説明

加熱炉

【課題】 熱風の吹き出し温度を被加熱物の設定温度に短時間で到達させることができる加熱炉を得る。
【解決手段】 ダクト3を通して炉体2内に熱風を送り込み炉体2から吹き出させた熱風により被加熱物を加熱処理する加熱炉において、ダクト3及び/又は炉体2の内面に断熱材13を貼付することにより、熱風がダクト3及び/又は炉体2の内面に貼付した断熱材13によりダクト3及び/又は炉体2と直接接触しないようにし、ダクト3や炉体2内を通る熱風に対するダクト3及び/又は炉体2の熱的影響を抑えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクトを通して炉体内に熱風を送り込み炉体から吹き出させた熱風により被加熱物を加熱処理する加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、表面に塗布液を塗工したプラスチックフィルム、金属薄板、紙、繊維、ゴム等の帯状の塗工材の乾燥に、また、その他の加熱処理を必要とされる被加熱物の加熱手段として、炉体内に熱風を送り込み炉体から吹き出させた熱風により被加熱物を加熱処理する加熱炉が知られている。
【0003】
この種の加熱炉では熱媒体となる空気等の気体の熱容量が、熱風の循環するダクトや炉体の熱容量に対して著しく小さいのが一般的であり、そのため設定温度を変えたとき熱風と熱風が通過するダクトや炉体との温度差により、炉体から吹き出される熱風の吹き出し温度(以下、単に熱風の吹き出し温度という。)の上昇や下降の速度が遅くなり、熱風の吹き出し温度が設定温度に到達するのに長い時間を要することが多い。
【0004】
これを解決するために空気を加熱する熱交換器の容量を大きくして、入口側と出口側の温度差を大きくすることが考えられるが、熱交換器の容量を大きくすると応答速度が遅くなり、制御性が悪くなるので熱交換器の容量も制約される。
【0005】
こうしたことから、従来のこの種の加熱炉では熱風の吹き出し温度を短時間で設定温度に変更することが難しく、熱風の吹き出し温度を設定温度に到達させるのに時間がかかり、稼動効率の低下を招くといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−170524号公報
【特許文献2】特開2003−300004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の加熱炉の問題点を解決すべく、本発明者らは試験研究の結果、ダクトや炉体の実効熱容量低減することにより、設定温度を変えたとき熱風と熱風が通過するダクトや炉体との温度差の影響を少なくする、即ち、熱風の熱がダクトや炉体に奪われることを防ぐことに着目し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の目的は、熱風の吹き出し温度を被加熱物の設定温度に短時間で到達させることができる加熱炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、ダクトを通して炉体内に熱風を送り込み炉体から吹き出させた熱風により被加熱物を加熱処理する加熱炉において、前記ダクト及び/又は炉体の内面に断熱材が貼付されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記断熱材の露出面が、物理的或いは化学的強度のある表面保護材で被覆されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の加熱炉によれば、ダクトを通して炉体内に熱風を送り込み炉体から吹き出させた熱風により被加熱物を加熱処理する加熱炉において、前記ダクト及び/又は炉体の内面に断熱材が貼付されているので、熱風がダクト及び/又は炉体の内面に貼付されている断熱材によりダクト及び/又は炉体と直接接触することがなく炉体から吹き出されることとなるから、ダクトや炉体内を通る熱風に対するダクト及び/又は炉体の熱的影響が抑えられる、即ち、ダクトや炉体の実効熱容量が低減されることになり、設定温度を変えたとき熱風と熱風が通過するダクトや炉体との温度差の影響が少なくなるので、熱風の吹き出し温度を被加熱物の設定温度に短時間で到達させることができ、これにより稼動効率の向上を図ることができるとともに省エネルギーを図ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記断熱材の熱風が触れる表面が、物理的或いは化学的強度のある表面保護材で被覆されているので、前記断熱材の表面が表面保護材で保護され劣化が防止されることになり、耐久性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る加熱炉の実施の形態の一例を示す要部概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る加熱炉を実施するための形態を、図1に示す実施例により詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る加熱炉の実施の形態の一例を示す要部概略縦断面図である。
【0016】
本例の加熱炉は、内部に被加熱物(図示せず)が搬送される加熱炉本体1と、加熱炉本体1の炉体2に接続され、炉体2内へ熱風を送り込むための送りダクト3と、炉体2から吹き出された熱風を回収し送りダクト3側へ戻すための戻りダクト4と、送りダクト3と戻りダクト4との間に配置され、気体、本例では空気を送りダクト3側へ送り出す送風機5と、熱源6から供給される熱により送風機5から送られてくる空気を加熱する熱交換器7とから構成されている。
【0017】
更に詳細には、加熱炉本体1にあっては、加熱筐体8内の上側に炉体2が設けられており、炉体2の下側が、搬送された被加熱物を加熱する加熱室9となっている。炉体2の下面には、送りダクト3から送り込まれた熱風を加熱室9に吹き出す吹き出し口10が設けられている。送りダクト3にあっては、加熱筐体8を貫通して炉体2内と連通するように接続され、また、前記戻りダクト4にあっては、加熱室9と連通するように加熱筐体8に接続されている。
【0018】
また、戻りダクト4の下流側、即ち送風機5の上流側には、外気を吸引する外気吸引口11が設けられている。また、戻りダクト4の上流側には加熱筐体8から戻りダクト4へ排出された熱風を外部へ排出する排気口12が設けられている。
【0019】
前記のように構成された加熱炉にあって、炉体2の内面及び送りダクト3、戻りダクト4の内面に断熱材13が貼付されている。断熱材13は熱風が炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4と直接接触することを防ぐものであって、炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4の内面が極力露出しないように貼付されていることが好ましい。
【0020】
さらに、本例では断熱材13の熱風が触れる表面が、物理的或いは化学的強度のある表面保護材14で被覆されている。物理的或いは化学的強度のある表面保護材14にあっては、傷や汚れが付き難く、また耐熱、耐薬品性のある材質からなり、その形状は熱容量を小さくするために薄く形成されている。表面保護材14としては、ステンレス等の金属箔、プラスチックフィルム、テフロン(登録商標)フィルム等が使用される。
【0021】
なお、本例では、炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4の内面に断熱材13が貼付されているが、炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4の全ての内面に貼付されていることに限られるものではなく、何れかの内面に貼付されているだけでもよいが、特に、炉体2及び送りダクト3の熱容量は、炉体2に設けた吹き出し口10から吹き出される熱風の吹き出し温度に直接影響を与えるので、断熱材13は少なくとも送りダクト3及び/又は炉体2の内面に貼付されていることが好ましい。
【0022】
上記のように構成された加熱炉によれば、送風機5から送られてくる熱風が熱交換器7で熱源6から供給される熱と熱交換することにより加熱され、送りダクト3を通って炉体2内に入り、炉体2の下面に設けられた吹き出し口10から加熱室9に吹き出され、加熱室9に吹き出された熱風は、戻りダクト4を通り送風機5により再び送り出され熱交換器7で加熱され、送りダクト3を通って炉体2内に入る、といった循環動作を行う。
【0023】
このとき、炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4の内面に断熱材13が貼付されているので、熱風が断熱材13により炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4と直接接触することがなく炉体2の吹き出し口10から吹き出されることとなるから、炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4内を通る熱風に対する炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4の熱的影響が抑えられる、即ち、炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4の実効熱容量が低減されることになり、設定温度を変えたとき熱風と熱風が通過する炉体2やダクト3との温度差の影響が少なくなるので、熱風の吹き出し温度を被加熱物の設定温度に短時間で到達させることができる。
【0024】
また、本例では断熱材13の熱風が触れる表面が、物理的或いは化学的強度のある表面保護材14で被覆されているので、断熱材13の表面が表面保護材14で保護され劣化が防止されることになり、耐久性の向上が図れる。
【0025】
なお、本例では、炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4の内面に断熱材13が貼付されているが、炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4の何れかの内面に貼付されているだけであっても、断熱材13が貼付されている箇所の実効熱容量が低減されることになるので、その分熱風の熱が奪われることが防止され、特に、熱風の吹き出し温度に直接影響を与える送りダクト及び/又は炉体2の内面に貼付されていれば、炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4の内面に断熱材13が貼付されているものに比べ劣るものの、炉体2及び送りダクト3、戻りダクト4の内面に断熱材13が無い従来の加熱炉に比べ遙かに短時間で熱風の吹き出し温度を設定温度に到達させることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 加熱炉本体
2 炉体
3 送りダクト
4 戻りダクト
5 送風機
6 熱源
7 熱交換器
8 加熱筐体
9 加熱室
10 吹き出し口
11 外気吸引口
12 排気口
13 断熱材
14 表面保護材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトを通して炉体内に熱風を送り込み炉体から吹き出させた熱風により被加熱物を加熱処理する加熱炉において、前記ダクト及び/又は炉体の内面に断熱材が貼付されていることを特徴とする加熱炉。
【請求項2】
前記断熱材の露出面が、物理的或いは化学的強度のある表面保護材で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉。

【図1】
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【公開番号】特開2010−230291(P2010−230291A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81049(P2009−81049)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(390039608)株式会社川上鉄工所 (7)
【Fターム(参考)】