説明

加工用ブラシ

【課題】複雑な加工工程を省略することによって、コストダウンを図ることができると共に、所定の強度を確保することができる加工用ブラシを提供する。
【解決手段】加工用ブラシ1は、略円柱状の台座2の上面に固定手段3によって、チャンネルブラシ4が固定されているものであり、このチャンネルブラシ4は、ブラシ片4aが芯線4b及び帯状体4cにて挟みつけられた長尺な1本のチャンネルブラシ4を渦巻き状に形成した後、固定手段3によって、台座2の上面に固定されているのである。尚、チャンネルブラシ4は、芯線4bが無い、ブラシ片4aと帯状体4cにて構成されたものを適用することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄、清掃、研削、塗布等に使用される各種加工用ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加工用ブラシとしては、曲率半径が少しずつ異なるチャンネルブラシを隣接させた状態でプレートに溶接固定したものがある(特許文献1)。
また、同様の加工用ブラシとして、基台の片面にリング状のブラシ素材を同心状にして複数設けた構成のものがある(特許文献2)。
さらに、加工用ブラシではなく、洗浄用ブラシとして、チャンネルブラシを筒状に横巻き成形した横巻きチャンネルブラシが知られている(特許文献3)。
また、同様の洗浄用ブラシとして、円形の台座に植毛されるブラシ毛の配列を工夫して洗浄液がブラシの回転方向に応じてブラシに流入し、且つブラシから流出するようにしたものがある(特許文献4)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−173146号公報
【特許文献2】特許第3030539号公報
【特許文献3】実用新案登録第3123774号公報
【特許文献4】特開2007−54310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2及び4のブラシを製造するには、いずれも複雑な加工工程を必要としており、製造コストが高くなっていた。また、特許文献3のブラシの製造は比較的容易なものの、洗浄ブラシであるため必要な強度が確保できず、バリ取り等の加工用ブラシに適用するのは困難であった。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、複雑な加工工程を省略することによって、コストダウンを図ることができると共に、所定の強度を確保することができる加工用ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、被加工面の研削、研磨、表面処理、洗浄、ばり取り等の加工をする為の加工用ブラシにおいて、前記加工用ブラシは、台座、チャンネルブラシ、及び前記チャンネルブラシを前記台座に固定する為の固定手段を有し、前記チャンネルブラシは、ブラシ片が帯状体のみ或いは芯線及び帯状体にて挟み付けられて形成されてあると共に、渦巻き状に形成されてあり、前記台座にたいして前記固定手段にて取り付けられてあることに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、チャンネルブラシ間に渦巻き状の連続通路を有するように前記チャンネルブラシが台座にたいして固定手段にて取り付けられてあることに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、チャンネルブラシの両端部のみが台座にたいして固定手段にて取り付けられてあることに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、渦巻き状に形成されたチャンネルブラシの外周部の略1周分のみが台座にたいして固定手段にて取り付けられてあることに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において、渦巻き状に形成されたチャンネルブラシを構成するブラシ片の端部が、前記渦巻き状の内周部になる程、螺旋状に突出して形成されてあることに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明においては、チャンネルブラシが渦巻き状に形成されてある為、チャンネルブラシに繋ぎ目が無い。その為、加工用ブラシは、繋ぎ目にて強度が変化する事が無く、均一かつ高い強度を維持できると共に、高い耐久性を有する。また、チャンネルブラシが渦巻き状に形成されてある為、渦巻き形状は弾性を有する事ができ、渦巻き形状のR部の曲率を任意に設定あるいは変化させることができる。また、加工用ブラシは、渦巻き状のチャンネルブラシが固定手段にて台座に取り付けられてある為、渦巻き形状を維持しつつ被加工面にたいして強い押付力を付与できる。その為、高い研削力を発揮できる。また、チャンネルブラシを隣接する帯状体が互いに当接するよう密接させて渦巻き状に形成した場合には、帯状体が極めて変形しにくく、かつ渦巻き形状を維持しながら被加工面に押付ける事ができる為、高い耐久性を発揮できる。また、ブラシ片は渦巻き状に形成されてある為、加工用ブラシの回転中心にたいして同心のブラシマークがつくことを防止できる。その為、加工ムラが無く、かつ高い研削力を維持できる。さらにまた、チャンネルブラシが渦巻き状に形成されてある為、ブラシ片が加工用ブラシの回転方向にたいして斜め方向に順次当接できる為、高い研削力を維持できると共に、除去されたばり等をチャンネルブラシ内に滞留させる事無く、外部へ排出できる。また、1本のチャンネルブラシにて、即時に多重巻きの渦巻き状ブラシ片を有する加工用ブラシを製作できる為、加工コストの大幅な低減が図れる。
【0012】
請求項2の発明においては、加工用ブラシは、チャンネルブラシ間に渦巻き状の連続通路を有している為、外周部から内周部に向かう連続通路の渦巻き方向と同一の回転方向にて加工用ブラシを使用した場合においては、除去されたばり等のゴミを通路内を通して加工用ブラシの外部へ排出できる。また、上記回転方向と逆方向に回転方向を設定した場合においては、除去されたばり等のゴミを通路内に一時保持できる。さらにまた、加工用ブラシは、連続通路に洗浄水あるいは洗浄油等を一時保持できる為、円滑な加工が可能となり、かつ除去されたばり等のゴミが被加工面に再付着することを防止できる。
【0013】
請求項3の発明においては、チャンネルブラシの両端部のみが台座に固定されているので、両端部以外の中間部をスライドさせることができ、衝撃力を吸収して高研削力を発揮させることができる。
【0014】
請求項4の発明においては、渦巻き状に形成されたチャンネルブラシの外周部の略1周分のみが台座にたいして固定されているので、加工時に、略1周分以外のチャンネルブラシの内周部が被加工面への押付力にたいする反力を吸収することができる為、高い耐久性を確保することができる。
【0015】
請求項5の発明においては、渦巻き状の内周部になる程、螺旋状に突出して形成されてあるので、被加工面に段差や凹凸があった場合でも加工残りをする事無く、均一に加工することができ、高い研削力を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態を示す正面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。この図に示すように、加工用ブラシ1は、略円柱状の台座2の上面に固定手段3によって、チャンネルブラシ4が固定されているものであり、このチャンネルブラシ4は、ブラシ片4aが芯線4b及び帯状体4cにて挟みつけられた長尺な1本のチャンネルブラシ4を渦巻き状に形成した後、固定手段3によって、台座2の上面に固定されているのである。尚、チャンネルブラシ4は、芯線4bが無い、ブラシ片4aと帯状体4cにて構成されたものを適用することも可能である。ここで、固定手段3は、固定具を使用する方法と、接合する方法のいずれの方法でも可能であり、固定具を使用する場合の一例として、はとめ(カシメ)、リベット、ネジ、ピン(止め又は圧入)、面ファスナー、結束バンド、両面テープ等を適用できる。また、接合する方法としては、溶接、接着、圧着等を適用できる。本実施形態の加工用ブラシ1においては、固定手段3として溶接が採用されてある。
【0017】
上述のように、加工用ブラシ1は、1本のチャンネルブラシ4を渦巻き状に形成しているので、チャンネルブラシ4に繋ぎ目が無い。その為、加工用ブラシ1は、繋ぎ目にて強度が変化する事が無く、均一かつ高い強度を維持できると共に、高い耐久性を有する。また、チャンネルブラシ4が渦巻き状に形成されてあることによって、渦巻き形状は弾性を有する事ができ、渦巻き形状のR部の曲率を任意に設定あるいは変化させることができる。また、加工用ブラシ1は、渦巻き状のチャンネルブラシ4が固定手段3にて台座2に取り付けられてある為、渦巻き形状を維持しつつ被加工面にたいして強い押付力を付与できる。その為、高い研削力を発揮できる。また、チャンネルブラシ4を隣接する帯状体4cが互いに当接するよう密接させて渦巻き状に形成した場合には、帯状体4cが極めて変形しにくく、かつ渦巻き形状を維持しながら被加工面に押付ける事ができる為、高い耐久性を発揮できる。また、ブラシ片4aは渦巻き状に形成されてある為、加工用ブラシ1の回転中心にたいして同心のブラシマークがつくことを防止できる。その為、加工ムラが無く、かつ高い研削力を維持できる。さらにまた、チャンネルブラシ4が渦巻き状に形成されてあることによって、ブラシ片4aが加工用ブラシ1の回転方向にたいして斜め方向に順次当接できる為、高い研削力を維持できると共に、除去されたばり等をチャンネルブラシ4内に滞留させる事無く、外部へ排出できる。
【0018】
図2は、図1(a)の加工用ブラシ1をX方向から見た側面図である。この図に示すように、チャンネルブラシ4の端部には、被加工面を掻き取るための掻取部5が形成されている。この掻取部5は、加工用ブラシ1の回転方向にたいして被加工面上のばり等のごみをすくい取るように形成されてある為、掻取部5にて被加工面上に強固にこびりついたばり等のごみを剥離させる事ができる。
【0019】
図3(a)は、本発明の第2実施形態を示す正面図であり、図3(b)は、図3(a)のB−B断面図である。この実施形態の加工用ブラシ11は、チャンネルブラシ4間に渦巻き状の連続通路6を有するように、チャンネルブラシ4がスペーサー7にたいして固定手段13、及び33にて取り付けられてあると共に、スペーサー7は台座2にたいして固定手段23にて取り付けられてある。スペーサー7は金属、非金属等の板金絞り加工の概円盤状の板状体であり、渦巻き状のチャンネルブラシ4を装着するための渦巻き状の溝部9が形成されてあると共に、円周方向に放射状の複数の穴部10が形成されてある。加工用ブラシ11はチャンネルブラシ4をスペーサー7の溝部9に装着後、スペーサー7の下面から穴部10を通して溶接による固定手段13にてチャンネルブラシ4とスペーサー7とが固定されてある。また、チャンネルブラシ4はスペーサー7にたいしてスペーサー7の上面から溶接による固定手段33にてチャンネルブラシ4とスペーサー7とが固定されてある。また、スペーサー7は台座2にたいして溶接による固定手段23にて固定されてある。このように、渦巻き状の連続通路6を設けることによって、加工用ブラシ11の回転方向を時計回り方向に設定することにより、除去されたばり等のゴミを連続通路6内を通して加工用ブラシ11の外部へ排出できる。また、上記回転方向と逆方向に回転方向を設定した場合においては、除去されたばり等のゴミを連続通路6内に一時保持できる。さらにまた、加工用ブラシ11は、連続通路6に洗浄水あるいは洗浄油等を一時保持できる為、円滑な加工が可能となり、かつ除去されたばり等のゴミが被加工面に再付着することを防止できる。
【0020】
図4(a)は本発明の第3実施形態を示す正面図であり、図4(b)は図4(a)のD−D断面図である。この実施形態の加工用ブラシ71は、渦巻き状のチャンネルブラシ4の両端部のみが台座2にたいして溶接による固定手段33にて固定されてある。その為、加工用ブラシ71を用いた加工時においては、チャンネルブラシ4の両端部以外の中間部がスライドすることができ、被加工面からの衝撃力を吸収して高い研削力を発揮できる。
【0021】
図5(a)は、本発明の第4実施形態を示す正面図であり、図5(b)は、図5(a)のC−C断面図である。この実施形態の加工用ブラシ21は、渦巻き状に形成されたチャンネルブラシ4の外周部の略1周分の範囲における数ヶ所が台座2にたいして固定手段3にて取り付けられている。また、チャンネルブラシ4の内周部は、概たけのこ状になる様、台座2にたいして段差を有して形成されてある。このように構成することによって、加工時に、略1周分以外のチャンネルブラシ4の内周部が被加工面への押付力にたいする反力を吸収することができる為、高い耐久性及び高い研削力を確保することができる。
【0022】
図6(a)は、本発明の第5実施形態を示す断面図であり、図6(b)は、本発明の第6実施形態を示す断面図である。図6(a)に示す加工用ブラシ31は、渦巻き状に形成されたチャンネルブラシ14を構成するブラシ片14aの端部が、前記渦巻き状の内周部になる程、螺旋状に突出して形成されてあり、固定手段3にてチャンネルブラシ14は台座2に固定されてある。このような構成とすることによって、被加工面に段差や凹凸があった場合でも加工残りをする事無く、均一に加工することができ、高い研削力を確保することができる。また、図6(b)に示す加工用ブラシ41のように、渦巻き状に形成されたチャンネルブラシ24を構成するブラシ片24aの端部が、前記渦巻き状の内周部になる程、螺旋状にくぼんで形成されたものも同様の効果を奏することができる。
【0023】
図7(a)は、本発明の第7実施形態を示す正面図であり、図7(b)は、本発明の第8実施形態を示す正面図である。図7(a)に示す加工用ブラシ51では、渦巻き状に形成されたチャンネルブラシ34の外周形状を、六角形状としている。また、図7(b)に示す加工用ブラシ61では、渦巻き状に形成されたチャンネルブラシ44の外周形状を、星型状としている。チャンネルブラシ34、44をこのような、外周形状とすることによって、加工用ブラシ51、61を回転させて被加工面に当接して場合に、被加工面上に突出しているばり等を六角形状や星型状の外周の突出部によって効率よく除去でき、高い研削力を維持することができる。
【0024】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の実施形態をとることができることは言うまでもない。例えば、上記第1実施形態で説明した掻取部5は、他の第2実施形態〜第8実施形態においても形成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のブラシは洗浄、清掃、研削、塗布等に使用される各種加工用ブラシとして使用する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態を示す正面図及び断面図
【図2】第1実施形態の掻取部を示す側面図
【図3】本発明の第2実施形態を示す正面図及び断面図
【図4】本発明の第3実施形態を示す正面図及び断面図
【図5】本発明の第4実施形態を示す正面図及び断面図
【図6】本発明の第5、第6実施形態を示す断面図
【図7】本発明の第7、第8実施形態を示す正面図
【符号の説明】
【0027】
1、11、21、31、41、51、61、71 加工用ブラシ
2 台座
3、13、23、33 固定手段
4、14、24、34、44 チャンネルブラシ
4a、14a、24a ブラシ片
4b 芯線
4c 帯状体
5 掻取部
6 連続通路
7 スペーサー
9 溝部
10 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工面の研削、研磨、表面処理、洗浄、ばり取り等の加工をする為の加工用ブラシにおいて、前記加工用ブラシは、台座、チャンネルブラシ、及び前記チャンネルブラシを前記台座に固定する為の固定手段を有し、前記チャンネルブラシは、ブラシ片が帯状体のみ或いは芯線及び帯状体にて挟み付けられて形成されてあると共に、渦巻き状に形成されてあり、前記台座にたいして前記固定手段にて取り付けられてあることを特徴とする加工用ブラシ。
【請求項2】
チャンネルブラシ間に渦巻き状の連続通路を有するように前記チャンネルブラシが台座にたいして固定手段にて取り付けられてあることを特徴とする請求項1に記載の加工用ブラシ。
【請求項3】
チャンネルブラシの両端部のみが台座にたいして固定手段にて取り付けられてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工用ブラシ。
【請求項4】
渦巻き状に形成されたチャンネルブラシの外周部の略1周分のみが台座にたいして固定手段にて取り付けられてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加工用ブラシ。
【請求項5】
渦巻き状に形成されたチャンネルブラシを構成するブラシ片の端部が、前記渦巻き状の内周部になる程、螺旋状に突出して形成されてあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の加工用ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−295633(P2008−295633A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143393(P2007−143393)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】