説明

力検出装置

【課題】単純な構造により、力とモーメントとを区別して検出する。
【解決手段】板状の支持体300の上面の3箇所に、それぞれ5組ずつの固定電極群E11〜E15,E21〜E25,E31〜E35を配置する。この3箇所の固定電極群の上方にそれぞれ変位電極として機能する円盤状のダイアフラムを配置し、その周囲を支持体300上に固定する。3枚のダイアフラムの上面中央部に、それぞれ上方に伸びる柱状体を接合し、この3本の柱状体の上端に、検出対象となる力を受ける受力体を取り付ける。受力体に力やモーメントが作用すると、3本の柱状体が変位し、各ダイアフラムに撓みが生じる。各固定電極E11〜E35と対向するダイアフラムとによって構成される15組の容量素子の静電容量値の変化に基づいて、受力体に作用した各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzと、モーメントMx,My,Mzのすべてが検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は力検出装置に関し、特に、力とモーメントとを独立して検出するのに適した力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや産業機械の動作制御を行うために、種々のタイプの力検出装置が利用されている。また、電子機器の入力装置のマン・マシンインターフェイスとしても、小型の力検出装置が組み込まれている。このような用途に用いる力検出装置には、小型化およびコストダウンを図るために、できるだけ構造を単純にするとともに、三次元空間内での各座標軸に関する力をそれぞれ独立して検出できるようにすることが要求される。
【0003】
現在、一般に利用されている多軸力検出装置は、三次元構造体に作用した力の特定の方向成分を、特定の部分に生じた変位として検出するタイプのものと、特定の部分に生じた機械的な歪みとして検出するタイプのものに分類される。前者の変位検出タイプの代表格は、静電容量素子式の力検出装置であり、一対の電極により容量素子を構成しておき、作用した力によって一方の電極に生じた変位を、容量素子の静電容量値に基づいて検出するものである。たとえば、下記の特許文献1には、この静電容量式の力検出装置が開示されている。一方、後者の歪み検出タイプの代表格は、歪みゲージ式の力検出装置であり、作用した力によって生じた機械的な歪みを、ゲージ抵抗などの電気抵抗の変化として検出するものである。たとえば、下記の特許文献2には、この歪みゲージ式の力検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−215627号公報
【特許文献2】特開昭61−292029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、力検出装置の検出対象には、所定の座標軸方向を向いた力成分と、所定の座標軸まわりのモーメント成分とがある。三次元空間内にXYZ三次元座標系を定義した場合、検出対象は、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分になる。しかしながら、これらの各成分をそれぞれ独立して検出するためには、従来は、変位検出タイプのものであれ、歪み検出タイプのものであれ、かなり複雑な三次元構造体をもった力検出装置を用いる必要があった。
【0006】
そこで本発明は、できるたけ単純な構造により、力とモーメントとを区別して検出することが可能な力検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明の第1の態様は、XYZ三次元座標系におけるX軸方向の力Fxを検出する力検出装置において、
検出対象となる力を受けるために座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
第1の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
第2の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
第3の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を設け、
第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が支持体に固定された接続部材の中央に接合され、第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
第1〜第3のセンサは、支持体の上面に固定された固定電極と、力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1〜第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体に作用した力のX軸方向成分Fxを検出する処理を行うようにしたものである。
【0008】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る力検出装置において、X軸方向の力Fxの検出に加えて、更に、Y軸方向の力Fyを検出するために、
第1のセンサが、第1の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1〜第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを検出する処理を行うようにしたものである。
【0009】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第2の態様に係る力検出装置において、X軸方向の力FxおよびY軸方向の力Fyの検出に加えて、更に、Z軸方向の力Fzを検出するために、
第1のセンサが、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1〜第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを検出する処理を行うようにしたものである。
【0010】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1の態様に係る力検出装置において、X軸方向の力Fxの検出に加えて、更に、Z軸方向の力Fzを検出するために、
第1のセンサが、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1〜第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを検出する処理を行うようにしたものである。
【0011】
(5) 本発明の第5の態様は、XYZ三次元座標系におけるY軸方向の力Fyを検出する力検出装置において、
検出対象となる力を受けるために座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
第1の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
第2の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
第3の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を設け、
第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が支持体に固定された接続部材の中央に接合され、第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
第1〜第3のセンサは、支持体の上面に固定された固定電極と、力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1〜第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを検出する処理を行うようにしたものである。
【0012】
(6) 本発明の第6の態様は、XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の力Fzを検出する力検出装置において、
検出対象となる力を受けるために座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
第1の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
第2の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
第3の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を設け、
第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が支持体に固定された接続部材の中央に接合され、第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
第1〜第3のセンサは、支持体の上面に固定された固定電極と、力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1〜第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを検出する処理を行うようにしたものである。
【0013】
(7) 本発明の第7の態様は、XYZ三次元座標系におけるX軸まわりのモーメントMxを検出する力検出装置において、
検出対象となる力を受けるために座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
第1の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
第2の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
第3の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を設け、
第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が支持体に固定された接続部材の中央に接合され、第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
第1〜第3のセンサは、支持体の上面に固定された固定電極と、力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第2および第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和と、の差に基づいて、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメントMxを検出する処理を行うようにしたものである。
【0014】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第7の態様に係る力検出装置において、X軸まわりのモーメントMxの検出に加えて、更に、Y軸まわりのモーメントMyを検出するために、
検出処理部が、第2のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメントMyを検出する処理を行うようにしたものである。
【0015】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第8の態様に係る力検出装置において、X軸まわりのモーメントMxおよびY軸まわりのモーメントMyの検出に加えて、更に、Z軸まわりのモーメントMzを検出するために、
第1のセンサが、第1の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、を検知する機能を有し、
検出処理部が、第2および第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和から、第1のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度を減じた差を第1の差として求め、第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度から、第2のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度を減じた差を第2の差として求め、第1の差と第2の差との和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzを検出する処理を行うようにしたものである。
【0016】
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第7の態様に係る力検出装置において、X軸まわりのモーメントMxの検出に加えて、更に、Z軸まわりのモーメントMzを検出するために、
第1のセンサが、第1の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、を検知する機能を有し、
検出処理部が、第2および第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和から、第1のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度を減じた差を第1の差として求め、第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度から、第2のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度を減じた差を第2の差として求め、第1の差と第2の差との和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzを検出する処理を行うようにしたものである。
【0017】
(11) 本発明の第11の態様は、XYZ三次元座標系におけるZ軸まわりのモーメントMzを検出する力検出装置において、
検出対象となる力を受けるために座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
第1の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
第2の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
第3の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を設け、
第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が支持体に固定された接続部材の中央に接合され、第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
第1〜第3のセンサは、支持体の上面に固定された固定電極と、力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、を検知する機能を有し、
検出処理部が、第2および第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和から、第1のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度を減じた差を第1の差として求め、第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度から、第2のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度を減じた差を第2の差として求め、第1の差と第2の差との和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzを検出する処理を行うようにしたものである。
【0018】
(12) 本発明の第12の態様は、XYZ三次元座標系におけるX軸方向の力Fx、Z軸方向の力Fz、X軸まわりのモーメントMx、Z軸まわりのモーメントMzを検出する力検出装置において、
検出対象となる力を受けるために座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
第1の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
第2の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
第3の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を設け、
第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が支持体に固定された接続部材の中央に接合され、第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
第1〜第3のセンサは、支持体の上面に固定された固定電極と、力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有し、
検出処理部が、
第1〜第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体に作用した力のX軸方向成分Fxを検出する処理を行い、
第1〜第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを検出する処理を行い、
第1のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第2および第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和と、の差に基づいて、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメントMxを検出する処理を行い、
第2および第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和から、第1のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度を減じた差を第1の差として求め、第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度から、第2のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度を減じた差を第2の差として求め、第1の差と第2の差との和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzを検出する処理を行うようにしたものである。
【0019】
(13) 本発明の第13の態様は、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzおよび各座標軸まわりのモーメントMx,My,Mzを検出する力検出装置において、
検出対象となる力を受けるために座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
第1の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
第2の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
第3の力伝達体の支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を設け、
第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が支持体に固定された接続部材の中央に接合され、第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
第1〜第3のセンサは、支持体の上面に固定された固定電極と、力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第1の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有し、
検出処理部が、
第1〜第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体に作用した力のX軸方向成分Fxを検出する処理を行い、
第1〜第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを検出する処理を行い、
第1〜第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを検出する処理を行い、
第1のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第2および第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和と、の差に基づいて、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメントMxを検出する処理を行い、
第2のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメントMyを検出する処理を行い、
第2および第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和から、第1のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度を減じた差を第1の差として求め、第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度から、第2のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度を減じた差を第2の差として求め、第1の差と第2の差との和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzを検出する処理を行うようにしたものである。
【0020】
(14) 本発明の第14の態様は、XYZ三次元座標系におけるY軸まわりのモーメントMyを検出する力検出装置において、
検出対象となる力を受けるために座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能を有する第2の力伝達体用センサと、
第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知する機能を有する第3の力伝達体用センサと、
第2の力伝達体用センサおよび第3の力伝達体用センサの検出結果を考慮して、受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を設け、
第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が支持体に固定された接続部材の中央に接合され、第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
第2の力伝達体用センサおよび第3の力伝達体用センサは、支持体の上面に固定された固定電極と、力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第2の力伝達体用センサが、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第3の力伝達体用センサが、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
検出処理部が、
第2の力伝達体用センサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第3の力伝達体用センサによって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメントMyを検出する処理を行うようにしたものである。
【0021】
(15) 本発明の第15の態様は、上述の第1〜第14の態様に係る力検出装置において、
可撓性および導電性を有するダイアフラムを力伝達体の下面側の接続部材として用い、このダイアフラムの中央に力伝達体の下面を接合し、ダイアフラムの周囲を支持体に固定することにより、力伝達体を支持体に接続するようにし、ダイアフラム自身を変位電極として用いるようにしたものである。
【0022】
(16) 本発明の第16の態様は、上述の第15の態様に係る力検出装置において、
柱状の部材からなる力伝達体の軸芯の延長線と支持体の上面との交点に原点をとったxy二次元座標系を定義したときに、
支持体の上面におけるx軸の正の部分および負の部分にそれぞれ第1の固定電極および第2の固定電極を配置し、支持体の上面におけるy軸の正の部分および負の部分にそれぞれ第3の固定電極および第4の固定電極を配置し、
ダイアフラムからなる変位電極と第1〜第4の固定電極とによって、第1〜第4の容量素子を構成し、第1の容量素子の静電容量値と第2の容量素子の静電容量値との差に基づいて、力伝達体のx軸方向に関する傾斜度を検知し、第3の容量素子の静電容量値と第4の容量素子の静電容量値との差に基づいて、力伝達体のy軸方向に関する傾斜度を検知し、検出処理部が、これらの検知結果を利用して、力もしくはモーメントを検出する処理を行うようにしたものである。
【0023】
(17) 本発明の第17の態様は、上述の第16の態様に係る力検出装置において、
支持体の上面における原点の近傍に更に第5の固定電極を配置し、ダイアフラムからなる変位電極と第5の固定電極とによって、第5の容量素子を構成し、この第5の容量素子の静電容量値に基づいて、力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知し、検出処理部が、この検知結果を利用して、力もしくはモーメントを検出する処理を行うようにしたものである。
【0024】
(18) 本発明の第18の態様は、上述の第15〜第17の態様に係る力検出装置において、
力伝達体を挿通するための開口を有し、力伝達体の下面側の接続部材として用いられるダイアフラムの上方に配置されるように支持体に固定された補助基板を更に設け、
センサが、補助基板の下面に固定された固定電極と、ダイアフラム自身からなる変位電極と、によって構成される補助容量素子を有し、この補助容量素子の静電容量値を利用して力の検出を行うようにしたものである。
【0025】
(19) 本発明の第19の態様は、上述の第18の態様に係る力検出装置において、
補助基板の下面に固定された固定電極の一部または全部が、支持体の上面に固定された固定電極の一部または全部に対して、鏡像関係をなすようにしたものである。
【0026】
(20) 本発明の第20の態様は、上述の第1〜第19の態様に係る力検出装置において、
検出処理部が複数の容量素子を電気的に接続する配線により構成されているようにしたものである。
【0027】
(21) 本発明の第21の態様は、上述の第1〜第20の態様に係る力検出装置において、
受力体と力伝達体とを接続する接続部材を、板状の受力体の肉薄部によって構成したものである。
【0028】
(22) 本発明の第22の態様は、上述の第1〜第20の態様に係る力検出装置において、
各力伝達体から受力体に向かって加えられる力を検出する補助センサを更に設け、
検出処理部が、補助センサの検出結果を更に考慮して、受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行うようにしたものである。
【0029】
(23) 本発明の第23の態様は、上述の第22の態様に係る力検出装置において、
力伝達体から支持体に向かって加えられる力を検出するセンサと、力伝達体から受力体に向かって加えられる力を検出する補助センサとが鏡像関係となる構造を有し、
検出処理部が、鏡像関係を考慮した処理を実行するようにしたものである。
【0030】
(24) 本発明の第24の態様は、上述の第1〜第23の態様に係る力検出装置において、
受力体の支持体に対する変位を所定の範囲内に制限するための制限部材を設けるようにしたものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る力検出装置によれば、できるだけ単純な構造により、力とモーメントとを区別して検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る力検出装置の基本構成を示す斜視図(一部はブロック図)である。
【図2】図1に示す力検出装置の基本的な動作原理を示す正面図である。
【図3】図1に示す力検出装置における第1のセンサ21および第2のセンサ22として利用するのに適した多軸力センサの一例を示す側断面図(xz平面で切った断面図)である。
【図4】図3に示す多軸力センサの上面図である。
【図5】図3に示す多軸力センサにおける支持体40の上面図である(破線は、椀状接続部材の位置を示している)。
【図6】図3に示す多軸力センサに、x軸正方向の力+fxが加えられたときの状態を示す側断面図である。
【図7】図3に示す多軸力センサに、x軸負方向の力−fxが加えられたときの状態を示す側断面図である。
【図8】図3に示す多軸力センサに、z軸負方向の力−fzが加えられたときの状態を示す側断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る力検出装置の主たる構造部分を、XZ平面に沿って切断した状態を示す側断面図である。
【図10】図9に示す力検出装置の上面図である。
【図11】図9に示す力検出装置をXY平面に沿って切断した状態を示す横断面図である。
【図12】図9に示す力検出装置の支持体300の上面図である。
【図13】図9に示す力検出装置による各力成分の検出原理を示すテーブルであり、図9に示す力検出装置の受力体100に、各力成分が作用したときの各容量素子の静電容量値の変化の態様を示している。
【図14】図9に示す力検出装置による各力成分の検出原理を数式を用いて示す図である。
【図15】図9に示す力検出装置によって、力とモーメントとを区別して検出することができることを説明するための側断面図である。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る力検出装置の主たる構造部分の上面図である。
【図17】図16に示す力検出装置を切断線17−17に沿って切断した断面を示す側断面図である。
【図18】図17に示す力検出装置の支持体300の上面図である。
【図19】図17に示す力検出装置による各力成分の検出原理を示すテーブルであり、図17に示す力検出装置の受力体100に、各力成分が作用したときの各容量素子の静電容量値の変化の態様を示している。
【図20】図17に示す力検出装置による各力成分の検出原理を数式を用いて示す図である。
【図21】本発明の第3の実施形態に係る力検出装置の支持体300の上面図である。
【図22】図21に示す力検出装置による各力成分の検出原理を示すテーブルであり、受力体100に各力成分が作用したときの各容量素子の静電容量値の変化の態様を示している。
【図23】図21に示す力検出装置による各力成分の検出原理を数式を用いて示す図である。
【図24】図9に示す力検出装置に、制限部材を付加した変形例の構造を示す側断面図である。
【図25】図24に示す力検出装置に、過度の力+Fxが加わった状態を示す側断面図である。
【図26】図24に示す力検出装置に、過度の力+Fzが加わった状態を示す側断面図である。
【図27】図24に示す力検出装置に、過度のモーメント+Myが加わった状態を示す側断面図である。
【図28】補助基板400を付加した変形例に係る力検出装置の側断面図である。
【図29】図28に示す変形例に用いられている補助基板400の下面図である。
【図30】図28に示す変形例に用いられている支持体300の上面図である。
【図31】補助センサを付加した変形例に係る力検出装置の側断面図である。
【図32】補助基板と補助センサとの双方を付加した変形例に係る力検出装置の側断面図である。
【図33】受力体、支持体、力伝達体を導電性材料で構成した変形例に係る力検出装置の側断面図である。
【図34】ダミー力伝達体を利用する変形例における支持体300の上面図である。
【図35】本発明の第4の実施形態に係る力検出装置の支持体300の上面図である。
【図36】図35に示す力検出装置による各力成分の検出原理を示すテーブルであり、受力体100に各力成分が作用したときの各容量素子の静電容量値の変化の態様を示している。
【図37】図35に示す力検出装置による各力成分の検出原理を数式を用いて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0034】
<<< §1. 基本概念 >>>
はじめに、本発明に係る力検出装置の基本概念を説明する。図1に示すとおり、本発明に係る力検出装置の基本構成要素は、受力体10、第1の力伝達体11、第2の力伝達体12、支持体20、第1のセンサ21、第2のセンサ22、検出処理部30である。
【0035】
受力体10は、検出対象となる力を受ける構成要素であり、ここでは説明の便宜上、この受力体10の中心位置に原点Oを定義し、図示のとおり、XYZ三次元座標系を定義している。図示の例では、任意形状をした受力体10が描かれているが、後述する具体的な実施例では、板状の受力体10が用いられている。受力体10に作用する力の成分は、この座標系における各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzである。この図1に示す力検出装置では、後述するように、これら6つの力成分のうち、Fx,Fz,Mx,Myの4成分の検出が可能である。
【0036】
なお、本願では、「力」という文言は、特定の座標軸方向の力を意味する場合と、モーメント成分を含めた集合的な力を意味する場合とを、適宜使い分けることにする。たとえば、図1において、力Fx,Fy,Fzと言った場合は、モーメントではない各座標軸方向の力成分を意味しているが、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzと言った場合は、各座標軸方向の力成分と各座標軸まわりのモーメント成分とを含む集合的な力を意味することになる。
【0037】
支持体20は、受力体10の下方に配置され、受力体10を支持する機能を果たす構成要素である。図示の例では、板状の支持体20が描かれているが、支持体20は必ずしも板状の形態をとる必要はない。ただ、後述するように、第1のセンサ21および第2のセンサ22によって、各座標軸X,Y,Zに関する力の検出を行う上では、前述したXYZ三次元座標系におけるXY平面に平行な上面を有する支持体20を用いるのが好ましく、実用上は、板状形態にするのが好ましい。ここでは、説明の便宜上、支持体20の上面に、xy平面を定義することにする。この小文字で示すxy平面は、大文字で示すXY平面に平行な平面となっており、x軸とX軸とは平行、y軸とY軸とは平行である。
【0038】
第1の力伝達体11および第2の力伝達体12は、受力体10と支持体20とを接続する部材であり、Z軸に沿って配置された構造体であり、しかもこの2本は、x軸上に所定間隔をおいて並んで配置されている。図示の例では、これら力伝達体11,12は、いずれも柱状の構造体となっているが、原理的には任意の形状をもった構造体で構成してかまわない。ただ、実用上は、図示のような柱状の構造体にするのが、単純な構造を実現する上で好ましい。また、実用上は、第1の力伝達体11と第2の力伝達体12は、全く同じ材質、全く同じサイズにするのが好ましい。これは、両者の材質やサイズを同一にしておけば、第1のセンサ21および第2のセンサ22による検出感度を同一にすることができるためである。両者の材質やサイズが異なると、両センサの感度を同一にそろえることが困難になり、感度補正のための工夫が必要になる。
【0039】
ここで重要な点は、各力伝達体11,12の上端が、受力体10に対して、可撓性をもった接続部材(図には示されていない)を介して接続されており、各力伝達体11,12の下端が、支持体20に対して、可撓性をもった接続部材(図には示されていない)を介して接続されている点である。要するに、第1の力伝達体11および第2の力伝達体12は、受力体10に対しても、支持体20に対しても、可撓性をもって接続されていることになる。ここで、可撓性とは弾力性と同義であり、受力体10に対して何ら力が作用していない状態では、受力体10は支持体20に対して定位置をとるが、受力体10に何らかの力が作用すると、可撓性をもった接続部材が弾性変形を生じ、受力体10と支持体20との相対位置に変化が生じることになる。もちろん、受力体10に作用する力がなくなると、受力体10はもとどおりの定位置に戻る。
【0040】
結局、図1に示す例の場合、柱状の第1の力伝達体11および第2の力伝達体12の上端部および下端部が、それぞれ可撓性をもった接続部材によって構成されていることになる(もちろん、第1の力伝達体11および第2の力伝達体12の全体が可撓性をもった材料により構成されていてもかまわない)。そして、この接続部材が、ある程度の弾性変形を生じるため、第1の力伝達体11および第2の力伝達体12は、受力体10や支持体20に対して傾斜することができる。また、この接続部材は、図の上下方向(Z軸方向)にも伸縮することが可能であり、受力体10を図の上方向(+Z軸方向)に動かすと、接続部材が伸び、受力体10と支持体20との距離は広がり、逆に、受力体10を図の下方向(−Z軸方向)に動かすと、接続部材が縮み、受力体10と支持体20との距離は狭まることになる。もちろん、このような変位や傾斜の度合いは、受力体10に作用した力の大きさに応じて大きくなる。
【0041】
第1のセンサ21は、第1の力伝達体11から支持体20に向かって加えられる力を検出する力センサであり、第2のセンサ22は、第2の力伝達体12から支持体20に向かって加えられる力を検出する力センサである。上述したように、受力体10に力が作用すると、この力は、第1の力伝達体11および第2の力伝達体12を介して、支持体20へと伝達されることになる。第1のセンサ21および第2のセンサ22は、こうして伝達される力を検出する機能を有しており、より具体的には、後に詳述するように、力伝達体が傾斜することにより生じる力を検出することにより、力伝達体の傾斜度を検知する機能と、力伝達体全体が、支持体に対して加える押圧力(図の下方−Z軸方向の力)もしくは引っ張り力(図の上方+Z軸方向の力)を検知する機能と、を有している。
【0042】
検出処理部30は、第1のセンサ21の検出結果と第2のセンサ22の検出結果との双方を考慮して、受力体10に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う構成要素である。実際には、上述した力伝達体の傾斜度や、支持体に対して加えられる押圧力/引っ張り力に基づいて、力やモーメントの検出が行われる。その具体的な方法については後述する。
【0043】
続いて、図2の正面図を参照しながら、図1に示す力検出装置の基本的な動作原理を説明する。図2(a) は、この力検出装置に何ら力が作用していない状態を示しており、受力体10は、支持体20に対して定位置を維持している。もちろん、この状態においても、受力体10などの重量が支持体20上に加わっているので、支持体20は、第1の力伝達体11や第2の力伝達体12から、何らかの力を受けているが、この状態で受けている力は定常状態での力であり、このような力が第1のセンサ21や第2のセンサ22によって検出されたとしても、検出処理部30から出力される力やモーメントの検出値は0になる。別言すれば、検出処理部30は、このような定常状態における各センサ21,22の検出結果を基準として、何らかの変化が生じた場合には、この変化を受力体10に作用した力もしくはモーメントとして検出する機能を有している。
【0044】
さて、ここでは、まず図2(b) に示すように、受力体10に対して、X軸正方向の力+Fxが作用した場合を考えてみる。ちょうど原点Oの位置を、図の右方向へと押すような力が加わった場合に相当する。この場合、図示のとおり、受力体10は図の右方向へとスライド運動することになり、第1の力伝達体11および第2の力伝達体12は、図の右方向へと傾斜することになる。ここでは、このときの第1の力伝達体11の傾斜度をθ1、第2の力伝達体12の傾斜度をθ2と呼ぶことにする。また、このようにXZ平面内におけるx軸に向かう方向への傾斜の程度を示す角度θ1,θ2を、「X軸方向に関する傾斜度」と呼ぶことにする。同様に、YZ平面内におけるy軸に向かう方向への傾斜の程度を示す角度を、「Y軸方向に関する傾斜度」と呼ぶ。図示の場合、2本の力伝達体11,12は、x軸上に並んで配置されているので、Y軸方向の傾斜度は0である。
【0045】
なお、各力伝達体11,12が傾斜すると、受力体10と支持体20との距離は若干縮まることになるので、厳密に言えば、受力体10はX軸方向に完全な平行移動を行うわけではなく、わずかながら−Z軸方向への移動も行うことになるが、傾斜度が比較的小さい場合、−Z軸方向への移動量は無視することができるので、ここでは説明の便宜上、受力体10がX軸方向のみに移動したものと考えることにする。
【0046】
一方、図2(c) に示すように、受力体10に対して、Y軸まわりのモーメント+Myが作用した場合を考えてみよう。図2(c) において、Y軸は紙面の裏側へと向かう垂直方向の軸であるから、図では、モーメント+Myは、原点Oを中心に、受力体10全体を時計まわりの方向に回転させるような力に相当する。なお、本願では、所定の座標軸の正方向に右ネジを進める場合の当該右ネジの回転方向を、当該座標軸まわりの正のモーメントと定義することにする。さて、この場合、図示のとおり、第1の力伝達体11については伸張力が作用し、第2の力伝達体12については縮小力が作用することになる。その結果、第1の力伝達体11から支持体20に対しては、引っ張り力(+Z軸方向の力:ここでは、力+fzと示すことにする)が作用し、第2の力伝達体12から支持体20に対しては、押圧力(−Z軸方向の力:ここでは、力−fzと示すことにする)が作用する。
【0047】
このように、本発明に係る力検出装置では、受力体10にX軸方向の力Fxが作用した場合と、Y軸まわりのモーメントMyが作用した場合とでは、2本の力伝達体11,12を介して支持体20に伝達される力の態様が異なることになる。したがって、両者を区別して、それぞれ別個に検出することが可能である。
【0048】
すなわち、X軸方向の力Fxが作用した場合は、図2(b) に示すように、2本の力伝達体11,12は、X軸方向に傾斜し、傾斜度θ1,θ2を生じることになり、このような傾斜に応じた力が支持体20へと伝達される。ここで、第1の力伝達体11および第2の力伝達体12と、これを支持体20に接続するための可撓性をもった接続部材とを、同一材料、同一サイズにしておき、この力検出装置が、図のZ軸に関して左右対称となる構造にしておけば、傾斜度θ1=θ2になる。よって両者の和(θ1+θ2)は、X軸方向の力Fxを示す値になる。傾斜度θに符号を付して取り扱えば(たとえば、X軸正方向への傾斜の場合を正、X軸負方向への傾斜の場合を負として取り扱えば)、作用したX軸方向の力Fxを符号を含めて検出することが可能である。
【0049】
もっとも、本発明では、後述するように、第1の力伝達体11および第2の力伝達体12の傾斜度は、第1のセンサ21および第2のセンサ22によって、支持体20に加えられる力として検出されることになる。このような検出を行うには、各力伝達体から支持体20に対して加えられる力を、個々の部分ごとに検知すればよい。たとえば、図2(b) において、第1の力伝達体11と支持体20との接続部分に生じる応力を考えてみると、第1の力伝達体11の底部の右側部分と左側部分とでは、生じる応力の向きが異なることがわかる。すなわち、図示の例では、第1の力伝達体11は右側に傾斜しているので、第1の力伝達体11の底部の右側部分については押圧力が生じ、支持体20の上面を下方に押圧する力が生じているのに対し、左側部分については引っ張り力が生じ、支持体20の上面を上方へ引っ張り上げる力が生じている。このように第1の力伝達体11の底部の左右の各部における応力の相違を検出することにより、第1の力伝達体11の傾斜度を得ることができる。その具体的な方法については、§2で詳述する。
【0050】
結局、本発明に係る力検出装置によって、X軸方向の力Fxを検出するには、第1のセンサ21には、第1の力伝達体11の支持体20に対するx軸方向への傾斜状態を検知する機能をもたせておき、第2のセンサ22には、第2の力伝達体12の支持体20に対するx軸方向への傾斜状態を検知する機能をもたせておけばよい。第1のセンサ21が、第1の力伝達体11のX軸方向に関する傾斜度θ1を検知する機能を有し、第2のセンサ22が、第2の力伝達体12のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有していれば、検出処理部30は、第1のセンサ21によって検知されたX軸方向に関する傾斜度θ1と、第2のセンサ22によって検知されたX軸方向に関する傾斜度θ2と、の和に基づいて、受力体10に作用した力のX軸方向成分Fxを検出する処理を行うことができる。
【0051】
一方、Y軸まわりのモーメントMyが作用した場合は、図2(c) に示すように、2本の力伝達体11,12から支持体20に対して、引っ張り力+fzと押圧力−fzとが伝達される。このようにして伝達される力は、力伝達体が傾斜した場合の力とは異なっている。すなわち、図2(b) に示すように力伝達体が傾斜した場合は、その底部に生じる応力は、右側部分と左側部分とで異なるものとなった。ところが、図2(c) に示すようにモーメントMyが作用した場合は、第1の力伝達体11全体により引っ張り力+fzが加えられ、第2の力伝達体12全体により押圧力−fzが加えられることになる。
【0052】
このように、X軸方向の力Fxの作用に対しては、図2(b) に示すように、第1の力伝達体11および第2の力伝達体12に関して、同じ方向への傾斜という同等の事象が生じるのに対して、Y軸まわりのモーメントMyの作用に対しては、図2(c) に示すように、第1の力伝達体11および第2の力伝達体12に関して、一方は引っ張り力+fzを与え、他方は押圧力−fzを与えるという相反する事象が生じることになる。したがって、作用したモーメントMyは、引っ張り力+fzと押圧力−fzとの差、すなわち、(+fz)−(−fz)=2fzとして求めることができる。
【0053】
要するに、本発明に係る力検出装置によって、Y軸まわりのモーメントMyを検出するには、第1のセンサ21には、第1の力伝達体11全体から支持体20に対して加えられる力を検知する機能をもたせ、第2のセンサ22には、第2の力伝達体12全体から支持体20に対して加えられる力を検知する機能をもたせておけばよい。第1のセンサ21が、第1の力伝達体11全体から支持体20に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、第2のセンサ22が、第2の力伝達体12全体から支持体20に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有していれば、検出処理部30は、第1のセンサ21によって検知されたZ軸方向に関する力と、第2のセンサ22によって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体10に作用した力のY軸まわりのモーメントMyを検出する処理を行うことができる。
【0054】
<<< §2. 本発明に用いる力センサ >>>
図1に示す力検出装置には、第1のセンサ21および第2のセンサ22が設けられている。これらのセンサは、それぞれ第1の力伝達体11および第2の力伝達体12から支持体20に対して加えられる力を検出する力センサであるが、図2で説明した原理に基づいて、力FxおよびモーメントMyを検出するためには、各力伝達体11,12の傾斜により生じる力と、力伝達体11,12全体によって与えられる引っ張り力/押圧力と、をそれぞれ独立して検出する機能が必要になる。
【0055】
本願発明者は、このような機能をもったセンサとしては、静電容量素子式の多軸力センサが最も適していると考えている。図3は、このような静電容量素子式の多軸力センサの一例を示す側断面図である。この多軸力センサ自身は、既に公知のセンサであり、種々の分野で実用されているものであるが、ここでは便宜上、この多軸力センサの基本構造および動作を簡単に説明しておく。
【0056】
図3の側断面図に示すとおり、この多軸力センサは、板状の支持体40と、その上に配置された椀状接続部材50と、力伝達体60と、支持体40の上面に配置された固定電極E1〜E5と、によって構成されている。図4の上面図に示すとおり、椀状接続部材50は、円形の平底状の椀を伏せた形状を有している。ここでは、説明の便宜上、支持体40の上面中心部に原点Oをとり、図示の方向にx,y,z軸をそれぞれ定義したxyz三次元座標系を定義する。椀状接続部材50は、図3の側断面図に示されているとおり、椀の平底部分に相当する円板状のダイアフラム51と、その周囲を支持する円筒状の側壁部52と、この側壁部52を支持体40の上面に固定するための固定部53と、の各部から構成されており、ダイアフラム51の上面中央部には、円柱状の力伝達体60が接続されている。この円柱状の力伝達体60の軸芯の延長線と支持体40の上面との交点位置に原点Oが定義されていることになる。
【0057】
ここで、この例の場合、支持体40および力伝達体60は、十分な剛性をもっているが、椀状接続部材50は、可撓性(別言すれば、弾性変形を生じる性質)を有している。この例では、椀状接続部材50は、金属の薄板によって構成されており、支持体40および力伝達体60は絶縁体材料によって構成されている。
【0058】
図5の上面図に示されているとおり、板状の支持体40の上面には、5枚の固定電極E1〜E5が形成されている。ここで、固定電極E1はx軸の正の部分に配置され、固定電極E2はx軸の負の部分に配置され、固定電極E3はy軸の正の部分に配置され、固定電極E4はy軸の負の部分に配置されており、いずれも各座標軸に関して線対称となる扇形をした同一形状、同一サイズの電極になっている。一方、固定電極E5は原点Oの位置に配置された円形の電極である。図5に破線で示すのは、この支持体40の上に固定される椀状接続部材50の各部の位置である。図示のとおり、ダイアフラム51は、各固定電極E1〜E5のすべてに対向するように、支持体40の上方に配置されることになる。前述したとおり、ダイアフラム51を金属板などの導電性材料で構成しておけば、ダイアフラム51は、可撓性および導電性を有することになり、それ自身が1枚の共通変位電極として機能し、対向する各固定電極E1〜E5との間で容量素子を形成することになる。ここでは、各固定電極E1〜E5と、共通変位電極として機能するダイアフラム51とによって構成される5組の容量素子を、それぞれ容量素子C1〜C5と呼ぶことにする。
【0059】
続いて、力伝達体60に種々の方向成分をもった力が作用した場合に、椀状接続部材50がどのように変形し、各容量素子C1〜C5の静電容量値にどのような変化が生じるかを考えてみる。
【0060】
まず、図6に示すように、力伝達体60の上部に、x軸正方向への力+fxが加えられた場合を考える。この場合、力伝達体60を右側へと傾斜させる力が働くことになり、可撓性をもった椀状接続部材50は、図のように変形し、ダイアフラム51は、右側部分が下方に、左側部分が上方に、それぞれ移動するように傾斜する。その結果、容量素子C1の両電極(固定電極E1とダイアフラム51)の距離は狭まり、静電容量値は増加するが、容量素子C2の両電極(固定電極E2とダイアフラム51)の距離は広まり、静電容量値は減少する。このとき、他の3組の容量素子C3〜C5については、右半分については電極間距離が狭まるが、左半分については電極間距離が広まるため、トータルでの静電容量値は変化しない。
【0061】
なお、このような変形は、力伝達体60の下部に、x軸正方向への力+fx′が加えられた場合も同様である。もっとも、てこの原理により、+fxの大きさと+fx′の大きさとが等しい場合であっても、前者の方がより大きな変形を生じさせることになる。
【0062】
一方、図7に示すように、力伝達体60の上部に、x軸負方向への力−fxが加えられた場合を考える。この場合、力伝達体60を左側へと傾斜させる力が働くことになり、可撓性をもった椀状接続部材50は、図のように変形し、ダイアフラム51は、左側部分が下方に、右側部分が上方に、それぞれ移動するように傾斜する。その結果、容量素子C1の静電容量値は減少し、容量素子C2の静電容量値は増加する。
【0063】
結局、力伝達体60に対して作用したx軸方向の力fxは、第1の容量素子C1の静電容量値と第2の容量素子C2の静電容量値との差として求めることができる。求めた差の大きさは作用した力の大きさを示し、求めた差の符号は作用した力の方向を示すものになる。全く同様の原理により、力伝達体60に対して作用したy軸方向の力fyは、第3の容量素子C3の静電容量値と第4の容量素子C4の静電容量値との差として求めることができる。
【0064】
ところで、こうして求めた力fxは、柱状の力伝達体60のx軸方向に関する傾斜度を示すものであり、力fyは、柱状の力伝達体60のy軸方向に関する傾斜度を示すものに他ならない。結局、力伝達体60のx軸方向に関する傾斜度は、第1の容量素子C1の静電容量値と第2の容量素子C2の静電容量値との差として求めることができ、力伝達体60のy軸方向に関する傾斜度は、第3の容量素子C3の静電容量値と第4の容量素子C4の静電容量値との差として求めることができる。別言すれば、力伝達体60の下端の第1の部分から加えられる力と、力伝達体の下端の第2の部分から加えられる力と、の差に基づいて、力伝達体60の支持体40に対する傾斜度を検知することができる。
【0065】
続いて、図8に示すように、力伝達体60に対して、z軸負方向への力−fzが加えられた場合を考える。この場合、力伝達体60全体に対して、図の下方への力が加わることになるので、力伝達体60は傾斜することなしに、力伝達体60全体により、椀状接続部材50に対して下方への押圧力を作用させることになり、可撓性をもった椀状接続部材50は、図のように変形し、5組の容量素子C1〜C5のすべての電極間隔が狭まり、静電容量値が増加する。逆に、力伝達体60を上方へと引き上げる力+fzが加えられた場合は、力伝達体60全体により、椀状接続部材50に対して上方への引っ張り力が働くことになり、5組の容量素子C1〜C5のすべての電極間隔が広まり、静電容量値が減少する。
【0066】
結局、力伝達体60に対してz軸方向の力fzのみが作用している環境下では、第1〜第5の容量素子C1〜C5のいずれかの静電容量値を検出すれば、作用した力fzを求めることができる。ただし、他の軸方向成分の力fx,fyが混在する環境下では、たとえば、容量素子C1の静電容量値を単独で求めたり、容量素子C3の静電容量値を単独で求めたりしても、これらは必ずしもz軸方向の力fzを示す値にはならない。どのような環境下においても、z軸方向の力fzを検出するためには、容量素子C5の静電容量値を利用すればよい。上述したように、x軸方向の力fxやy軸方向の力fyが作用した場合は、容量素子C5の静電容量値には変化は生じないので、容量素子C5の静電容量値を利用すれば、z軸方向の力fzのみを独立して検出することが可能になる。
【0067】
もっとも、z軸方向の力fzのみを独立して検出するためには、別な方法をとることも可能である。たとえば、容量素子C1の静電容量値と容量素子C2の静電容量値との和を求め、これをz軸方向の力fzの検出値として利用することも可能である。x軸方向の力fxの作用に対しては、容量素子C1の静電容量値の増減と容量素子C2の静電容量値の増減は相補的な関係にあるため、両者の和をとることにより、x軸方向の力fxの成分を相殺することができ、z軸方向の力fzの検出値のみを取り出すことができる。同様に、容量素子C3の静電容量値と容量素子C4の静電容量値との和を求め、これをz軸方向の力fzの検出値として利用することも可能である。更に、4組の容量素子C1〜C4の静電容量値の和や、5組の容量素子C1〜C5の静電容量値の和を求め、これをz軸方向の力fzの検出値として利用することも可能である。したがって、固定電極E5(容量素子C5)は、必ずしも設ける必要はない。
【0068】
以上述べたとおり、図3に示す多軸力センサを用いれば、力伝達体60のx軸方向に関する傾斜度(力fx)と、力伝達体60のy軸方向に関する傾斜度(力fy)と、力伝達体60全体から支持体40に対して加えられる力(力fz)と、を検出することが可能である。これは、この図3に示す多軸力センサが、図1に示す力検出装置における第1のセンサ21および第2のセンサ22として利用できるセンサであることを意味している。もちろん、本発明に係る力検出装置に用いるセンサは、この図3に示すタイプのセンサに限定されるわけではないが、この図3に示すタイプのセンサは、構造が単純で量産に適しているため、本発明に係る力検出装置に利用するセンサとしては最適である。
【0069】
<<< §3. 本発明の第1の実施形態 >>>
続いて、本発明の第1の実施形態に係る力検出装置の主たる構造部分を、図9〜図12を用いて説明し、更に、この装置の動作原理を、図13〜図15を用いて説明する。
【0070】
図9は、この第1の実施形態に係る力検出装置の主たる構造部分を、XZ平面に沿って切断した状態を示す側断面図であり、図10はその上面図である。図9に示されているとおり、この力検出装置の基本的な構成要素は、受力体100、中間体200、支持体300であり、いずれも上面が正方形状をした板状の部材を基本形態としている。
【0071】
受力体100は、図10に示すとおり、基本的には、上面が正方形状をした板状部材であるが、下面からは、2本の円柱突起部110,120が下方へと伸びている。図11は、この受力体100をXY平面で切断した状態を示す横断面図である。図示のとおり、円柱突起部110,120の付け根部分の周囲には、円環状の溝部G11,G12が形成されており、この溝部G11,G12の形成により、板状の受力体100には、図9および図10に示すように、可撓性をもった肉薄部115,125が形成されている。結局、円柱突起部110,120は、肉薄部115,125を介して、板状の受力体100に接続されていることになる。
【0072】
一方、支持体300は、図12に示すように、上面が正方形状をした完全な板状部材であり、その上面には、固定電極E11〜E15およびE21〜E25が配置されている。この支持体300の上面に接合された中間体200は、基本的には、上面が正方形状をした板状部材であるが、図9に示すように、上面からは、2本の円柱突起部210,220が上方へと伸びている。この円柱突起部210,220の付け根部分の周囲には、円環状の溝部G21,G22が形成されており、更に、この中間体200の下面には、円柱状の溝部G31,G32が形成されている。中間体200の上面に設けられた溝部G21,G22と、下面に設けられた溝部G31,G32とは、いずれも円柱突起部210,220の中心軸の位置を中心とした同サイズの円形の輪郭を有している。図示のとおり、溝部G21とG31との間には、ダイアフラム215が境界壁として存在し、溝部G22とG32との間には、ダイアフラム225が境界壁として存在する。
【0073】
受力体100側から下方に伸びた2本の円柱突起部110,120の下面は、中間体200側から上方に伸びた2本の円柱突起部210,220の上面に接合されている。ここでは、円柱突起部110と円柱突起部210とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第1の力伝達体T1と呼び、円柱突起部120と円柱突起部220とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第2の力伝達体T2と呼ぶことにする(ここでは、説明の便宜上、X軸正方向に配置された力伝達体を第1、X軸負方向に配置された力伝達体を第2とする)。結局、第1の力伝達体T1の上端は、可撓性をもった肉薄部115を接続部材として受力体100に接続されており、第2の力伝達体T2の上端は、可撓性をもった肉薄部125を接続部材として受力体100に接続されていることになる。
【0074】
また、第1の力伝達体T1の下面は、接続部材として機能するダイアフラム215の中央に接合されており、ダイアフラム215の周囲は、中間体200を介して支持体300に接続されており、第2の力伝達体T2の下面は、接続部材として機能するダイアフラム225の中央に接合されており、ダイアフラム225の周囲は、中間体200を介して支持体300に接続されている。
【0075】
図示の実施形態では、受力体100は絶縁性基板(たとえば、セラミック基板)、中間体200は導電性基板(たとえば、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの金属基板)、支持体300は絶縁性基板(たとえば、セラミック基板)によって構成されている。もちろん、各部の材質はこれらに限定されるものではなく、たとえば、受力体100を、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの金属基板で構成してもかまわない。肉薄部115,125やダイアフラム215,225は、基板の他の部分に比べて肉厚を薄くすることにより可撓性をもつように構成された部分である。
【0076】
ダイアフラム215,225は、導電性材料から構成されているため、可撓性を有するとともに導電性を有しており、それ自身が共通変位電極としての機能を果たす。これは、図3に示す多軸力センサの構成と全く同様である。すなわち、図12の右側に示されている固定電極E11〜E15と、図12の左側に示されている固定電極E21〜E25は、いずれも図5に示されている固定電極E1〜E5と等価な構成要素であり、図9に示すダイアフラム215,225は、いずれも図3に示されているダイアフラム51と等価な構成要素である。したがって、図9に示す溝G31の周辺および溝G32の周辺には、それぞれ図3に示す多軸力センサと同等の機能をもったセンサS1,S2が構成されていることになる。ここで、センサS1は、第1の力伝達体T1のX軸方向に関する傾斜度と、Y軸方向に関する傾斜度と、第1の力伝達体T1全体から支持体300に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有しており、センサS2は、第2の力伝達体T2のX軸方向に関する傾斜度と、Y軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体T2全体から支持体300に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有している。
【0077】
こうしてみると、結局、図9に示す力検出装置は、図1に示す力検出装置とほぼ同等の構成要素を備えていることがわかる。すなわち、板状の受力体100は受力体10に対応し、第1の力伝達体T1は第1の力伝達体11に対応し、第2の力伝達体T2は第2の力伝達体12に対応し、板状の支持体300は支持体20に対応し、センサS1は第1のセンサ21に対応し、センサS2は第2のセンサ22に対応する。したがって、この図9に示す構造体に、更に、検出処理部30を付加すれば、図1に示した力検出装置を実現することができる。
【0078】
なお、図1に示す力検出装置を用いれば、受力体10に作用したX軸方向の力Fx(図2(b) 参照)と、受力体10に作用したY軸まわりのモーメントMy(図2(c) 参照)とを検出することができることを述べたが、実際には、更に、Z軸方向の力Fz、X軸まわりのモーメントMx、およびZ軸まわりのモーメントMzを検出することが可能であり、結局、図1の上方に示す6つの力成分のうち、Fx,Fz,Mx,My,Mzの5成分を独立して検出することが可能である。以下、その理由を、図9に示す力検出装置の動作とともに説明する。
【0079】
いま、図12に示す10枚の固定電極E11〜E15,E21〜E25と、これに対向する共通変位電極(ダイアフラム215,225)と、によって構成される10組の容量素子を、それぞれC11〜C15,C21〜C25と呼ぶことにする。図12に括弧で示したC11〜C25は、各固定電極によって構成される個々の容量素子を示している。また、図9に示す受力体100内の所定位置に原点Oをとり、図示のとおり、XYZ三次元座標系を定義する。そして、この受力体100に対して、X軸正方向の力+Fx,同負方向の力−Fx,Z軸正方向の力+Fz,同負方向の力−Fz,X軸まわりの正方向のモーメント+Mx,同負方向のモーメント−Mx,Y軸まわりの正方向のモーメント+My,同負方向のモーメント−My,Z軸まわりの正方向のモーメント+Mz,同負方向のモーメント−Mzがそれぞれ作用した場合に、10組の各容量素子C11〜C25の静電容量値の変化を考えてみる。
【0080】
図13は、このときの各容量素子C11〜C25の静電容量値の変化の態様を示すテーブルであり、「0」は変化なし、「+」は増加、「−」は減少を示している。各容量素子の静電容量値が、このテーブルのように変化する理由は、図6〜図8に示す多軸力センサの変形態様を見れば理解できよう。たとえば、受力体100に対して、X軸正方向の力+Fxが作用すると、第1の力伝達体T1と第2の力伝達体T2は、いずれも図9の右方向(X軸正方向)に傾斜することになるので、容量素子C11,C21の電極間隔は狭まり、静電容量値が増加するのに対して、容量素子C12,C22の電極間隔は広がり、静電容量値が減少する。他の容量素子については、電極間隔は一部は広がり、一部は狭まるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図13のテーブルの第1行目(+Fxの行)は、各容量素子C11〜C25についてのこのような静電容量値の変化を示している。
【0081】
逆に、X軸負方向の力−Fxが作用すると、第1の力伝達体T1と第2の力伝達体T2は、いずれも図9の左方向(X軸負方向)に傾斜することになるので、静電容量値の増減変化の関係が逆転し、図13のテーブルの第2行目(−Fxの行)に示すような変化態様が得られる。
【0082】
また、受力体100に対して、Z軸正方向の力+Fzが作用すると、第1の力伝達体T1と第2の力伝達体T2は、いずれも支持体300の上面に対して引っ張り力を作用させることになるので、全容量素子C11〜C25の電極間隔は広がり、静電容量値は減少する。図13のテーブルの第3行目(+Fzの行)は、このような変化を示している。逆に、受力体100に対して、Z軸負方向の力−Fzが作用すると、第1の力伝達体T1と第2の力伝達体T2は、いずれも支持体300の上面に対して押圧力を作用させることになるので、全容量素子C11〜C25の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。図13のテーブルの第4行目(−Fzの行)は、このような変化を示している。
【0083】
一方、受力体100に対して、X軸まわりの正方向のモーメント+Mxが作用すると、図9において、第1の力伝達体T1と第2の力伝達体T2には、紙面を境界として、紙面より奥の部分については上方への力が加わり、紙面より手前の部分については下方への力が加わることになる。すなわち、図10に示す上面図において、点P3は上方(Z軸正方向)に移動し、点P4は下方(Z軸負方向)に移動する。その結果、図12に示す容量素子C13,C23の電極間隔は広まり、静電容量値は減少するが、容量素子C14,C24の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加する。他の容量素子については、電極間隔は一部は広がり、一部は狭まるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図13のテーブルの第5行目(+Mxの行)は、各容量素子C11〜C25についてのこのような静電容量値の変化を示している。X軸まわりの負方向のモーメント−Mxが作用すると、増減関係が逆転し、図13のテーブルの第6行目(−Mxの行)に示すような結果が得られる。
【0084】
そして、受力体100に対して、Y軸まわりの正方向のモーメント+Myが作用すると、図9において、第1の力伝達体T1に対しては、下方への力が加わることになるが、第2の力伝達体T2に対しては、上方への力が加わることになる。すなわち、図10に示す上面図において、点P1は下方(Z軸負方向)に移動し、点P2は上方(Z軸正方向)に移動する。その結果、センサS1を構成する5組の容量素子C11〜C15の電極間隔はいずれも狭まり、静電容量値は増加するが、センサS2を構成する5組の容量素子C21〜C25の電極間隔はいずれも広まり、静電容量値は減少する。図13のテーブルの第7行目(+Myの行)は、各容量素子C11〜C25についてのこのような静電容量値の変化を示している。Y軸まわりの負方向のモーメント−Myが作用すると、増減関係が逆転し、図13のテーブルの第8行目(−Myの行)に示すような結果が得られる。
【0085】
また、受力体100に対して、Z軸まわりの正方向のモーメント+Mzが作用すると、図9において、第1の力伝達体T1に対しては、Y軸正方向へ傾斜させる力が加わることになるが、第2の力伝達体T2には、Y軸負方向へ傾斜させる力が加わることになる。その結果、図12に示す各センサを構成する容量素子のうち、C13およびC24の電極間隔は狭まり、静電容量値は増加するが、C14およびC23の電極間隔は広まり、静電容量値は減少する。他の容量素子については、電極間隔は一部は広がり、一部は狭まるため、トータルでは静電容量値の変化は生じない。図13のテーブルの第9行目(+Mzの行)は、各容量素子についてのこのような静電容量値の変化を示している。Z軸まわりの負方向のモーメント−Mzが作用すると、増減関係が逆転し、図13のテーブルの第10行目(−Mzの行)に示すような結果が得られる。
【0086】
この図13のテーブルに示すような結果が得られることを踏まえると、検出処理部30として、10組の容量素子C11〜C25の静電容量値(ここでは、静電容量の値自身も、同じ符号C11〜C25で示すことにする)を測定する回路と、測定した各静電容量値を用いて、図14に示す式に基づく演算を行う処理装置を用意しておけば、Fx,Fz,Mx,My,Mzの5成分を得ることができることが理解できよう。
【0087】
たとえば、図14に示すFx=(C11−C12)+(C21−C22)なる式は、図13のテーブルの第1〜2行目(+Fxおよび−Fxの行)の結果を踏まえたものであり、第1のセンサ21によって検知された第1の力伝達体T1のX軸方向に関する傾斜度と、第2のセンサ22によって検知された第2の力伝達体T2のX軸方向に関する傾斜度と、の和に基づいて、受力体100に作用した力のX軸方向成分Fxが検出できることを意味している。これは、図2(b) に示す検出原理に基づくものである。
【0088】
また、図14に示すFz=−(C15+C25)なる式は、図13のテーブルの第3〜4行目(+Fzおよび−Fzの行)の結果を踏まえたものであり、第1のセンサによって検知された第1の力伝達体T1のZ軸方向に関する力と、第2のセンサによって検知された第2の力伝達体T2のZ軸方向に関する力と、の和に基づいて、受力体100に作用した力のZ軸方向成分Fzが検出できることを意味している。なお、先頭にマイナス符号がついているのは、装置の上方向をZ軸正方向にとったためである。
【0089】
更に、図14に示すMx=−((C13−C14)+(C23−C24))なる式は、図13のテーブルの第5〜6行目(+Mxおよび−Mxの行)の結果を踏まえたものであり、第1のセンサ21によって検知された第1の力伝達体T1のY軸方向に関する傾斜度と、第2のセンサ22によって検知された第2の力伝達体T2のY軸方向に関する傾斜度と、の和に基づいて、受力体100に作用した力のX軸まわりのモーメントMxが検出できることを意味している。ここでも先頭にマイナス符号がついているのは、モーメントの向きのとり方によるものである。
【0090】
また、図14に示すMy=(C11+C12+C13+C14+C15)−(C21+C22+C23+C24+C25)なる式は、図13のテーブルの第7〜8行目(+Myおよび−Myの行)の結果を踏まえたものであり、第1のセンサによって検知された第1の力伝達体T1のZ軸方向に関する力と、第2のセンサによって検知された第2の力伝達体T2のZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体100に作用した力のY軸まわりのモーメントMyが検出できることを意味している。これは、図2(c) に示す検出原理に基づくものである。
【0091】
最後に、図14に示すMz=((C13−C14)−(C23−C24))なる式は、図13のテーブルの第9〜10行目(+Mzおよび−Mzの行)の結果を踏まえたものであり、第1のセンサ21によって検知された第1の力伝達体T1のY軸方向に関する傾斜度と、第2のセンサ22によって検知された第2の力伝達体T2のY軸方向に関する傾斜度と、の差に基づいて、受力体100に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzが検出できることを意味している。
【0092】
なお、図14の第2の式(Fzの式)では、第1のセンサによって検知された第1の力伝達体T1のZ軸方向に関する力として、C15なる1つの容量素子の静電容量値を用いているのに対し、図14の第4の式(Myの式)では、同じく、第1のセンサによって検知された第1の力伝達体T1のZ軸方向に関する力として、(C11+C12+C13+C14+C15)なる5つの容量素子の静電容量値の総和を用いている。これは、§2で述べたとおり、図3に示すタイプの多軸力センサを用いて、Z軸方向に関する力を求める方法に複数通りのバリエーションがあることを示したものである。したがって、たとえば、図14の第2の式は、Fz=−((C11+C12+C13+C14+C15)+(C21+C22+C23+C24+C25))としてもかまわない。同様に、図14の第4の式は、My=(C15−C25)としてもかまわない。もちろん、Fz=−((C11+C12)+(C21+C22))、Fz=−((C11+C12+C13+C14)+(C21+C22+C23+C24))、My=(C13+C14+C15)−(C23+C24+C25)、その他何通りかのバリエーションを用いることも可能である。
【0093】
なお、この図9に示す第1の実施形態では、受力体100に作用したY軸方向の力Fyを検出することはできない。これは、第1の力伝達体T1と第2の力伝達体T2とが、XZ平面上に配置されているためである(もっとも、近似的に、X軸まわりのモーメントMxをY軸方向の力Fyに代用することは可能である)。成分Fyを含めた全6成分を検出するためには、後述する第2および第3の実施形態で説明するように、4本の柱状力伝達体を利用する必要がある。
【0094】
ここで、留意しておくべき点は、本発明に係る技術思想は、「図3に示すような従来から公知の多軸力センサを、単に2組用いることにより、検出精度を高めるようにする」という技術とは全く次元が異なる点である。一般に、何らかの測定器を用いた測定を行う場合に、「同じ測定器を複数台設置し、それぞれの測定結果の平均をとることにより、測定精度を向上させる」という手法は常套手段であり、古くから様々な分野において利用されてきている。
【0095】
しかしながら、図2に示す本発明の基本概念は、「2台のセンサを用いて検出精度を向上させる」という技術思想ではなく、「所定の座標軸方向の力と、所定の座標軸まわりのモーメントを正確に区別して検出する」という技術思想にある。ここでは、この点について、もう少し詳しい補足説明を行っておく。
【0096】
まず、図6に示すように、従来から公知の多軸力センサを用いて、x軸正方向の力+fxを検出することを考えよう。このような多軸力センサを開示した一般的な公知文献では、この図6に示す原理により、「容量素子C1(固定電極E1とダイアフラム51)の静電容量値C1と、容量素子C2(固定電極E2とダイアフラム51)の静電容量値C2と、の差(C1−C2)を求めることにより、力伝達体60に作用した力のX軸方向成分fxを求めることができる」旨の説明がなされている。しかしながら、この説明は、厳密な意味では正しくない。なぜなら、静電容量値の差(C1−C2)は、実は、作用した力fxそれ自身ではなく、作用した力fxに起因して生じたy軸まわりのモーメントMyになっているからである。
【0097】
これは、図6に示すように、力伝達体60の異なる位置に、2通りの力+fxと+fx′とを加えた場合に、どのような出力値が得られるかを考えれば、容易に理解できよう。図示の例において、+fx=+fx′であったとしても、静電容量値の差(C1−C2)として得られる出力値は、+fxを加えた場合の方が、+fx′を加えた場合に比べて大きくなる。これは、+fxを加えた場合の方が、この検出系に対して大きなモーメントを与えることができるためである。要するに、この図6に示すセンサでは、x軸方向の力fxやy軸方向の力fyを直接検出することはできず、それぞれy軸まわりのモーメントMyやx軸まわりのモーメントMxとして検出するしかないのである。
【0098】
もっとも、力fxを作用させる力伝達体60上の位置が、常に定位置となるように決めておけば、y軸まわりのモーメントMyをx軸方向の力fxとして取り扱っても支障は生じない。このため、力とモーメントとを区別して取り扱う必要のない検出対象については、この図6に示す力センサを、x軸方向の力fxやy軸方向の力fyの検出に利用しても、実用上、大きな支障が生じないことになる。
【0099】
しかしながら、ロボットや産業機械の動作制御などへの用途では、力とモーメントとをはっきり区別して検出することが可能な力検出装置の需要も決して少なくない。本発明に係る力検出装置は、正に、このような用途に適した装置ということができる。たとえば、図9に示す力検出装置を、ロボットの腕と手首との関節部分として利用するのであれば、支持体300を腕側に取り付け、受力体100を手首側に取り付ければよい。そうすれば、腕に対して手首側に加えられた力およびモーメントを検出することが可能である。
【0100】
ここでは、図9に示す本発明に係る力検出装置を用いて、図15に示すような検出形態で力の検出を行う場合を考えてみよう。図15に示す力検出装置は、図9に示す力検出装置の受力体100の上面に、更に、円柱状突起150を接続したものである。ここで、図示のとおり、この円柱状突起150の所定位置に、2通りの力+Fxと+Fx′とを加えた場合を考えてみる。この場合、力+Fxおよび+Fx′は、いずれもX軸正方向を向いた力であるが、円柱状突起150の異なる位置に作用しているため、受力体100に対して異なる大きさのモーメント(Y軸まわりの正方向のモーメント+My)を生じさせることになる。
【0101】
いま、円柱状突起150の図の位置に力+Fxを作用させたとすると、受力体100には、X軸方向の力+FxとY軸まわりのモーメント+Myとの双方が作用することになるが、本発明に係る力検出装置では、図14の式に示されているとおり、力FxとモーメントMyとは、別個独立して検出することができる。したがって、力Fxを円柱状突起150のどの位置に作用させようとも、この力検出装置で検出される力Fxの値は常に等しくなる。したがって、図示の例において、+Fx=+Fx′であれば、この力検出装置によるX軸方向の力の検出値は同じになる。もちろん、このときのY軸まわりのモーメントMyの検出値は異なる。なお、このように力Fxに起因して生じるモーメントの座標軸の位置は、この装置各部の構造や寸法に基づいて定まる。
【0102】
このように、図6に示す従来の力センサが、X軸方向の力をY軸まわりのモーメントとしてしか検出できなかったのに対し、図9に示す本発明に係る力検出装置では、X軸方向の力FxとY軸まわりのモーメントMyとを明確に区別して検出することができる。これが本発明の重要な特徴である。
【0103】
<<< §4. 本発明の第2の実施形態 >>>
次に、本発明の第2の実施形態に係る力検出装置を説明する。図16は、この第2の実施形態に係る力検出装置の主たる構造部分の上面図であり、図17は、この図16に示す力検出装置を切断線17−17に沿って切断した断面を示す側断面図である。なお、この図16に示す力検出装置を切断線9−9に沿って切断した断面は、図9と同様になる。上述した第1の実施形態に係る力検出装置との相違点は、柱状の力伝達体を4本設けた点にあり、その他の構造や材質は、第1の実施形態に係る力検出装置と全く同様である。すなわち、装置全体は、いずれも上面が正方形状の板状の受力体100、中間体200、支持体300なる構造体によって構成されている。
【0104】
図16の上面図に示されているとおり、受力体100は、基本的には、上面が正方形状をした板状部材であるが、下面からは、同一サイズの4本の円柱突起部110,120,130,140が下方へと伸びている。ここで、各円柱突起部110,120,130,140は、図示のように、受力体100の中心位置に原点をもつXY二次元座標系を定義した場合、それぞれ第1、第2、第3、第4象限に配置されている。より詳細に説明すれば、「原点を中心とする位置に配置され、受力体100の輪郭より小さく、縦横がX軸およびY軸に平行な正方形」の4頂点の位置に、それぞれ中心軸の位置がくるように、各円柱突起部110,120,130,140が配置されている。また、これら円柱突起部110,120,130,140の付け根部分の周囲には、円環状の溝部G11,G12,G13,G14が形成されており、この溝部G11,G12,G13,G14の形成により、板状の受力体100には、可撓性をもった肉薄部115,125,135,145が形成されている。結局、円柱突起部110,120,130,140は、肉薄部115,125,135,145を介して、板状の受力体100に接続されていることになる。
【0105】
一方、支持体300は、図18に示すように、上面が正方形状をした完全な板状部材であり、その上面には、固定電極E11〜E15,E21〜E25,E31〜E35,E41〜E45が配置されている。この支持体300の上面に接合された中間体200は、基本的には、上面が正方形状をした板状部材であるが、上面からは、4本の円柱突起部210,220,230,240が上方へと伸びている(図9および図17参照)。この4本の円柱突起部210,220,230,240の付け根部分の周囲には、円環状の溝部G21,G22,G23,G24が形成されており、更に、この中間体200の下面には、円柱状の溝部G31,G32,G33,G34が形成されている。中間体200の上面に設けられた溝部G21,G22,G23,G24と、下面に設けられた溝部G31,G32,G33,G34とは、いずれも円柱突起部210,220,230,240の中心軸の位置を中心とした同サイズの円形の輪郭を有している。図9に示すとおり、溝部G21とG31との間には、ダイアフラム215が境界壁として存在し、溝部G22とG32との間には、ダイアフラム225が境界壁として存在する。また、図17に示すとおり、溝部G23とG33との間には、ダイアフラム235が境界壁として存在し、溝部G24とG34との間には、ダイアフラム245が境界壁として存在する。
【0106】
受力体100側から下方に伸びた4本の円柱突起部110,120,130,140の下面は、中間体200側から上方に伸びた4本の円柱突起部210,220,230,240の上面に接合されている。ここでは、図9に示されているとおり、円柱突起部110と円柱突起部210とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第1の力伝達体T1と呼び、円柱突起部120と円柱突起部220とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第2の力伝達体T2と呼び、図17に示されているとおり、円柱突起部130と円柱突起部230とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第3の力伝達体T3と呼び、円柱突起部140と円柱突起部240とを接合することにより構成される円柱状の構造体を第4の力伝達体T4と呼ぶことにする。
【0107】
結局、第1〜第4の力伝達体T1〜T4は、XY二次元座標系において、それぞれ第1〜第4象限に配置されており、その上端は、可撓性をもった肉薄部115,125,135,145を接続部材として受力体100に接続されており、その下端は、接続部材として機能するダイアフラム215,225,235,245の中央に接合されており、これらダイアフラムの周囲は、中間体200を介して支持体300に接続されている。
【0108】
各ダイアフラム215,225,235,245は、導電性材料から構成されているため、可撓性を有するとともに導電性を有しており、それ自身が共通変位電極としての機能を果たす。したがって、図18において、第1象限に配置されている固定電極E11〜E15と共通変位電極として機能するダイアフラム215とによって、容量素子C11〜C15が構成され、第1のセンサS1として機能し、第2象限に配置されている固定電極E21〜E25と共通変位電極として機能するダイアフラム225とによって、容量素子C21〜C25が構成され、第2のセンサS2として機能し、第3象限に配置されている固定電極E31〜E35と共通変位電極として機能するダイアフラム235とによって、容量素子C31〜C35が構成され、第3のセンサS3として機能し、第4象限に配置されている固定電極E41〜E45と共通変位電極として機能するダイアフラム245とによって、容量素子C41〜C45が構成され、第4のセンサS4として機能する。
【0109】
このような力検出装置を用いれば、図1の上方に示す6つの力成分Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzのすべてを独立して検出することが可能である。
【0110】
図19は、このときの各容量素子C11〜C45の静電容量値の変化の態様を示すテーブルであり、「0」は変化なし、「+」は増加、「−」は減少を示している。なお、このテーブルでは、6つの力成分Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの値が正の場合のみが示されているが、負の場合は、増減の関係が逆転するだけである。各容量素子の静電容量値が、この図19のテーブルのように変化する理由は、§3で述べた第1の実施形態の場合とほぼ同じであるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0111】
ただ、若干の補足説明を行うと、図19のテーブルでは、図13のテーブルには掲載されていなかったFyの行が設けられている。Fyの行を設けることができるようになったのは、4本の力伝達体T1〜T4を用いるようにしたためである。すなわち、4本の力伝達体T1〜T4を用いれば、XZ平面に平行な同一平面上に配置された力伝達体の対が2組(T1,T2と、T3,T4)存在するとともに、YZ平面に平行な同一平面上に配置された力伝達体の対が2組(T1,T4と、T2,T3)存在することになり、図2(b) に示す原理に基づく力成分の検出が、X軸に関してだけでなく、Y軸に関しても行うことができるようになったためである。
【0112】
また、4本の力伝達体T1〜T4を用いることにより、Z軸まわりのモーメントMzも検出が可能になっている。たとえば、図18を参照しながら、受力体100にZ軸まわりの正方向のモーメント+Mz(図18の平面図上では、反時計まわりのモーメントになる)が加わった場合、4本の力伝達体T1〜T4がどの方向に傾斜するかを考えてみよう。
【0113】
まず、第1象限に配置された第1の力伝達体T1(図の固定電極E15の上に配置されている)は、この図18における左上方向に傾斜することになり、容量素子C12,C13の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C11,C14の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。また、第2象限に配置された第2の力伝達体T2(図の固定電極E25の上に配置されている)は、この図18における左下方向に傾斜することになり、容量素子C22,C24の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C21,C23の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。更に、第3象限に配置された第3の力伝達体T3(図の固定電極E35の上に配置されている)は、この図18における右下方向に傾斜することになり、容量素子C31,C34の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C32,C33の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。最後に、第4象限に配置された第4の力伝達体T4(図の固定電極E45の上に配置されている)は、この図18における右上方向に傾斜することになり、容量素子C41,C43の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C42,C44の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。なお、容量素子C15,C25,C35,C45の静電容量値については、トータルでは変化が生じない。
【0114】
結局、受力体100にZ軸まわりの正方向のモーメント+Mzが作用した場合は、図19の第6行目に示すような増減結果が得られることになる。もちろん、受力体100にZ軸まわりの負方向のモーメント−Mzが作用した場合は、これとは正負の関係が逆転した結果が得られることになる。
【0115】
この図19のテーブルに示すような結果が得られることを踏まえると、検出処理部30として、20組の容量素子C11〜C45の静電容量値(ここでは、静電容量の値自身も、同じ符号C11〜C45で示すことにする)を測定する回路と、測定した各静電容量値を用いて、図20に示す式に基づく演算を行う処理装置を用意しておけば、Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの6成分を得ることができることが理解できよう。
【0116】
たとえば、図20に示すFx=(C11−C12)+(C21−C22)+(C31−C32)+(C41−C42)なる式は、図19のテーブルの第1行目(+Fxの行)の結果を踏まえたものであり、第1〜第4のセンサによって検知された各力伝達体T1〜T4のX軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体100に作用した力のX軸方向成分Fxが検出できることを意味している。これは、図2(b) に示す検出原理に基づくものである。
【0117】
また、図20に示すFy=(C13−C14)+(C23−C24)+(C33−C34)+(C43−C44)なる式は、図19のテーブルの第2行目(+Fyの行)の結果を踏まえたものであり、第1〜第4のセンサによって検知された各力伝達体T1〜T4のY軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体100に作用した力のY軸方向成分Fyが検出できることを意味している。これは、図2(b) に示す検出原理に基づくものである。
【0118】
更に、図20に示すFz=−(C15+C25+C35+C45)なる式は、図19のテーブルの第3行目(+Fzの行)の結果を踏まえたものであり、第1〜第4のセンサによって検知された各力伝達体T1〜T4のZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体100に作用した力のZ軸方向成分Fzが検出できることを意味している。先頭のマイナス符号は、Z軸方向のとり方によるものである。
【0119】
一方、図20に示すMx=−(((C11+C12+C13+C14+C15)+(C21+C22+C23+C24+C25))−((C31+C32+C33+C34+C35)+(C41+C42+C43+C44+C45)))なる式は、図19のテーブルの第4行目(+Mxの行)の結果を踏まえたものであり、第1および第2のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和と、第3および第4のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和と、の差に基づいて、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメントMxが検出できることを意味している。これは、図16に示す上面図において、点P3が上方(Z軸正方向)に移動し、点P4が下方(Z軸負方向)に移動した状態での検出であり、図2(c) に示す検出原理に基づくものである。式の先頭のマイナス符号は、モーメントの向きのとり方によるものである。
【0120】
また、図20に示すMy=((C11+C12+C13+C14+C15)+(C41+C42+C43+C44+C45))−((C21+C22+C23+C24+C25)+(C31+C32+C33+C34+C35))なる式は、図19のテーブルの第5行目(+Myの行)の結果を踏まえたものであり、第1および第4のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和と、第2および第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和と、の差に基づいて、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメントMyが検出できることを意味している。これは、図16に示す上面図において、点P1が下方(Z軸負方向)に移動し、点P2が上方(Z軸正方向)に移動した状態での検出であり、図2(c) に示す検出原理に基づくものである。
【0121】
最後に、図20に示すMz=(((C31−C32)+(C41−C42))−((C11−C12)+(C21−C22)))+(((C13−C14)+(C43−C44))−((C23−C24)+(C33−C34)))なる式は、図19のテーブルの第6行目(+Mzの行)の結果を踏まえたものであり、第3および第4のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和と、第1および第2のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和と、の差を第1の差として求め、第1および第4のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度の和と、第2および第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度の和と、の差を第2の差として求め、第1の差と第2の差との和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzが検出できることを意味している。
【0122】
このMzの式の意味は、この式を、
Mz=(C12+C13)−(C11+C14)
+(C22+C24)−(C21+C23)
+(C31+C34)−(C32+C33)
+(C41+C43)−(C42+C44)
のような形に書きなおすと、より理解しやすくなる。すなわち、Z軸まわりの正方向のモーメント+Mzが作用した場合、前述したとおり、図18において、固定電極E15の上に配置されている第1の力伝達体T1は、図の左上方向に傾斜することになるが、上式の(C12+C13)−(C11+C14)は、第1の力伝達体T1のこのような傾斜を検出するための項である。同様に、固定電極E25の上に配置されている第2の力伝達体T2は、図の左下方向に傾斜することになるが、上式の(C22+C24)−(C21+C23)は、第2の力伝達体T2のこのような傾斜を検出するための項である。また、固定電極E35の上に配置されている第3の力伝達体T3は、図の右下方向に傾斜することになるが、上式の(C31+C34)−(C32+C33)は、第3の力伝達体T3のこのような傾斜を検出するための項である。更に、固定電極E45の上に配置されている第4の力伝達体T4は、図の右上方向に傾斜することになるが、上式の(C41+C43)−(C42+C44)は、第4の力伝達体T4のこのような傾斜を検出するための項である。上式は、このように、Z軸まわりのモーメントMzが作用した場合の4本の力伝達体T1〜T4の所定方向への傾斜度の検出値の和を示すものになる。
【0123】
なお、各力伝達体T1〜T4のZ軸方向に関する力を求める方法には、複数通りのバリエーションがあることは、§3で述べたとおりであり、図20に示す各式に、これらのバリエーションを適用することも可能である。たとえば、Mx=−((C15+C25)−(C35+C45))なる式や、My=((C15+C45)−(C25+C35))なる式を用いることもできる。
【0124】
<<< §5. 本発明の第3の実施形態 >>>
次に、本発明の第3の実施形態に係る力検出装置を説明する。この第3の実施形態に係る力検出装置は、上述した第2の実施形態に係る力検出装置と同様に、柱状の力伝達体を4本用い、4組のセンサS1〜S4を用いた検出を行う。ただ、この4本の柱状力伝達体の配置が若干異なっている。以下、この相違点についてのみ説明を行う。
【0125】
図21は、この第3の実施形態に係る力検出装置に用いられる支持体300の上面図である。前述した第2の実施形態に係る力検出装置に用いられる支持体300の上面図である図18と比較すると、両者の相違点が明確になる。すなわち、第2の実施形態では、図18に示すように、4組のセンサS1〜S4の構成要素となる固定電極E11〜E15,E21〜E25,E31〜E35,E41〜E45が、それぞれxy座標系における第1〜第4象限に配置されており、第1〜第4の力伝達体T1〜T4が、XY二次元座標系において、それぞれ第1〜第4象限に配置されていた。
【0126】
これに対して、図21に示す第3の実施形態に係る力検出装置では、4組のセンサS1〜S4の構成要素となる固定電極E11〜E15,E21〜E25,E31〜E35,E41〜E45は、それぞれx軸の正の部分、x軸の負の部分、y軸の正の部分、y軸の負の部分に配置されており、第1〜第4の力伝達体T1〜T4の長手方向が、XY二次元座標系において、それぞれX軸の正の部分、X軸の負の部分、Y軸の正の部分、Y軸の負の部分に交差するように配置されている。各固定電極E11〜E15,E21〜E25,E31〜E35,E41〜E45と、その上方に位置する導電性ダイアフラム(共通変位電極)によって、容量素子C11〜C15,C21〜C25,C31〜C35,C41〜C45が形成される点は、上述した第2の実施形態と同様である。ただ、力伝達体やセンサの配置が異なるため、検出処理部30による検出処理は若干異なる。
【0127】
図22は、この第3の実施形態に係る力検出装置における各容量素子C11〜C45の静電容量値の変化の態様を示すテーブルであり、やはり「0」は変化なし、「+」は増加、「−」は減少を示している。また、このテーブルにおいても、6つの力成分Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの値が正の場合のみが示されているが、負の場合は、増減の関係が逆転するだけである。この図22に示すテーブルと、図19に示すテーブルとを比べると、各軸方向の力成分Fx,Fy,Fzが作用した場合の各容量素子の静電容量値の変化の態様は全く同じである。したがって、各軸方向の力成分Fx,Fy,Fzに関する検出原理は、前述した第2の実施形態の場合と同じになる。
【0128】
ただ、各軸まわりのモーメントMx,My,Mzが作用した場合の各容量素子の静電容量値の変化の態様は若干異なっており、これらモーメントの検出原理は、前述した第2の実施形態の場合とは異なる。以下、この点について簡単に説明をしておく。
【0129】
まず、X軸まわりのモーメントMxが作用した場合は、Y軸の正の部分に配置された第3の力伝達体T3から支持体300に対して引っ張り力(+fz)が作用し、Y軸の負の部分に配置された第4の力伝達体T4から支持体300に対して押圧力(−fz)が作用する。このとき、X軸の正の部分に配置された第1の力伝達体T1およびX軸の負の部分に配置された第2の力伝達体T2から支持体300に対しては、有意な力の作用は生じない。実際には、部分的にZ軸方向に関する力の作用があるが、第3および第4の力伝達体から加わる力に比べるとわずかであるため、ここでは容量素子C11〜C15およびC21〜C25の静電容量値の変化は「0」と考えることにする。その結果、図22の第4行目(+Mxの行)に示すような結果が得られることになる。
【0130】
一方、Y軸まわりのモーメントMyが作用した場合は、X軸の正の部分に配置された第1の力伝達体T1から支持体300に対して押圧力(−fz)が作用し、X軸の負の部分に配置された第2の力伝達体T2から支持体300に対して引っ張り力(+fz)が作用する。このとき、Y軸の正の部分に配置された第3の力伝達体T3およびY軸の負の部分に配置された第4の力伝達体T4から支持体300に対しては、有意な力の作用は生じない。その結果、図22の第5行目(+Myの行)に示すような結果が得られることになる。
【0131】
次に、図21を参照しながら、受力体100にZ軸まわりの正方向のモーメント+Mz(図21の平面図上では、反時計まわりのモーメントになる)が加わった場合、4本の力伝達体T1〜T4がどの方向に傾斜するかを考えてみよう。
【0132】
まず、X軸の正の部分に配置された第1の力伝達体T1(図の固定電極E15の上に配置されている)は、この図21における上方向(y軸の正方向)に傾斜することになり、容量素子C13の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C14の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。また、X軸の負の部分に配置された第2の力伝達体T2(図の固定電極E25の上に配置されている)は、この図21における下方向(y軸の負方向)に傾斜することになり、容量素子C24の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C23の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。更に、Y軸の正の部分に配置された第3の力伝達体T3(図の固定電極E35の上に配置されている)は、この図21における左方向(x軸の負方向)に傾斜することになり、容量素子C32の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C31の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。最後に、Y軸の負の部分に配置された第4の力伝達体T4(図の固定電極E45の上に配置されている)は、この図21における右方向(x軸の正方向)に傾斜することになり、容量素子C41の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C42の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。なお、その他の容量素子の静電容量値については、トータルでは変化が生じない。
【0133】
結局、受力体100にZ軸まわりの正方向のモーメント+Mzが作用した場合は、図22の第6行目に示すような増減結果が得られることになる。もちろん、受力体100にZ軸まわりの負方向のモーメント−Mzが作用した場合は、これとは正負の関係が逆転した結果が得られることになる。
【0134】
この図22のテーブルに示すような結果が得られることを踏まえると、検出処理部30として、20組の容量素子C11〜C45の静電容量値(ここでは、静電容量の値自身も、同じ符号C11〜C45で示すことにする)を測定する回路と、測定した各静電容量値を用いて、図23に示す式に基づく演算を行う処理装置を用意しておけば、Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの6成分を得ることができる。ここで、図23に示すFx,Fy,Fzについての式は、図20に示す式と全く同様である。
【0135】
図23に示すMx=(C41+C42+C43+C44+C45)−(C31+C32+C33+C34+C35)なる式は、図22のテーブルの第4行目(+Mxの行)の結果を踏まえたものであり、第4のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメントMxが検出できることを意味している。
【0136】
また、図23に示すMy=(C11+C12+C13+C14+C15)−(C21+C22+C23+C24+C25)なる式は、図22のテーブルの第5行目(+Myの行)の結果を踏まえたものであり、第1のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第2のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメントMyが検出できることを意味している。
【0137】
最後に、図23に示すMz=((C13−C14)+(C41−C42))−((C23−C24)+(C31−C32))なる式は、図22のテーブルの第6行目(+Mzの行)の結果を踏まえたものであり、第1のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度と第4のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度との和と、第2のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度と第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度との和と、の差に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzが検出できることを意味している。
【0138】
なお、各力伝達体T1〜T4のZ軸方向に関する力を求める方法には、複数通りのバリエーションがあることは、§3で述べたとおりであり、図23に示す各式に、これらのバリエーションを適用することも可能である。
【0139】
<<< §6. 制限部材を付加した変形例 >>>
図24は、図9に示す第1の実施形態に係る力検出装置に、制限部材を付加した変形例の構造を示す側断面図である。§3で述べたとおり、この図9に示す力検出装置内には、第1のセンサS1と第2のセンサS2とが組み込まれており、これらのセンサは肉薄のダイヤフラム215,225を有している。このダイヤフラム215,225は、ある程度の可撓性を有しており、力伝達体T1,T2から許容範囲内の力が作用した場合には、所定の態様で変形することは既に述べたとおりである。しかしながら、ダイヤフラム215,225に過度の力が作用すると、亀裂が発生するなど、機械的な損傷を被る可能性がある。
【0140】
この図24に示す変形例は、このように、ダイヤフラム215,225に過度の力が伝達されることにより、機械的な損傷が生じるのを防ぐために、受力体100の支持体300に対する変位を、所定の範囲内に制限するための制限部材を設けた例である。この例では、図示のとおり、中間体200の外周部分から、制御壁250が立ち上がっており、更に上部には、制御用庇部260が形成されている。また、2本の力伝達体T1,T2の全長もなるべく短く設定されている。その結果、受力体100の変位は、所定の範囲内に制限されている。
【0141】
たとえば、受力体100の下方(−Z軸方向)への変位は、図示の寸法d1以内となるように制限されている。もし、受力体100に対して、下方への大きな力が作用したとしても、受力体100の下方への変位が寸法d1に達した段階で、受力体100の底面が中間体200の上面に接触することになり、それ以上の変位が制限される。
【0142】
また、受力体100の上方(+Z軸方向)への変位は、図示の寸法d2以内となるように制限されている。もし、受力体100に対して、上方への大きな力が作用したとしても、受力体100の上方への変位が寸法d2に達した段階で、受力体100の上面が制御用庇部260の下面に接触することになり、それ以上の変位が制限される。
【0143】
更に、受力体100の横方向(±X軸方向および±Y軸方向)への変位は、図示の寸法d3以内となるように制限されている。もし、受力体100に対して、横方向への大きな力が作用したとしても、受力体100の横方向への変位が寸法d3に達した段階で、受力体100の側面が制御壁250の内面に接触することになり、それ以上の変位が制限される。もちろん、このような制限部材は、第2および第3の実施形態の装置にも適用可能である。
【0144】
このような制限部材を用いた実施形態によって、実際に変位が制限される状態を、図25〜図27の側断面図に示す。図25は、X軸正方向に過度の力+Fxが加わったときの状態である。受力体100の右側面が制御壁250に接触し、これ以上の変位が制限されている。一方、図26は、Z軸正方向に過度の力+Fzが加わったときの状態である。受力体100の外側上面が制御用庇部260に接触し、これ以上の変位が制限されている。また、図27は、Y軸まわり正方向に過度のモーメント+Myが加わったときの状態である。この場合、第1の力伝達体T1には図の下方への力−Fzが加わり、第2の力伝達体T2には図の上方への力+Fzが加わり、図のような変位が生じるが、やはりこれ以上の変位は制限されることになる。この図25〜図27には、各容量素子の電極間隔の変化も示されているので、図19や図22のテーブルに示す静電容量値の変化が生じることも理解できよう。
【0145】
<<< §7. 補助基板および補助容量素子を付加した変形例 >>>
続いて、補助基板および補助容量素子を用いる変形例を説明する。まず、図20に示されている6つの式あるいは図23に示されている6つの式を見ると、いずれも力Fzを求める式を除く5つの式については、静電容量値に対する加算とともに減算が行われていることがわかる。たとえば、力Fxを求める式は、整理すると、
Fx=(C11+C21+C31+C41)
−(C12+C22+C32+C42)
となり、また、力Fyを求める式は、整理すると、
Fy=(C13+C23+C33+C43)
−(C14+C24+C34+C44)
となる。結局、6つの力成分のうち、力Fzを除く5成分については、1つのグループに所属する容量素子群の全体の静電容量値と、別のグループに所属する容量素子群の全体の静電容量値と、の差に基づいて力もしくはモーメントの検出が行われていることになる。
【0146】
ところが、力Fzについては、図20あるいは図23の式を見ればわかるとおり、静電容量値に関する減算は行われていない。このFzに関する式の先頭にマイナス符号がついているのは、座標軸の方向の定義の仕方に起因したものであり、Z軸正方向の力+Fzが作用した場合に、検出値(静電容量値C15,C25,C35,C45の和)が基準値よりも減少し、Z軸負方向の力−Fzが作用した場合に、検出値が基準値よりも増加することを示すものである。
【0147】
このように、6つの力成分のうち、Fz以外の力成分は、すべて2つの静電容量値の差として得られるのに対し、力Fzだけは、差として得られる量にはなっていないことになる。これは、検出対象となる力が何ら作用していない状態において、力Fx,Fy,Mx,My,Mzの検出値は0として出力されるのに対し、力Fzの検出値は0ではなく、所定の基準値として出力されることを意味する。もちろん、この基準値を予め測定しておき、力Fzの検出値を、この基準値との差として出力するようにしておけば、原理的には何ら問題は生じない。
【0148】
しかしながら、装置内に存在する2つの容量素子グループの静電容量値の差として検出値を得る手法と、単一の容量素子グループの静電容量値と所定の基準値との差として検出値を得る手法とでは、実用上、重要な違いがある。すなわち、前者の手法を採れば、個々のロットごとの寸法精度に多少のばらつきがあっても、差をとることにより、誤差のファクターが相殺されるメリットが得られるのに対して、後者の手法では、そのようなメリットは得られない。また、この力検出装置が用いられる環境の温度条件によっても、各部の熱膨張による寸法変動が生じることになるが、前者の手法では、そのような寸法変動による影響が相殺されるメリットが得られるのに対して、後者の手法では、そのようなメリットは得られない。
【0149】
このような点を考慮すれば、実用上は、できるだけ、装置内に存在する2つの容量素子グループの静電容量値の差として検出値を得る手法を採るのが好ましい。したがって、力Fzの検出に関しても、何らかの形により、差による検出が実現できるようにするのが好ましい。ここで述べる変形例は、補助基板を設けることにより、これを実現したものである。
【0150】
図28は、この補助基板を用いた変形例に係る力検出装置の構成を示す側断面図である。この変形例の基本構造は、前述した第2の実施形態に係る力検出装置の構造とほぼ同じであり、その上面図は、図16に示す上面図と同等になる。図28は、この補助基板を用いた変形例に係る力検出装置を、図16の切断線9−9に相当する位置で切った断面を示す側断面図である。この図28に示す変形例と、前述した第2の実施形態との相違は、次の2点である。
【0151】
まず、第1の相違点は、この変形例では、図28に示すように、中間体200の上面に補助基板400を設け、その下面に固定電極E16,E26,E36,E46(E36,E46は、図28には現われていない)を設けた点である(なお、中間体200の厚みも若干小さくなっている)。図29は、この補助基板400の下面図であり、この補助基板400を図の切断線28−28の位置で切断した断面が、図28に示されていることになる。この補助基板400には、力伝達体T1〜T4を挿通するための開口H1〜H4が形成されている。これら開口H1〜H4の直径は、力伝達体T1〜T4の直径よりも若干大きく設定されており、力伝達体T1〜T4が傾斜したり変位したりしても、補助基板400には接触しないようになっている。
【0152】
補助基板400は、絶縁材料から構成されており、中間体200の上面に接合されている。別言すれば、補助基板400は、ダイアフラム215,225,235,245の上方に配置されるように、かつ、XY平面に平行となるように、中間体200を介して支持体300に固定されていることになる。各開口H1〜H4の周囲には、それぞれ円環状の固定電極E16,E26,E36,E46が形成されている。
【0153】
第2の相違点は、前述した第2の実施形態では、支持体300上に、図18に示すような合計20枚の固定電極が形成されていたのに対し、ここに示す変形例では、図30に示すような合計20枚の固定電極が形成されている点である。いずれも、xy座標系における第1象限に固定電極E11〜E15、第2象限に固定電極E21〜E25、第3象限に固定電極E31〜E35、第4象限に固定電極E41〜E45が配置されている点は同じであり、合計20組の容量素子C11〜C15、C21〜C25、C31〜C35、C41〜C45を構成するという機能も同じである。両者の相違は、図18と図30とを比較すればわかるとおり、個々の電極の形状である。
【0154】
このように、支持体300上に形成する固定電極の形状を変えた理由は、力Fzの検出に利用される固定電極E15,E25,E35,E45の形状および配置を、図29に示す補助基板400側の固定電極E16,E26,E36,E46の形状および配置と同一にするためである。補助基板400には、力伝達体T1〜T4を挿通させるための開口H1〜H4が形成されているため、固定電極E16,E26,E36,E46の形状および配置は制限を受けざるを得ない。図29に示す例では、固定電極E16,E26,E36,E46は、開口H1〜H4の外周直近を取り囲むような円環状(ワッシャー状)の電極となっているため、図30に示す固定電極E15,E25,E35,E45も、同一形状、同一サイズの円環状電極になるようにしている。その結果、他の電極E11〜E14、E21〜E24、E31〜E34、E41〜E44についても、若干、形状の変更が行われている。
【0155】
これら各電極の側断面は、図面上、非常に細かな領域になるため、図28では、黒塗りの領域として示されている。この図28を見れば明らかなように、支持体300の上面に形成された固定電極E15,E25と、補助基板400の下面に形成された固定電極E16,E26とは、ダイアフラム215,225の形成面(厚みの中心位置を通る水平面)に関して鏡像関係をなす。また、図には現れていないが、支持体300の上面に形成された固定電極E35,E45と、補助基板400の下面に形成された固定電極E36,E46とは、ダイアフラム235,245の形成面に関して鏡像関係をなす。
【0156】
ここで、補助基板400側に形成された4枚の固定電極E16,E26,E36,E46と、導電性材料からなるダイアフラム215,225,235,245の対向部分とによって、それぞれ容量素子C16,C26,C36,C46(ここでは、補助容量素子と呼ぶことにする)が形成されることになる。結局、この変形例では、合計24枚の固定電極が設けられていることになり、そのうちの20枚は、支持体300の上面に形成されているが(図30参照)、残りの4枚は、補助基板400の下面に形成されている(図29参照)ことになる。その結果、合計20組の容量素子がダイアフラム215,225,235,245の下方に配置され、4組の補助容量素子がダイアフラム215,225,235,245の上方に配置されることになる。
【0157】
この変形例の特徴は、補助基板400の下面に固定された固定電極と、ダイアフラム自身からなる変位電極と、によって構成される補助容量素子の静電容量値を利用して、特定の力成分の検出を行うようにした点にある。より具体的には、補助容量素子C16,C26,C36,C46は、容量素子C15,C25,C35,C45と同様に、力Fzの検出に利用される。但し、補助容量素子C16,C26,C36,C46の静電容量値の増減は、容量素子C15,C25,C35,C45の静電容量値の増減とは全く逆になる。これは、図28の側断面図を見れば、容易に理解できよう。たとえば、受力体100に対して、Z軸正方向の力+Fzが加えられた場合、力伝達体T1〜T4は図の上方へと変位し、ダイアフラム215〜245も上方へと変位するようになるので、ダイアフラム215〜245の下方に形成された容量素子C15,C25,C35,C45の電極間隔はいずれも広がり、静電容量値が減少するのに対して、ダイアフラム215〜245の上方に形成された補助容量素子C16,C26,C36,C46の電極間隔はいずれも狭まり、静電容量値が増加する。受力体100に対して、Z軸負方向の力−Fzが加えられた場合の現象は、これと全く逆になる。
【0158】
結局、この実施形態に係る力検出装置では、力Fzの検出を行う式として、図20に示す力Fzの式の代わりに、
Fz=(C16+C26+C36+C46)
−(C15+C25+C35+C45)
なる式を用いることができる。これは、1つのグループに所属する容量素子群の全体の静電容量値と、別のグループに所属する容量素子群の全体の静電容量値と、の差に基づく検出であり、前述したように、ロットごとの寸法精度に基づく誤差や温度変動による誤差を相殺するメリットが得られるようになる。
【0159】
支持体300の上面に形成された固定電極E15,E25,E35,E45と、補助基板400の下面に形成された固定電極E16,E26,E36,E46とが、ダイアフラム形成面に関して鏡像関係をなすようにしたのは、上述のような単純な演算式により、力Fzの検出を可能にするためである。たとえば、固定電極E15,E16が鏡像関係をなせば、容量素子C15と補助容量素子C16とは、物理的に同一形状、同一サイズの容量素子となり、かつ、ダイアフラム215の変位による静電容量値の増減が相補的になる。したがって、上述の式のように、各静電容量値に係数項が入らない単純な演算式を用いることが可能になる。逆言すれば、演算式に係数項を入れるようにするのであれば、支持体300側に形成された固定電極と、補助基板400側に形成された固定電極とは、必ずしも鏡像関係にならなくてもかまわない。
【0160】
なお、補助基板400を用いて形成した補助容量素子C16,C26,C36,C46は、モーメントMx,Myの検出に利用することも可能である。たとえば、図20に示すモーメントMx,Myの検出を行う式には、いくつかのバリエーションがあることは既に述べたとおりである。たとえば、中央に配置された容量素子のみを検出に用いれば、
Mx=(C35+C45)−(C15+C25)
My=(C15+C45)−(C25+C35)
のようなバリエーションに係る式を用いることも可能である。ここで、補助容量素子C16,C26,C36,C46を利用すると、このバリエーションは更に増え、たとえば、
Mx=(C35+C45+C16+C26)
−(C15+C25+C36+C46)
My=(C15+C45+C26+C36)
−(C25+C35+C16+C46)
なる式を用いることもできる。
【0161】
以上、補助基板400を付加する変形例を、§4で述べた第2の実施形態に適用した例を述べたが、この補助基板400を付加する実施形態は、§3で述べた第1の実施形態や§5で述べた第3の実施形態にも同様に適用可能である。
【0162】
たとえば、第3の実施形態に係る力検出装置では、力Fzの検出を行う式として、図23に、
Fz=−(C15+C25+C35+C45)
なる式が定義されているが、上述の例と同様に補助基板400を設けることにより、これら容量素子C15,C25,C35,C45の上方位置にそれぞれ補助容量素子C16,C26,C36,C46を形成するようにすれば、
Fz=(C16+C26+C36+C46)
−(C15+C25+C35+C45)
なる式により、力Fzの検出が可能になる。
【0163】
もちろん、第3の実施形態に係る力検出装置に補助基板400を設けた場合、補助容量素子C16,C26,C36,C46を、モーメントMx,Myの検出に利用することも可能である。たとえば、モーメントMx,Myを検出する式として、
Mx=(C45+C36)−(C35+C46)
My=(C15+C26)−(C25+C16)
のようなバリエーションに係る式を用いることもできる。
【0164】
また、上述の変形例では、補助基板400側には、支持体300側に形成された20枚の固定電極のうちの一部の固定電極E15,E25,E35,E45に対応させて、固定電極E16,E26,E36,E46を設けているが、より多くの固定電極を設けるようにしてもかまわない。たとえば、図30に示す支持体300上の全20枚の固定電極E11〜E45のすべてについて、鏡像関係をなす固定電極を補助基板400側に設けるようにしてもかまわない。この場合、ダイアフラムの下方に20組の容量素子が形成され、ダイアフラムの上方に20組の補助容量素子が形成されることになる。
【0165】
<<< §8. 補助センサを付加した変形例 >>>
これまで述べてきた実施形態やその変形例では、いずれも、力伝達体の傾斜や変位を検出するためのセンサを、支持体側にのみ設けていたが、このようなセンサを受力体側にも設けるようにし、力伝達体の傾斜や変位を、その両端において検出できるようにしておき、支持体側と受力体側との双方における検出結果に基づいて、力およびモーメントを検出することも可能である。このような検出を行えば、より精度の高い検出動作が可能になる。
【0166】
ここで述べる変形例は、このような観点に着目したものであり、各力伝達体から受力体に向かって加えられる力を検出する補助センサを更に設け、検出処理部が、この補助センサの検出結果をも考慮して、受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行うようにする、という特徴を有するものである。このような変形は、これまで述べてきた第1〜第3の実施形態や、その変形例のいずれに対しても適用可能であるが、ここでは、第1の実施形態に適用した変形例を代表例として述べることにする。
【0167】
図31は、この変形例に係る力検出装置の基本構成を示す側断面図である。図9に示す第1の実施形態に係る装置と比較するとわかるとおり、図31に示す装置は、装置中央部に定義された対称面W(水平面)に関して、上下対称となっており、各構成要素が、この対称面Wに関して鏡像関係をなす構造となっている。ここでは、説明の便宜上、互いに鏡像関係をなし、上下で対応する構成要素には同一符号を付すようにし、かつ、対称面Wよりも下の構成要素の符号末尾には「A」、対称面Wよりも上の構成要素の符号末尾には「B」を付して示すことにする。
【0168】
対称面Wよりも下の各構成要素は、図9に示す第1の実施形態に係る装置の下半分の構成要素と全く同じである。すなわち、支持体300Aの上に、円盤状のダイアフラム215A,225Aを有する中間体200Aが接合されている。ダイアフラム215Aの下方には、溝部G31Aが設けられており、固定電極E11A〜E15Aとダイアフラム215Aとによって構成される容量素子群によりセンサS1Aが形成されている。同様に、ダイアフラム225Aの下方には、溝部G32Aが設けられており、固定電極E21A〜E25Aとダイアフラム225Aとによって構成される容量素子群によりセンサS2Aが形成されている。また、ダイアフラム215Aの上方に設けられた溝部G21Aの中央には、下端がダイアフラム215Aの中央に接合された円柱突起部210Aが配置されており、ダイアフラム225Aの上方に設けられた溝部G22Aの中央には、下端がダイアフラム225Aの中央に接合された円柱突起部220Aが配置されている。
【0169】
一方、対称面Wよりも上に配置された上半分の構成要素は、下半分の構成要素の鏡像体をなすものである。すなわち、受力体300Bの下に、円盤状のダイアフラム215B,225Bを有する中間体200Bが接合されている。ダイアフラム215Bの上方には、溝部G31Bが設けられており、固定電極E11B〜E15Bとダイアフラム215Bとによって構成される容量素子群によりセンサS1Bが形成されている。同様に、ダイアフラム225Bの上方には、溝部G32Bが設けられており、固定電極E21B〜E25Bとダイアフラム225Bとによって構成される容量素子群によりセンサS2Bが形成されている。また、ダイアフラム215Bの下方に設けられた溝部G21Bの中央には、上端がダイアフラム215Bの中央に接合された円柱突起部210Bが配置されており、ダイアフラム225Bの下方に設けられた溝部G22Bの中央には、上端がダイアフラム225Bの中央に接合された円柱突起部220Bが配置されている。ここでは、便宜上、センサS1B,S2Bを補助センサと呼ぶことにする。
【0170】
円柱突起部210A,220Aの上端は、円柱突起部210B,220Bの下端にそれぞれ接合されており、力伝達体T1,T2を構成している。この力検出装置における受力体300Bに種々の力成分が作用したときの2本の力伝達体T1,T2の挙動は、図9に示す第1の実施形態に係る装置と同様である。相違点は、この力伝達体T1,T2の挙動を検出するためのセンサが、上下両側に設けられている点である。すなわち、センサS1A,S2Aが、力伝達体T1,T2から支持体300Aに向かって加えられる力を検出するセンサとして機能するのに対し、補助センサS1B,S2Bは、力伝達体T1,T2から受力体300Bに向かって加えられる力を検出するセンサとして機能する。ここで、力伝達体T1,T2から受力体300Bに向かって加えられる力は、受力体300Bから力伝達体T1,T2に向かって加えられる力の反作用として加えられることになる。
【0171】
センサS1A,S2Aと、補助センサS1B,S2Bとは、互いに鏡像関係をなす構造を有しているため、その検出結果も、鏡像関係を踏まえた結果となる。たとえば、受力体300Bに対して、力−Fz(図の下方への押圧力)が加えられた場合、ダイアフラム215Aは固定電極E15Aに対して接近し、ダイアフラム215Bも固定電極E15Bに対して接近することになるので、センサS1Aの検出結果とセンサS1Bの検出結果は同じになる。別言すれば、鏡像関係にある一対の容量素子の静電容量値の増減は同じになる。これに対して、受力体300Bに対して、力+Fx(図の右方への押圧力)が加えられた場合、センサS1Aは力伝達体T1がX軸正方向(図の右方向)へ傾斜したことを検出するのに対して、センサS1Bは力伝達体T1がX軸負方向(図の左方向)へ傾斜したことを検出する。具体的には、電極E11Aによって構成される容量素子C11Aの静電容量値は増加するのに対して、電極E11Bによって構成される容量素子C11Bの静電容量値は減少する。別言すれば、鏡像関係にある一対の容量素子の静電容量値の増減は逆になる。
【0172】
したがって、検出処理部は、このような鏡像関係を考慮して、各力成分の検出処理を実行する必要があり、特定の力成分については、センサの検出結果と補助センサの検出結果とを加算する演算を行うようにし、別な力成分については、両結果を減算する演算を行うようにしなければならない。しかし、原理的には、センサを構成する容量素子の数が増えた分だけ、最終的に得られる検出結果の精度は向上することになる。
【0173】
なお、図31に示す例では、対称面Wに関して、装置の上半分と下半分とが完全に鏡像関係をなす構造としたが、両者の構造は必ずしも鏡像関係にする必要はない。ただ、センサおよび補助センサに関しては、その構造が鏡像関係となるようにしておけば、検出処理部による演算が容易になるので実用上は好ましい。
【0174】
図32に示す変形例は、§7で述べた補助基板を付加した変形例に、更に、この§8で説明した補助センサを付加した変形例を適用したものである。やはり、対称面Wに関して、上下の構成要素が鏡像体となっている。図31に示す装置との違いは、補助基板400A,400Bおよび固定電極E16A,E26A,E16B,E26Bを更に付加した点と、支持体300A側に形成した固定電極の形状を若干変更した点だけである。この変形例は、§7で述べた特徴と§8で述べた特徴とを併せもつことになる。
【0175】
<<< §9. 導電性材料を主材料とする変形例 >>>
これまで述べた実施形態や変形例は、支持体300,300A、あるいは受力体300Bを絶縁性材料から構成したものであるが、これらは必ずしも絶縁性材料で構成する必要はなく、金属などの導電性材料で構成してもかまわない。但し、容量素子を利用したセンサを形成する場合、固定電極の形成面に関して、若干の工夫が必要になる。たとえば、図31に示す装置の場合、支持体300Aおよび受力体300Bとして、絶縁性材料を用いているため、各固定電極を、支持体300Aの上面や受力体300Bの下面に直接形成しても問題はない。ところが、もし支持体300Aおよび受力体300Bが導電性材料から構成されていた場合、各固定電極を支持体300Aの上面や受力体300Bの下面に直接形成すると、複数の固定電極が互いに短絡してしまうことになる。そのような場合は、絶縁層を介して、固定電極を形成するようにすればよい。
【0176】
図33は、図31に示す力検出装置における主材料をすべて導電性材料によって構成した変形例の側断面図である。この変形例では、装置の下半分を構成する支持体300Cおよび中間体200Aは、いずれも金属などの導電性材料で構成されており、装置の上半分を構成する受力体300Dおよび中間体200Bも、金属などの導電性材料で構成されている。そのため、支持体300Cの上面には、溝部G41A,G42Aが掘られており、これを塞ぐ位置に絶縁層71A,72Aが嵌め込まれて固定されている。そして、固定電極E11A〜E15A,E21A〜E25Aは、この絶縁層71A,72Aの上面に形成されている。同様に、受力体300Dの下面には、溝部G41B,G42Bが掘られており、これを塞ぐ位置に絶縁層71B,72Bが嵌め込まれて固定されている。そして、固定電極E11B〜E15B,E21B〜E25Bは、この絶縁層71B,72Bの下面に形成されている。
【0177】
また、この図33に示す装置には、§6で述べた制限部材も付加されている。すなわち、支持体300Cの周囲上面からは、4枚の制御壁500が立ち上がり、装置中枢部の外側を4側面から囲う構造になっている。この制御壁500の内側面の上方近傍には、制御溝510が形成されている。一方、板状の受力体300Dの外周側面部には、制御用庇部310が突出しており、制御溝510内に所定空隙をおいて収容された構造になっている。この所定空隙が、受力体300Dの変位の自由度を制限する機能を果たす。すなわち、XYZ三次元座標系のいずれの方向であっても、受力体300Dに対して、所定の許容範囲を越えて変位させるような外力が加わると、制御用庇部310が制御溝510の内側面に当接し、それ以上の変位が制御されることになる。
【0178】
この図33に示す変形例では、絶縁層71A,72A,71B,72B(たとえば、セラミック板で構成できる)を除いて、すべての構成要素を金属などの導電性材料によって構成することができるため、製造コストの低減を図るとともに、量産に適した構造を実現することができる。
【0179】
<<< §10. ダミー力伝達体を用いる変形例 >>>
§3で述べた第1の実施形態では、2組の力伝達体T1,T2を用いる例を示したが、実用上は、より多数の力伝達体を用いて受力体を支持した方が、機械的な変位動作の安定度が向上する。すなわち、2組の力伝達体T1,T2を用いる第1の実施形態に比べて、§4で述べた第2の実施形態や§5で述べた第3の実施形態のように、4組の力伝達体T1〜T4を用いる実施形態では、受力体をより安定して支持することができるというメリットが得られる。もちろん、後者では、4組のセンサS1〜S4を用いた検出が行われるため、6つの力成分のすべてを検出することができるというメリットも得られる。
【0180】
ここで述べる変形例は、6つの力成分のすべてを検出する必要はないが、受力体を安定して支持する構造が欲しい、という要望に合致した力検出装置を提供するための例である。このような要望に応えるには、センサを備えていない力伝達体(ここでは、便宜上、「ダミー力伝達体」と呼ぶ)を利用すればよい。たとえば、§4で述べた第2の実施形態に係る力検出装置は、図16の上面図に示されているように、4組の力伝達体を備えており、6つの力成分のすべてを検出する機能を備えている。ここで、もし、第3のセンサS3および第4のセンサS4の検出結果を必須とする特定の力成分を検出する必要がないのであれば、第3および第4の力伝達体から加えられる力を検出する必要はないので、電極E31〜E35および電極E41〜E45を設ける必要はない。
【0181】
図34は、このような変形例に利用する支持体300の上面図である。すなわち、この変形例の構造は、基本的には、§4で述べた第2の実施形態に係る力検出装置の構造と同じであるが、図18に示す支持体300の代わりに、図34に示す支持体300を用いるようにした点が異なる。別言すれば、4組の力伝達体T1〜T4は備わっているものの、センサは第1のセンサS1と第2のセンサS2だけであり、第3の力伝達体T3と第4の力伝達体T4は、力の検出動作には全く関与しないダミー力伝達体となる。
【0182】
結局、この変形例では、2組のダミー力伝達体T3,T4を含めた4組の力伝達体によって、受力体を安定して支持することができるメリットが得られ、しかも第3のセンサや第4のセンサが不要になるので、電極形成工程や配線工程などの作業負担が軽減され、コストダウンを図ることができるというメリットも得られることになる。
【0183】
図34に示す10枚の固定電極E11〜E15,E21〜E25によって形成される10組の容量素子C11〜C15,C21〜C25の静電容量値の変化の態様を示すテーブルは、図19(a) のようになる。この場合、次のような原理により、力Fx,Fy,FzおよびモーメントMyを検出することが可能である。
【0184】
まず、力Fxは、Fx=(C11−C12)+(C21−C22)なる式で求まり、力Fyは、Fy=(C13−C14)+(C23−C24)なる式で求まり、力Fzは、Fz=−(C15+C25)なる式で求まる。これらの式は、図20に示すFx,Fy,Fzの式の一部の項を除いた式に相当する。図20の式が、4組のセンサを用いて検出を行った場合の式であるのに対し、上述の式は2組のセンサを用いて検出を行った場合の式であり、項数が半分に減っている。したがって、検出精度は若干低下することになるが、原理的には、何ら問題なく、力Fx,Fy,Fzの検出が可能である。なお、力Fzについては、たとえば、Fz=−((C11+C12+C13+C14+C15)+(C21+C22+C23+C24+C25))なるバリエーションによる検出が可能になる点は、既に述べたとおりである。
【0185】
一方、モーメントMyについては、My=((C11+C12+C13+C14+C15)−(C21+C22+C23+C24+C25))なる式(図20に示すMyの式の一部の項を除いた式)、あるいはそのバリエーションである(C15−C25)なる式で求めることができる。
【0186】
このように、図34に示す支持体300を用いた変形例では、力Fx,Fy,FzおよびモーメントMyを検出することが可能であるが、モーメントMx,Mzの検出はできない。また、モーメントMxと力Fzとを区別することもできず(モーメントMxが作用すると、上述の式により力Fzとして検出されてしまう)、モーメントMzと力Fxとを区別することもできない(モーメントMzが作用すると、上述の式により力Fxとして検出されてしまう)。このため、この変形例は、モーメントMxやMzが作用する環境下では利用することができない。
【0187】
この図34に示す支持体300を用いた変形例は、図18に示す支持体300を用いた実施形態(第2の実施形態)から、第3のセンサS3および第4のセンサS4を除くことにより、第3の力伝達体T3および第4の力伝達体T4をダミー力伝達体として用いるようにした変形例であるが、同様に、図21に示す支持体300を用いた実施形態(第3の実施形態)から、第3のセンサS3および第4のセンサS4を除くことにより、第3の力伝達体T3および第4の力伝達体T4をダミー力伝達体として用いるようにした変形例も可能である。そのような変形例の検出動作は、図12に示す支持体300を用いた実施形態(第1の実施形態)の検出動作と同じになる。
【0188】
<<< §11. 本発明の第4の実施形態 >>>
最後に、本発明の第4の実施形態に係る力検出装置を説明する。§3で述べた第1の実施形態では2組の力伝達体T1,T2と2組のセンサS1,S2を用いた検出が行われ、§4で述べた第2の実施形態および§5で述べた第3の実施形態では4組の力伝達体T1〜T4と4組のセンサS1〜S4を用いた検出が行われた。ここで述べる第4の実施形態では、3組の力伝達体T1〜T3と3組のセンサS1〜S3を用いた検出が行われる。したがって、この第4の実施形態に係る力検出装置における受力体、支持体、各柱状力伝達体などの構造は、これまでの実施形態と全く同様である。ただ、柱状力伝達体の本数および配置が若干異なっているだけである。以下、この相違点についてのみ説明を行う。
【0189】
図35は、この第4の実施形態に係る力検出装置に用いられる支持体300の上面図である。前述した第2の実施形態に係る力検出装置に用いられる支持体300の上面図である図18と比較すると、両者の相違点が明確になる。すなわち、第2の実施形態では、図18に示すように、4組のセンサS1〜S4の構成要素となる固定電極E11〜E15,E21〜E25,E31〜E35,E41〜E45が、それぞれxy座標系における第1〜第4象限に配置されており、第1〜第4の力伝達体T1〜T4が、XY二次元座標系において、それぞれ第1〜第4象限に配置されていた。
【0190】
これに対して、図35に示す第4の実施形態に係る力検出装置では、3組のセンサS1〜S3の構成要素となる固定電極E11〜E15,E21〜E25,E31〜E35は、xy二次元座標系において、それぞれy軸の正の部分、第3象限、第4象限に配置されている。結局、第1〜第3の柱状力伝達体T1〜T3は、いずれもZ軸方向を長手方向とする構造体によって構成されており、第1の力伝達体T1は、その長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体T2は、XY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体は、XY平面の第4象限に配置されている。各固定電極E11〜E15,E21〜E25,E31〜E35と、その上方に位置する導電性ダイアフラム(共通変位電極)によって、容量素子C11〜C15,C21〜C25,C31〜C35が形成される点は、前述した第2の実施形態と同様である。ただ、力伝達体やセンサの配置が異なるため、検出処理部30による検出処理は若干異なる。
【0191】
図36は、この第4の実施形態に係る力検出装置における各容量素子C11〜C35の静電容量値の変化の態様を示すテーブルである。このテーブルにおいても、6つの力成分Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの値が正の場合のみが示されているが、負の場合は、増減の関係が逆転するだけである。この図36に示すテーブルを、第2の実施形態についての図19に示すテーブルとを比べると、各軸方向の力成分Fx,Fy,Fzが作用した場合の容量素子C11〜C15,C21〜C25,C31〜C35の静電容量値の変化の態様は全く同じである。したがって、各軸方向の力成分Fx,Fy,Fzに関する検出原理は、前述した第2の実施形態の場合と同じになる。ただ、前述した第2の実施形態の場合は、4組のセンサS1〜S4による検出結果の和として、各軸方向の力成分Fx,Fy,Fzが検出されていたのに対し、ここに示す第4の実施形態の場合は、3組のセンサS1〜S3による検出結果の和としての検出が行われることになり、検出精度は若干低下する。
【0192】
これに対して、各軸まわりのモーメントMx,My,Mzが作用した場合の各容量素子の静電容量値の変化の態様は、前述した第2の実施形態の場合とは若干異なる。そこで、以下、これらモーメントの検出原理について簡単に説明をしておく。
【0193】
まず、X軸まわりのモーメントMxが作用した場合は、図35の平面図を参照すればわかるとおり、Y軸の正の部分に配置された第1の力伝達体T1(図の固定電極E15の上に配置されている)から支持体300に対して引っ張り力(+fz)が作用し、第3象限に配置された第2の力伝達体T2(図の固定電極E25の上に配置されている)および第4象限に配置された第3の力伝達体T3(図の固定電極E35の上に配置されている)から支持体300に対して押圧力(−fz)が作用する。その結果、図36の第4行目(+Mxの行)に示すような結果が得られることになる。
【0194】
一方、Y軸まわりのモーメントMyが作用した場合は、第3象限に配置された第2の力伝達体T2から支持体300に対して引っ張り力(+fz)が作用し、第4象限に配置された第3の力伝達体T3から支持体300に対して押圧力(−fz)が作用する。このとき、Y軸の正の部分に配置された第1の力伝達体T1から支持体300に対しては、有意な力の作用は生じない。その結果、図36の第5行目(+Myの行)に示すような結果が得られることになる。
【0195】
次に、図35を参照しながら、受力体100にZ軸まわりの正方向のモーメント+Mz(図35の平面図上では、反時計まわりのモーメントになる)が加わった場合、3組の力伝達体T1〜T3がどの方向に傾斜するかを考えてみよう。
【0196】
まず、Y軸の正の部分に配置された第1の力伝達体T1(図の固定電極E15の上に配置されている)は、この図35における左方向(x軸の負方向)に傾斜することになり、容量素子C12の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C11の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。また、第3象限に配置された第2の力伝達体T2(図の固定電極E25の上に配置されている)は、この図35における右下方向に傾斜することになり、容量素子C21,C24の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C22,C23の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。最後に、第4象限に配置された第3の力伝達体T3(図の固定電極E35の上に配置されている)は、この図35における右上方向に傾斜することになり、容量素子C31,C33の電極間隔が狭まり静電容量値が増加し、容量素子C32,C34の電極間隔が広まり静電容量値が減少する。なお、容量素子C13,C14,C15,C25,C35の静電容量値については、トータルでは変化が生じない。
【0197】
結局、受力体100にZ軸まわりの正方向のモーメント+Mzが作用した場合は、図36の第6行目に示すような増減結果が得られることになる。もちろん、受力体100にZ軸まわりの負方向のモーメント−Mzが作用した場合は、これとは正負の関係が逆転した結果が得られることになる。
【0198】
この図36のテーブルに示すような結果が得られることを踏まえると、検出処理部30として、15組の容量素子C11〜C35の静電容量値(ここでは、静電容量の値自身も、同じ符号C11〜C35で示すことにする)を測定する回路と、測定した各静電容量値を用いて、図37に示す式に基づく演算を行う処理装置を用意しておけば、Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの6成分を得ることができる。ここで、図37に示すFx,Fy,Fzについての式は、図20に示す各対応式から、第4のセンサに関する項を除外したものになっている。
【0199】
一方、図37に示すMx=−((2×C15)−(C25+C35))なる式は、図36のテーブルの第4行目(+Mxの行)の結果を踏まえたものであり、第1のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第2および第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメントMxが検出できることを意味している。式の先頭のマイナス符号は、モーメントの向きのとり方によるものである。また、C15の項に係数2が乗じられているのは、各センサの検出感度を調整するためである。
【0200】
すなわち、図35の平面図を見れば明らかなように、X軸まわりのモーメントMxが作用した場合、図の上半分の領域(xy二次元座標系の第1象限および第2象限)で生じる力の作用に関する現象と、図の下半分の領域(xy二次元座標系の第3象限および第4象限)で生じる力の作用に関する現象とは、物理的に逆の現象になる。上式において、最終的に静電容量値の差を求めているのは、このような逆の物理現象が生じているために他ならない。ところが、図35に示すように、上半分の領域における物理現象の検知を受け持つセンサは、第1のセンサ(この例の場合、容量素子C15)のみであるのに対し、下半分の領域における物理現象の検知を受け持つセンサは、第2のセンサ(この例の場合、容量素子C25)と第3のセンサ(この例の場合、容量素子C35)の2組になる。このため、上半分の領域における検出感度に対して、下半分の領域における検出感度は2倍になってしまう。Mxの式におけるC15の項に係数2が乗じられているのは、このような検出感度差を修正するためである。
【0201】
なお、このような係数を乗じる修正に代えて、固定電極の面積に対する修正を行うこともできる。たとえば、図35に示す例では、固定電極E15,E25,E35は同一サイズの円形電極となっているが、固定電極E15の直径が、固定電極E25,E35の直径よりも大きくなるように適宜修正を施し、固定電極E15の面積が、固定電極E25,E35の面積の2倍となるようにすれば、容量素子C15の検出感度が、容量素子C25あるいはC35の検出感度の2倍になるので、図37のMxの式においてC15の項に乗じられている係数2は不要になる。
【0202】
続いて、モーメントMyの式を説明する。図37に示すMy=(C35−C25)なる式は、図36のテーブルの第5行目(+Myの行)の結果を踏まえたものであり、第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第2のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメントMyが検出できることを意味している。
【0203】
最後に、図37に示すMz=((C21−C22)+(C31−C32)−2×(C11−C12))+((C33−C34)−(C23−C24))なる式は、図36のテーブルの第6行目(+Mzの行)の結果を踏まえたものであり、第2および第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和から、第1のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度を減じた差を第1の差として求め、第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度から、第2のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度を減じた差を第2の差として求め、第1の差と第2の差との和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzが検出できることを意味している。
【0204】
このMzの式の意味は、この式を、
Mz=−2×(C11−C12)
+(C21+C24)−(C22+C23)
+(C31+C33)−(C32+C34)
のような形に書きなおすと、より理解しやすくなる。すなわち、Z軸まわりの正方向のモーメント+Mzが作用した場合、前述したとおり、図35において、固定電極E15の上に配置されている第1の力伝達体T1は、図の左方向に傾斜することになるが、上式の−(C11−C12)は、第1の力伝達体T1のこのような傾斜を検出するための項である。同様に、固定電極E25の上に配置されている第2の力伝達体T2は、図の右下方向に傾斜することになるが、上式の(C21+C24)−(C22+C23)は、第2の力伝達体T2のこのような傾斜を検出するための項である。また、固定電極E35の上に配置されている第3の力伝達体T3は、図の右上方向に傾斜することになるが、上式の(C31+C33)−(C32+C34)は、第3の力伝達体T3のこのような傾斜を検出するための項である。上式は、このように、Z軸まわりのモーメントMzが作用した場合の3本の力伝達体T1〜T3の所定方向への傾斜度の検出値の和を示すものになる。
【0205】
なお、このMzの式において、(C11−C12)の項に係数2が乗じられているのは、やはり各センサの検出感度を調整するためである。すなわち、第1のセンサS1の検出感度を、第2のセンサS2あるいは第3のセンサS3の検出感度の2倍にする修正を行うために、第1のセンサS1の検出結果として得られる(C11−C12)の項に係数2が乗じられている。このような修正が必要な理由は、図35の平面図を見ればわかるとおり、X軸方向に関する傾斜度の検出動作に着目すると、上半分の領域を受け持つセンサは、第1のセンサ(この例の場合、容量素子C11,C12)のみであるのに対し、下半分の領域を受け持つセンサは、第2のセンサ(この例の場合、容量素子C21,C22)と第3のセンサ(この例の場合、容量素子C31,C32)の2組になっているためである。もちろん、固定電極E11,E12の面積を、固定電極E21,E22,E31,E32の面積の2倍に設定するようにすれば、このような係数を乗じる修正は不要になる。なお、Y軸方向に関する傾斜度の検出動作については、第3のセンサの検出結果と第2のセンサの検出結果との間で差がとられているだけなので、このような修正は不要である。
【0206】
ところで、各力伝達体T1〜T3のZ軸方向に関する力を求める方法には、複数通りのバリエーションがあることは、これまでに何度も述べたとおりであり、図37に示す各式に、これらのバリエーションを適用することも可能である。たとえば、図37の力Fzの式は、Fz=−((C11+C12+C13+C14+C15)+(C21+C22+C23+C24+C25)+(C31+C32+C33+C34+C35))とすることもできる。また、力Mxの式は、−((2×(C11+C12+C13+C14+C15))−((C21+C22+C23+C24+C25)+(C31+C32+C33+C34+C35)))とすることもできる。同様に、力Myの式は、(C31+C32+C33+C34+C35)−(C21+C22+C23+C24+C25)とすることもできる。
【0207】
以上、第4の実施形態として、3組の力伝達体を用いる例を述べたが、もちろん、この第4の実施形態についても、§6〜§11で述べた変形例を適用することが可能である。
【0208】
<<< §12. その他の変形例 >>>
以上、本発明を図示する実施形態や変形例に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態や変形例に限定されるものではなく、この他にも種々の態様で実施可能である。
【0209】
たとえば、上述の実施形態では、各力伝達体と支持体との接続部分に、図3に示すタイプの多軸力センサを組み込んでいるが、本発明に組み込む力センサは、必ずしも図3に示すような静電容量式のものにする必要はなく、たとえば、ピエゾ抵抗式力センサ、圧電素子を用いた力センサなどを用いてもかまわない。また、静電容量式力センサを用いる場合であっても、必ずしも図3に示すようなダイアフラム51自身を共通変位電極として利用するタイプのものを用いる必要はない。ダイアフラム51が絶縁材料から構成されている場合には、その下面に導電性膜を形成して共通変位電極として利用することができる。もちろん、共通変位電極を1枚だけ設ける代わりに、各固定電極に対向した個別の変位電極を設けるようにしてもかまわない。
【0210】
上述の実施形態では、各力伝達体と受力体との接続部分に、可撓性をもった接続部材(具体的には、板状の受力体の肉薄部)を設けているが、各力伝達体の上端は、必ずしも可撓性をもった接続部材を介して受力体に接続する必要はない。検出対象となる力やモーメントを受力体に支障なく作用させることができるのであれば、各力伝達体の上端を受力体に直接接続して固定する形態をとってもかまわない。もっとも、実用上は、検出対象となる力やモーメントを受力体に支障なく作用させるために、これまで述べてきた実施形態のように、各力伝達体の上端を、可撓性をもった接続部材を介して受力体に接続するようにし、各力伝達体が受力体に対して、ある程度の自由度をもって変位できるような構造にしておくのが好ましい。
【0211】
また、最終的な力やモーメントの検出値を求める機能を果たす検出処理部30も、実際には種々の構成で実現できる。たとえば、個々の容量素子の静電容量値をアナログ電圧値として測定し、この測定値をデジタル信号に変換した後、CPUなどの演算装置を用いて、図14,図20,図23,図37の式に示す演算を実行する、という手法を採ることもできるし、個々の容量素子の静電容量値の測定値をアナログ電圧値のまま取り扱い、アナログ信号として最終的な検出値を出力する、という手法を採ることも可能である。後者の手法を採る場合は、各容量素子の電極に所定の配線を施し、必要に応じて、アナログ加算器やアナログ減算器からなるアナログ演算回路に接続するようにすればよい。また、静電容量値の和を求めるには、必ずしも演算回路は必要としない。たとえば、2つの容量素子C1,C2の静電容量値の和を求めるには、これら2つの容量素子を並列接続する配線を施し、この配線上の2点間の静電容量値を求めれば足る。このように、本発明における検出処理部は、必ずしもデジタルもしくはアナログ演算回路によって構成する必要はなく、複数の容量素子を電気的に接続する配線によって構成することも可能であり、本発明における「検出処理部」なる文言は、このような単純な電気配線も含む概念である。
【0212】
これまで述べた実施形態では、2本もしくは4本の力伝達体およびその接続部材は、正方形状の受力体100の中心に原点をとった座標系においてシンメトリックな位置(特定の座標軸に関して線対称となる位置)に配置され、また、いずれも同一材質、同一サイズのものであったが、これらは必ずしもシンメトリックな位置に配置する必要はなく、また、同一材質、同一サイズにする必要はない。もちろん、各センサも同一のものを用意する必要はない。たとえば、第2の実施形態では、4本の力伝達体が、正方形の4頂点位置に配置されているが、原理的には、力の6成分を検出するためには、4本の力伝達体が一直線上に配置されることがないようにすれば、4本の力伝達体の配置は任意でかまわない。ただ、4本の力伝達体が座標系に対してシンメトリックな配置になっていなかったり、材質やサイズが同一になっていなかったり、個々のセンサの構造やサイズが異なっていたりすると、各容量素子の検出感度に差が生じ、図14,図20,図23の式に示す演算を行う場合、個々の静電容量値に固有の感度係数を乗ずる必要が出てくるため、実用上は、上述の実施形態を採るのが好ましい。
【0213】
本願では説明の便宜上、受力体および支持体という文言を用いているが、これは、支持体を固定した状態とし、検出対象となる力を受力体に作用させる一般的な利用形態を意図したものである。しかしながら、本発明に係る力検出装置の利用形態は、そのような形態に限定されるものではなく、逆に、受力体を固定した状態とし、検出対象となる力を支持体に作用させるという利用形態も可能である。一般に、力検出装置は、第1の箇所を固定した状態において、第2の箇所に作用した力を検出する機能を有しており、支持体を固定した状態において受力体に作用した力を検出するという事象は、受力体を固定した状態において支持体に作用した力を検出するという事象と、本質的には同じものである。したがって、前述した第1〜第3の実施形態では、力伝達体の傾斜や変位を検出するためのセンサを、支持体側に設けていたが、このようなセンサを支持体側ではなく、受力体側に設けるようにした、という技術思想は、本質的に本発明と同じ技術思想であり、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0214】
10:受力体
11:第1の力伝達体
12:第2の力伝達体
20:支持体
21:第1のセンサ
22:第2のセンサ
30:検出処理部
40:支持体
50:椀状接続部材
51:ダイアフラム(共通変位電極)
52:側壁部
53:固定部
60:力伝達体
71A,72A:絶縁層
71B,72B:絶縁層
100:受力体
110:円柱突起部
115:肉薄部
120:円柱突起部
125:肉薄部
130:円柱突起部
135:肉薄部
140:円柱突起部
145:肉薄部
150:円柱状突起
200:中間体
200A,200B:中間体
210:円柱突起部
210A,210B:円柱突起部
215:ダイアフラム
215A,215B:ダイアフラム
220:円柱突起部
220A,220B:円柱突起部
225:ダイアフラム
225A,225B:ダイアフラム
230:円柱突起部
235:ダイアフラム
240:円柱突起部
245:ダイアフラム
250:制御壁
260:制御用庇部
300:支持体
300A:支持体
300B:受力体
300C:支持体
300D:受力体
310:制御用庇部
400:補助基板
400A,400B:補助基板
500:制御壁
510:制御溝
C11〜C45:容量素子/容量素子の静電容量値
d1,d2,d3:制御用寸法
E1〜E5,E11〜E45:固定電極
E11A〜E25A:固定電極
E11B〜E25B:固定電極
Fx,Fx′:X軸方向の力
fx,fx′:x軸方向の力
Fy:Y軸方向の力
Fz:Z軸方向の力
fz:支持体に対して作用する引っ張り力/押圧力
G11〜G34:溝部
G21A〜G42A:溝部
G21B〜G42B:溝部
H1〜H4:開口
Mx:X軸まわりのモーメント
My:Y軸まわりのモーメント
Mz:Z軸まわりのモーメント
O:座標系の原点
P1〜P4:受力体100上の点
S1〜S4:多軸力センサ
S1A,S2A:多軸力センサ
S1B,S2B:補助センサ
T1〜T4:力伝達体
W:対称面
XYZ:受力体の中心位置に原点をもつ座標系
xy:支持体の上面に定義された座標系
θ1,θ2:力伝達体11,12の傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
XYZ三次元座標系におけるX軸方向の力Fxを検出する力検出装置であって、
検出対象となる力を受けるために前記座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
前記第1の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第1の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
前記第2の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第2の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
前記第3の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第3の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
前記第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、前記受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を備え、
前記第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、前記第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が前記支持体に固定された接続部材の中央に接合され、前記第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が前記受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
前記第1〜第3のセンサは、前記支持体の上面に固定された固定電極と、前記力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1〜第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体に作用した力のX軸方向成分Fxを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の力検出装置において、X軸方向の力Fxの検出に加えて、更に、Y軸方向の力Fyを検出するために、
第1のセンサが、第1の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1〜第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の力検出装置において、X軸方向の力FxおよびY軸方向の力Fyの検出に加えて、更に、Z軸方向の力Fzを検出するために、
第1のセンサが、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1〜第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の力検出装置において、X軸方向の力Fxの検出に加えて、更に、Z軸方向の力Fzを検出するために、
第1のセンサが、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1〜第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項5】
XYZ三次元座標系におけるY軸方向の力Fyを検出する力検出装置であって、
検出対象となる力を受けるために前記座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
前記第1の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第1の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
前記第2の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第2の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
前記第3の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第3の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
前記第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、前記受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を備え、
前記第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、前記第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が前記支持体に固定された接続部材の中央に接合され、前記第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が前記受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
前記第1〜第3のセンサは、前記支持体の上面に固定された固定電極と、前記力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1〜第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項6】
XYZ三次元座標系におけるZ軸方向の力Fzを検出する力検出装置であって、
検出対象となる力を受けるために前記座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
前記第1の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第1の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
前記第2の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第2の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
前記第3の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第3の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
前記第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、前記受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を備え、
前記第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、前記第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が前記支持体に固定された接続部材の中央に接合され、前記第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が前記受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
前記第1〜第3のセンサは、前記支持体の上面に固定された固定電極と、前記力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1〜第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項7】
XYZ三次元座標系におけるX軸まわりのモーメントMxを検出する力検出装置であって、
検出対象となる力を受けるために前記座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
前記第1の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第1の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
前記第2の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第2の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
前記第3の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第3の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
前記第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、前記受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を備え、
前記第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、前記第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が前記支持体に固定された接続部材の中央に接合され、前記第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が前記受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
前記第1〜第3のセンサは、前記支持体の上面に固定された固定電極と、前記力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
検出処理部が、第1のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第2および第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和と、の差に基づいて、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメントMxを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の力検出装置において、X軸まわりのモーメントMxの検出に加えて、更に、Y軸まわりのモーメントMyを検出するために、
検出処理部が、第2のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメントMyを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の力検出装置において、X軸まわりのモーメントMxおよびY軸まわりのモーメントMyの検出に加えて、更に、Z軸まわりのモーメントMzを検出するために、
第1のセンサが、第1の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、を検知する機能を有し、
検出処理部が、第2および第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和から、第1のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度を減じた差を第1の差として求め、第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度から、第2のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度を減じた差を第2の差として求め、前記第1の差と前記第2の差との和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項10】
請求項7に記載の力検出装置において、X軸まわりのモーメントMxの検出に加えて、更に、Z軸まわりのモーメントMzを検出するために、
第1のセンサが、第1の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、を検知する機能を有し、
検出処理部が、第2および第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和から、第1のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度を減じた差を第1の差として求め、第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度から、第2のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度を減じた差を第2の差として求め、前記第1の差と前記第2の差との和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項11】
XYZ三次元座標系におけるZ軸まわりのモーメントMzを検出する力検出装置であって、
検出対象となる力を受けるために前記座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
前記第1の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第1の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
前記第2の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第2の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
前記第3の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第3の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
前記第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、前記受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を備え、
前記第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、前記第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が前記支持体に固定された接続部材の中央に接合され、前記第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が前記受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
前記第1〜第3のセンサは、前記支持体の上面に固定された固定電極と、前記力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、を検知する機能を有し、
検出処理部が、第2および第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和から、第1のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度を減じた差を第1の差として求め、第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度から、第2のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度を減じた差を第2の差として求め、前記第1の差と前記第2の差との和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項12】
XYZ三次元座標系におけるX軸方向の力Fx、Z軸方向の力Fz、X軸まわりのモーメントMx、Z軸まわりのモーメントMzを検出する力検出装置であって、
検出対象となる力を受けるために前記座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
前記第1の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第1の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
前記第2の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第2の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
前記第3の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第3の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
前記第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、前記受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を備え、
前記第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、前記第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が前記支持体に固定された接続部材の中央に接合され、前記第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が前記受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
前記第1〜第3のセンサは、前記支持体の上面に固定された固定電極と、前記力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有し、
検出処理部が、
第1〜第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体に作用した力のX軸方向成分Fxを検出する処理を行い、
第1〜第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを検出する処理を行い、
第1のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第2および第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和と、の差に基づいて、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメントMxを検出する処理を行い、
第2および第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和から、第1のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度を減じた差を第1の差として求め、第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度から、第2のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度を減じた差を第2の差として求め、前記第1の差と前記第2の差との和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項13】
XYZ三次元座標系における各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzおよび各座標軸まわりのモーメントMx,My,Mzを検出する力検出装置であって、
検出対象となる力を受けるために前記座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
前記第1の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第1の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第1のセンサと、
前記第2の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第2の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第2のセンサと、
前記第3の力伝達体の前記支持体に対する傾斜状態を検知する機能と、前記第3の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能と、の少なくとも一方を有する第3のセンサと、
前記第1〜第3のセンサの検出結果を考慮して、前記受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を備え、
前記第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、前記第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が前記支持体に固定された接続部材の中央に接合され、前記第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が前記受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
前記第1〜第3のセンサは、前記支持体の上面に固定された固定電極と、前記力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第1のセンサが、第1の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第1の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、第1の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有し、
第2のセンサが、第2の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有し、
第3のセンサが、第3の力伝達体のX軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体のY軸方向に関する傾斜度と、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力と、を検知する機能を有し、
検出処理部が、
第1〜第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体に作用した力のX軸方向成分Fxを検出する処理を行い、
第1〜第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度の和に基づいて、受力体に作用した力のY軸方向成分Fyを検出する処理を行い、
第1〜第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸方向成分Fzを検出する処理を行い、
第1のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第2および第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力の和と、の差に基づいて、受力体に作用した力のX軸まわりのモーメントMxを検出する処理を行い、
第2のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第3のセンサによって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメントMyを検出する処理を行い、
第2および第3のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度の和から、第1のセンサによって検知されたX軸方向に関する傾斜度を減じた差を第1の差として求め、第3のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度から、第2のセンサによって検知されたY軸方向に関する傾斜度を減じた差を第2の差として求め、前記第1の差と前記第2の差との和に基づいて、受力体に作用した力のZ軸まわりのモーメントMzを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項14】
XYZ三次元座標系におけるY軸まわりのモーメントMyを検出する力検出装置であって、
検出対象となる力を受けるために前記座標系の原点位置に配置され、XY平面に沿って広がる板状部材からなる受力体と、
この受力体の下方に配置され、XY平面に平行な平面に沿って広がる板状部材からなる支持体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第1の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第2の力伝達体と、
上端が前記受力体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、下端が前記支持体に可撓性をもった接続部材を介して接続され、Z軸方向を長手方向とする構造体によって構成された第3の力伝達体と、
前記第2の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能を有する第2の力伝達体用センサと、
前記第3の力伝達体全体から前記支持体に対して加えられる力を検知する機能を有する第3の力伝達体用センサと、
前記第2の力伝達体用センサおよび第3の力伝達体用センサの検出結果を考慮して、前記受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行う検出処理部と、
を備え、
前記第1〜第3の力伝達体は柱状の部材により構成され、前記第1〜第3の力伝達体の下面は、周囲が前記支持体に固定された接続部材の中央に接合され、前記第1〜第3の力伝達体の上面は、周囲が前記受力体に固定された接続部材の中央に接合され、
前記第2の力伝達体用センサおよび第3の力伝達体用センサは、前記支持体の上面に固定された固定電極と、前記力伝達体の下面に接合された接続部材の変位面に固定された変位電極と、によって構成される容量素子を有し、この容量素子の静電容量値に基づいて検知を行い、
第1の力伝達体がその長手方向がY軸の正の部分と交差する位置に配置され、第2の力伝達体がXY平面の第3象限に配置され、第3の力伝達体がXY平面の第4象限に配置されており、
第2の力伝達体用センサが、第2の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
第3の力伝達体用センサが、第3の力伝達体全体から支持体に対して加えられるZ軸方向に関する力を検知する機能を有し、
検出処理部が、
第2の力伝達体用センサによって検知されたZ軸方向に関する力と、第3の力伝達体用センサによって検知されたZ軸方向に関する力と、の差に基づいて、受力体に作用した力のY軸まわりのモーメントMyを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の力検出装置において、
可撓性および導電性を有するダイアフラムを力伝達体の下面側の接続部材として用い、このダイアフラムの中央に力伝達体の下面を接合し、前記ダイアフラムの周囲を支持体に固定することにより、力伝達体を支持体に接続するようにし、前記ダイアフラム自身を変位電極として用いるようにしたことを特徴とする力検出装置。
【請求項16】
請求項15に記載の力検出装置において、
柱状の部材からなる力伝達体の軸芯の延長線と支持体の上面との交点に原点をとったxy二次元座標系を定義したときに、
支持体の上面におけるx軸の正の部分および負の部分にそれぞれ第1の固定電極および第2の固定電極を配置し、支持体の上面におけるy軸の正の部分および負の部分にそれぞれ第3の固定電極および第4の固定電極を配置し、
ダイアフラムからなる変位電極と前記第1〜第4の固定電極とによって、第1〜第4の容量素子を構成し、第1の容量素子の静電容量値と第2の容量素子の静電容量値との差に基づいて、力伝達体のx軸方向に関する傾斜度を検知し、第3の容量素子の静電容量値と第4の容量素子の静電容量値との差に基づいて、力伝達体のy軸方向に関する傾斜度を検知し、検出処理部が、これらの検知結果を利用して、力もしくはモーメントを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項17】
請求項16に記載の力検出装置において、
支持体の上面における原点の近傍に更に第5の固定電極を配置し、ダイアフラムからなる変位電極と前記第5の固定電極とによって、第5の容量素子を構成し、この第5の容量素子の静電容量値に基づいて、力伝達体全体から支持体に対して加えられる力を検知し、検出処理部が、この検知結果を利用して、力もしくはモーメントを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれかに記載の力検出装置において、
力伝達体を挿通するための開口を有し、力伝達体の下面側の接続部材として用いられるダイアフラムの上方に配置されるように支持体に固定された補助基板を更に有し、
センサが、前記補助基板の下面に固定された固定電極と、前記ダイアフラム自身からなる変位電極と、によって構成される補助容量素子を有し、この補助容量素子の静電容量値を利用して力の検出を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項19】
請求項18に記載の力検出装置において、
補助基板の下面に固定された固定電極の一部または全部が、支持体の上面に固定された固定電極の一部または全部に対して、鏡像関係をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の力検出装置において、
検出処理部が複数の容量素子を電気的に接続する配線により構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の力検出装置において、
受力体と力伝達体とを接続する接続部材を、板状の受力体の肉薄部によって構成したことを特徴とする力検出装置。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれかに記載の力検出装置において、
各力伝達体から受力体に向かって加えられる力を検出する補助センサを更に設け、
検出処理部が、前記補助センサの検出結果を更に考慮して、前記受力体に作用した力もしくはモーメントを検出する処理を行うことを特徴とする力検出装置。
【請求項23】
請求項22に記載の力検出装置において、
力伝達体から支持体に向かって加えられる力を検出するセンサと、力伝達体から受力体に向かって加えられる力を検出する補助センサとが鏡像関係となる構造を有し、
検出処理部が、前記鏡像関係を考慮した処理を実行することを特徴とする力検出装置。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれかに記載の検出装置において、
受力体の支持体に対する変位を所定の範囲内に制限するための制限部材を設けたことを特徴とする力検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2010−8427(P2010−8427A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235017(P2009−235017)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【分割の表示】特願2003−123235(P2003−123235)の分割
【原出願日】平成15年4月28日(2003.4.28)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】