説明

加水燃料燃焼装置

【課題】 灯油等の化石燃料に加水して生成した混合液体を、十分な熱量を得られる燃料として使用できる燃焼装置を提供する。
【解決手段】 燃焼装置1の容器構造10の外殻壁内部に形成され、外部から供給された空気を、内部の燃焼空間5まで通過させることで、予熱して高温空気を供給する外殻マニホールド11と、燃焼空間5の上部をほぼ占有するように容器10内に収容された蓄熱体ブロック6と、容器10内に配管され、分岐した各配管の下端部が燃焼空間5に突出した分岐燃料配管16とを備えた燃焼装置からなる。高温の蓄熱部を経由することで、燃料配管16内を流れるエマルジョン燃料から高温状態の水素ガスを生成させ、燃焼空間5内に水素ガスを含有する可燃ガスを噴出させるとともに、空気供給経路13から燃焼空間5に噴出された高温空気と可燃性ガスとを混合し、連続燃焼させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加水燃料燃焼装置に係り、灯油等の化石燃料に加水して生成した混合燃料を、蓄熱された高温雰囲気を通過させることで燃焼用水素を発生させて、その水素を燃料の一部として利用するようにした加水燃料燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、灯油等の精製された液体燃料をそのまま燃焼させる燃焼方式に代えて、乳化剤等を添加して水を所定の割合で石油等に混合してエマルジョン化して生成した混合燃料が提案されている(特許文献1,特許文献2)。特許文献1に開示されたエマルジョン燃焼装置は、それぞれタンクに貯留された灯油、水、界面活性剤をミキサに供給し、ミキサで撹拌してエマルジョン化し、このエマルジョン燃料を、コンプレッサによって圧縮空気とともにバーナー内のノズルから噴射して燃焼させる構造からなる。このとき、パイロット燃料として灯油を同様にコンプレッサによって圧縮空気とともにノズルから噴射して、エマルジョン燃料の種火の役割を果たしている。
【0003】
特許文献2に開示されたエマルジョン燃料は、有機性廃棄物を炭化して粒径30μm以下に微粉砕したマイクロパウダーと、灯油等の液体化石燃料と、水と、界面活性剤とを混合してなる。マイクロパウダーの表面に形成された微細孔のため、加水率を大幅に向上させても安定したエマルジョン燃料が得られるとしている。エマルジョン燃料は燃焼室内にメインノズルから噴射され、その近傍には補助ノズルが配置され、メインノズルから噴射されたエマルジョン燃料の燃焼を補助するようになっている。また、燃焼室内には複数の空気ノズルが設けられ、燃焼室内に空気供給が図られている。このエマルジョン燃料の燃焼時のマイクロパウダーの作用として、未燃分のマイクロパウダーの炭素が高温水性ガスと反応して、一酸化炭素と水素ガスを発生し、水素ガスが可燃分として寄与することにより、燃焼熱量が大きくなり、液体化石燃料の使用を節約することができる。
【特許文献1】特開2000−320809公報
【特許文献2】特開2007−119506
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたエマルジョン燃料の燃焼装置は、ボイラーのバーナー部分に位置した燃料噴射ノズルを配置し、それぞれの噴射ノズルから圧縮空気を利用して種火用の灯油、主燃料としてのエマルジョン燃料を噴射し、燃焼させるようになっている。したがって、各種の燃料供給ポンプ、コンプレッサ等の動力設備を必要とするため、燃焼装置の小型化が困難で、かつ各設備を動作させるための電力源等を必要とする。このため、単独の燃焼装置としての利用が難しい。また、目的がボイラーの燃焼装置であるため、燃焼装置自体が蓄熱機能を有さず、燃焼時の用途がきわめて限定されている。
【0005】
特許文献2に開示されたエマルジョン燃料は、有機性廃棄物を炭化して粒径30μm以下に微粉砕したマイクロパウダーを含有することを必須構成としている。したがって、連続燃焼を行うためには、燃料供給装置として、液体燃料に加えて粉体としてのマイクロパウダーを供給する装置が必要となってくる。また、燃焼装置の機能としては、液体燃料にマイクロパウダーがガス状態として加熱変化し、そのうちの水素ガスが可燃分として利用することで燃焼効率を向上が図れることを特徴としている。しかし、この水素ガス生成反応では、エマルジョン燃料中の水が水蒸気化してマイクロパウダー中の炭素と水性ガス反応することで一酸化炭素も発生する。したがって、発生した一酸化炭素を完全燃焼させる設備が必要となってくる。このように、特許文献2に開示されたマイクロパウダーを含有したエマルジョン燃料を使用する燃焼装置は、各種の付加的な装置を必要とする。そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、灯油等の液体化石燃料に加水したエマルジョン燃料を、蓄熱された装置内に供給して経路内で高温化することにより、水素ガスを抽出して、水素ガスを燃料化することにより、液体燃料の使用比率を十分小さくできる加水燃料燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明として、燃焼装置の容器構造の外殻壁の内部空間に形成された、外部から供給された空気を管端部管バーナー位置まで送気する外殻マニホールドと、該外殻マニホールドの接続口に基部が連通し、該基部から前記容器構造空間の周方向に沿って複数本の分岐空気供給管が配設され、該管内を通過する供給空気を高温予熱し、前記管端部バーナー位置まで空気を供給する空気供給経路と、容器構造空間内に配管された分岐燃料配管を有し、外部の燃料貯留部から供給され、前記容器構造空間内を通過する際に、管内を流れる燃料を高温化し、前記空気供給管の管端部バーナー位置に接続し連通され、高温状態で燃料が可燃性ガスを生成し、前記バーナー位置近傍で空気と混合させる燃料供給経路とを備え、前記空気供給管端部バーナー位置から前記容器構造空間内の燃焼空間にガス噴出し、前記混合された可燃性ガスを連続燃焼させることを特徴とする。
【0007】
前記燃焼空間内にセラミックス蓄熱体ブロックを収容し、燃焼時に該蓄熱体ブロックを高温化し、燃焼空間内温度を高温保持させることが好ましい。
【0008】
前記燃料は、化石燃料1重量部に水7〜9重量部を添加し、乳化剤によりエマルジョン燃料として、前記燃料供給経路に導入させることが好ましい。
【0009】
前記燃料および空気は前記燃料装置の容器構造空間内で1000℃〜1600℃まで高温化することが好ましい。
【0010】
第2の発明として、燃焼装置の容器構造の外殻壁内部に形成された空間に形成され、外部から供給された空気を燃焼部まで供給する壁体内空気供給経路を有し、前記容器構造の内面壁下部に形成された多孔配設面を有する燃焼空間に、前記壁体内に導入され通過する供給空気を高温予熱して空気を供給する外殻マニホールドと、前記容器構造空間の燃焼空間の上部をほぼ占有するように、所定の隙間をあけて複数段をなして設けられた蓄熱体ブロックと、該蓄熱体ブロックの平面縦横に配列され、厚さ方向に形成された複数の貫通孔内に、分岐された各管がそれぞれ挿通され下端部が前記燃焼空間に突出した分岐燃料配管からなり、外部の燃料貯留部から供給され、前記管内を流れる燃料を高温化し、高温状態の可燃性ガスを生成し、前記燃焼空間内に可燃性ガスを噴出する燃料供給経路とを備え、前記容器構造空間内の燃焼空間で、前記壁体内空気供給経路から前記燃焼空間に噴出された高温空気と前記可燃性ガスとを混合し、連続燃焼させることを特徴とする。
【0011】
前記燃料は、化石燃料1重量部に水7〜9重量部を添加し、乳化剤によりエマルジョン燃料として、前記燃料供給経路に導入させることが好ましい。
【0012】
前記可燃ガスおよび空気は1000℃〜1600℃まで高温化され、前記燃焼空間内で混合燃焼させることが好ましい。
【0013】
前記燃料は、燃焼装置内に配管された空気供給管の一部に連通接合させた気液混合構造において、混合ガス化させることが好ましい。
【0014】
燃料貯留部から燃焼装置までの経路上に、分岐により切替可能なスタータ燃料の供給部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上述した各発明によれば、灯油等の化石燃料に対して数倍の水を加水して高温化してガス化した燃料を燃焼させることで、化石燃料そのままで得られる燃焼熱量を大幅に上回る熱量を発現し、燃焼装置として、また熱量蓄熱体として著しく熱効率の良い燃焼装置を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の加水燃料燃焼装置の実施するための最良の形態として、以下の実施例について添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施例の加水燃料燃焼装置の内部構成、および燃料、空気の供給系統を模式的に示した断面図および燃焼システムの構成図である。
【0018】
図1に示された加水燃料燃焼装置1は、蓄熱燃焼装置本体10(以下、燃焼装置10と記す。)と、燃焼装置10の外殻マニホールド11の底板17からその内部に空気を送気する空気供給部30、燃焼装置10の燃料供給経路16を介してエマルジョン燃料を、分岐配管の管端部に位置するバーナー部16bに分配供給する燃料供給部40とから構成されている。
【0019】
本実施例の燃焼装置10は、直径30cm、高さ25cmの、上方が開放されたステンレス鋼(SUS310S)製の円筒形容器形状をなし、容器の外形を構成する円筒形状体の外殻マニホールド11と、外殻マニホールド11とつなぎパイプ12を介して連通された分岐送気配管13と、容器内の燃焼空間5内に収容された導入管19と、導入管19の管端部が接続された環状分岐管14と、この環状分岐管14から放射状に延在し、外殻マニホールド11との間の空間で、上方から下端のバーナー部16bの背面まで多条の螺旋状をなして密に巻回された分岐燃料配管16と、分岐送気配管13と導入管19との間の空間に充填された、複数の大小数種に形状、寸法が異なったブロック形状からなるセラミックス材質の蓄熱体ブロック6とから構成されている。
【0020】
以下、各構成部材の詳細について図2〜図4を参照して説明する。
外殻マニホールド11は、図1,図2に示したように、燃焼装置10の容器の一部であって、内部構造の機能として空気供給経路を構成するものである。具体的には厚さ2mmのステンレス鋼を加工した外壁11aと内壁11bとの間の空間厚さが20mmで、その中央に上端が天板に接しない程度に、折り返し流通部11dを設け、上下方向に流れる往復流路が形成する中間壁11cと、中間壁11cの底部と一体化した円板状の中間底板17bが内部に設けられた円筒容器構造からなる。そして外側底板17aの中心位置には開口が設けられ、この開口に空気供給部30の送気管端33aが連通されている。さらに内側底板17cの中央位置にも開口が設けられ、この開口には、図4(a),(b)に示した十字形状の分配管13eへのつなぎパイプ12が連通されている。各分岐送気配管13の外側端は、図2に示したように、3本のフォーク歯状をなした分岐送気縦管13になっている。3本の分岐送気縦管13のうち、中央管13aは上り経路で、上端で両側に向けて二又に分岐し、下方に向かう2本の下り経路13b,13cとなっている。本実施例では、4本の十字形の分配管13eの端部にはそれぞれ分岐送気縦管13が連結され、各分岐送気縦管の下り経路13b,13cは図4(a)、(b)に示したように、周方向に45°の間隔をなして8本が配置されている。そして各下り経路13b,13cの下端(管端部)には、燃焼空間5に向くバーナー孔18が形成されている。この空気供給経路としてのステンレスパイプに代えて、流路方向を所定方向に規制可能な多孔質セラミックス部材を使用することもできる。セラミックス部材としては微細な連続空隙と、独立空隙とが混在して形成された多孔質構造のものが好適である。発泡形成することで部材全体にわたり、微細空隙を設けることができる。ステンレスパイプあるいは上述した多孔質セラミックス部材中は、その内部に高温ガスを通過させる際に、高温ガスを水素ガスに熱分解する触媒効果を果たすと考えられる。特にセラミックス部材は、低温触媒効果を期待できる。
【0021】
空気供給経路30の構成について、図1,図2を参照して説明する。空気供給経路30は、外気吸入方式からなり、一端が外気に開放された送気管32の経路の中間位置に設備されたブロア31により、燃焼装置10の外側底板17aに連結された送気管33から外殻マニホールド11内に燃焼用の空気を供給する。このときブロア31は操作部32での制御により、送気量を可変とすることで、燃焼時の火力調整を行うことができる。
【0022】
燃料供給部40は、たとえば図1に示したように、燃料タンク41と、燃料タンク41から燃焼装置10まで連通した燃料供給ホース42と、燃料供給ホース42の中間位置に設けられた切替コック43で分岐可能な、燃焼装置10にスタータ燃料(タンク44内)を供給する初期燃料供給ホース45とで構成されている。本発明では燃料タンク41内には、質量比(重量比)が灯油1:水7〜9の割合で、少量の界面活性剤としての乳化剤を添加して乳化(エマルジョン化)した加水燃料(以下、エマルジョン燃料)が貯油されている。このエマルジョン燃料は、計量された灯油、水、乳化剤をタンク41内に蓄え、タンク41に装備された撹拌機47の撹拌プロペラ47aにより撹拌して乳化させるようになっている。スタータ燃料としては、灯油の他、プロパンガス等を燃焼装置10内に供給して、予熱燃焼させて燃焼装置10内の燃料供給経路30や蓄熱体ブロック6を所定の高温度まで暖め、エマルジョン燃料が燃料供給経路をバーナー孔18まで通過する間にガス化させる。そして、エマルジョン燃料の一部が水素ガス化した状態で、バーナー孔18のノズル16b近傍で供給空気と混合され、燃焼空間5内で連続燃焼させることができる。本発明では、灯油等の化石燃料に対しての加水割合は1:7〜9を想定している。また、化石燃料として灯油がもっとも取り扱いやすいが、灯油の他、軽油、各種重油等も加水割合を変更して用いることができる。
【0023】
実施例での燃焼装置10の内部温度状態について説明する。スタータ燃料によって行われる燃焼装置10の加熱(予熱)は、分岐燃料配管と分岐送気縦管とが位置する燃焼空間5において、初期運転温度として約1000℃以上となるまで行う。そして、炉内温度が1600℃以上となり、分岐燃料配管16と分岐送気縦管13自体がそれぞれその雰囲気温度によって加熱され、それぞれの管内を通過するエマルジョン燃料と空気の温度が1000℃以上となった状態でバーナー孔18のノズル部分で急激に混合した直後に燃焼空間5に向けて火炎が方向性をもって噴き出す。この火炎は燃焼空間5内に設置された導入管19、蓄熱体ブロック6に直接及ぶが、導入管19、蓄熱体ブロック6ともに十分な耐熱性材料を使用しているため、火炎に曝されても劣化することはない。
【0024】
ここで、本発明の燃焼装置10のエマルジョン燃料を用いた燃焼メカニズムを把握するための燃料サンプリングについて図5を参照して説明する。
【0025】
図5は燃料が高温化して発生した可燃性ガスの成分分析用のサンプリング部を示している。このサンプリング部は、分岐送気縦管の下端のバーナー孔18と、分岐送気縦管13b(13c)内に先端が挿通された分岐燃料配管16の一部と分岐燃料配管16のT字形分岐部16Tと、T字形分岐部16Tから燃焼装置10の外殻マニホールド11の一部を貫通して引き出され、先端に発生ガスを捕集するためのサンプリングバッグ7(図中、仮想線で表示)の捕集口に接続可能なガス排出管16sとから構成されている。図5では、燃焼装置10において、分岐燃料配管16の先端から発生するガスが分岐送気縦管13b(13c)内で圧送されてきた空気と混合しつつ、分岐送気縦管13b(13c)の下端のバーナー孔18から所定の噴出圧で火炎が燃焼空間5に向けて噴き出している状態が示されている。このとき分岐燃料配管16と分岐したガス排出管16sからは、T字形分岐部16Tにおいて、バーナー孔18側に送られるガスと同一組成のガスが分離してサンプリングバッグ7内に送気される。このガスは具体的には、エマルジョン燃料が1600℃以上の高温雰囲気内の分岐燃料配管16を通過する際に生成された可燃性の水素ガスである。このように、エマルジョン燃料は高温雰囲気を通過した際に、水素ガスを生成し、その水素ガスが空気と混合され、バーナー孔18から噴出する際に激しく燃焼する。なお、図1〜図5において、バーナー孔18と分岐燃料管の先端ノズル16bとは燃焼空間に向けて直交したように図示されているが、このノズル角度は燃料噴出方向と、空気送気方向とが同軸的であり、燃焼空間5に向けて噴出可能であれば、ノズル角等は適宜設定できることはいうまでもない。
【0026】
本実施例では、燃焼装置10内の燃焼空間5内温度が1600℃以上の高温雰囲気において、上述のサンプリング方法でガスサンプリングを行った。その結果、捕集した1000℃以上の高温ガス内に水素ガスは少なくとも45%程度の濃度で含有していることがガスクロマトグラフィ測定により確認された。この水素ガスの含有量は、気体温度が高熱になるほど水素化合が進行し、より高濃度になり、燃焼装置10は高カロリーの熱量を発生することができる。具体的な測定値として、温度約650℃の採取ガスの熱量が燃料単体燃焼時の約2.6倍に達した。これは、高温雰囲気でエマルジョン燃料がガス化した際に、およその重量割合で、40重量%の水素ガスと、20重量%の一酸化炭素と、40重量%の水蒸気とに熱分解した結果と想定できる。
【0027】
図6、図7は、第2の発明の実施例としての加水燃料燃焼装置50の内部構成、および燃料、空気の供給系統を模式的に示した断面図および燃焼システムの構成図である。
【0028】
加水燃料燃焼装置50は、図7に示したように、蓄熱燃焼装置50本体(以下、同様に燃焼装置50と記す。)と、燃焼装置50の外殻マニホールド51の底板54からその内部に空気を送気する空気供給部30、燃焼装置50の燃料供給経路を介してエマルジョン燃料を分岐配管のバーナー部に分配供給する燃料供給部40とから構成されている。
【0029】
本実施例の燃焼装置50は、平面の一辺が37cm、高さ47cmの、上方が開放されたステンレス鋼(SUS310S)製の略立方体容器形状をなし、容器の側壁面内で所定の離れを開けて三重壁を構成する箱形状の外殻マニホールド51と、容器の上端中央に配置された、平面視してH字形分配管53Aの四隅に連結され、さらに小さな4箇所のH字形分配管53Bの、合計16箇所の各分岐部から、それぞれ4本ずつが鉛直下向きに延設された64本の分岐燃料配管16と、外殻マニホールド51の内空部に、吊りロッド55を介して高さ方向に所定間隔をあけて積層された扁平厚板ブロックからなるセラミックス材質の蓄熱体ブロック52とから構成されている。蓄熱体ブロック52の上面には貫通孔52aが一定の間隔をあけて縦横(8×8)に形成されている。各貫通孔52aの直径は、前述した64本の分岐燃料配管16が鉛直方向に十分な余裕をもって貫通可能な寸法(本実施例ではφ20mm)に設定されている。
【0030】
以下、各構成部材の詳細について図6,図7を参照して説明する。外殻マニホールド51は、図1,図2に示したタイプと同様の壁体構造の一部で構成され、その壁体内に燃焼装置50の空気供給経路30を構成するものである。本実施例の外殻マニホールド51は、図7に断面形状を示したように、具体的には厚さ2mmのステンレス鋼を加工した外壁51aと内壁51bとの間の流路幅が10mmで、その中央に上端が天板に接しない程度に流通部51dを設けた中間壁51cと中間壁51cの底部と一体化した正方形状の中間底板54cが底板54内部に設けられた、略立方体容器構造からなる。そして外側底板54aの中心位置には開口が設けられ、この開口に空気供給部30の送気管33の端部が連通されている。さらに、図6に示したように、内側底板54dと、内面壁の底面側の1/4の範囲51dとが、他の壁体と同材質(ステンレス鋼)パンチングメタルで構成され、底面全体54dと内面壁下部51dの全周から燃焼空間5に均一な空気流が供給可能な空気供給部が構成されている。
【0031】
空気供給経路30の作用について、図7を参照して説明する。空気供給経路30は、上述したように、外殻マニホールド51内の中間壁51cで仕切られた外側経路から内側経路を通過し、内面壁下部51dの全周及び内側底板全面54dから高温空気が燃焼空間5内に供給される。このときブロア31の操作部(図示せず)での制御により、送気量を可変とすることができる。
【0032】
本実施例も燃料供給部40は、燃料タンク41と、燃料タンク41から燃焼装置50まで連通した燃料供給ホース42と、燃料供給ホース42の中間位置に設けられた切替コック43で、燃焼装置50にスタータ燃料(タンク44内)を供給する初期燃料供給ホース45とで構成されている。燃料タンク41内には、第1発明と同様に、質量比が灯油1:水7〜9の割合で、少量の乳化剤を添加して乳化(エマルジョン化)した加水燃料(以下、エマルジョン燃料)が貯油されている。またスタータ燃料も第1実施例と同等品が用いられている。
【0033】
第2の発明の実施例としての燃焼装置50内の燃料供給系統の構成について、図6,図7を説明する。図6に示したように、分岐燃料配管53は、多数本のステンレスパイプ53を分岐して接合した構成からなり、上述したように、大小複数のH字形をなす平面分配部53A,53Bの各端部から下端に開口が位置する、鉛直方向に延在する64本の燃料供給縦管56(本実施例では各管の長さ350mm、φ10mm)の束からなる。ポンプ圧送により供給中央部に接続された燃料供給管42から供給されるエマルジョン燃料は、さらに各管に細分配されるようになっている。この燃料供給縦管56の四隅には、吊りロッド貫通孔(図示せず)が形成されている。一方、吊りロッド55は、図7に示したように、外殻マニホールド51の上端に固定された支持プレート58を支持点として外殻マニホールド51の内面壁にわずかな離れをあけて鉛直に取り付けられ、その吊りロッド55で3段の蓄熱体ブロック52を、高さ方向に所定の間隔をあけて燃焼装置50の内部空間に吊持する。そして、各蓄熱体ブロック52に形成された縦横の64個の貫通孔52a(φ20mm)のすべてに、64本の燃料供給縦管56が鉛直方向に挿通されるようになっている。このとき、図6,図7に示したように、燃焼装置50の内部空間には蓄熱体ブロック52の最下段と内側底板54dとの間に、燃焼空間5が形成されており、燃料供給縦管56の下端56aは、この燃焼空間5内に所定長さ分が突出する。また、燃焼空間5の周面51d、54dは、上述したように、それぞれ耐熱性のパンチングメタルで形成されている。このため、燃焼空間5において、燃焼用の高温空気は、図7に示しように、側方および下面から噴出し、燃料供給縦管56から下方に向けて噴出するガス(水素ガス)と混合され、激しく燃焼することができる。燃焼時に燃焼空間5が高熱になり、各段の蓄熱体ブロック52もそれぞれ熱せられる。これにより、燃焼装置50自体の蓄熱が図られるとともに、これらの蓄熱体ブロック52内を貫通する燃料供給管内の燃料がガス化し、特に水素ガスを含有した可燃ガスとして燃焼空間5に供給され、連続燃焼が可能となる。
【0034】
以上の説明では、燃料として、あらかじめ燃料タンク41(たとえば図1,図7参照)内で、燃料として灯油と、灯油を希釈する水とを、乳化剤を用いてエマルジョン化して、それを燃料として供給した。しかし、燃料装置内で、すでに高温化した空気の供給管内に、燃料供給管の端部を各種の開口先端形状で連通させ、燃料供給管から所定の噴出圧で灯油等の燃料を高温空気流内に噴出させるさせることで、開口から噴出した霧状の燃料と高温空気とが急速に混合してガス化する。このときに上述したように、ガスは、可燃性の水素ガスを多く含有し、ガス供給により燃焼装置を連続燃焼させることができる。
【0035】
以下、燃料供給管16と空気供給管13との連通接合部の形状例について、図8各図を参照して説明する。図8(a)は、所定径の空気供給管13の屈曲部13Lに対して屈曲後の直管13hの管軸方向と同軸的に細径の燃料供給管16の先端を挿入するように接合し、燃料供給管の先端周面に小径円孔16h、16h…を縦横に配列して各円孔16hからの噴出を可能にし、燃料供給管16の先端で、高温空気とガスの混合を実現し、可燃ガスGとして供給されるようになっている。図8(b)は、同図(a)と同形状の空気供給管の屈曲後の直管13hに直交して燃料供給管16を先端16bがわずかに空気供給管13h内に突出するように接合し、燃料供給管の先端16bから噴出した燃料を空気供給管13h内の空気流に撹乱噴出することで燃料は霧状をなして混合され、混合位置より下流において高温空気との可燃ガスGが生成される。図8(c)は同図(a)と同形状の空気供給管13の屈曲後の直管部13hの一部に空気供給管13hと同軸の円筒形状チャンバー16Cを形成し、このチャンバー16C内の空気供給管13hの周面に小径円孔16hを配設した連通部形状からなる。このチャンバー16C内に燃料が供給されると、高温状態にある空気供給管13hからの放熱で燃料が加熱された状態で、空気供給管13h内に霧状に噴出する。このため、空気供給管13h内を流れる高温空気と急激に撹拌混合され、他の連通接合構造と同様に、混合位置より下流において高温空気とのG可燃ガスが生成され、燃焼部分に供給される。
【0036】
また、以上に説明した燃焼装置に求められている高温状態に着目して、溶融炭酸塩形燃料電池や固体酸化物形燃料電池等の動作環境で設定される高温温度環境を利用して、その排熱をスタータ燃料や供給空気を加熱することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の発明の加水燃料燃焼装置の実施例の内部構成、および燃料、空気供給系統を模式的に示した断面図および燃焼システムの構成図。
【図2】燃焼装置内部の外殻マニホールド、分岐送気縦管およびその周囲に巻回された分岐燃料配管16の構成を模式的に示した断面図および燃焼システムの構成図。
【図3】図2におけるIII-III断面線に沿って示した螺旋状をなして配管された分岐燃料配管の配列状態を示した説明図。
【図4】図2におけるIVa-IVa,IVb-IVb断面線に沿って示した分岐送気縦管の配列状態を示した説明図。
【図5】エマルジョン燃料から得られた可燃性ガスのサンプリング状態を示した模式説明図。
【図6】第2の発明の加水燃料燃焼装置の実施例の内部構成、および燃料、空気供給系統を模式的に示した組立斜視図。
【図7】図6に示した燃焼装置の内部構成、燃料、エアの供給系統を模式的に示した断面図および燃焼システムの構成図。
【図8】空気供給管内に燃料供給管先端を接合させたガス気化構造例を示した模式構造図。
【符号の説明】
【0038】
1 加水燃料燃焼装置
5 燃焼空間
6,52 蓄熱体ブロック
10 50 燃料装置本体
11 51 外殻マニホールド
13 分岐空気供給管
16,53 分岐燃料配管
17 底板
18 バーナー孔
30 空気供給部
40 燃料供給部
41 燃料タンク
44 スタータ燃料タンク
46 エマルジョン燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置の容器構造の外殻壁の内部空間に形成された、外部から供給された空気を管端部管バーナー位置まで送気する外殻マニホールドと、
該外殻マニホールドの接続口に基部が連通し、該基部から前記容器構造空間の周方向に沿って複数本の分岐空気供給管が配設され、該管内を通過する供給空気を高温予熱し、前記管端部バーナー位置まで空気を供給する空気供給経路と、
容器構造空間内に配管された分岐燃料配管を有し、外部の燃料貯留部から供給され、前記容器構造空間内を通過する際に、管内を流れる燃料を高温化し、前記空気供給管の管端部バーナー位置に接続し連通され、高温状態で燃料が可燃性ガスを生成し、前記バーナー位置近傍で空気と混合させる燃料供給経路とを備え、
前記空気供給管端部バーナー位置から前記容器構造空間内の燃焼空間にガス噴出し、前記混合された可燃性ガスを連続燃焼させることを特徴とする加水燃料燃焼装置。
【請求項2】
前記燃焼空間内にセラミックス蓄熱体ブロックを収容し、燃焼時に該蓄熱体ブロックを高温化し、燃焼空間内温度を高温保持させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の加水燃料燃焼装置。
【請求項3】
前記燃料は、化石燃料1重量部に水7〜9重量部を添加し、乳化剤によりエマルジョン燃料として、前記燃料供給経路に導入されることを特徴とする請求項1に記載の加水燃料燃焼装置。
【請求項4】
前記燃料および空気は前記燃料装置の容器構造空間内で1000℃〜1600℃まで高温化されることを特徴とする請求項1に記載の加水燃料燃焼装置。
【請求項5】
燃焼装置の容器構造の外殻壁内部に形成された空間に形成され、外部から供給された空気を燃焼部まで供給する壁体内空気供給経路を有し、前記容器構造の内面壁下部に形成された多孔配設面を有する燃焼空間に、前記壁体内に導入され通過する供給空気を高温予熱して空気を供給する外殻マニホールドと、
前記容器構造空間の燃焼空間の上部をほぼ占有するように、所定の隙間をあけて複数段をなして設けられた蓄熱体ブロックと、
該蓄熱体ブロックの平面縦横に配列され、厚さ方向に形成された複数の貫通孔内に、分岐された各管がそれぞれ挿通され下端部が前記燃焼空間に突出した分岐燃料配管からなり、外部の燃料貯留部から供給され、前記管内を流れる燃料を高温化し、高温状態の可燃性ガスを生成し、前記燃焼空間内に可燃性ガスを噴出する燃料供給経路とを備え、
前記容器構造空間内の燃焼空間で、前記壁体内空気供給経路から前記燃焼空間に噴出された高温空気と前記可燃性ガスとを混合し、連続燃焼させることを特徴とする加水燃料燃焼装置。
【請求項6】
前記燃料は、化石燃料1重量部に水7〜9重量部を添加し、乳化剤によりエマルジョン燃料として、前記燃料供給経路に導入されることを特徴とする請求項5に記載の加水燃料燃焼装置。
【請求項7】
前記可燃ガスおよび空気は1000℃〜1600℃まで高温化され、前記燃焼空間内で混合燃焼することを特徴とする請求項5に記載の加水燃料燃焼装置。
【請求項8】
前記燃料は、燃焼装置内に配管された空気供給管の一部に連通接合させた気液混合構造において、混合ガス化させるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項5に記載の加水燃料燃焼装置。
【請求項9】
燃料貯留部から燃焼装置までの経路上に、分岐により切替可能なスタータ燃料の供給部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項5に記載の加水燃料燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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