説明

加熱殺菌済み食品の製造方法

【課題】製造時間を短縮し、また、作業員の手間を軽減することのできるレトルト食品に代表される加熱殺菌済み食品の効率的な製造方法を提供すること。
【解決手段】油脂と、澱粉系材料と、調味料と、水とを混合加熱して液状食品を作り、該液状食品を容器に充填密封して加熱殺菌することにより加熱殺菌済み食品を製造する方法において、融点が35℃以上の油脂と、澱粉系材料と、調味料の一部とを混合加熱して溶融状の基礎配合物を作り、該溶融状の基礎配合物を油脂の融点よりも低い温度に冷却することにより固形状の基礎配合物を準備する基礎配合物準備工程と、前記基礎配合物準備工程で準備した基礎配合物と、調味料の残部と、水とを混合加熱して液状食品を作る液状食品生成工程と、前記液状食品を容器に充填密封して加熱殺菌する加熱殺菌工程とを有することを特徴とする加熱殺菌済み食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルトカレー、レトルトシチューなどのレトルト食品に代表される加熱殺菌済み食品の製造方法及び加熱殺菌済み食品に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、レトルトカレー、レトルトシチューなどのレトルト食品が広く普及している。レトルト食品とは、カレー、シチューなどの調理済み食品をレトルトパウチなどの気密性及び遮光性を有する容器に密封して加熱殺菌したものである。レトルト食品は、長期保存が可能であり、3〜5分ほど湯煎して温めたり、電子レンジで温めるだけで短時間かつ簡単に食べることができる。
【0003】
日本国特開2003−38136号公報は、レトルト食品の製造方法を開示している。同公報に開示の製造方法では、先ず、小麦粉、豚脂、牛脂を加熱釜の中に投入し、攪拌羽根を回転させて攪拌混合しながら30〜40分間加熱し、ここにカレーパウダーを投入して更に5分間加熱した後に冷却して小麦粉ルウを製造する。また、この小麦粉ルウとは別に、玉葱、油脂、肉エキス、蛋白加水分解物、リンゴペースト、水を別の加熱釜の中に投入し、攪拌羽根を回転させて攪拌混合しながら40分間加熱することにより焙煎野菜を製造する。
【0004】
次に、このようにして製造した小麦粉ルウと、焙煎野菜とを夫々配管を通じて更に別の加熱釜の中に送り、この加熱釜の中に更に乳原料、砂糖、食塩、香辛料、水などを投入し、攪拌混合しながら加熱して液状食品であるカレーを製造する。そして、得られたカレーを充填機から小分けしてレトルトパウチに充填密封してレトルト殺菌することによりレトルト食品を製造する方法を開示している。
【特許文献1】特開2003−38136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特開2003−38136号公報は、小麦粉ルウ、焙煎野菜の製造から、液状食品であるカレーを製造し、レトルトパウチに充填密封してレトルト殺菌するまでの各工程を連続的に実行するレトルト食品の製造方法を開示している。しかし、このレトルト食品の製造方法においては、はじめの小麦粉ルウ、焙煎野菜の製造に長い時間を必要とするため、必然的にレトルト食品の製造時間が長くなるという課題がある。
【0006】
また、このレトルト食品には、小麦粉、油脂、肉エキス、蛋白加水分解物、リンゴペースト、乳原料、砂糖、食塩、香辛料、水などの数多くの材料が使用されており、これら多数の材料を作業員が夫々所定量ずつ計量し、決められた投入時期に加熱釜に投入する必要があるため、作業員の手間がかかるという課題がある。
【0007】
また、更なる別の課題として、レトルト食品などの加熱殺菌済み食品は、長期保存が可能であるが、保存中の時間の経過と共に風味が変化してくるという課題がある。
【0008】
本発明の第1の目的は、製造時間を短縮し、また、作業員の手間を軽減することのできるレトルト食品に代表される加熱殺菌済み食品の効率的な製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の第2の目的は、保存中の風味変化を極力抑制することのできるレトルト食品などの加熱殺菌済み食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記第1の技術的課題は、本発明によれば、
油脂と、澱粉系材料と、調味料と、水とを混合加熱して液状食品を作り、該液状食品を容器に充填密封して加熱殺菌することにより加熱殺菌済み食品を製造する方法において、 融点が35℃以上の油脂と、澱粉系材料と、調味料の一部とを混合加熱して溶融状の基礎配合物を作り、該溶融状の基礎配合物を油脂の融点よりも低い温度に冷却することにより固形状の基礎配合物を準備する基礎配合物準備工程と、 前記基礎配合物準備工程で準備した基礎配合物と、調味料の残部と、水とを混合加熱して液状食品を作る液状食品生成工程と、 前記液状食品を容器に充填密封して加熱殺菌する加熱殺菌工程とを有することを特徴とする加熱殺菌済み食品の製造方法を提供することにより達成される。
【0011】
すなわち、上記の加熱殺菌済み食品の製造方法によれば、基礎配合物準備工程を採用し、融点が35℃以上の油脂と、澱粉系材料と、調味料の一部とを混合加熱して溶融状の基礎配合物を作り、この溶融状の基礎配合物を冷却固化させて固形状の基礎配合物を準備する。この固形状の基礎配合物は、油脂で固められており常温下では油脂が溶けないため、固形の形態で保管することができる。したがって、固形状の基礎配合物を予め準備して保管しておき、加熱殺菌済み食品を製造する時には、液状食品生成工程から開始して、保管しておいた基礎配合物と、調味料の残部と、水とを混合加熱するだけで速やかに液状食品を作ることができ、加熱殺菌済み食品の製造時間を大幅に短縮することができる。
【0012】
また、固形状の基礎配合物には、所定量の油脂、澱粉系材料、調味料の一部が配合されている。そのため、加熱殺菌済み食品を製造する時には、油脂、澱粉系材料、調味料の一部については計量する必要がないため、作業員の手間を大きく軽減することができる。また、この固形状の基礎配合物は、作業員が持ち運ぶことができてハンドリングに優れ、配管を通じて移送する必要がないという利点もある。
【0013】
本発明の好ましい実施の態様では、前記基礎配合物の油脂含量が30〜50重量%である。これにより、基礎配合物準備工程で、流動性のある溶融状の基礎配合物を得ることができる共に、保形性に優れた固形状の基礎配合物を形成させることができる。
【0014】
本発明の好ましい実施の態様では、前記基礎配合物生成工程で、前記調味料の一部として糖類と蛋白分解物とを使用する。この場合、糖類と蛋白分解物とが油脂の共存下で高温に加熱され好ましいコクのある風味を形成することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施の態様では、基礎配合物準備工程で準備した固形状の基礎配合物を解砕する基礎配合物解砕工程を有し、該基礎配合物解砕工程の後に液状食品生成工程を実行する。この場合、固形状の基礎配合物を小さく解砕するため、液状食品生成工程において基礎配合物が溶けずに固まりの状態で残存することを防止し、速やかに溶解させて液状食品の濃度に斑のない品質の安定した加熱殺菌済み食品を製造することができる。
【0016】
本発明の好ましい他の実施の態様では、前記基礎配合物準備工程で準備した固形状の基礎配合物を、前記液状食品生成工程で使用する水の一部に溶かす基礎配合物溶解工程を有し、該基礎配合物溶解工程の後に液状食品生成工程を実行する。この場合、固形状の基礎配合物を前記液状食品生成工程で使用する水の一部に予め溶かすため、液状食品生成工程で基礎配合物が溶けずに固まりの状態で残存することを防止し、速やかに溶解させて液状食品の濃度に斑のない品質の安定した加熱殺菌済み食品を製造することができる。
【0017】
更に、前記第2の技術的課題は、本発明によれば、
油脂と、澱粉系材料と、調味料と、水とを混合加熱して調製された液状食品が容器に充填密封され且つ加熱殺菌された加熱殺菌済み食品であって、
前記油脂の全部又は一部として水素添加油脂及び/又はエステル交換油脂を使用することにより、加熱殺菌済み食品に含まれる油脂の不飽和脂肪酸が45重量%以下に調整されていることを特徴とする加熱殺菌済み食品により達成される。
【0018】
この加熱殺菌済み食品によれば、油脂の全部又は一部として水素添加油脂及び/又はエステル交換油脂を使用して、油脂の不飽和脂肪酸が45重量%以下に調整することにより、長期保存中における食品の風味変化を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の加熱殺菌済み食品は、油脂と、澱粉系材料と、調味料と、水とを混合加熱して液状食品を作り、該液状食品を小分けして容器に充填密封して加熱殺菌することにより製造される。この加熱殺菌済み食品は、液状食品と共に肉や野菜などの固形食品を容器に充填して加熱殺菌したものであってもよい。本発明が好適に適用される食品の具体例としては、カレー、シチュー、ハヤシ、ソース、スープ、麻婆豆腐などが挙げられる。また、加熱殺菌済み食品としては、典型的には100℃よりも高温で加圧加熱殺菌し常温保存が可能なレトルト食品が挙げられるが、100℃以下の温度で加熱殺菌して冷蔵保存か可能なチルド食品にも適用することができる。
【0020】
本発明の加熱殺菌済み食品の製造方法では、融点が35℃以上、好ましくは40〜60℃の油脂を使用する。これにより、後述する基礎配合物準備工程で固形状の基礎配合物を形成することができ、かつ、加熱殺菌済み食品を温めて食べるときは油脂が溶けて良好な口当たり、滑らかな食感を有する。なお、油脂の融点とは、油脂のほとんどが液相に転じ、残ったわずかな量の固相が存在するまま全体が流動を開始する温度のことをいい、上昇融点とも呼ばれる。
【0021】
また、前記油脂としてより好ましくは、20℃におけるSFCが40〜90%、更に好ましくは50〜70%、30℃におけるSFCが25〜60%、更に好ましくは30〜45%、40℃におけるSFCが10〜30%、更に好ましくは13〜25%の油脂を使用する。これより、固形状の基礎配合物の保管時における油脂の溶け出しや分離、固形状基礎配合物の軟化を回避することができ、かつ、加熱殺菌済み食品を温めて食したときには良好な口当たり、滑らかな食感を付与することができる。なお、油脂のSFCとは、液体油のNMRのシグナルの大きさを基準にして求めた、所定温度における固体脂含量の百分率のことをいう。
【0022】
また、加熱殺菌済み食品に含ませる油脂の全部又は一部として水素添加油脂及び/又はエステル交換油脂を使用することにより、加熱殺菌済み食品に含まれる油脂の不飽和脂肪酸を45重量%以下、好ましくは10〜40重量%に調整することにより、加熱殺菌済み食品の保存中の風味変化を好適に抑制することができる。この場合、加熱殺菌済み食品の製造に使用する油脂の全部を不飽和脂肪酸が45重量%以下の油脂としてもよいし、また、不飽和脂肪酸が45重量%以下の油脂と不飽和脂肪酸が45重量%より高い油脂とをブレンドして全体として油脂の不飽和脂肪酸を45重量%以下に調整してもよい。ここで、不飽和脂肪酸が45重量%以下の油脂としては、具体的には、例えばラード硬化油、パーム硬化油などが挙げられる。尚、加熱殺菌済み食品に含ませる油脂の割合としては1〜10重量%程度を例示することができる。
【0023】
澱粉系材料としては、小麦粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉などが挙げられる。また、調味料としては、カレー、シチュー、ハヤシなどに一般的に使用されているものが挙げられる。具体的には、食塩、砂糖、肉や野菜のエキス、乳原料、肉や野菜のペースト、肉や野菜の乾燥物、蛋白加水分解物、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、この他にも、カレーパウダー、カルダモン、クローブ、フェンネル、ガーリック、唐辛子、胡椒、スターアニスなどの香辛料を使用することもできる。
【0024】
本発明の加熱殺菌済み食品の製造方法について詳細に説明する。
先ず、基礎配合物準備工程では、融点が35℃以上の油脂と、澱粉系材料と、調味料の一部とを混合加熱して溶融状の基礎配合物を作る。ここで「調味料の一部」とは、最終的に液状食品の中に含まれる調味料全部のうちの一部分を意味する。油脂と、澱粉系材料と、調味料の一部との混合割合は液状食品の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば油脂が30〜50重量部、澱粉系材料が30〜50重量部、調味料の一部が10〜35重量部という割合を挙げることができる。
【0025】
基礎配合物準備工程は、実質的に水分を含まない条件下で混合加熱を行うことが好ましい。実質的に水分を含まないとは、例えば、混合加熱する際の油脂、澱粉系材料、調味料の一部の混合物における水分が7重量%以下であることを意味し、添加する材料の水分を除き、積極的に水分として供給しないことが好ましい。
【0026】
基礎配合物準備工程では、油脂の共存下で調味料の一部を高温に加熱することができるため、基礎配合物準備工程で使用する調味料の一部としては、高温に加熱することで特に好ましい風味、香りを発現するものを選定するのが好ましく、例えば糖類と蛋白分解物とを使用するのが好ましい。糖類と蛋白分解物は高温で加熱することにより相互に反応して好ましい風味を発現する。また、基礎配合物準備工程では、香辛料の一部を使用することもでき、例えば、カレーパウダーを使用するのが好ましい。香辛料の一部を使用する場合の割合としては3〜10重量部を挙げることができる。
【0027】
基礎配合物準備工程で材料を混合加熱する混合加熱装置としては、例えば材料を受け入れる加熱釜と、該加熱釜の中に受け入れた材料を攪拌混合するための攪拌羽根と、該加熱釜の壁部に設けられ且つ蒸気又は熱水を供給することにより加熱釜内の材料を加熱することのできる加熱ジャケットとを備えるものを使用することができる。基礎配合物準備工程では、混合加熱装置で攪拌混合される混合物の温度が80℃以上、好ましくは80〜130℃になるまで加熱するのがよい。
【0028】
基礎配合物準備工程における混合加熱の時間は任意であるが、例えば30〜100分間混合加熱することにより、殺菌済み食品にコクのある風味を付与することのできる。加熱釜の中で攪拌混合される混合物は、油脂を30重量%以上、より好ましくは30〜70重量%、更に好ましくは35〜70重量%の割合で含むのがよい。これにより、流動性のある溶融状の基礎配合物が得られるため、澱粉系材料、調味料に焦げを生じさせることなく高温で均一に加熱することができる。
【0029】
混合加熱が完了したら、溶融状の基礎配合物を油脂の融点よりも低い温度に冷却することにより固形状の基礎配合物を形成する。具体的には、溶融状の基礎配合物を充填装置を用いて成形用容器に小分けして充填し、成形用容器に小分けされた溶融状の基礎配合物を冷却することによって油脂を固化させて固形状の基礎配合物を形成することができる。
【0030】
得られた固形状の基礎配合物は、成形用容器に入れた状態のままで保管してもよいし、成形用容器から取り出して保管してもよい。また、成形用容器から取り出して別の包装袋などに入れて保管してもよい。固形状の基礎配合物の形状や大きさは任意であるが、例えば、縦、横、高さが10〜20cm×20〜30cm×2〜5cmの直方体に成形した場合には、作業員の持ち運びが容易であり、また、基礎配合物を上下に積み重ねて保管することもできるので好ましい。また、基礎配合物の重さは、例えば1〜3kg程度であるのが好ましい。
【0031】
この固形状の基礎配合物は加熱殺菌済み食品の製造工場内で製造してもよいし、加熱殺菌済み食品の製造工場とは別の工場で製造してもよく、加熱殺菌済み食品の製造に備えて予め大量に製造して保管するのがよい。これにより、加熱殺菌済み食品を製造する時には、直ちに液状食品生成工程から開始して液状食品を速やかに作ることができ、加熱殺菌済み食品の製造時間を大幅に短縮することができる。
【0032】
次に、液状食品生成工程では、前記基礎配合物準備工程で準備した基礎配合物と、前記調味料の残部と、水とを混合加熱して液状食品を作る。基礎配合物と、調味料の残部と、水とを混合する割合は液状食品の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば基礎配合物が3〜20重量部、調味料の残部が1〜10重量部、水が40〜80重量部という割合を挙げることができる。香辛料を使用することもでき、香辛料を使用する場合の割合としては0.3〜5重量部を例示することができる。
【0033】
液状食品生成工程では、前工程の基礎配合物準備工程で澱粉系材料と調味料の一部とが油脂と共に高温で加熱されているため、液状食品生成工程における材料の加熱時間は基礎配合物準備工程の加熱時間よりも短時間でよい。具体的には、例えば基礎配合物と、前記調味料の残部と、水との混合物の温度が90℃に達するまで加熱すればよい。これにより、長時間加熱する必要なく調理済みの液状食品を作ることができる。
【0034】
液状食品生成工程で材料を混合加熱する混合加熱装置は、基礎配合物準備工程と同様に、材料を受け入れる加熱釜と、該加熱釜の壁部に設けられ且つ蒸気又は熱水を供給することにより加熱釜内の材料を加熱することのできる加熱ジャケットとを備えるものを使用することができる。
【0035】
本発明の製造方法では、好ましくは、前記基礎配合物準備工程で準備した固形状の基礎配合物を解砕する基礎配合物解砕工程を採用し、該基礎配合物解砕工程の後に液状食品生成工程を実行するのがよい。この場合、固形状の基礎配合物を小さく解砕するため、液状食品生成工程において基礎配合物が溶けずに固まりの状態で残存することを防止し、速やかに溶解させて液状食品を作ることができる。したがって、液状食品生成工程の加熱時間を短くすることができ、また、液状食品の濃度に斑のない品質の安定した加熱殺菌済み食品を製造することができる。
【0036】
固形状の基礎配合物の解砕する装置としては、例えば、固形状の基礎配合物を搬送する搬送コンベアと、該搬送コンベアの搬送面上に配置され且つ上下動する解砕刃とを有する解砕装置を用いて行うことができる。具体的には、固形状の基礎配合物を上記搬送コンベアの搬送面に載せて解砕刃の下方に搬送し、上下動する解砕刃により解砕することができる。固形状の基礎配合物を解砕する場合は、例えば5cm以下の幅に解砕するのが好ましい。尚、解砕装置としては、固形状の基礎配合物を解砕できる解砕刃を備える装置であればよく、搬送コンベアを備えていなくてもよい。
【0037】
本発明の製造方法では、前記基礎配合物解砕工程の代わりに、固形状の基礎配合物を液状食品生成工程で使用する水の一部に予め溶かす基礎配合物溶解工程を採用し、該基礎配合物溶解工程の後に液状食品生成工程を実行してもよい。この場合、固形状の基礎配合物を予め溶解するため、液状食品生成工程において基礎配合物が溶けずに固まりの状態で残存することを防止し、速やかに液状食品を作ることができる。したがって、液状食品生成工程の加熱時間を短くすることができ、また、液状食品の濃度に斑のない品質の安定した加熱殺菌済み食品を製造することができる。
【0038】
液状食品生成工程で使用する水の量は適宜設定すればよいが、例えば固形状の基礎配合物1重量部に対して1〜3重量部程度の水を使用すればよい。液状食品生成工程は、固形状の基礎配合物と、液状食品生成工程で使用する水の一部とを加熱釜などの容器に投入し、攪拌混合することにより固形状の基礎配合物を水に溶解させる。この場合、固形状の基礎配合物を溶解する水の温度は、基礎配合物中の澱粉系材料の糊化温度よりも低い温度であることが好ましく、例えば30〜70℃程度であるのが好ましい。これにより、基礎配合物と水の混合溶液の粘度上昇を抑制しつつ、基礎配合物を速やかに水に溶解することができる。
【0039】
次に、加熱殺菌工程について説明する。加熱殺菌工程では、液状食品を容器に充填密封して加熱殺菌する。具体的には、液状食品生成工程で得られた液状食品を充填機に送り、充填機から小分けして気密性及び遮光性を有する容器に充填密封して加熱殺菌する。必要により液状食品と共に肉や野菜などの固形食品を容器に充填して加熱殺菌してもよい。肉や野菜などを容器に充填する場合、肉は適当な大きさにカット、ボイルして用いるのが好ましく、野菜は剥皮して適当な大きさにカットして用いるのが好ましい。
【0040】
液状食品を充填する気密性及び遮光性を有する容器としては、レトルトパウチを挙げることができるが、プラスチック製の成形トレイや金属製の缶であってもよい。加熱殺菌はレトルト殺菌機などの既知の加熱殺菌機を使用すればよい。加熱殺菌の条件としては、例えばレトルト殺菌の場合には、110〜130℃の温度、好ましくは115〜125℃の温度で、10〜50分間、好ましくは15〜40分間という条件を挙げることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0042】
〔実施例1〕
(1)基礎配合物準備工程
表1に示す配合で各材料を夫々計量して用意した。次に、加熱釜の中にパーム硬化油、小麦粉を投入し、攪拌羽根を回転させて攪拌混合しながら加熱した後、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、蛋白加水分解物、カレーパウダーを加熱釜の中に更に投入し、攪拌羽根を回転させて攪拌混合しながら100℃の温度で1時間加熱することにより溶融状態の基礎配合物を調製した。
【0043】
尚、表1に示されるパーム硬化油は、融点が45℃であり、20℃におけるSFCが60%、30℃におけるSFCが40%、40℃におけるSFCが15%のものであった。
【0044】
続いて得られた溶融状態の基礎配合物を充填機に送り、充填機から成形用容器の中に小分けして充填し、成形用容器に小分けされた溶融状態の基礎配合物を10℃に冷却して固化させることにより縦22cm×横11cm×高さ2cmの直方体の固形状基礎配合物を準備した。
【0045】
【表1】

【0046】
(2)基礎配合物解砕工程
搬送コンベアと、該搬送コンベアの搬送面上に配置され且つ上下動する解砕刃とを有する解砕装置を用い、固形状基礎配合物をこの搬送コンベアの搬送面に載せて解砕刃の下方に搬送し、上下動する解砕刃によって幅2cmに解砕した。
【0047】
(3)液状食品(カレー)生成工程
表2に示す配合で各材料を夫々計量して用意した。加熱釜の中に全ての材料を投入し、攪拌羽根を回転させて攪拌混合しながら混合物の温度が90℃になるまで加熱することによりカレーを調製した。
【0048】
【表2】

【0049】
(4)加熱殺菌工程
続いて得られたカレーを充填機に送り、この充填機からレトルトパウチに130g充填すると共に、固形食品として馬鈴薯30g、玉葱20g、人参10g、牛肉10gを充填してレトルトパウチを密封し、122℃、23分間の条件でレトルト殺菌することによりレトルトカレーを製造した。
【0050】
(5)レトルトカレー
得られたレトルトカレーを湯煎して温めて食したところ、コクのある風味、良好な口当たり、滑らかな食感を有するものであった。
また、このレトルトカレーは、油脂含量が3.8重量%であり、当該油脂の不飽和脂肪酸が38重量%のものであった。このレトルトカレーは、50℃の雰囲気下で30日間保存後も製造直後と同様の風味を有するものであった。
尚、レトルトカレーの油脂含量はソックスレー抽出法により測定したものであり、油脂の不飽和脂肪酸はガスクロマトグラフ法により測定したものである。
【0051】
〔実施例2〕
基礎配合物解砕工程に代えて基礎配合物溶解工程を採用する以外は、実施例1と同様にしてレトルトカレーを製造した。すなわち、表2に記載の水77.4重量部のうち25重量部を容器に入れて60℃に加温し、この中に基礎配合物15.0重量部を投入して攪拌混合して溶解させ、その後に液状食品生成工程を実行した。
実施例2により得られたレトルトカレーを湯煎して温めて食したところ、実施例1のレトルトカレーと同様に、コクのある風味を有し、良好な口当たり、滑らかな食感を有するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂と、澱粉系材料と、調味料と、水とを混合加熱して液状食品を作り、該液状食品を容器に充填密封して加熱殺菌することにより加熱殺菌済み食品を製造する方法において、 融点が35℃以上の油脂と、澱粉系材料と、調味料の一部とを混合加熱して溶融状の基礎配合物を作り、該溶融状の基礎配合物を油脂の融点よりも低い温度に冷却することにより固形状の基礎配合物を準備する基礎配合物準備工程と、 前記基礎配合物準備工程で準備した基礎配合物と、調味料の残部と、水とを混合加熱して液状食品を作る液状食品生成工程と、 前記液状食品を容器に充填密封して加熱殺菌する加熱殺菌工程とを有することを特徴とする加熱殺菌済み食品の製造方法。
【請求項2】
前記基礎配合物の油脂含量が30〜50重量%である、請求項1に記載の加熱殺菌済み食品の製造方法。
【請求項3】
前記基礎配合物生成工程で、前記調味料の一部として糖類と蛋白分解物とを使用する、請求項1に記載の加熱殺菌済み食品の製造方法。
【請求項4】
前記基礎配合物準備工程で準備した固形状の基礎配合物を解砕する基礎配合物解砕工程を有し、該基礎配合物解砕工程の後に液状食品生成工程を実行する、請求項1に記載の加熱殺菌済み食品の製造方法。
【請求項5】
前記基礎配合物準備工程で準備した固形状の基礎配合物を、液状食品生成工程で使用する水の一部に溶かす基礎配合物溶解工程を有し、該基礎配合物溶解工程の後に液状食品生成工程を実行する、請求項1に記載の加熱殺菌済み食品の製造方法。
【請求項6】
油脂と、澱粉系材料と、調味料と、水とを混合加熱して調製された液状食品が容器に充填密封され且つ加熱殺菌された加熱殺菌済み食品であって、
前記油脂の全部又は一部として水素添加油脂及び/又はエステル交換油脂を使用することにより、加熱殺菌済み食品に含まれる油脂の不飽和脂肪酸が45重量%以下に調整されていることを特徴とする加熱殺菌済み食品。

【公開番号】特開2011−211934(P2011−211934A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81574(P2010−81574)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】