説明

加熱プラテンアセンブリのためのスリップカバー

【課題】生物学的試験デバイスにおいて使用するための加熱プラテンアセンブリを提供すること。
【解決手段】放射線が、加熱プラテンを通過すことを可能にするように構成される複数の光学的開口部を規定する加熱プラテンと、この複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように構成される光透過型スリップカバーと、この複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆ってスリップカバーを保持するための手段とを有する、生物学的試験デバイスにおいて使用するための加熱プラテンアセンブリが開示される。別の局面において、保持するための手段は、スリップカバーを取り囲んで保持するように構成される加熱プラテンにより規定される陥凹部分を備え得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
本教示は、生物学的試験デバイスにおいて使用するための加熱プラテンアセンブリに関する。より具体的には、本教示は、このような加熱プラテンアセンブリにおける少なくとも1つの光学的開口部を覆うための光透過型のスリップカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
生物学的試験は、疾患を検出およびモニタリングする上で重要なツールとなりつつある。生物学の分野において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および他の反応を実施するために、熱サイクリングが利用される。PCRプロセスを用いてDNA(デオキシリボ核酸)を増幅するために、専用の液体反応混合物が、いくつかの異なる温度インキュベーション時間を含むPCRプロトコールによりサイクルされる。PCRプロセスの1つの局面は、熱サイクリングの概念である:DNAを融解する交互工程、生じた一本鎖に短いプライマーをアニールさせる工程、およびこれらのプライマーを伸長して二本鎖DNAの新しいコピーを作製する工程。熱サイクリングの間、複数のサンプルウェルの各々の温度は、実質的に均一であることが望ましくあり得る。さらに、キャップまたは他のサンプルウェル被覆への結露が避けられることが望ましくあり得る。
【0003】
サンプルウェルの頂部への結露を阻害する1つの方法は、サンプルウェルトレイの頂部またはキャップを下に押すための加熱プラテンを提供することである。このような押し込み力は、しばしば、プラテンの周囲に配置される1つ以上のバネを用いて達成される。プラテンは、代表的には、カバーの部分として備えられ得、代表的には、金属であり得る。プラテンは、プラテンに接続された抵抗性要素を利用して、熱をサンプルウェルのキャップに伝導し、それによって結露を阻害し得る。さらに、プラテンは、サンプルウェルを下に押し得、その結果、サンプルウェルの外側の円錐状表面が、サンプルブロックの嵌合表面に対してしっかりと押される。このことは、サンプルウェルへの熱の伝導を増加し得、サンプルウェルの温度の均一な分布を促進し得る。プラテンはまた、デバイスの内部からの熱の漏れを防ぎ得る。加熱プラテンを備えるシステムの例は、米国特許第5,475,610号、同第5,602,756号および同第5,710,381号(これらは全て、本発明の譲受人に譲渡され、その全内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載されている。
【0004】
加熱プラテンがサンプルウェルに光アクセス可能にすることがまた望ましくあり得る。これを達成するために、加熱プラテンは、加熱プラテンを通して、光を光源からサンプルへと通過させ、次いで、検出デバイスまで通過させる、複数の光学的開口部を有し得る。これらの穴は、光学的アクセスを可能にする利点を提供する一方で、また、穴を通る、そして/または、プラテンの上面から放射される熱の損失を促進し得る。熱の損失に加え、熱サイクリングデバイスは、長時間使用されるので、ゴミまたは他の外来性粒子が、光学的開口部に堆積し得、従って、加熱プラテンを通り得る光の量を減少し得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
1つの局面において、本教示は、複数の光学的開口部を規定する加熱プラテンを包含する。光学的開口部は、放射線(radiation)が加熱プラテンを通過することを可能にするように構成され得、そして、加熱プラテンは、第1の側と第2の側とを有し得、
第1の側は、複数のサンプルウェルから向きをそらすように構成され、第2の面は、複数のサンプルウェルに面するように構成される。加熱プラテンはまた、加熱プラテン上の第1の側上の複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように構成される光透過型スリップカバーを備え得る。複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆ってスリップカバーを保持するための手段がまた包含され得る。
【0006】
別の局面に従って、保持するための手段は、スリップカバーを取り囲んで保持するように構成される加熱プラテンにより規定される陥凹部分を備え得る。
【0007】
別の局面において、スリップカバーが加熱プラテンの陥凹部分に位置付けられる場合、スリップカバーの上面は、加熱プラテンの上面と実質的に平坦であり得る。
【0008】
なお別の局面において、保持するための手段は、複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆ってスリップカバーを保持するように構成されるフレーム部材を備え得る。
【0009】
別の局面に従って、フレーム部材は、加熱プラテンに取り外し可能に取り付け可能であり得る。
【0010】
1つの局面において、フレーム部材は、加熱プラテンに対して所望の関係で、スリップカバーを保持するように構成される陥凹部分をさらに備え得る。
【0011】
別の局面に従って、フレーム部材は、加熱プラテンにフレーム部材を取り付けるための複数の穴を規定し得る。
【0012】
別の局面に従って、アセンブリは、スリップカバーと加熱プラテンとの間にガスケットをさらに備え得る。
【0013】
なお別の局面において、ガスケットは、スリップカバーの外側端と加熱プラテンとの間に位置付けられ得る。
【0014】
別の局面に従って、アセンブリは、複数の光学的開口部に面するスリップカバーの表面と、この複数の光学的開口部を取り囲む加熱プラテンの表面の領域との間に位置付けられるガスケットをさらに備え得る。
【0015】
1つの局面において、生物学的試験デバイスにおいて使用するための加熱プラテンアセンブリが提供され、この加熱プラテンアセンブリは、加熱プラテンの第1の側から加熱プラテンの第2の側へと放射線が通過できるように複数の光学的開口部を規定する加熱プラテンと、試験されるサンプルから面をそらした側の複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うための手段とを備える。さらに、複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うための手段は、光に透過性であり得る。
【0016】
別の局面に従って、複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うための手段を保持するように構成される保持手段が、提供され得る。
【0017】
別の局面において、保持手段は、加熱プラテンにより規定される陥凹部分を備え得る。
【0018】
なお別の局面において、保持手段は、スリップカバーを陥凹部分内に保持するように構成されるフレーム部材をさらに備え得る。
【0019】
別の局面に従って、保持手段は、複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆って、スリップカバーを所定の位置に保持するように構成されるフレーム部材を備え得る。
【0020】
なお別の局面において、フレーム部材は、複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆ってスリップカバーを取り囲んで所定の位置に保持するように構成される陥凹部分を備え得る。
【0021】
別の局面において、生物学的試験デバイスにおいて使用するための加熱プラテンアセンブリが提供され得、この加熱プラテンアセンブリは、加熱プラテンの第1の側から加熱プラテンの第2の側へと放射線が通過することを可能にするように構成される複数の光学的開口部を規定する加熱プラテンと、複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように構成される光透過型スリップカバーと、複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆ってスリップカバーを保持するように構成される固定装置とを備える。
【0022】
別の局面に従って、アセンブリは、複数の光学的開口部に面するスリップカバーの表面と、複数の光学的開口部を取り囲む加熱プラテンの表面の領域との間に位置付けられるシール部材をさらに備え得る。
【0023】
なお別の局面に従って、固定装置は、スリップカバーと加熱プラテンとの間にプレスばめを提供するように構成されるシール部材をさらに備え得る。
【0024】
別の局面に従って、生物学的試験デバイスにおいて使用するための加熱プラテンアセンブリが提供され得、この加熱プラテンアセンブリは、加熱プラテンの第1の側から加熱プラテンの第2の側へと放射線が通過することを可能にするように構成される複数の光学的開口部を規定する加熱プラテンと、複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように構成される光透過型スリップカバーと、複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆ってスリップカバーを保持するように構成される固定装置とを備える。固定装置は、複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆ってスリップカバーを取り囲んで所定の位置に保持するように構成される加熱プラテンにより規定される陥凹部分を備え得、固定装置は、この陥凹部分内にスリップカバーを保持するように構成されるフレーム部材をさらに備え得る。
したがって、本発明は、以下も提供する。
(1)
生物学的試験デバイスにおいて使用するための加熱プラテンアセンブリであって、該加熱プラテンアセンブリは:
複数の光学的開口部を規定する加熱プラテンであって、該光学的開口部は、放射線が該加熱プラテンを通過することを可能にするように構成され、該加熱プラテンは第1の側と第2の側とを有し、該第1の側は、複数のサンプルウェルから向きをそらすように構成され、そして、該第2の側は、該複数のサンプルウェルに面するように構成される、加熱プラテン;
該加熱プラテンの第1の側上の該複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように構成される、光透過型スリップカバー;および
該複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように該スリップカバーを保持するための手段
を備える、加熱プラテンアセンブリ。
(2)
前記保持するための手段が、前記加熱プラテンにより規定される陥凹部分を備え、該加熱プラテンの部分が、前記スリップカバーを取り囲んで保持するように構成された該陥凹部分を規定する、項目1に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(3)
前記スリップカバーが、前記加熱プラテンの陥凹部分に位置付けられる場合に、該スリップカバーの上面が前記加熱プラテンの上面と実質的に平坦である、項目2に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(4)
前記保持するための手段が、前記複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように前記スリップカバーを保持するように構成されるフレーム部材を備える、項目2に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(5)
前記フレーム部材が、前記加熱プラテンに取り外し可能に取り付け可能である、項目4に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(6)
前記フレーム部材が、前記加熱プラテンに対して所望の関係で前記スリップカバーを保持するように構成される陥凹部分をさらに備える、項目4に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(7)
前記フレーム部材が、シートメタルを備える、項目4に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(8)
前記フレーム部材が、前記加熱プラテンに該フレーム部材を取り付けるための複数の穴を規定する、項目4に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(9)
前記スリップカバーがガラスを含む、項目1に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(10)
前記スリップカバーが、約0.5mm以下の厚みを有する、項目9に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(11)
前記スリップカバーが、蛍光を発しない透明なポリカーボネートを含む、項目1に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(12)
前記スリップカバーが、約0.6mm〜約3.2mmの厚みを有する、項目11に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(13)
前記スリップカバーが、前記加熱プラテンに接着されている、項目1に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(14)
前記スリップカバーと前記加熱プラテンとの間にガスケットをさらに備える、項目1に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(15)
前記ガスケットが、前記スリップカバーの外側端と前記加熱プラテンとの間に位置付けられる、項目14に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(16)
前記複数の光学的開口部に面する前記スリップカバーの表面と、該複数の光学的開口部を取り囲む前記加熱プラテンの表面の領域との間に位置付けられるガスケットをさらに備える、項目4に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(17)
前記加熱プラテンが、4個、8個、12個、24個、48個、96個、384個または1536個の光学的開口部を規定する、項目1に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(18)
生物学的試験デバイスにおいて使用するための加熱プラテンアセンブリであって、該加熱プラテンアセンブリは:
加熱プラテンであって、試験されるサンプルから向きをそらすように構成される該加熱プラテンの第1の側から、該第1の側に対向し、試験されるサンプルに面するように構成される該加熱プラテンの第2の側へと、放射線が通過できるように複数の光学的開口部を規定する、加熱プラテン;および
該加熱プラテンの第1の側上の該複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うための手段であって、該手段は、光に透過性である該複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うためのものである、手段
を備える、加熱プラテンアセンブリ。
(19)
前記複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うための手段が、スリップカバーを備える、項目18に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(20)
前記複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うための手段を保持するように構成される、保持手段をさらに備える、項目18に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(21)
前記保持手段が、前記加熱プラテンにより規定される陥凹部分を備える、項目20に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(22)
前記保持手段が、前記陥凹部分内に前記スリップカバーを保持するように構成されるフレーム部材をさらに備える、項目21に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(23)
前記保持手段が、前記複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように、前記スリップカバーを所定の位置に保持するように構成されるフレーム部材を備える、項目20に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(24)
前記フレーム部材が、前記複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように、前記スリップカバーを取り囲んで所定の位置に保持するように構成される陥凹部分を備える、項目22に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(25)
前記フレーム部材が、前記複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように、前記スリップカバーを取り囲んで所定の位置に保持するように構成される陥凹部分を備える、項目23に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(26)
生物学的試験デバイスにおいて使用するための加熱プラテンアセンブリであって、該加熱プラテンアセンブリは:
複数の光学的開口部を規定する加熱プラテンであって、該光学的開口部は、放射線が該加熱プラテンを通過することを可能にするように構成され、
該加熱プラテンは、第1の側と第2の側とを有し、該第1の側は、複数のサンプルウェルから向きをそらすように構成され、そして、該第2の側は、該複数のサンプルウェルに面するように構成される、加熱プラテン;
該加熱プラテンの第1の側上の該複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように構成される、光透過型スリップカバー;および
該複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように該スリップカバーを保持するように構成される、固定装置
を備える、加熱プラテンアセンブリ。
(27)
前記固定装置が、前記加熱プラテンにより規定される陥凹部分を備え、そして、前記複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように前記スリップカバーを所定の位置に保持するように構成される、項目26に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(28)
前記固定装置が、前記陥凹部分内に前記スリップカバーを保持するように構成されるフレーム部材をさらに備える、項目27に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(29)
前記固定装置が、前記複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように、前記スリップカバーを所定の位置に保持するように構成されるフレーム部材を備える、項目26に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(30)
前記フレーム部材が、前記複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように、前記スリップカバーを取り囲んで所定の位置に保持するように構成される陥凹部分を規定する、項目28に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(31)
前記フレーム部材が、前記複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように、前記スリップカバーを取り囲んで所定の位置に保持するように構成される陥凹部分を規定する、項目29に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(32)
前記複数の光学的開口部に面する前記スリップカバーの表面と、該複数の光学的開口部を取り囲む前記加熱プラテンの表面の領域との間に位置付けられるシール部材をさらに備える、項目30に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(33)
前記複数の光学的開口部に面する前記スリップカバーの表面と、該複数の光学的開口部を取り囲む前記加熱プラテンの表面の領域との間に位置付けられるシール部材をさらに備える、項目31に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(34)
前記固定装置が、前記スリップカバーと前記加熱プラテンとの間にプレスばめを提供するように構成されるシール部材をさらに備える、項目27に記載の加熱プラテンアセンブリ。
(35)
生物学的試験デバイスにおいて使用するための加熱プラテンアセンブリであって、該加熱プラテンアセンブリは:
複数の光学的開口部を規定する加熱プラテンであって、該複数の光学的開口部は、放射線が該加熱プラテンの第1の側から該加熱プラテンの第2の側へと通過することを可能にするように構成される、加熱プラテン;
該複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように構成される、光透過型スリップカバー;および
該複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように該スリップカバーを保持するように構成される固定装置であって、該固定装置は、該複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように、該スリップカバー取り囲んで所定の位置に保持するように構成される加熱プラテンにより規定される陥凹部分を備え、該固定装置は、該陥凹部分内に該スリップカバーを保持するように構成されるフレーム部材をさらに備える、固定装置
を備える、加熱プラテンアセンブリ。
(36)
前記フレーム部材が、前記複数の光学的開口部のうち少なくとも1つを覆うように、前記スリップカバーを取り囲んで所定の位置に保持するように構成される陥凹部分を規定する、項目35に記載の加熱プラテンアセンブリ。
【0025】
他の局面はなお、以下の説明から明らかとなる。その広義において、本発明は、本明細書中に記載される1つ以上の局面を達成することなく実施され得ることが理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(種々の実施形態の説明)
ここで、本教示の非限定的な例示的実施形態に対する言及がなされる。その実施形態の例は、添付の図面に示される。可能な場合は常に、同じ参照番号が、同じ部品または同様の部分を指すために図面および明細書中で使用される。アルファベットの接尾辞または数字の接頭辞を伴う同じ参照番号が、類似する部品を指すために使用される。
【0027】
種々の実施形態に従って、加熱プラテンアセンブリが、提供される。1つの局面において、その加熱プラテンアセンブリは、核酸増幅を実施するための生物学的試験デバイスにおいて使用され得る。種々の実施形態において、その加熱プラテンアセンブリは、加熱プラテン、光透過型スリップカバー、およびその加熱プラテンに対して実質的に固定された関係にてスリップカバーを保持するための手段を備える。この加熱プラテンアセンブリは、数ある成分のうちでも、スリップカバーに関連したさらなる固定手段をさらに備え得る。
【0028】
図1において、加熱アセンブリ5の分解斜視図が、示される。この加熱アセンブリ5は、加熱プラテン10およびスリップカバー40を備える。示されるように、スリップカバー40は、形状が矩形であり、4つの辺42および4つの角44を有する。しかし、スリップカバー40はまた、選択した加熱プラテン上に取り付けるための任意の適切な形状であり得る。加熱プラテン10は、核酸増幅デバイスとともに作動するような構成である任意の型のデバイスであり得る。生物学的サンプルの核酸増幅を実施する1つの一般的方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。種々のPCR方法は、例えば、Woudenbergらに対する米国特許第5,928,907号および同第6,015,674号(その開示は、あらゆる目的のために本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、当該分野で公知である。核酸増幅の他の方法としては、例えば、リガーゼ連鎖反応、オリゴヌクレオチド連結アッセイ、およびハイブリダイゼーションアッセイが挙げられる。これらの方法および他の方法は、米国特許第5,928,907号および同第6,015,674号(これらもまた、本明細書中に参考として援用される)においてより詳細に記載される。
【0029】
1つの実施形態において、熱サイクリングデバイスは、熱サイクリングの間のサンプルの核酸増幅のリアルタイム検出を実施する。リアルタイム検出システムは、これもまた例えば、Woundenbergらに対する米国特許第5,928,907号および同第6,015,674号(上記で本明細書中に援用される)においてより詳細に記載されるように、当該分野で公知である。リアルタイム検出の間に、そのサンプルの種々の特徴が、熱サイクリングの間に検出される。リアルタイム検出は、核酸増幅の間の、サンプルの正確かつ効率的な検出およびモニタリングを可能にする。
【0030】
加熱プラテン10は、任意の型のサンプルウェルトレイ(例えば、96ウェルサンプルウェルトレイ、384ウェルサンプルトレイ、およびマイクロカードサンプルトレイが挙げられる)を用いて使用するための構成であり得る。他の構成としては、とりわけ、4サンプルウェル、8サンプルウェル、12サンプルウェル、24サンプルウェル、48サンプルウェル、および1,536サンプルウェルが挙げられる。これらのサンプルウェルトレイのサイズおよび形状は、当該分野で周知である。本発明における使用のために適切な96ウェルサンプルウェルトレイの例は、Moringらに対するWO00/25922(その完全な開示は、あらゆる目的のために本明細書中で参考として援用される)において記載される。本発明における使用のために適切なマイクロカード型のサンプルウェルトレイの例は、Fryeらに対するWO01/28684(その完全な開示は、あらゆる目的のために本明細書中で参考として援用される)、Woudenbergらに対するWO97/36681(その完全な開示は、あらゆる目的のために本明細書中で参考として援用される)、本発明の譲渡人に譲渡された2001年7月3日に出願した米国特許出願番号09/897,500(その完全な開示が、あらゆる目的のために参考として本明細書中に援用される)、および本発明の譲渡人に譲渡された2001年10月16日に出願した米国特許出願番号09/977,225(その完全な開示が、あらゆる目的のために参考として本明細書中に援用される)に記載される。任意の数のサンプルウェルおよびサンプルウェルサイズを有するサンプルウェルトレイもまた、本発明の熱サイクリングデバイスとともに使用され得る。サンプルウェルの容積は、約0.01μlから数千マイクロリットル(μl)までのどこかに変化し得る。10μl〜500μl間の容積が、代表的である。
【0031】
本明細書中で具体化されそして図1にて示されるように、加熱プラテンアセンブリの加熱プラテン10は、複数の光学開口部12を規定する。光学開口部12は、上部表面14(図4を参照のこと)から下面16(図5を参照のこと)への光学的接近を可能にするように、加熱プラテン10を完全に通る。この様式で、放射線(例えば、光(例えば、レーザーまたは電球(例えば、石英電球)から放射された光))が、加熱プラテン10を通っ
て、加熱プラテンの一側面上に位置する複数の生物学的サンプルへと至り得る。図1〜5に示されるように、加熱プラテン10は、中に384サンプルウェルを含むサンプルカードもしくはトレイと対応するように、384個の光学開口部12を規定する。加熱プラテン10が、試験するために使用されているカードもしくはトレイ中に含まれる多数のサンプルウェルと等しい数の光学開口部12を含むことが、一般的であるが、加熱プラテンは、望ましい場合には、サンプルウェルの数とは異なる数の開口部を代わりに有し得る。
【0032】
特定の実施形態では、加熱プラテン10はまた、スリップカバー40を受容するための複数の光学的開口部12を実質的に取り囲む陥凹領域18を含む。図1に描写されるように、陥凹領域18は、スリップカバー40が加熱プラテン10の陥凹領域18に位置決めされるとき、陥凹領域18を取り囲む加熱プラテン10の部分と平らになるように、スリップカバー40の厚みとほぼ等しい深さである。しかし、陥凹領域18は、それに代わって、スリップカバー40の厚みより大きい深さか、または小さい深さであってもよい。陥凹領域18は、光学的開口部12に面するスリップカバーの表面と接触するために実質的に平坦な表面を規定する。加熱プラテン10、スリップカバー40および陥凹領域18は、形状が矩形であるとして描写されているが、これらのコンポーネントは、サンプルウェルトレイと組合せて作動するために適切な任意の形状であり得る。
【0033】
図1にまた示されるのは、スリップカバー40を所定の位置に保持するための固定装置として用いられるフレーム部材50である。本明細書で用いられるとき、この固定装置は、制限されずに、フレーム部材、陥凹領域、ガスケット、接着剤、または加熱プラテン10上に位置決めされるクリップデバイス(単数または複数)を含み得る。スリップカバー40を保持する機能を行い得る当該技術分野で公知のその他の固定装置、または上記複数の光学的開口部12の少なくとも1つの上の場所にあるその他のカバー装置もまた企図される。フレーム部材50は、任意の適切な材料、例えば、シートメタルまたは約80℃またはそれ以上の作動温度に耐えるに適切な任意のその他の材料から作製され得る。さらに、加熱プラテンを用いる生物学的またはその他の試験に適切なその他の温度範囲が所望されてもよく、そしてフレーム部材50用の材料は、所望の温度範囲にほぼ適切であり得ることが企図される。
【0034】
図1〜5に示される実施形態では、フレーム部材50は、加熱プラテン10に対して実質的に静止した位置にスリップカバー40を保持することを支援するように構成される。図2に示されるように、フレーム部材50およびスリップカバー40は、加熱プラテン10上の所定の位置にある。フレーム部材50は、プラテン10中に位置決めされる複数の穴20に対応する複数の穴52を規定する(図1を参照のこと)。固定デバイス(図示せず)、例えば、ネジまたは任意のその他の適切なデバイスが、次いで、穴52を通って穴20中に挿入され得、フレーム部材50を所定の位置に保持する。スリップカバー40の外側周縁は、それによって、フレーム部材50と加熱プラテン10の陥凹18との間に挟持される。フレーム部材50は、それが加熱プラテン10上の所定の位置にあるとき、任意の光学的開口部12を覆い隠すことがないような寸法であり得る。図6に示される例では、フレーム部材50は、小量、例えば、0.3mmだけスリップカバー40に重複する。この重複は、小量から極めて大まで変化され得る。
【0035】
加熱プラテン10上の所定の位置にスリップカバー40を維持するためのその他の改変例もまた存在する。図3および3aに描写される実施形態では、陥凹18のみが、スリップカバー40の移動を封じ込め/取り囲みおよび制限するために陥凹18の境界または壁部分18aを利用することにより、スリップカバー40を所定の位置に簡単に保持するに十分であり得る。このような実施形態では、フレーム部材50は省略され得、そして陥凹領域18は、重力とともに、スリップカバー40を加熱プラテン10に対して所望の位置に維持するために十分であり得る。
【0036】
本質的にたまり場(drop−in)形態を提供し、それによって重力がスリップカバー40を所定の位置に保持することに加え、陥凹領域18の周の周りに、ガスケット(図示せず)またはその他の適切なデバイスを配置することもまた所望され得、このスリップカバーのプレスばめを可能にする。このようなプレスばめは、配向にかかわらず、スリップカバー40を保持し得る。緊密公差製造法(tight tolerance manufacturing)を採用して、任意のさらなるガスケットまたはその他のデバイスの使用なくしてこのようなプレスぱめを提供することもまた可能であり、それによって、スリップカバー40は、加熱プラテン10とスリップカバー40との間の接触適合単独により陥凹領域18中に保持され得る。
【0037】
特定の実施形態では、接着剤またはその他の適切な材料が、加熱プラテン10上の所定の位置に、スリップカバー40を永久的または半永久的に固定するために利用される。この接着剤は、陥凹18の周の周り、および/または複数の穴12の間の陥凹18の領域上に付与され得る。
【0038】
フレーム部材50はまた、スリップカバー40を収容するような形態の陥凹部分とともに提供され得る。スリップカバー40が陥凹18より大きい厚みであるとき、フレーム部材50の陥凹部分は、スリップカバー40を所定の位置に保持することを支援するために用いられ得る。さらに、加熱プラテン10は、陥凹部分18を有さなくてもよいことが企図され、その場合、フレーム部材50の陥凹部分は、スリップカバーの移動を制限するために利用され得る。これらの実施形態のいずれかにおいても、フレーム部材50およびスリップカバー40は一緒に固定されてもよく、次いで、本明細書に記載のように、または加熱プラテン10に固定するために適切な任意の他の手段により加熱プラテン10に固定され得る、単一フレーム部材/スリップカバーアセンブリを形成する。
【0039】
図4は、上面14を見下ろす、加熱プラテン10の平面図を描写する。図4に見られるように、加熱プラテン10は、陥凹18の周の周りに1つ以上のリリーフ領域24を含み得る。リリーフ領域24は、スリップカバー40の辺42または角44へのアクセスをより容易にするために提供され得、その結果、スリップカバー40は、陥凹領域18からより容易に除去され得る。リリース領域24は、形状が半球形として描写されているが、これらのリリーフ領域は、スリップカバー40の辺42または角44へのアクセスを可能にするために適切な任意の形状であり得る。
【0040】
スリップカバー40は、光学的開口部12を通り、そして生物学的サンプル中(描写せず)への、光りのような照射の伝達を可能にする任意の適切な材料から作製され得る。例えば、スリップカバー40は、ガラスまたはプラスチックから作製され得る。スリップカバー40はまた、所望に応じて光学的開口部の上に適合する適正なサイズに切断され得る光透過性膜材料から作製され得る。PCRデバイスの垂直または「ヘッド」スペースはしばしば制限されているので、相対的に小さな厚みのスリップカバーを有することが所望され得る。特定の実施形態では、このスリップカバーの厚みは、0.5mm以下の範囲にあり得る。このような例では、陥凹18は、スリップカバー40が加熱プラテン10の上表面14の完全に下に静止するか、または表面14と平らにするのに十分深くあり得る。
【0041】
しかし、スリップカバー40の任意の可能な鋭い辺の切り捨て、面取り、またはその他の平滑化を可能にし得るより厚いスリップカバーを利用することも所望され得る。さらに、より厚いスリップカバーは、より薄いものより耐久性であり得る。
【0042】
スリップカバー40のためのその他の適切な材料は、透明な蛍光を発しない、LEXANのようなポリカーボネートを含む。ポリカーボネートまたはその他の類似の材料から作
製さるとき、小さい厚みで蛍光を発するその傾向のために、わずかにより厚いカバーを提供することが所望され得る。例えば、約0.6〜3.2mmの範囲にある厚みをもつLEXANスリップカバーを有することが所望され得る。加熱プラテンで達成される作動温度に耐え得るスリップカバー40としての使用のためのその他の材料もまた企図され得る。
【0043】
スリップカバー40のゴミ蓄積防止をさらに促進するために、ガスケットまたはその他のタイプのシール部材(図示せず)が、加熱プラテン10とスリップカバー40との間に提供され得る。このようなガスケットは、上記に記載のガスケットに類似であり得、そこでは、それは、プレスばめを提供するためにスリップカバー40の辺42の周りに位置され得るか、またはガスケットは、光学的開口部12に向かって面するスリップカバー40の表面と、光学的開口部12のマトリックスを取り囲む領域内の加熱プラテン10の表面との間に挟持されて提供され得る。このガスケット、またはo−リングは、このようなガスケットのために用いられる任意の適切な材料から作製され得る。このシールはまた、複数の開口部の周の周りで、粘性形態で付与され得、次いで加熱プラテン10に固定されるシールに固化される、加熱プラテンの作動温度範囲に対して適切な任意の耐熱性材料を含み得る。このシール/ガスケットは、例えば、Neoprene、Buma−N、Viton、Teflon、Kalrez、シリコーン、またはPCR環境における使用に適切なその他の類似の材料から作製され得る。このシールはまた、これに代わり、スリップカバー40にもまた付与され得る。加熱プラテン10とスリップカバー40との間に位置決めされたガスケットまたはシール部材は、それ故、光学的開口部12を閉塞し得る外来物質に対してさらなる障壁を提供し得る。この障壁はまた、実質的に気密なシールとして提供され得る。
【0044】
上記のように、加熱プラテン中の光学的開口部を通じる熱損失は、従来デバイスでは問題であり得る。さらなる利点として、本明細書に記載のようなスリップカバーはまた、加熱プラテンの温度を周囲温度から所望の作動温度まで上昇するために必要なウォームアップ時間を減少し得る。1つの非限定的な例では、本明細書に記載のスリップカバーは、例えば、103℃の作動温度までのウォームアップ時間を50%近く減少し得る。
【0045】
図7に描写されるように、加熱プラテンアセンブリ5は、生物学的試験デバイス100の例示の実施形態中の所定の位置に描写されている。この例示の実施形態における試験デバイス100は、例えば、CCDカメラである光学的検出デバイス110、光源112、レンズ114、加熱プラテンアセンブリ5、サンプルブロック116、およびサンプルウェルトレイ118を備える。サンプルウェルトレイ118は、サンプル122を含めるために複数のサンプルウェル120を備える。作動において、光源112から発せられた光は、サンプル122と相互作用する。次いで、サンプル122から発せられる、および/または反射される光は、光学的開口部12を通って伝わり、そしてスリップカバー40を通過する。次いで、光は、検出デバイス110によって受けられる前に、例えば、レンズ114によって集められ、および/またはコリメートされ得る。加熱プラテン5と組合せて使用可能な生物学的試験装置のさらなる例は、本明細書中に参考として援用される1つ以上の書類に記載されている。加熱プラテン5はまた、図7に描写されるもの以外の試験デバイスに適切であり得る。
【0046】
本明細書および実施例は、例示のみとして考慮されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
添付の図面は、本明細書中に組み込まれており、本明細書の一部を構成する。添付の図面は、少なくとも1つの例示的実施形態を示す。
【図1】図1は、スリップカバーを固定するためのフレームを備える加熱プラテンアセンブリの分解斜視図である。
【図2】図2は、組み立てられた図1の加熱プラテンの斜視図である。
【図3】図3は、スリップカバーを備える加熱プラテンアセンブリの別の実施形態の分解斜視図である。図3aは、組み立てられた図1の加熱プラテンの斜視図である。
【図3a】図3は、スリップカバーを備える加熱プラテンアセンブリの別の実施形態の分解斜視図である。図3aは、組み立てられた図1の加熱プラテンの斜視図である。
【図4】図4は、図1の加熱プラテンアセンブリの上面の平面図である。
【図5】図5は、図1の加熱プラテンアセンブリの下面の平面図である。
【図6】図6は、図2に示されるアセンブリの平面図である。
【図7】図7は、例示的な生物学的試験デバイスと組み合わせた図1の加熱プラテンの部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3a】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−245643(P2008−245643A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68435(P2008−68435)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【分割の表示】特願2004−523290(P2004−523290)の分割
【原出願日】平成15年7月22日(2003.7.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(500069057)アプレラ コーポレイション (120)
【住所又は居所原語表記】850 Lincoln Centre Drive Foster City CALIFORNIA 94404 U.S.A.
【Fターム(参考)】