説明

加工装置の吸着固定装置および吸着固定装置を使用した加工方法

【課題】加工装置の固定作業が容易で、装置全体を小型化して作業性を向上させる。
【解決手段】ワークに加工する穿孔加工装置100に装着され、穿孔加工装置100をワークWに固定する吸着固定装置1であって、穿孔加工装置100を支持するガイドバー2と、ガイドバー2に設けられた吸着パッド3と、吸着パッド3をワークWに吸着させる真空発生器4と、吸着パッド3をガイドバー2に対して位置調整自在に固定するパッド固定部材5と、穿孔加工装置100をガイドバー2に装着する固定フレーム6と、を備え、穿孔加工装置100をワークWの被加工部に位置決めした状態で、真空発生器4により吸着パッド3をワークWに吸着させて穿孔加工装置100を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加工装置の吸着固定装置および吸着固定装置を使用した加工方法に係り、特に装置全体を小型化して作業性を向上させることができる加工装置の吸着固定装置および吸着固定装置を使用した加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機、船舶、鉄道車両といった構造体は、様々な部材(要素)の組み合わせによって構成されており、各企業がそれぞれの部材を担当し、部分最適の集合体として完成品が創出される。そして、例えば航空機を製作する際、航空機の翼、骨格といった部材(要素)を固定具等で固定しながら穿孔することが多く、レール上に穿孔装置本体を移動可能なように係合するとともに、真空吸着機構によって穿孔装置を固定する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、真空吸着機構を備えた穿孔装置として、クーラントを供給および排出でき、ドリルユニットと一体型の穿孔装置が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−526134号公報
【特許文献2】特許第3333327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなレール上に穿孔装置を固定する形式は、装置自体が大型化してしまうため、ストリンガ部材(H鋼)等の特定箇所への穿孔加工、狭あいな空間における穿孔作業、およびランダムな加工部位への穿孔加工が困難であるとともに、コストが増加するという課題があった。
【0006】
また、固定装置と一体型の穿孔装置は、固定のための作業に時間や手間がかかるとともに、部品交換が困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は、このような背景を鑑みてなされたものであり、加工装置の固定作業が容易で、装置全体を小型化して作業性を向上させることができる加工装置の吸着固定装置および吸着固定装置を使用した加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、ワークに加工する加工装置に装着され、当該加工装置を当該ワークに固定する加工装置の吸着固定装置であって、前記加工装置を支持するガイドバーと、このガイドバーに設けられた吸着パッドと、この吸着パッドを前記ワークに吸着させる吸着装置と、前記吸着パッドを前記ガイドバーに対して位置調整自在に固定するパッド固定部材と、前記加工装置を前記ガイドバーに装着する固定フレームと、を備え、前記加工装置を前記ワークの被加工部に位置決めした状態で、前記吸着装置により前記吸着パッドを当該ワークに吸着させて当該加工装置を固定することを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記吸着パッドを前記ガイドバーに対して位置調整自在に固定するパッド固定部材を備えたことで、前記加工装置に対する吸着パッドの位置調整が自在であるから、加工部位に応じてワークの適切な箇所に吸着パッドを吸着させ加工装置を安定して容易に固定することができる。このため、加工装置による作業性が向上し、ストリンガ部材(H鋼)等の特殊な形状のワークにも適応しやすく、作業者の負担を軽減して加工工数を低減することができる。
【0010】
また、本発明は、前記加工装置を前記ワークの被加工部に位置決めした状態で、前記吸着装置により前記吸着パッドを当該ワークに吸着させて当該加工装置を固定することで、加工部位ごとに適切な箇所に加工装置を安定して容易に固定することができるため、ランダムに配設された加工部位に対しても効率よく作業を行うことができる。
【0011】
また、本発明は、加工装置をガイドバーで支持して吸着パッドでワークに固定することで、装置全体を小型軽量化することが可能であるため、作業者が加工装置を手に持って加工することが容易であり、作業者の負担を軽減して狭あいな作業空間での作業性を向上させることができる。このため、本発明は、加工装置をハンドツールとして使用する場合に特に適している。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の加工装置の吸着固定装置であって、前記加工装置は、穿孔加工装置であり、この穿孔加工装置は、先端部に設けられ前記ワークの被加工部に押し当てて支持するノーズピースと、前記穿孔加工装置の先端部に設けられ、前記ワークに装着された位置決め用プレートに形成された位置決め穴に係合して当該穿孔加工装置を位置決めするブッシュと、を備えたことを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、前記穿孔加工装置は、前記ワークの被加工部に当接させて支持するノーズピースと、位置決め用プレートに形成された位置決め穴に係合するブッシュと、を備えたことで、穿孔加工装置の位置決めを容易に確実に行うことができる。また、ブッシュを位置決め穴に係合することで、穿孔加工装置を安定して容易に固定することができ、加工装置による作業性が向上し、作業者の負担を軽減して加工工数を低減することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の加工装置の吸着固定装置であって、前記穿孔加工装置は、エアで駆動してドリル工具を回転させながら送りを与えて穿孔するエア駆動式の穿孔加工装置であり、このエア駆動式の穿孔加工装置は、前記ドリル工具を回転させる主軸エアモータと、前記ドリル工具を前進および後退させる送りエアシリンダ機構と、この送りエアシリンダ機構および前記主軸エアモータにエア流路を介して圧縮エアを供給するエア供給口と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、主軸モータおよび送り制御系の駆動源をエアとすることで、電気系の配線や制御装置を排除ないし大幅に削減することができるため、穿孔加工装置を小型軽量化して、ハンドツールとしての作業性をより向上させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加工装置の吸着固定装置であって、前記固定フレームは、前記ガイドバーに対して前記加工装置を移動自在に支持するスライド支持機構を備えたことを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、前記ガイドバーに対して前記加工装置を移動自在に支持するスライド支持機構を備えたことで、ワークの加工部位に応じて加工装置を自在に移動することができるため、吸着パッドと加工装置の位置関係をより柔軟に調整して吸着パッドをワークの適切な箇所に安定して、かつ容易に吸着させることができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の吸着固定装置を使用して前記ワークに前記加工装置を固定して加工する加工方法であって、前記加工装置を前記ワークの被加工部に位置決めする工程と、前記吸着装置により前記吸着パッドを前記加工部位の周囲に吸着させて前記ワークに前記加工装置を固定する工程と、前記加工装置により前記ワークに加工する加工工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、加工装置の固定作業が容易で、狭あいな作業空間での作業性を向上させる吸着固定装置および吸着固定装置を使用した加工方法を提供することができる。このため、本発明は、装置全体の小型軽量化を図ることが容易であるから、特に作業者が手に持って作業をするハンドツールとしての加工装置に適した吸着固定装置および吸着固定装置を使用した加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る穿孔加工装置の吸着固定装置を使用して穿孔加工を行う様子を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る吸着固定装置の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る吸着固定装置を穿孔加工装置に装着した状態を示す後方からの斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る吸着固定装置を穿孔加工装置に装着した状態を示す前方からの斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る吸着固定装置における真空パッドおよびパッド固定部材の構成を示す断面図である。
【図6】真空パッドおよびパッド固定部材の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る吸着固定装置の動作を説明するための斜視図であり、穿孔加工装置をガイドバーに対して上部位置にした状態を示す。
【図8】本発明の実施形態に係る吸着固定装置の動作を説明するための斜視図であり、穿孔加工装置をガイドバーに対して下部位置にした状態を示す。
【図9】本発明の実施形態に係る吸着固定装置における真空パッドをワークに吸着させて穿孔加工を行う様子を示す部分断面図であり、(a)は真空パッド、(b)は穿孔加工装置の先端部である。
【図10】本発明に係る吸着固定装置における片持ち支持状態での実施態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係るエア駆動式の穿孔加工装置100の吸着固定装置1について、適宜図を参照しながら詳細に説明する。なお、説明の便宜上、例えば図3や図4に示すようにカバー部材や配管等を省略して表示する場合がある。
加工装置であるエア駆動式の穿孔加工装置100(以下、単に「穿孔加工装置100」という。)は、図1に示すように、エアで駆動してドリル工具T(図4参照)を回転させながら送りを与えて穿孔するエア駆動式の穿孔加工装置であり、作業者Mがグリップ101を持って穿孔作業を行なうハンドツールである。
【0022】
穿孔加工装置100は、シリンダ形状のボディ100aに進退自在に内装されたラム(不図示)と、ラムに内設されドリル工具T(図4参照)を回転させる主軸エアモータ(不図示)と、ラムを前進および後退させてドリル工具Tを前進および後退させる送りエアシリンダ機構(不図示)と、この送りエアシリンダ機構および主軸エアモータにエア流路を介して圧縮エアを供給するメインエア供給部102と、を備え、外部のエア源(不図示)からメインエア供給部102に供給された圧縮エアを使用して図示しない内蔵された主軸エアモータでドリル工具T(図4参照)を回転させながら送り出してワークWに穿孔する。
なお、穿孔加工装置100の構成は、特に限定されるものではないので詳細な説明は省略する。
【0023】
穿孔加工装置100は、図3に示すように、先端部に設けられたノーズピース103(図4参照)と、ノーズピース103の内側に設けられたブッシュ104(図4参照)と、エア供給口4a(図2参照)にエアを供給または停止して真空発生器4(図2参照)を作動させるバキュームスイッチ105と、ドリル工具T(図4参照)を回転させるスタートボタン106と、穿孔加工完了時の前進端でアジャストスクリュー107aで押されてドリル工具Tを後退させるオートリターンボタン107と、手動で操作されドリル工具Tを戻すための非常用リターンボタン108と、加工時の塵埃等を吸入する集塵パイプ109(図4参照)と、を備えている。
そして、メインエア供給部102に供給された圧縮エアは、バキュームスイッチ105から配管L1を通ってエア供給口4a(図2を併せて参照)に供給される。
【0024】
吸着固定装置1は、図1に示すように、穿孔加工装置100をワークWの加工部位の適切な位置に固定する固定治具であり、作業者Mは、ノーズピース103(図4参照)を位置決め用プレートWPに押し当てながら、ブッシュ104(図4参照)を位置決め用プレートWP(図1参照)に形成された位置決め穴WP1に係合して穿孔加工装置100を位置決めし、吸着固定装置1をワークWに吸着させて保持した状態で穿孔穴W1を加工する(図9(b)参照)。
【0025】
吸着固定装置1は、図2に示すように、穿孔加工装置100を支持するガイドバー2(21,22)と、吸着パッドである真空パッド3(31,32,33,34)と、吸着装置である真空発生器4(41,42,43,44)と、真空発生器4にエアを供給するエア供給口4aと、真空パッド3をガイドバー2に対して位置調整自在に固定するパッド固定部材5(51,52,53,54)と、スライド支持機構を介して穿孔加工装置100をガイドバー2にスライド自在に支持する固定フレーム6と、を備えている。
【0026】
ガイドバー2は、図2に示すように、1対のそれぞれパイプ状の左ガイドバー21と右ガイドバー22からなり、左ガイドバー21と右ガイドバー22が図示上下方向で平行になるようにして固定フレーム6により支持されている。そして、ガイドバー2は、固定フレーム6を介して穿孔加工装置100に装着されている(図3、図4参照)。
【0027】
真空パッド3は、図2に示すように、いわゆる長丸タイプの形状を有し、パッド固定部材5を介してガイドバー2に位置調整自在に装着されている。左ガイドバー21には真空パッド31,33が装着され、右ガイドバー22には真空パッド32,34が装着されている。そして、真空パッド3は、上下方向および左右方向に対して4辺を形成するように4箇所に配設され、図示左上部には真空パッド31、右上部には真空パッド32、左下部には真空パッド33、そして右下部には真空パッド34が配設されている。
【0028】
かかる構成により、平行になるように配設されたガイドバー21,22に対して真空パッド3を上下方向および左右方向に対して4辺を形成するように4箇所に配設することで、穿孔加工装置100を安定してワークWに固定するとともに、装置全体の小型軽量化を図ることができる。このため、作業者M(図1参照)が穿孔加工装置100を手に持って加工することが容易であり、作業者Mの負担を軽減してハンドツールとしての作業性を向上させることができる。
【0029】
パッド固定部材5(51,52,53,54)は、向きは異なるがそれぞれ同様の構成であるので、左ガイドバー21(図2参照)の上部に配設されたパッド固定部材51を代表にして、図4を参照しながら説明する。
パッド固定部材51は、図5に示すように、真空パッド31を保持するパッドニップル5aと、真空発生器41に連通されパッドニップル5aを介して真空パッド31に負圧を導入するロータリ管継手5bと、左ガイドバー21(図2参照)とパッドニップル5aとを連結するパッドブロック5cと、パッドブロック5cの抜け止めとなるストッパ5dと、パッドブロック5cをストッパ5dの方向に付勢するコイルばねからなる付勢手段5eと、を備えている。
【0030】
パッドニップル5aは、図5に示すように、先端部(図5の下部)を真空パッド31のテーパねじTNに螺入して固定する真空パッド31の保持部材であり、中心部には真空発生器4で発生された負圧が導入される連通孔5fが形成されている。
また、パッドニップル5aは、パッドニップル5aの胴部に形成されパッドブロック5cに固定された係合ピン5kと係合し軸方向の図5の上方まで貫通する縦溝5jと、円周方向に形成された円周溝5nと、を備えている。縦溝5jは、周方向の4箇所に形成されている(図6参照)。
【0031】
かかる構成により、ロータリ管継手5bとストッパ5dを外せば、縦溝5jに係合ピン5kを係合したままでパッドブロック5cを図5の上方に抜くことができるので分解作業を容易にしている。
また、パッドブロック5cに装着された係合ピン5kを円周溝5nに沿うようにしながらパッドニップル5aを回転させて、係合ピン5kを適宜4箇所に形成されたいずれかの縦溝5jに係合させることで、真空パッド31の回転方向の向きを調整することができる(図6参照)。
【0032】
ロータリ管継手5bは、パッドニップル5aの端部(図5の上部)に回転自在に配設され真空発生器41からパッドニップル5aに形成された連通孔5fを通って真空パッド31まで負圧を導入する部材である。
【0033】
パッドブロック5cは、パッドニップル5aが挿入される挿入穴5gと、左ガイドバー21(図2参照)が挿入されるガイド穴5hと、左ガイドバー21に装着するための締結部材5iと、パッドニップル5aに形成された縦溝5jに係合して回り止めの機能を奏する係合ピン5kと、を備えている。
【0034】
ストッパ5dは、パッドニップル5aの上端部に移動自在にボルトBで固定され、付勢手段5eにより付勢されたパッドブロック5cがパッドニップル5aから抜けないように保持するための部材である。
【0035】
かかる構成により、パッド固定部材51は、図5に示すように、パッドブロック5cの締結部材5iの締め込み量を調整してパッドニップル5aの軸方向に沿って摺動自在に挿入することで、係合ピン5kが縦溝5jに係合した状態で軸方向に自在に移動しながら回転方向の移動を規制することができる。パッドブロック5cがストッパ5dに当接する範囲(隙間δの範囲)で自在に移動するようになっている。
【0036】
このため、作業者M(図1参照)が真空パッド3をワークWに押し付けた状態では、図5に示すように、パッドブロック5cの上面とストッパ5dの下面との間に隙間δが形成されるが、この状態から作業者Mがバキュームスイッチ105(図1参照)をオンにして真空パッド3をワークWに吸着させると真空パッド3の吸着面が撓んでパッドブロック5cの上面とストッパ5dの下面が当接して隙間δがなくなる(吸着させた状態を示す図9(a)参照)。
【0037】
なお、本実施形態においては、図2に示すように、真空パッド(31,32)の回転を規制する回転抑止プレート55が、パッド固定部材51とパッド固定部材52を連結するように配設されている。回転抑止プレート55は、左ガイドバー21に設けたパッド固定部材51と右ガイドバー22に設けたパッド固定部材52を連結してパッド固定部材51およびパッド固定部材52の回転を防止してワークWに安定して吸着させるための部材である。
【0038】
真空発生器4(41,42,43,44)は、図2に示すように、例えば、エア供給口4aに供給されたエアによる流速を高めて負圧を発生させる装置を適用することができる。作業者が、真空パッド3(31,32,33,34)をワークWに押し付けた状態で穿孔加工装置100のバキュームスイッチ105(図1参照)をオンにすると、エア供給口4aから真空発生器4(41,42,43,44)にエアが供給され、負圧を発生させることができる。
【0039】
真空発生器4(41,42,43,44)は、4台配設され、それぞれ4個の真空パッド3(31,32,33,34)に負圧を発生させるように、真空発生器4(41,42,43,44)と真空パッド3(31,32,33,34)とがフレキシブルチューブ(二点鎖線で表示)で連結されている。
【0040】
なお、本実施形態においては、吸着固定装置1に真空発生器4を設けたが、これに限定されるものではなく、穿孔加工装置100に設けてもよく、さらに真空発生器4の形態も任意であり別途床上に設置するような真空ポンプ式のものでも適用可能である。
【0041】
固定フレーム6は、図2に示すように、上フレーム61と、下フレーム62と、上フレーム61および下フレーム62を連結するサイドフレーム63,64と、スライドストッパ6aと、を備え、穿孔加工装置100の先端部を支持してガイドバー2に対してスライド自在に連結している。
【0042】
かかる構成により、固定フレーム6により穿孔加工装置100の先端部(中央よりも先端側)を支持することで、ガイドバーに対して穿孔加工装置100の自重が作用するとガイドバー2により片持ち支持される状態となるため、穿孔加工装置100の重量や支持する位置を適宜設定することで、作業者M(図1参照)が手を離してもガイドバー2により片持ち支持された状態を安定して維持することができる。
【0043】
上フレーム61には、マニホールド4bを介して真空発生器4(41,42,43,44)が配設され、マニホールド4bには、エア供給口4aが設けられている。
下フレーム62には貫通穴109aが形成され、この貫通穴109aを集塵パイプ109が貫通するようにして穿孔加工装置100の先端下部が支持されている。
【0044】
かかる構成により、図示しないエア源からエア供給口4aに供給されたエアは、マニホールド4bの内部に形成されたエア流路(不図示)を通って真空発生器4(41,42,43,44)内を流通して負圧が発生し、この負圧が配管L2を通って各真空パッド3(31,32,33,34)まで導入されるようになっている。
【0045】
また、上フレーム61および下フレーム62には、それぞれ左ガイドバー21が摺動自在に挿通される左ガイド穴61a,62aと、右ガイドバー22が摺動自在に挿通される右ガイド穴61b,62bと、が形成され、穿孔加工装置100は、左右のガイドバー21,22に沿って、摺動自在に図示上下方向に移動できるようになっている(スライド移動機構)。
【0046】
スライドストッパ6aは、4箇所に設けられガイドバー21およびガイドバー22の上部と下部にそれぞれ配設され、穿孔加工装置100のスライド移動の上端位置および下端位置をそれぞれ規制している。かかる構成により、穿孔加工装置100をスライド移動させた際に不用意に真空パッド3に干渉して真空パッド3の位置がずれてしまうことを防止することができる。
【0047】
スライド移動機構は、ガイドバー2に沿って、穿孔加工装置100を上下に自在に移動して位置を調整する機構であり、ワークWに加工する穿孔穴W1の位置や配列に応じて、穿孔加工装置100をガイドバー2に対して上部方向に移動したり(図7参照)、下部方向に移動したりして(図8参照)、ガイドバー2に対する穿孔加工装置100の位置を調整して穿孔加工を行なうことができるようにしたものである。また、スライド移動機構による穿孔加工装置100の位置調整は、真空パッド3を吸着させない状態で行うことができる。
【0048】
続いて、本発明の実施形態に係る穿孔加工装置100を固定する吸着固定装置1の動作について主として図2から図4を参照しながら説明する。
〔真空パッド3および穿孔加工装置100の位置調整〕
作業者M(図1参照)は、準備作業として、ワークWに加工する穿孔穴W1の位置や配列に応じて、真空パッド3を安定した位置に吸着できるように、ガイドバー2に対する真空パッド3および穿孔加工装置100の位置を調整する。真空パッド3の位置調整はパッド固定部材5の締結部材5iを緩めて調整し、穿孔加工装置100の位置調整は穿孔加工装置100の位置調整機構によりガイドバー2に沿って穿孔加工装置100をスライド移動させて行う。
【0049】
〔ワークWに真空パッド3を吸着(クランプ)〕
作業者M(図1参照)は、ノーズピース103(図4、図9(b)参照)を位置決め用プレートWPに押し当てながら、ブッシュ104(図4、図9(b)参照)を位置決め用プレートWP(図1参照)に形成された位置決め穴WP1に係合して穿孔加工装置100を位置決めした状態で、バキュームスイッチ105をオンにして真空発生器4により負圧を真空パッド3に導入することで、真空パッド3をワークWに吸着させてクランプする(図7、図9(b)参照)。
【0050】
〔穿孔加工装置100を位置決めしながら穿孔加工〕
作業者M(図1参照)は、吸着固定装置1により穿孔加工装置100をワークWにクランプした状態で、穿孔加工装置100から手を離してスタートボタン106(図4参照)を押してドリル工具Tを回転させて穿孔穴W1を加工する(図9(b)参照)。このとき、穿孔加工装置100は吸着固定装置1によりクランプされているので、作業者Mは加工装置から離れていても穿孔加工を行なうことができるため、作業負担が軽減され作業効率を向上させることができる。
【0051】
〔真空パッド3の吸着を解除(アンクランプ)〕
作業者M(図1参照)は、加工が終了したのを確認し、穿孔加工装置100を支持した状態で、バキュームスイッチ105をオフにして真空パッド3の吸着を解放して穿孔加工装置100を取り外す。
【0052】
以上のように動作する本発明の実施形態に係る穿孔加工装置100の吸着固定装置1は、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、吸着固定装置1は、真空パッド3をガイドバー2に対して位置調整自在に固定するパッド固定部材5を備えたことで、穿孔加工装置100に対する真空パッド3の位置調整が自在であるから、加工部位に応じてワークWの適切な箇所に真空パッド3を吸着させ加工装置を安定して容易に固定することができる。このため、穿孔加工装置100による作業性が向上し、ストリンガ部材(H鋼)等の特殊な形状のワークWにも適応しやすく、作業者Mの負担を軽減して加工工数を低減することができる。
【0053】
また、吸着固定装置1は、穿孔加工装置100をワークWの被加工部に位置決めした状態で、真空発生器4により吸着パッド3をワークWに吸着させて穿孔加工装置100を固定することで、加工部位ごとに適切な箇所に穿孔加工装置100を安定して容易に固定することができるため、ランダムに箇所に配設された加工部位に対しても効率よく作業を行うことができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することができる。
例えば、本実施形態においては、加工装置の例として穿孔加工装置100としたが、これに限定されるものではなくタッピング装置等の他の加工装置に適用することもできる。
【0055】
本実施形態においては、スライド移動機構により、穿孔加工装置100を上方または下方に移動する例について説明したが、これに限定されるものではなく、図10に示すように、ガイドバー2の上部に4個の真空パッド3を配設した片持ち状態での支持形態としても適用することができる。また、本実施形態においては、長丸タイプの真空パッド3を採用したが、これに限定されるものではなく、ワークWの形状や穿孔穴W1の配列に応じて丸タイプ等、適宜種々の形状の真空パッドを使用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 吸着固定装置
2 ガイドバー
3 真空パッド(吸着パッド)
4 真空発生器(吸着装置)
5 パッド固定部材
6 固定フレーム
21 左ガイドバー(ガイドバー)
22 右ガイドバー(ガイドバー)
31,32,33,34 真空パッド
41,42,43,44 真空発生器
51,52,53,54 パッド固定部材
100 エア駆動式の穿孔加工装置(加工装置)
101 グリップ
102 メインエア供給部
103 ノーズピース
104 ブッシュ
T ドリル工具
W ワーク
W1 穿孔穴
WP 位置決め用プレート
WP1 位置決め穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに加工する加工装置に装着され、当該加工装置を当該ワークに固定する加工装置の吸着固定装置であって、
前記加工装置を支持するガイドバーと、
このガイドバーに設けられた吸着パッドと、
この吸着パッドを前記ワークに吸着させる吸着装置と、
前記吸着パッドを前記ガイドバーに対して位置調整自在に固定するパッド固定部材と、
前記加工装置を前記ガイドバーに装着する固定フレームと、を備え、
前記加工装置を前記ワークの被加工部に位置決めした状態で、前記吸着装置により前記吸着パッドを当該ワークに吸着させて当該加工装置を固定することを特徴とする加工装置の吸着固定装置。
【請求項2】
前記加工装置は、穿孔加工装置であり、
この穿孔加工装置は、先端部に設けられ前記ワークの被加工部に押し当てて支持するノーズピースと、
前記穿孔加工装置の先端部に設けられ、前記ワークに装着された位置決め用プレートに形成された位置決め穴に係合して当該穿孔加工装置を位置決めするブッシュと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の加工装置の吸着固定装置。
【請求項3】
前記穿孔加工装置は、エアで駆動してドリル工具を回転させながら送りを与えて穿孔するエア駆動式の穿孔加工装置であり、
このエア駆動式の穿孔加工装置は、
前記ドリル工具を回転させる主軸エアモータと、
前記ドリル工具を前進および後退させる送りエアシリンダ機構と、
この送りエアシリンダ機構および前記主軸エアモータにエア流路を介して圧縮エアを供給するエア供給口と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の加工装置の吸着固定装置。
【請求項4】
前記固定フレームは、前記ガイドバーに対して前記加工装置を移動自在に支持するスライド支持機構を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加工装置の吸着固定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の吸着固定装置を使用して前記ワークに前記加工装置を固定して加工する加工方法であって、
前記加工装置を前記ワークの被加工部に位置決めする工程と、
前記吸着装置により前記吸着パッドを前記加工部位の周囲に吸着させて前記ワークに前記加工装置を固定する工程と、
前記加工装置により前記ワークに加工する加工工程と、
を含むことを特徴とする吸着固定装置を使用した加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate