説明

加熱調理器

【課題】部品の故障確率を低減させて信頼性を向上させ、部品収納スペースを低減させた加熱調理器を得る。
【解決手段】非接触温度検知手段7は、その検知領域7aが、一点鎖線で示される加熱室1の中央横断面と加熱室1の中央正断面との交線(すなわち、加熱室1の平面視における中心)と、高周波透過板8、角皿12及び焼き網13とがそれぞれ交わる位置を全て含むように固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単純な構成で温度検知が可能とし、低コストな加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器においては、例えば、食品が加熱される加熱室と、その加熱室の外側上部に取り付けられ、食品の温度を検出する赤外線センサーと、食品を載せるターンテーブルと、上下2段で加熱を実施するために、ターンテーブル上に置き、食品を載せる脚付載置網と、高周波を発振するマグネトロンと、赤外線センサーが加熱室内の食品の温度検知をするため、加熱室に設けられた開口部を備えた高周波加熱調理器において、赤外線センサーを赤外線回転モーターにより、予め設定された角度だけ回転することによって、赤外線センサーの温度検出領域を、ターンテーブルの温度検出領域(a)の温度と、脚付載置網の温度検出領域(b)の温度を検出するというものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−39539号公報(第2−3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の加熱調理器は、ターンテーブルと呼ばれる駆動源を持って回転するテーブル、及び、魚を焼く際によく用いられる焼き網等、複数種類の載置手段が利用可能である場合が多い。このような加熱調理器においては、加熱室に設けられている非接触温度検知手段である赤外線センサーによって、被加熱物の温度を検知することによって、加熱出力の変更又は停止を実施している。このとき、複数種類の載置手段に対応すべく、検知視野を変更するために、赤外線センサーに回転モーター等の駆動源を取り付けることによって、赤外線センサー自体を動かしたり、視野となる開口部等を動かしたりすることで、検知領域を移動させ、載置手段に応じて被加熱物の温度検知を実施していた。
【0005】
しかし、高温にさらされる加熱室に隣接して設けられる駆動手段は必然的に高温になり、故障確率が高まり、加熱調理器の信頼性を低下させる原因となるという問題点があった。
また、赤外線センサーを可動させることは可動領域を広く取る必要があるため、部品スペースの圧迫になるという問題点もあった。
さらに、温度検知におけるモーターの駆動時間の計測、及び、赤外線センサーの位置制御等、制御の複雑化及び誤差要因の増大から、温度検知精度を悪化させる問題点もあった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、第1の目的は、部品の故障確率を低減させ、信頼性を向上させた加熱調理器を得ることである。
また、第2の目的は、部品収納スペースを低減させた加熱調理器を得ることである。
そして、第3の目的は、非接触温度検知手段の温度検知精度を向上させた加熱調理器を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加熱調理器は、底面に被加熱物が載置可能であり、該被加熱物を加熱調理するための加熱室と、検知領域内の物体の表面温度を検知する非接触温度検知手段と、前記加熱室に着脱自在に設置され、その載置面に前記被加熱物が載置可能な載置手段と、前記加熱室内に載置された前記被加熱物を加熱する加熱手段と、を備え、前記非接触温度検知手段は、前記検知領域に、前記加熱室の前記底面の中央部、及び、前記載置手段を前記加熱室に設置した場合における前記載置面の中央部が含まれるように、前記加熱室内に固定されたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非接触温度検知手段、その検知方向を変えるための駆動源を備えることなく、さらに、複数種類の載置手段を利用した場合のすべてにおいて被加熱物の温度検知が可能となるように固定したので、極めて単純な構成で被加熱物の温度検知が可能となり、部品点数、部品収納スペース及び部品故障の確率を低減することができ、様々な被加熱物の加熱調理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の正断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の外観斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器において被加熱物9が載置されてない場合の検知領域7aの模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器において高周波透過板8に被加熱物9が載置された場合の検知状態を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器において角皿12に被加熱物9が載置された場合の検知状態を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器において焼き網13に被加熱物9が載置された場合の検知状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の操作パネル15のレイアウト図の例である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の加熱動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
(加熱調理器の構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の正断面図であり、図2は、同加熱調理器の外観斜視図である。
本実施の形態に係る加熱調理器は、本体6と、その本体6の内部に形成された調理空間である加熱室1と、本体6の前面に設置された開閉自在のドア16と、同様に本体6の前面に設置され、加熱時間等を設定するための操作パネル15と、を備えている。また、本体6の内部には、高周波を発振する高周波発振器2、その高周波発振器2が発振する高周波を伝播させる導波管3、その導波管3を介して伝播してきた高周波を受けるアンテナ4、及び、そのアンテナ4をシャフト5aを介して回転駆動させるアンテナモーター5が備えられている。また、加熱室1内には、調理対象である被加熱物9の温度を検知する非接触温度検知手段7、加熱室1内の温度を検知する雰囲気温度検知手段14、加熱室1内の底部に設置され、その上面に被加熱物9を載置することが可能な高周波透過板8、被加熱物9を載置することが可能な角皿12、その角皿12を着脱自在に支持し、正面から見て加熱室1の左右の内側面に設置された角皿レール17、及び、角皿12の上に着脱自在に設置され、その上面に被加熱物9を載置することが可能な焼き網13が設置されている。また、加熱室1内には、その天面に設置され、被加熱物9を上方から輻射加熱を実施する上ヒーター10、高周波透過板8と加熱室1の底面との間に設けられた底部空間1b内に設置され、及び、被加熱物9を下方から輻射加熱を実施する下ヒーター11が設置されている。
【0011】
加熱室1は、本体6内部に形成された調理空間であり、この中で載置された被加熱物9が加熱調理される。
【0012】
高周波発振器2は、本体6の内部に設置され、高周波(例えば、家庭用電子レンジにおいては2.45GHz)を発振するマグネトロンである。この高周波発振器2は、例えば、家庭用電子レンジにおいては、500[W]〜1000[W]程度の出力で高周波を発振する。
【0013】
導波管3は、本体6内部の加熱室1の下方に設置され、高周波発振器2から発振された高周波を伝播させる閉塞された導電体の管であり、加熱室1の底面中央部まで延設されている。この導波管3において、加熱室1の底面中央部まで延設された部分の上面には、穴3aが形成されており、この穴3a及び、底部空間1bの底面中央部に形成された穴1aを介して、導波管3内部と底部空間1b内部が連通している。
【0014】
アンテナ4は、高周波発振器2から導波管3を介して伝播してきた高周波を受け、その高周波を加熱室1内に照射するものである。また、アンテナ4は、後述するアンテナモーター5のシャフト5aによって下部から支持された平板形状をしており、高周波透過板8の下部に位置する底部空間1b内に収納されている。
【0015】
アンテナモーター5は、導波管3における加熱室1の底面中央部まで延設された部分の下面に設置されており、その回転軸であるシャフト5aが上方に延びている。このシャフト5aは、導波管3における加熱室1の底面中央部まで延設された部分の下面を貫通し、穴3a及び穴1aを挿通して、底部空間1bに収納されアンテナ4の下部を支持している。また、アンテナモーター5が回転駆動することによって、シャフト5aを介してアンテナ4が回転するので、高周波がアンテナ4から加熱室1内に均一に照射されることになる。
【0016】
非接触温度検知手段7は、例えば、サーモパイル型の赤外線センサーによって構成され、正面方向から見て、加熱室1内の右内側面の上方部に設置されており、加熱室1内に載置された被加熱物9の温度を検知するものである。また、非接触温度検知手段7の検知方向は固定されており、その検知方向についての詳細は後述する。
【0017】
高周波透過板8は、加熱室1内の底部に設置されており、その上面に被加熱物9を載置可能とするセラミック等の板である。また、高周波透過板8は、アンテナ4から照射される高周波を透過させる性質を有し、被加熱物9は、高周波透過板8を介して高周波による誘電加熱を受けることが可能となる。
【0018】
上ヒーター10は、加熱室1内の天面に設置されたフラットヒーターであり、被加熱物9に対して上方から輻射加熱を実施する。また、上ヒーター10は、加熱室1内の天面に埋設されており、その天面は下に凸とならないように構成されているので、天面の清掃がしやすいという利点がある。
下ヒーター11は、前述のように底部空間1b内に設置されたシーズヒーターであり、被加熱物9に対して下方から輻射加熱を実施する。
なお、図1で示されるように下ヒーター11は、底部空間1b内の左右端側に2本設置されているものとしているが、これに限定されるものではなく、1本又は3本以上設置されるものとし、被加熱物9に対して均等に加熱を実施できる範囲で任意に配置するものとしてもよい。
【0019】
角皿12は、加熱室1の正面から見て左右の内側面に設置された角皿レール17に着脱自在に支持されており、その上面に被加熱物9を載置させるものである。また、角皿12は、セラミック等の耐熱性が高く、膨張係数が小さく、そして、アンテナ4から照射される高周波を透過させる部材で構成されている。したがって、アンテナ4から照射された高周波は、角皿12を透過して、角皿12に載置された被加熱物9に到達して誘電加熱を実施することができる。
なお、被加熱物9を高周波透過板8に載置して加熱する場合は、角皿12を加熱室1から取り除けばよい。
【0020】
焼き網13は、角皿12の上に着脱自在に設置されており、その上面に被加熱物9を載置させるものである。また、焼き網13は、金属製としてもシリコン製のスノコ形状としても構わないが、本実施の形態においては、金属製の網で構成されているものとする。さらに、金属の端面が十分に面取りしてあるため、適正な出力の高周波であれば、集中加熱又はスパーク等の不具合は生じない形状となっている。また、焼き網13が角皿12の上に設置されることによって、被加熱物9は、角皿12に載置された場合よりも、焼き網13に載置された場合の方が、加熱室1の天面に近づくため、上ヒーター10からの輻射加熱を強く受けることができるため、いわゆるグリル調理に好適となる。また、焼き網13は網状に構成されているので、アンテナ4から照射された高周波は、焼き網13に載置された被加熱物9に到達して誘電加熱を実施することができる。さらに、焼き網13は網状なので、被加熱物9と接触しない開口部を有し、加熱調理中に発生する被加熱物9からの蒸気及び油等が、その開口部から効率よく抜けていく構成となっているので、いわゆるべちゃついた仕上がりを抑制する効果がある。
なお、被加熱物9を高周波透過板8又は角皿12に載置して加熱する場合は、焼き網13を加熱室1から取り除けばよい。
また、図1で示されるように、焼き網13は、角皿12の上に設置されるものとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、高周波透過板8の上に設置して使用するものとしてもよい。
【0021】
雰囲気温度検知手段14は、例えば、サーミスターによって構成され、正面方向から見て、加熱室1内の左内側面の上方部に固定されており、加熱室1内の温度を検知するものである。
なお、雰囲気温度検知手段14は、加熱室1内の左内側面の上方部に固定されている構成としているが、これに限定されるものではなく、加熱室1内の背面、天面、底面又は右内側面に固定されるものとしてもよく、加熱室1内の上方に設置される必要もない。
【0022】
操作パネル15は、図2で示されるように、本体6の前面右側に設置されており、使用者による操作によって、調理時間、調理物の種類又は量等を設定することができる。この操作パネル15による設定動作についての詳細は後述する。
なお、操作パネル15は、本体6の前面右側に設置するものとしているが、これに限定されるものではなく、使用者の操作性を損なわない範囲で本体6の外面の何れに設置するものとすればよい。
【0023】
ドア16は、本体6の前面に開閉自在に設置されており、加熱室1の前面を閉口させるものである。したがって、ドア16が開いている場合には、角皿12又は焼き網13の設置又は除去、及び、被加熱物9の載置又は取り出しを行うことができ、閉まっている場合には、加熱室1内に載置された被加熱物9の加熱調理を実施することが可能となる。また、図2で示されるように、ドア16にはガラス等で構成される視認窓16aが設けられており、使用者は、加熱室1内の被加熱物9の調理状態を確認することができる。
【0024】
また、非接触温度検知手段7及び雰囲気温度検知手段14は、加熱室1内で蒸気が発生した場合、水分に蒸発潜熱として熱を奪われること、又は、赤外線の透過率が下がることから、同一加熱入力でも温度検知値が実際よりも小さくなる傾向が出ることがある。その場合は、蒸気が発生する前の初期段階(例えば、加熱開始後の所定時間)における時間に対する温度勾配を利用して、加熱時間から、実際の温度を推定し、その推定値を利用してもよい。
【0025】
また、誘電加熱は被加熱物9における内部を加熱しやすい傾向にあり、一方で輻射加熱は被加熱物9の外部を加熱しやすい傾向にある。ここで、例えば、輻射加熱のみの加熱だと被加熱物9の内部と外部との温度勾配が大きくなってしまう。しかし、本実施の形態に係る加熱調理器は、誘電加熱を実施するアンテナ4、並びに、輻射加熱を実施する被加熱物9及び上ヒーター10を備えているので、被加熱物9の内部と外部との温度勾配を小さくすることができ、殺菌の観点から不十分になりやすいかさの厚い肉料理なども可能となる。
【0026】
なお、上記のように被加熱物9は、高周波透過板8、角皿12又は焼き網13のいずれにも載置することができるが、これらを特に区別なく呼称する場合は、単に「載置手段」というものとする。
【0027】
また、高周波発振器2、導波管3、アンテナ4及びアンテナモーター5は、本発明の「高周波発振手段」に相当する。また、角皿12及び焼き網13は、本発明の「載置手段」に相当する。また、角皿12は、本発明の「第1載置手段」に相当し、焼き網13は、本発明の「第2載置手段」に相当する。さらに、上ヒーター10及び下ヒーター11は、それぞれ本発明の「上部加熱手段」及び「下部加熱手段」に相当する。
【0028】
(高周波の伝播経路について)
次に、高周波発振器2から発振された高周波の伝播経路について説明を付け加える。
高周波発振器2から発振された高周波は、導波管3内の空間を伝播する。ここで、導波管3内部及び加熱室1内部(底部空間1b)は、穴3a及び穴1aを介して連通しており、導波管3内を伝播してきた高周波は、この穴3a及び穴1aを介して、加熱室1内(底部空間1b)へ伝播する仕組みとなっている。ただし、単に導波管3と加熱室1との間に穴を設けるのみでは、高周波は効率よく加熱室1内に流れ込まない。そこで、前述のように構成された導電性のシャフト5a、及び、そのシャフト5aに下方から支持されたアンテナ4によって高周波を受ける構成としている。これによって、アンテナ4によって加熱室1内に効率よく高周波が照射されることとなり、被加熱物9を均一かつ高速に誘電加熱することができる。
【0029】
(非接触温度検知手段7の検知領域)
次に、図3〜図6を参照しながら、加熱室1内における非接触温度検知手段7の検知領域(以下、検知領域7aという)について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器において被加熱物9が載置されてない場合の検知領域7aの模式図であり、図4は、同加熱調理器において高周波透過板8に被加熱物9が載置された場合の検知状態を示す図であり、図5は、同加熱調理器において角皿12に被加熱物9が載置された場合の検知状態を示す図であり、そして、図6は、同加熱調理器において焼き網13に被加熱物9が載置された場合の検知状態を示す図である。また、図3〜図6において縦方向に引かれた一点鎖線は、加熱室1の中央を示している。
【0030】
図3で示されるように、非接触温度検知手段7は、その検知領域7aが、一点鎖線で示される加熱室1の中央横断面と加熱室1の中央正断面との交線(すなわち、加熱室1の平面視における中心)と、高周波透過板8、角皿12及び焼き網13とがそれぞれ交わる位置を全て含むように固定されている。この場合の上記の交線と高周波透過板8とが交わる位置を透過板中央部8a、角皿12と交わる位置を角皿中央部12a、そして、焼き網13と交わる位置を焼き網中央部13aと呼ぶものとする。すなわち、検知領域7aは、透過板中央部8a、角皿中央部12a及び焼き網中央部13aを全て含むように調整されている。また、放射状に広がる検知領域7aの中心線を検知領域中心線7bとし、非接触温度検知手段7は、この検知領域中心線7bが角皿12における角皿中央部12aを通るように固定されるものとする。
なお、通常、透過板中央部8a、角皿中央部12a及び焼き網中央部13aは、加熱室1の平面視における中央部に配置されるので、これらはそれぞれ高周波透過板8、角皿12及び焼き網13の中央部と一致する。
【0031】
通常、被加熱物9は、加熱室1の平面視における中央部に載置(すなわち、高周波透過板8に載置される場合は透過板中央部8a、角皿12に載置される場合は角皿中央部12a、そして、焼き網13に載置される場合には焼き網中央部13aに載置)される。そして、上記のような検知領域7aとなるように非接触温度検知手段7が固定されることによって、高周波透過板8、角皿12及び焼き網13のいずれに被加熱物9が載置されても、非接触温度検知手段7による被加熱物9の温度検知が可能となる。
なお、使用者が検知領域7aを認識することができるように、高周波透過板8、角皿12及び焼き網13における検知部分を着色して表示するものとしてもよいし、同じ視野角を有する着色LED又はランプ等の発光手段によって検知領域を照射するようにしてもよい。
また、図1等で示されるように、非接触温度検知手段7は、正面方向から見て、加熱室1内の右内側面の上方部に設置されているが、これに限定されるものではなく、加熱室1内の背面又は左内側面の上方部に設置されるものとしてもよく、検知領域7aが前述した条件を満たす位置であればよい。
さらに、上記説明において、被加熱物9は加熱室1の平面視における中央部に載置されるものとしたが、被加熱物9を非接触温度検知手段7の検知領域7a内になるべく多く収めるために、中央部に固定せずに、高周波透過板8、角皿12又は焼き網13における載置位置について、検知領域7aに合わせてずらした位置を標準としてもよい。
【0032】
多種多様な形状を有する被加熱物9に対しては、相応の誤差を見込む必要があるが、図4においては、検知領域7aの約50%の領域が被加熱物9によって占有されている状態を示している。加えて、図5においては、検知領域7aの約70%の領域が被加熱物9によって占有されている状態を示している。さらに、図6においては、検知領域7aの約30%の領域が被加熱物9によって占有されている状態を示している。このとき、標準的な食材を各載置手段の中央部に設置した場合における、検知領域7aの占有範囲を、本体6内に設置された記憶手段(図示せず)に食材ごとに対応づけて記憶させておけば、後述するように操作パネル15によってメニュー選択をすることによって、被加熱物9の最適な温度検知、及び調理の仕上がりの判断が可能となる。
【0033】
また、後述するように操作パネル15における表示手段23によって、各載置手段の中央部に食材を載置するように注意喚起するものとしてもよい。これによって、食材に対する非接触温度検知手段7の温度検知の精度を向上させることができる。
【0034】
また、非接触温度検知手段7の検知領域7aを広げすぎると温度検知の精度が悪くなるという特性があるため、角皿12は、その載置面が加熱室1内の高さ方向の中央部よりも下方の位置になるように設置されるものとするとよい。これによって、各載置手段のいずれにおいても、検知領域7aを広げすぎることなく、被加熱物9の温度検知が可能となる効果がある。
【0035】
さらに、角皿12又は焼き網13に被加熱物9を載置した場合には、被加熱物9と上ヒーター10との距離が、被加熱物9と下ヒーター11との距離よりも短くなるように、角皿12又は焼き網13が設置されるようにしている。これによって、例えば、被加熱物9がグラタン等のように焦げ目が必要で、かさの大きいものである場合においても、好適な仕上がりとすることができる。
【0036】
これらの載置手段の位置関係を成立させる1つの例としては、加熱室1の内部高さを140[mm]、角皿12の底面高さを50[mm]、非接触温度検知手段7の固定位置高さを90[mm]、そして、焼き網13の載置面高さを70[mm]にした場合があげられる。
【0037】
(操作パネル15による操作)
図7は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の操作パネル15のレイアウト図の例である。
図7で示されるように、操作パネル15は、加熱調理を開始させる加熱スタート手段20、加熱調理動作を停止させる取消し手段21、メニューの選択を行う調理物・量選択手段22、調理メッセージ、加熱経過時間又は加熱設定時間等の表示を行う表示手段23を備えている。さらに、操作パネル15は、アンテナ4が照射する高周波による誘電加熱の加熱時間を設定する誘電加熱時間設定手段18、並びに、上ヒーター10及び下ヒーター11による輻射加熱の加熱時間を設定する輻射加熱時間設定手段19を備えている。以後、誘電加熱時間設定手段18によって設定された誘電加熱の加熱時間を「誘電加熱設定時間」、そして、輻射加熱時間設定手段19によって設定された輻射加熱の加熱時間を「輻射加熱設定時間」という。
【0038】
調理物・量選択手段22によって、メニュー選択が可能なので、被加熱物9の最適な温度検知、及び調理の仕上がりの判断が可能となる。
【0039】
また、誘電加熱時間設定手段18及び輻射加熱時間設定手段19は、本発明の「時間設定操作手段」に相当し、調理物・量選択手段22は、本発明の「メニュー選択操作手段」に相当する。
【0040】
(加熱調理器の加熱動作)
図8は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の加熱動作のフローチャートである。以下、図8を参照しながら、本実施の形態に係る加熱調理器の加熱動作について説明する。
【0041】
使用者は、予め、操作パネル15の誘電加熱時間設定手段18によって誘電加熱時間を、そして、輻射加熱時間設定手段19によって輻射加熱時間を設定しているものとする。
【0042】
(S1)
使用者が、操作パネル15の加熱スタート手段20を操作することによって、加熱調理が開始される。加熱調理器内部に設置された制御装置(図示せず)は、加熱調理が開始されると、加熱時間の計測を開始する。
【0043】
(S2)
加熱調理が開始されるとまず、制御装置は、加熱室1内に載置された被加熱物9に対して、アンテナ4が照射する高周波による誘電加熱を実施する。
【0044】
(S3)
制御装置は、雰囲気温度検知手段14によって検知された加熱室1内の雰囲気温度が、予め設定されている運転強制停止温度を超えているか否かを判定する。その判定の結果、運転強制停止温度を超えている場合、ステップS8へ進む。一方、運転強制停止温度を超えていない場合、ステップS4へ進む。ここで、運転強制停止温度とは、熱源が異常加熱等の不具合が発生しているものと判断する基準となる温度である。
【0045】
(S4)
制御装置は、非接触温度検知手段7によって検知された被加熱物9の温度が、予め設定されている運転切替温度を超えているか否かを判定する。その判定の結果、運転切替温度を超えている場合、ステップS7へ進む。一方、運転切替温度を超えていない場合、ステップS5へ進む。ここで、運転切替温度とは、誘電加熱を停止させて、輻射加熱に切り替えるための基準となる温度である。
【0046】
(S5)
制御装置は、雰囲気温度検知手段14によって検知された加熱室1内の雰囲気温度が、予め設定されている運転切替温度を超えているか否かを判定する。その判定の結果、運転切替温度を超えている場合、ステップS7へ進む。一方、運転切替温度を超えていない場合、ステップS6へ進む。
なお、ここでの運転切替温度は、ステップS4における運転切替温度とは別に設定されているものとしてもよい。
【0047】
(S6)
制御装置は、誘電加熱を開始してからの経過時間が、誘電加熱設定時間を超えたか否かを判定する。その判定の結果、誘電加熱設定時間を超えている場合、ステップS7へ進む。一方、誘電加熱設定時間を超えていない場合、ステップS3へ戻る。
【0048】
(S7)
制御装置は、誘電加熱を停止させ、ステップS9へ進む。
【0049】
(S8)
制御装置は、雰囲気温度検知手段14によって検知された雰囲気温度が、運転強制停止温度を超えている場合、熱源が異常加熱等の不具合が発生しているものと判断し、安全のため、加熱動作を停止させ、ステップS13へ進む。
【0050】
(S9)
制御装置は、加熱室1内に載置された被加熱物9に対して、上ヒーター10及び下ヒーター11による輻射加熱を開始する。
なお、輻射加熱について、上ヒーター10及び下ヒーター11双方を利用することに限定されず、メニューによっていずれかを利用するものとしてもよい。
【0051】
(S10)
制御装置は、非接触温度検知手段7によって検知された被加熱物9の温度が、予め設定されている運転停止温度を超えているか否かを判定する。その判定の結果、運転停止温度を超えている場合、ステップS13へ進む。一方、運転停止温度を超えていない場合、ステップS11へ進む。ここで、運転停止温度とは、輻射加熱を停止させる基準となる温度である。
【0052】
(S11)
制御装置は、雰囲気温度検知手段14によって検知された加熱室1内の雰囲気温度が、予め設定されている運転停止温度を超えているか否かを判定する。その判定の結果、運転停止温度を超えている場合、ステップS13へ進む。一方、運転停止温度を超えていない場合、ステップS12へ進む。
なお、ここでの運転停止温度は、ステップS10における運転停止温度とは別に設定されているものとしてもよい。
【0053】
(S12)
制御装置は、輻射加熱を開始してからの経過時間が、輻射加熱設定時間を超えたか否かを判定する。その判定の結果、輻射加熱設定時間を超えている場合、ステップS13へ進む。一方、輻射加熱設定時間を超えていない場合、ステップS10へ戻る。
【0054】
(S13)
制御装置は、輻射加熱を停止させ、被加熱物9に対する加熱調理を終了する。そして、制御装置は、操作パネル15における表示手段23又はブザー(図示せず)等によって、加熱調理が終了した旨を使用者に報知する。
【0055】
以上のように、雰囲気温度検知手段14によって検知された雰囲気温度、非接触温度検知手段7によって検知された被加熱物9の温度、及び誘電加熱が実施されてからの経過時間というように、複数の加熱切り替え判断を設けているので、例えば、非接触温度検知手段7による検知動作に誤差が生じた場合においても、安全かつ仕上がりよく被加熱物9を加熱調理することができる。
【0056】
なお、上記のように、誘電加熱から輻射加熱に切り替えるための判断、及び、輻射加熱を停止させるための判断のために、非接触温度検知手段7による検知温度、雰囲気温度検知手段14による検知温度、そして、加熱時間の順に判定しているが、これに限定されるものではない。すなわち、図8におけるステップS4〜ステップS6の判定順序は、順不同としてもよい。図8におけるステップS10〜ステップS12においても同様である。
【0057】
また、図8で示される加熱調理の動作フローは例示であり、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、最初に輻射加熱を実施した後、誘電加熱に切り替える動作としてもよく、誘電加熱及び輻射加熱を同時に実施する動作としてもよく、被加熱物9のメニューに応じて自由に設定されるものとしてもよい。
【0058】
(実施の形態1の効果)
以上の構成のように、非接触温度検知手段7を、その検知方向を変えるための駆動源を備えることなく、さらに、複数種類の載置手段を利用した場合のすべてにおいて被加熱物9の温度検知が可能となるように固定した。これによって、極めて単純な構成で被加熱物9の温度検知が可能となり、部品点数、部品収納スペース及び部品故障の確率を低減することができ、様々な被加熱物9の加熱調理が可能となる。
【0059】
また、非接触温度検知手段7を固定式としたので、その検知方向の位置制御等の複雑な制御が不要となるので、温度検知精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 加熱室、1a 穴、1b 底部空間、2 高周波発振器、3 導波管、3a 穴、4 アンテナ、5 アンテナモーター、5a シャフト、6 本体、7 非接触温度検知手段、7a 検知領域、7b 検知領域中心線、8 高周波透過板、8a 透過板中央部、9 被加熱物、10 上ヒーター、11 下ヒーター、12 角皿、12a 角皿中央部、13 焼き網、13a 焼き網中央部、14 雰囲気温度検知手段、15 操作パネル、16 ドア、16a 視認窓、17 角皿レール、18 誘電加熱時間設定手段、19 輻射加熱時間設定手段、20 加熱スタート手段、21 取消し手段、22 調理物・量選択手段、23 表示手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に被加熱物が載置可能であり、該被加熱物を加熱調理するための加熱室と、
検知領域内の物体の表面温度を検知する非接触温度検知手段と、
前記加熱室に着脱自在に設置され、その載置面に前記被加熱物が載置可能な載置手段と、
前記加熱室内に載置された前記被加熱物を加熱する加熱手段と、
を備え、
前記非接触温度検知手段は、前記検知領域に、前記加熱室の前記底面の中央部、及び、前記載置手段を前記加熱室に設置した場合における前記載置面の中央部が含まれるように、前記加熱室内に固定された
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記載置手段は、前記加熱室内に着脱自在に設置可能な第1載置手段と、前記加熱室の前記底面、及び、前記第1載置手段の載置面の双方に着脱自在に設置可能な第2載置手段とによって構成され、
前記非接触温度検知手段は、前記検知領域に、前記第2載置手段を前記第1載置手段に設置した場合に、前記第2載置手段の載置面の中央部が含まれるように固定された
ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記第1載置手段は、その載置面が前記加熱室内の高さ方向の中央よりも下方の位置となるように設置される
ことを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記非接触温度検知手段の前記検知領域の中心線が、前記第1載置手段の中央部を通る
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記第2載置手段は、開口を有する形状とした
ことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
加熱動作開始後の所定時間内における前記非接触温度検知手段による検知温度の温度勾配に基づいて、その検知時の実際の前記検知領域における前記物体の表面温度を推定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記加熱手段は、高周波を発振し、該高周波を前記加熱室内に均一に照射して前記被加熱物を誘電加熱する高周波発振手段と、前記加熱室の上部に設置され、前記被加熱物を上方から輻射加熱する上部加熱手段と、前記加熱室の下部に設置され、前記被加熱物を下方から輻射加熱する下部加熱手段とによって構成された
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記上部加熱手段及び前記下部加熱手段は、前記被加熱物が前記第1載置手段又は前記第2載置手段に載置された場合、前記被加熱物と前記上部加熱手段との距離が、前記被加熱物と前記下部加熱手段との距離よりも短くなるように設置された
ことを特徴とする請求項7記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記被加熱物に対して、前記高周波発振手段による誘電加熱動作を実施後、前記上部加熱手段又は前記下部加熱手段による輻射加熱動作を実施する
ことを特徴とする請求項7又は請求項8記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記高周波発振手段による誘電加熱の加熱時間である誘電加熱時間、及び、前記上部加熱手段又は前記下部加熱手段による輻射加熱の加熱時間である輻射加熱時間を設定するための時間設定操作手段を備え、
誘電加熱動作を開始して前記誘電加熱時間経過後に、輻射加熱動作に切り替え、前記輻射加熱時間経過後に加熱動作を停止させる
ことを特徴とする請求項9記載の加熱調理器。
【請求項11】
誘電加熱動作の実施中に、前記非接触温度検知手段による検知温度が所定温度を超えていると判定した場合に、輻射加熱動作に切り替える
ことを特徴とする請求項9又は請求項10記載の加熱調理器。
【請求項12】
輻射加熱動作の実施中に、前記非接触温度検知手段による検知温度が所定温度を超えていると判定した場合に、加熱動作を停止させる
ことを特徴とする請求項9〜請求項11のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記加熱室内の温度を検知する雰囲気温度検知手段を備え、
該雰囲気温度検知手段による検知温度を、誘電加熱動作から輻射加熱動作に切り替えるための基準として、かつ、輻射加熱による加熱動作を停止させるための基準として用いる
ことを特徴とする請求項9〜請求項12のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項14】
加熱動作開始後の所定時間内における前記雰囲気温度検知手段による検知温度の温度勾配に基づいて、その検知時の実際の前記加熱室内の温度を推定する
ことを特徴とする請求項13記載の加熱調理器。
【請求項15】
前記被加熱物の種類に応じて前記検知領域の占有範囲情報を記憶する記憶手段と、
前記被加熱物の種類に応じてメニューを選択設定するためのメニュー選択操作手段と、
を備え、
該メニュー選択操作手段によって選択されたメニューに対応した前記占有範囲情報を前記記憶手段から読み出し、前記非接触温度検知手段による温度検知に利用する
ことを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項16】
前記載置手段において、前記非接触温度検知手段の前記検知領域に含まれる部分が着色された
ことを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項17】
加熱経過時間等を表示する表示手段を備え、
前記表示手段は、前記加熱室の前記底面の中央部、又は、前記載置手段の載置面の中央部に前記被加熱部を載置するように喚起する旨の表示をする
ことを特徴とする請求項1〜請求項16のいずれか一項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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