説明

加熱方法、加熱装置および光学素子の製造装置

【課題】加熱効率が高く、加熱温度の制御精度が高い加熱技術を提供する。
【解決手段】基盤部材1に、断熱部材2を介して加熱部材3およびブロック部材4を積層し、加熱部材3からの伝熱でブロック部材4に接する被加熱物を加熱する加熱装置10において、加熱部材3の内部に穿設された貫通穴3aにハロゲンランプヒーター等の制御応答性の良好な発熱部材5を所定の間隙gをなすように非接触に実装し、発熱部材5からの放射熱で加熱部材3を加熱する構成とし、発熱部材5の熱膨張の抑圧等のための剛性や耐脆性を考慮することなく熱伝導率の高い素材で加熱部材3を構成し、効率良く加熱部材3からブロック部材4を介して被加熱物を加熱可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱方法、加熱装置および光学素子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラなどの薄型化や画素数の増大に伴い高精度な非球面成形レンズの需要が増加しており、それに応じて光学素子に対する要求精度は年々高まってきている。
ところで、光学素子を、成形型を用いて成形する場合には、成形型を均一に加熱することは光学素子の高精度化には欠かせない条件となっている。
【0003】
また、光学素子を成形するためには、ガラス素材の軟化点等の高温まで加熱するために多量の熱エネルギーを供給している。
従来、成形型などの被加熱物を均一に加熱するには、例えば、特許文献1に開示されているように、カートリッジヒーターが挿入されているステンレス鋼ブロックと、被加熱物に接するブロック部材(例えば、タングステンカーバイト:WC)との間に熱拡散部材などを介在させ、被加熱物に接するブロック部材における温度分布を調整することが知られている。
【0004】
この特許文献1記載の従来技術を図5及び図6を参照して説明する。
加熱部材101にはカートリッジヒーター100が圧入されて固着されている。
加熱部材101と、被加熱物に接するブロック部材104との間には熱拡散部材105が装着されており、熱拡散部材105とブロック部材104の間には、熱拡散層106としての空間が形成されている。
【0005】
カートリッジヒーター100は、温度測定部材103により測定された温度により、図示されていない制御機器により発熱エネルギーを制御されながら加熱部材101を加熱する。
【0006】
図6に示すように、ブロック部材104の加熱能力や温度バラツキを少なくするために、複数のカートリッジヒーター100が加熱部材101に実装されている。
ブロック部材104及び熱拡散部材105及び加熱部材101は基盤部材102に図示しない固定部材にて固着されている。
【0007】
このような特許文献1の構成によれば、加熱部材101にカートリッジヒーター100が局所的に存在することに起因する加熱装置の温度分布のばらつきを、熱拡散層106によって分散させることで、被加熱物に接するブロック部材104の温度分布のばらつきを緩和して、被加熱物を均一に加熱することができる、という優れた効果を奏する。
【0008】
ところで、一般的には特許文献1のように、カートリッジヒーター100を加熱部材101に固着させて実装するため、カートリッジヒーター100の発熱による熱膨張を吸収及び抑制する機能を持った材料で加熱部材101を構成する必要がある。
【0009】
このような材料特性を持った材料としては、一般的には非酸化金属材料(例えばオーステナイト系ステンレス鋼)が用いられる。このように加熱部材101を構成する非酸化金属材料は、一般に熱伝導率が低い。
【0010】
加えて、特許文献1の構成では、加熱部材101とブロック部材104の間に熱拡散部材105を挿入し、熱拡散層106として伝熱経路を遮るように空間を形成している。
このように、加熱部材101からブロック部材104に至る伝熱経路に熱拡散層106のような空間が存在する構成では、加熱部材101内のカートリッジヒーター100から発せられる熱エネルギーをブロック部材104に効率よく伝えることが出来ない。
【0011】
そのため、ブロック部材104を介して被加熱物を加熱するためには、加熱部材101との間に存在する熱拡散層106における伝熱抵抗を補うべく、多くの熱エネルギーが必要になり、カートリッジヒーター100の消費電力は上昇してしまう。
【0012】
また、上述のように加熱部材101が熱伝導率の低い材料で構成される場合、加熱部材101(ブロック部材104)の温度を高精度に制御しようとする場合、加熱部材101の全体における温度変化(熱伝導)に時間的差異が生じやすく、加えて、カートリッジヒーター100のような抵抗発熱体からなる発熱部材は温度制御指令に対する発熱レスポンスも悪く、高精度な温度制御が困難になるという技術的課題もある。
【0013】
一方、熱効率を良くしようと熱伝導率が高い材料で加熱部材101を構成すると、熱伝導率の高い材料は一般的には脆性材料で脆く、カートリッジヒーター100の熱膨張を抑圧して吸収できない特性がある。そのため、カートリッジヒーター100の熱膨張により、加熱部材101が破壊してしまうという技術的課題生じる。
【特許文献1】特開2006−269310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、加熱効率が高く、加熱温度の制御精度が高い加熱技術およびこの加熱技術を用いた光学素子の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の観点は、被加熱物を加熱する第1部材に、少なくとも一つの熱源が非接触に実装された第2部材を当接させる加熱方法を提供する。
本発明の第2の観点は、被加熱物を加熱する第1部材と、
前記第1部材を加熱する第2部材と、
前記第2部材の内部に当該第2部材に対して所定の間隙をもって非接触に収容される少なくとも一つの発熱部材と、
を含む加熱装置を提供する。
【0016】
本発明の第3の観点は、加熱された光学素子素材をプレスして光学素子とする光学素子の製造装置において、
前記光学素子素材が配置された成形型を加熱する第1部材と、前記第1部材を加熱する第2部材と、前記第2部材の内部に当該第2部材に対して所定の間隙をもって非接触に収容される少なくとも一つの発熱部材と、を有する加熱装置と、
前記成形型を押圧して前記光学素子素材をプレス成形する押圧手段と、
を具備する光学素子の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加熱効率が高く、加熱温度の制御精度が高い加熱技術およびこの加熱技術を用いた光学素子の製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本実施の形態の第1態様では、被加熱物を加熱するブロック部材と、ブロック部材を加熱する加熱部材を有する加熱装置において、ブロック部材及び加熱部材を熱伝導率の高い材料で構成可能にする。
【0019】
すなわち、加熱部材に熱源として実装される発熱部材には、従来用いられているようなカートリッジヒーター等のような接触加熱する発熱部材ではなく、放射熱で加熱部材を非接触に加熱する発熱部材、例えばハロゲンランプヒーターで構成する。
【0020】
本第1態様の構成により、従来のように発熱部材を加熱部材内に固着して設置する場合に比較して、加熱部材が発熱部材の熱膨張による影響を受けない構造となり、発熱部材の熱膨張を抑圧するために加熱部材として高剛性で低熱伝導率の素材を用いる必要がなくなり、高効率な加熱機構が実現できる。
【0021】
第2態様では、前記ブロック部材と加熱部材の間に温度測定部材を挿入し、ブロック部材の温度により発熱部材の熱出力を制御する。
第3態様では、加熱部材の熱伝導率が向上した場合の基盤部材への熱の逃げの対策として、基盤部材と加熱部材の間に断熱構造を配置し、基盤部材を通して外部に逃げる熱エネルギーを少なくしている。
【0022】
第4態様では、前記発熱部材と加熱部材が接触しないように保持部材によりクリアランスを持って保持する機構を構成している。この保持部材は、加熱部材に面する側は滑らかな表面を持ち、加熱部材から放出された熱エネルギーを加熱部材に反射して加熱効率を向上させる働きもする。
【0023】
第5態様では、複数の発熱部材の各々と相対応する位置にそれぞれの温度を測定する温度測定部材を配置し、それぞれの測定温度に対応した複数の発熱部材の各々を個別に制御して温度制御を実現する。これにより、ブロック部材における温度分布のばらつきが防止され、被加工物の高精度な加熱を実現できる。
【0024】
第6態様では、各々が上述の各態様の加熱装置にて構成された複数の加熱機構を用いて被加熱物としての成形型を挟持し、当該加熱機構に連続的に、または、個別に順次送りながら成形する成形方法を開示する。
【0025】
以上の本実施の形態の各態様によれば、被加熱物を高い熱効率にて効率が良く加熱できるとともに、高い温度制御精度の下での加熱によって成形された高精度な成形品を得ることができる。
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<実施の形態1>
図1は、本発明の一実施の形態である加熱方法を実施する加熱装置の構成の一例を示す側面図であり、図2は、本実施の形態の加熱装置の構成の一例を示す平断面図である。
【0027】
図1および図2に例示されるように、本実施の形態の加熱装置10は、基盤部材1、断熱部材2、加熱部材3(第2部材)、ブロック部材4(第1部材)、発熱部材5(熱源)、保持部材6および温度測定部材7(温度測定手段)を備えている。この基盤部材1、断熱部材2、加熱部材3およびブロック部材4は直方体をなしており、発熱部材5は棒状(本実施の形態では円柱状)をなしている。また、発熱部材5の長手方向における基盤部材1の長さは、断熱部材2、加熱部材3およびブロック部材4よりも長く形成している。
【0028】
本実施の形態の加熱装置10は、基盤部材1、断熱部材2、加熱部材3およびブロック部材4を順に積み重ねて互いに当接した構成となっている。この最上部に配設されたブロック部材4の上面は、被加熱物(例えば成形型)を加熱する加熱面4aとして作用する。
【0029】
加熱部材3には、ブロック部材4の加熱面4aに平行で且つ互いに平行な複数の貫通穴3a(本実施の形態では3つ)が所定の間隔で穿設されている。
この加熱部材3の複数の貫通穴3aの各々には、発熱部材5として、例えば、棒状ランプヒータの一種であるハロゲンランプヒーターが適当なクリアランス(後述の間隙g)をもって非接触に挿通されている。この発熱部材5の両端部は、加熱部材3を挟んで基盤部材1に配置された一対の保持部材6により保持されている。
【0030】
具体的には、この一対の保持部材6は、板状であり、基盤部材1の上面からブロック部材4の加熱面4aと同等の高さまで延出して立設されており、上端部から互いに向き合うように内側に向けて鍔部6bが設けられている。そして、一対の保持部材6には、発熱部材5が挿入可能な孔が形成されており、この孔に発熱部材5が挿入された状態で保持されている。
【0031】
個々の発熱部材5の両端部には、給電ケーブル5eが接続されており、外部から電力が供給される。
すなわち、加熱部材3の貫通穴3aの内径は、発熱部材5の外径よりも大きく設定され、貫通穴3aに挿通された発熱部材5の全周には、所定の間隙gが形成されている。
【0032】
そして、本実施の形態の加熱装置10の場合、加熱部材3は、加熱部材3に対して非接触に実装された複数の発熱部材5から放射される光や放射熱によって加熱される。
発熱部材5の両端を保持している一対の保持部材6の各々において、加熱部材3に面する側の表面および鍔部6bの下面は滑らかな状態に加工されているとともに、熱線が効率よく反射されるように、必要に応じて表面処理され、反射面6aを構成している。
【0033】
そして、この反射面6aにより、発熱部材5から発せられ、加熱部材3の貫通穴3aの両端の開口部から放射される熱エネルギーを周囲に散逸させないように加熱部材3の側に反射することにより、発熱部材5による加熱部材3の加熱効率を向上させている。
【0034】
また、加熱部材3の下面と基盤部材1の上面との間には断熱部材2が挟持されている。この断熱部材2は発熱部材5から放出された熱エネルギーが加熱部材3を通して基盤部材1に散逸することを防止し、同様に、発熱部材5による加熱部材3の加熱効率を向上させている。
【0035】
一方、加熱部材3において、断熱部材2と反対側の上面には、ブロック部材4が温度測定部材7(例えば熱電対)を挟持して密着するように固着されている。この場合、温度測定部材7は、複数の発熱部材5の配列領域の中央に配置され、基端部から信号ケーブル7eが引き出され、図示しない後述の温度制御装置に接続されている。
【0036】
本実施の形態の場合、上述のように複数の発熱部材5が加熱部材3に実装され、温度測定部材7で測定され、信号ケーブル7eを介して出力される温度情報に基づいて、図示されていない温度制御装置により所望の温度になるように制御される構成となっている。
【0037】
本実施の形態の加熱装置10の場合、上述のように、発熱する発熱部材5は、加熱部材3に対して、所定の間隙gをなして非接触に実装されている。
このため、加熱部材3は、発熱部材5の熱膨張の影響を受けることがなく、当該発熱部材5の熱膨張を抑圧するための大きな剛性や耐脆性を必要としない。
【0038】
このため、本実施の形態の加熱装置10の場合には、必要以上に大きな剛性や耐脆性等を考慮することなく、加熱部材3およびブロック部材4として熱伝導率の高い材料を選択できる。
【0039】
すなわち、本実施の形態では、加熱部材3及びブロック部材4は、例えば超硬合金(タングステンカーバイト:WC)やセラミック(SiC)などで構成している。また、加熱部材3とブロック部材4は同種の材料で無い構成も可能である。
【0040】
また、加熱部材3とブロック部材4は一体構造とすることも可能である。
図3は、本実施の形態の加熱装置10の変形例である加熱装置10−1を示す平面図である。
【0041】
この変形例の加熱装置10−1の場合には、加熱部材3とブロック部材4の密着部において、加熱部材3の貫通穴3aの各々に非接触に実装された複数の発熱部材5(この場合、発熱部材5A、発熱部材5B、発熱部材5C)の各々に対応する位置に、複数の温度測定部材7(温度測定部材7A、温度測定部材7B、温度測定部材7C)がそれぞれ配置されている点が、上述の加熱装置10と異なっている。
【0042】
そして、図3に例示される本変形例の加熱装置10−1の場合、複数の発熱部材5A、発熱部材5B、発熱部材5Cの各々の温度制御を、対応する温度測定部材7A、温度測定部材7B、温度測定部材7Cから出力される測定温度の情報に基づいて制御する。
【0043】
すなわち、発熱部材5Aは温度測定部材7Aの測定温度に基づいて制御し、発熱部材5Bは温度測定部材7Bの測定温度に基づいて制御し、発熱部材5Cは温度測定部材7Cの測定温度に基づいて制御する構成とし、図示していないそれぞれの温度制御装置で、発熱部材5A、発熱部材5B、発熱部材5Cの各々が単独に温度設定及び温度制御が可能になっている。
【0044】
なお、後述のように、加熱装置10および加熱装置10−1を、ブロック部材4を対向させて対で成形装置の加熱装置として使用する場合、成形条件等により、加熱装置10と加熱装置10−1を組み合わせて構成することも可能である。
(作用および効果)
以下、本実施の形態の加熱装置10および加熱装置10−1の作用および効果について説明する。
【0045】
まず、図1および図2に例示される加熱装置10の場合、加熱部材3の内部に、加熱部材3とは非接触に実装された発熱部材5からの放射熱で加熱部材3が加熱される。
この時、加熱部材3が発熱部材5に対して非接触であるため、加熱部材3は発熱部材5から熱膨張変形等の機械的なストレスを受けることなく、加熱される。
【0046】
すなわち、比較的耐脆性の低い高い熱伝導率の材料を加熱部材3に採用した場合でもクラック等を生じることがない。
そして、発熱部材5に放出された熱エネルギーは、高熱伝導性の加熱部材3に吸収され、効率よく迅速にブロック部材4に伝えられる。
【0047】
そして、ブロック部材4と加熱部材3の間に設けられた温度測定部材7から測定されるブロック部材4の温度に基づいて、当該ブロック部材4の温度が目的の値に一定になるように発熱部材5の出力をフィードバック制御する。
【0048】
このとき、本実施の形態の加熱装置10の場合には、発熱部材5の熱エネルギーを熱伝導率が良い加熱部材3により効率的にかつ迅速に、被加熱物に接するブロック部材4に伝えることが出来る。
【0049】
また、発熱部材5も、従来の抵抗発熱体とは異なり、熱出力の制御指令に対して応答速度の速いハロゲンランプヒーター等で構成されているため、上述のブロック部材4の温度のフィードバック制御における応答速度が向上し、迅速かつ精密にブロック部材4の温度を制御することができる。
【0050】
これにより、ブロック部材4の温度を高速かつ高精度に制御することができる。この結果、たとえば、後述のような光学素子等の成形工程において、成形レンズを高精度に加工することができる。
【0051】
上述の図3に例示された変形例の加熱装置10−1の場合も加熱装置10と同様の効果が得られるとともに、さらに、加熱装置10−1の構成では、複数の発熱部材5Aから発熱部材5Cの各々に対応して設けられた温度測定部材7Aから温度測定部材7Cにより、発熱部材5Aから発熱部材5Cの各々の熱出力を個別にフィードバック制御することで、ブロック部材4の広範囲の温度を測定してそれぞれに応じた温度制御を実現でき、ブロック部材4の加熱面4aの全体の広い範囲で温度ムラの無いより高精度な加熱が出来る。
【0052】
これにより、後述の成形工程において、複数個の成形型を、一対の加熱装置10−1に挟んで成形を行う場合や、大口径レンズの成形において、高精度の成形が可能となる。
<実施の形態2>
図4は、本発明の一実施の形態である加熱方法を実施する加熱装置を用いた成形装置の構成を示す断面図である。
【0053】
図4に例示されるように、本実施の形態の成形装置Sは、各々が上述の加熱装置10または加熱装置10−1からなる上側加熱ブロック10Aおよび下側加熱ブロック10Bと、ベース30、押圧手段としてのプレス軸31、を備えている。
【0054】
下側加熱ブロック10Bは製造装置のベース30に、上側加熱ブロック10Aはプレス軸31に基盤部材1の側が固定されている。
そして、上側加熱ブロック10Aと下側加熱ブロック10Bの各々の、上下方向に対向するブロック部材4の間に被加熱物としての成形型21を挟持して成形が行われる。
【0055】
本実施の形態の成形装置Sにて用いられる成形型21は、上型22、下型23及びこれら上型22および下型23の成形面22aと成形面23aの間に配置される光学素子材料25(例えばガラス素材)を覆うように介在するスリーブ24を具備している。
【0056】
この成形型21は、下側加熱ブロック10Bと上側加熱ブロック10Aとの間で加熱プレスされるべく下側加熱ブロック10Bのブロック部材4の上に載置される。
次に、本実施の形態の成形装置Sにおける成形型21の加熱によるプレス成形について説明する。
【0057】
まず、光学素子材料25が実装された成形型21を下側加熱ブロック10Bのブロック部材4の加熱面4aに載置する。そして、プレス軸31の駆動により上側加熱ブロック10Aが降下してブロック部材4の加熱面4aが成形型21(上型22)の上面に当接する。
【0058】
この状態で、上側加熱ブロック10Aおよび下側加熱ブロック10Bの各々の、発熱部材5により発熱する加熱部材3からブロック部材4を介して成形型21が加熱され、成形型21内の光学素子材料25が軟化し、さらに成形型21をプレス軸31でプレスすることにより、光学素子材料25が成形型21の下型23の成形面23aおよび上型22の成形面22aから所望の形状を転写されてプレス成形される。
【0059】
この場合、上述のように、上側加熱ブロック10Aおよび下側加熱ブロック10Bの各々において、加熱部材3が非接触に実装された複数の発熱部材5から、成形型21に接するブロック部材4への伝熱が、両者の接触面(加熱面4a)の全体において均一に、かつ効率よく行われる。
【0060】
また、温度制御における応答性の良好なハロゲンランプヒーター等からなる発熱部材5を用いて加熱部材3を非接触に加熱するので、ブロック部材4における温度制御の応答性や精度が向上する。
【0061】
この結果、上側加熱ブロック10Aと下側加熱ブロック10Bで挟まれた成形型21の全体を、所望の設定温度に正確かつ効率よく加熱することができる。
この結果、成形型21に実装された光学素子材料25から、高精度の図示しない成形品(光学素子)を成形することができる。
【0062】
このように、本実施の形態の成形装置Sによれば、加熱部材3からの熱をブロック部材4を介して被加熱物に伝える加熱装置10や加熱装置10−1を上側加熱ブロック10Aおよび下側加熱ブロック10Bとして具備しているので、ブロック部材4、すなわち成形型21の高精度な温度制御がレスポンスよくでき、成形型21を用いて高精度な成形品を安定して成形することができる。
【0063】
また、上側加熱ブロック10Aおよび下側加熱ブロック10Bによる成形型21の加熱効率も向上するため、成形工程における消費電力の削減を実現でき、環境負荷も少なくすることができる。
【0064】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
たとえば、加熱装置の適用対象としては、成形装置に限らず、高精度な加熱を必要とする一般の加工装置等に広く適用できる。
[付記1]
被加熱物を加熱するブロック部材と該ブロック部材を加熱する加熱手段とを有する加熱装置において、前記ブロック部材を前記加熱手段に密着させ、加熱手段に複数の発熱部材を装着し、発熱部材の熱を被加熱物に伝える構成において、前記ブロック部材と前記加熱手段とを高熱伝導率材料で構成し、発熱部材と前記加熱手段との挿入部にクリアランスを持つことを特徴とするレンズ成形機の加熱機構。
[付記2]
前記ブロック部材と前記加熱手段の間に温度測定部材を挿入し、温度測定部材で測定した温度に応じて前記発熱部材の出力を制御することを特徴とする付記1記載のレンズ成形機の加熱機構。
[付記3]
前記加熱部材と加熱機構を構成する基盤部材の間に、断熱構造を構成することを特徴とする付記1記載のレンズ成形機の加熱装置。
[付記4]
前記発熱部材は両端を保持部材で保持され、前記加熱部材との間にクリアランスを確保する機能と保持部材の表面から前記発熱部材からの放射熱を前記加熱部材へ反射する機能を持たせたことを特徴とする付記1記載のレンズ成形機の加熱装置。
[付記5]
前記温度測定部材は前記ブロック部材の複数の位置の温度を測定できるように複数個で構成され、前記複数の発熱部材に対応して、それぞれの測定温度に応じてそれぞれの発熱部材を個別に制御することを特徴とするレンズ成形機の加熱機構。
[付記6]
前記加熱機構を複数個構成して、連続的に成形することを特徴とする成形方法。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態である加熱方法を実施する加熱装置の構成の一例を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である加熱装置の構成の一例を示す平断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態である加熱装置の変形例を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態である加熱方法を実施する加熱装置を用いた成形装置の構成を示す断面図である。
【図5】従来技術の加熱装置の構成を示す断面図である。
【図6】従来技術の加熱装置の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 基盤部材
2 断熱部材
3 加熱部材
3a 貫通穴
4 ブロック部材
4a 加熱面
5 発熱部材
5A 発熱部材
5B 発熱部材
5C 発熱部材
5e 給電ケーブル
6 保持部材
6a 反射面
6b 鍔部
7 温度測定部材
7A 温度測定部材
7B 温度測定部材
7C 温度測定部材
7e 信号ケーブル
10 加熱装置
10−1 加熱装置
10A 上側加熱ブロック
10B 下側加熱ブロック
21 成形型
22 上型
22a 成形面
23 下型
23a 成形面
24 スリーブ
25 光学素子材料
30 ベース
31 プレス軸
S 成形装置
g 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱する第1部材に、少なくとも一つの熱源が非接触に実装された第2部材を当接させることを特徴とする加熱方法。
【請求項2】
請求項1記載の加熱方法において、
前記熱源が棒状ランプヒータからなることを特徴とする加熱方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の加熱方法において、
個々の前記熱源に対応して温度測定手段を配置し、個々の前記温度測定手段で測定された温度に基づいて、対応する前記熱源の熱出力を制御することを特徴とする加熱方法。
【請求項4】
被加熱物を加熱する第1部材と、
前記第1部材を加熱する第2部材と、
前記第2部材の内部に当該第2部材に対して所定の間隙をもって非接触に収容される少なくとも一つの発熱部材と、
を含むことを特徴とする加熱装置。
【請求項5】
請求項4記載の加熱装置において、
前記発熱部材は、前記第2部材に穿設された貫通穴に非接触に挿通された棒状ランプヒータからなり、
前記発熱部材の端部を保持する保持部材を備えたことを特徴とする加熱装置。
【請求項6】
請求項5記載の加熱装置において、
前記保持部材には、前記発熱部材から放射される熱エネルギーを前記加熱部材の側に反射する反射面が形成されていることを特徴とする加熱装置。
【請求項7】
請求項4または請求項5記載の加熱装置において、
前記第1部材と前記第2部材の間における前記発熱部材に対応した位置に温度測定手段が配置され、前記温度測定手段にて測定された温度に基づいて前記発熱部材の熱出力が制御されることを特徴とする加熱装置。
【請求項8】
加熱された光学素子素材をプレスして光学素子とする光学素子の製造装置において、
前記光学素子素材が配置された成形型を加熱する第1部材と、前記第1部材を加熱する第2部材と、前記第2部材の内部に当該第2部材に対して所定の間隙をもって非接触に収容される少なくとも一つの発熱部材と、を有する加熱装置と、
前記成形型を押圧して前記光学素子素材をプレス成形する押圧手段と、
を具備することを特徴とする光学素子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−118263(P2010−118263A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290872(P2008−290872)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】