説明

創傷被覆剤及びその製造方法

【課題】創傷部からの粘調液や血液などの滲出液が充分に吸収され、かつ貼付面が平滑で貼付したとき創面に刺激を与えにくい創傷被覆剤及びその製造方法の提供。
【解決手段】分子量5万以上の水溶性の高分子を含むゲルの乾燥物からなる吸水層と布とが層状に結合されたシート状物からなり、前記水溶性の高分子がマンナンを含み、前記布が一の面側を残して前記吸水層の一の片面側に投錨状に埋没し、前記シート状物の片面に前記吸水層の他の片面が露出し、該吸水層の他の片面が離型面である創傷被覆剤。該創傷被覆剤においては、前記吸水層が30〜70重量%の水溶性多糖類と30〜55重量%の分子量5万未満の水溶性の非揮発性有機化合物を含み、該水溶性多糖類のうち30〜90重量%がマンナンであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は創傷部に被覆して創傷治癒を促進するための創傷被覆剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷被覆剤としてはグルコマンナン等の多糖類を含む粘稠液を不織布に含浸して乾燥してなるものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この創傷被覆剤は、厚さ方向全体が乾燥した多糖類の膜で満たされているため、創傷部からの粘調液や血液などの滲出液が出血などにより急増したときに滲出液を吸収しきれずに、また吸収したとしても水分のみが吸収されるに過ぎず、創面に粘調液や血液が溜まりやすく、感染につながる可能性が多く使いづらいという問題があった。
【0003】
また、ピース状の含水ゲル層を不織布等の支持体に重畳した創傷保護剤が開示されている(例えば、特許文献2参照)が、ピース状の含水ゲル層は成型に容器を用いるなど手間がかかり、また、滲出液の吸収が不十分である。この創傷保護剤の含水ゲル層を乾燥したとしても表面に不規則な凹凸が生じ、貼付したとき創面に刺激を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
[特許文献1] 特開2004−248949号公報
[特許文献2] 特開2003−190206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、創傷部からの粘調液や血液などの滲出液が充分に吸収され、かつ貼付面が平滑で貼付したとき創面に刺激を与えにくい創傷被覆剤及びその製造方法を提供しようとすることである。
【0006】
本発明の目的は、創傷面積の経時による減少度合いが大きい創傷被覆剤及びその製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨とするところは、分子量5万以上の水溶性の高分子を含むゲルの乾燥物からなる吸水層と布とが層状に結合されたシート状物からなり、前記水溶性の高分子がマンナンを含み、前記布が一の面側を残して前記吸水層の一の片面側に投錨状に埋没し、前記シート状物の片面に前記吸水層の他の片面が露出し、該吸水層の他の片面が離型面である創傷被覆剤であることにある。
【0008】
前記創傷被覆剤においては、前記吸水層が30〜70重量%の水溶性多糖類と30〜55重量%の分子量5万未満の水溶性の非揮発性有機化合物を含み得、該水溶性多糖類のうち30〜90重量%がマンナンであり得る。
【0009】
前記創傷被覆剤においては、前記吸水層が20〜40重量%のマンナンと、10〜30重量%の非多糖類系水溶性高分子と、30〜55重量%の分子量5万未満の水溶性の非揮発性有機化合物を含み得る。
【0010】
前記創傷被覆剤においては、前記ゲルの面に生理的食塩水を0.1ml滴下した時、その吸収するまでの時間が3秒以上であり得る。また、前記ゲルは水又は滲出液と出会っても、ゲルの主たる部分は溶解することなくゲルとなり創部に水分を維持又は補給し、創を湿潤に保つことが可能なものである。
【0011】
前記創傷被覆剤においては、前記吸水層がアルギン酸ナトリウム・カルシウムを含み得る。該アルギン酸ナトリウム・カルシウムは粉末または短繊維であり得る。
【0012】
また、本発明の要旨とするところは、マンナンを含む分子量5万以上の水溶性の高分子を含有する粘稠水溶液を準備する工程、
該粘稠水溶液を基体の表面に流延または塗布して液膜を形成する工程、
該液膜上に布を載置して重畳する工程、
該液膜を乾燥することにより、乾燥された該液膜と該布とが層状に結合されたシート状物を得る行程、
該シート状物を前記基体から剥離する工程
を含む創傷被覆剤の製造方法であることにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、創傷部からの粘調液や血液などの滲出液が充分に吸収され、かつ貼付面が平滑で貼付したとき創面に刺激を与えにくい創傷被覆剤及びその製造方法が提供される。
【0014】
本発明の創傷被覆剤を使用すると創傷面積の経時による減少度合いが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の創傷被覆剤の態様の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の創傷被覆剤を用いた創傷用絆創膏の構成を説明する断面説明図である。
【図3】創傷被覆剤をラットの創面に適用したときの創傷面積の経時変化を示すグラフである。
【図4】創傷被覆剤をラットの創面に適用したときの創傷面積の経時変化を示す他のグラフである。
【図5】本発明の創傷被覆剤をテープの粘着面に貼りあわせた救急絆の態様の一例を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の創傷被覆剤の態様を説明する。図1に示すように、本発明の創傷被覆剤2は、ゲルの乾燥物からなる吸水層4と布6とが層状に結合されたシート状物5からなるものである。布6が一の面8の側を残して吸水層4の一の片面18側に投錨状に埋没し、シート状物5の片面14に吸水層4の他の片面16が露出し、吸水層4の他の片面16は離型面である創傷被覆剤である。
【0017】
くわしくは、布6の一の面側10、すなわち、布6の一の面8と一の面8から厚さ方向に布6の内部に向けて所定の距離hを隔てた面との間の部分12を残して、布6の部分12を除いた部分13(埋没部)が、吸水層4に投錨状に埋没している。符号9は布6の他の面である。hは布6の厚さhhより小さい。投錨状に埋没の状態とは、部分13を構成する繊維が吸水層4に埋没し、部分13を構成する繊維間の空間が吸水層4を構成する物質で満たされた状態をいう。部分13は吸水層4の一の片面18の側に埋没している。シート状物5の片面14に吸水層4の他の片面16が露出して露出面34となっている。一の片面18の側とは、吸水層4の一の片面18と、一の片面18から吸水層4の厚さ方向に所定の距離hk(=h−hh)を隔てた面との間の部分20をいう。吸水層6の他の片面16は離型面である。吸水層6の厚さhwはh−hhより大きいことが好ましいがh−hhと等しくともよい。
【0018】
離型面とは、乾燥前のゲルが、剥離性の面を有する基体の、その剥離性の面に当接した状態で乾燥してゲルの乾燥物となったのち、剥離性の面から剥離して生ずる面である。
【0019】
創傷被覆剤2の使用時には露出面34に創傷部が当接することになる。本発明の創傷被覆剤2のかかる構成により、創傷部からの粘調液や血液などの滲出液が布6の部分12にすみやかにかつ充分な量吸収されるので、創面に粘調液や血液が溜まったり、これにより、感染につながる可能性が多くなるといったトラブルが解消される。しかし、一方では、露出面34に十分なゲル層が形成されている必要がある。創傷被覆剤2は、その厚み又は機能を確認するために、露出面34を水平に静置し、その上にピペットで0.1mlの生理食塩水を滴下した時、3秒以上10時間以内に全量ゲル層内に吸収される機能を持たせることができる。3秒以内に吸収してしまうような場合は、ゲル層が十分でなく、創と被覆剤が固着し、交換時に2次損傷を起こす可能性があり、治癒日数もより長くかかる。また、10時間以上もかかるような場合は、滲出液が創表面に溜まり、創を圧迫するために、総面積は拡大し、結果として、被覆剤を貼付した食の段階で、創治癒が遅れることになる。
【0020】
布6は織物、編み物等の布帛であってもよいが、軽量性と嵩高性から不織布であることが好ましい。不織布の目付は20〜200g/mであることが好ましい。不織布の素材は吸湿性、吸水性の高い繊維であることが好ましく、レーヨンを多く含むものが好ましい。
【0021】
吸水層4を形成する前駆体であるゲルは分子量5万以上の水溶性の高分子を含むゲルである。このゲルの固形分、従って吸水層4、は30〜70重量%の水溶性多糖類と30〜55重量%の分子量5万未満の水溶性の非揮発性有機化合物を含み、該水溶性多糖類のうち30〜90重量%がマンナンであることが創面の乾燥を防ぎ、湿潤を保つうえで好ましい。そして、溶液を塗布して、乾燥させた後、形成されたゲル層はその主たる部分が不溶性となっている。30〜55重量%の分子量5万未満の水溶性の非揮発性有機化合物はゲル層を乾燥させたとき、その創の可塑効果を示すもので、層に柔軟性を付与するものである。また、創の滲出液が来た場合、この成分の多くは創の表面に溶け出ることになる。
【0022】
水溶性の高分子としては、水溶性多糖類、または水親和性の高分子、水溶性の合成高分子が挙げられる。これらも、その多くのものは創の滲出液が来た場合溶け出る部分がある。
このようにゲル層から溶け出る部分があることにより、ゲル層が多孔質となり、傷からの滲出液を吸収しやすくする機能を持つものである。
また、溶け出た成分は傷口の繊維芽細胞やケラチノサイトなどの増殖に悪影響を与えるものであってはならず、特に多糖体はこれら細胞の表面の成分と類似の糖であり、増殖を促進する傾向すら認められる。
【0023】
水溶性多糖類としては、ヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、クインスシード、コンニャクマンナン、タマリンドガム、タラガム、デキストリン、デンプン、ローカストビーンガム、アラビアガム、ガッティガム、カラヤガム、トンガカントガム、カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、シクロデキストリン、デキストラン、プルラン、結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、ペクチン、カラギーナン、ジエチルアミノエチル(DEAE)−デキストラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、トラガントガム、ラムダガラギナン、コンドロイチン硫酸、ペクチン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウムが例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
分子量5万未満の水溶性の非揮発性有機化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの重合体や2種以上の共重合体を用いることができる。
【0025】
吸水層4を形成する前駆体であるゲルの固形分、従って吸水層4は、あるいは、20〜40重量%のマンナンと、10〜30重量%の非多糖類系水溶性高分子と、30〜55重量%の分子量5万未満の水溶性の非揮発性有機化合物を含むことが創面の乾燥を防ぎ、湿潤を保つうえで好ましい。このゲル層は滲出液と接触するとすぐにやわらかなゲルと化し、創を柔らかく包み、治癒の促進、疼痛の緩和に働く。
【0026】
非多糖類系水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アクリル酸アルキルコポリマー、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリアクリルアミド、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルメタクリルアミド)、ポリ(N,N−ジアルキルメタクリルアミド)、ポリメタクリルアミド、ポリビニルピリジン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、ポリビニルホスホン酸、ポリエチレンオキサイド、親水性ポリウレタン、ポリビニルメチルピロリドン、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
また、吸水層4はアルギン酸ナトリウム・カルシウムの粉末または短繊維を含むことが、血液凝固促進及び吸水層4のゲル化による保水性を高めるうえで好ましい。すなわち、吸水層4の構成成分としてアルギン酸ナトリウム・カルシウムを含むことが好ましい。アルギン酸ナトリウム・カルシウムの粉末または短繊維は吸水層4に5〜15重量%として含まれることが好ましい。
【0028】
本発明の創傷被覆剤2は、以下の工程で製造することができる。すなわち、
マンナンを含む分子量5万以上の水溶性の高分子を含有する粘稠水溶液を準備する工程、
該粘稠水溶液を基体の表面に流延または塗布して液膜を形成する工程、
該液膜上に布を載置して重畳する工程、
該液膜を乾燥することにより、乾燥された該液膜と該布とが層状に結合されたシート状物を得る行程、
該シート状物を前記基体から剥離する工程
である。
マンナンを含む分子量5万以上の水溶性の高分子を含有する粘稠水溶液を準備する工程で、該水溶液を塗工前にpHを弱アルカリに調整しておくことがより好ましい。それには苛性ソーダ水溶液、アンモニュウム液、炭酸水素ナトリウム水溶液などを用いることが出来る。
粘稠水溶液は液膜を形成後に乾燥してゲル化する。
【0029】
粘稠水溶液は、マンナンを含む分子量5万以上の水溶性の高分子と、分子量5万未満の水溶性の非揮発性有機化合物とを水に溶かして得ることができる。粘稠水溶液には、その他に有機塩類、無機塩類、油分、界面活性剤、無機粉体、防腐剤、pH調整剤、着色料、香料、殺菌剤などの薬効成分などを目的に応じて添加してもよい。従って、吸水層4にはこれらの添加物が添加されてよい。
【0030】
粘稠水溶液は、平坦な基体表面に流延または塗布して放置すると平坦な液状の膜が基体表面に形成されるような粘度を有する液である。粘稠水溶液は、マンナンを含む分子量5万以上の水溶性の高分子2〜10重量%、分子量5万未満の水溶性の非揮発性有機化合物2〜10重量%を含有することが基体表面に流延または塗布したときに均整な膜が形成されて好ましい。
乾燥は乾燥温度70℃〜130℃ですることが好ましい。乾燥温度がこれより低すぎると乾燥に時間が掛かりすぎ、また乾燥までの時間が掛かるため、不織布にゲル溶液が吸収されて、表面にゲル層を形成することが難しくゲル層に鏡面が形成されない。乾燥温度がこれより高すぎると、塗布した多糖体ゲルが褐色に変色し、溶液の乾燥が不均一になりゲル層表面に凹凸が生じ、鏡面が形成されない。80℃以上100℃未満で乾燥することがさらに好ましい。
【0031】
基体としては樹脂フィルムや金属板や樹脂ロールや金属ロールが挙げられる。基体表面は鏡面状に滑らかであることが好ましい。基体表面が鏡面状に滑らかであることにより、吸水層4の表面(露出面34)が鏡面状に滑らかな離型面となり、平滑で貼付したとき創面に無用の刺激を与えにくく、快適な治療が可能となる。また、使用目的によっては基体表面が凹凸面であってもよい。吸水層4の表面にその凹凸形状が写し取られることにより、創面に密着しない状態で創傷被覆剤を貼付することが可能となる。
【0032】
液膜の面積当たり重量(乾燥後の塗布量)は5〜500g/mであることが好ましい。ゲル層の塗布量は10〜50g/mであることがさらに好ましい。液膜の厚みは0.005〜0.1mmであることが好ましい。液膜の厚みが小さすぎると吸水層4が薄くなり、創面に対する湿潤環境の維持ができなくなるとともに、繊維が創に接触することとなり、パッド部分と癒着を起こし、創傷被覆剤の交換時に二次損傷を起こす原因となる。また、液膜が厚すぎると吸水層4が厚くなり、滲出液に接したときゲルから不織布などの基材側への滲出液の吸収ができにくくなる。液膜の乾燥は110℃未満で行うことが均整な吸水層4を得るうえでも好ましい。
【0033】
また、図5に示すように、本発明の片面に親水性のゲルの吸水層4を持つ創傷被覆剤2をウレタンフイルムあるいはウレタン不織布74、などを台紙とする通常絆創膏に用いられるテープ70の粘着面に、創傷被覆剤2をゲルの吸水層4を外側になるよう貼りあわせる救急絆80にすることも可能である。符号78は粘着層、76は折込式の剥離紙である。
【0034】
[実施例1]
グルコマンナン27g、カルボキシメチルセルロース25gを、あらかじめグリセリン45gを精製水に溶解した液に投入し、全量が1リットルになるように調整し、液が均一になるまで攪拌し粘稠水溶液を得た。この粘稠水溶液を水平台上に敷設したポリエステルフィルム(厚さ80μm)の表面上に塗布して液膜を形成し、その上に秤量120g/mのレーヨン不織布を載置して重畳し、90℃で30分乾燥し創傷被覆剤を得た。この創傷被覆剤の片面には鏡面の乾燥ゲル層すなわち吸水層が形成されていた。液膜の塗布量を100g/m、200g/m、300g/m、500g/m、700g/mとして4種類の創傷被覆剤(試料1〜4)を得た。
【0035】
この創傷被覆剤を2×3cmのピースに切りわけ、4×6cmのウレタン粘着フィルムの粘着層にこの創傷被覆剤のピースの不織布側の面を貼り合わせて創傷用の絆創膏を得た。表1に各試料の絆創膏の乾燥ゲル層の想定重量(膏体重量)を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
[実施例2]
グルコマンナン27g、カルボキシメチルセルロース25g、及びアルギン酸ナトリウム・カルシウム粉末10gを、あらかじめグリセリン45gを精製水に溶解した液に投入し、全量が1リットルになるように調整し、液が均一になるまで攪拌し分散状粘稠水溶液を得た。この粘稠水溶液を水平台上に敷設したポリエステルフィルム(厚さ80μm)の表面上に塗布して180g/mの液膜を形成し、その上に秤量80g/mのレーヨン不織布を載置して重畳し、90℃で30分乾燥し創傷被覆剤を得た。この創傷被覆剤の片面には鏡面の乾燥ゲル層すなわち吸水層が形成されていた。
【0038】
この創傷被覆剤を2×3cmのピースに切りわけ、4×6cmのウレタン粘着フィルムの粘着層にこの創傷被覆剤のピースの不織布側の面を貼り合わせて創傷用の絆創膏を得た。
【0039】
[実施例3]
グルコマンナン27g、ヒドロキシメチルセルロース25g、及びアルギン酸ナトリウム・カルシウム10gを、あらかじめグリセリン45gを精製水に溶解した液に投入し、全量が1リットルになるように調整し、液が均一になるまで攪拌し粘稠水溶液を得た。この粘稠水溶液を水平台上に敷設したポリエステルフィルム(厚さ80μm)の表面上に塗布して180g/mの液膜を形成し、その上に秤量80g/mのレーヨン不織布を載置して重畳し、90℃で30分乾燥し創傷被覆剤を得た。この創傷被覆剤の片面には鏡面の乾燥ゲル層すなわち吸水層が形成されていた。
【0040】
この創傷被覆剤を2×3cmのピースに切りわけ、4×6cmのウレタン粘着フィルムの粘着層にこの創傷被覆剤のピースの不織布側の面を貼り合わせて創傷用の絆創膏を得た。
【0041】
[実施例4]
グルコマンナン17.4g、プルラン10.8g、炭酸水素ナトリウム1.8gを、あらかじめグリセリン24gを精製水に溶解した液に投入し、全量が1リットルになるように調整し、液が均一になるまで攪拌し粘稠水溶液を得た。この粘稠水溶液を水平台上に敷設したポリエステルフィルム(厚さ80μm)の表面上に塗布して液膜を形成し、その上に秤量80g/mのレーヨン不織布を載置して重畳し、90℃で30分乾燥し創傷被覆剤を得た。この創傷被覆剤の片面には厚さ100μmの鏡面の乾燥ゲル層すなわち吸水層が形成されていた。
【0042】
この創傷被覆剤をピースに切りわけ、図2に示す構造の創傷用絆創膏40を作成した。創傷用絆創膏40は剥離紙42の剥離面に粘着テープ44の粘着面を貼合し、粘着テープ44の非粘着面に創傷被覆剤46を重畳し、創傷被覆剤46を粘着テープ44に固定したものである。粘着テープ44には径25mmの窓穴50が形成されており、創傷被覆剤46は乾燥ゲル52の面54が窓穴50に露出するように配置されている。すなわち、創傷被覆剤46の周縁部60と粘着テープ44の窓穴50を囲む周縁部62とが重畳されている。
【0043】
[比較例1]
実施例4で用いたレーヨン不織布に実施例4で用いた粘稠水溶液を含浸し、しぼりロールで絞ったのち90℃で30分乾燥し目付80g/mの創傷被覆剤を得た。この創傷被覆剤から実施例4と同様にして創傷用絆創膏40を作成した。
【0044】
実施例4、比較例1の創傷用絆創膏を用い、日本エスエルシー社より購入したWistar/ST系雄性ラット(6週齢、SPF)を対象に創傷治癒の実験を行った。
【0045】
ラットは予備飼育ののち背部を剃毛し、エーテル麻酔下で直径15mmの全欠損創を作成した。実施例4、実施例5、比較例1の創傷用絆創膏をそれぞれ創部に貼着し、創傷用絆創膏全体を医療用巻絆で滅菌ガーゼとともに被覆固定した。また、感染予防のため、抗生物質(結晶ペニシリンG、明治)を筋肉内投与した。
【0046】
創の作成日を0日とし、以後隔日に創傷用絆創膏を交換し、交換ごとに創傷の状態を観察するとともに創傷面積を測定した。
【0047】
創傷面積の測定結果を図3に示す。
【0048】
実施例4はパッド(不織布層)の保水や保湿により比較的良好な湿潤状態が保たれ、軽度の化膿性の偽膜形成がみられたものの、比較例より良好な創傷面積の減少がみられた。
【0049】
比較例1は創面の肉芽形成の遅延があり、良好な創傷面積の減少はみられなかった。これは、吸液のために重ねていた滅菌ガーゼが乾燥しており、湿潤度合が不十分であったことによるものと思われる。
【0050】
[実施例5]
乾燥ゲル層の目付を10.8g/mになるように粘稠水溶液の塗布量を調整したほかは実施例4と同様にして創傷用絆創膏を作成した。
【0051】
[実施例6]
乾燥ゲル層の目付を21.6g/mになるように粘稠水溶液の塗布量を調整したほかは実施例4と同様にして創傷用絆創膏を作成した。
【0052】
[実施例7]
乾燥ゲル層の目付を32.4g/mになるように粘稠水溶液の塗布量を調整したほかは実施例4と同様にして創傷用絆創膏を作成した。
【0053】
実施例5〜7、比較例1の創傷用絆創膏を用い、日本チャールズリバー社より購入したWistar/ST系雄性ラット(6週齢、SPF)を対象に創傷治癒の実験を行った。
【0054】
ラットは予備飼育ののち背部を剃毛し、エーテル麻酔下で直径15mmの全欠損創を作成した。実施例4、実施例5、比較例1の創傷用絆創膏をそれぞれ創部に貼着し、創傷用絆創膏全体を医療用巻絆で滅菌ガーゼとともに被覆固定した。また、感染予防のため、抗生物質(結晶ペニシリンG、明治)を筋肉内投与した。
【0055】
創作成日を0日とし、以後隔日に創傷用絆創膏を交換し、交換ごとに創傷の状態を観察するとともに創傷面積を測定した。
創傷面積の測定結果を図4に示す。
【0056】
実施例5は、適用初期にパッドの創面への固着、交換時の出血が若干みられたが、比較例より良好な創傷面積の減少がみられた。
【0057】
実施例6、実施例7は、パッドの創面への固着はみられず、全般に良好な創傷面積の減少がみられた。実施例7は適用期間中に化膿性偽膜形成が散見され、表皮化の割合が実施例6よりは少なかった。
【0058】
実施例8
実施例4にしたがって、塗布量を21,30gになるよう調整液をポリエステルフイルムに塗布したのち、レーション不織布を載せて、乾燥した。乾燥する際、ゲルの不織布への沈み込みを調整することにより、試料6-8を得た。
【0059】
【表2】

【0060】
吸水時間は生理食塩水をピペットで、ゲル層が形成されている面に、0.1ml滴下してから、吸収されてしまうまでの時間をストップウォッチで測定した。
【0061】
創傷治癒試験はSD系ラットの背部を直径10mm切り取り全欠損創を作成し、その上にサンプルを貼付した。創面積の変化を2日に1回、ドレッシングを交換するたびに測定し、2次損傷や表皮形成を観察した。その結果が表2である。
【0062】
吸水時間が5秒以上は治癒性が良好であり、480秒のものはより良かった。治癒日数は8日であった。試料5,6はドレッシング交換の際に4日目から、僅かではあるが2次損傷が生じて、一部出血することも見られた。そのため、治癒が少し遅れた。
【0063】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は創傷治療剤、瘢痕拘縮防止剤、創傷被覆剤及び止血剤の分野に広く適用できる。
【符号の説明】
【0065】
2:創傷被覆剤
4:吸水層
6:布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量5万以上の水溶性の高分子を含むゲルの乾燥物からなる吸水層と布とが層状に結合されたシート状物からなり、前記水溶性の高分子がマンナンを含み、前記布が一の面側を残して前記吸水層の一の片面側に投錨状に埋没し、前記シート状物の片面に前記吸水層の他の片面が露出し、該吸水層の他の片面が離型面である創傷被覆剤。
【請求項2】
前記吸水層が30〜70重量%の水溶性多糖類と30〜55重量%の分子量5万未満の水溶性の非揮発性有機化合物を含み、該水溶性多糖類のうち30〜90重量%がマンナンである請求項1に記載の創傷被覆剤。
【請求項3】
前記吸水層が20〜40重量%のマンナンと、10〜30重量%の非多糖類系水溶性高分子と、30〜55重量%の分子量5万未満の水溶性の非揮発性有機化合物を含む請求項1に記載の創傷被覆剤。
【請求項4】
前記吸水層がアルギン酸ナトリウム・カルシウムを含む請求項1から3のいずれかに記載の創傷被覆剤。
【請求項5】
前記吸水層に生理食塩水を0.1ml滴下した時、その吸収時間に3秒以上を要する請求項1に記載する創傷被覆剤。
【請求項6】
マンナンを含む分子量5万以上の水溶性の高分子を含有する粘稠水溶液を準備する工程、
該粘稠水溶液を基体の表面に流延または塗布して液膜を形成する工程、
該液膜上に布を載置して重畳する工程、
該液膜を乾燥することにより、乾燥された該液膜と該布とが層状に結合されたシート状物を得る行程、
該シート状物を前記基体から剥離する工程
を含む創傷被覆剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−252995(P2010−252995A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105764(P2009−105764)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(500124275)ユニメディカル株式会社 (2)
【出願人】(591069570)東洋化学株式会社 (4)
【Fターム(参考)】