説明

加水分解安定性マレイミド末端ポリマー

本発明は、加水分解安定性マレイミド官能基化水溶性ポリマー、およびかかるポリマーとその前駆体の製造法と使用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、特定のマレイミド末端水溶性ポリマー、およびかかるポリマーの製造方法と使用方法に関する。特に本発明は、(i)1つ以上の末端マレイミド基を有する加水分解安定性ポリマー、(ii)本明細書に記載のマレイミド末端水溶性ポリマー試薬の、別の表面(例えば活性物質または表面)への結合により生成する結合体、(iii)かかるポリマー試薬の合成方法、(iv)ポリマー試薬を含む組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
バイオテクノロジーの最近の進歩のために、治療用タンパク質および他の生体分子(例えば抗体および抗体断片)が大規模に製造でき、そのような生体分子をより入手しやすくなっている。残念ながら治療的生体分子候補の臨床的有用性は、その速いタンパク質分解、低いバイオアベイラビリティ、製造、保存もしくは投与時の不安定性、またはその免疫原性により、しばしば妨害される。治療的用途のタンパク質および他の生体分子の投与に対する関心が継続しているため、これらの欠点を克服するための種々のアプローチが探索されている。
【0003】
広く使用されているそのようなアプローチの1つは、ポリエチレングリコールすなわち「PEG」のような水溶性ポリマーの共有結合によるタンパク質や他の治療用分子候補の修飾である(Abuchowski, A.ら、J. Biol. Chem. 252(11), 3579 (1977);Davis, S.ら、Clin. Exp. Immunol., 46,649-652 (1981))。PEG修飾タンパク質(PEG結合体またはペグ化タンパク質とも呼ぶ)の生物学的性質は、多くの場合に非ペグ化体のものより大きく改善していることが証明されている(Hermanら、Macromol. Chem. Phys., 195,203-209 (1994))。ポリエチレングリコール修飾タンパク質は、そのタンパク質分解に対する耐性の上昇のためにおよびまた上昇した熱安定性のために、より長い循環時間を有することが証明されている(Abuchowski, A.ら、J. Biol. Chem. 252, 3582-3586 (1977))。生物効率(bioefficiency)の同様の上昇が、他の生体分子(例えば抗体および抗体断片で観察されている(Chapman, A., Ad. Drug Del. Rev. 54, 531-545 (2002))。
【0004】
一般に、薬物または他の表面へのポリエチレングリコールの結合は、活性化PEG誘導体、すなわち生体分子の求核性中心(例えばタンパク質のリジン、システインおよび同様の残基)との反応に適した少なくとも1つの活性化末端を有するPEGを使用して行われる。最も一般的に使用される方法は、活性化PEGとタンパク質のアミノ基(例えば、タンパク質のリジン側鎖上に存在するもの)との反応に基づく。タンパク質のアミノ基との反応に適した活性化末端基を有するPEGには、PEG-アルデヒド(Harris, J. M., Herati, R.S., Polym Prepr. (Am. Chem. Soc., Div. Polym. Chem), 32(1), 154-155 (1991))、混合無水物、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボニルイマダゾリド、およびクロロシアヌール酸エステル(Herman, S. ら、Macromol. Chem. Phys., 195, 203-209 (1994))がある。多くのタンパク質がPEG修飾中に活性を維持することが証明されているが、例えば特異的リジン残基の誘導体化がタンパク質を不活性化するように、タンパク質のアミノ基を介するポリマーの結合は好ましくない場合がある(Suzuki, T.ら、Biochim. et Biophys. Acta 788, 248-255 (1984))。さらに、ほとんどのタンパク質はいくつかの利用可能な/アクセス可能なアミノ基を有し、形成されるポリマー結合体は一般に、モノペグ化、ジペグ化、トリペグ化種などの混合物であり、これらは性状解析し分離することが困難でありかつ時間がかかる。さらに、かかる混合物は再現性良く調製できず、これは、認可とその後の市販のためのスケールアップで問題となる。
【0005】
これらの問題を避ける1つの方法は、アミン以外の官能基を標的とする部位選択的ポリマー試薬を使用することである。1つの特に魅力的な標的は、タンパク質上のアミノ酸システインに存在するチオール基である。一般にシステインはタンパク質中でリジンほど多くはなく、従ってこれらのチオール含有アミノ酸に結合してタンパク質が誘導体化される確立は小さくなる。さらにシステイン部位への結合は、充分に明確な方法で行われることが多く、単一のポリマー−結合体が形成される。
【0006】
チオール選択的反応性末端基を有するポリエチレングリコール誘導体には、マレイミド、ビニルスルホン、ヨードアセトアミド、チオール、およびジスルフィドがあるが、マレイミドが最も好ましい。これらの誘導体はすべて、タンパク質のシステイン側鎖に結合させるのに使用されている(Zalipsky, S. Bioconjug. Chem. 6, 150-165 (1995);Greenwald, R.B.ら、Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 17, 101-161 (2000); Herman, S.ら、Macromol. Chem. Phys., 195,203-209 (1994))。しかしこれらの試薬の多くは、その合成と精製が困難なため、あまり広く使用されていない。
【0007】
上記したように、末端マレイミド基を有するポリエチレングリコール誘導体は、最も好ましい型のスルフヒドリル選択的試薬の1つであり、多くの業者から販売されている。あまり理解も認識もされていないが、本出願人は、多くのPEG-マレイミドは、候補薬剤の保存および輸送中に加水分解的に不安定であることをことを見いだした。さらに詳しくはマレイミド環の加水分解の大部分は、結合の前および後に観察されている。この不安定性は、薬剤−結合体内の複数の薬剤分子種の形成を引き起こす。種々の薬剤結合体種が同様の生物活性を有する可能性はあるが、薬物動態が変化することがあり、そのような組成物が患者への投与に好ましくないものになる。さらに、薬剤結合体の開環型と閉環型とを分離することが、非常に困難になることがある。すなわち本出願人は、保存と結合中に安定な、部位選択的に生物活性分子を結合させるのに有用な新しい活性化PEGの開発に対する当該分野のニーズを認識してきた。本発明はかかるニーズを満足するものである。
【発明の開示】
【0008】
発明の要約
本発明は、ポリマーがポリマー部分とマレイミド基との間に特定のリンカーを配置して含む、加水分解的に安定化されたマレイミド末端ポリマーのユニークなファミリーを提供する。
【0009】
本発明は、マレイミド末端ポリマーのマレイミド環に隣接する飽和非環状、環状、または脂環式炭化水素リンカーの取り込みが、その不安定性を低下させるという発見に基づく。本発明において、加水分解的に安定化されたマレイミド環を有するポリマー、そのポリマー前駆体、加水分解的に安定化されたマレイミド末端ポリマーの結合体、およびかかるポリマーとその結合体の製造法と使用法が提供される。
【0010】
一般に本発明は、以下の構造を有する水溶性ポリマーに関する。
【0011】
【化1】

【0012】
上記の一般構造において、POLYは水溶性ポリマー部分であり、Lは、加水分解安定性を隣接マレイミド環に付与する結合である。一般にリンカーは、マレイミド環に隣接する、飽和非環状、環状または脂環式炭化水素鎖を含み、全部で約3〜約20個の炭素原子を含有し、随時他の非妨害性原子または官能基を含有する。
【0013】
さらに詳しくは、ある態様において本発明は以下の構造を有する水溶性ポリマーに関する。
【0014】
【化2】

【0015】
構造IIにおいて、POLYは水溶性ポリマー部分であり、bは0または1であり、Xは、少なくとも3つの連続的飽和炭素原子を含む加水分解安定性リンカーである。好ましくはポリマーは、芳香族基やエステル結合を含まない。ある実施態様においてPOLYは、随時介在酸素([O]b)を介して、アミドカルボニル炭素に直接共有結合してカルバメート基を形成する。別の実施態様において、POLYは随時介在酸素(b=1の時は([O]))を介して、介在スペーサー(例えばメチレン)を介して、アミドカルボニル炭素に結合する。
【0016】
ある実施態様において、Xは、全部で約3〜約20個の炭素原子を有する飽和非環状、環状または脂環式炭化水素鎖である。さらに詳しくはXは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20よりなる群から選択される総数の炭素原子を有することができる。リンカーX中の炭素原子の総数の好適な範囲は、約3〜約20、または約4〜約12、約4〜約10、または約5〜約8原子である。
【0017】
式II中のリンカーXは、任意の数の構造的特徴を有することができる。ある実施態様においてXは、線状の飽和非環状炭化水素鎖である。さらに別の実施態様においてXは、分岐した飽和非環状炭化水素鎖であり、鎖中の任意の1つ以上の炭素位置で1つまたはさらには2つの置換基を含有することができる。例えばXは、マレイミジル基に対して炭素αで、またはマレイミド基に対して炭素βで、またはマレイミジル基で炭素γで分岐することができる。最大19個の炭素原子を有する炭化水素鎖について、1〜19位(1位はマレイミド環に近いものである)の任意の1つが分岐する。例えばC1-C2-C3-C4-C5-C6-C7-C8-C9-C10-C11-C12-C13-C14-C15-C16-C17-C18-C19-と記載された2〜19個の炭素原子を有する飽和炭化水素鎖について、鎖中の炭素の総数に依存して、炭素C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19の任意の1つ以上が分岐する。好ましくは、任意の飽和炭化水素鎖または脂環式リンカーにおいて、4個以下の炭素原子が分岐し、分岐位置の総数は好ましくは1、2、3、または4に等しい。飽和環または環系(例えば、2環式、3環式など)を一緒に形成する「分岐」位置が、以下に別々に考察される。
【0018】
本発明の異なる実施態様の代表的ポリマーが以下に提供される。
【0019】
【化3】

【0020】
例えば構造IIIにおいて、yは1〜約20の整数である;および各場合にR1とR2はそれぞれ独立に、Hであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基である。
【0021】
好ましくは構造IIIにおいて、各場合にR1とR2はそれぞれ独立に、Hであるか、または低級アルキルと低級シクロアルキルよりなる群から選択される有機基である。Yは好ましくは、3、4、5、6、7、8、9、および10よりなる群から選択される。構造IIIの具体例において、R1とR2は両方ともHである。
【0022】
構造IIIの種々の実施態様は以下を含む。
【0023】
【化4】

【0024】
例の構造III-Aにおいて、Cα上のR1とR2の少なくとも1つは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択され、yは少なくとも1であり、上記の具体的な値の任意のものでもよい。
【0025】
構造III-Aの具体例は、以下であるものを含む:
(i)Cα上のR1とR2のそれぞれは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から独立に選択され、および/または
(ii)すべての他の非Cα R1とR2変数はHであり、および/または
(iii)Cα上のR1とR2の少なくとも1つは、低級アルキルまたは低級シクロアルキルであり、および/または
(iv)Cα上のR2はHであり、および/または
(v)Cα上のR1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、およびメチレンシクロヘキシルよりなる群から選択される。
【0026】
本発明のこの態様のさらに別の具体例は、以下の構造III-Bとして提供される。
【0027】
【化5】

(式中、R1とR2は、それぞれ独立にアルキルまたはシクロアルキルである。あるいはR1はアルキルまたはシクロアルキルであり、R2はHである)。構造III-Bの追加の実施態様は、(i)R1とR2がそれぞれ独立に、メチルまたはエチルであるか、および/またはR1とR2が同じものである。
【0028】
構造IIIのさらに別の実施態様において、本発明のポリマーは以下の構造を有する:
【0029】
【化6】

(式中、R1とR2は、それぞれ独立にH、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択されるが、両方がHではなく、yは少なくとも2である)。この構造の具体例には、(i)R1とR2は、それぞれ独立にH、低級アルキルまたは低級シクロアルキルであり、および/または(ii)R1とR2は、それぞれ独立にH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルよりなる群から選択され、および/またはR2はHである、ものを含む。
【0030】
構造IIIのさらに別の実施態様において、
【化7】

Cγに結合したR1とR2の少なくとも1つは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される。具体例は、(i)Cγに結合したR1とR2の少なくとも1つは、アルキルまたはシクロアルキルであり、すべての他のR1とR2変数はHであり、および/または(ii)CαまたはCβに結合したR1変数の1つは、アルキルまたはシクロアルキルであり、すべての他のR1とR2変数はHである、ものを含む。
【0031】
既に記載されているように、Xは飽和環状または脂環式炭化水素鎖であり、すなわちリンカーXは、1つ以上の環状炭化水素を含有してもよい。一般に、以下の構造を有するポリマーが提供される。
【0032】
【化8】

【0033】
前記構造において、CYCaは「a」環炭素を有するシクロアルキレン基であり、ここで「a」の値は3〜12の範囲であり;pとqは、それぞれ独立に0〜20であり、そしてp+q+a≦20である。R1とR2は各場合に、それぞれ独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機ラジカルである。
【0034】
本発明のCYCaは、単環式、2環式、3環式構造などを包含する。
【0035】
構造IVの種々の実施態様は:
(i)pとqは、それぞれ独立に0、1、2、3、4、5、6、7、および8よりなる群から選択され、および/または
(ii)R1は各場合に、独立にHであるか、または低級アルキルもしくは低級シクロアルキルである有機基であり、かつ、R2は各場合に、独立にHであるか、または低級アルキルもしくは低級シクロアルキルである有機基であり、および/または
(iii)aは5、6、7、8、および9よりなる群から選択され、および/または
(iv)aは6であり、CYCaは1,1-、1,2-、1,3-または1,4-置換シクロヘキシル環であり、
(v)pとqは、それぞれ独立に0〜4の範囲であり、および/または
(vi)R1とR2はすべての場合にHである、
ものである。
【0036】
シクロアルキレン基とその上に2つの置換基を有するリンカーについて、置換基はシスでもトランスでもよい。
【0037】
構造IVの具体例は、以下を含む。
【0038】
【化9】

ここで、qとpは上記したものである。具体例ではqとpは、それぞれ独立に0〜6の範囲である。さらに別の実施態様において、qは0〜6の範囲であり、pはゼロである。
【0039】
本発明のシクロアルキレン環を有するさらに別のポリマー構造例は、以下である。
【0040】
【化10】

(式中、qとpは上記で定義したものであり、さらに好ましくはそれぞれ独立に0〜6である)。
【0041】
本発明のポリマーは、単官能性、2官能性、および多官能性構造を含む。
【0042】
例えば本発明のポリマーは、一般に以下の構造により記載される。
【0043】
【化11】

(式中、Xとbは上記で定義したものであり、b'は0または1であり、X'は、少なくとも3つの連続的飽和炭素原子を含む加水分解安定性リンカーである)。上記実施態様において、bとb'は同じかまたは異なり、XとX'は同じかまたは異なってよい。ある具体例においてポリマー試薬はホモ2官能性、すなわち両方の反応性末端基が同じである。この例においてbはb'と等しく、XはX'と等しい。
【0044】
好ましくは、本明細書に記載の任意のポリマーマレイミド中の水溶性ポリマー部分は、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリン、ポリ(アクリロイルモルホリン)、またはポリ(オキシエチル化ポリオール)である。好適な実施態様においてポリマー部分は、ポリ(アルキレンオキシド)、好ましくはポリ(エチレングリコール)である。
【0045】
ある実施態様において、ポリ(エチレングリコール)部分は以下の構造を有する:Z-(CH2CH2O)n-CH2-CH2-、ここでnは約10〜約4000であり、Zは、ヒドロキシ、アミノ、エステル、炭酸塩、アルデヒド、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、チオール、カルボン酸、イソシアネート、イソチオシアネート、ヒドラジド、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、アルコキシ、ベンジルオキシ、シラン、脂質、リン脂質、ビオチン、およびフルオレセインよりなる群から選択される官能基を含む成分である。この実施態様において、Zは反応性官能基または末端キャッピング基を含む。
【0046】
より具体的な例において、POLYは、末端キャッピング成分、例えばアルコキシ、置換アルコキシ、アルケニルオキシ、置換アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、置換アルキニルオキシ、アリールオキシ、置換アリールオキシ、またはリン脂質で末端キャッピングされてよい。好適な末端キャッピング基は、メトキシ、エトキシおよびベンジルオキシを含む。
【0047】
一般にPOLYは、公称平均分子量が以下の範囲の1つを有する:約100ダルトン〜約100,000ダルトン、約1,000ダルトン〜約50,000ダルトン、または約2,000ダルトン〜約30,000ダルトン。POLYの好適な分子量は、250ダルトン、500ダルトン、750ダルトン、1kDa、2kDa、5kDa、10kDa、15kDa、20kDa、30kDa、40kDa、および50kDa、またはそれ以上を含む。
【0048】
ポリマー部分は、任意の数の形状、例えば線状、分岐型またはV型でもよい。
【0049】
本発明のポリマーは複数のアームを有しても良い。本発明の複数のアームの例は以下の構造を有する。
【0050】
【化12】

【0051】
上記の例の構造において、dは3〜約100の整数であり、Rは、3またはそれ以上のヒドロキシル基、アミノ基、またはこれらの組合せを有する中心のコア分子の残基である。好ましくはdは3〜約12の整数である。
【0052】
別の複数アームの実施態様において、ポリマーは以下の構造に対応する。
【0053】
【化13】

【0054】
この構造において、
PEGは-(CH2CH2O)nCH2CH2-であり、
Mは:
【化14】

であり、mは3、4、5、6、7および8よりなる群から選択される。
【0055】
さらに別の態様において、上記特徴と構造例を有するポリマーが提供されるが、ただし上記ポリマー中のマレイミド基は、アミノ基、好ましくは1級アミノである-NH2-で置換される。かかるポリマーは、活性物質への結合のための活性化ポリマー試薬としてのみでなく、本発明の安定化マレイミドの前駆体としても有用である。
【0056】
例えば本発明は、以下の構造の水溶性ポリマーを包含する。
【0057】
【化15】

(式中、変数Xとbは、一般的にかつ具体例で上記で定義したものである)。好ましくはポリマーは、芳香族基およびエステル結合を含まない。
【0058】
さらに別の態様において本発明は、以下の構造を有する水溶性ポリマーを与える:
【0059】
【化16】

(式中、POLYは水溶性ポリマー部分であり、Xは全部で約3〜約20個の炭素原子を有する飽和環状または脂環式炭化水素鎖である加水分解安定性リンカーである)。好ましくはポリマーは、芳香族基およびエステル結合を含まない。
【0060】
本発明のこの態様のポリマーは、種々の実施態様において、Xが本明細書に記載の一般的および具体的な環状および脂環式炭化水素構造に対応するものであるものを含む。
【0061】
構造XIIIの具体例において、リンカーXは以下の構造を有する。
【0062】
【化17】

(式中、CYCaは、「a」環炭素を有するシクロアルキレン基であり、ここで「a」の値は3〜12の範囲であり;pとqは、それぞれ独立に0〜20であり、そしてp+q+a≦20である)。構造XII-Aにおいて、R1とR2のそれぞれは各場合に、独立にH、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基である。CYCaが2つのみの置換基を有する例において、かかる置換基はシスでもトランスでもよい。
【0063】
構造XII-Aのさらに別の実施態様において、pとqはそれぞれ独立に0、1、2、3、4、5、6、7、および8よりなる群から選択される。
【0064】
構造XIII-Aのさらに別の実施態様において、R1は各場合に、独立にHであるか、または低級アルキル、低級シクロアルキル、および低級アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基であり、R2は、各場合に、独立にHであるか、または低級アルキル、低級シクロアルキル、および低級アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基である。
【0065】
構造XIII-Aのさらに別の実施態様において、aは5、6、7、8、および9よりなる群から選択される。
【0066】
構造XIII-Aの好適な実施態様において、aは6であり、CYCaは1,1-、1,2-、1,3-、または1,4-置換シクロヘキシル環である。追加の実施態様には、pとqがそれぞれ独立に0〜4であり、および/またはR1とR2がすべての場合にHであるものを含む。
【0067】
特に構造XIIIのある実施態様は以下を含む。
【0068】
【化18】

(式中、qとpはそれぞれ独立に0〜6の範囲である)。
【0069】
構造XIIIの別の実施態様において、CYCaは2環式または3環式である。
【0070】
さらに別の態様において本発明は、本明細書に記載のポリマーの1つ以上の任意のものを使用して調製されるヒドロゲルを含む。
【0071】
さらに別の態様において、加水分解安定性マレイミド末端ポリマーを生成する方法が提供される。この方法は、(a)構造POLY-[O]b-C(O)-LG (IX)を有するポリマーに構造NH2-X-NH2 (XII)を有するジアミンを、POLY-[O]b-C(O)-HN-X-NH2 (X)を生成するのに有効な条件下で反応させ、次に(b) POLY-[O]b-C(O)-HN-X-NH2 (X)をPOLY-[O]b-C(O)-HN-X-MAL (II)に変換する工程を含む。
【0072】
変数POLY、bおよびXは、一般的かつ具体的に上記したものであり、LGは脱離基であり、MALはマレイミドである。好ましくは得られる生成物POLY-[O]b-C(O)-HN-X-MALは、芳香族基およびエステル結合を含まない。
【0073】
この方法は、本明細書に記載の任意のポリマー末端マレイミドを調製するのに使用することができる。
【0074】
好適な脱離基には、ハロゲン化物、N-ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、パラ−ニトロフェノレートがある。
【0075】
本発明のある実施態様において、該NH2-X-NH2試薬中のアミノ基の1つは保護された形である。この例において本方法は一般に、反応工程後にPOLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH2中のアミノ基を脱保護することを含む。
【0076】
反応工程は一般に、有機溶媒中で行われる。一般的な溶媒には、アセトニトリル、塩素化炭化水素、芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルスルホキシドがある。
【0077】
本発明の別の実施態様において反応工程は、窒素やアルゴンのような不活性雰囲気下で行われる。
【0078】
反応工程を行うための温度は、約0〜100℃の範囲である。
【0079】
さらなる実施態様において反応工程は、塩基の存在下で行われる。塩基の例には、トリエチルアミンおよび他の同様の3級アミン、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、および無機塩基(例えば炭酸ナトリウム)がある。
【0080】
好適な実施態様において本方法は、変換工程前に、カラムクロマトグラフィー、好ましくはイオン交換クロマトグラフィーにより、工程(a)からの生成物を精製する工程を含む。
【0081】
さらに別の実施態様において変換工程は、POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH2に、N-メトキシカルボニルマレイミド、エキソ-7-オキサ[2.2.1]ビシクロヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、および無水マレイン酸よりなる群から選択される試薬を、反応混合物中でPOLY-[O]b-C(O)-H2N-X-MALを生成するのに適した条件下で反応させることを含む。
【0082】
試薬がN-メトキシカルボニルマレイミドである実施態様において、変換工程は好ましくは、水、または水と水に混合可能な溶媒(例えばアセトンまたはアセトニトリル)との水性混合物で行われる。
【0083】
試薬が無水マレイン酸である上記方法の実施態様において変換工程は、POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH2に無水マレイン酸を、POLY-[O]b-C(O)-NH-X-NH-C(O)CH=CHCOOH(XI)を中間体として生成するのに有効な条件下で反応させ、次に水を除去することにより環化を促進するのに有効な条件下でPOLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH-C(O)CH=CHCOOHを加熱して、POLY-[O]b-C(O)-NH-X-MALを生成する工程を含む。
【0084】
一般に本方法は、反応混合物から生成物POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-MALを回収する工程をさらに含む。
【0085】
好ましくは回収された生成物は、約80%を超える純度を有し、所望の生成物以外にポリマー性不純物を含まない。
【0086】
本方法を実施するためのジアミンの例は以下を含む。
【0087】
【化19】

および
【化20】

(式中、変数は、一般的かつ具体的に上記したものを含む)。
【0088】
さらに別の態様において、本発明の加水分解安定性マレイミド末端ポリマーを調製する代替法が提供される。この方法は、POLY-[O]b-C(O)-LG(IX)にH2N-X-MAL(XIV)を、POLY-[O]b-C(O)-HN-X-MAL(II)を生成するのに有効な条件下で反応させる工程を含み、ここで変数POLY、b、X、LGおよびMALは、例示目的に使用される対象の実施態様にかかわらず、一般的かつ具体的に上記したものである。
【0089】
さらに別の態様において本発明は、生物活性物質と本明細書に記載の加水分解安定性マレイミド−またはアミノ−末端ポリマーのいずれかとの反応により生成される結合体を提供する。
【0090】
さらに詳しくは本発明のこの態様の1つの例は、以下の構造を含む結合体を含む:
【0091】
【化21】

(式中、変数POLY、bおよびXは、対象の実施態様例にかかわらず、一般的かつ具体的に上記したものであり、「POLY-[O]b-C(O)-NH-X-」は、芳香族基およびエステル結合を含まず、「-S-生物活性物質」とは、チオール(-SH)基を含む生物活性物質である)。
【0092】
ある実施態様において、上記結合体を含む組成物が提供される。より具体的な実施態様において結合体組成物は、単一のポリマー結合体種を含む。
【0093】
さらに別の実施態様において本発明は、以下の構造を含む結合体に関する。
【0094】
【化22】

(式中、変数POLY、bおよびXは、一般的かつ具体的に上記したものであり、「POLY-[O]b-C(O)-NH-X-」は、芳香族基およびエステル結合を含まず、「-NH-生物活性物質」とは、アミノ基を含む生物活性物質である)。
【0095】
さらに別の関連する態様において本発明は、ポリマー結合体を生成する方法を提供し、該方法は、反応性チオール基を含む生物活性物質「HS-生物活性物質」に、本発明の加水分解的に環が安定なマレイミド末端ポリマーを、構造:
【化23】

を有するポリマー結合体の生成を促進するのに有効な条件下で接触させる工程を含む。
【0096】
本発明のこれらおよび他の目的は、以下の図面と詳細な説明と一緒に読む時、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0097】
発明の詳細な説明
本発明を詳細に説明する前に、本発明は特定のポリマー、合成法、活性物質などに限定されるものではなく、これらは変化してもよいことを理解されたい。また本明細書で使用される用語は、具体例を説明するためであり、決して限定的なものではないことを理解されたい。
【0098】
本発明の説明と特許請求の範囲において、以下の用語が、下記の定義とともに使用される。
【0099】
定義
以下の用語は記載した意味を有する。
【0100】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数の型(「a」、「an」、「the」)は、文脈が特に複数を排除しない限り、複数の型も含む。
【0101】
本明細書において「PEG」または「ポリ(エチレングリコール)」は、任意の水溶性のポリ(エチレンオキシド)を包含することを意味する。一般に本発明で使用されるPEGは、例えば合成変換中に末端酸素が置換されているかどうかにより以下の2つの構造の1つを含む:「-(CH2CH2O)n-」または「-(CH2CH2O)n-1CH2CH2-」。変数(n)は3〜3000で変化し、末端基と全体的PEGの構成は変化する。PEGがさらにリンカー成分(詳細に後述される)を含む時、リンカーを含む原子は、PEG部分に共有結合している時、(i)酸素−酸素結合(-O-O-、過酸化物結合)も、(i)窒素−酸素結合(N-O、O-N)の形成も引き起こさない。「PEG」は、大部分、すなわち50%を超えるサブユニットが-CH2CH2O-であるポリマーを意味する。本発明で使用されるPEGは、種々の分子量、構造または形態(例えば、分岐型、直鎖型、V型PEG、樹木状など)を有するPEGを含み、以下で詳述される。
【0102】
「PEGジオール」(アルファ−、オメガ−ジヒドロキシポリ(エチレングリコール)としても知られている)は、簡単にHO-PEG-OHとして表され、ここでPEGは上記で定義したものである。
【0103】
本発明のポリマーに関連して「水溶性」または「水溶性ポリマー部分」とは、室温で水に可溶性の任意の部分またはポリマーである。一般には水溶性ポリマーまたは部分は、同じ溶液でフィルターをかけた後に透過される光の少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約95%を透過する。重量ベースでその水溶性ポリマーまたは部分は、好ましくは水に少なくとも約35(重量)%可溶性であり、さらに好ましくは水に少なくとも約50(重量)%可溶性であり、さらにより好ましくは水に少なくとも約70(重量)%可溶性であり、最も好ましくは水に少なくとも約85(重量)%可溶性である。しかし、水溶性ポリマーまたは部分は、水に少なくとも約90(重量)%可溶性であるかまたは完全に可溶性であることが好ましい。
【0104】
「末端キャッピング」または「末端キャップされた」基は、PEGのようなポリマーの末端に存在する不活性のまたは非反応性の基である。末端キャッピング基は、一般的な合成反応条件下で容易に化学変換を得受けないものである。末端キャッピング基は一般的にアルコキシ基、-OR(ここでRは1〜20炭素からなる有機基であり、好ましくは低級アルキル(例えば、メチル、エチル)またはベンジルである)である。「R」は飽和または非飽和であり、アリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロ、およびこれらの置換型でもよい。例えば末端キャップされたPEGは一般的に、構造「RO-(CHWCH2O)n-」(ここでRは上記で定義したものである)を含む。あるいは末端キャッピング基はまた、検出可能な標識物を含むことが有利である。ポリマーが、検出可能な標識物を含む末端キャッピング基を有する時、ポリマーおよび/またはポリマーが結合している成分(例えば活性物質)の量または位置は、適当な検出器により測定することができる。かかる標識物には、特に限定されないが、蛍光物質、化学発光物質、酵素標識で使用される残基、比色法(例えば、色素)、金属イオン、放射活性残基などを含む。末端キャッピング基はまた、リン脂質を含むことが有利である。ポリマーがリン脂質のような末端キャッピング基を有する時は、ポリマーにユニークな性質(例えば、同様に末端キャップされたポリマーと組織化された構造を形成する能力)が付与される。リン脂質の例には、特に限定されないが、ホスファチジルコリンと呼ぶリン脂質群から選択されるものがある。具体的なリン脂質には、特に限定されないが、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ベヘノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、およびレシチンがある。
【0105】
本発明のポリマーについて「天然に存在しない」は、その全体が自然界には存在しないポリマーを意味する。しかし本発明の天然に存在しないポリマーは、全体のポリマー構造が天然に存在しない限りは、天然に存在する1つ以上のサブユニットまたはサブユニットの部分を含有してもよい。
【0106】
本発明の水溶性ポリマー(例えばPEG)について「分子量」は、ポリマーの公称平均分子量を意味し、一般にはサイズ排除クロマトグラフィー、光散乱法、または1,2,4-トリクロロベンゼン中の固有速度測定により測定される。本発明のポリマーは一般に、多分散性であり、約1.20未満の小さい多分散値を有する。
【0107】
用語「反応性の」または「活性化された」は、有機合成の通常の条件下で容易にまたは実用的速度で反応する官能基を意味する。これは、反応しないか、または反応するために強い触媒もしくは非現実的な反応条件を必要とする基(すなわち、「非反応性」または「不活性」基)とは対照的である。
【0108】
反応混合物中の分子に存在する官能基に関して「容易に反応性ではない」または「不活性」とは、その基が、反応混合物中で所望の反応を引き起こすのに有効な条件下で、大体そのままであることを示す。
【0109】
「保護基」は、ある反応条件下で分子の特定の化学反応性官能基の反応を防止または阻止する成分である。保護基は、保護される化学反応性基の種類ならびに使用される条件および分子中の追加の反応性もしくは保護基の存在により変化する。保護される官能基には、例えばカルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などがある。カルボン酸の代表的保護基には、エステル(例えばp-メトキシベンジルエステル)、アミドおよびヒドラジン;アミノ基については、カルバメート(例えば、tert-ブトキシカルボニル)およびアミド;ヒドロキシル基については、エーテルとエステル;チオール基については、チオエーテルとチオエステル;カルボニル基については、アセタールおよびケタール:などがある。かかる保護基は当業者に公知であり、例えばT.W. GreeneとG.M. Wuts, 「有機合成における保護基(Protecting Groups in Organic Synthesis)」、第3版、ウィレイ(Wiley)、ニューヨーク、1999、およびそこに引用されている文献に記載されている。
【0110】
「保護された型」の官能基は、保護基を有する官能基を意味する。本明細書において用語「官能基」またはその任意の同義語は、その保護された型を包含するものとする。
【0111】
用語「リンカー」は本明細書において、接続性残基(例えば、ポリマー部分およびマレイミド)を連結するのに随時使用される原子または原子の集合を意味する。本発明のリンカーは一般に加水分解的に安定である。
【0112】
「生理学的に切断可能な」または「加水分解可能な」または「分解可能な」結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解される)比較的弱い結合である。水の中で結合が加水分解する傾向は、2つの中心原子を連結する結合の一般的タイプのみではなく、これらの中心原子に結合した置換基にも依存する。適切な加水分解的に不安定なまたは弱い結合には、特に限定されないが、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチドおよびオリゴヌクレオチド、チオエステル、チオールエステル、および炭酸塩がある。
【0113】
「酵素的に分解可能な結合」は、1つ以上の酵素による分解を受ける結合を意味する。
【0114】
本発明の意味においておよび特に本発明のポリマーに関連して「加水分解安定性」結合またはリンカーは、正常の生理学的条件下で加水分解的に安定な、原子または原子の集合を意味する。すなわち加水分解安定性結合は、生理学的条件下で長時間にわたって大きな加水分解を受けることはない。加水分解安定性結合の例には、特に限定されないが以下がある:炭素−炭素結合(例えば、脂肪族鎖)、エーテル、アミド、ウレタン、アミンなど。代表的な化学結合の加水分解速度は、ほとんどの標準的な化学の教科書に記載されている。
【0115】
本発明のポリマーに関して「加水分解的に安定化されたマレイミド環」は、そのリンカーの無いポリマーマレイミド対応物の開環安定性に比較して、マレイミド環の加水分解に抵抗するものである。例えば対象の水溶性マレイミドが構造CH3O-(CH2CH2O)5K-CH2CH2-C(O)-NH-CH2-1,3-C6H10-CH2−MAL(ここで、リンカーは-C(O)-NH-CH2-1,3-C6H10-CH2である)を有するなら、比較の基礎を構成するための対応するリンカーの無いものはCH3O-(CH2CH2O)5K-CH2CH2-MALである。一般にかかる加水分解評価は、リン酸緩衝液中でpH7.5で室温で行われ、マレイミド環のUV吸収を観察することにより測定される。従って、本発明のポリマー試薬に含有される加水分解的に安定化されたマレイミド環は、リンカーの無い対応物に対して改良された加水分解安定性の程度を有するものである。好ましくは本発明の加水分解的に安定化されたマレイミド環は、上記条件下で加水分解半減期が少なくとも約16時間およびさらに好ましくは約20時間である安定化されたポリマーマレイミドを与える。
【0116】
ポリマーの形態または全体構造に関して「分岐した」は、2つ以上のポリマー「アーム」を有するポリマーを意味する。分岐したポリマーは、2つのポリマーアーム、3つのポリマーアーム、4つのポリマーアーム、6つのポリマーアーム、8つのポリマーアーム、またはそれ以上を有する。高度に分岐したポリマーの1つの具体的なタイプは、樹状ポリマーまたはデンドリマー(dendrimer)であり、これは本発明の目的において、分岐ポリマーとは明らかに異なる構造を有すると見なされる。
【0117】
「分岐点」は、そこでポリマーが分離して線状構造から1つ以上の追加のポリマーアームになる1つ以上のアームを有する分岐点を意味する。
【0118】
「デンドリマー」は、球形の単分散ポリマーであり、そこですべての結合は、中心の焦点またはコアから放射状に出て、規則的な分岐パターンとそれぞれが分岐点に寄与する繰り返し単位を有する。デンドリマーは、いくつかの樹状性(例えば、コアのカプセル化)を示し、これらを他のタイプのポリマーとは異なるものとしている。
【0119】
「実質的に」または「基本的に」は、ほとんど完全にまたは完全にを意味し、例えばある量の95%またはそれ以上を意味する。
【0120】
「アルキル」または「アルキレン」基は、分子中のその位置および水素以外の原子へのその基の結合点の数に依存して、一般には約1〜20原子のLGの炭化水素鎖または成分を意味する。かかる炭化水素鎖は、必ずしもそうではないが好ましくは、特に明記しない場合は飽和しており、分岐しているかまたは直鎖であるが、一般には直鎖が好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、3-メチルペンチル、ヘキシル、ヘプチルなどがある。
【0121】
「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、1〜6個の炭素原子を含有する上記で定義したアルキル基もしくはアルキレン基を意味し、直鎖または分岐鎖でもよく、例えばメチル、エチル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチルである。
【0122】
「シクロアルキル」または「シクロアルキレン」は、分子中のその位置と、水素以外の原子への結合点の数に依存して、飽和または不飽和の環状炭化水素鎖を意味し、例えば、好ましくは最大3〜約12の炭素原子、さらに好ましくは3〜約8の炭素原子からなる、架橋した、融合した、またはスピロ環状化合物を意味する。
【0123】
「低級シクロアルキル」または「低級シクロアルキレン」は、1〜6個の炭素原子を含有するシクロアルキル基を意味する。
【0124】
「脂環式」は、炭素原子の環を含有する脂肪族化合物を意味する。脂環式基は、1つ以上のアルキルまたはアルキレンで置換された上記の「シクロアルキル」または「シクロアルキレン」基を含有するものである。
【0125】
「非妨害性置換基」は、分子中に存在する時、一般には分子中に含有される他の官能基と非反応性の基である。
【0126】
用語「置換された」は、例えば「置換アルキル」のように、1つ以上の非妨害性置換基、例えば特に限定されないが:C3-C8シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチルなど;ハロ、例えばフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨード;シアノ;アルコキシ、低級フェニル;置換フェニル;などで置換された成分(例えば、アルキル基)を意味する。フェニル環上の置換について、置換基は任意の配向である(すなわち、オルト、メタ、またはパラ)。
【0127】
「アルコキシ」は、-O-R基を意味し、ここでRはアルキルまたは置換アルキル、好ましくはC1-C20アルキル(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ベンジルなど)、好ましくはC1-C7である。
【0128】
本明細書において「アルケニル」は、1〜15炭素原子の長さの分岐または非分岐炭化水素基で、少なくとも1つの2重結合、例えばエテニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニルなどを含有する基を意味する。
【0129】
本明細書において用語「アルキニル」は、2〜15原子の長さの分岐または非分岐炭化水素基で、少なくとも1つの3重結合、例えばエチニル、n-プロピニル、イソプロピニル、n-ブチニル、イソブチニル、オクチニル、デシニルなどを含有する基を意味する。
【0130】
「アリール」は、それぞれが5または6個のコア炭素原子である、1つ以上の芳香環を意味する。アリールは、例えばナフチルのように縮合しているか、またはビフェニルのように縮合していない複数のアリール環を含む。アリール環はまた、1つ以上の環状炭化水素、ヘテロアリール、または複素環と縮合しているかまたは縮合していない。本明細書において「アリール」はヘテロアリールを含む。
【0131】
「ヘテロアリール」は、1〜4個のヘテロ原子、好ましくはN、O、またはS、またはこれらの組合せを含有するアリール基である。ヘテロアリール環はまた、1つ以上の環状炭化水素、複素環、アリール、またはヘテロアリール環に縮合してもよい。
【0132】
「複素環」または「ヘテロサイクリック」は、不飽和性または芳香族性があるかまたは無い、炭素原子ではない少なくとも1つの環原子を有する、5〜12原子、好ましくは5〜7原子の1つ以上の環を意味する。
【0133】
「置換ヘテロアリール」は、1つ以上の非妨害性基を置換基として有するヘテロアリールである。
【0134】
「置換複素環」は、非妨害性置換基から生成する1つ以上の側鎖を有する複素環である。
【0135】
「求電子体」は、求電子性中心(すなわち、電子を求める、求核体と反応することができる中心)を有するイオン、原子、またはイオン性でもよい原子の集合を意味する。
【0136】
「求核体」は、求核性中心(すなわち、求電子体中心を求める、求電子体と反応することができる中心)を有するイオン、原子、またはイオン性でもよい原子の集合を意味する。
【0137】
本明細書において「活性物質」は、in vivoまたはin vitroで証明できる薬理学的(しばしば有用な)作用を与える物質、薬物、化合物、または組成物を含む。これは、食物、食物サプリメント、栄養物質、ヌトリシュティカルズ(nutriceuticals)、ワクチン、抗体、ビタミン、および他の有用な物質を含む。本明細書において、これらの用語はさらに、患者の局所的または全身性作用を示す任意の生理学的または薬理学的活性物質を含む。
【0138】
「薬剤学的に許容される賦形剤」または「薬剤学的に許容される担体」は、本発明の組成物中に含めることができ、患者に大きな毒性の副作用を引き起こさない賦形剤を意味する。
【0139】
「薬剤学的に有効な量」、「生理学的に有効な量」および「治療的に有効な量」は、本明細書において同義で使用され、血流または標的組織中で活性物質および/または結合体の所望のレベルを与えるのに必要な、医薬調製物中に存在するPEG活性物質結合体の量を意味する。その正確な量は、多くの因子、例えば特定の活性物質、医薬調製物の成分と物理的特性、目的とする患者集団、患者の問題などに依存し、これらは、本明細書および関連する文献の情報に基づき当業者が容易に決定することができる。
【0140】
本発明のポリマーに関連して「多官能性」は、3つまたはそれ以上の官能基がその中に含有されるポリマー骨格を意味し、ここで官能基は同じかまたは異なり、一般にポリマー末端上に存在する。本発明の多官能性ポリマーは一般に、約3〜100個の官能基、または3-50官能基、または3-25官能基、または3-15官能基、または3-10官能基、または3、4、5、6、7、8、9または10個の官能基をポリマー骨格内に含有する。
【0141】
「2官能性」ポリマーは、その中(一般にはポリマーの末端)に2つの官能基が含有されたポリマーを意味する。官能基が同じである時、ポリマーはホモ2官能性と言われる。官能基が異なる時、ポリマーはヘテロ2官能性と言われる。
【0142】
本明細書に記載の塩基性または酸性反応物は、中性、荷電した、およびこれらの対応する塩を含む。
【0143】
「ポリオレフィンアルコール」は、ポリマー骨格に結合した複数の付属ヒドロキシル基を有するオレフィンポリマー骨格(例えば、ポリエチレン)を含むポリマーを意味する。ポリオレフィンアルコールの例はポリビニルアルコールである。
【0144】
本明細書において「非ペプチド性」は、ペプチド結合を実質的に含まないポリマー骨格を意味する。しかしポリマーは、繰り返しモノマーサブユニットに沿って位置する少数のペプチド結合を含み、例えば約50個のモノマー単位当たり約1個以下のペプチド結合を含んでよい。
【0145】
用語「患者」は、本発明のポリマーの投与により予防または治療可能な症状に罹っているかまたは罹りやすい生物で、必ずというわけではないが一般にポリマー活性物質結合体の形であり、ヒトおよび動物の両方を含む。
【0146】
「随時」または「場合により」は、次に説明される状況が起きることも起きないこともあり、従ってその説明は、その状況が起きる例も起きない例も含む。
【0147】
「残基」は、1つ以上の分子との反応後に残存する分子の部分を意味する。例えば、本発明のポリマー結合体中の生物活性分子の残基は、ポリマー骨格への共有結合後に残存する生物活性分子の部分である。
【0148】
用語「結合体」は、分子(例えば、生物活性分子または任意の反応性表面)の、反応性ポリマー分子、好ましくは反応性ポリ(エチレングリコール)への共有結合の結果として生成される物質を意味する。
【0149】
用語「電子求引性基」は、共鳴機構(すなわち、π結合を介して局所的電子密度を加えるか除去する)または誘導性機構(すなわち、σ結合に沿って電子密度を引き寄せる、従って結合を分極させる、電子陰性成分)のいずれかにより、電子密度をそれ自体に引き寄せ分子の他の領域から離す化学成分を意味する。
【0150】
用語「立体障害」は、2つの化学基間の空間的機構的干渉を意味する。
【0151】
安定化されたポリマーマレイミド−一般的特徴
本発明は、そのリンカーの無いマレイミド対応物と比較して、マレイミド環が加水分解安定性水溶性および非ペプチド性ポリマーを提供する。一般にマレイミド環に関して、加水分解に対する耐性の特徴は、ポリマー部分とマレイミドの間のリンカーの導入により付与される。リンカーは一般に、マレイミドの窒素原子に共有結合して直接隣接する飽和非環状、環状、または脂環式炭化水素鎖を含む。置換型または非置換型のアルキレン基、シクロアルキル基、またはこれらの組合せを含む炭化水素鎖の構造とサイズは、i)リンカーまたはポリマー部分中のマレイミドと任意の電子求引性基との間に充分な距離を提供して、マレイミド環への電子放出を可能にし、および/またはii)加水分解プロセスに立体障害を提供することにより、マレイミドの開環を遅らせるように設計される。こうして本明細書に記載のリンカーは、加水分解とその後の開環に対してマレイミド環を安定化させる。すなわち本発明のマレイミド末端ポリマーは、例えば合成、単離および保存時により大きな安定性を示し、広範囲のpH値にわたって多量の開環結合体を産生することなく、生物活性分子に結合することができる。本明細書で提供される加水分解データは、この点を示している。代表的な安定化したポリマーマレイミドの合成は、実施例I、II、III、IV、V、IX、X、XIおよびXIIに記載される。明らかなように、線状の非環状、分岐非環状、および脂環式リンカーはすべて、隣接マレイミド環の安定性を増強させるのに有効である。ポリマー試薬とその対応する結合体の両方についてこの特徴を示す加水分解データは、実施例VII、VIIIおよびXIIIに提供される。
【0152】
より詳細に説明されるリンカーはまた、1つ以上の非炭化水素の、しかし加水分解的に安定な、非反応性原子または原子の集合(例えば、ヒドロキシル基、イオウ、酸素など)を含む。
【0153】
本発明のマレイミド官能基化ポリマーは、好ましくは広範囲のpH範囲、例えば約5〜約10にわたって加水分解的に安定である。特に、最も好ましくは、本発明の反応性ポリマーマレイミドは、生物活性分子(例えばタンパク質)上のチオールまたはアミノ基への結合に適したpHで加水分解的に安定である。例えば本発明のポリマーは、約7〜約10の範囲のpH、さらに好ましくは約7〜約8.5のpHで、加水分解誘導性のマレイミド開環に耐性である(すなわち、結合体形成していないなら、マレイミド酸を、または結合体形成しているならスクシンアミド酸を形成しやすいということはない)。本明細書で定義されるように、加水分解安定性マレイミドは、25℃でpH7.5で水性媒体(例えばリン酸緩衝液)中のマレイミドの半減期が、少なくとも約16時間、さらに好ましくは少なくとも約20時間、最も好ましくは少なくとも約28時間である。
【0154】
ポリマーマレイミドの半減期は、HPLCを使用するかまたはマレイミド環のUV吸収を観察することにより、経時的にマレイミド末端ポリマーの濃度を測定して決定することができる。
【0155】
マレイミド基に隣接する飽和非環状、環状、または脂環式炭化水素リンカーは、少なくとも3炭素原子の鎖長を有し、少なくとも3つの連続的炭素原子を含有する。さらに好ましくはリンカーは、少なくとも約4個の炭素原子、最も好ましくは少なくとも約5または6個の炭素原子を有する。鎖の長さは、マレイミドの窒素原子をポリマー部分に連結する最も短い原子鎖を形成する炭素原子の数として測定される。一般に、鎖置換基を含むリンカー中の炭素原子の総数は、4〜約20原子、好ましくは4〜約12原子、さらに好ましくは4〜約10原子、最も好ましくは5〜約8原子の範囲である。本発明は、例えば4、5、6、7、8,9、10、11および12個の総炭素原子を有するリンカーを含む。
【0156】
ポリマーマレイミドの一般的な構造の特徴
一般に、本発明の反応性ポリマーは、加水分解安定性リンカーを介してマレイミド環に連結した水溶性ポリマー部分を有する。加水分解安定性リンカーは、そこに直接共有結合したマレイミド環に加水分解安定性を付与するのに有効である。さらに詳しくはポリマー部分(本明細書において一般にPOLYと呼ぶ)は、介在する-O-、-C(O)-NH-、またはO-C(O)-NH-基を介して、加水分解安定性リンカーXに共有結合される。Xは一般に少なくとも3つの連続的飽和炭素原子を含有する。必ずというわけではないが好ましくは、得られるポリマーマレイミドは、芳香族基やエステル結合を含まない。
【0157】
また本明細書において、安定化されたポリマーマレイミドについて一般的かつ具体的な構造的特徴を有するポリマーが提供されるが、マレイミド環はアミノ基(好ましくは一級アミノ基)により置換される。すなわちマレイミド末端ポリマー試薬についての本明細書に記載のすべての構造と説明は、上記したようにそのアミノ末端対応物にも拡張される。
【0158】
リンカーXは一般的に、約1〜約20個の炭素原子を含有する。一般にXは、炭素原子と水素原子のみを有する炭化水素鎖であるが、ある実施態様においてXは、追加の反応性原子もしくは官能基(例えばヒドロキシル基、エーテル、チオエーテル)、または他の非反応性基を含有する。好ましくはかかる基または原子は、マレイミド環から離れて位置する。さらに好ましくはかかる非反応性原子または基は、マレイミド窒素から少なくとも4炭素原子離れて位置する。さらに好ましくは、Xに含有されるかかる追加の非反応性原子または基は、マレイミド窒素から少なくとも5炭素原子または6炭素原子またはそれ以上離れて位置する。かかる基は、多くの市販の出発物質中での存在のために、その非環状体よりシクロアルキルまたは脂環式X中に含有される可能性が高い。
【0159】
本発明のポリマーマレイミドは一般に以下の式が特徴である。
【0160】
【化24】

(式中、bは0または1である)。構造Iにおいて、カルボニルと-NH基の両方は存在せず(すなわち、各添え字はゼロに等しい)、bは1に等しい。リンカーXの特徴が、以下の欄により詳細に説明され例示する。
【0161】
リンカー成分
上記したようにリンカーXは、マレイミド環の窒素原子に隣接する飽和非環状または環状または脂環式炭化水素成分を含む。Xのサイズと構造は、一般にマレイミド環と分子中に存在する電子求引性基との距離を増大させることにより、または配列加水分解反応に立体障害を与えることにより、マレイミド環の加水分解安定性を改良するように設計される。一般にXは、全部で約3〜約20個の炭素原子を含有する。さらに詳しくはXは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20よりなる群から選択される総数の炭素原子を有する。リンカーX中の炭素原子の総数の好適な範囲は、約3〜約20、または約4〜約12、または約4〜約10、または約5〜約8原子である。
【0162】
炭化水素結合の例には、少なくとも3つの連続的炭素原子を含む直鎖の飽和非環状炭化水素、例えばトリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、およびヘキサメチレンなどを含む。すなわち最も簡単な形で、Xは-(CH2)y(ここでyは3〜約20の範囲である)に等しい。すなわち、Yは、以下の任意の値を有することができる:3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20。あるいは、Xは分岐してもよく、鎖の任意の1つ以上の炭素原子位置に1つまたはさらには2つの置換基を含有することができる。すなわち、Xは、マレイミジル基に対して炭素αで、またはマレイミジル基に対して炭素βで、またはマレイミジル基で炭素γで分岐することができる。最大19個の炭素原子を有する炭化水素鎖について、1〜19位(1位はマレイミド環に近いものである)の任意の1つが分岐する。例えばC1-C2-C3-C4-C5-C6-C7-C8-C9-C10-C11-C12-C13-C14-C15-C16-C17-C18-C19-と記載された2〜19個の炭素原子を有する飽和炭化水素鎖について、鎖中の炭素の総数に依存して、炭素C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、またはC19の任意の1つ以上が分岐してもよく、すなわち1つまたはさらには2つの置換基を有しても良い。一般に分岐鎖は、アルキル基、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、または置換シクロアルキルである。特に好適なシクロアルキルは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなど、およびシクロアルキル環を分岐炭素原子に連結する1つ以上のメチレン基(例えば、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレンなど)を有する任意の前記シクロアルキルである。好ましくは、任意の飽和炭化水素鎖または脂環式リンカーにおいて、4個以下の炭素原子が分岐し、分岐位置の総数は好ましくは1、2、3、または4に等しい。飽和環または環系(例えば、2環式、3環式など)を一緒に形成する「分岐」位置が、以下に別々に考察される。最も好ましくは、Xが分岐している時、分岐炭素原子は1つのみ分岐しており、すなわち2つの分岐置換基ではなく1つの分岐置換基を有する。
【0163】
例えば、結合は構造-(CR1R2(y-を有してもよく、ここでR1とR2はそれぞれ独立に、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルであり、yは約約1〜約20の整数、好ましくは約3〜約20、およびさらに好ましくは4〜約12の整数である。Xが分岐している時、マレイミド環加水分解反応に最大の立体障害を与えるために、好ましくは分岐はC1、C2、C3、またはC4、すなわちマレイミド環に最も近い炭素原子位置の1つ以上である。(リンカーX内の炭素原子位置を議論する時は、C1はマレイミド窒素に近い炭素原子を意味する)。Xが分岐している時、分岐基(例えばアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキル)は一般に、ほぼ8個より少ない炭素原子を含有する。分岐基がアルキルまたはシクロアルキルである時、好ましくはアルキル基は低級アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルである。
【0164】
上記したように、リンカーX自体は、環状または脂環式でもよい。具体的にはXは以下の形を有する:
【0165】
【化25】

(式中、CYCaは、「a」環炭素を有するシクロアルキレン基であり、ここで「a」の値は3〜12の範囲であり;pとqは、それぞれ独立に0〜20であり、p+q+a≦20であり、R1は各場合に、独立にH、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基であり、R2は各場合に、独立にH、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基である。好適な実施態様においてR1とR2は、各場合に両方ともHである。好ましくはpとqはそれぞれ独立に、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。さらに好ましくは、pとqはそれぞれ独立に、0〜6または0〜4の範囲である。好ましくはCYCaで示されるシクロアルキル環は5〜約12個の環炭素原子を含有し、さらに好ましくは約6〜約10個の環炭素原子を含有する。代表的なシクロアルキル基には、C3-C8シクロアルキレン、例えばシクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、およびシクロヘプチレンおよびシクロオクチレンがある。CYCaは、1つ以上のアルキル基、好ましくは低級アルキル基(これは環内の任意の位置である)により随時置換されてよい。CYCaが上記構造IVに示すように2つのみの置換基(すなわち(CR1R2)pと(CR1R2)q)で置換される場合、置換基は同様に環内の任意の1つ以上の炭素原子上に位置する。例えばシクロペンチレンについて、置換基は1,1-、1,2-、または1,3-位置でもよい。シクロヘキシレン環について、置換基は1,1-、1,2-、1,3-または1,4-位置でもよい。特に好適な実施態様は、R1とR2がすべての場合にHであり、pとqがそれぞれ独立に、0、1、2、および3から選択される。リンカーの例には、1,2-(CH2)0,1,2,3-C6H4-(CH2)0,1,2,3、および1,3-(CH2)0,1,2,3-C6H4-(CH2)0,1,2,3、および1,4-(CH2)0,1,2,3-C6H4-(CH2)0,1,2,3がある。CYCaが2つのみの置換基を有する場合、置換基はシスでもトランスでもよい。CYCaが2つより多い置換基を含有する時、置換基は互いに任意の相対位置にある。
【0166】
CYCaはまた2環を包含する。CYCaに対応する2環の例には、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[3.3.1]ノナン、ビシクロ[3.3.2]デカン、ビシクロ[3.3.3]ウンデカンなどがある。CYCはまた、アダマンタンのような3環系を包含する。これらの2環および3環系のいくつかを以下に示す。
【0167】
【化26】

【0168】
これらの環は、環系の任意の位置で、-[C(R1)(R2)]pおよび-[C(R1)(R2)]qに対応するアルキレンまたは置換アルキレン基を有する。さらに2環および3環はまた、-[C(R1)(R2)]pおよび-[C(R1)(R2)]q以外に追加の置換基を有する。好ましくはかかる置換基は、低級アルキル、ヒドロキシル基、スルフヒドリル、またはハロゲン化物である。2環および3環系を有する代表的なポリマーマレイミドを、図1Aと1Bに示す。
【0169】
構造I中の結合Lはさらに、上記したようにポリマー部分に隣接しXに連結する非炭化水素部分を含んでもよい。ポリマー部分に隣接する非炭化水素部分の例は、-O-、O-C(O)-NH-、-C(O)-NH-、-CH2-C(O)-NH-、-NH-C(O)-O-、NH-C(O)-NH-、-NH-および-S-を含み、好ましくは加水分解的に安定である。特に好適な非炭化水素部分は、-O-、O-C(O)-NH-、-C(O)-NH-を含む。やや好ましい実施態様では、アミドまたはカルバメート基の窒素アミドは3級窒素であり、例えば水素の代わりにメチルまたはエチルまたは同様の基を有する。
【0170】
本発明の炭化水素鎖を含む結合の例を、以下の表1に示す。
【0171】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0172】
表1中の多くの結合は、マレイミド環の加水分解を遅らすのに有効であるが、他のものより有効なものがいくつかある。表1中のいくつかの結合は、水によるマレイミド環窒素の攻撃に対して立体障害を提供する。これらのリンカーには、L4-TMPA、L4-CMEN、L5-TMPE、L1-TEPE、L2-EPEN、L4-ETPAおよびL4-HEDAがある。L4-TMPAとL5-TMPE(これらは、容易に利用可能な対応する対称的な3級ジアミンに基づく)およびL4-CMEN(これは、天然に存在するp-メンタンの市販のジアミン誘導体に基づく)を含むリンカーは、環と電子求引性基との間に立体障害と充分な間隔を与えることにより、マレイミド環の加水分解速度を低下させる結合の例である。特に好適なのは、表4の加水分解データから明らかなように、シクロヘキシレン環を含有するリンカーである。加水分解データから明らかなように、1,3-ジメチレン-シクロヘキシレンリンカーは、生じるPEG-マレイミドに、加水分解に対する特定の安定性を付与する。実際その加水分解半減期は、リンカーの無いマレイミド対応物より8倍長い。1,4-ジメチレン−シクロヘキシレンリンカーはまた、リンカーの無いマレイミド対応物より2.5倍以上長い加水分解半減期を有する安定なマレイミドポリマーを与える。
【0173】
ポリマー部分
上記構造例に示すように、本発明のマレイミド末端ポリマーは、水溶性ポリマー部分を含有する。代表的なPOLYには、ポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシルアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、およびポリ(N-アクリロイルモルホリン)がある。POLYは、ホモポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互トリポリマー、ランダムトリポリマー、または上記の任意のブロックトリポリマーでもよい。水溶性ポリマー部分は、好ましくは(必ずというわけではないが)ポリ(エチレングリコール)「PEG」またはその誘導体である。
【0174】
ポリマー部分は、任意の数の異なる形態を有することができ、例えばPOLYは線状、分岐、またはV型でもよい。より一般的には、ポリマーは線状または分岐しており、例えば2つのポリマーアームを有する。POLYの例として考察のほとんどはPEGに焦点を当てるが、本明細書の考察と構造は、上記水溶性ポリマー部分の任意のものを包含するように容易に拡張することができる。
【0175】
少なくとも1つの反応性末端を有する任意の水溶性ポリマーを使用して、本発明のポリマーマレイミドを調製することができ、本発明はこの点で限定されない。単一の反応性末端のみを有する水溶性ポリマーを使用することができるが、上記したように安定化されたポリマーマレイミドへの変換に適した2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれ以上の反応性末端を有するポリマーを使用することができる。水−ポリマー部分上のヒドロキシルまたは他の反応性残基の数が増加すると、リンカーのあるマレイミド基を導入するために利用可能な部位の数が増加することが有利である。ヒドロキシルおよび/または水溶性ポリマー部分に関連する反応性残基の上限の非限定例は、約1〜約500、1〜約100、約1〜約80、約1〜約40、約1〜約20、約1〜約10を含む。
【0176】
好適なPOLYについて、PEGはその線状、分岐または複数アーム型の任意のポリ(エチレングリコール)を包含し、末端キャップされたPEG、V型PEG、分岐PEG、ペンダントPEG、およびやや好適には、モノマーサブユニットを分離する1つ以上の分解可能な結合を含有するPEG(詳細に後述される)を含む。本発明のある実施態様においてポリマー部分はエステル結合が無い。
【0177】
PEGポリマー部分は以下を含む:-(CH2CH2O)n-CH2CH2-、ここで(n)は一般に、約3〜約4,000、または約3〜約3,000、またはさらに好ましくは約20〜約1,000の範囲である。
【0178】
POLYはまた、末端キャップすることができ、例えば末端キャップされたPEGであり、ここでPEGは不活性末端キャッピング基により末端キャップされる。好適な末端キャップPEGは、末端キャッピング成分として、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケニルオキシ、置換アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、置換アルキニルオキシ、アリールオキシ、置換アリールオキシを有するものである。好適な末端キャッピング基は、メトキシ、エトキシ、およびベンジルオキシである。末端キャッピング基はまたリン脂質を含むことが有利であるが、ポリマーはまた脂質がなくてもよい。リン脂質の例には、ホスファチジルコリン、例えばジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ベヘノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、およびレシチンがある。
【0179】
ポリマー部分POLYを含有する任意の構造について、POLYは以下に対応するかまたはこれを含む:
「Z-(CH2CH2O)n-」または「Z-(CH2CH2O)n-CH2CH2-」
(式中、nは約3〜約4000、または約10〜約4000であり、Zは官能基であるかまたはこれを含み、これは反応性基または末端キャッピング基でもよい)。Zの例には、ヒドロキシ、アミノ、エステル、炭酸塩、アルデヒド、アセタール、アルデヒド水和物、ケトン、ケタール、ケトン水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、チオール、カルボン酸、イソシアネート、イソチオシアネート、ヒドラジド、尿素、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、アルコキシ、ベンジルオキシ、シラン、脂質、リン脂質、ビオチン、およびフルオレセインを含み、適宜これらの活性化型および保護型を含む。好適なものは、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、炭酸ベンゾトリアゾール、アミン、ビニルスルホン、マレイミド、炭酸N-スクシンイミジル、ヒドラジド、プロピオン酸スクシンイミジル、ブタン酸スクシンイミジル、コハク酸スクシンイミジル、スクシンイミジルエステル、グリシジルエーテル、オキシカルボニルイミダゾール、炭酸p-ニトロフェニル、アルデヒド、オルトピリジル−ジスルフィド、およびアクリロールなどの官能基である。
【0180】
これらのおよび他の官能基Zは、以下の文献に記載されている(これらはすべて参照することにより本明細書に組み込まれる):炭酸N-スクシンイミジル(例えば、米国特許第5,281,698号、5,468,478号参照)、アミン(例えば、Buckmannら、Makromol. Chem. 182:1379 (1981)、Zalipskyら、Eur. Polym. J. 19:1177 (1983)参照)、ヒドラジド(例えば、Andreszら、Makromol. Chem. 179:301 (1978)参照)、プロピオン酸スクシンイミジルおよびブタン酸スクシンイミジル(例えばOlsonら、ポリ(エチレングリコール)化学と生物学的応用(Poly(ethylene glycol) Chemistry & Biological Applications)、170-181頁、HarrisとZalipsky編、ACS、ワシントンディーシー、1997を参照;米国特許第5,672,662号も参照)、コハク酸スクシンイミジル(例えばAbuchowskiら、Cancer Biochem. Biophys. 7:175 (1984)、およびJoppichら、Makromol. Chem. 180:1381 (1979)参照、スクシンイミジルエステル(例えば米国特許第4,670,417号参照)、炭酸ベンゾトリアゾール(例えば米国特許第5,650,234号参照)、グリシジルエーテル(例えば、Pithaら、Eur. J. Biochem. 94:11 (1979)、Ellingら、Biotech. Appl. Biochem. 13:354 (1991)参照)、オキシカルボニルイミダゾール(例えば、Beauchampら、Anal. Biochem. 131:25 (1983)、Tondelliら、J. Controlled Release 1:251 (1985)参照)、炭酸p-ニトロフェニル(例えば、Veroneseら、Appl. Biochem. Biotech., 11:141 (1985);およびSartoreら、Appl. Biochem. Biotech., 27:45 (1991)参照)、アルデヒド(例えば、Harrisら、J. Polym. Sci. Chem. Ed. 22:341 (1984)、米国特許第5,824,784号、米国特許第5,252,714号参照)、マレイミド(例えばGoodsonら、Bio/Technology 8:343 (1990)、Romaniら、Chemistry of Peptides and Proteins 2:29 (1984)、およびKogan, Synthetic Comm. 22:2417 (1992)参照)、オルトピリジル−ジスルフィド(例えば、Woghirenら、Bioconj. Chem. 4:314 (1993)参照)、およびアクリロール(例えば、Sawhneyら、Macromolecules, 26:581 (1993)参照)、ビニルスルホン(例えば、米国特許第5,900,461号参照)。
【0181】
再度、直前のPOLY構造は、線状ポリマー部分でもよく、または分岐もしくはV型ポリマー部分の一部を構成してもよい。ポリマー部分が分岐している場合、直前のPOLY構造は、例えば全体のPOLY構造の一部を構成するポリマーアームに対応する。あるいはPOLYがV型構造を有する場合、上記POLY構造は、例えば分岐点前のポリマー部分の線状部分に対応する。
【0182】
POLYはまた、2つのアーム、3つのアーム、4つのアーム、5つのアーム、6つのアーム、7つのアーム、8つのアーム、またはそれ以上を有する分岐PEG分子に対応する。本発明のポリマーマレイミドを調製するのに使用される分岐ポリマーは、2〜300程度の反応性末端を有する。好適なのは、2または3つのポリマーアームを有する分岐ポリマー部分である。米国特許第5,932,462号に記載のように分岐POLYの例は以下の構造に対応する。
【0183】
【化27】

【0184】
この例では、R"は非反応性成分、例えばH、メチルまたはPEGであり、PとQは非反応性結合である。好適な実施態様において分岐PEGポリマー部分は、メトキシポリ(エチレングリコール)ジ置換リジンである。
【0185】
上記の特定の分岐構造において、分岐ポリマー部分は、本明細書に記載のリンカーを介して反応性マレイミド基の配置のための「C」分岐点から延長する単一の反応部位を有する。本発明で使用されるような分岐PEGは、一般的に4個より少ないPEGアーム、さらに好ましくは2または3個のPEGアームを有する。かかる分岐PEGは、その線状PEGより大きく、より高密度のポリマークラウドに結合した単一の反応性部位を有するという利点を与える。
【0186】
分岐PEGマレイミドの1つの具体的なタイプは、以下の構造に対応する:
(MeO-PEG-)iG-[O]b-C(O)-NH-X-MAL(ここで、MALはマレイミドであり、iは2または3に等しく、Gはリジンまたは他の適当なアミノ酸残基である)。
【0187】
本発明の分岐ポリマーマレイミドの例は以下に示す構造を有する(ここでXは本明細書に記載の任意の加水分解安定性リンカーである)。
【0188】
【化28】

【0189】
上記XVIIIに具体的に示す構造的特徴を有する本発明のポリマーの合成を実施例1に示す。本発明のポリマーマレイミドを調製するのに使用される分岐PEGは、式R(PEG)n(ここでRは、そこから2またはそれ以上のPEGアームが伸びる中心またはコア分子である)によりさらに一般的に示されるものがある。変数nはPEGアームの数であり、ここで各ポリマーアームは独立に末端キャップされるか、またはマレイミドのような反応性官能基または他の反応性官能基をその末端に有する。本発明のかかる複数アーム例において、各PEGアームは一般的に、その末端にマレイミド基を有する。上記式R(PEG)dで一般的に示されるような分岐PEGは、2つのポリマーアーム〜約300のポリマーアームを有する(すなわち、nは2〜約300の範囲である)。これらのような分岐PEGは、2〜約25ポリマーアーム、さらに好ましくは2〜約20ポリマーアーム、およびさらに好ましくは2〜約15ポリマーアームまたはそれ以下を有する。最も好ましいのは、3、4、5、6、7または8個のアームを有する複数アームポリマーである。
【0190】
上記の分岐PEG中の好適なコア分子はポリオールである。かかるポリオールは、1〜10個の炭素原子と1〜10個のヒドロキシル基とを有する脂肪族ポリオールを含み、エチレングリコール、アルカンジオール、アルキルグリコール、アルキリデンアルキルジオール、アルキルシクロアルカンジオール、1,5-デカリンジオール、4,8-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカン、シクロアルキリデンジール、ジヒドロキシアルカン、トリヒドロキシアルカンなどを含む。シクロ脂肪族ポリオールを使用してもよく、例えば直鎖もしくは閉環糖および糖アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、キシリトール、クエブラキトール、スレイトール、アラビトール、エリトリトール、アドニトール、ズルシトール、ファコース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、フルクトース、ソルボース、マンノース、ピラノース、アルトース、タロース、タギトース、ピラノシド、ショ糖、乳糖、マルトースなどがある。追加の脂肪族ポリオールには、グリセラルデヒド、グルコース、リボース、マンノース、ガラクトース、および関連立体異性体の誘導体がある。使用可能な他のコアポリオールには、クラウンエーテル、シクロデキストリン、デキストリン、および他の炭水化物(例えばデンプンおよびアミロース)がある。好適なポリオールは、グリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、およびトリメチロールプロパンを含む。
【0191】
上記のタイプの代表的複数アームポリマー構造は以下の通りである。
【0192】
【化29】

(式中、dは3〜100の整数であり、Rは3またはそれ以上のヒドロキシル基、アミノ基、またはこれらの組合せを有する中心コア分子の残基である)。
【0193】
本発明のポリマーマレイミドを調製するのに使用される複数アームPEGには、ネクター(Nektar)(フンツビル(Huntsville)、アラバマ州)から入手できる複数アームPEGがある。好適な実施態様において本発明の複数アームポリマーマレイミドは、以下に対応し、ここで分子のリンカー付マレイミド部分の詳細は別の場所に記載される。
【0194】
【化30】

ここで
PEGは-(CH2CH2O)nCH2CH2-であり、
Mは
【化31】

であり、
およびmは3、4、5、6、7および8よりなる群から選択される。
【0195】
あるいはポリマーマレイミドは全体的V型構造を有する。V型PEGの例は以下の構造に対応する。
【0196】
【化32】

(式中、PEGは本明細書に記載の任意の型のPEGであり、Aは結合基であり、好ましくは加水分解安定性結合(例えば酸素、イオウ、または-C(O)-NH-)であり、FとF'は随時存在する加水分解安定性スペーサー基であり、加水分解安定性リンカーXに対応する他の変数およびマレイミド(MAL)部分は上記した通りである)。Xの可能な値の一般的説明と具体的説明の両方が、上記実施態様の構造XVIIIに適用可能である。A、FおよびF'に対応するリンカーとスペーサー基の例が、国際特許出願PCT/US99/05333に記載されており、本発明で使用されるこのタイプのポリマー部分を生成するのに有用である。FとF'は、同じかまたは異なってよいスペーサー基である。上記の1つの具体例において、PEGはmPEGであり、Aは-C(O)-NH-に対応し、FとF'は両方ともメチレンまたは-CH2-である。このタイプのポリマー部分は、2つの活性物質との反応に有用であり、ここで2つの活性物質は、FとF'の選択に依存して正確にあらかじめ決められた距離だけ離れて位置する。
【0197】
V型ポリマー部分を有する本発明のポリマー試薬の別のバージョンは以下に対応する。
【0198】
【化33】

(式中、変数は上記したものである)。好ましくはこの実施態様のXは、全部で3〜約20炭素原子を有する飽和環状または脂環式炭化水素鎖である。
【0199】
上記式の「PEG」に対応する分岐PEGの例はmPEGジ置換リジンであり、検出可能な「PEG」は以下に対応する。
【0200】
【化34】

【0201】
あるいは、本発明のポリマーマレイミドを調製するのに使用されるPEGポリマー部分は、リンカーXによりPEG鎖に結合した1つ以上のペンダントマレイミド基を有する安定化されたポリマーマレイミドを与えるために、末端ではなくPEG鎖の長さに沿ってペンダント反応性基を有するPEG分子である。
【0202】
さらにやや好適な実施態様において、ポリマー部分自体は、加水分解を受ける1つ以上の弱いかまたは分解しやすい結合を有する。ポリマー部分中に存在する分解しやすい結合の例には、特に限定されないが、炭酸塩、イミン、ホスフェートエステル、およびヒドラゾンがある。
【0203】
一般的に水溶性ポリマー部分POLYの公称平均分子量は変化する。POLYの公称平均分子量は、一般的に以下の範囲の1つ以上に入る:約100ダルトン〜約100,000ダルトン;約500ダルトン〜約80,000ダルトン;約1,000ダルトン〜約50,000ダルトン;約2,000ダルトン〜約25,000ダルトン;約5,000ダルトン〜約20,000ダルトン。水溶性ポリマー部分POLYの公称平均分子量の例には、約1,000ダルトン、約5,000ダルトン、約10,000ダルトン、約15,000ダルトン、約20,000ダルトン、約25,000ダルトン、約30,000ダルトン、約40,000ダルトンがある。低分子量POLYは、約250、500、750、1000、2000または5000ダルトンの分子量を有する。
【0204】
ポリマーアミン
本発明はまた、上記構造のいずれかおよびすべてのアミンを包含するが、これまで説明したマレイミド環は、アミノ基、好ましくは-NH2により置換される。
【0205】
さらに詳しくは本発明は、以下の構造を有する水溶性ポリマーを包含する。
【0206】
【化35】

(式中、POLY、bおよびXは上記で定義したものである)。
【0207】
代表的なポリマーアミンには、以下の一般的構造を有するものがある。
【0208】
【化36】

(式中、qとpはそれぞれ独立に0〜6であり、該シクロヘキシレン環上の置換はシスまたはトランスである)。
【0209】
【化37】

(式中、qとpはそれぞれ独立に0〜6であり、該シクロヘキシレン環上の置換はシスまたはトランスである)。
【0210】
VIIIにより一般的に示されるアミン末端ポリマーは、後に詳述される多くの用途を有する。例えばこれらは本発明の対応するマレイミド末端ポリマーに変換することができるか、または活性物質または表面への共有結合のために、またはヒドロゲルを生成するためにさらに修飾することなく、使用することができる。
【0211】
加水分解的安定と調製方法
上記したように、本明細書に記載のポリマーマレイミドは、ポリマー試薬自体(実施例VIIとXIII)とその対応する結合体(実施例VIII)の両方について証明されるように、加水分解に対して耐性である。本発明のポリマーマレイミドは、同じ条件下で測定するとそのリンカーの無いポリマーマレイミドより長い加水分解半減期を有する。すなわち本発明のリンカー付ポリマーマレイミドは、その対応するリンカーの無いものより遅い加水分解速度を有し、同じ条件下でマレイミド環がより長く完全なまま維持されることを意味する。例えば、実施例7と14、表2と4の加水分解データを見ると、代表的リンカーの末端は、リンカーの無いマレイミド(「3-ET」)より長い加水分解半減期を有する。
【0212】
本発明のポリマーマレイミドは、以下を含む多くの代替経路により調製することができる。あるアプローチでは、本発明のマレイミド末端ポリマーは、ポリマー部分(すなわち活性化ポリマー部分)に結合した官能基を2官能性リンカーに結合した官能基に反応させることにより調製される。ポリマー部分を2官能性リンカー試薬を反応させると、ポリマー部分へのリンカーの加水分解安定性結合により共有結合が形成される。2官能性リンカー試薬上に残る官能基は、マレイミドであるかまたはマレイミドに容易に変換できる官能基である。
【0213】
例えば、リンカー試薬は構造A-L-Bを有し、ここでAは、ポリマー部分上の第2の官能基と反応性の第1の官能基であって加水分解安定性結合Lを形成し、POLY-L-Bを形成する(ここでBはマレイミドまたはマレイミドに容易に変換できる官能基であり、例えばメトキシカルボニルマレイミドとの反応によりマレイミドに変換できるアミンである)。上記アプローチにおいてAは、多くの官能基、例えばハロ、ヒドロキシル、N-スクシンイミジルエステルのような活性エステル、活性炭酸塩、アセタール、アルデヒド、アルデヒド水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、活性スルホン、チオール、カルボン酸、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、およびエポキシドの内の任意のものである。リンカー試薬の具体例には、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、1,6-ジブロモヘキサン、N-スクシンイミジル(ε-マレイミドヘキサノエート)、N-スクシンイミジル(ε-マレイミドペンタノエート)、N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル、N-(γ-マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミドエステル、4,7,10-トリオキサ-1,3-トリデカンジアミン、4-(マレイミドメチル)-1-シクロヘキサンカルボン酸-NHSエステル、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサンメチレンジアミン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、1,3-シクロヘキシルビス(メチルアミン)、および1,4-シクロヘキシルビス(メチルアミン)がある。かかるリンカー試薬は市販されている(例えば、ピアスケミカル社(Pierce Chemical company)から)か、または市販の出発物質から当該分野で公知の方法を使用して調製することができる。
【0214】
このアプローチは以下の方法1で詳細に説明され、これは、ポリマー部分をリンカーXに連結するアミドまたはウレタン結合を含有するポリマーマレイミドの生成に関する。
【0215】
方法1
【化38】

【0216】
上記と同様の方法(方法2と呼ぶ)において、反応性ポリマー出発物質POLY-[O]b-C(O)-LGを、ジアミン試薬H2N-X-NH2と反応させて、対応するポリマーアミン中間体POLY-[O]b-C(O)-HN-X-NHを生成する。次に中間体を、対応する安定化マレイミド−末端ポリマーに変換する。この方法は、本明細書で上記したように、安定化ポリマーマレイミドを生成するのに適した多くのジアミン試薬が市販されているという利点がある。さらにポリマー−アミン中間体は、カラムクロマトグラフィーによりそのマレイミド対応物より容易に精製でき、こうして、他の好ましくないポリマーベースの副産物(例えば、PEG-ジオールおよびPEG-ジオール由来不純物)が顕著に少ないポリマーマレイミド産物が得られる。方法2を以下に示す。
【0217】
方法2
一般化反応スキーム
【化39】

【0218】
方法1と2において、LGは脱離基であり、他の変数は上記したものである。反応性ポリマー出発物質POLY-[O]b-C(O)-LGは、例えばハロゲン化アシル、ハロギ酸、無水物、または活性エステルである。これらの方法に有用な脱離基には、ハロゲン化物(例えば、クロロ、ブロモおよびヨード)、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール、およびパラニトロフェノレートがある。アミドまたはウレタン結合を生成するための結合反応は、一般的に乾燥有機溶媒中で、好ましくは不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)下で行われる。適当な溶媒には、アセトニトリル、塩素化炭化水素、例えばクロロホルムおよびジクロロメタン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、およびキシレン、および溶媒、例えばアセトンおよびテトラヒドロフランがある。反応は一般的に、使用される溶媒のタイプと特定の試薬自体の反応性に依存して、約0〜100℃の範囲の温度で行われる。結合は一般に、塩基の存在下で行われる。塩基には、トリアルキルアミン、例えばトリエチルアミン、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、および無機塩基、例えば炭酸ナトリウムがある。
【0219】
上記方法2のH2N-X-NH2に対応する 代表的な2環式および3環式ジアミン反応物を図2に示す。方法2では、例えば通常のアミノ保護基(例えばt-BOCまたはFMOC)を使用して、H2N-X-NH2中のアミノ基の1つを保護することが必要な場合がある。次にPOLY-[O]b-C(O)-HN-X-NH中の保護基は一般に、さらなる精製または変換前に除去される。例えば実施例10と11を参照されたい。中間体ポリマーアミンの精製を行う場合、沈降法またはクロマトグラフィーのような多くの精製アプローチの任意の方法を使用できるが、中間体ポリマーアミン上のアミノ基の存在のために、イオン交換クロマトグラフィーが好適である。
【0220】
方法2のアプローチを続けて、中間体ポリマーアミンは次に、対応するマレイミドに変換される。一般にこの変換は、POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH2に、N-メトキシカルボニルマレイミド、エキソ-7-オキサ[2.2.1]ビシクロヘプタン-2,3-ジカルボキシリックアンヒドリド、またはマレイックアンヒドリドのような試薬を、POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-MALを形成するのに適した条件下で反応させることにより行われる。
【0221】
好適な試薬はN-メトキシカルボニルマレイミドであり、この場合マレイミドへの変換は、水、または水と水に混合可能な溶媒(例えばアセトニトリルまたはアセトン)との水性混合物中で行われる。変換反応は一般に、約0〜80℃の範囲の温度で約6.5〜9の範囲のpHで行われる。
【0222】
試薬がマレイックアンヒドリドである時、POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH2はマレイックアンヒドリドと、中間体としてPOLY-[O]b-C(O)-NH-X-NH-C(O)CH=CHCOH(XI)を生成するのに有効な条件下で反応させられる。次にこの中間体は、水を除去して環化を促進するのに有効な条件下で加熱して、POLY-[O]b-C(O)-NH-X-MALを生成する。マレイミド環を生成するための環化反応の効率は、約15〜約80パーセントの範囲である。
【0223】
一般に生成物POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-MALは、反応混合物から回収され、さらに随時精製される。生成物が方法2により生成される場合、精製が例えばイオン交換クロマトグラフィーによりアミン前駆体について行われるなら、ポリマー由来の不純物を除去するためのさらなる精製が必要なことがある。好ましくは、回収される生成物POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-MALは、約80%を超えるポリマー純度を有する。
【0224】
実施例1と5は、末端マレイミド基を含むリンカーを使用して、本発明の反応性ポリマーを生成する方法を例示する。実施例1では、反応性アミノ基を含有するように修飾されるポリマー部分が、活性化エステルとマレイミド基とを含む2官能性リンカーと反応させられる。実施例5ではシクロヘキシレン含有リンカーを有するポリマーマレイミドを調製するために、同様のアプローチが使用される。実施例2、3および4は、次に対応するマレイミドに変換されるポリマーアミン中間体の生成を証明する。実施例9、10、11および12は、上記方法2によるシクロアルキレン含有リンカーの合成を証明し、ここで反応性ポリマー出発物質POLY-[O]b-C(O)-LGはジアミン試薬と反応させられて、POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH2を生成し、これは次に、対応するマレイミド末端ポリマーに変換される。
【0225】
ポリマーマレイミド試薬の保存
好ましくは本発明のポリマーマレイミドならびにそのアミノ対応物は、不活性雰囲気(例えばアルゴン下または窒素下)で保存される。水との反応(例えば、水分への暴露により対応する開環型を生成する)のための分子のマレイミド部分の可能性により、本発明のポリマーマレイミドの水分への暴露を最小にすることが好ましい。すなわち好適な保存条件は、乾燥アルゴン下または別の乾燥不活性ガス下で約-15℃未満の温度である。好ましくない副反応(例えばマレイミド開環)の速度が低温では遅くなるため、低温での保存が好ましい。ポリマー生成物のポリマー部分がPEGである場合、PEG部分は酸素とゆっくり反応して、分子のPEG部分に沿って過酸化物を生成する。過酸化物の生成は最終的に鎖を切断し、こうして本明細書で提供されるPEG試薬の多分散性を上昇させる。上記を考慮すると、PEGマレイミドと本発明の関連ポリマーを暗所で保存することが好ましい。
【0226】
生物活性結合体
結合化学、分離、保存
結合体
本発明はまた、本明細書に記載の安定化ポリマーマレイミドまたはその対応するポリマーアミン対応物の反応により生成される結合体を包含する。特に本明細書に記載のポリマーマレイミドは、反応に利用可能な少なくとも1つのチオールまたはアミノ基を有する活性物質または表面への結合に有用であり、一方本明細書に記載のポリマーアミンは、反応に利用可能な少なくとも1つのカルボキシル基を有する活性物質または表面への結合に有用である。
【0227】
例えば、本発明の結合体は以下の構造を有する。
【0228】
【化40】

(式中、「-S-活性物質」は、活性物質、好ましくはチオール(-SH)基を有する生物活性物質であり、他の変数は上記したものである)。活性物質が生物活性物質であるかまたは1つのみの反応性チオール基を含有する小分子である場合、生じる組成物は、タンパク質内に一般的に含有され結合に利用可能なスルフヒドリル基の数が比較的少ないため、わずかに単一のポリマー結合体種のみを含有し有利である。ある場合には、タンパク質または小分子または他の活性物質は、既知の位置にチオール基を有するように操作され、同様に1個のみのポリマー結合体種を含む組成物を与える。
【0229】
あるいは本発明の結合体は以下の構造を有する。
【0230】
【化41】

【0231】
構造XVにおいて、「-NH-活性物質」は、活性物質、好ましくはアミノ基を有する活性物質または表面、好ましくは生物活性物質であり、他の変数は上記したものである。
【0232】
本発明のポリマーアミンは直接使用される時、以下のタイプの結合体を与えるのに使用することができる。
【0233】
【化42】

【0234】
本明細書に記載のポリマー結合体、特に本発明の安定化ポリマーマレイミドから得られるものは、マレイミド開環に対する改良された加水分解安定性の特徴を同様に有する。この特徴は実施例VIIIで証明される。モデル化合物である2-メルカプトエタノールとタンパク質の両方を使用する結合体例の合成は、実施例6、14、15、16および17に記載される。
【0235】
結合方法
適当な結合条件は、ポリマー試薬と活性物質との結合を行うのに充分な、時間、温度、pH、試薬濃度、溶媒などの条件である。当該分野で公知のように、具体的な条件は、特に活性物質、所望の結合タイプ、反応混合物中の他の物質の存在などに依存する。具体的な場合において結合を行うのに充分な条件は、本明細書の開示、関連する文献を読み、および/または日常的実験により、当業者が決定することができる。
【0236】
結合条件の例には、pHを約6〜約10、例えばpHを約6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10で結合反応を行う。反応は、約5分〜約72時間、好ましくは約30分〜約48時間、さらに好ましくは約4時間〜約24時間またはそれ以下進行させる。結合反応の温度は、一般的に(必ずしもそうではないが)、約0℃〜約40℃の範囲の温度であり、結合はしばしば室温またはそれ以下で行われる。結合反応はしばしば、緩衝液、例えばリン酸緩衝液または酢酸緩衝液または同様の系で行われる。
【0237】
試薬の濃度に関して、一般的には過剰のポリマー試薬が活性物質と結合される。しかしある場合には、活性物質の量に対して、ポリマー試薬上に化学量論的量または数の反応性基を有することが好ましい。活性物質に対するポリマー試薬の比の例は、約1:1(ポリマー試薬:活性物質)、1.5:1,2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、8:1、または10:1のモル比である。結合反応は、実質的にさらなる結合が起きなくなるまで進行させ、これは、一般的に反応の進行を経時的に追跡することにより決定される。
【0238】
反応の進行は、種々の時点で反応混合物からアリコートを採取し、SDS-PAGEまたはMALDI-TOF質量スペクトル法または他の適当な分析法で反応混合物を分析することにより追跡される。生成される結合体の量または残存する非結合ポリマーの量に関していったんプラトーに達すると、反応が完了したと見なされる。
【0239】
一般に結合反応は、数分〜数時間(例えば、5分〜24時間またはそれ以上)で起きる。得られる生成物混合物は、好ましくは(必ずしもそうではないが)精製されて、非結合反応物(例えば、活性物質)、好ましくない複数結合種、および遊離もしくは未反応ポリマーが分離される。次に得られる結合体は、MALDI、毛細管電気泳動、ゲル電気泳動、および/またはクロマトグラフィーのような分析法を使用して、さらに解析することができる。
【0240】
さらに好ましくは本発明のポリマーマレイミドは一般に、約6〜9の範囲のpH(例えば、6、6.5、7、7.5、8、8.5、または9)で、より好ましくは約7〜9のpHで、そしてさらに好ましくは約7〜8のpHでスルフヒドリル含有活性物質に結合される。一般に、わずかにモル過剰のポリマーマレイミドが使用され、例えば1.5〜15倍モル過剰、好ましくは2倍〜10倍モル過剰が使用される。反応時間は一般に、約15分〜数時間の範囲であり例えば8時間またはそれ以上の時間、室温で行われる。立体的に障害されるスルフヒドリル基について、必要な反応時間は顕著に長い。本発明の安定化マレイミドはチオール選択性であり、およびチオール選択性結合は好ましくは約7のpHで行われる。
【0241】
アミノ基との反応はより高いpHで進行するが、比較的遅い。タンパク質PEG化反応条件は、タンパク質、所望のPEG化の程度、および特定のポリマーマレイミド試薬により変化する。
【0242】
反応スキームの例
【化43】

【0243】
分離
場合により、生物活性物質を用いて本発明のPEGマレイミドまたはPEGアミンを反応させて産生される結合体を精製して、異なるPEG化種を得る/単離する。あるいは、およびさらに好ましくは、例えば分子量が約20キロダルトン未満、好ましくは約10キロダルトン未満またはそれに等しいより低分子量のPEGについて、生成物混合物を精製して、適宜タンパク質分子当たりある数のPEGの分布を得ることができる。例えば生成物混合物を精製して、タンパク質当たり約1〜5個のPEGを得ることができ、一般にタンパク質当たり平均約3 PEGを得ることができる。最終的に結合反応混合物の精製法は、多くの要因(使用されるポリマーの分子量、特定のタンパク質、所望の投与処方、および残存活性、および個々の結合体種のin vivoの性質)に依存する。
【0244】
所望であれば、異なる分子量を有するPEG結合体は、ゲルろ過クロマトグラフィーを使用して単離することができる。このアプローチは、異なる分子量を有するPEG結合体を分離するのに使用することができるが、このアプローチは、タンパク質内の異なるペグ化部位を有する位置異性体を分離するにはあまり有効ではない。例えばゲルろ過クロマトグラフィーを使用してPEG 1量体、2量体、3量体などを、それぞれ他の混合物から分離するのに使用することができるが、各回収PEG量体組成物は、タンパク質内で異なる反応性アミノ基(例えばリジン残基)に結合したPEGを含有することがある。
【0245】
この種の分離を行うのに適したゲルろ過カラムには、アマシャムバイオサイエンシーズ(Amersham Biosciences)から利用可能なスーパーデックス(Superdex)(登録商標)またはセファデックス(Sephadex)(登録商標)がある。特定のカラムの選択は、所望の分画範囲に依存する。溶出は一般に、非アミンベースの緩衝液(例えばリン酸緩衝液、酢酸緩衝液など)を使用して行われる。採取された画分は、多くの異なる方法、例えば(i)タンパク質含量について280nmのOD、(ii)BSAタンパク質分析、(iii)PEG含量についてヨウ素試験(Sims G.E.ら、Anal. Biochem. 107, 60-63, 1980)により分析されるか、または(iv)SDS PAGEゲルを行い、次にヨウ化バリウムを用いる染色により追跡することができる。
【0246】
位置異性体の分離は、RP-HPLC C18カラム(アマシャムバイオサイエンシーズ(Amersham Biosciences)またはバイダック(Vydac))を使用する逆相クロマトグラフィー、またはイオン交換カラム(例えば、セファロース(登録商標)、アマシャムバイオサイエンシーズ(Amersham Biosciences)から入手できるイオン交換カラム)を使用してイオン交換クロマトグラフィーにより行うことができる。いずれかのアプローチを使用して、同じ分子量を有するPEG-生体分子異性体(位置異性体)を分離することができる。
【0247】
生じるPEG−結合体の使用目的に依存して、結合後におよび随時追加の分離工程後に、結合体混合物を濃縮し、無菌ろ過し、約-20〜-80℃の低温で保存する。あるいは残存緩衝液有りまたは無しで結合体を凍結乾燥し、凍結乾燥粉末として保存する。ある場合には、結合に使用した緩衝液(例えば酢酸ナトリウム緩衝液)を、凍結乾燥により容易に除去できる揮発性緩衝液(例えば、炭酸アンモニウムまたは酢酸アンモニウム)に交換することが好ましく、その結果凍結乾燥したタンパク質結合体粉末製剤は残存する緩衝液を含まない。あるいは緩衝液交換工程は、製剤化緩衝液を使用して行われ、その結果凍結乾燥結合体は、製剤化緩衝液への復元および最終的に哺乳動物への投与に適した型である。
【0248】
標的分子と表面
本発明の安定化ポリマーマレイミド(アミン)は、フィルム、化学分離および精製表面、固体支持体、金属/金属酸化物表面(例えば、金、チタン、タンタル、ニオブ、アルミニウム、鋼鉄、およびこれらの酸化物)、酸化ケイ素、巨大分子、および小分子を含む多くの物質に、共有結合的または非共有結合的に結合される。さらに本発明のポリマーは、生化学センサー、生体電子スイッチ、およびゲートでも使用される。本発明のポリマーマレイミド(アミン)はまた、ペプチド合成の、ポリマー被覆表面とポリマーグラフトの調製のための担体として、親和性分割のためのポリマー−リガンド結合体を調製するために、架橋または非架橋ヒドロゲルを調製するために、およびバイオリアクターのポリマー−補助因子付加物を調製するために使用される。
【0249】
本発明のポリマーへの結合に使用される生物活性物質は、以下の任意の1つ以上である。適当な物質は、例えば催眠剤と鎮静剤、精神賦活剤、精神安定剤、呼吸器剤、抗痙攣剤、筋肉弛緩剤、抗パーキンソン病剤(ドーパミンアンタゴニスト)、鎮痛剤、抗炎症剤、抗不安剤(不安緩解剤)、食欲抑制剤、抗片頭痛剤、筋肉収縮剤、抗感染剤(抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、ワクチン)、抗関節炎剤、抗マラリア剤、抗嘔吐剤、抗てんかん剤、気管支拡張剤、サイトカイン、増殖因子、抗癌剤、抗血栓症剤、抗高血圧剤、心血管疾患剤、抗不整脈剤、抗酸化剤(antioxicants)、抗喘息剤、ホルモン剤(避妊薬を含む)、交感神経興奮剤、利尿剤、脂質調節剤、抗アンドロゲン剤、抗寄生虫剤、抗凝固剤、新生物剤、抗新生物剤、低血糖剤、栄養物質およびサプリメント、成長サプリメント、抗腸炎剤、ワクチン、抗体、診断薬、および造影剤から選択される。
【0250】
さらに詳しくは活性物質は、特に限定されないが、小分子(好ましくは不溶性小分子)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、多糖、ステロイド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂肪、電解質などを含む多くの構造クラスの1つに分類される。好ましくは本発明のポリマーマレイミドに結合するための活性物質は、未変性のアミノ基またはスルフヒドリル基を有するか、または本発明のポリマーマレイミドへの結合に適した少なくとも1つの反応性アミノ基またはスルフヒドリル基を含有するように修飾される。
【0251】
本発明のポリマーへの共有結合に適した活性物質の具体例には、特に限定されないが、アスパルギナーゼ、アモドキソビル(DAPD)、アンタイド、ベカプレルミン、カルシトニン、シアノビリン、デニロイキンジフチトックス、エリスロポエチン(EPO)、EPOアゴニスト(例えば、約10〜40アミノ酸の長さで、WO96/40749に記載のように特定のコア配列を含むペプチド)、ドルナーゼアルファ、造血刺激タンパク質(NESP)、凝固因子(例えば、第V因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XII因子、第XIII因子、フォンウィルブラント因子)、セレダーゼ、セレザイム、アルファ−グルコシダーゼ、コラーゲン、シクロスポリン、アルファデフェンシン、ベータデフェンシン、エキセジン−4、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、トロンボポエチン(TPO)、アルファ-Iプロテイナーゼインヒビター、エルカトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、フィブリノゲン、フィルグラスチム、成長ホルモンヒト成長ホルモン(hGH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、GRO-ベータ、GRO-ベータ抗体、骨形成蛋白質(例えば、骨形成蛋白質-2、骨形成蛋白質-6、OP-1)、酸性繊維芽細胞増殖因子、塩基性繊維芽細胞増殖因子、CD-40リガンド、ヘパリン、ヒト血清アルブミン、低分子量ヘパリン(LMWH)、インターフェロン(例えば、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターフェロンオメガ、インターフェロンタウ、コンセンサスインターフェロン)、インターロイキンとインターロイキン受容体(例えば、インターロイキン-1受容体、インターロイキン-2、インターロイキン-2融合タンパク質、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-4受容体、インターロイキン-6、インターロイキン-8、インターロイキン-12、インターロイキン-13受容体、インターロイキン-17受容体)、ラクトフェリンとラクトフェリン断片、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、インスリン、プロインスリン、インスリン類似体(例えば、モノアシル化インスリン、米国特許第5,922,675号に記載)、アミリン、C-ペプチド、ソマトスタチン、ソマトスタチン類似体(オクトレオチドを含む)、バソプレシン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インフルエンザワクチン、インスリン様増殖因子(IGF)、インスリントロピン、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、プラスミノーゲンアクチベーター(例えば、アルテプラーゼ、ウロキナーゼ、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、パミテプラーゼ、ラノテプラーゼ、およびテネテプラーゼ)、神経増殖因子(NGF)、オスエオテゲリン、血小板由来増殖因子、組織増殖因子、トランスフォーミング増殖因子-1、血管内皮増殖因子、白血病阻害因子、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、グリア増殖因子(GGF)、T細胞受容体、CD分子/抗原、腫瘍壊死因子(TNF)、単球化学誘因タンパク質-1、内皮増殖因子、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン様ペプチド、ソマトトロピン、サイモシンアルファ1、サイモシンアルファ1 IIb/IIIaインヒビター、サイモシンベータ10、サイモシンベータ9、サイモシンベータ4、アルファ-1アンチトリプシン、ホスホジエステラーゼ(PDE)化合物、VLA-4(超後期抗原-4)、VLA-4インヒビター、ビホスホネート、RSウイルス抗体、嚢胞性繊維症トランスメンブランレギュレーター(CFTR)遺伝子、デオキシリボヌクレアーゼ(Dnase)、殺菌性/透過性上昇タンパク質(BPI)、および抗CMV抗体がある。モノクローナル抗体の例には、エタネルセプト(IgG1のFc部分に結合したヒト75kD TNF受容体の細胞外リガンド結合部分からなるダイマー性融合タンパク質)、アブシキシマブ、アフェリオモマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、インフリキシマブ、イブリツモマブチウエキセタン、ミツモマブ、ムロモナブ-CD3、ヨウ素131トシツモマブ結合体、オリズマブ、リツキシマブおよびトラツズマブ(ヘルセプチン)がある。
【0252】
本発明のポリマーへの共有結合に適した追加の物質には、特に限定されないが、アミホスチン、アミオダロン、アミノカプロン酸、アミノヒプル酸ナトリウム、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アミノサリチル酸、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、アントラサイクリン、ベキサロテン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カベルゴリン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロランブシン、シラスチンナトリウム、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、カンプトテシン、13-シスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸;ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デフェロキサミン、デキサメタゾン、ジクロフェナック、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フェキソフェナジン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、エピネフリン、L-ドーパ、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、イリノテカン、イトラコナゾール、ゴセレリン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、リシノプリル、ロボチロキシンナトリウム、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メタラミノールビタルトレート、メソトレキセート、メトクロプラミド、メキシレチン、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ナロキソン、ニコチン、ニルタミド、オクトレオチド、オキサリプラチン、パミドロネート、ペントスタチン、ピルカマイシン、ポルフィマー、プレドニソン、プロカルバジン、プロクロロペラジン、オンダンセトロン、ラルチトレキセド、シロリムス、ストレプトゾシン、タクロリムス、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、テトラヒドロカナビノール、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレチノイン、バルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ドラセトロン、グラニセトロン;フォルモテロール、フルチカソン、ロイプロリド、ミダゾラム、アルプラゾラム、アンホテリシンB、ポドフィロトキシン、ヌクレオシド抗ウイルス剤、アロイルヒドラゾン、スマトリプタン;マクロライド類、例えばエリスロマイシン、オレアンドマイシン、トロレアンドマイシン、ロキシトロマイシン、クラリトロマイシン、ダベルシン、アジトロマイシン、フルリトロマイシン、ジリトロマイシン、ジョサマイシン、スピロマイシン、ミデカマイシン、ロイコマイシン、ミオカマイシン、ロキタマイシン、アンダジトロマイシン、およびスウィノリドA;フルオロキノロン類、例えばシプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、トロバフロキサシン、アラトロフロキサシン、モキシフロキシシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、グレパフロキサシン、ガチフロキサシン、ロメフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、ペフロキサシン、アミフロキサシン、フレロキサシン、トスフロキサシン、プルリフロキサシン、イルロキサシン、パズフロキサシン、クリナフロキサシン、およびシタフロキサシン;アミノグリコシド類、例えばゲンタマイシン、ネチルミシン、パラメシン、トブラマイシン、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシン、およびストレプトマイシン、バンコマイシン、テイコプラニン、ランポラニン、ミデプラニン、コリスチン、ダプトマイシン、グラミシジン、コリスチメテート;ポリミキシン類、例えばポリミキシンB、カプレオマイシン、バシトラシン、ペネム;ペニシリン類、例えばペニシリナーゼ感受性物質、例えばペニシリンG、ペニシリンV;ペニシリナーゼ耐性物質、例えばメチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フロキサシリン、ナフシシン;グラム陰性微生物活性物質、例えばアンピシリン、アモキシリン、およびヘタシリン、シリンおよびガランピシリン;抗シュードモナスペニシリン、例えばカルベニシリン、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、およびピピラシリン;セファロスポリン類、例えばセフポドキシム、セフプロジル、セフトブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セファロチン、セファピリン、セファレキシ、セファラドリン、セフォキシチン、セファマンドール、セファゾリン、セファロリジン、セファクロール、セファドロキシル、セファログリシン、セフロキシム、セフォラニド、セフォタキシム、セファトリジン、セファセトリル、セフェピム、セフィキシム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォテタン、セフメタゾール、セフタジジム、ロラカルベフおよびモキサラクタム、モノバクタム類、例えばアズトレオナム;およびカルバペネム類、例えばイミペネム、メロペネム、ペンタミジンイセチオウエート、アルブテロールサルフェート、リドカイン、メタプロテレノールサルフェート、ベクロメタゾンジプレピオネート、トリアムシノロンアセトアミド、ブデソニドアセトニド、フルチカゾン、イプラトロピウムブロミド、フルニソリド、クロモリンナトリウム、およびエルゴタミンタータレート;タキサン類、例えばパクリタキセル;SN-38、およびトリフォスチン類がある。
【0253】
本発明のポリマーマレイミドへの結合のための好適なペプチドまたはタンパク質には、EPO、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、コンセンサスIFN、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、IL-2、レミケード(インフリキシマブ)、リツキサン(リツキシマブ)、エンブレル(エタネルセプト)、シナギス(パリビズマブ)、レオプロ(アブシキシマブ)、ヘルセプチン(トラスツジマブ)、tPA、セリザイム(イミグルセラーゼ)、B型肝炎ワクチン、rDNAse、アルファ-1プロテイナーゼインヒビター、GCSF、GMCSF、hGH、インスリン、FSH、およびPTHがある。
【0254】
上記の生物活性物質の例は、適宜、これらの類似体、アゴニスト、アンタゴニスト、インヒビター、異性体、およびこれらの薬剤学的に許容される塩を包含することを企図する。ペプチドとタンパク質について本発明は、これらの合成型、組換え型、未変性型、グリコシル化型、および非グリコシル化型、ならびにこれらの生物活性断片を包含することを企図する。上記生物活性タンパク質はさらに、得られる変種タンパク質が親(未変性の)タンパク質の少なくともある程度の活性を有する限り、1つ以上のアミノ酸が置換(例えば、システイン)、欠失などされた変種を包含することを企図する。
【0255】
医薬組成物
本発明はまた、本明細書に記載の結合体と医薬賦形剤とを含む医薬調製物を含む。一般に結合体自体は固体型(例えば沈殿物)であり、これは固体または液体型である適当な医薬賦形剤と組合せることができる。
【0256】
賦形剤の例には、特に限定されないが、炭水化物、無機塩、抗微生物剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝剤、酸、塩基、およびこれらの組合せよりなる群から選択されるものがある。
【0257】
糖としての炭水化物、アルジトールとしての誘導体化糖、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーが、賦形剤として存在してもよい。具体的な炭水化物賦形剤には、例えば単糖類、例えばフルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなど;二糖類、例えば乳糖、ショ糖、トレハロース、セロビオースなど;多糖、例えばラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど;およびアルジトール類、例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチロール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどがある。
【0258】
賦形剤はまた、無機塩または緩衝液、例えばクエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、およびこれらの組合せがある。
【0259】
調製物はまた、微生物の増殖を防止または遅らせるための抗微生物剤を含有してもよい。本発明に適した抗微生物剤の非限定例には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、およびこれらの組合せがある。
【0260】
抗酸化剤も同様に調製物中に存在することができる。抗酸化剤は酸化を防ぎ、従って、結合体または調製物の他の成分の劣化を防止するのに使用される。本発明での使用に適した抗酸化剤には、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜燐酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびこれらの組合せがある。
【0261】
界面活性剤が賦形剤として存在してもよい。界面活性剤の例には、ポリソルベート類、例えば「ツイーン20」および「ツイーン80」、およびプルロニック類、例えばF68とF88(両方ともバスフ(BASF)(マウントオリーブ(Mount Olive)、ニュージャージー州)から入手できる);ソルビタンエステル;脂質、例えばリン脂質例えばレシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(ただし好ましくは、リポソーム型ではない)、脂肪酸と脂肪酸エステル;ステロイド、例えばコレステロール;およびキレート剤、例えばEDTA、亜鉛および他の適当な陽イオンがある。
【0262】
酸または塩基が、調製物中に賦形剤として存在してもよい。使用可能な酸の非限定例には、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびこれらの組合せよりなる群から選択される酸がある。特定の塩基の例には、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびこれらの組合せよりなる群から選択される塩基がある。
【0263】
医薬調製物は、すべてのタイプの調製物、および特に注射に適したもの、例えば復元できる粉末、ならびに懸濁液および溶液を包含する。組成物中の結合体(すなわち、活性物質と本明細書に記載のポリマーとの間で形成される結合体)の量は、多くの要因により変化するが、組成物が単位服用容器(例えば、バイアル)中で保存される時は、治療的有効量が最適である。さらに医薬調製物はシリンジに収容しても良い。治療的有効量は、どの量が臨床的に所望の終点を与えるかを決定するために、結合体の量を増加させて繰り返し投与することにより、実験的に決定することができる。
【0264】
組成物中の個々の賦形剤の量は、賦形剤の活性と組成物の特定のニーズにより変化する。一般的には個々の賦形剤の最適量は、日常的実験、すなわち異なる量(低濃度から高濃度まで)の賦形剤を含有する組成物を調製し、安定性や他のパラメータを調べ、次に大きな副作用無しで最適な性能が達成される範囲を調べることにより、決定することができる。
【0265】
しかし一般に賦形剤は組成物中に、約1〜約99重量%、好ましくは約5〜98重量%、さらに好ましくは約15〜95重量%の賦形剤の量で存在し、30重量%未満の濃度が最も好ましい。
【0266】
上記医薬賦形剤は他の賦形剤とともに、「レミントン:薬剤の科学と実践(Remington: The Science & Practice of Pharmacy)」、第19版、ウィリアムズアンドウィリアムズ(Williams & Williams)、(1995)、「フィジシャンズデスクリファレンス(Physician's Desk Reference)」、第52版、メヂカルエコノミクス(Medical Economics)、モントベール(Montvale)、ニュージャージー州(1998)、およびKibbe, A.H.、 医薬賦形剤のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)、第3版、アメリカ薬学協会(American Pharmaceutical Association)、ワシントンディーシー、2000に記載されている。
【0267】
本発明の医薬調製物は一般に(必ずしもそうではないが)、注射により投与され、従って一般に投与直前は液体または懸濁液である。医薬調製物はまた、他の形、例えばシロップ剤、クリーム剤、軟膏剤、錠剤、散剤などでもよい。他の投与形式も含まれ、例えば肺、直腸、経皮、経粘膜、経口、くも膜下、皮下、動脈内などがある。
【0268】
既に記載されているように、結合体は、静脈内注射、またはそれほど好適ではないが、筋肉内もしくは皮下注射により、注射で非経口的に投与することができる。非経口投与のための適当な製剤タイプには、即時注射可能な溶液、使用前に溶媒と組合わされる乾燥不溶性組成物、およびエマルジョン、および投与前に希釈される液体濃縮物などがある。
【0269】
投与方法
本発明はまた、結合体による治療に応答性の症状に罹った患者に、本明細書に記載の結合体を投与する方法を提供する。この方法は、注射により、治療的有効量の結合体(好ましくは医薬調製物の一部として提供される)を投与することを含む。この投与方法は、特定の結合体の投与により治療または予防できる症状を治療するのに使用される。当業者は、どの具体的な結合体が有効に治療できるかを容易に理解する。投与される実際の用量は、被験体の年齢、体重、および全身症状、ならびに治療される症状の重症度、医療専門家の判断、および投与される結合体により変動する。治療的有効量は、当業者に公知であり、および/または関連する参考書や文献に記載されている。一般に治療的有効量は、約0.001mg〜100mg、好ましくは0.01mg/日〜75mg/日であり、さらに好ましくは0.10mg/日〜50mg/日である。
【0270】
ある結合体の単位服用量(再度、好ましくは医薬調製物の一部として提供される)は、臨床家の判断、患者のニーズなどに依存して種々の投与スケジュールで投与することができる。具体的な投与スケジュールは当業者に公知であり、日常的方法により実験的に決定することができる。投与スケジュールの例には、特に限定されないが、1日に5回、1日に4回、1日に3回、1日に2回、1日に1回、週に3回、週に2回、週に1回、月に2回、月に1回、およびこれらの任意の組合せがある。臨床的終点がいったん達成されると、組成物の投与が停止される。
【0271】
本発明の結合体を投与する1つの利点は、個々の水溶性ポリマー部分が切断されることである。このような結果は、ポリマーサイズのために体からのクリアランスが問題なる可能性がある時に、有利である。水溶性ポリマー部分の切断は、生物学的切断可能なおよび/または酵素的に分解可能な結合(例えば、ウレタン、アミド、炭酸塩、またはエステル含有結合)の使用により促進されることが、最適である。こうして結合体のクリアランス(個々の水溶性ポリマー部分の切断を介する)は、ポリマーの分子サイズと、所望のクリアランス性を提供する官能基のタイプを選択することにより調節することができる。例えば、当業者は、日常的実験を使用して、まず異なる重量と切断可能な官能基を有する種々のポリマー誘導体を調製し、次にポリマー誘導体を患者に投与して定期的な血液サンプリングおよび/または尿サンプリングにより、クリアランスプロフィール(例えば、定期的血液サンプリングと尿サンプリングにより)を得て、正しい分子サイズおよび切断可能な官能基を決定することができる。一連のクリアランスプロフィールが各試験結合体について得られると、特定の結合体を同定することができる。
【0272】
本明細書に記載のすべての文献、本、特許、特許公報および他の刊行物は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0273】
実施例
いくつかの好適な具体例について本発明が説明されるが、前記説明と以下の例は本発明の例示するものであって、決して本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点および修飾は、当業者には明らかであろう。
【0274】
略語
DCM:ジクロロメタン
NMR:核磁気共鳴
DI:脱イオン化
r.t.:室温
anh.:無水
Da:ダルトン
GPC:ゲル浸透クロマトグラフィー
【0275】
材料と方法
添付の例に記載のすべての化学試薬は、特に明記しない場合は市販されている。
【0276】
添付の例に記載のすべてのPEG試薬は、ネクター(Nektar)(フンツビル(Huntsville)、アラバマ州)から入手できる。すべての 1H NMRデータは、ブルカー(Bruker)の300または400MHz NMR分光計により作成した。
【0277】
実施例1
分岐PEG2-アミドペンタメチレン−マレイミド(40kDa)(L1-AMPE)
合成の概略
【化44】

【0278】
A. 分岐PEG2(40K)アミン
塩化メチレン(250ml)中の分岐PEG2(40,000)-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(20g, 0.00050モル)(ネクター(Nektar)(フンツビル(Huntsville)、アラバマ州))の溶液に、エチレンジアミン(0.68ml, 0.01017モル)を加え、反応混合物を室温でアルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。次に溶媒を蒸発乾固させた。粗生成物を少量の塩化メチレンに溶解し、イソプロピルアルコールで沈殿させた。湿った生成物を減圧下で乾燥した。収率 17.2g。
NMR(d6-DMSO):2.65ppm (t, -CH2-NH2), 3.24ppm (s, -OCH3), 3.51ppm (s, PEG骨格)。
【0279】
B. 分岐PEG2-アミドペンタメチレン−マレイミド−40kDa
塩化メチレン(10ml)中のN-スクシンイミジル(ε−マレイミドヘキサノエート)(0.1g, 0.000324モル、ピアスケミカル社(Pierce Chemical company))の溶液に、3分かけて、塩化メチレン(20ml)中の工程Aからの分岐PEG2(40K)アミン(12.2g, 0.000305モル)の溶液を加えた。次に0.045mlのトリエチルアミンを加え、混合物を室温でアルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。次に溶媒を蒸留し、残った粗生成物を30mlの塩化メチレンに溶解し、次に450mlのイソプロピルアルコールを室温で加えて沈殿させた。収率は11.5gであった。
【0280】
プロトンNMR分析は、主シグナルが3.24ppm (s, -OCH3), 3.51ppm (s, PEG骨格), 7.01 (S, ch=ch, マレイミド)にあることを示し、これは正しい生成物であることを示す。NMRの基づき、置換は約89%であると推定された。GPC分析は、主生成物が98.3%の所望の化合物であり、1.7%がダイマーであることを明らかにした。生成物はまた、必要なUV吸収を有した。
【0281】
実施例2
mPEG(5,000Da)−ブチルマレイミド(L3-TEME)
合成の概略
【化45】

【0282】
A. mPEG(5,000Da)−ブチルアミン
トルエン(30ml)中のmPEG-5,000Da(2.0g, 0.0004モル)(ノフコーポレーション(NOF Corporation))を、15mlのトルエンで蒸留することにより共沸乾燥させた。tert-ブタノール(2.0ml, 0.002モル)中のカリウムtert-ブオキシドの1.0M溶液と1,4-ジブロモブタン(0.43g, 0.002モル)を加え、混合物を75℃でアルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。混合物をろ過し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をジクロロメタン(3ml)に溶解し、イソプロピルアルコール(50ml)を加えた。沈殿した生成物をろ過して除去し、減圧下で乾燥した。次にこれを濃アンモニア(20ml)に溶解し、得られた溶液を室温で20時間攪拌した。生成物をジクロロメタンで抽出した。抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去して、1.5gのM-PEG(5,000)−ブチルアミンを得た。
NMR (D2O):1.53ppm (m, -CH2-CH2-CH2-NH2), 2.75ppm (t, -CH2-NH2), 3.27ppm (s, -OCH3), 3.53ppm (s, PEG骨格)。
【0283】
B. mPEG(5,000Da)−ブチルマレイミド
工程AからのmPEG(5,000)−ブチルマレイミド(1.0g, 0.0002モル)を飽和NaHCO3(5ml)水溶液に溶解し、混合物を ℃に冷却した。N-メトキシカルボニルマレイミド(0.25g)を激しく攪拌しながら加えた。15分攪拌後、水(8ml)を加え、混合物をさらに65分攪拌した。NaCl(0.5g)を加え、10%リン酸でpHを3.0に調整した。生成物をジクロロメタンで抽出した。抽出物を無水MgSO4で乾燥し、減圧下で溶媒を留去して、0.9gの白色の固体生成物を得た。
NMR (d6-DMSO):1.48ppm (bm, -CH2-CH2-CH2-Mal), 3.24ppm (s, -OCH3), 3.51ppm (s, PEG骨格), 7.00ppm (s, -CH=CH-)。
この生成物はPEG成分上でマレイミジル基の82%置換を有した。
【0284】
実施例3
mPEG(5,000Da)−ヘキシルマレイミド(L3-HEXA)
【化46】

【0285】
この合成は、基本的に上記実施例2に記載したものと同等であるが、使用されたジブロモ試薬は、2つの追加のメチレンを有する、すなわちBr-(CH2)6-Br。
【0286】
A. mPEG(20,000Da)−ヘキシルアミン
トルエン(30ml)中のmPEG-5,000Da(2.0g, 0.0004モル)(ノフコーポレーション(NOF Corporation))を、15mlのトルエンで蒸留することにより共沸乾燥させた。tert-ブタノール(2.0ml, 0.002モル)中のカリウムtert-ブオキシドの1.0M溶液と1,4-ジブロモブタン(0.49g, 0.002モル)を加え、混合物を80℃でアルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。混合物をろ過し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をジクロロメタン(3ml)に溶解し、イソプロピルアルコール(50ml)を加えた。沈殿した生成物をろ過して除去し、減圧下で乾燥した。次にこれを濃アンモニア(20ml)に溶解し、得られた溶液を室温で20時間攪拌した。生成物をジクロロメタンで抽出した。抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去して、1.6gのM-PEG(5,000)−ブチルアミンを得た。
NMR (D2O):1.28ppm (m, -CH2-CH2-CH2-CH2-NH2), 1.47ppm (m, -CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-NH2), 2.71ppm (t, -CH2-NH2), 3.27ppm (s, -OCH3), 3.53ppm (s, PEG骨格)。
【0287】
B. mPEG(5,000Da)−ヘキシルマレイミド
工程AからのmPEG(5,000Da)−ヘキシルマレイミド(1.0g, 0.0002モル)を飽和NaHCO3(5ml)水溶液に溶解し、混合物を ℃に冷却した。N-メトキシカルボニルマレイミド(0.25g)を激しく攪拌しながら加えた。15分攪拌後、水(8ml)を加え、混合物をさらに65分攪拌した。NaCl(0.5g)を加え、10%リン酸でpHを3.0に調整した。生成物をジクロロメタンで抽出した。抽出物を無水MgSO4で乾燥し、減圧下で溶媒を留去して、0.9gの白色の固体生成物を得た。
NMR (d6-DMSO):1.24ppm (bm, -CH2-CH2-CH2-CH2-Mal), 1.45ppm (bm, -CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-Mal), 3.24ppm (s, -OCH3), 3.51ppm (s, PEG骨格), 7.01ppm (s, -CH=CH-)。
この生成物はPEG成分上でマレイミジル基の82%置換を有した。
【0288】
実施例4
mPEG(5K Da)-プロピルマレイミド(L3-TME)
合成の概略
【化47】

【0289】
A. mPEG(5K Da)−プロピルアミン
無水アセトニトリル(100ml)中の4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(4.2g)の溶液に、無水アセトニトリル(60ml)中のmPEG-ベンゾトリアゾリルカーボネート(5g)(シェアウォーター社(Shearwater Corp.))を20分で加え、混合物を室温でアルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。生成物を100mlのDI H2Oに溶解した。NaCl(5g)を加え、10%H3PO4でpHを3.0に調整した。生成物をCH2Cl2で抽出した。抽出物を50mlの2%KOH溶液で洗浄し、次にこれを乾燥(MgSO4)し、溶媒を留去した。次に生成物を10mlのCH2Cl2に溶解し、200mlのイソプロピルアルコールで0〜5℃で逆沈殿させた。乾燥後の収率 4.2g。
NMR:所望の生成物、置換85.0%、GPC(緩衝液、25℃)、置換97.02%。
【0290】
B. mPEG(5K Da)−PA-マレイミド
工程AからのmPEG(5K Da)−プロピルアミン(20mlの脱イオン水中4.0g、pH 8.93)を氷浴上で0〜5℃に冷却し、N-メトキシカルボニルマレイミドの溶液(3.5mlの無水アセトニトリル中0.5g)を加え、混合物を0〜5℃で15分攪拌した。氷浴を除去し、DI H2O(16ml)を加え、混合物を室温で45分攪拌した。NaCl(2g)を加え、10%H3PO4でpHを3.0に調整した。生成物をCH2Cl2で抽出した。抽出物をMgSO4で乾燥し、溶媒を留去した。粗生成物をCH2Cl2(10ml)に溶解し、イソプロピルアルコール(200ml)で0〜5℃で沈殿させた。収率 3.7g。
NMR:所望の生成物の合成を確認した:置換83.5%。
【0291】
実施例5
mPEG(5K Da)−アミドシクロヘキシルメチル−マレイミド(L1-MCH)
合成の概略
【化48】

【0292】
CH2Cl2(10ml)中の4-(マレイミドメチル)-1-シクロヘキサンカルボン酸、NHSエステル(0.100g)(ピアスケミカル社(Pierce Chemical company))に、CH2Cl2(20ml)中のmPEG(5K Da)−アミン(1.5g)(シェアウォーター社(Shearwater Corp.))の溶液を加えた。TEA(0.042ml)を加え、混合物を室温でアルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。溶媒を留去した。粗生成物を2mlのCH2Cl2に溶解し、イソプロピルアルコール(60ml)で0〜5℃で沈殿させた。収率 1.35g。
NMR:所望の化合物、置換79.7%。GPC(硝酸緩衝液、25℃):ダイマー:3.98%;主化合物:96.02%。
【0293】
実施例6
mPEG(5K Da)−プロピルマレイミド(L3-TME)の結合体
本発明の反応性ポリマーとチオール基を有する分子との反応を例示するために、リン酸緩衝液中の実施例4からのMPEG-PA-MAL(1.0g)の溶液に25μlの2-メルカプトエタノールを加えた。混合物を室温でアルゴン雰囲気下で一晩攪拌した。生成物をCH2Cl2(3×20ml)で抽出した。抽出物を乾燥(MgSO4)し、溶媒を留去した。粗生成物を2mlのCH2Cl2に溶解し、40mlのイソプロピルアルコールで0〜5℃で沈殿させた。収率 0.78g。
NMR:所望の生成をNMRにより確認した:置換:64.9%。
【0294】
実施例7
反応性ポリヌクレオチドの加水分解速度試験
HPLC分析を使用して、いくつかのマレイミド末端mPEGポリマー(平均分子量 5000Da)の例のマレイミド環の加水分解性分解速度を調べた。
【0295】
マレイミドとPEGポリマー部分との以下の結合を評価した:アミドエチレン(L1-AMDE)、アミドペンタメチレン(L1-AMPE)、アミドシクロヘキシルメチル(L1-MCH)、オキシブチル(L3-TEME)、オキシヘキシル(L3-HEXA)、オキシエチル(L3-ET)、およびオキシプロピル(L3-TME)。参照を容易にするために完全な構造を以下に示す。
【0296】
【化49】

【0297】
【表5】

【0298】
上記表2のデータから明らかなように、それぞれのマレイミド酸を生成するこれらのポリマーマレイミドの例の加水分解速度は、マレイミド環に隣接する炭化水素部分の構造の変化により変わる。第3欄中のデータは、ヘキサメチレン−マレイミドポリマーに対する加水分解速度を示す。明らかなように、調べたポリマーについて、L3-HEXAポリマーが最も安定であり、すなわち最も遅い加水分解速度を有し、従って最も長い半減期を有した。上記データは、ポリマーとマレイミドを分離する炭化水素鎖の長さの増加は、マレイミド末端ポリマー自体の半減期を上昇させることを示す。
【0299】
実施例8
ポリマー結合体の加水分解速度試験
代表的タンパク質と小分子モデル結合体の加水分解速度を試験して、ポリマー末端マレイミド自体対その結合体の開環傾向の相関を調べた。
【0300】
大きな生体分子成分(例えばタンパク質)は、一般的な液体クロマトグラフィーカラム上の結合体化分子の保持に劇的な作用を有するため、ポリマー自体よりマレイミド結合体の速度を測定することは一般的により困難である。この分析では、マレイミド酸の開いた酸の型は、開いていないすなわち閉環型から明確に区別できなかった。しかしサイズ排除クロマトグラフィー(HPLC-SE)と分析的タンパク質電気泳動(SDS-PAGE)の組合せ分析は、ポリマーマレイミドタンパク質結合体、ならびにモデル非タンパク質化合物を使用して調製された結合体の開環特性を推定するのに、うまく使用できた。
【0301】
この試験では、以下に一般的に示す2つのPEG−球形タンパク質結合体を試験して、その開環特性を調べた。
【0302】
【化50】

【0303】
上の構造は、Glob Protein 2のPEG-マレイミド結合体であり、Glob Protein 2は、分子量が約48kDaのタンパク質である。Glob Protein 2は、PEGプロピオン酸(MW 30kDa)由来のPEGマレイミドに結合し、これはさらに、ポリマーのプロピオン酸由来部分とマレイミド末端との間に位置する中程度の長さのリンカーを含有した。上の構造のリンカーは、-C(O)-NH(CH2)2-NH-C(O)-CH2CH2-である。
【0304】
下の構造は、Glob Protein 1のPEG-マレイミド結合体であり、ここで2つのタンパク質は約11kDaの分を有する。結合体は、分子量が約20kDaのリンカーの無いマレイミド(mPEG-ET-MAL)を使用して調製した。対応するPEGマレイミド構造はL3-ETであり、実施例7で考察される。
【0305】
下の構造(Glob Protein 2)は、pH8.5で室温で24時間後に完全に開環しており、従ってポリマーとマレイミド環を分離する安定化リンカーの無いこの種のマレイミド末端ポリマーの不安定性を示している。しかし、リンカーの無い型と比較して、上の構造(Glob Protein 1)中のリンカーは、上の結合体中の環構造は、50℃に17時間加熱してpH9で17時間まで、完全に開環していないため、開環を遅らせる。
【0306】
同様に、モデル化合物2-メルカプトエタノールに結合した本発明の安定化ポリマーマレイミドの加水分解速度を測定して、開環に対する結合体の傾向を評価した。試験は、本安定化ポリマーマレイミドが、Glob Protein 1やGlob Protein 2の結合体を生成するのに使用したものより優れていることを証明した。すなわち、遊離型と結合体型の両方で、本発明のポリマーマレイミドはリンカーの無いPEGマレイミド、および例えばGlob Protein 2に結合していることが証明された上記PEG-マレイミドと比較して、開環に対して優れた安定性と耐性を示した。
【0307】
8-TRI、8-PEN、および8-MCH(構造は下記表3に示す)の結合体の加水分解速度試験を、非結合マレイミドに対する記載したように行った。示した半減期は、2つの異なるpH値で取ったデータから計算した。非結合マレイミドと同様にデータは、開環が増えるとpHが小さくなり、反応速度が遅くなることを示す。スクシンイミド環に隣接する最も短い炭化水素鎖(すなわち、8-TRI)との結合は、試験した他の結合体と比較して、開くのが最も速かった。このデータは、より長い/より大きい炭化水素鎖が、加水分解誘導性の開環に対して優れた耐性を与えることを示す。
【0308】
【表6】

【0309】
実施例9
1-(N-マレイミドメチル)-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(シスとトランス異性体の混合物)の合成
【化51】

【0310】
9A. 1-アミノメチル-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(シスとトランス異性体の混合物)の調製:アセトニトリル(200ml)中のメトキシポリ(エチレングリコール)プロピオン酸、MW5,000(20.0g, 4.0mmol, ネクターセラピューティクス(Nektar Therapeutics))のN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルを、トリエチルアミン(20ml)を含有するアセトニトリル(200ml)中の1,4-シクロヘキサン(ビスメチルアミン)(11.34g, 79.7mmol)の溶液に滴下して加えた。混合物を室温で3日間攪拌した。真空下で溶媒を除去すると、白色の固体が残った。固体をエーテル(100ml)で攪拌し、ろ過して集め、乾燥して20.23gの粗生成物を得た。この粗混合物をCH2Cl2(30ml)中に取り、IPA(500ml)/エーテル(250ml)を用いて沈殿させた。ろ過して固体を集め、真空下で乾燥した(16.3g)。
1H NMR (dmso-d6) δ 7.76 (1H, d, NHC=O), 3.51 (br s, O-CH2CH2-, PEG骨格), 2.98と2.88 (2H, t, CH2-NH-C=O), 2.43と2.36 (2H, d, CH2-NH2), 2.30 (2H, CH2C=O), 1.78-1.68 (1H, m, 環CH), 1.45-1.21 (6H, m, 環メチレンプロトン), 0.90-0.73 (1H, m, 環CH)。
【0311】
【化52】

【0312】
9.B. 1-(N-マレイミドメチル)-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(シスとトランス異性体の混合物)の調製:NaHCO3(飽和、19ml)中の1-アミノメチル-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(シスとトランス異性体の混合物)の溶液(3.68g, 0.74mmol)を、氷/塩/水浴中で冷却した。ここに、N-メトキシカルボニルマレイミド(116mg, 0.82mmol)を加えた。この混合物を氷浴中で15分間攪拌し、H2O(29ml)を加えた。氷浴中で1時間攪拌後、浴から反応混合物を除去し、室温で3時間攪拌した。反応混合物を食塩水(30ml)で希釈した。10%リン酸でpHを3に調整し、CH2Cl2(3×50ml)で抽出した。一緒にした有機抽出物を乾燥(Na2SO4)し、真空下で濃縮した。残渣をCH2Cl2(10ml)中に取り、IPA(60ml)/エーテル(100ml)で沈殿させた。生成物をろ過して集め、真空下で一晩乾燥した(3.14g)。
1H NMR (dmso-d6) δ7.79 (1H, d, NHC=O), 7.01 (2H, s, CH=CH), 3.51 (br s, O-CH2CH2-, PEG骨格), 2.32 (2H, CH2C=O), 1.75-1.45 (1H, m, 環メチレン), 1.45-1.21 (5H, m, 環メチレンプロトンとCH), 0.90-0.73 (1H, m, 環プロトン)。
【0313】
実施例10
トランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)-N-シクロヘキシルマレイミドの合成
【化53】

【0314】
10A. トランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキシル-t-BOCアミンの調製:アセトニトリル(200ml)中のトランス-4-アミノメチルシクロヘキシル-t-BOC-アミン(1.0g, 4.67mmol, アルバニーモレキュラー(Albany Molecular))とメトキシポリ(エチレングリコール)プロピオン酸、MW5,000(22.9g, 4.20mmol, ネクターセラピューティクス(Nektar Therapeutics))のN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルの溶液に、トリエチルアミン(1.2ml, 8.6mmol)をアルゴン下で加えた。混合物を室温でアルゴン下で24時間攪拌した。NMRは、SPA基の残存するプロトンを示さなかった。真空下で溶媒を除去すると、白色の固体が残り、これをCH2Cl2(60ml)中に取り、IPA(500ml)/エーテル(1L)を用いて沈殿させた。ろ過して固体を集め、真空下で乾燥して、生成物を白色の固体として得た(22.2g)。
1H NMR (dmso-d6) δ 7.80 (1H, s, CH-NH), 6.70 (1H, d, CH-NH), 3.55 (br s, O-CH2CH2-, PEG骨格), 3.28 (3H, s, CH3), 3.15 (1H, br s, CH), 2.90 (2H, t, CH2-CH2-NH), 2.33 (3H, t, CH2-C=O), 1.74-1.65 (4H, M, 環プロトン), 1.37 (9H, s, C(CH3)3), 1.25 (1H, br s, CH), 1.14-0.83 (4H, m, 環プロトン)。
【0315】
【化54】

【0316】
10.B. トランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキシルアミン、トリフルオロ酢酸塩の調製:無水CH2Cl2(5.0ml)中のトランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキシル-t-BOCアミン(1.20g, 0.24mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(2.5ml, 32.5mmol)を加えた。この混合物を25℃で18時間攪拌した。真空下で溶媒を除去すると、油状残基が残り、これを真空下で一晩乾燥した。残渣を無水エーテル(20ml)で攪拌した。生成物をろ過して集め、次に乾燥した(0.99g)。
1H NMR (dmso-d6) δ8.13 (1H, br s, NH), 7.80 (3H, d, NH3), 3.51 (br s, O-CH2CH2-, PEG骨格とCH), 3.24 (3H, s, CH3), 2.97 (1H, br s, CH), 2.27 (2H, t, CH2C=O), 1.95-1.35 (2H, m, シクロヘキサンプロトン), 1.34-1.25 (2H, m, シクロヘキサンプロトン), 1.40-1.25 (2H, m, シクロヘキサンプロトン), 1.25-1.13 (2H, m, シクロヘキサンプロトン)。
【0317】
【化55】

【0318】
10.B. トランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)-N-シクロヘキシルマレイミドの調製:トランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキシルアミントリフルオロ酢酸塩(3.0g, 0.60mmol)をNaHCO3(水溶液、飽和、16ml)に取り、氷/塩浴中で2℃に冷却した。ここに、N-メトキシカルボニルマレイミド(100mg, 0.70mmol)を加えた。2℃で15分間攪拌後、反応混合物にH2O(24ml)を加え、攪拌を4時間続けた。食塩水(50ml)を加え、次に10%リン酸を使用してpHを3に調整した。混合物をCH2Cl2で抽出した(3×50ml)。一緒にした有機抽出物を乾燥(Na2SO4)し、真空下で濃縮し、真空下で乾燥した。1H NMRは、生成物が不完全な閉環から、約50%マレイミド/50%開環物質であることを示した。
1H NMR (dmso-d6) δ 7.80 (1H, d, NH), 6.96 (2H, s, マレイミドCH=CH), 3.51 (474, br s, PEG骨格とCH), 3.24 (3H, s, CH3), 2.89 (2H, t, CH2), 2.30 (2H, t, CH2C=O), 1.85-1.73 (2H, m, シクロヘキサンプロトン), 1.73-1.63 (2H, m, シクロヘキサンプロトン), 1.32 (1H, br s, CH), 1.15-1.05 (2H, m, シクロヘキサンプロトン), 1.00-1.85 (2H, m, シクロヘキサンプロトン)。
【0319】
実施例11
トランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミド)-N-シクロヘキシルマレイミドの合成
【化56】

【0320】
11A. トランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキシル-t-BOCアミンの調製:アセトニトリル(200ml)中のモノ-5-BOC-トランス-4-ジアミノシクロヘキサン(1.0g, 4.38mmol, アルバニーモレキュラー(Albany Molecular))とメトキシポリ(エチレングリコール))プロピオン酸、MW5,000(21.5g, 4.30mmol, ネクターセラピューティクス(Nektar Therapeutics))のN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルの溶液に、トリエチルアミン(1.2ml, 8.6mmol)をアルゴン下で加えた。混合物を室温でアルゴン下で24時間攪拌した。1H NMRは、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル基の残存するプロトンを示さなかった。真空下で溶媒を除去すると、白色の固体が残り、これをCH2Cl2(50ml)中で30分間攪拌した。固体をろ過により集め、真空下で乾燥して、生成物を白色の固体として得た(1.95g)。
1H NMR (dmso-d6) δ 7.70 (1H, d, CH-NH), 6.69 (1H, d, CH-NH), 3.51 (br s, O-CH2CH2-, PEG骨格とCH), 3.24 (3H, s, CH3), 3.15 (1H, br s, CH), 2.26 (3H, t, CH2-C=O), 1.74 (4H, t, br d, 環プロトン), 1.37 (9H, s, C(CH3)3), 1.17-1.07 (4H, m, 環プロトン)。
【0321】
【化57】

【0322】
11.B. トランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミド)シクロヘキシルアミン、トリフルオロ酢酸塩の調製:無水CH2Cl2(55ml)中のトランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミド)シクロヘキシル-t-BOCアミン(12.0g, 2.4mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(25ml, 325mmol)を加えた。この混合物を25℃で18時間攪拌した。真空下で溶媒を除去すると、油状残基が残り、これを真空下で一晩乾燥した。残渣をCH2Cl2(30ml)に取り、IPA(750ml)/エーテル(500ml)で沈殿させた。生成物をろ過して集め、次に乾燥して、生成物を白色の固体として得た(10.2g)。
1H NMR (dmso-d6) δ8.13 (1H, br s, NH), 7.80 (3H, d, NH3), 3.51 (br s, O-CH2CH2-, PEG骨格とCH), 3.24 (3H, s, CH3), 2.97 (1H, br s, CH), 2.27 (2H, t, CH2C=O), 1.95-1.35 (2H, m, シクロヘキサンプロトン), 1.34-1.25 (2H, m, シクロヘキサンプロトン), 1.40-1.25 (2H, m, シクロヘキサンプロトン), 1.25-1.13 (2H, m, シクロヘキサンプロトン)。
【0323】
【化58】

【0324】
11.C. トランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミド)-N-シクロヘキシルマレイミドの調製:トランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミド)シクロヘキシルアミン、トリフルオロ酢酸塩(3.0g, 0.60mmol)をNaHCO3(水溶液、飽和、16ml)に取り、氷/塩浴中で2℃に冷却した。ここに、N-メトキシカルボニルマレイミド(100mg, 0.70mmol)を加えた。2℃で15分間攪拌後、反応混合物にH2O(24ml)を加え、攪拌を5時間続けた。食塩水(20ml)を加え、次に10%リン酸を使用してpHを3に調整した。混合物をCH2Cl2(3×50ml)で抽出した。一緒にした有機抽出物を乾燥(Na2SO4)し、真空下で濃縮し、真空下で乾燥して、生成物を白色固体として得た(2.75g)。1H NMRは、生成物が不完全な閉環から、約26%マレイミド/74%開環物質であることを示した。
1H NMR (dmso-d6) δ 7.77 (1H, d, NH), 6.96 (2H, s, マレイミドCH=CH), 3.51 (br s, O-CH2CH2-, PEG骨格), 3.24 (3H, s, CH3), 2.28 (2H, t, CH2C=O), 2.06-1.92 (1H, m, シクロヘキサンプロトン), 1.88-1.73 (3H, m, シクロヘキサンプロトン), 1.59-1.65 (1H, m, シクロヘキサンプロトン), 1.28-1.13 (3H, m, シクロヘキサンプロトン)。
【0325】
実施例12
1-N-マレイミドメチル-3-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(シスとトランス異性体の混合物)の合成
【化59】

【0326】
12A. 1-アミノメチル-3-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(シスとトランス異性体の混合物)の調製:アセトニトリル(100ml)中のメトキシポリ(エチレングリコール)プロピオン酸、MW5,000(10.0g, 2.0mmol, ネクターセラピューティクス(Nektar Therapeutics))のN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルを、トリエチルアミン(10ml)を含有するアセトニトリル(100ml)中の1,3-シクロヘキサン(ビスメチルアミン)(6.0ml, 39.9mmol、アルバニーモレキュラー(Albany Molecular))の溶液に滴下して加えた。この混合物を室温で3日間攪拌した。不溶性固体をろ過し、ろ液を真空下で濃縮すると、白色の固体が残った。粗混合物をCH2Cl2(50ml)に取り、IPA(375ml)/エーテル(300ml)を用いて沈殿させた。固体をろ過して白色固体を得て、これを真空下で乾燥した(9.5g)。1H NMRは、一部の残存する1,3-シクロヘキサン(ビスメチルアミン)を示したが、これは固体をCH2Cl2に溶解し、アンベーリスト(Amberlyst)15(15g)で洗浄することにより除去した。溶媒を除去して1-メチルアミノ-3-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(8.62g)を得た。
1H NMR (dmso-d6) δ 7.78 (1H, d, NHC=O), 3.51 (br s, PEG骨格), 3.24 (3H, s, OCH3), 2.95と2.89 (2H, m, CH2-NH-C=O), 2.49と2.37 (2H, d, CH2-NH2), 2.30 (2H, CH2C=O), 1.75-1.65 (4H, m, 環プロトン), 1.63-1.21 (2H, m, 環プロトン), 1.21-1.03 (2H, m, 環プロトン), 0.80-0.70 (1H, m, 環プロトン), 0.50-0.30 (1H, m, 環プロトン)。
【0327】
【化60】

【0328】
12.B. 1-N-マレイミドメチル-3-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(シスとトランス異性体の混合物)の調製:NaHCO3(飽和、20ml)中の1-アミノメチル-3-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(シスとトランス異性体の混合物)(4.0g, 0.8mmol)の溶液を、氷/塩/水浴中で冷却した。ここに、N-メトキシカルボニルマレイミド(126mg, 0.89mmol)を加えた。この混合物を氷浴中で15分間攪拌し、H2O(32ml)を加えた。氷浴中で1時間攪拌後、浴から反応混合物を取り出し、室温で3時間攪拌した。反応混合物を食塩水(30ml)で希釈した。10%リン酸でpHを3に調整し、CH2Cl2(3×50ml)で抽出した。一緒にした有機抽出物を乾燥(Na2SO4)し、真空下で濃縮した。残渣を真空下で一晩乾燥して、生成物を白色固体として得た。
1H NMR (dmso-d6) δ7.79 (1H, d, NHC=O), 7.01 (2H, s, CH=CH), 3.51 (br s, PEG骨格とCHCH2), 3.24 (3H, s, OCH3), 3.10-2.63 (2H, m, CHCH2), 2.31 (2H, dd, CH2C=O), 1.65-1.10 (8H, m, 環メチレン), 0.83-0.48 (2H, m, 環プロトン)。
【0329】
実施例13
ポリマーマレイミド例の加水分解速度試験
実施例7で上記したように、いくつかの安定化PEG-マレイミド例について加水分解試験を行った。具体的なPEG-マレイミドの構造とその対応する半減期を下表4に示す。
【0330】
【表7】

【0331】
実施例14
安定化mPEG-マレイミド、1-(N-マレイミドメチル)-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサンのモデル化合物2-メルカプトエタノールへの結合
【化61】

【0332】
1-(3-2-ヒドロキシエタンメルカプト)-N-スクシンイミジルメチル)-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(シスとトランス異性体の混合物)の調製:CH3CN(10ml)中の1-(N-マレイミドメチル)-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(シスとトランス異性体の混合物)(500mg, 0.1mmol)の溶液に、2-メルカプトエタノール(15μl, 0.21mmol)を加えた。この混合物を室温で18時間攪拌させた。1H NMRは、マレイミド出発物質が残存することを示した。さらに2-メルカプトエタノール((15μl, 0.21mmol)を加え、混合物をさらに24時間攪拌した。1H NMRは、マレイミドが存在しないことを示した。真空下で溶媒を除去し、真空下で乾燥した。固体をCH2Cl2(2ml)に取り、IPA(50ml)で沈殿させた。固体をろ過して集め、乾燥して、生成物を白色固体として得た(403mg)。
1H NMR (dmso-d6) δ 7.66 (1H, br s, NH), 4.83 (1H, t, OH), 4.01 (1H, dd, CH-S), 3.51 (br s, PEG骨格), 3.05-2.61 (4H, m, 2xCHCH2), 2.30 (2H, t, CH2C=O), 1.75-0.75 (10H, m, 環プロトン)。
【0333】
実施例15
安定化mPEG-マレイミド、トランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)-N-シクロヘキシルマレイミドのモデル化合物2-メルカプトエタノールへの結合
【化62】

【0334】
トランス-1-(3-2-ヒドロキシエタンメルカプト)-N-スクシンイミジル)-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサンの調製:CH3CN(10ml)中のトランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)-N-シクロヘキシルマレイミド(400mg, 0.08mmol)の溶液に、2-メルカプトエタノール(15μl, 0.21mmol)を加えた。この混合物を室温で18時間攪拌させた。真空下で溶媒を除去し、真空下で乾燥した。残渣をエーテル(2×20ml)で攪拌し、固体をろ過して集め、生成物を白色固体として得た(310mg)。
1H NMR (dmso-d6) δ 7.81 (1H, br s, NH), 4.87 (1H, t, OH), 3.85 (1H, dd, CH-SEtOH), 3.51 (br s, PEG骨格, CHとSCH2CH2OH), 3.24 (3H, s, CH3), 2.90 (2H, br s, CH2NH), 2.79 (2H, t, SCH2CH2), 2.30 (2H, t, CH2C=O), 2.08-1.55 (5H, m, 環プロトン), 1.25-0.94 (4H, m, 環プロトン)。
【0335】
実施例16
安定化mPEG-マレイミド、トランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミド)-N-シクロヘキシルマレイミドのモデル化合物2-メルカプトエタノールへの結合
【化63】

【0336】
トランス-1-(3-2-ヒドロキシエタンメルカプト)-N-スクシンイミジル)-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミド)シクロヘキサンの調製:CH3CN(10ml)中のトランス-4-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミド)-N-シクロヘキシルマレイミド(400mg, 0.08mmol)の溶液に、2-メルカプトエタノール(15μl, 0.21mmol)を加えた。この混合物を室温で18時間攪拌させた。真空下で溶媒を除去し、真空下で乾燥して、生成物を白色固体として得た(240mg)。
1H NMR (dmso-d6) δ 7.75 (1H, br s, NH), 4.83 (1H, t, OH), 4.01 (1H, dd, CH-S), 3.51 (br s, PEG骨格と2×CH), 2.75 (2H, m, S-CH2), 2.33 (2H, t, CH2C=O), 2.02-1.65 (4H, m, 環プロトン), 1.55-0.95 (4H, m, 環プロトン)。
【0337】
実施例17
安定化mPEG-マレイミド、1-N-マレイミドメチル-3-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサンのモデル化合物2-メルカプトエタノールへの結合
【化64】

【0338】
1-(3-2-ヒドロキシエタンメルカプト)-N-スクシンイミジルメチル)-3-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(シスとトランス異性体の混合物)の調製:CH3CN(10ml)中の1-N-マレイミドメチル-3-(メトキシポリ(エチレングリコール)プロピオンアミドメチル)シクロヘキサン(シスとトランス異性体の混合物)(450mg, 0.09mmol)の溶液に、2-メルカプトエタノール(15μl, 0.21mmol)を加えた。この混合物を室温で18時間攪拌させた。真空下で溶媒を除去し、真空下で乾燥した。残渣をエーテル(20ml)で攪拌し、固体をろ過して集め、生成物を白色固体として得た(230mg)。
1H NMR (dmso-d6) δ 7.81 (1H, br s, NH), 4.89 (1H, t, OH), 4.03 (1H, dd, CH-S), 3.51 (PEG骨格とS-CH2CH2), 3.24 (3H, s, CH3), 3.05-2.60 (4H, m, 2xCHCH2), 2.30 (2H, t, CH2C=O), 1.80-1.05 (8H, m, 環プロトン), 0.80-0.51 (2H, m, 環プロトン)。
【0339】
前記説明に示した教示の利点から、本発明が関係する当業者には本発明の多くの変更態様や実施態様が頭に浮かぶであろう。従って、本発明は開示された具体例に限定されるものではなく、変更や他の実施態様は、添付の特許請求の範囲に包含されることを理解されたい。本明細書において具体的な用語が使用されているが、これらは一般的な記述的意味において使用されているのであり、決して限定目的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0340】
【図1A】加水分解安定性環状(2環式および3環式を含む)リンカーを含有する本発明のポリマーマレイミド例の構造を示す。
【図1B】加水分解安定性環状(2環式および3環式を含む)リンカーを含有する本発明のポリマーマレイミド例の構造を示す。
【図2】本発明のある安定化されたポリマーマレイミドを調製するのに有用なジアミン例の構造を提供する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:
【化1】

(式中、
POLYは水溶性ポリマー部分であり、
bは0または1であり、
Xは、少なくとも3つの連続的飽和炭素原子を含む加水分解安定性リンカーである)
を有し、かつ芳香族基およびエステル結合を含まない、水溶性ポリマー。
【請求項2】
Xは、全部で約3〜約20個の炭素原子を有する飽和非環状、環状または脂環式炭化水素鎖である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
Xは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20よりなる群から選択される炭素原子の総数を有する、飽和非環状、環状または脂環式炭化水素鎖である、請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
Xは、約3〜約20、約4〜約12、約4〜約10、および約5〜約8原子よりなる群から選択される総数の炭素原子を有する、飽和非環状、環状または脂環式炭化水素鎖である、請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
Xは、線状の飽和非環状炭化水素鎖である、請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
Xは、分岐した飽和非環状炭化水素鎖である、請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
Xは、マレイミジル基に対して炭素αで分岐している、請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
Xは、マレイミジル基に対して炭素βで分岐している、請求項6に記載のポリマー。
【請求項9】
Xは、マレイミジル基に対して炭素γで分岐している、請求項6に記載のポリマー。
【請求項10】
構造:
【化2】

(式中、
yは1〜約20の整数である;
各場合にR1は、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基であり、かつ
各場合にR2は、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基である)
を有する、請求項5に記載のポリマー。
【請求項11】
各場合にR1とR2は、独立にHであるか、または低級アルキルおよび低級シクロアルキルよりなる群から選択される有機基である、請求項10に記載のポリマー。
【請求項12】
R1とR2は、両方ともHであり、Yは、3、4、5、6、7、8、9、および10よりなる群から選択される、請求項10のポリマー。
【請求項13】
構造:
【化3】

(式中、Cα上のR1またはR2の少なくとも1つは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択され、そしてyは少なくとも1である)を有する、請求項10に記載のポリマー。
【請求項14】
Cα上のR1とR2のそれぞれは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から独立に選択される、請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
すべての他の非Cα R1とR2変数はHである、請求項13に記載のポリマー。
【請求項16】
Cα上のR1またはR2の少なくとも1つは低級アルキルまたは低級シクロアルキルである、請求項13に記載のポリマー。
【請求項17】
Cα上のR2はHである、請求項13に記載のポリマー。
【請求項18】
Cα上のR1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、およびメチレンシクロヘキシルよりなる群から選択される、請求項17に記載のポリマー。
【請求項19】
構造:
【化4】

(式中、R1とR2は、それぞれ独立にアルキルまたはシクロアルキルである)
を有する、請求項13に記載のポリマー。
【請求項20】
構造:
【化5】

(式中、R1はアルキルまたはシクロアルキルであり、そしてR2はHである)
を有する、請求項13に記載のポリマー。
【請求項21】
R1とR2はそれぞれ独立に、メチルまたはエチルである、請求項19に記載のポリマー。
【請求項22】
R1とR2は同じである、請求項19に記載のポリマー。
【請求項23】
該ポリマーは、加水分解的に安定化されたマレイミド環を有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項24】
構造:
【化6】

(式中、R1とR2は、それぞれ独立にH、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択されるが、両方がHではなく、かつyは少なくとも2である)
を有する、請求項8に記載のポリマー。
【請求項25】
R1とR2は、それぞれ独立にH、低級アルキルまたは低級シクロアルキルである、請求項24に記載のポリマー。
【請求項26】
R1とR2は、それぞれ独立にH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシルおよびシクロヘキシルよりなる群から選択される、請求項25に記載のポリマー。
【請求項27】
R2はHである、請求項24に記載のポリマー。
【請求項28】
構造:
【化7】

(式中、Cγに結合したR1とR2の少なくとも1つは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される)を有する、請求項10に記載のポリマー。
【請求項29】
Cγに結合したR1とR2の少なくとも1つは、アルキルまたはシクロアルキルであり、すべての他のR1とR2変数はHである、請求項28に記載のポリマー。
【請求項30】
CαまたはCβに結合したR1変数の1つは、アルキルまたはシクロアルキルであり、そしてすべての他のR1とR2変数はHである、請求項28に記載のポリマー。
【請求項31】
Xは飽和環状または脂環式炭化水素鎖である、請求項2に記載のポリマー。
【請求項32】
Xは、構造:
【化8】

を有し、そして
CYCaは、「a」環炭素を有するシクロアルキレン基であり、ここで「a」の値は3〜12の範囲であり;
pとqは、それぞれ独立に0〜20であり、そしてp+q+a≦20であり、
R1は、各場合に、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基であり、そして
R2は、各場合に、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基である、請求項31に記載のポリマー。
【請求項33】
pとqは、それぞれ独立に0、1、2、3、4、5、6、7、および8よりなる群から選択される、請求項32に記載のポリマー。
【請求項34】
R1は各場合に、独立にHであるか、または低級アルキルもしくは低級シクロアルキルである有機基であり、かつ、R2は各場合に、独立にHであるか、または低級アルキルもしくは低級シクロアルキルである有機基である、請求項32に記載のポリマー。
【請求項35】
aは5、6、7、8、および9よりなる群から選択される、請求項32に記載のポリマー。
【請求項36】
aは6であり、CYCaは1,1-、1,2-、1,3-または1,4-置換シクロヘキシル環である、請求項35に記載のポリマー。
【請求項37】
pとqは、それぞれ独立に0〜4の範囲である、請求項32に記載のポリマー。
【請求項38】
該置換シクロヘキシル環上の置換基はシスである、請求項36に記載のポリマー。
【請求項39】
該置換シクロヘキシル環上の置換基はトランスである、請求項36に記載のポリマー。
【請求項40】
R1とR2はすべての場合にHである、請求項32に記載のポリマー。
【請求項41】
構造:
【化9】

(式中、qとpは、それぞれ独立に0〜6の範囲である)
を有する、請求項34に記載のポリマー。
【請求項42】
qは0〜6の範囲であり、pはゼロである、請求項41に記載のポリマー。
【請求項43】
構造:
【化10】

(式中、qとpは、それぞれ独立に0〜6の範囲であり、かつシクロヘキシレン環上の置換基はシスまたはトランスである)
を有する、請求項34のポリマー。
【請求項44】
CYCaは2環式または3環式である、請求項32に記載のポリマー。
【請求項45】
CYCaは:
【化11】

よりなる群から選択され、そして該環置換基は、2環式または3環式の環上の任意の利用可能な位置に位置する、請求項44に記載のポリマー。
【請求項46】
構造:
【化12】

(式中、
Xとbは上記で定義したものであり、
b'は0または1であり、そして
X'は、少なくとも3つの連続的飽和炭素原子を含む加水分解安定性リンカーである)
を有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項47】
POLYは、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリン、ポリ(アクリロイルモルホリン)、およびポリ(オキシエチル化ポリオール)よりなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項48】
POLYは、ポリ(アルキレンオキシド)である、請求項47に記載のポリマー。
【請求項49】
POLYは、ポリ(エチレングリコール)である、請求項48に記載のポリマー。
【請求項50】
該ポリ(エチレングリコール)は、末端キャッピング成分により末端がキャッピングされている、請求項49のポリマー。
【請求項51】
末端キャッピング成分は、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケニルオキシ、置換アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、置換アルキニルオキシ、アリールオキシ、および置換アリールオキシよりなる群から独立に選択される、請求項50に記載のポリマー。
【請求項52】
末端キャッピング成分は、メトキシ、エトキシ、およびベンジルオキシよりなる群から選択される、請求項51に記載のポリマー。
【請求項53】
ポリ(エチレングリコール)は、公称平均分子量が約100ダルトン〜約100,000ダルトンを有する、請求項49に記載のポリマー。
【請求項54】
ポリ(エチレングリコール)は、公称平均分子量が約1,000ダルトン〜約50,000ダルトンを有する、請求項53に記載のポリマー。
【請求項55】
ポリ(エチレングリコール)は、公称平均分子量が約2,000ダルトン〜約30,000ダルトンを有する、請求項54に記載のポリマー。
【請求項56】
POLYは線状であり、かつポリマーはホモ2官能性である、請求項46に記載のポリマー。
【請求項57】
該ポリ(エチレングリコール)は、線状、分岐型およびV(forked)型よりなる群から選択される構造を有する、請求項49に記載のポリマー。
【請求項58】
ポリ(エチレングリコール)は、構造:
Z-(CH2CH2O)n-CH2-CH2-
(式中、nは約10〜約4000であり、Zは、ヒドロキシ、アミノ、エステル、炭酸塩、アルデヒド、アルデヒド水和物、アセタール、ケトン、ケトン水和物、ケタール、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、チオール、カルボン酸、イソシアネート、イソチオシアネート、ヒドラジド、尿素、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、アルコキシ、ベンジルオキシ、シラン、脂質、リン脂質、ビオチン、およびフルオレセインよりなる群から選択される成分を含む)を含む、請求項26のポリマー。
【請求項59】
構造:
【化13】

(式中、
dは3〜約100の整数であり、かつ
Rは、3またはそれ以上のヒドロキシル基、アミノ基、またはこれらの組合せを有する中心のコア分子の残基である)に対応する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項60】
dは3〜約12の整数である、請求項59に記載のポリマー。
【請求項61】
POLYは、複数アーム部分である請求項1のポリマー部分であって、そして該ポリマーは、構造:
【化14】

(式中、
PEGは-(CH2CH2O)nCH2CH2-であり、
Mは:
【化15】

であり、mは3、4、5、6、7および8よりなる群から選択される)
に対応する、上記ポリマー。
【請求項62】
構造:
【化16】

(式中、
POLYは、水溶性ポリマー部分であり、
bは0または1であり、
Xは、少なくとも3つの連続的な飽和炭素原子を含む加水分解安定性リンカーである)
を有し、
芳香族基およびエステル結合を含まない、水溶性ポリマー。
【請求項63】
Xは、全部で約3〜約20個の炭素原子を有する飽和非環状、環状または脂環式炭化水素鎖である、請求項62に記載のポリマー。
【請求項64】
Xは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20よりなる群から選択される炭素原子の総数を有する飽和非環状、環状または脂環式炭化水素鎖である、請求項62に記載のポリマー。
【請求項65】
Xは、約3〜約20、約4〜約12、約4〜約10、および約5〜約8原子よりなる群から選択される炭素原子の総数を有する、飽和非環状、環状または脂環式炭化水素鎖である、請求項64のポリマー。
【請求項66】
Xは、線状の飽和非環状炭化水素鎖である、請求項63に記載のポリマー。
【請求項67】
Xは、分岐した飽和非環状炭化水素鎖である、請求項63に記載のポリマー。
【請求項68】
Xは、マレイミジル基に対して炭素αで分岐している、請求項67に記載のポリマー。
【請求項69】
Xは、マレイミジル基に対して炭素βで分岐している、請求項67に記載のポリマー。
【請求項70】
Xは、マレイミジル基に対して炭素γで分岐している、請求項67に記載のポリマー。
【請求項71】
構造:
【化17】

(式中、
yは1〜約20の整数である;
各場合にR1は、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機ラジカルであり、かつ
各場合にR2は、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機ラジカルである)
を有する、請求項63に記載のポリマー。
【請求項72】
Xは、飽和環状または脂環式炭化水素残基である、請求項62に記載のポリマー。
【請求項73】
Xは、構造:
【化18】

を有し、そして
CYCaは、「a」環炭素を有するシクロアルキレン基であり、ここで「a」の値は3〜12の範囲であり;
pとqは、それぞれ独立に0〜20であり、そしてp+q+a≦20であり、
R1は、各場合に、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基であり、そして
R2は、各場合に、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基である、請求項72のポリマー。
【請求項74】
pとqは、それぞれ独立に0、1、2、3、4、5、6、7、および8よりなる群から選択される、請求項73に記載のポリマー。
【請求項75】
R1は各場合に、独立にHであるか、または低級アルキルもしくは低級シクロアルキルである有機基であり、かつ、R2は各場合に、独立にHであるか、または低級アルキルもしくは低級シクロアルキルである有機基である、請求項73に記載のポリマー。
【請求項76】
aは5、6、7、8、および9よりなる群から選択される、請求項73のポリマー。
【請求項77】
aは6であり、CYCaは1,1-、1,2-、1,3-または1,4-置換シクロヘキシレン環である、請求項76のポリマー。
【請求項78】
構造:
【化19】

(式中、pとqは、それぞれ独立に0〜6の範囲であり、そして該シクロヘキシレン環上の置換基はシスまたはトランスである)
を有する、請求項77に記載のポリマー。
【請求項79】
構造:
【化20】

(式中、pとqは、それぞれ独立に0〜6の範囲であり、そして該シクロヘキシレン環上の置換基はシスまたはトランスである)
を有する、請求項77に記載のポリマー。
【請求項80】
CYCaは2環式または3環式である、請求項73に記載のポリマー。
【請求項81】
マレイミド末端ポリマーを生成する方法であって:
a. POLY-[O]b-C(O)-LG (IX)とNH2-X-NH2 (XII)を、POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH2 (X)が生成するのに有効な条件下で反応させ、そして
b. POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH2 (X)をPOLY-[O]b-C(O)-HN-X-MAL (II)に変換する工程を含む上記方法
(式中、
POLYは水溶性ポリマー部分であり、
bは0または1であり、
Xは、少なくとも3つの連続的飽和炭素原子を含む加水分解安定性リンカーであり、
LGは脱離基であり、
MALはマレイミドであり、
そして、該マレイミド末端ポリマーは、芳香族基およびエステル結合を含まない)。
【請求項82】
LGは、ハロゲン化物、N-ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、パラ−ニトロフェノレートよりなる群から選択される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
該NH2-X-NH2試薬中の該アミノ基の1つは、保護された形である、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
該反応工程は、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、およびジメチルスルホキシドよりなる群から選択される有機溶媒中で行われる、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
該反応工程は不活性雰囲気中で行われる、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
該反応工程は約0〜100℃の範囲の温度で行われる、請求項81に記載の方法。
【請求項87】
該反応工程は、トリエチルアミン、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、および炭酸ナトリウムよりなる群から選択される塩基の存在下で行われる、請求項81の方法。
【請求項88】
該反応工程後に、POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH2中のアミノ基を脱保護することをさらに含む、請求項83に記載の方法。
【請求項89】
該変換工程前に、工程(a)からの生成物を精製する工程を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項90】
該精製は、カラムクロマトグラフィーにより生成物を精製することを含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
該精製は、イオン交換クロマトグラフィーにより生成物を精製することを含む、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
該変換工程は、POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH2を、N-メトキシカルボニルマレイミド、エキソ-7-オキサ[2.2.1]ビシクロヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、および無水マレイン酸よりなる群から選択される試薬と、反応混合物中でPOLY-[O]b-C(O)-H2N-X-MALを生成するのに適した条件下で反応させることを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項93】
該試薬はN-メトキシカルボニルマレイミドであり、そして該変換工程は、水、または水と水に混合可能な溶媒の水性混合物中で行われる、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
請求項92の方法であって、該試薬は無水マレイン酸であり、該変換工程は、POLY-[O]b-C(O)-NH-X-NH-C(O)CH=CHCOOH(XI)を中間体として生成するのに有効な条件下で、POLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH2と無水マレイン酸を反応させることを含み、そして該方法はさらに:
水を除去することにより環化を促進するのに有効な条件下でPOLY-[O]b-C(O)-H2N-X-NH-C(O)CH=CHCOOHを加熱してPOLY-[O]b-C(O)-NH-X-MALを生成することを含む、方法。
【請求項95】
反応混合物からPOLY-[O]b-C(O)-H2N-X-MALを回収することをさらに含む、請求項92に記載の方法。
【請求項96】
回収されたPOLY-[O]b-C(O)-H2N-X-MALは、約80%を超える純度を有する、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
Xは、全部で約3〜約20個の炭素原子を有する飽和非環状、環状または脂環式炭化水素鎖である、請求項81に記載の方法。
【請求項98】
Xは、線状の飽和非環状炭化水素鎖である、請求項81に記載の方法。
【請求項99】
Xは、分岐した飽和非環状炭化水素鎖である、請求項81に記載の方法。
【請求項100】
Xは、マレイミジル基に対して炭素αで分岐している、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
Xは、マレイミジル基に対して炭素βで分岐している、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
Xは、マレイミジル基に対して炭素γで分岐している、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
請求項81の方法であって、該NH2-X-NH2は構造:
【化21】

(式中、
yは1〜約20の整数である;
各場合にR1は、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基であり、かつ
各場合にR2は、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基である)
に対応する、上記方法。
【請求項104】
請求項81の方法であって、該NH2-X-NH2は構造:
【化22】

に対応し、そして
CYCaは、「a」環炭素を有するシクロアルキレン基であり、ここで「a」の値は3〜12の範囲であり;
pとqは、それぞれ独立に0〜20であり、そしてp+q+a≦20であり、
R1は、各場合に、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基であり、そして
R2は、各場合に、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基である、上記方法。
【請求項105】
生物活性物質と請求項1に記載のポリマーとの反応により生成される結合体。
【請求項106】
以下の構造を含む結合体:
【化23】

(式中、
POLYは水溶性ポリマー部分であり、
bは0または1であり、
Xは、少なくとも3つの連続的飽和炭素原子を含む加水分解安定性リンカーであり、
「POLY-[O]b-C(O)-NH-X-」は、芳香族基およびエステル結合を含まず、そして
「-S-生物活性物質」は、チオール(-SH)基を含む生物活性物質である)。
【請求項107】
該組成物は単一のポリマー結合体物質を含む、請求項106の結合体を含む組成物。
【請求項108】
以下の構造を含む結合体:
【化24】

(式中、
POLYは水溶性ポリマー部分であり、
bは0または1であり、
Xは、少なくとも3つの連続的飽和炭素原子を含む加水分解安定性リンカーであり、
「POLY-[O]b-C(O)-NH-X-」は、芳香族基およびエステル結合を含まず、そして
「-NH-生物活性物質」は、アミノ基を含む生物活性物質である)。
【請求項109】
ポリマー結合体を生成する方法であって、反応性チオール基を含む生物活性物質「HS-生物活性物質」と請求項1のポリマーを、構造:
【化25】

を有するポリマー結合体の生成を促進するのに有効な条件下で接触させることを含む、上記方法。
【請求項110】
該接触工程は、約6.0〜約8.0の範囲のpHで行われる、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
該ポリマー結合体は反応混合物中で生成され、そして該方法は、該接触工程後に、該反応混合物から該ポリマー結合体を単離することをさらに含む、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
請求項1に記載の水溶性ポリマーを使用して生成されるヒドロゲル。
【請求項113】
請求項59に記載の水溶性ポリマーを使用して生成されるヒドロゲル。
【請求項114】
請求項61に記載の水溶性ポリマーを使用して生成されるヒドロゲル。
【請求項115】
以下の構造を有する水溶性ポリマー:
【化26】

(式中、
POLYは水溶性ポリマー部分であり、
Xは、全部で約3〜約20個の炭素原子を有する飽和環状または脂環式炭化水素鎖である加水分解安定性リンカーであり、
そして
該ポリマーは芳香族基とエステル結合を含まない)。
【請求項116】
請求項115のポリマーであって、Xは構造:
【化27】

を有し、そして
CYCaは、「a」環炭素を有するシクロアルキレン基であり、ここで「a」の値は3〜12の範囲であり;
pとqは、それぞれ独立に0〜20であり、そしてp+q+a≦20であり、
R1は、各場合に、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機ラジカルであり、そして
R2は、各場合に、独立にHであるか、またはアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルキレンシクロアルキル、および置換アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基である、上記ポリマー。
【請求項117】
pとqは、それぞれ0、1、2、3、4、5、6、7、および8よりなる群から独立に選択される、請求項116に記載のポリマー。
【請求項118】
請求項116のポリマーであって、R1は、各場合に、独立にHであるか、または低級アルキル、低級シクロアルキル、および低級アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基であり、そして、R2は、各場合に、独立にHであるか、または低級アルキル、低級シクロアルキル、および低級アルキレンシクロアルキルよりなる群から選択される有機基である、上記ポリマー。
【請求項119】
aは、5、6、7、8、および9よりなる群から選択される、請求項116のポリマー。
【請求項120】
CYCa上の置換基はシスである、請求項116のポリマー。
【請求項121】
CYCa上の置換基はトランスである、請求項116のポリマー。
【請求項122】
aは6であり、CYCaは1,1-、1,2-、1,3-または1,4-置換シクロヘキシル環である、請求項119のポリマー。
【請求項123】
pとqはそれぞれ独立に、0〜4の範囲である、請求項116のポリマー。
【請求項124】
R1とR2はすべての場合にHである、請求項116のポリマー。
【請求項125】
以下の構造を有する請求項116のポリマー:
【化28】

(式中、qとpはそれぞれ独立に、0〜6の範囲である)。
【請求項126】
qは0〜6の範囲であり、pはゼロである、請求項116のポリマー。
【請求項127】
以下の構造を有する請求項116のポリマー:
【化29】

(式中、qとpはそれぞれ独立に、0〜6の範囲である)。
【請求項128】
CYCaは2環式または3環式である、請求項116のポリマー。
【請求項129】
CYCaは:
【化30】

よりなる群から選択され、該環置換基は、2環式または3環式の環上の任意の利用可能な位置で存在する、請求項116のポリマー。
【請求項130】
マレイミド末端ポリマーを生成する方法であって:
a. POLY-[O]b-C(O)-LG とH2N-X-MALを、POLY-[O]b-C(O)-HN-X-MALを生成するのに有効な条件下で反応させる工程を含む上記方法
(式中、
POLYは水溶性ポリマー部分であり、
bは0または1であり、
Xは、少なくとも3つの連続的飽和炭素原子を含む加水分解安定性リンカーであり、
LGは脱離基であり、
MALはマレイミドであり、
そして、該マレイミド末端ポリマーは、芳香族基およびエステル結合を含まない)。

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−512445(P2006−512445A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564914(P2004−564914)
【出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/041699
【国際公開番号】WO2004/060965
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(503197027)ネクター セラピューティクス アラバマ,コーポレイション (16)
【Fターム(参考)】