説明

加熱調理器

【課題】加熱庫のドアを開いた際に結露水が加熱庫外に落下するのを防止する。
【解決手段】ドア30の裏面カバー31における周囲には、基部36と第1リップ37と第2リップ38とを有するドアパッキン35が張り巡らされている。ドア30を閉鎖する際に、第2リップ38は加熱庫22内に挿入され、第1リップ37の先端が前面パネル40に当接すると第1リップ37が矢印(A)の方向に回動し、第2リップ38の先端が加熱庫22の上記内壁面に密着する。こうして、前面パネル40と加熱庫22の内壁面との両方をシールして、被加熱物から発生する煙や水蒸気が加熱庫22外に漏れるのを確実に防止する。また、第1リップ37が前面パネル40をシールしている際に、前面パネル40と第1リップ37との境界に形成される溝内に結露水が溜まることを無くし、ドア30を開いた際に、上記溝内の結露水が加熱庫22外に落下するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱庫内に設置された被加熱物を熱源からの熱によって加熱調理する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器として、特開平11‐83037号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この特許文献1に開示された加熱調理器においては、図6に示すように、前面に開口を有する調理庫1内にヒーター2を取り付け、調理庫1の上記開口を開閉する扉3の下部前面には把手4を取り付け、扉3の後面には連結部5によって受け皿6を連結している。受け皿6内には調理物を載せる網7が載置される。つまり、扉3は、受け皿6が連結された引き出し式の扉である。
【0003】
上記調理庫1における開口8の周囲には当て面9が形成されており、この当て面9には開口8の周囲を囲むように扉パッキン10が設置されている。この扉パッキン10は、例えばゴム等の弾性体から構成されており、厚肉部11と薄肉部12とを有している。
【0004】
上記扉パッキン10の厚肉部11には矢先状のボス13が設けられており、このボス13を当て面9に穿たれた穴に差し込むことによって扉パッキン10を当て面9に取り付け固定している。一方、薄肉部12は、厚肉部11で片持ち支持されると共に、外側に向かって延在する凸状の曲面で形成されている。その際に、上記凸状の曲面における当て面9からの高さは、扉3を閉めた場合に薄肉部12の先端が厚肉部11の先端よりも早く扉3の内壁に当たる高さに設定されている。
【0005】
上記構成において、魚等の調理物を網7を介して受け皿6の上に載せ、ヒーター2に通電して加熱すると、上記調理物から煙や水蒸気が発生する。この煙や水蒸気は、調理庫1の開口8が扉パッキン10によって覆っているので、扉3の外に煙や水蒸気が漏れることはない。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来の加熱調理器においては、以下のような問題がある。
【0007】
すなわち、上述のように、上記調理物が魚等の比較的水分の少ない物である場合には、上記調理物から発生する水蒸気量は少ないため問題とはならないが、例えば野菜等の水分の多い調理物を加熱する場合には多量の水蒸気が発生する。また、最近では熱源として水蒸気が用いられるようになってきている。その場合には、調理庫1内に多量の水蒸気が供給される。そして、温度の低い扉3に接触した水蒸気は凝縮して結露水となり、やがて扉3の内壁を伝って下方に流下する。
【0008】
その場合、上記扉パッキン10は、調理庫1の前面における開口8の周囲に設けられた当て面9に取り付けられており、その凸状の曲面で形成された薄肉部12が扉3の内壁に当接するようになっている。したがって、調理庫1の開口8における下側に位置する扉パッキン10の薄肉部12は、厚肉部11から下側に且つ外側に向かって延在しており、扉3の内壁に当接した際に扉3と扉パッキン10の薄肉部12とで溝14が形成される。
【0009】
そのため、扉3の内壁を伝って流下した結露水は溝14内に溜まり、扉3を引き出して開口8を開いた際に、溝14内に溜まっていた結露水は調理庫1の外に落下し、床面を濡らしてしまうという問題がある。また、床面を濡らさないようにするためには、下側に位置する扉パッキン10よりも下方に露受け皿(図示せず)を設置する必要があるという問題がある。
【特許文献1】特開平11‐83037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明の課題は、加熱庫のドアを開いた際に結露水が加熱庫外に落下するのを防止できる加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明の加熱調理器は、
開口を有すると共に、上記開口から挿入された被加熱物を熱源からの熱によって加熱する加熱庫と、
上記加熱庫における上記開口を開閉するドアと、
上記ドアにおける上記加熱庫の上記開口の縁に対向する位置に設けられて、少なくとも上記加熱庫の内壁面をシールするドアパッキンと
を備えたことを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、ドアにおける加熱庫の開口の縁に対向する位置に設けられたドアパッキンによって、上記加熱庫の内壁面をシールするようにしている。したがって、上記ドアが加熱庫の開口を閉鎖した際に、加熱庫における開口の周囲の前面パネルとドアパッキンとの境界に形成される溝内に上記加熱庫内で発生した結露水が溜まることを無くし、上記ドアを開放した際に、上記溝内に溜まっていた上記結露水が上記加熱庫外に落下して床面を濡らすことを防止できる。
【0013】
また、1実施の形態の加熱調理器では、
上記ドアパッキンは、少なくとも上記開口の中心を通る水平面よりも下側となる位置に設けられている。
【0014】
この実施の形態によれば、少なくとも上記開口の中心を通る水平面よりも下側となる位置に設けられている上記ドアパッキンによって、上記加熱庫内で発生して上記加熱庫内の下側に溜まる結露水をシールすることができる。したがって、上記ドアの全周に上記ドアパッキンを設ける必要が無く、コストダウンを図ることができる。
【0015】
また、1実施の形態の加熱調理器では、
上記ドアパッキンは、
上記ドアにおける上記開口の閉動作に連動して、上記加熱庫における上記開口の周囲の前面パネルをシールする第1シール部と、
上記第1シール部における上記開口の周囲のシール動作に連動して、上記加熱庫の内壁面をシールする第2シール部と
を含んでいる。
【0016】
この実施の形態によれば、上記ドアにおける上記開口の閉動作に連動して、第1シール部によって上記加熱庫における上記開口の周囲をシールし、上記第1シール部における上記開口の周囲のシール動作に連動して、第2シール部によって上記加熱庫の内壁面をシールするので、上記第1シール部による上記シール動作が開始するまでは、上記第2シール部による上記シール動作が開始されない。したがって、上記ドアと上記加熱庫における上記開口との取り付け位置にばらつきが生じても、上記第2シール部の先端部が、上記ドアと上記加熱庫における上記開口の縁とに挟まることを防止することができる。
【0017】
また、1実施の形態の加熱調理器では、
上記ドアパッキンは、上記ドアが上記開口を完全に閉鎖した場合には、上記加熱庫における上記開口の周囲の上記前面パネルと上記加熱庫の内壁面との両方をシールする。
【0018】
この実施の形態によれば、上記ドアが上記開口を完全に閉鎖した場合には、上記ドアパッキンは、上記加熱庫における上記開口の周囲の上記前面パネルと上記加熱庫の内壁面との両方をシールするので、上記加熱庫内の被加熱物を上記熱源からの熱によって加熱する際に、上記被加熱物から発生する煙や水蒸気、あるいは、上記熱源としての蒸気が、上記加熱庫外に漏れることを確実に防止することができる。
【0019】
また、1実施の形態の加熱調理器では、
上記加熱庫の下壁面における上記ドアパッキンによるシール位置よりも上記開口とは反対側に、上記加熱庫内で発生した結露水を溜めると共に、上記ドアが開放された際に上記結露水が上記加熱庫の外に流出するのを防止するための凹部を設けている。
【0020】
この実施の形態によれば、上記加熱庫の下壁面に、上記加熱庫内で発生した結露水を溜める凹部を設けている。したがって、本加熱調理器の設置面が上記開口側に向かって僅かに傾斜している場合や、上記結露水が多量に発生した場合であっても、上記結露水が上記加熱庫外に流れ出すことを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
以上より明らかなように、この発明の加熱調理器は、ドアにおける加熱庫の開口の縁に対向する位置に設けられたドアパッキンによって、上記加熱庫の内壁面をシールするようにしたので、上記ドアが加熱庫の開口を閉鎖した際に、加熱庫における開口の周囲の前面パネルとドアパッキンとの境界に形成される溝内に上記加熱庫内で発生した結露水が溜まることを無くし、上記ドアを開放した際に、上記溝内に溜まっていた上記結露水が上記加熱庫外に落下して床面を濡らすことを防止することができる。
【0022】
したがって、この発明によれば、上記加熱庫の開口の下方に露受け皿を設置する必要が無く、上記露受け皿の洗浄および装着の煩わしさからユーザを開放することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。図1は、本実施の形態の加熱調理器におけるドア付近の縦断面図である。尚、本加熱調理器は、本体の上部に鍋等の被加熱物を加熱する上部加熱部を有すると共に、システムキッチンのキャビネットに組み込まれた構成であってもよいし、単体で使用される構成であってもよい。
【0024】
図1において、本体を構成する筺体(キャビネット)21には、被加熱物が入れられて熱源(図示せず)からの熱によって加熱される加熱庫22が設けられている。また、加熱庫22の下方には、加熱庫22への被加熱物の出し入れを円滑に行うためのレールユニット23が両側一対設けられている。尚、上記熱源は特に限定するものではなく、ニクロム線を用いたシーズヒータ,ガスバーナーあるいは過熱蒸気供給装置等を用いることができる。
【0025】
上記レールユニット23は、加熱庫22の両側における筺体21の底面上に前後方向に延在して取り付けられた固定レール24と、この固定レール24内に摺動自在に挿入されて前後方向に移動する可動レール25とで構成されている。その際に、上記「前後方向」における「前」とは、加熱庫22における開口26側を指し、「後」とは、開口26側とは反対側を指す。
【0026】
上記一対のレールユニット23における可動レール25同士は、その前端部が筺体21の前方においてレール連結部27によって連結されている。このレール連結部27は、金属板をコの字状に折り曲げた形状を有しており、中間に位置する平面状のドア取付体28と、このドア取付体28の両側に位置してドア取付体28に対して略垂直方向に延在すると共に可動レール25の前端部に挿通されて、可動レール25に固定されるレール取付体29とで、構成されている。
【0027】
尚、詳述しないが、本実施の形態においても、上記レール連結部27のドア取付体28に着脱可能に取り付けられるドア30の裏面やレール連結部27に、連結部によって受け皿を連結すれば、上記特許文献1に開示された従来の加熱調理器のごとく、上記受け皿が連結された引き出し式のドアを構成することができる。
【0028】
上記ドア30は、上記レール連結部27のドア取付体28に、以下のようにして着脱可能に取り付けられる。すなわち、ドア30は、覗き窓(図示せず)を有する金属性の裏面カバー31と、この裏面カバー31における上記覗き窓の箇所に形成された凹所31a内に嵌め込まれたガラス板32と、を含んで構成されている。また、裏面カバー31における凹所31aの下方の幅方向中央部には、レール連結部27のドア係止部33が挿入される係止穴34が形成されている。そして、レール連結部27のドア取付体28における幅方向中央部から上方に向かって突出したドア係止部33が、裏面カバー31における係止穴34に挿入されることによって、ドア係止部33と係止穴34とが係合し、この係合によって、ドア30がレール連結部27のドア取付体28に着脱可能に取り付けられるのである。
【0029】
また、上記裏面カバー31における凹所31aの周囲には、加熱庫22の上壁面22a,下壁面22bおよび両側壁面(図1では現れない)の上記前方への延長面との交差位置にドアパッキン35が張り巡らされている。
【0030】
上記ドアパッキン35は、以下のような構成を有している。すなわち、ドアパッキン35は、例えばゴム等の弾性体からなり、厚肉部で成る基部36と薄肉部で成るリップ37,38とを有している。基部36には矢先状のボス39が間隔をあけて設けられており、このボス39を裏面カバー31に穿たれた穴に差し込むことによってドアパッキン35を裏面カバー31に取り付け固定している。一方、リップ37,38は、基部36で片持ち支持されると共に、外側に向かって且つ筺体21の前面パネル40側に向かって斜め後方に放射状に延在する上記第1シール部としての第1リップ37と、この第1リップ37から分岐して加熱庫22の上壁面22a,下壁面22bおよび上記両側壁面に向かって斜め後方に放射状に延在する上記第2シール部としての第2リップ38とで、概略構成される。
【0031】
その場合、図1に示すごとくドア30が開いている状態において、ドア30の上側に取り付けられたドアパッキン35の第1リップ37の先端とドア30の下側に取り付けられたドアパッキン35の第1リップ37の先端との間隔は、加熱庫22の上壁面22aと下壁面22bとの間隔よりも広く設定されている。また、ドア30の上側に取り付けられたドアパッキン35の第2リップ38の先端とドア30の下側に取り付けられたドアパッキン35の第2リップ38の先端との間隔は、加熱庫22の上壁面22aと下壁面22bとの間隔よりも狭く設定されている。
【0032】
同様に、上記ドア30が開いている状態において、ドア30の両側に取り付けられたドアパッキン35の第1リップ37の先端の間隔は、加熱庫22の両側壁面の間隔よりも広く設定されている。また、ドア30の両側に取り付けられたドアパッキン35の第2リップ38の先端の間隔は、加熱庫22の両側壁面の間隔よりも狭く設定されている。
【0033】
さらに、上記第2リップ38の先端は、第1リップ37の先端が前面パネル40に当接する時点には、加熱庫22内に位置するように、第2リップ38は構成されている。
【0034】
上記構成の加熱調理器は、以下のように動作する。すなわち、加熱庫22内に被加熱物を入れるために、ドア30を上記前方に引き出して加熱庫22の開口26が開放される。この場合、図1に示すように、ドアパッキン35は、筺体21の前面パネル40と加熱庫22の上壁面22a,下壁面22bおよび上記両側壁面でなる内壁面とから離間している。したがって、第1リップ37の先端は前面パネル40より前方に位置し、第2リップ38の先端は加熱庫22の上記内壁面より内側に位置している。この状態で、加熱庫22内に被加熱物が入れられ、図2に示すように、ドア30を上記後方に押し戻して加熱庫22の開口26が閉鎖される。その過程において、第2リップ38の先端は加熱庫22の内壁面より内側に位置しているため、図1から分かるように、第2リップ38は加熱庫22内に挿入されていく。そして、第1リップ37の先端が前面パネル40に当接すると、第1リップ37がドア30の後退に連れてその弾性によって屈曲し、全体として基部36との接続位置を中心として矢印(A)の方向に回動する。そうすると、第1リップ37の回動に連れて、第2リップ38の先端が加熱庫22の上記内壁面に向かって移動して行き、図2に示すようにドア30が完全に閉鎖されると、第1リップ37のシール面が筺体21の前面パネル40に密着し、第2リップ38の先端が加熱庫22の上記内壁面に密着するようになっている。
【0035】
このように、本実施の形態においては、上記ドア30を上記後方に押し戻して加熱庫22の開口26を閉鎖した際に、ドアパッキン35によって、加熱庫22の開口26周囲を形成する前面パネル40と加熱庫22の上記内壁面との両方をシールすることができる。したがって、加熱庫22内の被加熱物を上記熱源からの熱によって加熱する際に、上記被加熱物から発生する煙や水蒸気、あるいは、上記熱源として使用された蒸気が、加熱庫22外に漏れることを、確実に防止することができる。
【0036】
その際に、上記ドアパッキン35は、ドア30の裏面カバー31に取り付け固定された厚肉の基部36と、この基部36で片持ち支持されると共に、外側に向かって且つ筺体21の前面パネル40側に向かって放射状に延在する薄肉の第1リップ37と、この第1リップ37における加熱庫22の上記内壁面の延長面よりも内側から分岐して加熱庫22の上記内壁面に向かって延在する薄肉の第2リップ部38と、で構成されている。したがって、加熱庫22内の蒸気がドア30の裏面カバー31に接触して生ずると共に、裏面カバー31を伝って流下する結露水は、ドアパッキン35の第1リップ37および第2リップ38を伝って、加熱庫22の下壁面22bにおける第2リップ38の先端よりも奥に戻される。
【0037】
したがって、上記ドアパッキン35の第1リップ37が筺体21の前面パネル40をシールしている際に前面パネル40と第1リップ37との境界に形成される溝内に、上記結露水が溜まることを無くし、ドア30を引き出して加熱庫22を開放した際に、上記溝内に溜まっていた結露水が加熱庫22外に落下し、床面を濡らすことを防止することができる。
【0038】
ここで、上記加熱庫22の上記内壁面をシールする第2リップ38の先端部は、加熱庫22内において上記内壁面に接触する必要がある。そのためには、ドア30が開いた状態では、互いに対向する第2リップ38の先端の間隔は加熱庫22の互いに対向する内壁面の間隔よりも狭くなっており、ドア30が閉まった状態では、第2リップ38の先端が加熱庫22の内壁面に密着する必要がある。
【0039】
それを実現するために、本実施の形態においては、上記ドアパッキン35を、第2リップ38が加熱庫22内に挿入された後、第1リップ37の先端が前面パネル40に当接して第1リップ37が矢印(A)の方向に回動し、それに連れて第2リップ38の先端が加熱庫22の上記内壁面に向かって移動し、ドア30が完全に閉鎖されると第2リップ38の先端が加熱庫22の上記内壁面に密着するように構成している。そのため、加熱庫22の開口26とドア30と取り付け位置にばらつきが生じても、ドア30を閉鎖する際に第2リップ38の先端部が、前面パネル40とドア30とで挟まれることを防止できるという効果もある。
【0040】
尚、上記ドアパッキン35の断面形状は、図1および図2に示す形状に限定されるものではない。要は、少なくとも加熱庫22の内壁面をシールできる断面形状であればよい。例えば、図3に示すように、先端が加熱庫22の内壁面に密着する第2リップ41を2枚のリップで構成にすることによって、加熱庫22の内壁面のシールをより強固なものにすることができる。
【0041】
あるいは、図4に示すように、上記第1リップ37を無くして第2リップ42のみとする。そして、この第2リップ42を、基部36で片持ち支持されると共に、外側に向かって且つ筺体21の前面パネル40側に向かって放射状に延在するように構成している。その際に、互いに対向する第2リップ42の先端の間隔を加熱庫22の互いに対向する内壁面の間隔よりも狭くしている。したがって、ドア30を閉鎖する際に、図4(a)に示すように、先端が前面パネル40に当接した第2リップ42の先端部が、ドア30の移動に伴って、図4(b)のごとく上記後方に向かって凸状に湾曲し、加熱庫22の内壁面に密着しつつ加熱庫22内に挿入されていく。
【0042】
この場合には、上記ドア30を閉鎖した際に、ドアパッキン35は筺体21の前面パネル40をシールしないので、前面パネル40とドアパッキン35との境界に形成される溝は無い。したがって、前面パネル40上に上記結露水が溜まることが無く、ドア30を引き出して加熱庫22を開放した際に、上記結露水が加熱庫22外に落下し、床面を濡らすことも無い。
【0043】
また、上記各構成においては、本加熱調理器の設置面が水平ではなく、上記前方に向かって僅かに傾斜している場合や、上記結露水が多量に発生した場合には、加熱庫22の下壁面22bに溜まっている上記結露水が加熱庫22外に流れ出す恐れがある。そこで、図5に示すように、ドア30が完全に閉鎖した状態で、加熱庫22の下壁面22bにおけるドアパッキン35の第2リップ38の先端よりやや奥に、上記結露水を溜める下壁面凹部43を設けることが望ましい。こうすることにより、本加熱調理器の設置面が上記前方に向かって僅かに傾斜している場合や、上記結露水が多量に発生した場合であっても、上記結露水が加熱庫22外に流れ出すことを防止できる。尚、下壁面凹部43に溜まった上記結露水は、加熱調理時における加熱庫22内の高温によって蒸発する。
【0044】
また、上記各構成においては、上記ドアパッキン35を、ドア30の裏面カバー31における上記覗き窓の周囲全体に張り巡らせている。しかしながら、上記結露水が発生して溜まるのは、ドア30の裏面カバー31における加熱庫22の下部である。したがって、ドアパッキン35は、必ずしも裏面カバー31における上記覗き窓の周囲全体に張り巡らせる必要はなく、少なくとも開口26の中心を通る水平面よりも下側に設置すればよいのである。
【0045】
また、上記実施の形態においては、上記ドア30は、レールユニット23を有する引き出し式のドアとしている。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、ヒンジ式のドアであっても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の加熱調理器におけるドア付近の縦断面図である。
【図2】図1においてドアを閉鎖した状態を示す図である。
【図3】図1および図2におけるドアパッキンとは異なるドアパッキンの断面形状を示す図である。
【図4】図1,図2および図3におけるドアパッキンとは異なるドアパッキンの断面形状を示す図である。
【図5】図1および図2における加熱庫の下壁面とは異なる下壁面の断面図である。
【図6】従来の加熱調理器におけるドア付近の縦断面図である。
【符号の説明】
【0047】
21…筺体(キャビネット)、
22…加熱庫、
22a…上壁面、
22b…下壁面、
23…レールユニット、
24…固定レール、
25…可動レール、
26…開口、
27…レール連結部、
28…ドア取付体、
29…レール取付体、
30…ドア、
31…裏面カバー、
31a…凹所、
32…ガラス板、
33…ドア係止部、
34…係止穴、
35…ドアパッキン、
36…基部、
37…第1リップ、
38,41,42…第2リップ、
39…ボス、
40…前面パネル、
43…下壁面凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有すると共に、上記開口から挿入された被加熱物を熱源からの熱によって加熱する加熱庫と、
上記加熱庫における上記開口を開閉するドアと、
上記ドアにおける上記加熱庫の上記開口の縁に対向する位置に設けられて、少なくとも上記加熱庫の内壁面をシールするドアパッキンと
を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
上記ドアパッキンは、少なくとも上記開口の中心を通る水平面よりも下側となる位置に設けられていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2に記載の加熱調理器において、
上記ドアパッキンは、
上記ドアにおける上記開口の閉動作に連動して、上記加熱庫における上記開口の周囲の前面パネルをシールする第1シール部と、
上記第1シール部における上記開口の周囲のシール動作に連動して、上記加熱庫の内壁面をシールする第2シール部と
を含むことを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項3に記載の加熱調理器において、
上記ドアパッキンは、上記ドアが上記開口を完全に閉鎖した場合には、上記加熱庫における上記開口の周囲の上記前面パネルと上記加熱庫の内壁面との両方をシールする
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか一つに記載の加熱調理器において、
上記加熱庫の下壁面における上記ドアパッキンによるシール位置よりも上記開口とは反対側に、上記加熱庫内で発生した結露水を溜めると共に、上記ドアが開放された際に上記結露水が上記加熱庫の外に流出するのを防止するための凹部を設けた
ことを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−71508(P2010−71508A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237631(P2008−237631)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】