説明

加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法

【課題】 加熱炉内を搬送させる被処理材の搬送方向の両側に蓄熱式バーナが対になって設けられた加熱炉において、長尺スラブ等の被処理材を加熱処理するにあたり、この被処理材の一端側から他端側に向けて十分な熱勾配を持つようにして、被処理材を加熱させることが適切に行えるようにする。
【解決手段】 加熱炉10内を搬送させる被処理材1の搬送方向の両側に、対になって設けられた蓄熱式バーナ20a,20bにおいて、燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えるにあたり、片側の蓄熱式バーナ20bの蓄熱動作時に、蓄熱室22bを通して排ガス排出管26bから排出させる燃焼排ガスの量を減少又は燃焼排ガスの排出を停止させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉内を搬送させる被処理材の搬送方向の両側に、燃料ガス供給管を備えたバーナ部と、蓄熱材を収容させた蓄熱室と、蓄熱室に燃焼用空気を供給する空気供給管と、蓄熱室から燃焼排ガスを排出させる排ガス排出管とを有する蓄熱式バーナが対になって設けられた加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法に関するものである。特に、上記の加熱炉において、長尺スラブ等の被処理材を加熱処理するにあたり、長尺スラブ等の被処理材の一端側から他端側に向けて十分な熱勾配を持つようにして、被処理材を加熱させることが適切に行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被処理材を加熱処理するにあたり、燃料ガス供給管を備えたバーナ部と、蓄熱材を収容させた蓄熱室と、蓄熱室に燃焼用空気を供給する空気供給管と、蓄熱室から燃焼排ガスを排出させる排ガス排出管とを有する蓄熱式バーナが対になって被処理材の搬送方向の両側に設けられた加熱炉を用い、一方の蓄熱式バーナにおいて、空気供給管から蓄熱室を通して燃焼用空気をバーナ部に導くと共に、このバーナ部における燃料ガス供給管から燃料ガスを噴射させて燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式バーナにおいて、燃焼排ガスを上記の蓄熱室に導いて、燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させて排ガス排出管から排出させる蓄熱動作を行い、この対になった蓄熱式バーナにおいて、上記の燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えることが行われている。
【0003】
そして、上記のような加熱炉において、上記の対になった蓄熱式バーナにおける燃焼動作と蓄熱動作とを同じようにして交互に切り替えた場合、この加熱炉内において被処理材が均一に加熱されるようになる。
【0004】
ここで、上記のような加熱炉を用いて長尺スラブ等の被処理材を均一に加熱処理し、このように加熱された被処理材を熱間圧延装置に導いて熱間圧延させる場合、長尺スラブ等の被処理材を熱間圧延させるのに時間がかかるため、熱間圧延装置に初めに導かれる被処理材の先端部と最後に導かれる後端部との間で大きな温度差が生じ、圧延時の温度が不均一になって均一な材質が得られず、また温度が低くなった後端部の圧延が困難になる等の問題があった。
【0005】
このため、従来においては、特許文献1に示されるように、上記のような加熱炉において、対になって設けられたそれぞれの蓄熱式バーナにおける燃焼動作時間を異ならせ、燃焼動作時間が長い蓄熱式バーナにおいては、蓄熱動作時における燃焼排ガスの吸引比率を高める一方、燃焼動作時間が短い蓄熱式バーナにおいては、燃焼動作時に燃焼空気比を増大させて、蓄熱材からの抜熱量を増加させるようにし、予め後端部の温度が高くなるように熱勾配を持たせて加熱するものが提案されている。
【0006】
しかし、近年においては、生産効率を高める等の目的から、長尺スラブ等の被処理材の厚みを大きくする場合があり、被処理材を熱間圧延させるのに要する時間がさらに長くなり、特許文献1に示されるようにした場合においても、長尺スラブ等の被処理材の一端側から他端側に向けて十分な熱勾配を持つようにして加熱させることが困難になっている。また、加熱効率を高める目的から、被処理材の厚みを小さくした場合にも、被処理材が放熱しやくなるため、同様の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3356595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、加熱炉内を搬送させる被処理材の搬送方向の両側に、燃料ガス供給管を備えたバーナ部と、蓄熱材を収容させた蓄熱室と、蓄熱室に燃焼用空気を供給する空気供給管と、蓄熱室から燃焼排ガスを排出させる排ガス排出管とを有する蓄熱式バーナが対になって設けられた加熱炉において、長尺スラブ等の被処理材を加熱処理する場合における上記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0009】
すなわち、本発明においては、上記のように加熱炉内を搬送させる被処理材の搬送方向の両側に、蓄熱式バーナが対になって設けられた加熱炉を用いて長尺スラブ等の被処理材を加熱処理するにあたり、長尺スラブ等の被処理材の一端側から他端側に向けて十分な熱勾配を持つようにして、被処理材を加熱させることが適切に行え、長尺スラブ等の被処理材の厚みを大きくした場合や、小さくした場合においても、被処理材を適切に熱間圧延できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法においては、上記のような課題を解決するため、加熱炉内を搬送させる被処理材の搬送方向の両側に、燃料ガス供給管を備えたバーナ部と、蓄熱材を収容させた蓄熱室と、蓄熱室に燃焼用空気を供給する空気供給管と、蓄熱室から燃焼排ガスを排出させる排ガス排出管とを有する蓄熱式バーナを対にして設け、一方の蓄熱式バーナにおいて、空気供給管から蓄熱室を通して燃焼用空気をバーナ部に導くと共に、このバーナ部における燃料ガス供給管から燃料ガスを噴射させて燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式バーナにおいて、燃焼排ガスを上記の蓄熱室に導いて燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させて排ガス排出管から排出させる蓄熱動作を行い、対になった蓄熱式バーナにおいて上記の燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えるにあたり、片側の蓄熱式バーナの蓄熱動作時に、蓄熱室を通して排ガス排出管から排出させる燃焼排ガスの量を減少させ又は燃焼排ガスの排出を停止させるようにした。
【0011】
そして、このように片側の蓄熱式バーナの蓄熱動作時に、蓄熱室を通して排ガス排出管から排出させる燃焼排ガスの量を減少させたり、燃焼排ガスの排出を停止させたりすると、この片側の蓄熱式バーナの蓄熱室内に収容された蓄熱材が燃焼排ガスによって十分に加熱されなくなり、この片側の蓄熱式バーナの燃焼動作時に、蓄熱室に供給された燃焼用空気が十分に加熱されず、燃焼用空気が温度の低い状態でバーナ部に導かれて燃焼に使用され、燃焼時における温度が低くなる。このため、この片側の蓄熱式バーナに近い被処理材の部分における加熱温度が、反対側の蓄熱式バーナに近い被処理材の部分における加熱温度よりも低下する。
【0012】
また、上記の片側の蓄熱式バーナの燃焼動作時に、燃料ガス供給管からバーナ部に供給する燃料ガスの量を減少させ又は燃料ガスの供給を停止させると、片側の蓄熱式バーナの燃焼時における温度がさらに低下し、この片側の蓄熱式バーナに近い被処理材の部分における加熱温度が、反対側の蓄熱式バーナに近い被処理材の部分における加熱温度よりもさらに低下する。
【0013】
また、上記の片側の蓄熱式バーナの燃焼動作時に、反対側の蓄熱式バーナにおいて、蓄熱室を通して排ガス排出管に導く燃焼排ガスの量を減少させると、片側の蓄熱式バーナの近くにおける温度の低い燃焼排ガスが、反対側の蓄熱式バーナの蓄熱室に導かれるのが抑制され、反対側の蓄熱式バーナの蓄熱室内に収容された蓄熱材の温度が低下するのが抑制される。
【0014】
また、上記のように片側の蓄熱式バーナの蓄熱動作時に、蓄熱室を通して排ガス排出管から排出させる燃焼排ガスの量を減少させたり、燃焼排ガスの排出を停止させるようにしたり、また片側の蓄熱式バーナの燃焼動作時に、反対側の蓄熱式バーナにおいて、蓄熱室を通して排ガス排出管に導く燃焼排ガスの量を減少させるようにすると、各排ガス排出管を通して排出される燃焼排ガスの量が減少して、加熱炉内の圧力が変動するため、余剰の燃焼排ガスを、加熱炉に設けられた煙道を通して排出させることが好ましい。
【0015】
また、加熱炉内を搬送させる被処理材の搬送方向の両側に、対になった蓄熱式バーナを設けるにあたり、対になった蓄熱式バーナを複数設け、片側及び反対側における全体の蓄熱式バーナを上記のように制御させるようにする他、片側及び反対側における一部の蓄熱式バーナだけを上記のように制御させるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、上記のように加熱炉内を搬送させる被処理材の搬送方向の両側に対になって設けられた蓄熱式バーナにおいて、燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えるにあたり、片側の蓄熱式バーナの蓄熱動作時に、蓄熱室を通して排ガス排出管から排出させる燃焼排ガスの量を減少させたり、燃焼排ガスの排出を停止させたりするようにしたため、この片側の蓄熱式バーナの蓄熱室内に収容された蓄熱材が燃焼排ガスによって十分に加熱されなくなり、この片側の蓄熱式バーナの燃焼動作時に、蓄熱室に供給された燃焼用空気が十分に加熱されず、燃焼用空気が温度の低い状態でバーナ部に導かれて燃焼に使用され、燃焼時における温度が低くなる。
【0017】
この結果、この片側の蓄熱式バーナに近い被処理材の部分における加熱温度が、反対側の蓄熱式バーナに近い被処理材の部分における加熱温度よりも低下し、長尺スラブ等の被処理材の一端側から他端側に向けて従来よりも大きな熱勾配を持つようにして、被処理材を加熱させることが可能になり、長尺スラブ等の被処理材の厚みが大きくなったり小さくなったりした場合においても、被処理材を適切に熱間圧延できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法に用いる加熱炉の内部状態を示した概略断面図である。
【図2】同実施形態における上記の加熱炉の概略平面図である。
【図3】同実施形態において、対になった蓄熱式バーナにおける一方の蓄熱式バーナで燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式バーナで蓄熱動作を行う状態を示した概略説明図である。
【図4】同実施形態において、片側の蓄熱式バーナの蓄熱動作時に、蓄熱室を通して排ガス排出管から排出させる燃焼排ガスの量を減少させ又は燃焼排ガスの排出を停止させる状態を示した概略説明図である。
【図5】同実施形態において、片側の蓄熱式バーナの燃焼動作時に、燃料ガス供給管からバーナ部に供給する燃料ガスの量を減少させ又は燃料ガスの供給を停止させる状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法は、特に下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0020】
ここで、この実施形態においては、図1及び図2に示すように、加熱炉10の入口11から加熱炉10内に導かれた長尺スラブ等の被処理材1を、ウォーキングビーム2により加熱炉10内において搬送させて加熱させ、このように加熱された被処理材1を加熱炉10の出口12を通して加熱炉10の外部に取り出すようにしている。
【0021】
そして、上記の加熱炉10においては、加熱炉10内を搬送させる被処理材1の搬送方向の両側の部分に、バーナ部21と蓄熱室22とを有する対になった蓄熱式バーナ20が対向するようにして、対になった蓄熱式バーナ20を被処理材1の搬送方向に所要間隔を介して複数設けている。
【0022】
ここで、上記の対になった蓄熱式バーナ20において、図3に示すように、一方の蓄熱式バーナ20aにおいて燃焼動作を行うにあたっては、蓄熱材23aが収容された蓄熱室22aに燃焼用空気を供給する空気供給管24aに設けられた空気供給用バルブ25aを開く一方、蓄熱室22aを通して燃焼排ガスを排出する排ガス排出管26aに設けられたガス排出用バルブ27aを閉じ、上記の空気供給管24aを通して蓄熱室22a内に導かれた燃焼用空気を、この蓄熱室22a内に収容された蓄熱材23aによって加熱させる。
【0023】
そして、このように加熱された燃焼用空気をバーナ部21aに供給すると共に、このバーナ部21aの中心に設けられた燃料ガス供給管28aに燃料ガスを導くガス供給バルブ29aを開けて、燃料ガスをこの燃料ガス供給管28aから噴射させて、この燃料ガスを加熱炉10内において燃焼させるようにする。
【0024】
一方、他方の蓄熱式バーナ20bにおいて蓄熱動作を行うにあたっては、燃料ガス供給管28bに燃料ガスを供給するガス供給バルブ29b及び空気供給管24bに設けられた空気供給用バルブ25bを閉じて燃焼を行わないようにする一方、蓄熱室22bを通して燃焼排ガスを排出する排ガス排出管26bに設けられたガス排出用バルブ27bを開くようにする。
【0025】
そして、上記のように加熱炉10内において燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱室22bに導き、この蓄熱室22bに収容された蓄熱材23bに燃焼排ガスの熱を蓄熱させ、その後、この燃焼排ガスを上記の排ガス排出管26bを通して外部に排出させるようにする。
【0026】
そして、上記の対になった蓄熱式バーナ20a,20bにおいて、上記のような燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えて行うようにする。
【0027】
ここで、上記のような燃焼動作と蓄熱動作とを上記の対になった蓄熱式バーナ20a,20bにおいて同じようにして行うと、加熱炉10内において搬送される被処理材1がこの両側の蓄熱式バーナ20a,20bによって略均一に加熱されるようになる。
【0028】
次に、この実施形態において、加熱炉10内に導かれた長尺スラブ等の被処理材1の一端側から他端側に向けて十分な熱勾配を持つようにして被処理材1を加熱させるにあたり、上記の一方の蓄熱式バーナ20a側における被処理材1の加熱温度を高くする一方、上記の他方の蓄熱式バーナ20b側における被処理材1の加熱温度を低くする場合について説明する。
【0029】
ここで、被処理材1の加熱温度を高くする側の蓄熱式バーナ20aにおいて燃焼動作を行う一方、被処理材1の加熱温度を低くする側の蓄熱式バーナ20bにおいて蓄熱動作を行う場合、被処理材1の加熱温度を高くする側の蓄熱式バーナ20aにおいては、上記のようにして通常の燃焼動作を行うようにする。
【0030】
一方、被処理材1を加熱させる温度を低くする側の蓄熱式バーナ20bの蓄熱動作時においては、上記のガス排出用バルブ27bの開閉を制御して、蓄熱室22bを通して排ガス排出管26bから排出させる燃焼排ガスの量を減少させ、或いは図4に示すように、ガス排出用バルブ27bを閉じて、燃焼排ガスの排出を停止させるようにする。
【0031】
このようにすると、この蓄熱式バーナ20bにおける蓄熱室22b内に収容された蓄熱材23bが燃焼排ガスによって十分に加熱されなくなる。なお、このように排ガス排出管26bから排出させる燃焼排ガスの量を減少させたり、燃焼排ガスの排出を停止させたりすると、加熱炉10内における燃焼排ガスの量が多くなって圧力が増加するため、この実施形態においては、加熱炉10内における余剰の燃焼排ガスを、加熱炉10に設けられた煙道13を通して排出させるようにしている。
【0032】
また、上記の蓄熱式バーナ20a,20bの動作を切り換えて、被処理材1の加熱温度を低くする側の蓄熱式バーナ20bにおいて燃焼動作を行う一方、被処理材1の加熱温度を高くする側の蓄熱式バーナ20aにおいて蓄熱動作を行う場合、被処理材1の加熱温度を低くする側の蓄熱式バーナ20bにおいては、上記のように燃焼用空気を空気供給管24bから蓄熱室22b内を通してバーナ部21bに供給する一方、燃料ガス供給管28bに燃料ガスを導くガス供給バルブ29bの開閉を制御して、燃料ガス供給管28bからバーナ部21bに供給させる燃料ガスの量を減少させ、或いは図5に示すように、ガス供給バルブ29bを閉じて、燃料ガスをバーナ部21bに供給させないようにする。
【0033】
このようにすると、この蓄熱式バーナ20bにおける蓄熱室22b内に収容された蓄熱材23bが上記のように蓄熱動作時に燃焼排ガスによって加熱されていないため、この蓄熱室22b内を通してバーナ部21bに供給される燃焼用空気の温度が、他方の蓄熱式バーナ20aの蓄熱室22a内を通してバーナ部21aに供給される燃焼用空気の温度よりも低くなると共に、上記のようにバーナ部21bに供給する燃料ガスの量を減少させ、或いは燃料ガスをバーナ部21bに供給させないようにしているため、この蓄熱式バーナ20b付近の温度が燃焼動作時においても上昇しなくなる。
【0034】
一方、被処理材1の加熱温度を高くする側の蓄熱式バーナ20aの蓄熱動作時においては、加熱炉10内における燃焼排ガスをこの蓄熱式バーナ20aの蓄熱室22aに導き、この蓄熱室22a内に収容された蓄熱材23aに燃焼排ガスの熱を蓄熱させて蓄熱材23aを加熱させるようにする。そして、この蓄熱式バーナ20aにおいて、次に燃焼動作を行うときには、このように加熱された蓄熱材23aにより加熱された燃焼用空気をバーナ部21aに供給して燃料ガスを燃焼させるようにする。
【0035】
このようにすると、この蓄熱式バーナ20aにおいては十分な燃焼が行われ、この蓄熱式バーナ20a付近の温度が、他方の蓄熱式バーナ20b付近の温度よりも高くなる。なお、この蓄熱式バーナ20aの蓄熱動作時において、反対側の上記の蓄熱式バーナ20b付近における低い温度の燃焼排ガスが、この蓄熱式バーナ20aの蓄熱室22aに導かれて蓄熱材23aの熱が奪われるのを抑制するため、上記のガス排出用バルブ27aの開閉を制御して、蓄熱室22aに導かれる燃焼排ガスの量を少し減少させるようにすることもできる。なお、この場合には、加熱炉10内における余剰の燃焼排ガスを、加熱炉10に設けられた煙道13を通して排出させるようにする。
【0036】
そして、被処理材1の加熱温度を高くする側の蓄熱式バーナ20aと被処理材1の加熱温度を低くする側の蓄熱式バーナ20bとにおいて、上記のようにして燃焼動作と蓄熱動作とを繰り返して行うと、被処理材1の加熱温度を高くする側の蓄熱式バーナ20a付近の温度が、被処理材1の加熱温度を低くする側の蓄熱式バーナ20b付近の温度よりも大きく上昇し、上記の蓄熱式バーナ20aに近い被処理材1の部分の加熱温度が高くなる一方、上記の蓄熱式バーナ20bに近い被処理材1の部分の加熱温度が低くなり、長尺スラブ等の被処理材1を、その一端側から他端側に向けて十分な熱勾配を持つようにして加熱させることができるようになる。
【0037】
そして、このように一端側から他端側に向けて十分な熱勾配を持つようにして加熱された被処理材1を加熱温度が低い側から熱間圧延装置(図示せず)に導いて熱間圧延させると、長尺スラブのように熱間圧延させるのに時間がかかる被処理材1であっても、熱間圧延装置に導かれる被処理材1の先端部と後端部との間で圧延時の温度差が生じるのが抑制され、被処理材1を適切に熱間圧延させることができるようになる。
【符号の説明】
【0038】
1 被処理材
2 ウォーキングビーム
10 加熱炉
11 入口
12 出口
13 煙道
20,20a,20b 蓄熱式バーナ
21,21a,21b バーナ部
22,22a,22b 蓄熱室
23a,23b 蓄熱材
24a,24b 空気供給管
25a,25b 空気供給用バルブ
26a,26b 排ガス排出管
27a,27b ガス排出用バルブ
28a,28b 燃料ガス供給管
29a,29b ガス供給バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉内を搬送させる被処理材の搬送方向の両側に、燃料ガス供給管を備えたバーナ部と、蓄熱材を収容させた蓄熱室と、蓄熱室に燃焼用空気を供給する空気供給管と、蓄熱室から燃焼排ガスを排出させる排ガス排出管とを有する蓄熱式バーナを対にして設け、一方の蓄熱式バーナにおいて、空気供給管から蓄熱室を通して燃焼用空気をバーナ部に導くと共に、このバーナ部における燃料ガス供給管から燃料ガスを噴射させて燃焼動作を行う一方、他方の蓄熱式バーナにおいて、燃焼排ガスを上記の蓄熱室に導いて燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させて排ガス排出管から排出させる蓄熱動作を行い、対になった蓄熱式バーナにおいて上記の燃焼動作と蓄熱動作とを交互に切り替えるにあたり、片側の蓄熱式バーナの蓄熱動作時に、蓄熱室を通して排ガス排出管から排出させる燃焼排ガスの量を減少させ又は燃焼排ガスの排出を停止させることを特徴とする加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法において、上記の片側の蓄熱式バーナの燃焼動作時に、燃料ガス供給管からバーナ部に供給する燃料ガスの量を減少させ又は燃料ガスの供給を停止させることを特徴とする加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法において、上記の片側の蓄熱式バーナの燃焼動作時に、反対側の蓄熱式バーナにおいて、蓄熱室を通して排ガス排出管に導く燃焼排ガスの量を減少させることを特徴とする加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法において、加熱炉内における余剰の燃焼排ガスを、加熱炉に設けられた煙道を通して排出させることを特徴とする加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法において、加熱炉内を搬送される被処理材の搬送方向の両側に、対になった蓄熱式バーナを複数設けたことを特徴とする加熱炉における蓄熱式バーナの燃焼制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−107827(P2012−107827A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257811(P2010−257811)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】