説明

加熱調理器

【課題】ヒータ加熱とマイクロ波加熱の両方に使用できる角皿を提供し、ヒータ加熱の無駄をなくする。
【解決手段】加熱室28と、加熱室28の上部に設けられた上ヒータ12と、マグネトロン33と、加熱室28の底面に設けられマグネトロン33から発振される高周波を加熱室28に放射する回転アンテナ26と、食品100を載置する金属製の角皿101と、角皿101を載置するため加熱室28の左右内壁面に設けた棚27と、を備えた加熱調理器において、角皿101は、加熱室28の棚27に載置した状態で、加熱室28の壁面から中央部側に向かって前記高周波の1/4波長の位置に、前記高周波の1/2波長以上の長さのスリット110を、加熱室28の壁面と平行になるように設け、角皿101に載置された食品100を、上ヒータ12による加熱とマグネトロン33による高周波加熱の両方で加熱可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波やヒータによって食品を加熱する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の加熱調理器においては、高周波とヒータによる併用加熱を行うための付属品がいろいろと提案されている。
【0003】
特許文献1に示すものは、マイクロ波(高周波)が通過可能な構成とした焼き網を使用して、マイクロ波加熱と上下ヒータによる加熱を可能としたもので、例えば、揚げ物をマイクロ波加熱で素早くあたためた後、上下ヒータによるヒータ加熱で揚げ物のころもを「カリット」と仕上げ、加熱時に被加熱物から出る余分な油は焼き網から滴下させている。
【0004】
また、特許文献2に示すものも同様に、マイクロ波兼ヒータ加熱装置用の焼き網を備え、該焼き網には、マイクロ波(高周波)の波長λの1/4λ以上の長さを有するスリットと、輻射熱をなるべく多く通過させるための多数の長穴を設け、加熱室の天井壁に設けられた給電口から出てくるマイクロ波は、前記スリットを通過し、焼き網の裏側に回ることで、加熱室全体に均一にマイクロ波が行き渡るようにし、均一加熱を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−300430号公報
【特許文献2】特開2004−239501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載されている焼き網は、網状のもので、焼き網の多数の開口部を使用して、マイクロ波や輻射熱を通過させて被加熱物を加熱するようにしている。
【0007】
そのため、ヒータによる加熱は、被加熱物のみならず加熱室全体を加熱することになり、無駄な電力を消費し、また、その分、加熱時間も長くなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の欠点を解決するためになされたものであり、食品を収納する加熱室と、該加熱室の上部に設けられ前記食品を加熱する上ヒータと、前記食品を高周波によって加熱するマグネトロンと、前記加熱室の底面に設けられ前記高周波を前記加熱室に放射する回転アンテナと、前記食品を載置する金属製の角皿と、該角皿を載置するため前記加熱室の左右内壁面に設けた棚と、を備えた加熱調理器において、前記角皿は、前記加熱室の棚に載置した状態で前記加熱室の内壁面から中央側に向かって前記高周波の1/4波長の位置に、前記加熱室の内壁面と平行になるように前記高周波の1/2波長以上の長さのスリットを設け、前記角皿に載置された前記食品を、前記上ヒータによる加熱と前記マグネトロンによる高周波加熱の両方で加熱可能としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、角皿によって加熱室の空間を上下に区切り、角皿に載置された食品を上ヒータにより加熱することで、角皿より下方の無駄な空間を加熱しないようにし、これによって、無駄な電力の消費を防止し、加熱時間を短縮することができる。
【0010】
また、角皿を加熱室の棚に載置した状態で、加熱室の内壁面から中央側に向かって高周波の1/4波長の位置に、加熱室の内壁面と平行になるように高周波の1/2波長以上の長さのスリットを設けたので、加熱室の底面より放射される高周波を効率よく角皿に載置した食品に供給でき、食品内部を素早く加熱することができる。
【0011】
さらに、高周波によって食品の温度を上昇できるので、上ヒータによって直接加熱される食品の上面と、上ヒータによって加熱される金属性の角皿の熱伝導によって食品の底面も加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の加熱調理器本体を前面側から見た斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の加熱調理器本体の外枠を取り外し、ドアを開けて本体内部が見える状態の斜視図である。
【図4】本発明の角皿の斜視図である。
【図5】同加熱室の棚に角皿を載置した時、加熱室壁面と角皿に設けたスリットの位置関係を示す説明図である。
【図6】同角皿に食品を載置し、角皿を棚(中段)に載置した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
【0014】
図1から図3は、本実施例の主要部分を示すもので、図1は加熱調理器本体を前面側から見た斜視図、図2は図1のA−A断面図、図3は加熱調理器本体の外枠を取り外し、ドアを開けて本体内部が見える状態の斜視図である。
【0015】
図において、加熱調理器の本体1は、加熱室28の中に加熱する食品を入れ、高周波やヒータの熱を使用して食品を加熱調理する。
【0016】
ドア2は、加熱室28の内部に食品を出し入れするために開閉するもので、ドア2を閉めることで加熱室28を密閉状態にし、食品を加熱する時に使用する高周波の漏洩を防止し、ヒータの熱を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
【0017】
取っ手9は、ドア2に取り付けられ、ドア2の開閉を容易にするもので、手で握りやすい形状になっている。
【0018】
ガラス窓3は、調理中の食品の状態が確認できるようにドア2に取り付けられ、ヒータ等の発熱による高温に耐えるガラスを使用している。
【0019】
入力手段71は、ドア2の前面下側の操作パネル4に設けられ、高周波加熱やヒータ加熱等の加熱手段や加熱強さである高周波出力や加熱時間等を入力するための操作部6と、操作部6から入力された内容や調理の進行状態を表示する表示部5とで構成されている。尚、この入力手段71は、操作バネル4をドア2の前面左右のいずれか一側に設けた場合には、この操作パネル4に設けられる。
【0020】
外枠7は、加熱調理器の本体1の上面と左右側面を覆うキャビネットである。
【0021】
後板10は、前記したキャビネットの後面を形成するものであり、上部に外部排気ダクト18が取り付けられ、該外部排気ダクト18の取り付けられる内側に、食品から排出した蒸気や本体1の内部の部品を冷却した後の冷却風(廃熱)39を排出する排気孔36が設けられている。
【0022】
また、外部排気ダクト18は、排気孔36を通過した冷却風(廃熱)を本体1の外に排出するもので、排気は外部排気ダクト18の外部排気口8から排出し、排気の排出方向は本体1の上部方向で且つ前面側に排気する。排気の排出方向を上部方向で且つ前面側に向けることで、背面を壁面に寄せた時でも排気によって壁面を汚すことがない。
【0023】
機械室20は、加熱室底面28aと本体1の底板21との間の空間部に設けられ、底板21上には食品を加熱するためのマグネトロン33,マグネトロン33に接続された導波管47,制御基板23、その他後述する各種部品、これらの各種部品を冷却するファン装置15等が取り付けられている。
【0024】
加熱室底面28aは、略中央部が凹状に窪んでおり、その中に回転アンテナ26が設置され、マグネトロン33より放射される高周波エネルギーは、導波管47,回転アンテナ駆動手段46の出力軸46aが貫通する開孔部47aを通して回転アンテナ26の下面に流入し、該回転アンテナ26で拡散されて加熱室28内に放射される。回転アンテナ26は回転アンテナ駆動手段46の出力軸46aに連結されている。
【0025】
ファン装置15は、底板21に取り付けた冷却モータに連結されており、このファン装置15によって発生する冷却風39は、機械室20内の自己発熱するマグネトロン33や該マグネトロン33の高周波出力を可変可能とする電源を作るインバータ電源を搭載したインバータ基板22,重量検出手段25等を冷却し、加熱室28の外側と外枠7の間および熱風ケース11aと後板10の間を流れ、外枠7と後板10を冷却しながら排気孔36を通り、外部排気ダクト18の外部排気口8より排出される。
【0026】
加熱室28の後部には、熱風ユニット11が取り付けられ、該熱風ユニット11内には加熱室28内の空気を効率良く循環させる熱風ファン32が取り付けられ、加熱室奥壁面28bには空気の通り道となる熱風吸気孔31と熱風吹出し孔30が設けられている。
【0027】
熱風ファン32は、熱風ケース11aの外側に取り付けられた熱風モータ13の駆動により回転し、熱風ヒータ14で循環する空気を加熱する。
【0028】
加熱室28の天面の裏側には、上ヒータ12が取り付けられている。上ヒータ12は、マイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室28の天面裏側に押し付けて固定し、加熱室28の天面を加熱して加熱室28内の食品を輻射熱によって焼くものである。
【0029】
また、加熱室底面28aには、複数個の重量検出手段25、例えば前側左右に右側重量センサ25a,左側重量センサ25b,後側中央に奥側重量センサ25cが設けられ、その上にテーブルプレート24が載置されている。
【0030】
テーブルプレート24は、食品を載置するためのもので、ヒータ加熱と高周波加熱の両方に使用できるように耐熱性を有し、かつ、高周波の透過性が良く、衛生面でも問題がない磁器等の材料で成形されている。
【0031】
加熱室28の加熱室左側面28cと加熱室右側面28dには、上段,中段,下段の3段の棚27が設けられ(加熱室右側面28dに設けた棚は図示せず)、3段の棚27の何れかに角皿101(図4)を載置できるようにしている。
【0032】
次に、図4から図5を用いて、角皿101の構造について説明する。
【0033】
図4(a)(b)は、本発明の角皿101の斜視図、図5は加熱室28の棚27に角皿101を載置した状態の説明図である。
【0034】
角皿101には、左右及び前後四辺の内壁面側の近傍に高周波を通過させるスリット110(110a,110b)が設けられている。
【0035】
左右のスリット110aは、高周波を効率よく通過できるように、回転アンテナ26より放射された高周波が加熱室左側面28cと加熱室右側面28d,加熱室奥壁面28b及び加熱室底面28aに当たり、反射した高周波の電界が最大となる位置に設定される。すなわち、加熱室左側面28c,加熱室右側面28d,加熱室奥壁面28b及び加熱室底面28aに当たって反射した高周波は、正弦波の一定周期で反射するので電界が最大値となる位置が確定できる。
【0036】
そのために、スリット110aの位置は、図5に示すように、角皿101を加熱室28の棚27に載置した状態で、加熱室左側面28cと加熱室右側面28dの内壁面から加熱室28の中央側に向かっての距離(L1)が、高周波のλ/4の位置で、かつ、加熱室左側面28cと加熱室右側面28dの内壁面と平行になるように設けられる。
【0037】
また、スリット110aは、高周波が通過できるように、長手方向の寸法を高周波のλ/2以上とし、短手方向の寸法は特に限定はしない。ただし、スリット110aは、電界が最大値となる位置に設けられるので、一定以上の間隔を開けないと放電(スパーク)が発生する。従って、ここではスリット110aの短手方向の寸法を10mmとするのが望ましい。
【0038】
また、角皿101の前後に設けられるスリット110bは、図4(b)に示すように加熱室奥壁面28b側に前記と同様な位置関係と寸法で設けることができる。ここで、スリット110bを前後二箇所に設ける理由は、角皿101を加熱室28の棚27に載置する時、奥側とドア側などの方向性を持たせないようにするためである。
【0039】
また、角皿101の左右及び前後に設けられる各スリット110a,110bは、夫々二箇所に設ける必要はなく、一箇所に設けるだけでも良い。
【0040】
さらに、角皿101を棚27に載置した時、加熱室底面28aからの高さ方向の距離(L2)は、高周波のλ/4(もしくは高周波のλ/4の整数倍)であれば、更に高周波は高効率で角皿101のスリット110a,110bを通過できるようになる。従って、角皿101は、加熱室底面28aの底面から高周波のλ/4(もしくは高周波のλ/4の整数倍)の距離にある棚27を使用して載置するのが望ましい。
【0041】
ここで、図5においては、高周波による加熱を行った場合、角皿101と加熱室28の内壁面(加熱室奥壁面28b,加熱室左側面28c,加熱室右側面28d)、もしくは棚27との間で、放電(スパーク)が発生しないように絶縁物301を設けている。なお、この放電防止用の絶縁物301については一般的な使用方法であり、説明を省略(他の図における図示も省略)する。
【0042】
本実施例は、以上の構成からなり、次に動作について鳥肉の付け焼を例に説明する。
【0043】
図6は角皿101に食品100を載置し、角皿101を本体1の棚27(中段)に載置した説明図である。
【0044】
初めに食品100である鶏肉をつけ汁に付けた後、角皿101に載置し、加熱室28の棚27(中段)に載置する。
【0045】
ドア2を閉めた後、ドア2に設けられた操作パネル4の表示部5を見ながら操作部6を操作して自動調理である鳥肉の付け焼きを選択し、操作部6の加熱開始用スタートボタンを押して加熱調理を開始する。
【0046】
自動調理である鶏肉の付け焼きの動作は、加熱開始から加熱終了までの一連の動作で、上ヒータ12による加熱とマグネトロン33による高周波加熱を行うものである。
【0047】
加熱が開始すると上ヒータ12が発熱して角皿101と角皿101で仕切られた加熱室28を加熱する。この時、角皿101で仕切られた加熱室28の下部は、上ヒータ12からの熱を角皿101によって遮断するので無駄なエネルギーを消費することがなく、効率よく加熱される。
【0048】
次にマグネトロン33を動作することで回転アンテナ26より加熱室28に高周波が放射される。
【0049】
放射された高周波は、加熱室底面28a,加熱室左側面28c,加熱室右側面28dにて反射し、反射した高周波の電界が最大となる位置に設けられた角皿101のスリット110aを通過して、角皿101に載置した食品100を内部から効率よく加熱し、食品100の温度を上昇させる。
【0050】
最後に上ヒータ12を発熱させることで、食品100の表面(食品の上面)を焼き上げる。食品100の裏面(角皿101と接している面)は、角皿101の食品100が載置されていない部分(200)がヒータ12で加熱され、加熱された角皿101の熱が熱伝導によって食品100の裏面に伝わって加熱し、食品100を焼き上げる。
【0051】
そのため、角皿101はアルミや銅などの熱伝導の良い材料を用いると良い。
【0052】
また、調理の初めに上ヒータ12を発熱させる理由は、次の工程で高周波で食品100を加熱したときに、加熱された食品100から温まっていない角皿101に熱が逃げるのを防止するためである。
【0053】
以上説明したように、本実施例によれば、角皿101によって加熱室28の空間を上下に区切り、角皿101に載置された食品100を上ヒータ12により加熱することで、角皿101より下方の無駄な空間を加熱しないようにし、これによって、無駄な電力の消費を防止し、加熱時間を短縮することができる。
【0054】
また、角皿101を加熱室28の棚27に載置した状態で、加熱室28の内壁面から中央側に向かって高周波の1/4波長の位置に、加熱室28の内壁面と平行になるように高周波の1/2波長以上の長さのスリット110を設けたので、加熱室28の底面より放射される高周波を効率よく角皿101に載置した食品100に供給でき、食品内部を素早く加熱することができる。
【0055】
さらに、高周波によって食品の温度を上昇できるので、上ヒータ12によって直接加熱される食品100の上面と、上ヒータ12によって加熱される金属性の角皿101の熱伝導によって食品の底面も加熱することができる。
【符号の説明】
【0056】
12 上ヒータ
28 加熱室
33 マグネトロン
100 食品
101 角皿
110 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収納する加熱室と、
該加熱室の上部に設けられ前記食品を加熱する上ヒータと、
前記食品を高周波によって加熱するマグネトロンと、
前記加熱室の底面に設けられ前記高周波を前記加熱室に放射する回転アンテナと、
前記食品を載置する金属製の角皿と、
該角皿を載置するために前記加熱室の左右内壁面に設けた棚と、
を備えた加熱調理器において、
前記角皿は、前記加熱室の棚に載置した状態で前記加熱室の内壁面から中央側に向かって前記高周波の1/4波長の位置に、前記加熱室の内壁面と平行になるように前記高周波の1/2波長以上の長さのスリットを設け、
前記角皿に載置された前記食品を、前記上ヒータによる加熱と前記マグネトロンによる高周波加熱の両方で加熱可能としたことを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−210152(P2010−210152A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57273(P2009−57273)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】