説明

加熱処理したペーストを使用したペットフードの製造方法

【課題】加熱処理したペーストを使用したセミモイストタイプ又はソフトドライタイプのペットフードの製造方法を提供すること。
【解決手段】70℃以上150℃以下で5分間以上30分間以下加熱混練処理を行った、40℃以下で固化する油脂100質量部に対し穀粉及び/又は澱粉10〜200質量部を含むペーストにより被覆することを特徴とするドライタイプ又はセミモイストタイプ又はソフトドライタイプのペットフードの製造方法である。また、ペーストを飼料基材100質量部に対して5質量部以上40質量部以下の割合で使用することを特徴とする前記ペットフードの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱処理したペーストを使用したドライタイプ又はセミモイストタイプ又はソフトドライタイプのペットフードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットフードには、水分が10質量%以下のドライタイプ、水分が75質量%程度のウェットタイプ、水分が25質量%〜35質量%程度で加熱発泡させたソフトドライタイプや発泡させないセミモイストタイプ、その他としてジャーキー類や小麦菓子等がある。
ドライタイプのペットフードは、例えば、押出機を使用して、小麦粉、とうもろこし、脱脂大豆、チキンミール、ビーフミール、ミネラルやビタミン等を所定の量で配合したペットフード用原料混合物に適量の水(原料混合物100質量部に対して水を10〜40質量部の割合)を加えて100℃〜150℃で押し出し、それを所定の長さに切断した後、水分含量が10質量%以下になるまで乾燥することにより製造することができる。
水を加えた原料混合物の混練温度およびダイスからの押出温度が100℃以上であると、一般に膨化したペットフードが得られる。
ソフトドライタイプのペットフードは、前記した押出機によるドライタイプのペットフードの製造工程において、原料混合物に加える水の量をドライタイプのペットフードの製造時よりも多くし、押し出し切断後の乾燥処理を調整することで水分含量を25〜35質量%に調節することにより得ることができる。
セミモイストタイプのペットフードは、押出機による押し出し時に冷却して膨化させないようにすることにより得ることができる。
【0003】
大半のドライタイプのペットフードにおいて、ペットの嗜好性を高める手法として油脂やエキスで被覆することが行われている。
エキスの添加は嗜好性を決定する要因として大きな効果がある。
添加するエキスとしては、チキンエキス、ビーフエキス、ポークエキス、マトンエキスなどの畜肉エキス、カツオエキス、イワシエキス、マグロエキス、サバエキス、サケエキスなどの魚介エキス、酵母エキスなどが挙げられる。
一方、油脂やエキスで被覆すること以外にバッターにより被覆することも行われている。
例えば、粒状に成型された飼料基材にバッターをコーティングし、さらにバッターの物性を利用して、別の粒状素材を結着させたことを特徴とする飼料が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−166872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のバッターによりコーティングしたペットフードでも十分な嗜好性向上効果があるがさらに嗜好性を高める方法が求められている。
従って、本発明の目的は、加熱混練処理したペーストを使用したドライタイプ又はセミモイストタイプ又はソフトドライタイプのペットフードの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、飼料基材を被覆する前に、被覆に使用するペーストを加熱混練処理することにより嗜好性を著しく改善出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、70℃以上150℃以下で5分間以上30分間以下加熱混練処理を行った、40℃以下で固化する油脂100質量部に対し穀粉及び/又は澱粉10〜200質量部を含むペーストにより被覆することを特徴とするドライタイプ又はセミモイストタイプ又はソフトドライタイプのペットフードの製造方法である。
また、ペーストを飼料基材100質量部に対して5質量部以上40質量部以下の割合で使用することを特徴とする前記ペットフードの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱混練処理を行ったペーストで被覆したドライタイプ又はセミモイストタイプ又はソフトドライタイプのペットフードは嗜好性にすぐれている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ドライタイプのペットフードとは水分が10質量%以下のペットフードをいい、ソフトドライタイプのペットフードとは水分含量が25質量%以上35質量%以下の膨化したペットフードをいい、セミモイストタイプのペットフードは水分含量が25質量%以上35質量%以下の膨化していないペットフードをいう。
対象となるペットは犬又は猫である。
本発明のペースト原料は、加熱処理の効果を十分に発揮するため、40℃以下で固化する油脂100質量部に対し、穀粉及び/又は澱粉10質量部以上200質量部以下を必須成分とする。
これに必要に応じて粉末エキス、色素、pH調整剤、増粘剤、繊維類、チキンミールなどの肉粉や魚肉、畜肉、野菜、グリセリン、糖類、乳清などを使用することができる。
【0009】
本発明で使用できる前記穀粉は、従来のペットフードに使用されている穀粉であれば特に限定はなく、例えば、小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、米粉、トウモロコシ粉、オーツ粉末などを挙げることができる。
また本発明で使用できる前記澱粉も従来のペットフード用に使用されている澱粉であれば特に限定はなく、例えば、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、さつまいも澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さご澱粉、くず澱粉等を挙げることができる。
これらの澱粉は未加工の生澱粉や、リン酸架橋、アセチル化などのエステル化やヒドロキシプロピル化などのエーテル化、湿熱処理、温水処理、油脂加工、α化等の加工した澱粉が使用できる。
穀粉及び/又は澱粉の配合比率は、油脂100質量部に対し穀粉及び/又は澱粉10質量部以上200質量部以下である。
穀粉及び/又は澱粉の配合比率が10質量部未満では表面のベタツキが多くなり好ましくない。
また、200質量部を超えると流動性が低くなる為、均一なコーティングが困難となり好ましくない。
【0010】
本発明において使用できる前記油脂としては、従来のペットフードに使用されている40℃以下で固化する油脂であれば特に限定はなく、例えば、牛脂、豚脂、鶏脂等を挙げることができる。
【0011】
本発明において粉末エキスを使用する場合は、従来のペットフードに使用されている粉末エキスであれば特に限定はない。
例えば、鶏、カモ、うずら、七面鳥などの鳥類、牛、豚、馬、羊、ウサギなどを原料とした粉末畜類エキス、イワシ、マグロ、カツオ、サバ、タイ、ヒラメ、サケ、マス、カニ、エビ、イカ、タコなどを原料とした粉末魚介エキス、パン酵母、ビール酵母、トルラ酵母などを原料とした粉末酵母エキスなどを使用することが出来る。
粉末エキスの配合比率は、油脂100質量部に対し粉末エキス1質量部以上80質量部以下が好ましい。
粉末エキスの配合比率が1質量部未満では嗜好性が低くなり好ましくない。
また、80質量部を超えると飽きが生じ易くなり摂食量が経時的に低下するため好ましくない。
【0012】
本発明では、飼料基材に被覆する前に、被覆に使用するペーストを加熱混練処理する。
加熱混練処理に使用する器具は、ペースト状になるまで加熱できる器具であれば特に限定はなく、鍋又はニーダーといった調理器具を使用することができる。
加熱は前記調理器具に原料と必要に応じて水を投入し混練しながら行う。
加熱混練処理は、70℃以上150℃以下で5分間以上30分間以下行いペーストを調製する。
これにより澱粉のα化及び澱粉と油脂等の加熱反応生成物を得ることができ嗜好性が向上したペーストを得ることができる。
加熱温度が70℃未満ではこの効果を十分に得ることができない。
加熱温度の上限は150℃であり、この温度を超えて加熱した場合、焦げ臭が強くなり十分な効果が得られない。
加熱時間は5分間未満では効果を十分に得ることができない。
また、加熱時間が30分間を超えても焦げ臭が強くなり、ペットの嗜好性が範囲内(5分間以上30分間以下)のものと比べて効果を十分に得ることができない。
好ましい加熱温度は80℃から120℃で、加熱混練時間は10分間から20分間である。
ペーストの残存水分は保存性の観点からペースト中15質量%以下にすることが好ましく、焦げ付き防止のためには3質量%以上が好ましい。
【0013】
加熱混練処理を行ったペーストをドライタイプ又はソフトドライタイプ又はセミモイストタイプのペットフードに被覆する方法は、例えば、80℃に加温した回転式ドラムミキサーに飼料基材を入れ、前記ペーストを徐々に投入してこれに被覆した後、自然冷却することで行うことができる。
前記ペーストの被覆量は適宜調整すればよく、例えば、飼料基材100質量部に対して5質量部以上40質量部以下の割合で使用することが出来る。
【実施例】
【0014】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜4、比較例1〜2]
とうもろこし50質量部、小麦粉16質量部、大豆粕12質量部、チキンミール8質量部、ミートミール7質量部、フスマ5質量部、ミネラル1質量部、ビタミン1質量部を十分に混合した後、水20質量部を加えて一軸押出機に供給し、温度140℃で混練してダイスから押し出し、切断した後、水分が8〜10%になるように120℃で20分乾燥させて、飼料基材となる膨化したドライフード粒(直径10mm、長さ10mm)を製造した。
次に、牛脂50質量部、小麦粉30質量部、ビール酵母エキス10質量部、レバーエキス10質量部を鍋に入れ、表1に示す加熱温度及び加熱混練時間により加熱混練して加熱混練したペーストを調製した。
80℃に加温したドラムミキサーを使用して前記飼料基材となるドライフード粒100質量部に対して前記ペースト30質量部を徐々に投入して塗布し、これを室温で放置してドライタイプのドッグフードを得た。
【0015】
【表1】

【0016】
[嗜好性試験]
実施例1において加熱温度を60℃、加熱混練時間を5分間に変更した以外は実施例1と同様にして得たドックフードを対照として別の餌皿に試験品ドッグフード同じ量で入れて個々の犬に給与して、午後2時から午後4時まで摂餌させる「二者択一」による嗜好性試験を行った。
評価はドッグフードの全量に対する試験品ドッグフードの摂取量(質量%)を求めることで行った。
結果を表1に示す。
本発明品は比較例1及び比較例2と比較して極めて嗜好性が高かった。
【0017】
[実施例5〜8、比較例3〜4]
とうもろこし50質量部、小麦粉16質量部、大豆粕12質量部、チキンミール8質量部、ミートミール7質量部、フスマ5質量部、ミネラル1質量部、ビタミン1質量部を十分に混合した後、水20質量部を加えて一軸押出機に供給し、温度140℃で混練してダイスから押し出し、切断した後、水分が8〜10%になるように120℃で20分乾燥させて、飼料基材となる膨化したドライフード粒(直径10mm、長さ10mm)を製造した。
次に、牛脂45質量部、小麦粉25質量部、レバーエキス10質量部、乳清10質量部、チキンミール10質量部を鍋に入れ、表2に示す調理温度及び時間により加熱混練して本発明の加熱混練したペーストを調製した。
80℃に加温したドラムミキサーを使用して前記飼料基材となるドライフード粒100質量部に対して前記ペースト20質量部を徐々に投入して塗布し、これを室温で放置してドライタイプのドッグフードを得た。
【0018】
【表2】

【0019】
[嗜好性試験]
実施例1と同様にして嗜好性試験をおこなった。
結果を表2に示す。
本発明品は比較例3及び比較例4と比較して極めて嗜好性が高かった。
【0020】
[実施例9〜12、比較例5〜6]
実施例2において、ペーストの配合量を表3に示す配合量に変更した以外は実施例2と同様にしてペーストを調製した。
表3中単位は質量部である。
80℃に加温したドラムミキサーを使用して実施例2と同様にして得た飼料基材となる膨化したドライフード粒100質量部に対してペースト25質量部を徐々に投入して塗布し、これを室温で放置してドライタイプのペットフードを得た。
10名のパネラーによりペーストの被覆状態(べたつき、均一性)を以下の評価基準で行った。
結果を表4に示す。
べたつき評価基準
5点 基材表面のべたつきが少ない為、基材同士の結着が著しく少なく非常に良い
4点 基材表面のべたつきが少ない為、基材同士の結着が少なく良い
3点 普通
2点 基材表面のべたつきが多い為、基材同士の結着が多く劣る
1点 基材表面のべたつきが多い為、基材同士の結着が著しく多く非常に劣る
均一性評価基準
5点 基材表面に均一に被覆され非常に良い
4点 基材表面にやや不均一に被覆されているが良い
3点 普通
2点 基材表面にややまだらに被覆され劣る
1点 基材表面にまだらに被覆され非常に劣る
【0021】
【表3】

【0022】
【表4】

【0023】
本発明品は比較例5及び比較例6と比較して、べたつきも問題なく均一な被覆が可能であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
70℃以上150℃以下で5分間以上30分間以下加熱混練処理を行った、40℃以下で固化する油脂100質量部に対し穀粉及び/又は澱粉10〜200質量部を含むペーストにより被覆することを特徴とするドライタイプ又はセミモイストタイプ又はソフトドライタイプのペットフードの製造方法。
【請求項2】
ペーストを飼料基材100質量部に対して5質量部以上40質量部以下の割合で使用することを特徴とする請求項1に記載のペットフードの製造方法。