説明

加熱調理器

【課題】高周波発生装置から高周波電波で蒸気を発生させる方式において、使い勝手がよく、蒸気の発生量を自由に調整できる加熱調理器を提供する。
【解決手段】被加熱物2を収納する加熱室1と、高周波電波を発生する高周波発生装置5と、高周波発生装置5からの高周波電波を加熱室1に供給する給電口7と、水を貯える蒸気容器8と、高周波発生装置5を制御して被加熱物2を加熱する制御手段9とを備え、給電口7を加熱室1の側面に位置させると共に、蒸発容器8を給電口7の前面に係止部15、16により着脱可能に設け、高周波電波で蒸気容器8内の水を加熱して蒸気として供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などの被加熱物を加熱する加熱調理器に関し、特に蒸気を発生させて調理を行うものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器としては、例えば、高周波発生装置の高周波電波を利用して蒸気を発生するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、特許文献1に記載された従来の加熱調理器を示すものである。図9に示すように、加熱室101と、高周波発生装置102と、高周波発生装置102からの高周波電波を加熱室101に供給する給電口103と、高周波発生装置102で発生した高周波電波を給電口103に導く導波管104と、被加熱物107を載置する載置台105と、載置台105を回転させる回転機構106と、給電口103と被加熱物107との間に載置する低誘電率材料からなる蒸気容器108とから構成されている。
【0004】
この構成において、高周波発生装置102から給電口103を介して加熱室101に供給される高周波電波により、蒸気容器108に蓄えられた水が加熱され蒸気となって蒸気供給口109から加熱室101内に供給され、被加熱物107のスチーム調理を行うことができるものである。
【特許文献1】特開平8−135978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、給電口103の正面に蒸気容器108を載置する方法が開示されているが、位置決めは行われておらず、給電口103と蒸気容器108の位置関係は、使用者の置き方で変わってしまうので安定した、再現性のある蒸気発生は望めないとういう課題があった。
【0006】
また、蒸気容器103は加熱室101の端に置く構成であるので従来と同等の加熱室の広さを確保しようとすると加熱室を大きくする必要があり、新たな設計が必要である、或いは、従来と同じ加熱室のものにスチーム機能を付加しようとすると被加熱物を収納するための有効容量が小さくなり、使い勝手が悪くなるという課題あった。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高周波発生装置からの高周波電波で蒸気を発生させる方式の加熱調理器において、使い勝手がよく、蒸気の発生量を自由に調整でき、さらに従来の高周波加熱のみの所謂単機能の加熱調理器に容易にスチーム機能を付加することができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、被加熱物を収納する加熱室と、高周波電波を発生する高周波発生装置と、前記高周波発生装置からの高周波電波を前記加熱室に供給する給電口と、水を貯える蒸気容器と、前記高周波発生装置を制御して被加熱物を加熱する制御手段とを備え、前記給電口を前記加熱室の側面に位置させると共に、前記蒸発容器を前記給電口の前面に係止部により着脱可能に設け、前記給電口からの高周波電波で前記蒸気容器内の水を加熱して蒸気とし前記加熱室に供給することを特徴としたものである。
【0009】
これによって、係止部により、蒸気容器の位置を規制することで、高周波電波の必要量を確実に蒸気容器内の水に吸収させることができ、再現性のある蒸気量の発生を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加熱調理器は、加熱室内に水容器を載置し、高周波発生装置から高周波電波で蒸気を発生させる方式において、使い勝手がよく、蒸気の発生量を自由に調整することが可能で、しかも、従来の単機能高周波加熱装置に容易にスチーム機能を付加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、被加熱物を収納する加熱室と、高周波電波を発生する高周波発生装置と、前記高周波発生装置からの高周波電波を前記加熱室に供給する給電口と、水を貯える蒸気容器と、前記高周波発生装置を制御して被加熱物を加熱する制御手段とを備え、前記給電口を前記加熱室の側面に位置させると共に、前記蒸発容器を前記給電口の前面に係止部により着脱可能に設け、前記給電口からの高周波電波で前記蒸気容器内の水を加熱して蒸気とし前記加熱室に供給することにより、係止部で、蒸気容器の位置を規制することがかのうとなり、高周波電波の必要量を確実に蒸気容器内の水に吸収させることができ、再現性のある蒸気量の発生を得ることができる。
【0012】
第2の発明は、特に、特に、第1の発明の蒸気容器を、水を貯める貯水部と、前記貯水部の横に配置した蒸気を発生させるための平板状の蒸気発生部と、前記貯水部の水を前記蒸気発生部に供給するための通水路と、前記蒸発部の上部に設けた蒸気口とを備え、前記蒸気発生部が給電口の前面に位置するようにすることにより、貯水部を加熱室の奥に位置させることで、被加熱物の収納に対して蒸気容器が邪魔になることがない。また、蒸気発生部を薄くしたので、加熱開始から蒸気発生までの時間を短縮することができる。
【0013】
第3の発明は、特に、第1の発明の蒸気容器を、上部に配置された貯水部と、前記貯水部の最上部より低い位置に配置された平板状の蒸気発生部と、前記貯水部の水を前記蒸気発生部に供給するための通水路と、前記蒸気発生部の上部に設けた蒸気口とを備え、前記蒸気発生部が給電口の前面に位置するようにしたことにより、第2の発明よりさらに蒸気容器が邪魔になることがないので使い勝手が向上する。
【0014】
第4の発明は、特に、第2または第3の発明の係止部を複数設け、蒸気発生部と給電口の位置関係を調節可能としたことを特徴とするもので、被加熱物と蒸気発生部への高周波電波の供給割合を調整することが可能となり、調理内容に応じて高周波電波による被加熱物の加熱具合と蒸気発生量を調整できる。
【0015】
第5の発明は、特に、第2〜第4のいずれか1つの発明の係止部を左右にスライド可能に設け、蒸気発生部と給電口の位置関係を左右に調節可能としたことを特徴とするもので、第4の発明より、さらに、調整がしやすいものとなり使い勝手が向上する。
【0016】
第6の発明は、特に、第2〜第5のいずれか1つの発明の蒸発部に水を吸収する吸水体を設けたことを特徴とするもので、貯水部の水位が低くなっても蒸気発生部の水位が変わらないので、安定した蒸気発生が可能となる。
【0017】
第7の発明は、特に、第2〜第6のいずれか1つの発明の蒸気発生部の少なくとも一部を電波吸収体で構成したことを特徴とするもので、より単時間で蒸気の発生を行うことができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の加熱装置の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1において、加熱室1内に被加熱物2が載置台3上に載置されている。載置台3は回転機構4により加熱室1内で回転し、被加熱物2を回転させる構成である。高周波発生装置5は導波管6を介して加熱室1に結合し、給電口7から給電される構成となっており、給電口7の前面には後述する係止手段により蒸発容器8が係止されている。また、制御手段9は高周波発生装置5及び、回転機構4を制御する。
【0021】
図2は、蒸気容器の斜視図である。図2において、蒸気容器8は、貯水部10と、貯水部10の横に配置した平板状の蒸気発生部11と、取り外し可能な蓋12からなり、蓋12には蒸気発生部11から発生した蒸気を加熱室1に供給するための蒸気口13が備わっている。また、貯水部10の最下部で蒸気発生部11に水を供給するための通水路14が設けてある。なお、本実施の形態においては、蒸気容器8は、低誘電率の材料で構成されており、蒸気発生部11は給電口7を覆う大きさとしている。
【0022】
図3は、蒸気容器8の係止部を示す斜視図である。図3(a)において、蒸気容器8の裏面には逆L字状の係止部A15が上部に2個備えられている。また、図3(b)において、加熱室1内には、給電口7の上部に係止部Aに勘合するための開口を有する係止部B16が2個備えられており、この係止部A15と係止部B16を勘合させることで蒸気容器8は給電口7の前面の所定の位置に係止される。
【0023】
次に動作、作用について説明すると、まず、調理に先立ち、使用者は被加熱物2を載置台3の中央に置き、水を入れた蒸気容器8を係止部A15と係止部B16が勘合するように設置する。これにより、蒸気容器8の蒸気発生部11が給電口7の正面に位置することになる。その後、スチーム調理の開始操作を行う。この開始操作に伴い調理が開始され、制御手段9により、回転機構4を駆動して載置台3を回転させ、高周波発生装置5を駆動して高周波電波を給電口7から加熱室1に供給する。ここで、蒸気容器8は低誘電率の材料で構成されているので、高周波電波は給電口7の正面に設置された蒸気発生部11の水に主に吸収されることになり、蒸気発生部11を板状に薄く構成したことと相まって単時間で加熱され蒸気を発生することになる。
【0024】
なお、本実施の形態においては、貯水部10は上から下まで同形状としており多量の水を貯水できるようにしているが、この場合、貯水部10が通常使用しない加熱室のコーナー部に位置するようにすれば邪魔になることはない。
【0025】
また、貯水量が少なくて済む場合は、図4に示すように、貯水部10aを上から下へ徐々に薄くしてもよく、このようにすれば、貯水部10aが邪魔になることはほとんど無い。
【0026】
さらに、図5に示すように貯水部10bを上部のみとし、この貯水部10bの最下部に蒸気発生部11に水を通水する通水路14を設けてもよく、適宜変形が可能であることは言うまでもない。
【0027】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2の蒸気容器を示す斜視図である。図6において、蒸気発生部11には、水を吸収する吸水体17が設けてある点が実施の形態1と異なる点である。
【0028】
以上の構成において、吸水体17は貯水部10から供給される水を吸水することで貯水部10の水位にかかわらず蒸気発生部11の水位は吸水体のほぼ最高点に維持されることになる。従って、実施の形態1では、蒸気の発生に伴って貯水部の水位が低下すると同時に蒸気発生部11の水位も低くなるが、本実施の形態においては蒸気発生部11の水位は常に一定に保たれるので安定した蒸気発生を得ることができる。
【0029】
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3の蒸気容器を示す斜視図であり、図に示すように、蒸気発生部11の裏面の給電口7に対向する面に電波吸収体18を設けている。この構成によると給電口7から供給される高周波電波を直接蒸気発生部11の水に供給せずに電波吸収体18で受けてこの電波吸収体18が発熱して間接的に水を加熱することになる。従って、効率よく加熱することができる。
【0030】
また、水が直接高周波電波を吸収する必要がないので、蒸気発生部11を更に薄くすることができ、蒸気発生までの時間を更に短縮することが可能となる。但し、電波吸収体18で給電口7を完全に覆うと被加熱物を高周波電波で加熱することができないので、必要に応じて給電口を塞ぐ面積を調整する必要がある。
【0031】
(実施の形態4)
図8は、実施の形態3における加熱室側の係止部の形状を示したものである。
【0032】
図8(a)に示すように、係止部は実施の形態1における係止部B16aを複数設けたもので、蒸気容器8を加熱室1内にセットする際にこの複数の係止部を適宜選択することにより給電部7から被加熱物2に直接給電される高周波電波の量と、蒸気容器8の蒸気発生部11に供給される高周波電波の量の比率を変えることが可能となり、蒸気の供給量と被加熱物の加熱量を調整することが可能となる。
【0033】
なお、図8(b)に示すように加熱室側の係止部B16bをL字状に構成すれば、蒸気容器8を給電口7に対して左右の任意の位置に固定することが可能となるので、さらに、細かな調整を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、高周波発生装置のみで蒸気の発生が可能となるので、高周波発生装置のみの単機能であってもスチーム機能を搭載した加熱調理器に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における加熱調理器の蒸気容器の斜視図
【図3】(a)本発明の実施の形態1における加熱調理器の蒸気容器の係止部の斜視図、(b)本発明の実施の形態1における加熱調理器の加熱室内の係止部の斜視図
【図4】本発明の実施の形態1における加熱調理器の他の蒸気容器の斜視図
【図5】本発明の実施の形態1における加熱調理器の他の蒸気容器の斜視図
【図6】本発明の実施の形態2における加熱調理器の蒸気容器の斜視図
【図7】本発明の実施の形態3における加熱調理器の蒸気容器の斜視図
【図8】本発明の実施の形態4における加熱調理器の加熱室内の係止部の斜視図
【図9】従来の加熱調理器の断面図
【符号の説明】
【0036】
1 加熱室
2 被加熱物
4 回転機構
5 高周波発生装置
7 給電口
8 蒸気容器
9 制御手段
10、10a、10b 貯水部
11、11a、11b、11c 蒸気発生部
13 蒸気口
14 通水路
15 係止部A(係止部)
16、16a、16b 係止部B(係止部)
17 吸水体
18 電波吸収体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収納する加熱室と、高周波電波を発生する高周波発生装置と、前記高周波発生装置からの高周波電波を前記加熱室に供給する給電口と、水を貯える蒸気容器と、前記高周波発生装置を制御して被加熱物を加熱する制御手段とを備え、前記給電口を前記加熱室の側面に位置させると共に、前記蒸発容器を前記給電口の前面に係止部により着脱可能に設け、前記給電口からの高周波電波で前記蒸気容器内の水を加熱して蒸気とし前記加熱室に供給することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
蒸気容器は、水を貯める貯水部と、前記貯水部の横に配置した蒸気を発生させるための平板状の蒸気発生部と、前記貯水部の水を前記蒸気発生部に供給するための通水路と、前記蒸発部の上部に設けた蒸気口とを備え、前記蒸気発生部が給電口の前面に位置するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
蒸気容器は、上部に配置された貯水部と、前記貯水部の最上部より低い位置に配置された平板状の蒸気発生部と、前記貯水部の水を前記蒸気発生部に供給するための通水路と、前記蒸気発生部の上部に設けた蒸気口とを備え、前記蒸気発生部が給電口の前面に位置するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
係止部を複数設け、蒸気発生部と給電口の位置関係を調節可能としたことを特徴とする請求項2または3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
係止部を左右にスライド可能に設け、蒸気発生部と給電口の位置関係を左右に調節可能としたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
蒸発部に水を吸収する吸水体を設けたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
蒸気発生部の少なくとも一部を電波吸収体で構成したことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−118786(P2006−118786A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306660(P2004−306660)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】