説明

加熱調理器

【課題】閉じた扉を固定するラッチロック等の機構を用いることなく、扉を閉じた状態で本体ケーシングの前面パネルと扉との間の隙間を均一にして、確実なシール状態を保つことができる加熱調理器を提供する。
【解決手段】 本体ケーシングと、本体ケーシングの前面パネルにヒンジを介して開閉自在に取り付けられた扉と、扉と前面パネルとの間に配置された断面形状が略同一の環状のパッキン40とを備える。上記扉(扉フレーム41と扉カバー42を含む)に設けられた環状のパッキン40のヒンジ側がヒンジと反対の側よりも寸法Lだけ前面側にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱調理器としては、本体ケーシングと、その本体ケーシングに回動自在に取り付けられた扉を備え、本体ケーシングと扉との間をシールする環状のパッキンを扉の裏面側に取り付けたものがある (例えば、特開2000−46192号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
ところで、上記加熱調理器では、扉を閉めるときにパッキンのヒンジ側から先に本体ケーシングの前面パネルに当たり、パッキンのヒンジと反対の側に比べて扉のヒンジ側にパッキンの弾性変形による負荷が先にかかる。このため、扉を閉じた状態では、扉に対してパッキンの弾性変形による負荷が不均一になって、本体ケーシングの前面パネルと扉との間の隙間のうち、ヒンジと反対の側が広くなり、本体ケーシングの前面パネルと扉との間の隙間を均一になって、不安定なシール状態になるという問題がある。このため、庫内圧力が上昇したときに扉が勝手に開く恐れがあり、ラッチロック等の機構を用いて、閉じた扉を確実に固定する必要がある。
【特許文献1】特開2000−46192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、この発明の目的は、閉じた扉を固定するラッチロック等の機構を用いることなく、扉を閉じた状態で本体ケーシングの前面パネルと扉との間の隙間を均一にして、確実なシール状態を保つことができる加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明の加熱調理器は、
本体ケーシングと、
上記本体ケーシングの前面パネルにヒンジを介して開閉自在に取り付けられた扉と、
上記扉と上記前面パネルとの間に配置されるように、上記扉または上記前面パネルに設けられた断面略同一形状の環状のパッキンと
を備え、
上記環状のパッキンが上記扉に設けられているときは、上記環状のパッキンのヒンジ側が上記ヒンジと反対の側よりも前面側にあり、または、
上記環状のパッキンが上記前面パネルに設けられているときは、上記環状のパッキンのヒンジ側が上記ヒンジと反対の側よりも後面側にあることを特徴とする。
【0006】
上記構成の加熱調理器によれば、扉に断面略同一形状の環状のパッキンを設けて、環状のパッキンのヒンジ側をヒンジと反対の側よりも前面側にすることによって、扉を閉めるときに環状のパッキンのヒンジ側が先に本体ケーシングの前面パネルに近づいても、扉を閉じる直前で環状のパッキン全体が本体ケーシングの前面パネルに略同時に当接すると共に、扉を閉じた状態では環状のパッキン全体が略同じように弾性変形する。または、本体ケーシングの前面パネルに断面略同一形状の環状のパッキンを設けて、環状のパッキンのヒンジ側をヒンジと反対の側よりも後面側にすることによって、扉を閉めるときに環状のパッキンのヒンジ側が先に本体ケーシングの前面パネルに近づいても、扉を閉じる直前で環状のパッキン全体が本体ケーシングの前面パネルに略同時に当接すると共に、扉を閉じた状態では環状のパッキン全体が略同じように弾性変形する。これにより、パッキンの弾性変形による負荷が扉全体に均一にかかる。したがって、閉じた扉を固定するラッチロック等の機構を用いることなく、扉を閉じた状態で本体ケーシングの前面パネルと扉との間の隙間を均一にして、確実なシール状態を保つことができる。
【0007】
また、この発明の加熱調理器は、
本体ケーシングと、
上記本体ケーシングの前面パネルにヒンジを介して開閉自在に取り付けられた扉と、
上記扉と上記前面パネルとの間に配置されるように、上記扉または上記前面パネルに設けられた環状のパッキンと
を備え、
上記環状のパッキンの形状が、ヒンジ側の接触による潰ししろが、上記ヒンジと反対の側の接触による潰ししろよりも短いことを特徴とする。
【0008】
上記構成の加熱調理器によれば、扉を閉めるときに環状のパッキンのヒンジ側が先に本体ケーシングの前面パネルに近づくが、扉(または前面パネル)に設けられた環状のパッキンのヒンジ側の接触による潰ししろを、上記ヒンジと反対の側の接触による潰ししろよりも短くすることによって、扉を閉じる直前で環状のパッキン全体が本体ケーシングの前面パネルに略同時に当接すると共に、扉を閉じた状態では環状のパッキン全体が略同じように弾性変形する。これにより、パッキンの弾性変形による負荷が扉全体に均一にかかる。したがって、ラッチロック等の機構を用いて閉じた扉を固定することなく、扉を閉じた状態で本体ケーシングの前面パネルと扉との間の隙間を均一にして、確実なシール状態を保つことができる。
【発明の効果】
【0009】
以上より明らかなように、この発明の加熱調理器によれば、閉じた扉を固定するラッチロック等の機構を用いることなく、扉を閉じた状態で本体ケーシングの前面パネルと扉との間の隙間を均一にして、確実なシール状態を保つことができる加熱調理器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の加熱調理器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0011】
図1はこの発明の実施の一形態の加熱調理器1の外観斜視図であり、直方体形状の本体ケーシング10の正面に、下端側の辺を略中心に回動する扉12を設けている。扉12の右側に操作パネル11を設け、扉12の上部にハンドル13を設けると共に、扉12の略中央に耐熱ガラス製の窓14を設けている。
【0012】
また、図2は上記加熱調理器1の扉12を開いた状態の外観斜視図を示しており、本体ケーシング10内に直方体形状の加熱室20が設けられている。加熱室20は、扉12に面する正面側に開口部20aを有し、加熱室20の側面,底面および天面をステンレス鋼板で形成している。また、扉12は、加熱室20に面する側をステンレス鋼板で形成している。この扉12の裏面側に、窓14の外周を囲むように環状のパッキン40を取り付け、扉12を閉じた状態でパッキン40により本体ケーシング10と扉12との間をシールする。加熱室20の周囲および扉12の内側に断熱材(図示せず)を配置して、加熱室20内と外部とを断熱している。
【0013】
また、加熱室20の底面に、ステンレス製の受皿21が置かれ、受皿21上に被加熱物を載置するためのステンレス鋼線製のラック22が置かれている。なお、扉12を開いた状態で、扉12の上面側は略水平となって、被加熱物を取り出すときに一旦扉12の上面に置くことができる。
【0014】
さらに、本体ケーシング10の加熱室20の左側に、水タンク30を収納するための水タンク用収納部100を設けている。水タンク30は、前面側から後面側に向かって水タンク用収納部100内に挿入される。
【0015】
図3(A)は上記加熱調理器1の扉12を含む要部の正面図を示し、図3(B)は上記加熱調理器1の扉12を含む要部の平面図を示し、図3(C)は上記加熱調理器1の扉12を含む要部の側面図を示している。図3(A)〜(C)において、15は前面パネル、17はアーム、18はガイドローラ、19はガイドアームである。
【0016】
また、図4は上記加熱調理器1の扉12を開閉する途中の状態を示す側面図を示している。図4に示すように、本体ケーシング10(図1,図2に示す)の前面パネル15は、加熱室20の開口部20aを有する略四角形の枠形状をしている。前面パネル15の下側かつ両側に所定の間隔をあけてガイドアーム19の前端を固定している。このガイドアーム19に回転自在にガイドローラ18を取り付けている。また、扉12は、ヒンジ16を介して前面パネル15に開閉自在に支持される。扉12が矢印Rの方向に開閉するとき、アーム17が扉12の開閉に伴ってガイドローラ18に案内されながら前後に出没する。そして、扉12が略水平になるまで開くと、アーム17とガイドアーム19によるストッパー機構(図示せず)により止まって、扉12が略水平状態に保持される。
【0017】
次に、図5は図4のIV−IV線から見た扉12の要部の断面図を示している。なお、図5では、扉12の扉フレーム41と、扉カバー42と、環状のパッキン40のみを示している。なお、点線で示す15は前面パネルである。
【0018】
図5に示すように、扉フレーム41の外周側かつ本体ケーシング側(図5の右側)に扉カバー42を外嵌している。また、扉フレーム41と扉カバー42との間にパッキン40の一部を挟み込むようにして取り付けている。
【0019】
上記環状のパッキン40は、全周にわたって略同一の断面形状をしている。この環状のパッキン40は、円弧状に湾曲する湾曲部40aと、湾曲部40aの外周側から屈曲して延びる屈曲部40bと、屈曲部40bの内周側から前方(図5の左側)に向かって延びる基部40cと、その基部40cの外周側に設けられた溝部50とを有する断面形状をしている。環状のパッキン40の基部40cを扉フレーム41に外嵌し、溝部50に扉カバー42を嵌め込むことにより、パッキン40の基部40cを扉フレーム41と扉カバー42との間に挟みこんで固定している。
【0020】
そして、図5の2つの拡大図(丸で囲まれた図)に示すように、環状のパッキン40のヒンジ16側(図5の下側)を、ヒンジ16と反対の側(図5の上側)よりも寸法L(例えば0.5mm)だけ前面側(図5の左側)にしている。ここで、環状のパッキン40の左側と右側は、上側から下側に向かって前面側に傾いている。
【0021】
上記構成の加熱調理器によれば、扉12に断面略同一形状の環状のパッキン40を設けて、環状のパッキン40のヒンジ16側がヒンジ16と反対の側よりも前面側にあるので、扉12を閉めるときに環状のパッキン40のヒンジ16側が先に本体ケーシング10の前面パネル15に近づいても、扉12を閉じる直前で環状のパッキン40全体が本体ケーシング10の前面パネル15に略同時に当接すると共に、扉12を閉じた状態では環状のパッキン40全体が略同じように弾性変形する。これにより、パッキン40の弾性変形による負荷が扉全体に均一にかかる。
【0022】
したがって、閉じた扉12を固定するラッチロック等の機構を用いることなく、扉12を閉じた状態で本体ケーシング10の前面パネル15と扉12との間の隙間を均一にして、確実なシール状態を保つことができる。
【0023】
上記実施の形態では、環状のパッキン40の断面を略同一形状とし、扉12に設けられた環状のパッキン40のヒンジ16側がヒンジ16と反対の側よりも前面側にある加熱調理器について説明したが、前面パネルに断面略同一形状の環状のパッキンを設けて、そのパッキンのヒンジ側をヒンジと反対の側よりも後面側にしてもよい。
【0024】
また、断面が同一形状でない環状のパッキンを扉(または本体ケーシングの前面パネル)に設けて、環状のパッキンのヒンジ側の接触による潰ししろを、ヒンジと反対の側接触による潰ししろよりも短くしてもよい。
【0025】
例えば、図6は図4のIV−IV線から見た他の扉の要部の断面図を示しており、環状のパッキン60と扉カバー62を除いて扉フレーム41は図5に示す扉の要部と同一の構成である。
【0026】
上記環状のパッキン60は、全周にわたって略同一形状でない断面をしている。この環状のパッキン60は、円弧状に湾曲する湾曲部60aと、湾曲部60aの外周側から屈曲して延びる屈曲部60bと、屈曲部60bの内周側から前方(図6の左側)に向かって延びる基部60cと、その基部60cの外周側に設けられた溝部70とを有する断面形状をしている。環状のパッキン60の基部60cを扉フレーム41に外嵌し、溝部70に扉カバー62を嵌め込むことにより、パッキン60の基部60cを扉フレーム41と扉カバー62との間に挟みこんで固定している。そして、環状のパッキン62のヒンジ側(図6の下側)の前面パネル15との接触による潰ししろM2を、ヒンジと反対の側(図6の上側)の前面パネル15との接触による潰ししろM1よりも△Mだけ短くしている。これにより、図6と同様の効果を奏する。
【0027】
さらに、上記実施の形態では、本体ケーシング10の前面パネル15の下側にヒンジ16を介して前後に開閉する扉12を設けた加熱調理器について説明したが、本体ケーシングの前面パネルの右側または左側にヒンジを介して左右に開閉する扉を設けた加熱調理器等にこの発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1はこの発明の実施の一形態の加熱調理器の外観斜視図である。
【図2】図2は上記加熱調理器の扉を開いた状態の外観斜視図である。
【図3】図3は上記加熱調理器の扉を含む要部の正面図と平面図および側面図である。
【図4】図4は上記加熱調理器の扉を開閉する途中の状態を示す側面図である。
【図5】図5は図4のIV−IV線から見た扉の要部の断面図である。
【図6】図6は図4のIV−IV線から見た他の扉の要部の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…加熱調理器
10…本体ケーシング
11…操作パネル
12…扉
13…ハンドル
14…窓
15…前面パネル
17…アーム
18…ガイドローラ
19…ガイドアーム
20…加熱室
21…受皿
22…ラック
30…水タンク
40,60…パッキン
41…扉フレーム
42,62…扉カバー
100…水タンク用収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケーシングと、
上記本体ケーシングの前面パネルにヒンジを介して開閉自在に取り付けられた扉と、
上記扉と上記前面パネルとの間に配置されるように、上記扉または上記前面パネルに設けられた断面略同一形状の環状のパッキンと
を備え、
上記環状のパッキンが上記扉に設けられているときは、上記環状のパッキンのヒンジ側が上記ヒンジと反対の側よりも前面側にあり、または、
上記環状のパッキンが上記前面パネルに設けられているときは、上記環状のパッキンのヒンジ側が上記ヒンジと反対の側よりも後面側にあることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
本体ケーシングと、
上記本体ケーシングの前面パネルにヒンジを介して開閉自在に取り付けられた扉と、
上記扉と上記前面パネルとの間に配置されるように、上記扉または上記前面パネルに設けられた環状のパッキンと
を備え、
上記環状のパッキンの形状が、ヒンジ側の接触による潰ししろが、上記ヒンジと反対の側の接触による潰ししろよりも短いことを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−40602(P2007−40602A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225102(P2005−225102)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】