説明

加熱炉温度制御装置、加熱炉温度制御システム及び加熱炉温度制御方法、並びに、プログラム

【課題】現状の加熱炉の操業品質を確保しながら、加熱炉の温度を鋼材に最適な温度に早急かつ確実に調整できるようにする。
【解決手段】燃料の燃料流量を設定する設定手段501と、新モデルプログラム125cを用いて、設定手段501で設定された燃料流量に基づいて加熱炉の将来の予測温度を算出する第1の算出手段502と、既設モデルプログラム125bを用いて、第1の算出手段502で算出された加熱炉の将来の予測温度に基づいて鋼材の将来の予測温度を算出する第2の算出手段503と、第2の算出手段503で算出された鋼材の将来の予測温度が鋼材の目標温度に応じたものである場合に、設定手段501で設定された燃料流量に基づく燃料を加熱炉に供給する制御を行う燃料供給制御手段504を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投入された鋼材を加熱する加熱炉の温度を制御する加熱炉温度制御装置、加熱炉温度制御システム及び加熱炉温度制御方法、並びに、当該加熱炉温度制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄鋼業における連続熱間圧延用の鋼材を加熱炉で加熱する操業において、多品種小ロット生産を行う状況では、鋼材の種別ごとに最適な加熱炉の温度が数百℃の範囲で異なり、鋼材の種別ごとの加熱炉の温度設定における変更頻度が増大する傾向にある。
【0003】
そして、このような場合に、加熱炉の温度の変更に要する時間などを十分に考慮することができなければ、目標温度から乖離した温度条件で加熱処理が行われることになり、結果的に、鋼材の材質不良やその表面に欠陥が発生する等の不具合が生じることになる。
【0004】
一般的に、加熱炉の温度の変更は、加熱炉に供給する燃料の燃料流量を調整することで行われる。そこで、以下に、従来の燃料流量の調整方法について説明する。
【0005】
従来の燃料流量の調整方法(第1の調整方法)としては、まず、加熱炉の温度(「炉温」ともいう)を測定し、測定した加熱炉の温度に基づき、いわゆる差分法や重み付け残差法による計算により、加熱炉内の鋼材の温度を求める。そして、求めた鋼材の温度が所定温度となるような最適な加熱炉の温度を試行錯誤的に求め、この加熱炉の温度になるように、自動又は手動で燃料流量の増減を行って調整している。
【0006】
しかしながら、上述した第1の調整方法では、現在の加熱炉の温度から最適な加熱炉の温度に達するまでの時間や、加熱炉の温度制御に要する燃料流量の値などが直接は求められなかった。そのために、鋼材の焼き上げは、最適な加熱炉の温度(即ち、目標温度)になるように、燃料流量などを例えば手動で調整するなどして操業が行なわれていた。
【0007】
一方、第1の調整方法とは異なる燃料流量の調整方法(第2の調整方法)としては、例えば、下記の特許文献1に示す技術がある。具体的に、特許文献1では、先ず、設備及び操業条件に基づいて、放射伝熱解析手法、熱伝導解析手法並びに炉内ガスの熱及び物質収支計算を併用して各燃焼制御帯のガス温度、炉体断熱構造物及び炉内に存在する全鋼材内部温度分布をともに予測する。次に、この予測した鋼材の加熱温度がそれぞれの鋼材における所定の加熱温度となるような燃料流量及び燃焼用空気流量を求めて、これらの供給流量を制御するようにしている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−43912号公報
【特許文献2】特開昭56−75533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1等に示されている、「炉内の温度と鋼材内部の温度」とを同時に求める第2の調整方法で算出される鋼材の温度は、上述した「加熱炉の温度実績値に基づき鋼材の温度を算出」する第1の調整方法で算出される鋼材の温度とは、算出方法が異なるために一致しない。
【0010】
よって、第1の調整方法を既設モデルとして用いて鋼材の品質を確保している以上、第2の調整方法により算出された鋼材の温度の方が実際の鋼材の温度に近い場合であっても、現状の加熱炉の操業品質を確保しながら、第2の調整方法による新モデルに移行させることは困難であった。なぜならば、既設モデルによる鋼材の温度と新モデルによる鋼材の温度との間で温度変換式により変換処理を行うことが考えられるが、例えば、温度変換式を一般的によく知られる重回帰式で構築した場合、50℃以上の誤差が出て、実用上には問題があった。この場合、鋼材の品質を確保するための目標温度自体に、大きな誤差が生じてしまう結果となることがある。
【0011】
即ち、上述した第1の調整方法を用いることを前提して設定された、所望の鋼材品質(操業品質)を得るための操業指標である鋼材を熱処理する加熱温度、つまり目標温度を用いて、上述の第2の調整方法により直接的に燃料流量を求めて、加熱炉の温度制御を実施することができなかった。言い換えれば、上述の燃料流量の第2の調整方法は優れた方法ではあるが、目標とするべき鋼材の加熱条件は、操業する上で高精度には分かっておらず、すぐに実施しにくいという問題があった。
【0012】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、鋼材の焼き上げを自動化するべく、燃料流量から炉温や鋼材温度を予測して、燃料流量を制御する新しい加熱炉の制御方式を導入するに際して、既設のモデルを用いて加熱炉の温度を基に予め設定された目標温度を用いて、加熱炉の制御する技術を提供することを目的とする。そして、現状の加熱炉の操業品質を確保しながら、加熱炉の温度を鋼材に最適な温度に早急かつ確実に調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の加熱炉温度制御装置は、投入された鋼材の所望の品質を確保するべく、当該鋼材を目標温度通りに加熱するために加熱炉の温度を制御する加熱炉温度制御装置であって、前記加熱炉の温度に基づき前記鋼材の温度を計算する第1のプログラムと、前記加熱炉に供給する燃料の燃料流量に応じて前記加熱炉の将来の予測温度を計算する第2のプログラムと、前記鋼材の目標温度と前記第1のプログラムで計算された鋼材の温度との差に基づいて、前記燃料流量を仮に設定する設定手段と、前記第2のプログラムを用いて、前記設定手段で設定された燃料流量に基づいて前記加熱炉の将来の予測温度を算出する第1の算出手段と、前記第1のプログラムを用いて、前記第1の算出手段で算出された前記加熱炉の将来の予測温度に基づいて前記鋼材の将来の予測温度を算出する第2の算出手段と、前記第2の算出手段で算出された前記鋼材の将来の予測温度が前記鋼材の目標温度に応じたものである場合に、前記設定手段で設定された燃料流量に基づく燃料を前記加熱炉に供給する制御を行う燃料供給制御手段とを有する。
【0014】
本発明の加熱炉温度制御システムは、前記加熱炉温度制御装置と、前記加熱炉と、前記燃料供給制御手段の制御に基づいて、前記設定手段で設定された燃料流量に基づく燃料を前記加熱炉に供給する燃料供給手段とを有する。
【0015】
本発明の加熱炉温度制御方法は、投入された鋼材の所望の品質を確保するべく、当該鋼材を目標温度通りに加熱するために加熱炉の温度を制御するものであり、前記加熱炉の温度に基づき前記鋼材の温度を計算する第1のプログラムと、前記加熱炉に供給する燃料の燃料流量に応じて前記加熱炉の将来の予測温度を計算する第2のプログラムとを備える加熱炉温度制御装置による加熱炉温度制御方法であって、前記鋼材の目標温度と前記第1のプログラムで計算された鋼材の温度との差に基づいて、前記燃料流量を仮に設定する設定ステップと、前記第2のプログラムを用いて、前記設定ステップで設定された燃料流量に基づいて前記加熱炉の将来の予測温度を算出する第1の算出ステップと、前記第1のプログラムを用いて、前記第1の算出ステップで算出された前記加熱炉の将来の予測温度に基づいて前記鋼材の将来の予測温度を算出する第2の算出ステップと、前記第2の算出ステップで算出された前記鋼材の将来の予測温度が前記鋼材の目標温度に応じたものである場合に、前記設定ステップで設定された燃料流量に基づく燃料を前記加熱炉に供給する制御を行う燃料供給制御ステップとを有する。
【0016】
本発明のプログラムは、投入された鋼材の所望の品質を確保するべく、当該鋼材を目標温度通りに加熱するために加熱炉の温度を制御するものであり、前記加熱炉の温度に基づき前記鋼材の温度を計算する第1のプログラムと、前記加熱炉に供給する燃料の燃料流量に応じて前記加熱炉の将来の予測温度を計算する第2のプログラムとを備える加熱炉温度制御装置による加熱炉温度制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記鋼材の目標温度と前記第1のプログラムで計算された鋼材の温度との差に基づいて、前記燃料流量を仮に設定する設定ステップと、前記第2のプログラムを用いて、前記設定ステップで設定された燃料流量に基づいて前記加熱炉の将来の予測温度を算出する第1の算出ステップと、前記第1のプログラムを用いて、前記第1の算出ステップで算出された前記加熱炉の将来の予測温度に基づいて前記鋼材の将来の予測温度を算出する第2の算出ステップと、前記第2の算出ステップで算出された前記鋼材の将来の予測温度が前記鋼材の目標温度に応じたものである場合に、前記設定ステップで設定された燃料流量に基づく燃料を前記加熱炉に供給する制御を行う燃料供給制御ステップとをコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、現状の加熱炉の操業品質を確保しながら、加熱炉の温度を鋼材に最適な温度に早急かつ確実に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明を行う。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る加熱炉温度制御システムの概略構成の一例を示す模式図である。
図1に示すように、加熱炉温度制御システム100は、加熱炉110と、加熱炉温度制御装置120と、温度検出部130(130−1〜130−3)と、燃料供給部140(140−1〜140−3)と、通信ネットワーク151及び152を有して構成されている。
【0020】
加熱炉110は、投入された鋼材を加熱する処理を行うものである。この加熱炉110内には、複数の燃焼制御帯(図1に示す例では、3つの燃焼制御帯)が形成されている。
【0021】
加熱炉温度制御装置120は、加熱炉110に投入された鋼材の所望の品質を確保するべく、当該鋼材を目標温度通りに加熱するために、加熱炉110の温度を制御する処理を行うものであり、例えばコンピュータ等で形成されている。
【0022】
温度検出部130(130−1〜130−3)は、例えば加熱炉110の各燃焼制御帯に設けられており、当該燃焼制御帯における加熱炉110の温度を検出する。
【0023】
燃料供給部140(140−1〜140−3)は、例えば加熱炉110の各燃焼制御帯に対応して設けられており、加熱炉温度制御装置120の制御に基づいて、設定された燃料流量に基づく燃料を加熱炉110に供給するものである。
【0024】
通信ネットワーク151は、加熱炉温度制御装置120と温度検出部130とを通信可能に接続するものである。また、通信ネットワーク152は、加熱炉温度制御装置120と燃料供給部140とを通信可能に接続するものである。
【0025】
なお、図1に示す例では、加熱炉110の燃焼制御帯に応じて、その数だけ温度検出部130及び燃料供給部140を設けるようにしているが、本実施形態においては、これに限定されるわけでなく、例えば、基準となる燃焼制御帯のみに、それぞれを1つずつ設ける形態であっても適用可能である。
【0026】
次に、加熱炉温度制御装置120の内部のハードウエア構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る加熱炉温度制御装置120の内部のハードウエア構成の一例を示す模式図である。
【0027】
図2に示すように、加熱炉温度制御装置120は、CPU121と、ROM122と、RAM123と、入力手段124と、プログラム記憶媒体125と、情報記憶媒体126と、表示装置127と、通信インターフェース(通信I/F)128と、バス129を有して構成されている。
【0028】
CPU121は、加熱炉温度制御装置120における動作を統括的に制御するものであり、バス129を介して、加熱炉温度制御装置120の各構成部(122〜128)を制御する。
【0029】
ROM122は、CPU121の動作に係るBIOS(Basic Input/Output System)やオペレーティングシステムプログラム(OS)等を記憶する。
【0030】
RAM123は、CPU121の主メモリ、ワークエリア等として機能する。CPU121は、処理の実行に際して、ROM122や後述するプログラム記憶媒体125から必要なプログラム等や、後述する情報記憶媒体126から必要な情報等をRAM123にロードし、当該プログラム等や当該情報等の処理を実行することで各種の動作を実現する。
【0031】
入力手段124は、例えば、マウスやキーボード等のポインティングデバイスからなり、操作者(ユーザ)が必要に応じて、当該加熱炉温度制御装置120に対して操作入力を行うための操作入力手段であってもよい。また、製造工程を統括・管理する上位のビジネス・コンピュータなど他のコンピュ−タから操作情報を入力するためのネットワークI/Oで構成することもできる。以下の説明では、入力手段124としてポインティングデバイス(PD)を用いる場合を例として記載するが、ネットワークI/Oを用いて他のコンピュータから操作情報を入力する場合にも、容易に読み替えて適用できる。
【0032】
プログラム記憶媒体125は、制御プログラム125a、既設モデルプログラム125b、新モデルプログラム125cを含む各種のプログラムを記憶する記憶媒体である。制御プログラム125aは、CPU121が後述する図6の処理を実行する際に用いるプログラムである。既設モデルプログラム125bは、加熱炉110の現在の操業に用いられているものであり、加熱炉110の温度に基づき加熱炉110内部の鋼材の温度を計算するためのプログラム(第1のプログラム)である。新モデルプログラム125cは、加熱炉110の操業に新たに用いられるものであり、加熱炉110に供給する燃料の燃料流量に応じて、加熱炉110の将来の予測温度及び鋼材の将来の予測温度を計算するためのプログラム(第2のプログラム)である。
【0033】
情報記憶媒体126は、CPU121が処理を行う際に必要な各種の情報を記憶すると共に、CPU121の処理により得られた各種の情報を記憶する記憶媒体である。
【0034】
表示装置127は、CPU121の制御に基づいて、各種の情報やメニュー画像等を表示する表示手段である。
【0035】
通信I/F128は、CPU121の制御に基づいて、通信ネットワーク151を介して温度検出部130と通信を行い、また、通信ネットワーク152を介して燃料供給部140と通信を行う。
【0036】
バス129は、CPU121、ROM122、RAM123、入力手段124、プログラム記憶媒体125、情報記憶媒体126、表示装置127及び通信I/F128を相互に通信可能に接続するためのバスである。
【0037】
次に、プログラム記憶媒体125に記憶されている既設モデルプログラム125b及び新モデルプログラム125cについて説明する。
【0038】
図3は、図2に示す既設モデルプログラム125bの処理イメージの一例を示す模式図である。
既設モデルプログラム125bは、加熱炉110の温度を入力とし、加熱炉110内部の鋼材の温度を出力とする(即ち、鋼材の温度=f(加熱炉110の温度))。例えば、既設モデルプログラム125bは、温度検出部130で検出された加熱炉110の温度が入力されると、当該加熱炉110の温度に基づいて、いわゆる差分法や重み付け残差法等により、加熱炉110内部の鋼材の温度を計算するプログラムである。
【0039】
図4は、図2に示す新モデルプログラム125cの処理イメージの一例を示す模式図である。
新モデルプログラム125cは、加熱炉に供給する燃料の燃料流量を入力とし、加熱炉110の将来の予測温度、及び、加熱炉110内部の鋼材の将来の予測温度を出力とする。
【0040】
次に、CPU121の処理に係る機能構成について説明する。
図5は、図2に示すCPU121の処理に係る機能構成の一例を示す模式図である。
【0041】
CPU121は、制御プログラム125aを実行することにより、設定手段501、第1の算出手段502、第2の算出手段503、燃料供給制御手段504、及び、記憶制御手段505の各機能構成を構築する。
【0042】
設定手段501は、例えば、操作者(ユーザ)から入力手段124を介して入力された鋼材の目標温度と、既設モデルプログラム125bで計算された鋼材の温度の差に基づいて加熱炉110に供給するための燃料流量を仮に設定する。
【0043】
第1の算出手段502は、新モデルプログラム125cを用いて、設定手段501で設定された燃料流量に基づいて、加熱炉110の将来の予測温度、及び、加熱炉110内部の鋼材の将来の予測温度を算出する。
【0044】
第2の算出手段503は、既設モデルプログラム125bを用いて、第1の算出手段502で算出された加熱炉110の将来の予測温度に基づいて、鋼材の将来の予測温度を算出する。
【0045】
燃料供給制御手段504は、まず、操作者(ユーザ)から入力手段124を介して入力された情報に基づいて、鋼材の目標温度を設定する。この際に設定される鋼材の目標温度は、加熱炉110の現在の操業に用いられている既設モデルプログラム125bに対応した鋼材の温度であり、現在の品質管理の指標に使われている鋼材の温度である。続いて、燃料供給制御手段504は、第2の算出手段503で算出された鋼材の将来の予測温度が鋼材の目標温度に応じたものであるか(即ち、目標どおりであるか)を判断し、目標どおりである場合には、燃料供給部140に対して、設定手段501で設定された燃料流量に基づく燃料を加熱炉110に供給する制御を行う。一方、目標どおりでない場合には、燃料供給制御手段504は、設定手段501に対して、燃料流量の設定を変更する制御を行う。
【0046】
記憶制御手段505は、まず、第1の算出手段502で算出された鋼材の将来の予測温度を取得する。その後、記憶制御手段505は、燃料供給制御手段504の制御により燃料供給部140から供給された燃料に基づき加熱炉110で加熱された鋼材の種別情報及当該鋼材の品質に係る品質情報を、操作者(ユーザ)から入力手段124を介して入力された情報に基づいて取得する。そして、記憶制御手段505は、第1の算出手段502で算出された鋼材の将来の予測温度を、鋼材の種別情報及品質情報と関連付けて情報記憶媒体126に記憶する制御を行う。
【0047】
次に、加熱炉温度制御装置120による加熱炉温度制御方法について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る加熱炉温度制御装置120による加熱炉温度制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。この図6に示すフローチャートは、CPU121が制御プログラム125aを実行することによって行われる。なお、以下に示す図6のフローチャートの説明においては、図5に示す機能構成と対応させて説明を行う。
【0048】
まず、ステップS101において、燃料供給制御手段504は、操作者(ユーザ)から入力手段124を介して入力された情報に基づいて、鋼材の目標温度を設定する。このステップS101で設定される鋼材の目標温度は、加熱炉110の現在の操業に用いられている既設モデルプログラム125bに対応した鋼材の温度であり、現在の品質管理の指標に使われている鋼材の温度である。
【0049】
続いて、ステップS102において、設定手段501は、操作者(ユーザ)から入力手段124を介して入力された鋼材の目標温度と、既設モデルプログラム125bで計算された鋼材の温度の差に基づいて、加熱炉110に燃料を供給するための燃料流量を設定する。
【0050】
続いて、ステップS103において、第1の算出手段502は、新モデルプログラム125cを用いて、ステップS102で設定された燃料流量に基づいて、加熱炉110の将来の予測温度、及び、加熱炉110内部の鋼材の将来の予測温度を算出する。
【0051】
続いて、ステップS104において、第2の算出手段503は、既設モデルプログラム125bを用いて、ステップS103で算出された加熱炉110の将来の予測温度に基づいて、鋼材の将来の予測温度を算出する。
【0052】
続いて、ステップS105において、燃料供給制御手段504は、ステップS104で算出された鋼材の将来の予測温度と、ステップS101で設定した鋼材の目標温度とを比較する。
【0053】
続いて、ステップS106において、燃料供給制御手段504は、ステップS104で算出された鋼材の将来の予測温度が目標どおりであるか否かを判断する。この際、燃料供給制御手段504は、例えば、ステップS104で算出された鋼材の将来の予測温度(図4)が、ステップS101で設定した鋼材の目標温度に所定時間内に到達する場合に、目標どおりであると判断する。
【0054】
ステップS106の判断の結果、ステップS104で算出された鋼材の将来の予測温度が目標どおりでない場合には(S106/NO)、ステップS102に戻り、設定手段501において燃料流量の設定を変更して、ステップS103以降の処理が再度行われる。
【0055】
一方、ステップS106の判断の結果、ステップS104で算出された鋼材の将来の予測温度が目標どおりである場合には(S106/YES)、ステップS107に進む。ステップS107に進むと、燃料供給制御手段504は、燃料供給部140に対して、ステップS102で設定された燃料流量に基づく燃料を加熱炉110に供給する制御を行う。これにより、燃料供給部140から加熱炉110に所定の燃料流量に基づく燃料が供給されて、鋼材の加熱処理が行われる。
【0056】
その後、ステップS108において、記憶制御手段505は、操作者(ユーザ)から入力手段124を介して入力された情報に基づいて、ステップS107で加熱処理が行われた鋼材の種別情報及びその品質情報を取得する。
【0057】
続いて、ステップS109において、記憶制御手段505は、ステップS103で算出された鋼材の将来の予測温度を、ステップS108で取得した種別情報及び品質情報と関連付けて情報記憶媒体126に記憶する制御を行う。これにより、情報記憶媒体126に、新モデルプログラム125cを用いて算出された鋼材の将来の予測温度に係る鋼材の温度情報が、当該鋼材の種別情報及び品質情報と共に記憶されることになる。
【0058】
図7は、図2に示す情報記憶媒体126に記憶される、新モデルプログラム125cを用いて算出された鋼材の温度情報における記憶形態の一例を示す模式図である。
図7に示す例では、鋼材の種別情報としてID番号が示されており、当該ID番号に紐付けられて、当該鋼材の品質情報、新モデルプログラム125cを用いて算出された鋼材の温度情報が記憶される。ここで、品質情報としては、例えば、品質のレベルに応じた数値で示すことが適用できる。
【0059】
図8は、本発明の実施形態に係る加熱炉温度制御装置120の処理イメージの一例を示す模式図である。
【0060】
図8に示す鋼材の目標温度801は、加熱炉110の現在の操業に用いられている既設モデルプログラム125bに対応した鋼材の温度である。この際、切替え部802を目標温度変換器803側にして、鋼材の目標温度801に対して目標温度変換器803による温度変換を行って、新モデルプログラム125cにより算出される鋼材の温度を用いて処理を実行することが考えられる。しかしながら、上述したように、この場合、目標温度変換器803において一般的によく知られる重回帰式で温度変換式を構築した場合、変換した新目標温度では、50℃以上の誤差が出て実用上の問題が生じてしまう結果となった。
【0061】
そこで、本実施形態では、目標温度変換器803を用いずに切替え部802を新モデルプログラム125c側に直接接続すると共に、加熱炉110の実操業においては、新モデルプログラム125cにより算出される鋼材の温度はあえて使わず、新モデルプログラム125cにより算出される加熱炉110の将来の予測温度のみを用いるようにしている。そして、加熱炉110の現在の操業で用いられている既設モデルプログラム125bを使用して、新モデルプログラム125cにより算出された加熱炉110の将来の予測温度に基づいて、鋼材の将来の予測温度を連続的に算出するようにしている。
【0062】
ここで、既設モデルプログラム125bによる温度モデル式としては、例えば、図8に示す(1)式及び(2)式を用いることができる。
ここで、図8に示す(1)式において、nは鋼材を厚さ方向にn等分した際のメッシュ点を示し、Δτは計算ピッチを示し、θnはΔτ時間前のメッシュ点nの温度を示し、θn'はθn計算からΔτ時間後のメッシュ点nの温度を示し、kはメッシュ点nにおける熱伝導率を示し、cはメッシュ点nにおける比熱を示し、ρは比重を示し、Δxはメッシュ点間距離を示している。また、図8に示す(2)式において、φCGは総括熱吸収係数を示している。
【0063】
そして、図8に示す(1)式及び(2)式を用いた温度モデルによる鋼材の温度の算出は、従来から一般的に行われており、例えば、上記の特許文献2による技術を用いて算出することが可能となっている。
【0064】
そして、本実施形態では、既設モデルプログラム125bを用いて算出した鋼材の将来の予測温度に係る鋼材の温度が目標温度になるように燃料流量を変更し、鋼材の加熱処理を行うようにしている。本実施形態では、このように処理することで、現状の加熱炉110の操業品質を確保しながら、加熱炉110の温度を鋼材に最適な温度に早急かつ確実に調整することを実現している。
【0065】
また、本実施形態では、新モデルプログラム125cにより算出される鋼材の温度を、当該鋼材の品質情報と関連付けて記憶(蓄積)するようにしている。これにより、将来的に、新モデルプログラム125cにより算出される鋼材の温度と鋼材の品質との関係が構築されれば、新モデルプログラム125cにより算出される鋼材の温度を、新たな品質管理の指標として活用することが可能となる。
【0066】
前述した本実施形態に係る加熱炉温度制御装置120による加熱炉温度制御方法を示す図6の各ステップは、CPU121が制御プログラム125aを実行することによって実現できる。この制御プログラム125a及び当該制御プログラム125aを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(プログラム記憶媒体125)は本発明に含まれる。
【0067】
具体的に、前記プログラムは、例えばCD−ROMのような記憶媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。前記プログラムを記録する記憶媒体としては、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。他方、前記プログラムの伝送媒体としては、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワーク(LAN、インターネットの等のWAN、無線通信ネットワーク等)システムにおける通信媒体を用いることができる。また、この際の通信媒体としては、光ファイバ等の有線回線や無線回線などが挙げられる。
【0068】
また、本発明は、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより本実施形態に係る加熱炉温度制御装置120の機能が実現される態様に限られない。そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して本実施形態に係る加熱炉温度制御装置120の機能が実現される場合も、かかるプログラムは本発明に含まれる。また、供給されたプログラムの処理の全て、或いは一部がコンピュータの機能拡張ボードや機能拡張ユニットにより行われて本実施形態に係る加熱炉温度制御装置120の機能が実現される場合も、かかるプログラムは本発明に含まれる。
【0069】
また、前述した本実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術的思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態に係る加熱炉温度制御システムの概略構成の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る加熱炉温度制御装置の内部のハードウエア構成の一例を示す模式図である。
【図3】図2に示す既設モデルプログラムの処理イメージの一例を示す模式図である。
【図4】図2に示す新モデルプログラムの処理イメージの一例を示す模式図である。
【図5】図2に示すCPUの処理に係る機能構成の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係る加熱炉温度制御装置による加熱炉温度制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】図2に示す情報記憶媒体に記憶される、新モデルプログラムを用いて算出された鋼材の温度情報における記憶形態(保存形態)の一例を示す模式図である。
【図8】本発明の実施形態に係る加熱炉温度制御装置の処理イメージの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0071】
100 加熱炉温度制御システム
110 加熱炉
120 加熱炉温度制御装置
130 温度検出部
140 燃料供給部
151、152 通信ネットワーク
121 CPU
122 ROM
123 RAM
124 入力手段
125 プログラム記憶媒体
125a 制御プログラム
125b 既設モデルプログラム
125c 新モデルプログラム
126 情報記憶媒体
127 表示装置
128 通信インターフェース(通信I/F)
129 バス
501 設定手段
502 第1の算出手段
503 第2の算出手段
504 燃料供給制御手段
505 記憶制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された鋼材の所望の品質を確保するべく、当該鋼材を目標温度通りに加熱するために加熱炉の温度を制御する加熱炉温度制御装置であって、
前記加熱炉の温度に基づき前記鋼材の温度を計算する第1のプログラムと、
前記加熱炉に供給する燃料の燃料流量に応じて前記加熱炉の将来の予測温度を計算する第2のプログラムと、
前記鋼材の目標温度と前記第1のプログラムで計算された鋼材の温度との差に基づいて、前記燃料流量を仮に設定する設定手段と、
前記第2のプログラムを用いて、前記設定手段で設定された燃料流量に基づいて前記加熱炉の将来の予測温度を算出する第1の算出手段と、
前記第1のプログラムを用いて、前記第1の算出手段で算出された前記加熱炉の将来の予測温度に基づいて前記鋼材の将来の予測温度を算出する第2の算出手段と、
前記第2の算出手段で算出された前記鋼材の将来の予測温度が前記鋼材の目標温度に応じたものである場合に、前記設定手段で設定された燃料流量に基づく燃料を前記加熱炉に供給する制御を行う燃料供給制御手段と
を有することを特徴とする加熱炉温度制御装置。
【請求項2】
前記第2のプログラムは、前記加熱炉の将来の予測温度に加えて、前記鋼材の将来の予測温度を更に計算するものであることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉温度制御装置。
【請求項3】
前記第1の算出手段は、前記第2のプログラムを用いて、前記設定手段で設定された燃料流量に基づいて、前記加熱炉の将来の予測温度に加えて、前記鋼材の将来の予測温度を更に算出するものであり、
前記第1の算出手段で算出された前記鋼材の将来の予測温度を、前記燃料供給制御手段の制御により供給された燃料に基づき前記加熱炉で加熱された前記鋼材の品質に係る品質情報と関連付けて記憶媒体に記憶する制御を行う記憶制御手段を更に有することを特徴とする請求項2に記載の加熱炉温度制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加熱炉温度制御装置と、
前記加熱炉と、
前記燃料供給制御手段の制御に基づいて、前記設定手段で設定された燃料流量に基づく燃料を前記加熱炉に供給する燃料供給手段と
を有することを特徴とする加熱炉温度制御システム。
【請求項5】
投入された鋼材の所望の品質を確保するべく、当該鋼材を目標温度通りに加熱するために加熱炉の温度を制御するものであり、前記加熱炉の温度に基づき前記鋼材の温度を計算する第1のプログラムと、前記加熱炉に供給する燃料の燃料流量に応じて前記加熱炉の将来の予測温度を計算する第2のプログラムとを備える加熱炉温度制御装置による加熱炉温度制御方法であって、
前記鋼材の目標温度と前記第1のプログラムで計算された鋼材の温度との差に基づいて、前記燃料流量を仮に設定する設定ステップと、
前記第2のプログラムを用いて、前記設定ステップで設定された燃料流量に基づいて前記加熱炉の将来の予測温度を算出する第1の算出ステップと、
前記第1のプログラムを用いて、前記第1の算出ステップで算出された前記加熱炉の将来の予測温度に基づいて前記鋼材の将来の予測温度を算出する第2の算出ステップと、
前記第2の算出ステップで算出された前記鋼材の将来の予測温度が前記鋼材の目標温度に応じたものである場合に、前記設定ステップで設定された燃料流量に基づく燃料を前記加熱炉に供給する制御を行う燃料供給制御ステップと
を有することを特徴とする加熱炉温度制御方法。
【請求項6】
前記第2のプログラムは、前記加熱炉の将来の予測温度に加えて、前記鋼材の将来の予測温度を更に計算するものであることを特徴とする請求項5に記載の加熱炉温度制御方法。
【請求項7】
前記第1の算出ステップでは、前記第2のプログラムを用いて、前記設定ステップで設定された燃料流量に基づいて、前記加熱炉の将来の予測温度に加えて、前記鋼材の将来の予測温度を更に算出するものであり、
前記第1の算出ステップで算出された前記鋼材の将来の予測温度を、前記燃料供給制御ステップの制御により供給された燃料に基づき前記加熱炉で加熱された前記鋼材の品質に係る品質情報と関連付けて記憶媒体に記憶する制御を行う記憶制御ステップを更に有することを特徴とする請求項6に記載の加熱炉温度制御方法。
【請求項8】
投入された鋼材の所望の品質を確保するべく、当該鋼材を目標温度通りに加熱するために加熱炉の温度を制御するものであり、前記加熱炉の温度に基づき前記鋼材の温度を計算する第1のプログラムと、前記加熱炉に供給する燃料の燃料流量に応じて前記加熱炉の将来の予測温度を計算する第2のプログラムとを備える加熱炉温度制御装置による加熱炉温度制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記鋼材の目標温度と前記第1のプログラムで計算された鋼材の温度との差に基づいて、前記燃料流量を仮に設定する設定ステップと、
前記第2のプログラムを用いて、前記設定ステップで設定された燃料流量に基づいて前記加熱炉の将来の予測温度を算出する第1の算出ステップと、
前記第1のプログラムを用いて、前記第1の算出ステップで算出された前記加熱炉の将来の予測温度に基づいて前記鋼材の将来の予測温度を算出する第2の算出ステップと、
前記第2の算出ステップで算出された前記鋼材の将来の予測温度が前記鋼材の目標温度に応じたものである場合に、前記設定ステップで設定された燃料流量に基づく燃料を前記加熱炉に供給する制御を行う燃料供給制御ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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