンゼン塔;この塔は、オーバーヘッドまたはより低沸点のフラクション中の、より軽質のジアルキル化芳香族とトリアルキル化芳香族を回収する)の塔底液ストリームにて一括して除去される。この蒸留塔への供給物は通常、所望するモノアルキル化芳香族生成物をオーバーヘッドまたはより低沸点のフラクションとして回収するための蒸留から得られる炭化水素供給ストリームである。
【0005】
モノアルキル化芳香族化合物(例えばクメン)を製造するための代表的な芳香族アルキル化方法においては、液体ベンゼンと液体プロピレンを、アルキル化触媒を含有する1つ以上の反応器を含むアルキル化反応ゾーン中に装入する。ポリアルキル化ベンゼン化合物の生成をできるだけ抑えるために、通常は、アルキル化反応ゾーンの全体にわたってベンゼン対プロピレンのモル過剰(例えば、4:1〜16:1の範囲)を保持する。この反応ゾーンからの流出物は通常、プロピレン供給物中に最初から存在することがあるより低沸点の成分(例えばプロパンと水)を蒸留によって除去するための脱プロパン塔に送られる。次いで、脱プロパン塔の塔底液と、トランスアルキル化触媒を含むトランスアルキル化反応ゾーンからの流出物とを合わせる。前述したように、アルキル化反応の非選択性ポリアルキル化芳香族生成物(すなわち、DIPBとTIPB)とトランスアルキル化反応ゾーン中のベンゼンとを反応させて、さらなるモノアルキル化芳香族生成物(この場合はクメン)を生成させる。
【0006】
したがって、この代表的なクメン製造方法では、アルキル化反応ゾーン流出物とトランスアルキル化反応ゾーン流出物とを合わせたものを[必要に応じて、アルキル化反応ゾーン流出物から低沸点成分(例えばプロパン)を除去した後に]同じ生成物分離セクションに送って、ベンゼン、クメン生成物、アルキル化反応ゾーンのポリイソプロピルベンゼン副生物(例えば、DIPBとTIPB)、およびより重質の副生物を蒸留によって回収する。従来より、生成物の分離に対して3つの蒸留塔が使用される。1つ目の蒸留塔は通常、ベンゼン塔と呼ばれ、オーバーヘッドまたはより低沸点のフラクションにおける反応器流出物から過剰のベンゼンを回収するのに使用される。次いで、回収したベンゼンをアルキル化ゾーンとトランスアルキル化ゾーンに再循環して、それぞれのゾーンにおける所望のベンゼン対オレフィン比を得るのに必要なベンゼンの一部または全部を満たす。2つ目の蒸留塔は通常、クメン塔と呼ばれ、この塔への供給物は一般に、上流のベンゼン塔の塔底液またはより高沸点のフラクションである。クメン生成物は、クメン塔からの正味のオーバーヘッドまたは低沸点フラクションとして採取されることが多い。クメン生成物は、フェノール製造プロセスやアセトン製造プロセス等の下流の用途にて使用することもできるし、あるいは貯蔵所に送ることもできる。3つ目の蒸留塔は通常、ポリイソプロピルベンゼン塔と呼ばれ、この塔への供給物は一般に、上流のクメン塔の塔底液またはより高沸点のフラクションである。前述したように、ポリイソプロピルベンゼン塔は、オーバーヘッドまたはより低沸点のフラクション中の、より軽質のモルアルキル化芳香族化合物とジアルキル化芳香族化合物を回収して、これらをトランスアルキル化反応ゾーンに再循環するのに使用される。より重質のポリアルキル化芳香族生成物、ならびにどちらかの反応ゾーンの他の副生物(例えばジフェニルアルカン)は通常、ポリイソプロピルベンゼン塔の塔底液ストリームまたはより高沸点のフラクションにて除去される。合わせた重質エンドは、冷却して貯蔵所に送ることができる。
【0007】
任意の芳香族アルキル化方法において、最優先の目標(プロセスの経済性を支配する)は、オレフィンアルキル化剤(通常は限られた試剤である)の高い転化率と、所望のモノアルキル化芳香族生成物に対する高い選択性を達成することである。これらの目標(生成物の収率と純度の向上に関連する)は、上記の組み合わせプロセスにおいて副生物の全体的な生成を制限することによって対処される。種々のアルキル芳香族の製造プロセスとこれらのプロセスにおいて使用される触媒、ならびにそれらに関連した利点が、例えば米国特許第7,498,471号;米国特許第6,440,886号;米国特許第6,339,179号;および米国特許出願第2008/0171902号;に記載されている。アルキル化芳香族炭化水素(例えば、クメンやエチルベンゼン)の製造において副生物の形成を少なくすることに関する改良が絶えず求められている。当業者であれば、生成物収量及び/又は生成物純度の改良がささやかであるとしても、かなりの工業的インパクトをもたらすことが分かっている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、異なるポリアルキル化芳香族化合物を、先ずそれぞれのポリアルキル化芳香族化合物を高含量にて含む別々のストリームに分け、次いで異なるトランスアルキル化反応ゾーン(これらの反応ゾーンは、同じ反応器中に存在していても、存在していなくてもよい)に送ると、芳香族アルキル化プロセスにおける全体的な副生物の形成を減らすことができる、という知見に関する。これにより、これらのトランスアルキル化反応ゾーンにおける触媒及び/又は反応条件を、特定の供給材料(すなわち、特定のポリアルキル化芳香族化合物を高含量にて含む)に対して、転化率を増大させるよう、及び/又は、副生物の生成を少なくするよう、より適切に調整することが可能となる。したがって、所望するモノアルキル化芳香族化合物の全体的な収量(転化率×選択性)が増大する。さらに、主生成物からの分離が困難な(例えば、揮発性が同等である)副生物を減らせば、生成物の純度を高めることができる。
【0009】
例えば、プロピレンとベンゼンからクメン(イソプロピルベンゼン)を製造するための芳香族アルキル化プロセスの場合、アルキル化反応とトランスアルキル化反応の両方が副生物エチルベンゼン(EB)を生成する。その沸点がクメンの沸点に近いので、EBは、所望するモノアルキル化生成物から蒸留によって簡単には分離されない。したがって、エチルベンゼン含量の少ないクメンを求める工業ニーズを簡単に満たそうとすると、必然的に、従来のアルキル化/トランスアルキル化クメン製造プラントの構築と運転に付きもののより多額の資本経費及び/又は光熱費を招くことになる。
【0010】
本発明の実施態様によれば、プロピレンによるベンゼンアルキル化からのジアルキル化芳香族生成物とトリアルキル化芳香族生成物[すなわち、ジイソプロピルベンゼンとトリイソプロピルベンゼン(DIPBとTIPB)]を、それぞれDIPBとTIPBの含量の高い別々のストリームに分けることによって、副生物EBの生成を少なくすることができる。次いで、これらのストリームを別個のトランスアルキル化反応ゾーンに送り、ここでこれらのポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤とベンゼンとを反応させて、さらなる量の所望するクメン生成物を得る。別個のトランスアルキル化反応ゾーンは、特定のポリアルキル化芳香族化合物を、特定のトランスアルキル化反応ゾーン触媒及び/又はセットになった操作条件とより良く調和させるために、異なるトランスアルキル化触媒、異なる量もしくは割合の同じ触媒、及び/又は異なる操作条件を含んでよく、これによって副生物EB及び/又は他の副生物の生成が少なくなり、所望するモノアルキル化芳香族化合物クメンに対する反応選択性が改良される。
【0011】
類似のやり方にて、エチレンによるベンゼンアルキル化からのジエチルベゼン生成物とトリエチルベンゼン生成物を、これらの生成物を高含量にて含む別々のストリームに分け、異なるトランスアルキル化ゾーンに送って、エチレンによるベンゼンアルキル化でのエチルベンゼン製造における全体的な副生物の形成を少なくすることができる。クメン製造プロセスまたはエチルベンゼン製造プロセスにおいては、別々のトランスアルキル化供給ストリーム(それぞれのポリアルキル化芳香族化合物を高含量にて含む)に分けられる炭化水素供給ストリームは、一般には、これらのプロセスの生成物分離セクションにおいて得られる。具体的には、炭化水素供給ストリームは、クメン生成物ストリームまたはエチルベンゼン生成物ストリームをオーバーヘッドもしくはより低沸点のフラクションにて回収するための蒸留からの、塔底液またはより高沸点のフラクションとして得ることができる。例えば、炭化水素供給ストリームは、前述した代表的なクメン製造プロセスにおけるクメン塔ボトムストリームであってよい。同様に、炭化水素供給ストリームは、代表的なエチルベンゼン製造プロセスの生成物分離セクションからのエチルベンゼン塔ボトムストリームであってよい。
【0012】
本発明に関するこれらの態様と特徴、ならびに他の態様と特徴は、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、異なるポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤(すなわちDIPBとTIPB)を高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームを、蒸留を利用して分け、共通した反応器内の異なるトランスアルキル化反応ゾーンに送る、という代表的なクメン製造プロセスのトランスアルキル化セクションを示す。
【図2】図2は、DIPBとTIPBを高含量にて含む分離されたトランスアルキル化供給ストリームを、別個の反応器内の異なるトランスアルキル化反応ゾーンに送る、という別の実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面の全体を通して、同じか又は類似の機構を示すのに同じ参照番号が使用されている。図面は、本発明及び/又は含まれている原理の例証を与えているものと理解すべきである。ポンプ、圧縮機、計測器、および本発明の理解にとって必須ではない他のアイテムを含めた詳細は図示していない。本発明の開示内容を理解できる当業者にとっては容易にわかることであるが、ここで説明しているような、ポリアルキル化芳香族化合物をトランスアルキル化させる方法、そして特に、アルキル化ゾーン/トランスアルキル化ゾーン組み合わせプロセス(例えば、クメンまたはエチルベンゼンの製造に関して上記したような)に統合される方法は、本発明の他の種々の実施態様にしたがって、ある程度は用途の種類によって決まる種々の配置構成と構成部品を含む。
【0015】
クメンやエチルベンゼンの製造において使用される上記のアルキル化ゾーン/トランスアルキル化ゾーン組み合わせプロセス等の芳香族アルキル化プロセスにおいては、ベンゼンが最も重要な芳香族アルキル化基質であるが、アルキル置換ベンゼンも使用することができる。さらに、2種以上の芳香族アルキル化基質も使用することができる。モノオレフィンアルキル化剤としては、主としてオレフィンが使用されるが、ジオレフィン、ポリオレフィン、アセチレン炭化水素、および置換炭化水素も使用することができる。オレフィンアルキル化剤は2個または3個の炭素原子を有するのが好ましいが、2〜20個の炭素原子を有するオレフィンも使用することができる。プロピレンとエチレンが好ましいオレフィンアルキル化剤であり、これらは、それぞれクメンとエチルベンゼンを製造するための芳香族アルキル化プロセスにおいて使用される。2種以上のオレフィンアルキル化剤も使用することができる。
【0016】
所望するモノアルキル化芳香族化合物の生成に付随するポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤は、アルキル化基質とアルキル交換反応を起こしてさらなる量のこの望ましい生成物を生じる。トランスアルキル化剤は、全体的なアルキル化ゾーン/トランスアルキル化ゾーン組み合わせプロセスの一部ではない供給源から導入することができるが、一般的には、トランスアルキル化剤は、組み合わせプロセスの生成物分離セクションにおいて回収される。ジアルキルベンゼン(例えば、DIPBやジエチルベンゼン)とトリアルキルベンゼン(例えば、TIPBやトリエチルベンゼン)は、所望する生成物としてのモノアルキル化ベンゼン(例えば、クメンやエチルベンゼン)を製造するためのプロセスにおける主要なポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤である。しかしながら、場合によっては、所望するアルキル化芳香族化合物それ自体が、ポリアルキル化されていることがある。所望するアルキル化芳香族生成物上のアルキル基の数が増えると、それに応じて、ポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤上のアルキル基の数も増えることは言うまでもない。いずれにしても、所望するアルキル化芳香族生成物は、芳香族アルキル化基質より少なくとも1つ多いアルキル基、およびポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤より少なくとも1つ少ないアルキル基を有する。
【0017】
前述したように、本発明の適用が可能な、広く実施されている炭化水素転化方法は、(1)プロピレンによるベンゼンのアルキル化、およびベンゼンアルキル化に付随するポリイソプロピルベンゼン(例えば、DIPBやTIPB)によるベンゼンのトランスアルキル化によるクメンの製造;ならびに(2)エチレンによるベンゼンのアルキル化、およびベンゼンアルキル化に付随するポリエチルベンゼン(例えば、ジエチルベンゼンやトリエチルベンゼン)によるベンゼンのトランスアルキル化;である。クメンの製造は、本発明を詳細に説明する(特に、図1と図2に示す本発明の好ましい実施態様に関して)のに使用される代表的なプロセスである。これらの図解による方法は、第1と第2の芳香族トランスアルキル化剤を含む炭化水素供給ストリームのトランスアルキル化に対するものなので、クメンまたはエチルベンゼンに関して上記したアルキル化ゾーン/トランスアルキル化ゾーン組み合わせプロセスに容易に統合できることは言うまでもない。さらに、図1と図2の実施態様は、炭化水素供給ストリームを2つのトランスアルキル化供給ストリームに分けることを示しているが、本発明の要旨を逸脱することなく、異なる組成(例えば、異なるポリアルキル化芳香族化合物を高含量にて含む)を有する3つ以上の別個の供給ストリームをもたらすこともできることは言うまでもない。
【0018】
したがって本発明の実施態様は、広義には、第1と第2のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤を含む炭化水素供給ストリームをトランスアルキル化するための方法に関する。これらの方法は、(a)炭化水素供給ストリームを分けて、第1のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤を高含量にて含む第1のトランスアルキル化供給ストリームと、第2のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤を高含量にて含む第2のトランスアルキル化供給ストリームとをもたらすこと;および(b)第1と第2のトランスアルキル化供給ストリームを異なるトランスアルキル化反応ゾーンに通すこと;を含む。所定のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤を高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームのそれぞれの特徴は、炭化水素供給ストリーム中の当該トランスアルキル化剤の量に関するものである。一般には、別々のトランスアルキル化供給ストリームは、蒸留塔(例えば、代表的なクメン製造プロセスに関して前述したポリイソプロピルベンゼン塔)を使用する成分(すなわち、第1または第2のポリアルキル化トランスアルキル化剤)を高含量にて含む。このポリイソプロピルベンゼン塔への供給物は通常、上流のクメン塔の塔底液または高沸点フラクションである。同様に、ポリエチルベンゼン塔(この塔への供給物は通常、エチルベンゼン製造プロセスにおける上流のエチルベンゼン塔の塔底液または高沸点フラクションである)を使用して、ジエチルベンゼンとトリエチルベンゼンを第1と第2のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤として高含量にて含むフラクションをもたらすことができる。好ましい実施態様においては、分けられる第1と第2のトランスアルキル化供給ストリームは、クメンもしくはエチルベンゼン製造プロセスの生成物分離セクションにおけるそれぞれの蒸留塔から適切な段階にてサイドドローとして抜き取られる。例えば、より低沸点のジアルキル化芳香族化合物(例えば、DIPBやジエチルベンゼン)を高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームは、より高沸点のトリアルキル化芳香族化合物(例えば、TIPBやトリエチルベンゼン)を高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームが取り出される段階より上の段階にてサイドドローとして取り出すことができる。
【0019】
トランスアルキル化反応ゾーンが異なるということは、第1と第2のトランスアルキル化供給ストリームを異なる反応条件及び/又は触媒床にさらすことを必要とする。例えば、これらのゾーンは共通の反応器[分けられたトランスアルキル化供給ストリームが、反応器長に沿った異なる箇所にて、例えば、より上方及びより下方の反応器セクションにおける異なる触媒床(同じ触媒を含んでいても、そうでなくてもよい)中に供給される]中に存在してもよく、これにより上流の供給物が、上流の触媒床を通過した後に、下流の供給物と同じ触媒床と接触する。これとは別に、異なるトランスアルキル化反応ゾーンは、第1と第2のトランスアルキル化供給ストリームが同じ触媒床(同じ触媒を含んでいても、そうでなくてもよい)と接触しないように、別個の反応器中に存在してもよい。
【0020】
一般には(必ずしもそうであるというわけではないが)、例えば蒸留によって分けられた異なるトランスアルキル化供給ストリームが、異なるタイプの触媒、あるいはこれとは別に、同じタイプの触媒の異なる組み合わせ[例えば、触媒床の異なる相対的(上流または下流)位置にて、あるいは異なる混合比での触媒混合物]、を含む触媒床の入口に送られる。トランスアルキル化用に使用される触媒は一般に、ゼオライトとして知られているある種類のアルミノシリケートモレキュラーシーブの1種を含む。ゼオライトトランスアルキル化触媒に使用するのに適したゼオライトモレキュラーシーブは、焼成形態にて一般式
Me2/nO:Al:xSiO:yH
(式中、Meはカチオンであり;nは該カチオンの原子価であり;xは5〜100値を有し;yは2〜10の値を有する)で表わすことのできる結晶質アルミノシリケートである。ゼオライトは、“D.W.Breck,Zeolite Molecular Sieves,John Wiley and Sons,ニューヨーク(1974)”などに詳細に説明されている。好適なゼオライトとしては、Y型ゼオライト、ベータ型ゼオライト、X型ゼオライト、モルデナイト、フォージャサイト、オメガ型ゼオライト、UZM−8、ZSM−5、PSH−3、MCM−22、MCM−36、MCM−49、およびMCM−56などがある。1種以上のタイプのゼオライトトランスアルキル化触媒を、異なるトランスアルキル化供給ストリームが送られる異なるトランスアルキル化反応ゾーンの触媒床に使用することができる。異なるゼオライトトランスアルキル化触媒の使用は、第1と第2のトランスアルキル化供給ストリーム(例えば、DIPBやTIPB等の異なるポリアルキル化芳香族化合物を高含量にて含む)を特定の反応ゾーン(あるいは反応環境)に適応させて副生物の形成を少なくするよう、本発明の1つの代表的な実施態様と関連している。
【0021】
トランスアルキル化触媒として使用するためのY型ゼオライトのあるタイプは、Y型ゼオライトの非Hカチオン含量が、NH当量としての算出にて200ppm(重量比)未満である。ベータ型ゼオライトは米国特許第4,891,458号と第5,081,323号に記載されている。UZM−8ゼオライトは米国特許第6,756,030号に記載されている。米国特許第5,723,710号に記載の表面改質ベータ型ゼオライトは、トランスアルキル化触媒として好適である代表的なベータ型ゼオライトである。すべてのゼオライトトランスアルキル化触媒において、ゼオライトは一般に、触媒総重量の少なくとも50重量%の量にて、そしてしばしば少なくとも90重量%の量にて存在し、残部は、ほとんどの場合が耐熱性無機酸化物バインダーである。好ましいバインダーはアルミナであり、γ−アルミナ、η−アルミナ、およびこれらの混合物が特に好ましい。代表的なゼオライトトランスアルキル化触媒は、Y型ゼオライトとアルミナバインダーもしくはシリカバインダーを含む。別のゼオライトトランスアルキル化触媒は、ベータ型ゼオライトとアルミナバインダーもしくはシリカバインダーを含む。一般には、上記ゼオライトはさらに、前述のアルキル化ゾーン/トランスアルキル化ゾーン組み合わせプロセスにおけるアルキル化触媒として使用するのにも適している。
【0022】
クメンを製造するためのアルキル化ゾーン/トランスアルキル化ゾーン組み合わせプロセスに関連した本発明の好ましい実施態様では、TIPBを高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームを、Y型ゼオライト、UZM−8ゼオライト、ベータ型ゼオライト、またはこれらの組み合わせ物を含むゼオライトトランスアルキル化触媒を収容するトランスアルキル化反応ゾーンに送る。好ましいY型ゼオライトは、Y−85として知られていて、米国特許出願第2008/0171902号に記載されている改質Y型ゼオライトである。このトランスアルキル化ゾーン用のゼオライトの代表的な組み合わせ物は、UZM−8ゼオライトとベータ型ゼオライトとの組み合わせ物である。さらに、DIPBを高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームを、ベータ型ゼオライトを含むゼオライトトランスアルキル化触媒を収容するトランスアルキル化反応ゾーンに送るのが好ましい。有利なことに、副生物ジエチルベンゼンの形成は、ベータ型ゼオライトに対しては極めて少なく、DIPBから所望生成物クメンへの全体的な転化率に実質的に比例している。
【0023】
TIPBを高含量にて含む供給ストリームを、ベータ型ゼオライトを含む第2のゼオライト触媒床[この触媒床に、DIPBを高含量にて含む供給ストリームが送られる(例えば、DIPB高含量の供給ストリームの場合は、積層床反応器において、Y型ゼオライトとベータ型ゼオライトを含む触媒の別々の床間付加箇所にて供給される)]より上流のゼオライト触媒床に送る、という特定の実施態様においては、副生物エチルベンゼンの形成は、トランスアルキル化によるDIPBとTIPBの全体的な転化率に比例する。したがって、本発明の実施態様は、比較的少量部分のTIPB(一般には、DIPBとTIPBを含む炭化水素供給ストリームのわずか3〜10重量%を表わす)を分離し、そしてこの少量部分を、Y型ゼオライトを含む触媒床上に供給することによって副生物(特にエチルベンゼン)の形成を少なくする。これにより、TIPBの高い転化率が得られるが、TIPB高含量の供給ストリームの質量流量が比較的低いことから、副生物エチルベンゼンの寄与は全体的に低い。このように、異なるトランスアルキル化反応ゾーン(例えば、異なるトランスアルキル化反応条件及び/又は異なる触媒床を有する)を使用することにより、副生物の形成を少なくした状態でポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤の転化率の増大が可能となる。
【0024】
トランスアルキル化反応ゾーンからの流出物は、個別のトランスアルキル化供給ストリームのそれぞれに対して、ポリアルキル化トランスアルキル化剤と芳香族基質(例えばベンゼン)との間の反応の結果として、所望のアルキル芳香族生成物(例えば、クメンやエチルベンゼン等のモノアルキル化芳香族)を高含量にて含む。次いで、トランスアルキル化反応ゾーン流出物を、必要に応じて、蒸留を使用してこのアルキル化反応ゾーン流出物から軽質成分(例えば、プロパン及び/又は水)を除去した後に、アルキル化反応ゾーン流出物と合わせることができる。蒸留の前に、あるいは蒸留中に、アルキル化反応ゾーン流出物とトランスアルキル化反応ゾーン流出物とを合わせて、アルキル化反応ゾーンとトランスアルキル化反応ゾーンにおいて使用された芳香族アルキル化基質中のより低沸点のフラクションの含量を高めることができる。例えば、これらのアルキル化反応ゾーン流出物とトランスアルキル化反応ゾーン流出物を、未反応のベンゼンをオーバーヘッドもしくはより低沸点のフラクションとして除去するのに使用されるベンゼン塔(前述)より上流にて合わせることができる。
【0025】
クメン製造のための全プロセスにおいては、第1と第2のトランスアルキル化供給ストリームは、それぞれトランスアルキル化剤としてのDIPBとTIPBを高含量にて含んでよい。エチルベンゼン製造のための全プロセスにおいては、第1と第2のトランスアルキル化供給ストリームは、それぞれジエチルベンゼンとトリエチルベンゼンを高含量にて含んでよい。したがって、代表的な実施態様においては、第2のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤のアルキル基の数は、第1のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤のアルキル基の数より1つだけ多い。第1と第2のトランスアルキル化供給ストリームをもたらすように分けられる炭化水素供給ストリームは通常、15重量%未満(例えば3〜10重量%)の、そしてしばしば5重量%未満の、より高沸点の第2のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤(例えばトリイソプロピルベンゼン)を含む。
【0026】
クメン製造プロセスまたはエチルベンゼン製造プロセス(例えば、前述のアルキル化ゾーン/トランスアルキル化ゾーン組み合わせプロセス)の場合では、第1と第2のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤を含有する炭化水素供給ストリームは通常、それぞれの芳香族アルキル化プロセスの生成物分離セクション(アルキル化反応ゾーンおよびトランスアルキル化反応ゾーンの下流)のプロセスストリームを含む。例えば、クメン製造プロセスまたはエチルベンゼン製造プロセスにおいては、炭化水素供給ストリームは、それぞれクメン塔またはエチルベンゼン塔からの塔底液であってよい。これらの蒸留塔は通常、それぞれクメン生成物ストリームまたはエチルベンゼン生成物ストリームを、正味のオーバーヘッド液体(すなわち、還流部分に戻った後)またはより低沸点のフラクションとして回収するために使用される。
【0027】
図1に示す実施態様では、ポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤(すなわち、DIPBとTIPB)を含む炭化水素供給ストリーム2が、本発明の方法に従ってトランスアルキル化される。炭化水素供給ストリーム2は、クメン製造プロセスの生成物分離セクションにおいて使用される上流のクメン塔(図示せず)のボトム生成物として得ることができる。クメン塔は一般に、このようなプロセスにおいては、クメン生成物ストリームを正味のオーバーヘッド生成物として回収するために使用される。上記したように、炭化水素供給ストリーム2は一般に、3〜10重量%のTIPBを含有し、残部は実質的にDIPBである。より少ない量のより高沸点の成分(まとめて重質炭化水素または重質エンドと呼ぶ)とより低沸点の成分を、ジイソプロピルベンゼン塔100から、それぞれ塔底液ストリーム16およびオーバーヘッドストリーム14として取り出すことができる。
【0028】
ジイソプロピルベンゼン塔100は、炭化水素供給ストリーム2を分けて2つの別個のトランスアルキル化供給ストリーム4と6(それぞれDIPBとTIPBを高含量にて含む)を得るのに使用される。これらの第1と第2の別個のトランスアルキル化供給ストリーム4と6は、ジイソプロピルベンゼン塔100からサイドドローとして取り出すことができ、このとき第2の供給ストリーム6は、より高沸点のポリアルキル化芳香族化合物TIPBを高含量にて含み、より低沸点のポリアルキル化芳香族化合物DIPBを高含量にて含む第1の供給ストリーム4が取り出されるジイソプロピルベンゼン塔100の段8に対して、ジイソプロピルベンゼン塔100のより下方の段10にて取り出される。
【0029】
図1の実施態様に示すように、ベンゼンストリーム12aとTIPB高含量の第2のトランスアルキル化供給ストリーム6を、トランスアルキル化反応器200(第1と第2の別個のゼオライト触媒床50と60を収容する)の頂部に供給する。トランスアルキル化供給ストリーム6とベンゼンストリーム12aを合わせた後、得られる合流供給ストリーム14が、トランスアルキル化反応器200を通って下向きに流れ、ゼオライト触媒床50および60と接触する。したがって、図1に示すように、トランスアルキル化反応器200は、DIPB高含量のトランスアルキル化供給ストリーム4のための床間付加箇所を有する二床下降流型反応器である。合流供給ストリーム14において、ベンゼン:TIPBのモル比は、トランスアルキル化反応器200の入口(図1の実施態様では、この反応器の頂部に位置する)にて、一般には2:1〜100:1の範囲(しばしば5:1〜100:1の範囲)である。この反応器の入口における合流供給ストリーム14の温度は、100℃(212°F)〜200℃(392°F)であるのが好ましい。合流供給ストリーム14と供給ストリーム4(必要に応じて、別のベンゼン供給ストリーム12bを加えた後の)は、熱交換器(図示せず)を使用してこの範囲の所望の温度に加熱することができる。
【0030】
したがって、図1に示す実施態様では、合流供給ストリーム14(TIPB高含量の第2のトランスアルキル化供給ストリーム6を含む)が通される第1のトランスアルキル化反応ゾーンが触媒床50と60を含む。DIPB高含量の第1のトランスアルキル化供給ストリーム4を、ゼオライト触媒床50と60を使用する積層二床トランスアルキル化反応器200の第2のゼオライト触媒床60だけを含む第2のトランスアルキル化反応ゾーンに供給する。必要に応じて、追加のベンゼンストリーム12bを、トランスアルキル化反応器200の上流にて、TIPB高含量の第1のトランスアルキル化供給ストリーム6と合流させることができる。図1に示す実施態様における第1と第2のトランスアルキル化ゾーンの配置において、第1のゼオライト触媒床50は、Y型ゼオライト(例えば、Y−85として知られている改質Y型ゼオライト)、UZM−8ゼオライト、またはUZM−8ゼオライトとベータ型ゼオライトとの組み合わせ物を含むのが好ましい。他の好ましい実施態様においては、第2のゼオライト触媒床60はベータ型ゼオライトを含む。このようなゼオライトトランスアルキル化触媒床を使用すると、前述したように、副生物と特にエチルベンゼンの形成が少なくなって有利である。
【0031】
別個のトランスアルキル化反応ゾーン(すなわち、2つのゼオライト触媒床50と60を含む第1のゾーン、および2つの触媒床の一方だけを含む第2のゾーン)を使用することにより、単一のトランスアルキル化供給ストリームだけがジイソプロピルベンゼン塔100の上流にて生成する場合と比較して、異なるトランスアルキル化供給ストリーム4と6に合わせて反応ゾーンをより良く調整することができる。これにより、トランスアルキル化反応ゾーン流出物18中にさらなるクメンをもたらす所望のトランスアルキル化反応への転化率及び/又は選択性が改良される。次いでこの流出物18を、ベンゼンをプロピレンでアルキル化するのに使用されるアルキル化反応ゾーンからの流出物と合流させて、クメンを生成させるのが有利である。これらの流出物は、必要に応じて、蒸留を使用してこのアルキル化反応ゾーン流出物から軽質成分(例えば、プロパン及び/又は水)を除去した後に合流させる。次いでこの合流流出物を、一般には、前述のようなアルキル化ゾーン/トランスアルキル化ゾーン組み合わせクメン製造プロセスの生成物分離セクションに通す。
【0032】
図2は、図1に示す実施態様に関して記載したような、炭化水素供給ストリーム2をトランスアルキル化するための別の代表的な方法を示している。この場合も、炭化水素供給ストリーム2を、ジイシプロピルベンゼン塔100で、それぞれDIPBとTIPBを高含量にて含む2つの別個のトランスアルキル化供給ストリーム4と6に分別する。しかしながら、これらの供給ストリーム4と6は、別個のトランスアルキル化反応器200aと200bに送られる。ベンゼンストリーム12aと、TIPB高含量の第2のトランスアルキル化供給ストリーム6とを合わせて合流供給ストリーム14aとし、この合流供給ストリーム14aを第1のトランスアルキル化反応器200aに送る。したがって第1のトランスアルキル化反応ゾーンは、第1のゼオライト触媒床50(好ましくはY型ゼオライトを含む)だけを含む。第2のゼオライト触媒床60(好ましくはベータ型ゼオライトを含む)だけを含む第2のトランスアルキル化反応ゾーンを使用して、ベンゼンストリーム12bとDIPB高含量の第1のトランスアルキル化供給ストリーム4とを反応させる。
【0033】
図2に示す実施態様では、ベンゼンストリーム12aと、TIPB高含量のトランスアルキル化供給ストリーム6とを合流させて、第1のトランスアルキル化反応器200aの入口にて2:1〜25:1(しばしば5:1〜25:1)のベンゼン対TIPBモル比を得るのが好ましい。ベンゼン対TIPBモル比ならびに上記一般的な比の好ましい範囲は、第2のトランスアルキル化反応器200bの入口にてベンゼン対DIPBモル比の一般的範囲および好ましい範囲と同じである。それぞれのトランスアルキル化反応器200aと200bの入口における合流供給ストリーム14aと14bの温度は、どちらの場合も100℃(212°F)〜200℃(392°F)であるのが好ましい。図2に示す実施態様では、もしトランスアルキル化反応ゾーン200aと200bを、クメン製造のための全体的な組み合わせプロセスにおいてアルキル化反応ゾーンと統合できるならば、別個のトランスアルキル化流出物ストリーム18aと18bを、前述のようなアルキル化反応ゾーンからの流出物と合流させることができる。
【0034】
したがって、図1と2の実施態様によれば、トランスアルキル化反応ゾーン流出物ストリーム(図1におけるストリーム18、および図2におけるストリーム18aと18b)は、異なるポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤を高含量にて含む別個のトランスアルキル化供給ストリームが(例えば分別を介して)得られない場合と比較して、トランスアルキル化反応の副生物の含量が比較的少ない。したがって、副生物が減少するのは、異なるトランスアルキル化供給ストリームに対して異なるトランスアルキル化反応ゾーンを使用するためである。例えば、図1と2の実施態様に示されている床50と60のような、別個の触媒床は一般に、別個のトランスアルキル化供給ストリーム4と6のそれぞれに適応させた異なる触媒を含む。しかしながら、例えば、図1に示す実施態様のように、触媒床が共通の反応器中に存在する場合に、触媒床50と60が同じ触媒を含有するとしても、温度、滞留時間、及び/又はベンゼン対ポリアルキル化芳香族化合物のモル比等の他の条件が、トランスアルキル化供給ストリームを反応器の異なる箇所に供給するときには、異なるトランスアルキル化反応ゾーンをもたらすことも可能であることは言うまでもない。
【0035】
図2の実施態様において使用されているような別個の反応器の場合、トランスアルキル化反応ゾーンの副生物の形成を少なくするために、異なる触媒タイプ、温度、圧力、滞留時間、モル比、及び/又は他のパラメーターを、それぞれ独立して又は組み合わせて使用して、異なるトランスアルキル化反応ゾーンをもたらすことができる。従来の圧力、流量、および図1と2には図示していない温度制御システム(例えば、複合供給ヒーターや熱交換器を含む)を使用して、副生物の形成を抑えるべく、異なるトランスアルキル化反応ゾーンにおいて所望の条件を保持することができる。例えば、副生物エチルベンゼンの減少は、それがクメンと同等の相対揮発度を有する(クメン塔においてクメン生成物と同時に沸騰し、このためクメン生成物の純度が低下する)ことから、工業的に重要である。
【0036】
別個のトランスアルキル化反応器を使用する図2の実施態様により、それぞれのトランスアルキル化反応ゾーンへのベンゼン流れの独立的な制御が可能になることがわかるであろう。反応ゾーン条件のほかに他のパラメーター(例えば、ベンゼン使用量や触媒要件)も制御できる程度に関しての、ある特定のフロースキームに関連した利点と欠点は、本発明の開示内容から得られる技術と知見を有する当業者には明らかであろう。さらに、本発明の開示内容の要旨を逸脱することなく上記のプロセスに種々の変更を加えてもよいことは言うまでもない。理論的または観察された現象もしくは結果を説明するのに使用されているメカニズムは、単に例証のためのものであって、決して添付のクレームの範囲を限定するものではないと解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤を含む炭化水素供給ストリームをトランスアルキル化するための方法であって、
(a)第1のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤を高含量にて含む第1のトランスアルキル化供給ストリームと、第2のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤を高含量にて含む第2のトランスアルキル化供給ストリームとが得られるよう、該炭化水素供給ストリームを分けること;および
(b)第1と第2のトランスアルキル化供給ストリームを異なるトランスアルキル化反応ゾーン中に通すこと;
を含む方法。
【請求項2】
異なるトランスアルキル化反応ゾーンが共通の反応器内に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
異なるトランスアルキル化反応ゾーンが別個の反応器内に存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1と第2のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤が、ジイソプロピルベンゼン(DIPB)とトリイソプロピルベンゼン(TIPB)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
炭化水素ストリームが、クメン製造プロセスにおける生成物分離セクションのプロセスストリームを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1と第2のポリアルキル化芳香族トランスアルキル化剤がジエチルベンゼン(DEB)とトリエチルベンゼン(TEB)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
炭化水素供給ストリームが、エチルベンゼン製造プロセスにおける生成物分離セクションのプロセスストリームを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ジイソプロピルベンゼン(DIPB)とトリイソプロピルベンゼン(TIPB)を含む炭化水素供給ストリームをトランスアルキル化するための方法であって、
(a)DIPBを高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームと、TIPBを高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームとが得られるよう、該炭化水素供給ストリームを分別すること;
(b)TIPBを高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームとベンゼンとを、第1と第2のゼオライト触媒床を含む第1のトランスアルキル化反応ゾーンに送ること;および
(c)DIPBを高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームを、第2のゼオライト触媒床を含む第2のトランスアルキル化反応ゾーンに送ること;
を含む方法。
【請求項9】
第1のゼオライト触媒がY型ゼオライト、UZM−8ゼオライト、またはUZM−8とベータ型ゼオライトとの組み合わせ物を含み、第2のゼオライト触媒がベータ型ゼオライトを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ジイソプロピルベンゼン(DIPB)とトリイソプロピルベンゼン(TIPB)を含む炭化水素供給ストリームをトランスアルキル化するための方法であって、
(a)DIPBを高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームと、TIPBを高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームとが得られるよう、該炭化水素供給ストリームを分別すること;
(b)TIPBを高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームとベンゼンとを第1のトランスアルキル化反応器中にて反応させること;および
(c)DIPBを高含量にて含むトランスアルキル化供給ストリームとベンゼンとを第2のトランスアルキル化反応器中にて反応させること;
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−527460(P2012−527460A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511845(P2012−511845)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/032909
【国際公開番号】WO2010/135062
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】