説明

加熱調理器

【課題】触媒体の専用加熱源を使用せずに、加熱室からの排気の浄化、分解性能を確保し、省エネ性に富んだ加熱調理器を提供する。
【解決手段】マイクロ波33を吸収して発熱する電磁波吸収発熱体30を触媒体25の内部に含有させたことにより、マイクロ波33によって食品を加熱すると同時に、その際のマイクロ波33の一部が電磁波吸収発熱体30に吸収され、電磁波吸収発熱体30から触媒体25全体に熱伝導することにより、触媒体25を活性化温度に昇温させることができる。したがって、触媒体25を予熱するための専用熱源が不要となるだけでなく、従来は困難であったマイクロ波33単独の調理時に発生する臭気成分をも分解することが可能な加熱調理器を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などの被加熱物を加熱調理する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような加熱調理器の分野では、加熱源として電気エネルギーや燃焼エネルギーにより、赤外線、熱風などを発生させて、食品などの被加熱物を加熱調理できるグリル、ロースター、オーブン電子レンジといった機器が普及している。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の加熱調理器においては、図6に示すように、空気加熱室1の内部に空気通路2につながり、蛇行した蛇行通路3の各蛇行部4にはヒータ5を配置し、空気加熱室1と空気通路2の少なくともいずれか一方には、ヒータ5に加熱された触媒6を設けて、調理室7からの油煙などを含む吸引空気8を触媒6に接触させるというものであった。
【0004】
その目的は、触媒6を効率よく加熱するようにして、吸引空気8の浄化、分解性能を向上させることにあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−168186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7に示す従来の加熱調理器の構成では、触媒6を活性化温度に上昇、かつ維持させるために専用のヒータ5を必要としていたので、ヒータ5の所定の電力確保のため、本来、調理室6内で加熱調理に必要な熱源の電力確保が不十分となり、調理室7内での食品の調理時間が長くなったり、良好な調理結果が得られなかったりする場合があった。
【0007】
また、調理性能を一定以上に確保するために、多量の電力消費が必要になり、結果として省エネ性などにも影響がでることがあった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、触媒体の専用加熱源を使用せずに、加熱室からの排気の浄化、分解性能を確保し、省エネ性に富んだ加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、食品の加熱室と、外気に連通する排気室と、加熱室の外側に設けたマグネトロンと、マグネトロンと加熱室に連通する導波管と、排気室に設けられマイクロ波などの電磁波を吸収して発熱する電磁波吸収発熱体を含有させた触媒体とを備えたものである。
【0010】
この加熱調理器においては、マイクロ波などの電磁波を吸収して発熱する電磁波吸収発熱体を触媒体の内部に含有させたことにより、マイクロ波によって食品を加熱すると同時に、その際のマイクロ波の一部が電磁波吸収発熱体に吸収され、電磁波吸収発熱体から触媒体全体に熱伝導することにより、触媒体自体を活性化温度に昇温させることができる。
【0011】
したがって、触媒体を予熱するための専用熱源が不要となるだけでなく、従来は困難であったマイクロ波単独の調理時に発生する臭気成分を分解することが可能となる。
【0012】
また、マイクロ波による調理が終了した際には、触媒体中の電磁波吸収発熱体の温度は徐々に低下するが、ある程度触媒体の温度は維持されているため、加熱室内の残留臭気は触媒体に分解される。
【0013】
さらに、焼成加熱用の熱源(例えば、ヒータ)とマイクロ波加熱機能(マグネトロン)を併せ持つ加熱調理器においては、通常、ヒータとマグネトロンが交互に使用されるため、ヒータによる熱気が触媒体に伝達されると同時に、マグネトロンが動作した場合、電磁波吸収発熱体にマイクロ波が吸収され、触媒体自体が自己発熱するため、触媒体が活性化温度に到達する時間を短縮することができる。
【0014】
したがって、調理開始から早い段階で臭気成分の分解が開始され、臭気成分の分解率を増大させることができる。
【0015】
このように、触媒体を活性化温度に到達させるための専用熱源を全く必要とせずに、調理中の臭気成分を効果的に分解することができるため、省エネ性に富むと同時に、キッチンなどの調理空間の雰囲気を快適に保つことが可能な加熱調理器を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の加熱調理器によれば、マイクロ波などの電磁波を吸収して発熱する電磁波吸収発熱体を触媒体の内部に含有させたことにより、マイクロ波によって食品を加熱すると同時に、そのマイクロ波の一部が電磁波吸収発熱体に吸収され、電磁波吸収発熱体から触媒体全体に熱伝導することにより、触媒体自体を活性化温度に昇温させることができる。
【0017】
したがって、触媒体を予熱するための専用熱源が不要となるだけでなく、従来は困難であったマイクロ波単独の調理時に発生する臭気成分を分解することが可能となる。
【0018】
そして、省エネ性に富むと同時に、キッチンなどの調理空間の雰囲気を快適に保つことが可能な加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の側面断面図
【図2】同実施の形態における加熱調理器の触媒体の通路方向の上面図
【図3】同実施の形態における加熱調理器の触媒体の触媒物質の担持状況を示す概念図
【図4】同実施の形態における加熱調理器の別の触媒体例の触媒物質の担持状況を示す概念図
【図5】本発明の実施の形態2における加熱調理器の側面断面図
【図6】従来の加熱調理器の側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の発明は、食品の加熱室と、外気に連通する排気室と、加熱室の外側に設けたマグネトロンと、マグネトロンと加熱室に連通する導波管と、排気室に設けられマイクロ波などの電磁波を吸収して発熱する電磁波吸収発熱体を含有させた触媒体とを備えたものである。
【0021】
これにより、マイクロ波などの電磁波を吸収して発熱する電磁波吸収発熱体を触媒体の内部に含有させたことにより、マイクロ波によって食品を加熱すると同時に、その際のマイクロ波の一部が電磁波吸収発熱体に吸収され、電磁波吸収発熱体から触媒体全体に熱伝導することにより、触媒体自体を活性化温度に昇温させることができる。
【0022】
したがって、触媒体を予熱するための専用熱源が不要となるだけでなく、従来は困難であったマイクロ波単独の調理時に発生する臭気成分を分解することが可能となる。
【0023】
また、マイクロ波による調理が終了した際には、触媒体中の電磁波吸収発熱体の温度は徐々に低下するが、ある程度触媒体の温度は維持されているため、加熱室内の残留臭気は触媒体に分解される。
【0024】
さらに、焼成加熱用の熱源(例えば、ヒータ)とマイクロ波加熱機能(マグネトロン)を併せ持つ加熱調理器においては、通常、ヒータとマグネトロンが交互に使用されるため、ヒータによる熱気が触媒体に伝達されると同時に、マグネトロンが動作した場合、電磁波吸収発熱体にマイクロ波が吸収され、触媒体自体が自己発熱するため、触媒体が活性化温度に到達する時間を短縮することができる。
【0025】
したがって、調理開始から早い段階で臭気成分の分解が開始され、臭気成分の分解率を増大させることができる。
【0026】
このように、触媒体を活性化温度に到達させるための専用熱源を全く必要とせずに、調理中の臭気成分を効果的に分解することができるため、省エネ性に富むと同時に、キッチンなどの調理空間の雰囲気を快適に保つことが可能な加熱調理器を提供することができる。
【0027】
第2の発明は、特に第一の発明において、触媒体が、排気室と連通させた加熱室の排気開口部近傍に設置され、触媒体の下流側にマイクロ波の漏洩防止体を構成し、加熱室内に照射されたマイクロ波の一部を触媒体内の電磁波吸収発熱体に吸収させて、触媒体を活性化温度に発熱させたものである。
【0028】
これにより、加熱室内に照射されたマイクロ波の一部は、触媒体内の電磁波吸収発熱体に吸収されて、触媒体が活性化温度に到達するが、触媒体の下流側に設けたマイクロ波の漏洩防止体により、マイクロ波の漏洩防止体を越えて外部にマイクロ波が漏洩することはない。
【0029】
したがって、加熱室内に照射されたマイクロ波は、食品の加熱と触媒体の加熱のみに使用され、不必要な電力消費を抑えることができる。
【0030】
第3の発明は、特に第1または2のいずれかの発明において、触媒体が、多孔質セラミックス成型体と、炭化水素系成分を酸化分解する触媒物質とを備え、電磁波吸収発熱体を多孔質セラミックス成型体に分散、固定化させて担体を構成し、担体の少なくとも表面部に触媒物質を分散、固定化させたものである。
【0031】
これにより、マイクロ波などの電磁波は、担体内部の電磁波吸収発熱体に吸収され、それによる電磁波吸収発熱体の昇温が均一に担体内部及び、その結果、触媒体全体を活性化温度に到達させることができる。
【0032】
したがって、触媒体と炭化水素成分との接触領域における温度ムラを抑えることができ、安定した炭化水素系成分の分解性能を維持することができる。
【0033】
第4の発明は、特に第1から3のうちのいずれか1つの発明において、担体が、多孔質セラミックス繊維をシート体に成型したものをコルゲート状に積層して多孔質セラミックス成型体とし、各多孔質セラミックス繊維間の空隙に、電磁波吸収発熱体を一定量混入させて構成されたものである。
【0034】
これにより、30、このような成分を有する排気などが触媒体に接触しながら通過すると、早い段階で炭酸ガスや水蒸気に分解される。
【0035】
第5の発明は、特に第1から4のうちのいずれか1つの発明において、電磁波吸収発熱体が、Fe2O3、Fe3O4、またはSiCのうちのいずれか一つを用いたものである。
【0036】
これにより、これらの電磁波吸収発熱体は、電磁波を吸収して発熱する作用を有すると同時に炭化水素成分など酸化分解などの一定の触媒作用も具備しているため、電磁波の吸収によって自己発熱し、その結果、自ら触媒として活性化温度に到達する。
【0037】
したがって、これら電磁波吸収発熱体が触媒体の表面部に露出している場合、本来の触媒物質と同様に炭化水素成分などの酸化分解作用を発揮するため、触媒体全体の分解性能を向上させることができる。
【0038】
さらに、これら電磁波吸収発熱体の触媒作用を考慮に入れることによって、本来の触媒物質の担持量を低減することが可能になり、結果として、触媒体のコスト低減に寄与することも可能である。
【0039】
第6の発明は、特に第3の発明において、触媒物質が、Mn、Cu、Co、Ni、またはCeのうちの1種類以上の酸化物で構成されたものである。
【0040】
これにより、これらの酸化物成分による触媒物質は、排気中の炭化水素成分が数十ppm程度であれば、室温近くでも一定の酸化分解作用を有しているため、500ppm程度の高濃度であっても150〜250℃で容易に酸化分解作用を発揮させることができる。
【0041】
さらに、これらの触媒物質は、スラリー状にして直接担体に担持させることが可能であるため、担持操作、および触媒体としての加工が簡便にできる。
【0042】
第7の発明は、特に第1から3のうちのいずれか1つの発明において、触媒体が、多孔質セラミックス繊維をシート体に成型したものをコルゲート状に積層して多孔質セラミックス成型体を構成して担体とし、担体の表面部に電磁波吸収発熱体を含有させたセラミックスの多孔質コーティング層を形成し、多孔質コーティング層の多孔部を含む表面に触媒物質を担持したものである。
【0043】
これにより、セラミックスの多孔質コーティング層のみに電磁波吸収発熱体を含有させたので、電磁波を吸収した電磁波吸収発熱体からの熱を急速に多孔質コーティング層全体に拡散させることができる。
【0044】
また、担体は、多孔質セラミックス繊維によるコルゲート状の多孔質セラミックス成型体を構成しているため、担体内部の空気層が断熱作用を発揮し、多孔質コーティング層を活性化温度に維持させることができる。
【0045】
さらに、セラミックスの多孔質コーティング層がセラミックス繊維からなる担体の機械
的強度を上昇させると共に、多孔部を含む表面部に炭化水素成分の酸化分解作用を有する触媒物質を均一に分散させて担持することができる。
【0046】
第8の発明は、特に第7の発明において、触媒物質が、Pt、Pd、Rh、またはRuの貴金属のうちの1種類以上を用いたものである。
【0047】
これにより、これら貴金属成分を触媒物質として用いたことにより、担体上に構成した多孔質コーティング層の多孔部を含む表面部に、均一かつ強固に固定化させることができ、排気中に比較的硫黄成分が多く含まれていても、安定した酸化分解作用を維持して、長寿命な触媒体を構成することができる。
【0048】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0049】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における加熱調理器の側面断面図、図2は同実施の形態における加熱調理器の触媒体の通路方向の上面図、図3は同実施の形態における加熱調理器の触媒体の一部断面の拡大概念図、図4は同実施の形態における加熱調理器の別の触媒体例の一部断面の拡大概念図である。
【0050】
以上の図面を用いて、本発明の実施の形態1における加熱調理器の構成、および動作、作用について説明する。
【0051】
図1において、筐体10内には、前方が開口した加熱室11が構成され、加熱室11の前方の開口側には、開閉扉12が下方を支点として、筐体10の前面を含む形で前開き方向で装着されている。
【0052】
加熱室11の底面部13には、食品を収納した容器14が設けられている。底面部13は、耐熱結晶化ガラスなどからなり、マイクロ波などの電磁波を透過させる構成で、底面部13の下方には、金属製の凹部で構成したマイクロ波攪拌室15があり、攪拌モータ16に直結された攪拌用アンテナ17が設けられている。
【0053】
また、マイクロ波攪拌室15の底部の後方側には、マグネトロン18に直結された導波管19を介して開口部20が設けられている。
【0054】
なお、本例では、マグネトロン18、導波管19、マイクロは攪拌室15、攪拌モータ16を、加熱室11の底部側に設けたが、用途に応じて、加熱室11に上方側、また、側面側に設けても差し支えない。
【0055】
一方、加熱室11の後方上部には、筐体10の排気口21と加熱室11の排気開口部22とに連通する排気室23が構成され、排気開口部22近傍の排気室23内には、加熱室11でのマイクロ波調理で発生した炭化水素成分を主成分とする排気24を分解させるための触媒体25が設けられ、さらに、触媒体25の下流側には、φ3〜3.8mm程度の孔を多数構成した金属製のマイクロ波の漏洩防止体26が設けられている。
【0056】
一方、触媒体25は、図2、図3に示したように一定方向に通路27を構成するように、多孔質セラミックス繊維28をシート体に成型したものを、コルゲート状に積層して、極めて軽質で、昇温速度の速い多孔質セラミックス成型体29とし、多孔質セラミックス繊維28間の空隙に、Fe3O4からなる電磁波吸収発熱体30を一定量(例えば10〜20%)混入させて構成したものを担体31とし、この担体31に、油煙を含む炭化水素
成分を酸化分解する作用を有する触媒物質32を担持している。
【0057】
なお、本例では、電磁波吸収体30として、Fe3O4を用いているが、その他、Fe2O3、SiCなどもそれらに応じた適正な含有量を調整することによって、同様に電磁波吸収体30として応用することができる。
【0058】
また、触媒物質31は、Mn、Cu、Co、Ni、またはCeなどのうちの1種類以上の酸化物で構成したもので、本例では具体的にはMnを主成分とし、微量のCu、Ceを含む複合酸化物の微細な粒子で、これら触媒物質31は、担体30の表面だけでなく、多孔質セラミックス繊維27間の空隙にも均一に含浸されている。
【0059】
そして、このような複合酸化物状態の触媒物質31は、スラリー状にして直接担体30に担持させることが可能であるため、担持操作、および加工が簡便にできる利点がある。
【0060】
また、これら触媒物質32の酸化分解性は、排気24中の炭化水素成分が数十ppm程度であれば、室温近くでも一定の酸化分解作用を有しているため、500ppm程度の高濃度であっても実力として150〜250℃で容易に分解作用を発揮させることができる。
【0061】
したがって、触媒体25は、軽質、昇温性が良好で、比較的低温でも十分な酸化分解性能を維持することができる。
【0062】
さらに、電磁波吸収体30は、マイクロ波など電磁波の吸収によって急速に発熱するが、担体31が極めて軽質で低熱容量なものであるため、電磁波吸収発熱体30からの熱が、対流や熱伝導によって急速に担体31全体に伝達されて、触媒体25全体を急速に活性化温度に到達させることが可能である。
【0063】
一方、別の触媒体40の例としては、図4に示すように、図3で用いた担体31の表面部に電磁波吸収体41を含有したセラミックスの多孔質コーティング層42を形成し、多孔質コーティング層42の多孔部を含む表面部に炭化水素成分の酸化分解作用を有する触媒物質43を担持したものである。
【0064】
触媒物質43は、Pt、Pd、Rh、Ruなどの貴金属のうちの1種類以上を用いたもので、本例では、PtとPdを約2対1の割合で担持したものである。
【0065】
この場合、セラミックスの多孔質コーティング層42のみに電磁波吸収発熱体41を含有させたので、電磁波を吸収した電磁波吸収発熱体41からの熱を急速に多孔質コーティング層42全体に拡散させることができる。
【0066】
また、担体31は、多孔質セラミックス繊維28によるコルゲート状の多孔質セラミックス成型体29を構成しているため、担体31内部の空気層が断熱作用を発揮し、多孔質コーティング層42を活性化温度に維持させることができる。
【0067】
さらに、セラミックスの多孔質コーティング層42が、担体31の機械的強度を上昇させることができ、同時に、排気中24に比較的硫黄成分が多く含まれていても、安定した酸化分解作用を維持して、長寿命な触媒体40とすることができる。
【0068】
このように、調理物の含有成分が予め判明している場合、硫黄成分の多寡によって触媒体25と触媒体40を使い分けすることができる。
【0069】
次に、このように構成された加熱調理器における作用について説明する。
【0070】
開閉扉12を開け、加熱室11の底面部13に食品を収納した容器14を載置し、開閉扉12を閉めて、通電操作によってマグネトロン18が作動すると、発生したマイクロ波33(蛇行状の矢印)は導波管19内を通って開口部20に至り、同時に、回転を開始した攪拌モータ16に直結された攪拌用アンテナ17が、マイクロ波攪拌室15内で一定の動作で回転する。
【0071】
その結果、底面部13を透過したマイクロ波33は、容器14内の食品の均一加熱に使用される。しかし、全てのマイクロ波33が食品に吸収されるわけではなく、一部のマイクロ波33は、加熱室11内に散乱する。
【0072】
この時、これらの散乱したマイクロ波33の一部は、触媒体25中の電磁波吸収発熱体30に吸収され、電磁波吸収発熱体30の自己発熱により、触媒体25全体が活性化温度に昇温する。
【0073】
また、電磁波吸収発熱体30に吸収されなかったマイクロ波33は、触媒体25の下流側に設けたマイクロ波の漏洩防止体26によって外気中に漏洩するのを防止され、電磁波吸収発熱体30に吸収され、触媒体25の活性化温度の維持に寄与する。
【0074】
この状態で、容器14中の食品はマイクロ波33を吸収して加熱され、それに伴って炭化水素成分からなる排気(直線状の矢印)が加熱室11中に排出される。
【0075】
しかるのち、排気24は、排気開口部22から前述の作用により活性化温度に維持された触媒体25に接触し、ほとんどが二酸化炭素と水蒸気となって排気口21から外気中に放出される。
【0076】
また、マイクロ波による調理が完了して、容器14が取出された後の加熱室11内には、微量の炭化水素成分が残留臭気として存在するが、触媒体25自体は急速に温度低下せず、活性化温度近傍の温度を維持しているため、これらの炭化水素成分はほぼ完全に分解され、時間経過後の再使用のため開閉扉12を開けた際には、残留臭気を極めて少なくすることができる。
【0077】
以上のように、マイクロ波32だけで触媒体25を活性化温度に昇温することができるため、触媒体25を予熱するための専用熱源が不要となるだけでなく、従来は困難であったマイクロ波単独の調理時に発生する臭気成分を分解することが可能となり、いわゆる単機能電子レンジなどへの展開が容易に行える。
【0078】
したがって、省エネ性に富むと同時に、キッチンなどの調理空間の雰囲気を快適に保つことが可能な加熱調理器を提供することができる。
【0079】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における加熱調理器の側面断面図である。
【0080】
以上の図面を用いて、本発明の実施の形態2における加熱調理器の構成、および動作、作用について説明する。
【0081】
図5において、実施の形態1と異なる点は、加熱室50の上方に焼成調理用のヒータ51、および加熱室11の中央部近傍に、食品を載置するためのスノコ網52を設けたところである。
【0082】
なお、第1の実施の形態と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0083】
図5において、スノコ網52上に食品53が載置されると、食品の種類によってそれぞれに適した通電操作が選択される。
【0084】
例えば、(1)最初にマグネトロン18から発生したマイクロ波54が食品53中に吸収され、しかるのち、ヒータ51に通電されて食品53焼成加熱される場合、また、(2)全くその逆の順序の場合、さらには、(3)マイクロ波54の照射とヒータ51の加熱が交互に行われる場合などがある。
【0085】
(1)の場合、ヒータ51による発熱が排気55中に伝えられ、それによって触媒体が活性化温度に到達し、そのあとのマイクロ波加熱により、触媒体25の活性化温度を維持することができる。
【0086】
(2)の場合、マイクロ波加熱により触媒体25が自己発熱し、その後のヒータ51による焼成加熱による排気熱により、触媒体25の活性化温度を維持することができる。
【0087】
(3)の場合は、ヒータ51による排気熱による加熱と、マイクロ波54による触媒体25の自己発熱がほぼ同時に起こり、早い段階で触媒体25を活性化温度に到達、維持させることができる。
【0088】
このように、ヒータ51によって焼成加熱用の熱源(例えば、ヒータ51)とマイクロ波加熱機能(マグネトロン18)を併せ持つ加熱調理器においては、調理開始から早い段階で臭気成分の分解が開始され、臭気成分の分解率を増大させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように、本発明の加熱調理器は、マイクロ波単独での加熱調理、ヒータやマイクロ波とのコンビネーション的な加熱調理場合でも、触媒体を加熱するための専用熱源を必要とせずに、比較的簡単な構成で触媒体の酸化、分解性能を維持することができ、省エネ性に富むと同時に、キッチンなどの調理空間の雰囲気を快適に保つことが可能なため、電子レンジ、オーブンなどの調理器に限らず、多様な加熱用途に応用が可能である。
【符号の説明】
【0090】
11、50 加熱室
18 マグネトロン
19 導波管
22 排気開口部
23 排気室
25、40 触媒体
26 マイクロ波の漏洩防止体
28 多孔質セラミックス繊維
29 多孔質セラミックス成型体
30、41 電磁波吸収発熱体
31 担体
32、43 触媒物質
33 マイクロ波
42 多孔質コーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品の加熱室と、外気に連通する排気室と、加熱室の外側に設けたマグネトロンと、マグネトロンと加熱室に連通する導波管と、排気室に設けられマイクロ波などの電磁波を吸収して発熱する電磁波吸収発熱体を含有させた触媒体とを備えた加熱調理器。
【請求項2】
触媒体が、排気室と連通させた加熱室の排気開口部近傍に設置され、触媒体の下流側にマイクロ波の漏洩防止体を構成し、加熱室内に照射されたマイクロ波の一部を触媒体内の電磁波吸収発熱体に吸収させて、触媒体を活性化温度に発熱させたものである請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
触媒体が、多孔質セラミックス成型体と、炭化水素系成分を酸化分解する触媒物質とを備え、電磁波吸収発熱体を多孔質セラミックス成型体に分散、固定化させて担体を構成し、担体の少なくとも表面部に触媒物質を分散、固定化させたものである請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
担体が、多孔質セラミックス繊維をシート体に成型したものをコルゲート状に積層して多孔質セラミックス成型体とし、各多孔質セラミックス繊維間の空隙に、電磁波吸収発熱体を一定量混入させて構成した請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
電磁波吸収発熱体が、Fe2O3、Fe3O4、またはSiCのうちのいずれか一つを用いたものである請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
触媒物質が、Mn、Cu、Co、Ni、またはCeのうちの1種類以上の酸化物で構成されたものである請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項7】
触媒体が、多孔質セラミックス繊維をシート体に成型したものをコルゲート状に積層して多孔質セラミックス成型体を構成して担体とし、担体の表面部に電磁波吸収発熱体を含有させたセラミックスの多孔質コーティング層を形成し、多孔質コーティング層の多孔部を含む表面に触媒物質を担持したものである請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
触媒物質が、Pt、Pd、Rh、またはRuの貴金属のうちの1種類以上を用いたものである請求項7に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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