説明

加湿器

【課題】 使い勝手を損なうことなく本体の小型化を可能とし、置き場所をとらない加湿器を提供することを。
【解決手段】 本体1に着脱自在に装着される水タンク2と、水タンク2から供給される水を一時的に貯える水槽部6と、水槽部6の水を気化する略直方体形状の気化フィルタ7と、気化フィルタ7に送風する送風機8と、室内の空気を取り入れる吸込口3と、加湿空気を吹き出す吹出口5を備え、吸込口3を気化フィルタ7の一の面に近接して設けた。これにより、吸込口3から気化フィルタ7の間の無駄な空間を排除して本体1を小型化することができ、持ち運びの際などに水面が波打って吸込口3高さを超えてしまっても、気化フィルタ7の表面張力により気化フィルタ7内に水が留まるため、吸込口3から水がこぼれ出てしまうことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の乾燥を防止するための加湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加湿装置の一例として、水分を含んだ気化フィルタに送風して加湿する気化式と呼ばれる方式のものが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
図5はこの気化式の加湿器の断面を示したものであり、本体に着脱自在な給水タンク(図示せず)を備え、この給水タンクから供給される水が一定量水槽部21に貯められるようになっており、水槽部21には気化フィルタ22が設置され、気化フィルタ22は水槽部21内の水を吸水して湿潤している。
【0004】
室内の乾燥した空気は、シロッコファン23の回転により吸込口24から取り入れられて気化フィルタ22に送風され、乾燥した空気を気化フィルタ22を通過させることで加湿空気とし、この加湿空気を吹出口25から吹き出して室内の加湿が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−162965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加湿器のような家電製品においては、コンパクトで置き場所をとらないことも使用者が購入の際に検討する事項の一つであり、そのため、装置の小型化が常に課題としてあげられている。
【0007】
ところが従来の加湿器は、吸込口から流入した空気が気化フィルタに到達するまでには一旦下方に向かって流れる構造となっているため、吸込口から気化フィルタまでの距離が長くなり、この空間が小型化を妨げてしまっていた。
【0008】
また、気化フィルタの上方にシロッコファンを配置しているため、気化フィルタの高さが制限されてしまうという問題もある。気化式の加湿器では気化フィルタの面積が加湿量に影響するため、このような配置では気化面積を大きくすることができず、加湿能力を上げることが難しくなってしまっていた。
【0009】
そこで、本体の大きさを変えることなく加湿能力を上げるためには、気化フィルタをダブルプリーツのものに変更するなどの対策が考えられるが、ダブルプリーツの気化フィルタは圧力損失が大きく、運転時の騒音が大きくなってしまうという新たな問題が発生する。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、使い勝手を損なうことなく本体の小型化を可能とし、置き場所をとらない加湿器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、本体に着脱自在に装着される水タンクと、前記水タンクから供給される水を一時的に貯える水槽部と、前記水槽部の水を気化する略直方体形状の気化フィルタと、前記気化フィルタに送風する送風機と、室内の空気を取り入れる吸込口と、加湿空気を吹き出す吹出口を備え、前記吸込口は前記気化フィルタの一の面に近接して設けられていることを特徴とする加湿器である。
【0012】
また、前記吸込口は本体内部側が前記気化フィルタにより覆われていることを特徴とする請求項1記載の加湿器である。
【0013】
また、前記送風機はモータとシロッコファンから構成され、前記気化フィルタの上方に前記モータを配置したことを特徴とする請求項1または2記載の加湿器である。
【0014】
また、本体は略直方体形状であり、内部に電装部品が収容され周囲とは隔離された電装部を備え、前記電装部品は本体を構成する側面のうちの幅狭面に幅広面から所定距離はなして取り付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の加湿器である。
【発明の効果】
【0015】
上述のように構成することにより、本体を小型化することができるとともに、吸込口から水がこぼれてしまう不具合を防止して使い勝手の良い加湿器となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の加湿器の外観斜視図である。
【図2】本発明の加湿器のA−A’断面図である
【図3】本発明の加湿器のB−B’断面図である
【図4】本発明の加湿器の分解斜視図である。
【図5】従来の加湿器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の最良の形態を、本発明の作用効果を示して簡単に説明する。
【0018】
本発明の加湿器は、本体に着脱自在な水タンクと、水タンクからの水を貯める水槽部と、水槽部の水を気化する略直方体形状の気化フィルタを備え、室内の空気を取り入れる吸込口が気化フィルタの一の面に近接して設けられている。
【0019】
つまり、吸込口から本体内に取り入れられた室内の乾燥した空気はすぐに気化フィルタに流れ込むことになり、吸込口から気化フィルタの間の通気経路をなくすことで、無駄な空間を排除して本体を小型化することができる。
【0020】
なお、気化フィルタが設けられている水槽部には一定量の水が貯められており、吸込口と気化フィルタの間の通気経路をなくすと、持ち運びの際などに水面が波打ったときに吸込口から水槽部の水がこぼれ出るおそれがあるが、これを防止するために、気化フィルタは吸込口と近接して設けられている。このように構成することにより、水面が波打って吸込口高さを超えてしまっても、気化フィルタの表面張力により気化フィルタ内に水が留まるため、吸込口から水がこぼれ出てしまうという問題は発生しないのである。
【0021】
また、吸込口の本体内部側が気化フィルタにより覆われるようにすることで、気化フィルタが空気と接する面積を大きくし、かつ水がこぼれ出ない構成となる。
【0022】
また、モータはシロッコファンに比べて径が小さいため、このモータを気化フィルタの上方に配置することにより、気化フィルタの高さを高くすることができる。つまり、本体の形状を大きくすることなく気化面積を大きくとれるようになるため、本体を小型にしつつも加湿能力をあげることが可能となる。さらには、モータは空気通路内に配置されることになるため、運転時には本体に流れ込む空気によりモータが冷却され、これによりモータの劣化を抑え長寿命化することができるとともに、モータ自体を小型な物とすることができるため、より気化フィルタの面積を大きくすることも可能になる。
【0023】
また、本体が倒れてしまった場合、水槽部に貯めれらた水が電装部内に流れ込んでしまうことが考えられる。しかし、電装部品は本体が転倒したときに水が溜まる面(幅広面)から所定距離はなして設けられているので、電装部に水が浸入しても電装部品は濡れないため故障の心配はなく、使勝手のよい加湿器となる。
【実施例1】
【0024】
以下本発明の一実施例を図面により説明する。
【0025】
図1は本発明の加湿器の外観斜視図であって、加湿器の本体1は略直方体形状をなし、本体1に着脱自在に設けられる水タンク2が本体1の外郭面の一部を形成している。また、この本体1を形成する側面には幅の広い幅広面1a,1bと、幅の狭い幅狭面1cがあり、幅広面1aには室内の空気を本体1内部に取り入れるための吸込口3、幅狭面1cには電装部品である運転スイッチ4が設けられ、本体1の天面には本体1内で加湿された空気を室内に放出するための吹出口5が設けられている。
【0026】
図2および図3は加湿器の内部断面図であり、水タンク2から供給された水を一定水量貯える水槽部6、水槽部6内に配置され水槽部6に貯えられた水を吸水して湿潤する気化フィルタ7、室内の空気を吸込口3から取り込み湿潤している気化フィルタ7を通過させ加湿空気として吹出口5より室内に放出する送風機8、本体1内部を略中央で左右に仕切り加湿空気の通路を形成する仕切部材9、電装部品が収容される電装部10が設けられている。
【0027】
水槽部6は天面が開口した形状であり、水タンク2を取り外すと本体1から引出せるように摺動可能に設けられている。また、水槽部6は水タンク2を装着する水タンク装着部6aと、気化フィルタ7を装着する気化フィルタ装着部6bを備えており、気化フィルタ装着部6bには気化フィルタ7を固定する固定片6cが設けられている。
【0028】
吸込口3と気化フィルタ7は隣り合う高さに配置されていて、吸込口3と気化フィルタ7の間の通気経路を極力短くすることで、無駄な空間を排除して本体1を小型化することができる。
【0029】
また、気化フィルタ7は略直方形状をなし、水槽部6に設けられた固定片6cにより位置決めされて、吸込口3と対向する面が吸込口3に近接して設けらている。
【0030】
すなわち、気化フィルタ7が設けられている水槽部6には常に一定量の水が貯められているので、吸込口3と気化フィルタ7を隣り合う高さに配置すると吸込口3と水槽部6との距離が短くなり、持ち運びの際などに水面が波打ったときに吸込口3から水槽部6の水がこぼれ出るおそれがある。しかしながら、気化フィルタ7と吸込口3とを隣り合う高さにするだけでなく近接して設けることで、水面が波打って吸込口3の高さを超えてしまっても、気化フィルタ7の表面張力によって水は気化フィルタ7内に留まることになり、吸込口3から水がこぼれ出てしまうという問題は発生しないのである。
【0031】
なお、ここでの近接とは、吸込口3と気化フィルタ7がごく近くに配置されることを意味し、本実施例では吸込口3と気化フィルタ7との間にはわずかな隙間を有しているが、隙間がなく密着した状態としても構わない。本実施例においては、気化フィルタ7が水槽部6内に設けられていることにより、吸込口3と気化フィルタ7との間に水槽部6の側壁の厚さが存在するために隙間が生じるのだが、吸込口3を内側に凹ませたり、気化フィルタ7の形状を変更することにより吸込口3と気化フィルタ7とが密着するように構成することもできる。
【0032】
そして、気化フィルタ7の上端位置と幅は、水槽部6内に設置された状態において、吸込口3とほぼ同じくなっており、吸込口3は本体内側の全体が気化フィルタ7によって覆われている。これにより、気化フィルタ7が空気と接する面積を最大限大きくし、吸込口3からは水がこぼれ出ない構成となる。
【0033】
送風機8は、シロッコファン8aと、このシロッコファン8aを回転させるモータ8bとからなり、シロッコファン8aとモータ8bとが本体1に対して仕切部材9を挟んで水平方向に接続されるとともに、気化フィルタ7の上方にモータ8bが位置するように本体1内に配置されている。
【0034】
本実施例のように本体1の上部に送風機8、下部に気化フィルタ7があり、さらに送風機8がモータ8bとシロッコファン8aを水平に配置する構成であれば、モータ8bはシロッコファン8aよりも小径であるため、気化フィルタ7の上にはモータ8bを配置した方が気化フィルタ7の高さを高くすることができる。これにより本体1の形状を大きくすることなく気化面積を大きくして、本体1を小型にしたまま加湿能力を上げることができるようになる。
【0035】
図4は本体内部の分解図であって、仕切部材9は、本体1内部を略中央で左右に仕切る中央仕切板9a、中央仕切板9aに設けられた開口9b、シロッコファン8aの外周に円弧状に設けられたファン周壁9cを備えている。このファン周壁9cの内側は加湿空気が通過する加湿空気通路9dであって、加湿空気通路9dは開口9bと吹出口5とに連通している。つまり、シロッコファン8aの回転によって吸込口3から本体1内に流入した室内の乾燥した空気は、気化フィルタ7を通過する際に水分を含む加湿空気となり、この加湿空気は、気化フィルタ7の上方に設けられたモータ8bの周辺を通過して開口9bから加湿空気通路9dに流入し、ファン周壁9cに沿って流れて吹出口5から室内へ放出されるのである。図2における白抜き矢印は室内の乾燥した空気を、黒矢印は加湿空気をあらわしている。
【0036】
加湿空気は、気化フィルタ7から開口9bへ向かう際に、モータ8b周辺を通過するため、運転中はこの加湿空気によってモータ8bが冷却されることとなり、モータ8bの劣化を防いで長寿命化することができる。さらには、モータ8b自体の大きさを小型化することも可能となることから、モータ8bが小型になればその下方に設けられている気化フィルタ7の高さをより高くすることができるので加湿能力を上げることが可能になる。
【0037】
電装部10は、本体1と仕切部材9に囲まれて形成され、電装部品である運転スイッチ4が設けられている。つまり、電装部10は水槽部6とは隔離されているため、本体1を持ち運んだ際に水面が多少波打った程度では水槽部6の水が電装部10内に侵入することはなく、運転スイッチ4の配線に水がかかってしまうことはない。また、電装部10内は送風機8の回転により空気が吸い出されて負圧となるため、電装部10内への埃等の侵入が抑えられることにより、トラッキングの発生も防止される。
【0038】
また、運転スイッチ4の取り付け場所は、本体1の幅狭面1cであって、吸込口3が設けられていない幅広面1bから所定距離L離れた位置としている。
【0039】
所定距離Lとは、本体1が転倒して水槽部6の水が流れ出しても電装部品が水に濡れることを防止する距離のことを指す。つまり、略直方体形状の本体1が外部から力を受けた場合は幅の広い面の方向に転倒しやすいため、たいていの場合は幅広面1aか1bのどちらかに転倒するのだが、幅広面1aの方向に転倒したとしても水槽部6に貯められた水は吸込口3から本体1外に流れ出るため運転スイッチ4に水がかかる心配はない。ところが幅広面1bの方向に転倒した場合には、水槽部6に貯められた水は本体1の隙間から電装部10内に流入してしまうおそれがある。このとき、水槽部6の水が全て流れ出て電装部10に流入したときに形成される幅広面1bからの水面の高さがLである。したがって、運転スイッチ4を幅広面1bからL離れた位置に設置すれば、本体1が転倒したとしても運転スイッチ4が水に濡れることはなく、故障の原因となる心配もない。
【0040】
また、運転スイッチ4は本体1の側面(幅狭面1c)に取り付けられているので、もし本体1に水がかかったとしても運転スイッチ4と本体1との間から内部にまで水が入り込んでしまうことはないため、運転スイッチ4周辺の特別な防水処理は不要となる。そのため製品を安価に構成することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 本体
1a、1b 幅広面
1c 幅狭面
2 水タンク
3 吸込口
4 運転スイッチ(電装部品)
5 吹出口
6 水槽部
7 気化フィルタ
8 送風機
8a シロッコファン
8b モータ
10 電装部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に着脱自在に装着される水タンクと、前記水タンクから供給される水を一時的に貯える水槽部と、前記水槽部の水を気化する略直方体形状の気化フィルタと、前記気化フィルタに送風する送風機と、室内の空気を取り入れる吸込口と、加湿空気を吹き出す吹出口を備え、前記吸込口は前記気化フィルタの一の面に近接して設けられていることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記吸込口は本体内部側が前記気化フィルタにより覆われていることを特徴とする請求項1記載の加湿器。
【請求項3】
前記送風機はモータとシロッコファンから構成され、前記気化フィルタの上方に前記モータを配置したことを特徴とする請求項1または2記載の加湿器。
【請求項4】
本体は略直方体形状であり、内部に電装部品が収容され周囲とは隔離された電装部を備え、前記電装部品は本体を構成する側面のうちの幅狭面に幅広面から所定距離はなして取り付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の加湿器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−225618(P2012−225618A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95601(P2011−95601)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000109026)ダイニチ工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】