説明

加熱装置、及び画像形成装置

【課題】電源異常の検出精度を高め、適正にエラー処理を実行することを目的とする。
【解決手段】ヒータ60と、電源から出力され前記ヒータ60に印加される交流電圧のゼロクロスタイミングに同期した方形パルス状の信号であって、前記ゼロクロスタイミングに対応して第一レベルとなり、それ以外のタイミングでは第二レベルとなるゼロクロス信号を生成するゼロクロス検出回路67と、コントロールユニットZとを備え、前記コントロールユニットZは、前記電源の周波数の異常又は出力波形の異常を検出する処理と、前記電源の周波数の異常又は出力波形の異常が検出され、かつ異常検出時のゼロクロス信号のレベルが第二レベルである場合に、エラー処理を実行する実行する処理とを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置および当該加熱装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、加熱装置の電源異常を検出してエラー処理を行う技術が開示されている。具体的には、ゼロクロス信号の幅が所定時間以下である場合に、定着ヒータに矩形波が入力されていると判断し、定着ヒータに対する通電を遮断するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−113807公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、省電力化により、交流電源オフ後の電源回路の電圧が従来に比べて緩やかに降下する傾向にある。すると、交流電源オフ後も、加熱装置に対する電源の異常を検出するASIC等の制御装置の動作時間が長くなることから、交流電源オフのために交流電圧が入力されなくなった状態を、誤って電源異常と判断し、交流電源オフの場合にもエラー処理を行う恐れがあった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電源異常の検出精度を高め、適正にエラー処理を実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される加熱装置は、電源から交流電圧の印加を受けて発熱する発熱部と、前記電源から出力され前記発熱部に印加される交流電圧のゼロクロスタイミングに同期した方形パルス状の信号であって、前記ゼロクロスタイミングに対応して第一レベルとなり、それ以外のタイミングでは第二レベルとなるゼロクロス信号を生成するゼロクロス信号生成部と、制御装置とを備え、前記制御装置は、前記電源の周波数の異常又は出力波形の異常を検出する処理と、前記電源の周波数の異常又は出力波形の異常が検出され、かつ異常検出時のゼロクロス信号のレベルが第二レベルである場合に、エラー処理を実行する実行する処理とを行う。
【0006】
本明細書によって開示される加熱装置では、ゼロクロス信号のレベルが第二レベルである場合にエラー処理を実行するので、ゼロクロス信号のレベルが第一レベルとなる電源オフ時に、エラー処理が誤って実行されない。
【0007】
上記加熱装置では、以下とすることが好ましい。
・前記制御装置は、前記電源の周波数又は出力波形について異常を検出した回数が設定回数以上である場合に、異常検出時のゼロクロス信号のレベルが第二レベルかどうかを判定し、判定の結果、ゼロクロス信号のレベルが第二レベルであった場合に、前記エラー処理を実行する。
【0008】
・前記制御装置は、前記エラー処理として、前記発熱部への通電を禁止する処理を実行する。
・前記制御装置は、前記ゼロクロス信号の周期が正常範囲外である場合に、前記電源の周波数は異常とする。
・前記制御装置は、前記ゼロクロス信号のパルス幅が正常範囲外である場合に、前記電源の出力波形は異常とする。
・前記制御装置は、異常検出時のゼロクロス信号のレベルが第一レベルであり、かつゼロクロス信号の周期が所定値以上である場合に前記エラー処理を実行せず、それ以外の場合に前記エラー処理を実行する。尚、所定値とは周期の正常範囲より少なくとも長い時間である。
【0009】
上記加熱装置は、画像形成部により形成されたトナー像を前記被記録媒体上に定着させる画像形成装置に使用することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電源異常の検出精度を高め、適正にエラー処理を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る画像形成装置の要部側断面図
【図2】画像形成装置のブロック図
【図3】加熱装置のブロック図
【図4】ゼロクロス検出回路の回路図
【図5】電源の出力電圧の波形とゼロクロス信号の波形を示す図
【図6】電源回路のブロック図
【図7】交流電源オフ時のゼロクロス信号の波形を示す図
【図8】電源異常検出シーケンスのフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図8によって説明する。
(1−1)プリンタの構成
図1は、レーザプリンタ1(画像形成装置の一例)の要部側断面図である。レーザプリンタ1(以下「プリンタ」という)は、本体フレーム2、給紙部4、画像形成部5、定着部18などを備えている。
【0013】
給紙部4は、印刷用紙3(被記録媒体の一例)が積載される給紙トレイ6、押圧板7、および給紙ローラ8を備えている。押圧板7は、その後端部を中心に回転可能とされており、押圧板7上の印刷用紙3が給紙ローラ8に向かって押圧されている。給紙ローラ8が回転することにより印刷用紙3が1枚ずつ搬送路に送り出される。
【0014】
給紙された印刷用紙3は、レジストレーションローラ12によってレジストされた後に転写位置Xに送られる。転写位置Xは、印刷用紙3に感光体ドラム27上のトナー像を転写する位置であって、感光体ドラム27と転写ローラ30との接触位置とされる。
【0015】
画像形成部5は印刷用紙3にトナー像を形成するものであり、スキャナ部16、プロセスカートリッジ17などを備えている。スキャナ部16は、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー19などを備えている。レーザ発光部から発光されたレーザ光(図中の一点鎖線)は、ポリゴンミラー19によって偏向されつつ感光体ドラム27の表面上に照射される。
【0016】
プロセスカートリッジ17は、現像ローラ31、感光体ドラム27、及びスコロトロン型の帯電器29を備えている。帯電器29は、感光体ドラム27の表面を一様に正極性に帯電させる。正極性に帯電した感光体ドラム27の表面はスキャナ部16から発光されたレーザ光により露光され、静電潜像が形成される。次いで、現像ローラ31の表面上に担持されるトナーが感光体ドラム27上に形成された静電潜像に供給され現像される。
【0017】
定着部18は、加熱ローラ41、押圧ローラ42、加熱装置43(図3参照)などを備えている。定着部18は、印刷用紙3が加熱ローラ41と押圧ローラ42との間を通過する間にトナー像を印刷用紙3に熱定着させる。トナーが熱定着された印刷用紙3は排紙パス44を介して排紙トレイ46上に排紙される。
【0018】
(1−2)プリンタの電気的構成
図2は、プリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
プリンタ1は、CPU50、ROM51、RAM52、EEPROM53、給紙部4、画像形成部5、定着部18、表示部54、操作部55、電源回路80、情報端末装置との間でデータを通信する通信部56などを備えている。
【0019】
CPU50はROM51に記憶されている各種のプログラムを実行することにより、プリンタ1の各部を制御する。この実施形態では、CPU50が担う複数の制御機能のうち、加熱装置43の制御機能について後に詳しく説明をする。
【0020】
ROM51はCPU50により実行される各種のプログラムやCPU50が各種の処理で参照するデータなどを記憶している。RAM52はCPU50が各種の処理を実行するための主記憶装置として用いられる。EEPROM53は通電が停止されても情報を記憶可能な不揮発性メモリであり、各種の設定情報などを記憶する。
【0021】
表示部54は各種ランプや液晶パネルなどで構成されている。操作部55は入力パネルなどで構成されており、利用者は表示部54を参照しながら操作部55を操作して印刷の指示などを行うことができる。
【0022】
この他、プリンタ1には外部機器と接続するための図示しないネットワークインタフェースなども設けられており、利用者は外部機器からネットワークインタフェースを介して印刷を指示することもできる。尚、CPU50、RAM52、ROM51からなるコントロールユニットZが、本発明の制御装置に相当するものである。
【0023】
(1−3)加熱装置の構成
図3は、加熱装置43の構成を示すブロック図である。加熱装置43は、ヒータ(本発明の「発熱部」の一例)60、温度センサ61、交流スイッチであるトライアック65、ゼロクロス検出回路(本発明の「ゼロクロス信号生成部」の一例)67、リレー71、電源スイッチSW、CPU50などを備えている。
【0024】
ヒータ60はハロゲンランプであって、加熱ローラ41の中心軸方向に延びる姿勢で加熱ローラ41の内部に収容されており、通電に応じて発熱する。温度センサ61は、図示しない抵抗器やサーミスタなどで構成されている。サーミスタは温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体であり、ヒータ60の近傍に配置されている。サーミスタは一端が抵抗器を介して接地されており、他端が5Vの電源ラインに接続されている。温度センサ61はサーミスタによりヒータ温度に応じた温度検出信号SaをCPU50に出力する。
【0025】
トライアック65は、交流電源101とヒータ60とを接続する通電路L上に配置されている。トライアック65は、CPU50より出力されるヒータ制御信号Sbに応答してターンオンし、逆電圧がかかる又は電流がゼロになるとターンオフする。このトライアック65はヒータ60に対する通電を入り切りするものである。
【0026】
リレー71はトライアック65と同様、通電路Lに設けられている。リレー71は、ヒータ保護用であり、CPU50からの遮断信号Scに応答してオフ動作し、ヒータ60への通電を遮断する機能を担っている。
【0027】
ゼロクロス検出回路67は交流電圧のゼロクロスタイミングに同期した方形パルス状のゼロクロス信号Srを出力するものであり、図4に示すように、抵抗R1、交流電源101の出力電圧Vを全波整流する全波整流ブリッジ回路D1、全波整流ブリッジD1に接続された発光ダイオードD2、発光ダイオードD2と共にフォトカプラPC1を構成するフォトトランジスタTR1、抵抗R2、反転回路68から構成されている。
【0028】
フォトトランジスタTR1はエミッタをグランドに接続し、コレクタを抵抗R2を介して直流電源ラインVccに接続されている。そして、反転回路68はフォトカプラPC1のコレクタに接続されて、コレクタの電圧レベル(High/Low)を反転させて出力する。
【0029】
交流電源101の出力電圧Vが小さくなると、発光ダイオードD2の発光量が小さくなり、フォトトランジスタTR1に流れる電流Icが小さくなることから、反転回路68の入力電圧Vinが大きくなる。そして、交流電源101の出力電圧Vが閾値Vtを下回ると、反転回路68の出力がローレベルになる。
【0030】
一方、交流電源101の出力電圧Vが大きくなると、発光ダイオードD2の発光量が大きくなり、フォトトランジスタTR1に流れる電流Icが大きくなり、反転回路の入力電圧Vinが小さくなる。そして、交流電源101の出力電圧Vが閾値Vtを超えると、反転回路68の出力がハイレベルになる。
【0031】
従って、ゼロクロス検出回路67は、図5に示すように、交流電源101の出力電圧Vが、正負のVtにより規定されるゼロクロス検出範囲Uにある間、パルス幅Twのゼロクロス信号Srを出力する。より具体的には、信号レベルが「ローレベル」となる方形パルス状のゼロクロス信号Srを出力する。そして、ゼロクロス検出回路67の出力ラインLoは、CPU50の入力ポートに接続されていて、CPU50にてゼロクロス信号Srを検出できる構成となっている。
【0032】
尚、この実施形態では、反転回路68を、エミッタコモンのトランジスタTr2と、トランジスタTr2のコレクタに接続された抵抗R3とから構成しているが、反転回路68はIC等にて代用することが可能であり、また、廃止することも可能である。またこの実施形態では、ゼロクロス検出回路67はアクティブローの出力をするので、ゼロクロス信号Srの「ローレベル」が本発明の「第一レベル」に対応し、「ハイレベル」が本発明の「第二レベル」に対応することになる。
【0033】
CPU50は、温度センサ61から出力される温度検出信号Saや入力ポートPに取り込まれるゼロクロス信号Srに基づいてトライアック65を入り切りして、ヒータ60に対する通電量を制御することで、ヒータ温度を目標温度に制御する機能を果たす。
【0034】
<電源異常の検出>
上記のようにヒータ60は交流電源101から電力を供給され、通電を制御される。しかし、プリンタ1の電源は商用周波数の正弦波交流電源であるべきところ、DC電源や、電圧の立ち上がり速度の速い矩形波を出力する交流電源が、プリンタ1に対して接続される場合がある。
【0035】
電圧の立ち上がり速度の速い矩形波を出力する交流電源が接続されると、正弦波に比べてゼロクロス付近での電圧変化が大きいことから、トライアック65がオンしたままの状態となってヒータ60への通電量が制御不能になる恐れがある。尚、電圧の立ち上がり速度が速いとは、図5中の角度θが大きく90度に近い状態を指す。また、DC電源が接続された場合も、矩形波入力時と同様に、トライアック65がオンしたままの状態になるので通電量が制御不能になる恐れがある。
【0036】
そのため、本実施形態では電源異常、すなわちプリンタ1に対してDC電源や、電圧の立ち上がり速度の速い矩形波を出力する交流電源が接続されていないか、CPU50にて検出するようにしている。
【0037】
DC電源の接続時は、ゼロクロス信号Srが出力されなくなる。また、電圧の立ち上がり速度の速い矩形波を出力する交流電源が接続された場合には、ゼロクロス信号Srのパルス幅Twが正常範囲より狭くなる場合や、パルス幅が更に狭くなってゼロクロス信号Srが出力されなくなる場合がある。そのため、CPU50にてゼロクロス信号Srの周期(パルスの周期)や、パルス幅Twを検出して正常範囲内にあるかを判定することで、電源異常、すなわちDC入力時など電源周波数の異常や、電圧の立ち上がり速度の速い矩形波入力など電源の出力波形異常の有無を検出することが出来る。
【0038】
しかしながら、ゼロクロス信号Srの周期やパルス幅Twに基づいて電源異常の有無を検出する場合、交流電源オフ時に電源異常であると誤判定する恐れがあった。
【0039】
これは次の理由による。図3に示すように、プリンタ1の電源系統は、電源回路80からDC/DCコンバータを経由してCPU50に電力を供給する構成となっている。そして、DC/DCコンバータの出力電圧を監視するリセットIC73が設けられていて、DC/DCコンバータの出力電圧がCPU50の動作電圧を下回った時点で、リセットIC73はアクティブローのリセット信号Sdを出力し、CPU50をリセット状態、すなわち停止させる構成となっている。
【0040】
しかし、電源回路80は図6に示すように整流回路81、平滑回路82、スイッチングトランス83、スイッチング制御回路84、整流回路85、平滑回路86、フィードバック回路87などを備えており、交流電源オフ後も、平滑回路82、86を構成するコンデンサ(図略)が、所定時間は電荷をチャージした状態にある。
【0041】
そのため、電源スイッチSWをオフして交流電源101を落としても、コンデンサにチャージされた電荷が残っている間は、DC/DCコンバータの出力電圧がCPU50の動作電圧を上回る状態となり、リセット信号Sdが出力されない。
【0042】
そのため、交流電源オフからリセット信号Sdが出力されるまでの期間(図7中のA期間)、CPU50は動作状態を続け、ゼロクロス信号Srに基づく電源異常の有無を検出することになる。
【0043】
一方、交流電源オフにより、ゼロクロス検出回路67からゼロクロス信号Srが出力されなくなる(ゼロクロス信号Srの周期が所定値以上になる)ことから、CPU50は交流電源オフの状態を、電源異常であると誤判定してエラー処理を行う恐れがある。
【0044】
ここで、DC入力時におけるゼロクロス信号Srは、図5に示すように「ハイレベル」になるのに対して、交流電源オフ時のゼロクロス信号Srは、図7に示すように「ローレベル」になる。
【0045】
そのため、本実施形態では、電源異常が検出された場合に、異常が検出されたゼロクロス信号Srのレベルが、「ハイ」レベルか「ロー」レベルか、CPU50にて判定(後述するS80の処理)し、「ハイ」レベルの場合に、電源異常であると判断してエラー処理(後述するS100〜S140の処理)を実行する。このようにすることで、交流電源オフ時にエラー処理を誤って実行することを抑制できる。
【0046】
<電源異常の検出シーケンス>
以下、図8を参照して、コントロールユニットZのCPU50により実行される電源異常検出シーケンスについて説明を行う。尚、プリンタ1には、ヒータ60への通電を許容する印刷モード(リレー71をオン状態とするモード)と、ヒータ60への通電を遮断する省電力モード(リレー71をオフ状態とするモード)の2つのモードがあるものとする。また、初期状態において異常検出カウンタ74、累積エラーカウンタ75はいずれもカウント値がゼロにリセットされた状態にあるものとする。
【0047】
電源異常検出シーケンスは、電源スイッチSWの投入により実行開始され、まず、CPU50によりプリンタ1が省電力モードか判定する処理が行われる(S10)。プリンタ1のモードが印刷モードである場合、S10ではN0判定され、その後、処理はS20に移行する。一方、プリンタ1が省電力モードである場合は、S15に移行してリレー71をオンする処理を行い、その後、S20に移行する。
【0048】
S20では、CPU50によりゼロクロス信号Srの周期が正常範囲内か判定する処理が実行される。このS20の処理は主に電源の周波数の異常を検出するための処理である。尚、この実施形態では、ゼロクロス信号Srの周期の正常範囲を5.97mS(83.7Hz)〜14.2mS(35.3Hz)としている。また、検出時間(一例として22mS)内に、ゼロクロス信号Sr、すなわちパルスが検出できない場合には、タイムアウトエラーとなる。
【0049】
また、続くS30では、同じくCPU50により、ゼロクロス信号Srのパルス幅が正常範囲内か判定する処理が実行される。このS30の処理は、電圧の立ち上がり速度が速いなど、主に電源の出力波形の異常を検出する処理である。尚、この実施形態では、パルス幅の正常範囲を10.67μS〜10mSとしており、正常範囲外の場合には、異常と判定される。
【0050】
プリンタ1に商用周波数の正弦波交流電源101が接続されている場合には、ゼロクロス信号Srの周期は正常範囲内となり、またパルス幅も正常範囲内となる。そのため、S20、S30ではいずれもYES判定されることになり、その後、S40へ移行する。
【0051】
S40に移行すると、異常検出カウンタ74をリセットする処理がCPU50により実行される。異常検出カウンタ74はS20、S30でNO判定された回数すなわち電源異常の検出回数を、カウントするものである。
【0052】
その後、処理はS50に移行する。S50では定着器動作や印字動作を許可する処理が実行される。その後、処理はS10に再移行する。プリンタ1に商用周波数の正弦波交流電源101が接続されていれば、S20、S30ではいずれもYES判定されるので、電源異常検出シーケンスは、S10〜S50の処理を繰り返す状態となる。この間、印刷指示があれば、CPU50は、ヒータ60を通電操作して定着器29を動作させ、トナー像を印刷用紙3に熱定着させる処理を実行する。
【0053】
一方、プリンタ1にDC電源が接続された場合、ゼロクロス信号Srは、図5の下段に示すように、常にハイレベルで、パルスが出力されない状態となる。そのため、S20の判定処理ではタイムアウトエラーとなり、必ずNO判定される。
【0054】
S20でNO判定されると、S60に移行する。S60では、異常検出カウンタ74をインクリメント、すなわちカウントする処理がCPU50により実行される。その後、処理はS70に移行し、異常検出カウンタ74が設定回数(一例として42回)に達したか判定する処理がCPU50により実行される。異常検出カウンタ74が設定回数に達していない場合には、NO判定され、S10に移行する。尚、この実施形態では、異常検出カウンタ74、75をCPU50とは別に設けた例を示しているが、CPU50の内蔵レジスタを用いて、異常検出カウンタ74、75を構成してもよい。
【0055】
プリンタ1にDC電源が接続されている場合、上記したように、ゼロクロス信号Srは常にハイレベルとなり、パルスが出力されない。そのため、S20で常にタイムアウトエラーとなり、NO判定を繰り返すので、異常検出カウンタ74のカウント値はいずれ設定回数に達し、S70でNO判定されることになる。
【0056】
S70でYES判定された場合には、S80に移行する。S80では、異常検出時のゼロクロス信号Srのレベルを判定する処理と、ゼロクロス信号Srの周期を判定する処理がCPU50にて実行される。そして、S80では異常検出時のゼロクロス信号Srのレベルが全てローレベルで、かつ周期が所定値(周期の正常範囲より少なくとも長い時間)以上である場合にYES判定され、それ以外の場合には、NO判定される。
【0057】
尚、異常検出時とは、S20やS30の判定時(NO判定時)を指す。DC電源が接続されている場合、S20の判定でタイムアウトエラーによりNO判定されるので、タイムエラー時が異常検出時となる。また、ゼロクロス信号Srの周期を判定するには、例えば、ゼロクロス信号Srの周期を計時する周期カウンタ(図略)を設けておき、周期カウンタのカウント値を、予め設定した上限値と比較して、カウント値が上限値である場合に、所定値以上と判断すればよい。
【0058】
そして、プリンタ1にDC電源が接続された場合、ゼロクロス信号Srは、図5に示すように、パルスの出力がなく、常にハイレベルの信号になる。そのため、タイムアウトエラー時のゼロクロス信号Srのレベルは全てハイレベルで、周期は所定値以上になることから、S80ではNO判定される。S80でNO判定されると、S100〜S140のエラー処理Uが実行される。まず、S100ではトライアック65とリレー71をオフする処理がCPU50にて実行される。これにてヒータ60に対する通電が遮断される。
【0059】
続く、S110では、累積エラーカウンタ75をインクリメント、すなわちカウントする処理が実行される。尚、累積エラーのカウント値はEEPROM53に書き込まれるようになっていて、交流電源101をオフしても、カウント値がリセットされないようになっている。
【0060】
その後、S120では、累積エラーカウンタ75が設定回数(一例として100回)に達したか判定する処理がCPU50により実行される。累積エラーのカウント値が設定回数未満の場合には、S120にてN0判定され、S130に移行する。S130では、表示部54に電源異常を表示する処理がCPU50にて実行される。
【0061】
累積エラーカウンタ75が設定回数未満の場合のエラー処理は以上であり、この場合、電源101の再投入を条件に、プリンタ1はエラーの状態から復帰し、ヒータ60への通電が可能な状態となる。
【0062】
一方、累積エラーのカウント値が設定回数以上の場合には、S120にてYES判定され、S140に移行する。S140では、表示部54にサービスエラーを表示する処理がCPU50にて実行される。サービスエラーはEEPROM53に書き込まれ、電源101の再投入後もそのデータが残ることから、電源を再投入しても、プリンタ1はエラーの状態から復帰することはなく、ヒータ60への通電が禁止された状態となり、また、表示部54には「サービスエラー」が再表示される。このサービスエラーはサービスセンターでしか解除することができない。
【0063】
また、DC電源接続時以外にも、プリンタ1に対して電圧の立ち上がり速度の速い矩形波を出力する交流電源が接続された場合に、図5の中段に示すようにゼロクロス信号Srがハイレベルに張りついてパルスの出力がない場合がある。この場合、DC電源接続時と同様に、S20にてタイムアウトエラーによるNO判定を42回繰り返した後、S80に移行する。そして、S80でNO判定された後、S100に処理は移行して、DC電源接続時と同様に、S100〜S140のエラー処理Uが実行されることになる。
【0064】
次に、プリンタ1の電源スイッチSWが落とされた場合、すなわち交流電源オフ時について説明を行う。交流電源101がオフされると、図7に示すように、ゼロクロス信号Srはローレベルに張りつき、パルス出力の無い状態となる。そのため、S20の判定処理ではタイムアウトエラーとなり、NO判定される。その後、S60に移行する。
【0065】
S60では、DC電源の接続時や、電圧の立ち上がり速度の速い矩形波を出力する交流電源の接続時と同様に、異常検出カウンタ74をインクリメント、すなわちカウントする処理が実行される。その後、処理はS70に移行し、異常検出カウンタ74が設定回数(一例として42回)に達したか、判定する処理がCPU50により実行される。異常検出カウンタ74が設定回数に達していない場合には、NO判定され、処理はS10に移行する。
【0066】
そして、交流電源のオフ後、リセット信号Sdが出力されるまでの間、電源異常検出シーケンスは、S10、S20、S60、S70の処理を繰り返す状態になるので、異常検出カウンタ74のカウント値は時間の経過と共に加算されてゆき、やがて設定回数に達する。
【0067】
そして、異常検出カウンタ74のカウント値が設定回数に達すると、S70にてYES判定され、S80に移行する。S80では、異常検出時におけるゼロクロス信号Srのレベルと周期を判定する処理がCPU50にて実行される。
【0068】
交流電源オフの場合、図7に示すように、ゼロクロス信号Srは、パルスの出力がなく、常にローレベルとなる。従って、タイムアウトエラー時のゼロクロス信号Srのレベルは全てローレベルであり、かつ周期が所定値以上となるので、S80ではYES判定される。この場合、処理はS90に移行して、異常検出カウンタ74をリセットする処理がCPU50にて実行される。
【0069】
このように、交流電源オフの場合には、異常検出カウンタ74が設定回数に達しても、S80の判定処理で必ずYES判定されることから、S100〜S140のエラー処理Uは実行されない。そのため、交流電源オフ時にエラー処理を誤って実行することを抑制できる。
【0070】
また、本実施形態では、異常検出回数に設定回数(一例として42回)を設けてあり、S20でゼロクロス信号Srの周期やS30のゼロクロス信号Srのパルス幅Twに異常があっても、その回数が設定回数より少ない場合には電源異常としない。そのため、ノイズ等による誤検出を抑制できる。
【0071】
また、本実施形態ではS80の判定処理で、ゼロクロス信号Srのレベル判定に加えて、周期判定を行っており、異常検出時のゼロクロス信号Srのレベルが全てローレベルで、かつ周期が所定値以上である場合に限ってエラー処理を行わないようにしている。言い方を変えれば、異常検出時のゼロクロス信号Srのレベルが全てローレベルであっても、所定値以上でなければエラー処理を実行するようにしている。
【0072】
これにより以下の効果が得られる。例えば、プリンタ1に対して電圧の立ち上がり速度の速い矩形波を出力する交流電源が接続された場合には、ゼロクロス信号のパルス幅が非常に狭くなってパルス出力がない場合の他に、パルス出力自体はあるが、パルス幅が正常範囲外となって、S30でNO判定されるケースがある。
【0073】
この場合、異常検出時のゼロクロス信号Srは常にローレベルとなる。そのため、S80でゼロクロス信号Srのレベルだけを判定すると、電源オフ時と同様に、YES判定(S80:YES)となり、エラー処理Uが実行されなくなる。この点、本実施形態では、S80の判定条件に周期が所定値以上かを含めているので、上記ケースでは、周期が所定値以下となる結果、正しくNO判定(S80:NO)出来、S100〜S140のエラー処理Uを確実に実行できる。
【0074】
また、本実施形態では、異常検出回数が設定回数を超えた時に、ゼロクロス信号Srのレベルと周期を判定する処理(S80の処理)をまとめて行うので、異常が検出される度に、ゼロクロス信号Srのレベルと周期を判定する場合に比べて、判定処理を効率よく行うことが可能である。
【0075】
また、本実施形態では、S80でNO判定されると、エラー処理Uに移行して、ヒータ60への通電を禁止する(S100)。そのため、電源異常によるヒータ60への異常通電を防止することが可能となり、ヒータ60の劣化を抑制出来る。
【0076】
また、本実施形態では、電源周波数や電源の出力波形が異常かどうかを、ゼロクロス信号Srの周期やパルス幅Twが正常範囲であるかどうかによって判別している。そのため、電源周波数や出力波形の異常を検出する検出部を別途設ける必要がなく、装置を簡素化できる。
【0077】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0078】
(1)上記実施形態では、電源周波数の異常を、ゼロクロス信号Srの周期に基づいて検出し、矩形波出力などの出力波形異常を、ゼロクロス信号Srのパルス幅に基づいて検出した。電源周波数の異常や出力波形の異常の検出はゼロクロス信号Srに基づいて検出する方法以外にも、例えば、電源の電圧波形を直接サンプリングして周波数やゼロクロス点での電圧の変化率を検出するでも可能である。
【0079】
(2)上記実施形態では、電源周波数が異常である場合の例としてDC入力例に挙げたが、例えば、完全な直流以外にも、周期が非常に長く概ね直流とみなさせるようなAC入力も異常として検出するようにしてもよい。
【0080】
(3)上記実施形態では、ゼロクロス信号Srの一例として、アクティブ・ロータイプの信号を例示した。ゼロクロス信号Srは、交流電源101の出力電圧Vのゼロクロスタイミングに同期したパルス状の信号であればよく、アクティブ・ハイタイプの信号であってもよい。この場合、実施形態の例とは反対に、第一レベルが「ハイレベル」となり、第二レベルが「ローレベル」となる。
【0081】
(4)上記実施形態では、S80の判定処理で、ゼロクロス信号Srのレベルと周期の判定を行い、異常検出時のゼロクロス信号Srが全てLowレベルで、かつ周期が所定値以上の場合に、YESと判断して異常検出カウンタをリセットする処理を行い(この場合、エラー処理を実行しない)、それ以外の場合に、NO判定してエラー処理(S100〜S140)を行うようにした。周期の判定は、S30のNO判定を経てS80へ移行した時に、S80で誤ってYESの判定をしないように設けられているので、S30の判定処理を別フローとして分ければ、廃止することが可能であり、必ずしも必要でない。すなわち、S20の判定処理だけを設けている場合には、S80の判定処理でゼロクロス信号Srのレベル判定だけ行い、異常検出時のゼロクロス信号Srが全てLowレベルである場合に、YESと判断して異常検出カウンタをリセットする処理を行い、それ以外の場合にエラー処理(S100〜S140)を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
43…加熱装置
50…CPU
60…ヒータ(本発明の「発熱部」の一例)
65…トライアック
67…ゼロクロス検出回路(本発明の「ゼロクロス信号生成部」の一例)
Sr…ゼロクロス信号
Z…コントロールユニット(本発明の「制御装置」の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から交流電圧の印加を受けて発熱する発熱部と、
前記電源から出力され前記発熱部に印加される交流電圧のゼロクロスタイミングに同期した方形パルス状の信号であって、前記ゼロクロスタイミングに対応して第一レベルとなり、それ以外のタイミングでは第二レベルとなるゼロクロス信号を生成するゼロクロス信号生成部と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記電源の周波数の異常又は出力波形の異常を検出する処理と、
前記電源の周波数の異常又は出力波形の異常が検出され、かつ異常検出時のゼロクロス信号のレベルが第二レベルである場合に、エラー処理を実行する実行する処理とを行う加熱装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電源の周波数又は出力波形について異常を検出した回数が設定回数以上である場合に、異常検出時のゼロクロス信号のレベルが第二レベルかどうかを判定し、判定の結果、ゼロクロス信号のレベルが第二レベルであった場合に、前記エラー処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記エラー処理として、前記発熱部への通電を禁止する処理を実行することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ゼロクロス信号の周期が正常範囲外である場合に、前記電源の周波数を異常とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ゼロクロス信号のパルス幅が正常範囲外である場合に、前記電源の出力波形を異常とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記制御装置は、異常検出時のゼロクロス信号のレベルが第一レベルであり、かつゼロクロス信号の周期が所定値以上である場合に前記エラー処理を実行せず、それ以外の場合に前記エラー処理を実行する請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
被記録媒体上にトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により形成されたトナー像を前記被記録媒体上に定着させる請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の加熱装置とを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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