説明

加熱調理器

【課題】イグナイタの作動と赤外線信号の発信とを同じタイミングで行っても、消費電力を軽減して誤動作のおそれも解消できるようにする。
【解決手段】コントローラは、ガスバーナへの点火を行うイグナイタを、作動時間T1(例えば1秒)の後に停止時間T2(例えば0.1秒)を設定して断続的に作動するように制御している。これに対し、外部の換気装置を連動させる赤外線信号を発信する赤外線LEDを、ON信号が発信される発信時間T3をイグナイタの停止時間T2に合わせて設定して断続的に6回発信するように制御している。すなわち、赤外線LEDの発信時間T3に合わせてイグナイタの作動を断続的に停止するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の換気装置を連動運転させるビルトインコンロ等の加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルトインコンロ等の加熱調理器においては、器体に無線信号を送信可能な赤外線発光素子を設ける一方、その上方に設置された外部の換気装置に信号受信器を設けて、加熱調理器の運転と運転停止とに連動して換気装置を自動運転させるようにしたものが知られている。特に特許文献1には、器体内で操作ボタンの上部に送信窓を設けてその内部に赤外線発光素子を前向きに設け、制御回路が操作ボタンの押し操作による調理開始又は調理終了を検出すると、制御回路が赤外線発光素子から赤外線信号を照射させることで、操作ボタンを操作する手に赤外線信号を反射させて上方の換気装置へ赤外線信号を送信するようにした発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4032759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンロ部やグリルへのガスバーナへの点火の際には、イグナイタを作動させて点火電極を連続放電させているが、これと同時に赤外線発光素子から赤外線信号を出力させると、瞬間最大消費電力が増大する。また、回路内にリプル電流が発生することで誤動作のおそれも生じる。
【0005】
そこで、本発明は、イグナイタの作動と赤外線信号の作動とを同じタイミングで行っても、消費電力を軽減して誤動作のおそれも解消できる加熱調理器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ガスバーナと、そのガスバーナへの点火を行うイグナイタと、外部の換気装置をON/OFFするための赤外線信号を所定間隔で複数回発信可能な赤外線発光素子と、イグナイタ及び赤外線発光素子の作動を制御する制御手段とを備えた加熱調理器であって、制御手段は、イグナイタの作動が赤外線発光素子の作動と重複する際、赤外線信号の発信時間に合わせてイグナイタの作動を断続的に停止させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、イグナイタの作動と赤外線発光素子の作動とを同じタイミングで行っても消費電力を軽減することができる。また、回路内のリプル電流も軽減されるので、ノイズ耐性が改善され、誤動作のおそれも解消される。さらに、イグナイタの作動を停止させる分赤外線発光素子の出力を大きくできるので、換気装置へ赤外線信号を確実に送信して連動の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ビルトインコンロの斜視図である。
【図2】ビルトインコンロの平面図である。
【図3】ビルトインコンロの正面図である。
【図4】ガス供給構造の概略図である。
【図5】ビルトインコンロ及び換気装置の側面説明図である。
【図6】ビルトインコンロ及び換気装置の作動フローチャートである。
【図7】イグナイタ、安全弁、赤外線LEDの作動のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、加熱調理器の一例であるビルトインコンロ1の斜視図で、ビルトインコンロ1は、器体2の上端に、上面に3つのコンロ部4〜6を備えたトッププレート3を取り付けてなり、器体2の内部中央には、前面に扉7を備えたグリル8が設けられている。
また、器体2の前面には、各コンロ部4〜6及びグリル8に対応した操作ボタン9〜12と、その操作ボタン9〜12の上方に配置される火力調整レバー14〜17とがそれぞれ設けられている。13はグリル8の排気口である。
さらに、器体2の前面で左右の最外に位置する操作ボタン9,12のそれぞれの外側には、図2,3にも示すように、突出部18,18が隣接して設けられている。この突出部18は、器体2の前面から前方へ突出して、前端が隣接する操作ボタン9,12の前端と面一となる形状に形成されている。そして、各突出部18の下面には、赤外線信号を発信可能な赤外線発光素子としての赤外線LED19が下向きに設置されている。
【0010】
図4は、各コンロ部4〜6及びグリル8におけるガス供給構造の概略図で、ガスバーナ20へのガス配管21には、上流側から、操作ボタン9〜12の点火操作によって開弁し、燃焼時にのみ開弁保持される安全弁22と、同じく操作ボタン9〜12の点消火操作によって開閉する主弁23と、火力調整レバー14〜17の操作によってガス量を調整するガス量調整弁24とがそれぞれ設けられている。一方、ガスバーナ20には、イグナイタ25の作動によって燃料ガスに点火する点火電極26と、燃焼炎を検出する熱電対27とが設けられて、安全弁22、イグナイタ25、熱電対27は制御手段としてのコントローラ30にそれぞれ電気的接続されている。また、コンロ部4〜6における各ガスバーナ20の中央には、調理容器の底面温度を検出するサーミスタ28が設けられて、コントローラ30に電気的接続されている。さらに、コントローラ30には、赤外線LED19及び、操作ボタン9〜12の押し操作によってON/OFFするマイクロスイッチ29がそれぞれ電気的接続されている。
【0011】
コントローラ30は、周知のマイコンやメモリの他、安全弁22への通電を制御する安全弁駆動回路やイグナイタ25を作動させるイグナイタ回路、熱電対27の起電力を入力する起電力入力回路、サーミスタ28からの電気抵抗を入力するサーミスタ入力回路、赤外線LED19を点消灯させるLED駆動回路等を備えて、操作ボタン9〜12の操作による各ガスバーナ20の点消火制御の他、ガスバーナ20の燃焼炎を熱電対27で監視して、立ち消えが生じた場合には安全弁22への通電を停止してガスバーナ20を自動消火させる立ち消え安全機能、調理容器の底面温度をサーミスタ28で監視して、設定温度以上の過熱が生じた場合には安全弁22への通電を停止してガスバーナ20を自動消火させる過熱防止機能、設定時間の経過で安全弁22への通電を停止してガスバーナ20を自動消火させるタイマー調理機能、連続使用時間の経過で安全弁22への通電を停止してガスバーナ20を自動消火させる消し忘れ防止機能等を実行可能となっている。
【0012】
一方、図5において、31は、ビルトインコンロ1の上方に設置された換気装置で、回転する換気扇やその駆動部等を有するレンジフード32を備えてなる。レンジフード32の前面には、赤外線信号を受信するための赤外線受信センサ33が設けられている。この赤外線受信センサ33は、図示しない換気コントローラに電気的接続されており、ビルトインコンロ1の赤外線LED19から発信される赤外線信号を赤外線受信センサ33により受信すると、換気コントローラは、赤外線信号を読み取って換気扇をON/OFF動作させるようになっている。
【0013】
以上の如く構成されたビルトインコンロ1及び換気装置31の動作を、図6のフローチャートに基づいて説明する。
まず、S1で操作ボタン9〜12の何れかが押し操作されると、S2で、そのガスバーナ20のガス配管21の安全弁22と主弁23とが開弁し、ガスバーナ20へ燃料ガスが供給される。次に、S3で、マイクロスイッチ29のON信号を得たコントローラ30がイグナイタ25を作動させて点火電極26を連続放電させ、ガスバーナ20に点火すると共に、安全弁22への通電を開始する。これと同時に赤外線LED19から所定の間隔で複数回(ここでは6回)、換気装置31を運転させる赤外線信号(ON信号)を発信させる。このとき、赤外線信号は突出部18から下向きに発信されるため、一部が床面に反射して図5の二点鎖線に示すような経路をたどって赤外線受信センサ33へ到達し、換気装置31を運転させる。
【0014】
ここで、イグナイタ25の作動においては、図7に示すように、作動時間T1(例えば1秒)の後に停止時間T2(例えば0.1秒)が設定されて、断続的に作動するようにコントローラ30に制御されている。これに対し、赤外線LED19の作動においては、ON信号であるPPM(Pulse Position Modulation)信号が発信される発信時間T3が、イグナイタ25の停止時間T2に合わせて設定されて、断続的に6回発信するようにコントローラ30に制御されている。すなわち、赤外線LED19の発信時間T3に合わせてイグナイタ25の作動を断続的に停止するようにしたものである。
【0015】
S4の判別で、ガスバーナ20の燃焼炎によって得られる熱電対27の起電力が所定値以上に達すると、コントローラ30は、S5で、安全弁22への通電を継続して開弁状態を保持させる。なお、S4の判別で起電力が所定値に達しなければ、点火エラーが生じたとしてS6で安全弁22への通電を停止して閉弁させる。次に、S7の判別で、他のガスバーナ20が燃焼中か否か、すなわち、他のコンロ部4〜6又はグリル8において安全弁22が開弁保持されているか否かが確認される。ここで燃焼中であれば、S9へ移行して他のコンロ部4〜6又はグリル8の監視を行うが、他に燃焼中のガスバーナ20がなければ、S8で、赤外線LED19から所定の間隔で複数回、換気装置31の運転を停止させる赤外線信号(OFF信号)を発信させて換気装置31の運転を停止させる。このときも点火時と同様に赤外線信号は一部が床面に反射して赤外線受信センサ33へ到達し、換気装置31の運転を停止させることになる。
このように、ここでは点火エラーが生じた際にも換気装置31が運転することで、燃焼せずに放出されたガスが滞留することなく換気される。
【0016】
一方、ガスバーナ20の燃焼中、コントローラ30は、燃焼中のコンロ部4〜6又はグリル8において前述した各機能を実行する所定の条件の検出に伴って安全弁22への通電を停止して閉弁させることでガスバーナ20を自動消火させる。この所定の条件は、立ち消え安全機能では熱電対27の起電力の所定値からの低下、過熱防止機能ではサーミスタ28の電気抵抗の設定値への到達、タイマー調理機能ではタイマーのタイムアップ、消し忘れ防止機能では予め設定された連続使用時間のタイムアップであり、さらには回路異常の検出も所定の条件に含まれている。
【0017】
よって、S9の判別で自動消火させる所定の条件が確認されると、コントローラ30は、S10で該当するガスバーナ20の安全弁22への通電を停止する。次に、S11で、熱電対27の起電力が所定値より低下したか否かを判別する。ここで起電力の低下を確認したら、S12で、他のガスバーナ20が燃焼中か否かを確認する。ここで燃焼中であれば、S9へ戻って監視を続けるが、他に燃焼中のガスバーナ20がなければ、S13で、赤外線LED19から所定の間隔で複数回、換気装置31の運転を停止させる赤外線信号(OFF信号)を発信させて換気装置31の運転を停止させる。
【0018】
そして、S14で、燃焼中のコンロ部4〜6又はグリル8に対応する操作ボタン9〜12が押し操作されると、S15で、そのガスバーナ20での主弁23が閉弁し、ガスバーナ20への燃料ガスの供給が停止される。次に、マイクロスイッチ29のOFF信号を得たコントローラ30は、S16で、安全弁22への通電を停止して閉弁させて、S17で、他のガスバーナ20が燃焼中か否かを確認する。ここで燃焼中であれば、S9へ戻って監視を続けるが、他に燃焼中のガスバーナ20がなければ、コントローラ30は、S18で、赤外線LED19から所定の間隔で複数回、換気装置31の運転を停止させる赤外線信号(OFF信号)を発信させて換気装置31の運転を停止させる。
【0019】
このように、上記形態のビルトインコンロ1によれば、コントローラ30は、イグナイタ25の作動が赤外線LED19の作動と重複する際、赤外線信号の発信時間に合わせてイグナイタ25の作動を断続的に停止させることで、イグナイタ25の作動と赤外線LED19の作動とを同じタイミングで行っても消費電力を軽減することができる。また、回路内のリプル電流も軽減されるので、ノイズ耐性が改善され、誤動作のおそれも解消される。さらに、イグナイタ25の作動を停止させる分赤外線LED19の出力を大きくできるので、換気装置31へ赤外線信号を確実に送信して連動の信頼性を向上させることができる。
【0020】
なお、赤外線LEDによる赤外線信号の発信時間や回数は上記形態に限らず適宜変更可能で、これに合わせてイグナイタの作動時間と停止時間とを設定すればよい。
そして、ビルトインコンロの構成も適宜変更可能で、コンロ部の数の増減やグリルの省略は可能である。赤外線LEDも、上向きに設けたり、器体の両側に加えて器体の後方にも設置したり等、数や位置は変更できる。
また、上記形態では、コントローラは、安全弁への通電停止や起電力の低下検出と同時に換気装置の運転を停止させるOFF信号を発信させるようにしているが、これに限らず、安全弁への通電停止や起電力の低下検出から所定時間の経過を待ってから換気装置へのOFF信号を発信させる遅延機能を付与してもよい。このようにすれば燃焼ガスや煙等をより確実に換気することができる。
その他、本発明はビルトインコンロに限らず、テーブルコンロであっても差し支えないし、ガスバーナを備えたガスオーブン等の他の加熱調理器であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1・・ビルトインコンロ、2・・器体、3・・トッププレート、4〜6・・コンロ部、8・・グリル、9〜12・・操作ボタン、14〜17・・火力調整レバー、18・・突出部、19・・赤外線LED、20・・ガスバーナ、21・・ガス配管、22・・安全弁、23・・主弁、24・・ガス量調整弁、25・・イグナイタ、27・・熱電対、28・・サーミスタ、29・・マイクロスイッチ、30・・コントローラ、31・・換気装置、32・・レンジフード、33・・赤外線受信センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバーナと、そのガスバーナへの点火を行うイグナイタと、外部の換気装置をON/OFFするための赤外線信号を所定間隔で複数回発信可能な赤外線発光素子と、前記イグナイタ及び前記赤外線発光素子の作動を制御する制御手段とを備えた加熱調理器であって、
前記制御手段は、前記イグナイタの作動が前記赤外線発光素子の作動と重複する際、前記赤外線信号の発信時間に合わせて前記イグナイタの作動を断続的に停止させることを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−53778(P2013−53778A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190949(P2011−190949)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000112015)株式会社パロマ (298)
【Fターム(参考)】