説明

加圧バッグ

【課題】袋状容器に実際に圧縮力が加えられるまでに必要な空気の送り込み量を低減して、作業者負担を軽減する。
【解決手段】袋状のバッグ本体11と保持シート15との間18に液状物が充填された袋状容器を保持させた状態でポンプを用いてバッグ本体内に流体を送り込みバッグ本体を膨らませることによって、袋状容器を加圧し袋状容器内の前記液状物を押し出す。バッグ本体の対向する内面同士が接触するのを防止する構造物31がバッグ本体に内蔵されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧バッグに関する。特に、可撓性を有する袋状容器を加圧することにより、この袋状容器内の液状物を押し出すことができる加圧バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
食道や口腔の外傷、疾患、又は手術等によって食物を口腔から胃に送り込むことが困難となった患者に栄養剤、流動食、又は薬剤など(一般に「経腸栄養剤」と呼ばれる。以下、「液状物」と称する)を投与する方法として経腸栄養療法が知られている。経腸栄養療法では、袋状容器に充填された液状物を、可撓性を有するチューブ(一般に「経腸栄養カテーテル」と呼ばれる)を介して患者の体内に送り込む。経腸栄養療法に用いられるチューブとしては、チューブの挿入経路によって、患者の鼻腔を通って胃又は十二指腸にまで挿入される経鼻チューブ、患者の腹に形成された胃ろうを通って胃内に挿入されるPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)チューブ、患者の首の付け根に形成された穴を通って胃にまで挿入されるPTEG(Percutaneus Trans Esophageal Gastro-tubing)チューブなどが知られている。
【0003】
経腸栄養療法に用いられる液状物の粘度が低いと、胃内の液状物が食道に逆流して肺炎を併発したり、液状物の水分が体内で吸収しきれずに下痢したりする等の問題がある。この問題を防止するために、半固形化したり、トロミ剤や増粘剤を加えたりすることで粘度を高めた液状物が用いられることが多い(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0004】
ところが、このような高粘度の液状物を患者の体内に送り込むためには、液状物が充填された袋状容器を圧縮する必要がある。この作業を素手で行おうとすると、非常に大きな力が必要であるので作業者(例えば看護師、介護者)の負担が大きく、また、袋状容器全体を一度に圧縮することが困難であるので袋状容器内に液状物が残存しやい等の問題があった。
【0005】
この問題を解決するための押出装置が特許文献3に開示されている。この押出装置は、可撓性を有する袋状のバッグ本体と、バッグ本体に対して離間した二辺で取り付けられた保持シートと、バッグ本体に空気を供給する送気球(手動ポンプ)とを備えている。バッグ本体と保持シートとの間に、液状物が充填された袋状容器を挿入して、送気球でバッグ本体に空気を供給してバッグ本体を膨らませる。これにより、バッグ本体と保持シートとの間に配された袋状容器は圧縮力を受けて、袋状容器内の液状物が押し出される。バッグ本体及び保持シートは袋状容器の形状に応じて適宜変形するので、袋状容器全体にほぼ均一な圧縮力を印加することができる。従って、袋状容器内の液状物をほとんど残らず押し出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−248981号公報
【特許文献2】特開2006−273804号公報
【特許文献3】特開2007−29562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来の押出装置では、袋状容器に圧縮力を加えるためには、バッグ本体内にある程度の空気を充填する必要がある。例えば、押出装置を使用後にバルブを開くと、バッグ本体内の空気が抜けてバッグ本体がぺしゃんこになってしまう。その後、バッグ本体と保持シートとの間に液状物が充填された袋状容器を挿入して再度送気球からバッグ本体に空気を送り込んでも、最初のうちはバッグ本体は膨らむが袋状容器は圧縮されない。バッグ本体に所定量の空気が充填されて初めて袋状容器に圧縮力が加えられる。このように、従来の押出装置では、実際に袋状容器に圧縮力が加えられるようになるまでに送気球を操作して相当量の空気をバッグ本体に送り込む必要があり、これが押出装置を操作する作業者の負担になっていた。
【0008】
本発明は、上記の従来の問題を解決し、袋状容器に実際に圧縮力が加えられるまでに必要な空気の送り込み量を低減することにより、作業者の負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の加圧バッグは、可撓性を有する袋状のバッグ本体と、前記バッグ本体に取り付けられた可撓性を有する保持シートと、前記バッグ本体に流体を送り込むポンプとを備える。前記バッグ本体と前記保持シートとの間に、液状物が充填された袋状容器を保持させた状態で、前記ポンプを用いて前記バッグ本体内に流体を送り込み前記バッグ本体を膨らませることによって、前記袋状容器を加圧し前記袋状容器内の前記液状物が押し出される。そして、前記バッグ本体の対向する内面同士が接触するのを防止する構造物が前記バッグ本体に内蔵されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バッグ本体の対向する内面同士が接触するのを防止する構造物がバッグに内蔵されているので、加圧バッグの不使用時等にバッグ本体内の空気が抜けてバッグ本体がぺしゃんこにならない。従って、袋状容器に実際に圧縮力が加えられるまでに必要な空気の送り込み量を低減することができるので、作業者の負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る加圧バッグの概略構成を示した斜視図である。
【図2】図2は、図1の2−2線に沿った加圧バッグの断面図である。
【図3】図3は、液状物が充填された袋状容器をポケットに収納した、本発明の実施の形態1に係る加圧バッグの断面図である。
【図4】図4は、液状物が充填された袋状容器をポケットに収納した状態で、バッグ本体を膨らませた、本発明の実施の形態1に係る加圧バッグの断面図である。
【図5A】図5Aは、本発明の加圧バッグのバッグ本体に内蔵させることができる、中空の球状構造物の斜視図である。
【図5B】図5Bは、本発明の加圧バッグのバッグ本体に内蔵させることができる、円筒状構造物の斜視図である。
【図5C】図5Cは、本発明の加圧バッグのバッグ本体に内蔵させることができる、正十二面体形状の骨組み構造物の斜視図である。
【図5D】図5Dは、本発明の加圧バッグのバッグ本体に内蔵させることができる、表面に凹部が形成された球体の構造物の斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2に係る加圧バッグのバッグ本体に内蔵される直方体形状の骨組み構造物の斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2に係る加圧バッグの断面図である。
【図8】図8は、液状物が充填された袋状容器をポケットに収納した、本発明の実施の形態2に係る加圧バッグの断面図である。
【図9】図9は、液状物が充填された袋状容器をポケットに収納した状態で、バッグ本体を膨らませた、本発明の実施の形態2に係る加圧バッグの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記の本発明の加圧バッグにおいて、前記構造物が前記バッグ本体内に複数個内蔵されており、前記複数個の構造物が前記バッグ内で移動可能であることが好ましい。これにより、バッグ本体が膨らんでいない状態においてバッグ本体は自由に形状を変化させることができるので、バッグ本体と保持シートとの間のポケットに対する袋状容器の挿入及び取り出しの作業が容易になる。
【0013】
前記構造物は、中空状物、骨組み構造物、表面に凹部が形成された構造物、多孔質状構造物、又は、発泡材であることが好ましい。これにより、構造物の嵩密度を小さくすることができるので、軽量の加圧バッグを実現できる。
【0014】
前記構造物は、非圧縮性であってもよい。これにより、バッグ本体を膨らませていない状態において袋状容器の荷重によって構造物が変形してバッグ本体から空気が抜け出るのを防止できる。従って、袋状容器に実際に圧縮力が加えられるまでに必要な空気の送り込み量を更に低減することができる。
【0015】
あるいは、前記構造物は、前記バッグ本体の外部から加えられる押力に対して圧縮性であり、且つ、前記バッグ本体内の前記流体の圧力に対しては非圧縮性であってもよい。これにより、不使用時には構造物を圧縮してバッグ本体を低容量化することができるので、収納や搬送の利便性が向上する。このような構造物は、スポンジ、綿、及び、羽毛からなる群から選ばれた少なくとも一つを含むことが好ましい。これらは、安価且つ容易に入手することができるからである。
【0016】
以下に本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る加圧バッグ10の概略構成を示した斜視図である。図2は図1の2−2線に沿った加圧バッグ10の断面図である。本実施の形態1の加圧バッグ10は、バッグ本体11と、バッグ本体11に取り付けられた可撓性を有する保持シート15とを備える。
【0018】
バッグ本体11は、同一寸法の略矩形の2枚のシート11a,11bを重ね合わせて、その周縁のシール領域12にて接合(例えば融着、接着など)してなる袋状物である。バッグ本体11の内外を連通させる連通管13が、シート11a,11b間に挟まれてシール領域12にてこれらシート11a,11bと一体化されている。
【0019】
バッグ本体11内には、ピンポン球のように中空の複数の球体31が内蔵されている。複数の球体31が、バッグ本体11を構成するシート11aの内面とシート11bの内面とが接触するのを防止している。
【0020】
保持シート15は、略矩形のシール領域12の対向する一対の長辺部分にてバッグ本体11と接合(例えば融着、接着、縫合など)されている。この結果、バッグ本体11を構成するシート11aと保持シート15との間に、液状物が充填された袋状容器90を挿入して保持することができるポケット(空間)18が形成される。
【0021】
バッグ本体11に設けられた連通管13には、バッグ本体11内に空気を送り込んでその内圧を上昇させるための加圧装置20が接続されている。加圧装置20は、連通管13に接続される、可撓性を有するチューブ21と、チューブ21の途中に設けられた圧力インジケータ22及びクレンメ23と、チューブ21の終端に接続されたポンプとしての送気球25とを備えている。圧力インジケータ22はチューブ21内の圧力(即ち、バッグ本体11内の圧力)を表示する。クレンメ23は、チューブ21を圧縮変形させてチューブ21を閉じる弁として機能する。送気球25は、ゴム等からなるラグビーボール状の中空体であり、圧縮して押し潰すことでチューブ21を通じてバッグ本体11内に空気を送り込むことができる。送気球25は、加圧装置20内の空気を外界に逃がすための圧力開放弁26を備えている。
【0022】
バッグ本体11及び保持シート15は可撓性を有している。これにより、液状物が充填された袋状容器90の三次元的な形状に追従して変形することができるので、袋状容器90内の液状物をほとんど残らず押し出すことができる。
【0023】
バッグ本体11は、その内部に充填される空気を外部に漏らさないシール性と、その内部の圧力(例えば60kPa)によって破裂することがない機械的強度とを備えることが好ましい。バッグ本体11としては、上記の特性を満足すれば特に制限はなく、例えばポリ塩化ビニルシート、ポリエステルシート、またはこれらのシートに他の材料からなる層が積層された積層シートなどを用いることができる。また、バッグ本体11は、伸縮性を有する材料で構成されていてもよい。
【0024】
保持シート15は、バッグ本体11との間に配された袋状容器90を圧縮することができる機械的強度を有していることが好ましい。保持シート15の材料は、特に制限はないが、例えばナイロン糸、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルなどを用いることができる。また、保持シート15は、ポケット18内の袋状容器90を見ることができるように、例えばメッシュ状であってもよい。
【0025】
加圧バッグ10のポケット18に挿入される袋状容器90は、特に制限はなく、例えば経腸栄養療法において使用される、経腸栄養剤が充填されたパック(パウチ)を使用することができる。袋状容器90は、可撓性を有しており、圧縮することにより、スパウト91を通じて、その内部に収納された液状物を外界に押し出すことができる。
【0026】
以上のように構成された本実施の形態1の加圧バッグ10の使用方法を、PEGチューブを介して患者に液状物(経腸栄養剤)を投与する場合を例にとって以下に説明する。
【0027】
最初に、液状物が充填された袋状容器90のスパウト91と、患者の胃ろうに挿入されたPEGチューブとを、経腸栄養投与セットを介して接続する。このとき、経腸栄養投与セットに設けられたクレンメは閉じておく。
【0028】
次に、加圧装置20のクレンメ23及び圧力開放弁26を開いて、バッグ本体11の内部空間を外界と連通させる(この状態を、以下、バッグ本体11の「開放状態」という)。そして、上記の袋状容器90を、バッグ本体11と保持シート15との間のポケット18に挿入する。上記のようにクレンメ23及び圧力開放弁26を予め開いておくことにより、バッグ本体11の形状を自由に変えることができるので、袋状容器90をポケット18に容易に挿入することができる。図3は、ポケット18内に袋状容器90を保持させた加圧バッグ10の断面図である。バッグ本体11内の複数の球体31が袋状容器90の荷重を支えている。
【0029】
次に、圧力開放弁26を閉じ、送気球25を繰り返し圧縮して押し潰し、チューブ21を通じてバッグ本体11に空気を送り込む。バッグ本体11は、送り込まれた空気によって図4に示すように膨らみ、袋状容器90は、バッグ本体11と保持シート15とに挟まれて加圧される。圧力インジケータ22によりバッグ本体11内の圧力が所定値に達したのを確認すると、クレンメ23を閉じる。
【0030】
次に、経腸栄養投与セットに設けられたクレンメを開く。袋状容器90内の液状物は、スパウト91を通じて押し出され、患者の体内に送られる。
【0031】
液状物が押し出され、袋状容器90が平らに押し潰されたのを確認した後、クレンメ23及び圧力開放弁26を開いてバッグ本体11内の空気を外界に放出させる。そして、袋状容器90をポケット18から取り出す。
【0032】
本実施の形態1の加圧バッグ10では、バッグ本体11内に複数の球体31が内蔵されているので、バッグ本体11を構成するシート11aの内面とシート11bの内面とが接触してバッグ本体11がぺしゃんこになることはない。即ち、バッグ本体11の開放状態においても、図2及び図3に示すように、バッグ本体11内には所定量の空気が必ず入っている。従って、本実施の形態1では、バッグ本体11がぺしゃんこの状態から給気を開始する場合に比べて、バッグ本体11内の圧力を、袋状容器90内の液状物を押し出すのに必要な所定値まで高めるのに必要な送気球25の圧縮回数が少なくなる。その結果、送気球25を操作する作業者の負担が軽減される。
【0033】
しかも、バッグ本体11の開放状態において、バッグ本体11内の複数の球体31は外力により容易に移動することができるので、バッグ本体11の形状を容易に変化させることができる。従って、袋状容器90をポケット18に対して収納及び取り出す作業に対して、バッグ本体11に内蔵された複数の球体31はほとんど妨げとならない。
【0034】
上記の例では、バッグ本体11に複数の中空の球体31が内蔵されていたが、本発明においてバッグ本体11に内蔵される構造物は、これに限定されず、バッグ本体11の対向する内面同士が接触するのを防止することができる構造物であればよい。構造物は、バッグ本体11の対向する内面の少なくとも一部が互いに接触するのを防止することができればよい。即ち、バッグ本体11の対向する内面の一部が互いに接触している場合も本発明に含まれる。
【0035】
バッグ本体11に内蔵させることができる構造物の外形は、球体以外に、例えば多面体(例えば、正四面体、正六面体、正八面体、正十二面体、正二十面体などの正多面体)、柱状体(例えば円柱体、多角柱体)、ラグビーボール形状等など、いずれであっても良い。また、形状が個々に異なる不定形の構造物であっても良い。更に、形状が異なる複数種類の構造物を混合して内蔵してもよい。
【0036】
但し、バッグ本体11内で複数の構造物が互いに引っ掛かることなく容易に移動することができるように、また、バッグ本体11を傷付けることがないように、構造物の表面には鋭利な角や凹みが形成されていないことが好ましい。
【0037】
構造物は、加圧バッグ10を軽量化するために、低比重(低嵩密度)であることが好ましい。例えば、中空状構造物、骨組み構造物、又は表面に凹部が形成された構造物を用いることができる。
【0038】
中空状構造物においては、その外殻によって内部空間と外界とが完全に遮断されていてもよいし(例えばピンポン球のような形状)、その外殻に内部空間と外界とを連通させる貫通孔が形成されていてもよい。貫通孔が形成された中空状構造物の例として、図5Aに、外殻に複数の貫通孔32aが形成された中空の球状構造物32を示し、図5Bに、中空円柱状(円筒状)の構造物33を示す。
【0039】
骨組み構造物の例として、図5Cに、正十二面体形状を有する骨組み構造物34を示す。
【0040】
表面に凹部が形成された構造物の例として、図5Dに、中実の球体の表面に8つの凹部35aが形成された構造物35の例を示す。球体以外の構造物に凹部を形成してもよい。また、表面に形成された凹部は、構造物を貫通していてもよい。
【0041】
更に、多数の空洞(気泡)を内部に含む、いわゆる多孔質状の構造物や発泡材を用いることもできる。
【0042】
構造物が、外界と連通していない内部空間又は空洞を含む場合、バッグ本体11内の圧力によって構造物が圧縮変形してしまわない程度の機械的強度を有することが好ましい。
【0043】
バッグ本体11に内蔵させることができる構造物の材料は、特に制限はないが、例えば樹脂、金属などを用いることができる。特に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂材料を用いることが好ましい。
【0044】
(実施の形態2)
実施の形態1では、バッグ本体11内に複数の構造物が移動可能に内蔵されていた。これに対して、本実施の形態2では、バッグ本体11内に単一の骨組み構造物が内蔵されている。本実施の形態2の加圧バッグは、バッグ本体11に内蔵される構造体が異なる以外は実施の形態1と同じである。以下に、実施の形態1との相違点を中心に、本実施の形態2を説明する。
【0045】
図6は、本実施の形態2に係る加圧バッグのバッグ本体11に内蔵される直方体形状の骨組み構造物41の斜視図である。図7は、骨組み構造物41が内蔵された加圧バッグ10の、図2と同様の断面に沿った断面図である。骨組み構造物41が、バッグ本体11を構成するシート11aの内面とシート11bの内面とが接触するのを防止している。
【0046】
本実施の形態2の加圧バッグ10の構成は、上記以外は実施の形態1で説明した加圧バッグ10と同じである。
【0047】
本実施の形態2の加圧バッグ10の使用方法は、実施の形態1で説明した加圧バッグ10の使用方法と同じである。
【0048】
図8は、ポケット18内に液状物が充填された袋状容器90を収納した加圧バッグ10の断面図である。このとき、バッグ本体11は開放状態にある(即ち、加圧装置20のクレンメ23及び圧力開放弁26は開放されている。)。骨組み構造物41が袋状容器90の荷重を支えている。但し、袋状容器90の荷重によって、袋状容器90及びこれを支持するシート11aが骨組み構造物41内に沈み込んでいる。
【0049】
図8に示すように、袋状容器90をポケット18内に収納した後、実施の形態1と同様に、圧力開放弁26を閉じ、送気球25を繰り返し圧縮して押し潰し、チューブ21を通じてバッグ本体11に空気を送り込む。袋状容器90は徐々に浮き上がり、遂には、送り込まれた空気によってバッグ本体11は図9に示すように膨らみ、袋状容器90はバッグ本体11と保持シート15とに挟まれて加圧される。バッグ本体11内の圧力が所定値に達した後、クレンメ23を閉じ、経腸栄養投与セットに設けられたクレンメを開く。袋状容器90内の液状物はスパウト91を通じて押し出される。
【0050】
本実施の形態2の加圧バッグ10では、バッグ本体11内に骨組み構造物41が内蔵されているので、バッグ本体11を構成するシート11aの内面とシート11bの内面とが接触してバッグ本体11がぺしゃんこになることはない。従って、実施の形態1と同様に、送気球25を操作する作業者の負担が軽減される。
【0051】
また、本実施の形態2では、袋状容器90をポケット18内に適切に収納したときに、図8に示すように袋状容器90が骨組み構造物41内に沈み込むように設計することができる。これにより、袋状容器90のポケット18内での最適な挿入位置を作業者に容易に認識させることができるので、袋状容器90に対して常に安定した圧縮力を作用させることができる。
【0052】
上記の例では、バッグ本体11内に内蔵される骨組み構造物は直方体形状を有していたが、直方体形状以外の骨組み構造物を内蔵させてもよい。また、骨組み構造物の形状や寸法等によっては、袋状容器90をポケット18内に収納したときに図8に示したように袋状容器90が骨組み構造物内に沈み込まない場合もあるが、このような場合も本発明に含まれる。
【0053】
骨組み構造物の材料としては、実施の形態1で説明した構造物の材料と同じものを使用することができる。
【0054】
(実施の形態3)
実施の形態1,2では、バッグ本体11に内蔵される構造物は非圧縮性であった。しかしながら、本発明はこれに限定されない。即ち、バッグ本体11に圧縮性の構造物を内蔵させることもできる。ここで、「圧縮性」とは、バッグ本体11の外部から加えられる押力に対して圧縮可能であることを意味する。構造物は、実施の形態1,2の構造物と同様に、バッグ本体11内の圧力(空気圧)に対しては非圧縮性である(即ち、嵩体積が減少しない、又は、変形しない)ことが好ましい。バッグ本体11に送り込んだ空気によって構造物が圧縮されてしまうと、バッグ本体11内の圧力を、袋状容器90内の液状物を押し出すのに必要な所定値まで高めるのに必要な送気球25の圧縮回数を少なくすることができないからである。
【0055】
このような圧縮性の構造物としては、特に限定はないが嵩高な材料、例えばスポンジ、綿、羽毛の他、クッション材として公知の材料などを例示することができる。液状物が充填された袋状容器90の荷重程度の軽負荷が印加されたときの圧縮性の構造物の嵩体積の減少量は小さいことが好ましい。
【0056】
バッグ本体11に圧縮性の構造物を内蔵させた場合も、実施の形態1,2と同様に、バッグ本体11を構成するシート11aの内面とシート11bの内面とが接触してバッグ本体11がぺしゃんこになることがない。従って、送気球25を操作する作業者の負担が軽減される。
【0057】
また、加圧バッグを使用しないときには、圧縮性の構造物が内蔵されたバッグ本体11を圧縮して薄くすることができるので、収納や運搬の利便性が向上する。
【0058】
上記の実施の形態1〜3は例示に過ぎず、本発明はこれらに限定されず、適宜変更して実施することができる。
【0059】
例えば、加圧バッグの構成は上記の例に限定されず、例えばバッグ本体11に内蔵される構造体を除いて公知の加圧バッグを用いることができる。
【0060】
バッグ本体11の構成も上記に限定されない。例えば、バッグ本体を構成するシートの形状や数は任意に変更できる。また、バッグ本体を、ブロー成形などにより、シール領域を設けないで一体に形成することもできる。
【0061】
保持シート15の形状、材料、バッグ本体11への取付方法や取付位置なども上記に限定されない。バッグ本体との間に、袋状容器90を収納するポケット18を形成することができ、バッグ本体を膨らませたときに、バッグ本体との間で袋状容器90を圧縮することができればよい。
【0062】
更に、加圧装置の構成も、上記に限定されない。圧力開放弁26が、送気球25ではなく、チューブ21に設けられていてもよい。クレンメ23や圧力開放弁26に代えて、三方活栓等を用いてもよい。ポンプとしては、送気球25に限定されず、ピストンなど公知の送気装置を用いてもよい。あるいは、例えば電動式のエアポンプを用いてもよい。また、上記の例では圧力インジケータや圧力開放弁が加圧装置に設けられていたが、これらがバッグ本体に直接取り付けられていてもよい。また、バッグ本体内の圧力が所定値以上に上昇したときに自動的に開となる減圧弁がバッグ本体又は加圧装置に設けられていてもよい。
【0063】
バッグ本体を膨らませる流体として、空気以外の気体を用いてもよい。また、気体ではなく液体を用いてもよい。
【実施例】
【0064】
加圧バッグとして、テルモ株式会社のPG加圧バッグ(テルモ株式会社製、品番PE−PR40H、Lot.H0801)を3つ用意した。
【0065】
PG加圧バッグの1つには、バッグ本体内に、直径20mmの中空の樹脂球を50個封入した(これを「実施例1」とする)。PG加圧バッグの別の1つには、バッグ本体内に、約90mm×200mm×40mmの直方体形状のスポンジブロックを封入した(これを「実施例2」とする)。PG加圧バッグの残りの1つは何ら加工を施さなかった(これを「比較例」とする)。
【0066】
上記実施例1,2及び比較例の各PG加圧バッグのポケットに、袋状容器として、テルミールPGソフト400kcal/267g(テルモ株式会社製、品番PE−15CP040、Lot.16062)を収納した。このとき、袋状容器のキャップをはずさず、スパウト部分のみを加圧バッグのメッシュ状の保持シートからはみ出させた。
【0067】
次いで、手でバッグ本体を押してバッグ本体内の空気を抜いた。実施例2では、バッグ本体を手で押すと内蔵されたスポンジブロックは押し潰されたが、手を離すとスポンジブロックによってその上に載置された袋状容器が持ち上げられた。
【0068】
次いで、PG加圧バッグに附属の送気球を押し潰しバッグ本体内に空気を送り込んだ。バッグ本体内の圧力が、このPG加圧バッグの推奨設定圧力である40kPaに昇圧するのに必要な送気球の操作回数(押し潰し回数)を計測した。
【0069】
試験は、実施例1,2及び比較例で各5回ずつ行い、送気球の操作回数の平均と標準偏差を求めた。
【0070】
結果(平均±標準偏差)は、
・実施例1:40.4回±2.7回
・実施例2:30.2回±1.3回
・比較例 :52.0回±1.2回
であった。
【0071】
バッグ本体内に構造物を内蔵させた実施例1,2は、比較例に比べて、送気球の少ない操作回数で推奨設定圧力に到達させることができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の利用分野は特に制限はないが、例えば経腸栄養療法を行う際に、袋状容器内の経腸栄養剤を押し出すための加圧バッグとして利用することができる。また、経腸栄養療法以外の分野、例えば介護等においても利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 加圧バッグ
11 バッグ本体
11a,11b シート
12 シール領域
13 連通管
15 保持シート
18 ポケット
20 加圧装置
21 チューブ
22 圧力インジケータ
23 クレンメ
25 送気球(ポンプ)
26 圧力開放弁
31 球体(構造物)
32 中空の球状構造物
33 中空の円柱状構造物
34 骨組み構造物
35 表面に凹部が形成された構造物
41 骨組み構造物
90 袋状容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する袋状のバッグ本体と、前記バッグ本体に取り付けられた可撓性を有する保持シートと、前記バッグ本体に流体を送り込むポンプとを備え、前記バッグ本体と前記保持シートとの間に、液状物が充填された袋状容器を保持させた状態で、前記ポンプを用いて前記バッグ本体内に流体を送り込み前記バッグ本体を膨らませることによって、前記袋状容器を加圧し前記袋状容器内の前記液状物を押し出す加圧バッグであって、
前記バッグ本体の対向する内面同士が接触するのを防止する構造物が前記バッグ本体に内蔵されていることを特徴とする加圧バッグ。
【請求項2】
前記構造物が前記バッグ本体内に複数個内蔵されており、前記複数個の構造物が前記バッグ内で移動可能である請求項1に記載の加圧バッグ。
【請求項3】
前記構造物が、中空状物、骨組み構造物、表面に凹部が形成された構造物、多孔質状構造物、又は、発泡材である請求項1に記載の加圧バッグ。
【請求項4】
前記構造物は、非圧縮性である請求項1に記載の加圧バッグ。
【請求項5】
前記構造物は、前記バッグ本体の外部から加えられる押力に対して圧縮性であり、且つ、前記バッグ本体内の前記流体の圧力に対しては非圧縮性である請求項1に記載の加圧バッグ。
【請求項6】
前記構造物が、スポンジ、綿、及び、羽毛からなる群から選ばれた少なくとも一つを含む請求項5に記載の加圧バッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−207345(P2010−207345A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55345(P2009−55345)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】