創傷治癒のための方法及び薬剤組成物
【課題】本発明の課題は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物を提供することである。
【解決手段】損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、有効成分である、治療有効量のインスリン及び前記インスリンと相乗的に作用する少なくとも1種のさらなる作用物質と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、治療有効量のインスリン、及び前記インスリンと相乗的に作用する少なくとも1種のさらなる作用物質を投与するステップを含む。
【解決手段】損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、有効成分である、治療有効量のインスリン及び前記インスリンと相乗的に作用する少なくとも1種のさらなる作用物質と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、治療有効量のインスリン、及び前記インスリンと相乗的に作用する少なくとも1種のさらなる作用物質を投与するステップを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞増殖及び/又は細胞分化を誘導及び/又は促進し、それによって創傷の治癒プロセスを促進するための方法及び薬剤組成物に関する。より詳細には、本発明は、細胞増殖及び/又は細胞分化及び/又は細胞移動を誘導及び/又は促進し、それによって創傷の治癒プロセスを促進するための、PKCとしても知られるセリン/スレオニンタンパク質キナーゼの、例えば膜転位及び活性化によって開始される発現及び/又は活性化の調節の使用に関する。本発明の教示に従って、(i)PKC発現構築物での創傷細胞の形質転換、(ii)創傷細胞の内因性PKC遺伝子と隣接したその上流に挿入するシス作用性エレメントを用いた創傷細胞の形質転換、(iii)創傷細胞においてPKCの発現及び/又は活性化を誘導するインスリンの投与、(iv)インスリン発現構築物から産生され、発現され分泌されるインスリンがPKC発現及び/又は活性化の上方制御因子として働くときの、そのインスリン発現構築物での創傷細胞の形質転換、(v)発現され分泌されるインスリンがPKC発現及び/又は活性化の上方制御因子として働くときの、創傷細胞の内因性インスリン遺伝子と隣接したその上流に挿入するシス作用性エレメントでの創傷細胞の形質転換、(vi)創傷へのインスリン分泌細胞の移植、(vii)インスリンがPKC発現及び/又は活性化の上方制御因子として働くときの、内因性インスリンの産生及び分泌を誘導するトランス作用性因子、例えばPDX1での創傷細胞の形質転換、並びに(viii)創傷へのPKC調節因子の投与によって、そのような発現の調節を実施することができる。
【0002】
本発明は、上記の方法のいずれかによって実現されるように、皮膚移植片の産生のためにex vivoで実施することもできる。
【背景技術】
【0003】
創傷治療での第一の目標は、創傷閉鎖を達成することである。皮膚開放創は、創傷の主要な部類の1つに相当し、それには、熱傷創、神経障害性潰瘍、褥瘡、静脈うっ血性潰瘍、及び糖尿病性潰瘍がある。
【0004】
皮膚開放創は、6個の主要な構成要素:(i)炎症、(ii)線維芽細胞増殖、(iii)血管増殖、(iv)結合組織合成、(v)上皮化、及び(vi)創傷収縮を含むプロセスによって通常治癒する。これらの構成要素が、個々に又は全体として適切に機能しないとき、創傷治癒は障害される。栄養不良、感染、薬剤作用物質(例えば、アクチノマイシン及びステロイド)、高齢及び糖尿病を含めて、多数のファクターが創傷治癒に影響を及ぼす可能性がある(非特許文献1を参照)。
【0005】
糖尿病について、真性糖尿病は、インスリンシグナル伝達の障害、血漿グルコースの上昇、いくつかの独特の組織が関与する慢性合併症を発症する傾向を特徴とする。真性糖尿病の慢性合併症すべての中で、足部潰瘍化を引き起こす創傷治癒の障害は、最も研究が十分でない。さらに、糖尿病患者における皮膚の潰瘍化は、驚くほどの個人的金銭的なコストがかかる(非特許文献1及び非特許文献2)。さらに、足部潰瘍、及びそれに続く下肢切断は、糖尿病患者の中で入院の最も一般的な原因である(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4及び非特許文献5)。糖尿病では、創傷治癒プロセスは障害され、治癒した創傷は、創傷の強度が減弱していることを特徴とする。組織修復の欠陥は、神経障害、血管疾患及び感染を含めたいくつかのファクターと関係している。しかし、異常なインスリンシグナル伝達と関係する糖尿病状態が創傷治癒を障害し、皮膚の生理状態を変化させる他の機構は、解明されていない。
【0006】
身体の種々の部分での外科手術後、手術は成功するが創傷切開が治癒しないという創傷治癒の一般的な問題も存在する。
【0007】
皮膚とは、層を成す扁平上皮であり、皮膚では増殖し分化する細胞が厳密に区画化されている。生理状態では、増殖は、基底膜と接着している基底細胞に限定されている。分化とは、基底細胞が基底膜との接着を喪失し、DNA合成を中止し、一連の形態的生化学的変化を受ける空間的なプロセスである。その最終的な成熟化ステップは、皮膚の保護障壁を形成する角化層の産生である(非特許文献7及び非特許文献8)。基底細胞が分化に傾くときに観察される最も初期の変化は、基底膜から脱離し、遠くへ移動する基底細胞の能力と関係する(非特許文献9)。同様の変化が、細胞が創傷領域へと移動し、増殖能も促進される創傷治癒プロセスと関係する。これらのプロセスは、皮膚層の再構築、及び表皮層の適切な分化の誘導に必須である。
【0008】
表皮細胞の増殖及び分化を制御する機構の分析は、マウス及びヒトのケラチン生成細胞培養系の開発によって非常に容易となった(非特許文献8及び非特許文献10)。in vitroで、ケラチン生成細胞は、高増殖速度の基底増殖細胞として維持することができる。さらに、in vivoでの表皮の成熟パターンに従って、in vitroで分化を誘導することができる。初期の事象には、半接着斑の構成成分の喪失(非特許文献9及び非特許文献11)、及びα6β4インテグリンの選択的喪失、及びマトリックスタンパク質との細胞接着がある。このことは、インテグリン発現の変化が、ケラチン生成細胞分化の初期事象であることを示唆するものである。半接着斑の接触の初期喪失は、ケラチン生成細胞の基底膜上の移動を引き起こし、培養ケラチン生成細胞及び皮膚でのケラチン1(K1)の誘導へとつながる(非特許文献7、非特許文献9及び非特許文献12)。顆粒層の表現型へのさらなる分化は、β1とβ4両方のインテグリン発現の下方制御、すべてのマトリックスタンパク質との接着可能性の喪失を伴い、その後に角化膜が形成され、細胞死が起こる。分化細胞は、成熟扁平細胞として培養皿から最終的に分離する。in vitroでのこの分化プログラムは、in vivoでの表皮の成熟パターンに密接に従う。
【0009】
ケラチン生成細胞の生物学における最近の研究は、皮膚の増殖及び分化を制御するタンパク質キナーゼC経路の寄与を明らかにするものである。タンパク質キナーゼC(PKC)ファミリーのセリン−スレオニンキナーゼは、様々な生物学的現象に重要な制御の役割を果たす(非特許文献13及び非特許文献14)。PKCファミリーは、少なくとも12個の個々のアイソフォームからなり、それらは、3つの異なる種類:(i)Ca2+、ホルボールエステル、及びホスホリパーゼCによって細胞内で遊離するジアシルグリセロールによって活性化される従来型アイソフォーム(α、β1、β2、γ)、(ii)やはりホルボールエステル及びジアシルグリセロールによって活性化されるが、Ca2+では活性化されない新規アイソフォーム(δ、ε、η、θ)、並びに(iii)Ca2+、ホルボールエステル又はジアシルグリセロールによって活性化されない非定型的な(ζ、λ、ι)構成要素のファミリーに属する。
【0010】
活性化後、全部ではないがほとんどのアイソフォームが細胞質から原形質膜へと転位すると考えられている。アイソフォームの型、及び分布のパターンは、異なる組織間で様々であり、表現型の機能として変化することもある。ホルモン作用の多種多様な細胞の評価項目の中でそれが重要であるので、多数の研究からPKCの構造及び機能が特徴付けられている。5つのPKCアイソフォームα、δ、ε、η、及びζがin vivo及び培養下の皮膚で同定されている。最近の研究から、PKCシグナル伝達経路が、分化反応の主要な細胞内媒介物であることが示された(非特許文献15及び非特許文献16)。さらに、PKCの薬剤活性化物質は、in vivo及びin vitroでケラチン生成細胞分化の強力な誘導物質であり(非特許文献10及び非特許文献17)、PKC抑制物質は、分化マーカーの発現を妨げる(非特許文献15)。
【0011】
本発明を考え出す間、PKCアイソフォームの過剰発現及び/又は活性化は、創傷治癒プロセスの促進に有益である可能性があると仮定した。皮膚細胞の増殖及び/又は分化における別個のPKCアイソフォームの役割を調べることについての制約は、従来の方法で外来遺伝子を効率よく初代細胞に導入することが困難であることによって拘束されてきた。寿命が短く、分化の可能性があり、安定な形質転換体を単離できないことから、初代皮膚細胞に外来遺伝子を効率よく形質導入することは不可能である。
【0012】
従来技術では、創傷治癒の治療用作用物質としてのインスリンの潜在的な使用について記載がある。したがって、特許文献1、特許文献2及び特許文献3は、創傷治癒を促進する、創傷へのインスリンの局所塗布について記載するものである。しかし、インスリンの機能が、グルコース摂取を促進し、それによって創傷治癒を促進することであるため、これらの特許は、グルコースと組み合わせたインスリンの使用について記載するものである。
【0013】
特許文献4及び特許文献5は、皮膚の健康状態を改善し、又は浅い皮膚損傷を治療する目的で、皮膚への局所塗布用のインスリンを含む組成物について記載するものである。しかし、これらの特許出願は、慢性の、第2度の又は深い損傷を治療するためのインスリンの使用を教示するものではない。
【0014】
特許文献6は、創傷治癒のためのインスリン又は銀と組み合わせたシアノアクリレートポリマー密封剤の使用について記載するものである。しかし、PKCの発現及び/又は活性化を調節することができる他の生物学的に活性な作用物質と組み合わせたインスリンの使用は、この出願では教示されず示唆されない。
【0015】
特許文献7は、糖尿病を治療するためのインスリンの局所塗布について記載するものである。しかし、この特許出願は、糖尿病非関連の創傷を治療する目的でのインスリンの使用を教示するものではない。
【0016】
特許文献8は、インスリンを含むことができる治療用マイクロエマルジョン製剤について記載するものである。しかし、創傷治癒の目的での製剤インスリンの使用は、この開示では教示されない。
【0017】
特許文献9及び特許文献10は、上皮増殖因子及びインスリンを含む、ヒトケラチン生成細胞及び表皮細胞のin vitroクローン性増殖のための組成物について記載するものである。このどちらの特許も、移植に使用することができる培養皮膚細胞の発育のためのインスリンの使用を教示するものである。しかし、創傷に対するin vivoでのインスリンの塗布は、これらの特許では教示されない。
【0018】
上記で引用した従来技術の文献は、創傷の治癒プロセスを促進するように、PKCの発現及び/又は活性化を調節するためのインスリンの使用を教示又は示唆するものではない。さらに、従来技術は、創傷の治癒プロセスを促進するように、インスリンを創傷に供給するための核酸構築物又は遺伝子形質転換技術の利用を教示又は示唆するものではない。
【0019】
創傷治癒に関連するプロセスを促進する新たな手法についての必要性が広く認識され、それを有すると非常に有利となるはずである。さらに、細胞の増殖及び/又は分化のプロセス並びに創傷治癒を促進する、皮膚細胞への組換え遺伝子挿入の効率のよい方法についての必要性が広く認識され、それを有すると非常に有利となるはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,591,709号
【特許文献2】米国特許第5,461,030号
【特許文献3】米国特許第5,145,679号
【特許文献4】米国特許出願第09/748,466号
【特許文献5】国際特許出願PCT/US98/21794
【特許文献6】国際特許出願PCT/US01/10245
【特許文献7】国際特許出願PCT/US85/00695
【特許文献8】国際特許出願PCT/US92/03086
【特許文献9】米国特許第4,673,649号
【特許文献10】米国特許第4,940,660号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Hunt and Goodson in Current Surgical Diagnosis & Treatment (Way; Appleton; and Lange), pp. 86-98, 1988.
【非特許文献2】Knighton, D. R. and Fiegel, V. D. Growth factors and comprehensive surgical care of diabetic wounds. Curr. Opin. Gen. Surg., : 32-9, 1993.
【非特許文献3】Shaw, J. E. and Bouton, A. J. The pathogenesis of diabetic foot problems: an overview. Diabetes, 46 Suppl 2 : S58-61, 1997.
【非特許文献4】Coghlan, M. P. , Pillay, T. S. , Tavare, J. M., and Siddle, K. Site-specific anti-phosphopeptide antibodies: use in assessing insulin receptor serine/threonine phosphorylation state and identification of serine-1327 as a novel site of phorbol ester- induced phosphorylation. Biochem. J. , 303: 893-899, 1994.
【非特許文献5】Grunfeld, C. Diabetic foot ulcers: etiology, treatment, and prevention. Adv. Intern. Med. , 37: 103-32 : 103-132,1992.
【非特許文献6】Reiber, G. E. , Lipsky, B. A. , and Gibbons, G. W. The burden of diabetic foot ulcers. Am. J. Surg., 176 : 5S-lOS, 1998.
【非特許文献7】Hennings, H. , Michael, D. , Cheng, C. , Steinert, P. , Holbrook, K.,and Yuspa, S. H. Calcium regulation of growth and differentiation of mouse epidermal cells in culture. Cell, 19 : 245-254, 1980.
【非特許文献8】Yuspa, S. H. , Kilkenny, A. E. , Steinert, P. M. , and Roop, D. R. Expression of murine epidermal differentiation markers is tightly regulated by restricted extracellular calcium concentrations in vitro. J. Cell Biol., 109 : 1207-1217, 1989.
【非特許文献9】Fuchs, E. Epidermal differentiation: the bare essentials. J. Cell Biol., 111 : 2807-2814, 1990.
【非特許文献10】Yuspa, S. H. The pathogenesis of squamous cell cancer: lessons learned from studies of skin carcinogenesis--Thirty-third G. H. A. Clowes Memorial Award Lecture. Cancer Res., 54 : 1178-1189,1994.
【非特許文献11】Hennings, H. and Holbrook, K. A. Calcium regulation of cell-cell contact and differentiation of epidermal cells in culture. An ultrastructural study. Exp. Cell Res., 143 : 127-142, 1983.
【非特許文献12】Tennenbaum, T. , Li, L., Belanger, A. J. , De Luca, L. M. , and Yuspa, S. H. Selective changes in laminin adhesion and α6β4 integrin regulation are associated with the initial steps in keratinocyte maturation. Cell Growth Differ., 7: 615-628, 1996.
【非特許文献13】Nishizuka, Y. The molecular heterogeneity of PKC and its implications for cellular regulation. Nature, 334 : 661-665, 1988.
【非特許文献14】9. Nishizuka, Y. The family of protein kinase C for signal transduction. JAMA, 262: 1826-1833, 1989.
【非特許文献15】10. Denning, M. F., Dlugosz, A. A. , Williams, E. K. , Szallasi, Z. , Blumberg, P. M. , and Yuspa, S. H. Specific protein kinase C isozymes mediate the induction of keratinocyte differentiation markers by calcium. Cell Growth Differ., 6 : 149-157, 1995.
【非特許文献16】11. Dlugosz, A. A., Pettit, G. R. , and Yuspa, S. H. Involvement of Protein kinase C in Ca2+-mediated differentiation on cultured primary mouse keratinocytes. J. Invest. Dermatol., 94 : 519-519,1990. (Abstract)
【非特許文献17】12. Dlugosz, A. A. and Yuspa, S. H. Coordinate changes in gene expression which mark the spinous to granular cell transition in epidermis are regulated by protein kinase C. J. Cell Biol., 120 : 217-225,1993.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明を実施に移す間、本発明者らは、インスリンを単独で創傷に投与すると、過度の血管新生、炎症、表皮細胞過形成や瘢痕化など有害な副作用を引き起こす可能性があることを明らかにした(以下の実施例の項中の実施例23を参照)。さらに、本発明者らは、創傷領域に定着している細胞でPKCの発現及び/又は活性を調節することができる1種又は複数種の作用物質とインスリンを組み合わせることによって創傷治癒プロセスを実質的に促進する間に、インスリンが誘導する副作用を有効に回避できることを明らかにした。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、創傷領域に有効量のインスリン、並びに/或いは創傷定着細胞でPKCの発現及び/又は活性を調節しインスリンと相乗的に作用することができる他の作用物質を供給して創傷治癒のプロセスを促進することによって、効率よく、且つ有害な副作用を伴わずに創傷を治療する新規の方法及び組成物を提供する。
【0024】
したがって、本発明の一態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、PKC産生及び/又はPKC活性化を調節する治療有効量の作用物質を投与するステップを含む。
【0025】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である、PKCの産生及び/又は活性を調節する治療有効量の少なくとも1種の作用物質と、製剤上許容される担体とを含む。
【0026】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、治療有効量のインスリン、及びインスリンと相乗的に作用する少なくとも1種のさらなる作用物質を投与するステップを含む。
【0027】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である治療有効量のインスリン及びインスリンと相乗的に作用する少なくとも1種のさらなる作用物質と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0028】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、単回投与量の治療有効量のインスリンを投与し、それによって損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するステップを含む。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進することができるように選択された単回投与単位のインスリンと、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0030】
本発明の他の態様によれば、古い皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、古い皮膚創傷に、単回投与量の治療有効量のインスリンを投与し、それによって古い皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するステップを含む。
【0031】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、治療有効量のインスリン分泌細胞を移植するステップを含む。
【0032】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分であるインスリン分泌細胞と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、損傷した皮膚又は皮膚創傷の細胞を形質転換して、インスリンを産生し分泌するステップを含む。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である、損傷した皮膚又は皮膚創傷の細胞を形質転換してインスリンを産生し分泌するように設計された核酸構築物と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0035】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、損傷した皮膚又は皮膚創傷の細胞を形質転換して、タンパク質キナーゼCを産生するステップを含む。
【0036】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である、損傷した皮膚又は皮膚創傷の細胞を形質転換してタンパク質キナーゼCを産生するように設計された核酸構築物と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0037】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、治療有効量のPKC活性化物質を投与するステップを含む。
【0038】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するための治療有効量のPKC活性化物質と、製剤上許容される担体とを含む。
【0039】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、治療有効量のコポリマー1を投与するステップを含む。
【0040】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である治療有効量のコポリマー1と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である治療有効量のコポリマー1と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0042】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷に定着している皮膚細胞において少なくとも1種のPKCアイソフォームの発現及び/又は活性を調節するステップと、PKCアイソフォームの発現及び/又は活性を調節するステップを行いながら、ホルモン、増殖因子、アディポカイン、PKCδRACK、及びGW9662からなる群から選択される治療有効量の少なくとも1種のさらなる作用物質を皮膚細胞に投与して、それによって、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するステップとを含む。
【0043】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である、少なくとも1種のPKCアイソフォームの発現又は活性化を調節する治療有効量の物質、及びホルモン、増殖因子、アディポカイン、PKCδRACK、及びGW9662からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる作用物質と、製剤上許容される担体とを含む。
【0044】
下記に記載する本発明の好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、創傷は、潰瘍、糖尿病関連の創傷、熱傷、日焼け、加齢による皮膚創傷、角膜潰瘍化による創傷、炎症性消化管疾患による創傷、腸炎症性疾患による創傷、クローン病による創傷、潰瘍性大腸炎、痔核、表皮水疱症による創傷、皮膚水疱形成性創傷、乾癬による創傷、脂漏性皮膚炎による創傷、動物の皮膚の創傷、動物の糖尿病による創傷、網膜症による創傷、口腔の創傷(粘膜炎)、膣粘膜炎による創傷、歯周病による創傷、裂傷、外科的切除による創傷、及び外科的接着後の創傷からなる群から選択される。
【0045】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、潰瘍は、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、静脈性潰瘍、胃潰瘍、及びHIV関連潰瘍である。
【0046】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリンは組換え体である。
【0047】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリンは天然の供給源に由来する。
【0048】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、さらなる作用物質は、血小板由来増殖因子である。
【0049】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、さらなる作用物質はPKC−α抑制物質である。
【0050】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、投与は、単回塗布によって実施する。
【0051】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、古い皮膚創傷は、少なくとも2日前のものである。
【0052】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリンの濃度は、0.1μM〜10μMである。記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリンの投与単位は、薬剤組成物0.01〜0.2ml中に0.001〜5nMである。
【0053】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリンの投与量は、薬剤組成物0.01〜0.2ml中に0.01〜0.5nMである。
【0054】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、薬剤組成物は、水溶液剤、ゲル剤、クリーム剤、ペースト剤、ローション剤、噴霧剤、懸濁液剤、粉末剤、分散液剤、膏薬及び軟膏剤からなる群から選択される。
【0055】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、薬剤組成物は、固体支持体を含む。
【0056】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、細胞を形質転換して、インスリンを産生し分泌する。
【0057】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、細胞を組換えPDX1遺伝子で形質転換し、それによって細胞が天然のインスリンを産生し分泌する。
【0058】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、細胞の内因性インスリン遺伝子の上流に組み込むシス作用性エレメント配列で細胞を形質転換し、それによって細胞が天然のインスリンを産生し分泌する。
【0059】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリン分泌細胞は、分泌顆粒を形成することができる。
【0060】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリン分泌細胞は、内分泌細胞である。
【0061】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリン分泌細胞は、ヒト供給源に由来する。
【0062】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリン分泌細胞は、組織適合性をヒト化した動物供給源に由来する。
【0063】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリン分泌細胞は、ヒトインスリンを分泌する。
【0064】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリン分泌細胞は、自己の細胞である。
【0065】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、細胞は、線維芽細胞、上皮細胞及びケラチン生成細胞からなる群から選択される。
【0066】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、細胞を形質転換して、タンパク質キナーゼC転写活性化物質を産生し、それによって細胞が天然のタンパク質キナーゼCを産生する。
【0067】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、細胞の内因性タンパク質キナーゼCの上流に組み込むシス作用性エレメント配列で細胞を形質転換し、それによって細胞が天然のタンパク質キナーゼCを産生する。
【0068】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、組換えタンパク質キナーゼC遺伝子で細胞を形質転換し、それによって細胞が組換えタンパク質キナーゼCを産生する。
【0069】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、タンパク質キナーゼCは、PKC−β1、PKC−β2、PKC−γ、PKC−θ、PKC−λ、及びPKC−ιからなる群から選択される。
【0070】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、タンパク質キナーゼCは、PKC−α、PKC−δ、PKC−ε、PKC−η、及びPKC−ζからなる群から選択される。
【0071】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、コポリマー1は、局所塗布に適合された薬剤組成物中に含まれる。
【0072】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、PKCアイソフォームは、PKC−α、PKC−β、PKC−δ、及びPKC−ζからなる群から選択される。
【0073】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、ホルモンはインスリンである。
【0074】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、増殖因子はIL−6、KFG及びTNFαからなる群から選択される。
【0075】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、アディポカインは、アディプシン又はアディポネクチンである。
【0076】
本発明は、損傷した皮膚又は皮膚創傷に対処する新たな治療を提供することによって、現在知られている構成の欠点の対処に成功するものである。
【0077】
本発明は、本明細書で、添付の図面を参照して例示される。ここで詳細について図面を具体的に参照する際に、図示される特定の実施形態は例示であって、本発明の好ましい実施形態の例証的な議論の目的のみのためであり、本発明の原理及び概念上の態様の最も有用で容易に理解されると考えられているものを提供する目的で提示されることが強調される。この点に関して、本発明の基本的な理解のために必要であるよりもさらに詳しく本発明の構造上の詳細を示すための試みはなされず、これらの図面とともに本明細書を見ると、本発明のいくつかの形態が実用上いかにして具体化され得るかは、当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】組換えアデノウイルスベクターを利用するPKCアイソフォームの効果的な過剰発現を実証する:左のパネル:4日齢の初代ケラチン生成細胞に、感染の48時間後のβ−galアデノウイルスを利用して1時間感染させ、細胞を固定し、β−ガラクトシダーゼタンパク質の活性化を、未感染のケラチン生成細胞と比較して青色反応の誘導によって定量した。右のパネル:4日齢の初代ケラチン生成細胞に、組換えアイソフォーム特異的PKCアデノウイルスを利用して、1時間感染させた。24時間後、感染した(Ad)及び非感染対照(C)の培養のタンパク質をウェスタンブロット分析のために抽出し、サンプルを、上記の実施例の節において記載されるアイソフォーム特異的抗PKC抗体を使用して分析した。
【図2】ブリオスタチン1によるPKC活性化が、過剰発現されたPKCアイソフォームのトランスロケーションを誘導することを示す。4日齢初代ケラチノサイトに、アイソフォーム特異的組換えPKCアデノウイルスを用いて1時間感染させた。感染の24時間後、細胞を、未処理か(C)、又はブリオスタチン1で30分間刺激したか(B)のいずれかを行い、分画した。タンパク質サンプルをウェスタンブロッティングに供し、アイソフォーム特異的抗PKC抗体を使用して分析した。
【図3】過剰発現されたPKCアイソフォームがそれらのネイティブ型で活性であることを示す。4日齢初代ケラチノサイトを、アイソフォーム特異的組換えPKCアデノウイルスで1時間感染させた。注射の18時間後、未感染対照細胞(C)及びPKCアイソフォーム過剰発現細胞(OE)からの細胞溶解物を、アイソフォーム特異的抗PKC抗体を使用して免疫沈殿させた。免疫沈殿物を、上記の実施例の節において記載されるようなPKC活性アッセイに供した。
【図4】特異的PKCアイソフォームの過剰発現が初代ケラチン生成細胞における独特な形態学的変化を誘導することを実証する。初代ケラチノサイトは、未処理のままであるか(C)、又は組換えPKCα、δ、若しくはζのアデノウイルスで感染されたかのいずれかであった。24時間後、培養物を明視野顕微鏡によって観察し、写真撮影した(×20)。
【図5】感染した初代ケラチン生成細胞における過剰発現されたPKCアイソフォームの独特な局在を示す。初代ケラチン生成細胞を、ラミニン5−コートされたガラススライド上にプレートした。培養物は、未処理のままであるか、又は異なる組換えPKCアデノウイルスで感染されたかのいずれかであった。感染の24時間後、細胞を固定し、洗浄し、風乾した。培養物は、アイソフォーム特異的抗PKC抗体、続いてFITC結合体化二次抗体を使用して、免疫蛍光によって分析された。細胞を、共焦点顕微鏡によってスキャンし、代表的な視野を写真撮影した。
【図6】PKCアイソフォームが、α6β4インテグリン発現を特異的に調節することを実証する。5日齢初代マウス皮膚ケラチン生成細胞は、未処理であるか、又は、PKCα、PKCδ、PKCη、若しくはPKCζの組換えアデノウイルスで感染された。感染の48時間後、膜細胞画分をSDS−PAGE電気泳動に供し、ニトロセルロールフィルターに転写し、抗α6及び抗β4抗体でイムノブロットを行い、ECLによって分析した。
【図7】PKCη及びPKCδの過剰発現が、ケラチン生成細胞増殖を誘導することを示す。5日齢初代マウス皮膚ケラチン生成細胞は、未処理であるか、又は、PKCδ、PKCα、PKCη、若しくはPKCζの組換えアデノウイルスで感染された。感染の48時間後、細胞増殖を、実験手順において記載されているように、1時間の3H−チミジン取り込みによって分析した。結果は、β−ガラクトシダーゼ感染ケラチン生成細胞と比較した、cpm/ディッシュとして表される。値は、3回の別々の実験における3連の測定の平均±標準偏差として表される。
【図8】PKCアイソフォームの過剰発現が、α6β4インテグリンの半接着斑局在をもたらすことを実証する。初代ケラチン生成細胞は、ラミニン5コートされたガラススライド上にプレートされ、ケラチノサイト培養は、48時間の間、低Ca2+MEM中で維持された。この時間の後で、培養物は未処理のままであるか(A)、又はPKCα、PKCδ、PKCη、若しくはPKCζの組換えアデノウイルス(それぞれ、B−E)で感染される。感染の24時間後、実験手順において記載されているように、ケラチン生成細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、続いて、0.2% Triton−X−100で穏やかに抽出し、PBS中で洗浄し、風乾した。培養物を、実験手順において記載されているように、アイソフォーム特異的抗α6抗体、続いてFITC結合体化二次抗体を利用する免疫蛍光分析に供した。
【図9A】過剰発現されたPKCδ及びPKCζがケラチン生成細胞脱着をインビトロで誘導することを示す。(A)初代ケラチン生成細胞は、未処理であるか(C)、又は組換えPKCα、PKCδ、PKCη、若しくはPKCζのアデノウイルスで感染される。細胞接着を、感染の24時間後及び48時間後に、細胞を持ち上げること、及びそれらをマトリックスコートされたディッシュ上に再プレートすることによって分析した。細胞の計数は、接着細胞のタンパク質濃度(mg/ディッシュ)として提示される。(B)初代ケラチン生成細胞は、未処理であるか(C)、又は組換えのPKCα、PKCδ、PKCη、若しくはPKCζのアデノウイルスで感染されるかのいずれかであった。細胞脱着を、感染の24時間後に、培養培地中で脱着した浮遊している細胞を収集することによって分析した。細胞の計数は、脱着細胞のタンパク質濃度(mg/ディッシュ)として提示される。
【図9B】過剰発現されたPKCδ及びPKCζがケラチン生成細胞脱着をインビトロで誘導することを示す。(A)初代ケラチン生成細胞は、未処理であるか(C)、又は組換えPKCα、PKCδ、PKCη、若しくはPKCζのアデノウイルスで感染される。細胞接着を、感染の24時間後及び48時間後に、細胞を持ち上げること、及びそれらをマトリックスコートされたディッシュ上に再プレートすることによって分析した。細胞の計数は、接着細胞のタンパク質濃度(mg/ディッシュ)として提示される。(B)初代ケラチン生成細胞は、未処理であるか(C)、又は組換えのPKCα、PKCδ、PKCη、若しくはPKCζのアデノウイルスで感染されるかのいずれかであった。細胞脱着を、感染の24時間後に、培養培地中で脱着した浮遊している細胞を収集することによって分析した。細胞の計数は、脱着細胞のタンパク質濃度(mg/ディッシュ)として提示される。
【図10】PKCηが活発に増殖しているケラチン生成細胞中で発現されることを実証する。初代ケラチン生成細胞はラミニン5−コートしたガラススライド上にプレートした。プレーティングの48時間後、ケラチン生成細胞をBrdU溶液と1時間インキュベートし、続いて、上記の実施例の節において記載されるように、抗PKCη(赤色)抗体及び抗BrdU(緑色)抗体を使用する免疫蛍光分析を行った。細胞を共焦点顕微鏡によってスキャンし、代表的な視野を写真撮影した。
【図11】PKCηがケラチン生成細胞増殖を誘導するが、PKCη変異体はそれを減少することを実証する。初代皮膚ケラチン生成細胞に、組換えのPKCηアデノウイルス又はPKCηの顕性不活性変異体(DNPKCη又はPKC DNη)アデノウイルスで1時間感染させた。感染の48時間後、細胞増殖を、上記の実施例の節において記載される1時間の3H−チミジン取り込みによって分析した。結果を、cpm/ディッシュとして提示する。対照は非感染細胞である。
【図12A】PKCη及びDNPKCηの過剰発現が、PKC局在化及び細胞形態を特異的に調節することを実証する。一次皮膚ケラチン生成細胞に、組換えPKCηアデノウイルス又は顕性不活性変異体PKCη(PKC DNη)アデノウイルスを1時間感染させた。感染の48時間後、ケラチン生成細胞を固定し、(A)明視野写真撮影(×20)及び(B)実験手順において記載されるような、PKCη特異的抗体、続いてFITC結合体化二次抗体を利用する免疫蛍光分析に供する。対照は非感染細胞である。
【図12B】PKCη及びDNPKCηの過剰発現が、PKC局在化及び細胞形態を特異的に調節することを実証する。一次皮膚ケラチン生成細胞に、組換えPKCηアデノウイルス又は顕性不活性変異体PKCη(PKC DNη)アデノウイルスを1時間感染させた。感染の48時間後、ケラチン生成細胞を固定し、(A)明視野写真撮影(×20)及び(B)実験手順において記載されるような、PKCη特異的抗体、続いてFITC結合体化二次抗体を利用する免疫蛍光分析に供する。対照は非感染細胞である。
【図13A】PKCη発現の阻害が、増殖しているケラチン生成細胞におけるケラチン生成細胞分化を誘導することを示す。初代皮膚ケラチン生成細胞を低Ca2+培地中で増殖状態に維持するか、又は0.12mM Ca2+中で24時間分化させるかのいずれかであった。その後、ケラチン生成細胞に、組換えPKCηアデノウイルス又はPKCηの顕性不活性変異体(PKC DNη)アデノウイルスで1時間感染させた。感染の24時間後、ケラチン生成細胞を、低Ca2+培地中で維持するか、又は0.12mM Ca2+を含む分化培地に24時間移すかのいずれかであった。感染の24時間後、ケラチン生成細胞を抽出し、SDS−PAGEゲルに供した。PKCη(A)及びケラチン1(B)の発現を、ウェスタンブロッティングによって分析した。
【図13B】PKCη発現の阻害が、増殖しているケラチン生成細胞におけるケラチン生成細胞分化を誘導することを示す。初代皮膚ケラチン生成細胞を低Ca2+培地中で増殖状態に維持するか、又は0.12mM Ca2+中で24時間分化させるかのいずれかであった。その後、ケラチン生成細胞に、組換えPKCηアデノウイルス又はPKCηの顕性不活性変異体(PKC DNη)アデノウイルスで1時間感染させた。感染の24時間後、ケラチン生成細胞を、低Ca2+培地中で維持するか、又は0.12mM Ca2+を含む分化培地に24時間移すかのいずれかであった。感染の24時間後、ケラチン生成細胞を抽出し、SDS−PAGEゲルに供した。PKCη(A)及びケラチン1(B)の発現を、ウェスタンブロッティングによって分析した。
【図14】PKCηの局所的インビボ発現が顆粒組織の形成を増強し、且つマウス切開性創傷における創傷治癒を加速することを実証する。全体の皮膚の7mmの切開をヌードマウスの背に作製した。対照β−gal、PKCη、及びPKCαのアデノウイルス懸濁液の局所塗布を、創傷の1日後及び4日後に行った。全体の皮膚の創傷を4%パラホルムアルデヒド中で固定し、皮膚切片をH&E染色及び明視野顕微鏡によって組織学的に分析した。E−表皮、D−真皮。
【図15】インスリンが、増殖しているケラチン生成細胞中でPKCδのトランスロケーションを特異的に誘導するが、IGF1は誘導しないことを実証する。初代ケラチン生成細胞は、上記の実施例の節において記載されるように、単離及びプレートされた。増殖しているケラチン生成細胞は、それらが80%コンフルエンシーに達するまで、低Ca2+培地(0.05mM)中で5日間維持された。細胞を、10−7Mインスリン(Ins)又は10−8M IGF1(IGF)で15分間刺激した。記載されるように、細胞を溶解し、刺激された細胞及び対照の未刺激(Cont)細胞の20μgの膜又は細胞質ゾル抽出物をSDS−PAGE及び転写に供した。ブロットを、各PKCアイソフォームに対する特異的ポリクローナル抗体でプローブした。
【図16】インスリンがPKCδ活性を誘導するが、IGF1は誘導しないことを示す。PKCδ活性を決定するために、5日間のケラチン生成細胞培養を、10−7Mインスリン(Ins)又は10−8M IGF1(IGF)で所定の時間(1、15、又は30分間)刺激した。PKCδを、特異的抗PKCδ抗体を使用して、膜画分(青色バー、mem)及び細胞質ゾル画分(紫色バー、cyto)から免疫沈殿した。PKCδ免疫沈殿物を、実験手順において記載されるように、インビトロキナーゼアッセイを利用するPKCについて分析した。各バーは、3つの別々の実験における3回の測定の平均±SEを表す。値はpmol ATP/ディッシュ/分として表される。
【図17A】インスリン及びIGF1がケラチン生成細胞増殖に対する相加的な効果を有することを示す。増殖しているケラチン生成細胞を、これらが80%コンフルエンスに達するまで、低Ca2+培地(0.05mM)中で5日間維持した。(A)5日間のケラチン生成細胞培養を、所定濃度でのインスリン又はIGF1で24時間刺激した。(B)並行して、ケラチン生成細胞を、10−7Mインスリン(Ins)及び増加用量のIGF1(IGF)で刺激した。各濃度において、右のカラム(縞模様のバー)は、両方のホルモンが一緒に加えられたときに観察される増殖を表す。左のバーは、10−7Mインスリン(赤いバー)及び増加濃度のIGF1(灰色のバー)の別々の効果を実証する。チミジン取り込みは、実験手順に記載されているように測定した。示される結果は6回の実験を表す。各バーは、対照の未刺激ケラチン生成細胞の上のパーセントとして表される、3回の測定の平均±SEを表す。
【図17B】インスリン及びIGF1がケラチン生成細胞増殖に対する相加的な効果を有することを示す。増殖しているケラチン生成細胞を、これらが80%コンフルエンスに達するまで、低Ca2+培地(0.05mM)中で5日間維持した。(A)5日間のケラチン生成細胞培養を、所定濃度でのインスリン又はIGF1で24時間刺激した。(B)並行して、ケラチン生成細胞を、10−7Mインスリン(Ins)及び増加用量のIGF1(IGF)で刺激した。各濃度において、右のカラム(縞模様のバー)は、両方のホルモンが一緒に加えられたときに観察される増殖を表す。左のバーは、10−7Mインスリン(赤いバー)及び増加濃度のIGF1(灰色のバー)の別々の効果を実証する。チミジン取り込みは、実験手順に記載されているように測定した。示される結果は6回の実験を表す。各バーは、対照の未刺激ケラチン生成細胞の上のパーセントとして表される、3回の測定の平均±SEを表す。
【図18A】組換えPKCアデノウイルス構築物の過剰発現を実証する。ケラチン生成細胞培養物を、野生型PKCδ(WTPKCδ)、野生型PKCα(WTPKCα)、又は顕性不活性PKCδ変異体(DNPKCδ)を含む組換えアデノウイルス構築物を利用して感染させた。(A)感染後、細胞を24時間培養し、収集し、20μgのタンパク質抽出物を、特異的抗PKCα抗体又は抗PKCδ抗体を使用して、ウェスタンブロッティングによって分析した。提示されるブロットは、5回の別々の実験を表す。(B)感染の24時間後、細胞を収集し、PKCα又はPKCδの免疫沈殿物を、インビトロキナーゼアッセイによって評価した。
【図18B】組換えPKCアデノウイルス構築物の過剰発現を実証する。ケラチン生成細胞培養物を、野生型PKCδ(WTPKCδ)、野生型PKCα(WTPKCα)、又は顕性不活性PKCδ変異体(DNPKCδ)を含む組換えアデノウイルス構築物を利用して感染させた。(A)感染後、細胞を24時間培養し、収集し、20μgのタンパク質抽出物を、特異的抗PKCα抗体又は抗PKCδ抗体を使用して、ウェスタンブロッティングによって分析した。提示されるブロットは、5回の別々の実験を表す。(B)感染の24時間後、細胞を収集し、PKCα又はPKCδの免疫沈殿物を、インビトロキナーゼアッセイによって評価した。
【図19】インスリン又はIGF1で誘導される増殖に対するPKC過剰発現の効果を示す。非感染(明るい青いバー)、又はWTPKCδを過剰発現する細胞(暗い青いバー)若しくはDNPKCδを過剰発現する細胞(斜線をつけた青いバー)を、10−7Mインスリン(Ins)、10−8M IGF1(IGF)、又は両方(Ins+IGF)で24時間処理した。チミジン取り込みを、実験手順に記載されるように測定した。各バーは、別々の培地に対して行った3つの実験における3回の測定の平均±SEを表す。値は、各実験における同じ培養物からの、対照の未刺激細胞のパーセントとして表される。
【図20】PKCδ活性の阻害が、インスリン誘導性のケラチン生成細胞増殖を特異的に無効にすることを示す。初代ケラチン生成細胞を、上記の実施例の節において記載されるように培養した。非感染細胞又はDNPKCδで感染したケラチン生成細胞を、以下の増殖因子濃度で24時間刺激した:10−7M インスリン(Ins)、10−8M IGF1(IGF)、10ng/ml EGF、10ng/ml PDGF、1ng/ml KGF、又は5ng/ml ECGF。チミジン取り込みを、上記の実施例の節において記載されるように測定した。各バーは、別々の培地に対して行った3つの実験における3回の測定の平均±SEを表す。値は、各実験における同じ培養物からの、対照の未刺激細胞のパーセントとして表される。
【図21】PKCδの過剰発現がインスリン誘導性のケラチン生成細胞増殖を特異的に媒介することを示す。初代ケラチン生成細胞を図1の下に記載されるように培養した。非感染細胞又は過剰発現WTPKCδで感染されたケラチン生成細胞を、以下の増殖因子濃度で24時間刺激した:10−7M インスリン(Ins)、10−8M IGF1(IGF)、10ng/ml EGF、10ng/ml PDGF、1ng/ml KGF、又は5ng/ml ECGF。チミジン取り込みを、上記の実施例の節において記載されるように測定した。各バーは、別々の培地に対して行った3つの実験における3回の測定の平均±SEを表す。値は、各実験における同じ培養物からの、対照の未刺激細胞のパーセントとして表される。
【図22A】インビボでの皮膚の創傷治癒プロセスにおけるPKCδ及びPKCζの有意さを実証する。新規に開発された、アイソフォーム特異的な無PKCマウス、無PKCαマウス、無PKCδマウス、及び無PKCζマウス、並びにそれらの野生型同腹仔のインビボマウスモデルを利用することが、創傷治癒の研究に供された。マウスは麻酔され、直径4mmのパンチ生検を通した皮膚がマウスの背に作製された。1週間の追跡後、マウスの皮膚を取り出し、皮膚の創傷治癒を、破裂チャンバー技術を利用する創傷強度試験に皮膚弁を供することによって定量した。値は、破裂が起こるまでモニターされるチャンバー内の最大圧力を表す破裂圧力として表される。結果は、12〜20匹のマウスの別個の群において得られる測定を表す。実験を少なくとも3回繰り返した。
【図22B】インビボでの皮膚の創傷治癒プロセスにおけるPKCδ及びPKCζの有意さを実証する。新規に開発された、アイソフォーム特異的な無PKCマウス、無PKCαマウス、無PKCδマウス、及び無PKCζマウス、並びにそれらの野生型同腹仔のインビボマウスモデルを利用することが、創傷治癒の研究に供された。マウスは麻酔され、直径4mmのパンチ生検を通した皮膚がマウスの背に作製された。1週間の追跡後、マウスの皮膚を取り出し、皮膚の創傷治癒を、破裂チャンバー技術を利用する創傷強度試験に皮膚弁を供することによって定量した。値は、破裂が起こるまでモニターされるチャンバー内の最大圧力を表す破裂圧力として表される。結果は、12〜20匹のマウスの別個の群において得られる測定を表す。実験を少なくとも3回繰り返した。
【図23】初代皮膚ケラチン生成細胞におけるSTAT3とPKCδの間の特異的相互作用を同定する。初代ケラチン生成細胞は、未処理であるか(上のパネル)、又はアイソフォーム特異的な、組換えPKCアデノウイルスで1時間感染されたか(下のパネル)のいずれかであった。細胞を抽出し、アイソフォーム特異的PKC抗体で免疫沈殿(IP)させた。この免疫沈殿物を、抗PKC又は抗STAT3抗体を使用するウェスタンブロット分析に供した。
【図24】インスリン誘導性のSTAT3の転写活性化に対するPKCδ活性化の重要性を実証する。初代ケラチン生成細胞をガラススライド上に配置し、それらが80%コンフルエントに達するまで、低Ca++培地(0.05mmol/l)中で5日間維持した。細胞は未処理であるか(Cont、上のパネル)又は5μMロットレリンで7分間前処理し(R、下のパネル)、続いて10−7Mインスリンで5分間処理した(Ins)。細胞をメタノールで固定し、洗浄し、風乾した。培養物を、抗ホスホ−Tyr−705−STAT3抗体、続いてFITC結合体化二次抗体を使用する免疫蛍光によって分析した。細胞を共焦点顕微鏡によってスキャンした。
【図25】DN PKCδの過剰発現が、PKCδ及びSTAT3の過剰発現によって誘導されたケラチン生成細胞増殖を阻害することを実証する。初代ケラチン生成細胞を、β−Gal(対照のため)、PKCδ、WT STAT3、DN STAT3、又はDN PKCδ、続いてSTAT3での二重感染を含む組換えアデノウイルス構築物で1時間感染させた。感染の24時間後、細胞増殖を、1時間の3H−チミジン取り込みによって分析した。結果はDPM/mgタンパク質として提示される。各バーは、同じ培養からのプレート中での3回の測定の平均を表す。
【図26】インビボでの創傷治癒に対するインスリン濃度及び塗布の頻度の重要性を実証する。創傷切開を、8〜10週齢C57BLマウスの背で実行し、PBS(対照)を用いて、又は異なる濃度及び頻度のインスリン塗布(すなわち、1日に7回の反復塗布対単回塗布)を用いて処置した。マウスを創傷形成の7日後に屠殺し、処置した創傷の面積を測定した。結果を、mm2創傷面積として提示し、各バーは6回の複製の平均±標準偏差を表す(p<0.005)。
【図27】インビボでの創傷治癒に対するインスリン濃度及び塗布の頻度の組織学的効果を実証する。創傷切開を、8〜10週齢C57BLマウスの背で実行し、異なる濃度及び頻度のインスリン塗布(すなわち、1日に7回の反復塗布対単回塗布)を用いて処置した。組織学的創傷切片を、創傷形成の7日後に実行し、表皮及び真皮の閉鎖(創傷収縮)について分析した。表皮閉鎖はケラチン14(K14)抗体染色によって評価し(左のパネル)、創傷が全体のギャップを横切ってポジティブに染色された場合にポジティブと見なした。真皮閉鎖は、両方の真皮の創傷の側が×100倍率の単一の視野において光学顕微鏡下で観察可能であった場合にポジティブと見なした(右のパネル)。結果を、対照に対する創傷閉鎖のパーセントとして提示し、各バーは6回の複製の平均を表す。
【図28】インビボでの創傷治癒に対する、インスリン及び血小板由来増殖因子(PDGF−BB)を組み合わせることの相乗作用を実証する。創傷切開を、8〜10週齢C57BLマウスの背で実行し、インスリン、PDGF−BB、又はインスリン及びPDGF−BBの組み合わせの単回塗布を用いて処置した。処置したマウスを創傷形成の7日後に屠殺し、表皮及び真皮の閉鎖(創傷収縮)の組織学的分析のために生検を採取した。表皮閉鎖はケラチン14(K14)抗体染色によって評価し(左のパネル)、創傷が全体のギャップを横切ってポジティブに染色された場合にポジティブと見なした。真皮閉鎖は、両方の真皮の創傷の側が×100倍率の単一の視野において光学顕微鏡下で観察可能であった場合にポジティブと見なした(右のパネル)。結果を、対照に対する創傷閉鎖のパーセントとして棒グラフ中に要約されたように提示し、各バーは6回の複製の平均を表す。
【図29】インビボでの創傷治癒に対する、インスリン及びPKCα阻害剤を組み合わせることの形態学的効果を例証する写真である。創傷切開を、8〜10週齢C57BLマウスの背で実行し、処置しないか(対照)、又はPKCα阻害剤(HO/02)と組み合わせたインスリン(HO/01)を用いて処置したかのいずれかであった。形態学的観察のために、皮膚生検を創傷形成の7日後に取り出した。図29A〜Bは対照創傷を示すのに対し、図29C−Dは処置した創傷を示す。
【図30】真皮閉鎖(創傷収縮)に対するインスリン及びPKCα阻害剤の組み合わせ効果を例証する組織顕微鏡写真である。創傷切開を、8〜10週齢C57BLマウスの背で実行し、処置しないか(対照)、又はPKCα阻害剤(HO/02)と組み合わせたインスリン(HO/01)を用いて毎日処置したかのいずれかであった。処置したマウスを創傷形成の7日後に屠殺した。組織学的創傷切片を実行し、光学顕微鏡下で観察した。真皮閉鎖は、両方の真皮の創傷の側が×100倍率の単一の視野において観察可能であった場合にポジティブと見なした。未処置対照切片における開いた創傷の領域(左のパネル)は大きすぎて×100倍率の単一の視野に含まれなかったのに対して、処置した創傷切片(右のパネル)はポジティブな真皮閉鎖を示す。黄色の斑点状の線は真皮の端の印である。
【図31】表皮閉鎖に対する、インスリン及びPKCαの組み合わせ効果を例証する組織顕微鏡像である。創傷切開を、8〜10週齢C57BLマウスの背で実行し、処置しないか、又はPKCα阻害剤(HO/02)と組み合わせたインスリン(HO/01)を用いて毎日処置したかのいずれかであった。処置したマウスを創傷形成の7日後に屠殺した。組織学的創傷切片を実行し、ケラチン14(基底ケラチン生成細胞の指標)で染色し、光学顕微鏡下で観察した。未処置対照切片(左のパネル)における開いた創傷の領域(矢印で示す)は大きすぎて×100倍率の単一の視野に含まれなかったのに対して、処置した創傷切片(右のパネル)は全体の創傷ギャップを通して表皮閉鎖を示す。
【図32】表皮細胞の空間的分化に対する、インスリン及びPKCα阻害剤の組み合わせ効果を例証する組織顕微鏡像である。創傷を有するマウス(C57BL、8〜10週齢)を、PKCα阻害剤(HO/02)と組み合わせたインスリン(HO/01)の局所的塗布を用いて毎日処置した。処置したマウスを創傷形成の7日後に屠殺した。組織学的創傷切片を実行し、空間的細胞分化の初期段階を強調するケラチン1(K1)抗体で染色した。未処置対照切片(左のパネル)は巨大な未分化創傷領域(矢印で示す)を示すのに対して、処置した創傷切片(右のパネル)においては大規模な表皮再構築が観察可能である。
【図33】インビボでの創傷治癒に対する、PKCα阻害剤と組み合わせたインスリンの定量的効果を実証する。創傷を有するマウス(C57BL、8〜10週齢)を、PKCα阻害剤(HO/02)と組み合わせたインスリン(HO/01)の局所的塗布を用いて毎日処置した。処置したマウスを創傷形成の7日後に屠殺した。組織学的創傷切片を実行し、上記の図30〜32に記載されるのと同様に、真皮収縮、表皮閉鎖、及び空間的分化について分析した。棒グラフは、各処置群中の組織学的分析によって決定されるような、完全に治癒した創傷の発生(パーセンテージ)を示す。
【図34】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、PKCαの発現及び/若しくは活性を阻害すること、並びに真皮細胞における別のPKCアイソフォームの発現及び/若しくは活性を調節すること、又は真皮細胞にホルモンを投与することの組み合わせ効果を例証する写真である。培養した初代皮膚線維芽細胞を、顕性不活性(DN)キナーゼ不活性PKCαで感染させた。24時間後、擦過傷を実行し、培養物を、未処置のままであるか(図34A)、又は野生型(WT)PKCδ(図34B)、PKCη(図34C)、WT PKCζ(図34D)、若しくはWT PKCε(図34E)で感染させたかのいずれかであった。代替的には、PKCα阻害された培養物は、アディプシン(2μg/ml;図34F)又はインスリン(6.7×10−7M;図34G)で処置した。写真撮影を、処置の24時間後に行った。
【図35】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、PKCαの発現及び/若しくは活性を阻害すること、並びに真皮細胞における別のPKCアイソフォームの発現及び/若しくは活性を調節すること、又は真皮細胞への増殖因子の投与の組み合わせ効果を例証する写真である。培養した初代皮膚ケラチン生成細胞を、顕性不活性(DN)キナーゼ不活性PKCαで感染させた。24時間後、擦過傷を実行し、培養物を、未処置のままであるか(図35A)、又は野生型(WT)PKCε(図35D)、WT PKCζ(図35E)、若しくはWT PKCη(図35F)で感染させたかのいずれかであった。代替的には、PKCα阻害された培養物は、IL−6(1μg/ディッシュ;図35B)、KGF(1μg/ディッシュ;図35C)、PKCδ RACK(10−7M;図35H)、又はTNFα(12μg/ml;図35G)で処置した。写真撮影を、処置の24時間後に行った。
【図36】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、真皮細胞中のPKCζの発現及び/又は活性を阻害すること、並びに真皮細胞に増殖因子を投与することの組み合わせ効果を例証する写真である。培養した初代皮膚線維芽細胞を、顕性不活性(DN)キナーゼ不活性型のPKCζ(DNζ)で感染させた。24時間後、擦過傷を実行し、培養物を、未処置のままであるか(図36A)、又はKGF(1μg/ディッシュ;図36B)で処置したかのいずれかであった。写真撮影を、処置の24時間後に行った。
【図37】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、真皮細胞におけるPKCζの発現及び/又は活性を阻害すること、並びに真皮細胞に増殖因子又はホルモンを投与することの組み合わせ効果を例証する写真である。培養した初代皮膚ケラチン生成細胞を、顕性不活性(DN)キナーゼ不活性型のPKCζ(DNζ)で感染させた。24時間後、擦過傷を実行し、培養物を、未処置のままであるか(図37A)、又はIL−6(1μg/ディッシュ;図37B)、TNFα(12μg/ml;図37C)、若しくはアディポネクチン(1μg/ディッシュ;図37D)で処置したかのいずれかであった。写真撮影を、処置の24時間後に行った。
【図38】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、真皮細胞におけるPKCβの発現及び/又は活性を阻害すること、並びに真皮細胞に増殖因子、インスリン、又はGW9662を投与することの組み合わせ効果を例証する写真である。培養した初代皮膚線維芽細胞を、顕性不活性(DN)キナーゼ不活性型のPKCβ(DNβ)で感染させた。24時間後、擦過傷を実行し、培養物を、未処置のままであるか(図38A)、又はKFG(1μg/ディッシュ;図38B)IL−6(1μg/ディッシュ;図38C)、インスリン(6.7×10−7M;図38D)、又はGW9662(1μg/ディッシュ;図38E)で処置したかのいずれかであった。写真撮影を、処置の24時間後に行った。
【図39】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、PKCδの発現及び/又は活性を促進すること、並びに真皮細胞における別のPKCアイソフォームの発現及び/又は活性を調節すること、又は真皮細胞にホルモンを投与することの組み合わせ効果を例証する写真である。培養した初代皮膚ケラチン生成細胞を、PKCδ(DNδ)の野生型(WT)のキナーゼ型で感染させた。24時間後、擦過傷を実行し、培養物を、未処置のままであるか(図39A)、又はWT PKCζ(PKCζ;図39B)、WT PKCε(PKCε;図39C)、又はDN PKCα(PKCα、図30D)で処置したかのいずれかであった。代替的には、PKCδ促進された培養物は、アディプシン(2μg/ml;図39E)で処置した。写真撮影を、処置の48時間後に行った。
【図40】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、コポリマー1、インスリン、PKCα偽基質、又はこれらの組み合わせを投与することの効果を例証する写真である。培養した初代皮膚ケラチン生成細胞を、未処置のままであるか(図40A)、又はインスリンのみ(6.7×10−7M;図40B)、コポリマー1のみ(55μg/ディッシュ;図40C)、インスリン及びPKCα偽基質の混合物(それぞれ6.7×10−7M及び107M;図40D)、コポリマー1及びインスリンの混合物(それぞれ55μg/ディッシュ及び6.7×10−7M;図40E)、若しくはコポリマー1、インスリン、及びPKCα偽基質の混合物(それぞれ55μg/ディッシュ、6.7×10−7M、及び107M;図40F)で処置したかのいずれかであった。写真撮影を、処置の48時間後に行った。
【図41A】インビボでの創傷の治癒に対する、コポリマー1、インスリン、PKCα偽基質、又はこれらの組み合わせの効果を例証する写真である。創傷を有するマウスを、未処置のままであるか(図41A)、又はコポリマー1(55μg/ml;図41B)、コポリマー1及びインスリンの混合物(それぞれ55μg/ディッシュ及び1μM;図41C)、若しくはコポリマー1、インスリン、及びPKCα偽基質の混合物(それぞれ55μg/ml、1μM、及び1μM;図41D)の局所的塗布を用いて4日間毎日処置した。写真撮影を、処置の4日後に行った。
【図41B】インビボでの創傷の治癒に対する、コポリマー1、インスリン、PKCα偽基質、又はこれらの組み合わせの効果を例証する写真である。創傷を有するマウスを、未処置のままであるか(図41A)、又はコポリマー1(55μg/ml;図41B)、コポリマー1及びインスリンの混合物(それぞれ55μg/ディッシュ及び1μM;図41C)、若しくはコポリマー1、インスリン、及びPKCα偽基質の混合物(それぞれ55μg/ml、1μM、及び1μM;図41D)の局所的塗布を用いて4日間毎日処置した。写真撮影を、処置の4日後に行った。
【図41C】インビボでの創傷の治癒に対する、コポリマー1、インスリン、PKCα偽基質、又はこれらの組み合わせの効果を例証する写真である。創傷を有するマウスを、未処置のままであるか(図41A)、又はコポリマー1(55μg/ml;図41B)、コポリマー1及びインスリンの混合物(それぞれ55μg/ディッシュ及び1μM;図41C)、若しくはコポリマー1、インスリン、及びPKCα偽基質の混合物(それぞれ55μg/ml、1μM、及び1μM;図41D)の局所的塗布を用いて4日間毎日処置した。写真撮影を、処置の4日後に行った。
【図41D】インビボでの創傷の治癒に対する、コポリマー1、インスリン、PKCα偽基質、又はこれらの組み合わせの効果を例証する写真である。創傷を有するマウスを、未処置のままであるか(図41A)、又はコポリマー1(55μg/ml;図41B)、コポリマー1及びインスリンの混合物(それぞれ55μg/ディッシュ及び1μM;図41C)、若しくはコポリマー1、インスリン、及びPKCα偽基質の混合物(それぞれ55μg/ml、1μM、及び1μM;図41D)の局所的塗布を用いて4日間毎日処置した。写真撮影を、処置の4日後に行った。
【図42A】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42B】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42C】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42D】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42E】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42F】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42G】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42H】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図43】創傷及び損傷した皮膚の治癒に対する、PKCα阻害剤と組み合わせたインスリンの効果を例証する写真である。長軸方向の創傷切開を、Large Whites & Landrace家畜用ブタの背に行い、PBS(対照)又は1μM インスリン及び1μM PKCα偽基質(HO/03/03)の混合物のいずれかで、15日間毎日処置した。創傷を、創傷形成の30日後に写真撮影した。HO/03/03処置された創傷は、瘢痕形成を伴わずに完全に治癒し、緩衝液対照と比較して、顕著に改善された皮膚の美観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明は、細胞増殖及び/又は細胞分化を誘導及び/又は促進するために、PKCとしても知られるセリン/スレオニンタンパク質キナーゼの発現及び/又は活性化を調節するように設計された方法及び薬剤組成物の発明であり、それによって創傷の治癒プロセスを促進する。本発明の教示に従って、例えば、(i)PKC発現構築物での創傷細胞の形質転換、(ii)創傷細胞の内因性PKC遺伝子と隣接したその上流に挿入するシス作用性エレメントでの創傷細胞の形質転換、(iii)創傷細胞でPKCの発現及び/又は活性化を調節するインスリン、並びにインスリンと相乗的に作用する他の作用物質の投与、(iv)インスリン発現構築物から産生され、発現され分泌されるインスリンがPKC発現及び/又は活性化の上方制御因子として働くときの、そのインスリン発現構築物での創傷細胞の形質転換、(v)発現され分泌されるインスリンがPKC発現及び/又は活性化の上方制御因子として働くときの、創傷細胞の内因性インスリン遺伝子と隣接したその上流に挿入するシス作用性エレメントでの創傷細胞の形質転換、(vi)創傷へのインスリン分泌細胞の移植、(vii)インスリンがPKC発現及び/又は活性化の上方制御因子として働くときの、内因性インスリンの産生及び分泌を誘導するトランス作用性因子、例えばPDX1での創傷細胞の形質転換、並びに(viii)創傷へのPKC調節因子の投与によって、そのような発現の調節を実施することができる。本発明に従った方法及び薬剤組成物の原理及び操作は、図面及び添付した説明を参照するとよりよく理解することができる。
【0080】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、その適用において、下記の説明で示し、又は実施例の項で例示する構築の詳細、及び構成要素の配置に限らないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態も可能であり、或いは様々な形で実施又は実行することも可能である。また、本明細書で使用する語法及び専門用語が、説明を目的とするものであり、限定するものと見なすべきでないことも理解されたい。
【0081】
成体の皮膚は、2つの層:角質化した層を成す表皮、並びに支持及び栄養をもたらす、底にある厚い層のコラーゲンに富む皮膚結合組織を含む。皮膚は、外界に対する保護障壁として働く。したがって、皮膚でのどんな損傷又は破損も、迅速に且つ効率よく修復しなければならない。上記の背景の項で記載したように、修復の第1段階は、最初の創傷を塞ぐ血餅の形成によって達成される。その後、炎症細胞、線維芽細胞及び毛細血管が血餅に侵入して、肉芽組織を形成する。続いての段階では、創傷の再上皮化がなされ、基底のケラチン生成細胞が半接着斑の接触を喪失しなければならず、ケラチン生成細胞がその肉芽組織の上に移動して創傷を覆う。ケラチン生成細胞の移動後、ケラチン生成細胞は増殖促進に入り、損傷の間に喪失した細胞の補充を可能にする。創傷がケラチン生成細胞の単層で覆われた後、層を成す新たな表皮が形成され、新たな基底膜が再構築される(20〜23)。EGFファミリーの増殖因子、KGF、PDGF及びTGFβ1を含めて、いくつかの増殖因子がこのプロセスに関与することが示されている(22〜24)。これらの増殖因子の中で、EGFとKGFの両方が、表皮ケラチン生成細胞の増殖及び移動の制御に密接に関与すると考えられている(25、26)。創傷治癒の生物学の理解に対する基本は、創傷中の細胞の移動、増殖、及び創傷の間隙中の新たな基質の定着を誘発するシグナルの知識である。
【0082】
以下の開示中で示す本発明の理解を促進するために、いくつかの用語を下記に定義する。
【0083】
「創傷」という用語は、様々な形(例えば、長い寝床での静止状態からの褥瘡、外傷、切傷、潰瘍、熱傷などで誘導される創傷)のいずれかで惹起される皮膚及び皮下組織に対する損傷を広く指し、様々な特徴を伴う。創傷は通常、創傷の深さに応じて4つの程度のうち1つに分類される:(i)第1度:上皮に限局した創傷;(ii)第2度:真皮まで拡大した創傷;(iii)第3度:皮下組織まで拡大した創傷;及び(iv)第4度(又は全層創傷):骨が露出した(例えば、大転子や仙骨などの骨の圧点)創傷。
【0084】
「部分層創傷」という用語は、第1度〜第3度を包含する創傷を指す;部分層創傷の例には、熱傷創、褥瘡、静脈うっ血性潰瘍、及び糖尿病性潰瘍がある。
【0085】
「深い創傷」とは、第3度と第4度の両方の創傷を含むことを意味する。
【0086】
創傷に関して「治癒」という用語は、瘢痕形成によるように、創傷を修復するプロセスを指す。
【0087】
「皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する」という語句は、創傷収縮の肉芽組織形成の誘導及び/又は上皮化の誘導(すなわち、上皮中の新たな細胞の発生)を指す。創傷治癒は、好都合なことに、創傷領域の減少によって測定される。
【0088】
本発明は、深い創傷及び慢性創傷を含めて、創傷の型すべてを治療することを意図するものである。
【0089】
「慢性創傷」という用語は、30日以内に治癒しなかった創傷を指す。
【0090】
「形質転換細胞」という語句は、外因性核酸の取り込みによる細胞の核酸の内容の一時的な又は永久的な変化を指し、それを細胞ゲノムに組み込み細胞を遺伝子改変する、又は組み込まれない状態のままにする。
【0091】
「シス作用性エレメント」という用語は、本明細書において、DNA結合タンパク質の結合部位(例えば、エンハンサー、オペレーター及びプロモーター)として使用し、それによって同じ染色体上の1つ又は複数の遺伝子の活性に影響を及ぼす遺伝子領域を示すのに使用する。
【0092】
「トランス作用性因子」という語句は、本明細書において、シス作用性エレメントと結合し、それからの遺伝子発現に関してその活性を調節する因子を示すのに使用する。したがって、PDX1は、インスリン遺伝子プロモーターと結合し、その活性を調節するトランス作用性因子である。
【0093】
「転写活性化物質」という語句は、本明細書において、遺伝子発現を増大させる因子を示すのに使用する。トランス作用性因子は、直接的な転写活性化物質の一例である。
【0094】
「活性化物質」という用語は、本明細書において、活性を促進する分子を示すのに使用する。
【0095】
本明細書において「発現及び/又は活性化の調節」という語句は、発現及び/又は活性化の促進又は抑制を指す。
【0096】
PKCは、ケラチン生成細胞の増殖及び分化を媒介する主要なシグナル伝達経路である。PKCアイソフォームα、δ、ε、η及びζが皮膚で発現している(4、10)。本発明を考え出す間、PKCの発現及び/又は活性化を調節すると、細胞増殖及び/又は細胞分化が誘導され、それによって創傷の治癒プロセスが促進される可能性があると仮定した。本発明を実施に移す間、この理論は、PKCの発現及び/又は活性化を調節すると、実際に細胞増殖及び細胞分化が誘導され、創傷の治癒プロセスが促進されることを示す多数の実験によって認められた。本明細書で非常に詳細までさらに述べるように、PKCの発現及び/又は活性化を調節して、それによって創傷の治癒プロセスを促進する様々な異なる手法に着手した。実験による知見に基づいて、他の手法を考え出した。本発明を実施に移す間に、インスリンがPKCの発現及び/又は活性化の調節因子として働くという際立った新規な現象が発見された。そのようなものとして、インスリンは、創傷の治癒プロセスを促進するように、PKCの発現及び/又は活性化を調節する治療用作用物質として働くことができる。
【0097】
別個のPKCアイソフォームの特徴、並びに細胞の増殖及び/又は分化に対するその特異的な効果は、皮膚の創傷治癒の生物学に非常に重要である。PKCアデノウイルス構築物を利用すると、in vitro及びin vivoでの創傷治癒プロセスにおける様々なPKCアイソフォームの特異的な役割を同定することが可能となる。すべてのアイソフォームが、ケラチン生成細胞の増殖及び分化の異なる側面に特異的に影響を及ぼすことができる。2種のアイソフォームPKCδ及びPKCζは、インテグリンの制御(下記の実施例6を参照)、基底膜との接着(下記の実施例9を参照)及び半接着斑形成(下記の実施例8を参照)を特異的に制御することができた。2種のアイソフォームPKCδ及びPKCηは、表皮ケラチン生成細胞の増殖の潜在的可能性を制御することが分かった(下記の実施例7及び11を参照)。さらに、PKCηの顕性不活性アイソフォーム(DNPKCη)は、活発に増殖しているケラチン生成細胞の分化を特異的に誘導することができた(下記の実施例12を参照)。最後に、皮膚での創傷治癒プロセスに対する別個のPKCアイソフォームの重要性は、in vivo系でも実証された。別個のPKCアイソフォームの発現が消失した無PKCマウスを利用して、皮膚ケラチン生成細胞の接着と運動のプロセスのどちらにも必要であることが分かったPKCδ及びPKCζが、動物モデルにおけるin vivo創傷治癒プロセスでも重要であることを本明細書において示す(実施例19を参照)。無PKCの皮膚での皮膚全体の全層生検から、PKCδもPKCζも創傷の適切な治癒に必須であるが、PKCαは必須ではないことが示唆された。さらに、下記の実施例22は、PKCα抑制物質がin vivoで創傷治癒を有効に促進し、それによってPKCαアイソフォームが創傷治癒に拮抗性である可能性があることが示唆されることを示すものである。
【0098】
PKCηは、独特の組織分布を示す。それは上皮組織で主に発現する(27、28)。in situハイブリダイゼーションによる検討、並びに免疫組織化学的な検討から、PKCηが分化中の層及び分化能のある層で高度に発現することが示された(27)。本明細書で提示する結果から、PKCηが、細胞生理に応じて皮膚の増殖と分化のどちらの機能的制御因子としても役割を有することが示唆される。ケラチン生成細胞が低Ca2+条件下で増殖状態に維持されているとき、PKCηは、対照ケラチン生成細胞より5〜7倍高い増殖速度を誘導した。しかし、Ca2+濃度を上昇させることによって細胞に分化を誘導したとき、対照細胞と比べて迅速且つ高い速度で分化が誘導された(実施例12を参照)。増殖能と分化層の形成のどちらも実現されたので、このことから、PKCηが創傷治癒及び肉芽組織の形成を急激に誘導することができることを説明することができた。興味深いことに、in vivoでの創傷治癒の結果、及び成体期では通常高レベルでPKCηを発現しない胚組織でのPKCηの発現から、PKCηが同様に他の組織の増殖及び組織構成に役割を有すると考えられることが示唆された。これには、神経組織並びに皮膚組織及び筋組織があり、それらは創傷の肉芽組織中で効率よく治癒した。さらに、顕性不活性突然変異体を利用することによってケラチン生成細胞の分化を特異的に制御し、活発に増殖している細胞で正常な分化を誘導できると、特異的に分化を操作し、創傷治癒に関与する過剰増殖異常を調節することが可能となる。
【0099】
PKCηの治癒能が、ヌードマウスの背中に作り出した創傷に対してin vivoで発揮されることが、本明細書において例示される。下記の実施例14は、創傷にPKCη発現構築物を投与すると、局所感染させてから4日後に肉芽組織が形成されたことを示すものである。
【0100】
全体として、本明細書で提示する結果は、別個のPKCアイソフォームの発現及び/又は活性化(膜可動化)の調節が、創傷に対処する有効な手段であることを実証するものである。したがって、アイソフォームPKCδ、PKCη及びPKCζの発現及び/又は活性を増大させることによって、或いはアイソフォームPKCαの発現及び/又は活性を抑制することによって創傷治癒を促進することができる。
【0101】
したがって、本発明の一態様によれば、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、皮膚創傷に、PKCの発現及び/又は活性化を調節する少なくとも1種の作用物質を治療有効量投与することによって実施される。したがって、本発明のこの態様に従った方法を実施するための薬剤組成物は、有効成分である、PKCの発現及び/又は活性化を調節する治療有効量の少なくとも1種の作用物質、並びに製剤上許容される担体を含む。
【0102】
本明細書において、「皮膚創傷」という語句は、それだけに限らないが、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、静脈性潰瘍、胃潰瘍やHIV関連潰瘍などの潰瘍、糖尿病関連の創傷、熱傷、日焼け、加齢による皮膚創傷、角膜潰瘍化による創傷、炎症性消化管疾患による創傷、腸炎症性疾患による創傷、クローン病による創傷、潰瘍性大腸炎、痔核、表皮水疱症による創傷、皮膚水疱形成性創傷、乾癬による創傷、動物の皮膚の創傷、動物の糖尿病による創傷、網膜症による創傷、口腔の創傷(粘膜炎)、膣粘膜炎による創傷、歯周病による創傷、裂傷、外科的切除による創傷、及び外科的接着後の創傷を含めて、任意の型の上皮創傷を指す。
【0103】
本明細書において「皮膚損傷」という語句は、例えば、しわ(例えば、紫外線照射誘導性のしわ)、皮膚の筋、間隙、隆起、大型の孔(例えば、汗腺の管路、皮脂腺や毛包などの付属器構造に伴うもの)やむら又は荒れ、皮膚の弾性の喪失(機能的な皮膚エラスチンの喪失及び/又は不活性化)、たるみ(眼の領域及び顎の腫脹を含む)、皮膚の堅固さの喪失、皮膚の締まりの喪失、皮膚の変形からの反跳の喪失、変色(眼下の隈を含む)、痣、黄ばみ、染みやそばかすなどの色素沈着過剰な皮膚の領域、角化上皮症、異常分化、ケラチン過剰生成、弾性線維症、コラーゲン崩壊や、角質層、真皮、表皮、皮膚の血管系(例えば毛細血管拡張症又はクモ状血管)、及び基底にある組織、特に皮膚と隣接する組織における他の組織変化など、任意の型の皮膚の損傷又は状態を指す。
【0104】
皮膚は、古典的なインスリン反応性の組織でないと考えられている。したがって、皮膚におけるインスリンの効果は、密接に関連するIGFRをそれが活性化できることに主に起因すると考えられる。ケラチン形成細胞では、インスリンもIGF1も、どちらの受容体も刺激し、類似した下流のエフェクターを活性化することができることが示された(34)。しかし、本発明は、どちらの増殖因子も投与量依存的にケラチン生成細胞増殖を誘導するが、各ホルモンは異なるシグナル伝達経路を介してその効果を発揮することを示すものである。インスリン及びIGF1によるケラチン生成細胞増殖の差次的な制御についての最初の示唆は、これらのホルモンが、一緒に添加したときに、各ホルモンの増殖を誘導する最大濃度でケラチン生成細胞増殖に対する相加的な効果を有するという知見によって確認された(実施例15を参照)。ケラチン生成細胞増殖の制御におけるインスリンとIGF1のシグナル伝達経路の分岐点を同定するために、ケラチン生成細胞増殖も制御し、インスリンシグナル伝達の下流のエフェクターとしても働くことが知られているエレメントを調べた。これらの検討から、インスリンシグナル伝達が、ケラチン生成細胞増殖においてPKCδによって特異的に媒介されることが明らかとなった(実施例17を参照)。PKCδは、PKCファミリーのタンパク質の中で独特のアイソフォームであり、様々な細胞型の増殖及び成熟に特異的に関与する(35)。しかし、PKCδが、EGF、血小板由来増殖因子及び神経伝達物質を含めたいくつかの増殖因子の刺激によって特異的に制御されることが示されたが、その生理的な効果は、アポトーシス、分化、及び細胞周期遅延又は停止を含めて、増殖因子による細胞増殖抑制に関与することが示された(36〜41)。最近、Ca2+の上昇後12〜24時間以内に、培養マウスケラチン生成細胞でα6β4インテグリン複合体の選択的な喪失が、K1の誘導へとつながることが示された(6)。α6β4タンパク質発現の喪失は、α6鎖及びβ4鎖のプロセシングの促進を含む転写及び翻訳後の事象の結果である。予備的な検討では、PKCの活性化と、α6β4インテグリンのプロセシング及び制御とのつながりが明らかとなった。これらの結果は、ケラチン生成細胞の脱離を誘導するα6β4発現及び半接着斑形成の喪失におけるPKCδ並びにPKCζの役割に対する以前の結果と一致する。しかし、本発明は、インスリン誘導性のケラチン生成細胞増殖の標的としての、PKCδの他の役割を同定するものである。下記の実施例は、それだけに限らないが、EGF、KGF、PDGF、ECGF及びIGF1を含む種々の増殖因子ではなく、インスリン刺激だけが、転位し、皮膚で発現される他のPKCアイソフォームのいずれでもなくPKCδを活性化することができることを示すものである。インスリン刺激に対するPKCδの重要性は、EGF、KGF、PDGF、ECGF及びIGF1による分裂促進刺激がPKCδの顕性不活性突然変異体によって抑止されなかったときにさらに確認され、インスリンは、ケラチン生成細胞増殖の制御におけるこのPKCアイソフォームの主要な活性化物質であるように思われた(実施例17を参照)。しかし、ケラチン生成細胞をWTのPKCδに感染させたとき、EGF及びKGFによるケラチン生成細胞の分裂促進刺激が増強された。このことは、PKCδの活性化が、上流のシグナル伝達経路による他の増殖因子の増殖刺激にも不可欠であることを示すものである。さらに、インスリン誘導性のPKCδ活性化及びケラチン生成細胞増殖を媒介する下流のエレメントを特徴付け、このプロセスでの転写活性化物質であるSTAT3の関与を同定した。STAT(転写シグナル伝達因子及び活性化因子(Signal Transducers and Activators of Transcription))タンパク質は、様々なサイトカイン及び増殖因子によって動員される転写因子ファミリーである。既知のSTATファミリーの構成要素7個中で、STAT3は独特である。他のSTATファミリーの構成要素ではなくSTAT3を標的として破壊すると、早期の胚性致死に至る。特に、皮膚でSTAT3の条件付き除去を行ったとき、皮膚の再構築が重度に崩壊した。活性化後、STATタンパク質はホモダイマー又はヘテロダイマーを形成し、核へと転位し、標的遺伝子のDNA反応エレメントと結合して転写を誘導する。ケラチン生成細胞では、皮膚で発現される他のPKCアイソフォーム(PKCα、ζ、η及びε)ではなくPKCδがSTAT3と構成的に結合していることが分かった(実施例18を参照)。さらに、インスリンは、PKCδの特異的な活性化を介してSTAT3のリン酸化、活性化及び核への転位を制御する。薬剤抑制物質ロットレリンにより、又は顕性不活性PKCδ突然変異体の過剰発現によりPKCδ活性を抑制すると、インスリン誘導性のSTAT3の活性化及び核への転位が抑止された。最後に、顕性不活性PKCδ突然変異体を過剰発現させると、STAT3の過剰発現によって誘導されるケラチン生成細胞増殖が抑制された(実施例18を参照)。これらの結果から、皮膚ケラチン生成細胞増殖における、STAT3による転写活性化でのインスリン誘導性PKCδ活性の役割が示唆される。STAT3が皮膚の再構築に重要であり、様々なサイトカイン及び増殖因子によって動員される下流のエフェクターであるので、これらの結果全体から、様々な皮膚増殖因子によるケラチン生成細胞の増殖を媒介する主要な下流のエフェクターとしてPKCδが活性化することが示唆される。特に、PKCδは、糖尿病患者で見られる創傷治癒欠損の原因の主要な候補である可能性がある。PKCδと創傷治癒のつながりは、in vivoでも確認された。新たに構築した無PKCδマウスを利用して、PKCδの欠如によってマウス皮膚での創傷治癒が遅延することが本明細書で示される(実施例19を参照)。PKCδとインスリンシグナル伝達のつながりも、他のいくつかの系で明らかとなっている。例えば、筋培養物中で、PKCδがインスリン誘導性のグルコース輸送を媒介することが最近示された(42、43)。同様に、インスリン受容体を過剰発現している細胞では、インスリン刺激がPKCδの活性化と関連することが示された(44〜46)。しかし、これらの研究ではインスリンが媒介するPKCδの活性化をインスリンの代謝効果と結び付けているが、これは、PKCδを、インスリンが媒介する細胞増殖と結び付ける最初の報告である。ケラチン生成細胞の増殖と、細胞がその下にある基底膜との接着を喪失する初期分化段階の調節の両方の制御におけるPKCδの確認された二重の役割が明らかとなった。このことから、インスリン誘導性PKCδが、皮膚における増殖と分化の生理的均衡を制御する主要な候補であることが示唆される。
【0105】
したがって、本発明の教示によれば、創傷細胞をインスリンにさらすことによってPKCの発現及び/又は活性化の調節を実施する。これは、以下でさらに例示するように、複数の選択方法の1つによって実行することができる。
【0106】
1つの方法は、創傷へのインスリンの直接投与である。以下の実施例21及び22で記載するように、インスリンを創傷に濃度0.1〜10μMで局所塗布すると、表皮及び皮膚の閉鎖、続いて創傷治癒が有効に促進された。さらに、驚くべきことに且つ意外なことに、インスリンをPDGF−BB増殖因子又はPKCα抑制物質と組み合わせて塗布すると、インスリン単独よりも創傷治癒プロセスが実質的に且つ相乗的に向上した。
【0107】
したがって、本発明の他の態様によれば、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供される。その方法は、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、皮膚創傷に、治療有効量のインスリン、及びインスリンと相乗的に作用する少なくとも1種のさらなる作用物質を投与することによって実施する。好ましくは、その作用物質はPKCα抑制物質である。さらに好ましくは、その作用物質は、PDGF、EGF、TGFβ、KGF、ECGFやIGF1などの増殖因子であり、最も好ましくは、その作用物質はPDGF−BBである。
【0108】
単独での又は他の作用物質と組み合わせてのインスリンの直接投与は、単回又は反復塗布によって実施することができる。本発明を実施に移す間、本発明者らは、驚くべきことに、濃度1μMでのインスリンの単回塗布での治療が、同様の濃度でのインスリンの7回反復する毎日の塗布よりも創傷治癒において実質的に有効であることを発見した(下記の実施例20を参照)。
【0109】
したがって、本発明の他の態様によれば、皮膚の創傷に単回投与量単位の治療有効量のインスリンを投与することによって、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供される。好ましくは、単回投与量単位は、皮膚創傷の1cmの領域を覆うのに十分な量、例えば0.01〜0.2mlの例えば水溶液剤、ゲル剤、クリーム剤、ペースト剤、ローション剤、噴霧剤、懸濁液剤、粉末剤、分散液剤、膏薬剤又は軟膏剤中に0.001〜5nMの、好ましくは0.01〜0.5nMのインスリンを含む。
【0110】
下記の実施例の項中の実施例20で例示するように、インスリンを創傷に投与する時期は決定的に重要である可能性がある。例えば、4日前の創傷にインスリンを単回塗布すると、有効に創傷が治癒した。したがって、本発明の他の態様によれば、創傷に単回投与量の治療有効量のインスリンを投与することによって、古い皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供される。
【0111】
本明細書において「古い皮膚創傷」という語句は、少なくとも1日前の、少なくとも2日前の、少なくとも3日前の、好ましくは、少なくとも4日前の皮膚創傷を指す。
【0112】
本発明の他の態様に従って、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、有効成分である、治療有効量のインスリン及びインスリンと相乗的に作用する少なくとも1種のさらなる作用物質と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。好ましくは、その作用物質は、PKCα抑制物質、又はPDGF、EGF、TGFβ、KGF、ECGFやIGF1などの増殖因子であり、最も好ましくは、PDGF−BBである。下記でさらに詳細に説明するように、製剤上許容される担体は、それだけに限らないが、ゲル剤、クリーム剤、ペースト剤、ローション剤、噴霧剤、懸濁液剤、粉末剤、分散液剤、膏薬及び軟膏剤でもよい。創傷へのインスリンの放出を持続させるために固体支持体を使用することもできる。インスリンは、ヒト又は他の任意の供給源に由来する、天然のものでもよく、或いは好ましくは組換えによるものでもよいことが理解されるであろう。
【0113】
本発明の他の態様によれば、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進することができるように選択された単回投与単位のインスリン、及び薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体を含んでよい。好ましくは、単回投与量単位のインスリンは、0.01〜0.2mlの製剤投与量単位中で0.001〜5nMであり、好ましくは0.01〜0.5nMである。
【0114】
本発明の代替の実施形態では、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、インスリンを発現し分泌する細胞を創傷に移植する。そのようなインスリン産生細胞は、インスリンを天然に産生する細胞でもよく、或いは、そのような細胞を形質転換して、インスリンを産生し分泌する。例えば、インスリンの産生及び分泌に対するトランス作用性因子である組換えPDX1遺伝子(GeneBankアクセッション番号AH005712、AF035260、AF035259を参照)で細胞を形質転換することができる。或いは、細胞を形質転換して天然のインスリンを過剰産生し分泌するために、遺伝子ノックインにより細胞の内因性インスリン遺伝子の上流に組み込まれた強く構成的な又は誘導性のプロモーターなどのシス作用性エレメント配列で細胞を形質転換することもできる。インスリン遺伝子の上流領域がクローン化されている(アクセッション番号E00011、NM000207を参照)ので、これを得ることは可能である。或いは、組換えインスリン遺伝子(例えば、アクセッション番号J02547)で細胞を形質転換し、それによって細胞が組換えインスリンを産生し分泌する。
【0115】
したがって、本発明のこの態様に従って皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、有効成分であるインスリン分泌細胞と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。創傷に投与するインスリン分泌細胞は、それによって産生されるインスリンを分泌するために、分泌顆粒を形成することができると有利である。インスリン分泌細胞は、内分泌細胞でもよい。それは、ヒト供給源に由来するものでもよく、或いは、組織適合性をヒト化した動物供給源に由来するものでもよい。最も好ましくは、形質転換又は非形質転換インスリン分泌細胞は、自己の供給源由来のものである。好ましくは、インスリン分泌細胞によって分泌されるインスリンは、ヒトインスリンであり、又はヒトインスリンのアミノ酸配列を有する。インスリン分泌細胞は、そのような細胞にインスリンを産生し分泌するために上記に記載の形質転換を使用することを条件として、線維芽細胞、上皮細胞又はケラチン生成細胞でもよい。
【0116】
代替の実施形態では、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、皮膚創傷の細胞を形質転換して、インスリンを産生し分泌する。
【0117】
したがって、本発明のこの態様に従って皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、有効成分である、皮膚創傷の細胞を形質転換してインスリンを産生し分泌するように設計された核酸構築物と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0118】
上記に記載した形質転換の方法、例えばインスリンをコードする構築物での形質転換、遺伝子ノックインにより内因性インスリン遺伝子の下流に挿入するシス作用性エレメントを有する構築物での形質転換、並びに内因性インスリン産生及び分泌を活性化するトランス作用性因子をコードする構築物での形質転換のいずれかを、本発明のこの実施形態の場面で使用することができる。
【0119】
皮膚における別個のPKCアイソフォームの効果についての以前の研究は、寿命が短く、分化の可能性があり、安定な形質転換体を単離できないことにより、従来の方法で外来遺伝子を効率よく初代細胞に導入することが困難であることによって拘束されていた。これらの障害を克服するために、対象とする遺伝子の導入にウイルスベクターが使用されつつある。複製能が欠損したウイルスの形にウイルスゲノムを改変することによって、ウイルスベクターが開発された。最も広く使用されているウイルスベクターは、レトロウイルス及びアデノウイルスであり、それらは実験並びに遺伝子治療の目的で使用される(13)。特に、非複製細胞でのアデノウイルス感染の効率が高く、ウイルスの力価が高く、形質導入タンパク質の発現が高いことから、この系は、レトロウイルスベクターと比べて初代培養物にとって非常に有利となる。アデノウイルスが宿主ゲノム中に組み込まれず、安定したウイルス力価によって複製欠損にすることができるので、これらのウイルス構築物の、ヒト並びに動物モデルで伴う悪性リスクは最小限である(14)。今までに、皮膚でも、ex vivo及びin vivoの手法を用いて高い感染効率でのアデノウイルス構築物の使用に成功している(15、16)。I.Saito及びその共同研究者らによって開発されたアデノウイルスベクター(17)を、本研究に使用した。コスミドカセット(pAxCAwt)は、ほぼ完全長のアデノウイルス5ゲノムを有するが、E1A、E1B及びE3領域を欠き、そのことがウイルスを複製欠損にしている。それは、複合CAGプロモーターを含み、そのプロモーターは、サイトメガロウイルス最初期エンハンサー、ニワトリβアクチンプロモーター、及び挿入したDNAの発現を強く誘導するウサギβグロビンポリアデニル化シグナルからなる(13、17)。対象とする遺伝子をコスミドカセット中に挿入し、次いでヒト胎児腎293細胞中に、アデノウイルスDNA末端タンパク質複合体(TPC)とともにそれを同時トランスフェクトする。E1A及びE1B領域を発現する293細胞では、コスミドカセットとアデノウイルスDNA−TPCの間で組換えが起こり、従来の方法の100倍の効率で所望の組換えウイルスが得られる。そのような高い効率は、タンパク質分解酵素処理したDNAの代わりにアデノウイルスDNA−TPCを使用することに主に起因する。さらに、長い相同領域が存在すると、相同組換えの効率が高くなる。複製能を有するウイルスの再生は、複数のEcoT221部位が存在することにより回避される。これに関連して、ケラチン生成細胞を別個のPKCの組換えアデノウイルスに感染させ、その24時間後にPKCアイソフォームの有効な過剰発現が示されたことに留意されたい(実施例1を参照)。
【0120】
したがって、本発明に従ってPKCの発現及び/又は活性化の調節を実施する他の方法は、皮膚創傷細胞でPKCの過剰発現を誘導することによって行うものである。このことは、相同組換えにより細胞の内因性タンパク質キナーゼCの上流に組み込むシス作用性エレメント配列で細胞を形質転換し、それによって細胞に天然のタンパク質キナーゼCを産生することで実現することができる。或いは、このことは、それだけに限らないが、PKC−β1遺伝子(アクセッション番号X06318、NM002738)、PKC−β2遺伝子(アクセッション番号X07109)、PKC−γ遺伝子(アクセッション番号L28035)、PKC−θ遺伝子(アクセッション番号L07032)、PKC−λ遺伝子(アクセッション番号D28577)、PKC−ι遺伝子(アクセッション番号L18964)、PKC−α遺伝子(アクセッション番号X52479)、PKC−δ遺伝子(アクセッション番号L07860、L07861)、PKC−ε遺伝子(アクセッション番号X72974)、PKC−η遺伝子(アクセッション番号Z15108)やPKC−ζ遺伝子(アクセッション番号Z15108、X72973、NM002744)などの組換えタンパク質キナーゼC遺伝子で細胞を形質転換し、それによって細胞に組換えタンパク質キナーゼCを産生することで実現することができる。
【0121】
したがって、本発明のこの態様に従って皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、有効成分である、皮膚創傷の細胞を形質転換してタンパク質キナーゼCを産生するように設計された核酸構築物と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0122】
本発明に従ってPKCの発現及び/又は活性化の調節を実施する他の方法は、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するための、それだけに限らないが、Ca2+、インスリンやブリオスタチン1などのPKC活性化物質によって行うものである。
【0123】
したがって、本発明のこの態様に従って皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、有効成分である、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進するための治療有効量のPKC活性化物質と、製剤上許容される担体とを含む。
【0124】
本発明に従ってPKCの発現及び/又は活性化の調節を実施する他の方法は、PKCアイソフォームの発現及び/又は活性を下方制御することによって行うものである。
【0125】
PKCアイソフォームの活性の下方制御は、例えば、PKCα、PKCζ又はPKCηの偽基質抑制物質(CalbioChem、米国カリフォルニア州)などのPKC偽基質アイソフォーム抑制物質、或いは、例えば薬剤ペプチドLY379196(Elly Lilly、米国)などの他のPKCアイソフォーム抑制物質によって実施することができる。
【0126】
或いは、PKCアイソフォームの活性の下方制御は、下記の実施例の項で記載するような顕性不活性(DN)PKCアデノウイルス構築物によって実施することもできる。
【0127】
PKCアイソフォームの活性の下方制御は、短鎖干渉RNA(siRNA)分子によって実施することができる。RNA干渉は、2ステップのプロセスである。第1ステップは、開始ステップと呼ばれ、大抵の場合、RNaseIIIファミリーのdsRNA特異的リボヌクレアーゼの構成要素であり、ATP依存的にdsRNA(直接或いは導入遺伝子又はウイルスを介して導入)をプロセシングする(切断する)ダイサー(Dicer)の作用によって投入dsRNAを消化して、21〜23ヌクレオチド(nt)の短鎖干渉RNA(siRNA)にする。連続した切断事象によって、RNAを、それぞれが2ヌクレオチドの3’突出を有する19〜21bpの二重鎖(siRNA)に分解する[Hutvagner及びZamore、Curr.Opin.Genetics and Development 12:225−232(2002);並びにBernstein、Nature 409:363−366(2001)]。
【0128】
実行ステップでは、siRNA二重鎖は、ヌクレアーゼ複合体と結合して、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成する。siRNA二重鎖のATP依存的な巻き戻しは、RISCの活性化に必要である。次いで、活性なRISCは、塩基対形成の相互作用によって相同な転写物を標的とし、mRNAを切断してsiRNAの3’末端から12ヌクレオチドの断片にする[Hutvagner及びZamore、Curr.Opin.Genetics and Development 12:225−232(2002);Hammondら、(2001)Nat.Rev.Gen.2:110−119(2001);並びにSharp、Genes.Dev.15:485−90(2001)]。その切断の機構は依然として明らかとなっていないが、各RISCが単一のsiRNA及びRNaseを含むことが研究から示唆される[Hutvagner及びZamore、Curr.Opin.Genetics and Development 12:225−232(2002)]。
【0129】
RNAiの顕著な効果のため、RNAi経路内での増幅ステップが提唱されている。より多くのsiRNAを発生させる投入dsRNAの複製によって、又は形成されるsiRNAの複製によって増幅を行うことができる。或いは又はさらには、RISCの複数の代謝回転事象によって増幅を実施することができる[Hammondら、Nat.Rev.Gen.2:110−119(2001);Sharp、Genes.Dev.15:485−90(2001);Hutvagner及びZamore、Curr.Opin.Genetics and Development 12:225−232(2002)]。RNAiについてより多くの情報を得るには、下記の総説Tuschl、ChemBiochem.2:239−245(2001);Cullen、Nat.Immunol.3:597−599(2002);及びBrantl、Biochem.Biophys.Act.1575:15−25(2002)を参照されたい。
【0130】
本発明での使用に適したRNAi分子の合成を下記のように実施することができる。第1に、PKCアイソフォームのmRNA配列を、AUG開始コドンの下流にAAジヌクレオチド配列があるかどうか調べる。それぞれのAAの出現及び3’に隣接する19ヌクレオチドを、潜在的なsiRNA標的部位として記録する。非翻訳領域(UTR)は、制御性のタンパク質結合部位に富むので、好ましくは、siRNA標的部位は、オープンリーディングフレームから選択される。UTR結合タンパク質及び/又は翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合に干渉することができる[Tuschl、ChemBiochem.2:239−245]。しかし、GAPDHについて、5’UTRを対象とするsiRNAが細胞GAPDHmRNAの約90%の低下を媒介し、タンパク質レベルを完全に消失させたことが示された(www.ambion.com/techlib/tn/91/912.html)ように、非翻訳領域を対象とするsiRNAも有効である可能性があることが理解されるであろう。
【0131】
第2に、NCBIサーバーから利用可能なBLASTソフトウェア(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)など、任意の配列アラインメントソフトウェアを用いて、潜在的な標的部位を、適当なゲノムデータベース(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)と比較する。他のコード配列と有意な相同性を示す推定標的部位は取り除く。
【0132】
限定した標的配列を、siRNA合成用の鋳型として選択する。好ましい配列は、G/C含量が低いものであり、これは、G/C含量が55%より高いものと比べて遺伝子サイレンシングの媒介に有効であることが証明されている。評価する標的遺伝子の全長に沿っていくつかの標的部位を選択することが好ましい。選択したsiRNAをよりよく評価するには、陰性対照を併せて使用することが好ましい。陰性対照siRNAは、siRNAと同じヌクレオチド組成であるが、ゲノムとの有意な相同性を欠くことが好ましい。したがって、それが他のどんな遺伝子とも有意な相同性を示さないことを条件として、乱雑にしたヌクレオチド配列のsiRNAを使用することが好ましい。本発明に従った適切なsiRNAは、例えば、配列番号1〜16で示す核酸配列のいずれかなど、PKCα発現を抑制することができるsiRNAでもよい。
【0133】
PKCアイソフォームを下方制御することができる他の作用物質は、PKCアイソフォームのmRNA転写物又はDNA配列を特異的に切断することができるDNAザイム分子である。DNAザイムは、一本鎖ポリヌクレオチドであり、一本鎖と二本鎖の両方の標的配列を切断することができる(Breaker,R.R.及びJoyce,G.、Chemistry and Biology 1995;2:655;Santoro,S.W.及びJoyce,G.F.、Proc.Natl,Acad.Sci.米国 1997;943:4262)。DNAザイムについて一般的なモデル(「10〜23」モデル)が提案されている。「10〜23」DNAザイムは、それぞれ7〜9個のデオキシリボヌクレオチドからなる2つの基質認識ドメインが隣接した、15個のデオキシリボヌクレオチドからなる触媒ドメインを有する。この型のDNAザイムは、プリン:ピリミジン結合でその基質RNAを有効に切断することができる(Santoro,S.W.及びJoyce,G.F.、Proc.Natl,Acad.Sci.米国 199;DNAザイムの総説については、Khachigian,LM[Curr Opin Mol Ther 4:119−21(2002)]を参照)。
【0134】
一本鎖及び二本鎖の標的切断部位を認識する、合成され工学的に作製されるDNAザイムの構築及び増幅の例は、Joyceらの米国特許第6,326,174号で開示されている。最近、ヒトウロキナーゼ受容体を対象とする同様の設計のDNAザイムが、ウロキナーゼ受容体発現を抑制することが観察され、in vivoで結腸癌細胞転移の抑制に成功した(Itohら、20002,Abstract 409,Ann Meeting Am Soc Gen Ther www.asgt.org)。他の適用例では、bcr−abl癌遺伝子と相補的なDNAザイムが、白血病細胞での癌遺伝子発現の抑制、並びにCML及びALL症例における自己骨髄移植での再発率の減少に成功した。
【0135】
PKCアイソフォームの下方制御は、PKCアイソフォームをコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイズすることができるアンチセンスポリヌクレオチドを使用することによって実施することもできる。
【0136】
PKCアイソフォームを効率よく下方制御するのに使用することができるアンチセンス分子の設計は、アンチセンスの手法に重要な2つの側面を考慮しながら実施しなければならない。第1の側面は、適当な細胞の細胞質中へのオリゴヌクレオチドの送達であり、第2の側面は、その翻訳を抑制する形で、細胞内の指定されたmRNAと特異的に結合するオリゴヌクレオチドの設計である。
【0137】
従来技術から、オリゴヌクレオチドを多種多様な細胞型に効率よく送達するのに使用することができるいくつかの送達の戦略が教示される[例えば、Luft、J Mol Med 76:75−6(1998);Kronenwettら、Blood 91:852−62(1998);Rajurら、Bioconjug Chem 8:935−40(1997);Lavigneら、Biochem Biophys Res Commun 237:566−71(1997)及びAokiら、(1997)Biochem Biophys Res Commun 231:540−5(1997)を参照]。
【0138】
さらに、標的mRNAとオリゴヌクレオチドのどちらの構造変化のエネルギー現象も明らかにする熱力学サイクルに基づいて、その標的mRNAについて最も高い予測結合親和性でそれらの配列を同定するアルゴリズムも利用可能である[例えば、Waltonら、Biotechnol Bioeng 65:1−9(1999)を参照]。
【0139】
そのようなアルゴリズムを使用して、細胞でアンチセンスの手法を実施することに成功している。例えば、Waltonらによって開発されたアルゴリズムによって、科学者によるウサギβグロビン(RBG)及びマウス腫瘍壊死因子α(TNFα)転写物のアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計を可能にすることに成功した。同じ研究グループは、3種のモデル標的mRNA(ヒト乳酸脱水素酵素A及びB並びにラットgp130)に対して合理的に選択されたオリゴヌクレオチドの、動態PCRの技術によって評価される細胞培養物中のアンチセンス活性が、ホスホジエステル及びホスホロチオエートオリゴヌクレオチド化学物質での、2種の細胞型における3種の異なる標的に対する試験を含めて、ほとんどすべての場合で有効であると証明されたことをさらに最近報告した。
【0140】
さらに、in vitro系を用いて特定のオリゴヌクレオチドの効果を設計し予測するいくつかの手法も公開されている[Matveevaら、Nature Biotechnology 16:1374−1375(1998)]。
【0141】
いくつかの臨床試験によって、アンチセンスオリゴヌクレオチドの安全性、実現可能性及び活性が示されている。例えば、癌の治療に適したアンチセンスオリゴヌクレオチドは使用に成功している[Holmundら、Curr Opin Mol Ther 1:372−85(1999)]が、c−myb遺伝子、p53及びBcl−2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを介する血液系の悪性腫瘍の治療は、臨床試験に入り、患者によって許容されることが示されている[Gerwitz、Curr Opin Mol Ther 1:297−306(1999)]。
【0142】
さらに最近では、アンチセンス媒介性のヒトヘパラナーゼ遺伝子発現抑制が、マウスモデルにおいてヒト癌細胞の胸膜播種を抑制することが報告されている[Unoら、Cancer Res 61:7855−60(2001)]。
【0143】
したがって、現在の総意は、上記に記載のように、高度に正確なアンチセンス設計アルゴリズム、及び多種多様なオリゴヌクレオチド送達系の創出へと導いたアンチセンス技術分野での最近の開発によって、当業者が、過度の試験及び誤った実験に頼ることなく、既知の配列の発現を下方制御するのに適したアンチセンスの手法を設計し実施することができることである。
【0144】
PKCアイソフォームを下方制御することができる他の作用物質は、PKCアイソフォームをコードするmRNA転写物を特異的に切断することができるリボザイム分子である。リボザイムは、対象とするタンパク質をコードするmRNAの切断による遺伝子発現の配列特異的な抑制にますます使用されてきている[Welchら、Curr Opin Biotechnol.9:486−96(1998)]。任意の特定の標的RNAを切断するリボザイムを設計できる可能性があることによって、それが基礎研究にも治療への適用にも有益な手段となっている。治療の分野では、リボザイムを利用して、感染性疾患におけるウイルスRNA、癌における優性の癌遺伝子、及び遺伝子異常における特定の体細胞変異を標的化している[Welchら、Clin Diagn Virol.10:163−71(1998)]。最も注目すべきは、HIV患者に対するいくつかのリボザイム遺伝子治療のプロトコールがすでに第1相試験に入っていることである。さらに最近では、トランスジェニック動物の研究、遺伝子標的の検証及び経路の解明にリボザイムが使用されている。いくつかのリボザイムが、臨床試験の種々の段階にある。ANGIOZYMEは、ヒト臨床試験で試験される最初の化学合成リボザイムであった。ANGIOZYMEは、血管新生経路での鍵となる構成成分であるVEGF−r(血管内皮増殖因子受容体)の形成を特異的に抑制する。Ribozyme Pharmaceuticals,Inc.並びに他の企業が、動物モデルで抗血管新生治療の重要性を示している。C型肝炎ウイルス(HCV)RNAを選択的に破壊するように設計されたリボザイムであるHEPTAZYMEは、細胞培養アッセイでC型肝炎ウイルスRNAの減少に有効であることが明らかとなった(Ribozyme Pharmaceuticals,Incorporated、WEBホームページ)。
【0145】
好ましくは、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、ホルモン、増殖因子、アディポカイン、PKCδRACK及びGW9662からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる作用物質をさらに含む。適切なホルモンは、それだけに限らないが、インスリンでもよい。適切な増殖因子は、それだけに限らないが、インターロイキン−6(IL−6)、ケラチン生成細胞増殖因子(KFG)又は腫瘍壊死因子α(TNFα)でもよい。適切なアディポカインは、それだけに限らないが、アディプシン又はアディポネクチンでもよい。
【0146】
本発明を実施に移す間、本発明者らは、驚くべきことに且つ意外なことに、コポリマー1(ガラティラマーアセテート(glatiremar acetate))が、in vitro及びin vivoで創傷治癒を実質的に促進することができることを発見した(下記の実施例の項の実施例26を参照)。コポリマー1は、多発性硬化症及び中枢神経系異常の治療に使用する免疫調節剤として以前から知られている(米国特許第6,620,847号、第6,362,161号、第6,342,476号、第6,054,430号、第6,046,898号、第5,981,589号、及び第5,800,808号;米国特許出願第10/615865号、第10/666857号、及び第10/014477号)が、従来技術では、創傷治癒のプロセスを促進するコポリマー1の使用について記載又は示唆されていない。
【0147】
したがって、本発明の他の態様によれば、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、皮膚の創傷又は損傷に、治療有効量のコポリマー1を、好ましくは1〜500μg/mlの濃度で投与することにより、その方法を実施する。したがって、本発明のこの態様に従った方法を実施するための薬剤組成物は、有効成分である治療有効量のコポリマー1と、製剤上許容される担体とを含む。
【0148】
本発明の治療上/製剤上の有効成分は、創傷にそれ自体を投与することもでき、或いは、適切な担体及び/又は賦形剤と混合した薬剤組成物として投与することもできる。本発明の場面での使用に適した薬剤組成物は、意図された治療効果を達成するのに有効な量の有効成分が含まれるそれらの組成物を含む。
【0149】
本明細書において、「薬剤組成物」とは、旧来の薬剤、生理的に適切な担体や添加剤など他の化学物質の構成成分を含む、タンパク質、化学物質、核酸又は細胞のいずれかの、本明細書に記載の1種又は複数種の有効成分、或いはその生理的に許容される塩又はプロドラッグの製剤を指す。薬剤組成物の目的は、生物への化合物又は細胞の投与を容易にすることである。本発明の薬剤組成物は、当技術分野で周知のプロセスによって、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖剤作製、湿式粉砕、乳化、被包化、閉じ込め又は凍結乾燥のプロセスによって製造することができる。
【0150】
以下で、「生理的に適切な担体」及び「製剤上許容される担体」という語句は、同義的に使用され、生物に著しい刺激を起こさず、投与した結合体の生物学的な活性及び特性を消失させない担体又は希釈剤を指す。
【0151】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、有効成分のプロセス及び投与をさらに容易にするために薬剤組成物に添加する不活性な物質を指す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及び種々のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールがある。
【0152】
有効成分の製剤及び投与の技術は、「レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、Mack Publishing Co.,Easton,PA、最新版中に認めることができ、この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
本発明の目的での有効成分の投与について様々な経路が考えられ、以前に記載されているが、局所経路が好ましく、局所用の担体によって補助される。局所用の担体は、局所の有効成分投与に一般に適したものであり、当業者に知られている任意のそのような物質を含む。局所用の担体は、所望の形で、例えば液体又は非液体の担体、ローション剤、クリーム剤、ペースト剤、ゲル剤、粉末剤、軟膏剤、溶媒、液体の希釈剤、点滴剤などとして組成物が提供されるように選択され、天然に存在するもの又は合成のものに由来する物質からなるものでもよい。選択された担体が、局所製剤の活性な作用物質又は他の構成成分に有害な影響を及ぼさず、局所製剤のすべての構成成分に対して安定であることが明らかに必須である。本明細書において使用に適した局所用の担体の例には、水、アルコール及び他の非毒性有機溶媒、グリセリン、鉱油、シリコン、石油ゼリー、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン、蝋などがある。本明細書において好ましい製剤は、無色無臭の軟膏剤、液剤、ローション剤、クリーム剤及びゲル剤である。
【0154】
軟膏剤は、半固体の製剤であり、通常ワセリン又は他の石油誘導体を基礎とする。当業者には理解されるであろうが、使用される特定の軟膏基剤は、最適な有効成分送達をもたらし、好ましくは、その上他の所望の特性、例えば緩和性などをもたらすものである。他の担体又は賦形剤の場合と同様に、軟膏基剤は、不活性であり、安定であり、刺激性がなく、且つ感作性がないべきである。レミントン:製薬学の科学及び実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第19版(ペンシルバニア州、イーストン:Mack Publishing Co.,1995)の1399〜1404ページで説明されているように、軟膏基剤は油脂性基剤、乳化性基剤、乳剤性基剤、及び水溶性基剤の4種類に分類することができる。油脂性軟膏基剤には、例えば、植物油、動物から得られた脂肪、及び石油から得られた半個体の炭化水素が含まれる。乳化性軟膏基剤は、吸収性軟膏基剤としても知られ、水を少ししか又は全く含まず、それには、例えば、硫酸ヒドロキシステアリン、無水ラノリン及び親水性ワセリンが含まれる。乳剤性軟膏基剤は、油中水(W/O)型乳剤又は水中油(O/W)型乳剤であり、それには、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、ラノリン及びステアリン酸が含まれる。好ましい水溶性軟膏基剤は様々な分子量のポリエチレングリコールから調製される。また、さらなる情報を得るには、レミントン:製薬学の科学及び実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)を参照することができる。
【0155】
ローション剤は、摩擦なしで皮膚表面に塗布する製剤であり、典型的には、有効成分を含めた固体粒子が水又はアルコール基剤中に存在する液体又は半液体の製剤である。ローション剤は、通常固体の懸濁液剤であり、水中油型の液体の油性乳剤を含んでよい。より流動性のある組成物を塗布することが容易であるので、ローション剤は、本明細書において大きな身体領域の治療に好ましい製剤である。ローション剤中の不溶性物質は、細かく分割することが一般に必要である。ローション剤は、典型的には、より良好な分散をもたらす懸濁化剤、並びに皮膚と接触して有効成分を局在させ保持させるのに有用な化合物、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを含む。
【0156】
選択された有効成分を含むクリーム剤は、当技術分野で知られているように、水中油型又は油中水型の粘性のある液体又は半固体の乳剤である。クリーム基剤は、水で洗浄可能であり、油相、乳化剤及び水相を含む。油相は、時折「内部」相とも呼ばれ、一般にワセリン、及びセチルアルコールやステアリルアルコールなどの脂肪族アルコールからなり、水相は通常、必ずしもというわけではないが、体積で油相を上回り、一般に湿潤剤を含む。上記のレミントン(Remington)で説明されているように、クリーム製剤中の乳化剤は、一般に非イオン性、陰イオン性、陽イオン性又は両性の界面活性剤である。
【0157】
ゲル製剤は、頭皮への塗布に好ましい。局所有効成分製剤の分野の従事者には理解されるであろうが、ゲル剤は、半固体の懸濁液型の系統である。単相ゲル剤は、通常水性である担体の液体全体にわたって実質的に均一に分布する有機高分子を含むが、好ましくは、アルコールも含み、場合によっては油を含む。
【0158】
核酸の担体には、それだけに限らないが、標的リポソームを含めたリポソーム、核酸複合体化剤、ウイルス被覆などが含まれる。しかし、むき出しの核酸での形質転換を使用することもできる。
【0159】
当業者に知られている様々な添加剤が、本発明の局所製剤に含まれてもよい。例えば、溶媒を使用して、特定の有効成分物質を可溶化することができる。他の任意選択の添加剤には、皮膚浸透促進剤、乳白剤、抗酸化剤、ゲル化剤、増粘剤、安定化剤などがある。
【0160】
上記ですでに言及してきたように、本発明に従って創傷を治療するための局所製剤は、そのような創傷の治療に伝統的に用いられる、薬剤として活性な他の作用物質又は成分を含んでもよい。これには、シクロスポリンなどの免疫抑制剤、メトトレキセートなどの代謝拮抗剤、コルチコステロイド、ビタミンD及びビタミンDアナログ、ビタミンA又はエトレチナートなどのそのアナログ、タール、コールタール、カデ油などの鎮痒薬及び角質形成剤、サリチル酸などの角質溶解剤、緩和剤、潤滑剤、殺菌剤ジトラノール(アントラリンとしても知られている)などの防腐剤及び消毒剤、ソラレンやメトキサレンなどの光増感剤、並びにUV照射がある。抗菌剤、抗真菌剤、抗生物質や抗炎症剤などの他の作用物質を添加することもできる。酸素化(高酸素圧)による治療を同時に使用することもできる。
【0161】
本発明の局所組成物は、従来の皮膚型の貼布又は物品を用いて皮膚に送達することもでき、有効成分の組成物は、皮膚に貼り付ける薬剤送達装置として働く積層状の構造内に含まれる。そのような構造では、有効成分の組成物は、上部の裏打ち層の下にある層又は「貯蔵器」中に含まれる。その積層状の構造は、単一の貯蔵器を含んでもよく、或いは複数の貯蔵器を含んでもよい。一実施形態では、貯蔵器は、製剤上許容されるコンタクト接着物質のポリマー基質を含み、それは、有効成分の送達の間、その系を皮膚に貼り付けるのに働く。適切な皮膚のコンタクト接着物質の例には、それだけに限らないが、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタンなどがある。選択される特定のポリマー接着物質は、特定の有効成分、賦形剤などに依存し、すなわち、接着物質は、有効成分を含む組成物のすべての構成成分と適合しなければならない。或いは、有効成分を含む貯蔵器及び皮膚のコンタクト接着物質は別々の異なる層として存在し、接触物質が貯蔵器の下にあり、この場合、その貯蔵器は上記に記載のポリマー基質でもよく、或いは液体又はヒドロゲルの貯蔵器でもよく、或いは一部の他の形をとってもよい。
【0162】
その装置の上部表面として働くこれらの積層の裏打ち層は、積層状の構造の主要な構造成分として機能し、その装置に大きな柔軟性をもたらす。裏打ち物質に選択する物質は、それが有効成分及び有効成分を含む組成物の任意の他の構成成分に対して実質的に不浸透性であり、それによってその装置の上部表面を介するどんな構成成分の喪失も防止されるように選択されるべきである。裏打ち層は、皮膚が有効成分送達の間に水和されることが望ましいかどうかに応じて、閉鎖性でもよく或いは非閉鎖性でもよい。好ましくは、裏打ち層は、好ましくは柔軟なエラストマー物質のシート又はフィルムから作製される。裏打ち層に適しているポリマーの例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエステルがある。
【0163】
貯蔵中及び使用前、その積層状の構造は、剥離ライナーを含む。使用直前に、この層を装置から取り除いて、その系を皮膚に貼り付けることができるように、その基底表面の有効成分の貯蔵器又は別々のコンタクト接着物質の層をさらす。剥離ライナーは、有効成分/賦形剤非浸透性の物質から作製されるべきである。
【0164】
当技術分野で知られている従来の技術を用いて、例えば裏打ち層上で接着物質、有効成分及び賦形剤の液体混合物を鋳造し、その後剥離ライナーを積層化することによって、そのような装置を製作することができる。同様に、接着混合物を剥離ライナー上に鋳造し、その後裏打ち層を積層化することができる。或いは、有効成分又は賦形剤の不在下で有効成分の貯蔵器を調製し、次いで有効成分/賦形剤の混合物中にそれを「浸す」ことによって充填することもできる。
【0165】
本発明の局所製剤の場合と同様に、この積層系の有効成分の貯蔵器内に含まれる有効成分の組成物は、いくつかの構成成分を含んでもよい。ある場合では、有効成分を「純粋なまま(neat)」、すなわちさらなる液体の不在下で送達することができる。しかし、ほとんどの場合では、製剤上許容される適切な賦形剤、典型的には溶媒又はゲル中で有効成分を溶解、分散又は懸濁する。存在してもよい他の構成成分には、保存剤、安定化剤、界面活性剤などがある。
【0166】
本明細書に記載した薬剤組成物はまた、適切な固相又はゲル相の担体又は賦形剤を含んでもよい。そのような担体又は賦形剤の例としては、それだけに限らないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコールなどのポリマーがある。
【0167】
投与は、苦痛の型、重症度及び症状発現に依存し、有効成分に対する対象の反応性、並びに使用する剤形、特定の結合体の効果、及び使用する投与経路に依存する。当業者は、最適な投与量、投与法及び反復率を容易に決定することができる。患者の状態を考慮して、個々の医師が的確な製剤、投与経路及び投与量を選択することができる。(例えば、Finglら、1975、「治療の薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」、第1章1ページを参照)。
【0168】
したがって、治療する状態の重症度及び反応性に応じて、投与は単回投与又は反復投与でもよく、治療の過程は数日から数週間、或いは治癒が達成され又は皮膚損傷の縮小が実現されるまで継続する。
【0169】
ある態様では、本発明は、細胞の形質転換及び遺伝子ノックイン型の形質転換を使用するin vivoの遺伝子治療、及びex vivoの(細胞の)遺伝子治療の技術を利用する。本明細書において、遺伝子治療とは、対象とする遺伝物質(例えば、DNA又はRNA)を宿主に導入して、遺伝性又は後天性の疾患又は状態又は表現型を治療又は予防することを指す。対象とする遺伝物質は、in vivoでの産生が所望される産物(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、機能性RNA、アンチセンスRNA)をコードする。例えば、対象とする遺伝物質は、治療上の価値があるホルモン、受容体、酵素、ポリペプチド又はペプチドをコードするものでもよい。総説については、一般に、教科書「遺伝子治療(Gene Therapy)」(薬理学の進歩40(Advanced in Pharmacology 40)、Academic Press、1997)を参照されたい。
【0170】
(1)ex vivoの遺伝子治療、及び(ii)in vivoの遺伝子治療という遺伝子治療に対する2つの基本的な手法が発展してきた。ex vivoの遺伝子治療では、細胞は、患者から取り出し、又は他の供給源に由来し、培養している間にそれをin vitroで治療する。一般に、適当な遺伝子送達媒体/方法(トランスフェクション、形質導入、相同組換えなど)、及び必要である場合には発現系を介して機能的な置換遺伝子を細胞内に導入し、次いで改変した細胞を培養下で増殖させ、宿主/患者に戻す。この遺伝的に再移植された細胞は、トランスフェクトされた遺伝物質をin situで発現することが示されている。
【0171】
in vivoの遺伝子治療では、標的細胞は対象から取り出さず、むしろ、導入する遺伝物質を、レシピエント内にあるレシピエント生物の細胞内にin situで導入する。代替の実施形態では、宿主遺伝子に欠陥がある場合、遺伝子をin situで修復する(Culver、1998、(抄録)アンチセンスDNA及びRNAを基礎とする治療(Antisense DNA & RNA based therapeutics)、1998年2月、カリフォルニア州コロナド)。この遺伝的に変化した細胞は、トランスフェクトされた遺伝物質をin situで発現することが示されている。
【0172】
遺伝子発現用媒体は、異種の核酸を宿主細胞に送達/導入することができる。発現用媒体は、当技術分野で知られているように、細胞選択的な形で核酸の標的導入、発現及び転写を調節するエレメントを含んでよい。遺伝子の5’UTR及び/又は3’UTRを、発現用媒体の5’UTR及び/又は3’UTRでしばしば置換できることに留意されたい。したがって、本明細書において、発現用媒体は、必要に応じて、導入する実際の遺伝子の5’UTR及び/又は3’UTRを含まず、特定のアミノ酸コード領域だけを含んでもよい。
【0173】
発現用媒体は、異種の物質の転写を調節するプロモーターを含んでよく、それは、選択的な転写を可能にする構成的な又は誘導性のプロモーターでもよい。場合によっては、必要な転写レベルを得るのに必要となることがあるエンハンサーを含んでもよい。エンハンサーは、一般に任意の非翻訳DNA配列であり、コード配列に隣接して(シス型に)働いて、プロモーターによって指示された基底の転写レベルを変化させる。発現用媒体はまた、本明細書で下記に記載する選択遺伝子を含んでもよい。
【0174】
当技術分野内で知られている様々な方法のいずれかによって、ベクターを細胞又は組織内に導入することができる。そのような方法は、一般に、Sambrookら、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、Cold Springs Harbor Laboratory、ニューヨーク、1989、1992;Ausubelら、分子生物学における現在のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、John Wiley and Sons、メリーランド州ボルチモア、1989;Changら、体細胞遺伝子治療(Somatic Gene Therapy)、CRC Press、ミシガン州アナーバー(Ann Arbor)、1995;Vegaら、遺伝子ターゲティング(Gene Targeting)、CRC Press、ミシガン州アナーバー(995);ベクター:分子クローニングベクター及びその使用についての調査(Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses)、Butterworths、マサチューセッツ州ボストン、1988;並びにGilboaら(Biotechniques 4(6):504−512,1986)の記載に認めることができ、それには、例えば、安定な又は一過性のトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション及び組換えウイルスベクターでの感染が含まれる。さらに、中枢神経系に関与するベクターについては米国特許第4,866,042号を、また正負の選択方法については米国特許第5,464,764号及び第5,487,992号も参照されたい。
【0175】
感染による核酸の導入は、列挙した他の方法を上回るいくつかの利点をもたらす。その感染する性質により、高い効率を得ることができる。さらに、ウイルスは非常に特殊化しており、通常は特定の細胞型に感染し増殖する。したがって、その天然の特異性を用いて、in vivoで或いは組織内で又は細胞の混合培養物内で、ベクターに特定の細胞型を標的とさせることができる。特異的な受容体又はリガンドでウイルスベクターを改変して、受容体が媒介する事象を介して標的特異性を変化させることもできる。
【0176】
組換え配列を導入し発現させるDNAウイルスベクターの特定の例は、アデノウイルス由来ベクターAdenop53TKである。このベクターは、正又は負の選択用のヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(TK)遺伝子、及び所望の組換え配列の発現カセットを発現する。このベクターを使用して、アデノウイルス受容体を有する細胞を感染させることができ、それは上皮由来のほとんどの組織、並びに他の組織を含む。このベクター並びに類似した所望の機能を示す他のベクターを使用して、細胞の混合集団を治療することができ、それには、例えば、in vitro又はex vivoの細胞培養物、組織又はヒト対象が含まれる可能性がある。
【0177】
また、特定の細胞型に対して発現を制限する特徴を含んでもよい。そのような特徴には、例えば、所望の細胞型に特異的なプロモーター及び制御エレメントがある。
【0178】
さらに、組換えウイルスベクターは、それが側方感染や標的特異性などの利点をもたらすので、所望の核酸のin vivo発現に有用である。側方感染は、例えばレトロウイルスの生活環に固有であり、単一の感染細胞が、多数の後代ウイルス粒子を産生し、それが出芽し、隣接する細胞に感染するプロセスである。その結果、広い領域が急速に感染し、そのほとんどが、元のウイルス粒子が最初に感染したものではない。このことは、感染性作用物質が娘後代細胞を介してのみ広がる垂直型の感染と対照的である。側方に広がることができないウイルスベクターを作製することもできる。この特徴は、所望の目的が、限局した数の標的細胞のみへと特定の遺伝子を導入することである場合に有用である可能性がある。
【0179】
上記に記載のように、ウイルスは、非常に特殊化した感染性作用物質であり、多くの場合、宿主の防御機構を回避するように進化してきた。通常、ウイルスは特定の細胞型に感染し増殖する。ウイルスベクターの標的特異性は、その天然の特異性を利用して、所定の細胞型を特異的に標的とするものであり、それによって感染細胞中に組換え遺伝子が導入される。本発明の方法及び組成物に使用されるベクターは、標的とする所望の細胞型に依存し、当業者に知られている。
【0180】
レトロウイルスベクターを構築して、感染性粒子として機能させ、又は最初の1回限りの感染を起こすことができる。前者の場合では、新たなウイルスタンパク質及びRNAを合成するための必要な遺伝子すべて、制御配列及びパッケージングシグナルを維持するようにウイルスのゲノムを改変する。これらの分子が合成された後、宿主細胞は、新たなウイルス粒子中にRNAを詰め込み、この粒子はさらなる感染を起こすことができる。ベクターのゲノムはまた、所望の組換え遺伝子をコードし発現するように工学的に作製する。非感染性のウイルスベクターの場合では、ベクターのゲノムは通常、RNAをウイルス粒子中に被包化するのに必要なウイルスのパッケージングシグナルを破壊する突然変異を受けている。そのようなシグナルがないと、形成されるどんな粒子もゲノムを含まず、したがって、続いての感染に進むことができない。特定の型のベクターは、意図された適用に依存する。実際のベクターはまた、当技術分野内で知られ容易に利用可能であり、又は周知の方法を用いて当業者により構築することができる。
【0181】
組換えベクターは、いくつかの方法で投与することができる。ウイルスベクターを使用する場合、例えば、その手順は、その標的特異性を利用することができ、その結果、疾患部位に局所投与する必要はない。しかし、局所投与によって、より速く有効に治療することができる。
【0182】
ノックインの手順で使用する相同組換えを含むin vivo及びex vivoでの細胞の形質転換の手順は、例えば、米国特許第5,487,992号、第5,464,764号、第5,387,742号、第5,360,735号、第5,347,075号、第5,298,422号、第5,288,846号、第5,221,778号、第5,175,385号、第5,175,384号、第5,175,383号、第4,736,866号、並びにBurke及びOlson、Methods in Enzymology,194:251−270 1991;Capecchi、Science 244:1288−1292 1989;Daviesら、Nucleic Acids Research,20(11)2693−2698 1992;Dickinsonら、Human Molecular Genetics,2(8):1299−1302 1993;Duff及びLincoln、「ヒトAPP遺伝子を含む酵母人工染色体への病原性突然変異の挿入及びES細胞での発現(Insertion of a pathogenic mutation into a yeast artificial chromosome containing the human APP gene and expression in ES cells)」、アルツハイマー病及びその関連疾患における研究の進歩(Research Advances in Alzheimer’s Disease and Related Disorders)、1995;Huxleyら、Genomics,9:742−750 1991;Jakobovitsら、Nature,362:255−261 1993;Lambら、Nature Genetics,5:22−29 1993;Pearson及びChoi、Proc.Natl.Acad.Sci.米国 1993.90:10578−82;Rothstein、Methods in Enzymology,194:281−301 1991;Schedlら、Nature,362:258−261 1993;Straussら、Science,259:1904−1907 1993で説明されている。さらに、特許出願WO94/23049、WO93/14200、WO94/06908、WO94/28123も情報を提供するものである。
【0183】
本発明のさらなる対象、利点、及び新たな特徴は、以下の実施例の検討後、当業者に明らかとなるであろうが、その実施例は限定を意図するものではない。さらに、上記に記載し、下記の特許請求の範囲の項で請求する本発明の様々な実施形態及び態様はそれぞれ、以下の実施例中に実験上の支持を認めるものである。
【実施例】
【0184】
以下の実施例を参照して、上記の説明とともに、非限定的な様式で本発明を例証する。
【0185】
一般的に、本明細書において使用される命名法及び本発明において利用される実験室手順は、分子的技術、生化学的技術、微生物学的技術、及び組換えDNA技術を含む。このような技術は、文献中に徹底的に説明されている。例えば、以下を参照のこと:「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」Sambrookら(1989);「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」第I巻〜第III巻、Ausubel,R.M.ら編(1994);Ausubelら、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、John Wiley and Sons、ボルチモア、メリーランド州(1989);Perbal、「分子クローニングの実用ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)、John Wiley & Sons、ニューヨーク(1988);Watsonら、「組換えDNA(Recombinant DNA)」Scientific American Books、ニューヨーク;Birrenら(編)「ゲノム分析:実験室マニュアルシリーズ(Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、第1巻〜第4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(1998);米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号及び同第5,272,057号に記載されている方法論;「細胞生物学:実験室ハンドブック(Cell Biology:A Laboratory Handbook)」第I巻〜第III巻、Cellis,J.E.編(1994);「動物細胞の培養−基礎技術のマニュアル(Culture of Animal Cells−A Manual of Basic Technique)」、Freshney、Wiley−Liss、ニューヨーク(1994)、第3版;「免疫学の最新プロトコール(Current Protocols in Immunology)」第I巻〜第III巻 Coligan J.E.編(1994);Stitesら(編)「基礎的及び臨床的免疫学(Basic and Clinical Immunology)」(第8版)、Appleton & Lange、ノーウォーク、コネチカット州(1994);Mishell and Shiigi(編)「細胞免疫学における精選方法(Selected Methods in Cellular Immunology)」、W.H.Freeman and Co.、ニューヨーク(1980);利用可能なイムノアッセイは特許及び科学文献に広範に記載されており、例えば、以下を参照のこと:米国特許第3,791,932号;同第3,839,153号;同第3,850,752号;同第3,850,578号;同第3,853,987号;同第3,867,517号;同第3,879,262号;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;同第4,098,876号;同第4,879,219号;同第5,011,771号及び同第5,281,521号;「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」Gait,M.J.編(1984);「核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)」Hames,B.D.及びHiggins S.J.編(1985);「転写及び翻訳(Transcription and Translation)」Hames,B.D.及びHiggins S.J.編(1984);「動物細胞培養(Animal Cell Culture)Freshney,R.I.編(1986);「固定化細胞及び酵素(Immobilized Cells and Enzymes)」IRL Press、(1986);分子クローニングの実用ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)」Perbal,B.,(1984)及び「酵素学の方法(Methods in Enzymology)」第1〜317巻、Academic Press;「PCRプロトコール:方法及び応用のガイド(PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications)」、Academic Press、サンジエゴ、カリフォルニア州(1990);Marshakら「タンパク質精製及び特徴付けのストラテジー:研究課程マニュアル(Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual)」CSHL Press(1996);これらのすべては、あたかも全体が本明細書に記載されるかのように参照として援用される。他の一般的な参考文献はこの文献を通して提供される。そこに記載される手順は当該分野において周知であると考えられており、読者の便宜のために提供される。そこに含まれるすべての情報は、参照として本明細書に援用される。
【0186】
材料及び実験方法
材料:組織培養培地及び血清は生物学関連企業(Beit HaEmek、イスラエル)より購入した。増強化学発光(Enhanced Chemical Luminescence)(ECL)はBioRad(イスラエル)から購入したキットを用いて行った。モノクローナル抗p−tyr抗体は、Upstate Biotechnology Inc.(Lake Placid、ニューヨーク州、米国)から購入した。PKCアイソフォームに対するポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、Santa Cruz(カリフォルニア州、米国)及びTransduction Laboratories(Lexington、ケンタッキー州)から購入した。α6ラット抗マウスmAb(GoH3)は、Pharmingen(サンジエゴ、カリフォルニア州)から購入した。α6A細胞質ドメインに対する抗体6844は、V.Quaranta博士(Scripps Research Institute、La Jolla、カリフォルニア州)より恵与された。マウスβ4の細胞外ドメインに対して指向されるラットmAb(346−11A)は、S.J.Kennel博士(Oak Ridge National Laboratory、Oak Ridge、TN)から恵与された。ホスホチロシンに対するラットmAbはSigma(セントルイス、ミズーリ州)から購入し、ウサギ抗ホスホセリンはZymed(サンフランシスコ、カリフォルニア州)から購入した。西洋わさびペルオキシダーゼ−抗ウサギ及び抗マウスIgGはBio−Rad(イスラエル)から入手した。ロイペプチン、アプロチニン、PMSF、DTT、Na−オルトバナジウム酸、及びペプスタチンは、Sigma Chemicals(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。インスリン(humulinR−組換えヒトインスリン)はEli Lilly フランス SA(Fergersheim、フランス)から購入した。IGF1はCytolab(イスラエル)から恵与された。ケラチン14抗体はBabco−Convance(Richmond、カリフォルニア州)から購入した。BDGF−BBはR&D systems(ミネアポリス)から購入した。PKCα偽基質(ミリストイル化)はCalbinochem(サンジエゴ、カリフォルニア州)から購入した。
【0187】
マウスケラチン生成細胞の単離及び培養:初代ケラチン生成細胞を、以前に記載されたように(18)新生皮膚から単離した。ケラチン生成細胞は、ウシ胎仔血清で処理された、8%Chelex(Chelex−100、BioRad)を含むイーグル最小必須培地(EMEM)中で培養した。増殖性基底細胞表現型を維持するために、最終的なCa2+濃度は0.05mMに調整した。実験は、プレーティングの5〜7日後に実行した。
【0188】
細胞抽出物の調製及びウェスタンブロッティング分析:粗膜画分については、10μg/ml アプロチニン、10μg/ml ロイペプチン、2μg/ml ペプスタチン、1mM PMSF、10mM EDTA、200μM NaVO4、及び10mM NaFを含むPBS中に、細胞を擦り落とすことによって、全体の細胞溶解物を調製した。均質化及び4回の凍結/融解サイクルの後で、溶解物を4℃、20分間、最大速度で、微量遠心機で遠心分離した。可溶性細胞質ゾルタンパク質画分を含む上清を別のチューブに移した。ペレットを、プロテアーゼ及びホスファターゼの阻害剤とともに1% Triton X−100を含む250μlPBS中に再懸濁し、4℃で30分間インキュベートし、4℃で最大速度で微量遠心機で遠心分離した。上清は膜画分を含む。タンパク質濃度を、改変ローリーアッセイ(Bio−Rad DCタンパク質アッセイキット)を使用して測定した。細胞タンパク質画分のウェスタンブロット分析を記載されるように(6)実行した。
【0189】
免疫沈殿のための細胞溶解物の調製:ケラチン生成細胞を含む細胞ディッシュを、Ca2+/Mg2+を含まないPBSで洗浄した。細胞を、プロテアーゼ及びホスファターゼの阻害剤のカクテル(20μg/ml ロイペプチン;10μg/ml アプロチニン;0.1mM PMSF;1mM DTT;200μM オルトバナジウム酸;2μg/ml ペプスタチン)を含むRIPA緩衝液(50mM Tris−HCl pH 7.4;150mM NaCl;1mM EDTA;10mM NaF;1% Triton x100;0.1% SDS、1% デオキシコール酸ナトリウム)中で機械的に脱着した。調製物を、4℃で、最大速度で20分間、微量遠心機で遠心分離した。上清を免疫沈殿のために使用した。
【0190】
免疫沈殿:溶解物は、300μgの細胞溶解物を25μlのタンパク質A/Gセファロース(Santa Cruz、カリフォルニア州、米国)と混合することによってあらかじめ清澄化し、懸濁物を4℃で30分間連続して回転させた。次いで、調製物を最大速度で10分間、4℃で遠心分離し、30μlのA/Gセファロースを、個々の抗原に対する特異的ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体(希釈1:100)とともに上清に加えた。サンプルを4℃で一晩回転させた。次いで、この懸濁物を最大速度で10分間、4℃で遠心分離し、ペレットをRIPA緩衝液で洗浄した。再度、懸濁物を15,000×gで遠心分離し(4℃で10分間)、TBST中で4回洗浄した。サンプル緩衝液(0.5M Tris−HCl pH 6.8;10% SDS;10% グリセロール;4% 2β−メルカプトエタノール;0.05% ブロモフェノールブルー)を加え、サンプルを5分間煮沸し、次いでSDS−PAGEに供した。
【0191】
接着アッセイ:24ウェルペトリプレート(Greiner)を、PBS中20μg/mlのマトリックスタンパク質で、1時間、37℃にてコートした(250μl/ウェル)。インキュベーション後、プレートを洗浄し、0.1% BSAで30分間、室温にてインキュベートして、非特異的結合をブロックした。ケラチン生成細胞培養物を、0.25%トリプシンで手短にトリプシン処理し、脱着後、細胞を再懸濁し、ケラチン生成細胞(1×106)をコートされたウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。非接着細胞を除去し、ウェルをPBSで2回すすぎ、残存した細胞を1M NaOH中で抽出した。細胞計数は、改変ローリーアッセイ(Bio−Rad DCタンパク質アッセイキット)を使用して、タンパク質濃度によって決定した。結果を、未処理対照に対するパーセンテージによって計算した。
【0192】
免疫蛍光:初代ケラチン生成細胞を、ラミニン5コートしたガラススライド上にプレートした。2日齢ケラチン生成細胞を、1時間PKCアデノウイルスに感染させ、PBSで2回洗浄し、低Ca2+MEM中で培養物中に維持した。感染の24時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒド中に30分間固定し、続いて0.2% Tritonで5分間透過化処理を行った。分析のために、対照及びPKC感染したケラチン生成細胞をPBSですすぎ、PBS中の1%BSAに希釈したPKC抗体(Santa Cruz)とともに4℃で一晩インキュベートした。インキュベート後、スライドをPBSで2回10分間洗浄し、ビオチン化抗ウサギ二次抗体と20分間インキュベートし、PBS中で2回洗浄し、ストレプトアビジン−FITCと20分間インキュベートした。α6β4染色の分析のために、ガラススライドを、氷上で5分間、0.2% Triton X−100で処理し、続いてメタノール中で5分間固定化を行った。このスライドを抗α6抗体又は抗β4抗体とともに一晩インキュベートし、続いて、それぞれビオチン化抗ラット二次抗体との20分間のインキュベーションを行い、PBS中で2回洗浄し、ストレプトアビジン−FITCと20分間インキュベートした。PBS中での2回の洗浄後、スライドを、1%のp−フェニレンジアミン(Sigma)を含むグリセロール緩衝液を用いてマウントし、蛍光をレーザー走査共焦点像顕微鏡(MRC1024、Bio−Rad、英国)によって調べた。
【0193】
アデノウイルス構築物:組換えアデノウイルスベクターを、以前に記載されたように構築した(19)。マウスPKCの顕性不活性変異体を、ATP結合部位におけるリジン残基のアラニンとの置換によって生成した。変異体cDNAを、SRD発現ベクターからEcoRIで切断し、pAxCA1wコスミドカセットに連結して、Axベクターを構築した。遺伝子の顕性不活性活性は、その自己リン酸化の抑止によって実証された。
【0194】
PKCアイソフォーム遺伝子を用いるケラチン生成細胞の形質導入:培養培地を吸引除去し、ケラチン生成細胞培養物を、PKC組換えアデノウイルスを含むウイルス上清で1時間感染させた。次いで、培養物を、MEMで2回洗浄し、再度培地を与えた。感染の10時間後、細胞を、血清を含まない低Ca2+含有MEMに24時間移した。対照及びインスリン処理培養又はIGF1処理培養からのケラチン生成細胞を、増殖アッセイ、86Rb取り込みのために使用し、又は免疫沈殿、免疫蛍光、及びウェスタンブロッティングのために、記載されるように抽出し、並びに細胞質ゾル画分及び膜画分に分画した。
【0195】
PKC活性:特異的PKC活性は、適切な処理後のケラチン生成細胞培養物からの新鮮に調製した免疫沈殿物中で測定した。これらの溶解物は、NaFを含まないRIPA緩衝液中で調製した。活性は、SigmaTECTタンパク質キナーゼCアッセイシステム(Promega、Madison、ウィスコンシン州、米国)の使用により、製造業者の指示書に従って測定した。PKCα偽基質をこれらの研究における基質として使用した。
【0196】
細胞増殖:細胞増殖は、24ウェルプレートにおいて、[3H]チミジンの取り込みによって測定した。細胞を、[3H]チミジン(1μCi/ml)で一晩パルスした。インキュベーション後、細胞をPBSで5回洗浄し、5% TCAを各ウェルに30分間加えた。溶液を除去し、細胞を1% Triton X−100中で可溶化した。細胞に取り込まれた標識されたチミジンを、Tricarb液体シンチレーションカウンターの3Hウィンドウで計数した。
【0197】
Na+/K+ポンプ活性:Na+/K+ポンプ活性を、2mM RbCl及び2.5μCiの86Rbを含む、K+を含まない1mlのPBS中の全細胞による、86Rbのウアバイン感受性の取り込みの測定によって決定した。15分後、Rb取り込みを培地の吸引除去によって終結させ、その後、細胞をK+を含まない4℃の冷PBS中で迅速に4回すすぎ、1% Triton X−100中で可溶化した。ディッシュからの細胞を、シンチレーションバイアル中の3ml H2Oに加えた。サンプルを、Tricarb液体シンチレーションカウンターの3Hウィンドウで計数した。Na+/K+ポンプ活性に特異的に関連するRb取り込みを、10−4Mウアバインの存在下で蓄積したcpmの、阻害剤の非存在下で測定した取り込みからの減算によって決定した。
【0198】
PKCイムノキナーゼアッセイ:精製及び標準化されたPKCアイソザイムは、P.Blumberg博士(NCI、NIH、U.S.)及びMarcello G.Kazanietz博士(University of Pennsylvania、School of Medicine)から恵与された。初代ケラチン生成細胞を、500μlの1% Triton溶解緩衝液(1×PBS中の1% Triton−X 100、10μg/ml アプロチニン及びロイペプチン、2μg/ml ペプスタチン、1mM PMSF、1mM EDTA、200μM Na2VO4、10mM NaF)中で収集した。溶解物を4℃で30分間インキュベートし、16,000×gで30分間、4℃にて遠心分離した。上清を新鮮なチューブに移した。細胞溶解物の免疫沈殿を、5μg/サンプルの抗α6/GoH3(PharMingen)及び30μl/サンプルのタンパク質A/G−Plusアガローススラリー(Santa Cruz)を用いて4℃で一晩実行した。ビーズを、RIPA緩衝液で1回、及び50mM Tris−HCl pH 7.5で2回洗浄した。35μlの反応緩衝液(1mM CaCl2、20mM MgCl2、50mM Tris−HCl pH 7.5)を各アッセイに加えた。各アッセイについて、DMSO又は10mM TPAのいずれかを含む5.5μl/アッセイのリン脂質ベシクルの懸濁物を、標準化量の特異的PKCアイソザイムとともにスラリーに加えた。反応を、10μl/アッセイの125mM ATP(1.25μCi/アッセイ[γ−32P]ATP、Amersham)を加えることによって開始し、30℃で10分間継続させた。次いで、ビーズをRIPA緩衝液で2回洗浄した。30μl/サンプルのタンパク質負荷色素(3×Laemmli、5% SDS)を加え、サンプルをウォーターバス中で5分間煮沸した。タンパク質を、8.5%ゲル上のSDS−PAGEによって分離し、Protranメンブレン(Schleicher & Schuell)に転写し、オートラジオグラフィーによって可視化した。ヒストンのリン酸化及びPKC基質ペプチドのリン酸化を、PKC活性のための対照として使用した。
【0199】
実験結果
(実施例1)
組換えアデノウイルスベクターを利用するPKCアイソフォームの効果的な過剰発現
組換えβ−ガラクトシダーゼアデノウイルスを利用することによって、高い感染割合が達成され、培養されたケラチン生成細胞集団の90%より多くが組換えタンパク質を発現した。組換えβ−ガラクトシダーゼアデノウイルス感染は、細胞の生存度又は細胞増殖に影響を与えなかった。さらに、β−ガラクトシダーゼ発現は培養の2週間まで持続され、次の実験における対照感染として使用した。組換えPKCアデノウイルスが、タンパク質発現を誘導し、及びマウスケラチン生成細胞培養において正しく活性化される効率を調べた。図1におけるウェスタンブロッティングによって見られるように、組換えPKCアデノウイルス構築物を用いる1時間感染の24時間後、特異的PKCタンパク質発現の劇的な増加が、特異的アイソフォームの内因性の発現レベルよりも5倍から10倍上で観察された。組換えタンパク質は、感染後早くも6時間で、感染したケラチン生成細胞培養物において検出可能であり、ピーク発現は24時間までに得られた。タンパク質発現は、培養期間の全体を通して持続した(14日まで)。
【0200】
(実施例2)
過剰発現されたPKCアイソフォームはPKCアクチベーターによって活性化される
PKCアイソフォームの組換えタンパク質は、典型的にはPKCアクチベーターに応答した。図2において見られるように、ブリオスタチン1を用いる処理は、PKCαタンパク質及びPKCδタンパク質の膜画分へのトランスロケーションを誘導し、PKCη及びPKCζのアイソフォームに対してはより低い効果を有した。このことは、内因性アイソフォームを用いて得られた結果と同様であり、これらのコファクター要求性から予測される通りである。
【0201】
(実施例3)
過剰発現されたPKCアイソフォームはそれらのネイティブ型で活性である
感染後早くとも18時間で、PKCキナーゼアッセイは、独特なPKCアイソフォームの免疫沈殿物が、PKCアクチベーターによる刺激のさらなる必要性を伴うことなく、酵素的に活性であることを明らかにした(図3)。
【0202】
(実施例4)
特異的PKCアイソフォームの過剰発現は初代ケラチン生成細胞において独特な形態学的変化を誘導する
利用されたPKCアデノウイルス構築物の各々は、初代ケラチン生成細胞において特異的形態学的変化を誘導した(図4)。非感染初代マウスケラチン生成細胞培養物及びβ−ガラクトシダーゼ感染細胞は、培養中に、増殖性の基底細胞の特徴に典型的である立方体形態を提示した。アイソフォーム特異性に関わりなく、ケラチン生成細胞を過剰発現するすべてのPKCは、細胞の伸長及びニューロン様突出の出現を含む、PKC活性化に典型的な形態学的変化を示した。しかし、PKCアイソフォームの各々1つは、ケラチン生成細胞形態に対して特徴的な効果を有した。PKCα感染は、典型的な平板化された形態を有する、ケラチン生成細胞の層状化を誘導した。対照的に、PKCηは、迅速な速度で増殖する基底細胞の形態学的特徴を提示する、細胞の濃密なクローンとして見られた(図4)。2つのアイソフォームは、細胞マトリックス並びに細胞−細胞結合をもたらすように見られた。PKCδ感染の18〜48時間後、細胞は、ニューロン様突出を有して、細長く且つ伸長して見られた。これに続いて、徐々に培養ディッシュからの細胞の喪失が起こり、これは培養期間の過程で漸次的に起こった。過剰発現PKCζケラチン生成細胞は、円形のケラチン生成細胞クラスターとして見られ、これは、培養ディッシュにゆるく結合しており、感染の数日後に次第に失われた。
【0203】
(実施例5)
感染した初代ケラチン生成細胞中の過剰発現PKCアイソフォームの独特の局在化
独特の形態学的変化は、免疫蛍光分析によって特徴付けられるような独特な細胞局在化と関連した。増殖しているケラチン生成細胞において、PKCα、PKCδ、及びPKCζは、細胞質並びに原形質膜において発現された。内因性タンパク質発現と同様に、PKCηアイソフォームは、ケラチン生成細胞の核周辺領域に局在した(図5)。分布の劇的な変化がPKCδ及びPKCζに関連し、ここでは、細胞脱着に続いて、PKCアイソフォーム発現が、細胞膜に優先的に局在した(図5)。
【0204】
(実施例6)
PKCアイソフォームによるα6β4発現の調節
実験結果
増殖性基底層の基底表現型の特徴であるタンパク質を調節する、特異的PKCアイソフォームの能力を試験した。α6β4インテグリンの下方制御がケラチン生成細胞分化の間に起こる初期事象の1つであるので、種々のPKCアイソフォームがα6β4インテグリン(基底層の半接着斑に特異的に局在するインテグリン)の発現を調節する能力を評価した。図6において提示されるイムノブロットにおいて見られることができるように、PKCδ及びPKCζアイソフォームのみが、対照ケラチン生成細胞のα6β4インテグリンサブユニットレベルとの比較において、α6β4発現を下方制御することが可能であった。同時に、α3又はβ1インテグリンサブユニットレベルは減少しなかった。対照的に、一貫して、PKCαアイソフォームの過剰発現は、対照発現よりも2〜3倍上に増加したα6β4レベルを生じた(図6)。PKCηの過剰発現は、α6β4タンパク質発現に影響を与えなかった。いくつかの特徴が分化に対する細胞の関与に付随しており、これはα6β4タンパク質の下方制御に続き、増殖速度の減少、新規なケラチンの合成、細胞脱着、及び基底膜成分への接着の喪失が含まれる。ケラチン発現の変化は、異なるPKCアイソフォームの過剰発現によっては観察されなかった。これには、基底の増殖しているケラチン生成細胞の特徴であるK5及びK14の発現、並びに棘層分化の初期段階の特徴であるK1及びK10の発現が含まれた。さらに、増殖速度が3H−チミジン取り込みによって分析された場合、α6β4発現と増殖能力の喪失の間の相関は存在しなかった。
【0205】
(実施例7)
過剰発現したPKCη及びPKCδはインビトロでケラチン生成細胞増殖を誘導する
PKCη及びPKCδの過剰発現は、ケラチン生成細胞増殖を、対照レベルよりもそれぞれ5倍及び2倍、有意に誘導する(図7)。PKCζ及びPKCαは細胞増殖に影響を与えなかった。
【0206】
(実施例8)
過剰発現したPKCδ及びζはインビトロでケラチン生成細胞脱着を誘導する
PKCδ及びζが過剰発現したケラチン生成細胞の接着特性を研究した。対照ケラチン生成細胞と比較して、特異的マトリックスタンパク質(ラミニン1、ラミニン5、フィブロネクチン、及びコラーゲンを含む)への接着能力の変化は観察されなかった(データは示していない)。しかし、PKCδアイソフォーム及びPKCζアイソフォームを過剰発現する細胞においては、培養ディッシュとの細胞接触の喪失が、培養ディッシュからの段階的なケラチン生成細胞脱着に付随した(図4)。
【0207】
(実施例9)
α6β4インテグリンの半接着斑局在に対するPKCアイソフォームの過剰発現効果
α6β4発現は半接着斑接着複合体の形成のために必須であるので、半接着斑へのα6β4局在化とのα6β4下方制御及び細胞脱着の関連を試験した。図8は、半接着斑複合体とのα6β4結合の免疫蛍光分析を提示する。図8において見られるように、対照の感染したケラチン生成細胞と比較して、過剰発現しているPKCαケラチン生成細胞におけるα6β4インテグリン発現の上方制御(図6)は、半接着斑複合体へのα6β4の組み込みの増加と関連する。PKCηを過剰発現する細胞はまた、半接着斑複合体とのα6β4インテグリンの結合を誘導するが、過剰発現しているPKCα細胞において観察されるものよりも少なかった。予測されるように、PKCδ及びPKCζを過剰発現するケラチン生成細胞におけるα6β4インテグリンの有意な下方制御が、細胞の半接着斑複合体とのα6β4の組み込みの減少に付随することを見い出した(図8)。これらの結果は、α6β4インテグリンが、細胞−マトリックス結合及びケラチン生成細胞が根底にある基底膜につながれることにおいて重要な役割を果たすことを示唆する。さらに、PKCδ及びζは、ケラチン生成細胞分化プロセスからの識別可能な経路において、α6β4下方制御を媒介し、ケラチン生成細胞の細胞脱着を開始する。最後に、PKC媒介α6β4下方制御を関連付け、半接着斑α6β4組み込み及びケラチン生成細胞脱着への特異的形態学的変化を減少するために、培養期間の間に異なるPKCアイソフォームを過剰発現する接着した細胞及び脱着した細胞の量の変化を追跡した。図9において、接着した細胞をPKCアデノウイルス感染の24時間後及び48時間後に培養中で計数した。明瞭に観察することができるように、PKCδ及びPKCζの両方はインビトロで細胞損失を誘導した。並行して、培養中での細胞の損失は、下層の培地に浮遊する培地の増加と相関した。これらの結果は、PKCδ及びPKCζが、細胞の分化及び移動の初期段階と関連する脱着工程の制御のために重要であることを示す。
【0208】
(実施例10)
PKCηは生理学的設定下でケラチン生成細胞の増殖及び分化を示差的に調節する
図7において明瞭に示されるように、PKCηアイソフォームを過剰発現する細胞は、対照の非感染細胞よりも5〜7倍上に加速した速度で増殖し、他のPKCアイソフォームを過剰発現するケラチン生成細胞培養よりも一貫して高かった。しかし、増殖の誘導は培地中のCa2+濃度を調節することによって決定されるような、ケラチン生成細胞の分化状態に依存した。低Ca2+濃度(0.05mM)よりも下に維持されたケラチン生成細胞を増殖する際に、内因性PKCηは、増殖している細胞の大部分の核周辺領域に局在化した(図10)。これらの条件下において、PKCηの過剰発現は、ケラチン生成細胞増殖に劇的な増加を誘導した(図11)。しかし、ケラチン生成細胞がCa2+濃度を0.12mMまで上昇させることによって分化された場合、PKCηの過剰発現は増殖を誘導しなかったが、ケラチン生成細胞分化をさらに刺激した。これらの結果は、過剰発現したPKCηは生理学的に増殖している細胞においてのみ増殖を誘導するが、細胞分化に干渉しないことを示唆する。PKCη発現の調節の相違はまた、インビボにおいても見られた。活発に増殖している皮膚並びに胚のニューロン細胞におけるPKCη発現が同定されたのに対して、成熟成体脳においては、PKCηは観察されず、表皮PKCηは皮膚の下流層に局在した。
【0209】
(実施例11)
PKCη及びDNPKCηの過剰発現は、PKC局在化及び細胞形態を特異的に調節する
ケラチン生成細胞における増殖又は分化の両方の状態におけるPKCηについてのポジティブな役割を支持する結果をさらに検証するために、キナーゼ不活性顕性不活性アデノウイルスPKCη構築物の効果を、増殖しているケラチン生成細胞及び分化しているケラチン生成細胞における感染の効果を研究することによって分析した。図12において見られるように、PKCη及びDNPKCηの両方のアデノウイルス感染は、増殖状態及び分化状態の両方において効率的であった。予測されるように、増殖しているケラチン生成細胞において、DNPKCηは、Ca2+誘導性分化と関連する形態学的変化に類似する細胞形態の劇的な変化(細胞の平板化、細胞−細胞境界の喪失を含む)を伴うケラチン生成細胞分化を誘導した(図12A〜B)。さらに、これらの変化は、ケラチン生成細胞増殖の停止(図11)及び分化マーカー(ケラチン1、ケラチン10、ロリクリン、及びフィラグリンを含む)の劇的な誘導に付随し、これらは、インビボでの正常皮膚において提示されるのと同様のレベルまで上昇した(図13A〜B)。同時に、分化プログラムの開始に際して、DNPKCηの過剰発現はCa2+誘導性分化を抑止しなかった。これらの結果は、PKCη及びDNPKCηが、生理学的設定下で、ケラチン生成細胞の増殖及び分化を示差的に調節するために使用可能であることを示唆する。
【0210】
(実施例12)
インビボ実験
PKCηがインビボで細胞の増殖及び分化を示差的に調節する能力を試験するために、ヌードマウスの背に作製した完全な切開性創傷の治癒をPKCηが誘導する能力を評価した。外因性組換えタンパク質を発現するケラチン生成細胞の能力を、対照β−galアデノウイルスを利用することによって確認した。図14において見られることができるように、感染の2週間後、β−gal発現は、インビトロケラチン生成細胞並びにインビボ皮膚で維持される。興味深いことに、創傷治癒プロセスが、対照、PKCα、及びPKCηのアデノウイルス構築物を用いる局所的感染後にマウスにおいて試験されたときに、PKCηのみが、局所的感染の早くも4日後で顆粒組織の形成を誘導した。これはまた、筋肉、脂肪、及び真皮層の組織化された形成もまた含んだ。同時に、対照及びPKCα感染皮膚において、濃密な顆粒組織は見い出されず、創傷の閉鎖は観察されなかった(図14)。それゆえに、PKCηは、創傷治癒プロセスの誘導において皮膚の増殖及び分化を調節する第1の候補物質であると見なされることが可能である。
【0211】
(実施例13)
インスリンは、増殖しているケラチン生成細胞におけるPKCδのトランスロケーションを特異的に誘導する
皮膚において発現される2種のPKCアイソフォームが、ケラチン生成細胞増殖に影響を与えることが見い出された:PKCη及びPKCδである。皮膚分化を調節する特異的PKCアイソフォームを活性化する内因性因子に取り組み且つこれを同定するために、ケラチン生成細胞増殖を促進することが知られているいくつかの増殖因子(EGF、KGF、インスリン、PDGF、及びIGF1を含む)が増殖依存性の様式で特異的PKCアイソフォームを活性化する能力を評価した。PKCアイソフォームα、δ、ε、η、及びζは皮膚において発現される。PKCアイソフォームの活性化は膜画分へのそれらのトランスロケーションと関連するので、種々のPKCアイソフォームの細胞質ゾルから膜へのトランスロケーションに対するこれらの増殖因子の効果を試験した。図15において見られるように、刺激の早くも5分後に、インスリンは細胞質画分から膜画分へのPKCδのトランスロケーションを特異的に誘導した。PKCδの膜発現は、インスリン刺激後数時間維持された。対照的に、IGF1は、膜におけるPKCδ発現を減少し、且つ細胞質画分におけるその発現の相対的レベルを増加した。他の増殖因子は、PKCδのトランスロケーション及び局在化に有意に影響を与えなかった。他のPKCアイソフォームの分布の変化は、IGF1及びインスリンを含むいずれの増殖因子による刺激後にも見られなかった。
【0212】
(実施例14)
インスリンは、増殖しているケラチン生成細胞においてPKCδの活性化を特異的に誘導する
PKCδのトランスロケーションが活性化のために十分であるか否かを決定するために、インスリン及びIGF1で処理したケラチン生成細胞の細胞質及び膜の画分からのPKC免疫沈殿物のキナーゼ活性を測定した。図16に示されるように、インスリンは膜画分中のPKCδの活性を増加したがIGF1は増加しなかった。PKCα活性の上昇は、細胞質画分においては観察されなかった。インスリン誘導性活性化はPKCδに特異的であり、PKCα、ε、η、又はζの活性化は、インスリン刺激の30分後まで観察されなかった。要するに、これらの結果は、インスリンによるがIGF1によらないPKCδ活性化の選択的刺激を示唆する。
【0213】
(実施例15)
インスリン及びIGF1はケラチン生成細胞増殖に対して相加的効果を有する
PKCδの特異的活性化が、ケラチン生成細胞における特異的インスリン誘導性の分裂促進的経路を意味するか否かを分析するために、インスリンとIGF1の両方の分裂促進的効果を、チミジン取り込みによって測定されるようなケラチン生成細胞増殖を誘導するそれらの能力を研究することによって試験した。図17Aにおいて示されるように、インスリンとIGF1の両方が、用量依存的な様式でチミジン取り込みを刺激し、それぞれ10−7M及び10−8Mで最大誘導が達成された。各濃度において、IGF1による最大刺激はインスリンによるそれよりも高かった。興味深いことに、すべての濃度において、両方のホルモンを一緒に与えた場合、分裂促進的効果は相加的であった(図17B)。これらの結果は、インスリンが、IGF1誘導性のケラチン生成細胞増殖に非依存的な独特な経路を通してケラチン生成細胞増殖を調節することを示唆する。
【0214】
(実施例16)
インスリン誘導性PKCδ活性化とインスリン誘導性ケラチン生成細胞増殖の間の関連性
インスリン誘導性PKCδ活性化とインスリン誘導性ケラチン生成細胞増殖の間の関連性を直接的に研究するために、組換えPKCアデノウイルス構築物を使用して、野生型PKCδ(WTPKCδ)並びにPKCのキナーゼ不活性顕性不活性変異体(これは内因性PKCδ活性を抑止する)(DNPKCδ)の両方を過剰発現させた。インスリン誘導性ケラチン生成細胞増殖に対する、WTPKCδ及びDNPKCδの過剰発現の効果を試験した。両方の構築物、並びにPKCα構築物は、ケラチン生成細胞において効率的に発現された(図18A)。さらに、PKCδ及びPKCαを用いる感染は、対照レベルよりも数倍上のアイソフォーム特異的PKC活性を誘導した(図18B)。予測されるように、DNPKCδの過剰発現はPKC活性を誘導しなかった。図19Aにおいて見られることができるように、トランスフェクトされていない細胞のインスリン処理又はインスリン処理を伴わないWTPKCδの過剰発現は、未処理細胞、又はPKCαで形質導入された細胞よりも2〜3倍とほぼ同じレベルまでチミジン取り込みを増加した。さらに、すでにWTPKCδを過剰発現している細胞へのインスリンの付加は、チミジン取り込みのさらなる増加を引き起こさなかった。IGF1は、非感染細胞並びにWTPKCδ及びPKCαを過剰発現する細胞の両方において同様にチミジン取り込みを増加した(図19A)。インスリン誘導された増殖におけるPKCδの直接的関与は、PKCδ活性を抑止することによって証明された。図19Bにおいて見られるように、顕性不活性PKCδを過剰発現する細胞におけるベースのチミジン取り込みはわずかであるが有意であり、非感染細胞におけるそれよりも低かった。DNPKCδの過剰発現は、インスリン誘導性の増殖を完全に除去したが、IGF1誘導性増殖に影響を与えなかった。さらに、インスリン及びIGF1の相加的効果は、IGF1単独のそれまで減少した。
【0215】
(実施例17)
PKCδ活性化のインスリン媒介経路への特異性
PKCδ活性化のインスリン媒介経路への特異性を、種々の増殖因子(IGF1、EGF、KGF、ECGF、及びPDGFを含む)に対する分裂促進的応答へのPKCδ及びDNPKCδの効果を研究することによって分析した。図20において見られるように、DNPKCδの過剰発現は、インスリンによって誘導される増殖性効果を選択的に除外したが、試験された他の増殖因子のいずれの効果もブロックしなかった。しかし、PKCδの過剰発現は、インスリン誘導性増殖を模倣し、IGF1誘導性増殖に影響を与えなかった。EGF及びKGFを用いる刺激によって誘導される増殖は増加した(図21)。これらのデータは、インスリンによるPKCδ活性化が、PKCδを含む経路を通してケラチン生成細胞の増殖を媒介すること、及びこの経路が、ケラチン生成細胞増殖を調節することが知られている2つの主要な増殖因子であるEGF及びKGFのシグナル伝達の上流にあることを示す。全体として、インスリンは、PKCδ活性の特異的レギュレーターであることが見い出され、この活性は、インスリン、EGF、及びKGFによって誘導されるケラチン生成細胞増殖を調節する際の特異的候補である可能性がある。
【0216】
(実施例18)
インスリン誘導性PKCδ活性及びケラチン生成細胞増殖は、STAT3転写活性化によって媒介される
インスリンシグナル伝達におけるPKCδの役割をさらに特徴付けし、これがSTAT3によって媒介される転写活性化の誘導を含むことを見い出した。図23において見られるように、初代ケラチン生成細胞において、PKCδは、STAT3と特異的に関連性があることが示された。インスリン刺激後、PKCδは活性化され、次には、STAT3をリン酸化及び活性化する(図24)。さらに、薬理学的阻害剤(ロットレリン)によるPKCδ活性の抑止は、STAT3の活性化並びに核トランスロケーションを阻害する。さらに、図25において見られるように、STAT3の過剰発現は、インスリンによって、及びPKCδの過剰発現によって誘導されるのと同様の増殖を誘導し、顕性不活性PKCδ変異体の過剰発現によるPKCδ活性の抑止は、STAT3がケラチン生成細胞増殖を誘導する能力を消滅させる。全体として、これらの結果は、インスリン及びPKCδが、ケラチン生成細胞増殖と関連した転写活性化において役割を果たすことを示唆する。
【0217】
(実施例19)
PKCδ及びPKCζはインビボでの創傷治癒プロセスに必須である
インビボでの創傷治癒プロセスにおけるPKCアイソフォームの重要性は、アイソフォーム特異的無PKCマウスを利用して確立された。図22A〜Bにおいて見られるように、全層創傷が、無PKCδマウス、無PKCζマウス、無PKCαマウス(ノックアウト、KO)及びそれらの野生型同腹仔の背において作製されたときに、創傷治癒の遅延が無PKCδマウス及び無PKCζマウスにおいて観察されたが、無PKCαマウスにおいては観察されなかった。このデータは、糖尿病バックグラウンドの非存在下においてさえ、特異的PKCアイソフォームが皮膚における創傷治癒プロセスのために必須であることを示す。
【0218】
(実施例20)
インビボでの創傷治癒のためのインスリンの単回対複数回塗布
創傷を切開により8〜10週齢のC57BLマウスの背に作製し、以下のように処置した:(i)インスリン0.1μM、7日間毎日塗布;(ii)インスリン1μM、7日間毎日塗布;(iii)インスリン10μM、7日間毎日塗布;(iv)インスリン1μM、創傷形成の4日後に1回塗布;及び(v)媒体(PBS)対照、7日間毎日塗布。すべてのマウスを創傷形成の7日後に屠殺し、それらの開いた創傷領域を測定した。図26に見られるように、1μM濃度におけるインスリンの毎日の処置は、より低濃度(0.1μM)又はより高濃度(10μM)でのインスリンの毎日の処置よりも有意に効果的であった。驚くべきことに、1μM濃度におけるインスリンの単回塗布の処置は、同じ濃度のインスリンの7回の日々の反復塗布の処置よりも実質的に有効であった。
【0219】
観察された創傷は瘢痕組織で覆われていたので、創傷の実際の閉鎖及び再構築した表皮の形成を正確に評価することが困難であった。それゆえに、創傷組織の表皮及び真皮の閉鎖に対するインスリンの効果を、組織学的パラメーターによって決定した。創傷の表皮閉鎖を、創傷ギャップにおける基底細胞の形成を強調する、ケラチン14抗体(K14、Babco−Convance、Richmond、カリフォルニア州、米国)を用いて創傷切片を染色することによって決定した。創傷の真皮閉鎖を、×100拡大における光学顕微鏡下で観察される単一の視野において、真皮が両方の創傷の側で観察可能である場合に、ポジティブであると見なした。
【0220】
図27において見られるように、すべてのインスリン処置は、表皮及び真皮の閉鎖を効果的に促進した。図26において示される結果と同様に、1μM濃度でのインスリンの日々の処置は、0.1μM又は10μMの濃度でのインスリンの日々の処置よりも有意に効果的であった。さらに、1μM濃度におけるインスリンの単回塗布は、同じ濃度におけるインスリンの1日に7回の反復塗布の効果よりも実質的に有効であった。
【0221】
したがって、これらの結果は、形態学的並びに組織学的なパラメーターによって決定されるように、インビボでの創傷治癒に対するインスリンの治療的効力を明確に立証する。これらの結果は、驚くべきことに、インスリンの最適な塗布の回数及び/又は頻度を決定することが、適切に創傷を治療するための決定的な工程であることを示す。
【0222】
(実施例21)
インビボでの創傷治癒のためのインスリン及び血小板由来増殖因子(PDGF−BB)の組み合わせ
創傷を切開により8〜10週齢のC57BLマウスの背に作製し、創傷形成の4日後に以下のように処置した:(i)媒体(PBS)対照;(ii)インスリン 1μM;(iii)PDGF−BB 10μM(R&D Systems、ミネアポリス、米国);及び(iv)インスリン 1μM+PDGF−BB 10μM。処置の3日後にすべてのマウスを屠殺し、処置した創傷を、例えば、上記の実施例20に記載されるように、表皮閉鎖及び真皮閉鎖について組織学的に分析した。
【0223】
図28において見られるように、インスリン又はPDGF−BBいずれか単独を用いる処置は、表皮閉鎖に対して(対照よりも30〜40%の増加)及び真皮閉鎖に対して(対照よりも10〜20%の増加)部分的に有効であった。しかし、インスリン及びPDGF−BBを組み合わせた処置は、実質的により高い表皮閉鎖(対照よりも約80%増加)並びに真皮閉鎖(約60%増加)を生じた。したがって、これらの結果は、インスリン及びPDGF−BBの組み合わせが相乗的な様式で創傷治癒に影響を与えることを示す。これらの結果はさらに、創傷の治療的処置のために、EGF、TGFβ、KGFなどの他の増殖因子又はトランスフォーミング因子とインスリンを組み合わせることの潜在能力を示す。
【0224】
(実施例22)
インビボでの創傷治癒のためのインスリン及びPKCα阻害剤の組み合わせ
創傷を切開により8〜10週齢のC57BLマウスの背に作製し、媒体(PBS)対照、又はPKCα阻害剤(HO/02;PKCα偽基質、ミリストイル化;Calibiochem、サンジエゴ、カリフォルニア州、米国と組み合わせた、0.67μM インスリン(HO/01;Humulin、Eli Lilly、米国)のいずれかを用いて7日間毎日処置した。創傷形成の7日後、すべてのマウスを屠殺し、処置された創傷を、創傷閉鎖、表皮閉鎖、真皮閉鎖、及び表皮細胞の空間的分化について分析した。創傷閉鎖を、開いた創傷領域を測定することによって決定した。創傷の真皮閉鎖は、両方の創傷の側において真皮が×100倍率における光学顕微鏡下で観察される単一の視野において観察可能である場合にポジティブであると見なした。創傷の表皮閉鎖は、創傷ギャップにおける基底細胞の形成を強調するK14抗体を用いて創傷切片を染色することによって決定した。表皮細胞の空間的分化は、新規に形成された表皮細胞を強調するK1抗体を用いて創傷切片を染色することによって決定した。
【0225】
図28〜32に図示されるように、インスリン(HO/01)及びPKCα阻害剤(HO/02)の組み合わせ塗布は、創傷閉鎖(図29A〜B)、真皮閉鎖(図30)、表皮閉鎖(図31)、及び表皮細胞の空間的分化(図32)を実質的に促進した。図33において見ることが可能であるように、PKCα阻害剤HO/02と組み合わせたインスリンHO/01の処置は、それぞれ、媒体対照と比較して、約15〜70%表皮閉鎖を増加し、約15〜50%真皮閉鎖を増加し、約15〜50%表皮細胞の空間的分化を増加した。
【0226】
したがって、これらの結果は、PKCα阻害剤と組み合わせたインスリンによる創傷の治療的処置は、表皮閉鎖、真皮閉鎖、表皮細胞の空間的分化、及び引き続く創傷治癒を効果的に促進した。
【0227】
(実施例23)
インスリン及びPKCα阻害剤の組み合わせは、インスリンのみの処置によって引き起こされる有害な副作用を回避する
創傷を切開により8〜10週齢のC57BLマウスの背に作製し、媒体(PBS)対照、又は1μM インスリン(Humulin、Eli Lilly、米国)若しくは1μM PKCα偽基質(Calibiochem、サンジエゴ、カリフォルニア州、米国)と組み合わせた1μM インスリンの混合物のいずれかを用いて7日間毎日処置した。創傷形成の7日後、すべてのマウスを屠殺し、処置された創傷を、表皮の増殖能力(PCNA)、血管形成、炎症、表皮細胞、及び創傷ギャップにおける再構築プロセスについて組織学的に分析した。
【0228】
以下の表1において見られることができるように、インスリンのみの処置は、緩衝液対照と比較した場合に、創傷領域において異常な血管形成の発生の実質的な増加を引き起こした(それぞれ、60%及び25%)。創傷治癒プロセスは迅速に増殖する表皮細胞を含むので、このような増加した血管形成はまた、癌の発生を開始するリスクを増加させるかもしれない。他方、インスリンがPKCα阻害剤と組み合わせられた場合には、処置した創傷領域において血管形成は観察されなかった。
【表1】
【0229】
さらに、インスリンのみの処置は炎症の増加、表皮細胞の過形成、表皮細胞の棘層の分化の遅れ、及び瘢痕の増加を生じた。インスリンのみの処置から生じた有害な副作用は、PKCα阻害剤がインスリンと組み合わされた場合にはいずれも観察されなかった。
【0230】
(実施例24)
PKCα阻害剤は創傷炎症を減少する
創傷における後期で且つ重篤な炎症性応答は治癒のプロセスを抑制する可能性があり、したがって、このような炎症を発生から防ぐことは、創傷治癒プロセスを促進するかもしれない。したがって、創傷炎症に対するPKCα阻害剤及びインスリンの効果を、以下の実験において試験した。
【0231】
創傷を切開によりC57BLマウスの背に作製し、以下を用いて7日間毎日処置した:(i)PBS、対照;(ii)1μM PKCα阻害剤(偽基質、ミリストイル化;Calibiochem、米国);(iii)1μM インスリン(Eli Lilly、米国);又は1μM PKCα阻害剤及び1μM インスリンの混合物。創傷形成の7日後、すべてのマウスを屠殺し、処置された創傷を炎症について顕微鏡下で観察した。創傷領域中で観察された重篤な炎症の得られる発生率は、以下に続く表1aにおいて要約される。
【表2】
【0232】
これらの結果は、創傷へのPKCα阻害剤の投与が、対照と比較して、重篤な創傷炎症の発生率の実質的な減少(33.3%)を引き起こすことを示す。インスリン単独では、これらの実験条件下では抗炎症性効果を有さなかった。
【0233】
これらの結果は、PKCα阻害剤が、創傷の重篤な炎症を制御するために治療において使用可能であることを示す。PKCα阻害剤が炎症を減少させる実証された能力は、表皮閉鎖、真皮閉鎖、及び表皮細胞の空間的分化を促進するその能力と結び付けられて(本明細書中上記の実施例22を参照のこと)、これを創傷治癒のために潜在的に最も有効な治療剤にする。
【0234】
(実施例25)
インビトロでの創傷閉鎖を加速することに対する、真皮細胞における特異的PKCアイソフォームの発現及び/又は活性を調節すること、並びに細胞に種々の薬剤を投与することの組み合わせ効果
材料及び方法
試薬:D因子(アディプシン)ヒト、Calbiochem、カリフォルニア州、米国;組換えTNFα マウス、R&D Systems、ミネアポリス 米国;GW9662、Cayman chemical、米国;タンパク質キナーゼCα偽基質阻害剤、Calbiochem、カリフォルニア州、米国;タンパク質キナーゼCζ偽基質阻害剤、Calbiochem、カリフォルニア州、米国;タンパク質キナーゼCη偽基質阻害剤、Calbiochem、カリフォルニア州、米国;PDGF−BB、Cytolab、イスラエル;IL−6、Cytolab、イスラエル;KGF/FGF−7、Cytolab、イスラエル、IGF−1、Cytolab、イスラエル;TGFβ2、Cytolab、イスラエル;上皮増殖因子(EGF)、マウス、Chemicon international、カリフォルニア州、米国;PKCδ RACK、AnaSpec、カリフォルニア州、米国;ロジグリタゾン(Rosiglitazon)、CalbioChem、カリフォルニア州、米国;アディポネクチン、MBL、マサチューセッツ州、米国及びコパキソン(Copaxone)(登録商標)、TEVA、イスラエル。
【0235】
インビトロ創傷閉鎖アッセイ:ケラチン生成細胞及び線維芽細胞(真皮細胞)をペトリ皿(内径5cm)で5日間培養し、次いで人工的な交差型の擦過傷を、200μlピペットチップを使用して各ペトリ皿において形成した。培養した細胞を、特異的PKCアイソフォームの発現及び/又は活性を調節可能なアデノウイルス構築物で感染させた。したがって、野生型(WT)PKCアデノウイルス構築物は特異的PKCを活性化するために使用したのに対して、顕性不活性(DN)PKCアデノウイルス構築物は、特異的PKCを阻害するために使用した。培養細胞は、以下の薬剤の1つをさらに供給された:インスリン(6.7×10−7M)、アディポネクチン(1μg/ディッシュ)、アディプシン(2μg/ml)、IL−6(1μg/ディッシュ)、GW9662(1μg/ディッシュ)、KGF(1μg/ディッシュ)、TNFα(12μg/ml)、TGFβ、ロジグリタゾン、SRC阻害剤、PKCδ RACK(10−7M)、及びPKCα偽基質阻害ペプチド(107M)。得られる創傷治癒レベルは、0(閉鎖なし)〜10(完全な閉鎖)までの範囲の指標値を使用して、処置の24〜48時間後に決定した。
【0236】
結果:
インビトロでの線維芽細胞創傷閉鎖に対する組み合わせ治療の効果は、以下の表2a〜b及び表3a〜bに要約されている。これらの結果は、線維芽細胞におけるPKCαの発現及び/又は活性の阻害が、細胞へのアディプシン又はインスリンの投与と組み合わせた場合に、創傷閉鎖を実質的に促進することを示す(それぞれ、10及び8の創傷閉鎖指標値)。創傷閉鎖はまた、線維芽細胞におけるPKCηの阻害、PKCεの阻害、PKCδの活性化、又はPKCζの活性化と組み合わせたPKCαの阻害によって加速された(それぞれ、9、9、9、及び7の創傷閉鎖指標値;図34A〜E)。さらに、創傷閉鎖は、細胞へのKFGの投与と組み合わせた、線維芽細胞中でのPKCζの阻害によって促進された(7の創傷閉鎖指標値;図36)。さらに加えて、創傷閉鎖は、インスリン、IL−6、KGF、又はGW9662の投与と組み合わせた、線維芽細胞におけるPKCβの阻害によって加速された(それぞれ、8、7、9、及び8の創傷閉鎖指標値;図38A〜E)。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0237】
インビトロでのケラチン生成細胞創傷閉鎖に対する組み合わせ処置の効果を以下の表4a〜b及び表5a〜bに要約する。これらの結果は、ケラチン生成細胞におけるPKCαの発現及び/又は活性の阻害が、細胞へのKGF、IL−6、TNFα、又はPKCδ RACKペプチドの投与と組み合わせた場合に、創傷閉鎖を実質的に促進したことを示す(それぞれ6、8、10、及び8の創傷閉鎖指標値;図35A〜C及びG)。創傷閉鎖はまた、細胞中のPKCη、PKCε、又はPKCζの刺激と組み合わせて、ケラチン生成細胞中のPKCαの阻害によって増強された(それぞれ、10、9、及び6の創傷閉鎖指標値;図35A、D〜F及びH)。さらに、創傷閉鎖は、細胞へのIL−6、TNFα、又はアディポネクチンの投与と組み合わせた、ケラチン生成細胞におけるPKCζの阻害によって促進された(それぞれ9、9、及び7の創傷閉鎖指標値;図37A〜D)。さらに加えて、創傷閉鎖は、細胞中でPKCεを活性化すること、PKCζを活性化すること、若しくはPKCαを阻害することと組み合わせた、ケラチン生成細胞におけるPKCδ活性及び/若しくは発現の促進によって、又は細胞へのアディプシンの投与によって加速された(それぞれ7、8、8、及び8の創傷閉鎖指標値;図39A〜E)。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0238】
したがって、これらの結果は、創傷閉鎖が、IL−6、KGF、TNFαなどの増殖因子、インスリンなどのホルモン、アディプシン若しくはアディポネクチンなどのアディポカイン、PKCδ RACK及び/又はGW9662を細胞に投与することと組み合わせた場合に、創傷領域にコロニー形成した真皮細胞及び表皮細胞中での特異的PKCアイソフォームの発現及び/又は活性を調節することによって実質的に加速可能であることを示す。
【0239】
(実施例26)
インビトロ及びインビボでの創傷治癒のためのコポリマー1の投与
材料及び方法
コポリマー1:コポリマー1(酢酸ガラティラメル)は、多発性硬化症を治療するために臨床的に使用されている薬物コパキソン(Copaxone)(登録商標)(Teva、イスラエル)の活性成分である。コポリマー1は、ミエリン鞘の天然成分であるミエリン塩基性タンパク質(MBP)の合成ポリペプチドアナログである。化学的には、コポリマー1は、L−アラニン、L−リジン、及びL−チロシンを有するL−グルタミン酸ポリマー、酢酸(塩)と呼ばれる。その構造式は:(Glu、Ala、Lys、Tyr)x.XCH3COOH(C5H9NO4・C3H7NO2・C6H14N2O2・C9H11NO3)x・xC2H4O2である。酢酸ガラティラメルの平均分子量は4,700〜11,000ダルトンである。これは、23,000ダルトンの平均分子量を有する生成物を形成する4種のアミノ酸を化学的に重合することによって合成される(米国特許第3,849,550号)。
【0240】
インビトロアッセイ:アッセイを、本質的に本明細書中上記の実施例24に記載されるように実行した。コポリマー1は55μg/ディッシュの濃度で、単独で、又はPKCα偽基質(1μM)及び/若しくはインスリン(1μM)と組み合わせて、培養したケラチン生成細胞に供給した。得られる創傷閉鎖レベルを、処置の48時間後に、0(閉鎖なし)〜10(完全な閉鎖)までの範囲の指標値を使用して決定した。
【0241】
インビボアッセイ:創傷を切開(20mm)によりC57BLマウスの背に作製し、以下のように創傷形成の4日後に処置した:(i)媒体(PBS)対照;(ii)コポリマー1(55μg/ml);(iii)コポリマー1(55μg/ml)及びインスリン(1μM)の混合物;(iv)PKCα偽基質阻害ペプチド(1μM)及びインスリン(1μM)の混合物;並びに(v)コポリマー1(55μg/ml)、PKCα偽基質阻害ペプチド(1μM)、及びインスリン(1μM)の混合物。創傷を、(i)創傷閉鎖、(ii)痂皮形成、及び(iii)創傷の出血/滲出について形態学的に評価した。
【0242】
結果:
インビトロアッセイ:培養したケラチン生成細胞へのコポリマー1の投与は、0(閉鎖なし)〜10(完全な閉鎖)までのスケール上で8の指標値にインビトロ創傷の閉鎖を促進した。PKCα偽基質阻害ペプチド、又はPKCα偽基質及びインスリンの混合物とのコポリマー1の組み合わせは、同様の効果を生じた(それぞれ、8及び9の創傷閉鎖指標値;図40A〜F)。したがって、これらの結果は、コポリマー1それ自体が、インビトロでの創傷閉鎖を実質的に加速可能であることを示す。
【0243】
インビボアッセイ:コポリマー1を、単独で又はインスリン及び/若しくはPKCα偽基質と組み合わせて、切開創傷に投与することは、未処置対照と比較して、創傷ギャップを実質的に減少させ、創傷中の痂皮形成を加速した。さらに、コポリマー1を用いるすべての処置は、創傷領域における出血及び滲出を効果的に予防した。
【0244】
したがって、これらの結果は、有効量のコポリマー1を、単独で又はインスリン及び/若しくはPKCα偽基質阻害ペプチドと組み合わせて、創傷組織に投与することは、創傷治癒プロセスを実質的に加速可能であることを示す。
【0245】
(実施例27)
創傷治癒プロセスに対する胸腺分泌物質の影響
材料及び方法:
創傷切開を、正常成体齧歯類又はSTZ糖尿病マウスの上背(首の近く)で実行した。これらの動物を処置の7日後又は9日後に屠殺し、創傷を、上記の実施例20において記載されるような染色手順を使用して、創傷領域に近接した胸腺の存在について、並びに創傷の表皮及び真皮の閉鎖について、組織学的に分析した。
【0246】
結果:
図42A〜Hにおいて見られることができるように、創傷ギャップに密接に近接した胸腺の存在は、表皮形成の加速、組織の顆粒化、及び創傷中の真皮収縮と相関した。これらの観察は、胸腺分泌物質が創傷の治癒プロセスに効果的に寄与するかもしれないことを示す。したがって、サイモシン、β−サイモシン(例えば、サイモシンβ4、サイモシンβ10、サイモシンβ9、サイモシンβ12、サイモシンβ14)、αサイモシン(例えば、サイモシンα、1/ゼダキシン、プロサイモシンα、パラサイモシンα)、サイムリン、IGFI、IGFII、NGF、ソマトスタチン、サイログロブリン、副甲状腺ホルモン、及び/又は胸腺ホルモンペプチド(THP)などの胸腺由来物質は、創傷の治癒プロセスを加速するための処置において使用されてもよい。
【0247】
別々の実施形態の状況において、明瞭化のために記載される本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態における組み合わせで提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔さのために、単一の実施形態の状況において記載される種々の本発明の特徴は、別々に、又は任意の適切な小さな組み合わせ(subcombination)でもまた提供されてもよい。
【0248】
本発明をその特定の実施形態と併せて記載してきたが、多くの代替、改変、及び変形が当業者には明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にある、すべてのこのような代替、改変、及び変形を含めるものとする。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許、特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に援用され、個々の刊行物、特許、特許出願が、具体的且つ個別に引用されて、参照により本明細書に援用される。さらに、本願におけるいかなる参考文献の引用及び同定も、このような参考文献が本発明に対する先行技術として利用可能であることの承認と解釈されるべきではない。
【0249】
(参考文献)
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞増殖及び/又は細胞分化を誘導及び/又は促進し、それによって創傷の治癒プロセスを促進するための方法及び薬剤組成物に関する。より詳細には、本発明は、細胞増殖及び/又は細胞分化及び/又は細胞移動を誘導及び/又は促進し、それによって創傷の治癒プロセスを促進するための、PKCとしても知られるセリン/スレオニンタンパク質キナーゼの、例えば膜転位及び活性化によって開始される発現及び/又は活性化の調節の使用に関する。本発明の教示に従って、(i)PKC発現構築物での創傷細胞の形質転換、(ii)創傷細胞の内因性PKC遺伝子と隣接したその上流に挿入するシス作用性エレメントを用いた創傷細胞の形質転換、(iii)創傷細胞においてPKCの発現及び/又は活性化を誘導するインスリンの投与、(iv)インスリン発現構築物から産生され、発現され分泌されるインスリンがPKC発現及び/又は活性化の上方制御因子として働くときの、そのインスリン発現構築物での創傷細胞の形質転換、(v)発現され分泌されるインスリンがPKC発現及び/又は活性化の上方制御因子として働くときの、創傷細胞の内因性インスリン遺伝子と隣接したその上流に挿入するシス作用性エレメントでの創傷細胞の形質転換、(vi)創傷へのインスリン分泌細胞の移植、(vii)インスリンがPKC発現及び/又は活性化の上方制御因子として働くときの、内因性インスリンの産生及び分泌を誘導するトランス作用性因子、例えばPDX1での創傷細胞の形質転換、並びに(viii)創傷へのPKC調節因子の投与によって、そのような発現の調節を実施することができる。
【0002】
本発明は、上記の方法のいずれかによって実現されるように、皮膚移植片の産生のためにex vivoで実施することもできる。
【背景技術】
【0003】
創傷治療での第一の目標は、創傷閉鎖を達成することである。皮膚開放創は、創傷の主要な部類の1つに相当し、それには、熱傷創、神経障害性潰瘍、褥瘡、静脈うっ血性潰瘍、及び糖尿病性潰瘍がある。
【0004】
皮膚開放創は、6個の主要な構成要素:(i)炎症、(ii)線維芽細胞増殖、(iii)血管増殖、(iv)結合組織合成、(v)上皮化、及び(vi)創傷収縮を含むプロセスによって通常治癒する。これらの構成要素が、個々に又は全体として適切に機能しないとき、創傷治癒は障害される。栄養不良、感染、薬剤作用物質(例えば、アクチノマイシン及びステロイド)、高齢及び糖尿病を含めて、多数のファクターが創傷治癒に影響を及ぼす可能性がある(非特許文献1を参照)。
【0005】
糖尿病について、真性糖尿病は、インスリンシグナル伝達の障害、血漿グルコースの上昇、いくつかの独特の組織が関与する慢性合併症を発症する傾向を特徴とする。真性糖尿病の慢性合併症すべての中で、足部潰瘍化を引き起こす創傷治癒の障害は、最も研究が十分でない。さらに、糖尿病患者における皮膚の潰瘍化は、驚くほどの個人的金銭的なコストがかかる(非特許文献1及び非特許文献2)。さらに、足部潰瘍、及びそれに続く下肢切断は、糖尿病患者の中で入院の最も一般的な原因である(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4及び非特許文献5)。糖尿病では、創傷治癒プロセスは障害され、治癒した創傷は、創傷の強度が減弱していることを特徴とする。組織修復の欠陥は、神経障害、血管疾患及び感染を含めたいくつかのファクターと関係している。しかし、異常なインスリンシグナル伝達と関係する糖尿病状態が創傷治癒を障害し、皮膚の生理状態を変化させる他の機構は、解明されていない。
【0006】
身体の種々の部分での外科手術後、手術は成功するが創傷切開が治癒しないという創傷治癒の一般的な問題も存在する。
【0007】
皮膚とは、層を成す扁平上皮であり、皮膚では増殖し分化する細胞が厳密に区画化されている。生理状態では、増殖は、基底膜と接着している基底細胞に限定されている。分化とは、基底細胞が基底膜との接着を喪失し、DNA合成を中止し、一連の形態的生化学的変化を受ける空間的なプロセスである。その最終的な成熟化ステップは、皮膚の保護障壁を形成する角化層の産生である(非特許文献7及び非特許文献8)。基底細胞が分化に傾くときに観察される最も初期の変化は、基底膜から脱離し、遠くへ移動する基底細胞の能力と関係する(非特許文献9)。同様の変化が、細胞が創傷領域へと移動し、増殖能も促進される創傷治癒プロセスと関係する。これらのプロセスは、皮膚層の再構築、及び表皮層の適切な分化の誘導に必須である。
【0008】
表皮細胞の増殖及び分化を制御する機構の分析は、マウス及びヒトのケラチン生成細胞培養系の開発によって非常に容易となった(非特許文献8及び非特許文献10)。in vitroで、ケラチン生成細胞は、高増殖速度の基底増殖細胞として維持することができる。さらに、in vivoでの表皮の成熟パターンに従って、in vitroで分化を誘導することができる。初期の事象には、半接着斑の構成成分の喪失(非特許文献9及び非特許文献11)、及びα6β4インテグリンの選択的喪失、及びマトリックスタンパク質との細胞接着がある。このことは、インテグリン発現の変化が、ケラチン生成細胞分化の初期事象であることを示唆するものである。半接着斑の接触の初期喪失は、ケラチン生成細胞の基底膜上の移動を引き起こし、培養ケラチン生成細胞及び皮膚でのケラチン1(K1)の誘導へとつながる(非特許文献7、非特許文献9及び非特許文献12)。顆粒層の表現型へのさらなる分化は、β1とβ4両方のインテグリン発現の下方制御、すべてのマトリックスタンパク質との接着可能性の喪失を伴い、その後に角化膜が形成され、細胞死が起こる。分化細胞は、成熟扁平細胞として培養皿から最終的に分離する。in vitroでのこの分化プログラムは、in vivoでの表皮の成熟パターンに密接に従う。
【0009】
ケラチン生成細胞の生物学における最近の研究は、皮膚の増殖及び分化を制御するタンパク質キナーゼC経路の寄与を明らかにするものである。タンパク質キナーゼC(PKC)ファミリーのセリン−スレオニンキナーゼは、様々な生物学的現象に重要な制御の役割を果たす(非特許文献13及び非特許文献14)。PKCファミリーは、少なくとも12個の個々のアイソフォームからなり、それらは、3つの異なる種類:(i)Ca2+、ホルボールエステル、及びホスホリパーゼCによって細胞内で遊離するジアシルグリセロールによって活性化される従来型アイソフォーム(α、β1、β2、γ)、(ii)やはりホルボールエステル及びジアシルグリセロールによって活性化されるが、Ca2+では活性化されない新規アイソフォーム(δ、ε、η、θ)、並びに(iii)Ca2+、ホルボールエステル又はジアシルグリセロールによって活性化されない非定型的な(ζ、λ、ι)構成要素のファミリーに属する。
【0010】
活性化後、全部ではないがほとんどのアイソフォームが細胞質から原形質膜へと転位すると考えられている。アイソフォームの型、及び分布のパターンは、異なる組織間で様々であり、表現型の機能として変化することもある。ホルモン作用の多種多様な細胞の評価項目の中でそれが重要であるので、多数の研究からPKCの構造及び機能が特徴付けられている。5つのPKCアイソフォームα、δ、ε、η、及びζがin vivo及び培養下の皮膚で同定されている。最近の研究から、PKCシグナル伝達経路が、分化反応の主要な細胞内媒介物であることが示された(非特許文献15及び非特許文献16)。さらに、PKCの薬剤活性化物質は、in vivo及びin vitroでケラチン生成細胞分化の強力な誘導物質であり(非特許文献10及び非特許文献17)、PKC抑制物質は、分化マーカーの発現を妨げる(非特許文献15)。
【0011】
本発明を考え出す間、PKCアイソフォームの過剰発現及び/又は活性化は、創傷治癒プロセスの促進に有益である可能性があると仮定した。皮膚細胞の増殖及び/又は分化における別個のPKCアイソフォームの役割を調べることについての制約は、従来の方法で外来遺伝子を効率よく初代細胞に導入することが困難であることによって拘束されてきた。寿命が短く、分化の可能性があり、安定な形質転換体を単離できないことから、初代皮膚細胞に外来遺伝子を効率よく形質導入することは不可能である。
【0012】
従来技術では、創傷治癒の治療用作用物質としてのインスリンの潜在的な使用について記載がある。したがって、特許文献1、特許文献2及び特許文献3は、創傷治癒を促進する、創傷へのインスリンの局所塗布について記載するものである。しかし、インスリンの機能が、グルコース摂取を促進し、それによって創傷治癒を促進することであるため、これらの特許は、グルコースと組み合わせたインスリンの使用について記載するものである。
【0013】
特許文献4及び特許文献5は、皮膚の健康状態を改善し、又は浅い皮膚損傷を治療する目的で、皮膚への局所塗布用のインスリンを含む組成物について記載するものである。しかし、これらの特許出願は、慢性の、第2度の又は深い損傷を治療するためのインスリンの使用を教示するものではない。
【0014】
特許文献6は、創傷治癒のためのインスリン又は銀と組み合わせたシアノアクリレートポリマー密封剤の使用について記載するものである。しかし、PKCの発現及び/又は活性化を調節することができる他の生物学的に活性な作用物質と組み合わせたインスリンの使用は、この出願では教示されず示唆されない。
【0015】
特許文献7は、糖尿病を治療するためのインスリンの局所塗布について記載するものである。しかし、この特許出願は、糖尿病非関連の創傷を治療する目的でのインスリンの使用を教示するものではない。
【0016】
特許文献8は、インスリンを含むことができる治療用マイクロエマルジョン製剤について記載するものである。しかし、創傷治癒の目的での製剤インスリンの使用は、この開示では教示されない。
【0017】
特許文献9及び特許文献10は、上皮増殖因子及びインスリンを含む、ヒトケラチン生成細胞及び表皮細胞のin vitroクローン性増殖のための組成物について記載するものである。このどちらの特許も、移植に使用することができる培養皮膚細胞の発育のためのインスリンの使用を教示するものである。しかし、創傷に対するin vivoでのインスリンの塗布は、これらの特許では教示されない。
【0018】
上記で引用した従来技術の文献は、創傷の治癒プロセスを促進するように、PKCの発現及び/又は活性化を調節するためのインスリンの使用を教示又は示唆するものではない。さらに、従来技術は、創傷の治癒プロセスを促進するように、インスリンを創傷に供給するための核酸構築物又は遺伝子形質転換技術の利用を教示又は示唆するものではない。
【0019】
創傷治癒に関連するプロセスを促進する新たな手法についての必要性が広く認識され、それを有すると非常に有利となるはずである。さらに、細胞の増殖及び/又は分化のプロセス並びに創傷治癒を促進する、皮膚細胞への組換え遺伝子挿入の効率のよい方法についての必要性が広く認識され、それを有すると非常に有利となるはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,591,709号
【特許文献2】米国特許第5,461,030号
【特許文献3】米国特許第5,145,679号
【特許文献4】米国特許出願第09/748,466号
【特許文献5】国際特許出願PCT/US98/21794
【特許文献6】国際特許出願PCT/US01/10245
【特許文献7】国際特許出願PCT/US85/00695
【特許文献8】国際特許出願PCT/US92/03086
【特許文献9】米国特許第4,673,649号
【特許文献10】米国特許第4,940,660号
【非特許文献】
【0021】
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【非特許文献17】12. Dlugosz, A. A. and Yuspa, S. H. Coordinate changes in gene expression which mark the spinous to granular cell transition in epidermis are regulated by protein kinase C. J. Cell Biol., 120 : 217-225,1993.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明を実施に移す間、本発明者らは、インスリンを単独で創傷に投与すると、過度の血管新生、炎症、表皮細胞過形成や瘢痕化など有害な副作用を引き起こす可能性があることを明らかにした(以下の実施例の項中の実施例23を参照)。さらに、本発明者らは、創傷領域に定着している細胞でPKCの発現及び/又は活性を調節することができる1種又は複数種の作用物質とインスリンを組み合わせることによって創傷治癒プロセスを実質的に促進する間に、インスリンが誘導する副作用を有効に回避できることを明らかにした。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、創傷領域に有効量のインスリン、並びに/或いは創傷定着細胞でPKCの発現及び/又は活性を調節しインスリンと相乗的に作用することができる他の作用物質を供給して創傷治癒のプロセスを促進することによって、効率よく、且つ有害な副作用を伴わずに創傷を治療する新規の方法及び組成物を提供する。
【0024】
したがって、本発明の一態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、PKC産生及び/又はPKC活性化を調節する治療有効量の作用物質を投与するステップを含む。
【0025】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である、PKCの産生及び/又は活性を調節する治療有効量の少なくとも1種の作用物質と、製剤上許容される担体とを含む。
【0026】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、治療有効量のインスリン、及びインスリンと相乗的に作用する少なくとも1種のさらなる作用物質を投与するステップを含む。
【0027】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である治療有効量のインスリン及びインスリンと相乗的に作用する少なくとも1種のさらなる作用物質と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0028】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、単回投与量の治療有効量のインスリンを投与し、それによって損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するステップを含む。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進することができるように選択された単回投与単位のインスリンと、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0030】
本発明の他の態様によれば、古い皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、古い皮膚創傷に、単回投与量の治療有効量のインスリンを投与し、それによって古い皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するステップを含む。
【0031】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、治療有効量のインスリン分泌細胞を移植するステップを含む。
【0032】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分であるインスリン分泌細胞と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、損傷した皮膚又は皮膚創傷の細胞を形質転換して、インスリンを産生し分泌するステップを含む。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である、損傷した皮膚又は皮膚創傷の細胞を形質転換してインスリンを産生し分泌するように設計された核酸構築物と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0035】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、損傷した皮膚又は皮膚創傷の細胞を形質転換して、タンパク質キナーゼCを産生するステップを含む。
【0036】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である、損傷した皮膚又は皮膚創傷の細胞を形質転換してタンパク質キナーゼCを産生するように設計された核酸構築物と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0037】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、治療有効量のPKC活性化物質を投与するステップを含む。
【0038】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するための治療有効量のPKC活性化物質と、製剤上許容される担体とを含む。
【0039】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷に、治療有効量のコポリマー1を投与するステップを含む。
【0040】
本発明の他の態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である治療有効量のコポリマー1と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である治療有効量のコポリマー1と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0042】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、損傷した皮膚又は皮膚創傷に定着している皮膚細胞において少なくとも1種のPKCアイソフォームの発現及び/又は活性を調節するステップと、PKCアイソフォームの発現及び/又は活性を調節するステップを行いながら、ホルモン、増殖因子、アディポカイン、PKCδRACK、及びGW9662からなる群から選択される治療有効量の少なくとも1種のさらなる作用物質を皮膚細胞に投与して、それによって、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するステップとを含む。
【0043】
本発明のさらなる態様によれば、損傷した皮膚又は皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物が提供され、その薬剤組成物は、有効成分である、少なくとも1種のPKCアイソフォームの発現又は活性化を調節する治療有効量の物質、及びホルモン、増殖因子、アディポカイン、PKCδRACK、及びGW9662からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる作用物質と、製剤上許容される担体とを含む。
【0044】
下記に記載する本発明の好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、創傷は、潰瘍、糖尿病関連の創傷、熱傷、日焼け、加齢による皮膚創傷、角膜潰瘍化による創傷、炎症性消化管疾患による創傷、腸炎症性疾患による創傷、クローン病による創傷、潰瘍性大腸炎、痔核、表皮水疱症による創傷、皮膚水疱形成性創傷、乾癬による創傷、脂漏性皮膚炎による創傷、動物の皮膚の創傷、動物の糖尿病による創傷、網膜症による創傷、口腔の創傷(粘膜炎)、膣粘膜炎による創傷、歯周病による創傷、裂傷、外科的切除による創傷、及び外科的接着後の創傷からなる群から選択される。
【0045】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、潰瘍は、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、静脈性潰瘍、胃潰瘍、及びHIV関連潰瘍である。
【0046】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリンは組換え体である。
【0047】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリンは天然の供給源に由来する。
【0048】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、さらなる作用物質は、血小板由来増殖因子である。
【0049】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、さらなる作用物質はPKC−α抑制物質である。
【0050】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、投与は、単回塗布によって実施する。
【0051】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、古い皮膚創傷は、少なくとも2日前のものである。
【0052】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリンの濃度は、0.1μM〜10μMである。記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリンの投与単位は、薬剤組成物0.01〜0.2ml中に0.001〜5nMである。
【0053】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリンの投与量は、薬剤組成物0.01〜0.2ml中に0.01〜0.5nMである。
【0054】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、薬剤組成物は、水溶液剤、ゲル剤、クリーム剤、ペースト剤、ローション剤、噴霧剤、懸濁液剤、粉末剤、分散液剤、膏薬及び軟膏剤からなる群から選択される。
【0055】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、薬剤組成物は、固体支持体を含む。
【0056】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、細胞を形質転換して、インスリンを産生し分泌する。
【0057】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、細胞を組換えPDX1遺伝子で形質転換し、それによって細胞が天然のインスリンを産生し分泌する。
【0058】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、細胞の内因性インスリン遺伝子の上流に組み込むシス作用性エレメント配列で細胞を形質転換し、それによって細胞が天然のインスリンを産生し分泌する。
【0059】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリン分泌細胞は、分泌顆粒を形成することができる。
【0060】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリン分泌細胞は、内分泌細胞である。
【0061】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリン分泌細胞は、ヒト供給源に由来する。
【0062】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリン分泌細胞は、組織適合性をヒト化した動物供給源に由来する。
【0063】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリン分泌細胞は、ヒトインスリンを分泌する。
【0064】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、インスリン分泌細胞は、自己の細胞である。
【0065】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、細胞は、線維芽細胞、上皮細胞及びケラチン生成細胞からなる群から選択される。
【0066】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、細胞を形質転換して、タンパク質キナーゼC転写活性化物質を産生し、それによって細胞が天然のタンパク質キナーゼCを産生する。
【0067】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、細胞の内因性タンパク質キナーゼCの上流に組み込むシス作用性エレメント配列で細胞を形質転換し、それによって細胞が天然のタンパク質キナーゼCを産生する。
【0068】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、組換えタンパク質キナーゼC遺伝子で細胞を形質転換し、それによって細胞が組換えタンパク質キナーゼCを産生する。
【0069】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、タンパク質キナーゼCは、PKC−β1、PKC−β2、PKC−γ、PKC−θ、PKC−λ、及びPKC−ιからなる群から選択される。
【0070】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、タンパク質キナーゼCは、PKC−α、PKC−δ、PKC−ε、PKC−η、及びPKC−ζからなる群から選択される。
【0071】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、コポリマー1は、局所塗布に適合された薬剤組成物中に含まれる。
【0072】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、PKCアイソフォームは、PKC−α、PKC−β、PKC−δ、及びPKC−ζからなる群から選択される。
【0073】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、ホルモンはインスリンである。
【0074】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、増殖因子はIL−6、KFG及びTNFαからなる群から選択される。
【0075】
記載する好ましい実施形態のさらなる特徴によれば、アディポカインは、アディプシン又はアディポネクチンである。
【0076】
本発明は、損傷した皮膚又は皮膚創傷に対処する新たな治療を提供することによって、現在知られている構成の欠点の対処に成功するものである。
【0077】
本発明は、本明細書で、添付の図面を参照して例示される。ここで詳細について図面を具体的に参照する際に、図示される特定の実施形態は例示であって、本発明の好ましい実施形態の例証的な議論の目的のみのためであり、本発明の原理及び概念上の態様の最も有用で容易に理解されると考えられているものを提供する目的で提示されることが強調される。この点に関して、本発明の基本的な理解のために必要であるよりもさらに詳しく本発明の構造上の詳細を示すための試みはなされず、これらの図面とともに本明細書を見ると、本発明のいくつかの形態が実用上いかにして具体化され得るかは、当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】組換えアデノウイルスベクターを利用するPKCアイソフォームの効果的な過剰発現を実証する:左のパネル:4日齢の初代ケラチン生成細胞に、感染の48時間後のβ−galアデノウイルスを利用して1時間感染させ、細胞を固定し、β−ガラクトシダーゼタンパク質の活性化を、未感染のケラチン生成細胞と比較して青色反応の誘導によって定量した。右のパネル:4日齢の初代ケラチン生成細胞に、組換えアイソフォーム特異的PKCアデノウイルスを利用して、1時間感染させた。24時間後、感染した(Ad)及び非感染対照(C)の培養のタンパク質をウェスタンブロット分析のために抽出し、サンプルを、上記の実施例の節において記載されるアイソフォーム特異的抗PKC抗体を使用して分析した。
【図2】ブリオスタチン1によるPKC活性化が、過剰発現されたPKCアイソフォームのトランスロケーションを誘導することを示す。4日齢初代ケラチノサイトに、アイソフォーム特異的組換えPKCアデノウイルスを用いて1時間感染させた。感染の24時間後、細胞を、未処理か(C)、又はブリオスタチン1で30分間刺激したか(B)のいずれかを行い、分画した。タンパク質サンプルをウェスタンブロッティングに供し、アイソフォーム特異的抗PKC抗体を使用して分析した。
【図3】過剰発現されたPKCアイソフォームがそれらのネイティブ型で活性であることを示す。4日齢初代ケラチノサイトを、アイソフォーム特異的組換えPKCアデノウイルスで1時間感染させた。注射の18時間後、未感染対照細胞(C)及びPKCアイソフォーム過剰発現細胞(OE)からの細胞溶解物を、アイソフォーム特異的抗PKC抗体を使用して免疫沈殿させた。免疫沈殿物を、上記の実施例の節において記載されるようなPKC活性アッセイに供した。
【図4】特異的PKCアイソフォームの過剰発現が初代ケラチン生成細胞における独特な形態学的変化を誘導することを実証する。初代ケラチノサイトは、未処理のままであるか(C)、又は組換えPKCα、δ、若しくはζのアデノウイルスで感染されたかのいずれかであった。24時間後、培養物を明視野顕微鏡によって観察し、写真撮影した(×20)。
【図5】感染した初代ケラチン生成細胞における過剰発現されたPKCアイソフォームの独特な局在を示す。初代ケラチン生成細胞を、ラミニン5−コートされたガラススライド上にプレートした。培養物は、未処理のままであるか、又は異なる組換えPKCアデノウイルスで感染されたかのいずれかであった。感染の24時間後、細胞を固定し、洗浄し、風乾した。培養物は、アイソフォーム特異的抗PKC抗体、続いてFITC結合体化二次抗体を使用して、免疫蛍光によって分析された。細胞を、共焦点顕微鏡によってスキャンし、代表的な視野を写真撮影した。
【図6】PKCアイソフォームが、α6β4インテグリン発現を特異的に調節することを実証する。5日齢初代マウス皮膚ケラチン生成細胞は、未処理であるか、又は、PKCα、PKCδ、PKCη、若しくはPKCζの組換えアデノウイルスで感染された。感染の48時間後、膜細胞画分をSDS−PAGE電気泳動に供し、ニトロセルロールフィルターに転写し、抗α6及び抗β4抗体でイムノブロットを行い、ECLによって分析した。
【図7】PKCη及びPKCδの過剰発現が、ケラチン生成細胞増殖を誘導することを示す。5日齢初代マウス皮膚ケラチン生成細胞は、未処理であるか、又は、PKCδ、PKCα、PKCη、若しくはPKCζの組換えアデノウイルスで感染された。感染の48時間後、細胞増殖を、実験手順において記載されているように、1時間の3H−チミジン取り込みによって分析した。結果は、β−ガラクトシダーゼ感染ケラチン生成細胞と比較した、cpm/ディッシュとして表される。値は、3回の別々の実験における3連の測定の平均±標準偏差として表される。
【図8】PKCアイソフォームの過剰発現が、α6β4インテグリンの半接着斑局在をもたらすことを実証する。初代ケラチン生成細胞は、ラミニン5コートされたガラススライド上にプレートされ、ケラチノサイト培養は、48時間の間、低Ca2+MEM中で維持された。この時間の後で、培養物は未処理のままであるか(A)、又はPKCα、PKCδ、PKCη、若しくはPKCζの組換えアデノウイルス(それぞれ、B−E)で感染される。感染の24時間後、実験手順において記載されているように、ケラチン生成細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、続いて、0.2% Triton−X−100で穏やかに抽出し、PBS中で洗浄し、風乾した。培養物を、実験手順において記載されているように、アイソフォーム特異的抗α6抗体、続いてFITC結合体化二次抗体を利用する免疫蛍光分析に供した。
【図9A】過剰発現されたPKCδ及びPKCζがケラチン生成細胞脱着をインビトロで誘導することを示す。(A)初代ケラチン生成細胞は、未処理であるか(C)、又は組換えPKCα、PKCδ、PKCη、若しくはPKCζのアデノウイルスで感染される。細胞接着を、感染の24時間後及び48時間後に、細胞を持ち上げること、及びそれらをマトリックスコートされたディッシュ上に再プレートすることによって分析した。細胞の計数は、接着細胞のタンパク質濃度(mg/ディッシュ)として提示される。(B)初代ケラチン生成細胞は、未処理であるか(C)、又は組換えのPKCα、PKCδ、PKCη、若しくはPKCζのアデノウイルスで感染されるかのいずれかであった。細胞脱着を、感染の24時間後に、培養培地中で脱着した浮遊している細胞を収集することによって分析した。細胞の計数は、脱着細胞のタンパク質濃度(mg/ディッシュ)として提示される。
【図9B】過剰発現されたPKCδ及びPKCζがケラチン生成細胞脱着をインビトロで誘導することを示す。(A)初代ケラチン生成細胞は、未処理であるか(C)、又は組換えPKCα、PKCδ、PKCη、若しくはPKCζのアデノウイルスで感染される。細胞接着を、感染の24時間後及び48時間後に、細胞を持ち上げること、及びそれらをマトリックスコートされたディッシュ上に再プレートすることによって分析した。細胞の計数は、接着細胞のタンパク質濃度(mg/ディッシュ)として提示される。(B)初代ケラチン生成細胞は、未処理であるか(C)、又は組換えのPKCα、PKCδ、PKCη、若しくはPKCζのアデノウイルスで感染されるかのいずれかであった。細胞脱着を、感染の24時間後に、培養培地中で脱着した浮遊している細胞を収集することによって分析した。細胞の計数は、脱着細胞のタンパク質濃度(mg/ディッシュ)として提示される。
【図10】PKCηが活発に増殖しているケラチン生成細胞中で発現されることを実証する。初代ケラチン生成細胞はラミニン5−コートしたガラススライド上にプレートした。プレーティングの48時間後、ケラチン生成細胞をBrdU溶液と1時間インキュベートし、続いて、上記の実施例の節において記載されるように、抗PKCη(赤色)抗体及び抗BrdU(緑色)抗体を使用する免疫蛍光分析を行った。細胞を共焦点顕微鏡によってスキャンし、代表的な視野を写真撮影した。
【図11】PKCηがケラチン生成細胞増殖を誘導するが、PKCη変異体はそれを減少することを実証する。初代皮膚ケラチン生成細胞に、組換えのPKCηアデノウイルス又はPKCηの顕性不活性変異体(DNPKCη又はPKC DNη)アデノウイルスで1時間感染させた。感染の48時間後、細胞増殖を、上記の実施例の節において記載される1時間の3H−チミジン取り込みによって分析した。結果を、cpm/ディッシュとして提示する。対照は非感染細胞である。
【図12A】PKCη及びDNPKCηの過剰発現が、PKC局在化及び細胞形態を特異的に調節することを実証する。一次皮膚ケラチン生成細胞に、組換えPKCηアデノウイルス又は顕性不活性変異体PKCη(PKC DNη)アデノウイルスを1時間感染させた。感染の48時間後、ケラチン生成細胞を固定し、(A)明視野写真撮影(×20)及び(B)実験手順において記載されるような、PKCη特異的抗体、続いてFITC結合体化二次抗体を利用する免疫蛍光分析に供する。対照は非感染細胞である。
【図12B】PKCη及びDNPKCηの過剰発現が、PKC局在化及び細胞形態を特異的に調節することを実証する。一次皮膚ケラチン生成細胞に、組換えPKCηアデノウイルス又は顕性不活性変異体PKCη(PKC DNη)アデノウイルスを1時間感染させた。感染の48時間後、ケラチン生成細胞を固定し、(A)明視野写真撮影(×20)及び(B)実験手順において記載されるような、PKCη特異的抗体、続いてFITC結合体化二次抗体を利用する免疫蛍光分析に供する。対照は非感染細胞である。
【図13A】PKCη発現の阻害が、増殖しているケラチン生成細胞におけるケラチン生成細胞分化を誘導することを示す。初代皮膚ケラチン生成細胞を低Ca2+培地中で増殖状態に維持するか、又は0.12mM Ca2+中で24時間分化させるかのいずれかであった。その後、ケラチン生成細胞に、組換えPKCηアデノウイルス又はPKCηの顕性不活性変異体(PKC DNη)アデノウイルスで1時間感染させた。感染の24時間後、ケラチン生成細胞を、低Ca2+培地中で維持するか、又は0.12mM Ca2+を含む分化培地に24時間移すかのいずれかであった。感染の24時間後、ケラチン生成細胞を抽出し、SDS−PAGEゲルに供した。PKCη(A)及びケラチン1(B)の発現を、ウェスタンブロッティングによって分析した。
【図13B】PKCη発現の阻害が、増殖しているケラチン生成細胞におけるケラチン生成細胞分化を誘導することを示す。初代皮膚ケラチン生成細胞を低Ca2+培地中で増殖状態に維持するか、又は0.12mM Ca2+中で24時間分化させるかのいずれかであった。その後、ケラチン生成細胞に、組換えPKCηアデノウイルス又はPKCηの顕性不活性変異体(PKC DNη)アデノウイルスで1時間感染させた。感染の24時間後、ケラチン生成細胞を、低Ca2+培地中で維持するか、又は0.12mM Ca2+を含む分化培地に24時間移すかのいずれかであった。感染の24時間後、ケラチン生成細胞を抽出し、SDS−PAGEゲルに供した。PKCη(A)及びケラチン1(B)の発現を、ウェスタンブロッティングによって分析した。
【図14】PKCηの局所的インビボ発現が顆粒組織の形成を増強し、且つマウス切開性創傷における創傷治癒を加速することを実証する。全体の皮膚の7mmの切開をヌードマウスの背に作製した。対照β−gal、PKCη、及びPKCαのアデノウイルス懸濁液の局所塗布を、創傷の1日後及び4日後に行った。全体の皮膚の創傷を4%パラホルムアルデヒド中で固定し、皮膚切片をH&E染色及び明視野顕微鏡によって組織学的に分析した。E−表皮、D−真皮。
【図15】インスリンが、増殖しているケラチン生成細胞中でPKCδのトランスロケーションを特異的に誘導するが、IGF1は誘導しないことを実証する。初代ケラチン生成細胞は、上記の実施例の節において記載されるように、単離及びプレートされた。増殖しているケラチン生成細胞は、それらが80%コンフルエンシーに達するまで、低Ca2+培地(0.05mM)中で5日間維持された。細胞を、10−7Mインスリン(Ins)又は10−8M IGF1(IGF)で15分間刺激した。記載されるように、細胞を溶解し、刺激された細胞及び対照の未刺激(Cont)細胞の20μgの膜又は細胞質ゾル抽出物をSDS−PAGE及び転写に供した。ブロットを、各PKCアイソフォームに対する特異的ポリクローナル抗体でプローブした。
【図16】インスリンがPKCδ活性を誘導するが、IGF1は誘導しないことを示す。PKCδ活性を決定するために、5日間のケラチン生成細胞培養を、10−7Mインスリン(Ins)又は10−8M IGF1(IGF)で所定の時間(1、15、又は30分間)刺激した。PKCδを、特異的抗PKCδ抗体を使用して、膜画分(青色バー、mem)及び細胞質ゾル画分(紫色バー、cyto)から免疫沈殿した。PKCδ免疫沈殿物を、実験手順において記載されるように、インビトロキナーゼアッセイを利用するPKCについて分析した。各バーは、3つの別々の実験における3回の測定の平均±SEを表す。値はpmol ATP/ディッシュ/分として表される。
【図17A】インスリン及びIGF1がケラチン生成細胞増殖に対する相加的な効果を有することを示す。増殖しているケラチン生成細胞を、これらが80%コンフルエンスに達するまで、低Ca2+培地(0.05mM)中で5日間維持した。(A)5日間のケラチン生成細胞培養を、所定濃度でのインスリン又はIGF1で24時間刺激した。(B)並行して、ケラチン生成細胞を、10−7Mインスリン(Ins)及び増加用量のIGF1(IGF)で刺激した。各濃度において、右のカラム(縞模様のバー)は、両方のホルモンが一緒に加えられたときに観察される増殖を表す。左のバーは、10−7Mインスリン(赤いバー)及び増加濃度のIGF1(灰色のバー)の別々の効果を実証する。チミジン取り込みは、実験手順に記載されているように測定した。示される結果は6回の実験を表す。各バーは、対照の未刺激ケラチン生成細胞の上のパーセントとして表される、3回の測定の平均±SEを表す。
【図17B】インスリン及びIGF1がケラチン生成細胞増殖に対する相加的な効果を有することを示す。増殖しているケラチン生成細胞を、これらが80%コンフルエンスに達するまで、低Ca2+培地(0.05mM)中で5日間維持した。(A)5日間のケラチン生成細胞培養を、所定濃度でのインスリン又はIGF1で24時間刺激した。(B)並行して、ケラチン生成細胞を、10−7Mインスリン(Ins)及び増加用量のIGF1(IGF)で刺激した。各濃度において、右のカラム(縞模様のバー)は、両方のホルモンが一緒に加えられたときに観察される増殖を表す。左のバーは、10−7Mインスリン(赤いバー)及び増加濃度のIGF1(灰色のバー)の別々の効果を実証する。チミジン取り込みは、実験手順に記載されているように測定した。示される結果は6回の実験を表す。各バーは、対照の未刺激ケラチン生成細胞の上のパーセントとして表される、3回の測定の平均±SEを表す。
【図18A】組換えPKCアデノウイルス構築物の過剰発現を実証する。ケラチン生成細胞培養物を、野生型PKCδ(WTPKCδ)、野生型PKCα(WTPKCα)、又は顕性不活性PKCδ変異体(DNPKCδ)を含む組換えアデノウイルス構築物を利用して感染させた。(A)感染後、細胞を24時間培養し、収集し、20μgのタンパク質抽出物を、特異的抗PKCα抗体又は抗PKCδ抗体を使用して、ウェスタンブロッティングによって分析した。提示されるブロットは、5回の別々の実験を表す。(B)感染の24時間後、細胞を収集し、PKCα又はPKCδの免疫沈殿物を、インビトロキナーゼアッセイによって評価した。
【図18B】組換えPKCアデノウイルス構築物の過剰発現を実証する。ケラチン生成細胞培養物を、野生型PKCδ(WTPKCδ)、野生型PKCα(WTPKCα)、又は顕性不活性PKCδ変異体(DNPKCδ)を含む組換えアデノウイルス構築物を利用して感染させた。(A)感染後、細胞を24時間培養し、収集し、20μgのタンパク質抽出物を、特異的抗PKCα抗体又は抗PKCδ抗体を使用して、ウェスタンブロッティングによって分析した。提示されるブロットは、5回の別々の実験を表す。(B)感染の24時間後、細胞を収集し、PKCα又はPKCδの免疫沈殿物を、インビトロキナーゼアッセイによって評価した。
【図19】インスリン又はIGF1で誘導される増殖に対するPKC過剰発現の効果を示す。非感染(明るい青いバー)、又はWTPKCδを過剰発現する細胞(暗い青いバー)若しくはDNPKCδを過剰発現する細胞(斜線をつけた青いバー)を、10−7Mインスリン(Ins)、10−8M IGF1(IGF)、又は両方(Ins+IGF)で24時間処理した。チミジン取り込みを、実験手順に記載されるように測定した。各バーは、別々の培地に対して行った3つの実験における3回の測定の平均±SEを表す。値は、各実験における同じ培養物からの、対照の未刺激細胞のパーセントとして表される。
【図20】PKCδ活性の阻害が、インスリン誘導性のケラチン生成細胞増殖を特異的に無効にすることを示す。初代ケラチン生成細胞を、上記の実施例の節において記載されるように培養した。非感染細胞又はDNPKCδで感染したケラチン生成細胞を、以下の増殖因子濃度で24時間刺激した:10−7M インスリン(Ins)、10−8M IGF1(IGF)、10ng/ml EGF、10ng/ml PDGF、1ng/ml KGF、又は5ng/ml ECGF。チミジン取り込みを、上記の実施例の節において記載されるように測定した。各バーは、別々の培地に対して行った3つの実験における3回の測定の平均±SEを表す。値は、各実験における同じ培養物からの、対照の未刺激細胞のパーセントとして表される。
【図21】PKCδの過剰発現がインスリン誘導性のケラチン生成細胞増殖を特異的に媒介することを示す。初代ケラチン生成細胞を図1の下に記載されるように培養した。非感染細胞又は過剰発現WTPKCδで感染されたケラチン生成細胞を、以下の増殖因子濃度で24時間刺激した:10−7M インスリン(Ins)、10−8M IGF1(IGF)、10ng/ml EGF、10ng/ml PDGF、1ng/ml KGF、又は5ng/ml ECGF。チミジン取り込みを、上記の実施例の節において記載されるように測定した。各バーは、別々の培地に対して行った3つの実験における3回の測定の平均±SEを表す。値は、各実験における同じ培養物からの、対照の未刺激細胞のパーセントとして表される。
【図22A】インビボでの皮膚の創傷治癒プロセスにおけるPKCδ及びPKCζの有意さを実証する。新規に開発された、アイソフォーム特異的な無PKCマウス、無PKCαマウス、無PKCδマウス、及び無PKCζマウス、並びにそれらの野生型同腹仔のインビボマウスモデルを利用することが、創傷治癒の研究に供された。マウスは麻酔され、直径4mmのパンチ生検を通した皮膚がマウスの背に作製された。1週間の追跡後、マウスの皮膚を取り出し、皮膚の創傷治癒を、破裂チャンバー技術を利用する創傷強度試験に皮膚弁を供することによって定量した。値は、破裂が起こるまでモニターされるチャンバー内の最大圧力を表す破裂圧力として表される。結果は、12〜20匹のマウスの別個の群において得られる測定を表す。実験を少なくとも3回繰り返した。
【図22B】インビボでの皮膚の創傷治癒プロセスにおけるPKCδ及びPKCζの有意さを実証する。新規に開発された、アイソフォーム特異的な無PKCマウス、無PKCαマウス、無PKCδマウス、及び無PKCζマウス、並びにそれらの野生型同腹仔のインビボマウスモデルを利用することが、創傷治癒の研究に供された。マウスは麻酔され、直径4mmのパンチ生検を通した皮膚がマウスの背に作製された。1週間の追跡後、マウスの皮膚を取り出し、皮膚の創傷治癒を、破裂チャンバー技術を利用する創傷強度試験に皮膚弁を供することによって定量した。値は、破裂が起こるまでモニターされるチャンバー内の最大圧力を表す破裂圧力として表される。結果は、12〜20匹のマウスの別個の群において得られる測定を表す。実験を少なくとも3回繰り返した。
【図23】初代皮膚ケラチン生成細胞におけるSTAT3とPKCδの間の特異的相互作用を同定する。初代ケラチン生成細胞は、未処理であるか(上のパネル)、又はアイソフォーム特異的な、組換えPKCアデノウイルスで1時間感染されたか(下のパネル)のいずれかであった。細胞を抽出し、アイソフォーム特異的PKC抗体で免疫沈殿(IP)させた。この免疫沈殿物を、抗PKC又は抗STAT3抗体を使用するウェスタンブロット分析に供した。
【図24】インスリン誘導性のSTAT3の転写活性化に対するPKCδ活性化の重要性を実証する。初代ケラチン生成細胞をガラススライド上に配置し、それらが80%コンフルエントに達するまで、低Ca++培地(0.05mmol/l)中で5日間維持した。細胞は未処理であるか(Cont、上のパネル)又は5μMロットレリンで7分間前処理し(R、下のパネル)、続いて10−7Mインスリンで5分間処理した(Ins)。細胞をメタノールで固定し、洗浄し、風乾した。培養物を、抗ホスホ−Tyr−705−STAT3抗体、続いてFITC結合体化二次抗体を使用する免疫蛍光によって分析した。細胞を共焦点顕微鏡によってスキャンした。
【図25】DN PKCδの過剰発現が、PKCδ及びSTAT3の過剰発現によって誘導されたケラチン生成細胞増殖を阻害することを実証する。初代ケラチン生成細胞を、β−Gal(対照のため)、PKCδ、WT STAT3、DN STAT3、又はDN PKCδ、続いてSTAT3での二重感染を含む組換えアデノウイルス構築物で1時間感染させた。感染の24時間後、細胞増殖を、1時間の3H−チミジン取り込みによって分析した。結果はDPM/mgタンパク質として提示される。各バーは、同じ培養からのプレート中での3回の測定の平均を表す。
【図26】インビボでの創傷治癒に対するインスリン濃度及び塗布の頻度の重要性を実証する。創傷切開を、8〜10週齢C57BLマウスの背で実行し、PBS(対照)を用いて、又は異なる濃度及び頻度のインスリン塗布(すなわち、1日に7回の反復塗布対単回塗布)を用いて処置した。マウスを創傷形成の7日後に屠殺し、処置した創傷の面積を測定した。結果を、mm2創傷面積として提示し、各バーは6回の複製の平均±標準偏差を表す(p<0.005)。
【図27】インビボでの創傷治癒に対するインスリン濃度及び塗布の頻度の組織学的効果を実証する。創傷切開を、8〜10週齢C57BLマウスの背で実行し、異なる濃度及び頻度のインスリン塗布(すなわち、1日に7回の反復塗布対単回塗布)を用いて処置した。組織学的創傷切片を、創傷形成の7日後に実行し、表皮及び真皮の閉鎖(創傷収縮)について分析した。表皮閉鎖はケラチン14(K14)抗体染色によって評価し(左のパネル)、創傷が全体のギャップを横切ってポジティブに染色された場合にポジティブと見なした。真皮閉鎖は、両方の真皮の創傷の側が×100倍率の単一の視野において光学顕微鏡下で観察可能であった場合にポジティブと見なした(右のパネル)。結果を、対照に対する創傷閉鎖のパーセントとして提示し、各バーは6回の複製の平均を表す。
【図28】インビボでの創傷治癒に対する、インスリン及び血小板由来増殖因子(PDGF−BB)を組み合わせることの相乗作用を実証する。創傷切開を、8〜10週齢C57BLマウスの背で実行し、インスリン、PDGF−BB、又はインスリン及びPDGF−BBの組み合わせの単回塗布を用いて処置した。処置したマウスを創傷形成の7日後に屠殺し、表皮及び真皮の閉鎖(創傷収縮)の組織学的分析のために生検を採取した。表皮閉鎖はケラチン14(K14)抗体染色によって評価し(左のパネル)、創傷が全体のギャップを横切ってポジティブに染色された場合にポジティブと見なした。真皮閉鎖は、両方の真皮の創傷の側が×100倍率の単一の視野において光学顕微鏡下で観察可能であった場合にポジティブと見なした(右のパネル)。結果を、対照に対する創傷閉鎖のパーセントとして棒グラフ中に要約されたように提示し、各バーは6回の複製の平均を表す。
【図29】インビボでの創傷治癒に対する、インスリン及びPKCα阻害剤を組み合わせることの形態学的効果を例証する写真である。創傷切開を、8〜10週齢C57BLマウスの背で実行し、処置しないか(対照)、又はPKCα阻害剤(HO/02)と組み合わせたインスリン(HO/01)を用いて処置したかのいずれかであった。形態学的観察のために、皮膚生検を創傷形成の7日後に取り出した。図29A〜Bは対照創傷を示すのに対し、図29C−Dは処置した創傷を示す。
【図30】真皮閉鎖(創傷収縮)に対するインスリン及びPKCα阻害剤の組み合わせ効果を例証する組織顕微鏡写真である。創傷切開を、8〜10週齢C57BLマウスの背で実行し、処置しないか(対照)、又はPKCα阻害剤(HO/02)と組み合わせたインスリン(HO/01)を用いて毎日処置したかのいずれかであった。処置したマウスを創傷形成の7日後に屠殺した。組織学的創傷切片を実行し、光学顕微鏡下で観察した。真皮閉鎖は、両方の真皮の創傷の側が×100倍率の単一の視野において観察可能であった場合にポジティブと見なした。未処置対照切片における開いた創傷の領域(左のパネル)は大きすぎて×100倍率の単一の視野に含まれなかったのに対して、処置した創傷切片(右のパネル)はポジティブな真皮閉鎖を示す。黄色の斑点状の線は真皮の端の印である。
【図31】表皮閉鎖に対する、インスリン及びPKCαの組み合わせ効果を例証する組織顕微鏡像である。創傷切開を、8〜10週齢C57BLマウスの背で実行し、処置しないか、又はPKCα阻害剤(HO/02)と組み合わせたインスリン(HO/01)を用いて毎日処置したかのいずれかであった。処置したマウスを創傷形成の7日後に屠殺した。組織学的創傷切片を実行し、ケラチン14(基底ケラチン生成細胞の指標)で染色し、光学顕微鏡下で観察した。未処置対照切片(左のパネル)における開いた創傷の領域(矢印で示す)は大きすぎて×100倍率の単一の視野に含まれなかったのに対して、処置した創傷切片(右のパネル)は全体の創傷ギャップを通して表皮閉鎖を示す。
【図32】表皮細胞の空間的分化に対する、インスリン及びPKCα阻害剤の組み合わせ効果を例証する組織顕微鏡像である。創傷を有するマウス(C57BL、8〜10週齢)を、PKCα阻害剤(HO/02)と組み合わせたインスリン(HO/01)の局所的塗布を用いて毎日処置した。処置したマウスを創傷形成の7日後に屠殺した。組織学的創傷切片を実行し、空間的細胞分化の初期段階を強調するケラチン1(K1)抗体で染色した。未処置対照切片(左のパネル)は巨大な未分化創傷領域(矢印で示す)を示すのに対して、処置した創傷切片(右のパネル)においては大規模な表皮再構築が観察可能である。
【図33】インビボでの創傷治癒に対する、PKCα阻害剤と組み合わせたインスリンの定量的効果を実証する。創傷を有するマウス(C57BL、8〜10週齢)を、PKCα阻害剤(HO/02)と組み合わせたインスリン(HO/01)の局所的塗布を用いて毎日処置した。処置したマウスを創傷形成の7日後に屠殺した。組織学的創傷切片を実行し、上記の図30〜32に記載されるのと同様に、真皮収縮、表皮閉鎖、及び空間的分化について分析した。棒グラフは、各処置群中の組織学的分析によって決定されるような、完全に治癒した創傷の発生(パーセンテージ)を示す。
【図34】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、PKCαの発現及び/若しくは活性を阻害すること、並びに真皮細胞における別のPKCアイソフォームの発現及び/若しくは活性を調節すること、又は真皮細胞にホルモンを投与することの組み合わせ効果を例証する写真である。培養した初代皮膚線維芽細胞を、顕性不活性(DN)キナーゼ不活性PKCαで感染させた。24時間後、擦過傷を実行し、培養物を、未処置のままであるか(図34A)、又は野生型(WT)PKCδ(図34B)、PKCη(図34C)、WT PKCζ(図34D)、若しくはWT PKCε(図34E)で感染させたかのいずれかであった。代替的には、PKCα阻害された培養物は、アディプシン(2μg/ml;図34F)又はインスリン(6.7×10−7M;図34G)で処置した。写真撮影を、処置の24時間後に行った。
【図35】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、PKCαの発現及び/若しくは活性を阻害すること、並びに真皮細胞における別のPKCアイソフォームの発現及び/若しくは活性を調節すること、又は真皮細胞への増殖因子の投与の組み合わせ効果を例証する写真である。培養した初代皮膚ケラチン生成細胞を、顕性不活性(DN)キナーゼ不活性PKCαで感染させた。24時間後、擦過傷を実行し、培養物を、未処置のままであるか(図35A)、又は野生型(WT)PKCε(図35D)、WT PKCζ(図35E)、若しくはWT PKCη(図35F)で感染させたかのいずれかであった。代替的には、PKCα阻害された培養物は、IL−6(1μg/ディッシュ;図35B)、KGF(1μg/ディッシュ;図35C)、PKCδ RACK(10−7M;図35H)、又はTNFα(12μg/ml;図35G)で処置した。写真撮影を、処置の24時間後に行った。
【図36】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、真皮細胞中のPKCζの発現及び/又は活性を阻害すること、並びに真皮細胞に増殖因子を投与することの組み合わせ効果を例証する写真である。培養した初代皮膚線維芽細胞を、顕性不活性(DN)キナーゼ不活性型のPKCζ(DNζ)で感染させた。24時間後、擦過傷を実行し、培養物を、未処置のままであるか(図36A)、又はKGF(1μg/ディッシュ;図36B)で処置したかのいずれかであった。写真撮影を、処置の24時間後に行った。
【図37】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、真皮細胞におけるPKCζの発現及び/又は活性を阻害すること、並びに真皮細胞に増殖因子又はホルモンを投与することの組み合わせ効果を例証する写真である。培養した初代皮膚ケラチン生成細胞を、顕性不活性(DN)キナーゼ不活性型のPKCζ(DNζ)で感染させた。24時間後、擦過傷を実行し、培養物を、未処置のままであるか(図37A)、又はIL−6(1μg/ディッシュ;図37B)、TNFα(12μg/ml;図37C)、若しくはアディポネクチン(1μg/ディッシュ;図37D)で処置したかのいずれかであった。写真撮影を、処置の24時間後に行った。
【図38】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、真皮細胞におけるPKCβの発現及び/又は活性を阻害すること、並びに真皮細胞に増殖因子、インスリン、又はGW9662を投与することの組み合わせ効果を例証する写真である。培養した初代皮膚線維芽細胞を、顕性不活性(DN)キナーゼ不活性型のPKCβ(DNβ)で感染させた。24時間後、擦過傷を実行し、培養物を、未処置のままであるか(図38A)、又はKFG(1μg/ディッシュ;図38B)IL−6(1μg/ディッシュ;図38C)、インスリン(6.7×10−7M;図38D)、又はGW9662(1μg/ディッシュ;図38E)で処置したかのいずれかであった。写真撮影を、処置の24時間後に行った。
【図39】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、PKCδの発現及び/又は活性を促進すること、並びに真皮細胞における別のPKCアイソフォームの発現及び/又は活性を調節すること、又は真皮細胞にホルモンを投与することの組み合わせ効果を例証する写真である。培養した初代皮膚ケラチン生成細胞を、PKCδ(DNδ)の野生型(WT)のキナーゼ型で感染させた。24時間後、擦過傷を実行し、培養物を、未処置のままであるか(図39A)、又はWT PKCζ(PKCζ;図39B)、WT PKCε(PKCε;図39C)、又はDN PKCα(PKCα、図30D)で処置したかのいずれかであった。代替的には、PKCδ促進された培養物は、アディプシン(2μg/ml;図39E)で処置した。写真撮影を、処置の48時間後に行った。
【図40】インビトロでの皮膚創傷の閉鎖に対する、コポリマー1、インスリン、PKCα偽基質、又はこれらの組み合わせを投与することの効果を例証する写真である。培養した初代皮膚ケラチン生成細胞を、未処置のままであるか(図40A)、又はインスリンのみ(6.7×10−7M;図40B)、コポリマー1のみ(55μg/ディッシュ;図40C)、インスリン及びPKCα偽基質の混合物(それぞれ6.7×10−7M及び107M;図40D)、コポリマー1及びインスリンの混合物(それぞれ55μg/ディッシュ及び6.7×10−7M;図40E)、若しくはコポリマー1、インスリン、及びPKCα偽基質の混合物(それぞれ55μg/ディッシュ、6.7×10−7M、及び107M;図40F)で処置したかのいずれかであった。写真撮影を、処置の48時間後に行った。
【図41A】インビボでの創傷の治癒に対する、コポリマー1、インスリン、PKCα偽基質、又はこれらの組み合わせの効果を例証する写真である。創傷を有するマウスを、未処置のままであるか(図41A)、又はコポリマー1(55μg/ml;図41B)、コポリマー1及びインスリンの混合物(それぞれ55μg/ディッシュ及び1μM;図41C)、若しくはコポリマー1、インスリン、及びPKCα偽基質の混合物(それぞれ55μg/ml、1μM、及び1μM;図41D)の局所的塗布を用いて4日間毎日処置した。写真撮影を、処置の4日後に行った。
【図41B】インビボでの創傷の治癒に対する、コポリマー1、インスリン、PKCα偽基質、又はこれらの組み合わせの効果を例証する写真である。創傷を有するマウスを、未処置のままであるか(図41A)、又はコポリマー1(55μg/ml;図41B)、コポリマー1及びインスリンの混合物(それぞれ55μg/ディッシュ及び1μM;図41C)、若しくはコポリマー1、インスリン、及びPKCα偽基質の混合物(それぞれ55μg/ml、1μM、及び1μM;図41D)の局所的塗布を用いて4日間毎日処置した。写真撮影を、処置の4日後に行った。
【図41C】インビボでの創傷の治癒に対する、コポリマー1、インスリン、PKCα偽基質、又はこれらの組み合わせの効果を例証する写真である。創傷を有するマウスを、未処置のままであるか(図41A)、又はコポリマー1(55μg/ml;図41B)、コポリマー1及びインスリンの混合物(それぞれ55μg/ディッシュ及び1μM;図41C)、若しくはコポリマー1、インスリン、及びPKCα偽基質の混合物(それぞれ55μg/ml、1μM、及び1μM;図41D)の局所的塗布を用いて4日間毎日処置した。写真撮影を、処置の4日後に行った。
【図41D】インビボでの創傷の治癒に対する、コポリマー1、インスリン、PKCα偽基質、又はこれらの組み合わせの効果を例証する写真である。創傷を有するマウスを、未処置のままであるか(図41A)、又はコポリマー1(55μg/ml;図41B)、コポリマー1及びインスリンの混合物(それぞれ55μg/ディッシュ及び1μM;図41C)、若しくはコポリマー1、インスリン、及びPKCα偽基質の混合物(それぞれ55μg/ml、1μM、及び1μM;図41D)の局所的塗布を用いて4日間毎日処置した。写真撮影を、処置の4日後に行った。
【図42A】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42B】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42C】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42D】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42E】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42F】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42G】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図42H】創傷治癒プロセスに対する、創傷ギャップへの胸腺近接の効果を例証する組織顕微鏡像である。図42A〜Bは、×200倍率における正常成体齧歯類胸腺を示す。図42Cは、×40に拡大された7日齢創傷で、胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察されることを示す(赤四角;図42Dでは×200拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。図42E〜Fは、×40拡大(図42E)及び×200拡大(図42F)されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示し、胸腺は創傷ギャップの密接した近接で観察されず、再表皮形成、組織顆粒化、又は真皮収縮は観察されない。図42Gは、×40拡大されたSTZ糖尿病マウスの9日齢創傷を示す。創傷を、インスリン及びPKCα偽基質の混合物で処置した。胸腺が創傷ギャップの密接した近接で観察される(赤四角;図42Hにおいて×20拡大)。創傷は再表皮形成し、顆粒組織が形成し、真皮収縮が進行している。
【図43】創傷及び損傷した皮膚の治癒に対する、PKCα阻害剤と組み合わせたインスリンの効果を例証する写真である。長軸方向の創傷切開を、Large Whites & Landrace家畜用ブタの背に行い、PBS(対照)又は1μM インスリン及び1μM PKCα偽基質(HO/03/03)の混合物のいずれかで、15日間毎日処置した。創傷を、創傷形成の30日後に写真撮影した。HO/03/03処置された創傷は、瘢痕形成を伴わずに完全に治癒し、緩衝液対照と比較して、顕著に改善された皮膚の美観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明は、細胞増殖及び/又は細胞分化を誘導及び/又は促進するために、PKCとしても知られるセリン/スレオニンタンパク質キナーゼの発現及び/又は活性化を調節するように設計された方法及び薬剤組成物の発明であり、それによって創傷の治癒プロセスを促進する。本発明の教示に従って、例えば、(i)PKC発現構築物での創傷細胞の形質転換、(ii)創傷細胞の内因性PKC遺伝子と隣接したその上流に挿入するシス作用性エレメントでの創傷細胞の形質転換、(iii)創傷細胞でPKCの発現及び/又は活性化を調節するインスリン、並びにインスリンと相乗的に作用する他の作用物質の投与、(iv)インスリン発現構築物から産生され、発現され分泌されるインスリンがPKC発現及び/又は活性化の上方制御因子として働くときの、そのインスリン発現構築物での創傷細胞の形質転換、(v)発現され分泌されるインスリンがPKC発現及び/又は活性化の上方制御因子として働くときの、創傷細胞の内因性インスリン遺伝子と隣接したその上流に挿入するシス作用性エレメントでの創傷細胞の形質転換、(vi)創傷へのインスリン分泌細胞の移植、(vii)インスリンがPKC発現及び/又は活性化の上方制御因子として働くときの、内因性インスリンの産生及び分泌を誘導するトランス作用性因子、例えばPDX1での創傷細胞の形質転換、並びに(viii)創傷へのPKC調節因子の投与によって、そのような発現の調節を実施することができる。本発明に従った方法及び薬剤組成物の原理及び操作は、図面及び添付した説明を参照するとよりよく理解することができる。
【0080】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、その適用において、下記の説明で示し、又は実施例の項で例示する構築の詳細、及び構成要素の配置に限らないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態も可能であり、或いは様々な形で実施又は実行することも可能である。また、本明細書で使用する語法及び専門用語が、説明を目的とするものであり、限定するものと見なすべきでないことも理解されたい。
【0081】
成体の皮膚は、2つの層:角質化した層を成す表皮、並びに支持及び栄養をもたらす、底にある厚い層のコラーゲンに富む皮膚結合組織を含む。皮膚は、外界に対する保護障壁として働く。したがって、皮膚でのどんな損傷又は破損も、迅速に且つ効率よく修復しなければならない。上記の背景の項で記載したように、修復の第1段階は、最初の創傷を塞ぐ血餅の形成によって達成される。その後、炎症細胞、線維芽細胞及び毛細血管が血餅に侵入して、肉芽組織を形成する。続いての段階では、創傷の再上皮化がなされ、基底のケラチン生成細胞が半接着斑の接触を喪失しなければならず、ケラチン生成細胞がその肉芽組織の上に移動して創傷を覆う。ケラチン生成細胞の移動後、ケラチン生成細胞は増殖促進に入り、損傷の間に喪失した細胞の補充を可能にする。創傷がケラチン生成細胞の単層で覆われた後、層を成す新たな表皮が形成され、新たな基底膜が再構築される(20〜23)。EGFファミリーの増殖因子、KGF、PDGF及びTGFβ1を含めて、いくつかの増殖因子がこのプロセスに関与することが示されている(22〜24)。これらの増殖因子の中で、EGFとKGFの両方が、表皮ケラチン生成細胞の増殖及び移動の制御に密接に関与すると考えられている(25、26)。創傷治癒の生物学の理解に対する基本は、創傷中の細胞の移動、増殖、及び創傷の間隙中の新たな基質の定着を誘発するシグナルの知識である。
【0082】
以下の開示中で示す本発明の理解を促進するために、いくつかの用語を下記に定義する。
【0083】
「創傷」という用語は、様々な形(例えば、長い寝床での静止状態からの褥瘡、外傷、切傷、潰瘍、熱傷などで誘導される創傷)のいずれかで惹起される皮膚及び皮下組織に対する損傷を広く指し、様々な特徴を伴う。創傷は通常、創傷の深さに応じて4つの程度のうち1つに分類される:(i)第1度:上皮に限局した創傷;(ii)第2度:真皮まで拡大した創傷;(iii)第3度:皮下組織まで拡大した創傷;及び(iv)第4度(又は全層創傷):骨が露出した(例えば、大転子や仙骨などの骨の圧点)創傷。
【0084】
「部分層創傷」という用語は、第1度〜第3度を包含する創傷を指す;部分層創傷の例には、熱傷創、褥瘡、静脈うっ血性潰瘍、及び糖尿病性潰瘍がある。
【0085】
「深い創傷」とは、第3度と第4度の両方の創傷を含むことを意味する。
【0086】
創傷に関して「治癒」という用語は、瘢痕形成によるように、創傷を修復するプロセスを指す。
【0087】
「皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する」という語句は、創傷収縮の肉芽組織形成の誘導及び/又は上皮化の誘導(すなわち、上皮中の新たな細胞の発生)を指す。創傷治癒は、好都合なことに、創傷領域の減少によって測定される。
【0088】
本発明は、深い創傷及び慢性創傷を含めて、創傷の型すべてを治療することを意図するものである。
【0089】
「慢性創傷」という用語は、30日以内に治癒しなかった創傷を指す。
【0090】
「形質転換細胞」という語句は、外因性核酸の取り込みによる細胞の核酸の内容の一時的な又は永久的な変化を指し、それを細胞ゲノムに組み込み細胞を遺伝子改変する、又は組み込まれない状態のままにする。
【0091】
「シス作用性エレメント」という用語は、本明細書において、DNA結合タンパク質の結合部位(例えば、エンハンサー、オペレーター及びプロモーター)として使用し、それによって同じ染色体上の1つ又は複数の遺伝子の活性に影響を及ぼす遺伝子領域を示すのに使用する。
【0092】
「トランス作用性因子」という語句は、本明細書において、シス作用性エレメントと結合し、それからの遺伝子発現に関してその活性を調節する因子を示すのに使用する。したがって、PDX1は、インスリン遺伝子プロモーターと結合し、その活性を調節するトランス作用性因子である。
【0093】
「転写活性化物質」という語句は、本明細書において、遺伝子発現を増大させる因子を示すのに使用する。トランス作用性因子は、直接的な転写活性化物質の一例である。
【0094】
「活性化物質」という用語は、本明細書において、活性を促進する分子を示すのに使用する。
【0095】
本明細書において「発現及び/又は活性化の調節」という語句は、発現及び/又は活性化の促進又は抑制を指す。
【0096】
PKCは、ケラチン生成細胞の増殖及び分化を媒介する主要なシグナル伝達経路である。PKCアイソフォームα、δ、ε、η及びζが皮膚で発現している(4、10)。本発明を考え出す間、PKCの発現及び/又は活性化を調節すると、細胞増殖及び/又は細胞分化が誘導され、それによって創傷の治癒プロセスが促進される可能性があると仮定した。本発明を実施に移す間、この理論は、PKCの発現及び/又は活性化を調節すると、実際に細胞増殖及び細胞分化が誘導され、創傷の治癒プロセスが促進されることを示す多数の実験によって認められた。本明細書で非常に詳細までさらに述べるように、PKCの発現及び/又は活性化を調節して、それによって創傷の治癒プロセスを促進する様々な異なる手法に着手した。実験による知見に基づいて、他の手法を考え出した。本発明を実施に移す間に、インスリンがPKCの発現及び/又は活性化の調節因子として働くという際立った新規な現象が発見された。そのようなものとして、インスリンは、創傷の治癒プロセスを促進するように、PKCの発現及び/又は活性化を調節する治療用作用物質として働くことができる。
【0097】
別個のPKCアイソフォームの特徴、並びに細胞の増殖及び/又は分化に対するその特異的な効果は、皮膚の創傷治癒の生物学に非常に重要である。PKCアデノウイルス構築物を利用すると、in vitro及びin vivoでの創傷治癒プロセスにおける様々なPKCアイソフォームの特異的な役割を同定することが可能となる。すべてのアイソフォームが、ケラチン生成細胞の増殖及び分化の異なる側面に特異的に影響を及ぼすことができる。2種のアイソフォームPKCδ及びPKCζは、インテグリンの制御(下記の実施例6を参照)、基底膜との接着(下記の実施例9を参照)及び半接着斑形成(下記の実施例8を参照)を特異的に制御することができた。2種のアイソフォームPKCδ及びPKCηは、表皮ケラチン生成細胞の増殖の潜在的可能性を制御することが分かった(下記の実施例7及び11を参照)。さらに、PKCηの顕性不活性アイソフォーム(DNPKCη)は、活発に増殖しているケラチン生成細胞の分化を特異的に誘導することができた(下記の実施例12を参照)。最後に、皮膚での創傷治癒プロセスに対する別個のPKCアイソフォームの重要性は、in vivo系でも実証された。別個のPKCアイソフォームの発現が消失した無PKCマウスを利用して、皮膚ケラチン生成細胞の接着と運動のプロセスのどちらにも必要であることが分かったPKCδ及びPKCζが、動物モデルにおけるin vivo創傷治癒プロセスでも重要であることを本明細書において示す(実施例19を参照)。無PKCの皮膚での皮膚全体の全層生検から、PKCδもPKCζも創傷の適切な治癒に必須であるが、PKCαは必須ではないことが示唆された。さらに、下記の実施例22は、PKCα抑制物質がin vivoで創傷治癒を有効に促進し、それによってPKCαアイソフォームが創傷治癒に拮抗性である可能性があることが示唆されることを示すものである。
【0098】
PKCηは、独特の組織分布を示す。それは上皮組織で主に発現する(27、28)。in situハイブリダイゼーションによる検討、並びに免疫組織化学的な検討から、PKCηが分化中の層及び分化能のある層で高度に発現することが示された(27)。本明細書で提示する結果から、PKCηが、細胞生理に応じて皮膚の増殖と分化のどちらの機能的制御因子としても役割を有することが示唆される。ケラチン生成細胞が低Ca2+条件下で増殖状態に維持されているとき、PKCηは、対照ケラチン生成細胞より5〜7倍高い増殖速度を誘導した。しかし、Ca2+濃度を上昇させることによって細胞に分化を誘導したとき、対照細胞と比べて迅速且つ高い速度で分化が誘導された(実施例12を参照)。増殖能と分化層の形成のどちらも実現されたので、このことから、PKCηが創傷治癒及び肉芽組織の形成を急激に誘導することができることを説明することができた。興味深いことに、in vivoでの創傷治癒の結果、及び成体期では通常高レベルでPKCηを発現しない胚組織でのPKCηの発現から、PKCηが同様に他の組織の増殖及び組織構成に役割を有すると考えられることが示唆された。これには、神経組織並びに皮膚組織及び筋組織があり、それらは創傷の肉芽組織中で効率よく治癒した。さらに、顕性不活性突然変異体を利用することによってケラチン生成細胞の分化を特異的に制御し、活発に増殖している細胞で正常な分化を誘導できると、特異的に分化を操作し、創傷治癒に関与する過剰増殖異常を調節することが可能となる。
【0099】
PKCηの治癒能が、ヌードマウスの背中に作り出した創傷に対してin vivoで発揮されることが、本明細書において例示される。下記の実施例14は、創傷にPKCη発現構築物を投与すると、局所感染させてから4日後に肉芽組織が形成されたことを示すものである。
【0100】
全体として、本明細書で提示する結果は、別個のPKCアイソフォームの発現及び/又は活性化(膜可動化)の調節が、創傷に対処する有効な手段であることを実証するものである。したがって、アイソフォームPKCδ、PKCη及びPKCζの発現及び/又は活性を増大させることによって、或いはアイソフォームPKCαの発現及び/又は活性を抑制することによって創傷治癒を促進することができる。
【0101】
したがって、本発明の一態様によれば、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、その方法は、皮膚創傷に、PKCの発現及び/又は活性化を調節する少なくとも1種の作用物質を治療有効量投与することによって実施される。したがって、本発明のこの態様に従った方法を実施するための薬剤組成物は、有効成分である、PKCの発現及び/又は活性化を調節する治療有効量の少なくとも1種の作用物質、並びに製剤上許容される担体を含む。
【0102】
本明細書において、「皮膚創傷」という語句は、それだけに限らないが、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、静脈性潰瘍、胃潰瘍やHIV関連潰瘍などの潰瘍、糖尿病関連の創傷、熱傷、日焼け、加齢による皮膚創傷、角膜潰瘍化による創傷、炎症性消化管疾患による創傷、腸炎症性疾患による創傷、クローン病による創傷、潰瘍性大腸炎、痔核、表皮水疱症による創傷、皮膚水疱形成性創傷、乾癬による創傷、動物の皮膚の創傷、動物の糖尿病による創傷、網膜症による創傷、口腔の創傷(粘膜炎)、膣粘膜炎による創傷、歯周病による創傷、裂傷、外科的切除による創傷、及び外科的接着後の創傷を含めて、任意の型の上皮創傷を指す。
【0103】
本明細書において「皮膚損傷」という語句は、例えば、しわ(例えば、紫外線照射誘導性のしわ)、皮膚の筋、間隙、隆起、大型の孔(例えば、汗腺の管路、皮脂腺や毛包などの付属器構造に伴うもの)やむら又は荒れ、皮膚の弾性の喪失(機能的な皮膚エラスチンの喪失及び/又は不活性化)、たるみ(眼の領域及び顎の腫脹を含む)、皮膚の堅固さの喪失、皮膚の締まりの喪失、皮膚の変形からの反跳の喪失、変色(眼下の隈を含む)、痣、黄ばみ、染みやそばかすなどの色素沈着過剰な皮膚の領域、角化上皮症、異常分化、ケラチン過剰生成、弾性線維症、コラーゲン崩壊や、角質層、真皮、表皮、皮膚の血管系(例えば毛細血管拡張症又はクモ状血管)、及び基底にある組織、特に皮膚と隣接する組織における他の組織変化など、任意の型の皮膚の損傷又は状態を指す。
【0104】
皮膚は、古典的なインスリン反応性の組織でないと考えられている。したがって、皮膚におけるインスリンの効果は、密接に関連するIGFRをそれが活性化できることに主に起因すると考えられる。ケラチン形成細胞では、インスリンもIGF1も、どちらの受容体も刺激し、類似した下流のエフェクターを活性化することができることが示された(34)。しかし、本発明は、どちらの増殖因子も投与量依存的にケラチン生成細胞増殖を誘導するが、各ホルモンは異なるシグナル伝達経路を介してその効果を発揮することを示すものである。インスリン及びIGF1によるケラチン生成細胞増殖の差次的な制御についての最初の示唆は、これらのホルモンが、一緒に添加したときに、各ホルモンの増殖を誘導する最大濃度でケラチン生成細胞増殖に対する相加的な効果を有するという知見によって確認された(実施例15を参照)。ケラチン生成細胞増殖の制御におけるインスリンとIGF1のシグナル伝達経路の分岐点を同定するために、ケラチン生成細胞増殖も制御し、インスリンシグナル伝達の下流のエフェクターとしても働くことが知られているエレメントを調べた。これらの検討から、インスリンシグナル伝達が、ケラチン生成細胞増殖においてPKCδによって特異的に媒介されることが明らかとなった(実施例17を参照)。PKCδは、PKCファミリーのタンパク質の中で独特のアイソフォームであり、様々な細胞型の増殖及び成熟に特異的に関与する(35)。しかし、PKCδが、EGF、血小板由来増殖因子及び神経伝達物質を含めたいくつかの増殖因子の刺激によって特異的に制御されることが示されたが、その生理的な効果は、アポトーシス、分化、及び細胞周期遅延又は停止を含めて、増殖因子による細胞増殖抑制に関与することが示された(36〜41)。最近、Ca2+の上昇後12〜24時間以内に、培養マウスケラチン生成細胞でα6β4インテグリン複合体の選択的な喪失が、K1の誘導へとつながることが示された(6)。α6β4タンパク質発現の喪失は、α6鎖及びβ4鎖のプロセシングの促進を含む転写及び翻訳後の事象の結果である。予備的な検討では、PKCの活性化と、α6β4インテグリンのプロセシング及び制御とのつながりが明らかとなった。これらの結果は、ケラチン生成細胞の脱離を誘導するα6β4発現及び半接着斑形成の喪失におけるPKCδ並びにPKCζの役割に対する以前の結果と一致する。しかし、本発明は、インスリン誘導性のケラチン生成細胞増殖の標的としての、PKCδの他の役割を同定するものである。下記の実施例は、それだけに限らないが、EGF、KGF、PDGF、ECGF及びIGF1を含む種々の増殖因子ではなく、インスリン刺激だけが、転位し、皮膚で発現される他のPKCアイソフォームのいずれでもなくPKCδを活性化することができることを示すものである。インスリン刺激に対するPKCδの重要性は、EGF、KGF、PDGF、ECGF及びIGF1による分裂促進刺激がPKCδの顕性不活性突然変異体によって抑止されなかったときにさらに確認され、インスリンは、ケラチン生成細胞増殖の制御におけるこのPKCアイソフォームの主要な活性化物質であるように思われた(実施例17を参照)。しかし、ケラチン生成細胞をWTのPKCδに感染させたとき、EGF及びKGFによるケラチン生成細胞の分裂促進刺激が増強された。このことは、PKCδの活性化が、上流のシグナル伝達経路による他の増殖因子の増殖刺激にも不可欠であることを示すものである。さらに、インスリン誘導性のPKCδ活性化及びケラチン生成細胞増殖を媒介する下流のエレメントを特徴付け、このプロセスでの転写活性化物質であるSTAT3の関与を同定した。STAT(転写シグナル伝達因子及び活性化因子(Signal Transducers and Activators of Transcription))タンパク質は、様々なサイトカイン及び増殖因子によって動員される転写因子ファミリーである。既知のSTATファミリーの構成要素7個中で、STAT3は独特である。他のSTATファミリーの構成要素ではなくSTAT3を標的として破壊すると、早期の胚性致死に至る。特に、皮膚でSTAT3の条件付き除去を行ったとき、皮膚の再構築が重度に崩壊した。活性化後、STATタンパク質はホモダイマー又はヘテロダイマーを形成し、核へと転位し、標的遺伝子のDNA反応エレメントと結合して転写を誘導する。ケラチン生成細胞では、皮膚で発現される他のPKCアイソフォーム(PKCα、ζ、η及びε)ではなくPKCδがSTAT3と構成的に結合していることが分かった(実施例18を参照)。さらに、インスリンは、PKCδの特異的な活性化を介してSTAT3のリン酸化、活性化及び核への転位を制御する。薬剤抑制物質ロットレリンにより、又は顕性不活性PKCδ突然変異体の過剰発現によりPKCδ活性を抑制すると、インスリン誘導性のSTAT3の活性化及び核への転位が抑止された。最後に、顕性不活性PKCδ突然変異体を過剰発現させると、STAT3の過剰発現によって誘導されるケラチン生成細胞増殖が抑制された(実施例18を参照)。これらの結果から、皮膚ケラチン生成細胞増殖における、STAT3による転写活性化でのインスリン誘導性PKCδ活性の役割が示唆される。STAT3が皮膚の再構築に重要であり、様々なサイトカイン及び増殖因子によって動員される下流のエフェクターであるので、これらの結果全体から、様々な皮膚増殖因子によるケラチン生成細胞の増殖を媒介する主要な下流のエフェクターとしてPKCδが活性化することが示唆される。特に、PKCδは、糖尿病患者で見られる創傷治癒欠損の原因の主要な候補である可能性がある。PKCδと創傷治癒のつながりは、in vivoでも確認された。新たに構築した無PKCδマウスを利用して、PKCδの欠如によってマウス皮膚での創傷治癒が遅延することが本明細書で示される(実施例19を参照)。PKCδとインスリンシグナル伝達のつながりも、他のいくつかの系で明らかとなっている。例えば、筋培養物中で、PKCδがインスリン誘導性のグルコース輸送を媒介することが最近示された(42、43)。同様に、インスリン受容体を過剰発現している細胞では、インスリン刺激がPKCδの活性化と関連することが示された(44〜46)。しかし、これらの研究ではインスリンが媒介するPKCδの活性化をインスリンの代謝効果と結び付けているが、これは、PKCδを、インスリンが媒介する細胞増殖と結び付ける最初の報告である。ケラチン生成細胞の増殖と、細胞がその下にある基底膜との接着を喪失する初期分化段階の調節の両方の制御におけるPKCδの確認された二重の役割が明らかとなった。このことから、インスリン誘導性PKCδが、皮膚における増殖と分化の生理的均衡を制御する主要な候補であることが示唆される。
【0105】
したがって、本発明の教示によれば、創傷細胞をインスリンにさらすことによってPKCの発現及び/又は活性化の調節を実施する。これは、以下でさらに例示するように、複数の選択方法の1つによって実行することができる。
【0106】
1つの方法は、創傷へのインスリンの直接投与である。以下の実施例21及び22で記載するように、インスリンを創傷に濃度0.1〜10μMで局所塗布すると、表皮及び皮膚の閉鎖、続いて創傷治癒が有効に促進された。さらに、驚くべきことに且つ意外なことに、インスリンをPDGF−BB増殖因子又はPKCα抑制物質と組み合わせて塗布すると、インスリン単独よりも創傷治癒プロセスが実質的に且つ相乗的に向上した。
【0107】
したがって、本発明の他の態様によれば、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供される。その方法は、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、皮膚創傷に、治療有効量のインスリン、及びインスリンと相乗的に作用する少なくとも1種のさらなる作用物質を投与することによって実施する。好ましくは、その作用物質はPKCα抑制物質である。さらに好ましくは、その作用物質は、PDGF、EGF、TGFβ、KGF、ECGFやIGF1などの増殖因子であり、最も好ましくは、その作用物質はPDGF−BBである。
【0108】
単独での又は他の作用物質と組み合わせてのインスリンの直接投与は、単回又は反復塗布によって実施することができる。本発明を実施に移す間、本発明者らは、驚くべきことに、濃度1μMでのインスリンの単回塗布での治療が、同様の濃度でのインスリンの7回反復する毎日の塗布よりも創傷治癒において実質的に有効であることを発見した(下記の実施例20を参照)。
【0109】
したがって、本発明の他の態様によれば、皮膚の創傷に単回投与量単位の治療有効量のインスリンを投与することによって、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供される。好ましくは、単回投与量単位は、皮膚創傷の1cmの領域を覆うのに十分な量、例えば0.01〜0.2mlの例えば水溶液剤、ゲル剤、クリーム剤、ペースト剤、ローション剤、噴霧剤、懸濁液剤、粉末剤、分散液剤、膏薬剤又は軟膏剤中に0.001〜5nMの、好ましくは0.01〜0.5nMのインスリンを含む。
【0110】
下記の実施例の項中の実施例20で例示するように、インスリンを創傷に投与する時期は決定的に重要である可能性がある。例えば、4日前の創傷にインスリンを単回塗布すると、有効に創傷が治癒した。したがって、本発明の他の態様によれば、創傷に単回投与量の治療有効量のインスリンを投与することによって、古い皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供される。
【0111】
本明細書において「古い皮膚創傷」という語句は、少なくとも1日前の、少なくとも2日前の、少なくとも3日前の、好ましくは、少なくとも4日前の皮膚創傷を指す。
【0112】
本発明の他の態様に従って、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、有効成分である、治療有効量のインスリン及びインスリンと相乗的に作用する少なくとも1種のさらなる作用物質と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。好ましくは、その作用物質は、PKCα抑制物質、又はPDGF、EGF、TGFβ、KGF、ECGFやIGF1などの増殖因子であり、最も好ましくは、PDGF−BBである。下記でさらに詳細に説明するように、製剤上許容される担体は、それだけに限らないが、ゲル剤、クリーム剤、ペースト剤、ローション剤、噴霧剤、懸濁液剤、粉末剤、分散液剤、膏薬及び軟膏剤でもよい。創傷へのインスリンの放出を持続させるために固体支持体を使用することもできる。インスリンは、ヒト又は他の任意の供給源に由来する、天然のものでもよく、或いは好ましくは組換えによるものでもよいことが理解されるであろう。
【0113】
本発明の他の態様によれば、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進することができるように選択された単回投与単位のインスリン、及び薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体を含んでよい。好ましくは、単回投与量単位のインスリンは、0.01〜0.2mlの製剤投与量単位中で0.001〜5nMであり、好ましくは0.01〜0.5nMである。
【0114】
本発明の代替の実施形態では、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、インスリンを発現し分泌する細胞を創傷に移植する。そのようなインスリン産生細胞は、インスリンを天然に産生する細胞でもよく、或いは、そのような細胞を形質転換して、インスリンを産生し分泌する。例えば、インスリンの産生及び分泌に対するトランス作用性因子である組換えPDX1遺伝子(GeneBankアクセッション番号AH005712、AF035260、AF035259を参照)で細胞を形質転換することができる。或いは、細胞を形質転換して天然のインスリンを過剰産生し分泌するために、遺伝子ノックインにより細胞の内因性インスリン遺伝子の上流に組み込まれた強く構成的な又は誘導性のプロモーターなどのシス作用性エレメント配列で細胞を形質転換することもできる。インスリン遺伝子の上流領域がクローン化されている(アクセッション番号E00011、NM000207を参照)ので、これを得ることは可能である。或いは、組換えインスリン遺伝子(例えば、アクセッション番号J02547)で細胞を形質転換し、それによって細胞が組換えインスリンを産生し分泌する。
【0115】
したがって、本発明のこの態様に従って皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、有効成分であるインスリン分泌細胞と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。創傷に投与するインスリン分泌細胞は、それによって産生されるインスリンを分泌するために、分泌顆粒を形成することができると有利である。インスリン分泌細胞は、内分泌細胞でもよい。それは、ヒト供給源に由来するものでもよく、或いは、組織適合性をヒト化した動物供給源に由来するものでもよい。最も好ましくは、形質転換又は非形質転換インスリン分泌細胞は、自己の供給源由来のものである。好ましくは、インスリン分泌細胞によって分泌されるインスリンは、ヒトインスリンであり、又はヒトインスリンのアミノ酸配列を有する。インスリン分泌細胞は、そのような細胞にインスリンを産生し分泌するために上記に記載の形質転換を使用することを条件として、線維芽細胞、上皮細胞又はケラチン生成細胞でもよい。
【0116】
代替の実施形態では、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するために、皮膚創傷の細胞を形質転換して、インスリンを産生し分泌する。
【0117】
したがって、本発明のこの態様に従って皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、有効成分である、皮膚創傷の細胞を形質転換してインスリンを産生し分泌するように設計された核酸構築物と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0118】
上記に記載した形質転換の方法、例えばインスリンをコードする構築物での形質転換、遺伝子ノックインにより内因性インスリン遺伝子の下流に挿入するシス作用性エレメントを有する構築物での形質転換、並びに内因性インスリン産生及び分泌を活性化するトランス作用性因子をコードする構築物での形質転換のいずれかを、本発明のこの実施形態の場面で使用することができる。
【0119】
皮膚における別個のPKCアイソフォームの効果についての以前の研究は、寿命が短く、分化の可能性があり、安定な形質転換体を単離できないことにより、従来の方法で外来遺伝子を効率よく初代細胞に導入することが困難であることによって拘束されていた。これらの障害を克服するために、対象とする遺伝子の導入にウイルスベクターが使用されつつある。複製能が欠損したウイルスの形にウイルスゲノムを改変することによって、ウイルスベクターが開発された。最も広く使用されているウイルスベクターは、レトロウイルス及びアデノウイルスであり、それらは実験並びに遺伝子治療の目的で使用される(13)。特に、非複製細胞でのアデノウイルス感染の効率が高く、ウイルスの力価が高く、形質導入タンパク質の発現が高いことから、この系は、レトロウイルスベクターと比べて初代培養物にとって非常に有利となる。アデノウイルスが宿主ゲノム中に組み込まれず、安定したウイルス力価によって複製欠損にすることができるので、これらのウイルス構築物の、ヒト並びに動物モデルで伴う悪性リスクは最小限である(14)。今までに、皮膚でも、ex vivo及びin vivoの手法を用いて高い感染効率でのアデノウイルス構築物の使用に成功している(15、16)。I.Saito及びその共同研究者らによって開発されたアデノウイルスベクター(17)を、本研究に使用した。コスミドカセット(pAxCAwt)は、ほぼ完全長のアデノウイルス5ゲノムを有するが、E1A、E1B及びE3領域を欠き、そのことがウイルスを複製欠損にしている。それは、複合CAGプロモーターを含み、そのプロモーターは、サイトメガロウイルス最初期エンハンサー、ニワトリβアクチンプロモーター、及び挿入したDNAの発現を強く誘導するウサギβグロビンポリアデニル化シグナルからなる(13、17)。対象とする遺伝子をコスミドカセット中に挿入し、次いでヒト胎児腎293細胞中に、アデノウイルスDNA末端タンパク質複合体(TPC)とともにそれを同時トランスフェクトする。E1A及びE1B領域を発現する293細胞では、コスミドカセットとアデノウイルスDNA−TPCの間で組換えが起こり、従来の方法の100倍の効率で所望の組換えウイルスが得られる。そのような高い効率は、タンパク質分解酵素処理したDNAの代わりにアデノウイルスDNA−TPCを使用することに主に起因する。さらに、長い相同領域が存在すると、相同組換えの効率が高くなる。複製能を有するウイルスの再生は、複数のEcoT221部位が存在することにより回避される。これに関連して、ケラチン生成細胞を別個のPKCの組換えアデノウイルスに感染させ、その24時間後にPKCアイソフォームの有効な過剰発現が示されたことに留意されたい(実施例1を参照)。
【0120】
したがって、本発明に従ってPKCの発現及び/又は活性化の調節を実施する他の方法は、皮膚創傷細胞でPKCの過剰発現を誘導することによって行うものである。このことは、相同組換えにより細胞の内因性タンパク質キナーゼCの上流に組み込むシス作用性エレメント配列で細胞を形質転換し、それによって細胞に天然のタンパク質キナーゼCを産生することで実現することができる。或いは、このことは、それだけに限らないが、PKC−β1遺伝子(アクセッション番号X06318、NM002738)、PKC−β2遺伝子(アクセッション番号X07109)、PKC−γ遺伝子(アクセッション番号L28035)、PKC−θ遺伝子(アクセッション番号L07032)、PKC−λ遺伝子(アクセッション番号D28577)、PKC−ι遺伝子(アクセッション番号L18964)、PKC−α遺伝子(アクセッション番号X52479)、PKC−δ遺伝子(アクセッション番号L07860、L07861)、PKC−ε遺伝子(アクセッション番号X72974)、PKC−η遺伝子(アクセッション番号Z15108)やPKC−ζ遺伝子(アクセッション番号Z15108、X72973、NM002744)などの組換えタンパク質キナーゼC遺伝子で細胞を形質転換し、それによって細胞に組換えタンパク質キナーゼCを産生することで実現することができる。
【0121】
したがって、本発明のこの態様に従って皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、有効成分である、皮膚創傷の細胞を形質転換してタンパク質キナーゼCを産生するように設計された核酸構築物と、薬剤組成物の局所塗布用に設計された製剤上許容される担体とを含む。
【0122】
本発明に従ってPKCの発現及び/又は活性化の調節を実施する他の方法は、皮膚創傷の治癒プロセスを誘導又は促進するための、それだけに限らないが、Ca2+、インスリンやブリオスタチン1などのPKC活性化物質によって行うものである。
【0123】
したがって、本発明のこの態様に従って皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、有効成分である、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進するための治療有効量のPKC活性化物質と、製剤上許容される担体とを含む。
【0124】
本発明に従ってPKCの発現及び/又は活性化の調節を実施する他の方法は、PKCアイソフォームの発現及び/又は活性を下方制御することによって行うものである。
【0125】
PKCアイソフォームの活性の下方制御は、例えば、PKCα、PKCζ又はPKCηの偽基質抑制物質(CalbioChem、米国カリフォルニア州)などのPKC偽基質アイソフォーム抑制物質、或いは、例えば薬剤ペプチドLY379196(Elly Lilly、米国)などの他のPKCアイソフォーム抑制物質によって実施することができる。
【0126】
或いは、PKCアイソフォームの活性の下方制御は、下記の実施例の項で記載するような顕性不活性(DN)PKCアデノウイルス構築物によって実施することもできる。
【0127】
PKCアイソフォームの活性の下方制御は、短鎖干渉RNA(siRNA)分子によって実施することができる。RNA干渉は、2ステップのプロセスである。第1ステップは、開始ステップと呼ばれ、大抵の場合、RNaseIIIファミリーのdsRNA特異的リボヌクレアーゼの構成要素であり、ATP依存的にdsRNA(直接或いは導入遺伝子又はウイルスを介して導入)をプロセシングする(切断する)ダイサー(Dicer)の作用によって投入dsRNAを消化して、21〜23ヌクレオチド(nt)の短鎖干渉RNA(siRNA)にする。連続した切断事象によって、RNAを、それぞれが2ヌクレオチドの3’突出を有する19〜21bpの二重鎖(siRNA)に分解する[Hutvagner及びZamore、Curr.Opin.Genetics and Development 12:225−232(2002);並びにBernstein、Nature 409:363−366(2001)]。
【0128】
実行ステップでは、siRNA二重鎖は、ヌクレアーゼ複合体と結合して、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成する。siRNA二重鎖のATP依存的な巻き戻しは、RISCの活性化に必要である。次いで、活性なRISCは、塩基対形成の相互作用によって相同な転写物を標的とし、mRNAを切断してsiRNAの3’末端から12ヌクレオチドの断片にする[Hutvagner及びZamore、Curr.Opin.Genetics and Development 12:225−232(2002);Hammondら、(2001)Nat.Rev.Gen.2:110−119(2001);並びにSharp、Genes.Dev.15:485−90(2001)]。その切断の機構は依然として明らかとなっていないが、各RISCが単一のsiRNA及びRNaseを含むことが研究から示唆される[Hutvagner及びZamore、Curr.Opin.Genetics and Development 12:225−232(2002)]。
【0129】
RNAiの顕著な効果のため、RNAi経路内での増幅ステップが提唱されている。より多くのsiRNAを発生させる投入dsRNAの複製によって、又は形成されるsiRNAの複製によって増幅を行うことができる。或いは又はさらには、RISCの複数の代謝回転事象によって増幅を実施することができる[Hammondら、Nat.Rev.Gen.2:110−119(2001);Sharp、Genes.Dev.15:485−90(2001);Hutvagner及びZamore、Curr.Opin.Genetics and Development 12:225−232(2002)]。RNAiについてより多くの情報を得るには、下記の総説Tuschl、ChemBiochem.2:239−245(2001);Cullen、Nat.Immunol.3:597−599(2002);及びBrantl、Biochem.Biophys.Act.1575:15−25(2002)を参照されたい。
【0130】
本発明での使用に適したRNAi分子の合成を下記のように実施することができる。第1に、PKCアイソフォームのmRNA配列を、AUG開始コドンの下流にAAジヌクレオチド配列があるかどうか調べる。それぞれのAAの出現及び3’に隣接する19ヌクレオチドを、潜在的なsiRNA標的部位として記録する。非翻訳領域(UTR)は、制御性のタンパク質結合部位に富むので、好ましくは、siRNA標的部位は、オープンリーディングフレームから選択される。UTR結合タンパク質及び/又は翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合に干渉することができる[Tuschl、ChemBiochem.2:239−245]。しかし、GAPDHについて、5’UTRを対象とするsiRNAが細胞GAPDHmRNAの約90%の低下を媒介し、タンパク質レベルを完全に消失させたことが示された(www.ambion.com/techlib/tn/91/912.html)ように、非翻訳領域を対象とするsiRNAも有効である可能性があることが理解されるであろう。
【0131】
第2に、NCBIサーバーから利用可能なBLASTソフトウェア(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)など、任意の配列アラインメントソフトウェアを用いて、潜在的な標的部位を、適当なゲノムデータベース(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)と比較する。他のコード配列と有意な相同性を示す推定標的部位は取り除く。
【0132】
限定した標的配列を、siRNA合成用の鋳型として選択する。好ましい配列は、G/C含量が低いものであり、これは、G/C含量が55%より高いものと比べて遺伝子サイレンシングの媒介に有効であることが証明されている。評価する標的遺伝子の全長に沿っていくつかの標的部位を選択することが好ましい。選択したsiRNAをよりよく評価するには、陰性対照を併せて使用することが好ましい。陰性対照siRNAは、siRNAと同じヌクレオチド組成であるが、ゲノムとの有意な相同性を欠くことが好ましい。したがって、それが他のどんな遺伝子とも有意な相同性を示さないことを条件として、乱雑にしたヌクレオチド配列のsiRNAを使用することが好ましい。本発明に従った適切なsiRNAは、例えば、配列番号1〜16で示す核酸配列のいずれかなど、PKCα発現を抑制することができるsiRNAでもよい。
【0133】
PKCアイソフォームを下方制御することができる他の作用物質は、PKCアイソフォームのmRNA転写物又はDNA配列を特異的に切断することができるDNAザイム分子である。DNAザイムは、一本鎖ポリヌクレオチドであり、一本鎖と二本鎖の両方の標的配列を切断することができる(Breaker,R.R.及びJoyce,G.、Chemistry and Biology 1995;2:655;Santoro,S.W.及びJoyce,G.F.、Proc.Natl,Acad.Sci.米国 1997;943:4262)。DNAザイムについて一般的なモデル(「10〜23」モデル)が提案されている。「10〜23」DNAザイムは、それぞれ7〜9個のデオキシリボヌクレオチドからなる2つの基質認識ドメインが隣接した、15個のデオキシリボヌクレオチドからなる触媒ドメインを有する。この型のDNAザイムは、プリン:ピリミジン結合でその基質RNAを有効に切断することができる(Santoro,S.W.及びJoyce,G.F.、Proc.Natl,Acad.Sci.米国 199;DNAザイムの総説については、Khachigian,LM[Curr Opin Mol Ther 4:119−21(2002)]を参照)。
【0134】
一本鎖及び二本鎖の標的切断部位を認識する、合成され工学的に作製されるDNAザイムの構築及び増幅の例は、Joyceらの米国特許第6,326,174号で開示されている。最近、ヒトウロキナーゼ受容体を対象とする同様の設計のDNAザイムが、ウロキナーゼ受容体発現を抑制することが観察され、in vivoで結腸癌細胞転移の抑制に成功した(Itohら、20002,Abstract 409,Ann Meeting Am Soc Gen Ther www.asgt.org)。他の適用例では、bcr−abl癌遺伝子と相補的なDNAザイムが、白血病細胞での癌遺伝子発現の抑制、並びにCML及びALL症例における自己骨髄移植での再発率の減少に成功した。
【0135】
PKCアイソフォームの下方制御は、PKCアイソフォームをコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイズすることができるアンチセンスポリヌクレオチドを使用することによって実施することもできる。
【0136】
PKCアイソフォームを効率よく下方制御するのに使用することができるアンチセンス分子の設計は、アンチセンスの手法に重要な2つの側面を考慮しながら実施しなければならない。第1の側面は、適当な細胞の細胞質中へのオリゴヌクレオチドの送達であり、第2の側面は、その翻訳を抑制する形で、細胞内の指定されたmRNAと特異的に結合するオリゴヌクレオチドの設計である。
【0137】
従来技術から、オリゴヌクレオチドを多種多様な細胞型に効率よく送達するのに使用することができるいくつかの送達の戦略が教示される[例えば、Luft、J Mol Med 76:75−6(1998);Kronenwettら、Blood 91:852−62(1998);Rajurら、Bioconjug Chem 8:935−40(1997);Lavigneら、Biochem Biophys Res Commun 237:566−71(1997)及びAokiら、(1997)Biochem Biophys Res Commun 231:540−5(1997)を参照]。
【0138】
さらに、標的mRNAとオリゴヌクレオチドのどちらの構造変化のエネルギー現象も明らかにする熱力学サイクルに基づいて、その標的mRNAについて最も高い予測結合親和性でそれらの配列を同定するアルゴリズムも利用可能である[例えば、Waltonら、Biotechnol Bioeng 65:1−9(1999)を参照]。
【0139】
そのようなアルゴリズムを使用して、細胞でアンチセンスの手法を実施することに成功している。例えば、Waltonらによって開発されたアルゴリズムによって、科学者によるウサギβグロビン(RBG)及びマウス腫瘍壊死因子α(TNFα)転写物のアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計を可能にすることに成功した。同じ研究グループは、3種のモデル標的mRNA(ヒト乳酸脱水素酵素A及びB並びにラットgp130)に対して合理的に選択されたオリゴヌクレオチドの、動態PCRの技術によって評価される細胞培養物中のアンチセンス活性が、ホスホジエステル及びホスホロチオエートオリゴヌクレオチド化学物質での、2種の細胞型における3種の異なる標的に対する試験を含めて、ほとんどすべての場合で有効であると証明されたことをさらに最近報告した。
【0140】
さらに、in vitro系を用いて特定のオリゴヌクレオチドの効果を設計し予測するいくつかの手法も公開されている[Matveevaら、Nature Biotechnology 16:1374−1375(1998)]。
【0141】
いくつかの臨床試験によって、アンチセンスオリゴヌクレオチドの安全性、実現可能性及び活性が示されている。例えば、癌の治療に適したアンチセンスオリゴヌクレオチドは使用に成功している[Holmundら、Curr Opin Mol Ther 1:372−85(1999)]が、c−myb遺伝子、p53及びBcl−2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを介する血液系の悪性腫瘍の治療は、臨床試験に入り、患者によって許容されることが示されている[Gerwitz、Curr Opin Mol Ther 1:297−306(1999)]。
【0142】
さらに最近では、アンチセンス媒介性のヒトヘパラナーゼ遺伝子発現抑制が、マウスモデルにおいてヒト癌細胞の胸膜播種を抑制することが報告されている[Unoら、Cancer Res 61:7855−60(2001)]。
【0143】
したがって、現在の総意は、上記に記載のように、高度に正確なアンチセンス設計アルゴリズム、及び多種多様なオリゴヌクレオチド送達系の創出へと導いたアンチセンス技術分野での最近の開発によって、当業者が、過度の試験及び誤った実験に頼ることなく、既知の配列の発現を下方制御するのに適したアンチセンスの手法を設計し実施することができることである。
【0144】
PKCアイソフォームを下方制御することができる他の作用物質は、PKCアイソフォームをコードするmRNA転写物を特異的に切断することができるリボザイム分子である。リボザイムは、対象とするタンパク質をコードするmRNAの切断による遺伝子発現の配列特異的な抑制にますます使用されてきている[Welchら、Curr Opin Biotechnol.9:486−96(1998)]。任意の特定の標的RNAを切断するリボザイムを設計できる可能性があることによって、それが基礎研究にも治療への適用にも有益な手段となっている。治療の分野では、リボザイムを利用して、感染性疾患におけるウイルスRNA、癌における優性の癌遺伝子、及び遺伝子異常における特定の体細胞変異を標的化している[Welchら、Clin Diagn Virol.10:163−71(1998)]。最も注目すべきは、HIV患者に対するいくつかのリボザイム遺伝子治療のプロトコールがすでに第1相試験に入っていることである。さらに最近では、トランスジェニック動物の研究、遺伝子標的の検証及び経路の解明にリボザイムが使用されている。いくつかのリボザイムが、臨床試験の種々の段階にある。ANGIOZYMEは、ヒト臨床試験で試験される最初の化学合成リボザイムであった。ANGIOZYMEは、血管新生経路での鍵となる構成成分であるVEGF−r(血管内皮増殖因子受容体)の形成を特異的に抑制する。Ribozyme Pharmaceuticals,Inc.並びに他の企業が、動物モデルで抗血管新生治療の重要性を示している。C型肝炎ウイルス(HCV)RNAを選択的に破壊するように設計されたリボザイムであるHEPTAZYMEは、細胞培養アッセイでC型肝炎ウイルスRNAの減少に有効であることが明らかとなった(Ribozyme Pharmaceuticals,Incorporated、WEBホームページ)。
【0145】
好ましくは、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する薬剤組成物は、ホルモン、増殖因子、アディポカイン、PKCδRACK及びGW9662からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる作用物質をさらに含む。適切なホルモンは、それだけに限らないが、インスリンでもよい。適切な増殖因子は、それだけに限らないが、インターロイキン−6(IL−6)、ケラチン生成細胞増殖因子(KFG)又は腫瘍壊死因子α(TNFα)でもよい。適切なアディポカインは、それだけに限らないが、アディプシン又はアディポネクチンでもよい。
【0146】
本発明を実施に移す間、本発明者らは、驚くべきことに且つ意外なことに、コポリマー1(ガラティラマーアセテート(glatiremar acetate))が、in vitro及びin vivoで創傷治癒を実質的に促進することができることを発見した(下記の実施例の項の実施例26を参照)。コポリマー1は、多発性硬化症及び中枢神経系異常の治療に使用する免疫調節剤として以前から知られている(米国特許第6,620,847号、第6,362,161号、第6,342,476号、第6,054,430号、第6,046,898号、第5,981,589号、及び第5,800,808号;米国特許出願第10/615865号、第10/666857号、及び第10/014477号)が、従来技術では、創傷治癒のプロセスを促進するコポリマー1の使用について記載又は示唆されていない。
【0147】
したがって、本発明の他の態様によれば、皮膚の創傷又は損傷の治癒プロセスを誘導又は促進する方法が提供され、皮膚の創傷又は損傷に、治療有効量のコポリマー1を、好ましくは1〜500μg/mlの濃度で投与することにより、その方法を実施する。したがって、本発明のこの態様に従った方法を実施するための薬剤組成物は、有効成分である治療有効量のコポリマー1と、製剤上許容される担体とを含む。
【0148】
本発明の治療上/製剤上の有効成分は、創傷にそれ自体を投与することもでき、或いは、適切な担体及び/又は賦形剤と混合した薬剤組成物として投与することもできる。本発明の場面での使用に適した薬剤組成物は、意図された治療効果を達成するのに有効な量の有効成分が含まれるそれらの組成物を含む。
【0149】
本明細書において、「薬剤組成物」とは、旧来の薬剤、生理的に適切な担体や添加剤など他の化学物質の構成成分を含む、タンパク質、化学物質、核酸又は細胞のいずれかの、本明細書に記載の1種又は複数種の有効成分、或いはその生理的に許容される塩又はプロドラッグの製剤を指す。薬剤組成物の目的は、生物への化合物又は細胞の投与を容易にすることである。本発明の薬剤組成物は、当技術分野で周知のプロセスによって、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖剤作製、湿式粉砕、乳化、被包化、閉じ込め又は凍結乾燥のプロセスによって製造することができる。
【0150】
以下で、「生理的に適切な担体」及び「製剤上許容される担体」という語句は、同義的に使用され、生物に著しい刺激を起こさず、投与した結合体の生物学的な活性及び特性を消失させない担体又は希釈剤を指す。
【0151】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、有効成分のプロセス及び投与をさらに容易にするために薬剤組成物に添加する不活性な物質を指す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及び種々のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールがある。
【0152】
有効成分の製剤及び投与の技術は、「レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、Mack Publishing Co.,Easton,PA、最新版中に認めることができ、この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
本発明の目的での有効成分の投与について様々な経路が考えられ、以前に記載されているが、局所経路が好ましく、局所用の担体によって補助される。局所用の担体は、局所の有効成分投与に一般に適したものであり、当業者に知られている任意のそのような物質を含む。局所用の担体は、所望の形で、例えば液体又は非液体の担体、ローション剤、クリーム剤、ペースト剤、ゲル剤、粉末剤、軟膏剤、溶媒、液体の希釈剤、点滴剤などとして組成物が提供されるように選択され、天然に存在するもの又は合成のものに由来する物質からなるものでもよい。選択された担体が、局所製剤の活性な作用物質又は他の構成成分に有害な影響を及ぼさず、局所製剤のすべての構成成分に対して安定であることが明らかに必須である。本明細書において使用に適した局所用の担体の例には、水、アルコール及び他の非毒性有機溶媒、グリセリン、鉱油、シリコン、石油ゼリー、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン、蝋などがある。本明細書において好ましい製剤は、無色無臭の軟膏剤、液剤、ローション剤、クリーム剤及びゲル剤である。
【0154】
軟膏剤は、半固体の製剤であり、通常ワセリン又は他の石油誘導体を基礎とする。当業者には理解されるであろうが、使用される特定の軟膏基剤は、最適な有効成分送達をもたらし、好ましくは、その上他の所望の特性、例えば緩和性などをもたらすものである。他の担体又は賦形剤の場合と同様に、軟膏基剤は、不活性であり、安定であり、刺激性がなく、且つ感作性がないべきである。レミントン:製薬学の科学及び実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第19版(ペンシルバニア州、イーストン:Mack Publishing Co.,1995)の1399〜1404ページで説明されているように、軟膏基剤は油脂性基剤、乳化性基剤、乳剤性基剤、及び水溶性基剤の4種類に分類することができる。油脂性軟膏基剤には、例えば、植物油、動物から得られた脂肪、及び石油から得られた半個体の炭化水素が含まれる。乳化性軟膏基剤は、吸収性軟膏基剤としても知られ、水を少ししか又は全く含まず、それには、例えば、硫酸ヒドロキシステアリン、無水ラノリン及び親水性ワセリンが含まれる。乳剤性軟膏基剤は、油中水(W/O)型乳剤又は水中油(O/W)型乳剤であり、それには、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、ラノリン及びステアリン酸が含まれる。好ましい水溶性軟膏基剤は様々な分子量のポリエチレングリコールから調製される。また、さらなる情報を得るには、レミントン:製薬学の科学及び実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)を参照することができる。
【0155】
ローション剤は、摩擦なしで皮膚表面に塗布する製剤であり、典型的には、有効成分を含めた固体粒子が水又はアルコール基剤中に存在する液体又は半液体の製剤である。ローション剤は、通常固体の懸濁液剤であり、水中油型の液体の油性乳剤を含んでよい。より流動性のある組成物を塗布することが容易であるので、ローション剤は、本明細書において大きな身体領域の治療に好ましい製剤である。ローション剤中の不溶性物質は、細かく分割することが一般に必要である。ローション剤は、典型的には、より良好な分散をもたらす懸濁化剤、並びに皮膚と接触して有効成分を局在させ保持させるのに有用な化合物、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを含む。
【0156】
選択された有効成分を含むクリーム剤は、当技術分野で知られているように、水中油型又は油中水型の粘性のある液体又は半固体の乳剤である。クリーム基剤は、水で洗浄可能であり、油相、乳化剤及び水相を含む。油相は、時折「内部」相とも呼ばれ、一般にワセリン、及びセチルアルコールやステアリルアルコールなどの脂肪族アルコールからなり、水相は通常、必ずしもというわけではないが、体積で油相を上回り、一般に湿潤剤を含む。上記のレミントン(Remington)で説明されているように、クリーム製剤中の乳化剤は、一般に非イオン性、陰イオン性、陽イオン性又は両性の界面活性剤である。
【0157】
ゲル製剤は、頭皮への塗布に好ましい。局所有効成分製剤の分野の従事者には理解されるであろうが、ゲル剤は、半固体の懸濁液型の系統である。単相ゲル剤は、通常水性である担体の液体全体にわたって実質的に均一に分布する有機高分子を含むが、好ましくは、アルコールも含み、場合によっては油を含む。
【0158】
核酸の担体には、それだけに限らないが、標的リポソームを含めたリポソーム、核酸複合体化剤、ウイルス被覆などが含まれる。しかし、むき出しの核酸での形質転換を使用することもできる。
【0159】
当業者に知られている様々な添加剤が、本発明の局所製剤に含まれてもよい。例えば、溶媒を使用して、特定の有効成分物質を可溶化することができる。他の任意選択の添加剤には、皮膚浸透促進剤、乳白剤、抗酸化剤、ゲル化剤、増粘剤、安定化剤などがある。
【0160】
上記ですでに言及してきたように、本発明に従って創傷を治療するための局所製剤は、そのような創傷の治療に伝統的に用いられる、薬剤として活性な他の作用物質又は成分を含んでもよい。これには、シクロスポリンなどの免疫抑制剤、メトトレキセートなどの代謝拮抗剤、コルチコステロイド、ビタミンD及びビタミンDアナログ、ビタミンA又はエトレチナートなどのそのアナログ、タール、コールタール、カデ油などの鎮痒薬及び角質形成剤、サリチル酸などの角質溶解剤、緩和剤、潤滑剤、殺菌剤ジトラノール(アントラリンとしても知られている)などの防腐剤及び消毒剤、ソラレンやメトキサレンなどの光増感剤、並びにUV照射がある。抗菌剤、抗真菌剤、抗生物質や抗炎症剤などの他の作用物質を添加することもできる。酸素化(高酸素圧)による治療を同時に使用することもできる。
【0161】
本発明の局所組成物は、従来の皮膚型の貼布又は物品を用いて皮膚に送達することもでき、有効成分の組成物は、皮膚に貼り付ける薬剤送達装置として働く積層状の構造内に含まれる。そのような構造では、有効成分の組成物は、上部の裏打ち層の下にある層又は「貯蔵器」中に含まれる。その積層状の構造は、単一の貯蔵器を含んでもよく、或いは複数の貯蔵器を含んでもよい。一実施形態では、貯蔵器は、製剤上許容されるコンタクト接着物質のポリマー基質を含み、それは、有効成分の送達の間、その系を皮膚に貼り付けるのに働く。適切な皮膚のコンタクト接着物質の例には、それだけに限らないが、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタンなどがある。選択される特定のポリマー接着物質は、特定の有効成分、賦形剤などに依存し、すなわち、接着物質は、有効成分を含む組成物のすべての構成成分と適合しなければならない。或いは、有効成分を含む貯蔵器及び皮膚のコンタクト接着物質は別々の異なる層として存在し、接触物質が貯蔵器の下にあり、この場合、その貯蔵器は上記に記載のポリマー基質でもよく、或いは液体又はヒドロゲルの貯蔵器でもよく、或いは一部の他の形をとってもよい。
【0162】
その装置の上部表面として働くこれらの積層の裏打ち層は、積層状の構造の主要な構造成分として機能し、その装置に大きな柔軟性をもたらす。裏打ち物質に選択する物質は、それが有効成分及び有効成分を含む組成物の任意の他の構成成分に対して実質的に不浸透性であり、それによってその装置の上部表面を介するどんな構成成分の喪失も防止されるように選択されるべきである。裏打ち層は、皮膚が有効成分送達の間に水和されることが望ましいかどうかに応じて、閉鎖性でもよく或いは非閉鎖性でもよい。好ましくは、裏打ち層は、好ましくは柔軟なエラストマー物質のシート又はフィルムから作製される。裏打ち層に適しているポリマーの例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエステルがある。
【0163】
貯蔵中及び使用前、その積層状の構造は、剥離ライナーを含む。使用直前に、この層を装置から取り除いて、その系を皮膚に貼り付けることができるように、その基底表面の有効成分の貯蔵器又は別々のコンタクト接着物質の層をさらす。剥離ライナーは、有効成分/賦形剤非浸透性の物質から作製されるべきである。
【0164】
当技術分野で知られている従来の技術を用いて、例えば裏打ち層上で接着物質、有効成分及び賦形剤の液体混合物を鋳造し、その後剥離ライナーを積層化することによって、そのような装置を製作することができる。同様に、接着混合物を剥離ライナー上に鋳造し、その後裏打ち層を積層化することができる。或いは、有効成分又は賦形剤の不在下で有効成分の貯蔵器を調製し、次いで有効成分/賦形剤の混合物中にそれを「浸す」ことによって充填することもできる。
【0165】
本発明の局所製剤の場合と同様に、この積層系の有効成分の貯蔵器内に含まれる有効成分の組成物は、いくつかの構成成分を含んでもよい。ある場合では、有効成分を「純粋なまま(neat)」、すなわちさらなる液体の不在下で送達することができる。しかし、ほとんどの場合では、製剤上許容される適切な賦形剤、典型的には溶媒又はゲル中で有効成分を溶解、分散又は懸濁する。存在してもよい他の構成成分には、保存剤、安定化剤、界面活性剤などがある。
【0166】
本明細書に記載した薬剤組成物はまた、適切な固相又はゲル相の担体又は賦形剤を含んでもよい。そのような担体又は賦形剤の例としては、それだけに限らないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコールなどのポリマーがある。
【0167】
投与は、苦痛の型、重症度及び症状発現に依存し、有効成分に対する対象の反応性、並びに使用する剤形、特定の結合体の効果、及び使用する投与経路に依存する。当業者は、最適な投与量、投与法及び反復率を容易に決定することができる。患者の状態を考慮して、個々の医師が的確な製剤、投与経路及び投与量を選択することができる。(例えば、Finglら、1975、「治療の薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」、第1章1ページを参照)。
【0168】
したがって、治療する状態の重症度及び反応性に応じて、投与は単回投与又は反復投与でもよく、治療の過程は数日から数週間、或いは治癒が達成され又は皮膚損傷の縮小が実現されるまで継続する。
【0169】
ある態様では、本発明は、細胞の形質転換及び遺伝子ノックイン型の形質転換を使用するin vivoの遺伝子治療、及びex vivoの(細胞の)遺伝子治療の技術を利用する。本明細書において、遺伝子治療とは、対象とする遺伝物質(例えば、DNA又はRNA)を宿主に導入して、遺伝性又は後天性の疾患又は状態又は表現型を治療又は予防することを指す。対象とする遺伝物質は、in vivoでの産生が所望される産物(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、機能性RNA、アンチセンスRNA)をコードする。例えば、対象とする遺伝物質は、治療上の価値があるホルモン、受容体、酵素、ポリペプチド又はペプチドをコードするものでもよい。総説については、一般に、教科書「遺伝子治療(Gene Therapy)」(薬理学の進歩40(Advanced in Pharmacology 40)、Academic Press、1997)を参照されたい。
【0170】
(1)ex vivoの遺伝子治療、及び(ii)in vivoの遺伝子治療という遺伝子治療に対する2つの基本的な手法が発展してきた。ex vivoの遺伝子治療では、細胞は、患者から取り出し、又は他の供給源に由来し、培養している間にそれをin vitroで治療する。一般に、適当な遺伝子送達媒体/方法(トランスフェクション、形質導入、相同組換えなど)、及び必要である場合には発現系を介して機能的な置換遺伝子を細胞内に導入し、次いで改変した細胞を培養下で増殖させ、宿主/患者に戻す。この遺伝的に再移植された細胞は、トランスフェクトされた遺伝物質をin situで発現することが示されている。
【0171】
in vivoの遺伝子治療では、標的細胞は対象から取り出さず、むしろ、導入する遺伝物質を、レシピエント内にあるレシピエント生物の細胞内にin situで導入する。代替の実施形態では、宿主遺伝子に欠陥がある場合、遺伝子をin situで修復する(Culver、1998、(抄録)アンチセンスDNA及びRNAを基礎とする治療(Antisense DNA & RNA based therapeutics)、1998年2月、カリフォルニア州コロナド)。この遺伝的に変化した細胞は、トランスフェクトされた遺伝物質をin situで発現することが示されている。
【0172】
遺伝子発現用媒体は、異種の核酸を宿主細胞に送達/導入することができる。発現用媒体は、当技術分野で知られているように、細胞選択的な形で核酸の標的導入、発現及び転写を調節するエレメントを含んでよい。遺伝子の5’UTR及び/又は3’UTRを、発現用媒体の5’UTR及び/又は3’UTRでしばしば置換できることに留意されたい。したがって、本明細書において、発現用媒体は、必要に応じて、導入する実際の遺伝子の5’UTR及び/又は3’UTRを含まず、特定のアミノ酸コード領域だけを含んでもよい。
【0173】
発現用媒体は、異種の物質の転写を調節するプロモーターを含んでよく、それは、選択的な転写を可能にする構成的な又は誘導性のプロモーターでもよい。場合によっては、必要な転写レベルを得るのに必要となることがあるエンハンサーを含んでもよい。エンハンサーは、一般に任意の非翻訳DNA配列であり、コード配列に隣接して(シス型に)働いて、プロモーターによって指示された基底の転写レベルを変化させる。発現用媒体はまた、本明細書で下記に記載する選択遺伝子を含んでもよい。
【0174】
当技術分野内で知られている様々な方法のいずれかによって、ベクターを細胞又は組織内に導入することができる。そのような方法は、一般に、Sambrookら、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、Cold Springs Harbor Laboratory、ニューヨーク、1989、1992;Ausubelら、分子生物学における現在のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、John Wiley and Sons、メリーランド州ボルチモア、1989;Changら、体細胞遺伝子治療(Somatic Gene Therapy)、CRC Press、ミシガン州アナーバー(Ann Arbor)、1995;Vegaら、遺伝子ターゲティング(Gene Targeting)、CRC Press、ミシガン州アナーバー(995);ベクター:分子クローニングベクター及びその使用についての調査(Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses)、Butterworths、マサチューセッツ州ボストン、1988;並びにGilboaら(Biotechniques 4(6):504−512,1986)の記載に認めることができ、それには、例えば、安定な又は一過性のトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション及び組換えウイルスベクターでの感染が含まれる。さらに、中枢神経系に関与するベクターについては米国特許第4,866,042号を、また正負の選択方法については米国特許第5,464,764号及び第5,487,992号も参照されたい。
【0175】
感染による核酸の導入は、列挙した他の方法を上回るいくつかの利点をもたらす。その感染する性質により、高い効率を得ることができる。さらに、ウイルスは非常に特殊化しており、通常は特定の細胞型に感染し増殖する。したがって、その天然の特異性を用いて、in vivoで或いは組織内で又は細胞の混合培養物内で、ベクターに特定の細胞型を標的とさせることができる。特異的な受容体又はリガンドでウイルスベクターを改変して、受容体が媒介する事象を介して標的特異性を変化させることもできる。
【0176】
組換え配列を導入し発現させるDNAウイルスベクターの特定の例は、アデノウイルス由来ベクターAdenop53TKである。このベクターは、正又は負の選択用のヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(TK)遺伝子、及び所望の組換え配列の発現カセットを発現する。このベクターを使用して、アデノウイルス受容体を有する細胞を感染させることができ、それは上皮由来のほとんどの組織、並びに他の組織を含む。このベクター並びに類似した所望の機能を示す他のベクターを使用して、細胞の混合集団を治療することができ、それには、例えば、in vitro又はex vivoの細胞培養物、組織又はヒト対象が含まれる可能性がある。
【0177】
また、特定の細胞型に対して発現を制限する特徴を含んでもよい。そのような特徴には、例えば、所望の細胞型に特異的なプロモーター及び制御エレメントがある。
【0178】
さらに、組換えウイルスベクターは、それが側方感染や標的特異性などの利点をもたらすので、所望の核酸のin vivo発現に有用である。側方感染は、例えばレトロウイルスの生活環に固有であり、単一の感染細胞が、多数の後代ウイルス粒子を産生し、それが出芽し、隣接する細胞に感染するプロセスである。その結果、広い領域が急速に感染し、そのほとんどが、元のウイルス粒子が最初に感染したものではない。このことは、感染性作用物質が娘後代細胞を介してのみ広がる垂直型の感染と対照的である。側方に広がることができないウイルスベクターを作製することもできる。この特徴は、所望の目的が、限局した数の標的細胞のみへと特定の遺伝子を導入することである場合に有用である可能性がある。
【0179】
上記に記載のように、ウイルスは、非常に特殊化した感染性作用物質であり、多くの場合、宿主の防御機構を回避するように進化してきた。通常、ウイルスは特定の細胞型に感染し増殖する。ウイルスベクターの標的特異性は、その天然の特異性を利用して、所定の細胞型を特異的に標的とするものであり、それによって感染細胞中に組換え遺伝子が導入される。本発明の方法及び組成物に使用されるベクターは、標的とする所望の細胞型に依存し、当業者に知られている。
【0180】
レトロウイルスベクターを構築して、感染性粒子として機能させ、又は最初の1回限りの感染を起こすことができる。前者の場合では、新たなウイルスタンパク質及びRNAを合成するための必要な遺伝子すべて、制御配列及びパッケージングシグナルを維持するようにウイルスのゲノムを改変する。これらの分子が合成された後、宿主細胞は、新たなウイルス粒子中にRNAを詰め込み、この粒子はさらなる感染を起こすことができる。ベクターのゲノムはまた、所望の組換え遺伝子をコードし発現するように工学的に作製する。非感染性のウイルスベクターの場合では、ベクターのゲノムは通常、RNAをウイルス粒子中に被包化するのに必要なウイルスのパッケージングシグナルを破壊する突然変異を受けている。そのようなシグナルがないと、形成されるどんな粒子もゲノムを含まず、したがって、続いての感染に進むことができない。特定の型のベクターは、意図された適用に依存する。実際のベクターはまた、当技術分野内で知られ容易に利用可能であり、又は周知の方法を用いて当業者により構築することができる。
【0181】
組換えベクターは、いくつかの方法で投与することができる。ウイルスベクターを使用する場合、例えば、その手順は、その標的特異性を利用することができ、その結果、疾患部位に局所投与する必要はない。しかし、局所投与によって、より速く有効に治療することができる。
【0182】
ノックインの手順で使用する相同組換えを含むin vivo及びex vivoでの細胞の形質転換の手順は、例えば、米国特許第5,487,992号、第5,464,764号、第5,387,742号、第5,360,735号、第5,347,075号、第5,298,422号、第5,288,846号、第5,221,778号、第5,175,385号、第5,175,384号、第5,175,383号、第4,736,866号、並びにBurke及びOlson、Methods in Enzymology,194:251−270 1991;Capecchi、Science 244:1288−1292 1989;Daviesら、Nucleic Acids Research,20(11)2693−2698 1992;Dickinsonら、Human Molecular Genetics,2(8):1299−1302 1993;Duff及びLincoln、「ヒトAPP遺伝子を含む酵母人工染色体への病原性突然変異の挿入及びES細胞での発現(Insertion of a pathogenic mutation into a yeast artificial chromosome containing the human APP gene and expression in ES cells)」、アルツハイマー病及びその関連疾患における研究の進歩(Research Advances in Alzheimer’s Disease and Related Disorders)、1995;Huxleyら、Genomics,9:742−750 1991;Jakobovitsら、Nature,362:255−261 1993;Lambら、Nature Genetics,5:22−29 1993;Pearson及びChoi、Proc.Natl.Acad.Sci.米国 1993.90:10578−82;Rothstein、Methods in Enzymology,194:281−301 1991;Schedlら、Nature,362:258−261 1993;Straussら、Science,259:1904−1907 1993で説明されている。さらに、特許出願WO94/23049、WO93/14200、WO94/06908、WO94/28123も情報を提供するものである。
【0183】
本発明のさらなる対象、利点、及び新たな特徴は、以下の実施例の検討後、当業者に明らかとなるであろうが、その実施例は限定を意図するものではない。さらに、上記に記載し、下記の特許請求の範囲の項で請求する本発明の様々な実施形態及び態様はそれぞれ、以下の実施例中に実験上の支持を認めるものである。
【実施例】
【0184】
以下の実施例を参照して、上記の説明とともに、非限定的な様式で本発明を例証する。
【0185】
一般的に、本明細書において使用される命名法及び本発明において利用される実験室手順は、分子的技術、生化学的技術、微生物学的技術、及び組換えDNA技術を含む。このような技術は、文献中に徹底的に説明されている。例えば、以下を参照のこと:「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」Sambrookら(1989);「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」第I巻〜第III巻、Ausubel,R.M.ら編(1994);Ausubelら、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、John Wiley and Sons、ボルチモア、メリーランド州(1989);Perbal、「分子クローニングの実用ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)、John Wiley & Sons、ニューヨーク(1988);Watsonら、「組換えDNA(Recombinant DNA)」Scientific American Books、ニューヨーク;Birrenら(編)「ゲノム分析:実験室マニュアルシリーズ(Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、第1巻〜第4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(1998);米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号及び同第5,272,057号に記載されている方法論;「細胞生物学:実験室ハンドブック(Cell Biology:A Laboratory Handbook)」第I巻〜第III巻、Cellis,J.E.編(1994);「動物細胞の培養−基礎技術のマニュアル(Culture of Animal Cells−A Manual of Basic Technique)」、Freshney、Wiley−Liss、ニューヨーク(1994)、第3版;「免疫学の最新プロトコール(Current Protocols in Immunology)」第I巻〜第III巻 Coligan J.E.編(1994);Stitesら(編)「基礎的及び臨床的免疫学(Basic and Clinical Immunology)」(第8版)、Appleton & Lange、ノーウォーク、コネチカット州(1994);Mishell and Shiigi(編)「細胞免疫学における精選方法(Selected Methods in Cellular Immunology)」、W.H.Freeman and Co.、ニューヨーク(1980);利用可能なイムノアッセイは特許及び科学文献に広範に記載されており、例えば、以下を参照のこと:米国特許第3,791,932号;同第3,839,153号;同第3,850,752号;同第3,850,578号;同第3,853,987号;同第3,867,517号;同第3,879,262号;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;同第4,098,876号;同第4,879,219号;同第5,011,771号及び同第5,281,521号;「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」Gait,M.J.編(1984);「核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)」Hames,B.D.及びHiggins S.J.編(1985);「転写及び翻訳(Transcription and Translation)」Hames,B.D.及びHiggins S.J.編(1984);「動物細胞培養(Animal Cell Culture)Freshney,R.I.編(1986);「固定化細胞及び酵素(Immobilized Cells and Enzymes)」IRL Press、(1986);分子クローニングの実用ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)」Perbal,B.,(1984)及び「酵素学の方法(Methods in Enzymology)」第1〜317巻、Academic Press;「PCRプロトコール:方法及び応用のガイド(PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications)」、Academic Press、サンジエゴ、カリフォルニア州(1990);Marshakら「タンパク質精製及び特徴付けのストラテジー:研究課程マニュアル(Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual)」CSHL Press(1996);これらのすべては、あたかも全体が本明細書に記載されるかのように参照として援用される。他の一般的な参考文献はこの文献を通して提供される。そこに記載される手順は当該分野において周知であると考えられており、読者の便宜のために提供される。そこに含まれるすべての情報は、参照として本明細書に援用される。
【0186】
材料及び実験方法
材料:組織培養培地及び血清は生物学関連企業(Beit HaEmek、イスラエル)より購入した。増強化学発光(Enhanced Chemical Luminescence)(ECL)はBioRad(イスラエル)から購入したキットを用いて行った。モノクローナル抗p−tyr抗体は、Upstate Biotechnology Inc.(Lake Placid、ニューヨーク州、米国)から購入した。PKCアイソフォームに対するポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、Santa Cruz(カリフォルニア州、米国)及びTransduction Laboratories(Lexington、ケンタッキー州)から購入した。α6ラット抗マウスmAb(GoH3)は、Pharmingen(サンジエゴ、カリフォルニア州)から購入した。α6A細胞質ドメインに対する抗体6844は、V.Quaranta博士(Scripps Research Institute、La Jolla、カリフォルニア州)より恵与された。マウスβ4の細胞外ドメインに対して指向されるラットmAb(346−11A)は、S.J.Kennel博士(Oak Ridge National Laboratory、Oak Ridge、TN)から恵与された。ホスホチロシンに対するラットmAbはSigma(セントルイス、ミズーリ州)から購入し、ウサギ抗ホスホセリンはZymed(サンフランシスコ、カリフォルニア州)から購入した。西洋わさびペルオキシダーゼ−抗ウサギ及び抗マウスIgGはBio−Rad(イスラエル)から入手した。ロイペプチン、アプロチニン、PMSF、DTT、Na−オルトバナジウム酸、及びペプスタチンは、Sigma Chemicals(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。インスリン(humulinR−組換えヒトインスリン)はEli Lilly フランス SA(Fergersheim、フランス)から購入した。IGF1はCytolab(イスラエル)から恵与された。ケラチン14抗体はBabco−Convance(Richmond、カリフォルニア州)から購入した。BDGF−BBはR&D systems(ミネアポリス)から購入した。PKCα偽基質(ミリストイル化)はCalbinochem(サンジエゴ、カリフォルニア州)から購入した。
【0187】
マウスケラチン生成細胞の単離及び培養:初代ケラチン生成細胞を、以前に記載されたように(18)新生皮膚から単離した。ケラチン生成細胞は、ウシ胎仔血清で処理された、8%Chelex(Chelex−100、BioRad)を含むイーグル最小必須培地(EMEM)中で培養した。増殖性基底細胞表現型を維持するために、最終的なCa2+濃度は0.05mMに調整した。実験は、プレーティングの5〜7日後に実行した。
【0188】
細胞抽出物の調製及びウェスタンブロッティング分析:粗膜画分については、10μg/ml アプロチニン、10μg/ml ロイペプチン、2μg/ml ペプスタチン、1mM PMSF、10mM EDTA、200μM NaVO4、及び10mM NaFを含むPBS中に、細胞を擦り落とすことによって、全体の細胞溶解物を調製した。均質化及び4回の凍結/融解サイクルの後で、溶解物を4℃、20分間、最大速度で、微量遠心機で遠心分離した。可溶性細胞質ゾルタンパク質画分を含む上清を別のチューブに移した。ペレットを、プロテアーゼ及びホスファターゼの阻害剤とともに1% Triton X−100を含む250μlPBS中に再懸濁し、4℃で30分間インキュベートし、4℃で最大速度で微量遠心機で遠心分離した。上清は膜画分を含む。タンパク質濃度を、改変ローリーアッセイ(Bio−Rad DCタンパク質アッセイキット)を使用して測定した。細胞タンパク質画分のウェスタンブロット分析を記載されるように(6)実行した。
【0189】
免疫沈殿のための細胞溶解物の調製:ケラチン生成細胞を含む細胞ディッシュを、Ca2+/Mg2+を含まないPBSで洗浄した。細胞を、プロテアーゼ及びホスファターゼの阻害剤のカクテル(20μg/ml ロイペプチン;10μg/ml アプロチニン;0.1mM PMSF;1mM DTT;200μM オルトバナジウム酸;2μg/ml ペプスタチン)を含むRIPA緩衝液(50mM Tris−HCl pH 7.4;150mM NaCl;1mM EDTA;10mM NaF;1% Triton x100;0.1% SDS、1% デオキシコール酸ナトリウム)中で機械的に脱着した。調製物を、4℃で、最大速度で20分間、微量遠心機で遠心分離した。上清を免疫沈殿のために使用した。
【0190】
免疫沈殿:溶解物は、300μgの細胞溶解物を25μlのタンパク質A/Gセファロース(Santa Cruz、カリフォルニア州、米国)と混合することによってあらかじめ清澄化し、懸濁物を4℃で30分間連続して回転させた。次いで、調製物を最大速度で10分間、4℃で遠心分離し、30μlのA/Gセファロースを、個々の抗原に対する特異的ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体(希釈1:100)とともに上清に加えた。サンプルを4℃で一晩回転させた。次いで、この懸濁物を最大速度で10分間、4℃で遠心分離し、ペレットをRIPA緩衝液で洗浄した。再度、懸濁物を15,000×gで遠心分離し(4℃で10分間)、TBST中で4回洗浄した。サンプル緩衝液(0.5M Tris−HCl pH 6.8;10% SDS;10% グリセロール;4% 2β−メルカプトエタノール;0.05% ブロモフェノールブルー)を加え、サンプルを5分間煮沸し、次いでSDS−PAGEに供した。
【0191】
接着アッセイ:24ウェルペトリプレート(Greiner)を、PBS中20μg/mlのマトリックスタンパク質で、1時間、37℃にてコートした(250μl/ウェル)。インキュベーション後、プレートを洗浄し、0.1% BSAで30分間、室温にてインキュベートして、非特異的結合をブロックした。ケラチン生成細胞培養物を、0.25%トリプシンで手短にトリプシン処理し、脱着後、細胞を再懸濁し、ケラチン生成細胞(1×106)をコートされたウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。非接着細胞を除去し、ウェルをPBSで2回すすぎ、残存した細胞を1M NaOH中で抽出した。細胞計数は、改変ローリーアッセイ(Bio−Rad DCタンパク質アッセイキット)を使用して、タンパク質濃度によって決定した。結果を、未処理対照に対するパーセンテージによって計算した。
【0192】
免疫蛍光:初代ケラチン生成細胞を、ラミニン5コートしたガラススライド上にプレートした。2日齢ケラチン生成細胞を、1時間PKCアデノウイルスに感染させ、PBSで2回洗浄し、低Ca2+MEM中で培養物中に維持した。感染の24時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒド中に30分間固定し、続いて0.2% Tritonで5分間透過化処理を行った。分析のために、対照及びPKC感染したケラチン生成細胞をPBSですすぎ、PBS中の1%BSAに希釈したPKC抗体(Santa Cruz)とともに4℃で一晩インキュベートした。インキュベート後、スライドをPBSで2回10分間洗浄し、ビオチン化抗ウサギ二次抗体と20分間インキュベートし、PBS中で2回洗浄し、ストレプトアビジン−FITCと20分間インキュベートした。α6β4染色の分析のために、ガラススライドを、氷上で5分間、0.2% Triton X−100で処理し、続いてメタノール中で5分間固定化を行った。このスライドを抗α6抗体又は抗β4抗体とともに一晩インキュベートし、続いて、それぞれビオチン化抗ラット二次抗体との20分間のインキュベーションを行い、PBS中で2回洗浄し、ストレプトアビジン−FITCと20分間インキュベートした。PBS中での2回の洗浄後、スライドを、1%のp−フェニレンジアミン(Sigma)を含むグリセロール緩衝液を用いてマウントし、蛍光をレーザー走査共焦点像顕微鏡(MRC1024、Bio−Rad、英国)によって調べた。
【0193】
アデノウイルス構築物:組換えアデノウイルスベクターを、以前に記載されたように構築した(19)。マウスPKCの顕性不活性変異体を、ATP結合部位におけるリジン残基のアラニンとの置換によって生成した。変異体cDNAを、SRD発現ベクターからEcoRIで切断し、pAxCA1wコスミドカセットに連結して、Axベクターを構築した。遺伝子の顕性不活性活性は、その自己リン酸化の抑止によって実証された。
【0194】
PKCアイソフォーム遺伝子を用いるケラチン生成細胞の形質導入:培養培地を吸引除去し、ケラチン生成細胞培養物を、PKC組換えアデノウイルスを含むウイルス上清で1時間感染させた。次いで、培養物を、MEMで2回洗浄し、再度培地を与えた。感染の10時間後、細胞を、血清を含まない低Ca2+含有MEMに24時間移した。対照及びインスリン処理培養又はIGF1処理培養からのケラチン生成細胞を、増殖アッセイ、86Rb取り込みのために使用し、又は免疫沈殿、免疫蛍光、及びウェスタンブロッティングのために、記載されるように抽出し、並びに細胞質ゾル画分及び膜画分に分画した。
【0195】
PKC活性:特異的PKC活性は、適切な処理後のケラチン生成細胞培養物からの新鮮に調製した免疫沈殿物中で測定した。これらの溶解物は、NaFを含まないRIPA緩衝液中で調製した。活性は、SigmaTECTタンパク質キナーゼCアッセイシステム(Promega、Madison、ウィスコンシン州、米国)の使用により、製造業者の指示書に従って測定した。PKCα偽基質をこれらの研究における基質として使用した。
【0196】
細胞増殖:細胞増殖は、24ウェルプレートにおいて、[3H]チミジンの取り込みによって測定した。細胞を、[3H]チミジン(1μCi/ml)で一晩パルスした。インキュベーション後、細胞をPBSで5回洗浄し、5% TCAを各ウェルに30分間加えた。溶液を除去し、細胞を1% Triton X−100中で可溶化した。細胞に取り込まれた標識されたチミジンを、Tricarb液体シンチレーションカウンターの3Hウィンドウで計数した。
【0197】
Na+/K+ポンプ活性:Na+/K+ポンプ活性を、2mM RbCl及び2.5μCiの86Rbを含む、K+を含まない1mlのPBS中の全細胞による、86Rbのウアバイン感受性の取り込みの測定によって決定した。15分後、Rb取り込みを培地の吸引除去によって終結させ、その後、細胞をK+を含まない4℃の冷PBS中で迅速に4回すすぎ、1% Triton X−100中で可溶化した。ディッシュからの細胞を、シンチレーションバイアル中の3ml H2Oに加えた。サンプルを、Tricarb液体シンチレーションカウンターの3Hウィンドウで計数した。Na+/K+ポンプ活性に特異的に関連するRb取り込みを、10−4Mウアバインの存在下で蓄積したcpmの、阻害剤の非存在下で測定した取り込みからの減算によって決定した。
【0198】
PKCイムノキナーゼアッセイ:精製及び標準化されたPKCアイソザイムは、P.Blumberg博士(NCI、NIH、U.S.)及びMarcello G.Kazanietz博士(University of Pennsylvania、School of Medicine)から恵与された。初代ケラチン生成細胞を、500μlの1% Triton溶解緩衝液(1×PBS中の1% Triton−X 100、10μg/ml アプロチニン及びロイペプチン、2μg/ml ペプスタチン、1mM PMSF、1mM EDTA、200μM Na2VO4、10mM NaF)中で収集した。溶解物を4℃で30分間インキュベートし、16,000×gで30分間、4℃にて遠心分離した。上清を新鮮なチューブに移した。細胞溶解物の免疫沈殿を、5μg/サンプルの抗α6/GoH3(PharMingen)及び30μl/サンプルのタンパク質A/G−Plusアガローススラリー(Santa Cruz)を用いて4℃で一晩実行した。ビーズを、RIPA緩衝液で1回、及び50mM Tris−HCl pH 7.5で2回洗浄した。35μlの反応緩衝液(1mM CaCl2、20mM MgCl2、50mM Tris−HCl pH 7.5)を各アッセイに加えた。各アッセイについて、DMSO又は10mM TPAのいずれかを含む5.5μl/アッセイのリン脂質ベシクルの懸濁物を、標準化量の特異的PKCアイソザイムとともにスラリーに加えた。反応を、10μl/アッセイの125mM ATP(1.25μCi/アッセイ[γ−32P]ATP、Amersham)を加えることによって開始し、30℃で10分間継続させた。次いで、ビーズをRIPA緩衝液で2回洗浄した。30μl/サンプルのタンパク質負荷色素(3×Laemmli、5% SDS)を加え、サンプルをウォーターバス中で5分間煮沸した。タンパク質を、8.5%ゲル上のSDS−PAGEによって分離し、Protranメンブレン(Schleicher & Schuell)に転写し、オートラジオグラフィーによって可視化した。ヒストンのリン酸化及びPKC基質ペプチドのリン酸化を、PKC活性のための対照として使用した。
【0199】
実験結果
(実施例1)
組換えアデノウイルスベクターを利用するPKCアイソフォームの効果的な過剰発現
組換えβ−ガラクトシダーゼアデノウイルスを利用することによって、高い感染割合が達成され、培養されたケラチン生成細胞集団の90%より多くが組換えタンパク質を発現した。組換えβ−ガラクトシダーゼアデノウイルス感染は、細胞の生存度又は細胞増殖に影響を与えなかった。さらに、β−ガラクトシダーゼ発現は培養の2週間まで持続され、次の実験における対照感染として使用した。組換えPKCアデノウイルスが、タンパク質発現を誘導し、及びマウスケラチン生成細胞培養において正しく活性化される効率を調べた。図1におけるウェスタンブロッティングによって見られるように、組換えPKCアデノウイルス構築物を用いる1時間感染の24時間後、特異的PKCタンパク質発現の劇的な増加が、特異的アイソフォームの内因性の発現レベルよりも5倍から10倍上で観察された。組換えタンパク質は、感染後早くも6時間で、感染したケラチン生成細胞培養物において検出可能であり、ピーク発現は24時間までに得られた。タンパク質発現は、培養期間の全体を通して持続した(14日まで)。
【0200】
(実施例2)
過剰発現されたPKCアイソフォームはPKCアクチベーターによって活性化される
PKCアイソフォームの組換えタンパク質は、典型的にはPKCアクチベーターに応答した。図2において見られるように、ブリオスタチン1を用いる処理は、PKCαタンパク質及びPKCδタンパク質の膜画分へのトランスロケーションを誘導し、PKCη及びPKCζのアイソフォームに対してはより低い効果を有した。このことは、内因性アイソフォームを用いて得られた結果と同様であり、これらのコファクター要求性から予測される通りである。
【0201】
(実施例3)
過剰発現されたPKCアイソフォームはそれらのネイティブ型で活性である
感染後早くとも18時間で、PKCキナーゼアッセイは、独特なPKCアイソフォームの免疫沈殿物が、PKCアクチベーターによる刺激のさらなる必要性を伴うことなく、酵素的に活性であることを明らかにした(図3)。
【0202】
(実施例4)
特異的PKCアイソフォームの過剰発現は初代ケラチン生成細胞において独特な形態学的変化を誘導する
利用されたPKCアデノウイルス構築物の各々は、初代ケラチン生成細胞において特異的形態学的変化を誘導した(図4)。非感染初代マウスケラチン生成細胞培養物及びβ−ガラクトシダーゼ感染細胞は、培養中に、増殖性の基底細胞の特徴に典型的である立方体形態を提示した。アイソフォーム特異性に関わりなく、ケラチン生成細胞を過剰発現するすべてのPKCは、細胞の伸長及びニューロン様突出の出現を含む、PKC活性化に典型的な形態学的変化を示した。しかし、PKCアイソフォームの各々1つは、ケラチン生成細胞形態に対して特徴的な効果を有した。PKCα感染は、典型的な平板化された形態を有する、ケラチン生成細胞の層状化を誘導した。対照的に、PKCηは、迅速な速度で増殖する基底細胞の形態学的特徴を提示する、細胞の濃密なクローンとして見られた(図4)。2つのアイソフォームは、細胞マトリックス並びに細胞−細胞結合をもたらすように見られた。PKCδ感染の18〜48時間後、細胞は、ニューロン様突出を有して、細長く且つ伸長して見られた。これに続いて、徐々に培養ディッシュからの細胞の喪失が起こり、これは培養期間の過程で漸次的に起こった。過剰発現PKCζケラチン生成細胞は、円形のケラチン生成細胞クラスターとして見られ、これは、培養ディッシュにゆるく結合しており、感染の数日後に次第に失われた。
【0203】
(実施例5)
感染した初代ケラチン生成細胞中の過剰発現PKCアイソフォームの独特の局在化
独特の形態学的変化は、免疫蛍光分析によって特徴付けられるような独特な細胞局在化と関連した。増殖しているケラチン生成細胞において、PKCα、PKCδ、及びPKCζは、細胞質並びに原形質膜において発現された。内因性タンパク質発現と同様に、PKCηアイソフォームは、ケラチン生成細胞の核周辺領域に局在した(図5)。分布の劇的な変化がPKCδ及びPKCζに関連し、ここでは、細胞脱着に続いて、PKCアイソフォーム発現が、細胞膜に優先的に局在した(図5)。
【0204】
(実施例6)
PKCアイソフォームによるα6β4発現の調節
実験結果
増殖性基底層の基底表現型の特徴であるタンパク質を調節する、特異的PKCアイソフォームの能力を試験した。α6β4インテグリンの下方制御がケラチン生成細胞分化の間に起こる初期事象の1つであるので、種々のPKCアイソフォームがα6β4インテグリン(基底層の半接着斑に特異的に局在するインテグリン)の発現を調節する能力を評価した。図6において提示されるイムノブロットにおいて見られることができるように、PKCδ及びPKCζアイソフォームのみが、対照ケラチン生成細胞のα6β4インテグリンサブユニットレベルとの比較において、α6β4発現を下方制御することが可能であった。同時に、α3又はβ1インテグリンサブユニットレベルは減少しなかった。対照的に、一貫して、PKCαアイソフォームの過剰発現は、対照発現よりも2〜3倍上に増加したα6β4レベルを生じた(図6)。PKCηの過剰発現は、α6β4タンパク質発現に影響を与えなかった。いくつかの特徴が分化に対する細胞の関与に付随しており、これはα6β4タンパク質の下方制御に続き、増殖速度の減少、新規なケラチンの合成、細胞脱着、及び基底膜成分への接着の喪失が含まれる。ケラチン発現の変化は、異なるPKCアイソフォームの過剰発現によっては観察されなかった。これには、基底の増殖しているケラチン生成細胞の特徴であるK5及びK14の発現、並びに棘層分化の初期段階の特徴であるK1及びK10の発現が含まれた。さらに、増殖速度が3H−チミジン取り込みによって分析された場合、α6β4発現と増殖能力の喪失の間の相関は存在しなかった。
【0205】
(実施例7)
過剰発現したPKCη及びPKCδはインビトロでケラチン生成細胞増殖を誘導する
PKCη及びPKCδの過剰発現は、ケラチン生成細胞増殖を、対照レベルよりもそれぞれ5倍及び2倍、有意に誘導する(図7)。PKCζ及びPKCαは細胞増殖に影響を与えなかった。
【0206】
(実施例8)
過剰発現したPKCδ及びζはインビトロでケラチン生成細胞脱着を誘導する
PKCδ及びζが過剰発現したケラチン生成細胞の接着特性を研究した。対照ケラチン生成細胞と比較して、特異的マトリックスタンパク質(ラミニン1、ラミニン5、フィブロネクチン、及びコラーゲンを含む)への接着能力の変化は観察されなかった(データは示していない)。しかし、PKCδアイソフォーム及びPKCζアイソフォームを過剰発現する細胞においては、培養ディッシュとの細胞接触の喪失が、培養ディッシュからの段階的なケラチン生成細胞脱着に付随した(図4)。
【0207】
(実施例9)
α6β4インテグリンの半接着斑局在に対するPKCアイソフォームの過剰発現効果
α6β4発現は半接着斑接着複合体の形成のために必須であるので、半接着斑へのα6β4局在化とのα6β4下方制御及び細胞脱着の関連を試験した。図8は、半接着斑複合体とのα6β4結合の免疫蛍光分析を提示する。図8において見られるように、対照の感染したケラチン生成細胞と比較して、過剰発現しているPKCαケラチン生成細胞におけるα6β4インテグリン発現の上方制御(図6)は、半接着斑複合体へのα6β4の組み込みの増加と関連する。PKCηを過剰発現する細胞はまた、半接着斑複合体とのα6β4インテグリンの結合を誘導するが、過剰発現しているPKCα細胞において観察されるものよりも少なかった。予測されるように、PKCδ及びPKCζを過剰発現するケラチン生成細胞におけるα6β4インテグリンの有意な下方制御が、細胞の半接着斑複合体とのα6β4の組み込みの減少に付随することを見い出した(図8)。これらの結果は、α6β4インテグリンが、細胞−マトリックス結合及びケラチン生成細胞が根底にある基底膜につながれることにおいて重要な役割を果たすことを示唆する。さらに、PKCδ及びζは、ケラチン生成細胞分化プロセスからの識別可能な経路において、α6β4下方制御を媒介し、ケラチン生成細胞の細胞脱着を開始する。最後に、PKC媒介α6β4下方制御を関連付け、半接着斑α6β4組み込み及びケラチン生成細胞脱着への特異的形態学的変化を減少するために、培養期間の間に異なるPKCアイソフォームを過剰発現する接着した細胞及び脱着した細胞の量の変化を追跡した。図9において、接着した細胞をPKCアデノウイルス感染の24時間後及び48時間後に培養中で計数した。明瞭に観察することができるように、PKCδ及びPKCζの両方はインビトロで細胞損失を誘導した。並行して、培養中での細胞の損失は、下層の培地に浮遊する培地の増加と相関した。これらの結果は、PKCδ及びPKCζが、細胞の分化及び移動の初期段階と関連する脱着工程の制御のために重要であることを示す。
【0208】
(実施例10)
PKCηは生理学的設定下でケラチン生成細胞の増殖及び分化を示差的に調節する
図7において明瞭に示されるように、PKCηアイソフォームを過剰発現する細胞は、対照の非感染細胞よりも5〜7倍上に加速した速度で増殖し、他のPKCアイソフォームを過剰発現するケラチン生成細胞培養よりも一貫して高かった。しかし、増殖の誘導は培地中のCa2+濃度を調節することによって決定されるような、ケラチン生成細胞の分化状態に依存した。低Ca2+濃度(0.05mM)よりも下に維持されたケラチン生成細胞を増殖する際に、内因性PKCηは、増殖している細胞の大部分の核周辺領域に局在化した(図10)。これらの条件下において、PKCηの過剰発現は、ケラチン生成細胞増殖に劇的な増加を誘導した(図11)。しかし、ケラチン生成細胞がCa2+濃度を0.12mMまで上昇させることによって分化された場合、PKCηの過剰発現は増殖を誘導しなかったが、ケラチン生成細胞分化をさらに刺激した。これらの結果は、過剰発現したPKCηは生理学的に増殖している細胞においてのみ増殖を誘導するが、細胞分化に干渉しないことを示唆する。PKCη発現の調節の相違はまた、インビボにおいても見られた。活発に増殖している皮膚並びに胚のニューロン細胞におけるPKCη発現が同定されたのに対して、成熟成体脳においては、PKCηは観察されず、表皮PKCηは皮膚の下流層に局在した。
【0209】
(実施例11)
PKCη及びDNPKCηの過剰発現は、PKC局在化及び細胞形態を特異的に調節する
ケラチン生成細胞における増殖又は分化の両方の状態におけるPKCηについてのポジティブな役割を支持する結果をさらに検証するために、キナーゼ不活性顕性不活性アデノウイルスPKCη構築物の効果を、増殖しているケラチン生成細胞及び分化しているケラチン生成細胞における感染の効果を研究することによって分析した。図12において見られるように、PKCη及びDNPKCηの両方のアデノウイルス感染は、増殖状態及び分化状態の両方において効率的であった。予測されるように、増殖しているケラチン生成細胞において、DNPKCηは、Ca2+誘導性分化と関連する形態学的変化に類似する細胞形態の劇的な変化(細胞の平板化、細胞−細胞境界の喪失を含む)を伴うケラチン生成細胞分化を誘導した(図12A〜B)。さらに、これらの変化は、ケラチン生成細胞増殖の停止(図11)及び分化マーカー(ケラチン1、ケラチン10、ロリクリン、及びフィラグリンを含む)の劇的な誘導に付随し、これらは、インビボでの正常皮膚において提示されるのと同様のレベルまで上昇した(図13A〜B)。同時に、分化プログラムの開始に際して、DNPKCηの過剰発現はCa2+誘導性分化を抑止しなかった。これらの結果は、PKCη及びDNPKCηが、生理学的設定下で、ケラチン生成細胞の増殖及び分化を示差的に調節するために使用可能であることを示唆する。
【0210】
(実施例12)
インビボ実験
PKCηがインビボで細胞の増殖及び分化を示差的に調節する能力を試験するために、ヌードマウスの背に作製した完全な切開性創傷の治癒をPKCηが誘導する能力を評価した。外因性組換えタンパク質を発現するケラチン生成細胞の能力を、対照β−galアデノウイルスを利用することによって確認した。図14において見られることができるように、感染の2週間後、β−gal発現は、インビトロケラチン生成細胞並びにインビボ皮膚で維持される。興味深いことに、創傷治癒プロセスが、対照、PKCα、及びPKCηのアデノウイルス構築物を用いる局所的感染後にマウスにおいて試験されたときに、PKCηのみが、局所的感染の早くも4日後で顆粒組織の形成を誘導した。これはまた、筋肉、脂肪、及び真皮層の組織化された形成もまた含んだ。同時に、対照及びPKCα感染皮膚において、濃密な顆粒組織は見い出されず、創傷の閉鎖は観察されなかった(図14)。それゆえに、PKCηは、創傷治癒プロセスの誘導において皮膚の増殖及び分化を調節する第1の候補物質であると見なされることが可能である。
【0211】
(実施例13)
インスリンは、増殖しているケラチン生成細胞におけるPKCδのトランスロケーションを特異的に誘導する
皮膚において発現される2種のPKCアイソフォームが、ケラチン生成細胞増殖に影響を与えることが見い出された:PKCη及びPKCδである。皮膚分化を調節する特異的PKCアイソフォームを活性化する内因性因子に取り組み且つこれを同定するために、ケラチン生成細胞増殖を促進することが知られているいくつかの増殖因子(EGF、KGF、インスリン、PDGF、及びIGF1を含む)が増殖依存性の様式で特異的PKCアイソフォームを活性化する能力を評価した。PKCアイソフォームα、δ、ε、η、及びζは皮膚において発現される。PKCアイソフォームの活性化は膜画分へのそれらのトランスロケーションと関連するので、種々のPKCアイソフォームの細胞質ゾルから膜へのトランスロケーションに対するこれらの増殖因子の効果を試験した。図15において見られるように、刺激の早くも5分後に、インスリンは細胞質画分から膜画分へのPKCδのトランスロケーションを特異的に誘導した。PKCδの膜発現は、インスリン刺激後数時間維持された。対照的に、IGF1は、膜におけるPKCδ発現を減少し、且つ細胞質画分におけるその発現の相対的レベルを増加した。他の増殖因子は、PKCδのトランスロケーション及び局在化に有意に影響を与えなかった。他のPKCアイソフォームの分布の変化は、IGF1及びインスリンを含むいずれの増殖因子による刺激後にも見られなかった。
【0212】
(実施例14)
インスリンは、増殖しているケラチン生成細胞においてPKCδの活性化を特異的に誘導する
PKCδのトランスロケーションが活性化のために十分であるか否かを決定するために、インスリン及びIGF1で処理したケラチン生成細胞の細胞質及び膜の画分からのPKC免疫沈殿物のキナーゼ活性を測定した。図16に示されるように、インスリンは膜画分中のPKCδの活性を増加したがIGF1は増加しなかった。PKCα活性の上昇は、細胞質画分においては観察されなかった。インスリン誘導性活性化はPKCδに特異的であり、PKCα、ε、η、又はζの活性化は、インスリン刺激の30分後まで観察されなかった。要するに、これらの結果は、インスリンによるがIGF1によらないPKCδ活性化の選択的刺激を示唆する。
【0213】
(実施例15)
インスリン及びIGF1はケラチン生成細胞増殖に対して相加的効果を有する
PKCδの特異的活性化が、ケラチン生成細胞における特異的インスリン誘導性の分裂促進的経路を意味するか否かを分析するために、インスリンとIGF1の両方の分裂促進的効果を、チミジン取り込みによって測定されるようなケラチン生成細胞増殖を誘導するそれらの能力を研究することによって試験した。図17Aにおいて示されるように、インスリンとIGF1の両方が、用量依存的な様式でチミジン取り込みを刺激し、それぞれ10−7M及び10−8Mで最大誘導が達成された。各濃度において、IGF1による最大刺激はインスリンによるそれよりも高かった。興味深いことに、すべての濃度において、両方のホルモンを一緒に与えた場合、分裂促進的効果は相加的であった(図17B)。これらの結果は、インスリンが、IGF1誘導性のケラチン生成細胞増殖に非依存的な独特な経路を通してケラチン生成細胞増殖を調節することを示唆する。
【0214】
(実施例16)
インスリン誘導性PKCδ活性化とインスリン誘導性ケラチン生成細胞増殖の間の関連性
インスリン誘導性PKCδ活性化とインスリン誘導性ケラチン生成細胞増殖の間の関連性を直接的に研究するために、組換えPKCアデノウイルス構築物を使用して、野生型PKCδ(WTPKCδ)並びにPKCのキナーゼ不活性顕性不活性変異体(これは内因性PKCδ活性を抑止する)(DNPKCδ)の両方を過剰発現させた。インスリン誘導性ケラチン生成細胞増殖に対する、WTPKCδ及びDNPKCδの過剰発現の効果を試験した。両方の構築物、並びにPKCα構築物は、ケラチン生成細胞において効率的に発現された(図18A)。さらに、PKCδ及びPKCαを用いる感染は、対照レベルよりも数倍上のアイソフォーム特異的PKC活性を誘導した(図18B)。予測されるように、DNPKCδの過剰発現はPKC活性を誘導しなかった。図19Aにおいて見られることができるように、トランスフェクトされていない細胞のインスリン処理又はインスリン処理を伴わないWTPKCδの過剰発現は、未処理細胞、又はPKCαで形質導入された細胞よりも2〜3倍とほぼ同じレベルまでチミジン取り込みを増加した。さらに、すでにWTPKCδを過剰発現している細胞へのインスリンの付加は、チミジン取り込みのさらなる増加を引き起こさなかった。IGF1は、非感染細胞並びにWTPKCδ及びPKCαを過剰発現する細胞の両方において同様にチミジン取り込みを増加した(図19A)。インスリン誘導された増殖におけるPKCδの直接的関与は、PKCδ活性を抑止することによって証明された。図19Bにおいて見られるように、顕性不活性PKCδを過剰発現する細胞におけるベースのチミジン取り込みはわずかであるが有意であり、非感染細胞におけるそれよりも低かった。DNPKCδの過剰発現は、インスリン誘導性の増殖を完全に除去したが、IGF1誘導性増殖に影響を与えなかった。さらに、インスリン及びIGF1の相加的効果は、IGF1単独のそれまで減少した。
【0215】
(実施例17)
PKCδ活性化のインスリン媒介経路への特異性
PKCδ活性化のインスリン媒介経路への特異性を、種々の増殖因子(IGF1、EGF、KGF、ECGF、及びPDGFを含む)に対する分裂促進的応答へのPKCδ及びDNPKCδの効果を研究することによって分析した。図20において見られるように、DNPKCδの過剰発現は、インスリンによって誘導される増殖性効果を選択的に除外したが、試験された他の増殖因子のいずれの効果もブロックしなかった。しかし、PKCδの過剰発現は、インスリン誘導性増殖を模倣し、IGF1誘導性増殖に影響を与えなかった。EGF及びKGFを用いる刺激によって誘導される増殖は増加した(図21)。これらのデータは、インスリンによるPKCδ活性化が、PKCδを含む経路を通してケラチン生成細胞の増殖を媒介すること、及びこの経路が、ケラチン生成細胞増殖を調節することが知られている2つの主要な増殖因子であるEGF及びKGFのシグナル伝達の上流にあることを示す。全体として、インスリンは、PKCδ活性の特異的レギュレーターであることが見い出され、この活性は、インスリン、EGF、及びKGFによって誘導されるケラチン生成細胞増殖を調節する際の特異的候補である可能性がある。
【0216】
(実施例18)
インスリン誘導性PKCδ活性及びケラチン生成細胞増殖は、STAT3転写活性化によって媒介される
インスリンシグナル伝達におけるPKCδの役割をさらに特徴付けし、これがSTAT3によって媒介される転写活性化の誘導を含むことを見い出した。図23において見られるように、初代ケラチン生成細胞において、PKCδは、STAT3と特異的に関連性があることが示された。インスリン刺激後、PKCδは活性化され、次には、STAT3をリン酸化及び活性化する(図24)。さらに、薬理学的阻害剤(ロットレリン)によるPKCδ活性の抑止は、STAT3の活性化並びに核トランスロケーションを阻害する。さらに、図25において見られるように、STAT3の過剰発現は、インスリンによって、及びPKCδの過剰発現によって誘導されるのと同様の増殖を誘導し、顕性不活性PKCδ変異体の過剰発現によるPKCδ活性の抑止は、STAT3がケラチン生成細胞増殖を誘導する能力を消滅させる。全体として、これらの結果は、インスリン及びPKCδが、ケラチン生成細胞増殖と関連した転写活性化において役割を果たすことを示唆する。
【0217】
(実施例19)
PKCδ及びPKCζはインビボでの創傷治癒プロセスに必須である
インビボでの創傷治癒プロセスにおけるPKCアイソフォームの重要性は、アイソフォーム特異的無PKCマウスを利用して確立された。図22A〜Bにおいて見られるように、全層創傷が、無PKCδマウス、無PKCζマウス、無PKCαマウス(ノックアウト、KO)及びそれらの野生型同腹仔の背において作製されたときに、創傷治癒の遅延が無PKCδマウス及び無PKCζマウスにおいて観察されたが、無PKCαマウスにおいては観察されなかった。このデータは、糖尿病バックグラウンドの非存在下においてさえ、特異的PKCアイソフォームが皮膚における創傷治癒プロセスのために必須であることを示す。
【0218】
(実施例20)
インビボでの創傷治癒のためのインスリンの単回対複数回塗布
創傷を切開により8〜10週齢のC57BLマウスの背に作製し、以下のように処置した:(i)インスリン0.1μM、7日間毎日塗布;(ii)インスリン1μM、7日間毎日塗布;(iii)インスリン10μM、7日間毎日塗布;(iv)インスリン1μM、創傷形成の4日後に1回塗布;及び(v)媒体(PBS)対照、7日間毎日塗布。すべてのマウスを創傷形成の7日後に屠殺し、それらの開いた創傷領域を測定した。図26に見られるように、1μM濃度におけるインスリンの毎日の処置は、より低濃度(0.1μM)又はより高濃度(10μM)でのインスリンの毎日の処置よりも有意に効果的であった。驚くべきことに、1μM濃度におけるインスリンの単回塗布の処置は、同じ濃度のインスリンの7回の日々の反復塗布の処置よりも実質的に有効であった。
【0219】
観察された創傷は瘢痕組織で覆われていたので、創傷の実際の閉鎖及び再構築した表皮の形成を正確に評価することが困難であった。それゆえに、創傷組織の表皮及び真皮の閉鎖に対するインスリンの効果を、組織学的パラメーターによって決定した。創傷の表皮閉鎖を、創傷ギャップにおける基底細胞の形成を強調する、ケラチン14抗体(K14、Babco−Convance、Richmond、カリフォルニア州、米国)を用いて創傷切片を染色することによって決定した。創傷の真皮閉鎖を、×100拡大における光学顕微鏡下で観察される単一の視野において、真皮が両方の創傷の側で観察可能である場合に、ポジティブであると見なした。
【0220】
図27において見られるように、すべてのインスリン処置は、表皮及び真皮の閉鎖を効果的に促進した。図26において示される結果と同様に、1μM濃度でのインスリンの日々の処置は、0.1μM又は10μMの濃度でのインスリンの日々の処置よりも有意に効果的であった。さらに、1μM濃度におけるインスリンの単回塗布は、同じ濃度におけるインスリンの1日に7回の反復塗布の効果よりも実質的に有効であった。
【0221】
したがって、これらの結果は、形態学的並びに組織学的なパラメーターによって決定されるように、インビボでの創傷治癒に対するインスリンの治療的効力を明確に立証する。これらの結果は、驚くべきことに、インスリンの最適な塗布の回数及び/又は頻度を決定することが、適切に創傷を治療するための決定的な工程であることを示す。
【0222】
(実施例21)
インビボでの創傷治癒のためのインスリン及び血小板由来増殖因子(PDGF−BB)の組み合わせ
創傷を切開により8〜10週齢のC57BLマウスの背に作製し、創傷形成の4日後に以下のように処置した:(i)媒体(PBS)対照;(ii)インスリン 1μM;(iii)PDGF−BB 10μM(R&D Systems、ミネアポリス、米国);及び(iv)インスリン 1μM+PDGF−BB 10μM。処置の3日後にすべてのマウスを屠殺し、処置した創傷を、例えば、上記の実施例20に記載されるように、表皮閉鎖及び真皮閉鎖について組織学的に分析した。
【0223】
図28において見られるように、インスリン又はPDGF−BBいずれか単独を用いる処置は、表皮閉鎖に対して(対照よりも30〜40%の増加)及び真皮閉鎖に対して(対照よりも10〜20%の増加)部分的に有効であった。しかし、インスリン及びPDGF−BBを組み合わせた処置は、実質的により高い表皮閉鎖(対照よりも約80%増加)並びに真皮閉鎖(約60%増加)を生じた。したがって、これらの結果は、インスリン及びPDGF−BBの組み合わせが相乗的な様式で創傷治癒に影響を与えることを示す。これらの結果はさらに、創傷の治療的処置のために、EGF、TGFβ、KGFなどの他の増殖因子又はトランスフォーミング因子とインスリンを組み合わせることの潜在能力を示す。
【0224】
(実施例22)
インビボでの創傷治癒のためのインスリン及びPKCα阻害剤の組み合わせ
創傷を切開により8〜10週齢のC57BLマウスの背に作製し、媒体(PBS)対照、又はPKCα阻害剤(HO/02;PKCα偽基質、ミリストイル化;Calibiochem、サンジエゴ、カリフォルニア州、米国と組み合わせた、0.67μM インスリン(HO/01;Humulin、Eli Lilly、米国)のいずれかを用いて7日間毎日処置した。創傷形成の7日後、すべてのマウスを屠殺し、処置された創傷を、創傷閉鎖、表皮閉鎖、真皮閉鎖、及び表皮細胞の空間的分化について分析した。創傷閉鎖を、開いた創傷領域を測定することによって決定した。創傷の真皮閉鎖は、両方の創傷の側において真皮が×100倍率における光学顕微鏡下で観察される単一の視野において観察可能である場合にポジティブであると見なした。創傷の表皮閉鎖は、創傷ギャップにおける基底細胞の形成を強調するK14抗体を用いて創傷切片を染色することによって決定した。表皮細胞の空間的分化は、新規に形成された表皮細胞を強調するK1抗体を用いて創傷切片を染色することによって決定した。
【0225】
図28〜32に図示されるように、インスリン(HO/01)及びPKCα阻害剤(HO/02)の組み合わせ塗布は、創傷閉鎖(図29A〜B)、真皮閉鎖(図30)、表皮閉鎖(図31)、及び表皮細胞の空間的分化(図32)を実質的に促進した。図33において見ることが可能であるように、PKCα阻害剤HO/02と組み合わせたインスリンHO/01の処置は、それぞれ、媒体対照と比較して、約15〜70%表皮閉鎖を増加し、約15〜50%真皮閉鎖を増加し、約15〜50%表皮細胞の空間的分化を増加した。
【0226】
したがって、これらの結果は、PKCα阻害剤と組み合わせたインスリンによる創傷の治療的処置は、表皮閉鎖、真皮閉鎖、表皮細胞の空間的分化、及び引き続く創傷治癒を効果的に促進した。
【0227】
(実施例23)
インスリン及びPKCα阻害剤の組み合わせは、インスリンのみの処置によって引き起こされる有害な副作用を回避する
創傷を切開により8〜10週齢のC57BLマウスの背に作製し、媒体(PBS)対照、又は1μM インスリン(Humulin、Eli Lilly、米国)若しくは1μM PKCα偽基質(Calibiochem、サンジエゴ、カリフォルニア州、米国)と組み合わせた1μM インスリンの混合物のいずれかを用いて7日間毎日処置した。創傷形成の7日後、すべてのマウスを屠殺し、処置された創傷を、表皮の増殖能力(PCNA)、血管形成、炎症、表皮細胞、及び創傷ギャップにおける再構築プロセスについて組織学的に分析した。
【0228】
以下の表1において見られることができるように、インスリンのみの処置は、緩衝液対照と比較した場合に、創傷領域において異常な血管形成の発生の実質的な増加を引き起こした(それぞれ、60%及び25%)。創傷治癒プロセスは迅速に増殖する表皮細胞を含むので、このような増加した血管形成はまた、癌の発生を開始するリスクを増加させるかもしれない。他方、インスリンがPKCα阻害剤と組み合わせられた場合には、処置した創傷領域において血管形成は観察されなかった。
【表1】
【0229】
さらに、インスリンのみの処置は炎症の増加、表皮細胞の過形成、表皮細胞の棘層の分化の遅れ、及び瘢痕の増加を生じた。インスリンのみの処置から生じた有害な副作用は、PKCα阻害剤がインスリンと組み合わされた場合にはいずれも観察されなかった。
【0230】
(実施例24)
PKCα阻害剤は創傷炎症を減少する
創傷における後期で且つ重篤な炎症性応答は治癒のプロセスを抑制する可能性があり、したがって、このような炎症を発生から防ぐことは、創傷治癒プロセスを促進するかもしれない。したがって、創傷炎症に対するPKCα阻害剤及びインスリンの効果を、以下の実験において試験した。
【0231】
創傷を切開によりC57BLマウスの背に作製し、以下を用いて7日間毎日処置した:(i)PBS、対照;(ii)1μM PKCα阻害剤(偽基質、ミリストイル化;Calibiochem、米国);(iii)1μM インスリン(Eli Lilly、米国);又は1μM PKCα阻害剤及び1μM インスリンの混合物。創傷形成の7日後、すべてのマウスを屠殺し、処置された創傷を炎症について顕微鏡下で観察した。創傷領域中で観察された重篤な炎症の得られる発生率は、以下に続く表1aにおいて要約される。
【表2】
【0232】
これらの結果は、創傷へのPKCα阻害剤の投与が、対照と比較して、重篤な創傷炎症の発生率の実質的な減少(33.3%)を引き起こすことを示す。インスリン単独では、これらの実験条件下では抗炎症性効果を有さなかった。
【0233】
これらの結果は、PKCα阻害剤が、創傷の重篤な炎症を制御するために治療において使用可能であることを示す。PKCα阻害剤が炎症を減少させる実証された能力は、表皮閉鎖、真皮閉鎖、及び表皮細胞の空間的分化を促進するその能力と結び付けられて(本明細書中上記の実施例22を参照のこと)、これを創傷治癒のために潜在的に最も有効な治療剤にする。
【0234】
(実施例25)
インビトロでの創傷閉鎖を加速することに対する、真皮細胞における特異的PKCアイソフォームの発現及び/又は活性を調節すること、並びに細胞に種々の薬剤を投与することの組み合わせ効果
材料及び方法
試薬:D因子(アディプシン)ヒト、Calbiochem、カリフォルニア州、米国;組換えTNFα マウス、R&D Systems、ミネアポリス 米国;GW9662、Cayman chemical、米国;タンパク質キナーゼCα偽基質阻害剤、Calbiochem、カリフォルニア州、米国;タンパク質キナーゼCζ偽基質阻害剤、Calbiochem、カリフォルニア州、米国;タンパク質キナーゼCη偽基質阻害剤、Calbiochem、カリフォルニア州、米国;PDGF−BB、Cytolab、イスラエル;IL−6、Cytolab、イスラエル;KGF/FGF−7、Cytolab、イスラエル、IGF−1、Cytolab、イスラエル;TGFβ2、Cytolab、イスラエル;上皮増殖因子(EGF)、マウス、Chemicon international、カリフォルニア州、米国;PKCδ RACK、AnaSpec、カリフォルニア州、米国;ロジグリタゾン(Rosiglitazon)、CalbioChem、カリフォルニア州、米国;アディポネクチン、MBL、マサチューセッツ州、米国及びコパキソン(Copaxone)(登録商標)、TEVA、イスラエル。
【0235】
インビトロ創傷閉鎖アッセイ:ケラチン生成細胞及び線維芽細胞(真皮細胞)をペトリ皿(内径5cm)で5日間培養し、次いで人工的な交差型の擦過傷を、200μlピペットチップを使用して各ペトリ皿において形成した。培養した細胞を、特異的PKCアイソフォームの発現及び/又は活性を調節可能なアデノウイルス構築物で感染させた。したがって、野生型(WT)PKCアデノウイルス構築物は特異的PKCを活性化するために使用したのに対して、顕性不活性(DN)PKCアデノウイルス構築物は、特異的PKCを阻害するために使用した。培養細胞は、以下の薬剤の1つをさらに供給された:インスリン(6.7×10−7M)、アディポネクチン(1μg/ディッシュ)、アディプシン(2μg/ml)、IL−6(1μg/ディッシュ)、GW9662(1μg/ディッシュ)、KGF(1μg/ディッシュ)、TNFα(12μg/ml)、TGFβ、ロジグリタゾン、SRC阻害剤、PKCδ RACK(10−7M)、及びPKCα偽基質阻害ペプチド(107M)。得られる創傷治癒レベルは、0(閉鎖なし)〜10(完全な閉鎖)までの範囲の指標値を使用して、処置の24〜48時間後に決定した。
【0236】
結果:
インビトロでの線維芽細胞創傷閉鎖に対する組み合わせ治療の効果は、以下の表2a〜b及び表3a〜bに要約されている。これらの結果は、線維芽細胞におけるPKCαの発現及び/又は活性の阻害が、細胞へのアディプシン又はインスリンの投与と組み合わせた場合に、創傷閉鎖を実質的に促進することを示す(それぞれ、10及び8の創傷閉鎖指標値)。創傷閉鎖はまた、線維芽細胞におけるPKCηの阻害、PKCεの阻害、PKCδの活性化、又はPKCζの活性化と組み合わせたPKCαの阻害によって加速された(それぞれ、9、9、9、及び7の創傷閉鎖指標値;図34A〜E)。さらに、創傷閉鎖は、細胞へのKFGの投与と組み合わせた、線維芽細胞中でのPKCζの阻害によって促進された(7の創傷閉鎖指標値;図36)。さらに加えて、創傷閉鎖は、インスリン、IL−6、KGF、又はGW9662の投与と組み合わせた、線維芽細胞におけるPKCβの阻害によって加速された(それぞれ、8、7、9、及び8の創傷閉鎖指標値;図38A〜E)。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0237】
インビトロでのケラチン生成細胞創傷閉鎖に対する組み合わせ処置の効果を以下の表4a〜b及び表5a〜bに要約する。これらの結果は、ケラチン生成細胞におけるPKCαの発現及び/又は活性の阻害が、細胞へのKGF、IL−6、TNFα、又はPKCδ RACKペプチドの投与と組み合わせた場合に、創傷閉鎖を実質的に促進したことを示す(それぞれ6、8、10、及び8の創傷閉鎖指標値;図35A〜C及びG)。創傷閉鎖はまた、細胞中のPKCη、PKCε、又はPKCζの刺激と組み合わせて、ケラチン生成細胞中のPKCαの阻害によって増強された(それぞれ、10、9、及び6の創傷閉鎖指標値;図35A、D〜F及びH)。さらに、創傷閉鎖は、細胞へのIL−6、TNFα、又はアディポネクチンの投与と組み合わせた、ケラチン生成細胞におけるPKCζの阻害によって促進された(それぞれ9、9、及び7の創傷閉鎖指標値;図37A〜D)。さらに加えて、創傷閉鎖は、細胞中でPKCεを活性化すること、PKCζを活性化すること、若しくはPKCαを阻害することと組み合わせた、ケラチン生成細胞におけるPKCδ活性及び/若しくは発現の促進によって、又は細胞へのアディプシンの投与によって加速された(それぞれ7、8、8、及び8の創傷閉鎖指標値;図39A〜E)。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0238】
したがって、これらの結果は、創傷閉鎖が、IL−6、KGF、TNFαなどの増殖因子、インスリンなどのホルモン、アディプシン若しくはアディポネクチンなどのアディポカイン、PKCδ RACK及び/又はGW9662を細胞に投与することと組み合わせた場合に、創傷領域にコロニー形成した真皮細胞及び表皮細胞中での特異的PKCアイソフォームの発現及び/又は活性を調節することによって実質的に加速可能であることを示す。
【0239】
(実施例26)
インビトロ及びインビボでの創傷治癒のためのコポリマー1の投与
材料及び方法
コポリマー1:コポリマー1(酢酸ガラティラメル)は、多発性硬化症を治療するために臨床的に使用されている薬物コパキソン(Copaxone)(登録商標)(Teva、イスラエル)の活性成分である。コポリマー1は、ミエリン鞘の天然成分であるミエリン塩基性タンパク質(MBP)の合成ポリペプチドアナログである。化学的には、コポリマー1は、L−アラニン、L−リジン、及びL−チロシンを有するL−グルタミン酸ポリマー、酢酸(塩)と呼ばれる。その構造式は:(Glu、Ala、Lys、Tyr)x.XCH3COOH(C5H9NO4・C3H7NO2・C6H14N2O2・C9H11NO3)x・xC2H4O2である。酢酸ガラティラメルの平均分子量は4,700〜11,000ダルトンである。これは、23,000ダルトンの平均分子量を有する生成物を形成する4種のアミノ酸を化学的に重合することによって合成される(米国特許第3,849,550号)。
【0240】
インビトロアッセイ:アッセイを、本質的に本明細書中上記の実施例24に記載されるように実行した。コポリマー1は55μg/ディッシュの濃度で、単独で、又はPKCα偽基質(1μM)及び/若しくはインスリン(1μM)と組み合わせて、培養したケラチン生成細胞に供給した。得られる創傷閉鎖レベルを、処置の48時間後に、0(閉鎖なし)〜10(完全な閉鎖)までの範囲の指標値を使用して決定した。
【0241】
インビボアッセイ:創傷を切開(20mm)によりC57BLマウスの背に作製し、以下のように創傷形成の4日後に処置した:(i)媒体(PBS)対照;(ii)コポリマー1(55μg/ml);(iii)コポリマー1(55μg/ml)及びインスリン(1μM)の混合物;(iv)PKCα偽基質阻害ペプチド(1μM)及びインスリン(1μM)の混合物;並びに(v)コポリマー1(55μg/ml)、PKCα偽基質阻害ペプチド(1μM)、及びインスリン(1μM)の混合物。創傷を、(i)創傷閉鎖、(ii)痂皮形成、及び(iii)創傷の出血/滲出について形態学的に評価した。
【0242】
結果:
インビトロアッセイ:培養したケラチン生成細胞へのコポリマー1の投与は、0(閉鎖なし)〜10(完全な閉鎖)までのスケール上で8の指標値にインビトロ創傷の閉鎖を促進した。PKCα偽基質阻害ペプチド、又はPKCα偽基質及びインスリンの混合物とのコポリマー1の組み合わせは、同様の効果を生じた(それぞれ、8及び9の創傷閉鎖指標値;図40A〜F)。したがって、これらの結果は、コポリマー1それ自体が、インビトロでの創傷閉鎖を実質的に加速可能であることを示す。
【0243】
インビボアッセイ:コポリマー1を、単独で又はインスリン及び/若しくはPKCα偽基質と組み合わせて、切開創傷に投与することは、未処置対照と比較して、創傷ギャップを実質的に減少させ、創傷中の痂皮形成を加速した。さらに、コポリマー1を用いるすべての処置は、創傷領域における出血及び滲出を効果的に予防した。
【0244】
したがって、これらの結果は、有効量のコポリマー1を、単独で又はインスリン及び/若しくはPKCα偽基質阻害ペプチドと組み合わせて、創傷組織に投与することは、創傷治癒プロセスを実質的に加速可能であることを示す。
【0245】
(実施例27)
創傷治癒プロセスに対する胸腺分泌物質の影響
材料及び方法:
創傷切開を、正常成体齧歯類又はSTZ糖尿病マウスの上背(首の近く)で実行した。これらの動物を処置の7日後又は9日後に屠殺し、創傷を、上記の実施例20において記載されるような染色手順を使用して、創傷領域に近接した胸腺の存在について、並びに創傷の表皮及び真皮の閉鎖について、組織学的に分析した。
【0246】
結果:
図42A〜Hにおいて見られることができるように、創傷ギャップに密接に近接した胸腺の存在は、表皮形成の加速、組織の顆粒化、及び創傷中の真皮収縮と相関した。これらの観察は、胸腺分泌物質が創傷の治癒プロセスに効果的に寄与するかもしれないことを示す。したがって、サイモシン、β−サイモシン(例えば、サイモシンβ4、サイモシンβ10、サイモシンβ9、サイモシンβ12、サイモシンβ14)、αサイモシン(例えば、サイモシンα、1/ゼダキシン、プロサイモシンα、パラサイモシンα)、サイムリン、IGFI、IGFII、NGF、ソマトスタチン、サイログロブリン、副甲状腺ホルモン、及び/又は胸腺ホルモンペプチド(THP)などの胸腺由来物質は、創傷の治癒プロセスを加速するための処置において使用されてもよい。
【0247】
別々の実施形態の状況において、明瞭化のために記載される本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態における組み合わせで提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔さのために、単一の実施形態の状況において記載される種々の本発明の特徴は、別々に、又は任意の適切な小さな組み合わせ(subcombination)でもまた提供されてもよい。
【0248】
本発明をその特定の実施形態と併せて記載してきたが、多くの代替、改変、及び変形が当業者には明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にある、すべてのこのような代替、改変、及び変形を含めるものとする。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許、特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に援用され、個々の刊行物、特許、特許出願が、具体的且つ個別に引用されて、参照により本明細書に援用される。さらに、本願におけるいかなる参考文献の引用及び同定も、このような参考文献が本発明に対する先行技術として利用可能であることの承認と解釈されるべきではない。
【0249】
(参考文献)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のPKCアイソフォームの発現および/または活性を調節することができる物質および少なくとも1種のさらなる作用物質の、損傷した皮膚または皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または促進するための局所適用用薬剤組成物を製造するための使用であって、該PKCアイソフォームがPKCα、PKCβ、PKCδ、PKCε、PKCηまたはPKCζであり、該作用物質がインスリン、増殖因子、アディポカイン、PKCδRACKおよびGW9662からなる群から選ばれる、上記使用。
【請求項2】
該増殖因子が、IL−6、KFGまたはTNFαであり、該アディポカインがアディプシンまたはアディポネクチンである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
該物質が、PKCアイソフォーム抑制物質である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
PKCアイソフォーム抑制物質がPKCα抑制物質、好ましくはN−ミリストイル化PKCα偽基質ペプチドである、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
PKCアイソフォーム抑制物質がPKCη抑制物質、好ましくは、N−ミリストイル化PKCη偽基質ペプチド、または、PKCζ抑制物質、好ましくは、N−ミリストイル化PKCζ偽基質ペプチドである、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
該物質がN−ミリストイル化PKCα偽基質ペプチドであり、該作用物質がインスリンである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
該物質がPKCアイソフォーム活性化物質、好ましくは、インスリンまたはPKCδRACKから選ばれるPKCδ活性化物質である、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
皮膚創傷が、潰瘍、糖尿病関連の創傷、熱傷、日焼け、加齢による皮膚創傷、角膜潰瘍化による創傷、炎症性消化管疾患による創傷、腸炎症性疾患による創傷、クローン病による創傷、潰瘍性大腸炎、痔核、表皮水疱症による創傷、皮膚水疱形成性創傷、乾癬による創傷、動物の皮膚の創傷、動物の糖尿病による創傷、網膜症による創傷、口腔の創傷(粘膜炎)、膣粘膜炎による創傷、歯周病による創傷、裂傷、外科的切除による創傷、および外科的接着後の創傷からなる群から選択される、請求項1から7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
潰瘍が、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、静脈性潰瘍、胃潰瘍、およびHIV関連潰瘍からなる群から選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
薬剤組成物が、水溶液剤、ゲル剤、クリーム剤、ペースト剤、ローション剤、噴霧剤、懸濁液剤、粉末剤、分散液剤、膏薬、および軟膏剤からなる群から選択される、請求項1から7のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
薬剤組成物が固体支持体を含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
損傷した皮膚または皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または促進するための局所適用用薬剤組成物であって、少なくとも1種のPKCアイソフォームの発現および/または活性を調節することができる物質および少なくとも1種のさらなる作用物質の治療有効量を含み、該PKCアイソフォームがPKCα、PKCβ、PKCδ、PKCε、PKCηまたはPKC−ζであり、該作用物質がインスリン、増殖因子、アディポカイン、PKCδRACKおよびGW9662からなる群から選ばれる、上記薬剤組成物。
【請求項1】
少なくとも1種のPKCアイソフォームの発現および/または活性を調節することができる物質および少なくとも1種のさらなる作用物質の、損傷した皮膚または皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または促進するための局所適用用薬剤組成物を製造するための使用であって、該PKCアイソフォームがPKCα、PKCβ、PKCδ、PKCε、PKCηまたはPKCζであり、該作用物質がインスリン、増殖因子、アディポカイン、PKCδRACKおよびGW9662からなる群から選ばれる、上記使用。
【請求項2】
該増殖因子が、IL−6、KFGまたはTNFαであり、該アディポカインがアディプシンまたはアディポネクチンである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
該物質が、PKCアイソフォーム抑制物質である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
PKCアイソフォーム抑制物質がPKCα抑制物質、好ましくはN−ミリストイル化PKCα偽基質ペプチドである、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
PKCアイソフォーム抑制物質がPKCη抑制物質、好ましくは、N−ミリストイル化PKCη偽基質ペプチド、または、PKCζ抑制物質、好ましくは、N−ミリストイル化PKCζ偽基質ペプチドである、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
該物質がN−ミリストイル化PKCα偽基質ペプチドであり、該作用物質がインスリンである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
該物質がPKCアイソフォーム活性化物質、好ましくは、インスリンまたはPKCδRACKから選ばれるPKCδ活性化物質である、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
皮膚創傷が、潰瘍、糖尿病関連の創傷、熱傷、日焼け、加齢による皮膚創傷、角膜潰瘍化による創傷、炎症性消化管疾患による創傷、腸炎症性疾患による創傷、クローン病による創傷、潰瘍性大腸炎、痔核、表皮水疱症による創傷、皮膚水疱形成性創傷、乾癬による創傷、動物の皮膚の創傷、動物の糖尿病による創傷、網膜症による創傷、口腔の創傷(粘膜炎)、膣粘膜炎による創傷、歯周病による創傷、裂傷、外科的切除による創傷、および外科的接着後の創傷からなる群から選択される、請求項1から7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
潰瘍が、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、静脈性潰瘍、胃潰瘍、およびHIV関連潰瘍からなる群から選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
薬剤組成物が、水溶液剤、ゲル剤、クリーム剤、ペースト剤、ローション剤、噴霧剤、懸濁液剤、粉末剤、分散液剤、膏薬、および軟膏剤からなる群から選択される、請求項1から7のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
薬剤組成物が固体支持体を含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
損傷した皮膚または皮膚創傷の治癒プロセスを誘導または促進するための局所適用用薬剤組成物であって、少なくとも1種のPKCアイソフォームの発現および/または活性を調節することができる物質および少なくとも1種のさらなる作用物質の治療有効量を含み、該PKCアイソフォームがPKCα、PKCβ、PKCδ、PKCε、PKCηまたはPKC−ζであり、該作用物質がインスリン、増殖因子、アディポカイン、PKCδRACKおよびGW9662からなる群から選ばれる、上記薬剤組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41A】
【図41B】
【図41C】
【図41D】
【図42A】
【図42B】
【図42C】
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【図42E】
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【図43】
【図2】
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【図18A】
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【図19】
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【図22B】
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【図28】
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【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
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【図41A】
【図41B】
【図41C】
【図41D】
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【図42C】
【図42D】
【図42E】
【図42F】
【図42G】
【図42H】
【図43】
【公開番号】特開2011−57710(P2011−57710A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285809(P2010−285809)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【分割の表示】特願2006−520104(P2006−520104)の分割
【原出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(504164206)バーイラン ユニバーシティー (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【分割の表示】特願2006−520104(P2006−520104)の分割
【原出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(504164206)バーイラン ユニバーシティー (7)
【Fターム(参考)】
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