説明

加湿機

【課題】加湿能力の低下を抑制しつつ、加湿運転停止時に加湿フィルタが貯水容器内の水を吸水するのを防止する。
【解決手段】送風機3と、水を貯留する貯水容器31と、貯水容器31の上方で且つ送風機3によって発生する空気流の流路に配置され、加湿運転時に回転駆動されると共に貯水容器31から供給された水を気化させる加湿フィルタ21とを備える加湿機であって、加湿フィルタ21の外周部には、防水部21bが設けられている。防水部21bによって、加湿運転停止時において貯水容器31内の水面が所定高さより上昇したときに、加湿フィルタ21への吸水を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水容器内の上方に配置された加湿フィルタを備える加湿機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から加湿機として、加湿フィルタと、加湿フィルタの下方に配置されて加湿フィルタに供給される水が貯留される貯水容器と、加湿フィルタを通過する空気流を発生させるファンとを備えるものがある(例えば特許文献1参照)。この加湿機では、加湿フィルタを回転させつつ、貯水容器内から汲み上げた水を加湿フィルタに掛けて、加湿フィルタ全体に水を浸み込ませている。加湿フィルタに吸水された水が気化して、加湿フィルタを通過する空気流が加湿される。
【0003】
送風機の停止時には加湿フィルタが貯水容器内の水に浸からないようになっているが、送風機による風量が大きい場合には、ケーシング内が負圧となって、貯水容器内に水が引き込まれるため、貯水容器内の水面高さが、送風機の停止時の貯水容器内の水面高さよりも上昇する場合がある。貯水容器内の水面高さが加湿フィルタの下端よりも上昇すると、加湿フィルタが貯水容器内の水を吸水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−64446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば加湿運転と空気清浄運転の両方を行うような加湿機では、加湿運転停止時に送風機を駆動する場合がある。この場合、送風機による風量が大きいと、上述したように貯水容器内の水面高さが加湿フィルタの下端よりも上昇して、加湿運転を行っていないにも関わらず、加湿フィルタが貯水容器内の水を吸水してタンク内の水が減るという問題が生じる。
【0006】
送風機の駆動時に加湿フィルタが貯水容器内の水に浸からないようにするために、加湿フィルタの外径を小さくした場合、加湿フィルタの気化できる面積が小さくなるため、加湿能力が低下してしまう。また、貯水容器内の水面高さを低くした場合、加湿運転時に貯水容器から加湿フィルタに供給される水量が減って、加湿能力が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、加湿能力の低下を抑制しつつ、加湿運転停止時に加湿フィルタが貯水容器内の水を吸水するのを防止できる加湿機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の発明に係る加湿機は、送風機と、水を貯留する貯水容器と、前記貯水容器の上方で且つ前記送風機によって発生する空気流の流路に配置され、加湿運転時に回転駆動されると共に前記貯水容器から供給された水を気化させる加湿フィルタと、加湿運転停止時において前記貯水容器内の水面が所定高さより上昇したときに、前記加湿フィルタへの吸水を防止する吸水防止手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
この加湿機では、加湿運転停止時に貯水容器内の水面が所定高さより上昇したときに、吸水防止手段によって加湿フィルタが貯水容器内の水を吸水するのを防止する。そのため、加湿フィルタの外径を小さくすることで加湿フィルタへの吸水を防止する場合などに比べて、加湿能力の低下を抑制しつつ、加湿運転停止時の加湿フィルタへの吸水を防止できる。
【0010】
第2の発明に係る加湿機は、第1の発明において、前記吸水防止手段が、前記加湿フィルタの外周部に設けられていることを特徴とする。
【0011】
この加湿機では、加湿フィルタの下方に配置された貯水容器内の水が、加湿フィルタの下端部から吸水されるのを防止できる。
【0012】
第3の発明に係る加湿機は、第2の発明において、前記吸水防止手段が、前記貯水容器内の水を吸水しないように構成された防水部であることを特徴とする。
【0013】
この加湿機では、吸水防止手段を容易に形成できる。
【0014】
第4の発明に係る加湿機は、第3の発明において、前記加湿フィルタの前記防水部を保持する保持部を備えることを特徴とする。
【0015】
この加湿機では、加湿フィルタにおいて保持部に保持される部分は、空気流が通過しないため、加湿能力はほとんどない。この部分に防水部を設けることにより、加湿能力の低下を抑制しつつ加湿フィルタの吸水を防水できる。
【0016】
第5の発明に係る加湿機は、第1〜第4の発明において、加湿運転停止時で且つ前記送風機が停止しているときに、前記貯水容器内の水面が、前記加湿フィルタの下端より下方にあることを特徴とする。
【0017】
この加湿機では、加湿運転停止時で且つ送風機が停止しているときに、貯水容器内の水が加湿フィルタに吸水されるのを確実に防止できる。なお、加湿運転停止時で且つ送風機を駆動するときには、貯水容器内の水面高さが送風機の停止時より上昇しても、吸水防水手段によって吸水を防止できる。
【0018】
第6の発明に係る加湿機は、第5の発明において、前記貯水容器内の水を汲み上げて前記加湿フィルタに掛けるための水汲み部を備えることを特徴とする。
【0019】
この加湿機では、水汲み部によって加湿フィルタに水が供給されるため、加湿運転時に加湿フィルタの下端部を貯水容器内の水に接触させなくてよい。
【0020】
第7の発明に係る加湿機は、第1〜第6のいずれかの発明において、前記加湿フィルタが円形状であることを特徴とする。
【0021】
この加湿機では、回転駆動される加湿フィルタが円形状であるため、加湿フィルタの設置スペースを小さくできる。
【0022】
第8の発明に係る加湿機は、第3または第4の発明において、前記加湿フィルタが、合成樹脂製であって、前記防水部が、熱溶着処理によって形成されていることを特徴とする。
【0023】
この加湿機では、簡易に防水部を形成できる。
【0024】
第9の発明に係る加湿機は、第3または第4の発明において、前記防水部が、フィルタ本体に撥水剤を塗布することで形成されていることを特徴とする。
【0025】
この加湿機では、簡易に防水部を形成できる。
【0026】
第10の発明に係る加湿機は、第3または第4の発明において、前記防水部が、フィルタ本体にシール部材を溶着することで形成されていることを特徴とする。
【0027】
この加湿機では、簡易に防水部を形成できる。
【0028】
第11の発明に係る加湿機は、第3または第4の発明において、前記防水部が、フィルタ本体に防水テープを貼り付けることで形成されていることを特徴とする。
【0029】
この加湿機では、簡易に防水部を形成できる。
【発明の効果】
【0030】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0031】
第1の発明では、加湿運転停止時に貯水容器内の水面が所定高さより上昇したときに、吸水防止手段によって加湿フィルタが貯水容器内の水を吸水するのを防止する。そのため、加湿フィルタの外径を小さくすることで加湿フィルタへの吸水を防止する場合などに比べて、加湿能力の低下を抑制しつつ、加湿運転停止時の加湿フィルタへの吸水を防止できる。
【0032】
第2の発明では、加湿フィルタの下方に配置された貯水容器内の水が、加湿フィルタの下端部から吸水されるのを防止できる。
【0033】
第3の発明では、吸水防止手段を容易に形成できる。
【0034】
第4の発明では、加湿フィルタにおいて保持部に保持される部分は、空気流が通過しないため、加湿能力はほとんどない。この部分に防水部を設けることにより、加湿能力の低下を抑制しつつ加湿フィルタの吸水を防水できる。
【0035】
第5の発明では、加湿運転停止時で且つ送風機が停止しているときに、貯水容器内の水が加湿フィルタに吸水されるのを確実に防止できる。
【0036】
第6の発明では、水汲み部によって加湿フィルタに水が供給されるため、加湿運転時に加湿フィルタの下端部を貯水容器内の水に接触させなくてよい。
【0037】
第7の発明では、回転駆動される加湿フィルタが円形状であるため、加湿フィルタの設置スペースを小さくできる。
【0038】
第8〜第11の発明では、簡易に防水部を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る加湿機の斜視図である。
【図2】図1の加湿機からケーシングの前面部を取り外した状態の斜視図である。
【図3】図2の加湿機から空気清浄フィルタユニットを取り外した状態の斜視図である。
【図4】図3の加湿機から加湿ロータとトレーと給水タンクを取り外した状態の斜視図である。
【図5】図1の加湿機から給水タンクを取り外した状態の斜視図である。
【図6】加湿ロータとトレーの断面図である。
【図7】トレーの斜視図である。
【図8】加湿ロータの斜視図である。
【図9】(a)は加湿フィルタの平面図であって、(b)は加湿フィルタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態の加湿機1について説明する。
図1〜図4に示すように、加湿機1は、送風機3(図4参照)と、空気清浄フィルタユニット4(図2参照)と、加湿ロータ20(図3参照)と、トレー30(図3参照)と、給水タンク5と、これらを収容するケーシング2とを備えている。なお、以下の説明における上下、左右および前後方向は、図1中の上下、左右および前後方向である。
【0041】
本実施形態の加湿機1は、加湿運転と空気清浄運転が可能である。加湿運転は、加湿ロータ20と送風機3の両方を回転させて、加湿と空気清浄を行う運転であって、空気清浄運転は、加湿ロータ20を回転させずに送風機3だけ回転させて、空気清浄のみを行う運転である。また、送風機3の風量は調整可能となっている。
【0042】
図1に示すように、ケーシング2の左右側面には吸込口2aが形成されており、ケーシング2の天面の後側部分には、開閉式の蓋が設けられた吹出口2bが形成されている。ケーシング2の内部には、送風機3によって発生する空気流を吸込口2aから吹出口2bに導くための流路が形成されている。この流路に上流側から順に、空気清浄フィルタユニット4、加湿ロータ20、送風機3が配置されている。
【0043】
図2に示すように空気清浄フィルタユニット4は、ケーシング2内の前側に配置されている。空気清浄フィルタユニット4は、これを通過する空気中の塵埃や臭気成分を除去する。
【0044】
図3に示すように、トレー30はケーシング2内の下側部分に配置されている。トレー30の右側面と後面の一部は、ケーシング2の一部を構成している。図7に示すように、トレー30は、貯水容器31と、タンク受け容器32と、2本の支持柱33とを有する。図3に示すように、支持柱33は、加湿ロータ20を支持するためのものである。
【0045】
図6に示すように、貯水容器31とタンク受け容器32は、仕切り壁34によって仕切られている。仕切り壁34の下部には、タンク受け容器32内の水を貯水容器31に供給するための供給口34aが形成されている。
【0046】
図3に示すように、タンク受け容器32には、給水タンク5が配置されており、この給水タンク5から供給された水が貯留される。給水タンク5内に水がある限り、タンク受け容器32内の水面は所定の満水レベル(図6中一点鎖線で表示)に保たれるようになっている。
【0047】
貯水容器31には、タンク受け容器32から供給口34aを介して供給された水が貯留される。この貯水容器31内の水が、後述する水汲み部26によって汲み上げられて加湿ロータ20の加湿フィルタ21に供給される。送風機3の停止時には、貯水容器31内の水面(図6中一点鎖線で表示)は、タンク受け容器32の満水レベルと同じ高さであって、加湿フィルタ21の下端の位置Aよりも下方にある。
【0048】
また、図5に示すように、タンク受け容器32の上方の空間(給水タンク5が収容される空間)と、貯水容器31の上方の空間(空気流の流路の一部)とは、壁で仕切られており、空気が行き来しないようになっている。そのため、送風機3による風量が大きい場合には、貯水容器31の上方の空間(空気流の流路)が負圧となって、タンク受け容器32の上方の空気圧力(大気圧)と差が生じて、この差圧によってタンク受け容器32から貯水容器31内に水が引き込まれて、貯水容器31内の水面高さが上昇する。送風機3の風量が最大の場合には、貯水容器31内の水面(図6中二点鎖線で表示)は、加湿フィルタ21の下端の位置Aよりも上方で、且つ、加湿フィルタ21の外周部に設けられた防水部21b(図6中ドットのハッチングで表示)よりも内側の部分の下端の位置Bよりも下方となる。
【0049】
図3に示すように、加湿ロータ20は、貯水容器31の上方に配置されて、支持柱33に回転自在に支持される。図8に示すように、加湿ロータ20は、加湿フィルタ21と、加湿フィルタ21を保持する枠部材22と、加湿フィルタ21と枠部材22を貫通する回転軸25とで構成されている。回転軸25の両端は、2本の支持柱33に回転自在に支持される。
【0050】
図8に示すように、枠部材22は、加湿フィルタ21の前後両側に配置される前枠23と後枠24で構成されている。前枠23は、環状の外枠部23aと、回転軸25が取り付けられるボス部23bと、ボス部23bと外枠部23aとを連結する連結部23cとで構成されている。後枠24は、環状の外枠部24aと、回転軸25が取り付けられるボス部(図示省略)と、ボス部と外枠部とを連結する連結部(図示省略)とで構成されている。外枠部23aと外枠部24aによって、加湿フィルタ21の外周部を保持する保持部22aが構成される。
【0051】
図6中の破線の円は、後枠24の外枠部24aの内周端を示している。外枠部24aの内周端近傍には、加湿フィルタ21を位置決めするため複数のピン27が突設されている。
【0052】
図8に示すように、後枠24の外枠部24aの外周面には、歯部28が形成されている。図3に示すように、歯部28は、加湿ロータ20の左上方に配置された歯車6と噛合している。この歯車6がモータにより回転することで、加湿ロータ20が回転駆動される。
【0053】
図6および図8に示すように、前枠23の外枠部23aには、複数の水汲み部26が周方向に並んで設けられている。水汲み部26は、加湿ロータ20の回転時に、貯水容器31内の水を汲み上げて加湿フィルタ21に掛けるために設けられている。水汲み部26は、加湿ロータ20の回転方向(図6中の矢印方向)の前方側が開口したカップ状に形成されている。図6に示すように、水汲み部26の径方向内側部分には、水汲み部26内の水を加湿フィルタ21に掛けるための排出部26aが設けられている。
【0054】
加湿ロータ20の回転に伴って、複数の水汲み部26は順次貯水トレー30内に浸水して、浸水した状態から上昇していく際に貯水容器31内の水を汲み上げる。そして、水汲み部26が最上位置に近付くにしたがって、水汲み部26内の水が、排出部26aから流れ出て加湿フィルタ21に掛けられる。
【0055】
加湿フィルタ21は、吸水した水を気化させて、加湿フィルタ21を通過する空気流を加湿する。加湿フィルタ21は、例えばハニカム構造の不織布などで構成されている。加湿フィルタ21は、合成樹脂製である。図9(a)に示すように、加湿フィルタ21は、円形状に形成されており、その中心部には、回転軸25が挿通される円形孔が形成されている。また、加湿フィルタ21の外周端近傍には、後枠24の複数のピン27が挿通される複数の円形孔21aが形成されている。
【0056】
図9(a)に示すように、加湿フィルタ21の外周部(円形孔21aの縁部を含む)には、防水部21bが設けられている。本実施形態の防水部21bは、熱溶着処理によって形成されている。具体的には、加湿フィルタ21の外周部を加熱して合成樹脂を溶融した状態としつつ、加圧してフィルタ内部の空隙を潰すことで、防水部21bを形成している。そのため、この防水部21bは、吸水性を有しない。図9(b)に示すように、防水部21bは、熱溶着処理によって厚みが薄くなっている。また、加湿フィルタ21の中央の孔の縁部は、超音波溶着処理または熱溶着処理が施されており、厚みが薄くなっている。
【0057】
上述したように、送風機3の停止時には、貯水容器31内の水面(図6中一点鎖線で表示)は、加湿フィルタ21の下端の位置Aよりも下方にあるため、加湿フィルタ21は貯水容器31内の水に浸らないようになっている。また、送風機3の駆動時であって風量が大きい場合には、貯水容器31内の水面(図6中二点鎖線で表示)は加湿フィルタ21の下端の位置Aよりも上方で、且つ、加湿フィルタ21の防水部21bより内側の部分の下端の位置Bよりも下方にある。そのため、送風機3の回転時には、加湿フィルタ21の防水部21bは貯水容器31内の水に浸かるが、防水部21b以外の部分は貯水容器31内の水に浸からないようになっている。
【0058】
次に、加湿機1の動作について説明する。
【0059】
加湿運転時には、送風機3が駆動されると共に、加湿ロータ20が回転駆動される。加湿ロータ20が回転することによって、貯水容器31内の水が複数の水汲み部26によって順次汲み上げられて、加湿フィルタ21に供給される。
【0060】
また、送風機3の駆動により、ケーシング2の側面の吸込口2aから空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、空気清浄フィルタユニット4を通過して清浄化された後、加湿フィルタ21を通過して加湿され、その後、ケーシング2の天面の吹出口2bから排出される。なお、加湿フィルタ21には、空気清浄フィルタユニット4を通過した空気が全て通過するわけではなく、空気清浄フィルタユニット4を通過した空気の一部だけが加湿フィルタ21を通過する。
【0061】
送風機3による風量が大きい場合、上述したように空気流の流路が負圧となることで、貯水容器31内の水面は、最高で図6に二点鎖線で示した位置まで上昇して、加湿フィルタ21の防水部21bが貯水容器31内の水と接触するが、防水部21b以外の部分は貯水容器31内の水と接触しない。
【0062】
また、空気清浄運転時には、加湿ロータ20が停止した状態で、送風機3が駆動される。吸込口2aから吹出口2bに至る空気の流れは、加湿運転時と同じである。加湿ロータ20が停止しているため、水汲み部26による加湿フィルタ21への給水はない。また、空気清浄運転時の貯水容器31内の水面高さは、加湿運転時と同じであるため、加湿フィルタ21に貯水容器31内の水が吸水されることもない。そのため、空気清浄運転時には、加湿フィルタ21を通過する空気流は加湿されないようになっている。
【0063】
本実施形態の加湿機1では、空気清浄運転時(加湿運転停止時)に、貯水容器31内の水面が所定高さ(図6中一点鎖線で表示)より上昇したときに、加湿フィルタ21の防水部21bによって、貯水容器31内の水が加湿フィルタ21に吸水されるのを防止している。そのため、空気清浄運転時(加湿運転停止時)に給水タンク5の水が減るのを防止できる。
【0064】
加湿フィルタ21に防水部21bを設けずに、タンク受け容器の満水レベルを下げて、送風機の駆動時の貯水容器内の水面高さを加湿フィルタの下端よりも低くすることによって、加湿フィルタへの吸水を防止することは可能であるが、この場合、水汲み部によって汲み上げられる水量が少なくなり、加湿能力が低下する。
一方、本実施形態では、水汲み部26で汲み上げられる水量を維持して、加湿能力の低下を抑制しつつ、加湿フィルタ21への吸水を防止できる。
【0065】
また、加湿フィルタ21に防水部21bを設けずに、加湿フィルタの外径を小さくすることで、送風機の駆動時に加湿フィルタの下端が貯水容器31内の水に浸からないようにして、加湿フィルタへの吸水を防止することは可能であるが、この場合、気化できる面積が小さくなり、加湿能力が低下する。
一方、本実施形態では、気化できる面積をほぼ維持して、加湿能力の低下を抑制しつつ、加湿フィルタ21への吸水を防止できる。
【0066】
本実施形態では、加湿フィルタ21の外周部に防水部21bを設けているため、加湿フィルタ21の下方に配置された貯水容器31内の水が、加湿フィルタ21の下端部から吸水されるのを防止できる。
【0067】
また、加湿フィルタ21において枠部材22の保持部22aに保持される部分は、空気流が通過しないため、加湿能力はほとんどない。本実施形態では、この部分に防水部21bを設けているため、加湿能力の低下を抑制しつつ、加湿フィルタ21の吸水を防水できる。
【0068】
本実施形態では、水汲み部26によって加湿フィルタ21に水が供給されるため、加湿運転時に加湿フィルタ21の下端部を貯水容器31内の水に接触させなくてよい。
【0069】
本実施形態では、回転駆動される加湿フィルタ21が円形状であるため、加湿フィルタ21の設置スペースを小さくできる。
【0070】
本実施形態では、防水部21bは熱溶着処理によってで形成されているため、簡易に防水部21bを形成できる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成は、上記実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0072】
上記実施形態では、防水部21bは、熱溶着処理によって形成されているが、防水部21bの構成は、これに限定されない。例えば、防水部21bは、フィルタ本体の外周部に撥水剤を塗布することで形成されていてもよい。また例えば、防水部21bは、フィルタ本体の外周部にシール部材を溶着することで形成されていてもよい。また例えば、防水部21bは、フィルタ本体に防水テープを貼り付けることで形成されていてもよい。これらの防水部21bは簡易に形成できる。また例えば、防水部21bは、フィルタ本体の外周部にホットメルト接着剤を塗布することで形成されていてもよい。
【0073】
上記実施形態では、貯水容器31内の水面が所定高さより上昇したときに、加湿フィルタ21への吸水を防止する吸水防止手段として、加湿フィルタ21に防水部21bを設けているが、吸水防止手段は、これに限定されるものではない。
【0074】
上記実施形態では、加湿フィルタ21の形状は円形状であるが、例えば四角形などの多角形状や、それ以外の形状であってもよい。
【0075】
上記実施形態では、加湿ロータ20の枠部材22に設けられた水汲み部26によって、加湿フィルタ21に水を供給するようになっているが、加湿フィルタ21に水を供給するための構成はこれに限定されない。例えば、枠部材22に水汲み部26を設ける代わりに、水汲み部を有する回転体を配置して、この回転体の水汲み部によって貯水容器31内の水を汲み上げて、加湿フィルタに掛けるようになっていてもよい。
【0076】
上記実施形態では、加湿フィルタ21は、防水部21b(外周部)が保持部22aによって保持されているが、防水部21b以外の部分が保持される構成であってもよい。
【0077】
上記実施形態では、送風機3の停止時の貯水容器31内の水面は、加湿フィルタ21の下端の位置Aより下方にあるが、この構成に限定されない。加湿フィルタ21の防水部21bより内側の部分が貯水容器31内の水に浸からなければ、送風機3の停止時の貯水容器31内の水面が加湿フィルタ21の下端の位置Aより上方にあってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明を利用すれば、加湿能力の低下を抑制しつつ、加湿運転停止時に加湿フィルタが貯水容器内の水を吸水するのを防止できる。
【符号の説明】
【0079】
1 加湿機
3 送風機
20 加湿ロータ
21 加湿フィルタ
21b 防水部(吸水防止手段)
22 枠部材
22a 保持部
26 水汲み部26
31 貯水容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機と、
水を貯留する貯水容器と、
前記貯水容器の上方で且つ前記送風機によって発生する空気流の流路に配置され、加湿運転時に回転駆動されると共に前記貯水容器から供給された水を気化させる加湿フィルタと、
加湿運転停止時において前記貯水容器内の水面が所定高さより上昇したときに、前記加湿フィルタへの吸水を防止する吸水防止手段とを備えることを特徴とする加湿機。
【請求項2】
前記吸水防止手段が、前記加湿フィルタの外周部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加湿機。
【請求項3】
前記吸水防止手段が、前記貯水容器内の水を吸水しないように構成された防水部であることを特徴とする請求項2に記載の加湿機。
【請求項4】
前記加湿フィルタの前記防水部を保持する保持部を備えることを特徴とする請求項3に記載の加湿機。
【請求項5】
加湿運転停止時で且つ前記送風機が停止しているときに、前記貯水容器内の水面が、前記加湿フィルタの下端より下方にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の加湿機。
【請求項6】
前記貯水容器内の水を汲み上げて前記加湿フィルタに掛けるための水汲み部を備えることを特徴とする請求項5に記載の加湿機。
【請求項7】
前記加湿フィルタが円形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の加湿機。
【請求項8】
前記加湿フィルタが、合成樹脂製であって、
前記防水部が、熱溶着処理によって形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の加湿機。
【請求項9】
前記防水部が、フィルタ本体に撥水剤を塗布することで形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の加湿機。
【請求項10】
前記防水部が、フィルタ本体にシール部材を溶着することで形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の加湿機。
【請求項11】
前記防水部が、フィルタ本体に防水テープを貼り付けることで形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の加湿機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−247109(P2012−247109A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118369(P2011−118369)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】