説明

力学量測定装置

【課題】 温度変化によって発生する応力、半導体基板上の熱分布、不純物のドーズ量勾配によって、ひずみ検出に用いるホイートストンブリッジにオフセット出力が発生する。
【解決手段】 拡散抵抗をマトリックス状に配置し、ブリッジ抵抗Rv1,Rv2は奇数列に配置される拡散抵抗を選択的に直列接続し、ブリッジ抵抗Rh1,Rh2は偶数列に配置される拡散抵抗を選択的に直列接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は力学量測定装置に関し、特に、半導体基板表面に形成されたひずみ検出部により力学量を測定するセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体単結晶基板に局所的に不純物層を設け、この不純物層の抵抗値のひずみ依存性から、半導体単結晶基板を貼り付けたまたは埋め込んだ被測定物のひずみを計測する半導体チップが特許文献1に開示されている。不純物抵抗のひずみ感度には結晶異方性があることから、特定の方向に電流を流せるようにした不純物層4つを用いてホイートストンブリッジ回路(以下、ブリッジまたはブリッジ回路と呼ぶ)を形成し、特定方位のひずみの計測を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−82907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1はセンサに用いられるブリッジの回路構成である。ブリッジは4つのP型拡散抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2からなる。直列接続された抵抗Rv1と抵抗Rh2及び直列接続された抵抗Rh1と抵抗Rv2とが並列接続されたブリッジに対して、電源電圧VDDが印加される。抵抗Rv1と抵抗Rh2の接続点が出力Vp、抵抗Rh1と抵抗Rv2の接続点が出力Vnとされ、力学量測定装置が応力を受けることで、抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2に生じる抵抗値の変化を出力Vp,Vnの電位差として検出する。
【0005】
ひずみの計測を行うために電源電圧VDDをブリッジに印加することにより、ブリッジを通じて電流が流れることになる。そのため、このようなひずみセンサを搭載する半導体チップの消費電力の増大を抑制するため、電源電圧VDDを3V、ブリッジに流れる電流を20μA以下とすると、抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2の抵抗値は少なくとも75KΩにする必要がある。P型拡散抵抗のシート抵抗値を150Ω/□前後とすると、幅2μmの拡散抵抗で抵抗を形成すると、抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2それぞれに必要な拡散抵抗の面積は2000μmになる。
【0006】
図2に、図1のブリッジを搭載する力学量測定装置201を被測定物202に貼り付けた状態を示す。図2(a)が基準状態であって抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2の抵抗値は互いに等しい。したがって、出力Vp,Vnの電位差が0Vとなっている。ところが、このような力学量測定装置が実使用される環境はさまざまである。図2(a)の状態から温度変化が生じ、力学量測定装置201、被測定物202がそれぞれ熱膨張により変形した状態を示したのが図2(b)である。力学量測定装置201と被測定物202はその材質や形状が異なることから熱膨張係数に差がある。このため熱膨張が起こると、拡散抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2に応力が発生し、各抵抗にひずみSv1,Sv2,Sh1,Sh2が発生する。ここで、ひずみ値をS、拡散抵抗の値をr、拡散抵抗のもつゲージ率をαとすると、抵抗値の変化Δrは、
Δr=α×S×R
と表せる。
【0007】
ここで、拡散抵抗が受けるひずみは配置位置に依存するため、
v1 ≠ Sv2 ≠ Sh1 ≠ Sh2
となる。したがって、各拡散抵抗に生じる抵抗変化Δrv1,Δrv2,Δrh1,Δrh2は、
Δrv1=α×Sv1×rv1、Δrv2=α×Sv2×rv2
Δrh1=α×Sh1×rh1、Δrh2=α×Sh2×rh2
(rv1,rv2,rh1,rh2はそれぞれ基準状態での拡散抵抗の抵抗値とする)
と表される結果、
Δrv1 ≠ Δrv2 ≠ Δrh1 ≠ Δrh2
となる。先に試算したように拡散抵抗の面積が2000μm程度になってしまうと、各拡散抵抗が半導体チップ上で互いに離れた位置に配置されざるを得ず、温度変化による拡散抵抗の変化量の相違は無視できない大きさになる。この結果、出力Vp,Vnの間に有意な電位差が発生し、いわゆる出力オフセット電圧が発生する。
【0008】
このように本来、力学量測定装置201は被測定物202のひずみを検知するものであるが、被測定物202にひずみが生じなくても単なる環境温度の変動によって電位差が出力されることになる。さらに、このような温度変化による応力の発生のみならず、半導体基板上の熱分布、不純物のドーズ量勾配がある場合においても出力オフセット電圧が発生することがわかった。
【0009】
本発明の目的は、上記のような原因で生じる出力オフセット電圧を低減し、力学量測定装置の性能向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的なものの一例を示せば、以下のとおりである。小さな拡散抵抗をマトリックス状に配置し、ブリッジ抵抗をこのマトリックスから選択的に直列接続することで構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、力学量測定装置が被測定物に貼り付けられたまたは埋め込まれた状態において温度変化が生じた場合に、ホイーストンブリッジの各抵抗が受ける歪を一定にでき、温度変化による出力オフセットの発生を防ぐことができる。また、半導体基板上の熱分布や不純物拡散のドーズ量勾配によるオフセット出力の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】力学量測定装置に用いられるブリッジの回路構成である。
【図2】力学量測定装置が非測定物に貼り付けられた状態を示し、図2(a)は基準状態、図2(b)は基準状態とは異なる環境温度におかれた状態を示している。
【図3】力学量測定装置に用いられるブリッジの回路構成である。
【図4】要素抵抗(拡散抵抗)の第1の配置例を示す模式図である。
【図5】要素抵抗(拡散抵抗)の第2の配置例を示す模式図である。
【図6】第2の配置例によって配置した拡散抵抗を用いて形成したブリッジのレイアウトである。
【図7】図7(a)はP型拡散抵抗(接続部を含む)の平面図、図7(b)はその断面図である。
【図8】ブリッジとアンプの回路構成例である。
【図9】ブリッジとアンプとを一チップに集積するレイアウトである。
【図10】要素抵抗(拡散抵抗)の第3の配置例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図3はブリッジの回路構成の一実施例を示したものである。図1と同様に、直列接続された抵抗Rv1と抵抗Rh2及び直列接続された抵抗Rh1と抵抗Rv2とが並列接続されたブリッジに対して電源電圧VDDが印加され、抵抗Rv1と抵抗Rh2の接続点が出力Vp、抵抗Rh1と抵抗Rv2の接続点が出力Vnとされている。ここで、各抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2(以下、ブリッジ抵抗と呼ぶ)はそれぞれk×m(k、mは整数)個の拡散抵抗(以下、要素抵抗とも呼ぶ)を直列接続して構成される。ここでブリッジ抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2をそれぞれ構成するk×m個の要素抵抗の値は、基準状態でのブリッジ抵抗の抵抗値(設計値)をrv1,rv2,rh1,rh2(一般的にはrv1=rv2=rh1=rh2)とすると、rv1/(k×m),rv2/(k×m)、rh1/(k×m),rh2/(k×m)となる。
【0015】
ブリッジ抵抗Rv1はk×m個の要素抵抗Rv1_abの直列接続により、ブリッジ抵抗Rv2はk×m個の要素抵抗Rv2_abの直列接続により、ブリッジ抵抗Rh1はk×m個の要素抵抗Rh1_abの直列接続により、ブリッジ抵抗Rh2はk×m個の要素抵抗Rh2_abの直列接続により形成される(a、bは整数であり、1≦a≦k,1≦b≦m。以下同じ。)。この直列接続は、後述するように拡散抵抗を接続するコンタクトスルーホールと配線層とにより実現される。これらは一般的に金属層で実現され低抵抗で実現可能であるが、抵抗値を無視できるように、要素抵抗間の接続のためのコンタクトスルーホール及び配線層による抵抗(以下、接続抵抗と呼ぶ)の抵抗値が、例えば、要素抵抗の抵抗値の1%以下になる範囲でk、mをなるべく大きくすることが望ましい。
【0016】
図4、図5を用いて、本実施例における力学量測定装置のブリッジに用いる要素抵抗(拡散抵抗)の配置例について説明する。図では拡散抵抗を実線で模式的に示している。本実施例では、要素抵抗は2種のP型拡散抵抗を含み、第1はその長手方向(電流方向)が半導体基板の<110>に平行とされる拡散抵抗RVj_ab、第2はその長手方向(電流方向)が半導体基板の<110>に直交する拡散抵抗Rhj_abである(なお、j=1,2)。
【0017】
図4の配置例では、要素抵抗となる拡散抵抗が2m行・2k列のマトリックス状に配置されている。奇数列には拡散抵抗RVj_abが、偶数列には拡散抵抗Rhj_abが配置されている。また、奇数列に形成されている拡散抵抗RVj_abは互いに平行かつ等間隔に形成され、同様に偶数列に形成されている拡散抵抗Rhj_abは互いに平行かつ等間隔に形成される。これにより拡散抵抗を形成する際のリソグラフィ工程、インプランテーション工程等に起因して生じる形状ばらつきが抑制される。
【0018】
前述したような出力オフセット電圧発生の原因となる環境温度の変動、半導体基板上の熱分布による応力の影響、不純物のドーズ量勾配の影響に起因する拡散抵抗の抵抗変化のばらつきは拡散抵抗同士が近接しているほど小さくなる。そのため、ブリッジ抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2を形成する要素抵抗となる拡散抵抗Rv1_ab,Rv2_ab,Rh1_ab,Rh2_abを互いに隣接する拡散抵抗群RM_abから選択する。また、図4に示すように、2m行・2k列のマトリックス状に配置されている拡散抵抗は、k×m個の拡散抵抗群RMに区分けしておく。拡散抵抗の一つ一つの抵抗値は小さいため、ブリッジ抵抗に必要な抵抗値を得るため、k×m個の拡散抵抗Rv1_abを直列接続してブリッジ抵抗Rv1を形成し、k×m個の拡散抵抗Rv2_abを直列接続してブリッジ抵抗Rv2を形成し、k×m個の拡散抵抗Rh1_abを直列接続してブリッジ抵抗Rh1を形成し、k×m個の拡散抵抗Rh2_abを直列接続してブリッジ抵抗Rh2を形成する。
【0019】
このように拡散抵抗を配置してブリッジ抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2を構成することにより、同じ拡散抵抗群RM_abの拡散抵抗Rv1_ab,Rv2_ab,Rh1_ab,Rh2_abは出力オフセット電圧発生の原因に対して抵抗変化のばらつきを少なくすることができるよになり、その結果ブリッジ抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2についてもばらつきが小さくなり、ブリッジの出力オフセット電圧を小さくすることができる。
【0020】
図5は第2の配置例である。要素抵抗となる拡散抵抗がマトリックス状に配置されており、拡散抵抗RVj_abが配置される奇数列の拡散抵抗は互いに平行かつ等間隔に形成され、同様に拡散抵抗Rhj_abが配置される偶数列の拡散抵抗は互いに平行かつ等間隔に形成されている点で図4の配置例と共通している。一方、この配置例では、ブリッジ抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2を形成する要素抵抗となる拡散抵抗からなる拡散抵抗群RMがマトリックス状に配置された拡散抵抗のうちから選択的に分散配置されている。
【0021】
ブリッジの抵抗値を力学量測定装置によって異ならせる場合、拡散抵抗を図5のような配置とすることにより、接続する拡散抵抗の数や位置を配線層を変えることで実現でき、力学量測定装置の低コスト化を実現できる。
【0022】
さらに、半導体基板のより広い領域に配置された拡散抵抗を接続してブリッジ抵抗が構成できるため、局所的なばらつきが生じてもその影響をうける拡散抵抗が図4の配置よりも少なく、その結果、ブリッジ抵抗の抵抗値に与える影響を小さくすることができる。同じ理由から、拡散抵抗群RMが拡散抵抗が形成される領域に対して均等な密度で配置されるようにされることが望ましい。
【0023】
なお、図5の配置例では図4の配置例と同様に隣接する4つの拡散抵抗からなる拡散抵抗群RMをブリッジ抵抗を構成する要素抵抗の一単位としているが、出力オフセット電圧発生の原因による影響を均等化するために近接している必要があるが、配置例のように隣接していなければならないわけではない。また、要素抵抗となる拡散抵抗であるか、それ以外の拡散抵抗であるかにかかわらず、同じ列に配置される拡散抵抗は互いに平行かつ等間隔に形成される。これは拡散抵抗の形成工程において生じる形状ばらつきを抑制するためである。要素抵抗として用いられない拡散抵抗(図中、dn、en、fn、gn(nは任意の整数)として表記される)は、他の回路要素と接続されないダミーとするか、または、後述するように他の回路要素の抵抗として用いてもよい。
【0024】
また、図4、5の例では、拡散抵抗群RMを要素抵抗となる拡散抵抗を2行2列で選択しているが、1行4列で選択することも可能である。
【0025】
図4、図5に示される配置の特徴点を以下にまとめる。なお、分かりやすさのため、特定の拡散抵抗を例示として用いる。
【0026】
(1)ブリッジ抵抗Rv1を構成する拡散抵抗Rv1_11と拡散抵抗Rv1_12との間にブリッジ抵抗Rv2を構成する拡散抵抗Rv2_11が配置されている。これは他のブリッジ抵抗についても同様である。すなわち、ブリッジ抵抗Rv2を構成する拡散抵抗Rv2_11と拡散抵抗Rv2_12との間にブリッジ抵抗Rv1を構成する拡散抵抗Rv1_12が配置されている。ブリッジ抵抗Rh1を構成する拡散抵抗Rh1_11と拡散抵抗Rh1_12との間にブリッジ抵抗Rh2を構成する拡散抵抗Rh2_12が配置されている。ブリッジ抵抗Rh2を構成する拡散抵抗Rh2_11と拡散抵抗Rh2_12との間にブリッジ抵抗Rh1を構成する拡散抵抗Rh1_11が配置されている。
【0027】
これは、特許文献1では複数本の隣接する不純物層を接続して抵抗値を増加させる実施例が開示されているが、このような実施例の接続に比べて異なるブリッジ抵抗を構成する要素抵抗同士を近接させることができる。
【0028】
(2)拡散抵抗Rv1_ab,Rv2_ab,Rh1_ab,Rh2_abからなる複数の不純物層群RM_abを配置し、ブリッジ抵抗Rv1は不純物層群RM_abの拡散抵抗Rv1_abを互いに接続し、ブリッジ抵抗Rv2は不純物層群RM_abの拡散抵抗Rv2_abを互いに接続し、ブリッジ抵抗Rh1は不純物層群RM_abの拡散抵抗Rh1_abを互いに接続し、ブリッジ抵抗Rh2は不純物層群RM_abの拡散抵抗Rh2_abを互いに接続して構成する。
【0029】
なお、不純物層群RMにおいては、拡散抵抗Rv1_ab,Rv2_ab,Rh1_ab,Rh2_abが近接して配置されており、互いに隣接配置されていることが最も望ましいが、それには限定されない。
【0030】
拡散抵抗が形成される領域に対して、4つのブリッジ抵抗を形成する要素抵抗が1セットとされて分散配置されることにより、局所的なばらつきの影響を受けにくいブリッジが構成できる。
【0031】
(3)拡散抵抗をマトリックス状に配置し、奇数列に配置される拡散抵抗と偶数列に配置される拡散抵抗とは互いに電流方向が直交しており、ブリッジ抵抗Rv1,Rv2は奇数列に配置される拡散抵抗を選択的に直列接続し、ブリッジ抵抗Rh1,Rh2は偶数列に配置される拡散抵抗を選択的に直列接続する。
【0032】
拡散抵抗同士は配線層を用いて接続するが、接続抵抗を各ブリッジ抵抗で一定にするために、拡散抵抗をマトリックス状に配置しておくと、一定にしやすくすることが容易になる。
【0033】
図6は、図5の配置例によって配置した拡散抵抗RSを用いて形成したブリッジのレイアウトである。図6の例では説明の簡単化のためにk=3、m=3とした例を示している。P型拡散抵抗は、図に示されるように、主にx方向またはy方向に延在する金属配線MWによって接続され、ブリッジ抵抗を形成している。なお、この例では2層の金属配線MWを用いている。拡散抵抗RSを金属配線MWは図3のブリッジ抵抗Rv1,Rv2,Rh1,Rh2の抵抗値が配線の抵抗を含めた上で等しくなるように、配線長が等しくなるように配置する。
【0034】
図7にP型拡散抵抗(接続部を含む)の平面図(図7(a))と断面図(図7(b))を示す。P型拡散抵抗は、シリコン基板701の表面にBFガスを用いたイオン注入により、ボロン原子を1015程度ドープした不純物層703を形成し、この部分に対してコンタクトスルーホール704、金属配線705を形成する。P型の不純物層703の表面が抵抗素子として機能する。コンタクトスルーホールと配線は層間絶縁膜702に埋め込まれている。また、不純物層703は互いに素子分離領域706により電気的に分離されている。
【実施例2】
【0035】
力学量測定装置としてブリッジのみを半導体チップに集積して、出力Vp、出力Vnの電位を外部に出力するようにしてもよいが、ブリッジ及びアンプ、その他周辺回路を内蔵し、出力Vp、出力Vnの電位差を増幅して外部出力するような構成にすることも可能である。
【0036】
図8に同じ半導体基板に集積するブリッジBRGとインスツルメンテーションアンプAMP(以下、アンプと呼ぶ)の回路例を示す。アンプAMPの動作を図8を用いて説明する。アンプAMP内部は、フィードバック回路中を流れる電流が等しくなるため、I1=I2=I3の関係が成立する。
一方、アンプAMP前段の増幅回路はソースホロア接続となっているため、
I1=(Vp_out−Vp)/R2
I3=(Vn−Vn_out)/R2
と表される。また、I2=(Vp-Vn)/R1の関係がある。よって、
(Vp_out−Vp)/R2=(Vp−Vn)/R1=(Vn−Vnout)/R2
となる。
【0037】
また、アンプAMP後段の増幅回路は、Vout=(R4/R3)×(Vp_out−Vn_out)と表すことができる。
【0038】
これをまとめると、ブリッジBRGの出力する電位差(Vp−Vn)は、アンプAMPの抵抗比によって、
Vout=(1+2×R2/R1)×(R4/R3)×(Vp−Vn)
に増幅して出力させることができる。
【0039】
図9に図8に示した回路を半導体チップに集積するレイアウトを示す。半導体チップ901の中央部にブリッジBRGを配置する。ブリッジBRGのレイアウトは、実施例1、後述する実施例3によるものである。このようにチップの中央部にブリッジを集積することで、ブリッジを構成する拡散抵抗を半導体チップ901の辺や角部からできるだけ離すことが可能になり、半導体チップ901を被測定対象に貼り付ける場合に生じる応力などの影響を少なくすることができる。また、アンプAMPを含む周辺回路はブリッジBRGの周りの領域に配置する。
【0040】
ここでアンプAMPに用いる抵抗やその他周辺回路に用いるカレントミラーなどの電流源の抵抗として、ブリッジBRGに配置したダミーの拡散抵抗を用いることができる。これにより、アンプや周辺回路で使う抵抗について、プロセスによる抵抗値の変動や、温度変化に伴う抵抗値の変動をブリッジに使う拡散抵抗と等しくすることができる。
【0041】
変形例について述べる。
【0042】
図10は要素抵抗(拡散抵抗)の第3の配置例を示す模式図である。図10においては、実施例1と同様に、回路上対向するブリッジ抵抗Rv1及びRv2を構成する要素抵抗Rv1_ab及びRv2_abを隣接して配置し、ブリッジ抵抗Rh1,Rh2についても同様に要素抵抗Rh1_abとRv2_abを互いに隣接して配置し、要素抵抗Rv1_ab,Rv2_abと要素抵抗Rh1_ab,Rh2_abとを互いに隣接して配置したうえで、配置する4×k×mの全要素抵抗をより近接させるために千鳥状に配置した例である。この実施例3の配置方法によれば、拡散抵抗が密に配置されることにより、チップの小面積化を図ることができる。
【0043】
このとき、図10に示したa1、a2、b1、b2、c1、c2、d1、d2はブリッジに電気的に接続されていない拡散抵抗であり、実施例2に関連して述べたように、これらの拡散抵抗はブリッジ以外の回路に接続しても、ダミーとして配置するだけでもよい。
【0044】
また、拡散抵抗としてP型不純物層を用いる例を示したが、N型不純物層を用いることも可能である。この場合は、その長手方向(電流方向)が半導体基板の<100>に平行とされる拡散抵抗と、その長手方向(電流方向)が半導体基板の<100>に直交する拡散抵抗の2種類の拡散抵抗を形成すればよい。
【符号の説明】
【0045】
v1,Rv2,Rh1,Rh2:ブリッジ抵抗、BRG:ブリッジ、AMP:アンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ回路を用いた力学量測定装置であって、
半導体基板と、
上記半導体基板に形成され、第1の方向に延在する複数の第1導電型の第1不純物層と、
上記半導体基板に形成され、上記第1の方向と直交する第2の方向に延在する複数の第1導電型の第2不純物層とを有し、
上記ブリッジ回路は、第1の基準電位点と第1の出力点との間の第1抵抗と第2の基準電位点と上記第1の出力点との間の第2抵抗と上記第1の基準電位点と第2の出力点との間の第3抵抗と上記第2の基準電位点と上記第2の出力点との間の第4抵抗を有し、
上記第1抵抗及び上記第4抵抗は、それぞれ複数の上記第1不純物層を配線層を介して直列接続して構成され、
上記第2抵抗及び上記第3抵抗は、それぞれ複数の上記第2不純物層を配線層を介して直列接続して構成され、
上記第1抵抗を構成し互いに配線層を介して接続される2つの上記第1不純物層の間に、上記第4抵抗を構成する上記第1不純物層が配置され、
上記第4抵抗を構成し互いに配線層を介して接続される2つの上記第1不純物層の間に、上記第1抵抗を構成する上記第1不純物層が配置され、
上記第2抵抗を構成し互いに配線層を介して接続される2つの上記第2不純物層の間に、上記第3抵抗を構成する上記第2不純物層が配置され、
上記第3抵抗を構成し互いに配線層を介して接続される2つの上記第2不純物層の間に、上記第2抵抗を構成する上記第2不純物層が配置される力学量測定装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記第1及び第2不純物層はP型不純物層であり、
上記第1の方向は半導体基板の<110>である力学量測定装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記力学量測定装置は、被測定物に貼り付けまたは埋め込まれて、上記被測定物のひずみの計測を行う力学量測定装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記複数の第1導電型の第1不純物層は、互いに平行かつ等間隔に形成され、
上記複数の第1導電型の第2不純物層は、互いに平行かつ等間隔に形成される力学量測定装置。
【請求項5】
請求項1において、
上記複数の第1導電型の第1不純物層には、第1抵抗または第4抵抗のいずれをも構成しない第1不純物層を含み、該第1不純物層は他の回路と電気的に接続されないダミー抵抗とされ、
上記複数の第1導電型の第2不純物層には、第2抵抗または第3抵抗のいずれをも構成しない第2不純物層を含み、該第2不純物層は他の回路と電気的に接続されないダミー抵抗とされる力学量測定装置。
【請求項6】
請求項1において、
上記ブリッジ回路の上記第1及び第2の出力点の電位差を増幅する増幅回路を含む周辺回路を有し、
上記複数の第1導電型の第1不純物層には、第1抵抗または第4抵抗のいずれをも構成しない第1不純物層を含み、上記複数の第1導電型の第2不純物層には、第2抵抗または第3抵抗のいずれをも構成しない第2不純物層を含み、該第1不純物層または該第2不純物層は上記周辺回路の抵抗として用いられる力学量測定装置。
【請求項7】
請求項1において、
上記ブリッジ回路の上記第1及び第2の出力点の電位差を増幅する増幅回路を含む周辺回路を有し、
上記第1不純物層及び第2不純物層が半導体チップの中央部に形成され、
上記周辺回路は上記中央部の周囲に形成される力学量測定装置。
【請求項8】
ブリッジ回路を用いた力学量測定装置であって、
半導体基板と、
上記半導体基板に形成される複数の不純物層群を有し、
上記複数の不純物層群のそれぞれは、第1の方向に延在する複数の第1導電型の第1不純物層と上記第1の方向と直交する第2の方向に延在する複数の第1導電型の第2不純物層とを有し、
上記ブリッジ回路は、第1の基準電位点と第1の出力点との間の第1抵抗と第2の基準電位点と上記第1の出力点との間の第2抵抗と上記第1の基準電位点と第2の出力点との間の第3抵抗と上記第2の基準電位点と上記第2の出力点との間の第4抵抗を有し、
上記第1抵抗は、上記複数の不純物層群のいずれか一つの第1不純物層を互いに配線層を介して直列接続することにより構成し、
上記第2抵抗は、上記複数の不純物層群のいずれか一つの第2不純物層を互いに配線層を介して直列接続することにより構成し、
上記第3抵抗は、上記複数の不純物層群のいずれか一つの第2不純物層を互いに配線層を介して直列接続することにより構成し、
上記第4抵抗は、上記複数の不純物層群のいずれか一つの第1不純物層を互いに配線層を介して直列接続することにより構成する力学量測定装置。
【請求項9】
請求項8において、
上記複数の不純物層群のそれぞれにおいて、
上記第1抵抗を構成する上記第1不純物層は他の上記第1不純物層に配線層を介して直列接続されておらず、
上記第2抵抗を構成する上記第2不純物層は他の上記第2不純物層に配線層を介して直列接続されておらず、
上記第3抵抗を構成する上記第2不純物層は他の上記第2不純物層に配線層を介して直列接続されておらず、
上記第4抵抗を構成する上記第1不純物層は他の上記第1不純物層に配線層を介して直列接続されていない力学量測定装置。
【請求項10】
請求項8において、
上記第1及び第2不純物層はP型不純物層であり、
上記第1の方向は半導体基板の<110>である力学量測定装置。
【請求項11】
請求項8において、
上記力学量測定装置は、被測定物に貼り付けまたは埋め込まれて、上記被測定物のひずみの計測を行う力学量測定装置。
【請求項12】
請求項8において、
上記複数の不純物層群に第1の不純物層群と第2の不純物層群を含み、
上記第1の不純物層群の上記第1不純物層と上記第2の不純物層群の上記第1不純物層との間に複数の第1導電型の第3不純物層が形成されており、かつ該第1不純物層及び上記第3不純物層とは互いに平行かつ等間隔に形成されており、
上記第1の不純物層群の上記第2不純物層と上記第2の不純物層群の上記第2不純物層との間に複数の第1導電型の第4不純物層が形成されており、かつ該第2不純物層及び上記第4不純物層とは互いに平行かつ等間隔に形成されている力学量測定装置。
【請求項13】
請求項12において、
上記第3不純物層または上記第4不純物層は他の回路と電気的に接続されないダミー抵抗とされる力学量測定装置。
【請求項14】
請求項12において、
上記ブリッジ回路の上記第1及び第2の出力点の電位差を増幅する増幅回路を含む周辺回路を有し、
上記第3不純物層または上記第4不純物層は上記周辺回路の抵抗として用いられる力学量測定装置。
【請求項15】
請求項8において、
上記ブリッジ回路の上記第1及び第2の出力点の電位差を増幅する増幅回路を含む周辺回路を有し、
上記第1不純物層及び第2不純物層が半導体チップの中央部に形成され、
上記周辺回路は上記中央部の周囲に形成される力学量測定装置。
【請求項16】
ブリッジ回路を用いた力学量測定装置であって、
半導体基板と、
上記半導体基板に形成され、マトリックス状に配置された複数の第1導電型の不純物層とを有し、
上記複数の第1導電型の不純物層は、奇数列に配置されて第1の方向に延在する複数の第1不純物層と、偶数列に配置されて上記第1の方向と直交する第2の方向に延在する複数の第2不純物層とを含み、
上記ブリッジ回路は、第1の基準電位点と第1の出力点との間の第1抵抗と第2の基準電位点と上記第1の出力点との間の第2抵抗と上記第1の基準電位点と第2の出力点との間の第3抵抗と上記第2の基準電位点と上記第2の出力点との間の第4抵抗を有し、
上記第1抵抗及び第4抵抗は、上記奇数列に配置される複数の第1不純物層を選択的に直列接続して構成され、
上記第2抵抗及び第3抵抗は、上記偶数列に配置される複数の第2不純物層を選択的に直列接続して構成される力学量測定装置。
【請求項17】
請求項16において、
上記奇数列に配置される複数の第1不純物層のうち隣接する第1不純物層をそれぞれ第1抵抗を構成する第1不純物層及び上記第4抵抗を構成する第1不純物層として選択し、
上記偶数列に配置される複数の第2不純物層のうち隣接する第2不純物層をそれぞれ第2抵抗を構成する第2不純物層及び上記第3抵抗を構成する第2不純物層として選択する力学量測定装置。
【請求項18】
請求項17において、
上記隣接する第1不純物層は上記隣接する第2不純物層とは隣接して配置される力学量測定装置。
【請求項19】
請求項16において、
上記不純物層はP型不純物層であり、
上記第1の方向は半導体基板の<110>である力学量測定装置。
【請求項20】
請求項16において、
上記ブリッジ回路の上記第1及び第2の出力点の電位差を増幅する増幅回路を含む周辺回路を有し、
上記不純物層及び不純物層が半導体チップの中央部に形成され、
上記周辺回路は上記中央部の周囲に形成される力学量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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