説明

加工食品

【課題】カボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜と、かつお節出汁及び/又は昆布出汁を配合する加工食品であって、保存中に発生する酸味を抑制した加工食品を提供する。
【解決手段】カボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜と、かつお節出汁及び/又は昆布出汁を配合する加工食品であって、水不溶性カルシウム含有材料粉末を配合することを特徴とする加工食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜と、かつお節出汁及び/又は昆布出汁を配合する加工食品であって、水不溶性カルシウム含有材料粉末を配合することで、保存中に発生する酸味を抑制した加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の食の欧米化に伴い、ガン、脳卒中、高血圧等の生活習慣病患者が増加し深刻な問題となっている。原因の1つには、野菜不足が挙げられ、野菜の摂取量を増やすことが課題となっている。野菜を摂取する方法は様々にあるが、中でも野菜を加熱調理した加工食品は、手軽に美味しく野菜を摂取できるため、野菜不足を解消する方法として提案されている。
【0003】
しかしながら、野菜の加工食品のうち、カボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜と、かつお節出汁及び/又は昆布出汁を用いた加工食品において、調理中又は調理直後には発生しない酸味が、加工食品の保存中に、経時的に発生してしまう問題があった。
【0004】
従来、野菜ジュース等の野菜、果物類の酸味を抑制する方法としてエリスリトールを添加する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、野菜が本来持つ酸味を抑制することはできるものの、カボチャ、サツマイモ、里芋から選択された少なくとも1種の野菜を用いた加工食品の保存中に発生する酸味を十分に抑制することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−117262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、カボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜と、かつお節出汁及び/又は昆布出汁を配合する加工食品であって、保存中に発生する酸味を抑制した加工食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく、加工食品に用いる種々の原料について鋭意研究を重ねた結果、カボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜と、かつお節出汁及び/又は昆布出汁を配合する加工食品であって、水不溶性カルシウム含有材料粉末を配合するならば、意外にも加工食品の保存中に発生する酸味を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)カボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜と、かつお節出汁及び/又は昆布出汁を配合する加工食品であって、水不溶性カルシウム含有材料粉末を配合する加工食品、
(2)野菜が、冷凍された野菜である(1)記載の加工食品、
(3)水不溶性カルシウム含有材料粉末が卵殻カルシウムである(1)又は(2)の加工食品、
(4)更に、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を配合する(1)乃至(3)のいずれかに記載の加工食品、
(5)野菜の配合量が10〜80%である(1)乃至(4)のいずれかに記載の加工食品、
(6)水不溶性カルシウム含有材料粉末の配合量が0.05〜5%である(1)乃至(5)のいずれかに記載の加工食品、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜と、かつお節出汁及び/又は昆布出汁を配合する加工食品であって、保存中に発生する酸味を抑制した加工食品を提供でき、食品市場における野菜入り加工食品の更なる拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0011】
本発明の加工食品は、カボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜と、かつお節出汁及び/又は昆布出汁を配合する加工食品であって、水不溶性カルシウム含有材料粉末を配合することを特徴としており、これにより、加工食品の保存中に発生する酸味を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の加工食品には、レトルト処理を施した加工食品も含まれる。レトルト処理を施した加工食品は、保存中に酸味を発生し易い傾向にあるため、本発明の効果を発揮し易く、好適である。
【0013】
本発明の加工食品は、カボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜を配合する。これらの野菜を配合した加工食品は、保存中に酸味を発生し易くなるが、本発明によれば、この酸味を効果的に抑制することができる。これらの野菜の内、特にカボチャを配合した加工食品は、保存中に酸味を発生し易いため、本発明の効果を発揮し易く、好適である。
【0014】
本発明で用いるカボチャは、その種類を特に限定するものではないが、例えば、西洋カボチャの黒皮栗カボチャ、青皮栗カボチャ、赤皮栗カボチャ、東洋かぼちゃの黒皮カボチャ、会津カボチャ、ペポ種のドングリカボチャ、キンシウリ等を用いるとよい。
【0015】
本発明で用いるサツマイモは、その種類を特に限定するものではないが、例えば、ベニアズマ、ベニコマチ、紅赤、五郎島金時、なると金時、紫宝、土佐紅、パープルスイートロード等を用いるとよい。
【0016】
本発明で用いる里芋は、その種類を特に限定するものではないが、例えば、石川早生、土垂、セレベス、八頭、海老芋、たけのこ芋、はすいも、田いも等を用いるとよい。
【0017】
前記本発明で用いる野菜は、加工食品の形態に合わせて、皮等の除去、ブランチング、適当な大きさのカット、及びペースト化等の前処理を施してもよい。また、これらを冷凍した野菜を用いてもよい。冷凍された野菜を配合した加工食品は、生の野菜を配合した加工食品と比較して、保存中に酸味を発生し易いため、本発明の効果を発揮し易く、好適である。
【0018】
本発明の加工食品において、調理後の野菜の形態は、特に限定するものではないが、形の残った具材感のある形態や咀嚼困難者向けのペースト状の形態が挙げられる。これらのうち、野菜がペースト状の形態となっている加工食品は、保存中に酸味を発生し易い傾向にあるため、本発明の効果を発揮し易く、好適である。
【0019】
本発明で用いるカボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜の加工食品に対する配合量は、本発明の効果を発揮し易い観点から、10%以上が好適であり、20%以上がより好適である。また、前記野菜の配合量は、調味液と野菜のバランスを考慮して、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。
【0020】
本発明で用いるかつお節出汁及び/又は昆布出汁は、かつお節、昆布から旨みを抽出するため、それぞれを煮出して採った汁である。また、本発明のかつお節出汁及び/又は昆布出汁は、前記かつお節、昆布から煮出して採った汁以外にも、市販されている簡易的な出汁も含まれる。また、簡易的なかつお節出汁、昆布出汁の形態としては、市販されているものであれば、特に限定するものではないが、液体状、液体状の出汁を濃縮したエキス状、顆粒状、粉末状、固形状、パック状のもの等を用いることができる。
【0021】
本発明で用いるかつお節出汁及び/又は昆布出汁の配合量は、本発明の効果を発揮しやすい程度であれば、加工食品の種類や、出汁の形態によって、適宜調節して配合すればよいが、例えば、粉末出汁の場合、0.03〜0.5%、エキス状出汁の場合、0.3%〜3%が好適である。
【0022】
本発明で用いる水不溶性カルシウム含有材料粉末は、水に実質的に不溶の食品用のカルシウム含有材料の粉末である。ここで、水に実質的に不溶とは、20℃の水に対する溶解度が10mg/100g以下であることを意味する。具体的には、卵殻カルシウム、牛骨、魚骨等の魚獣骨カルシウム、ホタテ貝等の貝殻カルシウム、炭酸カルシウム、第三リン酸カルシウム等を用いるとよい。これらは、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、動植物由来の天然の水不溶性カルシウム含有材料粉末である卵殻カルシウム、牛骨、魚骨等の魚獣骨カルシウム、ホタテ貝等の貝殻カルシウムは、多孔質な構造を有するためか、本発明の効果が顕著であるため、好ましく、卵殻カルシウムは、より好ましい。
【0023】
本発明で用いる水不溶性カルシウム含有材料粉末の配合量は、0.05〜5%が好ましく、0.1〜2%がより好ましい。水不溶性カルシウム含有材料粉末の配合量が前記範囲より少ないと、加工食品の保存中に発生する酸味を抑制し難く好ましくない。一方、水不溶性カルシウム含有材料粉末の配合量が前記範囲より多くても、配合量に応じた効果が期待し難く経済的でない。
【0024】
本発明の加工食品は、前記水不溶性カルシウム含有材料粉末に加えて、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を配合することが好ましい。水不溶性カルシウム含有材料粉末と加工澱粉及び/湿熱処理澱粉を併用すると、加工食品の保存中に発生する酸味の抑制効果が、相乗的に高まる為である。
【0025】
本発明で用いる加工澱粉とは、食品衛生法で添加物に指定された化学的処理を施された澱粉であって食用として供されるものであれば特に限定するものではない。例えば、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いるとよい。
【0026】
また、本発明で用いる湿熱処理澱粉は、「湿熱処理澱粉」として市販されているものであれば特に限定するものではないが、例えば、澱粉加熱しても糊化しない程度の水分を含む澱粉粒子を、密閉容器中で相対湿度100%の条件下で約100〜125℃に加熱して得る方法、あるいは第1段階で澱粉を容器中に入れ密閉・減圧し、第2段階で生蒸気を容器内に導入し、加湿加熱するシステムである減圧加圧加熱法等で製造されたものを用いるとよい。
【0027】
本発明で用いる加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の配合量は、0.1〜8%が好ましく、0.5〜4%がより好ましい。加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の配合量が前記範囲より少ないと、加工食品の保存中に発生する酸味を抑制し難く、好ましくない。一方、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の配合量が前記範囲より多くても、配合量に応じた効果が期待し難く経済的でない。
【0028】
本発明の加工食品には上記カボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜、かつお節出汁及び/又は昆布出汁、水不溶性カルシウム含有材料粉末、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉以外に本発明の効果を損なわない範囲で当該食品に一般的に使用されている各種原料を適宜選択し配合させることができる。例えば、タマネギ、ジャガイモ、ダイコン、グリンピース、ホールコーン、大豆、小豆等の野菜類、椎茸、シメジ、エノキ等のきのこ類、鱈、鮭、鯛、イカ、タコ等の魚介類、牛肉、鶏肉、豚肉等の畜肉類、煮干、椎茸、鶏肉、牛肉、豚肉、魚、野菜等を使用した出汁又はエキス類、清水、酒、砂糖、醤油、みりん、酢、食塩、グルタミン酸ソーダ等の調味料、生姜、唐辛子、あさつき、おろし大根等の薬味、有機酸等のpH調整剤等が挙げられる。
【0029】
本発明の加工食品の製造方法は、水不溶性カルシウム含有材料粉末、かつお節出汁及び/又は昆布出汁を配合した調味液、及び野菜を混合し、常法に則り製造すれば良い。例えば、ペースト状の加工食品の場合、以下のように製造することができる。二重釜に水不溶性カルシウム含有材料粉末、かつお節出汁及び/又は昆布出汁、及びその他の調味料を投入し、加熱攪拌して調味液を調製する。続いて、必要に応じて前処理を施したカボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜を投入し更に加熱攪拌する。最後に、調製した加工食品を容器に充填し、レトルト処理(100〜130℃、4分〜90分程度)を施し、本発明の加工食品を製造する方法等が挙げられる。
【0030】
また、野菜の形の残った加工食品の場合、水不溶性カルシウム含有材料粉末、かつお節出汁及び/又は昆布出汁、及びその他の調味料を配合した調味液を調製し、調製した調味液と必要に応じて前処理を施したカボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜を容器に充填した後に、レトルト処理(100〜130℃、4分〜90分程度)を施し、本発明の加工食品を製造する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明について、実施例、比較例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【0032】
[実施例1]
下記、配合表に従って、二重釜に醤油、みりん、砂糖、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、粉末かつお節出汁、卵殻カルシウム、清水を混合攪拌して調味液を製し、続いて調味液に皮を除去した冷凍のカボチャ(2.5cm角)を投入し、85℃になるまで加熱攪拌した。次に、100g容のレトルトパウチに製したカボチャの加工食品を充填し、開口部をシールした。シール後、レトルト処理(120℃、20分)を施し、加工食品を得た。なお、得られた加工食品は、カボチャを55%、水不溶性カルシウム含有材料粉末(卵殻カルシウム)を0.5%、及び加工澱粉を2%含むものであり、野菜の形態がペースト状となっていた。
【0033】
[配合表]
(野菜)
冷凍カボチャ(2.5cm角) 55%
(調味液)
醤油 4%
みりん 2%
砂糖 2%
アセチル化アジピン酸架橋澱粉 2%
粉末かつお節出汁 0.2%
卵殻カルシウム 0.5%
清水 残余
―――――――――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0034】
得られた加工食品を20℃で3ヶ月間保存し、その後試食したところ、加工食品の保存中に発生する酸味は十分に抑制されていた。
【0035】
[実施例2]
実施例1において、冷凍カボチャ(2.5cm角)55%を冷凍サツマイモ(ペースト状)40%に変更し、粉末かつお節出汁0.2%を粉末かつお節出汁0.1%、粉末昆布出汁0.1%に変更した以外は、実施例1の方法に準じて、加工食品を製した。なお、得られた加工食品は、サツマイモを40%、水不溶性カルシウム含有材料粉末(卵殻カルシウム)を0.5%、及び加工澱粉を2%含むものであり、野菜の形態がペースト状となっていた。
【0036】
得られた加工食品を20℃で3ヶ月間保存し、その後試食したところ、加工食品の保存中に発生する酸味は十分に抑制されていた。
【0037】
[実施例3]
実施例1において、冷凍カボチャ(2.5cm角)55%を、里芋(2.5cm角)15%とニンジン(2.5cm角)15%に変更し、粉末かつお節出汁を粉末昆布出汁に置き換え、アセチル化アジピン酸架橋澱粉をオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムに置き換えた以外は、実施例1の配合表に準じて、二重釜に醤油、みりん、砂糖、オクテニルコハク酸澱粉、粉末昆布出汁、卵殻カルシウム、清水を投入し、加熱攪拌をして調味液を製した。次に、調製した調味液と皮を除去した里芋(2.5cm角)、ニンジン(2.5cm角)を100g容のレトルトパウチに充填し、開口部をシールしてレトルト処理(120℃、20分)を施し、加工食品を得た。なお、得られた加工食品は、里芋を15%、水不溶性カルシウム含有材料粉末(卵殻カルシウム)を0.5%、及び加工澱粉2%を含むものであり、野菜の形態が形のある状態であった。
【0038】
得られた加工食品を20℃で3ヶ月間保存し、その後試食したところ、加工食品の保存中に発生する酸味は十分に抑制されていた。
【0039】
[実施例4]
実施例1において、卵殻カルシウムを貝殻カルシウムに変更した以外は、実施例1の方法に準じて、加工食品を製した。なお、得られた加工食品は、カボチャを55%、水不溶性カルシウム含有材料粉末(貝殻カルシウム)を0.5%、及び加工澱粉を2%含むものであり、野菜の形態がペースト状となっていた。
【0040】
[実施例5]
実施例1において、卵殻カルシウムを炭酸カルシウムに変更した以外は、実施例1の方法に準じて、加工食品を製した。なお、得られた加工食品は、カボチャを55%、水不溶性カルシウム含有材料粉末(炭酸カルシウム)を0.5%、及び加工澱粉を2%含むものであり、野菜の形態がペースト状となっていた。
【0041】
[比較例1]
実施例1において、卵殻カルシウムを塩化カルシウムに変更した以外は、実施例1の方法に準じて、加工食品を製した。なお、得られた加工食品は、カボチャを55%、水溶性カルシウム含有材料粉末(塩化カルシウム)を0.5%、及び加工澱粉を2%含むものであり、野菜の形態がペースト状となっていた。
【0042】
[実施例6]
実施例1において、アセチル化アジピン酸架橋澱粉を湿熱処理澱粉に変更した以外は、実施例1の方法に準じて、加工食品を製した。なお、得られた加工食品は、カボチャを55%、及び水不溶性カルシウム含有材料粉末(卵殻カルシウム)を0.5%、及び湿熱処理澱粉を2%含むものであり、野菜の形態がペースト状となっていた。
【0043】
[試験例1]
実施例1、実施例4、実施例5、実施例6、及び比較例1で得られたペースト状の加工食品を用いて、配合するカルシウム含有材料粉末及び澱粉の違いによる、加工食品の保存中に発生する酸味の抑制効果への影響を調べた。具体的には、それぞれの加工食品を35℃で3週間保存した後に試食を行ない、保存中に発生する酸味の抑制効果を下記評価基準で評価した。なお、本発明において、35℃で1週間の保存は、常温(20℃)で1ヶ月間の保存に相当する。
【0044】
加工食品の保存中に発生する酸味の抑制効果の評価
ランク:基準
◎:保存中に発生する酸味を十分抑制していた。
○:保存中に発生する酸味を抑制していた。
△:保存中に発生する酸味をやや感じたが、問題とならない程度であった。
×:保存中に発生する酸味を感じた。
【0045】
【表1】

【0046】
表1により、卵殻カルシウムを用いた加工食品は、保存中に発生する酸味が十分に抑制されており、貝殻カルシウムを用いた加工食品は、保存中に発生する酸味が抑制されていた。また、炭酸カルシウムを用いた加工食品は、保存中に発生する酸味をやや感じたが、問題とならない程度であった。一方、塩化カルシウムを用いた加工食品は、保存中に発生した酸味を感じた。また、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、湿熱処理澱粉を用いた加工食品は、共に保存中に発生する酸味が十分に抑制されていた。
【0047】
[試験例2]
水不溶性カルシウム含有材料粉末と、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の配合量の違いによる、加工食品の保存中に発生する酸味の抑制効果への影響を調べた。具体的には、実施例1において、卵殻カルシウム及びアセチル化アジピン酸架橋澱粉の配合量を表2に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様の方法で加工食品を製した。次いで、得られた加工食品を35℃で3週間保存した後に試食を行ない、保存中に発生する酸味の抑制効果を評価した。なお、保存中に発生する酸味の抑制効果の評価基準は試験例1と同様とする。
【0048】
【表2】

【0049】
表2により、水不溶性カルシウム含有材料粉末と、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の配合量が、加工食品に対してそれぞれ0.05〜5%、0.1〜8%である加工食品は、保存中に発生する酸味の抑制効果に優れており、特に、水不溶性カルシウム含有材料粉末と、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の配合量が、加工食品に対してそれぞれ、0.1〜2%、0.5〜4%である加工食品は、保存中に発生する酸味の抑制効果により優れていることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カボチャ、サツマイモ、里芋から選択される少なくとも1種の野菜と、かつお節出汁及び/又は昆布出汁を配合する加工食品であって、水不溶性カルシウム含有材料粉末を配合することを特徴とする加工食品。
【請求項2】
野菜が、冷凍された野菜である請求項1記載の加工食品。
【請求項3】
水不溶性カルシウム含有材料粉末が卵殻カルシウムである請求項1又は2記載の加工食品。
【請求項4】
更に、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を配合する請求項1乃至3のいずれかに記載の加工食品。
【請求項5】
野菜の配合量が10〜80%である請求項1乃至4のいずれかに記載の加工食品。
【請求項6】
水不溶性カルシウム含有材料粉末の配合量が0.05〜5%である請求項1乃至5のいずれかに記載の加工食品。