説明

加熱調理装置

【課題】加熱終了時の被加熱物の状態を任意に変えられる加熱調理装置を提供する。
【解決手段】被加熱物(図示せず)を載置する載置手段4a、4bを収納する加熱室2と、加熱室2内に供給する蒸気を発生する蒸気発生手段10と、加熱室2内の空気や蒸気あるいは収納された被加熱物を加熱する加熱手段3a、3bと、蒸気発生手段10と加熱手段3a、3bを制御する制御手段(図示せず)を備え、制御手段は被加熱物を焼き加熱調理する工程を有し、この焼き加熱調理の加熱初期段階に被加熱物を蒸し状態にさらす工程を含むもので、蒸し状態にさらす工程時の蒸気が被加熱物の表面で凝縮し、その凝縮水に被加熱物に含まれていた塩分や、脂肪が溶出するので、同工程時に、供給する蒸気の量を変えて、被加熱物の表面に凝縮する凝縮水の量を変えるようにすれば、加熱終了時に被加熱物が有する塩分量、脂肪量あるいは各種栄養成分を好みに応じて任意に変えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気を投入しながら被加熱物を加熱する加熱調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理装置として、高い加湿効率と加熱効率を実現するために、食品などの被加熱物に飽和水蒸気または過熱蒸気を集中して吹きつけながら加熱するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、上記特許文献1に記載された従来の加熱調理装置を示すものである。図4に示すように、加熱室21内の底面には、皿(図示せず)上に形成した網体からなり被加熱物20を載せる被加熱物載置台22が着脱自在に設置されている。加熱室21の上側には、内部に加熱ヒータ23を含む飽和水蒸気発生手段24が配置されている。飽和水蒸気発生手段24上面には、給水パイプ25を介して給水装置26が接続されており、途中の給水バルブ27によって給水量を調節する。蒸気吐出ノズル28には、加熱室21内に飽和水蒸気あるいは過熱蒸気を吐出するように、吐出管28aが着脱自在に接続されている。蒸気吐出ノズル28は、加熱室21の側面壁から横方向に向けて配設されていても構わないとしている。加熱調理開始後、飽和水蒸気あるいは過熱蒸気は、吐出管28aから任意の方向に向きを変えられる。
【特許文献1】特開2004−251478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の加熱調理装置の構成では、被加熱物20の表面に凝縮する凝縮水の量を任意に可変することは困難なため、凝縮水の特性を生かした加熱を行うことができなかった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、加熱終了時の被加熱物の状態を任意に変えることができる加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理装置は、被加熱物を収納する加熱室と、前記被加熱物を載置する載置手段と、前記加熱室内に供給する蒸気を発生する蒸気発生手段と、前記加熱室内の空気や蒸気あるいは収納された被加熱物を加熱する加熱手段と、前記蒸気発生手段と前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は被加熱物を焼き加熱調理する工程を有し、この焼き加熱調理の加熱初期段階に前記被加熱物を蒸し状態にさらす工程を含むもので、被加熱物を蒸し状態にさらす工程時に加熱室内に供給された蒸気が被加熱物の表面で凝縮し、その凝縮水に、被加熱物に含まれていた塩分や、脂肪が溶出するので、例えば、被加熱物を蒸し状態にさらす工程時に、蒸気の量や温度を変えて、被加熱物の表面に凝縮する凝縮水の量を変え、その後に焼き調理を行うようにすれば、加熱終了時に、被加熱物が有する塩分量、脂肪量あるいは各種栄養成分を好みに応じて任意に変えられるヘルシー調理を実行することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の加熱調理装置は、加熱終了時に被加熱物が有する塩分量、脂肪量あるいは各種栄養成分を好みに応じて任意に変えられるヘルシー調理を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、被加熱物を収納する加熱室と、前記被加熱物を載置する載置手段と、前記加熱室内に供給する蒸気を発生する蒸気発生手段と、前記加熱室内の空気や蒸気あるいは収納された被加熱物を加熱する加熱手段と、前記蒸気発生手段と前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は被加熱物を焼き加熱調理する工程を有し、この焼き加熱調理の加熱初期段階に前記被加熱物を蒸し状態にさらす工程を含むもので、被加熱物を蒸し状態にさらす工程時に加熱室内に供給された蒸気が被加熱物の表面で凝縮し、その凝縮水に、被加熱物に含まれていた塩分や、脂肪が溶出するので、例えば、被加熱物を蒸し状態にさらす工程時に、蒸気の量や温度を変えて、被加熱物の表面に凝縮する凝縮水の量を変え、その後に焼き調理を行うようにすれば、加熱終了時に、被加熱物が有する塩分量、脂肪量あるいは各種栄養成分を好みに応じて任意に変えられるヘルシー調理を実行することができる。
【0009】
第2の発明は、特に、第1の発明の蒸し状態にさらす工程を、被加熱物が所定温度に到達するまで行うもので、被加熱物が有する塩分、脂肪分、各種栄養成分が、蒸し状態にさらす工程で必要以上に出すぎて調理性能が悪くなることが無い。
【0010】
第3の発明は、特に、第1の発明の蒸し状態にさらす工程の運転時間を、被加熱物の量に応じて変えるようにしたもので、例えば、被加熱物の量が多くなった場合に、蒸し状態にさらす工程の運転時間を長くすれば、被加熱物の表面に水を確実に凝縮させることができ、凝縮水による所望の作用を実行できる。
【0011】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の加熱室内に供給される蒸気の温度が変えられるようにしたもので、被加熱物表面における凝縮水の量を変えて、加熱終了時の被加熱物の状態を好みに応じて変える事ができる。
【0012】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか一つの発明の蒸気発生手段は、100℃以上の蒸気を発生させるもので、被加熱物表面に凝縮する凝縮水の量を変えながら加熱を行うことができるので、加熱終了時の被加熱物の状態を好みに応じて任意に変えられる。
【0013】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか一つの発明の載置手段に開孔部を設けたもので、被加熱物表面の余分な食品成分を開孔部を通して落下させて除去することができ、好ましい出来上がりの被加熱物が得られる。
【0014】
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか一つの発明の載置手段に、凸部及び/又は凹部を設けたもので、被加熱物の表面に余分な成分が残るのを防止することができ、好ましい出来上がりの被加熱物を得られる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理装置の正面断面図、図2は、同加熱調理装置の載置手段の平面図、図3は、同加熱調理装置の基本制御方法の一例を示す図である。
【0017】
図1、2において、本実施の形態における加熱調理装置の本体1には、食品などの被加熱物(図示せず)を出し入れする扉(図示していない)が取り付けられるとともに、被加熱物を収納する加熱室2が組み込まれている。加熱室2の上面と底面のそれぞれに加熱手段3a、3bが設けられ、加熱室2内の空気や蒸気、被加熱物を加熱する。加熱室2には、被加熱物を載置する載置手段4a、4bが上下にしかも出し入れ自在に配設されている。載置手段4a、4bは、図2に示すように、開孔部5と、凸部6aと、凹部6bを有している。開孔部5、凸部6a、凹部6bは、それぞれ単独で設けても良く、或いは、開孔部5と凸部6a、凸部6aと凹部6b等と併用して設けても良い。
【0018】
本実施の形態では、図2に示すように、開孔部5と、凸部6aと、凹部6bを併用した構成とした。加熱室2には、加熱室2の空間あるいは、被加熱物の温度を検知する検知手段7が配設されている。
【0019】
蒸気を吹き出す蒸気吹出口8は、蒸気管9を介して蒸気発生手段10と連通しており、載置手段4bの配設高さに対し、同じ高さか載置手段4bより下方に配置されている。蒸気管9には蒸気発生手段10によって発生した蒸気を加熱するための蒸気加熱手段11が配設されている。蒸気発生手段10には、送水管14を通して貯水手段12から水が給水される。この水を加熱し、蒸気を発生させる蒸気発生手段10には蒸気発生用ヒータ13が配設される。
【0020】
送水管14には、送水手段(図示していない)が配設されている。蒸気吹出口8には温度検知手段15が配設され、蒸気吹出口8から吹き出される蒸気の温度を検知し、制御手段(図示していない)へ検知した温度を送信する。
【0021】
制御手段は、使用者による操作部(図示していない)からの操作入力信号あるいは検知手段7や温度検知手段15の検知信号に基づき、加熱手段3a、3b、蒸気発生用ヒータ13および送水手段の動作を制御する。また制御手段は、温度検知手段15の検知信号により蒸気発生手段10の蒸気発生用ヒータ13および送水手段の制御を行い、任意の蒸気温度と蒸発量になるように制御する。操作入力信号や加熱条件、制御条件などは、記憶手段(制御手段に併設、図示していない)に一時的あるいは恒久的に記憶される。操作部には図示しない表示部、自動加熱操作キー、手動加熱設定キー、加熱開始キーなどが配設される。
【0022】
次に、上記構成からなる加熱調理装置の基本制御方法の一例を、図3を用いて説明する。図3は、被加熱物の焼き加熱調理における加熱工程の制御内容例を示す。加熱工程には加熱初期の蒸し状態にさらす工程と、加熱後期の焼成・乾燥工程が含まれる。操作部からの「焼き調理」の入力信号により被加熱物の加熱を開始すると、被加熱物を蒸し状態にさらす工程が開始される。制御手段は、蒸気発生用ヒータ13に通電するとともに、送水手段を動作させて貯水手段12の水を蒸気発生手段10に送水する。発生蒸気量は、送水手段の動作時間あるいは送水量を変化させることで制御する。蒸気発生用ヒータ13で加熱された水は蒸気となり、蒸気管9を通り、蒸気吹出口8から加熱室2内に吹き出される。
【0023】
蒸気温度が100℃以上の過熱蒸気を発生させる場合には、制御手段は蒸気加熱手段11に通電し、蒸気管9を通過する蒸気を加熱する。温度検知手段15の検知信号により制御手段は蒸気発生用ヒータ13や蒸気加熱手段11の制御を行う。
【0024】
例えば、被加熱物が低温あるいは大きい場合は昇温が遅いため、過熱蒸気を投入し、蒸気量も増やす制御を行う。一方、被加熱物の厚さが薄い場合や被加熱物が小さい場合は早く昇温してしまうため、飽和蒸気を投入し、蒸気量も少なくする制御を行う。
【0025】
この被加熱物を蒸し状態にさらす工程は、被加熱物の温度情報あるいは操作部から選択入力される被加熱物の情報に基づいて実行され、所望の条件に達すると工程を終了する。
【0026】
すなわち、制御手段は被加熱物が所定温度に達したことを検知手段7の検知信号に基づいて監視し、被加熱物が所定温度に到達したことを検知すると工程が終了したと判断する。この場合の所定温度は、被加熱物の内部温度相当で60〜70℃としている。
【0027】
また、操作部から選択入力された被加熱物情報、たとえば被加熱物の数量に基づいて、予め記憶させた加熱時間を抽出し、その時間に到達した時に蒸し状態にさらす工程が終了したと判断するようにしても良い。この被加熱物の量に応じた加熱時間は、所定の一定時間と量に応じた追加時間とを加算した時間として記憶させている。これにより、被加熱物の量が多くなった場合でも、被加熱物全体を確実に蒸らすことができる。
【0028】
蒸し状態にさらす工程が終了すると焼成・乾燥工程へ進み、制御手段は加熱条件を変更して、蒸気発生手段10の動作を停止し、加熱手段3a、3bへの通電を開始する。
【0029】
焼成・乾燥工程では、被加熱物表面の凝縮水を蒸発させ、その後、被加熱物自体の加熱を行う。焼成・乾燥工程における条件は、被加熱物の表面の凝縮水の量により変えるようにする。被加熱物表面に凝縮した凝縮水の量は、被加熱物あるいは加熱室2の初期温度、蒸気発生手段10の動作時間(蒸気発生時間)、発生蒸気量から推定することができる。
【0030】
例えば、被加熱物が大きい場合などは表面の凝縮水は多いため、焼成・乾燥工程は長くなる。一方、被加熱物が小さい場合は表面の凝縮水は少ないため、焼成・乾燥工程は短くなる。焼成・乾燥工程は、被加熱物の既定量を基準とし、その条件と比較して延長・短縮することも可能である。
【0031】
制御手段は、検知手段7の検知信号により、被加熱物あるいは加熱室2の温度が所定温度よりも低い場合は、加熱手段3への入力を増加するか、変えずに加熱を継続する。一方、検知手段7の信号により、被加熱物あるいは加熱室2の温度が所定温度以上に達している場合は、加熱手段3への入力を減少するか、工程を終了させる。
【0032】
蒸し状態にさらす工程で、被加熱物表面に凝縮水が付着する。付着した凝縮水に被加熱物内部の塩分や脂肪分の一部が溶解し、載置手段4a、4bに設けた開孔部5から流れ落ちる。開孔部5がなく凸部6a、凹部6bを設けた載置手段4の場合は、凸部6aに被加熱物が接し、塩分や脂肪分が溶解した凝縮水が凹部6bに溜まる。
【0033】
焼成・乾燥工程において、被加熱物表面は焼成され香気などが発生し、好ましい出来上がりとなる。
【0034】
なお、蒸し状態にさらす工程と焼成・乾燥工程は、それぞれ組み合せることができ、加熱前に使用者が制御条件を入力することが可能である。また、加熱手段3、蒸気吹出口8の配設位置、開孔部5、凸部6a、凹部6bの構成は、本実施の形態に限るものではない。
【0035】
さらにまた、載置手段4a、4bの開孔部5から凝縮水が流れ落ちる場合、水分を受ける皿状の容器を加熱室2に配設することも可能である。
【0036】
また、蒸気量を制御することで、被加熱物の表面に凝縮する凝縮水の量を制御することができ、被加熱物を任意の状態にすることができる。送水量を増加したときは、蒸気発生用ヒータ13の入力電力を増加させる。
【0037】
以上のように本実施の形態によれば、被加熱物を蒸し状態にさらす工程を含むことで加熱終了時に被加熱物が有する塩分量、脂肪量あるいは各種栄養成分を任意に変えられるヘルシー調理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明にかかる加熱調理装置は、被加熱物の表面に凝縮する凝縮水の量を変えて、被加熱物の出来ばえ、特に焼き物などの出来ばえを好みの状態にすることができるもので、電子レンジ、オーブンレンジ、オーブンあるいはグリラーなどと複合させた各種調理装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理装置の正面断面図
【図2】同加熱調理装置の載置手段の平面図
【図3】同加熱調理装置の基本制御方法の一例を示す図
【図4】従来の加熱調理装置の概略断面図
【符号の説明】
【0040】
2 加熱室
3a、3b 加熱手段
4a、4b 載置手段
5 開孔部
6a 凸部
6b 凹部
10 蒸気発生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収納する加熱室と、前記被加熱物を載置する載置手段と、前記加熱室内に供給する蒸気を発生する蒸気発生手段と、前記加熱室内の空気や蒸気あるいは収納された被加熱物を加熱する加熱手段と、前記蒸気発生手段と前記加熱手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は被加熱物を焼き加熱調理する工程を有し、この焼き加熱調理の加熱初期段階に前記被加熱物を蒸し状態にさらす工程を含むことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項2】
蒸し状態にさらす工程を、被加熱物が所定温度に到達するまで行う請求項1に記載の加熱調理装置。
【請求項3】
蒸し状態にさらす工程の運転時間を、被加熱物の量に応じて変えるようにした請求項1に記載の加熱調理装置。
【請求項4】
加熱室内に供給される蒸気の温度が変えられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理装置。
【請求項5】
蒸気発生手段は、100℃以上の蒸気を発生させる1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理装置。
【請求項6】
載置手段に開孔部を設けた請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱調理装置。
【請求項7】
載置手段に、凸部及び/又は凹部を設けた請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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