力検出装置
【課題】 装置の構造を単純化する。
【解決手段】 図(a) のように、XY平面に平行な上方基板10と下方基板20との間に、第1の柱状体P1と第2の柱状体P2とを配置する。各柱状体P1,P2の上端は、上方膜部11,12を介して上方基板10に接続され、下端は、導電性の下方膜部21,22を介して下方基板20に接続される。各柱状体P1,P2は、垂直基準軸R1,R2に対して、互いに逆方向に傾斜している。図(b) のように、上方基板10に右方向の力+Fxが作用して右方へスライドすると、柱状体P1は寝る方向へ傾いて下方膜部21は上方へ変形し、柱状体P2は立つ方向へ傾いて下方膜部22は下方へ変形する。下方膜部21と電極E5とによる容量素子と、下方膜部22と電極E6とによる容量素子との容量値の差により、X軸方向の力Fxの検出を行う。両容量値の和により、Z軸方向の力Fzの検出もできる。
【解決手段】 図(a) のように、XY平面に平行な上方基板10と下方基板20との間に、第1の柱状体P1と第2の柱状体P2とを配置する。各柱状体P1,P2の上端は、上方膜部11,12を介して上方基板10に接続され、下端は、導電性の下方膜部21,22を介して下方基板20に接続される。各柱状体P1,P2は、垂直基準軸R1,R2に対して、互いに逆方向に傾斜している。図(b) のように、上方基板10に右方向の力+Fxが作用して右方へスライドすると、柱状体P1は寝る方向へ傾いて下方膜部21は上方へ変形し、柱状体P2は立つ方向へ傾いて下方膜部22は下方へ変形する。下方膜部21と電極E5とによる容量素子と、下方膜部22と電極E6とによる容量素子との容量値の差により、X軸方向の力Fxの検出を行う。両容量値の和により、Z軸方向の力Fzの検出もできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は力検出装置に関し、特に、所定の座標軸方向に作用した力や、所定の座標軸まわりに作用したモーメントを検出するのに適した力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや産業機械の動作制御を行うために、種々のタイプの力検出装置が利用されている。また、電子機器の入力装置のマン・マシンインターフェイスとしても、小型の力検出装置が組み込まれている。このような用途に用いる力検出装置には、小型化およびコストダウンを図るために、できるだけ構造を単純にするとともに、三次元空間内での各座標軸に関する力をそれぞれ独立して検出できるようにすることが要求される。
【0003】
一般に、力検出装置の検出対象には、所定の座標軸方向を向いた力成分と、所定の座標軸まわりのモーメント成分とがある。三次元空間内にXYZ三次元座標系を定義した場合、検出対象は、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分になる。
【0004】
このような6つの力成分をそれぞれ独立して検出することができる力検出装置として、たとえば、下記の特許文献1には、比較的単純な構造をもった装置が開示されている。この特許文献1に開示された技術は、既に米国特許第6915709号・米国特許第7121147号・欧州特許第1464939号が付与されている技術であり、2枚の基板を複数の柱状体で接続した構造物を用意し、一方の基板を固定した状体において他方の基板に力を加えたときに、各柱状体の変位を個別に測定することにより、加えられた力の各成分を検出するものである。
【0005】
また、下記の特許文献2に開示されている技術も、既に米国特許第7219561号が付与されている技術である。この技術によれば、各柱状体の変位を個別に測定するセンサとして静電容量素子を用い、この静電容量素子を構成する特定の電極間に配線を施すことにより、加えられた力の各成分を検出するための演算を単純化することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−354049号公報
【特許文献2】特開2004−325367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前掲の各特許文献に開示されている力検出装置では、個々の柱状体の傾斜をそれぞれ独立して求め、複数の柱状体の傾斜態様に基づいて、6つの力成分を独立して検出している。このため、個々の柱状体について、その傾斜度をそれぞれ独立して測定するためのセンサが必要になる。特に、6つの力成分を検出する機能をもった装置では、XY平面に平行な基板上にZ軸方向に平行な柱状体を複数配置し、各柱状体のX軸方向に関する傾斜度とY軸方向に関する傾斜度とを独立して測定するセンサが必要になり、装置全体の構造は複雑にならざるを得ない。
【0008】
たとえば、前掲の各特許文献に例示されているように、傾斜度を測定するセンサとして、容量素子を用いたセンサを利用した場合、1本の柱状体のX軸方向に関する傾斜度とY軸方向に関する傾斜度との双方を測定するためには、X軸の正方向および負方向、ならびにY軸の正方向および負方向に容量素子を配置する必要が生じる。このように、多くの容量素子を必要とする装置では、配線も複雑にならざるを得ず、装置全体の構造が複雑化し、製造コストも嵩むことになる。
【0009】
そこで本発明は、より単純な構造をもった力検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の第1の態様は、XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置において、
XY平面に平行な基板面を有する上方基板と、
XY平面に平行な基板面を有し、上方基板の下方に配置された下方基板と、
上端が上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1の柱状体と、
上端が上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第2の柱状体と、
第1の柱状体および第2の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を設け、
下方基板のうち、第1の柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第1の下方膜部を構成し、
下方基板のうち、第2の柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第2の下方膜部を構成し、
第1の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して第1の方向に傾斜しており、第2の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して第1の方向とは逆の第2の方向に傾斜しており、
検出部は、第1の下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のセンサと、第2の下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のセンサと、を有し、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との差を示す電気信号を、下方基板を固定した状態において上方基板に作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力するようにしたものである。
【0011】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との和を示す電気信号を、下方基板を固定した状態において上方基板に作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力するようにしたものである。
【0012】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係る力検出装置において、
下方基板の上面側もしくは下面側に第1の下方溝および第2の下方溝が形成されており、第1の下方溝の底部によって第1の下方膜部が形成され、第2の下方溝の底部によって第2の下方膜部が形成されているようにしたものである。
【0013】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第3の態様に係る力検出装置において、
各下方溝が下方基板の上面側に形成されており、各下方溝の内部に溝の底面から基板面位置まで上方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の下端が突起部を介して下方膜部に接合されているようにしたものである。
【0014】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第1または第2の態様に係る力検出装置において、
下方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の一部により第1の下方膜部が形成され、当該可撓性基板の別な一部により第2の下方膜部が形成されているようにしたものである。
【0015】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る力検出装置において、
上方基板のうち、第1の柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第1の上方膜部を構成し、
上方基板のうち、第2の柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第2の上方膜部を構成するようにしたものである。
【0016】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第6の態様に係る力検出装置において、
上方基板の上面側もしくは下面側に第1の上方溝および第2の上方溝が形成されており、第1の上方溝の底部によって第1の上方膜部が形成され、第2の上方溝の底部によって第2の上方膜部が形成されているようにしたものである。
【0017】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第7の態様に係る力検出装置において、
各上方溝が上方基板の下面側に形成されており、各上方溝の内部に溝の底面から基板面位置まで下方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の上端が突起部を介して上方膜部に接合されているようにしたものである。
【0018】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第6の態様に係る力検出装置において、
上方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の一部により第1の上方膜部が形成され、当該可撓性基板の別な一部により第2の上方膜部が形成されているようにしたものである。
【0019】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第1〜第9の態様に係る力検出装置において、
第1の柱状体の中心軸と第2の柱状体の中心軸とが、XZ平面もしくはXZ平面に平行な同一平面上に配置されており、第1の柱状体と第2の柱状体とが、YZ平面に関して面対称をなすようにしたものである。
【0020】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第1〜第10の態様に係る力検出装置において、
第1のセンサが、第1の下方膜部に形成された第1の変位電極と、この第1の変位電極に対向する位置に固定された第1の固定電極と、からなる第1の容量素子によって構成され、
第2のセンサが、第2の下方膜部に形成された第2の変位電極と、この第2の変位電極に対向する位置に固定された第2の固定電極と、からなる第2の容量素子によって構成されているようにしたものである。
【0021】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
下方基板が導電性材料から構成され、第1の下方膜部自身が第1の変位電極として機能し、第2の下方膜部自身が第2の変位電極として機能するようにしたものである。
【0022】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第11または第12の態様に係る力検出装置において、
下方基板の下面に固着された補助基板を更に設け、
補助基板の上面における第1の下方膜部の下方位置に第1の補助溝が形成されており、補助基板の上面における第2の下方膜部の下方位置に第2の補助溝が形成されており、
第1の補助溝の底面に第1の固定電極が形成され、第2の補助溝の底面に第2の固定電極が形成されているようにしたものである。
【0023】
(14) 本発明の第14の態様は、XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置において、
上下方向に定義されたZ軸に対して所定方向に傾斜するように配置された第1の柱状体および第2の柱状体と、
第1の柱状体および第2の柱状体の上方に配置された上方構造体と、
第1の柱状体および第2の柱状体の下方に配置された下方構造体と、
第1の柱状体および第2の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を設け、
第1の柱状体の上端は、上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、第1の柱状体の下端は、下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合されており、
第2の柱状体の上端は、上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、第2の柱状体の下端は、下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合されており、
第1の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して第1の方向に傾斜しており、第2の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して第1の方向とは逆の第2の方向に傾斜しており、
下方構造体の所定位置を固定した状態において、上方構造体に外力が作用した場合に、第1の柱状体および第2の柱状体の傾斜状態が変化して上方構造体が変位を生じることができるように、「下方構造体」の少なくとも一部分および「上方構造体、第1の柱状体、第2の柱状体、およびこれら相互の接続部分」の少なくとも一部分が可撓性を有しており、
検出部は、第1の柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のセンサと、第2の柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のセンサと、を有し、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との差を示す電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力するようにしたものである。
【0024】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第14の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との和を示す電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力するようにしたものである。
【0025】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第14または第15の態様に係る力検出装置において、
第1の柱状体の中心軸と第2の柱状体の中心軸とが、XZ平面もしくはXZ平面に平行な同一平面上に配置されており、第1の柱状体と第2の柱状体とが、YZ平面に関して面対称をなすようにしたものである。
【0026】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第14〜第16の態様に係る力検出装置において、
下方構造体の下方に所定間隔をおいて固定された補助基板を更に設け、
第1のセンサが、下方構造体における第1の柱状体の下端が接合された位置に形成された第1の変位電極と、補助基板の上面における第1の変位電極に対向する位置に固定された第1の固定電極と、からなる第1の容量素子によって構成され、
第2のセンサが、下方構造体における第2の柱状体の下端が接合された位置に形成された第2の変位電極と、補助基板の上面における第2の変位電極に対向する位置に固定された第2の固定電極と、からなる第2の容量素子によって構成されているようにしたものである。
【0027】
(18) 本発明の第18の態様は、上述した第17の態様に係る力検出装置において、
下方構造体が導電性材料から構成され、下方構造体における第1の柱状体の下端が接合された部分が第1の変位電極として機能し、下方構造体における第2の柱状体の下端が接合された部分が第2の変位電極として機能するようにしたものである。
【0028】
(19) 本発明の第19の態様は、XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置において、
XY平面に平行な基板面を有する上方基板と、
XY平面に平行な基板面を有し、上方基板の下方に配置された下方基板と、
上端が上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のX軸柱状体と、
上端が上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のY軸柱状体と、
第1〜第4のX軸柱状体および第1〜第4のY軸柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を設け、
下方基板のうち、第1〜第4のX軸柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のX軸下方膜部を構成し、
下方基板のうち、第1〜第4のY軸柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のY軸下方膜部を構成し、
第1のX軸柱状体の中心軸と第2のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の正の領域においてX軸と直交するX軸正側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
第3のX軸柱状体の中心軸と第4のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の負の領域においてX軸と直交するX軸負側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
第1のY軸柱状体の中心軸と第2のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の正の領域においてY軸と直交するY軸正側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
第3のY軸柱状体の中心軸と第4のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の負の領域においてY軸と直交するY軸負側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
検出部は、
第1のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のX軸センサと、第2のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のX軸センサと、第3のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第3のX軸センサと、第4のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第4のX軸センサと、第1のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のY軸センサと、第2のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のY軸センサと、第3のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第3のY軸センサと、第4のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第4のY軸センサと、を有し、各センサの検出値に基づいて得られた電気信号を、下方基板を固定した状態において上方基板に作用した力の検出値として出力するようにしたものである。
【0029】
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第19の態様に係る力検出装置において、
下方基板の上面側もしくは下面側に第1〜第4のX軸下方溝および第1〜第4のY軸下方溝が形成されており、第1〜第4のX軸下方溝の底部によって第1〜第4のX軸下方膜部が形成され、第1〜第4のY軸下方溝の底部によって第1〜第4のY軸下方膜部が形成されているようにしたものである。
【0030】
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第19の態様に係る力検出装置において、
下方基板の上面側もしくは下面側に下方環状溝が形成されており、この下方環状溝の底部の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸下方膜部および第1〜第4のY軸下方膜部が形成されているようにしたものである。
【0031】
(22) 本発明の第22の態様は、上述した第20または第21の態様に係る力検出装置において、
各下方溝もしくは下方環状溝が下方基板の上面側に形成されており、各下方溝もしくは下方環状溝の内部に溝の底面から基板面位置まで上方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の下端が突起部を介して下方膜部に接合されているようにしたものである。
【0032】
(23) 本発明の第23の態様は、上述した第19の態様に係る力検出装置において、
下方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸下方膜部および第1〜第4のY軸下方膜部が形成されているようにしたものである。
【0033】
(24) 本発明の第24の態様は、上述した第19〜第23の態様に係る力検出装置において、
上方基板のうち、第1〜第4のX軸柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のX軸上方膜部を構成し、
上方基板のうち、第1〜第4のY軸柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のY軸上方膜部を構成するようにしたものである。
【0034】
(25) 本発明の第25の態様は、上述した第24の態様に係る力検出装置において、
上方基板の上面側もしくは下面側に第1〜第4のX軸上方溝および第1〜第4のY軸上方溝が形成されており、第1〜第4のX軸上方溝の底部によって第1〜第4のX軸上方膜部が形成され、第1〜第4のY軸上方溝の底部によって第1〜第4のY軸上方膜部が形成されているようにしたものである。
【0035】
(26) 本発明の第26の態様は、上述した第24の態様に係る力検出装置において、
上方基板の上面側もしくは下面側に上方環状溝が形成されており、この上方環状溝の底部の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸上方膜部および第1〜第4のY軸上方膜部が形成されているようにしたものである。
【0036】
(27) 本発明の第27の態様は、上述した第25または第26の態様に係る力検出装置において、
各上方溝もしくは上方環状溝が上方基板の下面側に形成されており、各上方溝もしくは上方環状溝の内部に溝の底面から基板面位置まで下方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の上端が突起部を介して上方膜部に接合されているようにしたものである。
【0037】
(28) 本発明の第28の態様は、上述した第24の態様に係る力検出装置において、
上方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸上方膜部および第1〜第4のY軸上方膜部が形成されているようにしたものである。
【0038】
(29) 本発明の第29の態様は、上述した第28の態様に係る力検出装置において、
第1〜第4のX軸上方膜部および第1〜第4のY軸上方膜部を除いた上方基板の上面の所定箇所に連結部材が固着され、この連結部材の上方に、検出対象となる力を受けるための受力体が接合されているようにしたものである。
【0039】
(30) 本発明の第30の態様は、上述した第23,第28または第29の態様に係る力検出装置において、
第1のX軸上方/下方膜部および第2のX軸上方/下方膜部を含む領域と、第3のX軸上方/下方膜部および第4のX軸上方/下方膜部を含む領域と、第1のY軸上方/下方膜部および第2のY軸上方/下方膜部を含む領域と、第3のY軸上方/下方膜部および第4のY軸上方/下方膜部を含む領域と、の4つの領域を可撓性基板上に定義したときに、これら4つの領域の境界に沿って、可撓性基板の外周側から中心部に向かってスリットが形成されているようにしたものである。
【0040】
(31) 本発明の第31の態様は、XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置において、
XY平面に平行な平面上に広がる上方構造体と、
XY平面に平行な平面上に広がり、上方構造体の下方に配置された下方構造体と、
上端が上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のX軸柱状体と、
上端が上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のY軸柱状体と、
第1〜第4のX軸柱状体および第1〜第4のY軸柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を設け、
第1のX軸柱状体の中心軸と第2のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の正の領域においてX軸と直交するX軸正側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
第3のX軸柱状体の中心軸と第4のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の負の領域においてX軸と直交するX軸負側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
第1のY軸柱状体の中心軸と第2のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の正の領域においてY軸と直交するY軸正側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
第3のY軸柱状体の中心軸と第4のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の負の領域においてY軸と直交するY軸負側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
検出部は、
第1のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のX軸センサと、第2のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のX軸センサと、第3のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第3のX軸センサと、第4のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第4のX軸センサと、第1のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のY軸センサと、第2のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のY軸センサと、第3のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第3のY軸センサと、第4のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第4のY軸センサと、を有し、各センサの検出値に基づいて得られた電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用した力の検出値として出力するようにしたものである。
【0041】
(32) 本発明の第32の態様は、上述した第31の態様に係る力検出装置において、
下方構造体が、Z軸上に位置する中心部と、中心部から第1〜第4のX軸柱状体の下端への接続位置および第1〜第4のY軸柱状体の下端への接続位置へそれぞれ伸びる8本の可撓性をもった枝状部と、を有するようにしたものである。
【0042】
(33) 本発明の第33の態様は、上述した第19〜第32の態様に係る力検出装置において、
第1のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第1のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第1象限に位置し、
第3のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第2のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第2象限に位置し、
第4のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第4のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第3象限に位置し、
第2のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第3のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第4象限に位置するようにしたものである。
【0043】
(34) 本発明の第34の態様は、上述した第33の態様に係る力検出装置において、
「第1〜第4のX軸柱状体」、「第1〜第4のY軸柱状体」、「上方基板もしくは上方構造体」、「下方基板もしくは下方構造体」によって構成される主構造体が、XZ平面に関して面対称をなし、かつ、YZ平面に関しても面対称をなすようにしたものである。
【0044】
(35) 本発明の第35の態様は、上述した第34の態様に係る力検出装置において、
検出部が、
「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fx)*を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fy)*を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力するようにしたものである。
【0045】
(36) 本発明の第36の態様は、上述した第35の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との和」と「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との和」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力するようにしたものである。
【0046】
(37) 本発明の第37の態様は、上述した第34の態様に係る力検出装置において、
検出部が、
「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との和」と「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との和」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力するようにしたものである。
【0047】
(38) 本発明の第38の態様は、上述した第37の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fx)*と、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fy)*とを求め、
所定の係数k1〜k4を用いて、
V(Fx)*−k2/k1・V(My)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
V(Fy)*−k4/k3・V(Mx)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力するようにしたものである。
【0048】
(39) 本発明の第39の態様は、上述した第35〜第38の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
「第1〜第4のX軸センサの検出値の総和」もしくは「第1〜第4のY軸センサの検出値の総和」、または「第1〜第4のX軸センサの検出値の総和と第1〜第4のY軸センサの検出値の総和との和」に対応する信号値V(Fz)を、作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力するようにしたものである。
【0049】
(40) 本発明の第40の態様は、上述した第35〜第39の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第4のX軸センサの検出値と第3のX軸センサの検出値との差」と「第2のY軸センサの検出値と第1のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Mz)を、作用したZ軸まわりのモーメントMzの検出値として出力するようにしたものである。
【0050】
(41) 本発明の第41の態様は、上述した第19〜第40の態様に係る力検出装置において、
各センサが、下方膜部もしくは下方構造体に形成された変位電極と、この変位電極に対向する位置に固定された固定電極と、からなる容量素子によって構成されているようにしたものである。
【0051】
(42) 本発明の第42の態様は、上述した第19〜第30の態様に係る力検出装置において、
第1のX軸センサが、第1のX軸下方膜部に形成された第1のX軸変位電極と、この第1のX軸変位電極に対向する位置に固定された第1のX軸固定電極と、からなる第1のX軸容量素子によって構成され、
第2のX軸センサが、第2のX軸下方膜部に形成された第2のX軸変位電極と、この第2のX軸変位電極に対向する位置に固定された第2のX軸固定電極と、からなる第2のX軸容量素子によって構成され、
第3のX軸センサが、第3のX軸下方膜部に形成された第3のX軸変位電極と、この第3のX軸変位電極に対向する位置に固定された第3のX軸固定電極と、からなる第3のX軸容量素子によって構成され、
第4のX軸センサが、第4のX軸下方膜部に形成された第4のX軸変位電極と、この第4のX軸変位電極に対向する位置に固定された第4のX軸固定電極と、からなる第4のX軸容量素子によって構成され、
第1のY軸センサが、第1のY軸下方膜部に形成された第1のY軸変位電極と、この第1のY軸変位電極に対向する位置に固定された第1のY軸固定電極と、からなる第1のY軸容量素子によって構成され、
第2のY軸センサが、第2のY軸下方膜部に形成された第2のY軸変位電極と、この第2のY軸変位電極に対向する位置に固定された第2のY軸固定電極と、からなる第2のY軸容量素子によって構成され、
第3のY軸センサが、第3のY軸下方膜部に形成された第3のY軸変位電極と、この第3のY軸変位電極に対向する位置に固定された第3のY軸固定電極と、からなる第3のY軸容量素子によって構成され、
第4のY軸センサが、第4のY軸下方膜部に形成された第4のY軸変位電極と、この第4のY軸変位電極に対向する位置に固定された第4のY軸固定電極と、からなる第4のY軸容量素子によって構成されており、
検出部が、第1のX軸容量素子の静電容量変動値Cx1、第2のX軸容量素子の静電容量変動値Cx2、第3のX軸容量素子の静電容量変動値Cx3、第4のX軸容量素子の静電容量変動値Cx4、第1のY軸容量素子の静電容量変動値Cy1、第2のY軸容量素子の静電容量変動値Cy2、第3のY軸容量素子の静電容量変動値Cy3、第4のY軸容量素子の静電容量変動値Cy4に基づいて得られた電気信号を、検出値として出力するようにしたものである。
【0052】
(43) 本発明の第43の態様は、上述した第42の態様に係る力検出装置において、
下方基板が導電性材料から構成され、第1〜第4のX軸下方膜部自身がそれぞれ第1〜第4のX軸変位電極として機能し、第1〜第4のY軸下方膜部自身がそれぞれ第1〜第4のY軸変位電極として機能するようにしたものである。
【0053】
(44) 本発明の第44の態様は、上述した第42または第43の態様に係る力検出装置において、
下方基板の下面に固着された補助基板を更に設け、
補助基板の上面における第1〜第4のX軸下方膜部の下方位置にそれぞれ第1〜第4のX軸補助溝が形成されており、補助基板の上面における第1〜第4のY軸下方膜部の下方位置にそれぞれ第1〜第4のX軸補助溝が形成されており、
第1〜第4のX軸補助溝の底面にそれぞれ第1〜第4のX軸固定電極が形成され、第1〜第4のY軸補助溝の底面にそれぞれ第1〜第4のY軸固定電極が形成されているようにしたものである。
【0054】
(45) 本発明の第45の態様は、上述した第42または第43の態様に係る力検出装置において、
下方基板の下面に固着された補助基板を更に設け、
補助基板の上面における第1〜第4のX軸下方膜部の下方位置および第1〜第4のY軸下方膜部の下方位置を連結するような環状補助溝が形成されており、この環状補助溝の底面に第1〜第4のX軸固定電極および第1〜第4のY軸固定電極が形成されているようにしたものである。
【0055】
(46) 本発明の第46の態様は、上述した第42または第43の態様に係る力検出装置において、
第1〜第4のX軸下方膜部および第1〜第4のY軸下方膜部を除いた下方基板の下面の所定箇所にスペーサ部材が固着され、このスペーサ部材の下方に、補助基板が固着されており、この補助基板の上面に第1〜第4のX軸固定電極および第1〜第4のY軸固定電極が形成されているようにしたものである。
【0056】
(47) 本発明の第47の態様は、上述した第32の態様に係る力検出装置において、
下方構造体の下方に所定間隔をおいて固定された補助基板を更に設け、
第1のX軸センサが、第1のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第1のX軸変位電極と、補助基板の上面における第1のX軸変位電極に対向する位置に固定された第1のX軸固定電極と、からなる第1のX軸容量素子によって構成され、
第2のX軸センサが、第2のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第2のX軸変位電極と、補助基板の上面における第2のX軸変位電極に対向する位置に固定された第2のX軸固定電極と、からなる第2のX軸容量素子によって構成され、
第3のX軸センサが、第3のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第3のX軸変位電極と、補助基板の上面における第3のX軸変位電極に対向する位置に固定された第3のX軸固定電極と、からなる第3のX軸容量素子によって構成され、
第4のX軸センサが、第4のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第4のX軸変位電極と、補助基板の上面における第4のX軸変位電極に対向する位置に固定された第4のX軸固定電極と、からなる第4のX軸容量素子によって構成され、
第1のY軸センサが、第1のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第1のY軸変位電極と、補助基板の上面における第1のY軸変位電極に対向する位置に固定された第1のY軸固定電極と、からなる第1のY軸容量素子によって構成され、
第2のY軸センサが、第2のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第2のY軸変位電極と、補助基板の上面における第2のY軸変位電極に対向する位置に固定された第2のY軸固定電極と、からなる第2のY軸容量素子によって構成され、
第3のY軸センサが、第3のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第3のY軸変位電極と、補助基板の上面における第3のY軸変位電極に対向する位置に固定された第3のY軸固定電極と、からなる第3のY軸容量素子によって構成され、
第4のY軸センサが、第4のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第4のY軸変位電極と、補助基板の上面における第4のY軸変位電極に対向する位置に固定された第4のY軸固定電極と、からなる第4のY軸容量素子によって構成されており、
検出部が、第1のX軸容量素子の静電容量変動値Cx1、第2のX軸容量素子の静電容量変動値Cx2、第3のX軸容量素子の静電容量変動値Cx3、第4のX軸容量素子の静電容量変動値Cx4、第1のY軸容量素子の静電容量変動値Cy1、第2のY軸容量素子の静電容量変動値Cy2、第3のY軸容量素子の静電容量変動値Cy3、第4のY軸容量素子の静電容量変動値Cy4に基づいて得られた電気信号を、検出値として出力するようにしたものである。
【0057】
(48) 本発明の第48の態様は、上述した第47の態様に係る力検出装置において、
下方構造体が導電性材料から構成され、各枝状部自身がそれぞれ第1〜第4のX軸変位電極および第1〜第4のY軸変位電極として機能するようにしたものである。
【0058】
(49) 本発明の第49の態様は、上述した第48の態様に係る力検出装置において、
補助基板の上面における各枝状部の先端部に対向する位置のそれぞれに、各固定電極とは電気的に絶縁された接触判定用電極を設け、枝状部の先端部と接触判定用電極との物理的接触の有無を、両者の電気的導通状態に基づいて判定できるようにしたものである。
【0059】
(50) 本発明の第50の態様は、上述した第49の態様に係る力検出装置において、
1つの枝状部の先端部に対向する位置に、互いに絶縁された一対の接触判定用電極を設け、この一対の接触判定用電極の相互間の電気的導通状態に基づいて、枝状部の先端部と一対の接触判定用電極との物理的接触の有無を判定できるようにしたものである。
【0060】
(51) 本発明の第51の態様は、上述した第48の態様に係る力検出装置において、
補助基板の上面における各枝状部の先端部に対向する位置をそれぞれ連結する環状領域に、各固定電極とは電気的に絶縁された接触判定用環状電極を設け、枝状部の先端部と接触判定用環状電極との物理的接触の有無を、両者の電気的導通状態に基づいて判定できるようにしたものである。
【0061】
(52) 本発明の第52の態様は、上述した第51の態様に係る力検出装置において、
環状領域に、互いに絶縁された同心状の一対の接触判定用環状電極を設け、この一対の接触判定用環状電極の相互間の電気的導通状態に基づいて、枝状部の先端部と一対の接触判定用環状電極との物理的接触の有無を判定できるようにしたものである。
【0062】
(53) 本発明の第53の態様は、上述した第49〜第52の態様に係る力検出装置において、
接触判定用電極もしくは接触判定用環状電極と枝状部との物理的接触によって形成される導電路が、各変位電極と検出部とを電気的に接続する配線路を構成するようにしたものである。
【0063】
(54) 本発明の第54の態様は、上述した第42〜第53の態様に係る力検出装置において、
第1のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第1のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第1象限に位置し、
第3のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第2のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第2象限に位置し、
第4のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第4のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第3象限に位置し、
第2のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第3のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第4象限に位置し、
第1〜第4のX軸柱状体は、下端よりも上端の方が、XZ平面に近くなるように傾斜し、第1〜第4のY軸柱状体は、下端よりも上端の方が、YZ平面に近くなるように傾斜し、
「第1〜第4のX軸柱状体」、「第1〜第4のY軸柱状体」、「上方基板もしくは上方構造体」、「下方基板もしくは下方構造体」によって構成される主構造体が、XZ平面に関して面対称をなし、かつ、YZ平面に関しても面対称をなすようにしたものである。
【0064】
(55) 本発明の第55の態様は、上述した第54の態様に係る力検出装置において、
検出部が、
(Cy1−Cy2)+(Cy3−Cy4)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)*を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
(Cx1−Cx2)+(Cx3−Cx4)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)*を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力するようにしたものである。
【0065】
(56) 本発明の第56の態様は、上述した第55の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
(Cy3+Cy4)−(Cy1+Cy2)なる式で得られる値に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
(Cx1+Cx2)−(Cx3+Cx4)なる式で得られる値に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力するようにしたものである。
【0066】
(57) 本発明の第57の態様は、上述した第54の態様に係る力検出装置において、
検出部が、
(Cy3+Cy4)−(Cy1+Cy2)なる式で得られる値に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
(Cx1+Cx2)−(Cx3+Cx4)なる式で得られる値に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力するようにしたものである。
【0067】
(58) 本発明の第58の態様は、上述した第57の態様に係る力検出装置において、
検出部が、所定の係数k1〜k4を用いて、更に、
(Cy1−Cy2)+(Cy3−Cy4)−k2/k1・V(My)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
(Cx1−Cx2)+(Cx3−Cx4)−k4/k3・V(Mx)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力するようにしたものである。
【0068】
(59) 本発明の第59の態様は、上述した第55〜第58の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
−(Cx1+Cx2+Cx3+Cx4+Cy1+Cy2+Cy3+Cy4)
または、−(Cx1+Cx2+Cx3+Cx4)
または、−(Cy1+Cy2+Cy3+Cy4)
なる式で得られる値に対応する信号値V(Fz)を、作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力するようにしたものである。
【0069】
(60) 本発明の第60の態様は、上述した第55〜第59の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
(Cx1−Cx2)+(Cx4−Cx3)+(Cy2−Cy1)+(Cy3−Cy4)なる式で得られる値に対応する信号値V(Mz)を、作用したZ軸まわりのモーメントMxの検出値として出力するようにしたものである。
【0070】
(61) 本発明の第61の態様は、上述した第1〜第60の態様に係る力検出装置において、
柱状体の一部もしくは全部に可撓性をもたせ、外力が作用したときに柱状体が変形するようにしたものである。
【0071】
(62) 本発明の第62の態様は、上述した第61の態様に係る力検出装置において、
柱状体の一部に可撓性をもったくびれ部を形成し、外力が作用したときに、くびれ部の変形によって、柱状体が屈曲するようにしたものである。
【0072】
(63) 本発明の第63の態様は、上述した第61の態様に係る力検出装置において、
柱状体全体が可撓性をもった材質によって構成されており、外力が作用したときに、柱状体全体が変形するようにしたものである。
【発明の効果】
【0073】
本発明に係る力検出装置では、上方基板(上方構造体)と下方基板(下方構造体)との間に一対の柱状体を渡し、かつ、これら一対の柱状体が垂直軸に関して互いに逆向きに傾斜した構造をとるようにしたため、「各柱状体の傾斜状態」を「垂直方向に働く力」として測定できるようになる。これにより、各柱状体の傾斜状態を測定するセンサとして、「垂直方向に働く力」を検出可能なセンサを用意すれば足りる。たとえば、容量素子を用いたセンサを利用する場合、1本の柱状体に対して1組の容量素子を配置すれば足りる。したがって、非常に単純な構造をもった力検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】従来提案されている柱状体を用いた力検出装置の基本構造を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す力検出装置によるX軸方向の力Fxの検出原理を示す縦断面図であり、この装置をXZ平面で切断した断面が示されている。
【図3】本発明の基本的実施形態に係る力検出装置によるX軸方向の力Fxの検出原理を示す縦断面図である。
【図4】本発明の基本的実施形態に係る力検出装置によるZ軸方向の力Fzの検出原理を示す縦断面図である。
【図5】本発明の基本的実施形態に係る力検出装置において、柱状体と膜部との間に突起部を介在させる構造をとった場合に、各部品を分解した状態を示す縦断面図である。
【図6】図5に示す各部品を用いて組み立てられた力検出装置を示す縦断面図である(検出回路の部分はブロックとして示す)。
【図7】本発明の実用的実施形態に係る力検出装置の構成要素を分解した状態で示す正面図である。
【図8】本発明の実用的実施形態に係る力検出装置を示す正面図である(検出回路の部分はブロックとして示す)。
【図9】図8に示す力検出装置の上面図である(ハッチング部分は、説明の便宜のために定義された8つの領域を示す)。
【図10】図8に示す力検出装置の構成要素である上方基板100の上面図である。
【図11】図(A) ,(B) ,(C) は、図10に示す上方基板100を、それぞれ切断線A−A,B−B,C−Cに沿って切断した縦断面図である。
【図12】図8に示す力検出装置の構成要素である下方基板200の上面図である。
【図13】図(A) ,(B) ,(C) は、図12に示す下方基板200を、それぞれ切断線A−A,B−B,C−Cに沿って切断した縦断面図である。
【図14】図8に示す力検出装置の構成要素である補助基板300の上面図である。
【図15】図(A) ,(B) ,(C) は、図14に示す補助基板300を、それぞれ切断線A−A,B−B,C−Cに沿って切断した縦断面図である。
【図16】図8に示す力検出装置を、XZ平面に沿って切断した縦断面図である。
【図17】図8に示す力検出装置を、図10,図12,図14に示されている切断線A−Aに沿って切断した縦断面図である。
【図18】図8に示す力検出装置を、図10,図12,図14に示されている切断線B−Bに沿って切断した縦断面図である。
【図19】図8に示す力検出装置を、図10,図12,図14に示されている切断線C−Cに沿って切断した縦断面図である。
【図20】図8に示す力検出装置における上方膜部および下方膜部の位置関係を示す平面図である。
【図21】図8に示す力検出装置における下方基板200およびその上面に取り付けられた8本の柱状体を示す平面図である(ハッチング部分は、各柱状体の上端面を示している)。
【図22】図8に示す力検出装置に力+Fxのみによる変形を生じさせるための構造例を示す正面図である。
【図23】図8に示す力検出装置に力+Fzのみによる変形を生じさせるための構造例を示す正面図である(ガイド部材450は断面を示す)。
【図24】図8に示す力検出装置にモーメント+Myのみによる変形を生じさせる様子を示す正面図である。
【図25】図8に示す力検出装置にモーメント+Mzのみによる変形を生じさせた状態を示す正面図である。
【図26】図8に示す力検出装置に各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分を作用させた場合の各容量素子の容量値変化を示すテーブルである。
【図27】図8に示す力検出装置における6つの力成分Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出に用いる式を示す図である。
【図28】図8に示す力検出装置において生じる他軸干渉を示すグラフである。
【図29】図28に示す他軸干渉を相殺して正確な検出値を得るために用いる式を示す図である。
【図30】図10の上方基板の変形例を示す上面図である。
【図31】図12の下方基板の変形例を示す上面図である。
【図32】図14の補助基板の変形例を示す上面図である。
【図33】可撓性基板を用いた本発明の変形例に係る力検出装置を示す正面図である。
【図34】図33に示す力検出装置における上方基板(可撓性基板)150および下方基板(可撓性基板)250の斜視図である。
【図35】図33に示す力検出装置における下方基板250およびその上面に取り付けられた8本の柱状体を示す平面図である(ハッチング部分は、各柱状体の上端面を示している)。
【図36】図34に示す上方基板(可撓性基板)150および下方基板(可撓性基板)250の代わりに用いる上方基板(可撓性基板)160および下方基板(可撓性基板)260を示す上面図である。
【図37】本発明に用いる柱状体の変形例を示す斜視図である。
【図38】図37に示す柱状体を用いた本発明の変形例に係る力検出装置を示す縦断面図である。
【図39】可撓性をもった材質からなる柱状体を用いた本発明の変形例に係る力検出装置を示す縦断面図である。
【図40】可撓性をもった材質からなる柱状体を用いた本発明の別な変形例に係る力検出装置を示す正面図である。
【図41】図33に示す力検出装置における下方基板250の代わりに用いる下方構造体280の上面図である。
【図42】図33に示す力検出装置における補助基板340の代わりに用いる補助基板380を示す上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図43】図41に示す下方構造体280および図42に示す補助基板380を用いた変形例を示す縦断面図(XZ平面で切った断面図)である。
【図44】図43に示す変形例を装置筐体内に収容した状態を示す縦断面図である。
【図45】図42に示す補助基板380の第1の変形例を示す上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図46】図42に示す補助基板380の第2の変形例を示す上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図47】図42に示す補助基板380の第3の変形例を示す上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図48】図42に示す補助基板380の第4の変形例を示す上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図49】図41に示す下方構造体280の変形例に係る下方構造体290の上面図である。
【図50】図42に示す補助基板380の変形例に係る補助基板390の上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0076】
<<< §1. 従来提案されている柱状体を用いた力検出装置 >>>
はじめに、前掲の各特許文献に開示されている柱状体を用いた力検出装置の基本構造とその検出の基本原理を簡単に説明する。
【0077】
図1は、このような従来型の力検出装置の基本構造を示す分解斜視図である。図示のとおり、この装置は、上方基板10,下方基板20,補助基板30,第1の柱状体41,第2の柱状体42を備えている。上方基板10の下面には、第1の上方溝G1および第2の上方溝G2(いずれも円形の溝)が形成されており、これら溝の底部は、肉厚が薄いために可撓性を帯びた第1の上方膜部11および第2の上方膜部12を形成している。一方、下方基板20の上面には、第1の下方溝H1および第2の下方溝H2(いずれも円形の溝)が形成されており、これら溝の底部は、肉厚が薄いために可撓性を帯びた第1の下方膜部21および第2の下方膜部22を形成している。
【0078】
なお、ここでの「可撓性」とは、「弾性変形する性質」を言うものであり、「外力の作用によって変形が生じ、当該外力を取り去ると、もとの形に復帰する性質」を言うものである。また、本願において「可撓性を有する」とは、「作用した外力に対して有意な検出値を得るために十分な変形が生じること」を意味するものである。したがって、図1に示す上方基板10や下方基板20における溝が形成されていない部分も、厳密に言えば、外力の作用によって変形が生じるかもしれないが、溝の底部に比べれば、微細な変形にすぎない。したがって、本願にいう「可撓性」をもつ部分は、肉厚が薄い上方膜部11,12や下方膜部21,22の部分ということになる。
【0079】
図1は、この装置の各部品を分解した状態を示す分解斜視図であるが、実際には、第1の柱状体41の上端は第1の上方膜部11の中心に接合され、下端は第1の下方膜部21の中心に接合される。同様に、第2の柱状体42の上端は第2の上方膜部12の中心に接合され、下端は第2の下方膜部22の中心に接合される。図1では、これら柱状体41,42の各基板10,20に対する接合位置を一点鎖線で示してある。柱状体41,42は、円柱状の部材であり、その中心軸が各基板10,20に直交するように配置されている。
【0080】
結局、上方基板10と下方基板20とは、2本の柱状体41,42を介して互いに接合された状態になる。ただ、接合部分は、肉厚が薄いために可撓性を帯びた膜部(ダイアフラム)を形成しており、この膜部の撓みによって、各柱状体41,42は変位することが可能である。したがって、下方基板20を固定した状態において、上方基板10に対して外力を作用させると、各柱状体41,42が変位し、上方基板10が下方基板20に対して変位を生じることになる。この力検出装置の検出原理は、各柱状体41,42の変位に基づいて、作用した外力を検出することにある。
【0081】
補助基板30は、下方基板20の下方に所定間隔をおいて固定された絶縁性の基板であり、その上面には、4枚の半円状の固定電極E1〜E4が形成されている。ここで、一対の固定電極E1,E2は、第1の下方膜部21に対向する電極であり、一対の固定電極E3,E4は、第2の下方膜部22に対向する電極である。下方基板20を導電性材料によって構成しておけば、第1の下方膜部21および第2の下方膜部22は、いずれも円盤状の変位電極として機能することになる。
【0082】
したがって、第1の下方膜部21の左側半分の部分とこれに対向する固定電極E1とによって第1の容量素子C1が形成され、第1の下方膜部21の右側半分の部分とこれに対向する固定電極E2とによって第2の容量素子C2が形成される。同様に、第2の下方膜部22の左側半分の部分とこれに対向する固定電極E3とによって第3の容量素子C3が形成され、第2の下方膜部22の右側半分の部分とこれに対向する固定電極E4とによって第4の容量素子C4が形成される。これら容量素子C1〜C4は、各柱状体41,42の変位を検出するセンサとして機能する。
【0083】
ここでは、便宜上、図示のように、XYZ三次元座標系を定義する。Z軸は、3枚の基板10,20,30の中心位置を貫く位置に定義され、上方基板10の上面に対して交点Q10をなし、下方基板20の上面に対して交点Q20をなし、補助基板30の上面に対して交点Q30をなす。一方、X軸およびY軸は、各基板面に対して平行な方向を向いた座標軸である。
【0084】
座標系の原点Oの位置は、たとえば交点Q10,Q20,Q30の位置に定義することもできるが、ここでは、後述する実施例との整合性をもたせるため、Z軸上における、下方基板20の下面と補助基板30の上面との中間位置に原点Oをとることにする。3枚の基板10,20,30の基板面(溝形成部を除く上面および下面)は、いずれもXY平面に平行な面になる。
【0085】
図2(a) ,(b) は、図1に示す力検出装置によるX軸方向の力Fxの検出原理を示す縦断面図(この装置をXZ平面で切断した断面図)である。図2(a) は、図1に示す各部品を組み合わせて構成される装置を正面から見たときの縦断面図であり、この装置に何ら外力が作用していない状態を示している。下方基板20および補助基板30は、図示されていない支持部材によって、図示の位置に固定された状態になっている。一方、上方基板10は、外力が作用していない状態では、図示のとおり、下方基板20の真上に位置している。このとき、柱状体41,42の中心軸は、Z軸に平行な状態となっている。
【0086】
ところが、外力の作用を受けると、各膜部11,12,21,22が撓みを生じ、柱状体41,42が変位し、上方基板10自身も変位を生じることになる。図2(b) は、上方基板10の重心位置にとった作用点Qに、X軸正方向の力+Fxが作用した場合の変位状態を示している。図示のとおり、2本の柱状体41,42はいずれもX軸正方向(図の右方向)に傾斜し、上方基板10は右方向へ変位を生じている。作用した力+Fxが大きければ大きいほど、柱状体41,42の傾斜度も大きくなる。また、X軸負方向の力−Fxが作用した場合は、柱状体41,42は、図とは逆に、X軸負方向(図の左方向)に傾斜し、上方基板10は左方向へ変位する。
【0087】
さて、ここで、柱状体41,42の中心軸をそれぞれA1,A2とすれば、図2(a) に示すように、何ら外力が作用していない状態では、各中心軸A1,A2は、それぞれ垂直基準軸R1,R2(Z軸に平行な軸)に一致する。したがって、垂直基準軸R1に対する中心軸A1の傾斜角をθ1、垂直基準軸R2に対する中心軸A2の傾斜角をθ2とすれば、θ1=θ2=0である。
【0088】
ところが、図2(b) に示すように、作用点Qに対して外力+Fxが作用すると、各中心軸A1,A2はX軸正方向(図の右方向)に傾斜するため、傾斜角θ1,θ2は増加することになる。たとえば、図において、垂直基準軸R1,R2を基準として、時計まわりの方向に傾斜角θ1,θ2を定義したとすれば、外力+Fxが作用すると、傾斜角θ1,θ2は正の値をとる。逆に、外力−Fxが作用すると、各中心軸A1,A2はX軸負方向(図の左方向)に傾斜するため、傾斜角θ1,θ2は負の値をとる。したがって、傾斜角θ1,θ2を測定することができれば、X軸方向に作用した外力Fxの向きおよび大きさを検出することができる。
【0089】
図示の装置では、4組の容量素子C1〜C4の静電容量値(同じ符号C1〜C4で示す)によって、傾斜角θ1,θ2の変化を把握することができる。たとえば、図2(b) に示す状態を図2(a) に示す状態と比較すると、固定電極E1と下方膜部21の左半分(変位電極)との距離は広がっているため静電容量値C1は減少し、固定電極E2と下方膜部21の右半分(変位電極)との距離は狭まっているため静電容量値C2は増加する。よって、柱状体41の傾斜角θ1は、容量値の差「C2−C1」として求めることができる。同様に、固定電極E3と下方膜部22の左半分(変位電極)との距離は広がっているため静電容量値C3は減少し、固定電極E4と下方膜部22の右半分(変位電極)との距離は狭まっているため静電容量値C4は増加する。よって、柱状体42の傾斜角θ2は、容量値の差「C4−C3」として求めることができる。そこで、傾斜角θ1,θ2の和に対応する「(C2−C1)+(C4−C3)」なる値を、X軸方向に作用した外力Fxの検出値として用いることができる。
【0090】
ここでは、説明の便宜上、2本の柱状体41,42を用いて、X軸方向の力Fxを検出する単純な例を示したが、前掲の各特許文献には、より多数の柱状体を設け、個々の柱状体のそれぞれについて、X軸正および負方向への傾斜とともに、Y軸正および負方向への傾斜を測定することにより、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分を検出する方法が開示されている。
【0091】
しかしながら、この従来型の力検出装置において、柱状体の特定方向への傾斜度を測定するためには、それぞれ独立したセンサが必要になり、装置全体の構造が複雑化する問題が生じることは、既に述べたとおりである。たとえば、センサとして容量素子を用いた場合、1本の柱状体のX軸方向に関する傾斜度を測定するために2組の容量素子が必要になり、XY両軸方向に関する傾斜度を測定するためには4組の容量素子が必要になる。
【0092】
<<< §2. 本発明の基本的実施形態に係る力検出装置 >>>
本発明の最も重要な着眼点は、「上方基板と下方基板との間を接続する一対の柱状体を互いに逆向きに傾斜させる」という発想にある。すなわち、前掲の各特許文献に開示されている技術では、「外力が作用していない標準の状態において、各柱状体が下方基板の基板面に対して垂直である」ことを前提としている。たとえば、図2(a) に示す例の場合、上方基板10および下方基板20の基板面がXY平面に平行になるように配置され、第1の柱状体41および第2の柱状体42は、その中心軸がZ軸に平行になるように配置されている。
【0093】
別言すれば、従来装置の場合、柱状体41,42は、下方基板20上に垂直に立っている状態を基準とし、柱状体41,42が、この垂直な状態からどちらの方向にどれだけ傾斜したかを測定することにより、作用した外力の検出が行われることになる。これに対して、本発明では、「外力が作用していない標準の状態において、各柱状体が下方基板の基板面に対して傾斜している」ことを前提としており、しかも「一対の柱状体が互いに逆向きに傾斜している」ことを前提としている。
【0094】
図3(a) ,(b) は、本発明の基本的実施形態に係る力検出装置によるX軸方向の力Fxの検出原理を示す縦断面図(XZ平面で切断した断面)である。この図3に示す基本的実施形態に係る装置は、図2に示す従来装置と同様に、上方基板10,下方基板20,補助基板30,第1の柱状体P1,第2の柱状体P2を備えている。ここで、図3(a) は、外力が作用していない標準の状態を示すものである。
【0095】
図示のとおり、上方基板10の下面には、第1の上方溝G1および第2の上方溝G2(いずれも円形の溝)が形成されており、これら溝の底部は、肉厚が薄いために可撓性を帯びた第1の上方膜部11および第2の上方膜部12を形成している。一方、下方基板20の上面には、第1の下方溝H1および第2の下方溝H2(いずれも円形の溝)が形成されており、これら溝の底部は、肉厚が薄いために可撓性を帯びた第1の下方膜部21および第2の下方膜部22を形成している。そして、第1の柱状体P1の上端は第1の上方膜部11の中心に接合され、下端は第1の下方膜部21の中心に接合されている。同様に、第2の柱状体P2の上端は第2の上方膜部12の中心に接合され、下端は第2の下方膜部22の中心に接合されている。
【0096】
結局、上方基板10と下方基板20とは、2本の円柱状の柱状体P1,P2を介して互いに接合された状態になる。ただ、接合部分は、肉厚が薄いために可撓性を帯びた膜部(ダイアフラム)を形成しており、この膜部の撓みによって、各柱状体P1,P2は変位することが可能である。したがって、下方基板20を固定した状態において、上方基板10に対して外力を作用させると、各柱状体P1,P2が変位し、上方基板10が下方基板20に対して変位を生じることになる。このような基本的な性質は、§1で述べた従来装置の基本的な性質と全く同様であり、本発明に係る装置においても、各柱状体P1,P2の変位に基づいて、作用した外力の検出が行われる。
【0097】
ただ、図3(a) の構造を図2(a) の構造と比較すればわかるとおり、本発明に係る装置の場合、外力が作用していない標準の状態において、2本の柱状体P1,P2が傾斜した状態になっている。すなわち、§1で述べた例と同様に、3枚の基板10,20,30の中心位置を貫く位置にZ軸をとり、このZ軸上における、下方基板20の下面と補助基板30の上面との中間位置に原点Oをとって、図示のようなXYZ三次元座標系を定義した場合、3枚の基板10,20,30の基板面は、いずれもXY平面に平行な面になる。ところが、2本の柱状体P1,P2の中心軸A1,A2は、いずれも垂直基準軸R1,R2に対して傾斜した状態になっている。
【0098】
補助基板30は、下方基板20の下方に所定間隔をおいて固定された絶縁性の基板であり、その上面には、2枚の固定電極E5,E6が形成されている。ここで、固定電極E5は、第1の下方膜部21に対向する円盤状の電極であり、固定電極E6は、第2の下方膜部22に対向する円盤状の電極である。下方基板20を導電性材料によって構成しておけば、第1の下方膜部21および第2の下方膜部22は、いずれも円盤状の変位電極として機能することになる。よって、第1の下方膜部21とこれに対向する固定電極E5とによって容量素子C5が形成され、第2の下方膜部22とこれに対向する固定電極E6とによって容量素子C6が形成される。
【0099】
さて、この装置では、外力が作用していない標準の状態において、2本の柱状体P1,P2が傾斜した状態になっているため、柱状体P1,P2の上端は上方膜部11,12に対して斜めに接続されており、下端は下方膜部21,22に対して斜めに接続されている。したがって、外力が作用していない標準の状態において、各膜部11,12,21,22は水平な膜の状態を維持し、これらの膜には、撓みを生じさせる応力は作用していない。よって、この標準の状態においては、静電容量値C5=C6である。
【0100】
ここで重要な点は、この図3(a) に示す標準の状態において、第1の柱状体P1と第2の柱状体P2とが、Z軸に関して逆向きに傾斜している点である。図示の例の場合、第1の柱状体P1はZ軸を基準として右方向(X軸正方向)に傾斜しているのに対して、第2の柱状体P2はZ軸を基準として左方向(X軸負方向)に傾斜している。すなわち、中心軸A1,A2の垂直基準軸R1,R2に対する傾斜角θ1,θ2に着目すると、傾斜角θ1,θ2は符号が逆になる。図において、垂直基準軸R1,R2を基準として、時計まわりの方向に傾斜角θ1,θ2を定義したとすれば、θ1は正の値、θ2は負の値になる。図示の例では、装置の構造が、YZ平面に関して面対称をなすように設計しているため、θ1とθ2の絶対値は等しくなる。
【0101】
なお、図示の例では、2本の柱状体P1,P2の間隔が、上方にゆく程小さくなるような傾斜(逆V字型の傾斜)をとっているが、2本の柱状体P1,P2の間隔が、上方にゆく程大きくなるような傾斜(V字型の傾斜)をとってもかまわない。ここで必要な要件は、上方基板10を図の右方向もしくは左方向へ移動させたときに、2本の柱状体P1,P2の一方は傾斜角が増加し(寝る方向に変位し)、他方は傾斜角が減少する(立つ方向に変位する)ようにすることである。
【0102】
図3(b) は、この力検出装置の下方基板20および補助基板30を、図示されていない支持部材によって図示の位置に固定し、上方基板10の重心位置にとった作用点Qに、X軸正方向の力+Fxが作用した場合の変位状態を示している。図示のとおり、2本の柱状体P1,P2の上端はいずれもX軸正方向(図の右方向)に移動する。このため、第1の柱状体P1は寝る方向に変位し、その傾斜度θ1の絶対値は増加する。ところが、第2の柱状体P2は立つ方向に変位し、その傾斜度θ2の絶対値は減少する。図3(b) は、θ2=0になった状態を示しており、第2の柱状体P2の中心軸A2は垂直基準軸R2に一致している。
【0103】
ここで、この図3(b) において、第1の柱状体P1の上下に接合されている膜部11,21の変形態様に着目すると、第1の上方膜部11は下方へと引っ張られ、第1の下方膜部21は上方へと引っ張られるように変形している。これは、第1の柱状体P1が寝る方向に変位し、垂直方向に関する実効寸法が短くなったために生じる変形である。これに対して、第2の柱状体P2の上下に接合されている膜部12,22の変形態様に着目すると、第2の上方膜部12は上方へ押し出され、第2の下方膜部22は下方へ押し出されるように変形している。これは、第2の柱状体P2が立つ方向に変位し、垂直方向に関する実効寸法が長くなったために生じる変形である。
【0104】
なお、実際には、下方基板20および補助基板30を固定し、上方基板10を自由な状態(2本の柱状体P1,P2のみによって支持された状態)にして、作用点QにX軸方向の力+Fxを作用させると、上述したとおり、第1の上方膜部11には下方へと引っ張られる力が加わり、第2の上方膜部12には上方へ押し出される力が加わるため、上方基板10には反時計まわりの回転変位が生じることになる。ただ、そのような回転変位が生じたとしても、各膜部11,12,21,22の基本的な変形態様が図3(b) に示すようになることに変わりはない。
【0105】
図示の装置では、2組の容量素子C5,C6の静電容量値(同じ符号C5,C6で示す)によって、このような2本の柱状体P1,P2の変位状態を把握することができる。たとえば、図3(b) に示す状態を図3(a) に示す状態と比較すると、固定電極E5と下方膜部21(変位電極)との距離は広がっているため静電容量値C5は減少し、固定電極E6と下方膜部22(変位電極)との距離は狭まっているため静電容量値C6は増加する。よって、作用点Qに作用したX軸正方向の力+Fxは、容量値の差「C6−C5」として求めることができる。また、X軸負方向の力−Fxが作用した場合は、図3(b) と鏡像関係の状態が得られるので、やはり力−Fxは、容量値の差「C6−C5」として求めることができる(この場合、負の値が得られる)。結局、容量値の差「C6−C5」は、符号を考慮すれば、X軸方向に作用した外力Fxの検出値として用いることができる。
【0106】
なお、図3(b) に示す状態よりも更に大きな力+Fxが作用した場合は、第2の柱状体P2が寝る方向に変位することになり、容量値C6が減少し始めることになるので、容量値の差「C6−C5」は正しい検出値を示すものにはならない。したがって、図3(b) に示す状態で作用している力+Fxが、この装置によるX軸正方向の力の定格検出値ということになる。同様に、第1の柱状体P1を垂直に立った状態にまで変位させる力−Fxが、この装置によるX軸負方向の力の定格検出値ということになる。したがって、実用上は、定格値を超える力が作用したときの誤検出を避けるために、上方基板10の変位を制限する制御部材を設けるなどの工夫を施すのが好ましい。このような制御部材は、また、定格値を超える力の作用によって、膜部が破損することを避ける上でも有用である。
【0107】
このように、本発明では、外力が作用していない標準の状態において、一対の柱状体P1,P2が互いに逆向きに傾斜した構造をとるようにしたため、「各柱状体P1,P2の傾斜状態」を「基板面に垂直な方向に働く力」として測定できるようになる。これは、各柱状体の傾斜状態を測定するセンサの構成をより単純化できることを意味する。実際、図2に示す従来装置の場合、力Fxの検出を行うために、4組の容量素子C1〜C4を用いた測定が必要であるのに対して、図3に示す本発明に係る装置の場合、2組の容量素子C5,C6を用いた測定によって、力Fxの検出が可能になる。これは、各柱状体P1,P2の傾斜状態が、図3(a) に示す状態から図3(b) に示す状態に変化したことを認識するのに、下方膜部21,22のZ軸方向の変位(基板面に垂直な方向に関する変位)のみを測定すれば足りるためである。
【0108】
なお、この§2で述べる基本的実施形態に係る力検出装置は、作用点Qに作用したX軸方向の力Fxのみならず、Z軸方向の力Fzを検出することも可能である。図4(a) は、この装置の作用点Qに、Z軸正方向の力+Fzが作用したときの状態を示す縦断面図であり、図4(b) は、Z軸負方向の力−Fzが作用したときの状態を示す縦断面図である。
【0109】
図3(a) に示す標準の状態と比較すると、図4(a) に示すように、力+Fzが作用したときは、上方基板10は上方へと移動し、下方膜部21,22はいずれも上方へと引っ張られることになる。このため、容量素子C5,C6の電極間隔はいずれも広がり、両者の容量値はいずれも減少する。これに対して、図4(b) に示すように、力−Fzが作用したときは、上方基板10は下方へと移動し、下方膜部21,22はいずれも下方へと押し下げられることになる。このため、容量素子C5,C6の電極間隔はいずれも狭まり、両者の容量値はいずれも増加する。
【0110】
したがって、2組の容量素子C5,C6の容量値の和「(C5+C6)」は、Z軸方向の力Fzの検出値に対応することになる。すなわち、図3(a) に示す標準の状態における「(C5+C6)」の値を基準として、この値が小さくなれば、Z軸正方向の力+Fzが作用したことを示すことになり、この値が大きくなれば、Z軸負方向の力−Fzが作用したことを示すことになる。
【0111】
なお、図3および図4に示す装置では、各柱状体P1,P2の上端および下端を、各膜部11,12,21,22に直接接合する形態をとっているが、両者間に別な部材を介在させて間接的に接合する形態をとってもかまわない。
【0112】
図5は、本発明の基本的実施形態に係る力検出装置において、柱状体と膜部との間に突起部を介在させる構造をとった場合に、各部品を分解した状態で示す縦断面図である。図示のとおり、この装置は、上方基板15,第1の柱状体P1,第2の柱状体P2,下方基板25,補助基板35を備えている。
【0113】
ここで、上方基板15の下面には、第1の上方溝G1および第2の上方溝G2(いずれも円形の溝)が形成されており、これら溝の底部が、肉厚が薄いために可撓性を帯びた第1の上方膜部11および第2の上方膜部12を形成する点は、これまで述べた実施形態と同じである。また、下方基板25の上面には、第1の下方溝H1および第2の下方溝H2(いずれも円形の溝)が形成されており、これら溝の底部が、肉厚が薄いために可撓性を帯びた第1の下方膜部21および第2の下方膜部22を形成する点も、これまで述べた実施形態と同じである。
【0114】
ただ、第1の上方溝G1の内部には、溝の底面(すなわち、第1の上方膜部11の下面)から基板面位置まで下方に伸びる円柱状の突起部13が設けられており、第2の上方溝G2の内部には、溝の底面(すなわち、第2の上方膜部12の下面)から基板面位置まで下方に伸びる円柱状の突起部14が設けられている。そして、第1の柱状体P1の上端は、突起部13を介して間接的に第1の上方膜部11に接合され、第2の柱状体P2の上端は、突起部14を介して間接的に第2の上方膜部12に接合される。
【0115】
同様に、第1の下方溝H1の内部には、溝の底面(すなわち、第1の下方膜部21の上面)から基板面位置まで上方に伸びる円柱状の突起部23が設けられており、第2の下方溝H2の内部には、溝の底面(すなわち、第2の下方膜部22の上面)から基板面位置まで上方に伸びる円柱状の突起部24が設けられている。そして、第1の柱状体P1の下端は、突起部23を介して間接的に第1の下方膜部21に接合され、第2の柱状体P2の下端は、突起部24を介して間接的に第2の下方膜部22に接合される。
【0116】
更に、絶縁材料からなる補助基板35の上面における第1の下方膜部21の下方位置に第1の補助溝K1(円形の溝)が形成されており、第2の下方膜部22の下方位置に第2の補助溝K2(円形の溝)が形成されている。そして、第1の補助溝K1の底面に、円盤状をした第1の固定電極E5が形成され、第2の補助溝K2の底面に、円盤状をした第2の固定電極E6が形成されている。
【0117】
これらの各部品を組み立てることにより、図6に示すような力検出装置が得られる。柱状体P1,P2の上端は、それぞれ突起部13,14の下面に接合され、柱状体P1,P2の下端は、それぞれ突起部23,24の上面に接合され、更に、下方基板25の下面に、補助基板35が固着される。ここで、下方基板25は、たとえば金属などの導電性材料から構成されており、この下方基板25の1箇所に対して、検出回路50への配線が施される。また、固定電極E5,E6に対しても、検出回路50への配線が施される。
【0118】
このように、上方基板15および下方基板25の溝内に、予め突起部13,14,23,24を形成しておく構造を採ると、各柱状体P1,P2の上下端を、これら突起部13,14,23,24の露出面に接合する作業を行うだけで、主たる構造部分を構成することができるので、組み立てが容易になる。また、図3,図4に示すように、柱状体P1,P2の上下端を溝の内部に入れて膜部に直接接合する構造にすると、柱状体P1,P2が極端に傾斜したときに溝の縁に接触するおそれがあるが、図5,図6に示すように、突起部13,14,23,24を介して間接的に接合する構造にすれば、柱状体P1,P2が、溝の外に配置されることになるので、溝の縁に接触することを防ぐことができる。
【0119】
結局、本発明の基本的実施形態に係る力検出装置の必須構成要素は、XY平面に平行な基板面を有する上方基板10,15、XY平面に平行な基板面を有し、上方基板の下方に配置された下方基板20,25、上端が上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1の柱状体P1、上端が上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され下端が下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第2の柱状体P2、第1の柱状体および第2の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部50、ということになる。
【0120】
ここで、上方基板10,15のうち、第1の柱状体P1の上端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第1の上方膜部11を構成し、第2の柱状体P2の上端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第2の上方膜部12を構成し、下方基板20,25のうち、第1の柱状体P1の下端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第1の下方膜部21を構成し、第2の柱状体P2の下端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第2の下方膜部22を構成することになる。
【0121】
なお、上方基板10,15側に設ける上方溝G1,G2は、必ずしも上方基板の下面側に設ける必要はなく、上面側に設けてもかまわない。上方溝G1,G2を上面側に設けた場合、上方膜部11,12は、上方基板10,15の下面側に位置する溝底部によって構成されることになる。要するに、上方基板の上面側もしくは下面側に第1の上方溝G1および第2の上方溝G2を設け、第1の上方溝G1の底部によって第1の上方膜部11が形成され、第2の上方溝G2の底部によって第2の上方膜部12が形成されるようにすればよい。
【0122】
同様に、下方基板20,25側に設ける下方溝H1,H2も、必ずしも下方基板の上面側に設ける必要はなく、下面側に設けてもかまわない。下方溝H1,H2を下面側に設けた場合、下方膜部21,22は、下方基板20,25の上面側に位置する溝底部によって構成されることになる。要するに、下方基板の上面側もしくは下面側に第1の下方溝H1および第2の下方溝H2を設け、第1の下方溝H1の底部によって第1の下方膜部21が形成され、第2の下方溝H2の底部によって第2の下方膜部22が形成されるようにすればよい。
【0123】
一方、本発明を実施するにあたり、第1の柱状体P1と第2の柱状体P2との配置条件は重要である。これまで述べてきた図3〜図6に示す例では、いずれも、第1の柱状体P1の中心軸A1と、第2の柱状体P2の中心軸A2とが、双方ともにXZ平面上(図3〜図6の紙面に対応する平面上)に位置し、Z軸に関して逆方向に傾斜する関係となっていた。
【0124】
ただ、両中心軸A1,A2は、必ずしも同一平面上にある必要はない。これまで述べた基本原理に基づいて、一対の容量素子C5,C6の容量値の差「C6−C5」に基づいてX軸方向の力Fxを検出し、一対の容量素子C5,C6の容量値の和「C5+C6」に基づいてZ軸方向の力Fzを検出できるようにするためには、第1の柱状体P1の中心軸A1をXZ平面に正射影して得られる投影像が、Z軸に対して第1の方向に傾斜しており、第2の柱状体P2の中心軸A1をXZ平面に正射影して得られる投影像が、Z軸に対して第1の方向とは逆の第2の方向に傾斜しているような構造が維持されていれば足りる。
【0125】
このような傾斜条件を満足するような構造であれば、第1の下方膜部21のZ軸方向への変位を検出する第1のセンサと、第2の下方膜部22のZ軸方向への変位を検出する第2のセンサと、を用意し、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との差を示す電気信号を、下方基板20を固定した状態において上方基板10に作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力することができ、また、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との和を示す電気信号を、Z軸方向の力Fzの検出値として出力することができる。
【0126】
もっとも、実用上は、第1の柱状体P1の中心軸A1と第2の柱状体P2の中心軸A2とが、「XZ平面」もしくは「XZ平面に平行な同一平面」上に配置されるようにし、第1の柱状体P1と第2の柱状体P2とが、YZ平面に関して面対称をなすようにするのが好ましい。そうすれば、装置全体を対称構造とすることができ、設計や組み立てが容易になるし、また、X軸正方向の力+Fxが作用した場合と、X軸負方向の力−Fxが作用した場合とで、変形態様に対称性が確保できるようになり、正の出力値と負の出力値との間に対称関係を得ることができる。
【0127】
なお、各柱状体の傾斜状態を測定するセンサとしては、各柱状体の下端によって、下方基板の基板面に対して垂直な方向(すなわち、上方向および下方向)に加えられる力を電気信号として測定できるセンサであれば、どのようなセンサを用いてもかまわない。ただ、図示の実施例に示す容量素子を用いたセンサは、構造が非常に単純なセンサであり、本発明への利用には最適である。
【0128】
したがって、実用上は、第1のセンサを、第1の下方膜部21に形成された第1の変位電極(図示の例の場合、下方膜部21自身)と、この第1の変位電極に対向する位置に固定された第1の固定電極E5と、からなる第1の容量素子C5によって構成し、第2のセンサを、第2の下方膜部22に形成された第2の変位電極(図示の例の場合、下方膜部22自身)と、この第2の変位電極に対向する位置に固定された第2の固定電極E6と、からなる第2の容量素子によって構成するのが好ましい。
【0129】
特に、図示の例のように、下方基板20,25を導電性材料から構成しておけば、第1の下方膜部21自身が第1の変位電極として機能し、第2の下方膜部22自身が第2の変位電極として機能することになるので、別途、変位電極を設ける必要がなくなり、構造を単純化することができる。もちろん、下方基板20,25が導電性材料でない場合には、第1の下方膜部21の下面に導電性材料からなる第1の変位電極を形成し、第2の下方膜部22の下面に導電性材料からなる第2の変位電極を形成すればよい。
【0130】
以上、この§2では、2本の柱状体P1,P2を用いて、X軸方向の力FxおよびZ軸方向の力Fzを検出する機能をもった基本的実施形態に係る力検出装置を述べたが、「一対の柱状体を基準軸に関して逆向きに傾斜させて配置する」という基本原理を利用すれば、§3,§4で述べるように、より多数の力成分を検出可能な力検出装置を設計することができる。また、この§2で述べた基本的実施形態に係る力検出装置には、様々な変形を施すことも可能である。
【0131】
たとえば、上方基板10全体を可撓性基板によって構成し、当該可撓性基板の一部により第1の上方膜部11が形成され、当該可撓性基板の別な一部により第2の上方膜部12が形成されるようにしてもよい。同様に、下方基板20全体を可撓性基板によって構成し、当該可撓性基板の一部により第1の下方膜部21が形成され、当該可撓性基板の別な一部により第2の下方膜部22が形成されるようにしてもよい。あるいは、上方基板10や下方基板20の代わりに、任意形状の構造体を用いるようにしてもよい。このような変形例については、§5で述べることにする。
【0132】
<<< §3. 本発明の実用的実施形態に係る力検出装置の構造 >>>
ここでは、§2で述べた基本原理を利用して、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分を検出する機能をもった実用的実施形態に係る力検出装置の構造を説明する。
【0133】
図7は、この実用的実施形態に係る力検出装置の構成要素を分解した状態で示す正面図である。図示のとおり、この装置の主たる構成部品は、上方基板100、下方基板200、補助基板300,そして8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4である。図8は、これら各部品を組み立てて、力検出装置を構成した状態を示す正面図である(検出回路の部分はブロックとして示す)。図示のとおり、8本の柱状体の上端は上方基板100の下面に接合され、下端は下方基板200の上面に接合される。また、補助基板300は、下方基板200の下面に接合される。補助基板300は、センサを構成する固定電極を支持する機能を果たす。
【0134】
ここで、図6に示す力検出装置の各構成要素と、図8に示す力検出装置の各構成要素とを比較すると、前者における上方基板15,下方基板25,補助基板35,柱状体P1,P2,検出回路50は、後者における上方基板100,下方基板200,補助基板300,柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4,検出回路500に対応する。両者の最大の相違点は、柱状体の数である。前者が、2本の柱状体を用いて、力FxおよびFzを検出する機能をもった装置であるのに対して、後者は、8本の柱状体を用いて、力Fx,Fy,FzおよびモーメントMx,My,Mzを検出する機能をもった装置である。
【0135】
図7および図8には、4本の柱状体のみが現れているが、実際には、図示されている各柱状体の奥に、それぞれ別な柱状体が配置されている(図では、奥に隠れている柱状体の符号を括弧書きで示してある)。この装置において、8本の柱状体の配置、特に、その中心軸の傾斜方向は、上記力の6成分を正しく検出する上で非常に重要である。そこで、以下、この装置の構造を、個々の基板100,200,300ごとに詳細に説明する。
【0136】
図9は、この力検出装置の上面図である。ここに示す実施形態では、3枚の基板100,200,300は、いずれも同一半径をもった円盤によって構成されている。このため、上面図には、上方基板100のみが現れているが、下方基板200および補助基板300は、その陰に隠れていることになる。ここでは、この3枚の円形基板の中心を貫く軸をZ軸にとることにする。また、図示のとおり、上面図において、図の右方向をX軸の正方向にとり、図の上方向をY軸の正方向にとる。したがって、3枚の基板100,200,300は、いずれも基板面がXY平面に平行な基板ということになり、その中心を貫くZ軸は、図8における上方を正方向とする座標軸になる。
【0137】
なお、この座標系の原点Oは、図8の正面図に示すように、補助基板300の上面近傍位置にとることにする(理由は後述する)。このため、XY平面は、図8の原点Oを通る水平面ということになるが、以下に示す各平面図(上面図)では、便宜上、図面上にX軸およびY軸を描いて示すことにする。厳密に言えば、以下に示す各平面図に描かれているX軸およびY軸は、当該図面上へのX軸およびY軸の投影像ということになるが、特に混乱が生じない限り、図面上に二次元XY座標系が定義されているものとして説明を行う。
【0138】
図9にハッチングを施して示す8箇所の楕円領域は、上述した8本の柱状体が配置されている領域を示すものである(ハッチングは、領域を示すためのものであり、断面を示すためのものではない)。各領域が楕円で示されているのは、各柱状体が傾斜しているためである。ここでは、これら8箇所の領域を、領域Ax1〜Ax4および領域Ay1〜Ay4と呼ぶことにする。領域Ax1〜Ax4は、X軸の両脇に配置された領域であり、領域Ay1〜Ay4は、Y軸の両脇に配置された領域である。以下、これら各領域を示す符号3文字のうち、後ろの符号2文字を、当該領域の位置を示す位置参照符号として利用することにする。たとえば、領域符号「Ax1」の後ろの2文字「x1」は、図示の領域Ax1の位置を示す位置参照符号として用いられる。
【0139】
図10は、図8に示す力検出装置の構成要素である上方基板100の上面図である。図には、8箇所に二重円が破線で描かれているが、これらは、上方基板100の下面に形成された溝および突起部を示すものである。溝も突起部も、基板下面に形成されているため、図では破線で描かれている。8箇所の二重円は、それぞれ図9に示す8箇所の領域のいずれかの位置に対応する。
【0140】
二重円を構成する外側の円は、形成された円環状の溝の外周を示し、内側の円は、形成された円柱状の突起部の外周を示している。外側の円と内側の円との間の領域には、ワッシャ状の膜部が形成される。ここでは、溝を「Gを頭にもつ3文字の符号」で示し、膜部を「Bを頭にもつ3文字の符号」で示し、突起部を「bを頭にもつ3文字の符号」で示すことにする。各符号の後ろの2文字は、上述した位置参照符号である。たとえば、図10の右端に符号「Gx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する溝を示し、符号「Bx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する膜部を示し、符号「bx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する突起部を示している。
【0141】
溝Gx2,膜部Bx2,突起部bx2の構造は、図11(A) の縦断面図に明瞭に示されている。図11(A) は、図10に示す上方基板100を、切断線A−Aに沿って切断した縦断面図である。図示のとおり、溝Gx2,Gx4は、いずれも上方基板100の下面側に掘られた円環状の溝であり、ここでは「上方溝」と呼ぶことにする。膜部Bx2,Bx4は、溝Gx2,Gx4の形成によって厚みが小さくなった部分であり、溝の底部を形成するワッシャ状の膜状部分である。ここでは、これら膜状部分を「上方膜部」と呼ぶことにする。一方、突起部bx2,bx4は、溝Gx2,Gx4の内部において下方に突き出た円柱状の構造体であり、後述するように、柱状部の上端を接続するために利用される。
【0142】
同様に、図11(B) ,(C) は、図10に示す上方基板100を、それぞれ切断線B−B,C−Cに沿って切断した縦断面図である。切断線B−Bの位置には何ら溝は形成されていないが、切断線C−Cの位置には、上方溝Gy3,Gy4が形成されており、その結果、上方膜部By3,By4と突起部by3,by4とが形成されている。ここで、上方溝Gy3,上方膜部By3,突起部by3は、図9に示す領域Ay3に位置する構成要素であり、上方溝Gy4,上方膜部By4,突起部by4は、図9に示す領域Ay4に位置する構成要素である。
【0143】
一方、図12は、図8に示す力検出装置の構成要素である下方基板200の上面図である。この図にも、8箇所に二重円が描かれているが、これらは、下方基板200の上面に形成された溝および突起部を示すものである。これら8箇所の二重円も、それぞれ図9に示す8箇所の領域のいずれかの位置に対応する。この図12に示された8箇所の二重円の位置と、図10に破線で示された8箇所の二重円の位置とは、平面図上において重ならない。これは、後述するように、各柱状体がいずれも斜めに配置されるためである。
【0144】
この図においても、二重円を構成する外側の円は、形成された円環状の溝の外周を示し、内側の円は、形成された円柱状の突起部の外周を示している。外側の円と内側の円との間の領域には、ワッシャ状の膜部が形成される。この下方基板200では、溝を「Hを頭にもつ3文字の符号」で示し、膜部を「Dを頭にもつ3文字の符号」で示し、突起部を「dを頭にもつ3文字の符号」で示すことにする。やはり各符号の後ろの2文字は、上述した位置参照符号である。たとえば、図12の右端に符号「Hx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する溝を示し、符号「Dx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する膜部を示し、符号「dx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する突起部を示している。
【0145】
溝Hx2,膜部Dx2,突起部dx2の構造は、図13(B) の縦断面図に明瞭に示されている。図13(B) は、図12に示す下方基板200を、切断線B−Bに沿って切断した縦断面図である。図示のとおり、溝Hx2,Hx4は、いずれも下方基板200の上面側に掘られた円環状の溝であり、ここでは「下方溝」と呼ぶことにする。膜部Dx2,Dx4は、溝Hx2,Hx4の形成によって厚みが小さくなった部分であり、溝の底部を形成するワッシャ状の膜状部分である。ここでは、これら膜状部分を「下方膜部」と呼ぶことにする。一方、突起部dx2,dx4は、溝Hx2,Hx4の内部において上方に突き出た円柱状の構造体であり、後述するように、柱状部の下端を接続するために利用される。
【0146】
同様に、図13(A) ,(C) は、図12に示す下方基板200を、それぞれ切断線A−A,C−Cに沿って切断した縦断面図である。切断線A−Aの位置には何ら溝は形成されていないが、切断線C−Cの位置には、下方溝Hy3,Hy4が形成されており、その結果、下方膜部Dy3,Dy4と突起部dy3,dy4とが形成されている。ここで、下方溝Hy3,下方膜部Dy3,突起部dy3は、図9に示す領域Ay3に位置する構成要素であり、下方溝Hy4,下方膜部Dy4,突起部dy4は、図9に示す領域Ay4に位置する構成要素である。
【0147】
図14は、図8に示す力検出装置の構成要素である補助基板300の上面図である。この図にも、8箇所に二重円が描かれているが、これらは、補助基板300の上面に形成された溝および電極を示すものである。これら8箇所の二重円も、それぞれ図9に示す8箇所の領域のいずれかの位置に対応する。この図14に示された8箇所の二重円の位置と、図12に示された8箇所の二重円の位置とは、平面図上において一致する。これは、この補助基板300上の8枚の電極が、下方基板200の8枚の下方膜部のそれぞれ直下に位置するように構成されているためである。
【0148】
図14において、二重円を構成する外側の円は、形成された円柱状の溝の外周を示し、内側の円は、溝の底面に形成された円盤状の電極の外周を示している。この補助基板300では、溝を「Kを頭にもつ3文字の符号」で示し、電極を「Eを頭にもつ3文字の符号」で示すことにする。やはり各符号の後ろの2文字は、上述した位置参照符号である。たとえば、図14の右端に符号「Kx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する溝を示し、符号「Ex2」で示された部分は、領域Ax2に位置する電極を示している。
【0149】
溝Kx2,電極Ex2の構造は、図15(B) の縦断面図に明瞭に示されている。図15(B) は、図14に示す補助基板300を、切断線B−Bに沿って切断した縦断面図である。図示のとおり、溝Kx2,Kx4は、いずれも補助基板300の上面側に掘られた円柱状の溝であり、ここでは「補助溝」と呼ぶことにする。上方基板100側の上方溝や下方基板200側の下方溝は、それぞれ可撓性をもった上方膜部や下方膜部を形成する役割を果たすものであったが、補助基板300側の補助溝は、下方基板200の下方に所定距離をおいて支持された電極を形成する役割を果たす。図15(B) に示されているとおり、電極Ex2は、補助溝Kx2の底面に固定された円盤状の電極であり、電極Ex4は、補助溝Kx4の底面に固定された円盤状の電極である。ここでは、これら補助基板300側に固定された8枚の電極を「固定電極」と呼ぶことにする。
【0150】
同様に、図15(A) ,(C) は、図14に示す補助基板300を、それぞれ切断線A−A,C−Cに沿って切断した縦断面図である。切断線A−Aの位置には何ら溝は形成されていないが、切断線C−Cの位置には、補助溝Ky3,Ky4が形成されており、その底面には、固定電極Ey3,Ey4が固定されている。ここで、補助溝Ky3,固定電極Ey3は、図9に示す領域Ay3に位置する構成要素であり、補助溝Ky4,固定電極Ey4は、図9に示す領域Ay4に位置する構成要素である。
【0151】
以上、上方基板100,下方基板200,補助基板300の構成を個別に説明したが、続いて、これら各基板と8本の柱状体によって組み立てられた装置の全体構成を説明する。ここに示す例の場合、8本の柱状体は、ほぼ円柱状の部材である。
【0152】
図16は、図8に示す力検出装置を、XZ平面に沿って切断した縦断面図である。XZ平面の奥に位置する4本の柱状体Px1,Px3,Py1,Py2が、上方基板100と下方基板200との間に挟まれた状態が示されている。ここで、右端の柱状体Px1および左端の柱状体Px3は、図面上では直立しているように見えるが、実際には、図面の奥行き方向に傾斜している。
【0153】
図17は、図8に示す力検出装置を、図10,図12,図14に示されている切断線A−Aに沿って切断した縦断面図である。図10に示すとおり、切断線A−A上には、上方溝Gx2,Gx4、上方膜部Bx2,Bx4,突起部bx2,bx4が配置されており、図17には、これらの断面がそれぞれ示されている。また、各突起部bx2,bx4の下面には、それぞれ柱状体Px2,Px4が接続された状態が示されている。たとえば、突起部bx2の下方に位置する柱状体Px2は、突起部bx2の下面から、図面手前方向に伸びる部材であるが、切断線A−Aに沿った切断面のみが示されている。なお、その奥に位置する柱状体Px1の上端は、突起部bx2ではなく、その奥に位置する突起部bx1の下面に接合されている。
【0154】
図18は、図8に示す力検出装置を、図10,図12,図14に示されている切断線B−Bに沿って切断した縦断面図である。図12,図14に示すとおり、切断線B−B上には、下方溝Hx2,Hx4、下方膜部Dx2,Dx4,突起部dx2,dx4,補助溝Kx2,Kx4、固定電極Ex2,Ex4が配置されており、図18には、これらの断面がそれぞれ示されている。また、各突起部dx2,dx4の上面には、それぞれ柱状体Px2,Px4が接続された状態が示されている。たとえば、突起部dx2の上方に位置する柱状体Px2は、突起部dx2の上面から、図面奥行き方向に伸びる部材であり、図では、切断線B−Bに沿った切断面およびそれより奥に位置する部分が示されている。更に奥に位置する別な柱状体Px1は、柱状体Px2の陰に隠れて図には現れていない。
【0155】
図19は、図8に示す力検出装置を、図10,図12,図14に示されている切断線C−Cに沿って切断した縦断面図である。切断線C−C上には、図10に示すとおり、上方溝Gy3,Gy4、上方膜部By3,By4,突起部by3,by4が配置されており、また、図12に示すとおり、下方溝Hy3,Hy4、下方膜部Dy3,Dy4,突起部dy3,dy4が配置されており、更に、図14に示すとおり、補助溝Ky3,Ky4、固定電極Ey3,Ey4が配置されている。図18には、これらの断面がそれぞれ示されている。
【0156】
柱状体Py3,Py4の中心軸は、切断線C−Cに沿った縦断面上に位置するため、この図19には、2本の柱状体Py3,Py4の上端および下端の接続状態が明瞭に示されている。すなわち、柱状体Py3,Py4の上端は、上方基板100側の突起部by3,by4の下面に接合され、下端は、下方基板200側の突起部dy3,dy4の上面に接合されている。しかも、柱状体Py3は上端が左側へ傾くように傾斜しているのに対して、柱状体Py4は上端が右側へ傾くように傾斜しており、両者は逆方向に傾斜している。
【0157】
図18に示すように、下方膜部Dx2の直下には、所定間隔をおいて、固定電極Ex2が配置されており、下方膜部Dx4の直下には、所定間隔をおいて、固定電極Ex4が配置されている。また、図19に示すように、下方膜部Dy3の直下には、所定間隔をおいて、固定電極Ey3が配置されており、下方膜部Dy4の直下には、所定間隔をおいて、固定電極Ey4が配置されている。このように、ここに示す実施形態の場合、8枚の下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4の直下には、所定間隔をおいて、それぞれ固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4が配置されている。そして、下方基板200は導電性材料から構成されているため、8枚の下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4はそれぞれが変位電極として機能し、対向する固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4とによって、容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4を構成する。これら各容量素子は、各下方膜部の上下方向(Z軸方向)への変位を検出するセンサとして機能する。
【0158】
図20は、図8に示す力検出装置における上方膜部および下方膜部の位置関係を示す平面図である。すなわち、図10に示す8組の二重円(上方基板100の構成要素)と、図12に示す8組の二重円(下方基板200の構成要素)とを、同一平面上に重ねて表示したものである。図に一点鎖線で示すとおり、X軸正側の点Q(+x)を通りY軸に平行な基準線L1と、X軸負側の点Q(−x)を通りY軸に平行な基準線L2と、Y軸正側の点Q(+y)を通りX軸に平行な基準線L3と、Y軸負側の点Q(−y)を通りX軸に平行な基準線L4と、を定義すると、合計16組の二重円の中心は、それぞれ基準線L1〜L4の上に並ぶことになる。
【0159】
ここで、図9に示すような8個の領域を考えると、図20において同一の領域に所属する二重円の内側の円(突起部)は、同一の柱状体の上端および下端の接続位置を示すことになる。たとえば、領域Ax1内の突起部dx1とbx1は、同一の柱状体Px1の下端および上端の接続対象であり、領域Ax2内の突起部dx2とbx2は、同一の柱状体Px2の下端および上端の接続対象である。同様に、領域Ay1内の突起部dy1とby1は、同一の柱状体Py1の下端および上端の接続対象であり、領域Ay2内の突起部dy2とby2は、同一の柱状体Py2の下端および上端の接続対象である。
【0160】
図21は、図8に示す力検出装置における下方基板200およびその上面に取り付けられた8本の柱状体を示す平面図である。別言すれば、図8に示す力検出装置において、上方基板100を除去し、残りの構造体を上方から観察した上面図に対応する。ここで、ハッチングは、各柱状体の上端面を示すためのものであり、断面を示すものではない。また、参考のために、上方基板100側に形成される上方溝の位置を破線で示してある。なお、図に一点鎖線で示すS(+x),S(−x),S(+y),S(−y)は、図20に示す基準線L1,L2,L3,L4上に立てた垂直面を示している。すなわち、S(+x)はX軸と正側で直交するX軸正側直交面、S(−x)はX軸と負側で直交するX軸負側直交面、S(+y)はY軸と正側で直交するY軸正側直交面、S(−y)はY軸と負側で直交するY軸負側直交面である。
【0161】
図示のとおり、柱状体Px1,Px2の中心軸は、X軸正側直交面S(+x)上に位置しており、柱状体Px3,Px4の中心軸は、X軸負側直交面S(−x)上に位置しており、柱状体Py1,Py2の中心軸は、Y軸正側直交面S(+y)上に位置しており、柱状体Py3,Py4の中心軸は、Y軸負側直交面S(−y)上に位置している。
【0162】
これは、柱状体Px1,Px2,Px3,Px4(以下、X軸柱状体と呼ぶ)が、Y軸方向に関しては傾斜しているが、X軸方向に関しては傾斜していないことを意味し、また、柱状体Py1,Py2,Py3,Py4(以下、Y軸柱状体と呼ぶ)が、X軸方向に関しては傾斜しているが、Y軸方向に関しては傾斜していないことを意味する。また、X軸柱状体Px1,Px2のXZ平面に関する傾斜は互いに逆になっており、X軸柱状体Px3,Px4のXZ平面に関する傾斜も互いに逆になっている。同様に、Y軸柱状体Py1,Py2のYZ平面に関する傾斜は互いに逆になっており、Y軸柱状体Py3,Py4のYZ平面に関する傾斜も互いに逆になっている。8本の柱状体のこのような傾斜特性は、§4で述べる力の6軸成分の検出を行う上で非常に重要である。
【0163】
結局、図8に示す実施形態の力検出装置は、XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する機能を有し、XY平面に平行な基板面を有する上方基板100と、XY平面に平行な基板面を有し、上方基板100の下方に配置された下方基板200と、上端が上方基板100の下面に、下端が下方基板200の上面に、それぞれ接合された第1〜第4のX軸柱状体Px1〜Px4および第1〜第4のY軸柱状体Py1〜Py4と、これら8本の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部(図8には示されていない8組の容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4と、図8にブロックで示す検出回路500)と、によって構成されていることになる。
【0164】
ここで、上方基板100のうち、第1〜第4のX軸柱状体Px1〜Px4の上端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のX軸上方膜部Bx1〜Bx4を構成し、第1〜第4のY軸柱状体Py1〜Py4の上端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のY軸上方膜部By1〜By4を構成している。同様に、下方基板200のうち、第1〜第4のX軸柱状体Px1〜Px4の下端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のX軸下方膜部Dx1〜Dx4を構成し、第1〜第4のY軸柱状体Py1〜Py4の下端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のY軸下方膜部Dy1〜Dy4を構成している。
【0165】
各膜部の厚みは、力検出に必要な可撓性を有するのに適した厚みとなるように設定される。各膜部は、いわゆるダイアフラムとして機能することになる。各膜部の厚みは、各溝の深さによって定まる寸法であり、この装置を製造するプロセスでは、材料となる基板上に所定の深さの溝を形成する加工を施して各膜部を形成することになる。本願発明者が試作した装置の場合、上方基板100や下方基板200を、厚み10mmのアルミニウムまたはステンレスからなる基板によって構成し、各溝の径を20mm、突起部の径を10mmとしたとき、膜部の厚みを1.0mm以下に設定すれば、一般的な用途に利用する上で十分な可撓性をもった膜部を形成することができた。
【0166】
なお、各柱状体の上端と上方膜部との間や、各柱状体の下端と下方膜部との間は、直接的に接続する形態をとってもかまわないし、何らかの部材を仲介して間接的に接続する形態をとってもかまわない。ここに示す実施形態の場合、各柱状体は、突起部を介して間接的に各膜部に接続されている。たとえば、図19には、柱状体Py3の上端が突起部by3を介して上方膜部By3に接続され、柱状体Py3の下端が突起部dy3を介して下方膜部Dy3に接続され、柱状体Py4の上端が突起部by4を介して上方膜部By4に接続され、柱状体Py4の下端が突起部dy4を介して下方膜部Dy4に接続されている状態が示されている。
【0167】
もちろん、突起部を介さずに柱状体の端を直接的に膜部に接合する構造をとってもかまわない。ただ、突起部を仲介させた方が、各柱状体の上下端を、これら突起部の露出面に接合する作業を行うだけで、主たる構造部分を構成することができるので、組み立てが容易になる。また、柱状体の上下端を溝の内部に入れて膜部に直接接合する構造にすると、柱状体が極端に傾斜したときに溝の縁に接触するおそれがあるので、実用上は、図示の例のように突起部を介して間接的に接合する構造をとるのが好ましい。
【0168】
すなわち、上方基板100の下面側に各上方溝Gx1〜Gx4,Gy1〜Gy4を形成し、その内部に溝の底面から基板面位置まで下方に伸びる突起部bx1〜bx4,by1〜by4を設け、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の上端を、これら各突起部を介して上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4に接合するようにするのが好ましい。同様に、下方基板200の上面側に各下方溝Hx1〜Hx4,Hy1〜Hy4を形成し、その内部に溝の底面から基板面位置まで上方に伸びる突起部dx1〜dx4,dy1〜dy4を設け、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の下端を、これら各突起部を介して下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4に接合するようにするのが好ましい。
【0169】
なお、図示する実施形態では、上方基板100の下面側に上方溝Gx1〜Gx4,Gy1〜Gy4を形成し、これらの溝の底部によって上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4を形成しているが、各上方溝を上方基板100の上面側に形成し、上方基板100の下面近傍に残った溝底部によって各上方膜部を形成するようにしてもよい。この場合、突起部を用いずに柱状体の上端を直接上方膜部に接合すれば十分である。同様に、図示する実施形態では、下方基板200の上面側に下方溝Hx1〜Hx4,Hy1〜Hy4を形成し、これらの溝の底部によって下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4を形成しているが、各下方溝を下方基板200の下面側に形成し、下方基板200の上面近傍に残った溝底部によって各下方膜部を形成するようにしてもよい。この場合も、突起部を用いずに柱状体の下端を直接下方膜部に接合すれば十分である。
【0170】
この§3で述べる実施形態においても、各柱状体の傾斜状態は重要である。既に述べたとおり、検出対象となる外力が作用していない状態において、8本の柱状体は、いずれもZ軸に対して傾斜した状態となるように配置されている。ここで、§2で説明した基本原理に基づく測定を行うためには、「上方基板と下方基板との間を接続する一対の柱状体を互いに逆向きに傾斜させる」という条件を満たす配置が必要である。
【0171】
具体的には、図21に示されているとおり、第1のX軸柱状体Px1と第2のX軸柱状体Px2については、その中心軸がX軸の正の領域においてX軸と直交するX軸正側直交面S(+x)に含まれるように、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜するように配置し、第3のX軸柱状体Px3と第4のX軸柱状体Px4については、その中心軸がX軸の負の領域においてX軸と直交するX軸負側直交面S(−x)に含まれるように、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜するように配置する。同様に、第1のY軸柱状体Py1と第2のY軸柱状体Py2については、その中心軸がY軸の正の領域においてY軸と直交するY軸正側直交面S(+y)に含まれるように、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜するように配置し、第3のY軸柱状体Py3と第4のY軸柱状体Py4については、その中心軸がY軸の負の領域においてY軸と直交するY軸負側直交面S(−y)に含まれるように、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜するように配置する。
【0172】
ここで、下方基板200を固定した状態において、上方基板100に外力が作用した場合、8本の柱状体に変位が生じることになる。検出部は、これらの変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する機能をもった構成要素であり、各柱状体の下端に接続されている各下方膜部のZ軸方向への変位を検出するためのセンサと、これらセンサの検出値に基づいて得られた電気信号を、下方基板200を固定した状態において上方基板100に作用した力の検出値として出力する検出回路500によって構成される。
【0173】
すなわち、ここで述べる実施形態では、第1のX軸下方膜部Dx1のZ軸方向への変位を検出する第1のX軸センサと、第2のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のX軸センサと、第3のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第3のX軸センサと、第4のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第4のX軸センサと、第1のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のY軸センサと、第2のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のY軸センサと、第3のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第3のY軸センサと、第4のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第4のY軸センサと、が用いられる。
【0174】
しかも、ここで述べる実施形態では、各センサが、下方膜部に形成された変位電極と、この変位電極に対向する位置に固定された固定電極と、からなる容量素子によって構成されている。容量素子からなるセンサは、その静電容量値の変化に基づいて、変位電極と固定電極との間の電極間距離の変化を把握することができるため、各下方膜部のZ軸方向への変位を静電容量値の変化として検出可能である。
【0175】
ここで述べる実施形態の場合、下方基板200は導電性材料から構成されているため、各下方膜部はいずれも導電性をもった変位電極として機能する。このため、第1のX軸センサは、第1のX軸下方膜部Dx1からなる第1のX軸変位電極と、この第1のX軸変位電極に対向する位置に固定された第1のX軸固定電極Ex1と、からなる第1のX軸容量素子Cx1によって構成され、第2のX軸センサは、第2のX軸下方膜部Dx2からなる第2のX軸変位電極と、この第2のX軸変位電極に対向する位置に固定された第2のX軸固定電極Ex2と、からなる第2のX軸容量素子Cx2によって構成され、第3のX軸センサは、第3のX軸下方膜部Dx3からなる第3のX軸変位電極と、この第3のX軸変位電極に対向する位置に固定された第3のX軸固定電極Ex3と、からなる第3のX軸容量素子Cx3によって構成され、第4のX軸センサは、第4のX軸下方膜部Dx4からなる第4のX軸変位電極と、この第4のX軸変位電極に対向する位置に固定された第4のX軸固定電極Ex4と、からなる第4のX軸容量素子Cx4によって構成されている。
【0176】
同様に、第1のY軸センサは、第1のY軸下方膜部Dy1からなる第1のY軸変位電極と、この第1のY軸変位電極に対向する位置に固定された第1のY軸固定電極Ey1と、からなる第1のY軸容量素子Cy1によって構成され、第2のY軸センサは、第2のY軸下方膜部Dy2からなる第2のY軸変位電極と、この第2のY軸変位電極に対向する位置に固定された第2のY軸固定電極Ey2と、からなる第2のY軸容量素子Cy2によって構成され、第3のY軸センサは、第3のY軸下方膜部Dy3からなる第3のY軸変位電極と、この第3のY軸変位電極に対向する位置に固定された第3のY軸固定電極Ey3と、からなる第3のY軸容量素子Cy3によって構成され、第4のY軸センサは、第4のY軸下方膜部Dy4からなる第4のY軸変位電極と、この第4のY軸変位電極に対向する位置に固定された第4のY軸固定電極Ey4と、からなる第4のY軸容量素子Cy4によって構成されている。
【0177】
検出回路500は、第1のX軸容量素子Cx1の静電容量変動値Cx1(ここでは、便宜上、容量素子と当該容量素子の静電容量変動値とを同じ符号で示す)、第2のX軸容量素子Cx2の静電容量変動値Cx2、第3のX軸容量素子Cx3の静電容量変動値Cx3、第4のX軸容量素子Cx4の静電容量変動値Cx4、第1のY軸容量素子Cy1の静電容量変動値Cy1、第2のY軸容量素子Cy2の静電容量変動値Cy2、第3のY軸容量素子Cy3の静電容量変動値Cy3、第4のY軸容量素子Cy4の静電容量変動値Cy4に基づいて得られた電気信号を、検出値として出力することになる。具体的な検出値を得る方法については、§4で詳述する。
【0178】
なお、下方基板200を非導電性材料から構成した場合には、各下方膜部は導電性を有さないため、それ自身を変位電極として利用することができない。その場合は、各下方膜部の下面に別個の導電膜を形成し、これを変位電極として用いるようにすればよい。もっとも、実用上は、ここに示す実施形態のように、下方基板200を導電性材料によって構成し、各下方膜部自身をそれぞれ変位電極として機能させるのが、構造を単純化する上で好ましい。下方基板200が導電性材料によって構成されている場合、各変位電極はいずれも導通状態になるが、これに対向する固定電極がそれぞれ電気的に独立していれば、個々の容量素子も互いに電気的に独立した素子となり、検出動作には何ら支障はない。
【0179】
また、固定電極は、各変位電極に対向する位置に固定されていれば、どのような方法で取り付けてもよいが、実用上は、ここに述べる実施形態のように、下方基板200の下面に補助基板300を固着し、この補助基板300の上面に各固定電極を取り付けるようにするのが好ましい。特に、図示の例のように、補助基板300の上面における各下方膜部(変位電極)の下方位置にそれぞれ補助溝Kx1〜Kx4,Ky1〜Ky4を形成し、これら補助溝の底面にそれぞれ固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4を形成すると、構成が単純になり、また、組み立ても容易になる。
【0180】
本発明に係る力検出装置を構成する上で、各部の材質は特に限定されるものではないが、上方基板や下方基板、そして各柱状体は、たとえば、アルミニウムやステンレスなどの金属によって構成することができる。特に、下方基板を導電性材料で構成しておけば、各下方膜部それ自身を変位電極として利用できるメリットが得られる。一方、補助基板は、個々の固定電極を絶縁状態に保つため、ガラスエポキシやセラミックなどの絶縁性材料から構成するのが好ましい。もちろん、上方基板、下方基板、各柱状体、補助基板を含めた全体を合成樹脂などの絶縁材料で構成することも可能である。この場合は、変位電極や固定電極として、金属メッキ層などを形成すればよい。
【0181】
<<< §4. 本発明の実用的実施形態に係る力検出装置の動作 >>>
ここでは、§3で構造を述べた本発明の実用的実施形態に係る力検出装置の動作を詳述する。この装置は、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメントMx,My,Mzとの6つの力を検出する機能を有している。たとえば、この装置をロボットの上腕部に対して下腕部に作用する力を検出する用途に利用するのであれば、補助基板300を上腕部側に固定し、上方基板100を下腕部側に固定し、この装置自身を肘の部分の間接として利用すればよい。そうすれば、上腕部を固定した状態において、下腕部に対して作用した6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出が可能になる。
【0182】
なお、本願では、「力」という文言は、特定の座標軸方向の力を意味する場合と、モーメント成分を含めた集合的な力を意味する場合とを、適宜使い分けることにする。たとえば、上述した各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzは、モーメントではない各座標軸方向の力成分を意味するものであるが、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzと言った場合は、各座標軸方向の力成分と各座標軸まわりのモーメント成分とを含む集合的な力を意味することになる。
【0183】
さて、§2では、2本の柱状体のみを有する基本的実施形態に係る装置において、X軸方向の力が作用した場合の状態を、図3(b) を参照して説明した。具体的には、下方基板20を固定した状態において、上方基板10の重心Qに、図の右方向への力+Fxが作用した場合の変形態様が示されており、上方基板10は水平方向に平行移動した状態となっている。しかしながら、実際には、このように上方基板10を水平方向のみに移動させるように力を作用させることは困難である。上方基板10は、2本の柱状体P1,P2によって下方基板20に接続されているため、たとえば、上方基板10の左側面に対して、右方向への押圧力を水平に加えると、上方基板10は全体として図の右方向へと移動することになるが、上方基板10の運動は必ずしも水平方向への運動のみではなく、回転運動が加わることになろう。
【0184】
すなわち、図示の位置に原点Oを定義した場合、上方基板10の左側面を右方向へ押す力は、原点Oに関しては、モーメントとして働くことになる。別言すれば、上方基板10の左側面を右方向へ押す力は、この力検出装置に対して加えられた、X軸方向の力+Fxとして認識することもできるし、Y軸まわりのモーメント+Myとして認識することもできる。しかも、モーメントに関しては、原点Oの位置をどこに定義するかによって、その絶対値も変わってくる。このように、各座標軸まわりのモーメントMx,My,Mzを検出対象として取り扱う以上、当該モーメント成分についての回転軸となる座標系の位置を特定せざるを得ず、しかるべき位置に原点Oを定義する必要がある。
【0185】
そこで、図3(a) に示す例では、各基板の中心点を貫き、各基板に垂直な方向にZ軸をとり、このZ軸上における、変位基板20の下面と補助基板30の上面との間の中間位置に、原点Oを定義している。これは、Z軸上に原点Oを定める基準(上下方向に関する位置基準)として、センサとして用いられる容量素子を構成する一対の電極の中間位置を採用するようにしたためである。このような位置を原点Oの基準に定めた理由は、図3(b) に示すように、外力の作用によって、2本の柱状体P1,P2が変位した場合、当該変位が容量素子の静電容量値の変化として検出されるため、変位を直接検出するセンサである容量素子の中心位置を、Z軸方向に関する原点位置と定めるのが最も適当であると考えられるためである(より厳密には、固定電極E5,E6の上面と下方膜部21,22の下面との間の中間位置ということになる)。
【0186】
もっとも、図3に示す装置の場合、力FxとモーメントMyとを区別して検出することはできず、一対の容量素子の静電容量値の差は、力FxとモーメントMyとの双方の検出値を含むものになる。したがって、この図3に示す基本的実施形態に係る装置は、力とモーメントとを厳密に区別して測定する必要のない環境で利用される装置ということになる。これに対して、§3で構造を説明した実用的実施形態に係る装置(図8に示す装置)は、力とモーメントとを区別して測定する機能を有している。以下、この測定機能について説明する。
【0187】
なお、この実施形態の場合も、各基板の中心点を貫く位置にZ軸を定義し、センサを構成する容量素子の中心位置をZ軸方向に関する基準位置として、XYZ三次元座標系の原点Oの位置を定義することにする。図8に示す原点Oは、このような前提で定義されたものである。
【0188】
この図8に示す装置においても、たとえば、上方基板100の左側面に対して、右方向への押圧力を水平に加えると、上方基板100は全体として図の右方向へと移動することになるが、やはり上方基板100の運動は必ずしも水平方向への運動のみではなく、回転運動が加わることになろう。この装置に、X軸方向の力成分+Fxのみを作用させたい場合には、たとえば、図22に示すようなガイド部材410〜440を設ければよい。ガイド部材410,420は、上方基板100の左側部分の上下両面を支持する部材であり、ガイド部材430,440は、上方基板100の右側部分の上下両面を支持する部材である。
【0189】
図示のとおり、補助基板300と各ガイド部材410〜440とを固定した状態にすれば、上方基板100の移動方向は水平方向のみに制限されるので、上方基板100の左側面に対して右方向への押圧力を加えれば、上方基板100は図の右方向のみに水平に移動することになる。このときの装置の変形状態は、この装置に力+Fxのみが作用したときの変形状態ということになる。逆に、上方基板100の右側面に対して左方向への押圧力を加えたときの状態は、この装置に力−Fxのみが作用したときの変形状態ということになる。また、この装置に力+Fy,−Fyが作用したときの変形状態も同様である。
【0190】
次に、この装置に、図23に示すようなガイド部材450を設けた場合を考えてみる。ガイド部材450は、各基板100,200,300の外周とほぼ同じ内周をもつ円筒状の部材であり、この装置全体を内部に収容することができる。ここで、基板200,300をガイド部材450に固定した状態にして、上方基板100に対して上方に引っ張り上げる力を作用させれば、そのときの装置の変形状態は、この装置に力+Fzのみが作用したときの変形状態ということになる。逆に、上方基板100に対して下方に押し下げる力を作用させれば、そのときの装置の変形状態は、この装置に力−Fzのみが作用したときの変形状態ということになる。
【0191】
続いて、この装置にモーメントのみが作用した状態を考えよう。図24は、図8に示す力検出装置にモーメント+Myのみによる変形を生じさせる様子を示す正面図である。図24において、Y軸は紙面の裏側へと向かう垂直方向の軸であるから、モーメント+Myは、下方基板200を固定した状態において、上方基板100の作用点Qを、原点Oを中心に時計まわりの方向に回転させる力に相当する。このようなモーメント+Myが加えられると、作用点Qは、半径Rの円弧軌道T(一点鎖線で示す)に沿って移動する。なお、本願では、所定の座標軸の正方向に右ネジを進める場合の当該右ネジの回転方向を、当該座標軸まわりの正のモーメントと定義することにする。負のモーメント−Myは、作用点Qを、原点Oを中心に反時計まわりの方向に回転させる力に相当する。
【0192】
もちろん、作用点Qを円弧軌道Tに沿って移動させるためには、それなりの方法で、上方基板100に対して外力を作用させる必要があるが、何らかの方法で、そのような外力を作用させれば、Y軸まわりのモーメントMyが作用した場合の変形状態が得られる。X軸まわりのモーメントMxが作用した場合の変形状態も同様である。
【0193】
最後に、Z軸まわりのモーメントMzが作用した場合を考える。図25は、図8に示す力検出装置にモーメント+Mzのみによる変形を生じさせた状態を示す上面図である。図示のとおり、モーメント+Mzは、下方基板200を固定した状態において、上方基板100をZ軸を中心に上から見て反時計まわりの方向に回転させる力に相当する。同様に、モーメント−Mzは、上方基板100をZ軸を中心に上から見て時計まわりの方向に回転させる力に相当する。このように、モーメントMzのみが作用した場合の変形状態を得るには、たとえば、図23に示すように、装置全体を円筒状のガイド部材450に収容し、基板200,300をガイド部材450に固定した状態にして、上方基板100に対してZ軸を中心とする回転力を作用させればよい。
【0194】
以上、下方基板200を固定した状態において、上方基板100上の作用点Qに、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzのいずれか1つのみが作用した場合の変形状態を得る方法を述べた。もちろん、この装置を実際に利用する場合、必ずしも上述したガイド部材410〜450などを設けて利用するわけではない。各ガイド部材410〜450を設けた上述の利用例は、あくまでも1つの力成分のみが作用した場合の変形状態を説明するためのものであり、実際には、むしろ、そのようなガイド部材を用いない利用形態の方が一般的である。したがって、実用上は、上記6つの力成分の複数が混じり合った状態で作用することになろう。
【0195】
ここに示す力検出装置は、そのように複数の力成分が混じり合って作用する環境下においても、6つの力成分をそれぞれ独立して検出することが可能である。そこで、まず、上記6つの力がそれぞれ単独で作用した場合に、8組の容量素子Cx1〜Cy4,Cy1〜Cy4の静電容量値に、どのような変化が生じるかを考えてみよう。図26は、このような6つの変形状態における各容量素子の容量値変化を示すテーブルである。
【0196】
テーブル各欄の記号は、外力が作用していない基準状態に対する容量値変化の様子を示すものであり、「0」は変化なし、「+Δ」もしくは「+δ」は増加、「−Δ」もしくは「−δ」は減少を示している。ここで「+Δ」,「+δ」はいずれも容量値の増加を示すものであるが、「+Δ」は「+δ」に比べて大きな変化が生じることを示している。同様に、「−Δ」,「−δ」はいずれも容量値の減少を示すものであるが、「−Δ」は「−δ」に比べて大きな変化が生じることを示している。
【0197】
もっとも、「Δ」や「δ」は、特定の絶対値を示すものではなく、変化量の程度を示すものなので、たとえば、「+Δ」が記された複数の欄の容量値の実際の変動量は必ずしも等しくはならない。また、図26は、+Fx,+Fy,+Fz,+Mx,+My,+Mzという正の力が作用した場合の容量値変化を示すものであるが、−Fx,−Fy,−Fz,−Mx,−My,−Mzという負の力が作用した場合の容量値変化は、各欄の符号を逆転させたものになる。
【0198】
6通りの力が単独で作用した場合に、8組の容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4の静電容量値が図26のテーブルのように変化する理由は、§2で述べた2本の柱状体のみを有する装置の変形状態を参照すれば、容易に理解できよう。
【0199】
たとえば、力+Fxのみが作用した場合は、図22に示すように、ガイド部材410〜440を設けた環境下において、上方基板100が右方向に水平移動した状態を考えればよい。このとき、一対のY軸柱状体Py3,Py4の傾斜態様および一対のY軸柱状体Py1,Py2の傾斜態様は、図3に示す一対の柱状体P1,P2の傾斜態様と同様になる。したがって、容量素子Cy3の容量値は増加し、容量素子Cy4の容量値は減少する。また、容量素子Cy1の容量値は増加し、容量素子Cy2の容量値は減少する。図26のテーブルの「+Fx」の行の「Cy1〜Cy4の欄」が、「+Δ,−Δ,+Δ,−Δ」となっているのは、このような結果に基づくものである。
【0200】
一方、図22に示されているとおり、4本のX軸柱状体Px1〜Px4は、外力が作用していない標準の状態において、Y軸方向に関しては傾斜しているものの、X軸方向に関しては傾斜していない。したがって、外力+Fxの作用により、上方基板100が右方向に水平移動すると、4本のX軸柱状体Px1〜Px4は、いずれも図の右方向に傾斜することになるが、その傾斜態様は、図2(b) に示す一対の柱状体41,42の傾斜態様と同様になる。
【0201】
ただ、図2(b) に示す従来装置の場合、一対の容量素子C1,C2の容量値の差「C2−C1」として柱状体41の傾斜度の測定が行われており、一対の容量素子C3,C4の容量値の差「C4−C3」として柱状体42の傾斜度の測定が行われている。これに対して、本発明では、図18に示されているように、柱状体Px2の変位検出用には、単一の容量素子Cx2(下方膜部Dx2と固定電極Ex2)が設けられているだけであり、柱状体Px4の変位検出用には、単一の容量素子Cx4(下方膜部Dx4と固定電極Ex4)が設けられているだけである。このため、柱状体Px2,Px4が図の右方向に傾斜して、下方膜部Dx2,Dx4が変形したとしても、容量素子Cx2,Cx4の電極間距離は、図の右半分では減少し、図の左半分では増加することになり、容量素子Cx2,Cx4については、トータルでの静電容量値に変化は生じない。図26のテーブルの「+Fx」の行の「Cx1〜Cx4の欄」が、いずれも「0」になっているのは、このような結果に基づくものである。
【0202】
また、力+Fyのみが作用した場合の変形状態は、上記力+Fxのみが作用した場合の変形状態を、Z軸まわりに45°回転させたものになるので、容量素子Cx1〜Cx4の容量値変化と容量素子Cy1〜Cy4の容量値変化とを入れ替えた結果が得られる。図26のテーブルの「+Fy」の行は、このような結果に基づくものである。
【0203】
次に、力+Fzのみが作用した場合を考える。この場合は、8本の柱状体すべてについて、図4(a) に示すような変形態様が得られる。したがって、8組の容量素子Cx1〜Cx4、Cy1〜Cy4の容量値はすべて減少する。図26のテーブルの「+Fz」の行は、このような結果に基づくものである。
【0204】
続いて、モーメントのみが作用した場合を考えてみよう。ここでは、説明の便宜上、まず、図24に示すように、Y軸まわりのモーメント+Myのみが作用した場合の変形状態を考える。この場合、上方基板100の右半分は下方へ移動し、左半分は上方へ移動することになる。したがって、右半分に配置された4本の柱状体Px1,Px2,Py1,Py3の下端には下方への力が加わり、これらについての下方膜部は下方へ撓みを生じることになる。その結果、容量素子Cx1,Cx2,Cy1,Cy3の電極間隔は減少し、これらの容量値は増加する。一方、左半分に配置された4本の柱状体Px3,Px4,Py2,Py4の下端には上方への力が加わり、これらについての下方膜部は上方へ撓みを生じることになる。その結果、容量素子Cx3,Cx4,Cy2,Cy4の電極間隔は増加し、これらの容量値は減少する。
【0205】
このように、図の右半分に配置された容量素子Cx1,Cx2,Cy1,Cy3の容量値は増加し、図の左半分に配置された容量素子Cx3,Cx4,Cy2,Cy4の容量値は減少するが、各容量素子ごとに増減の程度に差が生じる。たとえば、図24に示す柱状体Px2と柱状体Py3とを比較すると、柱状体Px2は、X軸方向に関しては上方基板100の外側に配置されており、しかもX軸方向に関しては傾斜していないため、モーメント+Myによる上下方向への変位量は比較的大きい。一方、柱状体Py3は、X軸方向に関しては上方基板100の内側に配置されており、しかもX軸方向に関しては傾斜しているため、モーメント+Myによる上下方向への変位量は比較的小さい。
【0206】
図26のテーブルの「+My」の行は、このような結果に基づくものである。すなわち、図の右半分に配置された容量素子Cx1,Cx2,Cy1,Cy3については「+」の結果が示され、図の左半分に配置された容量素子Cx3,Cx4,Cy2,Cy4については「−」の結果が示されている。また、モーメント+Myによる上下方向への変位量が比較的大きい容量素子Cx1〜Cx4については、容量値の変動量が大きいことを示す「Δ」が示されており、モーメント+Myによる上下方向への変位量が比較的小さい容量素子Cy1〜Cy4については、容量値の変動量が小さいことを示す「δ」が示されている。「δ」の欄が括弧書きで示されているのは、後述するように、比較的低精度の検出値が得られれば十分な場合には、近似的に、δ=0とみなす取り扱いを行うことができることを示すためである。
【0207】
モーメント+Mxのみが作用した場合の変形状態は、上記モーメント+Myのみが作用した場合の変形状態を、Z軸まわりに45°回転させたものになるので、上記と同様の考え方に基づいて、各容量素子の容量値の変化態様が得られる。図26のテーブルの「+Mx」の行は、このような結果に基づくものである。
【0208】
最後に、モーメント+Mzのみが作用した場合を考えよう。この場合は、図25に示すように、上方基板100が回転することになるので、8本の柱状体すべてが、この回転方向に依存する方向にそれぞれ傾斜することになる。各柱状体の具体的な傾斜態様は、図21の平面図を参照すると容易に理解できる。図21にハッチングを施した円は、各柱状体の上端面を示している。モーメント+Mzが作用すると、これら上端面が反時計まわりに回転することになる。その結果、4本の柱状体Px1,Py2,Px4,Py3は起き上がる方向に傾斜するので、その下端には下方への力が加わり、これらについての下方膜部は下方へ撓みを生じることになる。その結果、容量素子Cx1,Cy2,Cx4,Cy3の電極間隔は減少し、これらの容量値は増加する。一方、残りの4本の柱状体Px2,Py1,Px3,Py4は寝る方向に傾斜するので、その下端には上方への力が加わり、これらについての下方膜部は上方へ撓みを生じることになる。その結果、容量素子Cx2,Cy1,Cx3,Cy4の電極間隔は増加し、これらの容量値は減少する。図26のテーブルの「+Mz」の行は、このような結果に基づくものである。
【0209】
ここで、−Fx,−Fy,−Fz,−Mx,−My,−Mzという負の力が作用した場合の容量値変化が、図26に示すテーブルの各欄の符号を逆転させたものになることは、もはや説明の必要はないであろう。なお、この図26のテーブルに示す結果は、図21の平面図に示されているように、第1のX軸柱状体Px1のXY平面への正射影像および第1のY軸柱状体Py1のXY平面への正射影像が、XY座標系の第1象限に位置し、第3のX軸柱状体Px3のXY平面への正射影像および第2のY軸柱状体Py2のXY平面への正射影像が、XY座標系の第2象限に位置し、第4のX軸柱状体Px4のXY平面への正射影像および第4のY軸柱状体Py4のXY平面への正射影像が、XY座標系の第3象限に位置し、第2のX軸柱状体Px2のXY平面への正射影像および第3のY軸柱状体Py3のXY平面への正射影像が、XY座標系の第4象限に位置する配置をとることを前提とするものである。
【0210】
また、この図26のテーブルに示す結果は、第1〜第4のX軸柱状体Px1〜Px4は、下端よりも上端の方が、XZ平面に近くなるように傾斜し、第1〜第4のY軸柱状体Py1〜Py4は、下端よりも上端の方が、YZ平面に近くなるように傾斜している構成(別言すれば、正面や側面から見たときに、一対の柱状体が逆V字型に傾斜している構成)を前提とするものである。もちろん、これと逆の構成、すなわち、第1〜第4のX軸柱状体Px1〜Px4は、上端よりも下端の方が、XZ平面に近くなるように傾斜し、第1〜第4のY軸柱状体Py1〜Py4は、上端よりも下端の方が、YZ平面に近くなるように傾斜している構成(別言すれば、正面や側面から見たときに、一対の柱状体がV字型に傾斜している構成)を採ることも可能である。この場合、図26のテーブルにおけるいくつかの欄の符号は逆転する。
【0211】
さて、この図26のテーブルに示す結果を踏まえれば、8個の容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4の静電容量値(すなわち、8枚の下方膜部のZ軸方向への変位)に基づいて、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzを独立して検出することが可能になることがわかる。すなわち、8組の静電容量値Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4に基づく演算により、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzを算出することができる。
【0212】
ただ、そのような演算を容易にする上では、装置の機械的構造部分に幾何学的な対称性を確保しておくのが好ましい。実際、図示した装置では、このような対称性が維持されている。すなわち、図8に示す装置の場合、上方基板100および下方基板200ならびに8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4によって構成される主構造体は、XZ平面に関して面対称をなし、かつ、YZ平面に関しても面対称をなしている。これは、別言すれば、8本の柱状体と、8枚の上方膜部と、8枚の下方膜部とによって構成される構造体が、XZ平面に関して面対称をなし、かつ、YZ平面に関しても面対称をなしていることを意味し、幾何学的な対称性をもった2通りの外力を作用させた場合、構造体に生じる変形態様も幾何学的な対称性をもつことを意味する。
【0213】
たとえば、力+Fxを作用させた場合の変形状態と、力−Fxを作用させた場合の変形状態とは、YZ平面に関して鏡像関係になる。また、力+Fxを作用させた場合の変形状態は、力+Fyを作用させた場合の変形状態を、Z軸まわりに90°回転させたものに一致する。なお、図示の装置では、補助基板300についても、同様の幾何学的な対称性が確保されているが、補助基板300は、固定電極を支持する役割を果たす構造体であり、8枚の固定電極について上記対称性が確保できれば、補助基板300自体は対称性を有していなくてもかまわない。
【0214】
このような幾何学的な対称性が確保されていると、図26のテーブルにおいて、少なくとも同一の行に所属する欄の「Δ」や「δ」の絶対値は互いに等しくなる。また、「+Fx」の行に所属する欄の「Δ」の絶対値と「+Fy」の行に所属する欄の「Δ」の絶対値とが等しくなり、「+Mx」の行に所属する欄の「Δ」や「δ」の絶対値と「+My」の行に所属する欄のこれらの絶対値とが等しくなる。したがって、図27に示す演算によって、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出値V(Fx)*,V(Fy)*,V(Fz),V(Mx),V(My),V(Mz)を得ることができる。ここで、*印のついた検出値V(Fx)*,V(Fy)*は、δ=0とした場合の近似値である。
【0215】
以下、この図27に示す各演算式によって、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出値が得られることを説明する。まず、力Fxの検出値(近似値)V(Fx)*は、「(Cy1−Cy2)+(Cy3−Cy4)」なる式に基づく演算で得ることができる。すなわち、図26のテーブルにおいて、「+Fx」の行に所属する欄について、上記式に基づく演算を行えば、値「4Δ」が得られ、これが作用した力Fxを示すものになる。演算値が正であれば、+Fxが作用したことを示し、負であれば、−Fxが作用したことを示す。ここで、δ=0とすれば、「+Fx」以外の他の5行に所属する欄について、上記式に基づく演算をそれぞれ行っても、いずれの結果も0になる。これは、上記演算式によって得られる検出値V(Fx)*が、δ=0との前提であれば、作用した力のFx成分のみを含む値になることを示す。
【0216】
同様に、力Fyの検出値(近似値)V(Fy)*は、「(Cx1−Cx2)+(Cx3−Cx4)」なる式に基づく演算で得ることができる。その理由も、図26のテーブルにおいて、「+Fy」の行に所属する欄について、上記式に基づく演算を行った結果をみれば、容易に理解できよう。この演算値も、δ=0との前提であれば、作用した力のFy成分のみを含む値になる。
【0217】
一方、力Fzの検出値は、「−(Cx1+Cx2+Cx3+Cx4+Cy1+Cy2+Cy3+Cy4)」なる演算式1、または「−(Cx1+Cx2+Cx3+Cx4)」なる演算式2、または「−(Cy1+Cy2+Cy3+Cy4)」なる演算式3に基づく演算で得ることができる。上記演算式1は、8個の容量素子すべての容量変動値の総和を求めて符号を逆転させる演算を示す。図26のテーブルにおける「+Fz」の行に所属する欄は、いずれも「−Δ」であるから、これらの総和をとって符号を逆転させれば「8Δ」なる値が得られる。これが作用した力Fzを示す値であり、演算値が正であれば、+Fzが作用したことを示し、負であれば、−Fzが作用したことを示す。
【0218】
ここで、「+Fz」以外の他の5行に所属する欄について、上記式に基づく演算をそれぞれ行っても、いずれの結果も0になる(この場合、δ=0である必要はない)。これは、上記演算式によって得られる検出値V(Fz)は、作用した力のFz成分のみを含む値になることを示す。なお、演算式1の代わりに、演算式2もしくは3を用いた演算でも同様の結果が得られる。ただ、演算式1を用いた演算結果が最も高い精度を示すものと考えられるので、実用上は、演算式1を用いるのが好ましい。
【0219】
次に、モーメントMxの検出値は、「(Cy3+Cy4)−(Cy1+Cy2)」なる式に基づく演算で得ることができる。すなわち、図26のテーブルにおいて、「+Mx」の行に所属する欄について、上記式に基づく演算を行えば、値「4Δ」が得られ、これが作用したモーメントMxを示すものになる。演算値が正であれば、+Mxが作用したことを示し、負であれば、−Mxが作用したことを示す。ここで、「+Mx」以外の他の5行に所属する欄について、上記式に基づく演算をそれぞれ行っても、いずれの結果も0になる(この場合、δ=0である必要はない)。これは、上記演算式によって得られる検出値V(Mx)が、作用した力のFx成分のみを含む値になることを示す。
【0220】
同様に、モーメントMyの検出値V(My)は、「(Cx1+Cx2)ー(Cx3+Cx4)」なる式に基づく演算で得ることができる。その理由も、図26のテーブルにおいて、「+My」の行に所属する欄について、上記式に基づく演算を行った結果をみれば、容易に理解できよう。この演算値も、作用した力のMy成分のみを含む値になる。
【0221】
最後に、モーメントMzの検出値は、「(Cx1−Cx2)+(Cx4−Cx3)+(Cy2−Cy1)+(Cy3−Cy4)」なる式に基づく演算で得ることができる。すなわち、図26のテーブルにおいて、「+Mz」の行に所属する欄について、上記式に基づく演算を行えば、値「8Δ」が得られ、これが作用したモーメントMzを示すものになる。演算値が正であれば、+Mzが作用したことを示し、負であれば、−Mzが作用したことを示す。ここで、「+Mz」以外の他の5行に所属する欄について、上記式に基づく演算をそれぞれ行っても、いずれの結果も0になる(この場合、δ=0である必要はない)。これは、上記演算式によって得られる検出値V(Mz)が、作用した力のMz成分のみを含む値になることを示す。
【0222】
結局、図8に示す力検出装置において、検出回路500に、8個の容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4の静電容量変動値を電気信号として検出し、これら電気信号を用いて、上述の各演算式に基づく演算を行い、これら演算結果として得られる値に対応する信号値を、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出値として求める機能をもたせておけば、この検出回路500から各検出値を出力させることができる。具体的には、たとえば、各容量素子の静電容量値を電圧値に変換するC/V変換器と、これら電圧値に対して加算や減算を行うアナログ演算器とによって、検出回路500を構成することができる。もちろん、アナログ演算器の代わりに、デジタル演算器やマイクロプロセッサを用いるようにしてもよい。
【0223】
既に述べたとおり、図26のテーブルにおける「δ」は、「Δ」に比べて小さい変動量を示すものであるから、近似的にδ=0とする取り扱いを行うことが可能である。図27に示す演算式のうち、V(Fx)*およびV(Fy)*は、このような取り扱いを前提として得られる近似値である。ただ、より高精度の検出を得る必要がある場合には、次のような方法で、正確な検出値を得ることができる。
【0224】
まず、実際の装置を用いて、作用点QにモーメントMyのみを作用させる実験を行う。具体的には、図24に示すように、作用点Qを円弧軌道Tに沿って移動させるような力を作用させることになる。たとえば、Y軸を中心軸とした回転力を作用させる何らかの駆動装置を用意し、当該回転力を作用点Qに作用させればよい。そして、このとき、各容量素子の静電容量値を測定し、図27の演算式によって、検出値V(My)およびV(Fx)*を求める。図28に示すグラフは、このような実験結果を示すグラフである。グラフの横軸は、実験的に作用させたモーメントMyの実際の値を示し、グラフの縦軸は、このときに得られた検出値(図27の式に基づく演算値)を示す。実線で示す右上がりのグラフは、演算値V(My)の値を示し、破線で示す右下がりのグラフは、演算値V(Fx)*の値を示す。
【0225】
この実験では、モーメントMyのみを作用させているのであるから、本来であれば、実線グラフで示すMyの検出値のみが出力され、破線のグラフで示すFxの検出値は出力されるべきではない。それにもかかわらず、Fxの検出値が出力されるのは、実際には「δ=0」ではないためである。別言すれば、演算値V(Fx)*には、力Fxの検出成分のみならず、モーメントMyの検出成分が含まれており、他軸干渉が生じていることになる。そして、上記実験によって得られた図28の破線のグラフは、モーメントMyの検出成分を示すものに他ならない。
【0226】
したがって、力Fxの成分のみを正確に求めるためには、演算値V(Fx)*から、モーメントMyの検出成分(すなわち、図28の破線のグラフで示される成分)を除外する演算を行えばよい。
【0227】
ところで、図28に示されているように、本発明に係る力検出装置の場合、極端に大きな力が作用して、極端に大きな変形が生じない限り、6つの力の検出値は、ほぼ線形な出力が得られる。これは、図28に示す実線のグラフを利用して、破線のグラフが得られることを意味している。すなわち、図28に一点鎖線で示す特定のモーメントMyを作用させたときに得られる演算値V(My),V(Fx)*の値を、それぞれk1,k2(図28の例の場合、k1は正、k2は負になる)とすれば、任意のモーメントMyを作用させたとき、演算値V(My),V(Fx)*の比は、k1:k2になる。したがって、あらかじめ実験によって、k1,k2を係数として求めておけば、任意のモーメントMyが作用しているときに、得られたV(Fx)*内に含まれるモーメントMyの検出成分(モーメントMyに起因して生じる他軸干渉成分)の絶対値は、k2/k1・V(My)で与えられることになる。
【0228】
よって、この他軸干渉成分を除去した正確な力Fxの検出値V(Fx)は、図29に示すように、
V(Fx)=V(Fx)*−k2/k1・V(My)
なる演算によって求めることができる。同様に、任意のモーメントMxを作用させたときの演算値V(Mx),V(Fy)*の比「k3:k4」を実験によって求めておけば、多軸干渉成分を除去した正確な力Fyの検出値V(Fy)は、
V(Fy)=V(Fy)*−k4/k3・V(Mx)
なる演算によって求めることができる。なお、係数k1〜k4は、上述したように、実際の装置を用いた実験によって求めることができるが、その代わりに、有限要素法などを利用したコンピュータシミュレーションによって求めることも可能である。
【0229】
結局、力Fxおよび力Fyの正確な値を求めるには、実験やコンピュータシミュレーションによって、予め係数k1〜k4を求めておき、検出回路500に、これら係数を用いて、
V(Fx)=(Cy1−Cy2)+(Cy3−Cy4)
−k2/k1・V(My)
V(Fy)=(Cx1−Cx2)+(Cx3−Cx4)
−k4/k3・V(Mx)
なる式に基づく演算を実行させ、これら演算結果に対応する信号値を、力Fx,力Fyの正確な検出値として出力させるようにすればよい。
【0230】
なお、本発明に係る装置を工業製品として提供する際に、製品仕様書などに原点Oの正確な位置を記載する必要がある場合には、実際の装置を用いた実測により、原点Oの正確な位置を求めればよい。具体的には、たとえば、図3に示す装置における上方基板10の上面中心位置に、垂直に立てるように作用棒を接合する。そして、この作用棒の高さh(上方基板10の上面を基準h=0としたときの高さ)の位置に作用点を定義し、この作用点に、X軸方向を向いた一定の力(たとえば、10Nの力)を加える実験を行う。この場合、X軸方向の力Fxの検出値は、作用点の高さhに係わらず一定になるが、Y軸まわりのモーメントMyの検出値は、作用点の高さhに応じて線形に変化する(hが大きくなればなるほど、検出値の絶対値も大きくなる)。そこで、複数通りの高さhについて、それぞれモーメントMyの検出値を求め、hとMyとの線形関係を示すグラフを作成し、このグラフから、My=0となるような高さh(上方基板10より下方に位置するので、負の値になる)を外挿すれば、Z軸上の当該高さhに対応する位置が、当該装置についての原点Oということになる。
【0231】
<<< §5. 本発明に係る力検出装置の変形例 >>>
ここでは、これまで§2〜§4で述べてきた本発明に係る力検出装置の種々の変形例を述べる。
【0232】
<5−1:環状溝を用いた変形例>
§3で述べた実用的実施形態では、上方基板100や下方基板200の各柱状体との接続位置に、上方溝Gx1〜Gx4,Gy1〜Gy4や下方溝Hx1〜Hx4,Hy1〜Hy4を形成し、個々の上方溝の底部によって上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4を形成し、個々の下方溝の底部によって下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4を形成していた。ここで述べる変形例は、これら個別の溝を相互に連結して環状溝を形成するものである。
【0233】
図30は、図10の上方基板100の変形例となる上方基板110を示す上面図である。図示のとおり、上方基板110の下面には、8本の柱状体の接続位置を連結するように、上方環状溝GGが形成されている。この上方環状溝GGは、いわば図10に示す8個の上方溝Gx1〜Gx4,Gy1〜Gy4を連結した円環状の溝である。溝の底部に、突起部bx1〜bx4,by1〜by4が形成され、これら突起部に各柱状体の上端が接合される点は、§3で述べた実施形態と同様である。この変形例では、上方環状溝GGが形成された円環状の領域全体が、可撓性をもった上方膜部を形成することになるが、特に、各突起部bx1〜bx4,by1〜by4の周辺部分が、上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4として機能することになる。
【0234】
もちろん、上方環状溝GGを上方基板110の上面に形成してもかまわない。要するに、この変形例では、上方基板110の上面側もしくは下面側に、各柱状体の接続位置を連結する上方環状溝GGが形成されており、この上方環状溝GGの底部の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸上方膜部Bx1〜Bx4および第1〜第4のY軸上方膜部By1〜By4が形成されていればよい。
【0235】
一方、図31は、図12の下方基板200の変形例となる下方基板210を示す上面図である。図示のとおり、下方基板210の上面には、8本の柱状体の接続位置を連結するように、下方環状溝HHが形成されている。この下方環状溝HHは、いわば図12に示す8個の下方溝Hx1〜Hx4,Hy1〜Hy4を連結した円環状の溝である。溝の底部に、突起部dx1〜dx4,dy1〜dy4が形成され、これら突起部に各柱状体の下端が接合される点は、§3で述べた実施形態と同様である。この変形例では、下方環状溝HHが形成された円環状の領域全体が、可撓性をもった下方膜部を形成することになるが、特に、各突起部dx1〜dx4,dy1〜dy4の周辺部分が、下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4として機能することになる。
【0236】
もちろん、下方環状溝HHを下方基板210の下面に形成してもかまわない。要するに、この変形例では、下方基板210の上面側もしくは下面側に、各柱状体の接続位置を連結する下方環状溝HHが形成されており、この下方環状溝HHの底部の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸下方膜部Dx1〜Dx4および第1〜第4のY軸下方膜部Dy1〜Dy4が形成されていればよい。
【0237】
また、図32は、図14の補助基板300の変形例となる補助基板310を示す上面図である。図示のとおり、補助基板310の上面には、8本の柱状体の接続位置を連結するように、補助環状溝KKが形成されている。この補助環状溝KKは、いわば図14に示す8個の補助溝Kx1〜Kx4,Ky1〜Ky4を連結した円環状の溝である。溝の底面に、固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4が形成される点は、§3で述べた実施形態と同様である。
【0238】
要するに、この変形例では、補助基板310の上面ににおける第1〜第4のX軸下方膜部Dx1〜Dx4の下方位置および第1〜第4のY軸下方膜部Dy1〜Dy4の下方位置を連結するような環状補助溝KKが形成されており、この環状補助溝KKの底面に第1〜第4のX軸固定電極Ex1〜Ex4および第1〜第4のY軸固定電極Ey1〜Ey4が形成されていればよい。
【0239】
<5−2:可撓性基板を用いた変形例>
これまで述べた実施形態では、上方基板や下方基板に溝を掘り、この溝の底部として、可撓性をもった上方膜部や下方膜部を形成していた。ここで述べる変形例は、上方基板や下方基板を、全体として可撓性をもった基板によって構成し、この可撓性基板の一部を、これまで述べた実施形態における上方膜部や下方膜部として利用するものである。
【0240】
図33は、このような可撓性基板を用いた本発明の変形例に係る力検出装置を示す正面図である。この変形例に係る装置の基本動作は、図8に示す実用的な実施形態に係る装置と全く同じであり、8本の柱状体の変位に基づいて、6つの力成分の検出を行うことができる。
【0241】
ただ、8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の上端は、可撓性基板からなる上方基板150の下面に直接接続されており、下端は、可撓性基板からなる下方基板250の上面に直接接続されている。ここで、上方基板150および下方基板250は、図34の斜視図に示すとおり、円盤状の基板であり、その厚みは、全体として可撓性基板となる程度の寸法に設定されている。たとえば、アルミニウムやステンレスによって上方基板150および下方基板250を構成する場合は、厚みを3.0mm以下にすれば、一般的な力検出装置の動作に支障ない程度の可撓性を確保することができる。
【0242】
図35は、図33に示す力検出装置における下方基板250およびその上面に取り付けられた8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4を示す平面図である。ここで、図のハッチング部分は、各柱状体の上端面を示すものであり、断面を示すものではない。
【0243】
図35において、下方基板250は全体的に可撓性を有している基板であるが、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4に変位が生じた場合、下方基板250のうち、柱状体の下端が接続された部分が最も大きく撓みを生じることになる。したがって、この可撓性基板250(下方基板)における各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の下端が接続された各部分の近傍が、それぞれ第1〜第4のX軸下方膜部Dx1〜Dx4および第1〜第4のY軸下方膜部Dy1〜Dy4として機能することになる。同様に、可撓性基板150(上方基板)における各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の上端が接続された各部分の近傍が、それぞれ第1〜第4のX軸上方膜部Bx1〜Bx4および第1〜第4のY軸上方膜部By1〜By4として機能することになる。
【0244】
また、図33の正面図に示されているとおり、この変形例の装置の場合、上方基板150の上面の中心部分に連結部材130が固着され、この連結部材130の上方に、検出対象となる力を受けるための受力体120が接合されている。これは、上方基板150が可撓性基板であるため、検出対象となる外力を上方基板150に対して直接加えると、上方基板150自身に生じる撓みが外力の影響を直接受け、正確な測定を阻む要因となる可能性があるためである。図示のような受力体120を設け、検出対象となる外力を、受力体120に作用させてから、連結部材130を介して上方基板150に伝播させる構造をとることにより、より正確な測定が可能になる。
【0245】
なお、連結部材130は、必ずしも上方基板150の中心部分に設ける必要はない。要するに、上方基板150のうち、実質的に第1〜第4のX軸上方膜部Bx1〜Bx4として機能する部分および実質的に第1〜第4のY軸上方膜部By1〜By4として機能する部分を除いた、上面の所定箇所に、連結部材130を固着し、この連結部材130の上方に、検出対象となる力を受けるための受力体120を接合する構造をとればよい。
【0246】
同様に、この変形例の装置の場合、下方基板150下面の中心部分にスペーサ部材330が固着され、このスペーサ部材330の下方に、固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4を支持するための補助基板340が接合されている。これも、下方基板250が可撓性基板であるため、下方基板250自身に生じる撓みが補助基板340によって阻害されないようにするためである。図示のとおり、スペーサ部材330を介して補助基板340を下方基板250に接合する構造をとることにより、より正確な測定が可能になる。
【0247】
なお、スペーサ部材330は、必ずしも下方基板250の中心部分に設ける必要はない。要するに、下方基板250のうち、実質的に第1〜第4のX軸下方膜部Dx1〜Dx4として機能する部分および実質的に第1〜第4のY軸下方膜部Dy1〜Dy4として機能する部分を除いた、下面の所定箇所に、スペーサ部材330を固着し、このスペーサ部材330の下方に、補助基板340を固着し、この補助基板340の上面に第1〜第4のX軸固定電極Ex1〜Ex4および第1〜第4のY軸固定電極Ey1〜Ey4を形成する構造をとればよい。
【0248】
なお、図33に示す変形例において、1本の柱状体の上端もしくは下端がZ軸方向に変位した場合、上方基板150や下方基板250が十分な可撓性をもつ基板であれば、当該Z軸方向への変位に起因して生じる基板の撓みは、当該柱状体の接続部近傍のみで済む。しかしながら、実際には、金属などで上方基板150や下方基板250を構成した場合、1本の柱状体の変位に起因する撓みが、隣接する柱状体の接続部近傍まで波及する可能性がある。そのような現象が生じると、1つのセンサが、隣接する柱状体の変位までも検出してしまうことになり、正確な測定ができなくなる。
【0249】
このような弊害を防止するには、可撓性基板にスリットを形成し、1本の柱状体の変位に起因する撓みが、隣接する柱状体の接続部近傍まで波及することを阻止すればよい。
【0250】
図36は、図34に示す上方基板(可撓性基板)150および下方基板(可撓性基板)250の代わりに用いる上方基板(可撓性基板)160および下方基板(可撓性基板)260を示す上面図である。図示のとおり、上方基板160および下方基板260の外形は、正方形に近い形となっているが、この外形形状の相違は重要な相違ではない。上方基板160および下方基板260の重要な特徴は、スリットS1〜S4を有している点にある。スリットS1,S3は、配置軸W1に沿って基板の外周側から中心部に向かって形成されているスリットであり、スリットS2,S4は、配置軸W2に沿って基板の外周側から中心部に向かって形成されているスリットである。ここで、配置軸W1,W2は、いずれもX軸もしくはY軸に対して45°の角度をなす軸である。
【0251】
図36に示されている太い破線の円は、上方基板160に対する8本の柱状体の接続位置を示し、細い破線の円は、下方基板260に対する8本の柱状体の接続位置を示している。図示のとおり、上方基板160および下方基板260は、いずれも4枚の翼状部J1〜J4と、これら翼状部J1〜J4を中心位置で束ねる中心部J9によって構成されており、スリットS1〜S4は、各翼状部J1〜J4の輪郭として機能している。
【0252】
ここで、第1のX軸柱状体Px1および第2のX軸柱状体Px2は、いずれも翼状部J1上に配置され、第3のX軸柱状体Px3および第4のX軸柱状体Px4は、いずれも翼状部J2上に配置されている。同様に、第1のY軸柱状体Py1および第2のY軸柱状体Py2は、いずれも翼状部J3上に配置され、第3のY軸柱状体Py3および第4のY軸柱状体Px4は、いずれも翼状部J4上に配置されている。各翼状部J1〜J4は、スリットS1〜S4によって物理的に分離されているため、1つの翼状部に生じた撓みが、隣接する翼状部に伝播することを阻止することができる。このため、1つのセンサが、隣接する柱状体の変位までも検出してしまうことにより生じる誤差を抑制できる。
【0253】
要するに、この変形例では、第1のX軸上方/下方膜部および第2のX軸上方/下方膜部を含む領域(翼状部J1)と、第3のX軸上方/下方膜部および第4のX軸上方/下方膜部を含む領域(翼状部J2)と、第1のY軸上方/下方膜部および第2のY軸上方/下方膜部を含む領域(翼状部J3)と、第3のY軸上方/下方膜部および第4のY軸上方/下方膜部を含む領域(翼状部J4)と、の4つの領域を可撓性基板160,260上に定義したときに、これら4つの領域の境界に沿って、可撓性基板の外周側から中心部に向かってスリットS1〜S4を形成する構成をとればよい。
【0254】
なお、たとえば、翼状部J1上には、第1のX軸柱状体Px1および第2のX軸柱状体Px2が配置されているが、これら一対の柱状体は、XZ平面に関して幾何学的対称性を維持しているので、一方の柱状体に起因して生じた撓みが他方の柱状体の配置領域へ波及したとしても、大きな誤差を生じる要因にはならない。もちろん、必要なら、更に、X軸およびY軸に沿って4本のスリットを形成し、8本の柱状体を、8枚の翼状部に接続する構成をとってもかまわない。
【0255】
<5−3:可撓性柱状体を用いた変形例>
これまで述べた実施形態では、「各柱状体自身は撓みを生じない」という前提で説明を行ってきたが、本発明を実施する上で、各柱状体に可撓性をもたせることも可能である。ここで述べる変形例は、可撓性柱状体を用いて装置を構成した例である。
【0256】
図37は、可撓性をもった柱状体PPの一例を示す斜視図である。図示のとおり、この柱状体PPは、上部PP1,くびれ部PP2,下部PP3によって構成されている。くびれ部PP2は、上部PP1や下部PP3に比べて径を小さくすることにより、可撓性をもたせた部分である。この柱状体PPの上端および下端に対して、柱状体PPを変形させる外力が作用すると、専ら、このくびれ部PP2に変形が生じ、柱状体PPが屈曲することになる。
【0257】
このように、可撓性をもった柱状体PPを用いると、上方膜部を省略することができる。図38は、この柱状体PPを用いた変形例に係る力検出装置を示す縦断面図である。この図38に示す変形例は、図8に示す実用的実施形態についての変形例であり、図38の縦断面図は、図19の縦断面図(C−C断面図)に対応するものである。図19と図38とを比較すると、前者における8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4が、後者では、図37に示すようなくびれ部をもった8本の柱状体PPx1〜PPx4,PPy1〜PPy4に置き換わっていることがわかる。また、前者における上方溝Gx1〜Gx4,Gy1〜Gy4が、後者では形成されていないことがわかる。
【0258】
すなわち、図38に示す変形例における上方基板105は、何ら溝が形成されていない1枚の円盤であり、8本の柱状体PPx1〜PPx4,PPy1〜PPy4の上端は、この円盤の下面に直接接続されていることになる。別言すれば、図38に示す変形例では、上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4が設けられていない。これは、可撓性をもつ8本の柱状体PPx1〜PPx4,PPy1〜PPy4が、それぞれ上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4の役割を果たすことができるためである。一方、下方基板200については、容量素子によってセンサを構成する必要があるため、下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4は必要になる。
【0259】
なお、図37に示す柱状体PPは、その一部(くびれ部PP2)に可撓性を持たせて、外力が作用したときに変形するようにしたものであるが、柱状体の全部に可撓性をもたせるようにしてもよい。すなわち、柱状体全体を可撓性をもった材質によって構成すれば、外力が作用したときに、柱状体全体が変形することになる。たとえば、弾性プラスチックなどの材料で構成した柱状体Tを用いるようにすれば、くびれ部を設けることなしに、柱状体自体に可撓性をもたせることが可能である。
【0260】
図39は、図38に示す8本の柱状体PPx1〜PPx4,PPy1〜PPy4を、弾性プラスチックなどの材料で構成した柱状体Tx1〜Tx4,Ty1〜Ty4に置き換えたものである。この場合も、柱状体Tx1〜Tx4,Ty1〜Ty4自身が可撓性を有しているため、上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4の役割を果たすことができる。したがって、上方基板105としては、何ら溝が形成されていない1枚の円盤を用いることができる。
【0261】
図40は、図33に示す変形例について、8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4を、弾性プラスチックなどの材料で構成した柱状体Tx1〜Tx4,Ty1〜Ty4に置き換えたものである(もちろん、図37に示す柱状体PPに置き換えてもよい)。図33と図40とを比較すると、前者における上方基板150,連結部材130,受力体120が、後者では1枚の上方基板170に置き換えられていることがわかる。ここで、上方基板170は可撓性を有している必要はなく、外力を直接受けることができる。これは、可撓性を有する柱状体Tx1〜Tx4,Ty1〜Ty4が、上方基板150の役割を果たすためである。
【0262】
<5−4:任意形状の構造体を用いた変形例>>>
これまで述べてきた実施形態は、いずれも上方基板と下方基板との間に複数の柱状体を渡す構造をとっていた。しかしながら、本発明を実施する上で、柱状体の上下を支持する構造体は、必ずしも基板状の構造体である必要はなく、任意形状の構造体であってかまわない。
【0263】
たとえば、§2で述べた本発明の基本的実施形態に係る力検出装置では、2本の柱状体P1,P2を、上方基板10と下方基板20との間に挟み込む構造を採っているが、上方基板10や下方基板20は、必ずしも基板状の構造体である必要はなく、任意形状の構造体に置き換えてもかまわない。
【0264】
要するに、この基本的実施形態に係る力検出装置は、上下方向に定義されたZ軸に対して所定方向に傾斜するように配置された第1の柱状体および第2の柱状体と、第1の柱状体および第2の柱状体の上方に配置された上方構造体と、第1の柱状体および第2の柱状体の下方に配置された下方構造体と、第1の柱状体および第2の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、を備えていればよい。
【0265】
そして、各柱状体の上端が、上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、各柱状体の下端が、下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合されており、第1の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像が、Z軸に対して第1の方向に傾斜しており、第2の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像が、Z軸に対して第1の方向とは逆の第2の方向に傾斜していればよい。
【0266】
また、上記構造において、「下方構造体」の少なくとも一部分および「上方構造体、第1の柱状体、第2の柱状体、およびこれら相互の接続部分」の少なくとも一部分が可撓性を有しているようにすれば、下方構造体の所定位置を固定した状態において、上方構造体に外力が作用した場合に、各柱状体の傾斜状態が変化して上方構造体が変位を生じることができる。そこで、検出部に、第1の柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のセンサと、第2の柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のセンサと、を設けておけば、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との差を示す電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力することができる。また、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との和を示す電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力することができる。
【0267】
各センサとして、容量素子を利用する場合には、下方構造体の下方に所定間隔をおいて固定された補助基板を更に設け、第1のセンサが、下方構造体における第1の柱状体の下端が接合された位置に形成された第1の変位電極と、補助基板の上面における第1の変位電極に対向する位置に固定された第1の固定電極と、からなる第1の容量素子によって構成されるようにし、第2のセンサが、下方構造体における第2の柱状体の下端が接合された位置に形成された第2の変位電極と、補助基板の上面における第2の変位電極に対向する位置に固定された第2の固定電極と、からなる第2の容量素子によって構成されるようにすればよい。このとき、下方構造体を導電性材料から構成しておけば、下方構造体における第1の柱状体の下端が接合された部分を第1の変位電極として機能させ、下方構造体における第2の柱状体の下端が接合された部分を第2の変位電極として機能させることができる。
【0268】
一方、§3で述べた本発明の実用的実施形態に係る力検出装置では、8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4を、上方基板100と下方基板200との間に挟み込む構造を採っているが、この場合も、上方基板100や下方基板200は、必ずしも基板状の構造体である必要はなく、任意形状の構造体に置き換えてもかまわない。
【0269】
要するに、この実用的実施形態に係る力検出装置は、XY平面に平行な平面上に広がる上方構造体と、XY平面に平行な平面上に広がり、上方構造体の下方に配置された下方構造体と、上端が上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のX軸柱状体および第1〜第4のY軸柱状体と、これら8本の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、を備えていればよい。
【0270】
そして、第1のX軸柱状体の中心軸と第2のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の正の領域においてX軸と直交するX軸正側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、第3のX軸柱状体の中心軸と第4のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の負の領域においてX軸と直交するX軸負側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、第1のY軸柱状体の中心軸と第2のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の正の領域においてY軸と直交するY軸正側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、第3のY軸柱状体の中心軸と第4のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の負の領域においてY軸と直交するY軸負側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しているようにすればよい。
【0271】
ここで、第1のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のX軸センサと、第2のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のX軸センサと、第3のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第3のX軸センサと、第4のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第4のX軸センサと、第1のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のY軸センサと、第2のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のY軸センサと、第3のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第3のY軸センサと、第4のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第4のY軸センサと、を有する検出部を設ければ、各センサの検出値に基づいて得られた電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用した力の検出値として出力することができる。
【0272】
図41は、図33に示す力検出装置における下方基板250の代わりに用いる下方構造体280の上面図である。図示の下方構造体280は、Z軸上に位置する中心部289と、この中心部289から第1〜第4のX軸柱状体の下端への接続位置および第1〜第4のY軸柱状体の下端への接続位置へそれぞれ伸びる8本の可撓性をもった枝状部281〜288と、を有している。ここで、各枝状部281〜288は、X軸もしくはY軸に対して45°をなす配置軸W1もしくはW2に沿って伸びている。また、図に示す破線の円は、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の下端が接続される部分を示している。
【0273】
このような下方構造体280は、たとえば、アルミニウム板やステンレス板に対して切削加工を施すことにより得ることができる。8本の枝状部281〜288は可撓性を有しているため、中心部289を固定した状態において、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4がそれぞれZ軸方向の変位を生じると、各枝状部281〜288はそれぞれ対応する柱状部の変位に応じて独立して撓むことになる。
【0274】
図42は、図33に示す力検出装置における補助基板340の代わりに用いる補助基板380を示す上面図である。図示のとおり、この補助基板380の上面には、8枚の固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4が形成されている(ハッチングは、電極形状を示すためのものである。)。この補助基板380上の8枚の固定電極は、図33に示す補助基板340上の8枚の固定電極とは平面形状は異なっているが、同一の機能を果たすため、便宜上、同一符号Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4で示してある。
【0275】
図42に示す8枚の固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4は、図41に示す8枚の枝状部281〜288に対向する形状をもち、対向する位置に配置された電極である。この実施形態の場合、下方構造体280は導電性材料によって構成されているため、枝状部281〜288はそれ自身が変位電極として機能し、対向する固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4とによって、8組の容量素子が形成される。ここでは、これらの容量素子も、これまでの実施形態と同様に、容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4と呼ぶことにする。
【0276】
図43は、図41に示す下方構造体280および図42に示す補助基板380を用いた変形例を示す縦断面図(XZ平面で切った断面図)である。この変形例の基本的な動作原理は、図33に示す実施形態と同じである。すなわち、受力体125に作用した外力は、連結部材135を介して上方基板155に伝達される。この例の場合、上方基板155は可撓性をもった円盤であり、この上方基板155の下方に、下方構造体280が配置され、両者間に、8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4が接続される。これら8本の柱状体の配置や傾斜状態は、§3で述べた実用的実施形態に係る装置と同様である。下方構造体280の中心部下面には、スペーサ部材335が接合され、その下面には補助基板380が接合されている。
【0277】
ここで、下方構造体280は、図41の上面図に示すように、中心部289から外側へ向かって8本の枝状部281〜288が伸びる構造体であり、補助基板380の上面には、図42の上面図に示すように、各枝状部281〜288に対向する固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4が形成されている。このような構成により、8組の容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4が、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の下端のZ軸方向の変位を検出するセンサとして機能する。これら8組の容量素子の静電容量値に基づいて、作用した外力の6成分の検出が可能になる点は、既に§4で述べたとおりである。
【0278】
すなわち、図43に示す力検出装置では、第1のX軸柱状体Px1の下端への接続位置へ伸びる枝状部281によって形成された第1のX軸変位電極と、補助基板380の上面における第1のX軸変位電極に対向する位置に固定された第1のX軸固定電極Ex1と、からなる第1のX軸容量素子Cx1によって第1のX軸センサが構成され、第2のX軸柱状体Px2の下端への接続位置へ伸びる枝状部288によって形成された第2のX軸変位電極と、補助基板380の上面における第2のX軸変位電極に対向する位置に固定された第2のX軸固定電極Ex2と、からなる第2のX軸容量素子Cx2によって第2のX軸センサが構成され、第3のX軸柱状体Px3の下端への接続位置へ伸びる枝状部284によって形成された第3のX軸変位電極と、補助基板380の上面における第3のX軸変位電極に対向する位置に固定された第3のX軸固定電極Ex3と、からなる第3のX軸容量素子Cx3によって第3のX軸センサが構成され、第4のX軸柱状体Px4の下端への接続位置へ伸びる枝状部285によって形成された第4のX軸変位電極と、補助基板380の上面における第4のX軸変位電極に対向する位置に固定された第4のX軸固定電極Ex4と、からなる第4のX軸容量素子Cx4によって第4のX軸センサが構成されていることになる。
【0279】
また、第1のY軸柱状体Py1の下端への接続位置へ伸びる枝状部282によって形成された第1のY軸変位電極と、補助基板380の上面における第1のY軸変位電極に対向する位置に固定された第1のY軸固定電極Ey1と、からなる第1のY軸容量素子Cy1によって第1のY軸センサが構成され、第2のY軸柱状体Py2の下端への接続位置へ伸びる枝状部283によって形成された第2のY軸変位電極と、補助基板380の上面における第2のY軸変位電極に対向する位置に固定された第2のY軸固定電極Ey2と、からなる第2のY軸容量素子Cy2によって第2のY軸センサが構成され、第3のY軸柱状体Py3の下端への接続位置へ伸びる枝状部287によって形成された第3のY軸変位電極と、補助基板380の上面における第3のY軸変位電極に対向する位置に固定された第3のY軸固定電極Ey3と、からなる第3のY軸容量素子Cy3によって第3のY軸センサが構成され、第4のY軸柱状体Py4の下端への接続位置へ伸びる枝状部286によって形成された第4のY軸変位電極と、補助基板380の上面における第4のY軸変位電極に対向する位置に固定された第4のY軸固定電極Ey4と、からなる第4のY軸容量素子Cy4によって第4のY軸センサが構成されていることになる。
【0280】
そして、検出部は、第1のX軸容量素子の静電容量変動値Cx1、第2のX軸容量素子の静電容量変動値Cx2、第3のX軸容量素子の静電容量変動値Cx3、第4のX軸容量素子の静電容量変動値Cx4、第1のY軸容量素子の静電容量変動値Cy1、第2のY軸容量素子の静電容量変動値Cy2、第3のY軸容量素子の静電容量変動値Cy3、第4のY軸容量素子の静電容量変動値Cy4に基づいて得られた電気信号を、検出値として出力する。
【0281】
なお、ここでは、下方構造体280が導電性材料から構成され、各枝状部281〜288自身がそれぞれ変位電極として機能する例を述べたが、下方構造体280を非導電性材料から構成した場合は、各枝状部281〜288の下面に変位電極として機能する導電層を形成すればよい。
【0282】
ところで、図41に示すような8本の枝状部を有する下方構造体280を用いると、各柱状体の下端を支持する枝状部281〜288が、それぞれ独立した片持ち梁として機能するため、装置全体の変位自由度が向上し、上方基板155の変位量がかなり大きくなる可能性がある。このような大きな変位状態は、検出誤差を生む要因になり、また、各部に破損を生じさせる要因にもなる。そこで、実用上は、上方基板155の変位を制御する制御部材を設けるのが好ましい。
【0283】
図44は、図43に示す装置を装置筐体460内に収容した状態を示す縦断面図である。この装置筐体460には、上方基板155の変位を制御する制御部材が取り付けられており、上方基板155の過度の変位を抑制することができる。すなわち、図43に示す装置は、装置筐体460内に収容され、補助基板380が装置筐体460の底面に固定される。そして、図43に示す装置における受力体125は、若干、形状の異なる受力体126に交換されている。この受力体126は、基本的には円盤状の部材であるが、その周囲には鍔状部127が設けられている。
【0284】
一方、装置筐体460の上面には、円環状の制御部材470が、ねじ471によって取り付けられている。この制御部材470は、鍔状部127の上面および側面に当接して、受力体126の上方および側方への過度の変位を抑制する機能を果たす。また、装置筐体460の上縁面は、鍔状部127の下面に当接して、受力体126の下方への過度の変位を抑制する機能を果たす。このように、受力体126の過度の変位を抑制することにより、上方基板155の過度の変位を抑制することができる。
【0285】
なお、この図43および図44に示す例は、下方基板を8本の枝状部を有する下方構造体280に置き換えた例であるが、もちろん、上方基板を8本の枝状部を有する上方構造体に置き換えることも可能である。また、図38や図39に示す例における下方基板200,補助基板300を、図41および図42に示す下方構造体280および補助基板380に置き換えることも可能であるし、図40に示す例における下方基板250,補助基板340を、図41および図42に示す下方構造体280および補助基板380に置き換えることも可能である。この他にも、本発明の基本概念を逸脱しない限り、任意の組み合わせが可能である。
【0286】
<5−5:枝状部を有する下方構造体を用いる場合の付加機能>
さて、図41〜図44には、8本の枝状部281〜288を有する下方構造体280を用いる変形例を示したが、このような枝状部を有する構造体を用いた変形例では、これまで述べてきた通常の力検出機能の他に、更に付加的な機能を設けることができる。それは、個々の枝状部が、補助基板380に接するほど大きく変位したことを電気的に検出する機能である。
【0287】
たとえば、図42に示す補助基板380の代わりに、図45に示す補助基板380Aを用いた場合を考えよう。両者の相違は、後者では、各固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4の長さが若干短くなっており、その空き部分に、接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4を設けた点である。図45では、固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4に斜線ハッチングを施し、接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4にグレーハッチングを施して示す(これらのハッチングは、各電極の形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。ここで、各接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4は、各枝状部281〜288を下方へ撓ませたときに、その先端部が接触する位置に配置されている。
【0288】
要するに、補助基板380Aでは、その上面における各枝状部281〜288の先端部に対向する位置のそれぞれに、各固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4とは電気的に絶縁された接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4が設けられていることになる。このような構成を採れば、枝状部の先端部と接触判定用電極との物理的接触の有無を、両者の電気的導通状態に基づいて判定できるようになる。
【0289】
この装置では、検出回路500によって、8組の容量素子の静電容量値をそれぞれ測定するため、各固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4と検出回路500との間に配線を設け、また、共通の変位電極として機能する下面構造体280と検出回路500との間にも配線を設ける必要があるが、それに加えて、各接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4と検出回路500との間にも配線を設けておくようにする。そうすれば、検出回路500は、下面構造体280と各接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4との間の電気的導通状態をチェックすることにより、各枝状部281〜288の先端部と各接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4とが物理的に接触したか否かを判定することができる。
【0290】
たとえば、接触判定用電極ex1と下面構造体280とが電気的に導通した状態が検出できれば、枝状部281の先端部が接触判定用電極ex1に物理的に接触したことを認識することができる。これは、第1のX軸柱状体Px1の下端が下方に大きく変位したことを示し、そのような変位を生じさせる大きな外力が作用したことを示すことになる。そのような大きな外力が作用した場合、正しい検出値を出力することはできないので、たとえば、エラー信号を出力したり、必要であれば、過度の外力による破損の危険性があることを示す警告を発したりする対応をとればよい。
【0291】
図46に示す補助基板380Bは、図45に示す補助基板380Aの変形例である。この変形例は、8個の接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4を、単一の接触判定用環状電極eに置き換えたものである(グレーのハッチングは、この接触判定用環状電極eの形状を示すためのものである)。すなわち、補助基板380Bでは、その上面における各枝状部281〜288の先端部に対向する位置をそれぞれ連結する環状領域に、各固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4とは電気的に絶縁された接触判定用環状電極eが設けられている。この場合、8本の枝状部281〜288のいずれかの先端部が、接触判定用環状電極eに物理的に接触したことを検出できる。どの枝状部281〜288が接触したかを特定する情報は得られないので、どの柱状体が大きく変位したかを認識することはできないが、エラー信号を出力したり警告を発したりする対応をとるのであれば、この図46の構成で十分である。
【0292】
図47に示す補助基板380Cは、図45に示す補助基板380Aの別な変形例である。この変形例では、8個の接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4の代わりに、16個の接触判定用電極ex1a〜ex4b,ey1a〜ey4bが設けられている。いわば、補助基板380A上の各接触判定用電極を、それぞれ2つに分割した形態をとる。
【0293】
この変形例の利点は、下方構造体280側への配線を利用しなくても、大きな外力が作用したことを電気的に検出できる点である。たとえば、第1のX軸柱状体Px1の下端が下方に大きく変位し、枝状部281の先端部が接触判定用電極ex1a,ex1bに接触したとすると、この枝状部281の先端部を介して、一対の接触判定用電極ex1a,ex1bが導通することになる。したがって、この一対の接触判定用電極ex1a,ex1b間の電気的導通状態をチェックするだけで、枝状部281の物理的接触を検知できることになる。他の接触判定用電極対についても同様である。
【0294】
要するに、1つの枝状部の先端部に対向する位置に、互いに絶縁された一対の接触判定用電極を設けることにより、この一対の接触判定用電極の相互間の電気的導通状態に基づいて、枝状部の先端部とこの一対の接触判定用電極との物理的接触の有無を判定できるようになる。
【0295】
図48に示す補助基板380Dは、図46に示す補助基板380Bの変形例である。この変形例では、単一の接触判定用環状電極eの代わりに、一対の接触判定用環状電極ea,ebが設けられている。いわば、補助基板380B上の接触判定用環状電極eが配置されている環状領域に、互いに絶縁された同心状の一対の接触判定用環状電極ea,ebを設けたものに相当する。この場合も、一対の接触判定用環状電極ea,ebの相互間の電気的導通状態に基づいて、枝状部の先端部とこの一対の接触判定用環状電極ea,ebとの物理的接触の有無を判定できるので、下方構造体280側への配線を利用しなくても、大きな外力が作用したことが電気的に検出できる。
【0296】
以上、接触判定用電極を設けて、大きな外力が作用したことを電気的に検出できるようにし、そのような場合にエラー信号を出力したり警告を発したりする対応をとる例を述べたが、逆に、そのような大きな外力が作用した場合にのみ、検出値の出力が行われるような対応をとることも可能である。
【0297】
たとえば、図43に示す力検出装置を、デジタル機器用の入力装置として利用する場合を考えてみよう。すなわち、人間が掌の上にこの装置を載せ、親指を受力体125の上面に置いて何らかの入力操作を行うような場合、親指からは絶えず微小な力が加えられるため、人間が意図的に何らかの入力操作を行わなくても、この装置は、親指から加えられた力を検出することになる。しかしながら、そのような微小な力を、人間から与えられた入力操作を示す信号として出力することは好ましくない。別言すれば、デジタル機器用の入力装置として利用する場合、人間が意図的に何らかの入力操作(具体的には、たとえば、受力体125をX軸正方向もしくは負方向に傾ける操作、または、Y軸正方向もしくは負方向に傾ける操作)を行ったと判断できる程度の大きな外力が作用した場合にのみ、当該入力操作に対応する検出値の出力がなされるようにするべきである。
【0298】
このような用途の場合は、枝状部の先端が接触判定用電極に接触したことが電気的に検出できた場合にのみ、検出値の出力が行われるようにすればよい。なお、このような利用形態を前提とする場合は、下方構造体280側への配線は一切不要である。なぜなら、接触判定用電極(接触判定用環状電極)と枝状部との物理的接触によって形成される導電路を、各変位電極と検出部とを電気的に接続する配線路として利用することができるからである。
【0299】
たとえば、図47に示す補助基板380Cを利用した変形例の場合、第1のX軸柱状体Px1の下端が下方に大きく変位し、枝状部281の先端部が接触判定用電極ex1a,ex1bに接触したとすると、前述したとおり、この枝状部281の先端部を介して、一対の接触判定用電極ex1a,ex1bが導通することになる。したがって、この一対の接触判定用電極ex1a,ex1b間の電気的導通状態をチェックするだけで、枝状部281の物理的接触を検知できる。しかも、枝状部281の先端部が接触判定用電極ex1a,ex1bに接触した状態では、下方構造体280全体が接触判定用電極ex1a,ex1bに導通した状態となっているので、接触判定用電極ex1a,ex1bと検出回路500との間に設けられた配線を、そのまま下方構造体280への配線として利用することができる。したがって、下方構造体280に対して直接的な配線を施さなくても、各容量素子の静電容量値の検出を行うことができる。
【0300】
もちろん、8本の枝状部281〜288のいずれもが接触判定用電極に接触していない場合は、直接的な配線が施されていない下方構造体280は、電気的な浮遊状態におかれることになり、検出回路500は、各容量素子の静電容量値の検出を行うことができない。しかしながら、前述したようなデジタル機器用の入力装置として利用する前提では、そもそも、そのような状態では、検出値の出力を行う必要がないので、何ら支障は生じない。
【0301】
<5−6:枝状部を有する下方構造体の変形例>
ここでは、図41に示す枝状部を有する下方構造体280の変形例を示す。図49は、この変形例に係る下方構造体290の上面図である。図において、破線の直線は、この構造体の各部分の境界を示しており、破線の円は、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の下端が接続される部分を示している。
【0302】
図示のとおり、この下方構造体290は、中心位置がZ軸と交差する十字架状の中心部299と、この中心部299から第1〜第4のX軸柱状体の下端への接続位置および第1〜第4のY軸柱状体の下端への接続位置へそれぞれ伸びる8本の可撓性をもった枝状部291〜298と、を有している。この変形例では、各枝状部291〜298は、X軸もしくはY軸に平行な方向に伸びる片持ち梁として機能する。
【0303】
この下方構造体290も、たとえば、アルミニウム板やステンレス板に対して切削加工を施すことにより得ることができる。8本の枝状部291〜298は可撓性を有しているため、中心部299を固定した状態において、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4がそれぞれZ軸方向の変位を生じると、各枝状部291〜298はそれぞれ対応する柱状部の変位に応じて独立して撓むことになる。この図49に示す下方構造体290は、図41に示す下方構造体280に比べて、製造が容易であるという利点を有している。
【0304】
図41に示す下方構造体280の代わりに、図49に示す下方構造体290を用いる場合には、図42に示す補助基板380の代わりに、図50に示す補助基板390を用いるようにする。この補助基板390の上面には、8枚の固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4が形成されている(ハッチングは、電極形状を示すためのものである。)。この補助基板390上の8枚の固定電極は、図49に示す8枚の枝状部291〜298に対向する形状をもち、対向する位置に配置された電極であるため、図42に示す8枚の固定電極とは形状や配置が異なっているが、同一の機能を果たすため、便宜上、同一符号Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4で示してある。
【0305】
<5−7:容量素子以外のセンサを用いた変形例>
これまで「各柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出するセンサ」として、容量素子を用いた実施形態について、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出値を得るための具体的な演算方法を述べた。しかしながら、本発明を実施するにあたり、「各柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出するセンサ」は、必ずしも容量素子を用いたセンサである必要はなく、特定部位の変位を何らかの方法で電気的に検出可能なセンサであれば足りる。たとえば、超音波を用いて距離を測定するセンサや、光を用いて距離を測定するセンサなどを利用して、特定部位までの距離の変化を測定するようにすれば、当該特定部位の変位を検出することができる。
【0306】
このように、容量式センサの代わりに、「柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出するセンサ」を用いた場合でも、§4で述べた検出動作によって、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzを検出できる点に変わりはない。
【0307】
すなわち、検出部は、「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fx)*を、作用したX軸方向の力Fxの検出値(近似値)として出力することができ、「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fy)*を、作用したY軸方向の力Fyの検出値(近似値)として出力することができる。
【0308】
また、検出部は、「第1〜第4のX軸センサの検出値の総和」もしくは「第1〜第4のY軸センサの検出値の総和」、または「第1〜第4のX軸センサの検出値の総和と第1〜第4のY軸センサの検出値の総和との和」に対応する信号値V(Fz)を、作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力することができる。
【0309】
一方、モーメントに関しては、検出部は、「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との和」と「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力することができ、「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との和」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力することができる。
【0310】
また、検出部は、「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第4のX軸センサの検出値と第3のX軸センサの検出値との差」と「第2のY軸センサの検出値と第1のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Mz)を、作用したZ軸まわりのモーメントMzの検出値として出力することができる。
【0311】
更に、より正確な検出値を得る必要がある場合、検出部は、「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fx)*と、「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fy)*とを求め、所定の係数k1〜k4を用いて、V(Fx)*−k2/k1・V(My)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、V(Fy)*−k4/k3・V(Mx)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力することができる。
【符号の説明】
【0312】
10:上方基板
11:第1の上方膜部
12:第2の上方膜部
13:突起部
14:突起部
15:上方基板
20:下方基板
21:第1の下方膜部
22:第2の下方膜部
23:突起部
24:突起部
25:下方基板
30:補助基板
35:補助基板
41:第1の柱状体
42:第2の柱状体
50:検出回路
100,105,110:上方基板
120,125,126:受力体
127:鍔状部
130,135:連結部材
150,155:上方基板(可撓性基板)
160:上方基板(可撓性基板)
170:上方基板
200,210:下方基板
250:下方基板(可撓性基板)
260:下方基板(可撓性基板)
280:下方構造体
281〜288:枝状部
289:中央部
290:下方構造体
291〜298:枝状部
299:中央部
300,310:補助基板
330,335:スペーサ部材
340:補助基板
380:補助基板
380A〜380D:補助基板
390:補助基板
410〜450:ガイド部材
460:装置筐体
470:制御部材
471:ねじ
500:検出回路
A:切断位置
A1,A2:柱状体の中心軸
Ax1〜Ax4:領域
Ay1〜Ay4:領域
B:切断位置
Bx1:第1のX軸上方膜部
Bx2:第2のX軸上方膜部
Bx3:第3のX軸上方膜部
Bx4:第4のX軸上方膜部
By1:第1のY軸上方膜部
By2:第2のY軸上方膜部
By3:第3のY軸上方膜部
By4:第4のY軸上方膜部
bx1〜bx4:突起部
by1〜by4:突起部
C:切断位置
Cx1:第1のX軸容量素子(その静電容量変動値)
Cx2:第2のX軸容量素子(その静電容量変動値)
Cx3:第3のX軸容量素子(その静電容量変動値)
Cx4:第4のX軸容量素子(その静電容量変動値)
Cy1:第1のY軸容量素子(その静電容量変動値)
Cy2:第2のY軸容量素子(その静電容量変動値)
Cy3:第3のY軸容量素子(その静電容量変動値)
Cy4:第4のY軸容量素子(その静電容量変動値)
Dx1:第1のX軸下方膜部
Dx2:第2のX軸下方膜部
Dx3:第3のX軸下方膜部
Dx4:第4のX軸下方膜部
Dy1:第1のY軸下方膜部
Dy2:第2のY軸下方膜部
Dy3:第3のY軸下方膜部
Dy4:第4のY軸下方膜部
dx1〜dx4:突起部
dy1〜dy4:突起部
E1〜E6:固定電極
Ex1:第1のX軸固定電極
Ex2:第2のX軸固定電極
Ex3:第3のX軸固定電極
Ex4:第4のX軸固定電極
Ey1:第1のY軸固定電極
Ey2:第2のY軸固定電極
Ey3:第3のY軸固定電極
Ey4:第4のY軸固定電極
ex1〜ex4:接触判定用電極
ex1a〜ex4a:接触判定用電極
ex1b〜ex4b:接触判定用電極
ey1〜ey4:接触判定用電極
ey1a〜ey4a:接触判定用電極
ey1b〜ey4b:接触判定用電極
e,ea,eb:接触判定用環状電極
Fx,Fy,Fz:各座標軸方向の力
G1:第1の上方溝
G2:第2の上方溝
GG:上方環状溝
Gx1:第1のX軸上方溝
Gx2:第2のX軸上方溝
Gx3:第3のX軸上方溝
Gx4:第4のX軸上方溝
Gy1:第1のY軸上方溝
Gy2:第2のY軸上方溝
Gy3:第3のY軸上方溝
Gy4:第4のY軸上方溝
H1:第1の下方溝
H2:第2の下方溝
HH:下方環状溝
Hx1:第1のX軸下方溝
Hx2:第2のX軸下方溝
Hx3:第3のX軸下方溝
Hx4:第4のX軸下方溝
Hy1:第1のY軸下方溝
Hy2:第2のY軸下方溝
Hy3:第3のY軸下方溝
Hy4:第4のY軸下方溝
J1〜J4:翼状部
J9:中央部
K1:第1の補助溝
K2:第2の補助溝
KK:補助環状溝
Kx1:第1のX軸補助溝
Kx2:第2のX軸補助溝
Kx3:第3のX軸補助溝
Kx4:第4のX軸補助溝
Ky1:第1のY軸補助溝
Ky2:第2のY軸補助溝
Ky3:第3のY軸補助溝
Ky4:第4のY軸補助溝
k1〜k4:係数
L1〜L4:基準線
Mx,My,Mz:各座標軸まわりのモーメント
O:XYZ三次元座標系の原点
P1:第1の柱状体
P2:第2の柱状体
PP:くびれ部を有する柱状体
PP1:上部
PP2:くびれ部
PP3:下部
Px1:第1のX軸柱状体
Px2:第2のX軸柱状体
Px3:第3のX軸柱状体
Px4:第4のX軸柱状体
Py1:第1のY軸柱状体
Py2:第2のY軸柱状体
Py3:第3のY軸柱状体
Py4:第4のY軸柱状体
PPx1:くびれ部を有する第1のX軸柱状体
PPx2:くびれ部を有する第2のX軸柱状体
PPx3:くびれ部を有する第3のX軸柱状体
PPx4:くびれ部を有する第4のX軸柱状体
PPy1:くびれ部を有する第1のY軸柱状体
PPy2:くびれ部を有する第2のY軸柱状体
PPy3:くびれ部を有する第3のY軸柱状体
PPy4:くびれ部を有する第4のY軸柱状体
Q:作用点
Q(+x):X軸正側の点
Q(−x):X軸負側の点
Q(+y):Y軸正側の点
Q(−y):Y軸負側の点
Q10:上方基板10の上面とZ軸との交点
Q20:下方基板20の上面とZ軸との交点
Q30:補助基板30の上面とZ軸との交点
R:半径
R1,R2:垂直基準軸
S1〜S4:スリット
S(+x):X軸正側直交面
S(−x):X軸負側直交面
S(+y):Y軸正側直交面
S(−y):Y軸負側直交面
T:円弧軌道
Tx1:可撓性部材からなる第1のX軸柱状体
Tx2:可撓性部材からなる第2のX軸柱状体
Tx3:可撓性部材からなる第3のX軸柱状体
Tx4:可撓性部材からなる第4のX軸柱状体
Ty1:可撓性部材からなる第1のY軸柱状体
Ty2:可撓性部材からなる第2のY軸柱状体
Ty3:可撓性部材からなる第3のY軸柱状体
Ty4:可撓性部材からなる第4のY軸柱状体
V(Fx):力Fxの検出値
V(Fx)*:力Fxの近似検出値
V(Fy):力Fyの検出値
V(Fy)*:力Fyの近似検出値
V(Fz):力Fzの検出値
V(Mx):モーメントMxの検出値
V(My):モーメントMyの検出値
V(Mz):モーメントMzの検出値
W1,W2:配置軸
X:XYZ三次元座標系の座標軸
Y:XYZ三次元座標系の座標軸
Z:XYZ三次元座標系の座標軸
Δ:容量値変化量
δ:容量値微小変化量
θ1,θ2:柱状体の傾斜角
【技術分野】
【0001】
本発明は力検出装置に関し、特に、所定の座標軸方向に作用した力や、所定の座標軸まわりに作用したモーメントを検出するのに適した力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや産業機械の動作制御を行うために、種々のタイプの力検出装置が利用されている。また、電子機器の入力装置のマン・マシンインターフェイスとしても、小型の力検出装置が組み込まれている。このような用途に用いる力検出装置には、小型化およびコストダウンを図るために、できるだけ構造を単純にするとともに、三次元空間内での各座標軸に関する力をそれぞれ独立して検出できるようにすることが要求される。
【0003】
一般に、力検出装置の検出対象には、所定の座標軸方向を向いた力成分と、所定の座標軸まわりのモーメント成分とがある。三次元空間内にXYZ三次元座標系を定義した場合、検出対象は、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分になる。
【0004】
このような6つの力成分をそれぞれ独立して検出することができる力検出装置として、たとえば、下記の特許文献1には、比較的単純な構造をもった装置が開示されている。この特許文献1に開示された技術は、既に米国特許第6915709号・米国特許第7121147号・欧州特許第1464939号が付与されている技術であり、2枚の基板を複数の柱状体で接続した構造物を用意し、一方の基板を固定した状体において他方の基板に力を加えたときに、各柱状体の変位を個別に測定することにより、加えられた力の各成分を検出するものである。
【0005】
また、下記の特許文献2に開示されている技術も、既に米国特許第7219561号が付与されている技術である。この技術によれば、各柱状体の変位を個別に測定するセンサとして静電容量素子を用い、この静電容量素子を構成する特定の電極間に配線を施すことにより、加えられた力の各成分を検出するための演算を単純化することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−354049号公報
【特許文献2】特開2004−325367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前掲の各特許文献に開示されている力検出装置では、個々の柱状体の傾斜をそれぞれ独立して求め、複数の柱状体の傾斜態様に基づいて、6つの力成分を独立して検出している。このため、個々の柱状体について、その傾斜度をそれぞれ独立して測定するためのセンサが必要になる。特に、6つの力成分を検出する機能をもった装置では、XY平面に平行な基板上にZ軸方向に平行な柱状体を複数配置し、各柱状体のX軸方向に関する傾斜度とY軸方向に関する傾斜度とを独立して測定するセンサが必要になり、装置全体の構造は複雑にならざるを得ない。
【0008】
たとえば、前掲の各特許文献に例示されているように、傾斜度を測定するセンサとして、容量素子を用いたセンサを利用した場合、1本の柱状体のX軸方向に関する傾斜度とY軸方向に関する傾斜度との双方を測定するためには、X軸の正方向および負方向、ならびにY軸の正方向および負方向に容量素子を配置する必要が生じる。このように、多くの容量素子を必要とする装置では、配線も複雑にならざるを得ず、装置全体の構造が複雑化し、製造コストも嵩むことになる。
【0009】
そこで本発明は、より単純な構造をもった力検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の第1の態様は、XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置において、
XY平面に平行な基板面を有する上方基板と、
XY平面に平行な基板面を有し、上方基板の下方に配置された下方基板と、
上端が上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1の柱状体と、
上端が上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第2の柱状体と、
第1の柱状体および第2の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を設け、
下方基板のうち、第1の柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第1の下方膜部を構成し、
下方基板のうち、第2の柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第2の下方膜部を構成し、
第1の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して第1の方向に傾斜しており、第2の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して第1の方向とは逆の第2の方向に傾斜しており、
検出部は、第1の下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のセンサと、第2の下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のセンサと、を有し、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との差を示す電気信号を、下方基板を固定した状態において上方基板に作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力するようにしたものである。
【0011】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との和を示す電気信号を、下方基板を固定した状態において上方基板に作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力するようにしたものである。
【0012】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係る力検出装置において、
下方基板の上面側もしくは下面側に第1の下方溝および第2の下方溝が形成されており、第1の下方溝の底部によって第1の下方膜部が形成され、第2の下方溝の底部によって第2の下方膜部が形成されているようにしたものである。
【0013】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第3の態様に係る力検出装置において、
各下方溝が下方基板の上面側に形成されており、各下方溝の内部に溝の底面から基板面位置まで上方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の下端が突起部を介して下方膜部に接合されているようにしたものである。
【0014】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第1または第2の態様に係る力検出装置において、
下方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の一部により第1の下方膜部が形成され、当該可撓性基板の別な一部により第2の下方膜部が形成されているようにしたものである。
【0015】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る力検出装置において、
上方基板のうち、第1の柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第1の上方膜部を構成し、
上方基板のうち、第2の柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第2の上方膜部を構成するようにしたものである。
【0016】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第6の態様に係る力検出装置において、
上方基板の上面側もしくは下面側に第1の上方溝および第2の上方溝が形成されており、第1の上方溝の底部によって第1の上方膜部が形成され、第2の上方溝の底部によって第2の上方膜部が形成されているようにしたものである。
【0017】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第7の態様に係る力検出装置において、
各上方溝が上方基板の下面側に形成されており、各上方溝の内部に溝の底面から基板面位置まで下方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の上端が突起部を介して上方膜部に接合されているようにしたものである。
【0018】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第6の態様に係る力検出装置において、
上方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の一部により第1の上方膜部が形成され、当該可撓性基板の別な一部により第2の上方膜部が形成されているようにしたものである。
【0019】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第1〜第9の態様に係る力検出装置において、
第1の柱状体の中心軸と第2の柱状体の中心軸とが、XZ平面もしくはXZ平面に平行な同一平面上に配置されており、第1の柱状体と第2の柱状体とが、YZ平面に関して面対称をなすようにしたものである。
【0020】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第1〜第10の態様に係る力検出装置において、
第1のセンサが、第1の下方膜部に形成された第1の変位電極と、この第1の変位電極に対向する位置に固定された第1の固定電極と、からなる第1の容量素子によって構成され、
第2のセンサが、第2の下方膜部に形成された第2の変位電極と、この第2の変位電極に対向する位置に固定された第2の固定電極と、からなる第2の容量素子によって構成されているようにしたものである。
【0021】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第11の態様に係る力検出装置において、
下方基板が導電性材料から構成され、第1の下方膜部自身が第1の変位電極として機能し、第2の下方膜部自身が第2の変位電極として機能するようにしたものである。
【0022】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第11または第12の態様に係る力検出装置において、
下方基板の下面に固着された補助基板を更に設け、
補助基板の上面における第1の下方膜部の下方位置に第1の補助溝が形成されており、補助基板の上面における第2の下方膜部の下方位置に第2の補助溝が形成されており、
第1の補助溝の底面に第1の固定電極が形成され、第2の補助溝の底面に第2の固定電極が形成されているようにしたものである。
【0023】
(14) 本発明の第14の態様は、XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置において、
上下方向に定義されたZ軸に対して所定方向に傾斜するように配置された第1の柱状体および第2の柱状体と、
第1の柱状体および第2の柱状体の上方に配置された上方構造体と、
第1の柱状体および第2の柱状体の下方に配置された下方構造体と、
第1の柱状体および第2の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を設け、
第1の柱状体の上端は、上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、第1の柱状体の下端は、下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合されており、
第2の柱状体の上端は、上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、第2の柱状体の下端は、下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合されており、
第1の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して第1の方向に傾斜しており、第2の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して第1の方向とは逆の第2の方向に傾斜しており、
下方構造体の所定位置を固定した状態において、上方構造体に外力が作用した場合に、第1の柱状体および第2の柱状体の傾斜状態が変化して上方構造体が変位を生じることができるように、「下方構造体」の少なくとも一部分および「上方構造体、第1の柱状体、第2の柱状体、およびこれら相互の接続部分」の少なくとも一部分が可撓性を有しており、
検出部は、第1の柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のセンサと、第2の柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のセンサと、を有し、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との差を示す電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力するようにしたものである。
【0024】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第14の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との和を示す電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力するようにしたものである。
【0025】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第14または第15の態様に係る力検出装置において、
第1の柱状体の中心軸と第2の柱状体の中心軸とが、XZ平面もしくはXZ平面に平行な同一平面上に配置されており、第1の柱状体と第2の柱状体とが、YZ平面に関して面対称をなすようにしたものである。
【0026】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第14〜第16の態様に係る力検出装置において、
下方構造体の下方に所定間隔をおいて固定された補助基板を更に設け、
第1のセンサが、下方構造体における第1の柱状体の下端が接合された位置に形成された第1の変位電極と、補助基板の上面における第1の変位電極に対向する位置に固定された第1の固定電極と、からなる第1の容量素子によって構成され、
第2のセンサが、下方構造体における第2の柱状体の下端が接合された位置に形成された第2の変位電極と、補助基板の上面における第2の変位電極に対向する位置に固定された第2の固定電極と、からなる第2の容量素子によって構成されているようにしたものである。
【0027】
(18) 本発明の第18の態様は、上述した第17の態様に係る力検出装置において、
下方構造体が導電性材料から構成され、下方構造体における第1の柱状体の下端が接合された部分が第1の変位電極として機能し、下方構造体における第2の柱状体の下端が接合された部分が第2の変位電極として機能するようにしたものである。
【0028】
(19) 本発明の第19の態様は、XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置において、
XY平面に平行な基板面を有する上方基板と、
XY平面に平行な基板面を有し、上方基板の下方に配置された下方基板と、
上端が上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のX軸柱状体と、
上端が上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のY軸柱状体と、
第1〜第4のX軸柱状体および第1〜第4のY軸柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を設け、
下方基板のうち、第1〜第4のX軸柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のX軸下方膜部を構成し、
下方基板のうち、第1〜第4のY軸柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のY軸下方膜部を構成し、
第1のX軸柱状体の中心軸と第2のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の正の領域においてX軸と直交するX軸正側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
第3のX軸柱状体の中心軸と第4のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の負の領域においてX軸と直交するX軸負側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
第1のY軸柱状体の中心軸と第2のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の正の領域においてY軸と直交するY軸正側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
第3のY軸柱状体の中心軸と第4のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の負の領域においてY軸と直交するY軸負側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
検出部は、
第1のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のX軸センサと、第2のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のX軸センサと、第3のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第3のX軸センサと、第4のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第4のX軸センサと、第1のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のY軸センサと、第2のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のY軸センサと、第3のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第3のY軸センサと、第4のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第4のY軸センサと、を有し、各センサの検出値に基づいて得られた電気信号を、下方基板を固定した状態において上方基板に作用した力の検出値として出力するようにしたものである。
【0029】
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第19の態様に係る力検出装置において、
下方基板の上面側もしくは下面側に第1〜第4のX軸下方溝および第1〜第4のY軸下方溝が形成されており、第1〜第4のX軸下方溝の底部によって第1〜第4のX軸下方膜部が形成され、第1〜第4のY軸下方溝の底部によって第1〜第4のY軸下方膜部が形成されているようにしたものである。
【0030】
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第19の態様に係る力検出装置において、
下方基板の上面側もしくは下面側に下方環状溝が形成されており、この下方環状溝の底部の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸下方膜部および第1〜第4のY軸下方膜部が形成されているようにしたものである。
【0031】
(22) 本発明の第22の態様は、上述した第20または第21の態様に係る力検出装置において、
各下方溝もしくは下方環状溝が下方基板の上面側に形成されており、各下方溝もしくは下方環状溝の内部に溝の底面から基板面位置まで上方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の下端が突起部を介して下方膜部に接合されているようにしたものである。
【0032】
(23) 本発明の第23の態様は、上述した第19の態様に係る力検出装置において、
下方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸下方膜部および第1〜第4のY軸下方膜部が形成されているようにしたものである。
【0033】
(24) 本発明の第24の態様は、上述した第19〜第23の態様に係る力検出装置において、
上方基板のうち、第1〜第4のX軸柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のX軸上方膜部を構成し、
上方基板のうち、第1〜第4のY軸柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のY軸上方膜部を構成するようにしたものである。
【0034】
(25) 本発明の第25の態様は、上述した第24の態様に係る力検出装置において、
上方基板の上面側もしくは下面側に第1〜第4のX軸上方溝および第1〜第4のY軸上方溝が形成されており、第1〜第4のX軸上方溝の底部によって第1〜第4のX軸上方膜部が形成され、第1〜第4のY軸上方溝の底部によって第1〜第4のY軸上方膜部が形成されているようにしたものである。
【0035】
(26) 本発明の第26の態様は、上述した第24の態様に係る力検出装置において、
上方基板の上面側もしくは下面側に上方環状溝が形成されており、この上方環状溝の底部の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸上方膜部および第1〜第4のY軸上方膜部が形成されているようにしたものである。
【0036】
(27) 本発明の第27の態様は、上述した第25または第26の態様に係る力検出装置において、
各上方溝もしくは上方環状溝が上方基板の下面側に形成されており、各上方溝もしくは上方環状溝の内部に溝の底面から基板面位置まで下方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の上端が突起部を介して上方膜部に接合されているようにしたものである。
【0037】
(28) 本発明の第28の態様は、上述した第24の態様に係る力検出装置において、
上方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸上方膜部および第1〜第4のY軸上方膜部が形成されているようにしたものである。
【0038】
(29) 本発明の第29の態様は、上述した第28の態様に係る力検出装置において、
第1〜第4のX軸上方膜部および第1〜第4のY軸上方膜部を除いた上方基板の上面の所定箇所に連結部材が固着され、この連結部材の上方に、検出対象となる力を受けるための受力体が接合されているようにしたものである。
【0039】
(30) 本発明の第30の態様は、上述した第23,第28または第29の態様に係る力検出装置において、
第1のX軸上方/下方膜部および第2のX軸上方/下方膜部を含む領域と、第3のX軸上方/下方膜部および第4のX軸上方/下方膜部を含む領域と、第1のY軸上方/下方膜部および第2のY軸上方/下方膜部を含む領域と、第3のY軸上方/下方膜部および第4のY軸上方/下方膜部を含む領域と、の4つの領域を可撓性基板上に定義したときに、これら4つの領域の境界に沿って、可撓性基板の外周側から中心部に向かってスリットが形成されているようにしたものである。
【0040】
(31) 本発明の第31の態様は、XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置において、
XY平面に平行な平面上に広がる上方構造体と、
XY平面に平行な平面上に広がり、上方構造体の下方に配置された下方構造体と、
上端が上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のX軸柱状体と、
上端が上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のY軸柱状体と、
第1〜第4のX軸柱状体および第1〜第4のY軸柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を設け、
第1のX軸柱状体の中心軸と第2のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の正の領域においてX軸と直交するX軸正側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
第3のX軸柱状体の中心軸と第4のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の負の領域においてX軸と直交するX軸負側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
第1のY軸柱状体の中心軸と第2のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の正の領域においてY軸と直交するY軸正側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
第3のY軸柱状体の中心軸と第4のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の負の領域においてY軸と直交するY軸負側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
検出部は、
第1のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のX軸センサと、第2のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のX軸センサと、第3のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第3のX軸センサと、第4のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第4のX軸センサと、第1のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のY軸センサと、第2のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のY軸センサと、第3のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第3のY軸センサと、第4のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第4のY軸センサと、を有し、各センサの検出値に基づいて得られた電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用した力の検出値として出力するようにしたものである。
【0041】
(32) 本発明の第32の態様は、上述した第31の態様に係る力検出装置において、
下方構造体が、Z軸上に位置する中心部と、中心部から第1〜第4のX軸柱状体の下端への接続位置および第1〜第4のY軸柱状体の下端への接続位置へそれぞれ伸びる8本の可撓性をもった枝状部と、を有するようにしたものである。
【0042】
(33) 本発明の第33の態様は、上述した第19〜第32の態様に係る力検出装置において、
第1のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第1のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第1象限に位置し、
第3のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第2のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第2象限に位置し、
第4のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第4のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第3象限に位置し、
第2のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第3のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第4象限に位置するようにしたものである。
【0043】
(34) 本発明の第34の態様は、上述した第33の態様に係る力検出装置において、
「第1〜第4のX軸柱状体」、「第1〜第4のY軸柱状体」、「上方基板もしくは上方構造体」、「下方基板もしくは下方構造体」によって構成される主構造体が、XZ平面に関して面対称をなし、かつ、YZ平面に関しても面対称をなすようにしたものである。
【0044】
(35) 本発明の第35の態様は、上述した第34の態様に係る力検出装置において、
検出部が、
「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fx)*を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fy)*を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力するようにしたものである。
【0045】
(36) 本発明の第36の態様は、上述した第35の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との和」と「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との和」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力するようにしたものである。
【0046】
(37) 本発明の第37の態様は、上述した第34の態様に係る力検出装置において、
検出部が、
「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との和」と「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との和」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力するようにしたものである。
【0047】
(38) 本発明の第38の態様は、上述した第37の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fx)*と、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fy)*とを求め、
所定の係数k1〜k4を用いて、
V(Fx)*−k2/k1・V(My)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
V(Fy)*−k4/k3・V(Mx)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力するようにしたものである。
【0048】
(39) 本発明の第39の態様は、上述した第35〜第38の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
「第1〜第4のX軸センサの検出値の総和」もしくは「第1〜第4のY軸センサの検出値の総和」、または「第1〜第4のX軸センサの検出値の総和と第1〜第4のY軸センサの検出値の総和との和」に対応する信号値V(Fz)を、作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力するようにしたものである。
【0049】
(40) 本発明の第40の態様は、上述した第35〜第39の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第4のX軸センサの検出値と第3のX軸センサの検出値との差」と「第2のY軸センサの検出値と第1のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Mz)を、作用したZ軸まわりのモーメントMzの検出値として出力するようにしたものである。
【0050】
(41) 本発明の第41の態様は、上述した第19〜第40の態様に係る力検出装置において、
各センサが、下方膜部もしくは下方構造体に形成された変位電極と、この変位電極に対向する位置に固定された固定電極と、からなる容量素子によって構成されているようにしたものである。
【0051】
(42) 本発明の第42の態様は、上述した第19〜第30の態様に係る力検出装置において、
第1のX軸センサが、第1のX軸下方膜部に形成された第1のX軸変位電極と、この第1のX軸変位電極に対向する位置に固定された第1のX軸固定電極と、からなる第1のX軸容量素子によって構成され、
第2のX軸センサが、第2のX軸下方膜部に形成された第2のX軸変位電極と、この第2のX軸変位電極に対向する位置に固定された第2のX軸固定電極と、からなる第2のX軸容量素子によって構成され、
第3のX軸センサが、第3のX軸下方膜部に形成された第3のX軸変位電極と、この第3のX軸変位電極に対向する位置に固定された第3のX軸固定電極と、からなる第3のX軸容量素子によって構成され、
第4のX軸センサが、第4のX軸下方膜部に形成された第4のX軸変位電極と、この第4のX軸変位電極に対向する位置に固定された第4のX軸固定電極と、からなる第4のX軸容量素子によって構成され、
第1のY軸センサが、第1のY軸下方膜部に形成された第1のY軸変位電極と、この第1のY軸変位電極に対向する位置に固定された第1のY軸固定電極と、からなる第1のY軸容量素子によって構成され、
第2のY軸センサが、第2のY軸下方膜部に形成された第2のY軸変位電極と、この第2のY軸変位電極に対向する位置に固定された第2のY軸固定電極と、からなる第2のY軸容量素子によって構成され、
第3のY軸センサが、第3のY軸下方膜部に形成された第3のY軸変位電極と、この第3のY軸変位電極に対向する位置に固定された第3のY軸固定電極と、からなる第3のY軸容量素子によって構成され、
第4のY軸センサが、第4のY軸下方膜部に形成された第4のY軸変位電極と、この第4のY軸変位電極に対向する位置に固定された第4のY軸固定電極と、からなる第4のY軸容量素子によって構成されており、
検出部が、第1のX軸容量素子の静電容量変動値Cx1、第2のX軸容量素子の静電容量変動値Cx2、第3のX軸容量素子の静電容量変動値Cx3、第4のX軸容量素子の静電容量変動値Cx4、第1のY軸容量素子の静電容量変動値Cy1、第2のY軸容量素子の静電容量変動値Cy2、第3のY軸容量素子の静電容量変動値Cy3、第4のY軸容量素子の静電容量変動値Cy4に基づいて得られた電気信号を、検出値として出力するようにしたものである。
【0052】
(43) 本発明の第43の態様は、上述した第42の態様に係る力検出装置において、
下方基板が導電性材料から構成され、第1〜第4のX軸下方膜部自身がそれぞれ第1〜第4のX軸変位電極として機能し、第1〜第4のY軸下方膜部自身がそれぞれ第1〜第4のY軸変位電極として機能するようにしたものである。
【0053】
(44) 本発明の第44の態様は、上述した第42または第43の態様に係る力検出装置において、
下方基板の下面に固着された補助基板を更に設け、
補助基板の上面における第1〜第4のX軸下方膜部の下方位置にそれぞれ第1〜第4のX軸補助溝が形成されており、補助基板の上面における第1〜第4のY軸下方膜部の下方位置にそれぞれ第1〜第4のX軸補助溝が形成されており、
第1〜第4のX軸補助溝の底面にそれぞれ第1〜第4のX軸固定電極が形成され、第1〜第4のY軸補助溝の底面にそれぞれ第1〜第4のY軸固定電極が形成されているようにしたものである。
【0054】
(45) 本発明の第45の態様は、上述した第42または第43の態様に係る力検出装置において、
下方基板の下面に固着された補助基板を更に設け、
補助基板の上面における第1〜第4のX軸下方膜部の下方位置および第1〜第4のY軸下方膜部の下方位置を連結するような環状補助溝が形成されており、この環状補助溝の底面に第1〜第4のX軸固定電極および第1〜第4のY軸固定電極が形成されているようにしたものである。
【0055】
(46) 本発明の第46の態様は、上述した第42または第43の態様に係る力検出装置において、
第1〜第4のX軸下方膜部および第1〜第4のY軸下方膜部を除いた下方基板の下面の所定箇所にスペーサ部材が固着され、このスペーサ部材の下方に、補助基板が固着されており、この補助基板の上面に第1〜第4のX軸固定電極および第1〜第4のY軸固定電極が形成されているようにしたものである。
【0056】
(47) 本発明の第47の態様は、上述した第32の態様に係る力検出装置において、
下方構造体の下方に所定間隔をおいて固定された補助基板を更に設け、
第1のX軸センサが、第1のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第1のX軸変位電極と、補助基板の上面における第1のX軸変位電極に対向する位置に固定された第1のX軸固定電極と、からなる第1のX軸容量素子によって構成され、
第2のX軸センサが、第2のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第2のX軸変位電極と、補助基板の上面における第2のX軸変位電極に対向する位置に固定された第2のX軸固定電極と、からなる第2のX軸容量素子によって構成され、
第3のX軸センサが、第3のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第3のX軸変位電極と、補助基板の上面における第3のX軸変位電極に対向する位置に固定された第3のX軸固定電極と、からなる第3のX軸容量素子によって構成され、
第4のX軸センサが、第4のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第4のX軸変位電極と、補助基板の上面における第4のX軸変位電極に対向する位置に固定された第4のX軸固定電極と、からなる第4のX軸容量素子によって構成され、
第1のY軸センサが、第1のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第1のY軸変位電極と、補助基板の上面における第1のY軸変位電極に対向する位置に固定された第1のY軸固定電極と、からなる第1のY軸容量素子によって構成され、
第2のY軸センサが、第2のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第2のY軸変位電極と、補助基板の上面における第2のY軸変位電極に対向する位置に固定された第2のY軸固定電極と、からなる第2のY軸容量素子によって構成され、
第3のY軸センサが、第3のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第3のY軸変位電極と、補助基板の上面における第3のY軸変位電極に対向する位置に固定された第3のY軸固定電極と、からなる第3のY軸容量素子によって構成され、
第4のY軸センサが、第4のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第4のY軸変位電極と、補助基板の上面における第4のY軸変位電極に対向する位置に固定された第4のY軸固定電極と、からなる第4のY軸容量素子によって構成されており、
検出部が、第1のX軸容量素子の静電容量変動値Cx1、第2のX軸容量素子の静電容量変動値Cx2、第3のX軸容量素子の静電容量変動値Cx3、第4のX軸容量素子の静電容量変動値Cx4、第1のY軸容量素子の静電容量変動値Cy1、第2のY軸容量素子の静電容量変動値Cy2、第3のY軸容量素子の静電容量変動値Cy3、第4のY軸容量素子の静電容量変動値Cy4に基づいて得られた電気信号を、検出値として出力するようにしたものである。
【0057】
(48) 本発明の第48の態様は、上述した第47の態様に係る力検出装置において、
下方構造体が導電性材料から構成され、各枝状部自身がそれぞれ第1〜第4のX軸変位電極および第1〜第4のY軸変位電極として機能するようにしたものである。
【0058】
(49) 本発明の第49の態様は、上述した第48の態様に係る力検出装置において、
補助基板の上面における各枝状部の先端部に対向する位置のそれぞれに、各固定電極とは電気的に絶縁された接触判定用電極を設け、枝状部の先端部と接触判定用電極との物理的接触の有無を、両者の電気的導通状態に基づいて判定できるようにしたものである。
【0059】
(50) 本発明の第50の態様は、上述した第49の態様に係る力検出装置において、
1つの枝状部の先端部に対向する位置に、互いに絶縁された一対の接触判定用電極を設け、この一対の接触判定用電極の相互間の電気的導通状態に基づいて、枝状部の先端部と一対の接触判定用電極との物理的接触の有無を判定できるようにしたものである。
【0060】
(51) 本発明の第51の態様は、上述した第48の態様に係る力検出装置において、
補助基板の上面における各枝状部の先端部に対向する位置をそれぞれ連結する環状領域に、各固定電極とは電気的に絶縁された接触判定用環状電極を設け、枝状部の先端部と接触判定用環状電極との物理的接触の有無を、両者の電気的導通状態に基づいて判定できるようにしたものである。
【0061】
(52) 本発明の第52の態様は、上述した第51の態様に係る力検出装置において、
環状領域に、互いに絶縁された同心状の一対の接触判定用環状電極を設け、この一対の接触判定用環状電極の相互間の電気的導通状態に基づいて、枝状部の先端部と一対の接触判定用環状電極との物理的接触の有無を判定できるようにしたものである。
【0062】
(53) 本発明の第53の態様は、上述した第49〜第52の態様に係る力検出装置において、
接触判定用電極もしくは接触判定用環状電極と枝状部との物理的接触によって形成される導電路が、各変位電極と検出部とを電気的に接続する配線路を構成するようにしたものである。
【0063】
(54) 本発明の第54の態様は、上述した第42〜第53の態様に係る力検出装置において、
第1のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第1のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第1象限に位置し、
第3のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第2のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第2象限に位置し、
第4のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第4のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第3象限に位置し、
第2のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第3のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第4象限に位置し、
第1〜第4のX軸柱状体は、下端よりも上端の方が、XZ平面に近くなるように傾斜し、第1〜第4のY軸柱状体は、下端よりも上端の方が、YZ平面に近くなるように傾斜し、
「第1〜第4のX軸柱状体」、「第1〜第4のY軸柱状体」、「上方基板もしくは上方構造体」、「下方基板もしくは下方構造体」によって構成される主構造体が、XZ平面に関して面対称をなし、かつ、YZ平面に関しても面対称をなすようにしたものである。
【0064】
(55) 本発明の第55の態様は、上述した第54の態様に係る力検出装置において、
検出部が、
(Cy1−Cy2)+(Cy3−Cy4)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)*を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
(Cx1−Cx2)+(Cx3−Cx4)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)*を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力するようにしたものである。
【0065】
(56) 本発明の第56の態様は、上述した第55の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
(Cy3+Cy4)−(Cy1+Cy2)なる式で得られる値に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
(Cx1+Cx2)−(Cx3+Cx4)なる式で得られる値に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力するようにしたものである。
【0066】
(57) 本発明の第57の態様は、上述した第54の態様に係る力検出装置において、
検出部が、
(Cy3+Cy4)−(Cy1+Cy2)なる式で得られる値に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
(Cx1+Cx2)−(Cx3+Cx4)なる式で得られる値に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力するようにしたものである。
【0067】
(58) 本発明の第58の態様は、上述した第57の態様に係る力検出装置において、
検出部が、所定の係数k1〜k4を用いて、更に、
(Cy1−Cy2)+(Cy3−Cy4)−k2/k1・V(My)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
(Cx1−Cx2)+(Cx3−Cx4)−k4/k3・V(Mx)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力するようにしたものである。
【0068】
(59) 本発明の第59の態様は、上述した第55〜第58の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
−(Cx1+Cx2+Cx3+Cx4+Cy1+Cy2+Cy3+Cy4)
または、−(Cx1+Cx2+Cx3+Cx4)
または、−(Cy1+Cy2+Cy3+Cy4)
なる式で得られる値に対応する信号値V(Fz)を、作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力するようにしたものである。
【0069】
(60) 本発明の第60の態様は、上述した第55〜第59の態様に係る力検出装置において、
検出部が、更に、
(Cx1−Cx2)+(Cx4−Cx3)+(Cy2−Cy1)+(Cy3−Cy4)なる式で得られる値に対応する信号値V(Mz)を、作用したZ軸まわりのモーメントMxの検出値として出力するようにしたものである。
【0070】
(61) 本発明の第61の態様は、上述した第1〜第60の態様に係る力検出装置において、
柱状体の一部もしくは全部に可撓性をもたせ、外力が作用したときに柱状体が変形するようにしたものである。
【0071】
(62) 本発明の第62の態様は、上述した第61の態様に係る力検出装置において、
柱状体の一部に可撓性をもったくびれ部を形成し、外力が作用したときに、くびれ部の変形によって、柱状体が屈曲するようにしたものである。
【0072】
(63) 本発明の第63の態様は、上述した第61の態様に係る力検出装置において、
柱状体全体が可撓性をもった材質によって構成されており、外力が作用したときに、柱状体全体が変形するようにしたものである。
【発明の効果】
【0073】
本発明に係る力検出装置では、上方基板(上方構造体)と下方基板(下方構造体)との間に一対の柱状体を渡し、かつ、これら一対の柱状体が垂直軸に関して互いに逆向きに傾斜した構造をとるようにしたため、「各柱状体の傾斜状態」を「垂直方向に働く力」として測定できるようになる。これにより、各柱状体の傾斜状態を測定するセンサとして、「垂直方向に働く力」を検出可能なセンサを用意すれば足りる。たとえば、容量素子を用いたセンサを利用する場合、1本の柱状体に対して1組の容量素子を配置すれば足りる。したがって、非常に単純な構造をもった力検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】従来提案されている柱状体を用いた力検出装置の基本構造を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す力検出装置によるX軸方向の力Fxの検出原理を示す縦断面図であり、この装置をXZ平面で切断した断面が示されている。
【図3】本発明の基本的実施形態に係る力検出装置によるX軸方向の力Fxの検出原理を示す縦断面図である。
【図4】本発明の基本的実施形態に係る力検出装置によるZ軸方向の力Fzの検出原理を示す縦断面図である。
【図5】本発明の基本的実施形態に係る力検出装置において、柱状体と膜部との間に突起部を介在させる構造をとった場合に、各部品を分解した状態を示す縦断面図である。
【図6】図5に示す各部品を用いて組み立てられた力検出装置を示す縦断面図である(検出回路の部分はブロックとして示す)。
【図7】本発明の実用的実施形態に係る力検出装置の構成要素を分解した状態で示す正面図である。
【図8】本発明の実用的実施形態に係る力検出装置を示す正面図である(検出回路の部分はブロックとして示す)。
【図9】図8に示す力検出装置の上面図である(ハッチング部分は、説明の便宜のために定義された8つの領域を示す)。
【図10】図8に示す力検出装置の構成要素である上方基板100の上面図である。
【図11】図(A) ,(B) ,(C) は、図10に示す上方基板100を、それぞれ切断線A−A,B−B,C−Cに沿って切断した縦断面図である。
【図12】図8に示す力検出装置の構成要素である下方基板200の上面図である。
【図13】図(A) ,(B) ,(C) は、図12に示す下方基板200を、それぞれ切断線A−A,B−B,C−Cに沿って切断した縦断面図である。
【図14】図8に示す力検出装置の構成要素である補助基板300の上面図である。
【図15】図(A) ,(B) ,(C) は、図14に示す補助基板300を、それぞれ切断線A−A,B−B,C−Cに沿って切断した縦断面図である。
【図16】図8に示す力検出装置を、XZ平面に沿って切断した縦断面図である。
【図17】図8に示す力検出装置を、図10,図12,図14に示されている切断線A−Aに沿って切断した縦断面図である。
【図18】図8に示す力検出装置を、図10,図12,図14に示されている切断線B−Bに沿って切断した縦断面図である。
【図19】図8に示す力検出装置を、図10,図12,図14に示されている切断線C−Cに沿って切断した縦断面図である。
【図20】図8に示す力検出装置における上方膜部および下方膜部の位置関係を示す平面図である。
【図21】図8に示す力検出装置における下方基板200およびその上面に取り付けられた8本の柱状体を示す平面図である(ハッチング部分は、各柱状体の上端面を示している)。
【図22】図8に示す力検出装置に力+Fxのみによる変形を生じさせるための構造例を示す正面図である。
【図23】図8に示す力検出装置に力+Fzのみによる変形を生じさせるための構造例を示す正面図である(ガイド部材450は断面を示す)。
【図24】図8に示す力検出装置にモーメント+Myのみによる変形を生じさせる様子を示す正面図である。
【図25】図8に示す力検出装置にモーメント+Mzのみによる変形を生じさせた状態を示す正面図である。
【図26】図8に示す力検出装置に各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分を作用させた場合の各容量素子の容量値変化を示すテーブルである。
【図27】図8に示す力検出装置における6つの力成分Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出に用いる式を示す図である。
【図28】図8に示す力検出装置において生じる他軸干渉を示すグラフである。
【図29】図28に示す他軸干渉を相殺して正確な検出値を得るために用いる式を示す図である。
【図30】図10の上方基板の変形例を示す上面図である。
【図31】図12の下方基板の変形例を示す上面図である。
【図32】図14の補助基板の変形例を示す上面図である。
【図33】可撓性基板を用いた本発明の変形例に係る力検出装置を示す正面図である。
【図34】図33に示す力検出装置における上方基板(可撓性基板)150および下方基板(可撓性基板)250の斜視図である。
【図35】図33に示す力検出装置における下方基板250およびその上面に取り付けられた8本の柱状体を示す平面図である(ハッチング部分は、各柱状体の上端面を示している)。
【図36】図34に示す上方基板(可撓性基板)150および下方基板(可撓性基板)250の代わりに用いる上方基板(可撓性基板)160および下方基板(可撓性基板)260を示す上面図である。
【図37】本発明に用いる柱状体の変形例を示す斜視図である。
【図38】図37に示す柱状体を用いた本発明の変形例に係る力検出装置を示す縦断面図である。
【図39】可撓性をもった材質からなる柱状体を用いた本発明の変形例に係る力検出装置を示す縦断面図である。
【図40】可撓性をもった材質からなる柱状体を用いた本発明の別な変形例に係る力検出装置を示す正面図である。
【図41】図33に示す力検出装置における下方基板250の代わりに用いる下方構造体280の上面図である。
【図42】図33に示す力検出装置における補助基板340の代わりに用いる補助基板380を示す上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図43】図41に示す下方構造体280および図42に示す補助基板380を用いた変形例を示す縦断面図(XZ平面で切った断面図)である。
【図44】図43に示す変形例を装置筐体内に収容した状態を示す縦断面図である。
【図45】図42に示す補助基板380の第1の変形例を示す上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図46】図42に示す補助基板380の第2の変形例を示す上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図47】図42に示す補助基板380の第3の変形例を示す上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図48】図42に示す補助基板380の第4の変形例を示す上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図49】図41に示す下方構造体280の変形例に係る下方構造体290の上面図である。
【図50】図42に示す補助基板380の変形例に係る補助基板390の上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0076】
<<< §1. 従来提案されている柱状体を用いた力検出装置 >>>
はじめに、前掲の各特許文献に開示されている柱状体を用いた力検出装置の基本構造とその検出の基本原理を簡単に説明する。
【0077】
図1は、このような従来型の力検出装置の基本構造を示す分解斜視図である。図示のとおり、この装置は、上方基板10,下方基板20,補助基板30,第1の柱状体41,第2の柱状体42を備えている。上方基板10の下面には、第1の上方溝G1および第2の上方溝G2(いずれも円形の溝)が形成されており、これら溝の底部は、肉厚が薄いために可撓性を帯びた第1の上方膜部11および第2の上方膜部12を形成している。一方、下方基板20の上面には、第1の下方溝H1および第2の下方溝H2(いずれも円形の溝)が形成されており、これら溝の底部は、肉厚が薄いために可撓性を帯びた第1の下方膜部21および第2の下方膜部22を形成している。
【0078】
なお、ここでの「可撓性」とは、「弾性変形する性質」を言うものであり、「外力の作用によって変形が生じ、当該外力を取り去ると、もとの形に復帰する性質」を言うものである。また、本願において「可撓性を有する」とは、「作用した外力に対して有意な検出値を得るために十分な変形が生じること」を意味するものである。したがって、図1に示す上方基板10や下方基板20における溝が形成されていない部分も、厳密に言えば、外力の作用によって変形が生じるかもしれないが、溝の底部に比べれば、微細な変形にすぎない。したがって、本願にいう「可撓性」をもつ部分は、肉厚が薄い上方膜部11,12や下方膜部21,22の部分ということになる。
【0079】
図1は、この装置の各部品を分解した状態を示す分解斜視図であるが、実際には、第1の柱状体41の上端は第1の上方膜部11の中心に接合され、下端は第1の下方膜部21の中心に接合される。同様に、第2の柱状体42の上端は第2の上方膜部12の中心に接合され、下端は第2の下方膜部22の中心に接合される。図1では、これら柱状体41,42の各基板10,20に対する接合位置を一点鎖線で示してある。柱状体41,42は、円柱状の部材であり、その中心軸が各基板10,20に直交するように配置されている。
【0080】
結局、上方基板10と下方基板20とは、2本の柱状体41,42を介して互いに接合された状態になる。ただ、接合部分は、肉厚が薄いために可撓性を帯びた膜部(ダイアフラム)を形成しており、この膜部の撓みによって、各柱状体41,42は変位することが可能である。したがって、下方基板20を固定した状態において、上方基板10に対して外力を作用させると、各柱状体41,42が変位し、上方基板10が下方基板20に対して変位を生じることになる。この力検出装置の検出原理は、各柱状体41,42の変位に基づいて、作用した外力を検出することにある。
【0081】
補助基板30は、下方基板20の下方に所定間隔をおいて固定された絶縁性の基板であり、その上面には、4枚の半円状の固定電極E1〜E4が形成されている。ここで、一対の固定電極E1,E2は、第1の下方膜部21に対向する電極であり、一対の固定電極E3,E4は、第2の下方膜部22に対向する電極である。下方基板20を導電性材料によって構成しておけば、第1の下方膜部21および第2の下方膜部22は、いずれも円盤状の変位電極として機能することになる。
【0082】
したがって、第1の下方膜部21の左側半分の部分とこれに対向する固定電極E1とによって第1の容量素子C1が形成され、第1の下方膜部21の右側半分の部分とこれに対向する固定電極E2とによって第2の容量素子C2が形成される。同様に、第2の下方膜部22の左側半分の部分とこれに対向する固定電極E3とによって第3の容量素子C3が形成され、第2の下方膜部22の右側半分の部分とこれに対向する固定電極E4とによって第4の容量素子C4が形成される。これら容量素子C1〜C4は、各柱状体41,42の変位を検出するセンサとして機能する。
【0083】
ここでは、便宜上、図示のように、XYZ三次元座標系を定義する。Z軸は、3枚の基板10,20,30の中心位置を貫く位置に定義され、上方基板10の上面に対して交点Q10をなし、下方基板20の上面に対して交点Q20をなし、補助基板30の上面に対して交点Q30をなす。一方、X軸およびY軸は、各基板面に対して平行な方向を向いた座標軸である。
【0084】
座標系の原点Oの位置は、たとえば交点Q10,Q20,Q30の位置に定義することもできるが、ここでは、後述する実施例との整合性をもたせるため、Z軸上における、下方基板20の下面と補助基板30の上面との中間位置に原点Oをとることにする。3枚の基板10,20,30の基板面(溝形成部を除く上面および下面)は、いずれもXY平面に平行な面になる。
【0085】
図2(a) ,(b) は、図1に示す力検出装置によるX軸方向の力Fxの検出原理を示す縦断面図(この装置をXZ平面で切断した断面図)である。図2(a) は、図1に示す各部品を組み合わせて構成される装置を正面から見たときの縦断面図であり、この装置に何ら外力が作用していない状態を示している。下方基板20および補助基板30は、図示されていない支持部材によって、図示の位置に固定された状態になっている。一方、上方基板10は、外力が作用していない状態では、図示のとおり、下方基板20の真上に位置している。このとき、柱状体41,42の中心軸は、Z軸に平行な状態となっている。
【0086】
ところが、外力の作用を受けると、各膜部11,12,21,22が撓みを生じ、柱状体41,42が変位し、上方基板10自身も変位を生じることになる。図2(b) は、上方基板10の重心位置にとった作用点Qに、X軸正方向の力+Fxが作用した場合の変位状態を示している。図示のとおり、2本の柱状体41,42はいずれもX軸正方向(図の右方向)に傾斜し、上方基板10は右方向へ変位を生じている。作用した力+Fxが大きければ大きいほど、柱状体41,42の傾斜度も大きくなる。また、X軸負方向の力−Fxが作用した場合は、柱状体41,42は、図とは逆に、X軸負方向(図の左方向)に傾斜し、上方基板10は左方向へ変位する。
【0087】
さて、ここで、柱状体41,42の中心軸をそれぞれA1,A2とすれば、図2(a) に示すように、何ら外力が作用していない状態では、各中心軸A1,A2は、それぞれ垂直基準軸R1,R2(Z軸に平行な軸)に一致する。したがって、垂直基準軸R1に対する中心軸A1の傾斜角をθ1、垂直基準軸R2に対する中心軸A2の傾斜角をθ2とすれば、θ1=θ2=0である。
【0088】
ところが、図2(b) に示すように、作用点Qに対して外力+Fxが作用すると、各中心軸A1,A2はX軸正方向(図の右方向)に傾斜するため、傾斜角θ1,θ2は増加することになる。たとえば、図において、垂直基準軸R1,R2を基準として、時計まわりの方向に傾斜角θ1,θ2を定義したとすれば、外力+Fxが作用すると、傾斜角θ1,θ2は正の値をとる。逆に、外力−Fxが作用すると、各中心軸A1,A2はX軸負方向(図の左方向)に傾斜するため、傾斜角θ1,θ2は負の値をとる。したがって、傾斜角θ1,θ2を測定することができれば、X軸方向に作用した外力Fxの向きおよび大きさを検出することができる。
【0089】
図示の装置では、4組の容量素子C1〜C4の静電容量値(同じ符号C1〜C4で示す)によって、傾斜角θ1,θ2の変化を把握することができる。たとえば、図2(b) に示す状態を図2(a) に示す状態と比較すると、固定電極E1と下方膜部21の左半分(変位電極)との距離は広がっているため静電容量値C1は減少し、固定電極E2と下方膜部21の右半分(変位電極)との距離は狭まっているため静電容量値C2は増加する。よって、柱状体41の傾斜角θ1は、容量値の差「C2−C1」として求めることができる。同様に、固定電極E3と下方膜部22の左半分(変位電極)との距離は広がっているため静電容量値C3は減少し、固定電極E4と下方膜部22の右半分(変位電極)との距離は狭まっているため静電容量値C4は増加する。よって、柱状体42の傾斜角θ2は、容量値の差「C4−C3」として求めることができる。そこで、傾斜角θ1,θ2の和に対応する「(C2−C1)+(C4−C3)」なる値を、X軸方向に作用した外力Fxの検出値として用いることができる。
【0090】
ここでは、説明の便宜上、2本の柱状体41,42を用いて、X軸方向の力Fxを検出する単純な例を示したが、前掲の各特許文献には、より多数の柱状体を設け、個々の柱状体のそれぞれについて、X軸正および負方向への傾斜とともに、Y軸正および負方向への傾斜を測定することにより、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分を検出する方法が開示されている。
【0091】
しかしながら、この従来型の力検出装置において、柱状体の特定方向への傾斜度を測定するためには、それぞれ独立したセンサが必要になり、装置全体の構造が複雑化する問題が生じることは、既に述べたとおりである。たとえば、センサとして容量素子を用いた場合、1本の柱状体のX軸方向に関する傾斜度を測定するために2組の容量素子が必要になり、XY両軸方向に関する傾斜度を測定するためには4組の容量素子が必要になる。
【0092】
<<< §2. 本発明の基本的実施形態に係る力検出装置 >>>
本発明の最も重要な着眼点は、「上方基板と下方基板との間を接続する一対の柱状体を互いに逆向きに傾斜させる」という発想にある。すなわち、前掲の各特許文献に開示されている技術では、「外力が作用していない標準の状態において、各柱状体が下方基板の基板面に対して垂直である」ことを前提としている。たとえば、図2(a) に示す例の場合、上方基板10および下方基板20の基板面がXY平面に平行になるように配置され、第1の柱状体41および第2の柱状体42は、その中心軸がZ軸に平行になるように配置されている。
【0093】
別言すれば、従来装置の場合、柱状体41,42は、下方基板20上に垂直に立っている状態を基準とし、柱状体41,42が、この垂直な状態からどちらの方向にどれだけ傾斜したかを測定することにより、作用した外力の検出が行われることになる。これに対して、本発明では、「外力が作用していない標準の状態において、各柱状体が下方基板の基板面に対して傾斜している」ことを前提としており、しかも「一対の柱状体が互いに逆向きに傾斜している」ことを前提としている。
【0094】
図3(a) ,(b) は、本発明の基本的実施形態に係る力検出装置によるX軸方向の力Fxの検出原理を示す縦断面図(XZ平面で切断した断面)である。この図3に示す基本的実施形態に係る装置は、図2に示す従来装置と同様に、上方基板10,下方基板20,補助基板30,第1の柱状体P1,第2の柱状体P2を備えている。ここで、図3(a) は、外力が作用していない標準の状態を示すものである。
【0095】
図示のとおり、上方基板10の下面には、第1の上方溝G1および第2の上方溝G2(いずれも円形の溝)が形成されており、これら溝の底部は、肉厚が薄いために可撓性を帯びた第1の上方膜部11および第2の上方膜部12を形成している。一方、下方基板20の上面には、第1の下方溝H1および第2の下方溝H2(いずれも円形の溝)が形成されており、これら溝の底部は、肉厚が薄いために可撓性を帯びた第1の下方膜部21および第2の下方膜部22を形成している。そして、第1の柱状体P1の上端は第1の上方膜部11の中心に接合され、下端は第1の下方膜部21の中心に接合されている。同様に、第2の柱状体P2の上端は第2の上方膜部12の中心に接合され、下端は第2の下方膜部22の中心に接合されている。
【0096】
結局、上方基板10と下方基板20とは、2本の円柱状の柱状体P1,P2を介して互いに接合された状態になる。ただ、接合部分は、肉厚が薄いために可撓性を帯びた膜部(ダイアフラム)を形成しており、この膜部の撓みによって、各柱状体P1,P2は変位することが可能である。したがって、下方基板20を固定した状態において、上方基板10に対して外力を作用させると、各柱状体P1,P2が変位し、上方基板10が下方基板20に対して変位を生じることになる。このような基本的な性質は、§1で述べた従来装置の基本的な性質と全く同様であり、本発明に係る装置においても、各柱状体P1,P2の変位に基づいて、作用した外力の検出が行われる。
【0097】
ただ、図3(a) の構造を図2(a) の構造と比較すればわかるとおり、本発明に係る装置の場合、外力が作用していない標準の状態において、2本の柱状体P1,P2が傾斜した状態になっている。すなわち、§1で述べた例と同様に、3枚の基板10,20,30の中心位置を貫く位置にZ軸をとり、このZ軸上における、下方基板20の下面と補助基板30の上面との中間位置に原点Oをとって、図示のようなXYZ三次元座標系を定義した場合、3枚の基板10,20,30の基板面は、いずれもXY平面に平行な面になる。ところが、2本の柱状体P1,P2の中心軸A1,A2は、いずれも垂直基準軸R1,R2に対して傾斜した状態になっている。
【0098】
補助基板30は、下方基板20の下方に所定間隔をおいて固定された絶縁性の基板であり、その上面には、2枚の固定電極E5,E6が形成されている。ここで、固定電極E5は、第1の下方膜部21に対向する円盤状の電極であり、固定電極E6は、第2の下方膜部22に対向する円盤状の電極である。下方基板20を導電性材料によって構成しておけば、第1の下方膜部21および第2の下方膜部22は、いずれも円盤状の変位電極として機能することになる。よって、第1の下方膜部21とこれに対向する固定電極E5とによって容量素子C5が形成され、第2の下方膜部22とこれに対向する固定電極E6とによって容量素子C6が形成される。
【0099】
さて、この装置では、外力が作用していない標準の状態において、2本の柱状体P1,P2が傾斜した状態になっているため、柱状体P1,P2の上端は上方膜部11,12に対して斜めに接続されており、下端は下方膜部21,22に対して斜めに接続されている。したがって、外力が作用していない標準の状態において、各膜部11,12,21,22は水平な膜の状態を維持し、これらの膜には、撓みを生じさせる応力は作用していない。よって、この標準の状態においては、静電容量値C5=C6である。
【0100】
ここで重要な点は、この図3(a) に示す標準の状態において、第1の柱状体P1と第2の柱状体P2とが、Z軸に関して逆向きに傾斜している点である。図示の例の場合、第1の柱状体P1はZ軸を基準として右方向(X軸正方向)に傾斜しているのに対して、第2の柱状体P2はZ軸を基準として左方向(X軸負方向)に傾斜している。すなわち、中心軸A1,A2の垂直基準軸R1,R2に対する傾斜角θ1,θ2に着目すると、傾斜角θ1,θ2は符号が逆になる。図において、垂直基準軸R1,R2を基準として、時計まわりの方向に傾斜角θ1,θ2を定義したとすれば、θ1は正の値、θ2は負の値になる。図示の例では、装置の構造が、YZ平面に関して面対称をなすように設計しているため、θ1とθ2の絶対値は等しくなる。
【0101】
なお、図示の例では、2本の柱状体P1,P2の間隔が、上方にゆく程小さくなるような傾斜(逆V字型の傾斜)をとっているが、2本の柱状体P1,P2の間隔が、上方にゆく程大きくなるような傾斜(V字型の傾斜)をとってもかまわない。ここで必要な要件は、上方基板10を図の右方向もしくは左方向へ移動させたときに、2本の柱状体P1,P2の一方は傾斜角が増加し(寝る方向に変位し)、他方は傾斜角が減少する(立つ方向に変位する)ようにすることである。
【0102】
図3(b) は、この力検出装置の下方基板20および補助基板30を、図示されていない支持部材によって図示の位置に固定し、上方基板10の重心位置にとった作用点Qに、X軸正方向の力+Fxが作用した場合の変位状態を示している。図示のとおり、2本の柱状体P1,P2の上端はいずれもX軸正方向(図の右方向)に移動する。このため、第1の柱状体P1は寝る方向に変位し、その傾斜度θ1の絶対値は増加する。ところが、第2の柱状体P2は立つ方向に変位し、その傾斜度θ2の絶対値は減少する。図3(b) は、θ2=0になった状態を示しており、第2の柱状体P2の中心軸A2は垂直基準軸R2に一致している。
【0103】
ここで、この図3(b) において、第1の柱状体P1の上下に接合されている膜部11,21の変形態様に着目すると、第1の上方膜部11は下方へと引っ張られ、第1の下方膜部21は上方へと引っ張られるように変形している。これは、第1の柱状体P1が寝る方向に変位し、垂直方向に関する実効寸法が短くなったために生じる変形である。これに対して、第2の柱状体P2の上下に接合されている膜部12,22の変形態様に着目すると、第2の上方膜部12は上方へ押し出され、第2の下方膜部22は下方へ押し出されるように変形している。これは、第2の柱状体P2が立つ方向に変位し、垂直方向に関する実効寸法が長くなったために生じる変形である。
【0104】
なお、実際には、下方基板20および補助基板30を固定し、上方基板10を自由な状態(2本の柱状体P1,P2のみによって支持された状態)にして、作用点QにX軸方向の力+Fxを作用させると、上述したとおり、第1の上方膜部11には下方へと引っ張られる力が加わり、第2の上方膜部12には上方へ押し出される力が加わるため、上方基板10には反時計まわりの回転変位が生じることになる。ただ、そのような回転変位が生じたとしても、各膜部11,12,21,22の基本的な変形態様が図3(b) に示すようになることに変わりはない。
【0105】
図示の装置では、2組の容量素子C5,C6の静電容量値(同じ符号C5,C6で示す)によって、このような2本の柱状体P1,P2の変位状態を把握することができる。たとえば、図3(b) に示す状態を図3(a) に示す状態と比較すると、固定電極E5と下方膜部21(変位電極)との距離は広がっているため静電容量値C5は減少し、固定電極E6と下方膜部22(変位電極)との距離は狭まっているため静電容量値C6は増加する。よって、作用点Qに作用したX軸正方向の力+Fxは、容量値の差「C6−C5」として求めることができる。また、X軸負方向の力−Fxが作用した場合は、図3(b) と鏡像関係の状態が得られるので、やはり力−Fxは、容量値の差「C6−C5」として求めることができる(この場合、負の値が得られる)。結局、容量値の差「C6−C5」は、符号を考慮すれば、X軸方向に作用した外力Fxの検出値として用いることができる。
【0106】
なお、図3(b) に示す状態よりも更に大きな力+Fxが作用した場合は、第2の柱状体P2が寝る方向に変位することになり、容量値C6が減少し始めることになるので、容量値の差「C6−C5」は正しい検出値を示すものにはならない。したがって、図3(b) に示す状態で作用している力+Fxが、この装置によるX軸正方向の力の定格検出値ということになる。同様に、第1の柱状体P1を垂直に立った状態にまで変位させる力−Fxが、この装置によるX軸負方向の力の定格検出値ということになる。したがって、実用上は、定格値を超える力が作用したときの誤検出を避けるために、上方基板10の変位を制限する制御部材を設けるなどの工夫を施すのが好ましい。このような制御部材は、また、定格値を超える力の作用によって、膜部が破損することを避ける上でも有用である。
【0107】
このように、本発明では、外力が作用していない標準の状態において、一対の柱状体P1,P2が互いに逆向きに傾斜した構造をとるようにしたため、「各柱状体P1,P2の傾斜状態」を「基板面に垂直な方向に働く力」として測定できるようになる。これは、各柱状体の傾斜状態を測定するセンサの構成をより単純化できることを意味する。実際、図2に示す従来装置の場合、力Fxの検出を行うために、4組の容量素子C1〜C4を用いた測定が必要であるのに対して、図3に示す本発明に係る装置の場合、2組の容量素子C5,C6を用いた測定によって、力Fxの検出が可能になる。これは、各柱状体P1,P2の傾斜状態が、図3(a) に示す状態から図3(b) に示す状態に変化したことを認識するのに、下方膜部21,22のZ軸方向の変位(基板面に垂直な方向に関する変位)のみを測定すれば足りるためである。
【0108】
なお、この§2で述べる基本的実施形態に係る力検出装置は、作用点Qに作用したX軸方向の力Fxのみならず、Z軸方向の力Fzを検出することも可能である。図4(a) は、この装置の作用点Qに、Z軸正方向の力+Fzが作用したときの状態を示す縦断面図であり、図4(b) は、Z軸負方向の力−Fzが作用したときの状態を示す縦断面図である。
【0109】
図3(a) に示す標準の状態と比較すると、図4(a) に示すように、力+Fzが作用したときは、上方基板10は上方へと移動し、下方膜部21,22はいずれも上方へと引っ張られることになる。このため、容量素子C5,C6の電極間隔はいずれも広がり、両者の容量値はいずれも減少する。これに対して、図4(b) に示すように、力−Fzが作用したときは、上方基板10は下方へと移動し、下方膜部21,22はいずれも下方へと押し下げられることになる。このため、容量素子C5,C6の電極間隔はいずれも狭まり、両者の容量値はいずれも増加する。
【0110】
したがって、2組の容量素子C5,C6の容量値の和「(C5+C6)」は、Z軸方向の力Fzの検出値に対応することになる。すなわち、図3(a) に示す標準の状態における「(C5+C6)」の値を基準として、この値が小さくなれば、Z軸正方向の力+Fzが作用したことを示すことになり、この値が大きくなれば、Z軸負方向の力−Fzが作用したことを示すことになる。
【0111】
なお、図3および図4に示す装置では、各柱状体P1,P2の上端および下端を、各膜部11,12,21,22に直接接合する形態をとっているが、両者間に別な部材を介在させて間接的に接合する形態をとってもかまわない。
【0112】
図5は、本発明の基本的実施形態に係る力検出装置において、柱状体と膜部との間に突起部を介在させる構造をとった場合に、各部品を分解した状態で示す縦断面図である。図示のとおり、この装置は、上方基板15,第1の柱状体P1,第2の柱状体P2,下方基板25,補助基板35を備えている。
【0113】
ここで、上方基板15の下面には、第1の上方溝G1および第2の上方溝G2(いずれも円形の溝)が形成されており、これら溝の底部が、肉厚が薄いために可撓性を帯びた第1の上方膜部11および第2の上方膜部12を形成する点は、これまで述べた実施形態と同じである。また、下方基板25の上面には、第1の下方溝H1および第2の下方溝H2(いずれも円形の溝)が形成されており、これら溝の底部が、肉厚が薄いために可撓性を帯びた第1の下方膜部21および第2の下方膜部22を形成する点も、これまで述べた実施形態と同じである。
【0114】
ただ、第1の上方溝G1の内部には、溝の底面(すなわち、第1の上方膜部11の下面)から基板面位置まで下方に伸びる円柱状の突起部13が設けられており、第2の上方溝G2の内部には、溝の底面(すなわち、第2の上方膜部12の下面)から基板面位置まで下方に伸びる円柱状の突起部14が設けられている。そして、第1の柱状体P1の上端は、突起部13を介して間接的に第1の上方膜部11に接合され、第2の柱状体P2の上端は、突起部14を介して間接的に第2の上方膜部12に接合される。
【0115】
同様に、第1の下方溝H1の内部には、溝の底面(すなわち、第1の下方膜部21の上面)から基板面位置まで上方に伸びる円柱状の突起部23が設けられており、第2の下方溝H2の内部には、溝の底面(すなわち、第2の下方膜部22の上面)から基板面位置まで上方に伸びる円柱状の突起部24が設けられている。そして、第1の柱状体P1の下端は、突起部23を介して間接的に第1の下方膜部21に接合され、第2の柱状体P2の下端は、突起部24を介して間接的に第2の下方膜部22に接合される。
【0116】
更に、絶縁材料からなる補助基板35の上面における第1の下方膜部21の下方位置に第1の補助溝K1(円形の溝)が形成されており、第2の下方膜部22の下方位置に第2の補助溝K2(円形の溝)が形成されている。そして、第1の補助溝K1の底面に、円盤状をした第1の固定電極E5が形成され、第2の補助溝K2の底面に、円盤状をした第2の固定電極E6が形成されている。
【0117】
これらの各部品を組み立てることにより、図6に示すような力検出装置が得られる。柱状体P1,P2の上端は、それぞれ突起部13,14の下面に接合され、柱状体P1,P2の下端は、それぞれ突起部23,24の上面に接合され、更に、下方基板25の下面に、補助基板35が固着される。ここで、下方基板25は、たとえば金属などの導電性材料から構成されており、この下方基板25の1箇所に対して、検出回路50への配線が施される。また、固定電極E5,E6に対しても、検出回路50への配線が施される。
【0118】
このように、上方基板15および下方基板25の溝内に、予め突起部13,14,23,24を形成しておく構造を採ると、各柱状体P1,P2の上下端を、これら突起部13,14,23,24の露出面に接合する作業を行うだけで、主たる構造部分を構成することができるので、組み立てが容易になる。また、図3,図4に示すように、柱状体P1,P2の上下端を溝の内部に入れて膜部に直接接合する構造にすると、柱状体P1,P2が極端に傾斜したときに溝の縁に接触するおそれがあるが、図5,図6に示すように、突起部13,14,23,24を介して間接的に接合する構造にすれば、柱状体P1,P2が、溝の外に配置されることになるので、溝の縁に接触することを防ぐことができる。
【0119】
結局、本発明の基本的実施形態に係る力検出装置の必須構成要素は、XY平面に平行な基板面を有する上方基板10,15、XY平面に平行な基板面を有し、上方基板の下方に配置された下方基板20,25、上端が上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1の柱状体P1、上端が上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され下端が下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第2の柱状体P2、第1の柱状体および第2の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部50、ということになる。
【0120】
ここで、上方基板10,15のうち、第1の柱状体P1の上端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第1の上方膜部11を構成し、第2の柱状体P2の上端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第2の上方膜部12を構成し、下方基板20,25のうち、第1の柱状体P1の下端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第1の下方膜部21を構成し、第2の柱状体P2の下端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第2の下方膜部22を構成することになる。
【0121】
なお、上方基板10,15側に設ける上方溝G1,G2は、必ずしも上方基板の下面側に設ける必要はなく、上面側に設けてもかまわない。上方溝G1,G2を上面側に設けた場合、上方膜部11,12は、上方基板10,15の下面側に位置する溝底部によって構成されることになる。要するに、上方基板の上面側もしくは下面側に第1の上方溝G1および第2の上方溝G2を設け、第1の上方溝G1の底部によって第1の上方膜部11が形成され、第2の上方溝G2の底部によって第2の上方膜部12が形成されるようにすればよい。
【0122】
同様に、下方基板20,25側に設ける下方溝H1,H2も、必ずしも下方基板の上面側に設ける必要はなく、下面側に設けてもかまわない。下方溝H1,H2を下面側に設けた場合、下方膜部21,22は、下方基板20,25の上面側に位置する溝底部によって構成されることになる。要するに、下方基板の上面側もしくは下面側に第1の下方溝H1および第2の下方溝H2を設け、第1の下方溝H1の底部によって第1の下方膜部21が形成され、第2の下方溝H2の底部によって第2の下方膜部22が形成されるようにすればよい。
【0123】
一方、本発明を実施するにあたり、第1の柱状体P1と第2の柱状体P2との配置条件は重要である。これまで述べてきた図3〜図6に示す例では、いずれも、第1の柱状体P1の中心軸A1と、第2の柱状体P2の中心軸A2とが、双方ともにXZ平面上(図3〜図6の紙面に対応する平面上)に位置し、Z軸に関して逆方向に傾斜する関係となっていた。
【0124】
ただ、両中心軸A1,A2は、必ずしも同一平面上にある必要はない。これまで述べた基本原理に基づいて、一対の容量素子C5,C6の容量値の差「C6−C5」に基づいてX軸方向の力Fxを検出し、一対の容量素子C5,C6の容量値の和「C5+C6」に基づいてZ軸方向の力Fzを検出できるようにするためには、第1の柱状体P1の中心軸A1をXZ平面に正射影して得られる投影像が、Z軸に対して第1の方向に傾斜しており、第2の柱状体P2の中心軸A1をXZ平面に正射影して得られる投影像が、Z軸に対して第1の方向とは逆の第2の方向に傾斜しているような構造が維持されていれば足りる。
【0125】
このような傾斜条件を満足するような構造であれば、第1の下方膜部21のZ軸方向への変位を検出する第1のセンサと、第2の下方膜部22のZ軸方向への変位を検出する第2のセンサと、を用意し、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との差を示す電気信号を、下方基板20を固定した状態において上方基板10に作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力することができ、また、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との和を示す電気信号を、Z軸方向の力Fzの検出値として出力することができる。
【0126】
もっとも、実用上は、第1の柱状体P1の中心軸A1と第2の柱状体P2の中心軸A2とが、「XZ平面」もしくは「XZ平面に平行な同一平面」上に配置されるようにし、第1の柱状体P1と第2の柱状体P2とが、YZ平面に関して面対称をなすようにするのが好ましい。そうすれば、装置全体を対称構造とすることができ、設計や組み立てが容易になるし、また、X軸正方向の力+Fxが作用した場合と、X軸負方向の力−Fxが作用した場合とで、変形態様に対称性が確保できるようになり、正の出力値と負の出力値との間に対称関係を得ることができる。
【0127】
なお、各柱状体の傾斜状態を測定するセンサとしては、各柱状体の下端によって、下方基板の基板面に対して垂直な方向(すなわち、上方向および下方向)に加えられる力を電気信号として測定できるセンサであれば、どのようなセンサを用いてもかまわない。ただ、図示の実施例に示す容量素子を用いたセンサは、構造が非常に単純なセンサであり、本発明への利用には最適である。
【0128】
したがって、実用上は、第1のセンサを、第1の下方膜部21に形成された第1の変位電極(図示の例の場合、下方膜部21自身)と、この第1の変位電極に対向する位置に固定された第1の固定電極E5と、からなる第1の容量素子C5によって構成し、第2のセンサを、第2の下方膜部22に形成された第2の変位電極(図示の例の場合、下方膜部22自身)と、この第2の変位電極に対向する位置に固定された第2の固定電極E6と、からなる第2の容量素子によって構成するのが好ましい。
【0129】
特に、図示の例のように、下方基板20,25を導電性材料から構成しておけば、第1の下方膜部21自身が第1の変位電極として機能し、第2の下方膜部22自身が第2の変位電極として機能することになるので、別途、変位電極を設ける必要がなくなり、構造を単純化することができる。もちろん、下方基板20,25が導電性材料でない場合には、第1の下方膜部21の下面に導電性材料からなる第1の変位電極を形成し、第2の下方膜部22の下面に導電性材料からなる第2の変位電極を形成すればよい。
【0130】
以上、この§2では、2本の柱状体P1,P2を用いて、X軸方向の力FxおよびZ軸方向の力Fzを検出する機能をもった基本的実施形態に係る力検出装置を述べたが、「一対の柱状体を基準軸に関して逆向きに傾斜させて配置する」という基本原理を利用すれば、§3,§4で述べるように、より多数の力成分を検出可能な力検出装置を設計することができる。また、この§2で述べた基本的実施形態に係る力検出装置には、様々な変形を施すことも可能である。
【0131】
たとえば、上方基板10全体を可撓性基板によって構成し、当該可撓性基板の一部により第1の上方膜部11が形成され、当該可撓性基板の別な一部により第2の上方膜部12が形成されるようにしてもよい。同様に、下方基板20全体を可撓性基板によって構成し、当該可撓性基板の一部により第1の下方膜部21が形成され、当該可撓性基板の別な一部により第2の下方膜部22が形成されるようにしてもよい。あるいは、上方基板10や下方基板20の代わりに、任意形状の構造体を用いるようにしてもよい。このような変形例については、§5で述べることにする。
【0132】
<<< §3. 本発明の実用的実施形態に係る力検出装置の構造 >>>
ここでは、§2で述べた基本原理を利用して、各座標軸方向の力成分Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメント成分Mx,My,Mzとの6つの成分を検出する機能をもった実用的実施形態に係る力検出装置の構造を説明する。
【0133】
図7は、この実用的実施形態に係る力検出装置の構成要素を分解した状態で示す正面図である。図示のとおり、この装置の主たる構成部品は、上方基板100、下方基板200、補助基板300,そして8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4である。図8は、これら各部品を組み立てて、力検出装置を構成した状態を示す正面図である(検出回路の部分はブロックとして示す)。図示のとおり、8本の柱状体の上端は上方基板100の下面に接合され、下端は下方基板200の上面に接合される。また、補助基板300は、下方基板200の下面に接合される。補助基板300は、センサを構成する固定電極を支持する機能を果たす。
【0134】
ここで、図6に示す力検出装置の各構成要素と、図8に示す力検出装置の各構成要素とを比較すると、前者における上方基板15,下方基板25,補助基板35,柱状体P1,P2,検出回路50は、後者における上方基板100,下方基板200,補助基板300,柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4,検出回路500に対応する。両者の最大の相違点は、柱状体の数である。前者が、2本の柱状体を用いて、力FxおよびFzを検出する機能をもった装置であるのに対して、後者は、8本の柱状体を用いて、力Fx,Fy,FzおよびモーメントMx,My,Mzを検出する機能をもった装置である。
【0135】
図7および図8には、4本の柱状体のみが現れているが、実際には、図示されている各柱状体の奥に、それぞれ別な柱状体が配置されている(図では、奥に隠れている柱状体の符号を括弧書きで示してある)。この装置において、8本の柱状体の配置、特に、その中心軸の傾斜方向は、上記力の6成分を正しく検出する上で非常に重要である。そこで、以下、この装置の構造を、個々の基板100,200,300ごとに詳細に説明する。
【0136】
図9は、この力検出装置の上面図である。ここに示す実施形態では、3枚の基板100,200,300は、いずれも同一半径をもった円盤によって構成されている。このため、上面図には、上方基板100のみが現れているが、下方基板200および補助基板300は、その陰に隠れていることになる。ここでは、この3枚の円形基板の中心を貫く軸をZ軸にとることにする。また、図示のとおり、上面図において、図の右方向をX軸の正方向にとり、図の上方向をY軸の正方向にとる。したがって、3枚の基板100,200,300は、いずれも基板面がXY平面に平行な基板ということになり、その中心を貫くZ軸は、図8における上方を正方向とする座標軸になる。
【0137】
なお、この座標系の原点Oは、図8の正面図に示すように、補助基板300の上面近傍位置にとることにする(理由は後述する)。このため、XY平面は、図8の原点Oを通る水平面ということになるが、以下に示す各平面図(上面図)では、便宜上、図面上にX軸およびY軸を描いて示すことにする。厳密に言えば、以下に示す各平面図に描かれているX軸およびY軸は、当該図面上へのX軸およびY軸の投影像ということになるが、特に混乱が生じない限り、図面上に二次元XY座標系が定義されているものとして説明を行う。
【0138】
図9にハッチングを施して示す8箇所の楕円領域は、上述した8本の柱状体が配置されている領域を示すものである(ハッチングは、領域を示すためのものであり、断面を示すためのものではない)。各領域が楕円で示されているのは、各柱状体が傾斜しているためである。ここでは、これら8箇所の領域を、領域Ax1〜Ax4および領域Ay1〜Ay4と呼ぶことにする。領域Ax1〜Ax4は、X軸の両脇に配置された領域であり、領域Ay1〜Ay4は、Y軸の両脇に配置された領域である。以下、これら各領域を示す符号3文字のうち、後ろの符号2文字を、当該領域の位置を示す位置参照符号として利用することにする。たとえば、領域符号「Ax1」の後ろの2文字「x1」は、図示の領域Ax1の位置を示す位置参照符号として用いられる。
【0139】
図10は、図8に示す力検出装置の構成要素である上方基板100の上面図である。図には、8箇所に二重円が破線で描かれているが、これらは、上方基板100の下面に形成された溝および突起部を示すものである。溝も突起部も、基板下面に形成されているため、図では破線で描かれている。8箇所の二重円は、それぞれ図9に示す8箇所の領域のいずれかの位置に対応する。
【0140】
二重円を構成する外側の円は、形成された円環状の溝の外周を示し、内側の円は、形成された円柱状の突起部の外周を示している。外側の円と内側の円との間の領域には、ワッシャ状の膜部が形成される。ここでは、溝を「Gを頭にもつ3文字の符号」で示し、膜部を「Bを頭にもつ3文字の符号」で示し、突起部を「bを頭にもつ3文字の符号」で示すことにする。各符号の後ろの2文字は、上述した位置参照符号である。たとえば、図10の右端に符号「Gx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する溝を示し、符号「Bx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する膜部を示し、符号「bx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する突起部を示している。
【0141】
溝Gx2,膜部Bx2,突起部bx2の構造は、図11(A) の縦断面図に明瞭に示されている。図11(A) は、図10に示す上方基板100を、切断線A−Aに沿って切断した縦断面図である。図示のとおり、溝Gx2,Gx4は、いずれも上方基板100の下面側に掘られた円環状の溝であり、ここでは「上方溝」と呼ぶことにする。膜部Bx2,Bx4は、溝Gx2,Gx4の形成によって厚みが小さくなった部分であり、溝の底部を形成するワッシャ状の膜状部分である。ここでは、これら膜状部分を「上方膜部」と呼ぶことにする。一方、突起部bx2,bx4は、溝Gx2,Gx4の内部において下方に突き出た円柱状の構造体であり、後述するように、柱状部の上端を接続するために利用される。
【0142】
同様に、図11(B) ,(C) は、図10に示す上方基板100を、それぞれ切断線B−B,C−Cに沿って切断した縦断面図である。切断線B−Bの位置には何ら溝は形成されていないが、切断線C−Cの位置には、上方溝Gy3,Gy4が形成されており、その結果、上方膜部By3,By4と突起部by3,by4とが形成されている。ここで、上方溝Gy3,上方膜部By3,突起部by3は、図9に示す領域Ay3に位置する構成要素であり、上方溝Gy4,上方膜部By4,突起部by4は、図9に示す領域Ay4に位置する構成要素である。
【0143】
一方、図12は、図8に示す力検出装置の構成要素である下方基板200の上面図である。この図にも、8箇所に二重円が描かれているが、これらは、下方基板200の上面に形成された溝および突起部を示すものである。これら8箇所の二重円も、それぞれ図9に示す8箇所の領域のいずれかの位置に対応する。この図12に示された8箇所の二重円の位置と、図10に破線で示された8箇所の二重円の位置とは、平面図上において重ならない。これは、後述するように、各柱状体がいずれも斜めに配置されるためである。
【0144】
この図においても、二重円を構成する外側の円は、形成された円環状の溝の外周を示し、内側の円は、形成された円柱状の突起部の外周を示している。外側の円と内側の円との間の領域には、ワッシャ状の膜部が形成される。この下方基板200では、溝を「Hを頭にもつ3文字の符号」で示し、膜部を「Dを頭にもつ3文字の符号」で示し、突起部を「dを頭にもつ3文字の符号」で示すことにする。やはり各符号の後ろの2文字は、上述した位置参照符号である。たとえば、図12の右端に符号「Hx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する溝を示し、符号「Dx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する膜部を示し、符号「dx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する突起部を示している。
【0145】
溝Hx2,膜部Dx2,突起部dx2の構造は、図13(B) の縦断面図に明瞭に示されている。図13(B) は、図12に示す下方基板200を、切断線B−Bに沿って切断した縦断面図である。図示のとおり、溝Hx2,Hx4は、いずれも下方基板200の上面側に掘られた円環状の溝であり、ここでは「下方溝」と呼ぶことにする。膜部Dx2,Dx4は、溝Hx2,Hx4の形成によって厚みが小さくなった部分であり、溝の底部を形成するワッシャ状の膜状部分である。ここでは、これら膜状部分を「下方膜部」と呼ぶことにする。一方、突起部dx2,dx4は、溝Hx2,Hx4の内部において上方に突き出た円柱状の構造体であり、後述するように、柱状部の下端を接続するために利用される。
【0146】
同様に、図13(A) ,(C) は、図12に示す下方基板200を、それぞれ切断線A−A,C−Cに沿って切断した縦断面図である。切断線A−Aの位置には何ら溝は形成されていないが、切断線C−Cの位置には、下方溝Hy3,Hy4が形成されており、その結果、下方膜部Dy3,Dy4と突起部dy3,dy4とが形成されている。ここで、下方溝Hy3,下方膜部Dy3,突起部dy3は、図9に示す領域Ay3に位置する構成要素であり、下方溝Hy4,下方膜部Dy4,突起部dy4は、図9に示す領域Ay4に位置する構成要素である。
【0147】
図14は、図8に示す力検出装置の構成要素である補助基板300の上面図である。この図にも、8箇所に二重円が描かれているが、これらは、補助基板300の上面に形成された溝および電極を示すものである。これら8箇所の二重円も、それぞれ図9に示す8箇所の領域のいずれかの位置に対応する。この図14に示された8箇所の二重円の位置と、図12に示された8箇所の二重円の位置とは、平面図上において一致する。これは、この補助基板300上の8枚の電極が、下方基板200の8枚の下方膜部のそれぞれ直下に位置するように構成されているためである。
【0148】
図14において、二重円を構成する外側の円は、形成された円柱状の溝の外周を示し、内側の円は、溝の底面に形成された円盤状の電極の外周を示している。この補助基板300では、溝を「Kを頭にもつ3文字の符号」で示し、電極を「Eを頭にもつ3文字の符号」で示すことにする。やはり各符号の後ろの2文字は、上述した位置参照符号である。たとえば、図14の右端に符号「Kx2」で示された部分は、領域Ax2に位置する溝を示し、符号「Ex2」で示された部分は、領域Ax2に位置する電極を示している。
【0149】
溝Kx2,電極Ex2の構造は、図15(B) の縦断面図に明瞭に示されている。図15(B) は、図14に示す補助基板300を、切断線B−Bに沿って切断した縦断面図である。図示のとおり、溝Kx2,Kx4は、いずれも補助基板300の上面側に掘られた円柱状の溝であり、ここでは「補助溝」と呼ぶことにする。上方基板100側の上方溝や下方基板200側の下方溝は、それぞれ可撓性をもった上方膜部や下方膜部を形成する役割を果たすものであったが、補助基板300側の補助溝は、下方基板200の下方に所定距離をおいて支持された電極を形成する役割を果たす。図15(B) に示されているとおり、電極Ex2は、補助溝Kx2の底面に固定された円盤状の電極であり、電極Ex4は、補助溝Kx4の底面に固定された円盤状の電極である。ここでは、これら補助基板300側に固定された8枚の電極を「固定電極」と呼ぶことにする。
【0150】
同様に、図15(A) ,(C) は、図14に示す補助基板300を、それぞれ切断線A−A,C−Cに沿って切断した縦断面図である。切断線A−Aの位置には何ら溝は形成されていないが、切断線C−Cの位置には、補助溝Ky3,Ky4が形成されており、その底面には、固定電極Ey3,Ey4が固定されている。ここで、補助溝Ky3,固定電極Ey3は、図9に示す領域Ay3に位置する構成要素であり、補助溝Ky4,固定電極Ey4は、図9に示す領域Ay4に位置する構成要素である。
【0151】
以上、上方基板100,下方基板200,補助基板300の構成を個別に説明したが、続いて、これら各基板と8本の柱状体によって組み立てられた装置の全体構成を説明する。ここに示す例の場合、8本の柱状体は、ほぼ円柱状の部材である。
【0152】
図16は、図8に示す力検出装置を、XZ平面に沿って切断した縦断面図である。XZ平面の奥に位置する4本の柱状体Px1,Px3,Py1,Py2が、上方基板100と下方基板200との間に挟まれた状態が示されている。ここで、右端の柱状体Px1および左端の柱状体Px3は、図面上では直立しているように見えるが、実際には、図面の奥行き方向に傾斜している。
【0153】
図17は、図8に示す力検出装置を、図10,図12,図14に示されている切断線A−Aに沿って切断した縦断面図である。図10に示すとおり、切断線A−A上には、上方溝Gx2,Gx4、上方膜部Bx2,Bx4,突起部bx2,bx4が配置されており、図17には、これらの断面がそれぞれ示されている。また、各突起部bx2,bx4の下面には、それぞれ柱状体Px2,Px4が接続された状態が示されている。たとえば、突起部bx2の下方に位置する柱状体Px2は、突起部bx2の下面から、図面手前方向に伸びる部材であるが、切断線A−Aに沿った切断面のみが示されている。なお、その奥に位置する柱状体Px1の上端は、突起部bx2ではなく、その奥に位置する突起部bx1の下面に接合されている。
【0154】
図18は、図8に示す力検出装置を、図10,図12,図14に示されている切断線B−Bに沿って切断した縦断面図である。図12,図14に示すとおり、切断線B−B上には、下方溝Hx2,Hx4、下方膜部Dx2,Dx4,突起部dx2,dx4,補助溝Kx2,Kx4、固定電極Ex2,Ex4が配置されており、図18には、これらの断面がそれぞれ示されている。また、各突起部dx2,dx4の上面には、それぞれ柱状体Px2,Px4が接続された状態が示されている。たとえば、突起部dx2の上方に位置する柱状体Px2は、突起部dx2の上面から、図面奥行き方向に伸びる部材であり、図では、切断線B−Bに沿った切断面およびそれより奥に位置する部分が示されている。更に奥に位置する別な柱状体Px1は、柱状体Px2の陰に隠れて図には現れていない。
【0155】
図19は、図8に示す力検出装置を、図10,図12,図14に示されている切断線C−Cに沿って切断した縦断面図である。切断線C−C上には、図10に示すとおり、上方溝Gy3,Gy4、上方膜部By3,By4,突起部by3,by4が配置されており、また、図12に示すとおり、下方溝Hy3,Hy4、下方膜部Dy3,Dy4,突起部dy3,dy4が配置されており、更に、図14に示すとおり、補助溝Ky3,Ky4、固定電極Ey3,Ey4が配置されている。図18には、これらの断面がそれぞれ示されている。
【0156】
柱状体Py3,Py4の中心軸は、切断線C−Cに沿った縦断面上に位置するため、この図19には、2本の柱状体Py3,Py4の上端および下端の接続状態が明瞭に示されている。すなわち、柱状体Py3,Py4の上端は、上方基板100側の突起部by3,by4の下面に接合され、下端は、下方基板200側の突起部dy3,dy4の上面に接合されている。しかも、柱状体Py3は上端が左側へ傾くように傾斜しているのに対して、柱状体Py4は上端が右側へ傾くように傾斜しており、両者は逆方向に傾斜している。
【0157】
図18に示すように、下方膜部Dx2の直下には、所定間隔をおいて、固定電極Ex2が配置されており、下方膜部Dx4の直下には、所定間隔をおいて、固定電極Ex4が配置されている。また、図19に示すように、下方膜部Dy3の直下には、所定間隔をおいて、固定電極Ey3が配置されており、下方膜部Dy4の直下には、所定間隔をおいて、固定電極Ey4が配置されている。このように、ここに示す実施形態の場合、8枚の下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4の直下には、所定間隔をおいて、それぞれ固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4が配置されている。そして、下方基板200は導電性材料から構成されているため、8枚の下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4はそれぞれが変位電極として機能し、対向する固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4とによって、容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4を構成する。これら各容量素子は、各下方膜部の上下方向(Z軸方向)への変位を検出するセンサとして機能する。
【0158】
図20は、図8に示す力検出装置における上方膜部および下方膜部の位置関係を示す平面図である。すなわち、図10に示す8組の二重円(上方基板100の構成要素)と、図12に示す8組の二重円(下方基板200の構成要素)とを、同一平面上に重ねて表示したものである。図に一点鎖線で示すとおり、X軸正側の点Q(+x)を通りY軸に平行な基準線L1と、X軸負側の点Q(−x)を通りY軸に平行な基準線L2と、Y軸正側の点Q(+y)を通りX軸に平行な基準線L3と、Y軸負側の点Q(−y)を通りX軸に平行な基準線L4と、を定義すると、合計16組の二重円の中心は、それぞれ基準線L1〜L4の上に並ぶことになる。
【0159】
ここで、図9に示すような8個の領域を考えると、図20において同一の領域に所属する二重円の内側の円(突起部)は、同一の柱状体の上端および下端の接続位置を示すことになる。たとえば、領域Ax1内の突起部dx1とbx1は、同一の柱状体Px1の下端および上端の接続対象であり、領域Ax2内の突起部dx2とbx2は、同一の柱状体Px2の下端および上端の接続対象である。同様に、領域Ay1内の突起部dy1とby1は、同一の柱状体Py1の下端および上端の接続対象であり、領域Ay2内の突起部dy2とby2は、同一の柱状体Py2の下端および上端の接続対象である。
【0160】
図21は、図8に示す力検出装置における下方基板200およびその上面に取り付けられた8本の柱状体を示す平面図である。別言すれば、図8に示す力検出装置において、上方基板100を除去し、残りの構造体を上方から観察した上面図に対応する。ここで、ハッチングは、各柱状体の上端面を示すためのものであり、断面を示すものではない。また、参考のために、上方基板100側に形成される上方溝の位置を破線で示してある。なお、図に一点鎖線で示すS(+x),S(−x),S(+y),S(−y)は、図20に示す基準線L1,L2,L3,L4上に立てた垂直面を示している。すなわち、S(+x)はX軸と正側で直交するX軸正側直交面、S(−x)はX軸と負側で直交するX軸負側直交面、S(+y)はY軸と正側で直交するY軸正側直交面、S(−y)はY軸と負側で直交するY軸負側直交面である。
【0161】
図示のとおり、柱状体Px1,Px2の中心軸は、X軸正側直交面S(+x)上に位置しており、柱状体Px3,Px4の中心軸は、X軸負側直交面S(−x)上に位置しており、柱状体Py1,Py2の中心軸は、Y軸正側直交面S(+y)上に位置しており、柱状体Py3,Py4の中心軸は、Y軸負側直交面S(−y)上に位置している。
【0162】
これは、柱状体Px1,Px2,Px3,Px4(以下、X軸柱状体と呼ぶ)が、Y軸方向に関しては傾斜しているが、X軸方向に関しては傾斜していないことを意味し、また、柱状体Py1,Py2,Py3,Py4(以下、Y軸柱状体と呼ぶ)が、X軸方向に関しては傾斜しているが、Y軸方向に関しては傾斜していないことを意味する。また、X軸柱状体Px1,Px2のXZ平面に関する傾斜は互いに逆になっており、X軸柱状体Px3,Px4のXZ平面に関する傾斜も互いに逆になっている。同様に、Y軸柱状体Py1,Py2のYZ平面に関する傾斜は互いに逆になっており、Y軸柱状体Py3,Py4のYZ平面に関する傾斜も互いに逆になっている。8本の柱状体のこのような傾斜特性は、§4で述べる力の6軸成分の検出を行う上で非常に重要である。
【0163】
結局、図8に示す実施形態の力検出装置は、XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する機能を有し、XY平面に平行な基板面を有する上方基板100と、XY平面に平行な基板面を有し、上方基板100の下方に配置された下方基板200と、上端が上方基板100の下面に、下端が下方基板200の上面に、それぞれ接合された第1〜第4のX軸柱状体Px1〜Px4および第1〜第4のY軸柱状体Py1〜Py4と、これら8本の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部(図8には示されていない8組の容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4と、図8にブロックで示す検出回路500)と、によって構成されていることになる。
【0164】
ここで、上方基板100のうち、第1〜第4のX軸柱状体Px1〜Px4の上端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のX軸上方膜部Bx1〜Bx4を構成し、第1〜第4のY軸柱状体Py1〜Py4の上端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のY軸上方膜部By1〜By4を構成している。同様に、下方基板200のうち、第1〜第4のX軸柱状体Px1〜Px4の下端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のX軸下方膜部Dx1〜Dx4を構成し、第1〜第4のY軸柱状体Py1〜Py4の下端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のY軸下方膜部Dy1〜Dy4を構成している。
【0165】
各膜部の厚みは、力検出に必要な可撓性を有するのに適した厚みとなるように設定される。各膜部は、いわゆるダイアフラムとして機能することになる。各膜部の厚みは、各溝の深さによって定まる寸法であり、この装置を製造するプロセスでは、材料となる基板上に所定の深さの溝を形成する加工を施して各膜部を形成することになる。本願発明者が試作した装置の場合、上方基板100や下方基板200を、厚み10mmのアルミニウムまたはステンレスからなる基板によって構成し、各溝の径を20mm、突起部の径を10mmとしたとき、膜部の厚みを1.0mm以下に設定すれば、一般的な用途に利用する上で十分な可撓性をもった膜部を形成することができた。
【0166】
なお、各柱状体の上端と上方膜部との間や、各柱状体の下端と下方膜部との間は、直接的に接続する形態をとってもかまわないし、何らかの部材を仲介して間接的に接続する形態をとってもかまわない。ここに示す実施形態の場合、各柱状体は、突起部を介して間接的に各膜部に接続されている。たとえば、図19には、柱状体Py3の上端が突起部by3を介して上方膜部By3に接続され、柱状体Py3の下端が突起部dy3を介して下方膜部Dy3に接続され、柱状体Py4の上端が突起部by4を介して上方膜部By4に接続され、柱状体Py4の下端が突起部dy4を介して下方膜部Dy4に接続されている状態が示されている。
【0167】
もちろん、突起部を介さずに柱状体の端を直接的に膜部に接合する構造をとってもかまわない。ただ、突起部を仲介させた方が、各柱状体の上下端を、これら突起部の露出面に接合する作業を行うだけで、主たる構造部分を構成することができるので、組み立てが容易になる。また、柱状体の上下端を溝の内部に入れて膜部に直接接合する構造にすると、柱状体が極端に傾斜したときに溝の縁に接触するおそれがあるので、実用上は、図示の例のように突起部を介して間接的に接合する構造をとるのが好ましい。
【0168】
すなわち、上方基板100の下面側に各上方溝Gx1〜Gx4,Gy1〜Gy4を形成し、その内部に溝の底面から基板面位置まで下方に伸びる突起部bx1〜bx4,by1〜by4を設け、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の上端を、これら各突起部を介して上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4に接合するようにするのが好ましい。同様に、下方基板200の上面側に各下方溝Hx1〜Hx4,Hy1〜Hy4を形成し、その内部に溝の底面から基板面位置まで上方に伸びる突起部dx1〜dx4,dy1〜dy4を設け、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の下端を、これら各突起部を介して下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4に接合するようにするのが好ましい。
【0169】
なお、図示する実施形態では、上方基板100の下面側に上方溝Gx1〜Gx4,Gy1〜Gy4を形成し、これらの溝の底部によって上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4を形成しているが、各上方溝を上方基板100の上面側に形成し、上方基板100の下面近傍に残った溝底部によって各上方膜部を形成するようにしてもよい。この場合、突起部を用いずに柱状体の上端を直接上方膜部に接合すれば十分である。同様に、図示する実施形態では、下方基板200の上面側に下方溝Hx1〜Hx4,Hy1〜Hy4を形成し、これらの溝の底部によって下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4を形成しているが、各下方溝を下方基板200の下面側に形成し、下方基板200の上面近傍に残った溝底部によって各下方膜部を形成するようにしてもよい。この場合も、突起部を用いずに柱状体の下端を直接下方膜部に接合すれば十分である。
【0170】
この§3で述べる実施形態においても、各柱状体の傾斜状態は重要である。既に述べたとおり、検出対象となる外力が作用していない状態において、8本の柱状体は、いずれもZ軸に対して傾斜した状態となるように配置されている。ここで、§2で説明した基本原理に基づく測定を行うためには、「上方基板と下方基板との間を接続する一対の柱状体を互いに逆向きに傾斜させる」という条件を満たす配置が必要である。
【0171】
具体的には、図21に示されているとおり、第1のX軸柱状体Px1と第2のX軸柱状体Px2については、その中心軸がX軸の正の領域においてX軸と直交するX軸正側直交面S(+x)に含まれるように、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜するように配置し、第3のX軸柱状体Px3と第4のX軸柱状体Px4については、その中心軸がX軸の負の領域においてX軸と直交するX軸負側直交面S(−x)に含まれるように、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜するように配置する。同様に、第1のY軸柱状体Py1と第2のY軸柱状体Py2については、その中心軸がY軸の正の領域においてY軸と直交するY軸正側直交面S(+y)に含まれるように、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜するように配置し、第3のY軸柱状体Py3と第4のY軸柱状体Py4については、その中心軸がY軸の負の領域においてY軸と直交するY軸負側直交面S(−y)に含まれるように、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜するように配置する。
【0172】
ここで、下方基板200を固定した状態において、上方基板100に外力が作用した場合、8本の柱状体に変位が生じることになる。検出部は、これらの変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する機能をもった構成要素であり、各柱状体の下端に接続されている各下方膜部のZ軸方向への変位を検出するためのセンサと、これらセンサの検出値に基づいて得られた電気信号を、下方基板200を固定した状態において上方基板100に作用した力の検出値として出力する検出回路500によって構成される。
【0173】
すなわち、ここで述べる実施形態では、第1のX軸下方膜部Dx1のZ軸方向への変位を検出する第1のX軸センサと、第2のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のX軸センサと、第3のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第3のX軸センサと、第4のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第4のX軸センサと、第1のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のY軸センサと、第2のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のY軸センサと、第3のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第3のY軸センサと、第4のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第4のY軸センサと、が用いられる。
【0174】
しかも、ここで述べる実施形態では、各センサが、下方膜部に形成された変位電極と、この変位電極に対向する位置に固定された固定電極と、からなる容量素子によって構成されている。容量素子からなるセンサは、その静電容量値の変化に基づいて、変位電極と固定電極との間の電極間距離の変化を把握することができるため、各下方膜部のZ軸方向への変位を静電容量値の変化として検出可能である。
【0175】
ここで述べる実施形態の場合、下方基板200は導電性材料から構成されているため、各下方膜部はいずれも導電性をもった変位電極として機能する。このため、第1のX軸センサは、第1のX軸下方膜部Dx1からなる第1のX軸変位電極と、この第1のX軸変位電極に対向する位置に固定された第1のX軸固定電極Ex1と、からなる第1のX軸容量素子Cx1によって構成され、第2のX軸センサは、第2のX軸下方膜部Dx2からなる第2のX軸変位電極と、この第2のX軸変位電極に対向する位置に固定された第2のX軸固定電極Ex2と、からなる第2のX軸容量素子Cx2によって構成され、第3のX軸センサは、第3のX軸下方膜部Dx3からなる第3のX軸変位電極と、この第3のX軸変位電極に対向する位置に固定された第3のX軸固定電極Ex3と、からなる第3のX軸容量素子Cx3によって構成され、第4のX軸センサは、第4のX軸下方膜部Dx4からなる第4のX軸変位電極と、この第4のX軸変位電極に対向する位置に固定された第4のX軸固定電極Ex4と、からなる第4のX軸容量素子Cx4によって構成されている。
【0176】
同様に、第1のY軸センサは、第1のY軸下方膜部Dy1からなる第1のY軸変位電極と、この第1のY軸変位電極に対向する位置に固定された第1のY軸固定電極Ey1と、からなる第1のY軸容量素子Cy1によって構成され、第2のY軸センサは、第2のY軸下方膜部Dy2からなる第2のY軸変位電極と、この第2のY軸変位電極に対向する位置に固定された第2のY軸固定電極Ey2と、からなる第2のY軸容量素子Cy2によって構成され、第3のY軸センサは、第3のY軸下方膜部Dy3からなる第3のY軸変位電極と、この第3のY軸変位電極に対向する位置に固定された第3のY軸固定電極Ey3と、からなる第3のY軸容量素子Cy3によって構成され、第4のY軸センサは、第4のY軸下方膜部Dy4からなる第4のY軸変位電極と、この第4のY軸変位電極に対向する位置に固定された第4のY軸固定電極Ey4と、からなる第4のY軸容量素子Cy4によって構成されている。
【0177】
検出回路500は、第1のX軸容量素子Cx1の静電容量変動値Cx1(ここでは、便宜上、容量素子と当該容量素子の静電容量変動値とを同じ符号で示す)、第2のX軸容量素子Cx2の静電容量変動値Cx2、第3のX軸容量素子Cx3の静電容量変動値Cx3、第4のX軸容量素子Cx4の静電容量変動値Cx4、第1のY軸容量素子Cy1の静電容量変動値Cy1、第2のY軸容量素子Cy2の静電容量変動値Cy2、第3のY軸容量素子Cy3の静電容量変動値Cy3、第4のY軸容量素子Cy4の静電容量変動値Cy4に基づいて得られた電気信号を、検出値として出力することになる。具体的な検出値を得る方法については、§4で詳述する。
【0178】
なお、下方基板200を非導電性材料から構成した場合には、各下方膜部は導電性を有さないため、それ自身を変位電極として利用することができない。その場合は、各下方膜部の下面に別個の導電膜を形成し、これを変位電極として用いるようにすればよい。もっとも、実用上は、ここに示す実施形態のように、下方基板200を導電性材料によって構成し、各下方膜部自身をそれぞれ変位電極として機能させるのが、構造を単純化する上で好ましい。下方基板200が導電性材料によって構成されている場合、各変位電極はいずれも導通状態になるが、これに対向する固定電極がそれぞれ電気的に独立していれば、個々の容量素子も互いに電気的に独立した素子となり、検出動作には何ら支障はない。
【0179】
また、固定電極は、各変位電極に対向する位置に固定されていれば、どのような方法で取り付けてもよいが、実用上は、ここに述べる実施形態のように、下方基板200の下面に補助基板300を固着し、この補助基板300の上面に各固定電極を取り付けるようにするのが好ましい。特に、図示の例のように、補助基板300の上面における各下方膜部(変位電極)の下方位置にそれぞれ補助溝Kx1〜Kx4,Ky1〜Ky4を形成し、これら補助溝の底面にそれぞれ固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4を形成すると、構成が単純になり、また、組み立ても容易になる。
【0180】
本発明に係る力検出装置を構成する上で、各部の材質は特に限定されるものではないが、上方基板や下方基板、そして各柱状体は、たとえば、アルミニウムやステンレスなどの金属によって構成することができる。特に、下方基板を導電性材料で構成しておけば、各下方膜部それ自身を変位電極として利用できるメリットが得られる。一方、補助基板は、個々の固定電極を絶縁状態に保つため、ガラスエポキシやセラミックなどの絶縁性材料から構成するのが好ましい。もちろん、上方基板、下方基板、各柱状体、補助基板を含めた全体を合成樹脂などの絶縁材料で構成することも可能である。この場合は、変位電極や固定電極として、金属メッキ層などを形成すればよい。
【0181】
<<< §4. 本発明の実用的実施形態に係る力検出装置の動作 >>>
ここでは、§3で構造を述べた本発明の実用的実施形態に係る力検出装置の動作を詳述する。この装置は、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzと、各座標軸まわりのモーメントMx,My,Mzとの6つの力を検出する機能を有している。たとえば、この装置をロボットの上腕部に対して下腕部に作用する力を検出する用途に利用するのであれば、補助基板300を上腕部側に固定し、上方基板100を下腕部側に固定し、この装置自身を肘の部分の間接として利用すればよい。そうすれば、上腕部を固定した状態において、下腕部に対して作用した6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出が可能になる。
【0182】
なお、本願では、「力」という文言は、特定の座標軸方向の力を意味する場合と、モーメント成分を含めた集合的な力を意味する場合とを、適宜使い分けることにする。たとえば、上述した各座標軸方向の力Fx,Fy,Fzは、モーメントではない各座標軸方向の力成分を意味するものであるが、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzと言った場合は、各座標軸方向の力成分と各座標軸まわりのモーメント成分とを含む集合的な力を意味することになる。
【0183】
さて、§2では、2本の柱状体のみを有する基本的実施形態に係る装置において、X軸方向の力が作用した場合の状態を、図3(b) を参照して説明した。具体的には、下方基板20を固定した状態において、上方基板10の重心Qに、図の右方向への力+Fxが作用した場合の変形態様が示されており、上方基板10は水平方向に平行移動した状態となっている。しかしながら、実際には、このように上方基板10を水平方向のみに移動させるように力を作用させることは困難である。上方基板10は、2本の柱状体P1,P2によって下方基板20に接続されているため、たとえば、上方基板10の左側面に対して、右方向への押圧力を水平に加えると、上方基板10は全体として図の右方向へと移動することになるが、上方基板10の運動は必ずしも水平方向への運動のみではなく、回転運動が加わることになろう。
【0184】
すなわち、図示の位置に原点Oを定義した場合、上方基板10の左側面を右方向へ押す力は、原点Oに関しては、モーメントとして働くことになる。別言すれば、上方基板10の左側面を右方向へ押す力は、この力検出装置に対して加えられた、X軸方向の力+Fxとして認識することもできるし、Y軸まわりのモーメント+Myとして認識することもできる。しかも、モーメントに関しては、原点Oの位置をどこに定義するかによって、その絶対値も変わってくる。このように、各座標軸まわりのモーメントMx,My,Mzを検出対象として取り扱う以上、当該モーメント成分についての回転軸となる座標系の位置を特定せざるを得ず、しかるべき位置に原点Oを定義する必要がある。
【0185】
そこで、図3(a) に示す例では、各基板の中心点を貫き、各基板に垂直な方向にZ軸をとり、このZ軸上における、変位基板20の下面と補助基板30の上面との間の中間位置に、原点Oを定義している。これは、Z軸上に原点Oを定める基準(上下方向に関する位置基準)として、センサとして用いられる容量素子を構成する一対の電極の中間位置を採用するようにしたためである。このような位置を原点Oの基準に定めた理由は、図3(b) に示すように、外力の作用によって、2本の柱状体P1,P2が変位した場合、当該変位が容量素子の静電容量値の変化として検出されるため、変位を直接検出するセンサである容量素子の中心位置を、Z軸方向に関する原点位置と定めるのが最も適当であると考えられるためである(より厳密には、固定電極E5,E6の上面と下方膜部21,22の下面との間の中間位置ということになる)。
【0186】
もっとも、図3に示す装置の場合、力FxとモーメントMyとを区別して検出することはできず、一対の容量素子の静電容量値の差は、力FxとモーメントMyとの双方の検出値を含むものになる。したがって、この図3に示す基本的実施形態に係る装置は、力とモーメントとを厳密に区別して測定する必要のない環境で利用される装置ということになる。これに対して、§3で構造を説明した実用的実施形態に係る装置(図8に示す装置)は、力とモーメントとを区別して測定する機能を有している。以下、この測定機能について説明する。
【0187】
なお、この実施形態の場合も、各基板の中心点を貫く位置にZ軸を定義し、センサを構成する容量素子の中心位置をZ軸方向に関する基準位置として、XYZ三次元座標系の原点Oの位置を定義することにする。図8に示す原点Oは、このような前提で定義されたものである。
【0188】
この図8に示す装置においても、たとえば、上方基板100の左側面に対して、右方向への押圧力を水平に加えると、上方基板100は全体として図の右方向へと移動することになるが、やはり上方基板100の運動は必ずしも水平方向への運動のみではなく、回転運動が加わることになろう。この装置に、X軸方向の力成分+Fxのみを作用させたい場合には、たとえば、図22に示すようなガイド部材410〜440を設ければよい。ガイド部材410,420は、上方基板100の左側部分の上下両面を支持する部材であり、ガイド部材430,440は、上方基板100の右側部分の上下両面を支持する部材である。
【0189】
図示のとおり、補助基板300と各ガイド部材410〜440とを固定した状態にすれば、上方基板100の移動方向は水平方向のみに制限されるので、上方基板100の左側面に対して右方向への押圧力を加えれば、上方基板100は図の右方向のみに水平に移動することになる。このときの装置の変形状態は、この装置に力+Fxのみが作用したときの変形状態ということになる。逆に、上方基板100の右側面に対して左方向への押圧力を加えたときの状態は、この装置に力−Fxのみが作用したときの変形状態ということになる。また、この装置に力+Fy,−Fyが作用したときの変形状態も同様である。
【0190】
次に、この装置に、図23に示すようなガイド部材450を設けた場合を考えてみる。ガイド部材450は、各基板100,200,300の外周とほぼ同じ内周をもつ円筒状の部材であり、この装置全体を内部に収容することができる。ここで、基板200,300をガイド部材450に固定した状態にして、上方基板100に対して上方に引っ張り上げる力を作用させれば、そのときの装置の変形状態は、この装置に力+Fzのみが作用したときの変形状態ということになる。逆に、上方基板100に対して下方に押し下げる力を作用させれば、そのときの装置の変形状態は、この装置に力−Fzのみが作用したときの変形状態ということになる。
【0191】
続いて、この装置にモーメントのみが作用した状態を考えよう。図24は、図8に示す力検出装置にモーメント+Myのみによる変形を生じさせる様子を示す正面図である。図24において、Y軸は紙面の裏側へと向かう垂直方向の軸であるから、モーメント+Myは、下方基板200を固定した状態において、上方基板100の作用点Qを、原点Oを中心に時計まわりの方向に回転させる力に相当する。このようなモーメント+Myが加えられると、作用点Qは、半径Rの円弧軌道T(一点鎖線で示す)に沿って移動する。なお、本願では、所定の座標軸の正方向に右ネジを進める場合の当該右ネジの回転方向を、当該座標軸まわりの正のモーメントと定義することにする。負のモーメント−Myは、作用点Qを、原点Oを中心に反時計まわりの方向に回転させる力に相当する。
【0192】
もちろん、作用点Qを円弧軌道Tに沿って移動させるためには、それなりの方法で、上方基板100に対して外力を作用させる必要があるが、何らかの方法で、そのような外力を作用させれば、Y軸まわりのモーメントMyが作用した場合の変形状態が得られる。X軸まわりのモーメントMxが作用した場合の変形状態も同様である。
【0193】
最後に、Z軸まわりのモーメントMzが作用した場合を考える。図25は、図8に示す力検出装置にモーメント+Mzのみによる変形を生じさせた状態を示す上面図である。図示のとおり、モーメント+Mzは、下方基板200を固定した状態において、上方基板100をZ軸を中心に上から見て反時計まわりの方向に回転させる力に相当する。同様に、モーメント−Mzは、上方基板100をZ軸を中心に上から見て時計まわりの方向に回転させる力に相当する。このように、モーメントMzのみが作用した場合の変形状態を得るには、たとえば、図23に示すように、装置全体を円筒状のガイド部材450に収容し、基板200,300をガイド部材450に固定した状態にして、上方基板100に対してZ軸を中心とする回転力を作用させればよい。
【0194】
以上、下方基板200を固定した状態において、上方基板100上の作用点Qに、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzのいずれか1つのみが作用した場合の変形状態を得る方法を述べた。もちろん、この装置を実際に利用する場合、必ずしも上述したガイド部材410〜450などを設けて利用するわけではない。各ガイド部材410〜450を設けた上述の利用例は、あくまでも1つの力成分のみが作用した場合の変形状態を説明するためのものであり、実際には、むしろ、そのようなガイド部材を用いない利用形態の方が一般的である。したがって、実用上は、上記6つの力成分の複数が混じり合った状態で作用することになろう。
【0195】
ここに示す力検出装置は、そのように複数の力成分が混じり合って作用する環境下においても、6つの力成分をそれぞれ独立して検出することが可能である。そこで、まず、上記6つの力がそれぞれ単独で作用した場合に、8組の容量素子Cx1〜Cy4,Cy1〜Cy4の静電容量値に、どのような変化が生じるかを考えてみよう。図26は、このような6つの変形状態における各容量素子の容量値変化を示すテーブルである。
【0196】
テーブル各欄の記号は、外力が作用していない基準状態に対する容量値変化の様子を示すものであり、「0」は変化なし、「+Δ」もしくは「+δ」は増加、「−Δ」もしくは「−δ」は減少を示している。ここで「+Δ」,「+δ」はいずれも容量値の増加を示すものであるが、「+Δ」は「+δ」に比べて大きな変化が生じることを示している。同様に、「−Δ」,「−δ」はいずれも容量値の減少を示すものであるが、「−Δ」は「−δ」に比べて大きな変化が生じることを示している。
【0197】
もっとも、「Δ」や「δ」は、特定の絶対値を示すものではなく、変化量の程度を示すものなので、たとえば、「+Δ」が記された複数の欄の容量値の実際の変動量は必ずしも等しくはならない。また、図26は、+Fx,+Fy,+Fz,+Mx,+My,+Mzという正の力が作用した場合の容量値変化を示すものであるが、−Fx,−Fy,−Fz,−Mx,−My,−Mzという負の力が作用した場合の容量値変化は、各欄の符号を逆転させたものになる。
【0198】
6通りの力が単独で作用した場合に、8組の容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4の静電容量値が図26のテーブルのように変化する理由は、§2で述べた2本の柱状体のみを有する装置の変形状態を参照すれば、容易に理解できよう。
【0199】
たとえば、力+Fxのみが作用した場合は、図22に示すように、ガイド部材410〜440を設けた環境下において、上方基板100が右方向に水平移動した状態を考えればよい。このとき、一対のY軸柱状体Py3,Py4の傾斜態様および一対のY軸柱状体Py1,Py2の傾斜態様は、図3に示す一対の柱状体P1,P2の傾斜態様と同様になる。したがって、容量素子Cy3の容量値は増加し、容量素子Cy4の容量値は減少する。また、容量素子Cy1の容量値は増加し、容量素子Cy2の容量値は減少する。図26のテーブルの「+Fx」の行の「Cy1〜Cy4の欄」が、「+Δ,−Δ,+Δ,−Δ」となっているのは、このような結果に基づくものである。
【0200】
一方、図22に示されているとおり、4本のX軸柱状体Px1〜Px4は、外力が作用していない標準の状態において、Y軸方向に関しては傾斜しているものの、X軸方向に関しては傾斜していない。したがって、外力+Fxの作用により、上方基板100が右方向に水平移動すると、4本のX軸柱状体Px1〜Px4は、いずれも図の右方向に傾斜することになるが、その傾斜態様は、図2(b) に示す一対の柱状体41,42の傾斜態様と同様になる。
【0201】
ただ、図2(b) に示す従来装置の場合、一対の容量素子C1,C2の容量値の差「C2−C1」として柱状体41の傾斜度の測定が行われており、一対の容量素子C3,C4の容量値の差「C4−C3」として柱状体42の傾斜度の測定が行われている。これに対して、本発明では、図18に示されているように、柱状体Px2の変位検出用には、単一の容量素子Cx2(下方膜部Dx2と固定電極Ex2)が設けられているだけであり、柱状体Px4の変位検出用には、単一の容量素子Cx4(下方膜部Dx4と固定電極Ex4)が設けられているだけである。このため、柱状体Px2,Px4が図の右方向に傾斜して、下方膜部Dx2,Dx4が変形したとしても、容量素子Cx2,Cx4の電極間距離は、図の右半分では減少し、図の左半分では増加することになり、容量素子Cx2,Cx4については、トータルでの静電容量値に変化は生じない。図26のテーブルの「+Fx」の行の「Cx1〜Cx4の欄」が、いずれも「0」になっているのは、このような結果に基づくものである。
【0202】
また、力+Fyのみが作用した場合の変形状態は、上記力+Fxのみが作用した場合の変形状態を、Z軸まわりに45°回転させたものになるので、容量素子Cx1〜Cx4の容量値変化と容量素子Cy1〜Cy4の容量値変化とを入れ替えた結果が得られる。図26のテーブルの「+Fy」の行は、このような結果に基づくものである。
【0203】
次に、力+Fzのみが作用した場合を考える。この場合は、8本の柱状体すべてについて、図4(a) に示すような変形態様が得られる。したがって、8組の容量素子Cx1〜Cx4、Cy1〜Cy4の容量値はすべて減少する。図26のテーブルの「+Fz」の行は、このような結果に基づくものである。
【0204】
続いて、モーメントのみが作用した場合を考えてみよう。ここでは、説明の便宜上、まず、図24に示すように、Y軸まわりのモーメント+Myのみが作用した場合の変形状態を考える。この場合、上方基板100の右半分は下方へ移動し、左半分は上方へ移動することになる。したがって、右半分に配置された4本の柱状体Px1,Px2,Py1,Py3の下端には下方への力が加わり、これらについての下方膜部は下方へ撓みを生じることになる。その結果、容量素子Cx1,Cx2,Cy1,Cy3の電極間隔は減少し、これらの容量値は増加する。一方、左半分に配置された4本の柱状体Px3,Px4,Py2,Py4の下端には上方への力が加わり、これらについての下方膜部は上方へ撓みを生じることになる。その結果、容量素子Cx3,Cx4,Cy2,Cy4の電極間隔は増加し、これらの容量値は減少する。
【0205】
このように、図の右半分に配置された容量素子Cx1,Cx2,Cy1,Cy3の容量値は増加し、図の左半分に配置された容量素子Cx3,Cx4,Cy2,Cy4の容量値は減少するが、各容量素子ごとに増減の程度に差が生じる。たとえば、図24に示す柱状体Px2と柱状体Py3とを比較すると、柱状体Px2は、X軸方向に関しては上方基板100の外側に配置されており、しかもX軸方向に関しては傾斜していないため、モーメント+Myによる上下方向への変位量は比較的大きい。一方、柱状体Py3は、X軸方向に関しては上方基板100の内側に配置されており、しかもX軸方向に関しては傾斜しているため、モーメント+Myによる上下方向への変位量は比較的小さい。
【0206】
図26のテーブルの「+My」の行は、このような結果に基づくものである。すなわち、図の右半分に配置された容量素子Cx1,Cx2,Cy1,Cy3については「+」の結果が示され、図の左半分に配置された容量素子Cx3,Cx4,Cy2,Cy4については「−」の結果が示されている。また、モーメント+Myによる上下方向への変位量が比較的大きい容量素子Cx1〜Cx4については、容量値の変動量が大きいことを示す「Δ」が示されており、モーメント+Myによる上下方向への変位量が比較的小さい容量素子Cy1〜Cy4については、容量値の変動量が小さいことを示す「δ」が示されている。「δ」の欄が括弧書きで示されているのは、後述するように、比較的低精度の検出値が得られれば十分な場合には、近似的に、δ=0とみなす取り扱いを行うことができることを示すためである。
【0207】
モーメント+Mxのみが作用した場合の変形状態は、上記モーメント+Myのみが作用した場合の変形状態を、Z軸まわりに45°回転させたものになるので、上記と同様の考え方に基づいて、各容量素子の容量値の変化態様が得られる。図26のテーブルの「+Mx」の行は、このような結果に基づくものである。
【0208】
最後に、モーメント+Mzのみが作用した場合を考えよう。この場合は、図25に示すように、上方基板100が回転することになるので、8本の柱状体すべてが、この回転方向に依存する方向にそれぞれ傾斜することになる。各柱状体の具体的な傾斜態様は、図21の平面図を参照すると容易に理解できる。図21にハッチングを施した円は、各柱状体の上端面を示している。モーメント+Mzが作用すると、これら上端面が反時計まわりに回転することになる。その結果、4本の柱状体Px1,Py2,Px4,Py3は起き上がる方向に傾斜するので、その下端には下方への力が加わり、これらについての下方膜部は下方へ撓みを生じることになる。その結果、容量素子Cx1,Cy2,Cx4,Cy3の電極間隔は減少し、これらの容量値は増加する。一方、残りの4本の柱状体Px2,Py1,Px3,Py4は寝る方向に傾斜するので、その下端には上方への力が加わり、これらについての下方膜部は上方へ撓みを生じることになる。その結果、容量素子Cx2,Cy1,Cx3,Cy4の電極間隔は増加し、これらの容量値は減少する。図26のテーブルの「+Mz」の行は、このような結果に基づくものである。
【0209】
ここで、−Fx,−Fy,−Fz,−Mx,−My,−Mzという負の力が作用した場合の容量値変化が、図26に示すテーブルの各欄の符号を逆転させたものになることは、もはや説明の必要はないであろう。なお、この図26のテーブルに示す結果は、図21の平面図に示されているように、第1のX軸柱状体Px1のXY平面への正射影像および第1のY軸柱状体Py1のXY平面への正射影像が、XY座標系の第1象限に位置し、第3のX軸柱状体Px3のXY平面への正射影像および第2のY軸柱状体Py2のXY平面への正射影像が、XY座標系の第2象限に位置し、第4のX軸柱状体Px4のXY平面への正射影像および第4のY軸柱状体Py4のXY平面への正射影像が、XY座標系の第3象限に位置し、第2のX軸柱状体Px2のXY平面への正射影像および第3のY軸柱状体Py3のXY平面への正射影像が、XY座標系の第4象限に位置する配置をとることを前提とするものである。
【0210】
また、この図26のテーブルに示す結果は、第1〜第4のX軸柱状体Px1〜Px4は、下端よりも上端の方が、XZ平面に近くなるように傾斜し、第1〜第4のY軸柱状体Py1〜Py4は、下端よりも上端の方が、YZ平面に近くなるように傾斜している構成(別言すれば、正面や側面から見たときに、一対の柱状体が逆V字型に傾斜している構成)を前提とするものである。もちろん、これと逆の構成、すなわち、第1〜第4のX軸柱状体Px1〜Px4は、上端よりも下端の方が、XZ平面に近くなるように傾斜し、第1〜第4のY軸柱状体Py1〜Py4は、上端よりも下端の方が、YZ平面に近くなるように傾斜している構成(別言すれば、正面や側面から見たときに、一対の柱状体がV字型に傾斜している構成)を採ることも可能である。この場合、図26のテーブルにおけるいくつかの欄の符号は逆転する。
【0211】
さて、この図26のテーブルに示す結果を踏まえれば、8個の容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4の静電容量値(すなわち、8枚の下方膜部のZ軸方向への変位)に基づいて、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzを独立して検出することが可能になることがわかる。すなわち、8組の静電容量値Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4に基づく演算により、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzを算出することができる。
【0212】
ただ、そのような演算を容易にする上では、装置の機械的構造部分に幾何学的な対称性を確保しておくのが好ましい。実際、図示した装置では、このような対称性が維持されている。すなわち、図8に示す装置の場合、上方基板100および下方基板200ならびに8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4によって構成される主構造体は、XZ平面に関して面対称をなし、かつ、YZ平面に関しても面対称をなしている。これは、別言すれば、8本の柱状体と、8枚の上方膜部と、8枚の下方膜部とによって構成される構造体が、XZ平面に関して面対称をなし、かつ、YZ平面に関しても面対称をなしていることを意味し、幾何学的な対称性をもった2通りの外力を作用させた場合、構造体に生じる変形態様も幾何学的な対称性をもつことを意味する。
【0213】
たとえば、力+Fxを作用させた場合の変形状態と、力−Fxを作用させた場合の変形状態とは、YZ平面に関して鏡像関係になる。また、力+Fxを作用させた場合の変形状態は、力+Fyを作用させた場合の変形状態を、Z軸まわりに90°回転させたものに一致する。なお、図示の装置では、補助基板300についても、同様の幾何学的な対称性が確保されているが、補助基板300は、固定電極を支持する役割を果たす構造体であり、8枚の固定電極について上記対称性が確保できれば、補助基板300自体は対称性を有していなくてもかまわない。
【0214】
このような幾何学的な対称性が確保されていると、図26のテーブルにおいて、少なくとも同一の行に所属する欄の「Δ」や「δ」の絶対値は互いに等しくなる。また、「+Fx」の行に所属する欄の「Δ」の絶対値と「+Fy」の行に所属する欄の「Δ」の絶対値とが等しくなり、「+Mx」の行に所属する欄の「Δ」や「δ」の絶対値と「+My」の行に所属する欄のこれらの絶対値とが等しくなる。したがって、図27に示す演算によって、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出値V(Fx)*,V(Fy)*,V(Fz),V(Mx),V(My),V(Mz)を得ることができる。ここで、*印のついた検出値V(Fx)*,V(Fy)*は、δ=0とした場合の近似値である。
【0215】
以下、この図27に示す各演算式によって、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出値が得られることを説明する。まず、力Fxの検出値(近似値)V(Fx)*は、「(Cy1−Cy2)+(Cy3−Cy4)」なる式に基づく演算で得ることができる。すなわち、図26のテーブルにおいて、「+Fx」の行に所属する欄について、上記式に基づく演算を行えば、値「4Δ」が得られ、これが作用した力Fxを示すものになる。演算値が正であれば、+Fxが作用したことを示し、負であれば、−Fxが作用したことを示す。ここで、δ=0とすれば、「+Fx」以外の他の5行に所属する欄について、上記式に基づく演算をそれぞれ行っても、いずれの結果も0になる。これは、上記演算式によって得られる検出値V(Fx)*が、δ=0との前提であれば、作用した力のFx成分のみを含む値になることを示す。
【0216】
同様に、力Fyの検出値(近似値)V(Fy)*は、「(Cx1−Cx2)+(Cx3−Cx4)」なる式に基づく演算で得ることができる。その理由も、図26のテーブルにおいて、「+Fy」の行に所属する欄について、上記式に基づく演算を行った結果をみれば、容易に理解できよう。この演算値も、δ=0との前提であれば、作用した力のFy成分のみを含む値になる。
【0217】
一方、力Fzの検出値は、「−(Cx1+Cx2+Cx3+Cx4+Cy1+Cy2+Cy3+Cy4)」なる演算式1、または「−(Cx1+Cx2+Cx3+Cx4)」なる演算式2、または「−(Cy1+Cy2+Cy3+Cy4)」なる演算式3に基づく演算で得ることができる。上記演算式1は、8個の容量素子すべての容量変動値の総和を求めて符号を逆転させる演算を示す。図26のテーブルにおける「+Fz」の行に所属する欄は、いずれも「−Δ」であるから、これらの総和をとって符号を逆転させれば「8Δ」なる値が得られる。これが作用した力Fzを示す値であり、演算値が正であれば、+Fzが作用したことを示し、負であれば、−Fzが作用したことを示す。
【0218】
ここで、「+Fz」以外の他の5行に所属する欄について、上記式に基づく演算をそれぞれ行っても、いずれの結果も0になる(この場合、δ=0である必要はない)。これは、上記演算式によって得られる検出値V(Fz)は、作用した力のFz成分のみを含む値になることを示す。なお、演算式1の代わりに、演算式2もしくは3を用いた演算でも同様の結果が得られる。ただ、演算式1を用いた演算結果が最も高い精度を示すものと考えられるので、実用上は、演算式1を用いるのが好ましい。
【0219】
次に、モーメントMxの検出値は、「(Cy3+Cy4)−(Cy1+Cy2)」なる式に基づく演算で得ることができる。すなわち、図26のテーブルにおいて、「+Mx」の行に所属する欄について、上記式に基づく演算を行えば、値「4Δ」が得られ、これが作用したモーメントMxを示すものになる。演算値が正であれば、+Mxが作用したことを示し、負であれば、−Mxが作用したことを示す。ここで、「+Mx」以外の他の5行に所属する欄について、上記式に基づく演算をそれぞれ行っても、いずれの結果も0になる(この場合、δ=0である必要はない)。これは、上記演算式によって得られる検出値V(Mx)が、作用した力のFx成分のみを含む値になることを示す。
【0220】
同様に、モーメントMyの検出値V(My)は、「(Cx1+Cx2)ー(Cx3+Cx4)」なる式に基づく演算で得ることができる。その理由も、図26のテーブルにおいて、「+My」の行に所属する欄について、上記式に基づく演算を行った結果をみれば、容易に理解できよう。この演算値も、作用した力のMy成分のみを含む値になる。
【0221】
最後に、モーメントMzの検出値は、「(Cx1−Cx2)+(Cx4−Cx3)+(Cy2−Cy1)+(Cy3−Cy4)」なる式に基づく演算で得ることができる。すなわち、図26のテーブルにおいて、「+Mz」の行に所属する欄について、上記式に基づく演算を行えば、値「8Δ」が得られ、これが作用したモーメントMzを示すものになる。演算値が正であれば、+Mzが作用したことを示し、負であれば、−Mzが作用したことを示す。ここで、「+Mz」以外の他の5行に所属する欄について、上記式に基づく演算をそれぞれ行っても、いずれの結果も0になる(この場合、δ=0である必要はない)。これは、上記演算式によって得られる検出値V(Mz)が、作用した力のMz成分のみを含む値になることを示す。
【0222】
結局、図8に示す力検出装置において、検出回路500に、8個の容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4の静電容量変動値を電気信号として検出し、これら電気信号を用いて、上述の各演算式に基づく演算を行い、これら演算結果として得られる値に対応する信号値を、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出値として求める機能をもたせておけば、この検出回路500から各検出値を出力させることができる。具体的には、たとえば、各容量素子の静電容量値を電圧値に変換するC/V変換器と、これら電圧値に対して加算や減算を行うアナログ演算器とによって、検出回路500を構成することができる。もちろん、アナログ演算器の代わりに、デジタル演算器やマイクロプロセッサを用いるようにしてもよい。
【0223】
既に述べたとおり、図26のテーブルにおける「δ」は、「Δ」に比べて小さい変動量を示すものであるから、近似的にδ=0とする取り扱いを行うことが可能である。図27に示す演算式のうち、V(Fx)*およびV(Fy)*は、このような取り扱いを前提として得られる近似値である。ただ、より高精度の検出を得る必要がある場合には、次のような方法で、正確な検出値を得ることができる。
【0224】
まず、実際の装置を用いて、作用点QにモーメントMyのみを作用させる実験を行う。具体的には、図24に示すように、作用点Qを円弧軌道Tに沿って移動させるような力を作用させることになる。たとえば、Y軸を中心軸とした回転力を作用させる何らかの駆動装置を用意し、当該回転力を作用点Qに作用させればよい。そして、このとき、各容量素子の静電容量値を測定し、図27の演算式によって、検出値V(My)およびV(Fx)*を求める。図28に示すグラフは、このような実験結果を示すグラフである。グラフの横軸は、実験的に作用させたモーメントMyの実際の値を示し、グラフの縦軸は、このときに得られた検出値(図27の式に基づく演算値)を示す。実線で示す右上がりのグラフは、演算値V(My)の値を示し、破線で示す右下がりのグラフは、演算値V(Fx)*の値を示す。
【0225】
この実験では、モーメントMyのみを作用させているのであるから、本来であれば、実線グラフで示すMyの検出値のみが出力され、破線のグラフで示すFxの検出値は出力されるべきではない。それにもかかわらず、Fxの検出値が出力されるのは、実際には「δ=0」ではないためである。別言すれば、演算値V(Fx)*には、力Fxの検出成分のみならず、モーメントMyの検出成分が含まれており、他軸干渉が生じていることになる。そして、上記実験によって得られた図28の破線のグラフは、モーメントMyの検出成分を示すものに他ならない。
【0226】
したがって、力Fxの成分のみを正確に求めるためには、演算値V(Fx)*から、モーメントMyの検出成分(すなわち、図28の破線のグラフで示される成分)を除外する演算を行えばよい。
【0227】
ところで、図28に示されているように、本発明に係る力検出装置の場合、極端に大きな力が作用して、極端に大きな変形が生じない限り、6つの力の検出値は、ほぼ線形な出力が得られる。これは、図28に示す実線のグラフを利用して、破線のグラフが得られることを意味している。すなわち、図28に一点鎖線で示す特定のモーメントMyを作用させたときに得られる演算値V(My),V(Fx)*の値を、それぞれk1,k2(図28の例の場合、k1は正、k2は負になる)とすれば、任意のモーメントMyを作用させたとき、演算値V(My),V(Fx)*の比は、k1:k2になる。したがって、あらかじめ実験によって、k1,k2を係数として求めておけば、任意のモーメントMyが作用しているときに、得られたV(Fx)*内に含まれるモーメントMyの検出成分(モーメントMyに起因して生じる他軸干渉成分)の絶対値は、k2/k1・V(My)で与えられることになる。
【0228】
よって、この他軸干渉成分を除去した正確な力Fxの検出値V(Fx)は、図29に示すように、
V(Fx)=V(Fx)*−k2/k1・V(My)
なる演算によって求めることができる。同様に、任意のモーメントMxを作用させたときの演算値V(Mx),V(Fy)*の比「k3:k4」を実験によって求めておけば、多軸干渉成分を除去した正確な力Fyの検出値V(Fy)は、
V(Fy)=V(Fy)*−k4/k3・V(Mx)
なる演算によって求めることができる。なお、係数k1〜k4は、上述したように、実際の装置を用いた実験によって求めることができるが、その代わりに、有限要素法などを利用したコンピュータシミュレーションによって求めることも可能である。
【0229】
結局、力Fxおよび力Fyの正確な値を求めるには、実験やコンピュータシミュレーションによって、予め係数k1〜k4を求めておき、検出回路500に、これら係数を用いて、
V(Fx)=(Cy1−Cy2)+(Cy3−Cy4)
−k2/k1・V(My)
V(Fy)=(Cx1−Cx2)+(Cx3−Cx4)
−k4/k3・V(Mx)
なる式に基づく演算を実行させ、これら演算結果に対応する信号値を、力Fx,力Fyの正確な検出値として出力させるようにすればよい。
【0230】
なお、本発明に係る装置を工業製品として提供する際に、製品仕様書などに原点Oの正確な位置を記載する必要がある場合には、実際の装置を用いた実測により、原点Oの正確な位置を求めればよい。具体的には、たとえば、図3に示す装置における上方基板10の上面中心位置に、垂直に立てるように作用棒を接合する。そして、この作用棒の高さh(上方基板10の上面を基準h=0としたときの高さ)の位置に作用点を定義し、この作用点に、X軸方向を向いた一定の力(たとえば、10Nの力)を加える実験を行う。この場合、X軸方向の力Fxの検出値は、作用点の高さhに係わらず一定になるが、Y軸まわりのモーメントMyの検出値は、作用点の高さhに応じて線形に変化する(hが大きくなればなるほど、検出値の絶対値も大きくなる)。そこで、複数通りの高さhについて、それぞれモーメントMyの検出値を求め、hとMyとの線形関係を示すグラフを作成し、このグラフから、My=0となるような高さh(上方基板10より下方に位置するので、負の値になる)を外挿すれば、Z軸上の当該高さhに対応する位置が、当該装置についての原点Oということになる。
【0231】
<<< §5. 本発明に係る力検出装置の変形例 >>>
ここでは、これまで§2〜§4で述べてきた本発明に係る力検出装置の種々の変形例を述べる。
【0232】
<5−1:環状溝を用いた変形例>
§3で述べた実用的実施形態では、上方基板100や下方基板200の各柱状体との接続位置に、上方溝Gx1〜Gx4,Gy1〜Gy4や下方溝Hx1〜Hx4,Hy1〜Hy4を形成し、個々の上方溝の底部によって上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4を形成し、個々の下方溝の底部によって下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4を形成していた。ここで述べる変形例は、これら個別の溝を相互に連結して環状溝を形成するものである。
【0233】
図30は、図10の上方基板100の変形例となる上方基板110を示す上面図である。図示のとおり、上方基板110の下面には、8本の柱状体の接続位置を連結するように、上方環状溝GGが形成されている。この上方環状溝GGは、いわば図10に示す8個の上方溝Gx1〜Gx4,Gy1〜Gy4を連結した円環状の溝である。溝の底部に、突起部bx1〜bx4,by1〜by4が形成され、これら突起部に各柱状体の上端が接合される点は、§3で述べた実施形態と同様である。この変形例では、上方環状溝GGが形成された円環状の領域全体が、可撓性をもった上方膜部を形成することになるが、特に、各突起部bx1〜bx4,by1〜by4の周辺部分が、上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4として機能することになる。
【0234】
もちろん、上方環状溝GGを上方基板110の上面に形成してもかまわない。要するに、この変形例では、上方基板110の上面側もしくは下面側に、各柱状体の接続位置を連結する上方環状溝GGが形成されており、この上方環状溝GGの底部の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸上方膜部Bx1〜Bx4および第1〜第4のY軸上方膜部By1〜By4が形成されていればよい。
【0235】
一方、図31は、図12の下方基板200の変形例となる下方基板210を示す上面図である。図示のとおり、下方基板210の上面には、8本の柱状体の接続位置を連結するように、下方環状溝HHが形成されている。この下方環状溝HHは、いわば図12に示す8個の下方溝Hx1〜Hx4,Hy1〜Hy4を連結した円環状の溝である。溝の底部に、突起部dx1〜dx4,dy1〜dy4が形成され、これら突起部に各柱状体の下端が接合される点は、§3で述べた実施形態と同様である。この変形例では、下方環状溝HHが形成された円環状の領域全体が、可撓性をもった下方膜部を形成することになるが、特に、各突起部dx1〜dx4,dy1〜dy4の周辺部分が、下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4として機能することになる。
【0236】
もちろん、下方環状溝HHを下方基板210の下面に形成してもかまわない。要するに、この変形例では、下方基板210の上面側もしくは下面側に、各柱状体の接続位置を連結する下方環状溝HHが形成されており、この下方環状溝HHの底部の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸下方膜部Dx1〜Dx4および第1〜第4のY軸下方膜部Dy1〜Dy4が形成されていればよい。
【0237】
また、図32は、図14の補助基板300の変形例となる補助基板310を示す上面図である。図示のとおり、補助基板310の上面には、8本の柱状体の接続位置を連結するように、補助環状溝KKが形成されている。この補助環状溝KKは、いわば図14に示す8個の補助溝Kx1〜Kx4,Ky1〜Ky4を連結した円環状の溝である。溝の底面に、固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4が形成される点は、§3で述べた実施形態と同様である。
【0238】
要するに、この変形例では、補助基板310の上面ににおける第1〜第4のX軸下方膜部Dx1〜Dx4の下方位置および第1〜第4のY軸下方膜部Dy1〜Dy4の下方位置を連結するような環状補助溝KKが形成されており、この環状補助溝KKの底面に第1〜第4のX軸固定電極Ex1〜Ex4および第1〜第4のY軸固定電極Ey1〜Ey4が形成されていればよい。
【0239】
<5−2:可撓性基板を用いた変形例>
これまで述べた実施形態では、上方基板や下方基板に溝を掘り、この溝の底部として、可撓性をもった上方膜部や下方膜部を形成していた。ここで述べる変形例は、上方基板や下方基板を、全体として可撓性をもった基板によって構成し、この可撓性基板の一部を、これまで述べた実施形態における上方膜部や下方膜部として利用するものである。
【0240】
図33は、このような可撓性基板を用いた本発明の変形例に係る力検出装置を示す正面図である。この変形例に係る装置の基本動作は、図8に示す実用的な実施形態に係る装置と全く同じであり、8本の柱状体の変位に基づいて、6つの力成分の検出を行うことができる。
【0241】
ただ、8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の上端は、可撓性基板からなる上方基板150の下面に直接接続されており、下端は、可撓性基板からなる下方基板250の上面に直接接続されている。ここで、上方基板150および下方基板250は、図34の斜視図に示すとおり、円盤状の基板であり、その厚みは、全体として可撓性基板となる程度の寸法に設定されている。たとえば、アルミニウムやステンレスによって上方基板150および下方基板250を構成する場合は、厚みを3.0mm以下にすれば、一般的な力検出装置の動作に支障ない程度の可撓性を確保することができる。
【0242】
図35は、図33に示す力検出装置における下方基板250およびその上面に取り付けられた8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4を示す平面図である。ここで、図のハッチング部分は、各柱状体の上端面を示すものであり、断面を示すものではない。
【0243】
図35において、下方基板250は全体的に可撓性を有している基板であるが、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4に変位が生じた場合、下方基板250のうち、柱状体の下端が接続された部分が最も大きく撓みを生じることになる。したがって、この可撓性基板250(下方基板)における各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の下端が接続された各部分の近傍が、それぞれ第1〜第4のX軸下方膜部Dx1〜Dx4および第1〜第4のY軸下方膜部Dy1〜Dy4として機能することになる。同様に、可撓性基板150(上方基板)における各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の上端が接続された各部分の近傍が、それぞれ第1〜第4のX軸上方膜部Bx1〜Bx4および第1〜第4のY軸上方膜部By1〜By4として機能することになる。
【0244】
また、図33の正面図に示されているとおり、この変形例の装置の場合、上方基板150の上面の中心部分に連結部材130が固着され、この連結部材130の上方に、検出対象となる力を受けるための受力体120が接合されている。これは、上方基板150が可撓性基板であるため、検出対象となる外力を上方基板150に対して直接加えると、上方基板150自身に生じる撓みが外力の影響を直接受け、正確な測定を阻む要因となる可能性があるためである。図示のような受力体120を設け、検出対象となる外力を、受力体120に作用させてから、連結部材130を介して上方基板150に伝播させる構造をとることにより、より正確な測定が可能になる。
【0245】
なお、連結部材130は、必ずしも上方基板150の中心部分に設ける必要はない。要するに、上方基板150のうち、実質的に第1〜第4のX軸上方膜部Bx1〜Bx4として機能する部分および実質的に第1〜第4のY軸上方膜部By1〜By4として機能する部分を除いた、上面の所定箇所に、連結部材130を固着し、この連結部材130の上方に、検出対象となる力を受けるための受力体120を接合する構造をとればよい。
【0246】
同様に、この変形例の装置の場合、下方基板150下面の中心部分にスペーサ部材330が固着され、このスペーサ部材330の下方に、固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4を支持するための補助基板340が接合されている。これも、下方基板250が可撓性基板であるため、下方基板250自身に生じる撓みが補助基板340によって阻害されないようにするためである。図示のとおり、スペーサ部材330を介して補助基板340を下方基板250に接合する構造をとることにより、より正確な測定が可能になる。
【0247】
なお、スペーサ部材330は、必ずしも下方基板250の中心部分に設ける必要はない。要するに、下方基板250のうち、実質的に第1〜第4のX軸下方膜部Dx1〜Dx4として機能する部分および実質的に第1〜第4のY軸下方膜部Dy1〜Dy4として機能する部分を除いた、下面の所定箇所に、スペーサ部材330を固着し、このスペーサ部材330の下方に、補助基板340を固着し、この補助基板340の上面に第1〜第4のX軸固定電極Ex1〜Ex4および第1〜第4のY軸固定電極Ey1〜Ey4を形成する構造をとればよい。
【0248】
なお、図33に示す変形例において、1本の柱状体の上端もしくは下端がZ軸方向に変位した場合、上方基板150や下方基板250が十分な可撓性をもつ基板であれば、当該Z軸方向への変位に起因して生じる基板の撓みは、当該柱状体の接続部近傍のみで済む。しかしながら、実際には、金属などで上方基板150や下方基板250を構成した場合、1本の柱状体の変位に起因する撓みが、隣接する柱状体の接続部近傍まで波及する可能性がある。そのような現象が生じると、1つのセンサが、隣接する柱状体の変位までも検出してしまうことになり、正確な測定ができなくなる。
【0249】
このような弊害を防止するには、可撓性基板にスリットを形成し、1本の柱状体の変位に起因する撓みが、隣接する柱状体の接続部近傍まで波及することを阻止すればよい。
【0250】
図36は、図34に示す上方基板(可撓性基板)150および下方基板(可撓性基板)250の代わりに用いる上方基板(可撓性基板)160および下方基板(可撓性基板)260を示す上面図である。図示のとおり、上方基板160および下方基板260の外形は、正方形に近い形となっているが、この外形形状の相違は重要な相違ではない。上方基板160および下方基板260の重要な特徴は、スリットS1〜S4を有している点にある。スリットS1,S3は、配置軸W1に沿って基板の外周側から中心部に向かって形成されているスリットであり、スリットS2,S4は、配置軸W2に沿って基板の外周側から中心部に向かって形成されているスリットである。ここで、配置軸W1,W2は、いずれもX軸もしくはY軸に対して45°の角度をなす軸である。
【0251】
図36に示されている太い破線の円は、上方基板160に対する8本の柱状体の接続位置を示し、細い破線の円は、下方基板260に対する8本の柱状体の接続位置を示している。図示のとおり、上方基板160および下方基板260は、いずれも4枚の翼状部J1〜J4と、これら翼状部J1〜J4を中心位置で束ねる中心部J9によって構成されており、スリットS1〜S4は、各翼状部J1〜J4の輪郭として機能している。
【0252】
ここで、第1のX軸柱状体Px1および第2のX軸柱状体Px2は、いずれも翼状部J1上に配置され、第3のX軸柱状体Px3および第4のX軸柱状体Px4は、いずれも翼状部J2上に配置されている。同様に、第1のY軸柱状体Py1および第2のY軸柱状体Py2は、いずれも翼状部J3上に配置され、第3のY軸柱状体Py3および第4のY軸柱状体Px4は、いずれも翼状部J4上に配置されている。各翼状部J1〜J4は、スリットS1〜S4によって物理的に分離されているため、1つの翼状部に生じた撓みが、隣接する翼状部に伝播することを阻止することができる。このため、1つのセンサが、隣接する柱状体の変位までも検出してしまうことにより生じる誤差を抑制できる。
【0253】
要するに、この変形例では、第1のX軸上方/下方膜部および第2のX軸上方/下方膜部を含む領域(翼状部J1)と、第3のX軸上方/下方膜部および第4のX軸上方/下方膜部を含む領域(翼状部J2)と、第1のY軸上方/下方膜部および第2のY軸上方/下方膜部を含む領域(翼状部J3)と、第3のY軸上方/下方膜部および第4のY軸上方/下方膜部を含む領域(翼状部J4)と、の4つの領域を可撓性基板160,260上に定義したときに、これら4つの領域の境界に沿って、可撓性基板の外周側から中心部に向かってスリットS1〜S4を形成する構成をとればよい。
【0254】
なお、たとえば、翼状部J1上には、第1のX軸柱状体Px1および第2のX軸柱状体Px2が配置されているが、これら一対の柱状体は、XZ平面に関して幾何学的対称性を維持しているので、一方の柱状体に起因して生じた撓みが他方の柱状体の配置領域へ波及したとしても、大きな誤差を生じる要因にはならない。もちろん、必要なら、更に、X軸およびY軸に沿って4本のスリットを形成し、8本の柱状体を、8枚の翼状部に接続する構成をとってもかまわない。
【0255】
<5−3:可撓性柱状体を用いた変形例>
これまで述べた実施形態では、「各柱状体自身は撓みを生じない」という前提で説明を行ってきたが、本発明を実施する上で、各柱状体に可撓性をもたせることも可能である。ここで述べる変形例は、可撓性柱状体を用いて装置を構成した例である。
【0256】
図37は、可撓性をもった柱状体PPの一例を示す斜視図である。図示のとおり、この柱状体PPは、上部PP1,くびれ部PP2,下部PP3によって構成されている。くびれ部PP2は、上部PP1や下部PP3に比べて径を小さくすることにより、可撓性をもたせた部分である。この柱状体PPの上端および下端に対して、柱状体PPを変形させる外力が作用すると、専ら、このくびれ部PP2に変形が生じ、柱状体PPが屈曲することになる。
【0257】
このように、可撓性をもった柱状体PPを用いると、上方膜部を省略することができる。図38は、この柱状体PPを用いた変形例に係る力検出装置を示す縦断面図である。この図38に示す変形例は、図8に示す実用的実施形態についての変形例であり、図38の縦断面図は、図19の縦断面図(C−C断面図)に対応するものである。図19と図38とを比較すると、前者における8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4が、後者では、図37に示すようなくびれ部をもった8本の柱状体PPx1〜PPx4,PPy1〜PPy4に置き換わっていることがわかる。また、前者における上方溝Gx1〜Gx4,Gy1〜Gy4が、後者では形成されていないことがわかる。
【0258】
すなわち、図38に示す変形例における上方基板105は、何ら溝が形成されていない1枚の円盤であり、8本の柱状体PPx1〜PPx4,PPy1〜PPy4の上端は、この円盤の下面に直接接続されていることになる。別言すれば、図38に示す変形例では、上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4が設けられていない。これは、可撓性をもつ8本の柱状体PPx1〜PPx4,PPy1〜PPy4が、それぞれ上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4の役割を果たすことができるためである。一方、下方基板200については、容量素子によってセンサを構成する必要があるため、下方膜部Dx1〜Dx4,Dy1〜Dy4は必要になる。
【0259】
なお、図37に示す柱状体PPは、その一部(くびれ部PP2)に可撓性を持たせて、外力が作用したときに変形するようにしたものであるが、柱状体の全部に可撓性をもたせるようにしてもよい。すなわち、柱状体全体を可撓性をもった材質によって構成すれば、外力が作用したときに、柱状体全体が変形することになる。たとえば、弾性プラスチックなどの材料で構成した柱状体Tを用いるようにすれば、くびれ部を設けることなしに、柱状体自体に可撓性をもたせることが可能である。
【0260】
図39は、図38に示す8本の柱状体PPx1〜PPx4,PPy1〜PPy4を、弾性プラスチックなどの材料で構成した柱状体Tx1〜Tx4,Ty1〜Ty4に置き換えたものである。この場合も、柱状体Tx1〜Tx4,Ty1〜Ty4自身が可撓性を有しているため、上方膜部Bx1〜Bx4,By1〜By4の役割を果たすことができる。したがって、上方基板105としては、何ら溝が形成されていない1枚の円盤を用いることができる。
【0261】
図40は、図33に示す変形例について、8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4を、弾性プラスチックなどの材料で構成した柱状体Tx1〜Tx4,Ty1〜Ty4に置き換えたものである(もちろん、図37に示す柱状体PPに置き換えてもよい)。図33と図40とを比較すると、前者における上方基板150,連結部材130,受力体120が、後者では1枚の上方基板170に置き換えられていることがわかる。ここで、上方基板170は可撓性を有している必要はなく、外力を直接受けることができる。これは、可撓性を有する柱状体Tx1〜Tx4,Ty1〜Ty4が、上方基板150の役割を果たすためである。
【0262】
<5−4:任意形状の構造体を用いた変形例>>>
これまで述べてきた実施形態は、いずれも上方基板と下方基板との間に複数の柱状体を渡す構造をとっていた。しかしながら、本発明を実施する上で、柱状体の上下を支持する構造体は、必ずしも基板状の構造体である必要はなく、任意形状の構造体であってかまわない。
【0263】
たとえば、§2で述べた本発明の基本的実施形態に係る力検出装置では、2本の柱状体P1,P2を、上方基板10と下方基板20との間に挟み込む構造を採っているが、上方基板10や下方基板20は、必ずしも基板状の構造体である必要はなく、任意形状の構造体に置き換えてもかまわない。
【0264】
要するに、この基本的実施形態に係る力検出装置は、上下方向に定義されたZ軸に対して所定方向に傾斜するように配置された第1の柱状体および第2の柱状体と、第1の柱状体および第2の柱状体の上方に配置された上方構造体と、第1の柱状体および第2の柱状体の下方に配置された下方構造体と、第1の柱状体および第2の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、を備えていればよい。
【0265】
そして、各柱状体の上端が、上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、各柱状体の下端が、下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合されており、第1の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像が、Z軸に対して第1の方向に傾斜しており、第2の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像が、Z軸に対して第1の方向とは逆の第2の方向に傾斜していればよい。
【0266】
また、上記構造において、「下方構造体」の少なくとも一部分および「上方構造体、第1の柱状体、第2の柱状体、およびこれら相互の接続部分」の少なくとも一部分が可撓性を有しているようにすれば、下方構造体の所定位置を固定した状態において、上方構造体に外力が作用した場合に、各柱状体の傾斜状態が変化して上方構造体が変位を生じることができる。そこで、検出部に、第1の柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のセンサと、第2の柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のセンサと、を設けておけば、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との差を示す電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力することができる。また、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との和を示す電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力することができる。
【0267】
各センサとして、容量素子を利用する場合には、下方構造体の下方に所定間隔をおいて固定された補助基板を更に設け、第1のセンサが、下方構造体における第1の柱状体の下端が接合された位置に形成された第1の変位電極と、補助基板の上面における第1の変位電極に対向する位置に固定された第1の固定電極と、からなる第1の容量素子によって構成されるようにし、第2のセンサが、下方構造体における第2の柱状体の下端が接合された位置に形成された第2の変位電極と、補助基板の上面における第2の変位電極に対向する位置に固定された第2の固定電極と、からなる第2の容量素子によって構成されるようにすればよい。このとき、下方構造体を導電性材料から構成しておけば、下方構造体における第1の柱状体の下端が接合された部分を第1の変位電極として機能させ、下方構造体における第2の柱状体の下端が接合された部分を第2の変位電極として機能させることができる。
【0268】
一方、§3で述べた本発明の実用的実施形態に係る力検出装置では、8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4を、上方基板100と下方基板200との間に挟み込む構造を採っているが、この場合も、上方基板100や下方基板200は、必ずしも基板状の構造体である必要はなく、任意形状の構造体に置き換えてもかまわない。
【0269】
要するに、この実用的実施形態に係る力検出装置は、XY平面に平行な平面上に広がる上方構造体と、XY平面に平行な平面上に広がり、上方構造体の下方に配置された下方構造体と、上端が上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のX軸柱状体および第1〜第4のY軸柱状体と、これら8本の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、を備えていればよい。
【0270】
そして、第1のX軸柱状体の中心軸と第2のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の正の領域においてX軸と直交するX軸正側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、第3のX軸柱状体の中心軸と第4のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の負の領域においてX軸と直交するX軸負側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、第1のY軸柱状体の中心軸と第2のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の正の領域においてY軸と直交するY軸正側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、第3のY軸柱状体の中心軸と第4のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の負の領域においてY軸と直交するY軸負側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しているようにすればよい。
【0271】
ここで、第1のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のX軸センサと、第2のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のX軸センサと、第3のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第3のX軸センサと、第4のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第4のX軸センサと、第1のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のY軸センサと、第2のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のY軸センサと、第3のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第3のY軸センサと、第4のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第4のY軸センサと、を有する検出部を設ければ、各センサの検出値に基づいて得られた電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用した力の検出値として出力することができる。
【0272】
図41は、図33に示す力検出装置における下方基板250の代わりに用いる下方構造体280の上面図である。図示の下方構造体280は、Z軸上に位置する中心部289と、この中心部289から第1〜第4のX軸柱状体の下端への接続位置および第1〜第4のY軸柱状体の下端への接続位置へそれぞれ伸びる8本の可撓性をもった枝状部281〜288と、を有している。ここで、各枝状部281〜288は、X軸もしくはY軸に対して45°をなす配置軸W1もしくはW2に沿って伸びている。また、図に示す破線の円は、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の下端が接続される部分を示している。
【0273】
このような下方構造体280は、たとえば、アルミニウム板やステンレス板に対して切削加工を施すことにより得ることができる。8本の枝状部281〜288は可撓性を有しているため、中心部289を固定した状態において、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4がそれぞれZ軸方向の変位を生じると、各枝状部281〜288はそれぞれ対応する柱状部の変位に応じて独立して撓むことになる。
【0274】
図42は、図33に示す力検出装置における補助基板340の代わりに用いる補助基板380を示す上面図である。図示のとおり、この補助基板380の上面には、8枚の固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4が形成されている(ハッチングは、電極形状を示すためのものである。)。この補助基板380上の8枚の固定電極は、図33に示す補助基板340上の8枚の固定電極とは平面形状は異なっているが、同一の機能を果たすため、便宜上、同一符号Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4で示してある。
【0275】
図42に示す8枚の固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4は、図41に示す8枚の枝状部281〜288に対向する形状をもち、対向する位置に配置された電極である。この実施形態の場合、下方構造体280は導電性材料によって構成されているため、枝状部281〜288はそれ自身が変位電極として機能し、対向する固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4とによって、8組の容量素子が形成される。ここでは、これらの容量素子も、これまでの実施形態と同様に、容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4と呼ぶことにする。
【0276】
図43は、図41に示す下方構造体280および図42に示す補助基板380を用いた変形例を示す縦断面図(XZ平面で切った断面図)である。この変形例の基本的な動作原理は、図33に示す実施形態と同じである。すなわち、受力体125に作用した外力は、連結部材135を介して上方基板155に伝達される。この例の場合、上方基板155は可撓性をもった円盤であり、この上方基板155の下方に、下方構造体280が配置され、両者間に、8本の柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4が接続される。これら8本の柱状体の配置や傾斜状態は、§3で述べた実用的実施形態に係る装置と同様である。下方構造体280の中心部下面には、スペーサ部材335が接合され、その下面には補助基板380が接合されている。
【0277】
ここで、下方構造体280は、図41の上面図に示すように、中心部289から外側へ向かって8本の枝状部281〜288が伸びる構造体であり、補助基板380の上面には、図42の上面図に示すように、各枝状部281〜288に対向する固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4が形成されている。このような構成により、8組の容量素子Cx1〜Cx4,Cy1〜Cy4が、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の下端のZ軸方向の変位を検出するセンサとして機能する。これら8組の容量素子の静電容量値に基づいて、作用した外力の6成分の検出が可能になる点は、既に§4で述べたとおりである。
【0278】
すなわち、図43に示す力検出装置では、第1のX軸柱状体Px1の下端への接続位置へ伸びる枝状部281によって形成された第1のX軸変位電極と、補助基板380の上面における第1のX軸変位電極に対向する位置に固定された第1のX軸固定電極Ex1と、からなる第1のX軸容量素子Cx1によって第1のX軸センサが構成され、第2のX軸柱状体Px2の下端への接続位置へ伸びる枝状部288によって形成された第2のX軸変位電極と、補助基板380の上面における第2のX軸変位電極に対向する位置に固定された第2のX軸固定電極Ex2と、からなる第2のX軸容量素子Cx2によって第2のX軸センサが構成され、第3のX軸柱状体Px3の下端への接続位置へ伸びる枝状部284によって形成された第3のX軸変位電極と、補助基板380の上面における第3のX軸変位電極に対向する位置に固定された第3のX軸固定電極Ex3と、からなる第3のX軸容量素子Cx3によって第3のX軸センサが構成され、第4のX軸柱状体Px4の下端への接続位置へ伸びる枝状部285によって形成された第4のX軸変位電極と、補助基板380の上面における第4のX軸変位電極に対向する位置に固定された第4のX軸固定電極Ex4と、からなる第4のX軸容量素子Cx4によって第4のX軸センサが構成されていることになる。
【0279】
また、第1のY軸柱状体Py1の下端への接続位置へ伸びる枝状部282によって形成された第1のY軸変位電極と、補助基板380の上面における第1のY軸変位電極に対向する位置に固定された第1のY軸固定電極Ey1と、からなる第1のY軸容量素子Cy1によって第1のY軸センサが構成され、第2のY軸柱状体Py2の下端への接続位置へ伸びる枝状部283によって形成された第2のY軸変位電極と、補助基板380の上面における第2のY軸変位電極に対向する位置に固定された第2のY軸固定電極Ey2と、からなる第2のY軸容量素子Cy2によって第2のY軸センサが構成され、第3のY軸柱状体Py3の下端への接続位置へ伸びる枝状部287によって形成された第3のY軸変位電極と、補助基板380の上面における第3のY軸変位電極に対向する位置に固定された第3のY軸固定電極Ey3と、からなる第3のY軸容量素子Cy3によって第3のY軸センサが構成され、第4のY軸柱状体Py4の下端への接続位置へ伸びる枝状部286によって形成された第4のY軸変位電極と、補助基板380の上面における第4のY軸変位電極に対向する位置に固定された第4のY軸固定電極Ey4と、からなる第4のY軸容量素子Cy4によって第4のY軸センサが構成されていることになる。
【0280】
そして、検出部は、第1のX軸容量素子の静電容量変動値Cx1、第2のX軸容量素子の静電容量変動値Cx2、第3のX軸容量素子の静電容量変動値Cx3、第4のX軸容量素子の静電容量変動値Cx4、第1のY軸容量素子の静電容量変動値Cy1、第2のY軸容量素子の静電容量変動値Cy2、第3のY軸容量素子の静電容量変動値Cy3、第4のY軸容量素子の静電容量変動値Cy4に基づいて得られた電気信号を、検出値として出力する。
【0281】
なお、ここでは、下方構造体280が導電性材料から構成され、各枝状部281〜288自身がそれぞれ変位電極として機能する例を述べたが、下方構造体280を非導電性材料から構成した場合は、各枝状部281〜288の下面に変位電極として機能する導電層を形成すればよい。
【0282】
ところで、図41に示すような8本の枝状部を有する下方構造体280を用いると、各柱状体の下端を支持する枝状部281〜288が、それぞれ独立した片持ち梁として機能するため、装置全体の変位自由度が向上し、上方基板155の変位量がかなり大きくなる可能性がある。このような大きな変位状態は、検出誤差を生む要因になり、また、各部に破損を生じさせる要因にもなる。そこで、実用上は、上方基板155の変位を制御する制御部材を設けるのが好ましい。
【0283】
図44は、図43に示す装置を装置筐体460内に収容した状態を示す縦断面図である。この装置筐体460には、上方基板155の変位を制御する制御部材が取り付けられており、上方基板155の過度の変位を抑制することができる。すなわち、図43に示す装置は、装置筐体460内に収容され、補助基板380が装置筐体460の底面に固定される。そして、図43に示す装置における受力体125は、若干、形状の異なる受力体126に交換されている。この受力体126は、基本的には円盤状の部材であるが、その周囲には鍔状部127が設けられている。
【0284】
一方、装置筐体460の上面には、円環状の制御部材470が、ねじ471によって取り付けられている。この制御部材470は、鍔状部127の上面および側面に当接して、受力体126の上方および側方への過度の変位を抑制する機能を果たす。また、装置筐体460の上縁面は、鍔状部127の下面に当接して、受力体126の下方への過度の変位を抑制する機能を果たす。このように、受力体126の過度の変位を抑制することにより、上方基板155の過度の変位を抑制することができる。
【0285】
なお、この図43および図44に示す例は、下方基板を8本の枝状部を有する下方構造体280に置き換えた例であるが、もちろん、上方基板を8本の枝状部を有する上方構造体に置き換えることも可能である。また、図38や図39に示す例における下方基板200,補助基板300を、図41および図42に示す下方構造体280および補助基板380に置き換えることも可能であるし、図40に示す例における下方基板250,補助基板340を、図41および図42に示す下方構造体280および補助基板380に置き換えることも可能である。この他にも、本発明の基本概念を逸脱しない限り、任意の組み合わせが可能である。
【0286】
<5−5:枝状部を有する下方構造体を用いる場合の付加機能>
さて、図41〜図44には、8本の枝状部281〜288を有する下方構造体280を用いる変形例を示したが、このような枝状部を有する構造体を用いた変形例では、これまで述べてきた通常の力検出機能の他に、更に付加的な機能を設けることができる。それは、個々の枝状部が、補助基板380に接するほど大きく変位したことを電気的に検出する機能である。
【0287】
たとえば、図42に示す補助基板380の代わりに、図45に示す補助基板380Aを用いた場合を考えよう。両者の相違は、後者では、各固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4の長さが若干短くなっており、その空き部分に、接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4を設けた点である。図45では、固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4に斜線ハッチングを施し、接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4にグレーハッチングを施して示す(これらのハッチングは、各電極の形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。ここで、各接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4は、各枝状部281〜288を下方へ撓ませたときに、その先端部が接触する位置に配置されている。
【0288】
要するに、補助基板380Aでは、その上面における各枝状部281〜288の先端部に対向する位置のそれぞれに、各固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4とは電気的に絶縁された接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4が設けられていることになる。このような構成を採れば、枝状部の先端部と接触判定用電極との物理的接触の有無を、両者の電気的導通状態に基づいて判定できるようになる。
【0289】
この装置では、検出回路500によって、8組の容量素子の静電容量値をそれぞれ測定するため、各固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4と検出回路500との間に配線を設け、また、共通の変位電極として機能する下面構造体280と検出回路500との間にも配線を設ける必要があるが、それに加えて、各接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4と検出回路500との間にも配線を設けておくようにする。そうすれば、検出回路500は、下面構造体280と各接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4との間の電気的導通状態をチェックすることにより、各枝状部281〜288の先端部と各接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4とが物理的に接触したか否かを判定することができる。
【0290】
たとえば、接触判定用電極ex1と下面構造体280とが電気的に導通した状態が検出できれば、枝状部281の先端部が接触判定用電極ex1に物理的に接触したことを認識することができる。これは、第1のX軸柱状体Px1の下端が下方に大きく変位したことを示し、そのような変位を生じさせる大きな外力が作用したことを示すことになる。そのような大きな外力が作用した場合、正しい検出値を出力することはできないので、たとえば、エラー信号を出力したり、必要であれば、過度の外力による破損の危険性があることを示す警告を発したりする対応をとればよい。
【0291】
図46に示す補助基板380Bは、図45に示す補助基板380Aの変形例である。この変形例は、8個の接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4を、単一の接触判定用環状電極eに置き換えたものである(グレーのハッチングは、この接触判定用環状電極eの形状を示すためのものである)。すなわち、補助基板380Bでは、その上面における各枝状部281〜288の先端部に対向する位置をそれぞれ連結する環状領域に、各固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4とは電気的に絶縁された接触判定用環状電極eが設けられている。この場合、8本の枝状部281〜288のいずれかの先端部が、接触判定用環状電極eに物理的に接触したことを検出できる。どの枝状部281〜288が接触したかを特定する情報は得られないので、どの柱状体が大きく変位したかを認識することはできないが、エラー信号を出力したり警告を発したりする対応をとるのであれば、この図46の構成で十分である。
【0292】
図47に示す補助基板380Cは、図45に示す補助基板380Aの別な変形例である。この変形例では、8個の接触判定用電極ex1〜ex4,ey1〜ey4の代わりに、16個の接触判定用電極ex1a〜ex4b,ey1a〜ey4bが設けられている。いわば、補助基板380A上の各接触判定用電極を、それぞれ2つに分割した形態をとる。
【0293】
この変形例の利点は、下方構造体280側への配線を利用しなくても、大きな外力が作用したことを電気的に検出できる点である。たとえば、第1のX軸柱状体Px1の下端が下方に大きく変位し、枝状部281の先端部が接触判定用電極ex1a,ex1bに接触したとすると、この枝状部281の先端部を介して、一対の接触判定用電極ex1a,ex1bが導通することになる。したがって、この一対の接触判定用電極ex1a,ex1b間の電気的導通状態をチェックするだけで、枝状部281の物理的接触を検知できることになる。他の接触判定用電極対についても同様である。
【0294】
要するに、1つの枝状部の先端部に対向する位置に、互いに絶縁された一対の接触判定用電極を設けることにより、この一対の接触判定用電極の相互間の電気的導通状態に基づいて、枝状部の先端部とこの一対の接触判定用電極との物理的接触の有無を判定できるようになる。
【0295】
図48に示す補助基板380Dは、図46に示す補助基板380Bの変形例である。この変形例では、単一の接触判定用環状電極eの代わりに、一対の接触判定用環状電極ea,ebが設けられている。いわば、補助基板380B上の接触判定用環状電極eが配置されている環状領域に、互いに絶縁された同心状の一対の接触判定用環状電極ea,ebを設けたものに相当する。この場合も、一対の接触判定用環状電極ea,ebの相互間の電気的導通状態に基づいて、枝状部の先端部とこの一対の接触判定用環状電極ea,ebとの物理的接触の有無を判定できるので、下方構造体280側への配線を利用しなくても、大きな外力が作用したことが電気的に検出できる。
【0296】
以上、接触判定用電極を設けて、大きな外力が作用したことを電気的に検出できるようにし、そのような場合にエラー信号を出力したり警告を発したりする対応をとる例を述べたが、逆に、そのような大きな外力が作用した場合にのみ、検出値の出力が行われるような対応をとることも可能である。
【0297】
たとえば、図43に示す力検出装置を、デジタル機器用の入力装置として利用する場合を考えてみよう。すなわち、人間が掌の上にこの装置を載せ、親指を受力体125の上面に置いて何らかの入力操作を行うような場合、親指からは絶えず微小な力が加えられるため、人間が意図的に何らかの入力操作を行わなくても、この装置は、親指から加えられた力を検出することになる。しかしながら、そのような微小な力を、人間から与えられた入力操作を示す信号として出力することは好ましくない。別言すれば、デジタル機器用の入力装置として利用する場合、人間が意図的に何らかの入力操作(具体的には、たとえば、受力体125をX軸正方向もしくは負方向に傾ける操作、または、Y軸正方向もしくは負方向に傾ける操作)を行ったと判断できる程度の大きな外力が作用した場合にのみ、当該入力操作に対応する検出値の出力がなされるようにするべきである。
【0298】
このような用途の場合は、枝状部の先端が接触判定用電極に接触したことが電気的に検出できた場合にのみ、検出値の出力が行われるようにすればよい。なお、このような利用形態を前提とする場合は、下方構造体280側への配線は一切不要である。なぜなら、接触判定用電極(接触判定用環状電極)と枝状部との物理的接触によって形成される導電路を、各変位電極と検出部とを電気的に接続する配線路として利用することができるからである。
【0299】
たとえば、図47に示す補助基板380Cを利用した変形例の場合、第1のX軸柱状体Px1の下端が下方に大きく変位し、枝状部281の先端部が接触判定用電極ex1a,ex1bに接触したとすると、前述したとおり、この枝状部281の先端部を介して、一対の接触判定用電極ex1a,ex1bが導通することになる。したがって、この一対の接触判定用電極ex1a,ex1b間の電気的導通状態をチェックするだけで、枝状部281の物理的接触を検知できる。しかも、枝状部281の先端部が接触判定用電極ex1a,ex1bに接触した状態では、下方構造体280全体が接触判定用電極ex1a,ex1bに導通した状態となっているので、接触判定用電極ex1a,ex1bと検出回路500との間に設けられた配線を、そのまま下方構造体280への配線として利用することができる。したがって、下方構造体280に対して直接的な配線を施さなくても、各容量素子の静電容量値の検出を行うことができる。
【0300】
もちろん、8本の枝状部281〜288のいずれもが接触判定用電極に接触していない場合は、直接的な配線が施されていない下方構造体280は、電気的な浮遊状態におかれることになり、検出回路500は、各容量素子の静電容量値の検出を行うことができない。しかしながら、前述したようなデジタル機器用の入力装置として利用する前提では、そもそも、そのような状態では、検出値の出力を行う必要がないので、何ら支障は生じない。
【0301】
<5−6:枝状部を有する下方構造体の変形例>
ここでは、図41に示す枝状部を有する下方構造体280の変形例を示す。図49は、この変形例に係る下方構造体290の上面図である。図において、破線の直線は、この構造体の各部分の境界を示しており、破線の円は、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4の下端が接続される部分を示している。
【0302】
図示のとおり、この下方構造体290は、中心位置がZ軸と交差する十字架状の中心部299と、この中心部299から第1〜第4のX軸柱状体の下端への接続位置および第1〜第4のY軸柱状体の下端への接続位置へそれぞれ伸びる8本の可撓性をもった枝状部291〜298と、を有している。この変形例では、各枝状部291〜298は、X軸もしくはY軸に平行な方向に伸びる片持ち梁として機能する。
【0303】
この下方構造体290も、たとえば、アルミニウム板やステンレス板に対して切削加工を施すことにより得ることができる。8本の枝状部291〜298は可撓性を有しているため、中心部299を固定した状態において、各柱状体Px1〜Px4,Py1〜Py4がそれぞれZ軸方向の変位を生じると、各枝状部291〜298はそれぞれ対応する柱状部の変位に応じて独立して撓むことになる。この図49に示す下方構造体290は、図41に示す下方構造体280に比べて、製造が容易であるという利点を有している。
【0304】
図41に示す下方構造体280の代わりに、図49に示す下方構造体290を用いる場合には、図42に示す補助基板380の代わりに、図50に示す補助基板390を用いるようにする。この補助基板390の上面には、8枚の固定電極Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4が形成されている(ハッチングは、電極形状を示すためのものである。)。この補助基板390上の8枚の固定電極は、図49に示す8枚の枝状部291〜298に対向する形状をもち、対向する位置に配置された電極であるため、図42に示す8枚の固定電極とは形状や配置が異なっているが、同一の機能を果たすため、便宜上、同一符号Ex1〜Ex4,Ey1〜Ey4で示してある。
【0305】
<5−7:容量素子以外のセンサを用いた変形例>
これまで「各柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出するセンサ」として、容量素子を用いた実施形態について、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzの検出値を得るための具体的な演算方法を述べた。しかしながら、本発明を実施するにあたり、「各柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出するセンサ」は、必ずしも容量素子を用いたセンサである必要はなく、特定部位の変位を何らかの方法で電気的に検出可能なセンサであれば足りる。たとえば、超音波を用いて距離を測定するセンサや、光を用いて距離を測定するセンサなどを利用して、特定部位までの距離の変化を測定するようにすれば、当該特定部位の変位を検出することができる。
【0306】
このように、容量式センサの代わりに、「柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出するセンサ」を用いた場合でも、§4で述べた検出動作によって、6つの力Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mzを検出できる点に変わりはない。
【0307】
すなわち、検出部は、「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fx)*を、作用したX軸方向の力Fxの検出値(近似値)として出力することができ、「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fy)*を、作用したY軸方向の力Fyの検出値(近似値)として出力することができる。
【0308】
また、検出部は、「第1〜第4のX軸センサの検出値の総和」もしくは「第1〜第4のY軸センサの検出値の総和」、または「第1〜第4のX軸センサの検出値の総和と第1〜第4のY軸センサの検出値の総和との和」に対応する信号値V(Fz)を、作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力することができる。
【0309】
一方、モーメントに関しては、検出部は、「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との和」と「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力することができ、「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との和」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力することができる。
【0310】
また、検出部は、「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第4のX軸センサの検出値と第3のX軸センサの検出値との差」と「第2のY軸センサの検出値と第1のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Mz)を、作用したZ軸まわりのモーメントMzの検出値として出力することができる。
【0311】
更に、より正確な検出値を得る必要がある場合、検出部は、「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fx)*と、「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fy)*とを求め、所定の係数k1〜k4を用いて、V(Fx)*−k2/k1・V(My)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、V(Fy)*−k4/k3・V(Mx)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力することができる。
【符号の説明】
【0312】
10:上方基板
11:第1の上方膜部
12:第2の上方膜部
13:突起部
14:突起部
15:上方基板
20:下方基板
21:第1の下方膜部
22:第2の下方膜部
23:突起部
24:突起部
25:下方基板
30:補助基板
35:補助基板
41:第1の柱状体
42:第2の柱状体
50:検出回路
100,105,110:上方基板
120,125,126:受力体
127:鍔状部
130,135:連結部材
150,155:上方基板(可撓性基板)
160:上方基板(可撓性基板)
170:上方基板
200,210:下方基板
250:下方基板(可撓性基板)
260:下方基板(可撓性基板)
280:下方構造体
281〜288:枝状部
289:中央部
290:下方構造体
291〜298:枝状部
299:中央部
300,310:補助基板
330,335:スペーサ部材
340:補助基板
380:補助基板
380A〜380D:補助基板
390:補助基板
410〜450:ガイド部材
460:装置筐体
470:制御部材
471:ねじ
500:検出回路
A:切断位置
A1,A2:柱状体の中心軸
Ax1〜Ax4:領域
Ay1〜Ay4:領域
B:切断位置
Bx1:第1のX軸上方膜部
Bx2:第2のX軸上方膜部
Bx3:第3のX軸上方膜部
Bx4:第4のX軸上方膜部
By1:第1のY軸上方膜部
By2:第2のY軸上方膜部
By3:第3のY軸上方膜部
By4:第4のY軸上方膜部
bx1〜bx4:突起部
by1〜by4:突起部
C:切断位置
Cx1:第1のX軸容量素子(その静電容量変動値)
Cx2:第2のX軸容量素子(その静電容量変動値)
Cx3:第3のX軸容量素子(その静電容量変動値)
Cx4:第4のX軸容量素子(その静電容量変動値)
Cy1:第1のY軸容量素子(その静電容量変動値)
Cy2:第2のY軸容量素子(その静電容量変動値)
Cy3:第3のY軸容量素子(その静電容量変動値)
Cy4:第4のY軸容量素子(その静電容量変動値)
Dx1:第1のX軸下方膜部
Dx2:第2のX軸下方膜部
Dx3:第3のX軸下方膜部
Dx4:第4のX軸下方膜部
Dy1:第1のY軸下方膜部
Dy2:第2のY軸下方膜部
Dy3:第3のY軸下方膜部
Dy4:第4のY軸下方膜部
dx1〜dx4:突起部
dy1〜dy4:突起部
E1〜E6:固定電極
Ex1:第1のX軸固定電極
Ex2:第2のX軸固定電極
Ex3:第3のX軸固定電極
Ex4:第4のX軸固定電極
Ey1:第1のY軸固定電極
Ey2:第2のY軸固定電極
Ey3:第3のY軸固定電極
Ey4:第4のY軸固定電極
ex1〜ex4:接触判定用電極
ex1a〜ex4a:接触判定用電極
ex1b〜ex4b:接触判定用電極
ey1〜ey4:接触判定用電極
ey1a〜ey4a:接触判定用電極
ey1b〜ey4b:接触判定用電極
e,ea,eb:接触判定用環状電極
Fx,Fy,Fz:各座標軸方向の力
G1:第1の上方溝
G2:第2の上方溝
GG:上方環状溝
Gx1:第1のX軸上方溝
Gx2:第2のX軸上方溝
Gx3:第3のX軸上方溝
Gx4:第4のX軸上方溝
Gy1:第1のY軸上方溝
Gy2:第2のY軸上方溝
Gy3:第3のY軸上方溝
Gy4:第4のY軸上方溝
H1:第1の下方溝
H2:第2の下方溝
HH:下方環状溝
Hx1:第1のX軸下方溝
Hx2:第2のX軸下方溝
Hx3:第3のX軸下方溝
Hx4:第4のX軸下方溝
Hy1:第1のY軸下方溝
Hy2:第2のY軸下方溝
Hy3:第3のY軸下方溝
Hy4:第4のY軸下方溝
J1〜J4:翼状部
J9:中央部
K1:第1の補助溝
K2:第2の補助溝
KK:補助環状溝
Kx1:第1のX軸補助溝
Kx2:第2のX軸補助溝
Kx3:第3のX軸補助溝
Kx4:第4のX軸補助溝
Ky1:第1のY軸補助溝
Ky2:第2のY軸補助溝
Ky3:第3のY軸補助溝
Ky4:第4のY軸補助溝
k1〜k4:係数
L1〜L4:基準線
Mx,My,Mz:各座標軸まわりのモーメント
O:XYZ三次元座標系の原点
P1:第1の柱状体
P2:第2の柱状体
PP:くびれ部を有する柱状体
PP1:上部
PP2:くびれ部
PP3:下部
Px1:第1のX軸柱状体
Px2:第2のX軸柱状体
Px3:第3のX軸柱状体
Px4:第4のX軸柱状体
Py1:第1のY軸柱状体
Py2:第2のY軸柱状体
Py3:第3のY軸柱状体
Py4:第4のY軸柱状体
PPx1:くびれ部を有する第1のX軸柱状体
PPx2:くびれ部を有する第2のX軸柱状体
PPx3:くびれ部を有する第3のX軸柱状体
PPx4:くびれ部を有する第4のX軸柱状体
PPy1:くびれ部を有する第1のY軸柱状体
PPy2:くびれ部を有する第2のY軸柱状体
PPy3:くびれ部を有する第3のY軸柱状体
PPy4:くびれ部を有する第4のY軸柱状体
Q:作用点
Q(+x):X軸正側の点
Q(−x):X軸負側の点
Q(+y):Y軸正側の点
Q(−y):Y軸負側の点
Q10:上方基板10の上面とZ軸との交点
Q20:下方基板20の上面とZ軸との交点
Q30:補助基板30の上面とZ軸との交点
R:半径
R1,R2:垂直基準軸
S1〜S4:スリット
S(+x):X軸正側直交面
S(−x):X軸負側直交面
S(+y):Y軸正側直交面
S(−y):Y軸負側直交面
T:円弧軌道
Tx1:可撓性部材からなる第1のX軸柱状体
Tx2:可撓性部材からなる第2のX軸柱状体
Tx3:可撓性部材からなる第3のX軸柱状体
Tx4:可撓性部材からなる第4のX軸柱状体
Ty1:可撓性部材からなる第1のY軸柱状体
Ty2:可撓性部材からなる第2のY軸柱状体
Ty3:可撓性部材からなる第3のY軸柱状体
Ty4:可撓性部材からなる第4のY軸柱状体
V(Fx):力Fxの検出値
V(Fx)*:力Fxの近似検出値
V(Fy):力Fyの検出値
V(Fy)*:力Fyの近似検出値
V(Fz):力Fzの検出値
V(Mx):モーメントMxの検出値
V(My):モーメントMyの検出値
V(Mz):モーメントMzの検出値
W1,W2:配置軸
X:XYZ三次元座標系の座標軸
Y:XYZ三次元座標系の座標軸
Z:XYZ三次元座標系の座標軸
Δ:容量値変化量
δ:容量値微小変化量
θ1,θ2:柱状体の傾斜角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置であって、
XY平面に平行な基板面を有する上方基板と、
XY平面に平行な基板面を有し、前記上方基板の下方に配置された下方基板と、
上端が前記上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が前記下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1の柱状体と、
上端が前記上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が前記下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第2の柱状体と、
前記第1の柱状体および前記第2の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を備え、
前記下方基板のうち、前記第1の柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第1の下方膜部を構成し、
前記下方基板のうち、前記第2の柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第2の下方膜部を構成し、
前記第1の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して第1の方向に傾斜しており、前記第2の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して前記第1の方向とは逆の第2の方向に傾斜しており、
前記検出部は、前記第1の下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のセンサと、前記第2の下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のセンサと、を有し、前記第1のセンサの検出値と前記第2のセンサの検出値との差を示す電気信号を、前記下方基板を固定した状態において前記上方基板に作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の力検出装置において、
検出部が、更に、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との和を示す電気信号を、下方基板を固定した状態において上方基板に作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の力検出装置において、
下方基板の上面側もしくは下面側に第1の下方溝および第2の下方溝が形成されており、前記第1の下方溝の底部によって第1の下方膜部が形成され、前記第2の下方溝の底部によって第2の下方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の力検出装置において、
各下方溝が下方基板の上面側に形成されており、各下方溝の内部に溝の底面から基板面位置まで上方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の下端が前記突起部を介して下方膜部に接合されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の力検出装置において、
下方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の一部により第1の下方膜部が形成され、当該可撓性基板の別な一部により第2の下方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の力検出装置において、
上方基板のうち、第1の柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第1の上方膜部を構成し、
上方基板のうち、第2の柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第2の上方膜部を構成することを特徴とする力検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の力検出装置において、
上方基板の上面側もしくは下面側に第1の上方溝および第2の上方溝が形成されており、前記第1の上方溝の底部によって第1の上方膜部が形成され、前記第2の上方溝の底部によって第2の上方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の力検出装置において、
各上方溝が上方基板の下面側に形成されており、各上方溝の内部に溝の底面から基板面位置まで下方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の上端が前記突起部を介して上方膜部に接合されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項9】
請求項6に記載の力検出装置において、
上方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の一部により第1の上方膜部が形成され、当該可撓性基板の別な一部により第2の上方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の力検出装置において、
第1の柱状体の中心軸と第2の柱状体の中心軸とが、XZ平面もしくはXZ平面に平行な同一平面上に配置されており、第1の柱状体と第2の柱状体とが、YZ平面に関して面対称をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の力検出装置において、
第1のセンサが、第1の下方膜部に形成された第1の変位電極と、この第1の変位電極に対向する位置に固定された第1の固定電極と、からなる第1の容量素子によって構成され、
第2のセンサが、第2の下方膜部に形成された第2の変位電極と、この第2の変位電極に対向する位置に固定された第2の固定電極と、からなる第2の容量素子によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の力検出装置において、
下方基板が導電性材料から構成され、第1の下方膜部自身が第1の変位電極として機能し、第2の下方膜部自身が第2の変位電極として機能することを特徴とする力検出装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の力検出装置において、
下方基板の下面に固着された補助基板を更に有し、
前記補助基板の上面における第1の下方膜部の下方位置に第1の補助溝が形成されており、前記補助基板の上面における第2の下方膜部の下方位置に第2の補助溝が形成されており、
前記第1の補助溝の底面に第1の固定電極が形成され、前記第2の補助溝の底面に第2の固定電極が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項14】
XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置であって、
上下方向に定義されたZ軸に対して所定方向に傾斜するように配置された第1の柱状体および第2の柱状体と、
前記第1の柱状体および前記第2の柱状体の上方に配置された上方構造体と、
前記第1の柱状体および前記第2の柱状体の下方に配置された下方構造体と、
前記第1の柱状体および前記第2の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を備え、
前記第1の柱状体の上端は、前記上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、前記第1の柱状体の下端は、前記下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合されており、
前記第2の柱状体の上端は、前記上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、前記第2の柱状体の下端は、前記下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合されており、
前記第1の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して第1の方向に傾斜しており、前記第2の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して前記第1の方向とは逆の第2の方向に傾斜しており、
前記下方構造体の所定位置を固定した状態において、前記上方構造体に外力が作用した場合に、前記第1の柱状体および前記第2の柱状体の傾斜状態が変化して前記上方構造体が変位を生じることができるように、「前記下方構造体」の少なくとも一部分および「前記上方構造体、前記第1の柱状体、前記第2の柱状体、およびこれら相互の接続部分」の少なくとも一部分が可撓性を有しており、
前記検出部は、前記第1の柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のセンサと、前記第2の柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のセンサと、を有し、前記第1のセンサの検出値と前記第2のセンサの検出値との差を示す電気信号を、前記下方構造体の前記所定位置を固定した状態において前記上方構造体に作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項15】
請求項14に記載の力検出装置において、
検出部が、更に、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との和を示す電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の力検出装置において、
第1の柱状体の中心軸と第2の柱状体の中心軸とが、XZ平面もしくはXZ平面に平行な同一平面上に配置されており、第1の柱状体と第2の柱状体とが、YZ平面に関して面対称をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれかに記載の力検出装置において、
下方構造体の下方に所定間隔をおいて固定された補助基板を更に有し、
第1のセンサが、下方構造体における第1の柱状体の下端が接合された位置に形成された第1の変位電極と、前記補助基板の上面における前記第1の変位電極に対向する位置に固定された第1の固定電極と、からなる第1の容量素子によって構成され、
第2のセンサが、下方構造体における第2の柱状体の下端が接合された位置に形成された第2の変位電極と、前記補助基板の上面における前記第2の変位電極に対向する位置に固定された第2の固定電極と、からなる第2の容量素子によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項18】
請求項17に記載の力検出装置において、
下方構造体が導電性材料から構成され、前記下方構造体における第1の柱状体の下端が接合された部分が第1の変位電極として機能し、前記下方構造体における第2の柱状体の下端が接合された部分が第2の変位電極として機能することを特徴とする力検出装置。
【請求項19】
XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置であって、
XY平面に平行な基板面を有する上方基板と、
XY平面に平行な基板面を有し、前記上方基板の下方に配置された下方基板と、
上端が前記上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が前記下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のX軸柱状体と、
上端が前記上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が前記下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のY軸柱状体と、
前記第1〜第4のX軸柱状体および前記第1〜第4のY軸柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を備え、
前記下方基板のうち、前記第1〜第4のX軸柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のX軸下方膜部を構成し、
前記下方基板のうち、前記第1〜第4のY軸柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のY軸下方膜部を構成し、
前記第1のX軸柱状体の中心軸と前記第2のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の正の領域においてX軸と直交するX軸正側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記第3のX軸柱状体の中心軸と前記第4のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の負の領域においてX軸と直交するX軸負側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記第1のY軸柱状体の中心軸と前記第2のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の正の領域においてY軸と直交するY軸正側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記第3のY軸柱状体の中心軸と前記第4のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の負の領域においてY軸と直交するY軸負側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記検出部は、
前記第1のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のX軸センサと、前記第2のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のX軸センサと、前記第3のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第3のX軸センサと、前記第4のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第4のX軸センサと、前記第1のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のY軸センサと、前記第2のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のY軸センサと、前記第3のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第3のY軸センサと、前記第4のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第4のY軸センサと、を有し、各センサの検出値に基づいて得られた電気信号を、前記下方基板を固定した状態において前記上方基板に作用した力の検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項20】
請求項19に記載の力検出装置において、
下方基板の上面側もしくは下面側に第1〜第4のX軸下方溝および第1〜第4のY軸下方溝が形成されており、前記第1〜第4のX軸下方溝の底部によって第1〜第4のX軸下方膜部が形成され、前記第1〜第4のY軸下方溝の底部によって第1〜第4のY軸下方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項21】
請求項19に記載の力検出装置において、
下方基板の上面側もしくは下面側に下方環状溝が形成されており、この下方環状溝の底部の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸下方膜部および第1〜第4のY軸下方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項22】
請求項20または21に記載の力検出装置において、
各下方溝もしくは下方環状溝が下方基板の上面側に形成されており、各下方溝もしくは下方環状溝の内部に溝の底面から基板面位置まで上方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の下端が前記突起部を介して下方膜部に接合されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項23】
請求項19に記載の力検出装置において、
下方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸下方膜部および第1〜第4のY軸下方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項24】
請求項19〜23のいずれかに記載の力検出装置において、
上方基板のうち、第1〜第4のX軸柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のX軸上方膜部を構成し、
上方基板のうち、第1〜第4のY軸柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のY軸上方膜部を構成することを特徴とする力検出装置。
【請求項25】
請求項24に記載の力検出装置において、
上方基板の上面側もしくは下面側に第1〜第4のX軸上方溝および第1〜第4のY軸上方溝が形成されており、前記第1〜第4のX軸上方溝の底部によって第1〜第4のX軸上方膜部が形成され、前記第1〜第4のY軸上方溝の底部によって第1〜第4のY軸上方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項26】
請求項24に記載の力検出装置において、
上方基板の上面側もしくは下面側に上方環状溝が形成されており、この上方環状溝の底部の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸上方膜部および第1〜第4のY軸上方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項27】
請求項25または26に記載の力検出装置において、
各上方溝もしくは上方環状溝が上方基板の下面側に形成されており、各上方溝もしくは上方環状溝の内部に溝の底面から基板面位置まで下方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の上端が前記突起部を介して上方膜部に接合されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項28】
請求項24に記載の力検出装置において、
上方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸上方膜部および第1〜第4のY軸上方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項29】
請求項28に記載の力検出装置において、
第1〜第4のX軸上方膜部および第1〜第4のY軸上方膜部を除いた上方基板の上面の所定箇所に連結部材が固着され、この連結部材の上方に、検出対象となる力を受けるための受力体が接合されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項30】
請求項23,28,または29に記載の力検出装置において、
第1のX軸上方/下方膜部および第2のX軸上方/下方膜部を含む領域と、第3のX軸上方/下方膜部および第4のX軸上方/下方膜部を含む領域と、第1のY軸上方/下方膜部および第2のY軸上方/下方膜部を含む領域と、第3のY軸上方/下方膜部および第4のY軸上方/下方膜部を含む領域と、の4つの領域を可撓性基板上に定義したときに、これら4つの領域の境界に沿って、可撓性基板の外周側から中心部に向かってスリットが形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項31】
XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置であって、
XY平面に平行な平面上に広がる上方構造体と、
XY平面に平行な平面上に広がり、前記上方構造体の下方に配置された下方構造体と、
上端が前記上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が前記下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のX軸柱状体と、
上端が前記上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が前記下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のY軸柱状体と、
前記第1〜第4のX軸柱状体および前記第1〜第4のY軸柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を備え、
前記第1のX軸柱状体の中心軸と前記第2のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の正の領域においてX軸と直交するX軸正側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記第3のX軸柱状体の中心軸と前記第4のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の負の領域においてX軸と直交するX軸負側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記第1のY軸柱状体の中心軸と前記第2のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の正の領域においてY軸と直交するY軸正側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記第3のY軸柱状体の中心軸と前記第4のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の負の領域においてY軸と直交するY軸負側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記検出部は、
前記第1のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のX軸センサと、前記第2のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のX軸センサと、前記第3のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第3のX軸センサと、前記第4のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第4のX軸センサと、前記第1のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のY軸センサと、前記第2のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のY軸センサと、前記第3のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第3のY軸センサと、前記第4のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第4のY軸センサと、を有し、各センサの検出値に基づいて得られた電気信号を、前記下方構造体の所定位置を固定した状態において前記上方構造体に作用した力の検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項32】
請求項31に記載の力検出装置において、
下方構造体が、Z軸上に位置する中心部と、前記中心部から第1〜第4のX軸柱状体の下端への接続位置および第1〜第4のY軸柱状体の下端への接続位置へそれぞれ伸びる8本の可撓性をもった枝状部と、を有することを特徴とする力検出装置。
【請求項33】
請求項19〜32のいずれかに記載の力検出装置において、
第1のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第1のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第1象限に位置し、
第3のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第2のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第2象限に位置し、
第4のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第4のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第3象限に位置し、
第2のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第3のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第4象限に位置することを特徴とする力検出装置。
【請求項34】
請求項33に記載の力検出装置において、
「第1〜第4のX軸柱状体」、「第1〜第4のY軸柱状体」、「上方基板もしくは上方構造体」、「下方基板もしくは下方構造体」によって構成される主構造体が、XZ平面に関して面対称をなし、かつ、YZ平面に関しても面対称をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項35】
請求項34に記載の力検出装置において、
検出部が、
「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fx)*を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fy)*を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項36】
請求項35に記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との和」と「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との和」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項37】
請求項34に記載の力検出装置において、
検出部が、
「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との和」と「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との和」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項38】
請求項37に記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fx)*と、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fy)*とを求め、
所定の係数k1〜k4を用いて、
V(Fx)*−k2/k1・V(My)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
V(Fy)*−k4/k3・V(Mx)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項39】
請求項35〜38のいずれかに記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
「第1〜第4のX軸センサの検出値の総和」もしくは「第1〜第4のY軸センサの検出値の総和」、または「第1〜第4のX軸センサの検出値の総和と第1〜第4のY軸センサの検出値の総和との和」に対応する信号値V(Fz)を、作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項40】
請求項35〜39のいずれかに記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第4のX軸センサの検出値と第3のX軸センサの検出値との差」と「第2のY軸センサの検出値と第1のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Mz)を、作用したZ軸まわりのモーメントMzの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項41】
請求項19〜40のいずれかに記載の力検出装置において、
各センサが、下方膜部もしくは下方構造体に形成された変位電極と、この変位電極に対向する位置に固定された固定電極と、からなる容量素子によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項42】
請求項19〜30のいずれかに記載の力検出装置において、
第1のX軸センサが、第1のX軸下方膜部に形成された第1のX軸変位電極と、この第1のX軸変位電極に対向する位置に固定された第1のX軸固定電極と、からなる第1のX軸容量素子によって構成され、
第2のX軸センサが、第2のX軸下方膜部に形成された第2のX軸変位電極と、この第2のX軸変位電極に対向する位置に固定された第2のX軸固定電極と、からなる第2のX軸容量素子によって構成され、
第3のX軸センサが、第3のX軸下方膜部に形成された第3のX軸変位電極と、この第3のX軸変位電極に対向する位置に固定された第3のX軸固定電極と、からなる第3のX軸容量素子によって構成され、
第4のX軸センサが、第4のX軸下方膜部に形成された第4のX軸変位電極と、この第4のX軸変位電極に対向する位置に固定された第4のX軸固定電極と、からなる第4のX軸容量素子によって構成され、
第1のY軸センサが、第1のY軸下方膜部に形成された第1のY軸変位電極と、この第1のY軸変位電極に対向する位置に固定された第1のY軸固定電極と、からなる第1のY軸容量素子によって構成され、
第2のY軸センサが、第2のY軸下方膜部に形成された第2のY軸変位電極と、この第2のY軸変位電極に対向する位置に固定された第2のY軸固定電極と、からなる第2のY軸容量素子によって構成され、
第3のY軸センサが、第3のY軸下方膜部に形成された第3のY軸変位電極と、この第3のY軸変位電極に対向する位置に固定された第3のY軸固定電極と、からなる第3のY軸容量素子によって構成され、
第4のY軸センサが、第4のY軸下方膜部に形成された第4のY軸変位電極と、この第4のY軸変位電極に対向する位置に固定された第4のY軸固定電極と、からなる第4のY軸容量素子によって構成されており、
検出部が、前記第1のX軸容量素子の静電容量変動値Cx1、前記第2のX軸容量素子の静電容量変動値Cx2、前記第3のX軸容量素子の静電容量変動値Cx3、前記第4のX軸容量素子の静電容量変動値Cx4、前記第1のY軸容量素子の静電容量変動値Cy1、前記第2のY軸容量素子の静電容量変動値Cy2、前記第3のY軸容量素子の静電容量変動値Cy3、前記第4のY軸容量素子の静電容量変動値Cy4に基づいて得られた電気信号を、検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項43】
請求項42に記載の力検出装置において、
下方基板が導電性材料から構成され、第1〜第4のX軸下方膜部自身がそれぞれ第1〜第4のX軸変位電極として機能し、第1〜第4のY軸下方膜部自身がそれぞれ第1〜第4のY軸変位電極として機能することを特徴とする力検出装置。
【請求項44】
請求項42または43に記載の力検出装置において、
下方基板の下面に固着された補助基板を更に有し、
前記補助基板の上面における第1〜第4のX軸下方膜部の下方位置にそれぞれ第1〜第4のX軸補助溝が形成されており、前記補助基板の上面における第1〜第4のY軸下方膜部の下方位置にそれぞれ第1〜第4のX軸補助溝が形成されており、
前記第1〜第4のX軸補助溝の底面にそれぞれ第1〜第4のX軸固定電極が形成され、前記第1〜第4のY軸補助溝の底面にそれぞれ第1〜第4のY軸固定電極が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項45】
請求項42または43に記載の力検出装置において、
下方基板の下面に固着された補助基板を更に有し、
前記補助基板の上面における第1〜第4のX軸下方膜部の下方位置および第1〜第4のY軸下方膜部の下方位置を連結するような環状補助溝が形成されており、この環状補助溝の底面に第1〜第4のX軸固定電極および第1〜第4のY軸固定電極が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項46】
請求項42または43に記載の力検出装置において、
第1〜第4のX軸下方膜部および第1〜第4のY軸下方膜部を除いた下方基板の下面の所定箇所にスペーサ部材が固着され、このスペーサ部材の下方に、補助基板が固着されており、この補助基板の上面に第1〜第4のX軸固定電極および第1〜第4のY軸固定電極が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項47】
請求項32に記載の力検出装置において、
下方構造体の下方に所定間隔をおいて固定された補助基板を更に有し、
第1のX軸センサが、第1のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第1のX軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第1のX軸変位電極に対向する位置に固定された第1のX軸固定電極と、からなる第1のX軸容量素子によって構成され、
第2のX軸センサが、第2のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第2のX軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第2のX軸変位電極に対向する位置に固定された第2のX軸固定電極と、からなる第2のX軸容量素子によって構成され、
第3のX軸センサが、第3のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第3のX軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第3のX軸変位電極に対向する位置に固定された第3のX軸固定電極と、からなる第3のX軸容量素子によって構成され、
第4のX軸センサが、第4のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第4のX軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第4のX軸変位電極に対向する位置に固定された第4のX軸固定電極と、からなる第4のX軸容量素子によって構成され、
第1のY軸センサが、第1のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第1のY軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第1のY軸変位電極に対向する位置に固定された第1のY軸固定電極と、からなる第1のY軸容量素子によって構成され、
第2のY軸センサが、第2のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第2のY軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第2のY軸変位電極に対向する位置に固定された第2のY軸固定電極と、からなる第2のY軸容量素子によって構成され、
第3のY軸センサが、第3のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第3のY軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第3のY軸変位電極に対向する位置に固定された第3のY軸固定電極と、からなる第3のY軸容量素子によって構成され、
第4のY軸センサが、第4のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第4のY軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第4のY軸変位電極に対向する位置に固定された第4のY軸固定電極と、からなる第4のY軸容量素子によって構成されており、
検出部が、前記第1のX軸容量素子の静電容量変動値Cx1、前記第2のX軸容量素子の静電容量変動値Cx2、前記第3のX軸容量素子の静電容量変動値Cx3、前記第4のX軸容量素子の静電容量変動値Cx4、前記第1のY軸容量素子の静電容量変動値Cy1、前記第2のY軸容量素子の静電容量変動値Cy2、前記第3のY軸容量素子の静電容量変動値Cy3、前記第4のY軸容量素子の静電容量変動値Cy4に基づいて得られた電気信号を、検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項48】
請求項47に記載の力検出装置において、
下方構造体が導電性材料から構成され、各枝状部自身がそれぞれ第1〜第4のX軸変位電極および第1〜第4のY軸変位電極として機能することを特徴とする力検出装置。
【請求項49】
請求項48に記載の力検出装置において、
補助基板の上面における各枝状部の先端部に対向する位置のそれぞれに、各固定電極とは電気的に絶縁された接触判定用電極を設け、枝状部の先端部と前記接触判定用電極との物理的接触の有無を、両者の電気的導通状態に基づいて判定できるようにしたことを特徴とする力検出装置。
【請求項50】
請求項49に記載の力検出装置において、
1つの枝状部の先端部に対向する位置に、互いに絶縁された一対の接触判定用電極を設け、この一対の接触判定用電極の相互間の電気的導通状態に基づいて、枝状部の先端部と前記一対の接触判定用電極との物理的接触の有無を判定できるようにしたことを特徴とする力検出装置。
【請求項51】
請求項48に記載の力検出装置において、
補助基板の上面における各枝状部の先端部に対向する位置をそれぞれ連結する環状領域に、各固定電極とは電気的に絶縁された接触判定用環状電極を設け、枝状部の先端部と前記接触判定用環状電極との物理的接触の有無を、両者の電気的導通状態に基づいて判定できるようにしたことを特徴とする力検出装置。
【請求項52】
請求項51に記載の力検出装置において、
環状領域に、互いに絶縁された同心状の一対の接触判定用環状電極を設け、この一対の接触判定用環状電極の相互間の電気的導通状態に基づいて、枝状部の先端部と前記一対の接触判定用環状電極との物理的接触の有無を判定できるようにしたことを特徴とする力検出装置。
【請求項53】
請求項49〜52のいずれかに記載の力検出装置において、
接触判定用電極もしくは接触判定用環状電極と枝状部との物理的接触によって形成される導電路が、各変位電極と検出部とを電気的に接続する配線路を構成することを特徴とする力検出装置。
【請求項54】
請求項42〜53のいずれかに記載の力検出装置において、
第1のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第1のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第1象限に位置し、
第3のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第2のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第2象限に位置し、
第4のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第4のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第3象限に位置し、
第2のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第3のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第4象限に位置し、
第1〜第4のX軸柱状体は、下端よりも上端の方が、XZ平面に近くなるように傾斜し、第1〜第4のY軸柱状体は、下端よりも上端の方が、YZ平面に近くなるように傾斜し、
「第1〜第4のX軸柱状体」、「第1〜第4のY軸柱状体」、「上方基板もしくは上方構造体」、「下方基板もしくは下方構造体」によって構成される主構造体が、XZ平面に関して面対称をなし、かつ、YZ平面に関しても面対称をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項55】
請求項54に記載の力検出装置において、
検出部が、
(Cy1−Cy2)+(Cy3−Cy4)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)*を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
(Cx1−Cx2)+(Cx3−Cx4)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)*を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項56】
請求項55に記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
(Cy3+Cy4)−(Cy1+Cy2)なる式で得られる値に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
(Cx1+Cx2)−(Cx3+Cx4)なる式で得られる値に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項57】
請求項54に記載の力検出装置において、
検出部が、
(Cy3+Cy4)−(Cy1+Cy2)なる式で得られる値に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
(Cx1+Cx2)−(Cx3+Cx4)なる式で得られる値に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項58】
請求項57に記載の力検出装置において、
検出部が、所定の係数k1〜k4を用いて、更に、
(Cy1−Cy2)+(Cy3−Cy4)−k2/k1・V(My)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
(Cx1−Cx2)+(Cx3−Cx4)−k4/k3・V(Mx)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項59】
請求項55〜58のいずれかに記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
−(Cx1+Cx2+Cx3+Cx4+Cy1+Cy2+Cy3+Cy4)
または、−(Cx1+Cx2+Cx3+Cx4)
または、−(Cy1+Cy2+Cy3+Cy4)
なる式で得られる値に対応する信号値V(Fz)を、作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項60】
請求項55〜59のいずれかに記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
(Cx1−Cx2)+(Cx4−Cx3)+(Cy2−Cy1)+(Cy3−Cy4)なる式で得られる値に対応する信号値V(Mz)を、作用したZ軸まわりのモーメントMxの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項61】
請求項1〜60のいずれかに記載の力検出装置において、
柱状体の一部もしくは全部に可撓性をもたせ、外力が作用したときに柱状体が変形するようにしたことを特徴とする力検出装置。
【請求項62】
請求項61に記載の力検出装置において、
柱状体の一部に可撓性をもったくびれ部を形成し、外力が作用したときに、前記くびれ部の変形によって、柱状体が屈曲するように構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項63】
請求項61に記載の力検出装置において、
柱状体全体が可撓性をもった材質によって構成されており、外力が作用したときに、柱状体全体が変形するように構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項1】
XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置であって、
XY平面に平行な基板面を有する上方基板と、
XY平面に平行な基板面を有し、前記上方基板の下方に配置された下方基板と、
上端が前記上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が前記下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1の柱状体と、
上端が前記上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が前記下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第2の柱状体と、
前記第1の柱状体および前記第2の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を備え、
前記下方基板のうち、前記第1の柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第1の下方膜部を構成し、
前記下方基板のうち、前記第2の柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第2の下方膜部を構成し、
前記第1の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して第1の方向に傾斜しており、前記第2の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して前記第1の方向とは逆の第2の方向に傾斜しており、
前記検出部は、前記第1の下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のセンサと、前記第2の下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のセンサと、を有し、前記第1のセンサの検出値と前記第2のセンサの検出値との差を示す電気信号を、前記下方基板を固定した状態において前記上方基板に作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の力検出装置において、
検出部が、更に、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との和を示す電気信号を、下方基板を固定した状態において上方基板に作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の力検出装置において、
下方基板の上面側もしくは下面側に第1の下方溝および第2の下方溝が形成されており、前記第1の下方溝の底部によって第1の下方膜部が形成され、前記第2の下方溝の底部によって第2の下方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の力検出装置において、
各下方溝が下方基板の上面側に形成されており、各下方溝の内部に溝の底面から基板面位置まで上方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の下端が前記突起部を介して下方膜部に接合されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の力検出装置において、
下方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の一部により第1の下方膜部が形成され、当該可撓性基板の別な一部により第2の下方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の力検出装置において、
上方基板のうち、第1の柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第1の上方膜部を構成し、
上方基板のうち、第2の柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、可撓性を有する第2の上方膜部を構成することを特徴とする力検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の力検出装置において、
上方基板の上面側もしくは下面側に第1の上方溝および第2の上方溝が形成されており、前記第1の上方溝の底部によって第1の上方膜部が形成され、前記第2の上方溝の底部によって第2の上方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の力検出装置において、
各上方溝が上方基板の下面側に形成されており、各上方溝の内部に溝の底面から基板面位置まで下方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の上端が前記突起部を介して上方膜部に接合されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項9】
請求項6に記載の力検出装置において、
上方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の一部により第1の上方膜部が形成され、当該可撓性基板の別な一部により第2の上方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の力検出装置において、
第1の柱状体の中心軸と第2の柱状体の中心軸とが、XZ平面もしくはXZ平面に平行な同一平面上に配置されており、第1の柱状体と第2の柱状体とが、YZ平面に関して面対称をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の力検出装置において、
第1のセンサが、第1の下方膜部に形成された第1の変位電極と、この第1の変位電極に対向する位置に固定された第1の固定電極と、からなる第1の容量素子によって構成され、
第2のセンサが、第2の下方膜部に形成された第2の変位電極と、この第2の変位電極に対向する位置に固定された第2の固定電極と、からなる第2の容量素子によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の力検出装置において、
下方基板が導電性材料から構成され、第1の下方膜部自身が第1の変位電極として機能し、第2の下方膜部自身が第2の変位電極として機能することを特徴とする力検出装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の力検出装置において、
下方基板の下面に固着された補助基板を更に有し、
前記補助基板の上面における第1の下方膜部の下方位置に第1の補助溝が形成されており、前記補助基板の上面における第2の下方膜部の下方位置に第2の補助溝が形成されており、
前記第1の補助溝の底面に第1の固定電極が形成され、前記第2の補助溝の底面に第2の固定電極が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項14】
XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置であって、
上下方向に定義されたZ軸に対して所定方向に傾斜するように配置された第1の柱状体および第2の柱状体と、
前記第1の柱状体および前記第2の柱状体の上方に配置された上方構造体と、
前記第1の柱状体および前記第2の柱状体の下方に配置された下方構造体と、
前記第1の柱状体および前記第2の柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を備え、
前記第1の柱状体の上端は、前記上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、前記第1の柱状体の下端は、前記下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合されており、
前記第2の柱状体の上端は、前記上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、前記第2の柱状体の下端は、前記下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合されており、
前記第1の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して第1の方向に傾斜しており、前記第2の柱状体の中心軸をXZ平面に正射影して得られる投影像は、Z軸に対して前記第1の方向とは逆の第2の方向に傾斜しており、
前記下方構造体の所定位置を固定した状態において、前記上方構造体に外力が作用した場合に、前記第1の柱状体および前記第2の柱状体の傾斜状態が変化して前記上方構造体が変位を生じることができるように、「前記下方構造体」の少なくとも一部分および「前記上方構造体、前記第1の柱状体、前記第2の柱状体、およびこれら相互の接続部分」の少なくとも一部分が可撓性を有しており、
前記検出部は、前記第1の柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のセンサと、前記第2の柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のセンサと、を有し、前記第1のセンサの検出値と前記第2のセンサの検出値との差を示す電気信号を、前記下方構造体の前記所定位置を固定した状態において前記上方構造体に作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項15】
請求項14に記載の力検出装置において、
検出部が、更に、第1のセンサの検出値と第2のセンサの検出値との和を示す電気信号を、下方構造体の所定位置を固定した状態において上方構造体に作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の力検出装置において、
第1の柱状体の中心軸と第2の柱状体の中心軸とが、XZ平面もしくはXZ平面に平行な同一平面上に配置されており、第1の柱状体と第2の柱状体とが、YZ平面に関して面対称をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれかに記載の力検出装置において、
下方構造体の下方に所定間隔をおいて固定された補助基板を更に有し、
第1のセンサが、下方構造体における第1の柱状体の下端が接合された位置に形成された第1の変位電極と、前記補助基板の上面における前記第1の変位電極に対向する位置に固定された第1の固定電極と、からなる第1の容量素子によって構成され、
第2のセンサが、下方構造体における第2の柱状体の下端が接合された位置に形成された第2の変位電極と、前記補助基板の上面における前記第2の変位電極に対向する位置に固定された第2の固定電極と、からなる第2の容量素子によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項18】
請求項17に記載の力検出装置において、
下方構造体が導電性材料から構成され、前記下方構造体における第1の柱状体の下端が接合された部分が第1の変位電極として機能し、前記下方構造体における第2の柱状体の下端が接合された部分が第2の変位電極として機能することを特徴とする力検出装置。
【請求項19】
XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置であって、
XY平面に平行な基板面を有する上方基板と、
XY平面に平行な基板面を有し、前記上方基板の下方に配置された下方基板と、
上端が前記上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が前記下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のX軸柱状体と、
上端が前記上方基板の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が前記下方基板の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のY軸柱状体と、
前記第1〜第4のX軸柱状体および前記第1〜第4のY軸柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を備え、
前記下方基板のうち、前記第1〜第4のX軸柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のX軸下方膜部を構成し、
前記下方基板のうち、前記第1〜第4のY軸柱状体の下端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のY軸下方膜部を構成し、
前記第1のX軸柱状体の中心軸と前記第2のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の正の領域においてX軸と直交するX軸正側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記第3のX軸柱状体の中心軸と前記第4のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の負の領域においてX軸と直交するX軸負側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記第1のY軸柱状体の中心軸と前記第2のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の正の領域においてY軸と直交するY軸正側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記第3のY軸柱状体の中心軸と前記第4のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の負の領域においてY軸と直交するY軸負側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記検出部は、
前記第1のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のX軸センサと、前記第2のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のX軸センサと、前記第3のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第3のX軸センサと、前記第4のX軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第4のX軸センサと、前記第1のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第1のY軸センサと、前記第2のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第2のY軸センサと、前記第3のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第3のY軸センサと、前記第4のY軸下方膜部のZ軸方向への変位を検出する第4のY軸センサと、を有し、各センサの検出値に基づいて得られた電気信号を、前記下方基板を固定した状態において前記上方基板に作用した力の検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項20】
請求項19に記載の力検出装置において、
下方基板の上面側もしくは下面側に第1〜第4のX軸下方溝および第1〜第4のY軸下方溝が形成されており、前記第1〜第4のX軸下方溝の底部によって第1〜第4のX軸下方膜部が形成され、前記第1〜第4のY軸下方溝の底部によって第1〜第4のY軸下方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項21】
請求項19に記載の力検出装置において、
下方基板の上面側もしくは下面側に下方環状溝が形成されており、この下方環状溝の底部の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸下方膜部および第1〜第4のY軸下方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項22】
請求項20または21に記載の力検出装置において、
各下方溝もしくは下方環状溝が下方基板の上面側に形成されており、各下方溝もしくは下方環状溝の内部に溝の底面から基板面位置まで上方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の下端が前記突起部を介して下方膜部に接合されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項23】
請求項19に記載の力検出装置において、
下方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸下方膜部および第1〜第4のY軸下方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項24】
請求項19〜23のいずれかに記載の力検出装置において、
上方基板のうち、第1〜第4のX軸柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のX軸上方膜部を構成し、
上方基板のうち、第1〜第4のY軸柱状体の上端が接合されている接合部近傍は、それぞれ可撓性を有する第1〜第4のY軸上方膜部を構成することを特徴とする力検出装置。
【請求項25】
請求項24に記載の力検出装置において、
上方基板の上面側もしくは下面側に第1〜第4のX軸上方溝および第1〜第4のY軸上方溝が形成されており、前記第1〜第4のX軸上方溝の底部によって第1〜第4のX軸上方膜部が形成され、前記第1〜第4のY軸上方溝の底部によって第1〜第4のY軸上方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項26】
請求項24に記載の力検出装置において、
上方基板の上面側もしくは下面側に上方環状溝が形成されており、この上方環状溝の底部の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸上方膜部および第1〜第4のY軸上方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項27】
請求項25または26に記載の力検出装置において、
各上方溝もしくは上方環状溝が上方基板の下面側に形成されており、各上方溝もしくは上方環状溝の内部に溝の底面から基板面位置まで下方に伸びる突起部が設けられており、各柱状体の上端が前記突起部を介して上方膜部に接合されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項28】
請求項24に記載の力検出装置において、
上方基板が可撓性基板によって構成され、当該可撓性基板の各部分により、それぞれ第1〜第4のX軸上方膜部および第1〜第4のY軸上方膜部が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項29】
請求項28に記載の力検出装置において、
第1〜第4のX軸上方膜部および第1〜第4のY軸上方膜部を除いた上方基板の上面の所定箇所に連結部材が固着され、この連結部材の上方に、検出対象となる力を受けるための受力体が接合されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項30】
請求項23,28,または29に記載の力検出装置において、
第1のX軸上方/下方膜部および第2のX軸上方/下方膜部を含む領域と、第3のX軸上方/下方膜部および第4のX軸上方/下方膜部を含む領域と、第1のY軸上方/下方膜部および第2のY軸上方/下方膜部を含む領域と、第3のY軸上方/下方膜部および第4のY軸上方/下方膜部を含む領域と、の4つの領域を可撓性基板上に定義したときに、これら4つの領域の境界に沿って、可撓性基板の外周側から中心部に向かってスリットが形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項31】
XYZ三次元座標系において所定方向に作用した力を検出する力検出装置であって、
XY平面に平行な平面上に広がる上方構造体と、
XY平面に平行な平面上に広がり、前記上方構造体の下方に配置された下方構造体と、
上端が前記上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が前記下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のX軸柱状体と、
上端が前記上方構造体の下面に直接もしくは間接的に接合され、下端が前記下方構造体の上面に直接もしくは間接的に接合された第1〜第4のY軸柱状体と、
前記第1〜第4のX軸柱状体および前記第1〜第4のY軸柱状体の変位に基づいて、作用した力を示す電気信号を出力する検出部と、
を備え、
前記第1のX軸柱状体の中心軸と前記第2のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の正の領域においてX軸と直交するX軸正側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記第3のX軸柱状体の中心軸と前記第4のX軸柱状体の中心軸とは、X軸の負の領域においてX軸と直交するX軸負側直交面に含まれ、かつ、XZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記第1のY軸柱状体の中心軸と前記第2のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の正の領域においてY軸と直交するY軸正側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記第3のY軸柱状体の中心軸と前記第4のY軸柱状体の中心軸とは、Y軸の負の領域においてY軸と直交するY軸負側直交面に含まれ、かつ、YZ平面に関して互いに逆方向に傾斜しており、
前記検出部は、
前記第1のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のX軸センサと、前記第2のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のX軸センサと、前記第3のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第3のX軸センサと、前記第4のX軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第4のX軸センサと、前記第1のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第1のY軸センサと、前記第2のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第2のY軸センサと、前記第3のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第3のY軸センサと、前記第4のY軸柱状体の下端のZ軸方向への変位を検出する第4のY軸センサと、を有し、各センサの検出値に基づいて得られた電気信号を、前記下方構造体の所定位置を固定した状態において前記上方構造体に作用した力の検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項32】
請求項31に記載の力検出装置において、
下方構造体が、Z軸上に位置する中心部と、前記中心部から第1〜第4のX軸柱状体の下端への接続位置および第1〜第4のY軸柱状体の下端への接続位置へそれぞれ伸びる8本の可撓性をもった枝状部と、を有することを特徴とする力検出装置。
【請求項33】
請求項19〜32のいずれかに記載の力検出装置において、
第1のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第1のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第1象限に位置し、
第3のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第2のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第2象限に位置し、
第4のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第4のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第3象限に位置し、
第2のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第3のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第4象限に位置することを特徴とする力検出装置。
【請求項34】
請求項33に記載の力検出装置において、
「第1〜第4のX軸柱状体」、「第1〜第4のY軸柱状体」、「上方基板もしくは上方構造体」、「下方基板もしくは下方構造体」によって構成される主構造体が、XZ平面に関して面対称をなし、かつ、YZ平面に関しても面対称をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項35】
請求項34に記載の力検出装置において、
検出部が、
「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fx)*を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fy)*を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項36】
請求項35に記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との和」と「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との和」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項37】
請求項34に記載の力検出装置において、
検出部が、
「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との和」と「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との和」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との和」との差に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項38】
請求項37に記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
「第1のY軸センサの検出値と第2のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fx)*と、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第3のX軸センサの検出値と第4のX軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Fy)*とを求め、
所定の係数k1〜k4を用いて、
V(Fx)*−k2/k1・V(My)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
V(Fy)*−k4/k3・V(Mx)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項39】
請求項35〜38のいずれかに記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
「第1〜第4のX軸センサの検出値の総和」もしくは「第1〜第4のY軸センサの検出値の総和」、または「第1〜第4のX軸センサの検出値の総和と第1〜第4のY軸センサの検出値の総和との和」に対応する信号値V(Fz)を、作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項40】
請求項35〜39のいずれかに記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
「第1のX軸センサの検出値と第2のX軸センサの検出値との差」と「第4のX軸センサの検出値と第3のX軸センサの検出値との差」と「第2のY軸センサの検出値と第1のY軸センサの検出値との差」と「第3のY軸センサの検出値と第4のY軸センサの検出値との差」との和に対応する信号値V(Mz)を、作用したZ軸まわりのモーメントMzの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項41】
請求項19〜40のいずれかに記載の力検出装置において、
各センサが、下方膜部もしくは下方構造体に形成された変位電極と、この変位電極に対向する位置に固定された固定電極と、からなる容量素子によって構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項42】
請求項19〜30のいずれかに記載の力検出装置において、
第1のX軸センサが、第1のX軸下方膜部に形成された第1のX軸変位電極と、この第1のX軸変位電極に対向する位置に固定された第1のX軸固定電極と、からなる第1のX軸容量素子によって構成され、
第2のX軸センサが、第2のX軸下方膜部に形成された第2のX軸変位電極と、この第2のX軸変位電極に対向する位置に固定された第2のX軸固定電極と、からなる第2のX軸容量素子によって構成され、
第3のX軸センサが、第3のX軸下方膜部に形成された第3のX軸変位電極と、この第3のX軸変位電極に対向する位置に固定された第3のX軸固定電極と、からなる第3のX軸容量素子によって構成され、
第4のX軸センサが、第4のX軸下方膜部に形成された第4のX軸変位電極と、この第4のX軸変位電極に対向する位置に固定された第4のX軸固定電極と、からなる第4のX軸容量素子によって構成され、
第1のY軸センサが、第1のY軸下方膜部に形成された第1のY軸変位電極と、この第1のY軸変位電極に対向する位置に固定された第1のY軸固定電極と、からなる第1のY軸容量素子によって構成され、
第2のY軸センサが、第2のY軸下方膜部に形成された第2のY軸変位電極と、この第2のY軸変位電極に対向する位置に固定された第2のY軸固定電極と、からなる第2のY軸容量素子によって構成され、
第3のY軸センサが、第3のY軸下方膜部に形成された第3のY軸変位電極と、この第3のY軸変位電極に対向する位置に固定された第3のY軸固定電極と、からなる第3のY軸容量素子によって構成され、
第4のY軸センサが、第4のY軸下方膜部に形成された第4のY軸変位電極と、この第4のY軸変位電極に対向する位置に固定された第4のY軸固定電極と、からなる第4のY軸容量素子によって構成されており、
検出部が、前記第1のX軸容量素子の静電容量変動値Cx1、前記第2のX軸容量素子の静電容量変動値Cx2、前記第3のX軸容量素子の静電容量変動値Cx3、前記第4のX軸容量素子の静電容量変動値Cx4、前記第1のY軸容量素子の静電容量変動値Cy1、前記第2のY軸容量素子の静電容量変動値Cy2、前記第3のY軸容量素子の静電容量変動値Cy3、前記第4のY軸容量素子の静電容量変動値Cy4に基づいて得られた電気信号を、検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項43】
請求項42に記載の力検出装置において、
下方基板が導電性材料から構成され、第1〜第4のX軸下方膜部自身がそれぞれ第1〜第4のX軸変位電極として機能し、第1〜第4のY軸下方膜部自身がそれぞれ第1〜第4のY軸変位電極として機能することを特徴とする力検出装置。
【請求項44】
請求項42または43に記載の力検出装置において、
下方基板の下面に固着された補助基板を更に有し、
前記補助基板の上面における第1〜第4のX軸下方膜部の下方位置にそれぞれ第1〜第4のX軸補助溝が形成されており、前記補助基板の上面における第1〜第4のY軸下方膜部の下方位置にそれぞれ第1〜第4のX軸補助溝が形成されており、
前記第1〜第4のX軸補助溝の底面にそれぞれ第1〜第4のX軸固定電極が形成され、前記第1〜第4のY軸補助溝の底面にそれぞれ第1〜第4のY軸固定電極が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項45】
請求項42または43に記載の力検出装置において、
下方基板の下面に固着された補助基板を更に有し、
前記補助基板の上面における第1〜第4のX軸下方膜部の下方位置および第1〜第4のY軸下方膜部の下方位置を連結するような環状補助溝が形成されており、この環状補助溝の底面に第1〜第4のX軸固定電極および第1〜第4のY軸固定電極が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項46】
請求項42または43に記載の力検出装置において、
第1〜第4のX軸下方膜部および第1〜第4のY軸下方膜部を除いた下方基板の下面の所定箇所にスペーサ部材が固着され、このスペーサ部材の下方に、補助基板が固着されており、この補助基板の上面に第1〜第4のX軸固定電極および第1〜第4のY軸固定電極が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項47】
請求項32に記載の力検出装置において、
下方構造体の下方に所定間隔をおいて固定された補助基板を更に有し、
第1のX軸センサが、第1のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第1のX軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第1のX軸変位電極に対向する位置に固定された第1のX軸固定電極と、からなる第1のX軸容量素子によって構成され、
第2のX軸センサが、第2のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第2のX軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第2のX軸変位電極に対向する位置に固定された第2のX軸固定電極と、からなる第2のX軸容量素子によって構成され、
第3のX軸センサが、第3のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第3のX軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第3のX軸変位電極に対向する位置に固定された第3のX軸固定電極と、からなる第3のX軸容量素子によって構成され、
第4のX軸センサが、第4のX軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第4のX軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第4のX軸変位電極に対向する位置に固定された第4のX軸固定電極と、からなる第4のX軸容量素子によって構成され、
第1のY軸センサが、第1のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第1のY軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第1のY軸変位電極に対向する位置に固定された第1のY軸固定電極と、からなる第1のY軸容量素子によって構成され、
第2のY軸センサが、第2のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第2のY軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第2のY軸変位電極に対向する位置に固定された第2のY軸固定電極と、からなる第2のY軸容量素子によって構成され、
第3のY軸センサが、第3のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第3のY軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第3のY軸変位電極に対向する位置に固定された第3のY軸固定電極と、からなる第3のY軸容量素子によって構成され、
第4のY軸センサが、第4のY軸柱状体の下端への接続位置へ伸びる枝状部に形成された第4のY軸変位電極と、前記補助基板の上面における前記第4のY軸変位電極に対向する位置に固定された第4のY軸固定電極と、からなる第4のY軸容量素子によって構成されており、
検出部が、前記第1のX軸容量素子の静電容量変動値Cx1、前記第2のX軸容量素子の静電容量変動値Cx2、前記第3のX軸容量素子の静電容量変動値Cx3、前記第4のX軸容量素子の静電容量変動値Cx4、前記第1のY軸容量素子の静電容量変動値Cy1、前記第2のY軸容量素子の静電容量変動値Cy2、前記第3のY軸容量素子の静電容量変動値Cy3、前記第4のY軸容量素子の静電容量変動値Cy4に基づいて得られた電気信号を、検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項48】
請求項47に記載の力検出装置において、
下方構造体が導電性材料から構成され、各枝状部自身がそれぞれ第1〜第4のX軸変位電極および第1〜第4のY軸変位電極として機能することを特徴とする力検出装置。
【請求項49】
請求項48に記載の力検出装置において、
補助基板の上面における各枝状部の先端部に対向する位置のそれぞれに、各固定電極とは電気的に絶縁された接触判定用電極を設け、枝状部の先端部と前記接触判定用電極との物理的接触の有無を、両者の電気的導通状態に基づいて判定できるようにしたことを特徴とする力検出装置。
【請求項50】
請求項49に記載の力検出装置において、
1つの枝状部の先端部に対向する位置に、互いに絶縁された一対の接触判定用電極を設け、この一対の接触判定用電極の相互間の電気的導通状態に基づいて、枝状部の先端部と前記一対の接触判定用電極との物理的接触の有無を判定できるようにしたことを特徴とする力検出装置。
【請求項51】
請求項48に記載の力検出装置において、
補助基板の上面における各枝状部の先端部に対向する位置をそれぞれ連結する環状領域に、各固定電極とは電気的に絶縁された接触判定用環状電極を設け、枝状部の先端部と前記接触判定用環状電極との物理的接触の有無を、両者の電気的導通状態に基づいて判定できるようにしたことを特徴とする力検出装置。
【請求項52】
請求項51に記載の力検出装置において、
環状領域に、互いに絶縁された同心状の一対の接触判定用環状電極を設け、この一対の接触判定用環状電極の相互間の電気的導通状態に基づいて、枝状部の先端部と前記一対の接触判定用環状電極との物理的接触の有無を判定できるようにしたことを特徴とする力検出装置。
【請求項53】
請求項49〜52のいずれかに記載の力検出装置において、
接触判定用電極もしくは接触判定用環状電極と枝状部との物理的接触によって形成される導電路が、各変位電極と検出部とを電気的に接続する配線路を構成することを特徴とする力検出装置。
【請求項54】
請求項42〜53のいずれかに記載の力検出装置において、
第1のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第1のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第1象限に位置し、
第3のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第2のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第2象限に位置し、
第4のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第4のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第3象限に位置し、
第2のX軸柱状体のXY平面への正射影像および第3のY軸柱状体のXY平面への正射影像が、XY座標系の第4象限に位置し、
第1〜第4のX軸柱状体は、下端よりも上端の方が、XZ平面に近くなるように傾斜し、第1〜第4のY軸柱状体は、下端よりも上端の方が、YZ平面に近くなるように傾斜し、
「第1〜第4のX軸柱状体」、「第1〜第4のY軸柱状体」、「上方基板もしくは上方構造体」、「下方基板もしくは下方構造体」によって構成される主構造体が、XZ平面に関して面対称をなし、かつ、YZ平面に関しても面対称をなすことを特徴とする力検出装置。
【請求項55】
請求項54に記載の力検出装置において、
検出部が、
(Cy1−Cy2)+(Cy3−Cy4)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)*を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
(Cx1−Cx2)+(Cx3−Cx4)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)*を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項56】
請求項55に記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
(Cy3+Cy4)−(Cy1+Cy2)なる式で得られる値に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
(Cx1+Cx2)−(Cx3+Cx4)なる式で得られる値に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項57】
請求項54に記載の力検出装置において、
検出部が、
(Cy3+Cy4)−(Cy1+Cy2)なる式で得られる値に対応する信号値V(Mx)を、作用したX軸まわりのモーメントMxの検出値として出力し、
(Cx1+Cx2)−(Cx3+Cx4)なる式で得られる値に対応する信号値V(My)を、作用したY軸まわりのモーメントMyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項58】
請求項57に記載の力検出装置において、
検出部が、所定の係数k1〜k4を用いて、更に、
(Cy1−Cy2)+(Cy3−Cy4)−k2/k1・V(My)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fx)を、作用したX軸方向の力Fxの検出値として出力し、
(Cx1−Cx2)+(Cx3−Cx4)−k4/k3・V(Mx)なる式で得られる値に対応する信号値V(Fy)を、作用したY軸方向の力Fyの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項59】
請求項55〜58のいずれかに記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
−(Cx1+Cx2+Cx3+Cx4+Cy1+Cy2+Cy3+Cy4)
または、−(Cx1+Cx2+Cx3+Cx4)
または、−(Cy1+Cy2+Cy3+Cy4)
なる式で得られる値に対応する信号値V(Fz)を、作用したZ軸方向の力Fzの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項60】
請求項55〜59のいずれかに記載の力検出装置において、
検出部が、更に、
(Cx1−Cx2)+(Cx4−Cx3)+(Cy2−Cy1)+(Cy3−Cy4)なる式で得られる値に対応する信号値V(Mz)を、作用したZ軸まわりのモーメントMxの検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項61】
請求項1〜60のいずれかに記載の力検出装置において、
柱状体の一部もしくは全部に可撓性をもたせ、外力が作用したときに柱状体が変形するようにしたことを特徴とする力検出装置。
【請求項62】
請求項61に記載の力検出装置において、
柱状体の一部に可撓性をもったくびれ部を形成し、外力が作用したときに、前記くびれ部の変形によって、柱状体が屈曲するように構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項63】
請求項61に記載の力検出装置において、
柱状体全体が可撓性をもった材質によって構成されており、外力が作用したときに、柱状体全体が変形するように構成されていることを特徴とする力検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図49】
【図50】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図49】
【図50】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【公開番号】特開2011−17595(P2011−17595A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161910(P2009−161910)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【Fターム(参考)】
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