説明

加工塩およびその製造方法。

【課題】 有用な成分を含む塩を製造する。
【解決手段】 耐熱性の密閉容器10に玄米等の穀物と塩を収容して加熱することにより、穀物を炭化させるとともに、この炭化に伴って生じる熱分解生成物を塩に付着させる。この塩は、殺菌性,防かび性,脱臭性等に優れ、整腸にも役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工塩およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人または動物の健康等の観点から、種々の成分を含む加工塩が開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願人は、穀物等の炭化対象物を用いて特異な成分を含む加工塩を得ることを発案し、有用な塩の開発に成功した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係わる加工塩は、炭化対象物の炭化に伴って生じる生成物を付着してなる。この加工塩は、殺菌性,防かび性,脱臭性に優れ、かつ整腸作用もある。
【0005】
本発明に係わる塩の製造方法は、耐熱性の密閉容器に炭化対象物と塩を収容して加熱することにより、炭化対象物を炭化させるとともに、この炭化に伴って生じる生成物を塩に付着させる。これによれば、確実にかつ効率良く炭化対象物の炭化に伴う生成物を塩に付着させることができる。また、炭化対象物の炭化物も、防かび材,脱臭材,濾過材,整腸作用のある動物の飼料等に利用できる。
【0006】
上記方法の態様の一つは、上記炭化対象物と塩とをほぼ均一に混合して上記密閉容器に収容する。これによれば、塩と炭化対象物の炭化物が混ざっているので、一緒に用いる場合に都合が良い。
他の態様では、炭化対象物と塩とを上記密閉容器の異なる領域に区分けし、かつ隣接して収容する。これによれば、炭化対象物を一体化させてなる炭ブロックは、搬送に便利である。また、ユーザーは炭ブロックの原形状のまま用いたり、小ブロックに割ったり粒状,粉状にすることにより、種々の形態での使用が可能である。
【0007】
好ましくは、上記密閉容器には逃がし穴が形成されており、この逃がし穴から密閉容器内の圧力の一部を逃がす。これにより、密閉容器の内圧が過剰に高くなるのを防止できる。
【0008】
好ましくは、上記加熱温度が塩の融点を下回る温度である。これにより炭化に伴う生成物を確実かつ良好に付着させることができる。
【0009】
好ましくは、上記炭化対象物が穀物であり、さらに好ましくは生米である。他に炭化対象物としては、海藻,胡椒等の食用の炭化対象物を用いることができるし、食用以外の炭化対象物を用いてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、炭化対象物の炭化の際に生じる生成物を塩に付着することにより、特異かつ有用な加工塩が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、加工塩を製造するために用いられる装置について説明する。図1に示すように、この製造装置は、耐熱性,耐圧性の密閉容器10と、炉20とを備えている。密閉容器10の材質としては、ステンレス,チタン,セラミック等が用いられる。
【0012】
上記密閉容器10は、開口端周縁にフランジ11aを有する容器本体11と、蓋12とを有している。容器本体11のフランジ11aに蓋12の周縁部を当接させ、ボルト13aとナット13bからなる締結手段13で締め付けることにより、蓋12が取り付けられる。
【0013】
上記蓋12には逃がし穴12aが形成されており、この逃がし穴12aには、ガス抜き管14が接続されている。このガス抜き管14には圧力計付きの開閉弁15が設けられている。
【0014】
上記炉20は、ガスバーナ25(加熱手段)を装備している。
【0015】
次に、上記装置を用いた塩の製造方法の一実施形態について説明する。炭化対象物として玄米(好ましくは食用に適さなくなった古米)と、一般に用いられている食塩とを用意し、これらを均一に混合し、この混合原料を容器本体11に収容した後、上記締付手段13により蓋12を容器本体11に取り付ける。
【0016】
次に、上記混合原料を収容した密閉容器10を予めガスバーナ25で加熱された炉30内に入れ、塩の融点800℃より低い温度で加熱する。好ましくは塩の融点より50℃未満だけ下回る温度で加熱する。これにより、玄米は蒸し焼き状態となって炭化される。
【0017】
上記玄米が炭化される過程で、ガス化した熱分解生成物(煤を含む)が密閉容器10内に充満し、高圧下で塩に付着する。これにより、特異な成分の加工塩が得られる。密閉容器10内の圧力の一部は、逃がし穴12aから抜け、密閉容器10内が過剰に高圧となって破壊されるのを防止する。
【0018】
次に、具体例について説明する。それぞれ玄米と塩を1Kgずつ密閉容器10に収容する。炉20内での加熱温度は790℃である。圧力計が1.5Kg/cmmに達したら弁15を開く。これによりガスおよび水分を逃がす。なお、加熱開始から開弁までの所要時間は約30秒である。開弁から加熱終了までの時間は約40分である。なお、開閉弁15は省いてもよい。
【0019】
上記のように玄米を1Kg重量部,食塩を1Kgで混合した場合、玄米の炭化物は400gとなり重量が60%減少し,加工塩は800gとなり重量が20%減少した。
上記のようにして生成された加工塩100g中の成分を分析すると下記の通りであった。
1)水分 0.2g(常圧加熱乾燥法による。)
2)脂質 0.1g未満(ソックスレー抽出法による。)
3)たんぱく質 0.3g(ケルダール法による。ただし、窒素・たんぱく質換算係数を6.25とする。)
4)炭水化物 1.4g
5)灰分 98.1g(直接灰化法による。)
なお、炭水化物は、100−(水分+脂質+たんぱく質+灰分)の式から計算した。
【0020】
加工塩100g中のナトリウムは、37.1g(原子吸光光度法による)だった。このナトリウム量から塩化ナトリウム量を換算すると、94.2gであり、残りの3.9gが塩化ナトリウム以外の灰分である。
【0021】
上記加工塩100gのエネルギーは、7Kcalであった。ただし、栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)によるエネルギー換算係数:たんぱく質,4;脂質,9;炭水化物,4に基づく。
なお、上記水分は製造後検査までの間に加工塩が吸湿したために存在するものと推測される。
【0022】
上記加工塩は黒色をなし、通常の食塩に比べて殺菌性,脱臭性,防かび性が高い。例えば、糠みそに少量混ぜることにより、かびの発生を抑制することができる。また、整腸作用を有しているので、通常の食塩の代わりに料理に用いることもできる。肉料理に用いる場合には臭み消しになる。
【0023】
上記製造方法では、上記組成の加工塩とともに、玄米の炭化物も得られる。この炭化物は玄米と同形状をなし、軽量で表面積が大きい。上記塩と炭化物はそれぞれ単独であるいは生成時の混合物のまま、牛,豚,鶏等の飼料に用いることができる。これによれば、動物の整腸に役立ち、また糞の匂いを減少させるのに役立つ。
【0024】
上記玄米の炭化物は、さらに、脱臭剤,濾過剤,土壌改良剤,防かび剤に用いることができ、優れた効果を発揮する。特に糠用の防かび剤として用いると、本領を発揮する。糠と炭の粉はともに原料が米であるから相性が良く、また、木炭や竹炭に比べて比重が軽く、糠に良好に混合することができるからである。糠100重量%に上記炭化物を5〜10重量%混合して糠床を作ったところ、かびの発生が殆ど見られなかった。なお、炭化物が10重量%を超えると、発酵が抑制されてしまう。
【0025】
次に本発明の第2実施形態について説明する。この実施形態では、図2に示すように容器10の収容空間Sの両端部領域S1,S2に塩を収容し、中間部領域S3に玄米を収容する。他は第1実施形態と同様である。この方法では、容器10内で高いガス圧を受けるため、玄米が炭化の過程で一体化され、炭ブロックとなる。この炭ブロックは、消費者への搬送に便利である。炭ブロックはそのままで、あるいは小さいブロックに割って、あるいは米粒程度にしたり粉状にして用いることができる。炭ブロックは、炭化米粒からなるので、簡単に割ることができ、また、大きな力を用いずに粒状,粉状にすることができる。製造された加工塩と炭は、第1実施形態と同様に用いることができる。
【0026】
なお、炭ブロックをそのままか、適宜大きさにしたブロックを、米を炊くときに釜内に入れておくと、古米でも美味となる。この炭ブロックは炭化米粒からできているので、釜内にいれても心理的な抵抗はない。また、他の原料の炭材に比べて非常に軽いので、ご飯に入らず浮いた状態で炊くことができる。
【0027】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の態様を採用可能である。原料となる穀物は、玄米のみならず、精米,籾殻付きの生米であってもよいし、米糠であってもよい。また、米以外の穀物例えば小麦,大豆等でもよい。また、穀物以外に海藻や胡椒を用いても良い。
加熱手段は電気ヒータであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係わる塩を製造するための装置の一例を示す断面図である。
【図2】上記製造装置の密閉容器における塩と穀物の配置例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0029】
10 耐熱密封容器
25 ガスバーナ(加熱手段)
S1,S2,S3 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化対象物の炭化に伴って生じる生成物を付着してなることを特徴とする加工塩。
【請求項2】
耐熱性の密閉容器に炭化対象物と塩を収容して加熱することにより、炭化対象物を炭化させるとともに、この炭化に伴って生じる生成物を塩に付着させることを特徴とする加工塩の製造方法。
【請求項3】
上記密閉容器には逃がし穴が形成されており、この逃がし穴から密閉容器内の圧力の一部を逃がすことを特徴とする請求項2に記載の加工塩の製造方法。
【請求項4】
上記加熱温度が塩の融点を下回る温度であることを特徴とする請求項2または3に記載の加工塩の製造方法。
【請求項5】
上記炭化対象物が穀物であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の加工塩の製造方法。
【請求項6】
上記穀物が生米であることを特徴とする請求項5に記載の加工塩の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−166825(P2006−166825A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365311(P2004−365311)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(504463947)
【Fターム(参考)】