説明

加工食品管理システム及び該システムを用いた管理法

【課題】 個々の作業者のモラルを喚起しつつ、賞味期限の日付表示に関する商品事故を防止すると共に事故の場合には迅速にその原因究明を行うことができる管理法を得る。
【解決手段】 製造される加工商品毎の製造予定情報及び賞味期限情報を含む商品データを予め保存された商品データベース手段にアクセス可能な第1の端末を備え、第1端末の情報処理手段で作製された第1検査済み製造商品データを保存する第1検査済みデータベース手段にアクセス可能な第2の端末を備える。第1の端末は、印字された賞味期限の表示領域を撮像する撮像手段と、撮像される選択商品データを選択する選択手段と、選択商品の画像と商品データとを1つのファイルとして表示する表示手段と、検査する検査者のデータを入力する検査者入力項目と、検査者入力手段と、入力項目の入力を終えた製造商品検査ファイルを製造商品データとして作製する情報処理手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品製造時に付される賞味期限等の製品情報の管理を行う加工食品管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工食品においては、その全てで賞味期限が定められている。賞味期限とは、「その食品を開封せず正しく保存した場合に味と品質が充分に保てると製造業者が認める期間(期限)」を指す。この表現は、衛生面による問題よりも味・風味等の品質を問題とする場合に用いられ、具体的には主に長期間衛生的に保存できる加工食品に用いられる。尚、砂糖や塩などの調味料、チューインガム、アイスクリーム類・氷など特に長期保存が可能なものには賞味期限を省略することができる。
【0003】
また、類似した表現として「消費期限」と言う表記があるが、これは食品においては、特に生鮮食品や細菌の働きによって変質しやすい生の加工食品に対して使用されている。これは、期限を過ぎると、風味以前に食品としての安全性が確保できないとの理由から、消費に適するか適さないかという意味での区切りである。この賞味期限と消費期限との差は製造日を含めて概ね5日以内に急速な品質の低下が認められる食料品について、この消費期限で表記されている。また、電池や医薬品等の食品以外の工業製品では、化学変化を利用したり、あるいは時間の経過によって想定していない化学変化の発生する工業製品について製造者が定めた期限を指す。
【0004】
一方、2001年に我が国においてBSEが確認されて以来、食品の安全性や、消費者の選択権に対する関心が高まり、特に食品分野において、製品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡を可能とするトレーサビリティ技術が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、タグ状の媒体に、電波を用いてデータを記録または読出しを行い、アンテナを介して通信を行うRFID(Radio Frequency Identification)法においては、タグの低価格化が達成しつつあるが、未だ個々の食品に搭載させるには高価である。また、加工食品においては、製造のための原材料のロット管理及び加工された食品のロット管理を行う様式が発達していることより、加工食品業界では、従来の賞味期限(消費期限)管理システムに付随させて賞味期限と共に製造ロットを示す番号やバーコード(二次元コード)を印字して管理する方法が安価で確実であり、また、有事にはロット毎に処理すればよいため、未だ管理の主流となっている。
【0006】
係る賞味期限等の印字の誤植による商品品質及び信頼性の失墜は食品企業においては致命的なものと成りかねない。従って、加工食品工場等の生産現場では、様々な工夫により事故発生の防止を図っている。しかしながら、同一の製造ラインでは、同日に複数の異なる製品を製造することから、それぞれの製造商品の賞味期限に確実に設定する必要がある。
【0007】
また、生産スケジュールも製造当日の受注状況、発送状況により変更される場合が多々あるため、その都度該当する商品への賞味期限等の数値に変更されたことを検証する必要がある。更に、大量に生産される食品の賞味期限等の確認は生産現場において随時リアルタイムに実施されることが商品の流通上非常に好ましい。
【0008】
一方、生産現場では、効率性の観点からそのスペース及び作業人員は必要最小限しか確保されていない。従って、確認する人員、確認手段等に制約がかかることから、自ずと生産現場の作業者に負担が強いられることになっているのが現状である。更に、リアルタイムに複数人が同時に賞味期限等を確認・検証することは困難であり、確認の実施及び実施中の管理は同一人に委ねられることになる。従って、事故が発生した場合には、生産が終了した後に発見される場合が多く、事後的に対応手段を講じなければならないといった問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開2005−107843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、この印字された賞味期限と製造ロットを示す番号又はバーコード(二次元コード)とで管理する方法を取る場合の課題の一つは、印字誤植の商品出荷の前段階での早期発見である。また、賞味期限と製造ロットとの複数人による確認作業の実施である。
【0011】
しかしながら、多くの製造工場においては、日々商品の生産が行われており、特に加工食品の製造工場においては、衛生上の問題から、クリーンルーム内での製造を行っており、新たな管理機器の導入は工場全体の操業を休止した上で機器を設置導入しければならず、既設の工場への導入は工場全体の大がかりな改良工事を伴うことも少なくない。
【0012】
本発明は、既設の工場等にも低コストで導入しやすく、作業者への負担を強いることが少なく、製造過程での複数人による確認作業の実施を行うことのできる加工食品管理システムを得ることを目的とする。
【0013】
更に、賞味期限や消費期限の日付表示に関する商品事故は、食品衛生法違反に該当し、広範囲にわたって影響する公示回収や取引先からも厳しい処罰(取引中止など)の対象となることからも、日付表示のチェックは重要な管理が必要になっている。近年、加工食品業界においては、廃棄処分とすべき原材料を用いた製品が出回った事件があり、消費者に対する信頼を大きく失墜させた。これは個々の作業者のモラルの低下と、管理体制の不備が招いたものである。
【0014】
そこで、個々の作業者のモラルを喚起しつつ、賞味期限や消費期限の日付表示に関する商品事故を防止すると共に万が一の商品事故の場合には迅速にその原因究明を行うことができる管理法を得ることを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載された発明に係る加工食品管理システムは、製造される加工商品毎の製造予定情報及び賞味期限情報を含む商品データを予め保存された商品データベース手段にアクセス可能な第1の端末を備え、
前記第1の端末は、
製造工程中の加工商品群から選択された1つの商品の包装材に印字された賞味期限の表示領域を含む画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像される選択商品に関する商品データを前記商品データベース手段から選択する商品データ選択手段と、
前記撮像手段で撮像された選択商品の画像と前記商品データ選択手段から選択された商品データとを1つの製造商品確認ファイルとして表示する表示手段と、
前記表示された製造商品確認ファイルに備わった前記商品データの入力処理及び撮像処理を実行する実行者の氏名を含む実行者データを入力する実行者入力項目と、前記実行者が前記選択商品の画像中の賞味期限の日付と前記商品データの賞味期限の日付とを確認した上で両賞味期限の日付と同一の日付を入力する実行者日付入力項目とに入力する実行者入力手段と、
前記入力項目の入力を終えた製造商品確認ファイルを第1確認済み製造商品データとして作製する情報処理手段と、を備え、
前記第1端末の情報処理手段で作製された第1確認済み製造商品データを保存する第1確認済みデータベース手段にアクセス可能な第2の端末を備え、
前記第2の端末は、
前記第1確認済み製造商品データを表示する表示手段と、
前記表示された第1確認済み製造商品データに備わった確認者の氏名を含む確認者データを入力する確認者入力項目と、前記確認者が前記選択商品の画像中の賞味期限の日付と前記商品データの賞味期限の日付と前記実行者日付入力項目中の賞味期限の日付とを確認した上で3つの賞味期限の日付と同一の日付を入力する確認者日付入力項目とに入力する確認者入力手段と、
前記入力項目の入力を終えた第1確認済み製造商品データを第2確認済み製造商品データとして作製して第2確認済みデータベース手段に保存する情報処理手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項2に記載された発明に係る加工食品管理システムは、請求項1に記載の商品データ選択手段が、予め商品データに対応させておいた加工商品の印刷表示コードの読み取り機による選択手段であり、
前記実行者入力手段の実行者入力項目が、予め実行者毎に対応させた実行者データベースから当該実行者データを選択する印刷表示コードの読み取り機による選択手段であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項3に記載された発明に係る加工食品管理システムを用いた管理法は、請求項1に記載の加工食品管理システムを用いた管理法であって、
包装材に賞味期限の表示を行う製造工程後の加工商品群から商品を選択するピックアップ工程と、
選択された加工商品の賞味期限の表示領域を含む画像を第1の端末で撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で得られた画像と、前記商品データ選択手段から選択された商品データとを前記第1の端末の表示手段に表示させ、前記実行者入力項目と実行者日付入力項目とを入力して第1確認済み製造商品データを作製して第1確認済みデータベース手段に保存する実行者入力工程と、
保存された第1確認済みデータベース手段を第2の端末の表示手段に表示させ、前記確認者入力項目と確認者日付入力項目とを入力して第2確認済み製品商品データを作製して第2確認済みデータベース手段に保存する確認者入力工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0018】
請求項4に記載された発明に係る加工食品管理システムを用いた管理法は、請求項3に記載の確認者入力工程では、第2確認済みデータベース手段に保存する前に、出荷の承認を与える工程を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以上説明した通り、既設の工場等にも低コストで導入しやすく、作業者への負担を強いることが少なく、製造過程での複数人による確認作業の実施を行うことができるという効果がある。また、個々の作業者のモラルを喚起しつつ、賞味期限や消費期限の日付表示に関する商品事故を防止すると共に万が一の商品事故の場合には迅速にその原因究明を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明においては、製造される加工商品毎の製造予定情報及び賞味期限情報を含む商品データを予め保存された商品データベース手段にアクセス可能な第1の端末を備え、
前記第1の端末は、
製造工程中の加工商品群から選択された1つの商品の包装材に印字された賞味期限の表示領域を含む画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像される選択商品に関する商品データを前記商品データベース手段から選択する商品データ選択手段と、
前記撮像手段で撮像された選択商品の画像と前記商品データ選択手段から選択された商品データとを1つの製造商品確認ファイルとして表示する表示手段と、
前記表示された製造商品確認ファイルに備わった前記商品データの入力処理及び撮像処理を実行する実行者の氏名を含む実行者データを入力する実行者入力項目と、前記実行者が前記選択商品の画像中の賞味期限の日付と前記商品データの賞味期限の日付とを確認した上で両賞味期限の日付と同一の日付を入力する実行者日付入力項目とに入力する実行者入力手段と、
前記入力項目の入力を終えた製造商品確認ファイルを第1確認済み製造商品データとして作製する情報処理手段と、を備え、
前記第1端末の情報処理手段で作製された第1確認済み製造商品データを保存する第1確認済みデータベース手段にアクセス可能な第2の端末を備え、
前記第2の端末は、
前記第1確認済み製造商品データを表示する表示手段と、
前記表示された第1確認済み製造商品データに備わった確認者の氏名を含む確認者データを入力する確認者入力項目と、前記確認者が前記選択商品の画像中の賞味期限の日付と前記商品データの賞味期限の日付と前記実行者日付入力項目中の賞味期限の日付とを確認した上で3つの賞味期限の日付と同一の日付を入力する確認者日付入力項目とに入力する確認者入力手段と、
前記入力項目の入力を終えた第1確認済み製造商品データを第2確認済み製造商品データとして作製する情報処理手段と、を備える。これにより、既設の工場等にも低コストで導入しやすい。
【0021】
即ち、本発明では、賞味期限表示を確認した第1確認済み製造商品データを作製する第1の端末と、更に、この第1確認済み製造商品データを再度確認する第2の端末とを備える。第1の端末としては、画像データと選択商品のデータとを1つの製造商品確認ファイルに作製するものであればよい。製造商品確認ファイルに作製する処理は、高速の情報処理を行う必要はないため、専用の情報処理装置を導入する必要はない。従って、例えば市販のパーソナルコンピュータ(以下、PCと記す)を用いることができるため、既設の工場への導入は工場全体の大がかりな改良工事を伴う必要はない。これにより、既設の工場等にも低コストで導入しやすい利点が得られる。尚、本発明では賞味期限との表記を行っているが、この表記は賞味期限に限らず消費期限と置換えてもよい。
【0022】
第1の端末には、撮像手段と、商品データ選択手段と、表示手段と、実行者入力手段と、情報処理手段とを備える。本発明における撮像手段としては、製造工程中の加工商品群から選択された1つの商品の包装材に印字された賞味期限の表示領域を含む画像を撮像するものであればよい。例えば、市販のPCに接続して画像データをPCに取り込みが可能なPC接続カメラで充分な性能を得ることができる。
【0023】
本発明における商品データ選択手段としては、撮像される選択商品に関する商品データを入力するものであればよく、実際に撮影される時点でキーボード等で実行者が入力してもよいが、実行者の作業の軽減・迅速化及び正確性を図るため、製造される加工商品毎の製造予定情報及び賞味期限情報を含む商品データを商品データベース手段に予め保存しておき、第1の端末がこれにアクセス可能な環境を備えておけばよい。従って、商品データベース手段は第1の端末に保存するか、第1の端末以外のサーバー等の記録データにアクセス可能なネットワーク環境があればよい。商品データ選択手段としては、PCに接続されているマウスを用いて表示画面から実行者がクリックして選択するもの、表示画面を実行者がタッチして選択するもの、予め印刷されたバーコード等の表示を読み取る読み取り機によって選択するもの等が上げられる。
【0024】
特に、読み取り機による読み取りが、商品データの入力処理及び撮像処理を実行する実行者に予め該当する商品の商品データを選択するバーコード等の印刷表示コードのみを与えておけば、商品データ群から該当する商品データを選択する際に選択ミスがなくなる利点がある。
【0025】
撮像手段で撮像された選択商品の画像と、商品データ選択手段から選択された商品データとは第1の端末の表示手段で製造商品確認ファイルとして表示される。このファイルには、商品データの入力処理及び撮像処理を実行する実行者の氏名を含む実行者データを入力する実行者入力項目と、前記実行者が前記選択商品の画像中の賞味期限の日付と前記商品データの賞味期限の日付とを確認した上で両賞味期限の日付と同一の日付を入力する実行者日付入力項目とを備えているため、各々にキーボード等の実行者入力手段でこれら入力項目を記載する。
【0026】
日付入力項目に関しては、実行者がキーボード等で選択商品の画像中の賞味期限の日付と商品データの賞味期限の日付とを確認した上で両賞味期限の日付と同一の日付を入力する。画像中の賞味期限の日付と商品データの賞味期限の日付とが相違した場合には、製造ラインを一旦止め、その原因を確実に調べ、原因を解消した上で製造ラインを再開する。これにより、個々の実行者のモラルを喚起しつつ、賞味期限の日付表示に関する商品事故を防止すると共に万が一の商品事故の場合には迅速にその原因究明を行うことができる。
【0027】
尚、作業の迅速化を図るため、予めPCの記録データに保存しておいた撮像処理を実行する実行者に関する実行者データ群から実際に実行する実行者を選択して入力してもよい。従って、選択手段としては、PCに接続されているマウスを用いて表示画面から実行者がクリックして選択するもの、表示画面を実行者がタッチして選択するもの、予め印刷されたバーコード等の表示を読み取る読み取り機によって選択するもの等が上げられる。更に、本発明の商品データ選択手段の好ましい態様としては、商品データ選択手段が、予め商品データに対応させておいた加工商品の印刷表示コードの読み取り機による選択手段であるものでも、作業の迅速化が図れる。
【0028】
また、確認者入力手段の確認者入力項目においても、キーボードによる自身のID及びパスワードを入力するもの、PCに接続されているマウスを用いて表示画面から実行者がクリックして選択するもの、表示画面を実行者がタッチして選択するものを使用できる。尚、実行者入力項目と同様に、予め確認者毎に対応させた確認者データベースから当該確認者データを選択する印刷表示コードの読み取り機による選択手段である場合も同様に、作業の迅速化が図れる。
【0029】
本発明における加工商品に関する商品データとしては、加工製造される加工食品に用いられる原料毎のロットデータを含み、好ましくは、原料毎のロットデータをデータベース化し、実際に製造ラインに使用される原料のロットを原料ロットのデータベースから抜出して予め製造ラインに使用している原料ロットを含む商品データを作製しておくことにより、画像データと商品データとを1つの製造商品毎にファイルとすることにより、購入元まで追跡調査が可能なデータベースとなり、万が一の商品事故の場合には迅速にその原因究明を行うことができる。
【0030】
本発明における商品データベース手段・第1確認済みデータベース手段・第2確認済みデータベース手段の各データベース手段としては、選択商品毎に作製されたファイルデータを記録・蓄積して、ロット情報、実行者情報、確認者情報、日時等から検索・抽出することができるものであればよい。
【0031】
本発明における第1の端末又は第2の端末としては、何れかのデータベース手段のファイルデータを閲覧可能なものであればよい。第1の端末は、画像データと前記選択商品のデータとを製造商品ファイルに作製するPCを指すが、確認者が閲覧する端末は、好ましくは食品加工工程を行う工場以外にも、本社、支社、他の工場等と通信回線を介して閲覧可能とすることにより、リアルタイムに近い状態で検査を実施することができる。
【0032】
本発明における加工食品管理システムを用いた管理法は、前述の加工食品管理システムを用いた管理法であって、包装材に賞味期限の表示を行う製造工程後の加工商品群から商品を選択するピックアップ工程と、
選択された加工商品の賞味期限の表示領域を含む画像を第1の端末で撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で得られた画像と、前記商品データ選択手段から選択された商品データとを前記第1の端末の表示手段に表示させ、前記実行者入力項目と実行者日付入力項目とを入力して第1確認済み製造商品データを作製して第1確認済みデータベース手段に保存する実行者入力工程と、
保存された第1確認済みデータベース手段を第2の端末の表示手段に表示させ、前記確認者入力項目と確認者日付入力項目とを入力して第2確認済み製品商品データを作製して第2確認済みデータベース手段に保存する確認者入力工程とを備えるため、個々の作業者のモラルを喚起しつつ、賞味期限の日付表示に関する商品事故を防止すると共に万が一の商品事故の場合には迅速にその原因究明を行うことができる。
【0033】
本発明におけるピックアップ工程としては、包装材に賞味期限の表示を行う製造工程後の加工商品群から商品を選択する工程である。商品の選択については、商品の品質管理規定によればよい。一つのロットで製造される商品について、製造される全ての商品について製品商品データを作製して第1確認済みデータベース手段に保存する場合も含むが、この場合には選択商品の画像の撮像に大がかりな撮像手段を備え、撮像された画像データと選択商品のデータとを日時データと共に1つの製造商品ファイルに作製する情報処理にも大がかりな情報処理手段を有するため、既設の工場等にも低コストで導入しやすい利点が損なわれる。従って、一つのロットで製造される商品に対して、予め定められた間隔で幾つかのピックアップ操作を行う。例えば、生産開始時、1時間毎、生産終了時等の全てか又は何れか1つ以上の間隔でピックアップすればよい。
【0034】
本発明における撮像工程としては、選択された商品の賞味期限の表示領域を含む画像を撮像する。ピックアップが生産開始時、1時間毎、生産終了時等の全てか又は何れか1つ以上等の予め定められた間隔で行われるため、例えば、製造ラインの近傍に配置されたPC端末に接続されたカメラにおいて行うことができる。
【0035】
カメラによる撮影の際に、前記PC端末に接続された入力手段によって、撮像される商品に関する商品データと、この商品データの入力処理及び撮像処理を実行した実行者に関する実行者データとを含む選択商品のデータを入力する。これら選択商品の商品データと実行者データとは、PC端末に接続されたキーボードによる入力やマウスによるクリック入力でもよいが、好ましくは、予め保存しておいた前記食品加工で加工される加工食品の商品データ群から一つの商品データを選択する印刷表示コードと、予め保存しておいた前記撮像処理を実行する実行者に関する実行者データ群から一つの実行者データを選択する印刷表示コードとの読み取り機によって入力される。これにより、入力の迅速化とデータの改ざん防止との効果を奏する。
【0036】
本発明における実行者入力工程とは、撮像工程で得られた画像と、前記商品データ選択手段から選択された商品データとを前記第1の端末の表示手段に表示させ、前記実行者入力項目と実行者日付入力項目とを入力して第1確認済み製造商品データを作製して第1確認済みデータベース手段に保存するものであればよい。作製されたデータベースは処理するPC端末内のハードディスク等の記録手段に保存されても、通信回線を介して接続された同じ工場内、本社、支社、他の工場等のサーバーの1つ以上の記録手段に保存されてもよい。
【0037】
本発明における確認者入力工程とは、第1確認済みデータベース手段を第2の端末の表示手段に表示させ、前記確認者入力項目と確認者日付入力項目とを入力して第2確認済み製品商品データを作製して第2確認済みデータベース手段に保存する工程である。即ち、実行者によって作成された第1確認済みデータベース手段から、出荷される商品群に関するファイルデータを検索・抽出し、該当するファイルデータの項目が満たされている状態を確認した上で、確認者入力項目と確認者日付入力項目とを入力して第2確認済み製品商品データを作製して第2確認済みデータベース手段に保存して出荷されればよい。この確認者入力工程は、ファイルデータを作製した実行者が行うのではなく、実行者以外の他者である確認者がファイルデータを確認して出荷を承認するようにすることで、安全性が更に向上する。
【0038】
好ましい態様としては、確認者入力工程では、第2確認済みデータベース手段に保存する際に、出荷の承認を与えることとする。これにより、出荷された商品が、第2確認済みデータベース手段に保存されたファイルデータによって、管理できるため、万が一の有事の際には、第2確認済みデータベース手段のファイルデータを基にして、第2確認済みデータベース手段や商品データベース手段に遡って検索できるため、問題が生じた商品と同じロットの商品を出荷停止にでき、出荷先の商品を緊急に回収することも可能となる。
【0039】
尚、この工程で得られた第2確認済みデータベース手段についても、食品加工工程を行う工場以外にも、本社、支社、他の工場等と通信回線を介して閲覧可能な閲覧端末で閲覧可能とする。また、作製されたデータベースについても、確認処理するPC端末内のハードディスク等の記録手段に保存されても、通信回線を介して接続された同じ工場内、本社、支社、他の工場等のサーバーの1つ以上の記録手段に保存されてもよい。
【0040】
以上のように、本発明の管理法では、ピックアップした選択商品の賞味期限の画像を撮像するため、選択商品は保存せず、当該ロットの商品に戻すことが可能となり、商品のロスがない利点がある。また、本発明のシステムは、製造ラインの近傍に簡単に設置可能である市販のPCに接続する撮像装置やバーコードリーダー等で本発明のシステムを構成することが可能であるため、既設の工場等にも低コストで導入しやすい利点がある。
【0041】
更に、製造商品ファイルを作製するには、選択商品を撮像し、諸データを入力すればよいため、実行者の手間が減り、出荷に際しては、それをチェックする者が製造ラインから離れた場所でチェックを行うことができる。通信回線を介して接続された端末上で回覧、確認が出来るので、時間がかからず、チェックのタイミングが適切になる。
【0042】
尚、本発明の第1確認済みデータベース手段及び第2確認済みデータベース手段のファイルデータは、好ましくは、各データベースでのファイルデータは再保存を禁止し新規保存のみ可能な、不改変なファイルデータとする。この不改変なファイルデータとしては、PDFファイルを利用することができ、改ざんの心配や、かつ保管の省スペース化を実現でき、再確認等のトレーサビリティが効率的になる。
【0043】
また、ファイルデータを作製する実行者は、次工程での確認者がファイルデータをチェックすることを念頭にしているため実行者作業モラルを向上させる利点もあり、再保存が禁止されるファイルデータとした場合には、更に実行者作業モラルを向上させる利点もある。更に、確認者についても、万が一、商品事故が発生した場合には、他者がチェックすることを念頭にしているため、作業モラルを向上させる利点もあり、再保存が禁止されるファイルデータとした場合には、更に実行者作業モラルを向上させる利点もある。
【実施例】
【0044】
図1は本発明の加工食品管理システムの一実施例の構成を示す説明図である。図2は発送商品ファイルデータの表示画面である。
【0045】
図1に示す通り、本発明の加工食品管理システムは、製造ラインの包装工程ライン16の近傍に実行者入力工程を行う第1の端末としてのPC端末10が配置される。このPC端末10は、製造される加工食品を包装した包装材の賞味期限の表示領域を含む画像を撮像する撮像手段としてのカメラ11と、商品データベースから該当する商品のデータを選択する商品データ選択手段としてのバーコードリーダー12と、表示手段としてのディスプレイ13と、入力手段としてのキーボード14、マウスとが、情報処理手段としての本体15に接続されている。
【0046】
このPC端末10は、カメラ11で加工食品の包装材の賞味期限の表示領域を含む画像を撮影し画像データを得る。また、予め幾人かの撮影実行者の実行者データベースを作製し、撮影実行者の各々にその実行者データベースから自身のデータのみを読み出すことができる印刷表示コードとしてのバーコードを携帯させておき、画像の撮影時にバーコードリーダー12で読み込みませることにより、実行者のデータを呼び出す。
【0047】
更に、製造ラインで製造される商品についての商品名、使用原料のロット等からなる商品データベースを作成し、現在の製造ラインで製造された商品についての商品データを呼び出すバーコードを予め作製しておき、撮影実行者に携帯させておき、バーコードリーダー12で読み込ませることにより、商品データを呼び出す。
【0048】
撮影に際しては、呼び出した商品データとカメラで取り込んだ撮影画像データとを日時データと共に1つの製造商品確認ファイルを表示させる。その際には、この製造商品確認ファイルの実行者入力項目と日付入力項目との入力項目には、呼び出した実行者データによって実行者入力項目と日付とが自動的に入力される。撮影実行者が選択商品の画像中の賞味期限の日付と商品データの賞味期限の日付とを確認した上で両賞味期限の日付と同一の日付を実行者日付入力項目に入力する。実行者による入力が完了した上で、このファイルをPC端末10内のハードディスクとネットワーク回線でサーバー17とに第1確認済み製造商品データとして保存して第1確認済みデータベースを作製する。
【0049】
より具体的には、撮影実行者は商品の日付表示部をカメラでJPGファイルとして取り込む。この場合、取り込んだ時間も自動的に記録される。撮影実行者は商品データのバーコードをバーコードリーダー12で取り込み、商品データで表示された生産指示と照合する。照合によって間違いがないことを確認した上で、キーボード14で実行者自身が日付入力項目の欄に日付を入力する。この際、選択商品の生産順と終了時日付チェックとを行い、照合した結果を入力するようにしてもよい。
【0050】
次に、撮影実行者は自身のデータをバーコードで入力する。この際、入力時間も自動的に記録される。撮影実行者はJPGファイルの日付表示を目視判定し、日付の数字を入力し、生産指示と照合した上で、日時データと共に1つのPDFファイルからなる製造商品ファイルを作製し、これをPC端末10内のハードディスクとネットワーク回線で接続された工場内にあるサーバー17とに記録・蓄積して第1確認済みデータベースを作製する。
【0051】
製造された商品について、発送する場合には確認検査工程を経て行われる。確認検査工程は、ファイルデータを作製した撮影実行者が行わず、確認検査担当者が行う。確認検査担当者は包装ライン近傍に配置したPC端末10で行ってもよいが、図1に示した別のPC端末20で行う。PC端末20には、PC端末10と同様にバーコードリーダー22を備えている。
【0052】
このサーバー17の第1確認済みデータベースにネットワーク回線(通信回線)で閲覧可能なPC端末20及びPC端末30とが設置されている。PC端末20は確認者が確認検査を行う第2の端末としてのPC端末であり、実行者が作製した第1確認済み製造商品データを保存するデータベースにネットワーク回線でアクセス可能に設置されている。本実施例では、確認者による確認検査によって製造された加工商品の発送許可を出すものであるが、発送許可は更に別の端末でその権限を与えられた者が確認の上、許可を出すようにしてもよい。
【0053】
PC端末20には、第1確認済み製造商品データを表示可能な表示手段としてのディスプレイ23と、バーコードリーダー22と、キーボード24とが情報処理手段としての本体25に接続されている。
【0054】
確認検査に際しては、予め幾人かの確認者の個々のデータを保存した確認者データベースを作製し、確認者の各々にその確認者データベースから自身のデータのみを読み出すことができる印刷表示コードとしてのバーコードを携帯させておき、確認検査時にバーコードリーダー22で読み込みませることにより、確認者のデータを呼び出し、出荷を予定している商品の第1確認済み製造商品データを表示させる。その際に、表示された第1確認済み製造商品データの確認者入力項目と日付入力項目との入力項目には、呼び出した確認者データによって確認者入力項目と日付とが自動的に入力される。
【0055】
確認者が選択商品の画像中の賞味期限の日付と商品データの賞味期限の日付と実行者が入力した日付入力項目の日付とを確認した上で3つの賞味期限の日付と同一の日付を確認者日付入力項目に入力する。確認者による入力が完了した上で、このファイルをPC端末20内のハードディスクとネットワーク回線でサーバー17とに第2確認済み製造商品データとして保存して第2確認済みデータベースを作製した上で、発送許可を出す。即ち、第2確認済みデータベースが発送商品データベース手段となる。
【0056】
また、PC端末30はサーバー17の第2確認済みデータベースの発送商品ファイルデータを閲覧可能なPC端末である。このPC端末30は万が一の有事の際には、第2確認済みデータベースのファイルデータを基にして、第2確認済みデータベースを用いて、商品データベースに遡って検索する。
【0057】
このシステムを用いて加工食品の管理を行う。先ず、商品ピックアップ工程として、食品加工工程中の加工食品を包装した包装材に賞味期限の表示を行った商品群から商品を選択する。製造された商品のロットでの生産開始時、1時間毎、段替時、生産終了時等において、商品をピックアップする。
【0058】
ピックアップされた商品は、撮像実行者によって包装工程ラインの近傍に配置されたPC端末10に持って行かれ、データベース化を行う。データベース化は、ピックアップされた商品の賞味期限の表示領域を含む画像を撮像し、商品データベースから該当商品データを呼び出し、実行者データベースから撮像実行者のデータを呼び出し、図2に示す表示画面の領域A,領域Bに入力された状態で、他の領域の入力は空欄となって表記される。実行者は選択商品の画像中の領域Aの賞味期限の日付と領域Bの商品データの賞味期限の日付とを確認した上で両賞味期限の日付と同一の日付を領域Cの実行者日付入力項目欄に入力する。入力が終了したファイルは第1確認済み製造商品データとして、第1確認済みデータベースに保存する。
【0059】
確認検査担当者は、サーバー17に記録・蓄積された第1確認済みデータベースから該当する第1確認済み製造商品ファイルを呼び出す。この時、確認者は自信が携帯しているバーコードをバーコードリーダー22で読み込みませることにより、自身の確認者データを呼び出し、第1確認済み製造商品データの確認者入力項目にそのデータが表示される。
【0060】
図2に示す表示画面の領域A,領域B及び実行者日付入力項目欄の領域C及び確認者入力項目の領域Dに入力された状態で、他の領域の入力は空欄となって表記される。確認者は選択商品の画像中の領域Aの賞味期限の日付と領域Bの商品データの賞味期限の日付と領域Cの実行者日付入力項目欄の日付とを確認した上で3つの賞味期限の日付と同一の日付を領域Eの実行者日付入力項目欄に入力する。入力が終了したファイルは第2確認済み製造商品データとして、第2確認済みデータベースに保存する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の加工食品管理システムの一実施例の構成を示す説明図である。
【図2】発送商品ファイルデータの表示画面である。
【符号の説明】
【0062】
10…PC端末、
11…カメラ、
12…バーコードリーダー、
13…ディスプレイ、
14…キーボード、
15…端末本体、
16…ライン、
17…サーバー、
20…PC端末、
22…バーコードリーダー、
23…ディスプレイ、
24…キーボード、
25…端末本体、
30…PC端末、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造される加工商品毎の製造予定情報及び賞味期限情報を含む商品データを予め保存された商品データベース手段にアクセス可能な第1の端末を備え、
前記第1の端末は、
製造工程中の加工商品群から選択された1つの商品の包装材に印字された賞味期限の表示領域を含む画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像される選択商品に関する商品データを前記商品データベース手段から選択する商品データ選択手段と、
前記撮像手段で撮像された選択商品の画像と前記商品データ選択手段から選択された商品データとを1つの製造商品確認ファイルとして表示する表示手段と、
前記表示された製造商品確認ファイルに備わった前記商品データの入力処理及び撮像処理を実行する実行者の氏名を含む実行者データを入力する実行者入力項目と、前記実行者が前記選択商品の画像中の賞味期限の日付と前記商品データの賞味期限の日付とを確認した上で両賞味期限の日付と同一の日付を入力する実行者日付入力項目とに入力する実行者入力手段と、
前記入力項目の入力を終えた製造商品確認ファイルを第1確認済み製造商品データとして作製する情報処理手段と、を備え、
前記第1端末の情報処理手段で作製された第1確認済み製造商品データを保存する第1確認済みデータベース手段にアクセス可能な第2の端末を備え、
前記第2の端末は、
前記第1確認済み製造商品データを表示する表示手段と、
前記表示された第1確認済み製造商品データに備わった確認者の氏名を含む確認者データを入力する確認者入力項目と、前記確認者が前記選択商品の画像中の賞味期限の日付と前記商品データの賞味期限の日付と前記実行者日付入力項目中の賞味期限の日付とを確認した上で3つの賞味期限の日付と同一の日付を入力する確認者日付入力項目とに入力する確認者入力手段と、
前記入力項目の入力を終えた第1確認済み製造商品データを第2確認済み製造商品データとして作製して第2確認済みデータベース手段に保存する情報処理手段と、を備えたことを特徴とする加工食品管理システム。
【請求項2】
前記商品データ選択手段が、予め商品データに対応させておいた加工商品の印刷表示コードの読み取り機による選択手段であり、
前記実行者入力手段の実行者入力項目が、予め実行者毎に対応させた実行者データベースから当該実行者データを選択する印刷表示コードの読み取り機による選択手段であることを特徴とする請求項1に記載の加工食品管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の加工食品管理システムを用いた管理法であって、
包装材に賞味期限の表示を行う製造工程後の加工商品群から商品を選択するピックアップ工程と、
選択された加工商品の賞味期限の表示領域を含む画像を第1の端末で撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で得られた画像と、前記商品データ選択手段から選択された商品データとを前記第1の端末の表示手段に表示させ、前記実行者入力項目と実行者日付入力項目とを入力して第1確認済み製造商品データを作製して第1確認済みデータベース手段に保存する実行者入力工程と、
保存された第1確認済みデータベース手段を第2の端末の表示手段に表示させ、前記確認者入力項目と確認者日付入力項目とを入力して第2確認済み製品商品データを作製して第2確認済みデータベース手段に保存する確認者入力工程とを備えたことを特徴とする加工食品管理システムを用いた管理法。
【請求項4】
前記確認者入力工程では、第2確認済みデータベース手段に保存する前に、出荷の承認を与える工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の加工食品管理システムを用いた管理法。

【図1】
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【図2】
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