説明

加熱装置および加熱方法

【課題】使用する熱板数が少なくて、コンパクトかつ低コストな加熱装置を実現する。
【解決手段】温調された熱板1a〜1i間に被加熱物を挟み込んで加熱する加熱装置において、一端の熱板1aを固定ブロック4に固定して基準熱板とし、残りの熱板(可動熱板)1b〜1iはそれぞれ単独でLMガイド2上を移動可能に構成する。各熱板1a〜1i間に被加熱物を挿入し、熱板1aの反対側の端部に位置する熱板1iを駆動手段5によって熱板1aに向かって移動させることで、各熱板1a〜1iの間の被加熱物を挟み込み加熱する。LMガイド2に沿って移動する熱板開閉機構によって、任意の位置の熱板間を広げて被加熱物を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温調された熱板間に被加熱物を挟み込んで加熱する加熱装置および加熱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱装置は、図4に示すように、被加熱物110を対となる熱板101a、101bで挟み込んで加熱を行っていた。各対の熱板101a、101bは、LMガイド102によって開閉自在に支持され、エアシリンダ等の熱板開閉機構105によって、各対ごとに開閉するように構成される。
【0003】
この加熱方法は高精度に温調制御が可能である一方、被加熱物1つに対し温調機能付きの熱板が2枚必要であるため、被加熱物が複数の場合、設備が巨大化し、コスト高となっていた。
【0004】
また、例えば特許文献1に開示された多段加熱式熱処理装置も知られている。これは、設定された間隔に複数の熱板を配置し、熱板間に被加熱物を設置し加熱する方法であるが、熱板間隔の自由度が少なく、また熱板が放射加熱板であるため被加熱物を挟み込んで加熱するより熱効率が悪かった。
【0005】
プレス分野においては、特許文献2に開示されたように、多段プレス熱板が公知であるが、熱板複数個を同時に作動させる構成であり、熱板を開動するとすべての熱板が開状態となり任意の熱板間のみを開動することができなかった。
【特許文献1】特開2002−274873号公報
【特許文献2】特開平05−069406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、任意の熱板間のみを単独で開動することができるうえに、コンパクトな構成でしかも低コストである加熱装置および加熱方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加熱装置は、温調された複数の熱板の間に被加熱物を挟み込んで加熱する加熱装置において、第1の熱板を基準位置に支持する基準支持手段と、複数の第2の熱板を前記第1の熱板に向かって同一の開閉方向にそれぞれ独立して往復移動自在に支持する可動支持手段と、前記第1の熱板から最も離れた第2の熱板を前記開閉方向に移動させて、すべての熱板間の被加熱物を挟み込むための駆動手段と、を備え、各熱板間を互いに独立して開閉自在であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
温調された熱板の両面を効率良く利用することで熱板数を大幅に減らすことができ、少スペース・低コストを実現できる。
【0009】
また、熱板開閉用のエアシリンダ等の駆動手段の数も減らすことができる。
【0010】
更には、熱板数が減ることで、温調器やヒーターの数を削減することによる低コストを実現することができる。
【0011】
各熱板を独立して移動可能であるため、熱板間隔の自由度が大きく、幅広い被加熱物サイズに対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1および図2に示すように、温調された複数の熱板1(1a〜1i)の間隙を開閉することによって、各熱板間に被加熱物10を挟み込んで加熱する加熱装置において、一端に配設された熱板1aを基準となる基準熱板(第1の熱板)とする。この基準熱板に向かって残りの熱板(第2の熱板)1b〜1iを、被加熱物10を挟み込む方向(開閉方向)にそれぞれ順次移動させることで、各熱板間に被加熱物10を挟み込み加熱する。
【0014】
熱板1aを除く残りの熱板1b〜1iは、LMガイド(可動支持手段)2によりそれぞれ独立して移動自在に支持された可動熱板である(図3参照)。また、各熱板1a〜1iは、ヒーター3によりそれぞれ加熱・温調される。ここで熱板1b〜1iの支持はLMガイド2に限定されることはなく、シャフトとリニアブシュの組合せ等を利用することもできる。
【0015】
この熱板1を少なくとも3枚以上組合せ(図中では9枚)、一端の熱板1aを固定ブロック(基準支持手段)4により基準位置に固定して基準熱板とし、他端の熱板1iを駆動手段5と接続する。
【0016】
基準熱板は必ずしも固定する必要はなく、使用する状況によって移動させてもよい。
【0017】
被加熱物10を加熱する際は、加熱装置背面に配置された熱板開閉機構(第2の駆動手段)11により任意の位置の熱板間隙を広げて、被加熱物10を投入する。熱板開閉機構11の開閉ストローク幅により投入できる被加熱物10の大きさが決定するため、開閉ストローク幅は大きい方が仕様範囲が広くなる。しかし、開閉ストローク幅を大きくしすぎると設備が巨大化するため、被加熱物10の大きさにより適選する必要がある。
【0018】
その後、駆動手段5を駆動して熱板1b〜1iを順次基準熱板側へ移動することで、各熱板1a〜1iの間にそれぞれ被加熱物10を挟み込んで加熱する。
【実施例】
【0019】
図1ないし図3に示した構成において、平板形状の熱板を採用し、合計6枚の熱板を配置した加熱装置を製作した。熱板のうちの1枚を固定ブロックにより固定して基準熱板とし、残りの5枚の熱板をLMガイドに取付けてスライド移動可能な可動熱板とした。各熱板のサイズはW180mm×H370mm×T20mmであり、材質はアルミニウムA2017を使用した。各熱板にカートリッジヒーターを挿入し熱容量を900Wとした。可動熱板を開閉する駆動手段にはエアシリンダを使用し、基準熱板と逆端に配置した。熱板間隙を広げるための熱板開閉機構は、加熱装置裏側より一軸直動機構にエアチャックを設置したオートハンドにより開閉を行った。
【0020】
上記構成の加熱装置によって被加熱物の加熱処理を行った。被加熱物はW150mm×H400mm×T34mmの直方体(一部凹凸形状あり)であり、材質はアルミニウムA2017(一部異材質)であった。
【0021】
本実施例を、図4に示した従来の加熱装置を用いて加熱処理を行った場合と比較すると、熱板数を40%減、温調器を40%減、総スペースを67%減とすることができた。
【0022】
また、熱板複数個を同時に開閉する構成では、熱板の無駄が多く、熱板を開動するとすべての熱板が開状態となるため、必要でない部位の間隔も広げるためのスペースの無駄があったが、本実施例では総スペースを大幅に縮小することが可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一実施の形態による加熱装置を示す斜視図である。
【図2】図1の装置の裏面側の斜視図である。
【図3】図1の装置の熱板の構成を示す斜視図である。
【図4】従来例による加熱装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 熱板
1a 熱板(基準熱板)
1b〜1i 熱板(可動熱板)
2 LMガイド
3 ヒーター
4 固定ブロック
5 駆動手段
10 被加熱物
11 熱板開閉機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温調された複数の熱板の間に被加熱物を挟み込んで加熱する加熱装置において、第1の熱板を基準位置に支持する基準支持手段と、複数の第2の熱板を前記第1の熱板に向かって同一の開閉方向にそれぞれ独立して往復移動自在に支持する可動支持手段と、前記第1の熱板から最も離れた第2の熱板を前記開閉方向に移動させて、すべての熱板間の被加熱物を挟み込むための駆動手段と、を備え、各熱板間を互いに独立して開閉自在であることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
任意の熱板間を広げるための第2の駆動手段を有することを特徴とする請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の加熱装置を用いて被加熱物を加熱する加熱方法において、
任意の熱板間を広げて被加熱物を挿入する工程と、
すべての第2の熱板を第1の熱板側へ移動させることで、各熱板間の被加熱物を挟み込み加熱する工程と、を有することを特徴とする加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−27681(P2008−27681A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197592(P2006−197592)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】