説明

加工装置の冷却システム

【課題】加工装置のスピンドルアセンブリを経済的に冷却可能な加工装置の冷却システムを提供することである。
【解決手段】水供給源6から供給された水を濃縮排水と純水とに分離する逆浸透膜モジュール4A、4Bと、水供給源6から逆浸透膜モジュール4A,4Bに供給される水を加圧する加圧ポンプ14と、逆浸透膜モジュール4A,4Bからの濃縮排水を排水する排水経路26と、加圧ポンプ14より上流側に接続される排水戻り経路36と、逆浸透膜モジュール4A,4Bで生成された純水が流出する純水流出経路18と、排水経路26と排水戻り経路36との分岐点に配設された開閉バルブ30と、開閉バルブ30より上流側から分岐して、又は排水戻り経路36から分岐してスピンドルアセンブリ46を冷却するための冷却水を導入する冷却水導入路58と、スピンドルアセンブリ46から排出される冷却水を排水経路26に戻す冷却水排出路60と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水を簡易的に生成可能な純水生成装置に接続される加工装置の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイス製造プロセスにおいては、ICやLSI等の複数の半導体デバイスが表面に形成された半導体ウエーハは、その裏面側が研削装置によって研削されて所望の厚みに薄肉化される。その後、薄肉化された半導体ウエーハを切削装置で個々の半導体デバイスに分割することで複数の半導体デバイスが製造される。
【0003】
研削装置は半導体デバイス等の被加工物を保持する保持テーブルと、保持テーブルに保持された被加工物を研削する研削ホイールと、研削ホイールを回転させるスピンドルを含むスピンドルアセンブリとを備えている。研削ホイールが6000rpm程度で回転しつつ保持テーブルで保持された被加工物に当接することで被加工物の研削が遂行される。
【0004】
一方、切削装置は半導体ウエーハ等の被加工物を保持する保持テーブルと、保持テーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードと、切削ブレードを回転させるスピンドルを含むスピンドルアセンブリとを備えている。切削ブレードが30000rpm程度の高速で回転しつつ保持テーブルに保持された被加工物に切り込むことで被加工物の切削が遂行される。
【0005】
これらの研削装置や切削装置では、加工に伴う加工屑を除去する目的又は加工に伴って発生する加工熱を冷却する目的等のために、加工水を供給しながら研削又は切削が遂行される。
【0006】
半導体デバイス上に極微量でも不純物が残っていると半導体デバイスの品質に重大な影響を及ぼす。そのため、半導体デバイスの製造プロセスでは純水が洗浄水や加工水として用いられており、これらの研削装置や切削装置においても加工水として純水が使用されている。
【0007】
純水とは比抵抗値が約1〜10MΩ・cmの水を指し、純水は市水をフィルタ、活性炭フィルタ、イオン交換樹脂や逆浸透膜に通過させることで生成され、例えば特開2000−189760号公報に開示されるような純水製造装置が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−189760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、研削装置の研削ホイールを回転するスピンドル及び切削装置の切削ブレードを回転するスピンドルは高速で回転されるため、スピンドルを含むスピンドルアセンブリの内部にはスピンドルの回転に伴う発熱を冷却する目的で、冷却水を流通させる冷却水路が形成されており、スピンドルアセンブリの冷却水としても純水が一般的に使用されている。
【0010】
ところが、純水は非常に高価であり、スピンドルアセンブリの冷却水として純水を使用することは経済的ではない。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加工装置のスピンドルアセンブリを経済的に冷却可能な加工装置の冷却システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、スピンドルアセンブリを備えた加工装置の冷却システムであって、水供給源と、該水供給源から供給された水を濃縮排水と純水とに分離する逆浸透膜モジュールと、該水供給源から該逆浸透膜モジュールへ水を供給する水供給経路と、該水供給経路上に設けられ、該逆浸透膜モジュールに供給される水を加圧する加圧ポンプと、該逆浸透膜モジュールからの濃縮排水を排水する排水経路と、該排水経路から分岐して該水供給経路の該加圧ポンプより上流側に接続される排水戻り経路と、該逆浸透膜モジュールで生成された純水が流出する純水流出経路と、該排水経路と該排水戻り経路との分岐点より下流側の該排水経路上に配設された開閉バルブと、該排水経路の該開閉バルブより上流側から分岐して、又は該排水戻り経路から分岐して該スピンドルアセンブリに接続され、該スピンドルアセンブリを冷却するための冷却水を導入する冷却水導入路と、該スピンドルアセンブリと該排水経路の該開閉バルブより上流側に接続され、該スピンドルアセンブリから排出される冷却水を該排水経路に戻す冷却水排出路と、を具備したことを特徴とする加工装置の冷却システムが提供される。
【0013】
好ましくは、加工装置の冷却システムは、排水経路、排水戻り経路、又は純水流出経路の何れかの経路上に配設された純水濃度を計測する純水濃度計測手段を更に具備し、該純水濃度計測手段で計測した純水濃度に基づいて前記開閉バルブの開閉が制御される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、純水生成装置からの排水を加工装置におけるスピンドルアセンブリの冷却水として使用できるため、スピンドルアセンブリの冷却水に新たな純水を使用する必要がなく、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明第1実施形態に係る加工装置の冷却システムの模式図である。
【図2】本発明第2実施形態に係る加工装置の冷却システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明実施形態に係る加工装置の冷却システムについて詳細に説明する。図1を参照すると、本発明第1実施形態の加工装置の冷却システム42が模式的に示されている。加工装置の冷却システム42は、純水生成装置2に接続されている。
【0017】
純水生成装置2は、並列に配置された2個の逆浸透膜モジュール4A,4Bを備えている。ここで、逆浸透膜とは、濾過膜の一種であり、水を通しイオンや塩類など水以外の不純物は透過しない性質を有する膜のことを言う。逆浸透膜は、概ね大きさが2nm以下の多数の孔を有している。
【0018】
逆浸透膜の構造は高い圧力に耐えるような構造が必要であり、現在では中空糸膜、スパイラル膜、チューブラ膜等の構造が採用されている。また、逆浸透膜の材質としては、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン等が採用されている。
【0019】
水供給源6からは例えば市水(水道水)が水供給路8に供給される。水供給路8には、活性炭フィルタ10及びフィルタ12が設けられており、活性炭フィルタ10では塩素を除去し、フィルタ12ではゴミ等を除去する。
【0020】
水供給路8には更に、加圧ポンプ14及び温度計16が設けられており、加圧ポンプ14で水供給源6から供給された水を高圧(例えば60気圧)に加圧して逆浸透膜モジュール4A,4Bに供給する。温度計16は供給される水の温度を計測する。
【0021】
逆浸透膜モジュール4A,4Bで生成された純水は純水流出経路18に排出される。純水流出経路18には、流量調整装置20、純水の電解質濃度を計測する純水濃度計測手段22、フィルタ24が配設されている。純水濃度計測手段22では、純水の電気抵抗率又は電気導電率を測定する。
【0022】
本実施形態では、逆浸透膜モジュール4A,4Bで生成される純水は約1MΩ・cm程度の比抵抗値を有している。フィルタ24は例えば0.2μm程度の細かいメッシュを有していることが好ましい。
【0023】
逆浸透膜モジュール4A,4Bからは濃縮排水が排水経路26に排出される。排水経路26には、流量調整装置28及び開閉バルブ30が設けられている。
【0024】
純水流出経路18から分岐して純水戻り経路32が配設されており、この純水戻り経路32は水供給経路8の加圧ポンプ14より上流側に接続されている。更に、排水経路26から分岐して排水戻り経路36が配設されており、排水戻り経路36は水供給経路8の加圧ポンプ14より上流側に接続されている。
【0025】
純水戻り経路32には、純水流出経路18からの純水の通過を許容し、水供給経路8からの水の通過を防止する逆止弁34が設けられている。同様に、排水戻り経路36には、排水経路26からの排水の通過を許容し、水供給経路8からの水の通過を防止する逆止弁38が設けられている。
【0026】
排水戻り経路36には更に、濃縮排水の電解質濃度を計測する純水濃度計測手段(濃縮排水濃度計測手段)40が設けられている。純水濃度計測手段40も、純水流出経路18に設けられた純水濃度計測手段22と同様に、濃縮排水中の電気抵抗率又は電気伝導率を測定して、濃縮排水の電解質濃度を検出する。
【0027】
開閉バルブ30は、純水濃度計測手段22,40に接続されており、純水濃度計測手段22によって計測された純水濃度に基づいて、又は純水濃度計測手段40で計測された濃縮排水の濃度に基づいて、開閉バルブ30の開閉の程度が制御される。これにより、純水生成装置2からの排水を必要最小限度に制御することができる。
【0028】
また、加圧ポンプ14の種類によっては供給される水温の上昇が想定される。この場合には、加圧ポンプ14の下流側に設けた温度計16により水温を計測し、計測された温度に応じて開閉バルブ30を制御する。
【0029】
流量調整装置20,28は流量計と流量調整弁から構成され、これらの流量調整装置20,28を調整することにより、逆浸透膜モジュール4A,4Bからの純水と濃縮排水との流量バランスを制御する。
【0030】
本実施形態の加工装置の冷却システム42には、純水生成装置2からの濃縮排水が加工装置の冷却水として利用される。符号44は加工装置の一種である切削装置を概略的に示している。
【0031】
切削装置44のスピンドルアセンブリ46は、スピンドルハウジング48中に収容されたスピンドル50を有しており、スピンドル50の先端には切削ブレード52が装着されている。54は切削装置44の保持テーブル、56は蛇腹である。
【0032】
本実施形態の冷却システム42では、スピンドルアセンブリ46を冷却するための冷却水導入路58と、スピンドルアセンブリ46を循環して排出される冷却水の排出路60が排水経路26の開閉バルブ30より上流側に接続されている。
【0033】
冷却水導入路58には排水経路26からの冷却水の通過を許容し、逆方向の通過を防止する逆止弁62が設けられており、冷却水排出路60にはスピンドルアセンブリ46からの冷却水の通過を許容し、逆方向の通過を防止する逆止弁64が設けられている。
【0034】
図1に示された実施形態では、冷却水導入路58及び冷却水排出路60は開閉バルブ30より上流側の排水経路26に接続されているが、冷却水導入路58及び冷却水排出路60を排水戻り経路36に接続するようにしてもよい。
【0035】
以下、このように構成された純水生成装置2の濃縮排水をスピンドルアセンブリ46の冷却水として利用する、本実施形態の加工装置の冷却システム42の作用について純水生成装置2の作用とともに説明する。
【0036】
水供給源6から供給された市水は活性炭フィルタ10で塩素が除去され、フィルタ12でゴミが除去されてから、加圧ポンプ14により高圧に加圧されて逆浸透膜モジュール4A,4Bに供給される。
【0037】
逆浸透膜モジュール4A,4Bでは、逆浸透膜で仕切られた濃度の高い側から低い側に水分子だけが浸透し、純水が生成される。生成された純水は純水流出経路18に排出され、切削装置、研削装置等の加工装置が稼動している場合には、これらの加工装置の加工水として利用される。
【0038】
加工装置の加工水として利用されない純水は、純水戻り経路32を通って加圧ポンプ14の上流側の水供給経路8に戻される。このように純水戻り経路32が設けられているため、純水生成装置2で生成した純水を貯水するタンクを設ける必要が無く、純水生成装置2を連続稼動することができる。
【0039】
一方、逆浸透膜モジュール4A,4Bから排水経路26に排出された濃縮排水は、純水濃度及び/または逆浸透膜モジュール4A,4Bに供給される水温に応じてその開閉の程度が制御される開閉バルブ30を介して排水される。
【0040】
濃縮排水の一部は、排水戻り経路36を介して加圧ポンプ14の上流側の水供給経路8に戻されるとともに、他の一部が切削装置44のスピンドルアセンブリ46の冷却水として利用される。
【0041】
即ち、排水経路26に排出された濃縮排水の一部は、逆止弁62及び冷却水導入路58を介してスピンドルアセンブリ46に導入され、スピンドル50の高速回転に伴うスピンドルアセンブリ46の発熱を冷却する。スピンドルアセンブリ46を循環した冷却水は冷却水排出路60及び逆止弁64を介して排水経路26に戻される。
【0042】
一方、純水戻り経路32を介して戻された純水及び排水戻り経路36を介して戻された濃縮排水は、再び加圧ポンプ14により加圧されて逆浸透膜モジュール4A,4Bに供給される。このように純水及び濃縮排水を循環することにより、水供給源6から供給される市水等の水を節約できる。
【0043】
図1に示した実施形態では、排水経路26に排出された濃縮排水を切削装置44のスピンドルアセンブリ46の冷却に使用する例について示しているが、研削装置等の他の加工装置のスピンドルアセンブリの冷却に濃縮排水を利用するように構成してもよい。
【0044】
尚、上述した実施形態では、純水濃度計測手段22,40を純水流出経路18及び排水戻り経路36に設けているが、純水濃度計測手段は、純水流出経路18、排水経路26、純水戻り経路32、又は排水戻り経路36の何れか一つの経路上に配設するようにしてもよい。
【0045】
上述した実施形態によると、逆浸透膜モジュール4A,4Bで生成された純水を加圧ポンプ14より上流側の水供給経路8に戻す純水戻り経路32を設けたので、純水流出経路18を介して加工装置等に流出される純水量が少量の場合又は生成された純水が加工装置等で使用されない場合においても、純水流出経路18の水圧上昇を防止できる。
【0046】
その結果、逆浸透膜モジュール4A,4Bでの分離性低下を防止できる。また、純水の流出量にばらつきが生じた場合においても、逆浸透膜モジュール4A,4Bで生成される純水の純水濃度(電解質濃度)が悪化することを防止できる。
【0047】
更に、排水経路26に搬出された濃縮排水の一部を切削装置44のスピンドルアセンブリ46の冷却水として利用しているため、冷却水として純水を使用する従来の冷却システムに比較して経済的である。
【0048】
図2を参照すると、本発明第2実施形態の加工装置の冷却システム42Aの模式図が示されている。本実施形態の冷却システム42Aでは、純水生成装置2Aの構成が上述した第1実施形態と相違する。
【0049】
本実施形態の純水生成装置2Aは、第1実施形態の純水戻り経路32を廃止し、純水流出経路18に純水貯水タンク66を設置した点が上述した第1実施形態と相違する。本実施形態では、純水生成装置2Aで生成された純水は純水貯水空間タンク66に貯水される。本実施形態の純水生成装置2Aは、純水戻り経路32を廃止した点で、上述した第1実施形態と比較してその構成を簡略化できる。
【0050】
本実施形態の加工装置の冷却システム42Aの作用については、上述した第1実施形態の冷却システム42と同様であるので、重複を避けるためその説明を省略する。
【符号の説明】
【0051】
2 純水生成装置
4A,4B 逆浸透膜モジュール
6 水供給源
8 水供給経路
14 加圧ポンプ
18 純水流出経路
22,40 純水濃度計測手段
26 排水経路
30 開閉バルブ
32 純水戻り経路
34,38 逆止弁
36 排水戻り経路
44 切削装置
46 スピンドルアセンブリ
50 スピンドル
52 切削ブレード
58 冷却水導入路
60 冷却水排出路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルアセンブリを備えた加工装置の冷却システムであって、
水供給源と、
該水供給源から供給された水を濃縮排水と純水とに分離する逆浸透膜モジュールと、
該水供給源から該逆浸透膜モジュールへ水を供給する水供給経路と、
該水供給経路上に設けられ、該逆浸透膜モジュールに供給される水を加圧する加圧ポンプと、
該逆浸透膜モジュールからの濃縮排水を排水する排水経路と、
該排水経路から分岐して該水供給経路の該加圧ポンプより上流側に接続される排水戻り経路と、
該逆浸透膜モジュールで生成された純水が流出する純水流出経路と、
該排水経路と該排水戻り経路との分岐点より下流側の該排水経路上に配設された開閉バルブと、
該排水経路の該開閉バルブより上流側から分岐して、又は該排水戻り経路から分岐して該スピンドルアセンブリに接続され、該スピンドルアセンブリを冷却するための冷却水を導入する冷却水導入路と、
該スピンドルアセンブリと該排水経路の該開閉バルブより上流側に接続され、該スピンドルアセンブリから排出される冷却水を該排水経路に戻す冷却水排出路と、
を具備したことを特徴とする加工装置の冷却システム。
【請求項2】
前記排水経路、排水戻り経路、又は純水流出経路の何れかの経路上に配設された純水濃度を計測する純水濃度計測手段を更に具備し、
該純水濃度計測手段で計測した純水濃度に基づいて前記開閉バルブの開閉が制御される請求項1記載の加工装置の冷却システム。
【請求項3】
前記加工装置は、切削装置又は研削装置の何れかである請求項1又は2記載の加工装置の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−11261(P2011−11261A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154559(P2009−154559)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】