説明

創傷癒合を促進させる薬物の製造のための高張液組成物の使用

周手術期間に使用される創傷癒合を促進させる薬物の製造のための高張液組成物の使用であって、前述の組成物は、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及びグルコン酸カルシウムから選ばれる一種或は多種の物質1.5%〜6.9%(w/v)と、ヒドロキシエチル澱粉、デキストラン、カルボキシメチル澱粉、ポリビニルピロリドン及びゼラチン誘導体から選ばれる一種或は多種の物質3%〜18%(w/v)と、残量の通常用注射液とからなり、組成物において、塩化ナトリウムが1.5%(w/v)以上で、且つナトリウムイオンの濃度が6.9%(w/v)の塩化ナトリウム溶液におけるナトリウムイオンの濃度に相当する濃度以下である条件を満足する。当該高張液組成物は、手術前、手術中、手術後に輸液として滴注され、投与量が100〜1500ml/人/日で、使用後、創傷の癒合を促進させることができ、使用が安全で便利で、各種の手術創傷或は外傷創傷(面)及び吻合口に幅広く使用できるなどの利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷癒合を促進させる薬物の製造のための高張液組成物の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外科学は現代医学の重要な構成部分であり、中では、手術の創傷癒合後の抜糸が外科の各科の手術後の仕事の一つである。どうやって手術の創傷と吻合口の癒合を促進させるかは、外科が直面する一つの課題であり、今、通常、手術後等張液を補充・輸注することが行われるが、数日間で連続に等張液を2500〜3000ml/日輸注しなければならないことが多く、こんな大量な等張液の輸注は手術の患者の循環系に影響を与え、患者の心肺の負荷を増加させることにより、臓器の機能を影響するようになる。本発明にかかる高張液を使用する方法が、創傷(吻合口)癒合を促進できることが証明されたのは、積極的な意義があり、等張液の代わりに一部に高張液を使って輸液することにより、例えば、実施例1で、高張輸液の500mlあたり、等張輸液を約1000〜1500ml程度減少するように、手術後の輸液量を減少することができるとともに、循環機能、心肺機能が維持され、さらに手術の創傷(吻合口)癒合を促進させることができる。
【0003】
本出願者によって1998年5月15日に提出された発明名称が「治療用薬物組成物及びその製造方法」の特許番号が98108902.xの特許において、高張液組成物である新規な薬物組成物は、各種のショック、脳外傷、火傷、複合創傷、右心室梗塞による心原性ショック、血液透析による低血圧、胆汁性膵炎、手術の患者、麻酔薬による心臓血管の毒性及び肝包虫症の治療に幅広く使用できることが開示された。しかし、この特許においては、この高張液組成物の創傷癒合の促進における効果が開示されなかった。ここで、参考のため、この特許の全文を本文に取り入れる。
【発明の概要】
【0004】
発明の内容
本出願者は周手術期における高張液の使用を試み、顕著な効果が得られた。結果から、高張液の使用は、潜伏期では、創傷の局所の充血、滲出などの炎症性反応を軽減させることができ、線維組織増殖期では、肉芽組織の形成を促進させることができることによって、創傷癒合を加速させることが示された。
【0005】
本発明の一つの目的は、創傷癒合を促進させる薬物の製造のための高張液組成物の新規な使用を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、以下のように実現される。周手術期間に使用される創傷癒合を促進させる薬物の製造のための高張液組成物の使用であって、前述の組成物は、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及びトリスヒドロキシメチルアミノメタンから選ばれる一種或は多種の物質1.5%〜6.9%(w/v)と、ヒドロキシエチル澱粉、デキストラン、カルボキシメチル澱粉、ポリビニルピロリドン、ゼラチン誘導体、縮合ブドウ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、グリセリン、キシリトール、アルギン酸ナトリウム、N-2-ヒドロキシプロピルアクリルアミド、エチレンオキシド-ポリプロピレングリコール、ペクチン及びペンタスターチ(Pentastarch)から選ばれる一種或は多種の物質3%〜18%(w/v)と、残量の通常用注射液とからなり、組成物において、塩化ナトリウムが1.5%(w/v)以上で、且つナトリウムイオンの濃度が6.9%(w/v)の塩化ナトリウム溶液におけるナトリウムイオンの濃度に相当する濃度以下である条件を満足する。
【0007】
好ましい高張液組成物は、100mlあたりの液体において、塩化ナトリウムが4.2±0.2g、且つヒドロキシエチル澱粉が7.6±0.6g含まれているものである。
【0008】
ここで、前述のヒドロキシエチル澱粉において、少なくとも10%のヒドロキシエチル澱粉の分子量が25,000〜45,000である。
【0009】
前述のデキストランの分子量が40,000〜230,000で、カルボキシメチル澱粉の分子量が30,000〜80,000で、ポリビニルピロリドンの分子量が5,000〜700,000で、縮合ブドウ糖の分子量が8,000〜12,000で、アルギン酸ナトリウムの分子量が20,000〜26,000で、ペクチンの分子量が20,000〜40,000で、ペンタスターチの分子量が264,000である。
【0010】
前述のゼラチン誘導体は、分子量が20,000〜35,000で、ウレア架橋ゼラチン、変性液体ゼラチン、酸化重合ゼラチン及び分解ゼラチンポリペプチドから選ばれるものである。
【0011】
前述の通常用注射液は、注射用水、生理食塩水、平衡液、ブドウ糖溶液、乳酸ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン溶液及びブドウ糖食塩水から選ばれるものである。
【0012】
本発明にかかる高張液組成物は、下述の方法により製造される。ヒドロキシエチル澱粉、デキストラン、カルボキシメチル澱粉、ポリビニルピロリドン、ゼラチン誘導体、縮合ブドウ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、グリセリン、キシリトール、アルギン酸ナトリウム、N-2-ヒドロキシプロピルアクリルアミド、エチレンオキシド-ポリプロピレングリコール、ペクチン及びペンタスターチから選ばれる一種或は多種の物質3〜18gを全量100mlの通常注射用の注射用水、生理食塩水、平衡液、ブドウ糖溶液、乳酸ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン溶液及びブドウ糖食塩水から選ばれる一種或は多種の混合液体に溶解させ、さらに、塩化ナトリウム1.5gと、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及びトリスヒドロキシメチルアミノメタンから選ばれる一種或は多種の物質0〜5.4gとを入れ、上述の配合比で混合、溶解した後、前述の高張液組成物が得られる。
【0013】
本発明における高張液組成物は、周手術期(麻酔後手術前、手術中、手術後)に輸液として使用され、投与方法が点滴で、好ましくは、500mlあたりの投与時間が20〜60分間である。使用量は、患者の年齢や体重によるが、成人の使用量は、通常、250〜1500ml/人/日で、児童の使用量は、例えば100ml/日或は50ml/日のように減少するべきである。
【0014】
一技術方案では、前述の高張液組成物の使用は、周手術期間に静脈内滴注或は骨内滴注により投与される。
【0015】
本発明における前述高張液薬物組成物に使用される包装容器は、プラスチックバッグ、プラスチックバイアル、ガラスバイアル、ガラスアンプルでもよい。容器の装入量は、20ml、50ml、100ml、250ml、370ml、或は500mlでもよい。前述包装容器には、予め静脈(又は骨内)注射針及び/又は輸液管、圧力装置、輸液ポンプが配置・付帯されておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1A〜1Eは、実施例12における高張液実験群である3群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図1B】図1A〜1Eは、実施例12における高張液実験群である3群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図1C】図1A〜1Eは、実施例12における高張液実験群である3群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図1D】図1A〜1Eは、実施例12における高張液実験群である3群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図1E】図1A〜1Eは、実施例12における高張液実験群である3群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図2】図2は、比較のためのSDラットの正常の皮膚組織と皮下組織を示したものである。
【図3A】図3A〜3Eは、実施例12における等張液対照群である2群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図3B】図3A〜3Eは、実施例12における等張液対照群である2群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図3C】図3A〜3Eは、実施例12における等張液対照群である2群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図3D】図3A〜3Eは、実施例12における等張液対照群である2群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図3E】図3A〜3Eは、実施例12における等張液対照群である2群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図4A】図4A〜4Eは、実施例12における高張液対照群である4群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図4B】図4A〜4Eは、実施例12における高張液対照群である4群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図4C】図4A〜4Eは、実施例12における高張液対照群である4群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図4D】図4A〜4Eは、実施例12における高張液対照群である4群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図4E】図4A〜4Eは、実施例12における高張液対照群である4群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図5A】図5A〜5Eは、実施例12における高張液対照群である5群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図5B】図5A〜5Eは、実施例12における高張液対照群である5群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図5C】図5A〜5Eは、実施例12における高張液対照群である5群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図5D】図5A〜5Eは、実施例12における高張液対照群である5群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【図5E】図5A〜5Eは、実施例12における高張液対照群である5群目の組織病理検査の結果を示したものである。
【発明を実施するための説明】
【0017】
具体的な実施形態
実施例1
下述の配合比で配合した。
【0018】
ヒドロキシエチル澱粉 7.6g
塩化ナトリウム 4.2g
注射用水 100mlまで。
【0019】
ヒドロキシエチル澱粉7.6gを注射用水100mlに溶解させ、活性炭0.5gを加え、90℃で15分間撹拌・加熱し、ろ過後、塩化ナトリウム(医薬用グレード)4.2gを加え、撹拌して溶解させ、活性炭0.5〜1.0gを加え、90℃で10分間撹拌・加熱し、さらにろ過し、0.6〜0.8μmのミリポアフィルターを通させた。得られたろ液を20ml、50ml、100ml、250ml、370ml、或は500mlのガラスアンプル、大輸液ガラスバイアル或はプラスチックバイアル(バッグ)に充填し、蓋を封止した後、1.05kg/cm2、121〜123℃で15〜30分間滅菌し、高張液薬物組成物を得た。
【0020】
実施例2
下述の配合比で配合した。
【0021】
ヒドロキシエチル澱粉 8g
塩化ナトリウム 4.1g
注射用水 100mlまで。
【0022】
ヒドロキシエチル澱粉8g、塩化ナトリウム4.1gを生理食塩水100mlに溶解させ、実施例1に記載の方法で活性炭による吸着脱色、ろ過、充填及び滅菌を行い、高張液薬物組成物を得た。
【0023】
実施例3
下述の配合比で配合した。
【0024】
塩化ナトリウム 5.1g
カルボキシメチル澱粉 18g
注射用水 100mlまで。
【0025】
カルボキシメチル澱粉18g、塩化ナトリウム5.1gを注射用水100mlに溶解させ、実施例1に記載の方法で活性炭による吸着脱色、ろ過、充填及び滅菌を行い、高張液薬物組成物を得た。
【0026】
実施例4
下述の配合比で配合した。
【0027】
ヒドロキシエチル澱粉 6g
ゼラチン 5g
塩化ナトリウム 5g
注射用水 100mlまで。
【0028】
上述ヒドロキシエチル澱粉、ゼラチン、塩化ナトリウムを注射用水に溶解させ、実施例1に記載の方法で活性炭による吸着脱色、ろ過、充填及び滅菌を行い、高張液薬物組成物を得た。
【0029】
実施例5
下述の配合比で配合した。
【0030】
ヒドロキシエチル澱粉 6.5g
塩化ナトリウム 3g
酢酸ナトリウム 2g
注射用水 100mlまで。
【0031】
上述ヒドロキシエチル澱粉、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウムを注射用水に溶解させ、実施例1に記載の方法で活性炭による吸着脱色、ろ過、充填及び滅菌を行い、高張液薬物組成物を得た。
【0032】
実施例6
下述の配合比で配合した。
【0033】
ポリビニルピロリドン(バイエル社製) 12g
塩化ナトリウム 2g
重炭酸ナトリウム 4g
注射用水 100mlまで。
【0034】
上述ポリビニルピロリドン、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウムを注射用水に溶解させ、撹拌して溶解させ、実施例1に記載の方法で活性炭による吸着脱色、ろ過、充填及び滅菌を行い、高張液薬物組成物を得た。
【0035】
実施例7
下述の配合比で配合した。
【0036】
アルギン酸ナトリウム(広西南寧製薬工場製) 5g
塩化ナトリウム 1.5g
注射用水 100mlまで。
【0037】
実施例1に記載の方法で上述処方を配合し、高張液薬物組成物を得た。
【0038】
実施例8
下述の配合比で配合した。
【0039】
ペクチン(解放軍185病院製) 3g
塩化ナトリウム 4g
酢酸ナトリウム溶液(2%) 100mlまで。
【0040】
実施例1に記載の方法で、ペクチンを酢酸ナトリウム溶液に溶解させ、さらに塩化ナトリウムを加え、溶解まで撹拌し、ろ過、充填、消毒し、高張液薬物組成物を得た。
【0041】
実施例9
下述の配合比で配合した。
【0042】
縮合ブドウ糖(重慶西南製薬第五工場製) 7g
N-2-ヒドロキシプロピルアクリルアミド 2g
塩化ナトリウム 5.2g
注射用水 100mlまで。
【0043】
実施例1に記載の方法で、上述処方の比率に従って、高張液薬物組成物を得た。
【0044】
実施例10
下述の配合比で配合した。
【0045】
果糖(上海試薬第二工場製) 5g
キシリトール(遼陽有機化工工場製) 4g
塩化ナトリウム 4.8g
注射用水 100mlまで。
【0046】
実施例1に記載の方法で、上述処方に従って、高張液薬物組成物を得た。
【0047】
実施例11
下述の配合比で配合した。
【0048】
グリセリン 2g
乳糖(上海試薬第二工場製) 5g
塩化ナトリウム 5.3g
注射用水 100mlまで。
【0049】
実施例1に記載の方法で、上述処方に従って、高張液薬物組成物を得た。
【0050】
実施例12:動物試験
一. 材料と方法
(一) 動物 SDラット、243〜275gであった。国家齧歯実験動物・種子センターの上海支センターによって提供された。飼料は、上海士林生物科技有限会社によって生産され、製品規格はQ/TJCX1-2002であった。SDラット規定に従って、飼養された。
【0051】
(二) 群分け
1.空白対照群:動物は、麻酔せず、手術しなかった。
【0052】
2.等張液対照群:手術後当日、手術後1日目、手術後2日目に、それぞれ0.9%塩化ナトリウム溶液を、投与量8ml/kg/日で、尾静脈に、速度0.4ml/kg/minで、輸注した。
【0053】
3.高張液実験群:手術後当日、手術後1日目、手術後2日目に、それぞれ4.2%塩化ナトリウム/7.6%ヒドロキシエチル澱粉溶液(実施例1の製品)を、投与量8ml/kg/日で、尾静脈に、速度0.4ml/kg/minで、輸注した。
【0054】
4.高張液対照群:麻酔後手術前、手術後1日目、手術後2日目に、それぞれ1.5%塩化ナトリウム/3.0%ヒドロキシエチル澱粉溶液を、投与量24ml/kg/日で、尾静脈に、速度1.2ml/kg/minで、輸注した。
【0055】
5.高張液対照群:麻酔後手術中、手術後1日目、手術後2日目に、それぞれ6.9%塩化ナトリウム/18%ブドウ糖溶液を、投与量4ml/kg/日で、尾静脈に、速度0.2ml/kg/minで、輸注した。
【0056】
(三) 方法
SDラットを麻酔した後、後肢の外側面の毛髪を抜き、さらに手術の常規で消毒し、手術シートを敷いた。皮膚、皮下組織及び筋肉層を切開した。層の順に組織から皮膚まで縫合した。実験要求によって、実験液体或は対照液体を輸注し、輸液終了後、ラットを籠に戻して飼養した。定期に動物を致死させ、標本を採り、病理検査を行った。
【0057】
二、 結果
実験動物は、麻酔中、手術中、手術後及び輸液期間の死亡がなかった。すべての創傷はI期癒合まで達し、創傷の感染が見られなかった。高張液実験群(3群目)と高張液対照群(4、5群目)では、皮膚癒合の状況は病理検査によって有意差が見られなかったが、高張液群と等張液対照群では、創傷の癒合が顕著に異なった。従って、高張液実験群(3群目)を例として等張液対照群(2群目)と比べ、創傷癒合の病理的変化の状況を説明する。
【0058】
図1Aは、高張液群(3群目)の手術後3日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷組織において、中度の充血、滲出、炎症細胞による浸潤が生じ、壊死が少なかった。
【0059】
図3Aは、等張液群(2群目)の手術後3日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷組織において、重度の充血、滲出、炎症細胞による浸潤が生じ、壊死が多かった。
【0060】
図1Bは、高張液群(3群目)の手術後6日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における肉芽組織が増殖して成熟した。
【0061】
図3Bは、等張液群(2群目)の手術後6日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における肉芽組織が形成したが、幼若で、壊死が見られた。
【0062】
図1Cは、高張液群(3群目)の手術後10日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における肉芽組織が主に線維芽細胞であった。
【0063】
図3Cは、等張液群(2群目)の手術後10日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における肉芽組織が主に毛細管であった。
【0064】
図1Dは、高張液群(3群目)の手術後15日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における瘢痕の体積が小さかった。
【0065】
図3Dは、等張液群(2群目)の手術後15日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における瘢痕の体積が大きかった。
【0066】
図1Eは、高張液群(3群目)の手術後20日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における瘢痕が基本的に吸収された。
【0067】
図3Eは、等張液群(2群目)の手術後20日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における瘢痕の吸収が少なかった。
【0068】
図4Aは、高張液群(4群目)の手術後3日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷組織において、中度の充血、滲出、炎症細胞による浸潤が生じ、壊死が少なかった。
【0069】
図4Bは、高張液群(4群目)の手術後6日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における肉芽組織が増殖して成熟した。
【0070】
図4Cは、高張液群(4群目)の手術後10日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における肉芽組織が主に線維芽細胞であった。
【0071】
図4Dは、高張液群(4群目)の手術後15日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における瘢痕の体積が小さかった。
【0072】
図4Eは、高張液群(4群目)の手術後20日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における瘢痕が基本的に吸収された。
【0073】
図5Aは、高張液群(5群目)の手術後3日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷組織において、中度の充血、滲出、炎症細胞による浸潤が生じ、壊死が少なかった。
【0074】
図5Bは、高張液群(5群目)の手術後6日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における肉芽組織が増殖して成熟した。
【0075】
図5Cは、高張液群(5群目)の手術後10日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における肉芽組織が主に線維芽細胞であった。
【0076】
図5Dは、高張液群(5群目)の手術後15日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における瘢痕の体積が小さかった。
【0077】
図5Eは、高張液群(5群目)の手術後20日目の状況を示したものであって、SDラットの創傷における瘢痕が基本的に吸収された。
【0078】
実験から、麻酔後手術前、手術中及び手術後のいずれに高張液を輸注しても、創傷の癒合には促進作用があり、その具体的な表現は、潜伏期では、創傷の局所の充血、滲出などの炎症性反応を軽減させることができ、線維組織増殖期では、肉芽組織の形成を促進させることができることによって、創傷の癒合を加速させたことが明らかになった。変化の過程は、明細書の図1A〜1E、3A〜3E、4A〜4E及び5A〜5Eの組織病理検査を参照することができ、高張液と等張液の対照は表1に示す。
【0079】
実験から、1.5%〜6.9%塩化ナトリウムの高張液はいずれも創傷の癒合には促進作用があることが示されたので、高張塩化ナトリウムの濃度はこの範囲にすればよい。使用の投与量は、4ml/kg/日〜24ml/kg/日で、普通の成人にとって約250ml/日〜1500ml/日(児童は、例えば100ml/日或いはそれ以下のように適当に減少するべきである)に相当する。投与時間は速すぎてはいけないので、私達の従来の実験によると、例えば、実施例1における8ml/kgあたりの投与時間は20分間(或はそれ以上)で、60分間以内であるのが適切である(趙超英等、中国実用外科雑誌、2000、20:439を参照)。
【表1】

【0080】
本動物試験によって、本発明にかかる高張液薬物組成物は、周手術期に輸液として使用されると、手術創傷の癒合に促進作用があることが証明された。実験結果から、高張液薬物組成物の効果は等張液よりも優れたことが示された。
【0081】
本発明にかかる高張液薬物組成物の周手術期間における使用は、安全で便利で、各種の手術創傷或は外傷創傷(面)及び吻合口に幅広く使用できるなどの利点がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周手術期間に使用される手術創傷或は吻合口の癒合を促進させる薬物の製造のための高張液組成物の使用であって、前述の組成物は、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及びトリスヒドロキシメチルアミノメタンから選ばれる一種或は多種の物質1.5%〜6.9%(w/v)と、ヒドロキシエチル澱粉、デキストラン、カルボキシメチル澱粉、ポリビニルピロリドン、ゼラチン誘導体、縮合ブドウ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、グリセリン、キシリトール、アルギン酸ナトリウム、N-2-ヒドロキシプロピルアクリルアミド、エチレンオキシド-ポリプロピレングリコール、ペクチン及びペンタスターチから選ばれる一種或は多種の物質3%〜18%(w/v)と、残量の通常用注射液とからなり、組成物において、塩化ナトリウムが1.5%(w/v)以上で、且つナトリウムイオンの濃度が6.9%(w/v)の塩化ナトリウム溶液におけるナトリウムイオンの濃度に相当する濃度以下である条件を満足する、高張液組成物の使用。
【請求項2】
前述高張液組成物は、100mlあたりの液体において、塩化ナトリウムが4.2±0.2g、且つヒドロキシエチル澱粉が7.6±0.6g含まれている、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前述の通常用注射液は、注射用水、生理食塩水、平衡液、ブドウ糖溶液、乳酸ナトリウム溶液、酢酸ナトリウム溶液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン溶液及びブドウ糖食塩水から選ばれる、ことを特徴とする請求項1或は2に記載の使用。
【請求項4】
前述のヒドロキシエチル澱粉において、少なくとも10%のヒドロキシエチル澱粉の分子量が25,000〜45,000である、ことを特徴とする請求項1或は2に記載の使用。
【請求項5】
前述のゼラチン誘導体は、分子量が20,000〜35,000で、ウレア架橋ゼラチン、変性液体ゼラチン、酸化重合ゼラチン及び分解ゼラチンポリペプチドから選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前述のデキストランの分子量が40,000〜230,000で、カルボキシメチル澱粉の分子量が30,000〜80,000で、ポリビニルピロリドンの分子量が5,000〜700,000で、縮合ブドウ糖の分子量が8,000〜12,000で、アルギン酸ナトリウムの分子量が20,000〜26,000で、ペクチンの分子量が20,000〜40,000で、ペンタスターチの分子量が264,000である、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前述の高張液組成物は、輸液の様態である、ことを特徴とする請求項1或は2に記載の使用。
【請求項8】
前述の高張液組成物は、静脈内滴注組成物或は骨内滴注組成物である、ことを特徴とする請求項1或は2に記載の使用。
【請求項9】
前述の高張液組成物の包装容器は、プラスチックバッグ、プラスチックバイアル、ガラスバイアル或はガラスアンプルである、ことを特徴とする請求項1或は2に記載の使用。
【請求項10】
前述の高張液組成物の包装容器に、予め静脈又は骨内の注射針及び/又は輸液管、圧力装置、輸液ポンプが配置・付帯されておいた、ことを特徴とする請求項9に記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【公表番号】特表2010−514707(P2010−514707A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543334(P2009−543334)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/CN2007/071264
【国際公開番号】WO2008/080336
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(509174680)
【Fターム(参考)】