説明

加温装置

【課題】容器が正しく装着された状態で液体を確実に加温することができる加温装置を提供する。
【解決手段】外部に熱を放出する加熱部4a,4bと、溶液を収容した容器を加熱部4a,4bに密着させて支持する支持部3と、加熱部4a,4b近傍の温度を測定する温度測定部5と、温度測定部5によって測定された温度に基づいて支持部3による容器の支持状態を判定する判定部6とを備える加温装置1を提供する。このようにすることで、加熱部近傍の温度上昇から容器の装着の不備を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加温装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、懸架して使用される液体バッグに収容された血液やリンゲル液など、輸液を加温する装置として、流路の一部が形成された合成樹脂内で輸液を循環させ、これを人体の表面に固定することで輸液を体温程度に加温しながら輸液を投与する装置が知られている(特許文献1参照。)。また、過熱を防ぐために発熱部の近傍に温度センサを設けて温度を検知しながら発熱部の動作を制御するヒータが知られている(特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2005―044740号公報
【特許文献2】特開2003―210580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の装置の場合、加温するための熱源である人体やヒータの温度を測定することは可能であるが、熱源からの熱が適切に液体に伝達され液体が正常に加温されているか否かを知ることはできない。
【0005】
特に、液体バッグのように柔軟な容器を使用する場合、液体の量の変化や外部の振動などで容器の形状が容易に変形して位置がずれるため、熱源に適切に接触した状態を保持するには注意を要する。しかし、液体バッグが箱型の保温室内に設置されたり、自動装置で使用されたりする場合、液体バッグの装着の状態を人が常時確認することは大きな負担である。さらに、加温対象の液体が血液や生体試料など滅菌的に扱う必要がある場合、容器内の液体の温度を直接測定するのは困難であり、容器が正しく装着されずに液体が適切に加温されていない状態であっても、それを検知する方法がないという問題がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、容器が正しく装着された状態で液体を確実に加温することができる加温装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、外部に熱を放出する加熱部と、溶液を収容した容器を前記加熱部に密着させて支持する支持部と、前記加熱部近傍の温度を測定する温度測定部と、前記温度測定部によって測定された温度に基づいて前記支持部による前記容器の支持状態を判定する判定部とを備える加温装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、加熱部を作動させると、加熱部に密着して支持された容器および内部の液体に加熱部の熱が伝達され、液体を加温することができる。これと同時に、温度測定部によって加熱部近傍の温度が測定される。
【0009】
この場合に、容器が加熱部に密着して正しく支持部によって支持されている場合、加熱部の熱は容器内の液体へと伝達されて吸収される。一方、容器が支持部に正しく支持されずに加熱部から離れて装着されている場合、加熱部から放出された熱は加熱部近傍の空気に伝達される。このとき、空気は液体より比熱が小さいため、加熱部近傍の温度は容器が正しく装着されたときと比較して速く上昇する。
【0010】
したがって、温度上昇の傾きの大きさから、加熱部の熱が適切に液体に伝達されているか否か、つまり、容器が支持部に正しく支持されているか否かを判定部によって判定することにより、容器の装着の不備を検知することができる。
これにより、容器が正しく装着されずに液体が加温されない状態で放置されることを防ぎ、液体を確実に加温することができる。
【0011】
また、容器の支持状態の判定に、加熱部と温度測定部という従来の加温装置が備えている構成を用いることで、新たな構成や機能を追加することなく、従来の加温装置にも容易に応用が可能となる。また、容器外部に温度測定部を設けることにより、液体には非接触で液体が加温される状態であることを確認することができる。
【0012】
上記発明においては、前記温度測定部が、前記加熱部と前記容器とに同時に接触して配置されることとしてもよい。
このようにすることで、容器が支持部に正しく支持されている場合と、誤って支持されている場合とで、温度測定部における温度変化の差がより顕著になり、容器の支持状態をより正確に判定することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記判定部が、測定された所定時間の温度上昇量が所定の値よりも大きい場合に外部に対して報知することとしてもよい。
このようにすることで、容器が支持部に正しく支持されていない場合、それが判定部によって報知され、操作者が容器の装着の不備を容易に認識することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容器が正しく装着された状態で液体を確実に加温することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る加温装置1について、図1〜図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る加温装置1は、図1に示されるように、液体Aを収容し柔軟な素材で形成された液体バッグ2を支持する支持部3と、液体Aを加温する背面ヒータ(加熱部)4aおよび底面ヒータ4b(加熱部)と、底面ヒータ4b近傍の温度を測定する温度測定部5と、液体バッグ2の装着状態(支持状態)を判定する判定部6とを備えている。
【0016】
支持部3は、前面が開放された箱状であり、上面には液体バッグ2を釣り下げるためのフック3aが設けられ、該フック3aに懸架された液体バッグ2を背面3bおよび底面3cにより支持するようになっている。底面3cの前方には、液体バッグ2の位置が前方にずれるのを防ぐため立て板が設けられている。
各ヒータ4a,4bは、背面3bおよび底面3cに配置されたプレート形状のヒータであり、それぞれ液体バッグ2の背面および底部に片面が密着させられる。
【0017】
温度測定部5は、例えば、サーミスタであり、底面ヒータ4bの中央部に開けられた開口内に配置されている。液体バッグ2が支持部3内に正しく装着され液体バッグ2の底部が底面ヒータ4bに密着して支持されると、液体バッグ2が温度測定部5に接触するようになっている。また、温度測定部5は、各ヒータ4a,4bの作動と同時に温度測定を開始するようになっている。
【0018】
判定部6は、温度測定部5によって測定された測定開始時の温度と所定時間経過時の温度とから温度上昇値ΔTを測定し、温度上昇値ΔTが予め設定された設定値ΔTよりも大きいときは、液体バッグ2が正しく装着されていないと判定してアラームにより報知するようになっている。ΔTは、あらかじめ液体バッグ2が正しく装着された状態で各ヒータ4a,4bにより所定時間加温して測定された温度上昇値に基づいて設定される。
【0019】
このように構成された加温装置1の動作および作用について、図2〜図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る加温装置1を用いて液体バッグ2内の液体Aを加温するには、図2(a)に示されるように、液体バッグ2の上部をフック3aに掛けて支持部3に装着する。そして、図3に示されるように、各ヒータ4a,4bを作動させると(ステップS1)、所定時間液体Aが加温される(ステップS2)。
【0020】
続いて、判定部6が温度上昇値ΔTを測定し(ステップS3)、測定された温度上昇値ΔTと設定値ΔTとを比較する(ステップS4)。温度上昇値ΔTが、設定値ΔTより小さい場合はそのまま各ヒータ4a,4bによって加温が続けられ、設定値ΔTより大きい場合は判定部6がアラームにより報知する(ステップS5)。
【0021】
図4に示されるグラフは、本実施形態に係る加温装置1において温度測定部5により温度を測定した結果である。実線は、液体バッグ2が各ヒータ4a,4bと密着して正しく装着されたとき、波線は、図2(b)に示されるように、液体バッグ2が各ヒータ4a,4bから離れて不適切に装着されたときの温度の時間変化をそれぞれ示している。液体バッグ2が正しく装着されたときは温度が緩やかに上昇するのに対し、液体バッグ2が誤って装着されたときは温度が速く上昇することが分かる。
【0022】
このように本実施形態によれば、液体バッグ2と密着させられる底面ヒータ4b近傍の温度上昇を測定することにより、液体バッグ2の装着の不備を検知することができる。これにより、液体Aが適切に加温されない状態で放置されることを未然に防ぎ、液体Aを確実に加温することができる。また、ヒータ4a,4bおよび温度測定部5という従来の加温装置に設けられている構成を利用することで、新たな構成や機能の追加が不要となり、従来使用されている加温装置に容易に応用することが可能である。
【0023】
上記実施形態においては、液体の加温開始時において温度上昇値を測定することとしたが、各ヒータの動作時に常時温度上昇値を測定することとしてもよい。
このようにすることで、例えば、液体バッグ2を各ヒータ4a,4bで保温しながら液体Aを輸液している途中で液体バッグ2の位置がずれ、底面ヒータ4bから離れた状態になったときも、液体バッグ2の装着の不備を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る加温装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の加温装置に液体バッグが(a)正しく装着された状態、(b)誤って装着された状態を示す図である。
【図3】図1の加温装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図1の加温装置の温度測定部によって測定された温度の時間変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0025】
1 加温装置
2 液体バッグ(容器)
3 支持部
3a フック
3b 背面
3c 底面
4a 背面ヒータ(加熱部)
4b 底面ヒータ(加熱部)
5 温度測定部
6 判定部
A 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に熱を放出する加熱部と、
溶液を収容した容器を前記加熱部に密着させて支持する支持部と、
前記加熱部近傍の温度を測定する温度測定部と、
前記温度測定部によって測定された温度に基づいて前記支持部による前記容器の支持状態を判定する判定部とを備える加温装置。
【請求項2】
前記温度測定部が、前記加熱部と前記容器とに同時に接触して配置される請求項1に記載の加温装置。
【請求項3】
前記判定部が、測定された所定時間の温度上昇量が所定の値よりも大きい場合に外部に対して報知する請求項1または請求項2に記載の加温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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