説明

加湿式薬剤噴霧装置

【課題】粒子径分布が極めて狭い範囲にある多流体ノズルを用いて霧滴を生成させることに加えて、供給する空気を加湿によって湿らせることにより、飛躍的に生成する霧滴の粒子径安定性と霧滴粒子寿命を永く保つことができる薬剤噴霧装置を提供する。
【解決手段】多流体ノズル1を用いる噴霧装置の空気流路に置いた耐圧容器3内の水中を通して空気を供給することにより、霧滴水分の蒸発を抑え、広範囲に霧滴を供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば薬剤噴霧装置に係り、特にアスベストの封じ込め工法における封じ込め剤噴霧、アスベスト除去における湿潤剤噴霧または光触媒や抗菌剤などの薬剤噴霧コーテイング施工において、均一な施工を実現するために粒子径の安定が得やすい多流体ノズルを用い水性薬剤の噴霧粒子制御を行う薬剤噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な霧滴を噴霧し、対象空間に均一に水または水性薬剤の霧滴を供給することが各種産業で要請されている。この要請に応える一法として、たとえばアスベスト封じ込め対策の例では特許文献1乃至3に開示されるように、密閉空間内にノズルから霧を噴き出して施工する方法が開示されている。
【0003】
しかし、対象とする空間が閉鎖されたものであっても均一な霧滴の制御のために多流体ノズルを用いた場合には、使用する薬剤とともに送られる大量の空気によって、霧滴は乾燥され、噴き出し直後と拡散した先では大きく粒子径が変化し目的の部位に薬剤を供給することは困難を極める。また1流体ノズルでは粒子径のバラツキから対象面への均一な霧滴の供給は困難であり、粒子径制御の目的で超音波式のミスト発生装置を用いる場合には薬剤の供給量が極小のため、目的とする均一な施工は実現できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−218069
【特許文献2】特開2008−202377
【特許文献3】特開2009−150129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、これまでの微細な霧滴の噴霧技術では、微細かつ均一な粒子径分布を持った霧を必要とする分野が多数存在するが、もっとも粒子径分布が均一な多流体ノズルを用いても同時に使用する大量の空気のために生成した霧滴は目的の部位に達する以前に水分の蒸発を招き、小さくなり、さらには完全な乾燥により、薬剤の固形分の粉末を飛散させる結果となり、目的とする対象面全面への均一な施工ができなかった。
【0006】
すなわち、従来の水性薬剤噴霧装置はノズル近傍の噴霧状態による判断に基づき、霧滴の調整を行っていたため、目的部位への均一な施工という意味での粒子径制御は考慮されていなかった。
【0007】
本発明はこうした従来技術上の問題点を解決することを企図したものであり、粒子径分布が極めて狭い範囲にある多流体ノズルを用いて霧滴を生成させることに加えて。供給する空気を加湿によって湿らせることにより、飛躍的に生成する霧滴の粒子径安定性と霧滴粒子寿命を長く保つための噴霧装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本願の請求項1に係る加湿式薬剤噴霧装置は、多流体ノズルに送る空気に水分を与えるための耐圧容器を配置した構造を持ったことを特徴とする。これにより、生成した霧滴の反発および拡散時の乾燥痩せを抑え、長時間かつ広範囲に目的の霧滴を噴射することができる。
【0009】
この場合、請求項2に示す本発明のように、コンプレッサーあるいはエアポンプの使用に際して、空気供給ラインのノズル側に耐圧容器を配置することにより、コンプレッサーの内部に湿気を送ることなく、目的の霧滴を送ることができる。
【0010】
さらに、請求項3に示す本発明のように、エアポンプを使用する薬剤噴霧装置にあっては、エアポンプ内部構造が耐水性である場合、空気供給ラインのエアポンプよりも前段に耐圧容器を配置することにより、エアポンプの寿命を左右するエアフィルタに蓄積する粉塵等を水洗浄する目的も合わせ、加湿空気を生成させることが可能となり、目的の霧滴を送ることが可能になる。
【0011】
また、前記エアポンプを使用し、空気供給ラインのエアポンプよりも前段に耐圧容器を配置するシステムでは、容器の空気取り入れ口の開口部大きさ、すなわちエアポンプの吸気に問題となる抵抗を計算したうえで、容器に過剰な圧力が掛からない場合には必ずしも耐圧容器を使わず、通常容器を使用することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
こうした構成を備える本発明の加湿式噴霧装置を使用することにより、アスベスト封じ込め施工、アスベスト除去施工のための湿潤剤噴霧施工、抗菌剤噴霧コーティング施工など、均一な施工結果が求められる各所において、微細かつ粒子径分布の狭い霧を得、さらに広範囲に霧滴を供給することが可能になる。この霧滴の供給安定効果により、従来型の空気供給容量の小さい噴霧システムであっても、より広範囲に安定した霧滴を送ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る加湿式噴霧装置の全体を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0015】
本発明は基本的な構造として、図1に示すように、多流体ノズル1、コンプレッサー2あるいはエアポンプなどの空気供給源、加湿タンク3、および薬液タンク4を備えて構成される。空気などの気体および水あるいは液体薬剤を扱う装置として、逆止弁、気液バルブ、圧力計、流量計、フィルター技術および各構成要素の材質選定が必要であるが、図面では公知技術として記述を省略している。
【0016】
このような基本的な構成で噴霧薬剤の霧滴の均一性と霧滴拡散範囲の拡大の目的から、加湿タンクを持つ。
【0017】
薬剤噴霧の際、粒径均一性の高い霧滴を得る目的で、多流体ノズルがしばしば使用される多流体ノズルは通常2流体ノズルで、粒径均一性の高い霧滴生成目的に加え、霧滴群を加速や噴霧形状制御する目的で、2流体構造に加えて気体を1系統加えた3流体ノズルを使用することもある。しかし、多流体ノズルで発生させた霧滴は同時に使用する空気によって霧滴表面から蒸発が進み、空気量の多寡、空気の乾燥度によって粒径制御できなくなるので、水中に空気を通すことで空気の加湿、ひいては霧滴の粒径均一性および拡散時の霧滴長寿命化を可能にする加湿タンクの働きが重要になる。
【0018】
構成図に示すように、加湿タンクをひとつ流路に配置することで霧滴粒径の均一性および薬剤霧滴の拡散範囲を拡大することが可能であるが、さらに一定数の加湿タンクを配置することや加湿タンク内上部に水に接触するように水分保持力の高い不織布を垂らした加湿タンク置き、空気と水の接触面積を増すことでさらに加湿効率を高めることが可能である。ここでの一定数の加湿タンクとは、噴霧に必要な噴霧空気量と圧力を確保できる範囲であれば特に数値的な限定はない。
【0019】
コンプレッサー2あるいはエアポンプなどの空気供給源とは、気体を圧縮した後に噴き出すことで運動エネルギーを持った気体を生成する機械をいう。本発明においては多流体ノズルの気体流路、薬液タンクおよび加湿タンクに必要な圧力および空気量を生み出せるものであれば足り、その手段の如何は問わない。
【0020】
以上のように、本発明は加湿タンクなどの加湿機構を付与することで、効果については同等以上のものをもち、一般的なスプレー技術と比較して液体粒子の均一性を高め、さらに拡散範囲を広げ対象物に霧滴を付着させることができるという優れた特性を持つ。
【0021】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えて実施することが可能である。
【0022】
また、上述した実施例は、本発明に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、他の実施形態でも本発明に係る技術思想を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
霧滴の拡散範囲が広く、対象物までの距離があっても水分を十分に含んだ霧滴を送れることは対象物に点状に薬剤が付着するのではなく、対象物全体に薄膜状の薬剤付着を可能にするもので、薬剤コーティング技術分野で幅広い可能性を提供するものである。
【0024】
霧滴の拡散範囲が狭い従来型噴霧機でも期待されたアスベスト封じ込め工事における封じ込め剤薬剤噴霧、衛生害虫対策用薬剤噴霧、病院、老人ホーム、介護施設などでの消臭、抗菌用途の薬剤噴霧よびコーティング、インフルエンザ対策を考慮した噴霧システム、インフルエンザ対策薬剤のうち特に壁面等に付着して持続性を発揮する薬剤の噴霧、コーティングなどへの応用が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1…多流体ノズル、2…コンプレッサー、3…加湿タンク、4…薬液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一な霧滴を生成させるために多流体ノズルを用い、その空気供給ラインに耐圧容器を置き、耐圧容器内に満たした水中に空気を通す構造を持ったことを特徴とする加湿式薬剤噴霧装置。
【請求項2】
前記噴霧装置の空気供給システムがコンプレッサーあるいはエアポンプであって、コンプレッサーあるいはエアポンプとノズルの間に耐圧容器を配置したことを特徴とする加湿式薬剤噴霧装置。
【請求項3】
前記エアポンプを空気供給システムとして用いる噴霧装置であって、エアポンプの直前に置いた耐圧容器内の水中を通した空気を供給することを特徴とした加湿式薬剤噴霧装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−143394(P2011−143394A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20705(P2010−20705)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(391039461)
【出願人】(509154615)
【Fターム(参考)】