説明

加硫可能なポリマー組成物

【課題】加硫可能なポリマー組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミン架橋剤と特定の架橋促進剤との特定の組合せを特徴とする、新規な加硫可能なポリマー組成物。さらに、そのようなポリマー組成物に基づくポリマー加硫物、さらには特に成形物または成形部品の形態のそのようなポリマー加硫物を調製するための方法であり、特定の架橋促進剤として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫可能なポリマー組成物、そのようなポリマー組成物から得られるポリマー加硫物、およびそれらを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素−炭素二重結合の不飽和を有するポリマーから得られる加硫物における酸化条件のマイナスの影響は、特に、その加硫物が長期間にわたって高温に暴露されるような場合には、永年にわたって問題であった。当該技術分野においては、この問題を解決するための各種の手法が開発されてきた。
【0003】
酸化的な攻撃に対して、そのようなポリマーの炭素−炭素二重結合が加硫物を活性化させることは知られている。酸化的な攻撃の問題に対する一つの解決方法は、炭素−炭素二重結合がほとんど無いか、またはまったく無いポリマーを使用することである。そのようなポリマーの例としては、典型的には約0.5〜約3.0モルパーセントの炭素−炭素二重結合不飽和を含むブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとのコポリマー)、およびそのような不飽和を含まないエチレン−プロピレン・コポリマーが挙げられる。
【0004】
ある種の用途、たとえば、自動車のエンジンルームにおける各種のホースおよびシール材などでは、耐油性と、長期間高温で空気中においたときの耐酸化攻撃性とを組み合わせて有する加硫されたポリマーが必要とされる。共役ジエンとα,β−不飽和ニトリルとのコポリマー、たとえば一般には「ニトリルゴム」または「NBR」として知られているアクリロニトリル−ブタジエン・コポリマーの加硫物の耐油性が高いことは周知である。しかしながら、それらは炭素−炭素二重結合不飽和を含んでいるために、酸化抵抗性加硫物を製造するための特別なコンパウンディング処理をしない限り、酸化的な攻撃を受けやすい。
【0005】
NBR中の炭素−炭素二重結合不飽和の量を減らし、なおかつ、コポリマー中のニトリル官能基によって得られていると考えられているそのコポリマーの耐油性を維持するために、ニトリル基の水素化はせず、NBRの炭素−炭素二重結合不飽和だけを選択的に水素化して、水素化NBRまたはHNBRを製造するための方法が開発されてきた。たとえば、(特許文献1)を参照されたい(その特許の内容は、参照することにより本明細書に援用したものとする)。Tanらによるさらなる総説((非特許文献1))は、この分野の包括的な全体像を与える。
【0006】
HNBRの開発が当該技術分野における顕著な進歩を表してはいるが、なお改良の余地がある。
【0007】
(特許文献2)には、抗酸化剤を塩基と組み合わせて使用することによって、水素化されたニトリル加硫物の加熱空気老化特性が顕著に改良されることが開示されている。一つの好適な組合せには炭酸ナトリウムを使用することが含まれていて、それが良好な結果を与える。
【0008】
(特許文献3)にはさらに、少なくとも2個のフェノール性OH基を有する立体障害フェノール系化合物の塩をベースとした、有機ポリマーのための老化防止剤を使用することが開示されている。
【0009】
(特許文献4)では、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー単位を含むニトリルゴムに、芳香族二級アミン老化防止剤とポリアミン架橋剤とを組み合わせて使用することによって、ニトリルゴムの圧縮永久歪みの値が改良される可能性が示された。
【0010】
(特許文献5)には、改良された引張応力およびスコーチ安定性を有する架橋可能なニトリルゴム組成物が開示されているが、それには、架橋剤ならびにα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位およびα,β−エチレン性不飽和結合を形成する2個の炭素原子のそれぞれの上に一つのカルボキシル基を有するα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー単位を有する、高度に飽和されたニトリルゴムが含まれていて、ここでその90%加硫に相当する時間tc(90)は少なくとも5分である。そのα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマーが、マレイン酸モノn−ブチルエステルモノマー単位またはフマル酸モノ−n−ブチルエステル単位であるのが好ましい。その架橋可能なニトリルゴム組成物に含まれる架橋剤としては、ポリアミン化合物が好ましい。それらの組成物には、架橋促進剤がさらに含まれていてもよい。DOTG(ジ−o−トリルグアニジン)が、記載されている唯一の架橋促進剤である。
【0011】
(特許文献6)には、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルモノマーの繰り返し単位を含む、ニトリル基含有の高度に飽和されたコポリマーゴム、ポリアミン架橋剤、および塩基性架橋促進剤を含む架橋可能なゴム組成物が開示されているが、その塩基性架橋促進剤は、グアニジン架橋促進剤たとえば、テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、o−トリルビグアニジン、およびジカテコールホウ酸のジ−o−トリルグアニジン塩であるか、もしくは、アルデヒドアミン架橋促進剤たとえば、n−ブチルアルデヒドアニリン、アセトアルデヒドアンモニア、およびヘキサメチレンテトラミンである。これらの中でも、グアニジン架橋促進剤が好ましい。(特許文献6)のすべての実施例で、DOTGが架橋促進剤として使用されている。
【0012】
後の方の二つの文献からは、先行技術に記載されている加硫物は、長期の圧縮永久歪みの値を改良するには極めて有用ではあるが、架橋反応を最適化するためには、たとえば3−ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)のような強い有機塩基が必要であるということが判る。
【0013】
DOTGが有毒であるために、この架橋促進剤を含む硬化系の使用は、特定の分野における使用に限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】英国特許第A−1,558,491号明細書
【特許文献2】米国特許第6,214,922号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/072557A1号明細書
【特許文献4】国際公開第A−2007/072900号パンフレット
【特許文献5】特開2008−056793A号公報
【特許文献6】欧州特許出願公開第1 234 851A1号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Rubber Chem.Tech.(2005)、78(3)、489〜515
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、有毒な成分、特に有毒な架橋促進剤を使用せずにすむ、新規な加硫可能なポリマー組成物を開発して提供すること、ならびに、さらには、そのようなポリマー組成物をベースとするポリマー加硫物を提供することが必要とされてきたが、その加硫物は、加熱空気老化および低い圧縮永久歪みのような改良された物理的性質を示すと同時に、毒性がさらに低いものでなければならない。前記の新規なポリマー加硫物を製造するための新規な方法を提供することもまた、本発明のさらなるもう一つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
ポリマー成分と共に、ポリアミン架橋剤と少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基を含む特定の架橋促進剤との組合せを使用する、新規な加硫可能なポリマー組成物を提供することによってこれらの目的が解決された。
【0018】
したがって、本発明は以下のものを含む加硫可能なポリマー組成物を提供する:
以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマー: (ia)ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜100重量%、好ましくは25〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは45〜75重量%の、ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして、0〜74.9重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲の、少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1.5〜10重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、
ここで、(ia)、(ib)および(ic)に記載されたモノマー全部の合計が100重量%である;
少なくとも1種のポリアミン架橋剤;ならびに少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基。
【0019】
さらなる実施態様においては、本発明は以下のものを含む加硫可能なポリマー組成物を提供する:
以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマー: (ia)ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜99.9重量%、好ましくは25〜89.5重量%の、ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして、0〜74.9重量%、好ましくは10〜60重量%の、少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、
ここで、(ia)、(ib)および(ic)に記載されたモノマー全部の合計が100重量%である;
少なくとも1種のポリアミン架橋剤;ならびに少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基。
【0020】
好ましい実施態様においては、本発明は以下のものを含むポリマー組成物を提供する:
以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマー: (ia)ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜100重量%、好ましくは25〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは45〜75重量%の、ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして、0〜74.9重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲の、少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1.5〜10重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、
ここで、(ia)、(ib)および(ic)に記載されたモノマー全部の合計が100重量%である;
少なくとも1種のポリアミン架橋剤;ならびに1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基。
【0021】
さらに好ましい実施態様においては、本発明は以下のものを含むポリマー組成物を提供する:
以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマー: (ia)ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜99.9重量%、好ましくは25〜89.5重量%の、ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして、0〜74.9重量%、好ましくは10〜60重量%の、少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、
ここで、(ia)、(ib)および(ic)に記載されたモノマー全部の合計が100重量%である;
少なくとも1種のポリアミン架橋剤;ならびに1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基。
【0022】
場合によっては、本発明によるポリマー組成物には、成分(iv)としての少なくとも1種の抗酸化剤と成分(v)としての少なくとも1種の充填剤とをさらに含む。
【0023】
本発明による特に好ましいポリマー組成物には以下のものを含む:
以下のものから誘導される、場合によっては水素化されているニトリルポリマー; (ia)少なくとも1種の共役ジエン、
(ib)少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、および
(ic)第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル;
少なくとも1種のポリアミン架橋剤;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)およびその誘導体からなる群より特に選択される少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基;場合によっては、少なくとも1種の抗酸化剤;ならびに場合によっては、少なくとも1種の充填剤。
【0024】
この新規な加硫可能なポリマー組成物は、架橋促進剤として二環もしくは多環のアミン塩基を使用しているために、毒性が実質的に低いというメリットを与える。
【0025】
そのような加硫可能なポリマー組成物を加硫させて、新規なポリマー加硫物を得るための方法を提供することが、本発明のまた別な目的である。
【0026】
ポリマー(i)との組み合わせで、少なくとも1種のポリアミン架橋剤と少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基とのこの特定の組合せを選択することによって、そのようなポリマー組成物を硬化させる方法を改良するための新規な方法が提供可能となり、それと同時に、優れた特性を有するポリマー加硫物が得られる。一方では、そのポリマー加硫物が、より毒性の低い架橋促進剤を使用することによってより低い毒性を与えると共に、他方では、それらが改良された物理的および機械的性質を示し、たとえば硬化密度が高くなり、加熱空気老化特性が改良され、弾性率100が改良され、引張強さが高くなり、圧縮永久歪みが低くなる。
【0027】
したがって、ポリマー組成物の中に、好ましくは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TPD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTPD)およびその誘導体からなる群より選択される二環もしくは多環のアミン塩基と、ポリアミン架橋剤とを特定の組合せで組み入れた結果、架橋密度の改良が得られ、驚くべきことかつ思いがけないことには、それと同時に、これまではDOTGが使用されていた先行技術と比較して、架橋促進剤の使用濃度がより低いにもかかわらず、機械的な値における改良が得られる、ということが見出された。機械的性質における改良は、多くの方法で証明することができるが、たとえば(例として挙げれば)、強い有機塩基(これは、本発明の意味合いにおいては、二環もしくは多環のアミン塩基、好ましくは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)またはその誘導体である)を存在させずに作成した加硫物と比較すると:(i)加硫曲線から求めた硬化密度の上昇;(ii)弾性率100におけるより高い数値、および(iii)改良された圧縮永久歪みの値などが挙げられる。本発明の加硫物はさらに、以下に述べる性質の一つまたは複数における改良(すなわち、強い有機塩基を使用しないか、あるいは他の強い有機塩基を使用して製造した加硫物と比較して)を特徴とする:老化後の加熱空気老化、老化後の加熱流体老化、老化後の圧縮永久歪み、老化後の動的弾性率(E’)、老化後の動的粘性率(E”)、老化後の静的弾性率、老化後の低温特性、老化後の硬度、および毒性。
【0028】
加硫可能なポリマー組成物:
第一成分(i):
本発明のポリマー組成物の第一成分(i)は、以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマーである:
(ia)ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜100重量%、好ましくは25〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは45〜75重量%の、ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして、0%〜74.9重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲の、少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1.5〜10重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、好ましくは少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、
ここで、(ia)、(ib)および(ic)に記載されたモノマー全部の合計が100重量%である。
【0029】
さらなる実施態様において、本発明のポリマー組成物の第一成分(i)は、以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマーである:
(ia)ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜99.9重量%、好ましくは25〜89.5重量%の、ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして、0%〜74.9重量%、好ましくは10〜60重量%の、少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、好ましくは少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、
ここで、(ia)、(ib)および(ic)に記載されたモノマー全部の合計が100重量%である。
【0030】
本明細書の全体を通して使用する場合、ポリマー(i)に関連して「ポリマー」という用語は、幅広い意味を有することを意図されていて、上述のモノマーのタイプ(ia)および(ic)から誘導される限りにおいては、いかなるポリマーも包含されていることを意味している。本発明の一実施態様においては、その第一成分(i)は、上述の3種のモノマーのタイプ(ia)、(ib)および(ic)から誘導されるポリマーであり、従って、ターポリマーを表している。
【0031】
第一のモノマー(ia)は、少なくとも1個の二級もしくは三級炭素を含むポリマー主鎖を与える。当業者のよく理解するところであるが、二級炭素とは、それに結合された2個の水素原子を有する炭素原子であり、それに対して、三級炭素は、それに結合された1個の水素原子を有する炭素原子である。
【0032】
本発明の別の実施態様においては、ポリマーの混合物を使用することもまた可能であるが、ただし、その混合物中の少なくとも1種のポリマーは上に与えた定義を満たしていなければならない。
【0033】
本明細書で使用するのに好適なポリマーは、それぞれ少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有し、その不飽和を利用して重合させることが可能であるモノマー(ia)および(ic)から誘導されるエラストマー(たとえば、炭化水素ゴム)、グラフトポリマーまたはブロックポリマーであってよい。
【0034】
ポリマーの第一成分(i)において、モノマー単位(ia)は、α−オレフィンモノマーから形成されているのがよく、それは、好ましくは炭素数が2〜12の範囲であるα−オレフィン、好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテンである。
【0035】
本発明の加硫可能なポリマー組成物において使用されるポリマー(i)がエラストマーであれば好ましい。
【0036】
エラストマーは、当業者には周知である。ポリマー(i)の好適なベースを代表するエラストマーの非限定的な例を挙げれば、天然ゴム(NR)、シス−1,4−ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレンモノマーゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)、エチレン−酢酸ビニルゴム(EVM)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)などが挙げられるが、しかしながらいずれの場合においても、上述のタイプのエラストマーが、モノマー単位(ic)の繰り返し単位も含まれているように、変性されていなければならない。そのような条件を満たし、相溶性があるのならば、上述のエラストマーの2種以上のものの混合物もまた、本明細書においては使用できることは言うまでもない。より好ましくは、そのエラストマーが、エチレン−プロピレン・コポリマー、エチレン−プロピレン−非共役ジエン・ターポリマー、エチレン−酢酸ビニル・コポリマー、スチレン/共役ジエン・コポリマー、水素化されたスチレン/共役ジエン・コポリマー、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリブタジエン、およびそれらの混合物からなる群より選択されるが、この場合もまた、上述のタイプのエラストマーが、モノマー単位(ic)の繰り返し単位をさらに含むように、変性されていなければならない。
【0037】
第一成分(i)としてのニトリルゴムおよび水素化ニトリルゴム
別の実施態様においては、ニトリルゴムまたは水素化ニトリルゴムを代表するエラストマーをポリマー(i)として使用することもできる。本明細書を通して使用した場合、「ニトリルゴム」さらには「水素化ニトリルゴム」という用語は、幅広い意味を有することを意図されていて、(第一のモノマー(ia)としての)少なくとも1種のジエン(共役系であっても、非共役系であってもよい)と、(第二のモノマー(ib)としての)少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルと、第三のモノマー(ic)としての少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマーまたはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルの繰り返し単位を含む、場合によっては水素化されたターポリマーも包含されることを意味している。さらに、場合によっては、水素化ニトリルゴムが、1種または複数の他の共重合性モノマーをさらに含んでいてもよい。
【0038】
ジエンモノマー単位(ia)として使用されるジエンモノマーとしては、炭素数が少なくとも4、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する共役ジエンを使用することができる。好適な共役ジエンは、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、および1,3−ペンタジエンであり、好適な非共役ジエンは、典型的には5〜12の範囲の炭素数を有し、1,4−ペンタジエンおよび1,4−ヘキサジエンを使用するのが好ましい。これらの中では、共役ジエンが好ましく、1,3−ブタジエンであればより好ましい。
【0039】
ニトリルゴムの第二のモノマー(ib)を形成するα,β−エチレン性不飽和ニトリルには、前記モノマーがニトリル基を含むα,β−エチレン性不飽和化合物である限りにおいては、特に制限はない。そのような化合物としては、アクリロニトリル、α−ハロアクリロニトリルたとえばα−クロロアクリロニトリルおよびα−ブロモアクリロニトリルが適しており、α−アルキルアクリロニトリルたとえば、メタクリロニトリルまたはエタクリロニトリルを使用してもよい。これらのうちでは、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。複数のα,β−エチレン性不飽和ニトリル種を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
そのような場合によっては水素化されたニトリルゴム中でのα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位の含量は、モノマー単位の合計を100重量%として、典型的には10〜60重量%の範囲、より好ましくは15〜55重量%の範囲、特に好ましくは20〜50重量%の範囲である。α,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位の含量をより低い範囲で選択したとすると、得られるゴム架橋された材料の耐油性が低下し、逆にその含量の選択が高すぎると、耐寒性が低下する可能性がある。
【0041】
共役ジエンモノマー単位とα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位とに加えて、その場合によっては水素化されたニトリルゴムにはさらに、第三のモノマー(ic)として、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマーまたはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルが含まれていなければならない。
【0042】
第三のモノマー単位(ic)としては、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー単位が好ましい。本発明によるポリマー組成物を架橋させた後に得られるポリマー加硫物の引張強さは、その構造にα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー単位(ic)を含むニトリルゴム(i)を使用した結果として、改良を示す傾向がある。
【0043】
ニトリルゴム(i)の中に、モノマー単位(ic)、特にα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー単位を導入するための好適な方法においては、モノマー単位(ic)、特にα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルを、前記のα,β−エチレン性不飽和ニトリルおよび共役ジエンと共重合させる。
【0044】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマーおよびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルモノマーの、それぞれの場合において酸素原子を介してカルボニル基に結合されている、有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基またはアリール基を存在させてよいが、それらの内でもアルキル基が好ましい。そのアルキル基の炭素数は、典型的には1〜10の範囲、好ましくは2、3、4、5、6である。そのシクロアルキル基の炭素数は、典型的には5〜12の範囲、好ましくは6〜10の範囲である。そのアルキルシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは6〜12の範囲、より好ましくは7〜10の範囲である。有機基の炭素数が少なすぎると、そのことが、得られたゴム組成物の加工安定性に影響する可能性があり、逆に多すぎると、架橋速度が低くなったり、架橋された材料の機械的強度が低下したりする可能性がある。
【0045】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマーの例としては以下のものが挙げられる:
マレイン酸モノアルキルエステル、好ましくはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、およびマレイン酸モノn−ブチル;マレイン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはマレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘプチル;マレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはマレイン酸モノメチルシクロペンチル、およびマレイン酸モノエチルシクロヘキシル;マレイン酸モノアリールエステル、好ましくはマレイン酸モノフェニル;マレイン酸モノベンジルエステル、好ましくはマレイン酸モノベンジル;フマル酸モノアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、およびフマル酸モノn−ブチル;フマル酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびフマル酸モノシクロヘプチル;フマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノメチルシクロペンチル、およびフマル酸モノエチルシクロヘキシル;フマル酸モノアリールエステル、好ましくはフマル酸モノフェニル;フマル酸モノベンジルエステル、好ましくはフマル酸モノベンジル;シトラコン酸モノアルキルエステル、好ましくはシトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、およびシトラコン酸モノn−ブチル;シトラコン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはシトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、およびシトラコン酸モノシクロヘプチル;シトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはシトラコン酸モノメチルシクロペンチル、およびシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;シトラコン酸モノアリールエステル、好ましくはシトラコン酸モノフェニル;シトラコン酸モノベンジルエステル、好ましくはシトラコン酸モノベンジル;イタコン酸モノアルキルエステル、好ましくはイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、およびイタコン酸モノn−ブチル;イタコン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはイタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、およびイタコン酸モノシクロヘプチル;イタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはイタコン酸モノメチルシクロペンチル、およびイタコン酸モノエチルシクロヘキシル;イタコン酸モノアリールエステル、好ましくはイタコン酸モノフェニル;イタコン酸モノベンジルエステル、好ましくはイタコン酸モノベンジル;メサコン酸モノアルキルエステル、好ましくはメサコン酸モノエチルエステル。
【0046】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルモノマーとしては、上に明示的に記載したモノエステルモノマーをベースとした類似のジエステルを使用してよいが、ここで、しかしながら、酸素原子を介してC=O基に結合された二つの有機基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
これらの中では、加硫可能なポリマー組成物の化合物ムーニー粘度(ML1+4(100℃))を低下させる作用を有するという観点からは、α,β−エチレン性不飽和結合を形成する2個の炭素原子それぞれにカルボキシル基を有するジカルボン酸、たとえば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などのモノエステル(モノアルキルエステル、モノシクロアルキルエステル、およびモノアルキルシクロアルキルエステル)が好ましく、マレイン酸およびフマル酸のモノエステルが特に好ましい。
【0048】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーとしては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびメサコン酸を使用してよい。
【0049】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマーとしては、上述のマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびシトラコン酸の無水物を使用してよい。
【0050】
ニトリルゴムまたは水素化ニトリルゴム中の好ましい第三のモノマー(ic)のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー単位の含量は、モノマー単位の合計を100重量%として、好ましくは0.5〜20重量%の範囲、より好ましくは1〜15重量%の範囲、特に好ましくは1.5〜10重量%の範囲である。ニトリルゴムまたは水素化ニトリルゴム中のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー単位の含量が低すぎると、その加硫可能なポリマー組成物の架橋度に影響がおよぶ可能性がある。他方で、その含量が高すぎると、得られるポリマー加硫物の耐疲労性に影響がおよぶ可能性があり、架橋させた後に残る残存カルボキシル基に影響がおよぶ可能性がある。
【0051】
場合によっては水素化されたニトリルゴム中のさらなる共重合性モノマー:
場合によっては水素化されたニトリルゴムには、(ia)、(ib)および(ic)のモノマー単位のほかに、各種の前記のモノマー単位、すなわち、特にジエンモノマー、α,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマーと共重合することが可能な、他のモノマー単位の繰り返し単位が含まれていてもよい。そのようなその他のモノマーとしては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル(α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル以外のもの)、芳香族ビニル、フッ素含有ビニル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、および共重合性老化防止剤を使用してよい。
【0052】
さらなるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマー(α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル以外のもの)としては、たとえば以下のものが提案される:その中のアルキル基の炭素数が1〜18である、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステル、たとえばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなど;その中のアルコキシアルキルの炭素数が2〜12である、アクリル酸アルコキシアルキルおよびメタクリル酸アルコキシアルキル、たとえば、アクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチルなど;その中のシアノアルキル基の炭素数が2〜12である、アクリル酸シアノアルキルおよびメタクリル酸シアノアルキル、たとえば、アクリル酸α−αシアノエチル、アクリル酸β−シアノエチル、メタクリル酸シアノブチルなど;その中のヒドロキシアルキル基の炭素数が1〜12である、アクリル酸ヒドロキシアルキルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキル、たとえば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなど;フッ素−置換されたベンジル基含有アクリル酸エステルおよびフッ素−置換されたベンジル基含有メタクリル酸エステル、たとえば、アクリル酸フルオロベンジル、メタクリル酸フルオロベンジルなど;フルオロアルキル基含有アクリル酸エステルおよびフルオロアルキル基含有メタクリル酸エステル、たとえばアクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなど;本発明の加硫可能なポリマー組成物中のポリマー(i)のモノマー(ic)に包含されるモノマー以外の、不飽和ポリカルボン酸ポリアルキルエステル;アミノ基含有α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル、たとえば、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなど;など。
【0053】
さらなる芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α,α−メチルスチレン、およびビニルピリジンを使用してよい。
【0054】
さらなるフッ素含有ビニルモノマーとしては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、オルト−フルオロメチルスチレン、ビニルペンタフルオロベンゾエート、ジフルオロエチレン、およびテトラフルオロエチレンを使用してよい。
【0055】
さらなるα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸モノマーとしては、アクリル酸およびメタクリル酸を使用してよい。
【0056】
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが提案される。
【0057】
これらその他の共重合性モノマーの化学種の複数を共使用してもよい。ニトリルゴムまたは水素化ニトリルゴム中のこれらその他のモノマー単位の含量は、モノマー単位の合計を100重量%として、典型的には80重量%以下、より好ましくは50重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
【0058】
ニトリルゴムは、それが水素化された形で使用してもよい。水素化ニトリルゴムには、残存炭素−炭素二重結合不飽和が、典型的には約30モルパーセント未満、より好ましくは30〜0.05モルパーセント、さらにより好ましくは15〜0.05モルパーセント、さらにより好ましくは10.0〜0.05モルパーセント、さらにより好ましくは7.0〜0.05モルパーセント、最も好ましくは5.5〜0.05モルパーセントの量で含まれる。
【0059】
コポリマーの水素化は、当業者には公知の方法で起こさせることができる。ニトリルゴムを水素化させるために好適な方法は、たとえば以下の特許に記載されている:米国特許第3,700,637号明細書、独国特許発明第2 539 132号明細書、欧州特許出願公開第A134023号明細書、独国特許出願公開第A35 40 918号明細書、欧州特許出願公開第A298386号明細書、独国特許出願公開第A35 29 252号明細書、独国特許出願公開第A34 33 392号明細書、米国特許第4,464,515号明細書、および米国特許第4,503,196号明細書。
【0060】
さらに、その場合によっては水素化されたニトリルゴムのムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、好ましくは1〜200、より好ましくは30〜150、特に好ましくは39〜120である。その場合によっては水素化されたニトリルゴムのムーニー粘度が低すぎると、得られるゴム架橋された材料の機械的強度の低下の原因となる危険性があり、逆に、それが高すぎると、得られる架橋可能なゴム組成物の加工特性の低下を招く可能性がある。
【0061】
前記のニトリルゴムを製造する方法に関しては、特に制限はない。一般的には、α,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、ジエンモノマーまたはα−オレフィンモノマー、ならびに、必要に応じて添加され、それらと共重合することが可能なその他のモノマーを共重合させる方法が、都合がよくかつ好ましい。重合法としては、公知の、エマルション重合法、懸濁重合法、バルク重合法および溶液重合法のいずれを使用することも可能ではあるが、重合反応の調節が簡単であることから、エマルション重合法が好ましい。共重合によって得られたコポリマー中の残存炭素−炭素二重結合が前記の範囲よりも高ければ、コポリマーの水素化(水素付加反応)が実施可能となる。そのような水素化法には特に制限はなく、周知の方法を採用してよい。
【0062】
ポリマー、好ましくはそれら前述のエラストマーは、当業者には周知であり、市場で購入することも可能であるし、あるいは、文献に詳しく説明されている方法に従って、当業者が製造してもよい。
【0063】
成分(ii):ポリアミン架橋剤
本発明のポリマー組成物の第二の成分(ii)は、前記のターポリマー(i)のカルボキシル基を架橋させるための少なくとも1種のポリアミン架橋剤である。そのポリアミン架橋剤には特に制限はないが、ただし、前記反応剤が、(1)2個以上のアミノ基を有する化合物であるか、または(2)架橋の間にインサイチューで2個以上のアミノ基を有する化合物を形成する化学種であるか、のいずれかでなければならない。しかしながら、脂肪族炭化水素もしくは芳香族炭化水素の複数の水素が、アミノ基またはヒドラジド構造(「−CONHNH2」で表される構造、ここでCOはカルボニル基を表す)により置換されている化合物が好ましい。
【0064】
ポリアミン架橋剤(ii)の例としては、たとえば以下のものが挙げられる:
脂肪族ポリアミン、好ましくはヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン−シンナムアルデヒド付加物、またはヘキサメチレンジアミン−ジベンゾエート塩;芳香族ポリアミン、好ましくは2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、または4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン);少なくとも2個のヒドラジド構造を有する化合物、好ましくはイソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、またはセバシン酸ジヒドラジド。
【0065】
これらの中では、脂肪族ポリアミンが好ましく、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが特に好ましい。
【0066】
加硫可能なポリマー組成物中でのポリアミン架橋剤(ii)の含量は、ポリマー(i)、好ましくはニトリルゴムの100重量部を基準にして、0.2〜20重量部の範囲、好ましくは1〜15重量部の範囲、より好ましくは1.5〜10重量部の範囲である。
【0067】
成分(iii):二環もしくは多環のアミン塩基
本発明による加硫可能なポリマー組成物の第三の成分(iii)は、少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基である。好適な二環もしくは多環のアミン塩基は、当業者には公知である。二環もしくは多環のアミン塩基は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)およびその誘導体からなる群より選択するのが好ましい。
【0068】
二環もしくは多環のアミン塩基は、当業者公知の方法によって調製することも可能である。本発明において述べられている好適な塩基は、市場で入手可能である。
【0069】
本発明の一実施態様においては、(DMSO中で測定した)pKb値が−2〜+12の範囲であるような二環もしくは多環のアミン塩基を使用する。
【0070】
成分(iv):抗酸化剤
本発明のポリマー組成物の、任意成分ではあるが、さらなる成分は、少なくとも1種の抗酸化剤である。好適な抗酸化剤は、当業者には公知である。好ましい抗酸化剤は、アミン系抗酸化剤、好ましくは単官能もしくはオリゴ官能性二級芳香族アミンもしくは立体障害アミン、およびフェノール性抗酸化剤、好ましくは単官能もしくはオリゴ官能性の置換フェノール、からなる群より選択される。より好ましくは、抗酸化剤は、アルキル化および/またはアリール化ジフェニルアミンおよび立体障害アミンから選択される。最も好ましくは、抗酸化剤は、4,4’−ビス−(1,1−ジメチルベンジル)−ジフェニルアミン(CDPA)、4,4’−ビス(オクチル)−ジフェニルアミン(OCD)、および重合2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)からなる群より選択される。
【0071】
抗酸化剤は、ポリマー組成物中に、ポリマー100重量部あたり、約0,5〜約4重量部の量で存在させるのが好ましい。
【0072】
成分(v):充填剤
さらに、本発明によるポリマー組成物には、場合によっては、少なくとも1種の充填剤が含まれる。充填剤のタイプについては特に制限はなく、適切な充填剤を選択することは、当業者の技量の範囲に入る。好適な充填剤の非限定的な例を挙げれば、カーボンブラック(たとえば、FEF、MT、GPFおよびSRF)、クレー、二酸化チタン、シリカ充填剤(不飽和シランの有無を問わない)などが含まれる。充填剤の量には限界はなく、通常通りでよい。好ましくは、充填剤は、ポリマー(i)の100重量部あたり、約20〜約200重量部の範囲の量、好ましくはポリマー(i)の100重量部あたり、約20〜130重量部の量で存在させる。より好ましくは、充填剤は、ポリマー(i)の100重量部あたり、約20〜約100重量部の範囲の量で存在させる。最も好ましくは、充填剤は、ポリマー(i)の100重量部あたり、約40〜約80重量部の範囲の量で存在させる。
【0073】
その他の任意成分:
その他の従来のコンパウンディング成分を、従来の方法で必須成分(i)、(ii)および(iii)と混合することによって、そのポリマー組成物の中に加えてもよい。そのようなその他のコンパウンディング成分は、それらが従来の目的のために使用し、そのようなものとしては、当業者周知の量の、たとえば酸化亜鉛および酸化マグネシウムのような活性化剤;老化防止剤;可塑剤;加工助剤;補強剤;充填剤;促進剤:および加硫遅延剤が挙げられる。
【0074】
場合によっては、本発明による加硫可能なポリマー組成物にはさらに、ポリアミン架橋剤(ii)に加えて1種または複数のさらなる加硫剤が含まれていてもよい。そのようなさらなる加硫系は、当業者には周知であって、その選択は、当業者の技量の範囲内である。
【0075】
一実施態様においては、有機過酸化物(たとえば、ジクミルペルオキシドまたは2,2’−ビス(tert−ブチルペルオキシジイソプロピル−ベンゼン))を、本発明によるポリマー組成物中におけるさらなる加硫剤として使用してもよい。
【0076】
また別な実施態様においては、硫黄またはその他の従来の硫黄含有加硫剤またはさらにはそれらの混合物を、本発明によるポリマー組成物中におけるさらなる(1種または複数の)加硫剤として使用してもよい。好適なさらなる硫黄含有加硫剤は市販されていて、たとえば、Vulkacit(登録商標)DM/C(ベンゾチアジルジスルフィド)、Vulkacit(登録商標)Thiuram MS/C(テトラメチルチウラムモノスルフィド)、およびVulkacit(登録商標)Thiuram/C(テトラメチルチウラムジスルフィド)などが挙げられる。そのような硫黄ベースの加硫剤に、たとえば、亜鉛ペルオキシドのようなペルオキシドをさらに添加することも適している。
【0077】
さらにまた別な実施態様においては、反応性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂およびルイス酸活性化剤を、本発明によるポリマー組成物におけるさらなる加硫剤として使用してもよい。当業者には公知のことであるが、反応性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、パラ置換フェノールを過剰モルのホルムアルデヒドと反応させることによって調製することができる−たとえば、米国特許第2,726,224号明細書を参照されたい(それぞれの権限で許される範囲において、この特許の内容を、参照することにより本明細書に援用したものとする)。たとえば、ブチルゴムの加硫系においてそのようなフェノールホルムアルデヒド樹脂を使用することは公知である。本発明の一つの特定な実施態様においては、反応性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂をポリマー組成物の成分として、ポリマー(i)、好ましくはポリマー(i)としてのニトリルポリマーの100重量部あたり、ポリアミン架橋剤(ii)に加えて、少なくとも約3重量部の量で使用する。ポリアミン架橋剤(ii)に加えて、反応性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を、ポリマー(i)の100重量部あたり、約8〜約16重量部で使用するのが特に好ましい。たとえば塩化第一スズ(SnCl2)またはポリ(クロロブタジエン)のようなルイス酸活性化剤を、別途の成分として存在させてもよい。別な方法として、たとえば、ブロモメチル化アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂(上述の樹脂のメチロール基のヒドロキシル基の幾分かを、臭素で置換させることによって調製することができる)のように、ルイス酸活性化剤を、樹脂そのものの構造の内部に存在させてもよい。ブチルゴムのための加硫剤にそのようなハロゲン化樹脂を使用することは、当業者には周知である。
【0078】
加硫可能なポリマー組成物を製造するための方法:
本発明による加硫可能なポリマー組成物は、典型的には、ポリマー(i)を、少なくとも1種のポリアミン架橋剤(ii)および少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基(iii)と混合することによって調製することができる。
【0079】
ポリマー加硫物を製造するための方法:
また別なその態様においては、本発明は、下記のもの
以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマー: (ia)ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜100重量%、好ましくは25〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは45〜75重量%の、ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして、0〜74.9重量%、またはそれに代えて10〜75重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲の、少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1.5〜10重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、好ましくは少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、
ここで、(ia)、(ib)および(ic)に記載されたモノマー全部の合計が100重量%である;
少なくとも1種のポリアミン架橋剤;ならびに1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)およびその誘導体からなる群より特に選択される少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基;を含むポリマー組成物を、高温で加硫させることによって、ポリマー加硫物を製造するための方法を提供し:
その方法は、前記ポリマー(i)を、少なくとも1種のポリアミン架橋剤(ii)および少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基(iii)と混合することを含む。
【0080】
また別な実施態様においては、本発明は、下記のもの
以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマー: (ia)ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜99.9重量%、好ましくは25〜89.5重量%の、ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして、0〜74.9重量%、好ましくは10〜60重量%の、少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、好ましくは少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、
ここで、(ia)、(ib)および(ic)に記載されたモノマー全部の合計が100重量%である;
少なくとも1種のポリアミン架橋剤;ならびに1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)およびその誘導体からなる群より特に選択される少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基;を含むポリマー組成物を、高温で加硫させることによって、ポリマー加硫物を製造するための方法を提供し: その方法は、前記ポリマー(i)を、少なくとも1種のポリアミン架橋剤(ii)および少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基(iii)と混合することを含む。
【0081】
本発明のまた別な実施態様においては、上に概略説明した新規なポリマー組成物のポリマー加硫物を調製するための方法に、少なくとも1種の抗酸化剤および少なくとも1種の充填剤をさらに含む。本発明のさらにまた別な実施態様においては、新規なポリマー組成物のポリマー加硫物を調製するための方法に、少なくとも1種の抗酸化剤および少なくとも1種の充填剤だけではなく、さらに少なくとも1種のさらなる加硫剤をも含む。
【0082】
ポリマー加硫物を調製するためのそのような方法においては、ポリマー(i)、ポリアミン架橋剤(ii)、少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基、ならびに場合によっては抗酸化剤、充填剤およびその他の従来の添加剤を混合することは、当該技術分野において公知の各種従来の方法により実施すればよい。たとえば、2本ロールのゴム用ロール機またはインターナルミキサーで全部の成分を混合してもよい。たとえば、本発明の方法において使用される、好適な水素化されたニトリルターポリマーは、きわめて硬くなる傾向があり、2本ロールのゴム用ロール機上で混合する際にバギングを起こしやすい。一般的には、反応性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂を添加すると、そのバギングの問題が軽減され、水素化ターポリマーの混合性が改良される。
【0083】
そうすることによって、従来の方法でポリマー組成物が混合、調製され、混合の際の温度が維持されるということは、当該技術分野では公知である。典型的には、80〜160℃の範囲の温度が適用可能であることが見出されたが、いずれの場合においても、使用される(1種または複数の)ポリマー(i)の具体的なタイプと、選択されたその他の成分に依存する。
【0084】
本発明の方法の典型的な実施態様においては、次いで、これまた当該技術分野で周知の従来の手順を用いて、そのポリマー組成物を加熱してポリマー加硫物を形成させるのが好ましい。好ましくは、加硫可能なポリマー組成物を、約130℃〜約200℃、好ましくは約140℃〜約190℃、より好ましくは約150℃〜約180℃の範囲の温度に加熱する。その加熱は、好ましくは約1分間〜約15時間、より好ましくは約5分間〜約30分間かけて実施する。
【0085】
約130℃〜約200℃、好ましくは約140℃〜約190℃、より好ましくは約150℃〜約180℃の範囲の温度で、最高15時間までの時間をかけて、いわゆる後硬化を実施することが可能であるし、場合によっては推奨されるが、このことは、ダイの外で、たとえば、加硫物すなわち個々の成形部品を標準的なオーブンに入れて実施する。
【0086】
さらなる実施態様においては、本発明は、上述の方法によって得ることが可能なポリマー加硫物に関する。
【0087】
したがって、以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマー(i)を含むポリマー加硫物を提供することが、本発明の一つの目的である:
(ia)ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜100重量%、好ましくは25〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは45〜75重量%の、ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして、0〜74.9重量%、またはそれに代えて10〜75重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲の、少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1.5〜10重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、好ましくは少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、
ここで、上述の(ia)、(ib)および(ic)のモノマー単位の全部を合計したものが、100重量%であり、ポリマー(i)にはポリアミン架橋剤をベースとする架橋または橋かけ要素を含み、そのポリマー加硫物には、好ましくは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−デス−5−エン(TPD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTPD)、およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基が含まれる。
【0088】
また別な実施態様においては、本発明は、以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマー(i)を含むポリマー加硫物を提供する:
(ia)ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜99.9重量%、好ましくは25〜89.9重量%の、ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)ポリマーを基準にして、0〜74.9重量%、それに代えて10〜75重量%、好ましくは10〜60重量%の範囲の少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、好ましくは少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、
ここで、上述の(ia)、(ib)および(ic)のモノマー単位の全部を合計したものが、100重量%であり、ポリマー(i)にはポリアミン架橋剤をベースとする架橋または橋かけ要素を含み、そのポリマー加硫物には、好ましくは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−デス−5−エン(TPD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTPD)、およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基が含まれる。
【0089】
このことは、ポリアミン架橋剤が、加硫の際にポリマー鎖の間の架橋または橋かけ要素として、加硫物の構造の中に組み入れられ、それに対して、好ましくは化合物DBU、DBN、DABCO、TBD、MTPDおよびその誘導体の上述の群から選択される二環もしくは多環のアミン塩基が、まだその加硫物の中に存在しているということを意味している。
【0090】
上述のポリマー加硫物を調製するための方法を使用して、各種のタイプの成形物または成形部品を調製することができる。
【実施例】
【0091】
実施例1〜13
本発明の実施態様を以下の実施例を参照しながら説明するが、これらの実施例は説明のために提供されるものであって、本発明の範囲を限定するために使用するべきではない。特に断らない限り、実施例における「部」はすべて重量部である。
【0092】
実施例においては以下の物質を使用した:
【0093】
ゴム成分:
HNBR1:
後に記載する方法に従って調製された水素化されたニトリルブタジエンターポリマーであって、アクリロニトリル含量が36.8重量%、残存二重結合含量が0.4%、マレイン酸モノエチルエステル含量が4.5%であり、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が101のものである。
【0094】
HNBR2:
後に記載する方法に従って調製された水素化されたニトリルブタジエンターポリマーであって、アクリロニトリル含量が36.2重量%、残存二重結合含量が0.5%、マレイン酸モノエチルエステル含量が3.3%であり、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が79.3のものである。
【0095】
HNBR3:
後に記載する方法に従って調製された水素化されたニトリルブタジエンポリマーであって、アクリロニトリル含量が35.5重量%、残存二重結合含量が0.4%、フマル酸モノエチルエステル含量が4.8%であり、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が98.6のものである。
【0096】
その他の成分:
Corax(登録商標)N550/30:
カーボンブラック、FEF(ファスト・エクストルージョン・ファーネス);Evonik−Degussa AGから市販
【0097】
DABCO:
1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン;AIR Products Chemicals Europeから市販
【0098】
DIAK No.1:
ヘキサメチレンジアミンカルバメート;DuPontから市販
【0099】
Diplast810:
トリオクチル/デシルメリテート、可塑剤;Lonzy SpA,Italyから市販
【0100】
Durex(登録商標)0/35:
カーボンブラック、SRF(セミ・リインフォーシング・ファーネス);Evonik−Degussa AGから市販
【0101】
Edenor(登録商標)C18 98−100:
界面活性剤(ステアリン酸);Cognis GmbHから市販
【0102】
Luvomaxx(登録商標)CDPA:
4、4’−ビス−(1,1−ジメチルベンジル)−ジフェニルアミン;Lehmann & Vossから市販
【0103】
Maglite(登録商標)DE:
酸化マグネシウム、活性化剤;CP Hallから市販
【0104】
RHENOGRAN(登録商標)DOTG−70:
ポリマーバインダーを含む3−ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)配合物:Rheinchemie Rheinau Chemie GmbHから市販
【0105】
RHENOGRAN(登録商標)XLA−60(GE 2014):
ポリマーバインダーを含む1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)の配合物:Rheinchemie Rheinau Chemie GmbHから市販
【0106】
RHENOSIN(登録商標)W95:
アジピン酸ジエステル、可塑剤;Rheinchemie Rheinau GmbHから市販
【0107】
SILQUEST RC−1シラン:
オルガノシランエステル;Momentive Performance Materialsから入手可能
【0108】
Vulkasil(登録商標)A1:
シリカ充填剤、中程度の活性;Lanxess Deutschland GmbHから市販
【0109】
Zinkoxyd Aktiv(登録商標):
活性化剤、酸化亜鉛から沈降させた微細粒子;Lanxess Deutschland GmbHから市販
【0110】
水素化によるHNBR1、HNBR2およびHNBR3の調製 対応するHNBRを得るための水素化用の出発物質として使用したニトリルゴム「NBR」には、アクリロニトリル、ブタジエンおよびターモノマーの繰り返し単位を、次の表1に示した量で含み、さらに表1に記載したムーニー粘度を有していた。
【0111】
【表1】

【0112】
溶媒としてのモノクロロベンゼン(「MCB」)中に全固形分12%として溶解させたNBR1の溶液を、高圧反応器の中に仕込み、600rpmで撹拌しながら138℃に加熱した。温度が安定してから、ウィルキンソン触媒および助触媒としてのトリフェニルホスフィン(「TPP」)の溶液を導入し、容器に水素を導入して85バールの圧力に達するようにした。この反応液を4時間撹拌してから、水素圧を放出し、反応器を冷却して室温(約22℃)とした。次いで、ポリマー溶液を反応器から取り出し、当業者公知のスチーム法またはアルコール法のいずれかを用いて凝析させた。次いで、単離したポリマーを乾燥させた。
【0113】
加硫可能なポリマー組成物の調製 例1〜15のそれぞれにおいて、以下の手順を用いた。
【0114】
例Q1〜Q15の加硫可能なポリマー組成物を調製するために使用した成分とそれぞれの量とを、表2、5、10および13に示す。
【0115】
「CE」をつけた例はすべて、比較例を表している。
【0116】
加硫可能なポリマー組成物の成分は、バンバリーミキサー中、従来の混合法によって混合した。次いで、そのポリマー組成物を、180℃で20分間かけて加硫させ、175℃で4時間の後工程を与えた。
【0117】
加硫物の破断引張応力(「引張強さ」)、さらには応力値の「Mxxx」(ここで、「xxx」は、元の試験片の長さを基準にした伸びのパーセントを表している)を、ASTM D412−80に従って求めた。
【0118】
加硫物の加熱空気老化性は、ASTM−D573−88に従って求めた。
【0119】
硬さ特性は、ASTM−D2240−81に従って、A型ショアージュロメーターを用いて求めた。
【0120】
ムーニー粘度(ML1+4(100℃))の測定は、ASTM標準D 1646に従って実施した。
【0121】
得られた未老化の加硫物の性質を、表3、7、11および15に示す。加硫物の各種の加熱空気老化性もまた、表4、8、9、12、16および17に示す。
【0122】
以下の表に示されたHNBR加硫物の性質に、本発明の実施例の加硫物の、優れた硬化密度、改良された弾性率100、加熱空気老化性、および顕著に改良された圧縮永久歪み特性が明らかに示されているが、DOTGを使用している比較例の加硫物と比較するときには、本発明の実施例ではDBUまたはDABCOのいずれかを使用している。表7では、DBUを使用した場合の硬化密度がそれぞれ、同一条件下でのDOTGベースの組合せ(比較例)よりも、顕著に改良されていることを示していることが特によくわかる。言い換えると、この加硫物の従来の用途の多くにおいて顕著な実用的メリットがあり、さらには、ゴム加硫物の毒性挙動においても改良されているということである。
【0123】
【表2】

【0124】
【表3】

【0125】
【表4】

【0126】
【表5】

【0127】
【表6】

【0128】
【表7】

【0129】
【表8】

【0130】
【表9】

【0131】
【表10】

【0132】
【表11】

【0133】
【表12】

【0134】
【表13】

【0135】
【表14】

【0136】
【表15】

【0137】
【表16】

【0138】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫可能なポリマー組成物であって、
以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマー: (ia)前記ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜99.9重量%、好ましくは25〜89.5重量%、より好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは45〜75重量%の、前記ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)前記ポリマーを基準にして、0〜74.9重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲の、少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)前記ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1.5〜10重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、
ここで、(ia)、(ib)および(ic)に記載されたモノマー全部の合計が100重量%である;
少なくとも1種のポリアミン架橋剤、ならびに少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基、を含む、加硫可能なポリマー組成物。
【請求項2】
成分(iii)として、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基を含む、請求項1に記載の加硫可能なポリマー組成物。
【請求項3】
成分(iv)として少なくとも1種の抗酸化剤、および成分(v)として少なくとも1種の充填剤をさらに含む、請求項1または2に記載の加硫可能なポリマー組成物。
【請求項4】
以下のものから誘導される、場合によっては水素化されているニトリルポリマー; (ia)少なくとも1種の共役ジエン、
(ib)少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、および
(ic)第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル;
少なくとも1種のポリアミン架橋剤;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)およびその誘導体からなる群より特に選択される少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基;場合によっては、少なくとも1種の抗酸化剤;ならびに場合によっては、少なくとも1種の充填剤;を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加硫可能なポリマー組成物。
【請求項5】
前記場合によっては水素化されたニトリルポリマーが、
(ia)少なくとも4の炭素数、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する少なくとも1種の共役ジエン、より好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、もしくは1,3−ペンタジエン、または5〜12の範囲の炭素数を有する少なくとも1種の非共役ジエン、より好ましくは1,4−ペンタジエンもしくは1,4−ヘキサジエン、
(ib)少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ニトリル、好ましくはアクリロニトリル、α−ハロアクリロニトリル、より好ましくはα−クロロアクリロニトリルもしくはα−ブロモアクリロニトリル、またはα−アルキルアクリロニトリル、より好ましくはメタクリロニトリルもしくはエタクリロニトリル、および
(ic)第三のモノマー(ic)としての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、
から誘導される、請求項4に記載の加硫可能なポリマー組成物。
【請求項6】
酸素原子を介してカルボニル基に結合されている、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルもしくは−ジエステルモノマーの有機基が、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基またはアリール基を表し、前記アルキル基の炭素数が、好ましくは1〜10、より好ましくは2、3、4、5、6の範囲にあり、前記シクロアルキル基の炭素数が、好ましくは5〜12の範囲、より好ましくは6〜10の範囲にあり、前記アルキルシクロアルキル基の炭素数が、好ましくは6〜12の範囲、より好ましくは7〜10の範囲にある、請求項4または5に記載の加硫可能なポリマー組成物。
【請求項7】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー(ic)として以下のモノマーの少なくとも一つが使用される、
マレイン酸モノアルキルエステル、好ましくはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、およびマレイン酸モノn−ブチル;マレイン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはマレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘプチル;マレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはマレイン酸モノメチルシクロペンチル、およびマレイン酸モノエチルシクロヘキシル;マレイン酸モノアリールエステル、好ましくはマレイン酸モノフェニル;マレイン酸モノベンジルエステル、好ましくはマレイン酸モノベンジル;フマル酸モノアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、およびフマル酸モノn−ブチル;フマル酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびフマル酸モノシクロヘプチル;フマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノメチルシクロペンチル、およびフマル酸モノエチルシクロヘキシル;フマル酸モノアリールエステル、好ましくはフマル酸モノフェニル;フマル酸モノベンジルエステル、好ましくはフマル酸モノベンジル;シトラコン酸モノアルキルエステル、好ましくはシトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、およびシトラコン酸モノn−ブチル;シトラコン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはシトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、およびシトラコン酸モノシクロヘプチル;シトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはシトラコン酸モノメチルシクロペンチル、およびシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;シトラコン酸モノアリールエステル、好ましくはシトラコン酸モノフェニル;シトラコン酸モノベンジルエステル、好ましくはシトラコン酸モノベンジル;イタコン酸モノアルキルエステル、好ましくはイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、およびイタコン酸モノn−ブチル;イタコン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはイタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、およびイタコン酸モノシクロヘプチル;イタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはイタコン酸モノメチルシクロペンチル、およびイタコン酸モノエチルシクロヘキシル;イタコン酸モノアリールエステル、好ましくはイタコン酸モノフェニル;イタコン酸モノベンジルエステル、好ましくはイタコン酸モノベンジル;メサコン酸モノアルキルエステル、好ましくはメサコン酸モノエチルエステル;請求項4または5または6に記載の加硫可能なポリマー組成物。
【請求項8】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーとして、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、またはメサコン酸が使用される、請求項4または5または6に記載の加硫可能なポリマー組成物。
【請求項9】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマーとして、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびシトラコン酸の無水物が使用される、請求項4または5または6に記載の加硫可能なポリマー組成物。
【請求項10】
前記場合によっては水素化されたニトリルゴムが、(ia)、(ib)および(ic)以外の他の共重合性モノマー単位の繰り返し単位、好ましくは(α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル以外の)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル、より好ましくはアクリル酸n−ブチル、芳香族ビニルモノマー、フッ素含有ビニルモノマー、または共重合性老化防止剤の繰り返し単位をさらに含む、請求項4または5または6に記載の加硫可能なポリマー組成物。
【請求項11】
脂肪族ポリアミン、好ましくはヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン−シンナムアルデヒド付加物、またはヘキサメチレンジアミン−ジベンゾエート塩、芳香族ポリアミン、好ましくは2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、もしくは4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)、または少なくとも2個のヒドラジド構造を有する化合物、好ましくはイソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、もしくはセバシン酸ジヒドラジドが、ポリアミン架橋剤(ii)として使用される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の加硫可能なポリマー組成物。
【請求項12】
前記ポリマー(i)を少なくとも1種のポリアミン架橋剤(ii)および少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基(iii)と混合することを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の加硫可能なポリマー組成物を調製するための方法。
【請求項13】
以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマー(i)、
(ia)前記ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜99.9重量%、好ましくは25〜89.5重量%、より好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは45〜75重量%の、前記ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)前記ポリマーを基準にして、0〜74.9重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲の、少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)前記ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1.5〜10重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、好ましくは少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー
(ここで、(ia)、(ib)および(ic)に記載されたモノマー全部の合計が100重量%である);
を、少なくとも1種のポリアミン架橋剤(ii)および好ましくは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTBD)およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基(iii)と、高温で加硫させることによって、ポリマー加硫物を調製するための方法。
【請求項14】
少なくとも1種の抗酸化剤および少なくとも1種の充填剤および場合によっては少なくとも1種のさらなる加硫剤を、前記加硫に添加することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ポリマー加硫物であって、以下のものから誘導されるポリマー主鎖を有するポリマー(i)を含み、
(ia)前記ポリマーを基準にして、少なくとも25重量%〜99.9重量%、好ましくは25〜89.5重量%、より好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは45〜75重量%の、前記ポリマー主鎖に二級炭素および三級炭素の少なくとも一つを導入する第一のモノマー、好ましくは少なくとも1種のジエンモノマー、および
(ib)前記ポリマーを基準にして、0〜74.9重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲の、少なくとも第二のモノマー、好ましくはα,β−エチレン性不飽和ニトリルモノマー、
(ic)前記ポリマーを基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1.5〜10重量%の範囲の、第三のモノマーとしての、少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物モノマー、またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、好ましくは少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマー、
ここで、上述の(ia)、(ib)および(ic)のモノマー単位の全部を合計したものが、100重量%であり、ポリマー(i)にはポリアミン架橋剤をベースとする架橋または橋かけ要素を含み、前記ポリマー加硫物には、好ましくは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−デス−5−エン(TPD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デス−5−エン(MTPD)、およびその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の二環もしくは多環のアミン塩基が含まれる、ポリマー加硫物。
【請求項16】
成形物または成形部品の形状にある、請求項15に記載のポリマー加硫物。

【公開番号】特開2010−24452(P2010−24452A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−165609(P2009−165609)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】